(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】金属シール
(51)【国際特許分類】
F16J 15/08 20060101AFI20221213BHJP
【FI】
F16J15/08 G
(21)【出願番号】P 2020191060
(22)【出願日】2020-11-17
【審査請求日】2021-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000003263
【氏名又は名称】三菱電線工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080746
【氏名又は名称】中谷 武嗣
(72)【発明者】
【氏名】柏原 一之
(72)【発明者】
【氏名】藤堂 聡
【審査官】宮下 浩次
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-340315(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に平行な第1平面(P
1 )と第2平面(P
2 )の間に介装される全体が環状であって、横断面形状が長方形の中間基部(3)と、上記第1平面(P
1 )に当接する内径寄りの第1主凸部(1)と、外径寄りの第1副凸部(11)と、上記第2平面(P
2 )に当接する外径寄りの第2主凸部(2)と、内径寄りの第2副凸部(12)とを、備え、
上記第1主凸部(1)の内周辺部(1A)と、上記中間基部(3)の内周短辺(31)と、上記第2副凸部(12)の内周辺部(12A)とは、横断面において一本の共通直線(L
10)をもって連続し、
上記第2主凸部(2)の外周辺部(2A)と、上記中間基部(3)の外周短辺(32)と、上記第1副凸部(11)の外周辺部(11A)とは、横断面において一本の共通直線(L
20)をもって連続し、
さらに、上記第1主凸部(1)と第1副凸部(11)と第2主凸部(2)と第2副凸部(12)は、先端に円弧状頂部(5)(6)を有
し、
上記第1主凸部(1)・第2主凸部(2)の先端の上記円弧状頂部(5)の横断面における内接円の中心点(O
1
)と、各々近い方の上記共通直線(L
10
)(L
20
)との距離を(X
1
)(X
2
)とすると共に、金属シール全体の高さ寸法を(H
0
)とすれば、以下の数式4,5が成立することを特徴とする金属シール。
0≦X
1
≦0.25・H
0
…(数式4)
0≦X
2
≦0.125・H
0
…(数式5)
【請求項2】
相互に平行な第1平面(P
1
)と第2平面(P
2
)の間に介装される全体が環状であって、横断面形状が長方形の中間基部(3)と、上記第1平面(P
1
)に当接する内径寄りの第1主凸部(1)と、外径寄りの第1副凸部(11)と、上記第2平面(P
2
)に当接する外径寄りの第2主凸部(2)と、内径寄りの第2副凸部(12)とを、備え、
上記第1主凸部(1)の内周辺部(1A)と、上記中間基部(3)の内周短辺(31)と、上記第2副凸部(12)の内周辺部(12A)とは、横断面において一本の共通直線(L
10
)をもって連続し、
上記第2主凸部(2)の外周辺部(2A)と、上記中間基部(3)の外周短辺(32)と、上記第1副凸部(11)の外周辺部(11A)とは、横断面において一本の共通直線(L
20
)をもって連続し、
さらに、上記第1主凸部(1)と第1副凸部(11)と第2主凸部(2)と第2副凸部(12)は、先端に円弧状頂部(5)(6)を有し、
上記第1主凸部(1)・第2主凸部(2)の
外周側・内周側の稜線の成す角度を(θ
1
)とすると共に、上記第1副凸部(11)・第2副凸部(12)の外周側・内周側の稜線の成す角度を(θ
2
)とすれば、以下の数式6,7が成立する
ことを特徴とする金属シール。
25°≦θ
1
≦45°…(数式6)
25°≦θ
2
≦45°…(数式7)
【請求項3】
上記第1主凸部(1)・第2主凸部(2)の
各底辺(1B)(2B)の寸法を(W
1
)とすると共に、上記中間基部(3)の長辺(3A)の寸法を(W
0
)とすれば、以下の数式
1が成立する請求項1又は2記載の金属シール。
0.20・W
0
≦W
1
≦0.45・W
0
…(数式1)
【請求項4】
上記
第1主凸部(1)・第2主凸部(2)の先端の上記円弧状頂部
(5)の横断面における曲率半径を
(R
1
)とすると共に、金属シール全体の高さ寸法を(H
0 )とすれば、以下の数式
2が成立する請求項1,2又は3記載の金属シール。
0.05・H
0
≦R
1
≦0.25・H
0
…(数式2)
【請求項5】
上記
第1副凸部(11)・第2副凸部(12)の先端の上記円弧状頂部
(6)の横断面における
曲率半径を(R
2
)とすると共に、金属シール全体の高さ寸法を(H
0 )とすれば、以下の数式
3が成立する請求項1,2,3又は4記載の金属シール。
0.05・H
0
≦R
2
≦0.125・H
0
…(数式3)
【請求項6】
相互に平行な第1平面(P
1
)と第2平面(P
2
)の間に介装される全体が環状であって、横断面形状が長方形の中間基部(3)と、上記第1平面(P
1
)に当接する内径寄りの第1内凸部(15)と、外径寄りの第1外凸部(16)と、上記第2平面(P
2
)に当接する外径寄りの第2外凸部(17)と、内径寄りの第2内凸部(18)とを、備え、
上記第1内凸部(15)の内周辺部(15A)と、上記中間基部(3)の内周短辺(31)と、上記第2内凸部(18)の内周辺部(18A)とは、横断面において一本の共通直線(L
10
)をもって連続し、
上記第2外凸部(17)の外周辺部(17A)と、上記中間基部(3)の外周短辺(32)と、上記第1外凸部(16)の外周辺部(16A)とは、横断面において一本の共通直線(L
20
)をもって連続し、
さらに、上記第1内凸部(15)と第1外凸部(16)と第2外凸部(17)と第2内凸部(18)は、先端に円弧状頂部(5)を有すると共に同一高さとした
ことを特徴とする金属シ
ール。
【請求項7】
上記第1内凸部(15)・第1外凸部(16)・第2外凸部(17)・第2内凸部(18)の全ての各底辺(20)の寸法を(W
1
)とすると共に、上記中間基部(3)の長辺(3A)の寸法を(W
0
)とすれば、以下の数式8が成立する請求項6記載の金属シール。
0.20・W
0
≦W
1
≦0.45・W
0
…(数式8)
【請求項8】
上記第1内凸部(15)・第1外凸部(16)・
第2内凸部(18)・第2外凸部(17)の先端の上記円弧状頂部(5)の横断面における曲率半径を(R
11
)とすると共に、金属シール全体の高さ寸法を(H
0
)とすれば、以下の数式
9が成立する請求項
6又は7記載の金属シール。
0.05・H
0
≦R
11
≦0.25・H
0
…(数式9)
【請求項9】
上記第1内凸部(15)・
第2内凸部(18)・第1外凸
部(16)・第2外凸部(17)の先端の上記円弧状頂部(5)の横断面における
内接円の中心点(O
1
)と、各々近い方の上記共通直線(L
10
)(L
20
)との距離を(X
11
)とすると共に、金属シール全体の高さ寸法を(H
0 )とすれば、以下の数式
10が成立する請求項
6,7又は8記載の金属シール。
0≦X
11
≦0.25・H
0
…(数式10)
【請求項10】
上記第1内凸部(15)・第2内凸部(18)・第1外凸部(16)・第2外凸部(17)の
外周側・内周側の稜線の成す角度を(θ
11
)とすれば、以下の数式
11が成立する請求項
6,7,8又は9記載の金属シール。
25°≦θ
11
≦45°…(数式11)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属シールに係り、特に、2平面間を密封するための金属シールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、
図13,
図14に示す金属シール60を、本出願人が提案した(特許文献1参照)。即ち、この金属シール60は、相互に平行な第1平面P
1 と第2平面P
2 (
図14参照)の間に介装され、全体が環状であり、横断面が矩形状の中間基部63と、第1平面P
1 に当接する内径寄りの断面半円形の第1凸部66と、第2平面P
2 に当接する外径寄りの断面半円形の第2凸部67とを、有している。
そして、装着圧縮状態(使用状態)では、
図14に示すように、相互に接近する第1平面P
1 と第2平面P
2 から押圧力を受け、中間基部63の重心点を中心に回転変形を生じる。さらに、第1平面P
1 と第2平面P
2 とを相互接近させると、
図14に示す如く、角部68,69も圧接して、第1平面P
1 と第2平面P
2 に対して4箇所が圧接して、密封に必要な十分な接触面圧―――1000MPa以上―――をもって、圧接密封状態を保つことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、
図13と
図14に示した横断面形状の金属シール60では、金属材料を塑性変形させ(潰し)ながら、フランジ平面(第1・第2平面)P
1 ,P
2 に対して極めて大きな力(圧縮荷重)を与える必要がある。
従って、
図13,
図14に示した従来の金属シール60には、次のような問題点があることが判明してきた。
即ち、 (i) 大きな圧縮荷重を付与するために締付ボルトへの負荷が大きくなり大径のボルトを使用したり、ボルト本数を増やす必要がある点、 (ii) これに伴って装置全体をコンパクトにすることが難しくなる点、(iii) フランジの表面(第1・第2平面P
1 ,P
2 )を疵付ける等のダメージを与える虞れがある点。
【0005】
そこで、本発明は、このような従来の問題点(i)(ii)(iii)を解決して、比較的に小さな圧縮力をもって締付け可能とし、締付ボルトの負担を軽減して、装置のコンパクト化に貢献できる金属シールを提供することを目的とする。さらには、(塑性変形以前の)回転弾性変形途中のフランジ面との擦れ量を低減すると共に、その時の圧縮荷重をも低減することで、フランジ面への疵付きを一層低減可能な金属シールを提供することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、相互に平行な第1平面と第2平面の間に介装される全体が環状であって、横断面形状が長方形の中間基部と、上記第1平面に当接する内径寄りの第1主凸部と、外径寄りの第1副凸部と、上記第2平面に当接する外径寄りの第2主凸部と、内径寄りの第2副凸部とを、備え、上記第1主凸部の内周辺部と、上記中間基部の内周短辺と、上記第2副凸部の内周辺部とは、横断面において一本の共通直線をもって連続し、上記第2主凸部の外周辺部と、上記中間基部の外周短辺と、上記第1副凸部の外周辺部とは、横断面において一本の共通直線をもって連続し、さらに、上記第1主凸部と第1副凸部と第2主凸部と第2副凸部は、先端に円弧状頂部を有し、上記第1主凸部・第2主凸部の先端の上記円弧状頂部の横断面における内接円の中心点と、各々近い方の上記共通直線との距離をX
1
,X
2
とすると共に、金属シール全体の高さ寸法をH
0
とすれば、0≦X
1
≦0.25・H
0
及び0≦X
2
≦0.125・H
0
の関係が成立する。
【0007】
また、相互に平行な第1平面と第2平面の間に介装される全体が環状であって、横断面形状が長方形の中間基部と、上記第1平面に当接する内径寄りの第1主凸部と、外径寄りの第1副凸部と、上記第2平面に当接する外径寄りの第2主凸部と、内径寄りの第2副凸部とを、備え、上記第1主凸部の内周辺部と、上記中間基部の内周短辺と、上記第2副凸部の内周辺部とは、横断面において一本の共通直線をもって連続し、上記第2主凸部の外周辺部と、上記中間基部の外周短辺と、上記第1副凸部の外周辺部とは、横断面において一本の共通直線をもって連続し、さらに、上記第1主凸部と第1副凸部と第2主凸部と第2副凸部は、先端に円弧状頂部を有し、上記第1主凸部・第2主凸部の外周側・内周側の稜線の成す角度をθ
1
とすると共に、上記第1副凸部・第2副凸部の外周側・内周側の稜線の成す角度をθ
2
とすれば、25°≦θ
1
≦45°及び25°≦θ
2
≦45°の関係が成立する。
【0008】
また、上記第1主凸部・第2主凸部の各底辺の寸法をW1 とすると共に、上記中間基部の長辺の寸法をW0 とすれば、0.20・W0 ≦W1 ≦0.45・W0 の関係が成立する。
また、上記第1主凸部・第2主凸部の先端の上記円弧状頂部の横断面における曲率半径をR1 とすると共に、金属シール全体の高さ寸法をH0 とすれば、0.05・H0 ≦R1 ≦0.25・H0 の関係が成立する。
また、上記第1副凸部・第2副凸部の先端の上記円弧状頂部の横断面における曲率半径をR2 とすると共に、金属シール全体の高さ寸法をH0 とすれば、0.05・H0 ≦R2 ≦0.125・H0 の関係が成立する。
【0009】
また、相互に平行な第1平面と第2平面の間に介装される全体が環状であって、横断面形状が長方形の中間基部と、上記第1平面に当接する内径寄りの第1内凸部と、外径寄りの第1外凸部と、上記第2平面に当接する外径寄りの第2外凸部と、内径寄りの第2内凸部とを、備え、上記第1内凸部の内周辺部と、上記中間基部の内周短辺と、上記第2内凸部の内周辺部とは、横断面において一本の共通直線をもって連続し、上記第1外凸部の外周辺部と、上記中間基部の外周短辺と、上記第1外凸部の外周辺部とは、横断面において一本の共通直線をもって連続し、さらに、上記第1内凸部と第1外凸部と第2外凸部と第2内凸部は、先端に円弧状頂部を有すると共に同一高さとした。
【0010】
また、上記第1内凸部・第1外凸部・第2外凸部・第2内凸部の全ての各底辺の寸法をW1 とすると共に、上記中間基部の長辺の寸法をW0 とすれば、0.20・W0 ≦W1 ≦0.45・W0 の関係が成立する。
また、上記第1内凸部・第1外凸部・第2内凸部・第2外凸部の先端の上記円弧状頂部の横断面における曲率半径をR11とすると共に、金属シール全体の高さ寸法をH0 とすれば、0.05・H0 ≦R11≦0.25・H0 の関係が成立する。
また、上記第1内凸部・第2内凸部・第1外凸部・第2外凸部の先端の上記円弧状頂部の横断面における内接円の中心点と、各々近い方の上記共通直線との距離をX11とすると共に、金属シール全体の高さ寸法をH0 とすれば、0≦X11≦0.25・H0 の関係が成立する。
また、上記第1内凸部・第2内凸部・第1外凸部・第2外凸部の外周側・内周側の稜線の成す角度をθ11とすれば、25°≦θ11≦45°の関係が成立する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、小さな圧縮力をもって締付可能となるので、締付ボルトの負荷を軽減して、小径のボルトでも締付可能となり、装置全体のコンパクト化に貢献できる。さらに、装着されるフランジ面への疵付きを防止でき、密封性能も優れる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施の一形態を示す図であって、(A)は拡大断面正面図、(B)は平面図、(C)は正面図、(D)は底面図である。
【
図3】形状と寸法関係等を説明する分解断面説明図である。
【
図4】FEM解析にて得られた本発明の実施品についての最終締付圧縮状態の断面形状を示すと共に、第1・第2平面に対する接触面圧を示す図である。
【
図6】本発明の他の実施形態を示す図であって、(A)は拡大断面正面図、(B)は平面図、(C)は正面図、(D)は底面図である。
【
図8】形状と寸法関係等を説明する分解断面図である。
【
図9】FEM解析にて得られた本発明の実施品についての最終締付圧縮状態の断面形状を示すと共に、第1・第2平面に対する接触面圧を示す図である。
【
図11】実施例1,2と従来例を対比した(使用範囲を含んだ)荷重特性を示すグラフ図である。
【
図12】実施例1,2と従来例を対比した、回転弾性変形域における荷重特性を示すグラフ図である。
【
図13】従来例を示す図であって、(A)は全体断面正面図、(B)は要部拡大断面図である。
【
図14】FEM解析にて得られた従来例についての最終締付圧縮状態の断面形状を示すと共に、第1・第2平面に対する接触面圧を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図示の実施の形態に基づき本発明を詳説する。
図1~
図4に示すように、本発明に係る金属シールSは、相互に平行な第1平面P
1 と第2平面P
2 の間に介装される。また、全体が円形や長円形や多角形状等の環状であり、平行な2平面P
1 ,P
2 間を密封するものである。
この金属シールSの横断面形状について説明すれば、長方形の中間基部3と、第1平面P
1 に当接する内径寄りの第1主凸部1と、外径寄りの第1副凸部11とを有する。さらに、第2平面P
2 に当接する外径寄りの第2主凸部2と、内径寄りの第2副凸部12と、を有する。
【0014】
図1及び
図2に於て、Ls は金属シールS全体の軸心を示し、
図2では実際よりも極端にシール断面に接近して示す。
中間基部3は、第1・第2平面P
1 ,P
2 に対して平行な長辺3A,3Aと、それに直交する短辺3B,3Bから成る。この長辺3A,3Aを区別するために、第1長辺21・第2長辺22と呼ぶ場合もある。また、この短辺3B,3Bを区別するために、内周短辺31・外周短辺32と呼ぶ場合もある。
【0015】
そして、
図2と(それを分解して示した)
図3に示すように、第1主凸部1は、山型であって、内周側に切り立った崖状の内周辺部1Aを有し、また、第2副凸部12は、(
図2では山が倒立状であるが)同様に、内周側に切り立った崖状の内周辺部12Aを有する断面形状である。
【0016】
そして、
図3の分解図に、矢印X
1 ,X
2 にて示す如く、山型状の第1主凸部1と第2副凸部12を、中間基部3の長辺3A,3Aの内周短辺31寄りの端部に当接させることによって、第1主凸部1の内周辺部1Aと、中間基部3の内周短辺31と、第2副凸部12の内周辺部12Aとは、(横断面において)一本の共通直線L
10をもって、連続している。
さらに、
図2と
図3に示すように、(倒立山型ではあるが、)第2主凸部2は、外周側に切り立った崖状の外周辺部2Aを有し、また、第1副凸部11は、同様に、外周側に切り立った崖状の外周辺部11Aを有する山型断面形状である。
【0017】
そして、
図3の分解図に、矢印X
3 ,X
4 にて示す如く、山型状の第2主凸部2と第1副凸部11を、中間基部3の長辺3Aの外周短辺32寄りの端部に当接させることによって、第2主凸部2の外周辺部2Aと、中間基部3の外周短辺32と、第1副凸部11の外周辺部11Aとは、(横断面において)一本の共通直線L
20をもって、連続している。
【0018】
そして、上記第1主凸部1と第1副凸部11と第2主凸部2と第2副凸部12は、各々、(山型であって)先端に円弧状頂部5又は円弧状頂部6を、有する。
そして、第1主凸部1・第2主凸部2の各底辺1B,2Bの寸法をW1 とすると共に、中間基部3の長辺3Aの寸法をW0 とすれば、次の数式1が成立している。
0.20・W0 ≦W1 ≦0.45・W0 …(数式1)
【0019】
さらに、第1主凸部1・第2主凸部2の先端の円弧状頂部5の横断面における曲率半径をR1 とすると共に、金属シール全体の高さ寸法をH0 とすれば、以下の数式2が成立している。
0.05・H0 ≦R1 ≦0.25・H0 …(数式2)
さらに、第1副凸部11・第2副凸部12の先端の円弧状頂部6の横断面における曲率半径をR2 とすると共に、金属シール全体の高さ寸法をH0 とすれば、以下の数式3が成立している。
0.05・H0 ≦R2 ≦0.125・H0 …(数式3)
【0020】
また、第1主凸部1・第2主凸部2の先端の上記円弧状頂部5の横断面における(上記半径R1 を有する)内接円の中心点O1 と、(各々近い位置に存在する)共通直線L10,L20との距離をX1 ,X2 とすると共に、金属シール全体の高さ寸法をH0 とすれば、以下の数式4及び5が成立している。
0≦X1 ≦0.25・H0 …(数式4)
0≦X2 ≦0.125・H0 …(数式5)
なお、X1 =0とは、中心点O1 が内周辺部1Aの上に在ることを意味する。X2 =0とは、中心点O1 が外周辺部2Aの上に在ることを意味する。
【0021】
次に、第1主凸部1・第2主凸部2の外周側・内周側の稜線の成す角度をθ1 とすると、次の数式6が成立する。
25°≦θ1 ≦45° …(数式6)
また、第1副凸部11・第2副凸部12の外周側・内周側の稜線の成す角度をθ2 とすれば、次の数式7が成立する。
25°≦θ2 ≦45° …(数式7)
【0022】
以上、
図1~
図3について述べた本発明の実施形態の金属シールSは、第1平面P
1 と第2平面P
2 の相互接近に伴って、最初に回転弾性変形を起こし、引続いて、
図4に示すように4箇所にて接触(圧接)した最終締付圧縮状態(いわゆるセット状態)となる。この状態における4箇所の接触面圧波形、及び、その値については、他の実施形態の場合を示す
図9、及び、従来例の場合を示す
図14と共に、後に詳しく説明することとする。
【0023】
ところで、
図5は、
図2の状態から、第1平面P
1 と第2平面P
2 が接近を開始した瞬間の説明図である。この
図5から判るように、金属シールSの回転弾性変形に伴って、
図5の矢印M
1 方向に倒れを開始するが、第1主凸部1の円弧状頂部5が第1平面P
1 に摺接するが、最先端角部13は、第1平面P
1 から離れる動きを示し(微小ギャップα参照)、この角部13による第1平面P
1 への傷付きを、巧妙に避けている。
【0024】
次に、
図6~
図9に示した他の実施形態について説明すると、相互に平行な第1平面P
1 と第2平面P
2 の間に介装される点、及び、全体が円形,長円形,楕円形,多角形等の環状である点は、
図1~
図5に示した前述の実施形態と同様である。
【0025】
しかしながら、
図6~
図9の金属シールSは、常に回転弾性変形を起こさずにセット状態まで到達する。
【0026】
具体的な断面形状等から説明すれば、長方形の中間基部3と、第1平面P1 に当接する内径寄りの第1内凸部15と、外径寄りの第1外凸部16と、第2平面P2 に当接する外径寄りの第2外凸部17と、内径寄りの第2内凸部18とを、備えている。
【0027】
そして、断面図に於て、第1内凸部15は山型であって、内周側に切り立った崖状の内周辺部15Aを有し、また、第2内凸部18は(倒立山型であるが)、内周側に切り立った崖状の内周辺部18Aを有する。そして、この内周辺部15Aと、中間基部3の内周短辺31と、内周辺部18Aとは、横断面において一本の共通直線L10をもって連続している。この共通直線L10は、シール軸心Ls と平行である。
【0028】
また、第2外凸部17の外周辺部17Aと、中間基部3の外周短辺32と、第1外凸部16の外周辺部16Aとは、横断面において一本の共通直線L20をもって連続している。
【0029】
さらに、第1内凸部15と第1外凸部16と第2外凸部17と第2内凸部18は、先端に円弧状頂部5を有している。
【0030】
そして、
図8の断面図等から明らかなように4個の凸部15,16,17,18の底辺20の寸法は、相等しく設定する。しかも、この底辺20の寸法をW
1 とすれば、次の数式8が成立する。
0.20・W
0 ≦W
1 ≦0.45・W
0(数式8)
【0031】
さらに、上記第1内凸部15・第1外凸部16・第2内凸部18・第2外凸部17の先端の上記円弧状頂部5の横断面における曲率半径をR11とすると共に、金属シール全体の高さ寸法をH0 とすれば、次の数式9が成立する。
0.05・H0 ≦R11≦0.25・H0 …(数式9)
【0032】
また、上記第1内凸部15・第2内凸部18・第1外凸部16・第2外凸部17の先端の上記円弧状頂部5の横断面における内接円の中心点O1 と、各々近い方の上記共通直線L10,L20との距離をX11とすると共に、金属シール全体の高さ寸法をH0 とすれば、次の数式10が成立する。
0≦X11≦0.25・H0 …(数式10)
【0033】
また、上記第1内凸部15・第2内凸部18・第1外凸部16・第2外凸部17の外周側・内周側の稜線の成す角度をθ11とすれば、次の数式11が成立する。
25°≦θ11≦45°…(数式11)
【0034】
次に、
図1,
図2にて説明した本発明の(第1の)実施例と、
図13に示した従来例とを、各々、第1平面P
1 と第2平面P
2 の間隔寸法Hp (セット高さG)を減少させていった場合、シール断面の重心廻りの回転弾性変形を起こした後、4点接触状態を経て、
図4と
図14に示す塑性変形領域に至り、大きな変形を起こしている。
【0035】
図4,
図14では、自由状態下で高さ寸法が1.0mmである金属シールS,60に関し、第1平面P
1 と第2平面P
2 の間隔寸法Hp を0.7mmまで減少した―――即ち、金属シールS,60のセット高さGを0.7mmとした―――最終締付圧縮状態(いわゆるセット状態)の変形状態、及び、第1・第2平面P
1 ,P
2 に対する各接触面圧を示す。なお、
図4,
図14のシール断面形状及び接触面圧は、FEM解析にて求めた結果を示す。また、後述する
図11に示すように、シールの使用範囲Gxは、ある程度の幅があっても良い。
【0036】
図4と
図14を比較すれば、以下のことが分かる。但し、
図14の4個の接触面圧を示す波形を、一点鎖線をもって、
図4の上下各グラフ図中に、転記して、本発明の実施品と、従来例との、波形の相違を明らかとしている。
即ち、
図4と
図14から、以下のことが分かる。 (i) 第1平面P
1 に対する接触面圧波形は、本発明実施品では、第1副凸部11の波形が大きく(高く)、第1主凸部1の波形が小さく(低く)出現している。 (ii) 第2平面P
2 に対する接触面圧波形は、本発明実施品では、第2副凸部12の波形が大きく(高く)、第2主凸部2の波形が小さく(低く)出現している。(iii) 従来例では、第1凸部66の波形が、角部68の波形に比較すると、幅が広く、最大高さがやや低く面積が大きい。 (iv) 従来例では、第2凸部67の波形が、角部69の波形に比較すると、幅が広く、最大高さがやや低く、面積が大きい。 (v) 本発明実施品と従来品のいずれも、4個の波形の高さは、1000MPaを越えた高い値(接触面圧)を示し、密封性能は十分発揮できる。
【0037】
次に、
図6,
図7にて説明した本発明の(第2の)実施例と、
図13に示した従来例とを、各々、第1平面P
1 と第2平面P
2 の間隔寸法Hp(セット高さG)を減少させていった場合、シール断面の回転弾性変形は、
図6,
図7の第2実施例では発生しないで、当初から4点接触のままにて、弾性変形を経て、
図9に示す塑性変形領域に至り、大きく変形する。
【0038】
図9,
図14では、自由状態下で高さ寸法が1.0mmである金属シールS,60について、第1平面P
1 と第2平面P
2 の間隔寸法Hp を0.7mmまで減少した―――即ち、金属シールS,60のセット高さGを0.7mmとした―――最終締付圧縮状態の変形状態、及び、第1・第2平面P
1 ,P
2 に対する各接触面圧を示す。
【0039】
図9と
図14を比較すれば、以下のことが分かる。但し、
図14の4個の接触面圧を示す波形を、一点鎖線をもって、
図9の上下の各グラフ図中に、転記して、本発明の第2実施品と、従来例との、波形の相違を明らかとしている。
即ち、
図9と
図14から、以下のことが明らかとなる。 (i) 第1平面P
1 に対する接触面圧力波形は、本発明実施品では、第1内凸部15と第1外凸部16は略相等しくなっている。 (ii) 第2平面P
2 に対する接触面圧波形は、本発明実施品では略相等しい。(iii) 従来例では、第1凸部66の波形が、角部68の波形と比較すると、幅が広く、最大高さがやや低く、面積が大きい。 (iv) 従来例では、第2凸部67の波形が、角部69の波形よりも、幅が広く、最大高さがやや低く、面積が大きい。 (v) 従来例では、4個の波形の高さ及び面積が略等しい。 (vi) 本発明実施品と従来品のいずれも、4個の波形の高さが、1000MPaを越えた高い値(接触面圧)を示し、密封性能は十分発揮できる。
【0040】
ところで、
図11と
図12は、横軸にセット高さG(mm)をとり、縦軸に圧縮荷重F(kN)をとったグラフ図である。圧縮荷重F(kN)は、平面P
1 ,P
2 の受ける金属シールS,60からの「反力」と言うこともできる。
この
図11と、(その要部を拡大した)
図12に示す如く、本発明と従来例とでは、著しい特性上の差異を示している。
【0041】
図11,
図12について、以下、説明すれば、一点鎖線のグラフ線は、
図13と
図14に示す従来例の特性を示す。点P
31は、第1平面P
1 と第2平面P
2 に対して、第1凸部66と第2凸部67が軽く接触した圧縮開始点を示す。
P
32は、4点接触開始点を示す。即ち、上記圧縮開始点P
31から、第1凸部66と第2凸部67に対して第1平面P
1 と第2平面P
2 から押圧力を受けて、(図示省略したが)角部68,69が、第1平面P
1 ・第2平面P
2 に初めて接触した状態を示す。
【0042】
図12でも明らかなように、従来例の金属シール60では、点P
31から点P
32に至る弾性回転領域に於て、大きな圧縮荷重(反力)F
60を発生している(
図12では、F
60=2.0kNを示している。)
ΔG
60は、上記点P
31から点P
32に至るまでに、2平面P
1 ,P
2 の間隔寸法Hp を減少させるための移動量であり、かなり大きいことが分かる。さらに、その移動量ΔG
60中に、回転弾性変形のために大きな反力ΔF
60を必要としている。
【0043】
セット高さG(間隙寸法Hp )が点P
32の4点接触開始点から、
図14に示した最終締付圧縮状態(最終セット状態)の点P
33までは、急激な反力Fの増加が見られる(
図11参照)。
即ち、
図11に一点鎖線で示した従来例のグラフ線は、点P
32から点P
33まで、急な勾配をもって、反力(圧縮荷重)Fが増加する。
【0044】
これに対して、
図11と
図12に於て、破線で示した本発明の実施例1では、以下の通りである。即ち、点P
36は、第1平面P
1 と第2平面P
2 に対して、第1主凸部1と第2主凸部2(
図2参照)が軽く接触した圧縮開始点を示す。
点P
37は、4点接触開始点を示す。つまり、
図2から僅かに弾性回転変形して、円弧状頂部6,6が平面P
1 ,P
2 に軽く接触した状態である。
【0045】
ΔGaは、上記点P
36から点P
37に至るまでに、2平面P
1 ,P
2 の間隔寸法Hp を減少させるための移動量であり、従来例の対応する前記移動量ΔG
60よりも十分小さいことが分かる。さらに、実施例1の移動量ΔGa中に、回転弾性変形のために、必要な反力(圧縮荷重)ΔFaは、従来例の前記反力(圧縮荷重)ΔF
60よりも著しく小さい。なお、
図12に於て、ΔFgは、両者の反力差を示す。
即ち、本発明の実施例1に於ては、点P
36から点P
37に至るまでのセット高さ移動量ΔGa、及び、そのために要する圧縮荷重(反力)ΔFaが、従来例よりも、著しく小さいが故に、第1主凸部1・第2主凸部2が第1平面P
1 ・第2平面P
2 に対して擦れ傷を発生させる虞れが、従来例よりも、著しく低減できる利点がある。
【0046】
さらに、
図11(
図12)について説明すれば、実施例1の破線グラフ線に於て、4点接触開始点P
37から、
図4に示した最終締付圧縮状態(最終セット状態)の点P
38までは、従来例の一点鎖線に比べて、極めて緩やかに反力Fが増加する。
即ち、破線で示した本発明の実施例1のグラフ線は、点P
37から点P
38まで、緩やかな勾配をもって、反力Fがゆるりと増加する。
【0047】
従って、本発明の実施例によれば、シール性を発現した4点接触開始点P
37から以降の圧縮に対し、反力(締付力)Fの増加が緩やかであるため(増加の割合が少ないため)、第1・第2平面P
1 ,P
2 ───つまり、フランジ面等───に傷が付くことを防止できる。さらには、締付けに要するボルトへの負担も低減でき、これに伴って、ボルトの径を小さくしたり、ボルトの本数を削減できて、装置の小型化とコストダウンを図り得る。さらに、2平面P
1 ,P
2 間の間隔寸法Hp が加工寸法誤差や温度・圧力等の使用条件等によってばらつきを生じることも実際の装置(機器)ではよくあり得る。しかしながら、
図11に示した破線のグラフ線では、セット高さGが所定値よりも大小変化したとしても、反力Fがほとんど増減しないことを示し、密封性能等は安定して良好に維持できる。
【0048】
次に、
図6~
図9に示す本発明の実施例2について、
図11と
図12に於て実線(のグラフ線)をもって、セット高さG(mm)に対する圧縮荷重(反力)Fの変化等を以下説明する。
図11と、その要部を拡大して示した
図12に於て、一点鎖線のグラフ線は、従来例(
図13,
図14参照)として、既に説明した通りである。
【0049】
これに対し、本発明の実施例2の金属シールSは、弾性回転変形することなく、
図7から
図9に示したように圧縮変形する。従って、
図11と
図12に於て、実施例1及び従来例における高さの変化(移動量)ΔGa,ΔG
60が、存在しない(出現しない)。
点P
40は、従って、4点接触開始点兼圧縮開始点と呼ぶことができる。
その後は、
図11に示すように、実施例1と略同一の緩やかな勾配を描きつつ最終セット状態の点P
41に至る。実施例2のこの点P
41と、実施例1の点P
38とは、略一致する(反力Fが略同じ値となる)。
【0050】
図11と
図12で明らかなように、従来例における大きな反力ΔF
60、及び、大きなセット高さ移動量ΔG
60を示す、圧縮開始点P
31から4点接触開始点P
32までの「作動」が、本発明の実施例2では、全く省略される。故に、実施例2では、第1平面P
1 ・第2平面P
2 に対して、擦れ傷を発生せずに済む。従って、密封性能は安定して優れている。
しかも、本発明の実施例2では、
図11に於て、4点接触開始兼圧縮開始点P
40から最終セット状態の点P
41に至る実線グラフ線は、従来例の一点鎖線に比較して、極めて緩やかに反力Fが増加していることを示している。
【0051】
従って、本発明の実施例2によれば、シール性を発現した点P
40から以降の圧縮に対し、反力(締付力)Fの増加が緩やかであるため(増加の割合が少ないため)、第1・第2平面P
1 ,P
2 ───つまり、フランジ面等───に傷が付くことを防止できる。さらには、締付けに要するボルトへの負担も低減でき、これに伴って、ボルトの径を小さくしたり、ボルトの本数を削減できて、装置の小型化とコストダウンを図り得る。さらに、2平面P
1 ,P
2 間の間隔寸法Hp が加工寸法誤差や温度・圧力等の使用条件等によってばらつきを生じることも実際の装置(機器)ではよくあり得る。しかしながら、
図11に示した実線のグラフ線では、セット高さGが所定値よりも大小変化したとしても、反力Fがほとんど増減しないことを示し、密封性能等は安定して良好に維持できる。
【0052】
ところで、前述の数式2,数式3,数式9に示したように、実施例1(
図1,
図2)の曲率半径R
1 ,R
2 、及び、実施例2(
図6,
図7)の曲率半径R
11には、望ましい上限と下限が存在している。
図10は、実施例2における曲率半径R
11を変化させた場合に、セット高さGに対して、反力Fが如何に変化するかを、(FEM解析によって)求めたグラフ図である。なお、H
0 は金属シールSの高さを示す。
実施例1(
図1,
図2)における、前述の数式2,数式3をもって示された曲率半径R
1 ,R
2 の上限・下限とした場合の圧縮荷重(反力)の変化に関しても、
図10に示した実施例2のグラフ線が参考となる。
即ち、
図10について説明すれば、R
11/H
0 =0.125の場合が、
図11の実線(実施例2)及び破線(実施例1)に、概略一致していることが分かる。
【0053】
そして、R11/H0 =0.05の場合には、勾配が緩やかとなっている。また、R11/H0 =0.25の場合は、勾配が急に変化している。しかしながら、いずれのグラフ線も、実用上密封性についても、フランジ面への接触圧力についても、適切な範囲内にある。
【0054】
本発明は、以上詳述したように、相互に平行な第1平面P1 と第2平面P2 の間に介装される全体が環状であって、横断面形状が長方形の中間基部3と、上記第1平面P1 に当接する内径寄りの第1主凸部1と、外径寄りの第1副凸部11と、上記第2平面P2 に当接する外径寄りの第2主凸部2と、内径寄りの第2副凸部12とを、備え、上記第1主凸部1の内周辺部1Aと、上記中間基部3の内周短辺31と、上記第2副凸部12の内周辺部12Aとは、横断面において一本の共通直線L10をもって連続し、上記第2主凸部2の外周辺部2Aと、上記中間基部3の外周短辺32と、上記第1副凸部11の外周辺部11Aとは、横断面において一本の共通直線L20をもって連続し、さらに、上記第1主凸部1と第1副凸部11と第2主凸部2と第2副凸部12は、先端に円弧状頂部5,6を有する構成であるので、内周面及び外周面は、凸凹の無い円周面となっているので、容易に工作機械にてチャッキング可能であり、輪切り素材から切削又は研削によって、迅速かつ容易に加工を行うことができる。しかも、セット高さGに対して反力Fの増加が、緩やかであり、これによって、第1・第2平面P1 ,P2 によって形成されるセット高さGに差が生じても、反力Fは略同じ値に維持され、優れた密封性を維持できる。また、第1・第2平面P1 ,P2 に対して過大な面圧力を与えずに済み、フランジ面等の傷付きを防止できる。さらに、締付けに要するボルトへの負担も低減でき、ボルトの径を小さくしたり、ボルトの本数を削減できて、装置の小型化とコストダウンを図り得る。
【0055】
また、上記第1主凸部1・第2主凸部2の各底辺1B,2Bの寸法をW
1 とすると共に、上記中間基部3の長辺3Aの寸法をW
0 とすれば、0.20・W
0 ≦W
1 ≦0.45・W
0 の関係が成立するので、
図11に示すように、セットの高さGに対する接触面圧(反力)Fの勾配を緩やかとすることが可能となって、第1・第2平面P
1 ,P
2 の相互接近による荷重増加を低減できる。
【0056】
また、上記第1主凸部1・第2主凸部2の先端の上記円弧状頂部5の横断面における曲率半径をR1 とすると共に、金属シール全体の高さ寸法をH0 とすれば、0.05・H0 ≦R1 ≦0.25・H0 の関係が成立するので、緩やかな勾配となり、第1平面P1 と第2平面P2 の相互接近による荷重増加を低減できる。これによって平面P1 ,P2 への傷付きを防止し、高い密封性能を発揮できる。
【0057】
また、上記第1副凸部11・第2副凸部12の先端の上記円弧状頂部6の横断面における曲率半径をR2 とすると共に、金属シール全体の高さ寸法をH0 とすれば、0.05・H0 ≦R2 ≦0.125・H0 の関係が成立するので、緩やかな勾配となり、第1平面P1 と第2平面P2 の相互接近による荷重増加を低減し、十分な密封性能を発揮しつつ、平面P1 ,P2 への傷付きを防止できる。
【0058】
また、上記第1主凸部1・第2主凸部2の先端の上記円弧状頂部5の横断面における内接円の中心点O
1 と、各々近い方の上記共通直線L
10,L
20との距離をX
1 ,X
2 とすると共に、金属シール全体の高さ寸法をH
0 とすれば、0≦X
1 ≦0.25・H
0 及び0≦X
2 ≦0.125・H
0 の関係が成立するので、
図2の状態から、4点接触を経て、
図4に示す最終セット状態にまで、第1主凸部1・第2主凸部2の円弧状頂部5が平面P
1 ,P
2 に対して円滑に回転する(
図5の矢印M
1 参照)。
【0059】
また、上記第1主凸部1・第2主凸部2の外周側・内周側の稜線の成す角度をθ
1 とすると共に、上記第1副凸部11・第2副凸部12の外周側・内周側の稜線の成す角度をθ
2 とすれば、25°≦θ
1 ≦45°及び25°≦θ
2 ≦45°の関係が成立するので、第1主凸部1と第2主凸部2の弾発力及び剛性が適切に設定できて、
図11に於て、破線にて示した緩やかな勾配特性が得られる。
【0060】
また、相互に平行な第1平面P
1 と第2平面P
2 の間に介装される全体が環状であって、横断面形状が長方形の中間基部3と、上記第1平面P
1 に当接する内径寄りの第1内凸部15と、外径寄りの第1外凸部16と、上記第2平面P
2 に当接する外径寄りの第2外凸部17と、内径寄りの第2内凸部18とを、備え、上記第1内凸部15の内周辺部15Aと、上記中間基部3の内周短辺31と、上記第2内凸部18の内周辺部18Aとは、横断面において一本の共通直線L
10をもって連続し、上記第2外凸部17の外周辺部17Aと、上記中間基部3の外周短辺32と、上記第1外凸部16の外周辺部16Aとは、横断面において一本の共通直線L
20をもって連続し、さらに、上記第1内凸部15と第1外凸部16と第2外凸部17と第2内凸部18は、先端に円弧状頂部5を有すると共に同一高さとした構成であるので、(弾性回転変形せずに)直ちに圧縮変形を開始する(
図11と
図12の点P
40参照)こととなる。従って、
図12にて既に述べたように、従来例の大きなセット高さ移動量ΔG
60、及び、大きな反力F
60に伴って、フランジ等の平面P
1 ,P
2 に発生していた擦れ傷を、完全に防止できる。しかも、
図11に示したように、
図13の従来例に比べて、セット高さGに対する反力Fを示すグラフ線(実線)は、約半分の勾配をもって、緩やかであるので、第1・第2平面P
1 ,P
2 ───つまり、フランジ面等───に傷が付くことを防止できる。さらには、締付けに要するボルトへの負担も低減でき、これに伴って、ボルトの径を小さくしたり、ボルトの本数を削減できて、装置の小型化とコストダウンを図り得る。さらに、2平面P
1 ,P
2 間の間隔寸法Hp が加工寸法誤差や温度・圧力等の使用条件等によってばらつきを生じることも実際の装置(機器)ではよくあり得る。しかしながら、
図11に示した実線のグラフ線では、セット高さGが所定値よりも大小変化したとしても、反力Fがほとんど増減しないことを示し、密封性能等は安定して良好に維持できる。
さらに、(
図7にて明らかなように)内径と外径が直線L
10,L
20であるため、工作機械にてチャッキング可能であり、輪切りしたリング状素材から、切削又は研削によって、迅速かつ容易に加工を行うことができる利点もある。
【0061】
また、上記第1内凸部15・第1外凸部16・第2外凸部17・第2内凸部18の全ての各底辺20の寸法をW
1 とすると共に、上記中間基部3の長辺3Aの寸法をW
0 とすれば、0.20・W
0 ≦W
1 ≦0.45・W
0 の関係が成立するので、
図11に示す如く、セット高さGに対する反力Fの勾配を緩やかにできて、第1平面P
1 と第2平面P
2 の相互接近による荷重増加を低減できる。
【0062】
また、上記第1内凸部15・第1外凸部16・第2内凸部18・第2外凸部17の先端の上記円弧状頂部5の横断面における曲率半径をR
11とすると共に、金属シール全体の高さ寸法をH
0 とすれば、0.05・H
0 ≦R
11≦0.25・H
0 の関係が成立するので、
図10に示すような緩やかな勾配となり、第1平面P
1 と第2平面P
2 の相互接近による荷重増加を低減し、十分な密封性能を発揮し、かつ、平面P
1 ,P
2 への傷付きを防止できる。
【0063】
また、上記第1内凸部15・第2内凸部18・第1外凸部16・第2外凸部17の先端の上記円弧状頂部5の横断面における内接円の中心点O
1 と、各々近い方の上記共通直線L
10,L
20との距離をX
11とすると共に、金属シール全体の高さ寸法をH
0 とすれば、0≦X
11≦0.25・H
0 の関係が成立するので、初めて2平面P
1 ,P
2 に接触して(
図11,
図12の点P
40参照)、その後、
図9に示す最終セット状態に至るまで、円弧状頂部5が平面P
1 ,P
2 に対してラジアル内方向とラジアル外方向に開脚状にスムーズに変形できる。
【0064】
また、上記第1内凸部15・第2内凸部18・第1外凸部16・第2外凸部17の外周側・内周側の稜線の成す角度をθ
11とすれば、25°≦θ
11≦45°の関係が成立するので、4個の凸部15,16,17,18の各々の(平面P
1 ,P
2 に対する)弾発力及び剛性が適切に設定できて、
図11に於て、実線にて示した緩やかな勾配特性が得られる。
【符号の説明】
【0065】
1 第1主凸部
1A 内周辺部
1B 底辺
2 第2主凸部
2A 外周辺部
2B 底辺
3 中間基部
3A 長辺
5 円弧状頂部
6 円弧状頂部
11 第1副凸部
11A 外周辺部
12 第2副凸部
12A 内周辺部
15 第1内凸部
15A 内周辺部
16 第1外凸部
16A 外周辺部
17 第2外凸部
17A 外周辺部
18 第2内凸部
18A 内周辺部
20 底辺
31 内周短辺
32 外周短辺
H0 高さ寸法
L10 共通直線
L20 共通直線
P1 第1平面
P2 第2平面
R1 曲率半径
R2 曲率半径
R11 曲率半径
W0 長辺の寸法
W1 底辺の寸法
X1 距離
X2 距離
X11 距離
θ1 角度
θ2 角度
θ11 角度