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<図1>
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】内視鏡
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/005 20060101AFI20221213BHJP
   A61B 1/313 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
A61B1/005 511
A61B1/005 512
A61B1/313 510
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020516322
(86)(22)【出願日】2019-04-19
(86)【国際出願番号】 JP2019016907
(87)【国際公開番号】W WO2019208454
(87)【国際公開日】2019-10-31
【審査請求日】2021-12-23
(31)【優先権主張番号】P 2018084435
(32)【優先日】2018-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】320008672
【氏名又は名称】i-PRO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】畑瀬 雄一
(72)【発明者】
【氏名】原口 直之
【審査官】森口 正治
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-181530(JP,A)
【文献】実公昭48-10700(JP,Y1)
【文献】特開昭63-21065(JP,A)
【文献】特開2012-200353(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00-1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズおよび撮像素子を有する撮像ユニットと、
前記撮像ユニットから先端側と反対側の基端側に延出し、前記撮像素子に導通接続されたケーブルを内方に挿通する樹脂製チューブと、
先端が前記撮像素子より外方に配置され、前記樹脂製チューブに挿通されて延在し、可撓性および曲げ剛性を有する弾性ワイヤと、を備える、
内視鏡。
【請求項2】
前記撮像ユニットを収容する先端ホルダ、をさらに備え、
前記樹脂製チューブおよび前記弾性ワイヤは、それぞれ前記先端ホルダの先端面と反対側の基端側に延出して設けられる、
請求項1に記載の内視鏡。
【請求項3】
前記先端ホルダが前記撮像ユニットを内方に収容する金属製の有底筒部を有し、
前記弾性ワイヤの先端は、前記有底筒部に導通接続される、
請求項2に記載の内視鏡。
【請求項4】
前記樹脂製チューブは、前記先端ホルダまで延在し、
前記先端ホルダの前記樹脂製チューブに接着材が充填され、
前記撮像ユニットおよび前記弾性ワイヤの先端は、前記接着材に埋入固定されている、
請求項2に記載の内視鏡。
【請求項5】
前記弾性ワイヤの先端は、前記撮像素子よりも前記先端面に近接して延出している、
請求項3に記載の内視鏡。
【請求項6】
前記弾性ワイヤの柔軟性は、前記弾性ワイヤの基端側より前記弾性ワイヤの先端側の方が高柔軟性である、
請求項1に記載の内視鏡。
【請求項7】
前記弾性ワイヤは、形状記憶合金を用いて形成される、
請求項1~6のうちいずれか一項に記載の内視鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、内視鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内視鏡の先端側の挿入部は、例えば屈曲した体腔内などに挿通させることが可能なように可撓性を有する。しかし、挿入部に可撓性を持たせたことによって、挿入部の手元側(言い換えると、基端側)の操作が挿入部の先端側まで適切に伝達されず、挿入部の先端側の方向性が定まらずに不要に曲がり、目的部位までスムーズに挿通させることが難しくなるという問題がある。そのため、内視鏡は、屈曲可能な可撓性を有する一方で、押動されるのに伴って、挿入部の先端側の不要な曲がり(いわゆる、座屈)を抑止するための十分な曲げ剛性、即ち、押込み性(プッシャビリティ)を有する必要がある。
【0003】
そこで、例えば特許文献1に開示される内視鏡は、少なくとも1つの内腔を有し、患者の身体通路内に挿入されるように構成される可撓性伸長部材を備える。可撓性伸長部材は、近位部分と、遠位部分と、近位部分と遠位部分との間に配置される中央部分とを含む。遠位部分は、略線形構成と湾曲構成との間で移動可能である補強部材を備える。この補強部材は、可撓性伸長部材の少なくとも一部の内腔内に配置されるように外筒構成を有する。補強部材は、可撓性伸長部材に沿って、選択された場所に移動可能であって、可撓性伸長部材の選択された場所の可撓性を修正する。また、補強部材は、第1の部分と、第2の部分とを含む。第1の部分は、第1の靭性を有する。第2の部分は、第1の靭性と異なる第2の靭性を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】日本国特許第5657014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の内視鏡は、可撓性伸長部材の長さに沿って、補強部材を、選択された場所に移動し、可撓性伸長部材の選択された部分または区分の可撓性を修正することができる(例えば、強化またはより剛性にする)。しかし、管状の可撓性伸長部材の内方に、さらに管状の補強部材を同軸状に挿通するため、細径化には適さない。即ち、管状の可撓性伸長部材の内方に管状の補強部材を挿通すれば、その分、可撓性伸長部材の内方空間が小さくなり、撮像ユニットなどの配置スペースを確保できない。逆に、管状の補強部材の内方空間に、撮像ユニットなどの収容スペースを確保すれば、可撓性伸長部材の外径が大径化してしまう。
【0006】
本開示は、上述した従来の事情に鑑みて案出され、挿入部の先端側の座屈を抑止するためのプッシャビリティと挿入部の先端側の細径化とを両立させることができる内視鏡を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、レンズおよび撮像素子を有する撮像ユニットと、前記撮像ユニットから先端側と反対側の基端側に延出し、前記撮像素子に導通接続されたケーブルを内方に挿通する樹脂製チューブと、先端が前記撮像素子より外方に配置され、前記樹脂製チューブに挿通されて延在し、可撓性および曲げ剛性を有する弾性ワイヤと、を備える、内視鏡を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係る、内視鏡において、プッシャビリティおよび細径化を両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1に係る内視鏡を用いた内視鏡システムの一例を示す全体構成図
図2】実施の形態1に係る内視鏡の要部を概略的に表した模式図
図3】実施の形態1に係る内視鏡の先端部の斜視図
図4図3に示す内視鏡の正面図
図5図3に示す内視鏡の透視図
図6図5に示す内視鏡の側面図
図7図5に示す内視鏡を斜め後方より見た斜視図
図8図5に示す内視鏡の側断面図
図9図8のA-A断面図
図10】有底筒部と弾性ワイヤとの接合部を表した先端部の透視図
図11】弾性ワイヤが先細となった変形例の内視鏡の一部を透視した側面図
図12】ライトガイドに弾性ワイヤが設けられた変形例における内視鏡の透視図
図13】実施の形態2に係る内視鏡の要部を概略的に表した模式図
図14】実施の形態2に係る弾性ワイヤが先細となった変形例の内視鏡の要部を概略的に表した模式図
図15】実施の形態2に係る内視鏡の一部を透視した側面図
図16図15に示す内視鏡の側断面図
図17図16に示す内視鏡の正面図
図18】弾性ワイヤの先端が埋入される接着材を透視した内視鏡の側断面図
図19図18のB-B断面図
図20】実施の形態2に係る内視鏡における作用説明図
図21】実施の形態3に係る内視鏡の正面図
図22図21に示した内視鏡の先端部の平面図
図23図22の側面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、適宜図面を参照しながら、本開示に係る内視鏡を具体的に開示した各実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になることを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるものであり、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されていない。
【0011】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る内視鏡11を用いた内視鏡システム13の一例を示す全体構成図である。図1では、内視鏡11およびビデオプロセッサ15を含む内視鏡システム13の全体構成を斜視図にて示している。なお、各実施の形態の説明に用いる方向については、図1中の方向を基準とし、その他の図中に方向が記載されている場合はその方向に従う。ここで、「上」、「下」は、水平面に置かれたビデオプロセッサ15の上と下にそれぞれ対応し、「前(先)」、「後(背)」は、内視鏡11の挿入部17の先端側、プラグ19の基端側にそれぞれ対応する。
【0012】
図1に示すように、内視鏡システム13は、例えば医療用の軟性鏡である内視鏡11と、被検対象物の一例としての観察対象物(例えば人体の血管)の内部を撮影して得られた静止画又は動画に対して周知の画像処理等を行うビデオプロセッサ15と含む構成である。内視鏡11は、略前後方向に延在し、観察対象物の内部に挿入される挿入部17と、挿入部17の後部が接続されるプラグ19とを備える。
【0013】
ビデオプロセッサ15は、前壁21に開口するソケット23を有している。ソケット23には、内視鏡11のプラグ19の後部が挿入される。これにより、内視鏡11は、ビデオプロセッサ15との間で電力および各種信号(映像信号、制御信号など)の送受が可能となる。
【0014】
挿入部17は、プラグ19に後端が接続された可撓性の軟性部25と、軟性部25の先端に連なる先端部27とを有している。軟性部25は、各種の内視鏡検査もしくは内視鏡手術等の方式に対応する適切な長さを有し、軟性部25の外周は例えば樹脂製チューブ29により覆われている。軟性部25は、先端部27とプラグ19との間を接続する。
【0015】
上述した電力および各種信号は、軟性部25の内部に挿通されたケーブル31(図5参照)を介してプラグ19から軟性部25に伝送される。先端部27に設けられた撮像素子33により撮像された画像データは、ケーブル31を介してプラグ19からビデオプロセッサ15に伝送される。ビデオプロセッサ15は、プラグ19から伝送された画像データに対して色補正、階調補正等の周知の画像処理を施して、画像処理後の画像データを表示装置(図示略)に出力する。表示装置は、例えば液晶表示パネル等の表示デバイスを有するモニタ装置であり、内視鏡11によって撮像された被写体の画像(例えば被写体である人物の血管内の様子を示す静止画もしくは動画のデータ)を表示する。
【0016】
内視鏡11は、細径で形成されることにより、細径の体腔への挿入が可能となる。細径の体腔は、人体の血管に限定されず、例えば尿管、すい管、胆管、細気管支等が含まれる。内視鏡11は、例えば医療用途として、被検対象物(例えば血管)内の病変の観察に用いることができる。内視鏡11は、動脈硬化性プラークの同定を行う際においても有効となる。また、心臓カテーテル検査時の内視鏡11による観察にも適用可能となる。更に、内視鏡11は、血栓や動脈硬化性の黄色プラークの検出にも有効となる。なお、動脈硬化病変では、色調(白色、淡黄色、黄色)や、表面(平滑、不整)が観察される。血栓では、色調(赤色、白色、暗赤色、黄色、褐色、混色)が観察される。
【0017】
また、内視鏡11は、腎盂・尿管がんや、特発性腎出血の診断・治療に用いることができる。この場合、内視鏡11は、尿道から膀胱内に挿入され、更に尿管内にまで進めて、尿管と腎盂の中を観察することができる。
【0018】
また、内視鏡11は、十二指腸に開口するファーター乳頭への挿入が可能となる。胆汁は、肝臓から造られ胆管を通って、また膵液は膵臓から造られ膵管を通って十二指腸にあるファーター乳頭から排出される。内視鏡11は、胆管および膵管の開口部であるファーター乳頭から挿入し、胆管又は膵管の観察を可能とすることができる。
【0019】
更に、内視鏡11は、気管支への挿入が可能となる。内視鏡11は、背臥位となった検体(つまり、患者)の口腔又は鼻腔から挿入される。内視鏡11は、咽頭、喉頭を過ぎ、声帯を視認しつつ気管へ挿入される。気管支は分岐するたびに細くなる。例えば最大外径が2mm未満の内視鏡11によれば、亜区域気管支まで内腔の確認が可能となる。
【0020】
図2は、実施の形態1に係る内視鏡11の要部を概略的に表した模式図である。内視鏡11は、先端ホルダ35と、樹脂製チューブ29と、弾性ワイヤ37と、を主要な構成として含む。先端ホルダ35は、四角形のレンズ39および撮像素子33を有する撮像ユニット41を収容する。
【0021】
図3は、実施の形態1に係る内視鏡11の先端部27の斜視図である。先端ホルダ35は、外形が円形に形成される。先端ホルダ35では、被写体からの光(つまり、反射光)は先端面43からレンズ39を介して、撮像素子33に入射される。樹脂製チューブ29は、先端ホルダ35の先端面43と反対側から延出し、撮像素子33に導通接続されたケーブル31(図2参照)を内方に挿通する。ケーブル31は、後端がプラグ19に接続される。また、先端ホルダ35は、周囲からの不要な光(例えば、側面からの光)の入射を遮光する遮光部材としての役割を有するとともに、光ファイバ49を固定し、弾性ワイヤ37を配置するためのホルダとしての役割も有する。
【0022】
図4は、図3に示す内視鏡11の正面図である。先端面43の中央部に、四角形の対物カバーガラス45が設けられる。対物カバーガラス45は、撮像ユニット41のレンズ39の前方に配置されている。また、この先端面43には、対物カバーガラス45の平行な一対の辺に沿って、一対のライトガイド47を構成する複数本(図4に示す例では各4本)の光ファイバ49の光出射端面が2列に配置されている。
【0023】
図5は、図3に示す内視鏡11の透視図である。実施の形態1において、先端ホルダ35は、有底筒部51を有する。有底筒部51は、軸線53の延在方向一端に先端面43を有する円筒状で形成される。つまり、先端面43は、有底筒部51の底面(端面)の一部を構成する。有底筒部51は、後部に接続される装着管55を有する。装着管55は、有底筒部51の後部内周に、溶接もしくはろう付けにより固定され、有底筒部51の後端から導出される。有底筒部51および装着管55は、例えばステンレス鋼により形成され、機械加工等の形成処理によって一体に接合される。装着管55の外周には、有底筒部51と同一外径の樹脂製チューブ29が固定される。
【0024】
図6は、図5に示す内視鏡11の側面図である。内視鏡11は、弾性ワイヤ37の先端が、有底筒部51に導通接続される。弾性ワイヤ37は、樹脂製チューブ29の内方に1本が挿通される。弾性ワイヤ37は、ライトガイド47を挟んで上方のケーブル31と反対側の下方に配置される。なお、弾性ワイヤ37の挿通位置は、これには限定されない。後述するように、弾性ワイヤ37は、撮像素子33の外方であれば、いずれのスペースに配置されてもよい。
【0025】
図7は、図5に示す内視鏡11を斜め後方より見た斜視図である。弾性ワイヤ37は、樹脂製チューブ29に挿通されて、先端ホルダ35と反対側に延在する。弾性ワイヤ37は、内視鏡11の手元側まで延在する。好ましくは、弾性ワイヤ37の後端は、樹脂製チューブ29の内方を通りプラグ19に固定される。弾性ワイヤ37は、可撓性を有するとともに、所定の曲げ剛性を有する。
【0026】
ここで、弾性ワイヤ37は、圧縮を受ける柱として例えることができる。圧縮を受ける柱は、短柱と、長柱とに分けて考えることができる。短柱は、真っ直ぐな柱の長さが断面寸法に比べて短い。短柱は、軸圧縮荷重により真っ直ぐなまま縮み、圧縮応力が材料の圧縮強度を超えると破損する。一方、長柱は、柱の長さが断面寸法に比べて非常に長い。長柱は、軸圧縮荷重がある大きさになると、いままで真っ直ぐなまま縮んでいたものが急に側方へ大きく撓みはじめる。この現象を座屈という。その荷重を座屈荷重と称す。座屈荷重は、材料の強さでなく、柱の曲げ剛性(Flexural rigidity)に関する値となる。
【0027】
曲げ剛性は、柱の曲げ変形のしにくさを示す指標で、断面二次モーメントIと、その材料のヤング係数Eとの積とで表される。断面二次モーメントIは、例えば直径dの円断面ではI=(π/64)dとなる。
【0028】
柱の座屈は、柱の長さLと、端末の条件係数nと、曲げ剛性EIと、により決まる。座屈応力が比例限度以下である長柱では、次のオイラーの公式(数式1)によって座屈荷重Pkが求まる。
【0029】
(数1)
Pk=nπEI/L・・・(1)
但し、(数式1)において、nは端末の条件による係数で、一端固定、他端自由端ではn=0.25である。
【0030】
また、曲げ剛性は、(数式1)から次の(数式2)を導くことができる。
【0031】
(数2)
EI=PkL/nπ・・・(2)
【0032】
内視鏡11は、手元側の操作力による軸力が先端ホルダ35へ伝達できる曲げ剛性EIの弾性ワイヤ37を構成部材として備えている。
【0033】
弾性ワイヤ37の材質としては、例えば形状記憶合金(例えばNi-Ti:ニッケルチタン)を使用することができる。この他、弾性ワイヤ37には、ステンレス鋼線が用いられてもよい。また、弾性ワイヤ37の外径は、例えば0.1~0.4mmとすることができる。
【0034】
図8は、図5に示す内視鏡11の側断面図である。有底筒部51は、先端面43の中央部に、鏡筒57が固定される。鏡筒57は、四角形の対物カバーガラス45を包囲する角筒状に形成される。鏡筒57の先端には、先端面43に表出する対物カバーガラス45が固定される。対物カバーガラス45の背面には、レンズ39が固定される。レンズ39の背面には、素子カバーガラス59が固定される。
【0035】
素子カバーガラス59の背面には、四角形の撮像素子33が固定される。これら対物カバーガラス45、レンズ39、素子カバーガラス59、および撮像素子33は、撮像ユニット41を構成する。撮像ユニット41は、撮像素子33の背面に、基板が垂直に接続される。
【0036】
基板は、同一平面上に線状の複数(例えば、実施の形態1では4本)の導体が平行に並び、これらが絶縁被覆された板状に成形される。基板は、導体の延在方向の一端部および他端部の辺が、撮像素子33の1辺より短い四角形で形成される。基板は、一端部および他端部における導体が、板面表裏の少なくとも一方で露出する。
【0037】
基板は、例えば可撓性を有する。この基板としては、可撓性を有する絶縁基板に導体をパターン印刷したFPC(フレキシブル・プリント・配線板)等を用いることができる。
【0038】
また、基板は、導体が絶縁被覆されるものの他、絶縁基板に導体が印刷されるものであってもよい。この基板としては、可撓性を有するFFC(フレキシブル・フラット・ケーブル)や、絶縁基板に導体をパターン印刷した積層基板等を用いることができる。本実施の形態では、基板として、可撓性を有するFPCであるフレキシブル配線基板61が用いられている。
【0039】
フレキシブル配線基板61には、導体と導通する電装部品(図示略)が実装されてもよい。電装部品としては、例えばノイズ低減などに効果があるバイパスコンデンサが挙げられる。フレキシブル配線基板61には、電装部品を実装するためのランドが形成される。ランドは、フレキシブル配線基板61の導体に接続されている。
【0040】
フレキシブル配線基板61の他端部には、露出した導体に、ケーブル31の複数(例えば4本)の心線63のそれぞれが接続される。ケーブル31は、複数の心線63が同一平面上に配置され、一括して絶縁被覆される。ケーブル31としては、例えばリボン状ケーブルを用いることができる。
【0041】
ケーブル31は、心線63がそれぞれ内部被覆に覆われる。内部被覆に覆われてそれぞれ絶縁された複数の心線63は、一括して内部被覆の外側からシールドにより覆われて帯状に形成される。
【0042】
図9は、図8のA-A断面図である。撮像素子33は、例えば1辺が1mm以下の四角形で形成される。撮像素子33は、外形が1mmの内視鏡11の場合、1辺が0.5mmほどで形成される。撮像素子33は、撮像面と反対の背面に、複数(例えば4つ)のパッド65が設けられる。それぞれのパッド65には、フレキシブル配線基板61の各導体がろう付けもしくはレーザ溶接などにより導通固定される。これにより、撮像素子33には、フレキシブル配線基板61が垂直に接続される。フレキシブル配線基板61の後方には、ケーブル31が接続される。
【0043】
図10は、有底筒部51と弾性ワイヤ37との接合部を表した先端部27の透視図である。弾性ワイヤ37は、先端が撮像素子33より外方の有底筒部51に配置される。実施の形態1において、弾性ワイヤ37の先端は、装着管55の後端面に配置される。弾性ワイヤ37の先端は、例えば接着材、ろう付けあるいは溶接により装着管55に固定することができる。なお、弾性ワイヤ37の固定部は、装着管55の後端面に限定されない。弾性ワイヤ37の固定部は、撮像素子33の外方であれば、有底筒部51のいずれの部位であってもよい。また、弾性ワイヤ37の先端は、必ずしも装着管55に固定されていなくてもよい。つまり、弾性ワイヤ37の先端は、装着管55の近傍に離間して配置されていてもよい。この場合、弾性ワイヤ37と装着管55との離間距離は、手元側の操作力による軸力が先端ホルダ35へ伝達できる曲げ剛性EIを、著しく低下させない距離であればよい。
【0044】
図11は、弾性ワイヤ37が先細となった変形例の内視鏡11の一部を透視した側面図である。内視鏡11は、弾性ワイヤ37の柔軟性が先端側と基端側とで異なるように形成することができる。弾性ワイヤ37は、例えば材質を変えることにより先端側と基端側の柔軟性が異なるように形成することができる。また、弾性ワイヤ37は、外径を変えることにより先端側と基端側の柔軟性が異なるように形成することができる。
【0045】
実施の形態1において、弾性ワイヤ37は、外径を変えることにより先端側と基端側の柔軟性が異なるように形成されている。即ち、弾性ワイヤ37は、図11に示すように、先端側に向かって先細のテーパー形状とすることにより、基端側より先端側の方が高柔軟性で形成されている。
【0046】
次に、上記した実施の形態1に係る内視鏡11の構成の作用を説明する。
【0047】
実施の形態1に係る内視鏡11は、レンズ39および撮像素子33を有する撮像ユニット41を有する。内視鏡11は、撮像ユニット41から先端側と反対側の基端側に延出し、撮像素子33に導通接続されたケーブル31を内方に挿通する樹脂製チューブ29を有する。内視鏡11は、先端が撮像素子33より外方に配置され、樹脂製チューブ29に挿通されて延在し、可撓性および曲げ剛性を有する弾性ワイヤ37を有する。
【0048】
より具体的には、実施の形態1に係る内視鏡11は、四角形のレンズ39および撮像素子33を有する撮像ユニット41を収容し、先端面43から撮像素子33への撮像光を入射させる外形が円形の先端ホルダ35を有する。内視鏡11は、先端ホルダ35の先端面43と反対側から延出し、撮像素子33に導通接続されたケーブル31を内方に挿通する樹脂製チューブ29を有する。内視鏡11は、先端が撮像素子33より外方の先端ホルダ35に配置され、樹脂製チューブ29に挿通されて先端ホルダ35と反対側に延在し、可撓性および所定の曲げ剛性を有する弾性ワイヤ37を有する。
【0049】
また、内視鏡11は、撮像ユニット41を収容する先端ホルダ35をさらに有する。樹脂製チューブ29および弾性ワイヤ37は、それぞれ先端ホルダ35の先端面43と反対側の基端側に延出して設けられる。
【0050】
実施の形態1に係る内視鏡11では、先端ホルダ35および樹脂製チューブ29の外径が、例えば1~3mm以下で形成される。また、先端ホルダ35から手元側の例えばプラグ19までの全長は、例えば1.5mほどで形成される。ところで、内視鏡11は、外径が3mmほどであれば、先端ホルダ35より後方の樹脂製チューブ29や電源および信号を伝送するケーブル31などの断面積を比較的大きく確保しやすい。そのため、外径3mmほどの内視鏡11では、大動脈などへの押込み性(プッシャビリティ)は、所定の曲げ剛性が得られることから確保しやすい。
【0051】
一方、内視鏡11は、例えば冠動脈などへの挿入を考えた場合、外径が1.4mm以下となることが望ましい。外径が1.4mm以下の内視鏡11の場合、先端ホルダ35より後方の樹脂製チューブ29やケーブル31、これらに照明用のライトガイド47を加えても、僅かな断面積しか確保することができない。このため、外径が1.4mm以下の内視鏡11では、曲げ剛性が十分に確保できず、挿入時に曲がりやすくなる。即ち、内視鏡11は、手元側を持って挿入しても、軸力を1.5m先の先端ホルダ35まで伝達できず、良好なプッシャビリティが得られない。
【0052】
そこで、内視鏡11は、先端ホルダ35に先端を配置した弾性ワイヤ37を樹脂製チューブ29の内方に挿通して手元側まで延在させている。弾性ワイヤ37は、所定の断面積を有するとともに、弾性範囲の大きい金属などにより材質が設定される。つまり、弾性ワイヤ37は、可撓性を有しつつ、塑性変形しにくく、且つ所定の曲げ剛性を有している。
【0053】
内視鏡11は、この曲げ剛性を有する弾性ワイヤ37の先端を先端ホルダ35に配置して、手元側まで樹脂製チューブ29に挿通している。従って、内視鏡11は、手元側を持って、血管などに挿入しても所定の曲げ剛性により、押込み力が先端ホルダ35まで伝達される。その結果、内視鏡11は、外径が1mm以下の細径であっても、1.5m先の先端ホルダ35に対しても座屈を抑制した良好なプッシャビリティが得られるようになされている。
【0054】
また、内視鏡11は、弾性ワイヤ37の先端が撮像素子33の外側の先端ホルダ35に配置される。撮像素子33は、四角形で形成される。撮像素子33を収容する先端ホルダ35は、円形となる。内周円内に最大サイズで撮像素子33を収容した構造においては、背面視で、撮像素子33の正方形と内周円との間に、4つのスペース67が生まれる。このスペース67は、撮像素子33の正方形の各辺を弦とし、この弦と先端ホルダ35の円弧とに囲まれる三日月形状となる。
【0055】
内視鏡11は、この4つのスペース67のうち、任意の一つのスペース67に弾性ワイヤ37の先端が配置される。このようにして撮像素子33の外方に先端が配置された弾性ワイヤ37は、ケーブル31に沿わして配索でき、ケーブル31との干渉も回避できる。また、弾性ワイヤ37は、撮像素子33の外方で先端ホルダ35に配置することにより、押込み時に加えた軸力を、撮像素子33に作用させずに済む。これにより、押込み時の軸力による撮像素子33の破壊を防止することができる。このように、内視鏡11は、限られた円形断面内における余剰スペースを有効に利用して弾性ワイヤ37を先端ホルダ35に配置し、各部材の配置密度を高めつつ、細径化を実現している。つまり、内視鏡11は、プッシャビリティと細径化の双方を両立させている。
【0056】
内視鏡11は、先端ホルダ35が撮像ユニット41を内方に収容する金属製の有底筒部51を有し、弾性ワイヤ37の先端が、有底筒部51に導通接続されている。
【0057】
この内視鏡11では、先端ホルダ35が、撮像ユニット41を覆う金属製の有底筒部51を有する。弾性ワイヤ37は、導体からなる。有底筒部51は、弾性ワイヤ37を介してアース部に導通接続できる。これにより、静電気対策としての専用のGND線などの導通部材を用いることなく、有底筒部51の内方に収容した撮像ユニット41を軸線周りの360°の方向から飛来する静電気に対して確実にシールドすることができる。その結果、内視鏡11は、細径化を実現しながら、撮像ユニット41の動作信頼性を高めることができる。
【0058】
内視鏡11は、内視鏡11であって、弾性ワイヤ37の柔軟性が弾性ワイヤ37の基端側より弾性ワイヤ37の先端側の方が高柔軟性である。
【0059】
この内視鏡11では、弾性ワイヤ37の基端側に比べ、弾性ワイヤ37の先端側が高柔軟性を有して形成される。内視鏡11は、弾性ワイヤ37の先端側に高柔軟性を付与する構成の一例として、弾性ワイヤ37の先端側を同一材質で先細のテーパー状に形成できる。また、内視鏡11は、弾性ワイヤ37の先端側に高柔軟性を付与する構成の他の例として、弾性ワイヤ37の先端側に向かって徐々に柔軟性が高くなる異なる材質を連結して形成することができる。このような構成を有する内視鏡11では、プッシャビリティを確保しながら、屈曲した体腔に挿入する際の弾性ワイヤ37の先端側における屈曲追従性を高め、屈曲部挿入性を良好にすることができる。
【0060】
内視鏡11は、弾性ワイヤ37が形状記憶合金を用いて形成される。
【0061】
この内視鏡11では、体腔などへの挿入により弾性ワイヤ37に変形が生じた場合であっても、塑性変形することなく、元の形状に戻ることができる。この場合、元の形状は、直線形状または屈曲形状などの任意形状とすることができる。
【0062】
図12は、ライトガイド47に弾性ワイヤ37が設けられた変形例における内視鏡69の透視図である。変形例の内視鏡69は、一対のライトガイド47を構成する複数本(図12の例では各3本)の光ファイバ49の上段に、1本ずつ弾性ワイヤ37が通されている。つまり、内視鏡69では、左右に一対の弾性ワイヤ37が各ライトガイド47の上段に配置されている。それぞれの弾性ワイヤ37は、先端が光ファイバ49と共に接着材71に埋入固定されている。接着材71は、有底筒部51に充填される。
【0063】
この内視鏡69によれば、一対の弾性ワイヤ37を、一対のライトガイド47のそれぞれに含めて配置できるので、ライトガイド47の本数は減るものの、弾性ワイヤ37を挿通する専用のスペース67を確保する必要がなくなる。このため、より細径化が可能となる。また、撮像素子33を挟んで左右一対の弾性ワイヤ37を配置できるので、1本の弾性ワイヤ37を設ける場合に比べ、飛来する静電気からより確実に撮像素子33を保護できる。
【0064】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2に係る内視鏡73の例を説明する。
【0065】
図13は、実施の形態2に係る内視鏡73の要部を概略的に表した模式図である。なお、実施の形態2において実施の形態1で示した構成と同等の構成には同一の符号を付し重複する説明は省略する。
【0066】
実施の形態2に係る内視鏡73は、樹脂製チューブ29が先端ホルダ35の先端面43まで延在している。この内視鏡73では、撮像ユニット41および弾性ワイヤ37の先端が、先端ホルダ35に埋入されて配置される。
【0067】
図14は、実施の形態2において弾性ワイヤ37が先細となった変形例の内視鏡73の要部を概略的に表した模式図である。また、内視鏡73は、弾性ワイヤ37の柔軟性が弾性ワイヤ37の先端側と弾性ワイヤ37の基端側とで異なるように形成される。弾性ワイヤ37は、実施の形態1と同様に、弾性ワイヤ37の先端側に向かって先細のテーパー形状とすることにより、弾性ワイヤ37の基端側より弾性ワイヤ37の先端側の方が高柔軟性で形成されている。
【0068】
図15は、実施の形態2に係る内視鏡73の一部を透視した側面図である。内視鏡73は、先端ホルダ35の樹脂製チューブ29の内方において、接着材71が円柱状に固化して成形される。この固化した接着材71の後端面から、ライトガイド47、弾性ワイヤ37が導出される。
【0069】
図16は、図15に示す内視鏡73の側断面図である。固化した接着材71の内方には、対物カバーガラス45、レンズ39、素子カバーガラス59が埋入される。なお、素子カバーガラス59の背面に固定される撮像素子33は、背面が接着材71から露出されていてもよい。この場合、撮像素子33の背面におけるそれぞれのパッド65には、実施の形態1と同様に、フレキシブル配線基板61の各導体が導通固定される。撮像素子33には、フレキシブル配線基板61が実施の形態1と同様に、垂直に接続される。フレキシブル配線基板61の後方には、ケーブル31が接続される。
【0070】
図17は、図16に示す内視鏡73の正面図である。内視鏡73は、先端面43において、樹脂製チューブ29が円柱状に固化した接着材71の外周を包囲している。接着材71の先端面43には、対物カバーガラス45と、この対物カバーガラス45を左右に挟んで一対のライトガイド47が配置される。
【0071】
図18は、弾性ワイヤ37の先端が埋入される接着材71を透視した内視鏡73の側断面図である。内視鏡73は、接着材71に埋入された弾性ワイヤ37の先端が、撮像素子33よりも先端面43に近接して延出している。
【0072】
図19は、図18のB-B断面図である。内視鏡73においても、弾性ワイヤ37は、撮像素子33の外方に配置される。なお、図19において、弾性ワイヤ37の外形の一部分が撮像素子33に重なるが、これは図18に示した大径部分の弾性ワイヤ37の断面を背面視しているためである。実質的には、弾性ワイヤ37は、図18に示すように、先細テーパー形状の小径先端側が撮像素子33の外方で接着材71に埋入固定されている。
【0073】
次に、上記した実施の形態2に係る内視鏡73の構成の作用を説明する。
【0074】
内視鏡73は、所定の曲げ剛性を有する弾性ワイヤ37の先端を接着材71に埋入固定して、手元側まで樹脂製チューブ29に挿通している。従って、内視鏡73は、手元側を持って、血管などに挿入しても所定の曲げ剛性により、押込み力が先端ホルダ35まで伝達される。その結果、内視鏡73は、外径が1mm以下の細径であっても、1.5m先の先端ホルダ35に対しても座屈を抑制した良好なプッシャビリティが得られるようになされている。
【0075】
内視鏡73は、樹脂製チューブ29が先端ホルダ35の先端面43まで延在し、先端ホルダ35の樹脂製チューブ29に接着材71が充填され、撮像ユニット41および弾性ワイヤ37の先端が接着材71に埋入固定されている。
【0076】
この内視鏡73では、撮像素子33を収容する樹脂製チューブ29は、円形となる。樹脂製チューブ29の内周円内に最大サイズで撮像素子33を収容した構造において、撮像素子33と樹脂製チューブ29の内周円との間には、4つのスペース67が生まれる。このスペース67は、上記と同様、撮像素子33の正方形の各辺を弦とし、この弦と樹脂製チューブ29の円弧とに囲まれる三日月形状となる。
【0077】
内視鏡73は、主にこの4つのスペース67に接着材71が充填される。弾性ワイヤ37は、任意の一つのスペース67に充填された接着材71に先端が埋入されて固定される。従って、弾性ワイヤ37は、ケーブル31に沿わして配索でき、ケーブル31との干渉を回避できる。これにより、内視鏡73は、限られた円形断面内における余剰スペースを有効に利用して細径化を図りながら、撮像ユニット41の固定のための接着材71も有効に利用して、弾性ワイヤ37を容易に固定できる。つまり、内視鏡73は、プッシャビリティと細径化の双方を両立させている。
【0078】
内視鏡73は、弾性ワイヤ37の先端が撮像素子33よりも先端面43に近接して延出している。
【0079】
図20は、実施の形態2の内視鏡73における作用説明図である。この内視鏡73では、弾性ワイヤ37の先端が撮像素子33よりも先端面43に近接して配置される。そのため、先端面43から弾性ワイヤ37の先端までの絶縁破壊電圧は、先端面43から撮像素子33までの絶縁破壊電圧よりも小さくできる。この絶縁破壊電圧の差異により先端面43に印加された静電気は、撮像素子33に流れ込むことが抑制されながら、弾性ワイヤ37の先端に放電される。すなわち、静電気の印加部と撮像素子33との間に、静電気を誘導する弾性ワイヤ37を設置することにより、静電気を弾性ワイヤ37とプラグ19を介してアース部へ確実に逃がすことが可能となり、撮像素子33を的確に保護できる。そして、この内視鏡73では、弾性ワイヤ37を撮像素子33よりも先端面側に延出させており、構造が極めて簡素となる。その結果、有底筒部51を設ける構造に比べ細径化が容易となる。
【0080】
(実施の形態3)
次に、実施の形態3に係る内視鏡75の例を説明する。
【0081】
図21は、実施の形態3に係る内視鏡の正面図である。なお、実施の形態3において実施の形態1で示した構成と同等の構成には同一の符号を付し重複する説明は省略する。
【0082】
実施の形態3に係る内視鏡75は、被検体への挿入方向先端に設けられ、撮像光を入射するレンズ39と、レンズ39の後端に設けられ、撮像光が結像される撮像素子33と、レンズ39および撮像素子33を覆う導電性部材(例えば先端ホルダ77)と、先端が撮像素子33より外方に配置され、樹脂製チューブ29に挿通されて延在し、可撓性および曲げ剛性を有する弾性ワイヤ37と、導電性部材77を接地する接地部材(SUSワイヤ79)と、を備える。
【0083】
内視鏡75は、先端ホルダ77の形状が異なる点、接地部材であるSUSワイヤ79を有する点が、実施の形態1に係る内視鏡11と異なる。
【0084】
先端ホルダ77は、左右が長軸となる断面略楕円状の扁平円柱部81の上側に、隆起部83を有する。隆起部83は、ガイドワイヤ(図示略)を通すためのガイドワイヤ孔85を備えている。ガイドワイヤ孔85は、頂部に架橋部87を残して隆起部83に穿設される。架橋部87の肉厚(つまり上下方向の厚み)は、例えば50μmに設定される。
【0085】
先端ホルダ77は、ガイドワイヤ孔85と、対物カバーガラス45および光ファイバ49を配置する観察孔89との2つの孔のみを先端面に有する。観察孔89の内方に配置される対物カバーガラス45および光ファイバ49は、観察孔89に充填された黒色樹脂91により安定的に固定される。
【0086】
先端ホルダ77は、扁平円柱部81の後端から後方へ突出する装着管55を有する。樹脂製チューブ29は、この装着管55の外周に嵌合して接続される。先端ホルダ77は、扁平円柱部81、隆起部83および装着管55が、金属により一体に形成される。この金属としては、例えばSUS(ステンレス鋼)を用いることができる。樹脂製チューブ29は、肉厚が、例えば75μmで形成される。樹脂製チューブ29は、先端ホルダ77の後端部から延出した装着管55に接続され、撮像素子33に導通接続されたケーブル31、光ファイバ49、弾性ワイヤ37およびSUSワイヤ79等を内方に挿通する。装着管55は、軸線に直交する断面形状が略楕円となる。
【0087】
図22は、図21に示した内視鏡75の先端部を透視した平面図である。挿入部17は、全長のほとんどが樹脂製チューブ29により覆われる。樹脂製チューブ29は、例えば可撓性を有する樹脂材により管状(つまり、チューブ状)に形成される。樹脂製チューブ29は、例えば強度を付与する目的で、内周側に単線、複数線、編組の抗張力線を備えることができる。抗張力線としては、ポリ-p-フェニレンテレフタルアミド繊維等のアラミド繊維、ポリアリレート繊維、ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維等のポリエステル系繊維、ナイロン繊維、タングステンの細線またはステンレス鋼の細線等一例として挙げることができる。樹脂製チューブ29は、軸線に直交する断面形状が真円の真円部93となるが、可撓性を有することから装着管55に変形して嵌合することにより、断面形状が略楕円の扁平部95となっている。
【0088】
弾性ワイヤ37は、図21に示した先端ホルダ77の正面視において、左側に配置される。弾性ワイヤ37は、先端が、装着管55の後端面に近接して配置される。弾性ワイヤ37は、装着管55の後端面に、先端面が当接あるいは若干離れて配置される。Ni-Tiからなる弾性ワイヤ37は、先端ホルダ77に当接配置されることで、異種金属のSUSからなる先端ホルダ77と固定する難度の高い溶接を省略できる。なお、弾性ワイヤ37は、装着管55に固定されていても勿論よい。弾性ワイヤ37は、先端ホルダ77の装着管55の後端面に当接配置若しくは近接配置されることにより、非固定であっても弾性ワイヤ37からの軸力が先端ホルダ77に損失なく伝達される。
【0089】
なお、実施の形態3においても、上述したように、弾性ワイヤ37は、弾性ワイヤ37の先端側と弾性ワイヤ37の基端側とで柔軟性が異なるように形成してもよい。即ち、弾性ワイヤ37は、先端側に向かって先細のテーパー形状とすることにより、基端側より先端側を高柔軟性で形成してもよい。テーパー形状部の長さは、例えば先端ホルダ77より後方へ200mm程度で設定することができる。これにより、上述したように、内視鏡75は、プッシャビリティを確保しながら、屈曲した体腔に挿入する際の弾性ワイヤ37の先端側における屈曲追従性を高め、屈曲部挿入性を良好にすることができる。
【0090】
図23は、図22の側面図である。SUSワイヤ79は、装着管55の後端側から先端ホルダ77の内方へ挿入されて、装着管55や扁平円柱部81の内面に導通固定される。SUSワイヤ79は、装着管55に挿通され、例えば先端が扁平円柱部81の後端部における内周面に導通固定される。導通固定は、例えば溶接、ろう付け等により行われる。SUSワイヤ79は、外径60μm程度の素線が7~14本撚られて形成される。先端ホルダ77とSUSワイヤ79とは、同一素材となることにより、容易かつ確実な導通固定が可能となっている。また、SUSワイヤ79は、市販品を安価に入手することができる。
【0091】
次に、上記した実施の形態3に係る内視鏡75の構成の作用を説明する。
【0092】
内視鏡75は、例えば手術時あるいは検査時において、被検体(例えば人体)の内部にガイドワイヤが挿入された後にガイドワイヤを収容するように挿入されるガイドカテーテル(図示略)の中に挿通されて使用可能である。ガイドカテーテルは、例えば被検体内の血管に挿通される。具体的な寸法例を挙げると、ガイドカテーテルは、外径が例えば1.8mm、内径が1.5mmとされる。ガイドカテーテルの中には、ガイドワイヤが通される。ガイドワイヤは、外径が例えば0.35mmとされる。内視鏡75は、ガイドワイヤとともに、ガイドカテーテルの中に通される。このため、内視鏡75は、ガイドワイヤを通すためのガイドワイヤ孔85を備えている。内視鏡75は、ガイドワイヤ孔85を備えてガイドカテーテルの中に通されるため、最大外径が、例えば1.35mm以下に設定される。
【0093】
内視鏡75は、弾性ワイヤ37を備えることにより、上述の作用効果と同様、手元側を持って、血管などに挿入しても所定の曲げ剛性により、押込み力が先端ホルダ77まで伝達される。その結果、内視鏡75は、外径が1mm以下の細径であっても、1.5m先の先端ホルダ77に対して座屈を抑制した良好なプッシャビリティが得られるようになされている。
【0094】
また、内視鏡75は、先端ホルダ77が、撮像ユニット41を覆う金属製で形成される。この先端ホルダ77には、SUSワイヤ79が導通接続される。SUSワイヤ79は、樹脂製チューブ29の内方に挿通されて、プラグ19を介してビデオプロセッサ15内のアース部に導通接続される。これにより、先端ホルダ77の内方に収容した撮像ユニット41を軸線周りの360度の方向から飛来する静電気に対して確実にシールド(つまり電磁遮蔽)することができる。その結果、内視鏡75は、細径化を実現しながら、撮像ユニット41の動作信頼性を高めることができる。
【0095】
内視鏡75は、弾性ワイヤ37とSUSワイヤ79との双方を有することにより、プッシャビリティと、良好な生産性と、動作信頼性とをともに実現させることができる。即ち、弾性ワイヤ37にNi-Tiを使用した場合、超弾性による良好なプッシャビリティは得られるが、SUSからなる先端ホルダ77との溶接による固定が困難となる。一方、弾性ワイヤ37にステンレス鋼線を使用すれば、先端ホルダ77との溶接は容易となるが、良好なプッシャビリティが得にくくなる。そこで、内視鏡75によれば、安価かつ細径なSUSワイヤ79を使用することにより、弾性ワイヤ37にNi-Tiを使用した良好なプッシャビリティが得られるとともに、SUSワイヤ79による先端ホルダ77との容易な溶接も実現させることができる。その結果、信頼性の高い内視鏡75の量産性を高めることができる。
【0096】
なお、実施の形態3において説明した先端ホルダ77は、ガイドワイヤ孔85を有するものとして説明したが、内視鏡75は、隆起部83やガイドワイヤ孔85を先端ホルダ77に有さないものであっても勿論よい。この場合、内視鏡75は、実施の形態1に示した通常の先端ホルダに対し、弾性ワイヤ37とSUSワイヤ79とを備える構成となる。
【0097】
従って、それぞれの実施の形態に係る内視鏡11、内視鏡69、内視鏡73、内視鏡75によれば、挿入部の先端側の座屈を抑止するためのプッシャビリティと挿入部の先端側の細径化とを両立させることができる。
【0098】
以上、図面を参照しながら各種の実施の形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例、修正例、置換例、付加例、削除例、均等例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した各種の実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0099】
なお、本出願は、2018年4月25日出願の日本特許出願(特願2018-084435)に基づくものであり、その内容は本出願の中に参照として援用される。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本開示は、挿入部の先端側の座屈を抑止するためのプッシャビリティと挿入部の先端側の細径化とを両立させる内視鏡として有用である。
【符号の説明】
【0101】
11 内視鏡
29 樹脂製チューブ
31 ケーブル
33 撮像素子
35 先端ホルダ
37 弾性ワイヤ
39 レンズ
41 撮像ユニット
43 先端面
51 有底筒部
53 軸線
71 接着材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23