(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】コネクタアセンブリ
(51)【国際特許分類】
A61M 16/08 20060101AFI20221213BHJP
A61M 16/06 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
A61M16/08 330
A61M16/06 A
(21)【出願番号】P 2020541863
(86)(22)【出願日】2019-02-01
(86)【国際出願番号】 AU2019050072
(87)【国際公開番号】W WO2019148243
(87)【国際公開日】2019-08-08
【審査請求日】2022-01-19
(32)【優先日】2018-02-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500046450
【氏名又は名称】レスメド・プロプライエタリー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ルーク・エマニュエル・クリンケンバーグ
【審査官】山田 裕介
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-279520(JP,A)
【文献】特開2017-108902(JP,A)
【文献】国際公開第2015/088362(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/049358(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 16/08
A61M 16/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の睡眠時に少なくとも患者の鼻孔入口を含む患者の気道への入口へ周囲空気圧力に対して陽圧にて空気流れを送達して、睡眠時呼吸障害を改善するための患者インターフェースであって、
患者の気道への入口を包囲する患者の顔領域に対してシールを形成するように構築および配置されたシール形成構造と、
前記シール形成構造を患者頭部上の治療的に有効な位置に保持するための力を提供する位置決めおよび安定化構造と、
空気回路に接続されるように適合されたコネクタアセンブリをと含み、前記コネクタアセンブリは、
前記患者インターフェースの取付領域のアパチャ中に取り外し可能かつ解放可能に固定されるように構成されたリング部材と、
前記リング部材との接続および接続解除が繰り返しできる、前記空気回路に接続されるように構成されたエルボーアセンブリとを含み、
前記エルボーアセンブリは、エルボー部材とクリップ部材とを含み、前記クリップ部材は、前記エルボー部材とは別個かつ個別の構造を持ち、かつ前記クリップ部材は、前記エルボー部材へ接続するような構造および配置構成にされ、
前記クリップ部材は、前記エルボーアセンブリを前記リング部材に解放可能に接続するように構成および配置され、前記エルボー部材は、前記エルボーアセンブリと前記リング部材は互いに接続している場合に前記リング部材とシールを形成するような構成および配置にされる、患者インターフェース。
【請求項2】
前記クリップ部材は、分離可能なスナップ接合アセンブリを前記リング部材と共に提供するような構造および配置にされる、請求項1に記載の患者インターフェース。
【請求項3】
前記エルボー部材は、90°の屈曲部を含む、請求項1または2に記載の患者インターフェース。
【請求項4】
前記エルボー部材へ設けられたスイベルコネクタをさらに含み、前記スイベルコネクタは、前記空気回路へ接続するように適合される、請求項1~3のいずれか一項に記載の患者インターフェース。
【請求項5】
前記エルボー部材は、前記クリップ部材を受容するような構成および配置にされる、請求項1~4のいずれか一項に記載の患者インターフェース。
【請求項6】
前記クリップ部材は、一対の弾性クイックリリースピンチアームと、前記ピンチアームを相互接続させる接続部とを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の患者インターフェース。
【請求項7】
前記ピンチアームはそれぞれ、キャッチ部およびボタン部を含み、各キャッチ部は、スナップ接合アセンブリに前記リング部材を提供するような構造にされたキャッチを含む、請求項6に記載の患者インターフェース。
【請求項8】
前記エルボー部材は、前記接続部を受容するように構成された上側凹状部と、各ピンチアームを受容するように構成された側部凹状部とを含む、請求項6または7に記載の患者インターフェース。
【請求項9】
前記側部凹状部はそれぞれ、前記ピンチアームそれぞれと相互作用して前記エルボー部材上における前記クリップ部材の保持および前記ピンチアームの動作を促進させるような構成および配置にされたラグを含む、請求項8に記載の患者インターフェース。
【請求項10】
前記リング部材はシール部材を含み、前記エルボー部材は管状端部を含み、前記管状端部は、前記リング部材を通じて延びて前記シール部材と係合して、加圧ガスを前記エルボーアセンブリを通じて前記患者インターフェースへ送達させるためのシールされた空気流路を提供するような構造にされる、請求項1~9のいずれか一項に記載の患者インターフェース。
【請求項11】
前記エルボー部材は、前記患者インターフェースからの排気ガスの退出を可能にする複数の通気孔を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の患者インターフェース。
【請求項12】
前記エルボー部材および前記クリップ部材は、別個に成形された部品を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の患者インターフェース。
【請求項13】
前記エルボー部材は、前記クリップ部材の材料よりも高剛性の材料を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の患者インターフェース。
【請求項14】
前記リング部材は、前記患者インターフェースの前記取付領域と密閉係合するチャンネルを形成する第1のフランジおよび第2のフランジを含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の患者インターフェース。
【請求項15】
前記リング部材は、前記エルボーアセンブリが解放可能に前記リング部材へ接続された際に前記クリップ部材と係合するような構成および配置にされたクリップフランジを含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の患者インターフェース。
【請求項16】
前記クリップフランジは、前記クリップ部材のキャッチを噛み合って受容するような構成および配置にされたクリップチャンネルを形成する、請求項15に記載の患者インターフェース。
【請求項17】
前記クリップフランジは、前記エルボーアセンブリの前記リング部材への押込式組立を促進させるために、組立方向において傾斜面を提供する、請求項15または16に記載の患者インターフェース。
【請求項18】
前記エルボーアセンブリおよび前記リング部材により、前記エルボーアセンブリが前記リング部材に対して360°自由回転することを可能にするスイベル接続が形成される、請求項1~17のいずれか一項に記載の患者インターフェース。
【請求項19】
前記位置決めおよび安定化構造は、2つの管を含む、請求項1~18のいずれか一項に記載の患者インターフェース。
【請求項20】
前記取付領域は、前記2つの管へ流体接続するような構成および配置にされる、請求項19に記載の患者インターフェース。
【請求項21】
前記クリップ部材を前記エルボー部材へ接続させるような構造および配置にされた保持用配置構成をさらに含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の患者インターフェース。
【請求項22】
前記保持用配置構成は、スナップ接合アセンブリを含む、請求項21に記載の患者インターフェース。
【請求項23】
睡眠呼吸障害の治療のためのCPAPシステムであって、
空気流れを陽圧において供給するような構造にされたCPAPデバイスと、
請求項1~22のいずれか一項に記載の患者インターフェースと、
前記空気流れを前記陽圧において前記CPAPデバイスから前記患者インターフェースへ送達させるように前記CPAPデバイスと前記患者インターフェースとの間に接続された空気回路と、を含む、CPAPシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、呼吸関連疾患のスクリーニング、診断、監視、治療、予防および改善のうち1つ以上に関する。本技術はまた、医療デバイスまたは装置と、その使用とに関する。
本特許文書の開示の一部は、著作権保護が与えられる内容を含む。著作権所有者は、何者かが本特許文書または本特許開示をファックスにより再生しても、特許庁の特許ファイルまたは記録に記載されるものであれば目的のものであれば異論は無いが、その他の目的については全ての著作権を保持する。
【0002】
1 関連出願の相互参照
本出願は、2018年2月2日に出願された米国仮出願第62/625,571号の恩恵を主張する。本明細書中、同文献それぞれの全体を参考のため援用する。
【0003】
2 技術の背景
2.1 技術の分野
本技術は、呼吸関連疾患のスクリーニング、診断、監視、治療、予防および改善のうち1つ以上に関する。本技術はまた、医療デバイスまたは装置と、その使用とに関する。
【背景技術】
【0004】
2.2 関連技術の説明
2.2.1 ヒトの呼吸器系およびその疾患
身体の呼吸器系は、ガス交換を促進させる。鼻および口は、患者の気道への入口を形成する。
【0005】
これらの気道は、一連の分岐する管を含み、これらの管は、肺の奥深くに進むほど狭く、短くかつ多数になる。肺の主要な機能はガス交換であり、空気から酸素を静脈血中へ取り入れさせ、二酸化炭素を退出させる。気管は、右および左の主気管支に分かれ、これらの主気管支はさらに分かれて、最終的に終末細気管支となる。気管支は、伝導のための気道を構成するものであり、ガス交換には関与しない。気道がさらに分割されると呼吸細気管支となり、最終的には肺胞となる。肺の肺胞領域においてガス交換が行われ、この領域を呼吸領域と呼ぶ。以下を参照されたい:「Respiratory Physiology」, by John B. West, Lippincott Williams & Wilkins, 9th edition published 2012。
【0006】
一定範囲の呼吸器疾患が存在している。特定の疾患は、特定の発症(例えば、無呼吸、呼吸低下および過呼吸)によって特徴付けられ得る。
【0007】
呼吸器疾患の例には、閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)、チェーン・ストークス呼吸(CSR)、呼吸不全、肥満過換気症候群(OHS)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、神経筋疾患(NMD)および胸壁疾患が含まれる。
【0008】
閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)は、睡眠呼吸障害(SDB)の1つの形態であり、睡眠時の上通気道の閉鎖または閉塞などの発症によって特徴付けられる。これは異常に小さい上気道と、舌の領域の筋緊張の通常の喪失、睡眠時の軟口蓋および後口咽頭壁の正常損失の組み合わせの結果である。このような状態に起因して、罹患患者の呼吸停止が典型的には30~120秒にわたり、ときには一晩に200~300回も呼吸が停止する。その結果、日中の眠気が過度になり、心血管疾患および脳損傷の原因になり得る。この症候は一般的な疾患であり、特に中年の過体重の男性に多いが、患者に自覚症状は無い。米国特許第4,944,310号(Sullivan)を参照されたい。
【0009】
チェーン・ストークス呼吸(CSR)は、別の形態の睡眠呼吸障害である。CSRは、患者の呼吸調節器の疾患であり、CSRサイクルとして知られる換気の漸増および漸減が交互に周期的に続く。CSRは、動脈血の脱酸素および再曝気の繰り返しによって特徴付けられる。反復低酸素症のため、CSRは有害であり得る。患者によっては、CCRは、重症不眠、交感神経活動の増加、および後負荷の増加の原因となる、反復性睡眠覚醒を随伴する。米国特許第6,532,959号(Berthon-Jones)を参照されたい。
【0010】
呼吸不全とは、呼吸器障害の総称であり、患者の需要を満たすための充分な酸素吸気または充分なCO2呼気を肺が行うことができていないことを指す。呼吸不全は、以下の疾患のうちいくつかまたは全てを包含し得る。
【0011】
呼吸不全(一種の呼吸不全)の患者は、運動時に異常な息切れを経験することがある。
【0012】
肥満過換気症候群(OHS)は、低換気の原因が他に明確に無い状態における、重症肥満および覚醒時慢性高炭酸ガス血症の組み合わせとして定義される。症状には、呼吸困難、起床時の頭痛と過剰な日中の眠気が含まれる。
【0013】
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、特定の共通する特性を有する下気道疾患のグループのうちのいずれも包含する。これには空気の動きに対する抵抗の増加、呼吸の呼気相の延長および肺における正常な弾性の減少が含まれる。COPDの例として、気腫および慢性気管支炎がある。COPDの原因としては、慢性喫煙(第一危険因子)、職業被ばく、空気汚染および遺伝因子がある。症状を挙げると、労作時の呼吸困難、慢性咳および痰生成がある。
【0014】
神経筋疾患(NMD)は、内在筋病理を直接介してまたは神経病理を間接的に介して筋肉機能を損なう多数の疾病および病気を包含する広範な用語である。NMD患者の中には、進行性の筋肉障害によって特徴付けられる者もあり、結果的に歩行不可能、車椅子への束縛、嚥下困難、呼吸筋力低下に繋がり、最終的には呼吸不全による死亡に繋がる。神経筋肉障害は、以下の急速進行性と緩徐進行性とに区分され得る:(i)急速進行性障害:数ヶ月かけて悪化する筋肉障害によって特徴付けられ、数年内に死亡に繋がる(例えば、ティーンエージャーにおける筋萎縮性側索硬化症(ALS)およびデュシェンヌ筋ジストロフィー(DMD));(ii)可変性または緩徐進行性障害:数年かけて悪化する筋肉障害によって特徴付けられ、平均余命が若干低減するだけである(例えば、肢帯、顔面肩甲上腕型および筋強直性筋ジストロフィー)。NMDにおける呼吸不全症状を以下に挙げる:全身衰弱の増加、嚥下障害、労作および安静時の呼吸困難、疲労、眠気、起床時の頭痛、および集中および気分の変化の困難。
【0015】
胸壁障害は、胸郭変形の1つのグループであり、呼吸筋肉と胸郭との間の連結の無効性の原因となる。これらの障害は、拘束性障害によって主に特徴付けられ、長期の炭酸過剰性呼吸不全の可能性を共有する。脊柱側弯症および/または脊柱後側弯症は、重篤な呼吸不全を発症することがある。呼吸不全の症状を以下に挙げる:労作時の呼吸困難、末梢浮腫、起座呼吸、反復性胸部感染症、起床時の頭痛、疲労、睡眠の質の低下、および食欲不振。
【0016】
このような状態を治療または改善するために、一定範囲の治療が用いられている。さらに、その他の点では健常人も、呼吸器疾患の予防治療を有利に利用することができる。しかし、これらにおいては、複数の欠陥がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0017】
2.2.2 治療法
多様な療法(例えば、持続的気道陽圧(CPAP)治療法、非侵襲的換気(NIV)および侵襲的換気(IV))が上記の呼吸器疾患の1つ以上の治療のために用いられている。
【0018】
持続的気道陽圧(CPAP)療法が、閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)の治療において用いられている。その作用機構としては、例えば軟口蓋および舌を押して後口咽頭壁へ前進または後退させることにより、持続陽圧呼吸療法が空気スプリントとして機能し、これにより上気道の閉鎖を防止し得る。CPAP治療によるOSAの治療は自発的なものであり得るため、このような患者が治療の提供に用いられるデバイスについて以下のうち1つ以上に気づいた場合、患者が治療を遵守しないことを選択する可能性がある:不快、使用困難、高価、美観的な魅力の無さ。
【0019】
非侵襲的換気(NIV)は、換気補助を上気道を通じて患者へ提供して、呼吸機能の一部または全体を行うことにより患者の呼吸の補助および/または身体中の適切な酸素レベルの維持を提供する。換気補助が、非侵襲的患者インターフェースを介して提供される。NIVは、OHS、COPD、NMD、および胸壁障害などの形態のCSRおよび呼吸不全の治療に用いられている。いくつかの形態において、これらの治療の快適性および有効性が向上し得る。
【0020】
侵襲的換気(IV)は、自身で有効に呼吸することができなくなった患者に対して換気補助を提供し、気管切開管を用いて提供され得る。いくつかの形態において、これらの治療の快適性および有効性が向上し得る。
【0021】
2.2.3 治療システム
これらの治療は、治療システムまたはデバイスによって提供され得る。このようなシステムおよびデバイスは、疾患を治療することなくスクリーニング、診断、または監視するためにも、用いられ得る。
【0022】
治療システムは、呼吸圧力治療デバイス(RPTデバイス)、空気回路、加湿器、患者インターフェース、およびデータ管理を含み得る。
【0023】
別の形態の治療システムとして、下顎再位置決めデバイスがある。
【0024】
2.2.3.1 患者インターフェース
患者インターフェースは、例えば気道入口への空気流れを提供することにより呼吸装具へのインターフェースを装着者へ提供するために、用いられ得る。空気流れは、鼻および/または口へのマスク、口への管、または患者気管への気管切開管を介して提供され得る。適用される療法に応じて、患者インターフェースは、例えば患者の顔の領域とのシールを形成し得、これにより、療法実行のための雰囲気圧力と共に充分な分散の圧力において(例えば、例えば雰囲気圧力に対して約10cmH2Oの陽圧において)ガス送達を促進する。酸素送達などの他の治療形態において、患者インターフェースは、約10cmH2Oの陽圧において気道へのガス供給の送達を促進するのに充分な密閉を含まない場合がある。
【0025】
特定の他のマスクシステムは、本分野において機能的に不適切であり得る。例えば、純然たる装飾目的のマスクの場合、適切な圧力を維持することができない場合がある。水中水泳またはダイビングに用いられるマスクシステムは、外部からのより高い圧力からの水侵入から保護することと、周囲よりも高い圧力において内部の空気を維持しないこととを行うように、構成され得る。
【0026】
特定のマスクは、本技術において臨床的に好ましく無い場合があり得る(例えば、マスクが鼻を介して気流を遮断し、口を介した気流のみを通過させる場合)。
【0027】
特定のマスクにおいて、患者がマスク構造の一部を口に挿入し、唇を介して密閉状態を生成および維持しなければならない場合、本技術において不快であるかまたは非実際的である場合がある。
【0028】
特定のマスクは、睡眠時(例えば、横向きにベッドに寝て枕の上に頭を置いた状態で睡眠する場合)における使用においては非実際的である場合がある。
【0029】
患者インターフェースの設計においては、複数の課題がある。顔は、複雑な三次元形状を有する。鼻および頭のサイズおよび形状は、個人によって大きく異なる。頭部には骨、軟骨および軟組織が含まれるため、顔の異なる領域は、機械的力に対して異なる反応を示す。すなわち、顎部または下顎は、頭蓋骨の他の骨に相対して動き得る。頭部全体は、呼吸治療期間を通じて動き得る。
【0030】
これらの課題に起因して、いくつかのマスクの場合、特に装着時間が長い場合または患者がシステムに不慣れである場合、押しつけがましい、美観的に望ましくない、コストが高い、フィット感が悪い、使用が困難、および不快感があるなどの理由のうち1つ以上がある。誤ったサイズのマスクが用いられた場合、コンプライアンスの低下、快適性の低下および患者予後の低下に繋がり得る。飛行士専用のマスク、個人用保護装具(例えば、フィルターマスク)、SCUBAマスクの一部として設計されたマスク、または麻酔投与用マスクは、その元々の用途には耐えられるものの、このようなマスクの場合、長時間(例えば、数時間)にわたって装着するには望ましくないほど不快な場合がある。このような不快感に起因して、治療に対する患者のコンプライアンスが低下する可能性がある。これは、マスクを睡眠時に装着する必要がある場合、特に当てはまる。
【0031】
CPAP治療は、患者が治療を承諾している場合、特定の呼吸器疾患の治療においては極めて効果的である。マスクが不快である場合または使用が難しい場合、患者は、治療を承諾しない場合がある。患者はマスクを定期的に洗浄するよう推奨されることが多いため、マスクの清浄が難しい(例えば、組立または分解が困難である場合)、患者は、マスクを清浄することができず、患者のコンプライアンスに影響が出る場合がある。
【0032】
他の用途(例えば、飛行士)用のマスクの場合、睡眠呼吸障害の治療の使用には不適である場合があるため、睡眠呼吸障害の治療の使用のために設計されたマスクは、他の用途に適している場合がある。
【0033】
これらの理由のめ、睡眠時のCPAP送達のための患者インターフェースは、明瞭な分野を形成する。
【0034】
2.2.3.1.1 シール形成構造
患者インターフェースは、シール形成構造を含み得る。患者インターフェースは、患者の顔と直接接触するため、シール形成構造の形状および構成は、患者インターフェースの有効性および快適性に直接影響を持ち得る。
【0035】
患者インターフェースは、使用時にシール形成構造を顔と係合させる場所の設計意図に従って、部分的に特徴付けられ得る。患者インターフェースの一形態において、シール形成構造は、左鼻孔の周囲にシールを形成するための第1のサブ部分と、右鼻孔の周囲にシールを形成するための第2のサブ部分とを含み得る。患者インターフェースの一形態において、シール形成構造は、使用時において双方の鼻孔を包囲する単一の要素を含み得る。このような単一の要素は、例えば顔の上唇領域および鼻ブリッジ領域上に載置されるように、設計され得る。患者インターフェースの一形態において、シール形成構造は、使用時に例えば顔の下唇領域上にシールを形成することにより口領域を包囲する要素を含み得る。患者インターフェースの一形態において、シール形成構造は、使用時に双方の鼻孔および口領域を包囲する単一の要素を含み得る。これらの異なる種類の患者インターフェースは、その製造業者によって鼻マスク、フルフェイスマスク、鼻枕、鼻パフおよび口鼻マスクなどの多様な名称によって公知であり得る。
【0036】
患者の顔の一領域において有効であり得るシール形成構造は、例えば患者の顔の異なる形状、構造、変化性および感受性領域に起因して、別の領域において不適切であり得る。例えば、患者の前額上に載置される水泳用ゴーグルの密閉部は、患者の鼻上における使用には不適切である場合がある。
【0037】
特定のシール形成構造は、広範囲の異なる顔形状およびサイズに対して1つの設計が適合し、快適でありかつ有効になるように、大量製造用に設計され得る。密閉部を形成するためには、患者の顔の形状と、大量製造された患者インターフェースのシール形成構造との間の不整合がある範囲まで、一方または双方を適合させる必要がある。
【0038】
1つの種類のシール形成構造は、患者インターフェースの周囲を包囲して延び、シール形成構造が患者の顔に対向して係合している状態で力が患者インターフェースへ付加された際、患者の顔を密閉することを意図する。このシール形成構造は、空気または流体充填クッションを含み得るか、または、ゴムなどのエラストマーによって構成された弾力性のある密閉要素の成形されたかまたは形成された表面を含み得る。この種のシール形成構造により、フィット感が不適切である場合、シール形成構造と顔との間に隙間が発生し、密閉を達成するには、患者インターフェースを顔に押しつけるためにさらなる力が必要になる。
【0039】
別の種類のシール形成構造は、陽圧がマスク内に付加された際に患者の顔に対して自己気密作用を提供するように、マスクの周囲の周辺に配置された薄材のフラップシールを使用する。先述の種類のシール形成部分と同様に、顔とマスクとの間の整合が良くない場合、密閉を達成するために必要なさらなる力が必要になり得るか、またはマスクから漏洩が発生し得る。さらに、シール形成構造の形状が患者の形状と整合しない場合、使用時においてシール形成部分に折り目または座屈が発生し、漏洩の原因になる。
【0040】
別の種類のシール形成構造は、例えば鼻孔中へ挿入される摩擦嵌め要素を含み得るが、これらのシール形成部分を不快であると感じる患者も存在する。
【0041】
別の形態のシール形成構造は、密閉を達成するために接着部を用い得る。患者の中には、常に接着部を自身の顔に貼り付けるかまたは取り外すことが不便であると感じる患者もいる。
【0042】
一定範囲の患者インターフェースシール形成構造の技術について、(ResMed Limitedへ譲渡された以下の特許出願:WO1998/004,310;WO2006/074,513;WO2010/135,785)に開示がある。
【0043】
鼻枕の一形態が、Puritan Bennettによって製造されたAdam回路において見受けられる。別の鼻枕または鼻パフが、Puritan-Bennett Corporationへ譲渡された米国特許第4、782、832号(Trimbleら)の主題になっている。
【0044】
ResMed Limitedは、鼻枕を用いた以下の製品を製造している:SWIFT(登録商標)鼻枕マスク、SWIFT(登録商標)II鼻枕マスク、SWIFT(登録商標)LT鼻枕マスク、SWIFT(登録商標)FX鼻枕マスクおよびMIRAGELIBERTY(登録商標)フルフェイス型マスク。ResMed Limitedへ譲渡された以下の特許出願において、鼻枕マスクの実施例についての記載がある:国際特許出願WO2004/073、778号(特に、ResMed LimitedのSWIFT(登録商標)鼻枕の様相を記載)、米国特許出願第2009/0044808号(特に、ResMed LimitedのSWIFT(登録商標)LT鼻枕の様相を記載);国際特許出願WO2005/063、328号およびWO2006/130、903号(特に、ResMed LimitedのMIRAGE LIBERTY(登録商標)フルフェイス型マスクの様相を記載);国際特許出願WO2009/052、560号(特に、ResMed LimitedのSWIFT(登録商標)FX鼻枕の様相を記載)。
【0045】
2.2.3.1.2 位置決めおよび安定化
陽圧空気治療に用いられる患者インターフェースのシール形成構造は、密閉を妨害する空気圧力の対応する力を受ける。そのため、シール形成構造を位置決めすることと、顔の適切な部分に対して密閉を維持することとを行うために、多様な技術が用いられている。
【0046】
1つの技術において、接着部が用いられる。例えば、米国特許出願公開US2010/0000534号を参照されたい。しかし、接着部を用いた場合、不快感がある場合がある。
【0047】
別の技術において、1つ以上のストラップおよび/または安定化ハーネスが用いられる。多数のこのようなハーネスの場合、フィット感が悪い、かさばる、不快および扱いにくいなどの点のうち1つ以上が当てはまる。
【0048】
2.2.3.2 呼吸圧力治療(RPT)デバイス
呼吸圧力治療(RPT)デバイスは、例えばデバイスを作動させて気道へのインターフェースへの空気送達流れを生成することにより、上記した複数の治療のうち1つ以上の具現に個別的に、またはシステムの一部として用いられ得る。この空気流れは、加圧され得る。RPTデバイスの例を挙げると、CPAPデバイスおよび人工呼吸器がある。
【0049】
空気圧生成器は、広範な用途(例えば、工業規模通気システム)において公知である。しかし、医療用途のための空気圧生成器は、より一般的な空気圧生成器(例えば、医療機器の信頼性要件、サイズ要件および重量要件)では満足できない特定の要件を有する。加えて、医療治療向けに設計されたデバイスであっても、以下のうち1つ以上に関連して欠陥を免れない場合がある:快適性、ノイズ、使いやすさ、有効性、サイズ、重量、製造可能性、コストおよび信頼性。
【0050】
特定のRPTデバイスの特殊な要件の一例として、音響ノイズがある。
【0051】
従来のRPTデバイスのノイズ出力レベルの表(試料1個のみをISO3744に指定の試験方法を用いてCPAPモードにおいて10cmH2Oにて測定)。
【0052】
【0053】
睡眠呼吸障害の治療に用いられる1つの公知のRPTデバイスとして、S9睡眠治療システム(製造元:ResMed Limited)がある。RPTデバイスの別の実施例として、人工呼吸器がある。人工呼吸器(例えば、成人および小児用人工呼吸器のResMed Stellar(登録商標)シリーズ)の場合、複数の状態(例を非限定的に挙げると、NMD、OHSおよびCOPD)の治療のための一定範囲のための患者のための侵襲的および非侵襲的な非依存的呼吸のための補助を提供し得る。
【0054】
ResMed Elisee(登録商標、但し1つ目のeにアクセントマーク付き)150人工呼吸器およびResMedVSIII(登録商標)人工呼吸器は、複数の状態の治療のための成人患者または小児用患者に適した侵襲的および非侵襲的な依存的呼吸の補助を提供し得る。これらの人工呼吸器により、単一または二重の肢回路を用いた容積通気モードおよび気圧通気モードが得られる。 RPTデバイスは典型的には、圧力生成器(例えば、電動送風機または圧縮ガスリザーバ)を含み、患者の気道へ空気流れを供給するように構成される。場合によっては、空気流れは、患者の気道へ陽圧で供給され得る。RPTデバイスの出口は、空気回路を介して上記したような患者インターフェースへ接続される。
【0055】
デバイスの設計者には、無数の選択肢が提示され得る。設計基準同士が対立することが多くあるため、特定の設計選択肢が慣例からほど遠くなるかあるいは避けられないことがある。さらに、特定の態様の快適性および有効性は、1つ以上のパラメータの些細な変更から大きく影響を受ける可能性もある。
【0056】
2.2.3.3 加湿器
空気流れの送達を加湿無しで行った場合、気道の乾燥に繋がり得る。加湿器をRPTデバイスおよび患者インターフェースと共に用いた場合、加湿ガスが生成されるため、鼻粘膜の乾燥が最小化され、患者気道の快適性が増加する。加えて、より冷涼な気候においては、概して患者インターフェースの周囲の顔領域へ温風を付加すると、冷風の場合よりも快適性が高まる。
【0057】
一定範囲の人工的加湿機器およびシステムが公知であるが、医療加湿器の特殊な要件を満たせていない。
【0058】
医療加湿器は、典型的には患者が(例えば病院において)睡眠時または安静時にあるときに、必要な場合に周囲空気に相対して空気流れの湿度および/または温度を増加させるように、用いられる。枕元に置かれる医療加湿器は、小型である場合がある。医療加湿器は、患者へ送達される空気流れの加湿および/または加熱のみを行うように構成され得、患者の周囲の加湿および/または加熱は行わない。例えば、部屋ベースのシステム(例えば、サウナ、エアコン、または蒸発冷却器)は、呼吸により患者体内に取り込まれる空気も加湿し得るものの、これらのシステムの場合、部屋全体も加湿および/または加熱するため、占有者にとって不快感であり得る。さらに、医療加湿器の場合、工業用加湿器よりも安全面での制約がより厳しい場合もある。
【0059】
多数の医療加湿器が公知であるものの、このような医療加湿器の場合、1つ以上の欠陥を被り得る。すなわち、このような医療加湿器の場合、加湿が不適切なものもあれば、患者にとって使用が困難または不便であるものもある。
【0060】
2.2.3.4 データ管理
臨床的理由により、呼吸治療が処方された患者が「コンプライアンスを遵守している」(例えば、患者が自身のRPTデバイスを1つ以上の「コンプライアンスルール」に則っているか)を決定するためのデータを入手する場合がある。CPAP治療についてのコンプライアンスルールの一例として、患者がコンプライアンスを遵守しているとみなすためには、患者が連続30日間のうち少なくとも21日間にわたってRPTデバイスを一晩あたり少なくとも4時間にわたって使用する必要がある。患者のコンプライアンスを決定するためには、RPTデバイスのプロバイダ(例えば、ヘルスケアプロバイダ)は、RPTデバイスを用いた患者の治療を記述するデータを手作業で入手し、所定期間にわたる使用率を計算し、これをコンプライアンスルールと比較し得る。ヘルスケアプロバイダが患者が自身のRPTデバイスをコンプライアンスルールに則って使用したと決定すると、当該ヘルスケアプロバイダは、患者がコンプライアンスを遵守している旨を第三者に通知し得る。
【0061】
患者の治療において、治療データの第三者または外部システムへの通信から恩恵を受ける他の態様があり得る。
【0062】
このようなデータを通信および管理するための既存のプロセスの場合、高コスト、時間がかかること、エラーの発生し易さのうち1つ以上が発生し得る。
【0063】
2.2.3.5 下顎の再位置決め
下顎再位置決めデバイス(MRD)または下顎前方固定デバイス(MAD)は、睡眠時無呼吸およびいびきの治療選択肢の1つである。これは、歯科医または他の供給業者から利用可能である調節可能な口腔用器具であり、下顎部(下顎)を睡眠時に前方位置に保持する。MRDは、取り外し可能なデバイスであり、患者の睡眠前に口腔内に挿入され、睡眠後に取り外される。そのため、MRDは、常時装着用途を想定した設計はされていない。MRDは、カスタム仕様にしてもよいし、あるいは、標準形態で製造してもよく、患者の歯に適合するように設計された咬合印象部位を含む。この下顎からの機械的突出部は、舌の後ろ側の空間を拡張させ、咽頭壁上へ張力を付加して、気道崩壊を低減させ、口蓋振動を低減させる。
【0064】
特定の実施例において、下顎前方固定デバイスは、上顎または上顎骨上の歯と係合するかまたは嵌め合うように意図された上側スプリントと、上顎または下顎上の歯と係合するかまたは嵌め合うように意図された下側スプリントとを含み得る。上側スプリントおよび下側スプリントは、一対の接続ロッドを介して相互に横方向に接続される。この1組の接続ロッドは、上側スプリントおよび下側スプリント上において対称に固定される。
【0065】
このような設計において、接続ロッドの長さは、MRDが患者の口中に配置されたときに下顎が前方位置に保持されるように、選択される。接続ロッドの長さは、下顎の突出レベルを変化させるように、調節され得る。歯科医は、突出レベルを下顎に合わせて決定することができ、その結果、接続ロッドの長さが決定される。
【0066】
下顎を上顎骨に対して前方に押し出すように構成されているMRDもあれば、ResMed Narval CC(登録商標)MRDなどの他のMADのように、下顎を前方位置に保持するように設計されているものもある。このデバイスにより、歯科的副作用および側頭/下顎間の関節(TMJ)の副作用も低下または最小化される。そのため、このデバイスは、歯のうち1つ以上の任意の移動を最小化または回避するように構成される。
【0067】
2.2.3.6 通気技術
いくつかの形態の治療システムは、吐き出された二酸化炭素を押し出すための通気部を含み得る。この通気部により、患者インターフェースの内部空間(例えば、プレナムチャンバ)から患者インターフェースの外部(例えば、周囲)へのガス流れが可能になり得る。
【0068】
この通気部は、オリフィスを含み得、マスク使用時において、ガスがオリフィスを通じて流れ得る。多数のこのような通気部の場合、音がうるさい。他の場合、使用時において閉塞し得るため、押し出しが不十分になる。いくつかの通気部の場合、例えば音または気流集中に起因して、患者1000と同床者1100の睡眠を妨げる場合がある。
【0069】
ResMed Limitedは、複数の向上したマスク通気技術を開発している。下記を参照されたい:国際特許出願公開第WO1998/034、665;国際特許出願公開第WO2000/078、381;米国特許第6、581、594号;米国特許出願公開第US2009/0050156;米国特許出願公開第2009/0044808。
【0070】
従来のマスクのノイズの表(ISO17510-2:2007、1mにおける10cmH2O圧力)
【0071】
【0072】
(*試料1個のみをISO3744に指定の試験方法を用いてCPAPモードにおいて10cmH2Oにて測定)
【0073】
多様な対象の音圧値を以下に羅列する
【0074】
【0075】
2.2.4 スクリーニング、診断、および監視システム
睡眠ポリグラフ(PSG)は、心肺疾患の診断および監視のための従来のシステムであり、典型的には、システム適用のために専門家臨床スタッフを必要とすることが多い。PSGにおいては、多様な身体信号(例えば、脳波検査(EEG)、心電図検査(ECG)、電気眼球図記録(EOG)、筋電図描画法(EMG))を記録するために、典型的には15~20個の接触覚センサを人体上に配置する。睡眠時呼吸障害のPSGのめには、患者を専門病院において二晩にわたって観察する必要があった。すなわち、第一夜は純然たる診断のためであり、第二夜は、臨床医による治療パラメータのタイトレーションのために必要であった。そのため、PSGは高コストであり、利便性も低い。睡眠呼吸障害のスクリーニング/診断/監視は家庭において特に不向きである。
【0076】
一般に、スクリーニングおよび診断は、疾患の兆候と症状によって疾患を特定することである。通常、スクリーニングは、患者のSDBがさらなる調査を求める程であるかないかを示す真/偽結果を出すいっぽう、診断は、臨床で実行可能な情報を出すことが多い。スクリーニングおよび診断は、一回性手続きになる傾向であることに反して、疾患の経過をモニタリングすることは無限定に続けられる。いくつかのスクリーニング/診断システムは、スクリーニング/診断にのみ適合されているが、いくつかはモニタリングにも使用することができる。
【0077】
臨床専門家は、患者のスクリーニング、診断または監視をPSG信号の視覚的観察に基づいて適切に行い得る。しかし、臨床専門家が居ないまたは臨床専門家への支払いができない状況がある。患者の状態について臨床専門家によって意見が異なる場合がある。さらに、或る臨床専門家は、時期によって異なる基準を適用し得る。
【0078】
3 技術の簡単な説明
本技術は、呼吸器疾患のスクリーニング、診断、監視、改善、治療または予防において用いられる医療機器の提供に関連し、これらの医療機器は、向上した快適性、コスト、有効性、使い易さおよび製造可能性のうち1つ以上を有する。
【0079】
本技術の第1の態様は、呼吸器疾患のスクリーニング、診断、監視、改善、治療または予防に用いられる装置に関連する。
【0080】
本技術の別の態様は、呼吸障害のスクリーニング、診断、監視、改善、治療または予防において用いられる方法に関連する。
【0081】
本技術の特定の形態の一態様は、呼吸治療についての患者のコンプライアンスを向上させる方法および/または装置を提供することである。
【0082】
本技術の態様は、材料に関する制約の低減のために別個に成型された部品を含む、患者インターフェース用のコネクタアセンブリに関する。
【0083】
本技術の態様は、低背型ボタン部を含む、患者インターフェース用のコネクタアセンブリに関する。
【0084】
本技術の一態様は、患者の睡眠時に少なくとも患者の鼻孔入口を含む患者の気道への入口へ周囲空気圧力に対して陽圧にて空気流れを送達して、睡眠時呼吸障害を改善するための患者インターフェースに関する。患者インターフェースは、患者の気道への入口を包囲する患者の顔の一領域とシールを形成するように構築および配置されたシール形成構造と、患者頭部上の治療的に有効な位置にシール形成構造を保持するための力を提供する位置決めおよび安定化構造と、空気回路と接続するように適合されたコネクタアセンブリとを含む。コネクタアセンブリは、患者インターフェースの取付領域のアパチャ中に取り外し可能かつ解放可能に固定されるように構成されたリング部材と、空気回路へ接続するように構成されたエルボーアセンブリとを含む。エルボーアセンブリは、リング部材へ繰り返し接続可能かつ接続解除可能である。エルボーアセンブリは、エルボー部材およびクリップ部材を含む。クリップ部材は、エルボー部材から別個かつ個別の構造を含み、クリップ部材は、エルボー部材へ接続するような構造および配置にされる。クリップ部材は、エルボーアセンブリをリング部材に解放可能に接続するような構成および配置にされ、エルボー部材は、エルボーアセンブリとリング部材は互いに接続している場合にリング部材とシールを形成するように構成および配置される。
【0085】
本技術の特定の形態の一態様は、例えば医療トレーニングを受けたことの無い人、あまり器用ではない人や洞察力の欠いた人、またはこの種の医療デバイスの使用経験が限られた人にとって使い易い医療デバイスである。
【0086】
本技術の一形態の一態様は、患者の家庭において例えば石けん水などによって洗浄することが可能な患者インターフェースであり、特殊な清浄器具は不要である。
【0087】
もちろん、上記態様の一部は、本技術の下位態様を形成し得る。また、下位態様および/または態様のうち多様な1つを多様に組み合わせることができ、本技術のさらなる態様または下位態様も構成し得る。
【0088】
本技術の他の特徴は、以下の詳細な説明、要約、図面および特許請求の範囲中に含まれる情報に鑑みれば明らかになる。
【0089】
4 図面の簡単な説明
本技術を、添付図面中に非限定的に一例として例示する。図面中、類似の参照符号は、以下の類似の要素を含む。
4.1 治療システム
図1A~
図1C
4.2 呼吸システムおよび顔の解剖学的構造
図2A~
図2L
4.3 患者インターフェース
図3A~
図3X
【図面の簡単な説明】
【0090】
【
図1A】患者インターフェース3000を装着している患者1000を含むシステムを示す。このシステムは、鼻枕の形態をとり、RPTデバイス4000から供給される陽圧の空気を受容する。RPTデバイス4000からの空気は、加湿器5000によって加湿され、空気回路4170に沿って患者1000へと移動する。同床者1100も図示される。患者は、仰臥位睡眠位置において睡眠している。
【
図1B】患者インターフェース3000を装着している患者1000を含むシステムを示す。このシステムは、鼻マスクの形態をとり、RPTデバイス4000から供給される陽圧の空気を受容する。RPTデバイスからの空気は、加湿器5000によって加湿され、空気回路4170に沿って患者1000へと移動する。
【
図1C】患者インターフェース3000を装着している患者1000を含むシステムを含む。患者インターフェース3000は、フルフェイスマスクをとり、陽圧の空気供給をRPTデバイス4000から受容する。RPTデバイスからの空気は、加湿器5000によって加湿され、空気回路4170に沿って患者1000へと移動する。患者は、側臥位睡眠位置において睡眠している。
【
図2A】鼻腔および口腔、喉頭、声帯ひだ、食道、気管、気管支、肺、肺胞嚢、心臓および横隔膜を含むヒト呼吸器系の概要を示す。
【
図2B】鼻腔、鼻骨、外側鼻軟骨、大鼻翼軟骨、鼻穴、上唇、下唇、喉頭、硬口蓋、軟口蓋、口咽頭、舌、喉頭蓋、声帯ひだ、食道および気管を含むヒトの上気道の図である。
【
図2C】上唇、上唇紅、下唇紅、下唇、口の幅、内眼角、鼻翼、鼻唇溝および口角点を含む表面解剖学的構造のいくつかの特徴を含む顔の正面図である。上側、下側、ラジアル内方およびラジアル外方の方向も記載される。
【
図2D】眉間、セリオン、鼻尖点、鼻下点、上唇、下唇、スプラメントン、鼻堤、鼻翼頂上点、上耳底点および下耳底点を含む表面解剖学的構造のいくつかの特徴を含む頭部の側面図である。上側および下側と、前方および後方との方向も記載される。
【
図2E】頭部のさらなる側面図である。フランクフォート水平および鼻唇角の大まかな位置が記載されている。冠状面も記載される。
【
図2F】鼻唇溝、下唇、上唇紅、鼻孔、鼻下点、鼻柱、鼻尖点、鼻孔の主軸および正中矢状面を含むいくつかの特徴を含む鼻の底面図である。
【
図2H】外側鼻軟骨、鼻中隔軟骨、大鼻翼軟骨、小鼻翼軟骨、鼻種子軟骨、鼻骨、表皮、脂肪組織、上顎骨の前頭突起および線維性脂肪組織を含む鼻の皮下構造を示す。
【
図2I】正中矢状面からおよそ数ミリメートルの位置における鼻の中間切開を示し、特に鼻中隔軟骨および大鼻翼軟骨の内側脚を示す。
【
図2J】前頭骨、鼻骨および頬骨を含む頭蓋骨の骨正面図である。鼻甲介が上顎骨および下顎骨と共に図示されている。
【
図2K】頭蓋骨を頭部表面の外形およびいくつかの筋肉と共に示す側面図である。以下の骨が図示されている:前頭骨、蝶形骨、鼻骨、頬骨、上顎骨、下顎骨、頭頂骨、側頭骨および後頭骨。オトガイ隆起が図示されている。以下の筋肉が図示されている:顎二腹筋、咬筋、胸鎖乳突筋および僧帽筋。
【
図3A】本技術の一形態による鼻マスクの形態の患者インターフェースを示す。
【
図3B】構造を1つの点において切断した模式的断面図である。この点における外向き法線が図示される。この点における曲率は、正の符号と、3Cに示す曲率の大きさと比較して比較的大きな大きさとを有する。
【
図3C】構造を1つの点において切断した模式的断面図である。この点における外向き法線が図示される。この点における曲率は、正の符号と、
図3Bに示す曲率の大きさと比較して比較的小さな大きさとを有する。
【
図3D】構造を1つの点において切断した模式的断面図である。この点における外向き法線が図示される。この点における曲率の値はゼロである。
【
図3E】構造を1つの点において切断した模式的断面図である。この点における外向き法線が図示される。この点における曲率は、負の符号と、
図3Fに示す曲率の大きさと比較して比較的小さな大きさとを有する。
【
図3F】構造を1つの点において切断した模式的断面図である。この点における外向き法線が図示される。この点における曲率は、負の符号と、
図3Eに示す曲率の大きさと比較して比較的大きな大きさとを有する。
【
図3G】2つの枕を含むマスク用クッションを示す。クッションの外面が図示される。表面の縁部が図示される。ドーム領域およびサドル領域が図示される。
【
図3H】マスク用クッションを示す。クッションの外面が図示される。表面の縁部が図示される。点Aと点Bとの間の表面上の経路が図示される。AとBとの間の直線距離が図示される。2つのサドル領域およびドーム領域が図示される。
【
図3I】構造の表面を示し、この表面中には一次元穴が開いている。図示の平面曲線は、一次元穴の境界を形成する。
【
図3J】
図3Iの構造を通じた断面図である。図示の表面は、
図3Iの構造中の二次元穴を境界付ける。
【
図3K】二次元穴および一次元穴を含む
図3Iの構造の斜視図である。また、
図3Iの構造中の二次元穴を境界付ける表面が図示される。
【
図3L】クッションとしての可膨張性ブラダーを有するマスクを示す。
【
図3M】
図3Lのマスクの断面図であり、ブラダーの内面を示す。内面により、マスク中の二次元穴が境界付けられる。
【
図3N】
図3Lのマスクを通じたさらなる断面を示す。内面も図示される。
【
図3T】マスクの異なる領域内の密閉膜の縁部によって規定された空間曲線のねじれのサインを含むマスクの図である。
【
図3U】正中矢状面および中央接触面を示す、プレナムチャンバ3200の図である。
【
図3V】
図3Uのプレナムチャンバの後方の図である。図中の方向は、中央接触面に対して垂直である。
図3V中、正中矢状面により、プレナムチャンバが左手側および右手側に二等分される。
【
図3W】
図3Vのプレナムチャンバを通じた断面図であり、この断面は、
図3Vに示す正中矢状面においてとられる。「中央接触」面が図示される。中央接触面は、正中矢状面に対して垂直である。中央接触面の方位は、腱3210の方位に対応する。腱3210は、正中矢状面上に載置され、正中矢状面上の2点(すなわち、上点3220および下点3230)においてプレナムチャンバのクッションのみと接触する。この領域におけるクッションのジオメトリに応じて、中央接触面は、上点および下点双方に接し得る。
【
図3X】
図3Uのプレナムチャンバ3200が顔面上の使用位置にある状態を示す。プレナムチャンバ3200の正中矢状面は、プレナムチャンバが使用位置にあるとき、顔の正中矢状面と概して一致する。中央接触面は、プレナムチャンバが使用位置にあるとき、「顔の面」に概して対応する。
図3Xにおいて、プレナムチャンバ3200は鼻マスクのものであり、上点3220はほぼセリオン上に載置され、下点3230は上唇上に載置される。
【
図4】本技術の一実施例による患者の頭部上に図示された患者インターフェースの斜視図である。
【
図5】本技術の一実施例によるコネクタアセンブリの後方斜視図である。
【
図6】
図5に示すコネクタアセンブリの正面斜視図である。
【
図7】
図5に示すコネクタアセンブリの背面図である。
【
図8】
図5に示すコネクタアセンブリの正面図である。
【
図9】
図5に示すコネクタアセンブリの上面図である。
【
図10】
図5に示すコネクタアセンブリの下面図である。
【
図11】
図5に示すコネクタアセンブリの側面図である。
【
図14】
図9に示すコネクタアセンブリの断面図である。
【
図15】
図5に示すコネクタアセンブリの分解図である。
【
図16】
図5に示すコネクタアセンブリのエルボー部材の側面図である。
【
図19】
図5に示すコネクタアセンブリのクリップ部材の下面図である。
【
図21】
図5に示すコネクタアセンブリのリング部材の斜視図である。
【
図23】エルボーアセンブリがリング部材と係合している、本技術の一実施例によるコネクタアセンブリを含む患者インターフェースの斜視図である。
【
図24】エルボーアセンブリがリング部材から係合解除されている、本技術の一実施例によるコネクタアセンブリを含む患者インターフェースの斜視図である。
【
図25】エルボーアセンブリがリング部材と係合している、本技術の一実施例によるコネクタアセンブリを含む患者インターフェースの断面図である。
【
図26】エルボーアセンブリをリング部材から手で係合解除しているところの、本技術の一実施例によるコネクタアセンブリを含む患者インターフェースの断面図である。
【
図27】本技術の別の実施例によるエルボー部材の斜視図である。
【
図30】クリップ部材を接続させておいた、
図27に示すエルボー部材の斜視図である。
【
図31】本技術の別の実施例による一体化エルボー部材およびクリップ部材の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0091】
5 本技術の実施例の詳細な説明
本技術についてさらに詳細に説明する前に、本技術は、本明細書中に記載される異なり得る特定の実施例に限定されるのではないことが理解されるべきである。本開示中に用いられる用語は、本明細書中に記載される特定の実施例を説明する目的のためのものであり、限定的なものではないことも理解されるべきである。
【0092】
以下の記載は、1つ以上の共通の特性および/または特徴を共有し得る多様な実施例に関連して提供される。任意の1つの実施例の1つ以上の特徴は、別の実施例または他の実施例の1つ以上の特徴と組み合わせることが可能であることが理解されるべきである。加えて、これらの実施例のうちのいずれかにおける任意の単一の特徴または特徴の組み合わせは、さらなる実施例を構成し得る。
【0093】
5.1 治療法
一形態において、本技術は、呼吸器疾患の治療方法を含む。本方法は、患者1000の気道の入口へ陽圧を付加するステップを含む。
【0094】
本技術の特定の実施例において、陽圧における空気供給が鼻孔の片方または双方を介して患者の鼻通路へ提供される。
【0095】
本技術の特定の実施例において、口呼吸が制限されるか、限定されるかまたは妨げられる。
【0096】
5.2 治療システム
1つの形態において、本技術は、呼吸障害の治療のための装置またはデバイスを含む。装置またはデバイスは、加圧空気を患者インターフェース3000への空気回路4170を介して患者1000へ供給するRPTデバイス4000を含み得る(例えば、
図1A~1Cを参照されたい)。
【0097】
5.3 患者インターフェース
図3Aを参照すると、本技術の一態様による非侵襲的患者インターフェース3000は、以下の機能様態を含む:シール形成構造3100、プレナムチャンバ3200、位置決めおよび安定化構造3300、通気孔3400、空気回路4170への接続のための一形態の接続ポート3600、および前額支持部3700。いくつかの形態において、機能様態が、1つ以上の物理的コンポーネントによって提供され得る。いくつかの形態において、1つの物理的コンポーネントは、1つ以上の機能様態を提供し得る。使用時において、シール形成構造3100は、気道への陽圧での空気供給を促進するように、患者の気道の入口を包囲するように配置される。
【0098】
患者インターフェースが最低レベルの陽圧を快適に気道へ送達できない場合、患者インターフェースは呼吸圧力治療に不適切であり得る。
【0099】
本技術の一形態による患者インターフェース3000は、周囲に対して少なくとも6cmH2Oの陽圧で空気供給を提供できるように構築および配置される。
【0100】
本技術の一形態による患者インターフェース3000は、周囲に対して少なくとも10cmH2Oの陽圧で空気供給を提供できるように構築および配置される。
【0101】
本技術の一形態による患者インターフェース3000は、周囲に対して少なくとも20cmH2Oの陽圧で空気供給を提供できるように構築および配置される。
【0102】
図4は、本技術の一態様による非侵襲的 患者インターフェース6000を示す。図示のように、患者インターフェース6000は、以下の機能様態を含む:クッションアセンブリ6150、位置決めおよび安定化構造6300、および空気回路4170への接続のための接続ポート6600。いくつかの形態において、機能様態が、1つ以上の物理的コンポーネントによって提供され得る。いくつかの形態において、1つの物理的コンポーネントは、1つ以上の機能様態を提供し得る。
【0103】
クッションアセンブリ6150は、シール形成構造6100およびプレナムチャンバ6200を含む。使用時において、プレナムチャンバ6200は空気回路4170から陽圧での空気供給を受容し、シール形成構造6100は、気道への陽圧での空気供給を促進するように、患者の気道への入口周囲の領域を密閉するように配置される。
【0104】
図4に示す本技術の形態において、位置決めおよび安定化構造6300は、空気回路4170の部分を形成する導管から受容された加圧空気を、例えばプレナムチャンバ6200およびシール形成構造6100を通じてRPTデバイスから患者の気道へ送達させる、2つの管6350(例えば、可撓性シリコーン製)を含む。各管6350は、使用時に患者頭部の異なる側部上に位置決めされ、各頬領域にわたって、(患者頭部上の上耳底点の上方の)各耳の上方から患者頭部の上部の接続ポート6600へ延びる。
【0105】
位置決めおよび安定化構造6300は、患者インターフェース6000を密閉位置において保持するために患者の頭部に係合することから、「ヘッドギア」とも呼ばれることができる。これらの管6350は、患者インターフェースのシール形成構造6100が患者の顔の適切な部分(例えば、鼻および/または口)に位置決めおよび安定配置されるための患者インターフェース6000のヘッドギア6300の一体部分である。その結果、加圧空気流れを提供する空気回路4170の導管を、例えば患者の顔の前方以外の位置において患者インターフェースの接続ポート6600へ接続することが可能になる。
【0106】
本技術の特定の形態において、患者インターフェース6000は、患者頭部の上部、側部または後部の近隣に配置される接続ポート6600を含み得る。例えば、
図4に示す本技術の形態において、接続ポート6600は、患者頭部の上に配置される。
【0107】
図4に示す本技術の形態において、これら2本の管6350は、上端において相互に流体接続され、接続ポート6600へ流体接続される。一実施形態において、これら2つの管は一体形成され、他の実施形態において、これらの管は、別個のコンポーネントであり、使用時に相互接続され、例えば洗浄または保存時には接続解除され得る。
【0108】
中間導管部または取付領域6352(例えば、可撓性シリコーン製のもの)は、2つの管6350を上端において相互に流体接続させるように、設けられる。中間導管部6352は、使用時において接続ポート6600へ接続可能な開口部またはアパチャを含む。中間導管部6352は、これら2つの管と一体形成してもよいし、あるいは、それぞれ各管6350へ流体接続可能な端部を含む別個のコネクタの形態をとってもよい。
【0109】
一実施例において、例えば
図4に示すように、位置決めおよび安定化構造6300は、後方ヘッドギアストラップ6310を含む。後方ヘッドギアストラップ6310は、患者頭部の各側部上に配置されかつ患者頭部の後方を通過する(例えば、使用時に患者頭部の後頭骨の後部を覆うかまたは被覆する)2本の管6350間に接続される。
【0110】
本技術の特定の形態において、位置決めおよび安定化構造6300は、位置決めおよび安定化構造6300を寸法調節することが可能なように構成される調節機構6360を含む。例えば、
図4に示す患者インターフェース6000は、蛇腹管セクション6362を含む管6350を含む。蛇腹管セクション6362は、蛇腹無しの管6350の長さ間に設けられる。
【0111】
患者インターフェース6000のさらなる実施例および詳細について、PCT公報第WO2017/124155号に記載がある。本明細書中、同文献全体を参考のため援用する。
【0112】
本技術の態様は、他の適切なインターフェース配置構成およびタイプ(例えば、フルフェイス/口鼻インターフェース、鼻インターフェース、鼻プロング)との使用に適合され得ることを理解すべきである。
【0113】
コネクタアセンブリ
図5~
図26は、本技術の別の実施例による患者インターフェース6000用の接続ポート7600を示す。本技術について患者インターフェース6000に関して説明するが、本技術は、このような特定の実施例に限定されず、他の適切なインターフェースの配置構成および種類との使用に適合し得ることが理解されるべきである。
【0114】
図示の実施例において、接続ポート7600は、患者インターフェース6000と空気回路4170との間に解放可能な接続が得られるような構造および配置構成のコネクタアセンブリの形態をとる。
【0115】
コネクタアセンブリ7600は、(例えばスイベルコネクタ7790を介して)空気回路4170へ接続するように構成されたエルボーアセンブリ7700と、患者インターフェース6000へ接続するように構成されたリング部材7900とを含む。以下により詳細に説明するように,エルボーアセンブリ7700は、リング部材7900に対して繰り返し係合可能かつ取り外し可能に係合解除可能(すなわち、接続可能および接続解除可能)であるため、患者インターフェース6000と空気回路4170との間の解放可能または分離可能な接続性が促進される。
【0116】
エルボーアセンブリ
エルボーアセンブリ7700は、第1の端部7712および第2の端部7714を有するエルボー部材7710を含む。図示の実施例において、エルボー部材7710は、90°の屈曲部を含むため、第1の端部7712は、第2の端部7714に対して概して垂直になる(すなわち、第1の端部7712の中心軸は、第2の端部7714中心軸に対して90°の角度を持つ)。しかし、第1の端部7712および第2の端部7714は、別の構成として配置してもよい(例えば、相互に対して非垂直に配置してもよい)ことが理解されるべきである。
【0117】
クリップ部材7730は、第1の端部7712へ設けられる。図示の実施例において、クリップ部材7730は、解放可能な接続(例えば、リング部材7900との解放可能なスナップ嵌め接続または分離可能スナップ接合アセンブリ)が得られるような構造および配置構成にされる。第2の端部7714は、空気回路4170へ接続するように適合されたスイベルコネクタ7790(例えば、第2の端部7714へ恒久接続されたスイベルコネクタ7790)を備える。
【0118】
エルボー部材
エルボー部材7710の第1の端部7712は、クリップ部材7730を受容するような構成および配置にされた凹部7715を含む。凹部7715は、エルボー部材7710の上部に沿って延びる上側凹状部7715Uを含む。上側凹状部7715Uは、エルボー部材7710の各側部に沿って延びる側部凹状部7715S中へ繋がる。 凹部7715の深さについては、クリップ部材7730が低背型になる(例えば、クリップ部材7730の部位がエルボー部材7710の凹部7715を包囲する外面から若干だけ隆起して配置される)ように、深さが選択される。
【0119】
側部凹状部7715Sはそれぞれ、ラグ7716を含む。ラグ7716は、クリップ部材7730のピンチアーム7740と相互作用して、エルボー部材7710上のクリップ部材7730の保持およびピンチアーム7740の動作を促進させるような構成および配置にされる。
【0120】
第1の端部7712は、管状端部7713も含む。管状端部7713は、リング部材7900を通じて延びかつリング部材7900へ設けられたシール部材7950と係合するような構造にされ、これにより、加圧ガスをエルボーアセンブリ7700を通じて患者インターフェース6000へ送達させるためのシールされた空気流路が得られる。
【0121】
第2の端部7714は、スイベルコネクタ7790と共に設けられる。一実施例において、スイベルコネクタ7790は、第2の端部7714の管状端部7717へオーバーモールドされ得る(例えば、
図14を参照)。図示のように、管状端部7717は、チャンネル7717Cを含む。チャンネル7717Cは、スイベルコネクタ7790を第2の端部7714上に軸方向に保持するように、スイベルコネクタ7790へ設けられたラジアル方向に内方に延びる突起7795を受容する。
【0122】
患者インターフェース6000からの排気ガスの退出を可能にするために、複数の通気孔7720(例えば、少なくとも10個の通気孔、例えば、10個~20個の通気孔)がエルボー部材7710の後壁に沿って設けられる。図示のように,通気孔7720は列状に配置されているが、通気孔は、他の適切な様態において配置してもよい(例えば、同心円状に配置してもよい)ことが理解されるべきである。一実施例において、各通気孔7720は、長さに沿って外形またはテーパを含み得る(例えば、各孔は、呼気ガス方向に輻輳する)。しかし、各通気孔7720は、排気または吐出ガスを方向付けるための他の適切な形状を持ち得る。さらに、図示の実施例において、通気孔7720は、概して平坦であるかまたは平面状である後壁の一部上に配置され得るため、各通気孔の退出端部は、概して平坦または平面の表面に沿って設けられる。しかし、通気孔7720は、他の形状(円形または凸状)を有するエルボー部材7710の一部上に設けてもよいことが理解されるべきである。
【0123】
クリップ部材
クリップ部材7730は、一対の弾性のクイックリリースピンチアーム7740(以下、単に「ピンチアーム」とも称する)と、ピンチアーム7740を相互接続させる接続部7760とを含む(すなわち、ピンチアーム7740は、接続部7760の各端部に設けられる)。
【0124】
ピンチアーム7740はそれぞれ、キャッチ部7750と、ボタンまたはトリガ部7780とを含む。ピンチアーム7740は、リング部材7900との解放可能なスナップ嵌め接続または分離可能なスナップ接合アセンブリ(例えば、リング部材7900上の凹部またはアンダーカット中へ歪むかまたはスナップ嵌めされるように構成されたキャッチ部7750)を提供するような構造および配置構成にされる。ボタン部7780は、手で摘まむかまたは締め付けられる構造および配置構成になっているため、キャッチ部7750を撓ませて、キャッチ部7750をリング部材7900から分離または解放することができ、よってエルボーアセンブリ7700をリング部材7900から分離させることができる。
【0125】
各キャッチ部7750は、リング部材7900とのスナップ接合アセンブリが得られるような構造にされた反矢じり端、リブまたはキャッチ7755を含む。図示の実施例において、キャッチ7755は、押込式組立を促進するための引込角度と、引出式分解に耐えるかまたは引出式分解を回避するための90°のリターン角度とを含む(例えば、分解を行うには、ユーザは、ボタン部7780を介してキャッチ部7750を撓ませる必要がある)。各ボタンまたはトリガ部7780は、指グリップ部7781を含む(例えば、ピンチアーム7740の自由端に隣接する凹部)。また、各キャッチ部7750は、クリップ部材7730のエルボー部材7710上における保持およびピンチアーム7740の動作を促進させるために、凹部7757を内面上に有する。
【0126】
クリップ部材とエルボー部材との間の接続
図示の実施例において、クリップ部材7730およびエルボー部材7710は、別個に成形された部品(すなわち、別個かつ個別の構造)を含む。これらの部品は、その後相互に接続される(例えば、スナップ嵌め接続)。例えば、クリップ部材7730は、エルボー部材7710の材料よりも高可撓性である材料を含み得るため、クリップ部材7730は、エルボー部材7710の第1の端部7712上に撓んで接続することができる。一実施例において、クリップ部材をエルボー部材へ固定させるために、保持配置構成が設けられる(例えば、スナップ嵌め接続またはスナップ接合アセンブリ)。
【0127】
図示の実施例において、クリップ部材7730は、セミフレキシブルかつ概して半円形の接続部7760を備えたオープンエンド構成を含み、これにより、クリップ部材7730をエルボー部材7710へ(例えばサークリップと同様の様態で)接続させることが可能になる。
【0128】
例えば、クリップ部材7730の接続部7760およびエルボー部材7710の上側凹状部7715Uは、組立方向に沿って少なくとも部分的に相互に整合するような構造および配置にされ得、接続部7760は、上側凹状部7715U上に係合しかつ上側凹状部7715U内にはめ込まれるような構造および配置にされる(例えば、組立位置においてクリップ部材7730およびエルボー部材7710を正方向にかつ解放可能に相互接続させるように所定位置においてスナップ嵌めまたはクリップされる)。接続部7760は、半円状または弓状形状に形成され、断面が充分に小さくなっており、概して半可撓性または半屈曲性であるため、クリップ部材7730をエルボー部材7710の周囲においてクリップさせてエルボー部材7710上に配置することが可能になる。
【0129】
クリップ部材7730の接続部7760は、1つ以上の機能を提供するような構造および配置にされる。例えば、接続部7760は、クリップ部材7730をエルボー部材7710へ取り付けるための構造を提供する。接続部7760は、エルボー部材7710の上側凹状部7715U内にはめ込まれるように構成された形状と、クリップ部材7730をエルボー部材7710上の所定位置に保持するのに充分な構造剛性とを有する。一実施例において、クリップ部材7730は、取り外しが可能であるような充分な可撓性を有する(例えば、クリップ部材の剛性を、クリップ部材の取り外しができないくらいの高剛性にすることはできない)。しかし、別の実施例において、クリップ部材7730は、エルボー部材7710へ取り外し不可能に接続されてもよい(例えば、クリップ部材は、クリップ部材が取り外しできないように剛性であってよい)。クリップ部材7730が取り外し可能な実施例において、接続部7760を屈曲させることが可能であるため、クリップ部材7730の取り外しが可能になる。同様に、接続部7760は耐屈曲性であるため、クリップ部材7730をエルボー部材7710上の所定位置に保持することが可能になる。
【0130】
一実施例において、クリップ部材7730のキャッチ部7750は内方に付勢され得るため、クリップ部材7730がエルボー部材7710へ接続された際、キャッチ部7750が付勢されてエルボー部材7710をグリップし、エルボー部材7710からの除去に対するさらなる抵抗を提供する。
【0131】
キャッチ部7750も、クリップ部材7730をエルボー部材7710上に保持するように機能するフィーチャを有する。詳細には、ピンチアーム7740はそれぞれ、側部凹状部7715Sそれぞれの内部にはめ込まれるような構造および配置にされるため、各キャッチ部7750の内面上の凹部7757は、各側部凹状部7715S内に設けられたラグ7716を受容するように構成される。このような結合配置構成(例えば、スナップ接合アセンブリ)により、クリップ部材7730がエルボー部材7710上に保持される(すなわち、キャッチ部7750を各ラグ7716を介してエルボー部材7710からの別個のクリップ部材7730へ撓ませる必要がある)。接続部7760は耐屈曲性であるため、この分離発生に対する抵抗が得られる。
【0132】
図示の実施例において、エルボー部材7710およびクリップ部材7730により、二部式アセンブリまたは構造物が得られる。このような二部式構造物の例示的利点として、材料に対する拘束要素を少なくした製造が可能になる点がある。例えば、クリップ部材7730およびエルボー部材7710は、別個に成形された部品を含むため、クリップ部材7730とエルボー部材7710との間の共依存が低下する(例えば、クリップ部材7730が、エルボー部材7710の材料の制約を受けなくなる)。一実施例において、クリップ部材7730およびエルボー部材7710は、異なる材料および/または異なる材料特性を相互に含む。一実施例において、クリップ部材7730およびエルボー部材7710は、同一材料からワンピースとして成形されていない。
【0133】
一実施例において、エルボー部材7710は、クリップ部材7730の材料(例えば、ナイロン-12)よりも高剛性の材料(例えば、ポリカーボネート)を含み得る。クリップ部材7730の材料(例えば、ナイロン-12)は、比較的に可撓性かつ頑丈であり得る(例えば、ピンチアームが撓みやすくなる、耐摩耗性、エルボー部材への接続維持)。エルボー部材7710の材料(例えば、ポリカーボネート)は、比較的剛性であり得る(例えば、耐摩耗性、透明であるため清掃がし易い、製造容易性)。
【0134】
さらに、二部式構造物であるため、各部品のジオメトリの複雑度を低くすることが可能になり、その結果、組立において製造時における段取り作業が簡単になり得る。
【0135】
図示の実施例において、クリップ部材7730は、解放可能な接続(例えば、エルボー部材7710とのスナップ嵌め接続)が得られるような構造および配置構成にされる。このような解放可能なまたは分離可能な配置構成の場合、クリップ部材7730およびエルボー部材7710の分離時に清掃することが容易になるため、有利であり得る。
【0136】
別の実施例において、クリップ部材7730は、エルボー部材7710へ取り外し可能に接続されなくてもよい(例えば、クリップ部材は、エルボー部材へ恒久的に接続させてもよい)。このような取り外し不可能な配置構成は、クリップ部材が紛失するかまたは破壊される可能性を低下させるため、有利であり得る。クリップ部材は空気流路の外部にあるため、例えば空気流路へ露出される部品と比較すると、隅々までの清掃はそれほど重要ではない。
【0137】
一実施例において、クリップ部材7730およびエルボー部材7710は、別個に成形された部品を含み得る。これらの別個に成形された部品は、その後、クリップ部材7730をエルボー部材7710から分離できなくなるように恒久的に相互接続され得る。クリップ部材およびエルボー部材の恒久的な接合または接続のために、任意の適切な手段が用いられ得る。
【0138】
一実施例において、クリップ部材7730およびエルボー部材7710は、相互に溶接され得るかまたは接着され得る(例えば、超音波により相互溶接され得る)。例えば、クリップ部材7730を上記したようにエルボー部材7710に接続させた後、クリップ部材7730の接続部7760の1つ以上の部位(例えば、中央部位)をエルボー部材7710へ溶接または接着させて、クリップ部材をエルボー部材へ恒久的に固定することができる。この接続により、ピンチアーム7740の動作にとって充分なねじれ(およびねじれ耐性)を接続部において得ることが可能になる。
【0139】
あるいは、エルボーアセンブリの構造は、クリップ部材をエルボー部材へ容易に組み付けることができかるエルボー部材および/またはクリップ部材の構造により分解が困難または複雑になるような構造にされ得る。エルボー部材およびクリップ部材が別個に製造されたこのようなエルボーアセンブリの場合、クリップ部材をエルボー部材へ固定する際のさらなる溶接または接着作業を回避しつつ、所望の利点を達成することができる(例えば、材料選択における制約事項の低下)。
【0140】
例えば、
図27~
図30に示すように、エルボー部材7710は、側部凹状部7715Sそれぞれの上側縁部に沿ってタブまたはストップ7719を含み得る。各タブ7719は、エルボー部材から各側部凹状部の下部から離隔方向において概して横方向に外方に突出する。クリップ部材7730がエルボー部材7710へ接続されると、タブまたはストップ7719は、エルボー部材からのクリップ部材の分解がより困難になるように配置される。すなわち、タブまたはストップ7719は、タブまたはストップ7719を分離させるためにクリップ部材のピンチアームを相互に離隔方向にさらに撓ませる必要があるように、配置される。
【0141】
図30に示すように、クリップ部材7730がエルボー部材7710へ接続されると、タブ7719はクリップ部材7730の側部を介して外方に突出して、これにより、クリップ部材7730がエルボー部材の凹部7715から除去または「外れる」事態に対する抵抗が得られる。これらのタブ7719は、(
図30に図示するように)キャッチ部7750の上方かつクリップ部材の接続部7760の後方に配置され、この位置決めにより、キャッチ部7750が上方および後方に押し出される事態の回避が支援される。
【0142】
エルボーアセンブリ7700も、キャッチ部7750が上方に押し出されてクリップ部材7730がエルボー部材7710から外れる事態を回避することを支援するような構造にされ得る。図示の実施例において、エルボー部材7710の第1の端部7712は、ラジアル方向に外方に延びる隆起またはフランジ7722を含む。この隆起またはフランジ7722は、エルボーアセンブリ7700がリング部材7900内に過度に挿入される事態を回避するストップとして機能する(すなわち、エルボーアセンブリがリング部材7900中に完全挿入された際、フランジ7722はリング部材7900と隣接する(例えば、
図12を参照))。一実施例において、
図29に示すように、このフランジ7722の一部は、より幅広になり得る(すなわち、幅広部位は、ラジアル方向に外方にさらに延びて)シェルフ7723を(例えば、クリップ部材7730の接続部7760を受容するように適合されたエルボー部材7710の上側凹状部7715Uの縁部に少なくとも沿って)形成する。シェルフ7723は、接続部7760およびクリップ部材7730全体がエルボー部材7710の上側凹状部7715Uから前方に押し出される事態を回避することを支援するバリアとして機能し得る。
リング部材
【0143】
リング部材7900は、患者インターフェース6000の開口部またはアパチャ内に(すなわち、ヘッドギア6300の2つの管6350を相互接続させる中間導管部6352のアパチャ6355内に(
図23~
図26を参照))取り外し可能にかつ密閉されて固定されるように、構成される。
【0144】
図22中に最良に示すように、リング部材7900は、第1の側部7910および第2の側部7920を含む。リング部材7900がアパチャ6355内に固定される際、第1の側部7910は、中間導管部6352の内側部内に配置されるように適合され、第2の側部7920は、中間導管部6352の外側部内に配置されるように適合される。リング部材7900は、第1のフランジ7915を第1の側部7910上に含み、第2のフランジ7925を第2の側部7920上に含む。第1のフランジ7915および第2のフランジ7925により、ヘッドギアチャンネル7930が規定される。ヘッドギアチャンネル7930は、リング部材7900がアパチャ6355内に固定された際にヘッドギア6300の中間導管部6352と密閉係合する(すなわち、チャンネル7930の周面は、中間導管部6352内のアパチャ6355を規定するリップ部6354を密閉係合するように適合される(例えば、
図25および
図26を参照))。
【0145】
リップ部6354がチャンネル7930内に係合されると、リング部材7900は、実質的に固定された位置内に固定される(すなわち、ヘッドギアが第1のフランジ7915と第2のフランジ7925との間にはめ込まれて、リング部材7900が不意にヘッドギアから分離される事態の回避を支援し)かつ表面摩擦に起因して自由回転できないようにする。また、このような係合は、リング部材7900と中間導管部6352との間のアパチャ6355を通じた空気流れに耐える。例えば中間導管部6352のシリコーン材料をリング部材7900から離隔方向に剥離させることにより、リング部材7900を(例えば、清掃、検査のために)患者インターフェース6000から取り外すことができる。
【0146】
リング部材7900は、クリップフランジ7940も含む。クリップフランジ7940は、(エルボーアセンブリ7700がリング部材7900と解放可能に係合した際に)クリップ部材7730と係合するような構成および配置にされる。クリップフランジ7940は第2のフランジ7925に隣接して設けられるため、クリップフランジ7940および第2のフランジ7925により、クリップ部材7730のキャッチ7755を噛み合って受容するクリップチャンネル7945が規定される。図示の実施例において、クリップフランジ7940により、引込角度(例えば、傾斜面またはランプ)が組立方向において得られるため、エルボーアセンブリ7700のリング部材7900への押込式組立が促進される。クリップフランジ7940により、引出式分解に耐えるかまたは、引出式分解を回避する90°のリターン角度も得られる(例えば、ユーザは、分解を行うためには、ボタン部7780を介してキャッチ部7750を撓ませる必要がある)。
【0147】
リング部材7900は、第1の側部7910に隣接する内周に沿ってシール部材7950も含む。シール部材7950は、(エルボーアセンブリ7700がリング部材7900へ接続された際に)リング部材7900とエルボーアセンブリ7700との間のシールを提供するような構成および配置にされる。
【0148】
解放可能エルボーアセンブリと、リング部材との間の接続
エルボーアセンブリ7700は、ピンチアーム7740を介して、リング部材7900に解放可能に接続する(例えば、スナップ嵌めまたはスナップジョイントアセンブリ)。詳細には、クリップチャンネル7945は、キャッチ部それぞれのリブまたはキャッチ7755を受容するような構造にされる(例えば、クリップフランジを介してクラスプ留め、鉤爪留めまたはホック留めを行うように配置されたリブまたはキャッチにより、確実な接続を提供することにより)エルボーアセンブリ7700を解放可能にリング部材7900へ保持し、スイベル接続を形成する(すなわち、リング部材7900の軸周囲のリング部材7900に相対してエルボーアセンブリ7700の360°の自由回転を可能にする)。すなわち、各キャッチ部7750の自由端におけるリブまたはキャッチ7755は、クリップフランジ7940上およびクリップフランジ7940の後側に(例えばスナップ嵌めにより)係合するように構成され、これにより、エルボーアセンブリ7700をリング部材7900へ解放可能に接続させ、意図せぬ係合解除を回避する。
【0149】
クリップフランジ7940の組立方向における傾斜面またはランプ7941は、エルボーアセンブリ7700のリング部材7900へのより容易かつより円滑な取付を可能にするように構成される。エルボーアセンブリ7700のリング部材7900への取付時において、キャッチ部7750およびそのキャッチ7755を(クリップフランジ7940の上部および後部において係合する際にクリップフランジ7940を受容するために)強制的にラジアル方向に外方に撓ませるかまたは枢動させ、接続部7760の各側部をねじる必要がある。この力の最小化により、エルボーアセンブリの使い易さの向上が可能になる。クリップフランジ7940の傾斜面7941およびキャッチ7755の引込角度により、クリップ部材へ付加された力をより長い距離にわたって付加することが可能になり、これにより、キャッチ部を広げるために必要な力が低減し、使い易さが向上する。
【0150】
ボタン部7780を各キャッチ7755の反対側の端部において手によりつまむかまたはぎゅっと握ると、キャッチ7755をリング部材7900上のクリップフランジ7940から係合解除させることができる。
【0151】
エルボー部材7710の側部凹状部7715Sそれぞれの内部のラグ7716により、支点およびボトムアウトストップの機能が得られる。図示の実施例において、ラグ7716は、T字型形状を含む。T字型形状のラグ7716の断面は、上部において各キャッチ部7750が枢動する支点として機能する。上記したように、リング部材7900のクリップフランジ7940を受容するために、各キャッチ部7750は係合時に枢動する。さらに、各ボタン部7780を介した係合解除時において、各キャッチ部7750が枢動される。
図26は、ボタン部7780が手によりつままれるかまたはぎゅっと握られた際、キャッチ部を枢動させることにより、キャッチ7755がリング部材7900上のクリップフランジ7940から係合解除される様子を示す。
【0152】
T字型形状のラグ7716の脚部は、ボタン部が手により解放されたときに、(有効な接続位置へ枢動することにより)各キャッチ部7750のボトムアウトを回避するためのストップとして機能する。代替的にまたは追加的に、クリップ部材の下側のエルボー部材の本体周囲にフランジを設けることにより、キャッチ部の動きを制限するストップとして機能する。
【0153】
クリップ部材7730の接続部7760の別の機能として、キャッチ部7750の枢動に対する抵抗を提供することがある。上記したように、リング部材7900のクリップフランジ7940を受容しかつクリップフランジ7940を解放させるために、キャッチ部7750は枢動する。しかし、キャッチ部は好適には、ユーザからのボタン部への圧力が無い場合は枢動しないことが好ましい。そうでないと、エルボー部材をリング部材へ固定させるクリップ部材の機能が果たせなくなる。クリップ部材の接続部は、キャッチ部の枢動支点と実質的に整列した様態で各キャッチ部へ接続する。キャッチ部が枢動すると、接続部において捩れが生じる。よって、接続部7760は充分な構造剛性と共に設計されるため、キャッチ部が不要に枢動しないようにするための充分な捩れ抵抗が得られる。しかし、接続部は、キャッチ部の枢動を可能にする一定量の捩れを可能にする必要があり、これにより、ユーザがボタン部を手によりつまむかまたはぎゅっと握った場合におけるキャッチによるリング部材のクリップフランジの受容と、クリップフランジのリング部材からの解放とが可能になる。
【0154】
エルボーアセンブリと、リング部材との間の密閉
リング部材7900は、シール部材7950(例えば、可撓性フランジまたはラジアルリップシール)を含む。シール部材7950は、エルボーアセンブリ7700がリング部材7900へ接続されたときに空気流路用のシールを提供するために、エルボーアセンブリ7700と係合するように配置される。図示の実施例において、密閉機構は、保持特徴部から分離される。例えば、エルボー部材7710は、リング部材7900と共にシールを形成するように適合され、クリップ部材7730は、エルボーアセンブリを解放可能にリング部材7900へ接続させるように適合される。
【0155】
図12および
図13に示すように、エルボー部材7710の管状端部7713の前縁部は、エルボーアセンブリ7700がリング部材7900中へ挿入された際、シール部材7950で面シールを形成する。例えば、管状端部7713の前縁部により、シール部材7950が変形されてシールを形成する。このような係合の形態にすることにより、接触表面積が最小限になるため摩擦が低下し、これにより、エルボーアセンブリがリング部材に相対して自由に旋回することを可能にしつつ、コンポーネント間のシールが可能になる。シール部材は弾性であるため、エルボーアセンブリがリング部材から取り外されると、シール部材は、元々のカンチレバー位置へ弾性的に戻る。
【0156】
また、エルボー部材7710の第1の端部7712は、ラジアル外方に延びる隆起7722を含む。この隆起は、エルボーアセンブリ7700がリング部材7900内へ過度に挿入される事態を防止するための停止部として機能する。
【0157】
図示の実施例において、シール溝部7905は、第1の側部に隣接した(すなわち、ヘッドギア6300の中間導管部6352の内側部内に配置されるように適合された第1のフランジ7915に隣接した)リング部材7900の内周またはボアへ設けられる。シール溝部7905は、シール部材7950を受容し、シール部材7950を動作位置に固定させるように配置される(例えば、
図13を参照)。
【0158】
図示の実施例(例えば、
図13を参照)において、シール部材7950は、概してL字型の接続部7952と、接続部7952からラジアル方向に内方に突出するラジアル密閉部7954(例えば、可撓性フランジまたはラジアルリップシール)とを含む。図示のように、シール溝部7905は、L字型の接続部7952を受容するように概してL字型形状になっている。一実施例において、シール部材7950は、リング部材7900へ接合してもよいしあるいはオーバーモールドしてもよい。
【0159】
一実施例において、
図13に示すように、溝部7905に隣接するリング部材7900のボアへテーパ状部位7907が設けられ得る。例えば、テーパ状部位により、穴径はシール溝部からボアの主要内径へ低減される。一実施例において、テーパ状部位7907は、シール部材7950のラジアルシーリング部7954がラジアル方向に内方にカンチレバーの様態で(ラジアル密閉部のいずれかの側部における最小の接触無しに)突出するような構成および配置にされ得る。
【0160】
結合解除の配置構成
コネクタアセンブリ7600により、空気回路4170の患者インターフェースからの結合解除が可能になる(例えば、不安定性回避のための、患者インターフェース上の管引き摺りの結合解除の向上)。
【0161】
結合解除一形態は、エルボーアセンブリ7700がリング部材7900に対して360°自由回転することを可能にするスイベル接続を形成するピンチアーム7740によって提供される。別の形態の結合解除がスイベルコネクタ7790によって得られると、エルボー部材7710に相対するスイベルコネクタ7790の360°の自由回転(および空気回路4170のスイベルコネクタ7790への接続)が可能になる。
【0162】
エルボー部材7710の第1の端部における管状端部7713には、テクスチャー表面加工が施され得る。このようなテクスチャー表面加工により、使用時においてエルボー部材がリング部材内において回転される際のきしみ回避が支援され得る。さらに、テクスチャー表面加工により、エルボー部材をリング部材内において回転させるために必要なトルクが低減され得る(すなわち、回転が平滑になる)。この配置構成により、例えば患者が移動する際空気回路4170からヘッドギアへ付加される力/トルク(管引き摺り)が低減される。
【0163】
例えば摩擦低減による組立/分解の促進のために、リング部材7900の外面(特に、エルボーアセンブリおよびリング部材の組立/分解時においてキャッチ部7750と接触する外面)にもテクスチャー表面加工を施すことができる。
【0164】
低背型クリップ部材
図示の実施例において、クリップ部材7730は、低背型である。例えば、クリップ部材をエルボー部材の凹部内に受容させることにより、クリップ部材の1つ以上の部位がエルボー部材の凹部の周囲の外面から若干隆起するだけになる。
【0165】
例えば、
図9に示すように、クリップ部材7730がエルボー部材7710の凹部7715内に受容されることにより、ボタン部7780は凹部7715の周囲の外面から若干隆起するだけになる。
【0166】
上記したように、キャッチ部7750は、エルボー部材7710上の各ラグ7716上において枢動するように配置される。ラグ7716は、エルボー部材7710の各側部凹状部7715S内に設けられるため、ラグがエルボー部材から外方に延びる(すなわち、側部凹状部の周囲の外面を超えて外方に延びる)全体的長さは、エルボー部材の凹部無しの表面上にラグを設けた場合よりも短い。さらに、各キャッチ部7750は、各ラグ7716を受容する凹部7757を含む。これにより、クリップ部材がエルボー部材7710へ接続された際のクリップ部材7730の外方の範囲がさらに低減される。
【0167】
一実施例において、側部凹状部7715Sをエルボー部材7710内に生成するために、エルボー部材の側壁の材料を切除する(すなわち、外側壁の薄肉化により凹状部を生成する)代わりに、各側部凹状部7715Sの側壁は、外面を規定するエルボー部材7710の外側壁から内方に延びる。
図8は、側部凹状部7715Sの壁部が(エルボー部材7710の外側壁の内方から)エルボー部材7710によって規定された流路中へ延びる様子を示す。
【0168】
一実施例において、側部凹状部7715Sおよびクリップ部材7730は、ボタン部7780の外面がエルボー部材7710の外面と完全には同じ高さにならない(例えば、(例えば
図9に示すように)患者が使い易いようにボタン部7780を若干突出させる)ような構成および配置にされる。
【0169】
一実施例において、低背型ボタン部7780が使用時において患者の髪に絡まる可能性は低い。クリップ部材7730の接続部7760も、上側凹状部7715U内において凹状にされる(例えば、
図11を参照)ため、使用時において患者の髪に絡まる可能性は低い。
【0170】
一実施例において、
図26に示すように、側部凹状部7715Sは、例えば耐久性向上のために、使用時においてボタン部7780が過度に内方に動くかまたは撓む事態を回避するための「ストップ」としても機能し得る。
【0171】
代替実施例
本技術の態様は、他の適切なコネクタ配置構成との使用に適合され得ることを理解すべきである。
【0172】
例えば、コネクタアセンブリは、患者インターフェースへの空気回路接続においてエルボーを含まない場合がある。別の実施例において、クリップ部材の態様は、他のコネクタ配置構成へ適用され得る。例えば、クリップ部材の態様は、空気回路がコネクタと同軸である空気回路(短尺管または長尺管)の端部へ適用され得る。
【0173】
別の実施例において、コネクタアセンブリは、他の適切なインターフェース配置構成(例えば、フルフェイスマスクシステム、鼻マスクシステム)を用いた使用に適合され得る。フルフェイスマスクシステムの場合、コネクタアセンブリは、AAVを含み得る。
【0174】
図示の実施例において、エルボーアセンブリは、通気孔を含む。別の実施例において、システム内のいずれかの場所に通気が設けられている場合、エルボーアセンブリは、通気孔を含まない場合がある。
【0175】
別の実施例において、クリップ部材およびエルボー部材は、ワンピース構造として一体形成され得る。例えば、
図31は、一体型クリップ部材8730およびエルボー部材8710を含むエルボーアセンブリ8700の一例を示す。このような実施例において、クリップ部材8730のキャッチを上記したような各キャッチ部8750に設けてもよく、かつ/または、キャッチ部を接続させる接続部8760に1つ以上のキャッチを設けてもよい。
【0176】
5.3.1 シール形成構造
本技術の一形態において、シール形成構造3100は、目標シール形成領域を提供し、クッション機能をさらに提供し得る。目標シール形成領域は、シール形成構造3100において密閉が発生し得る領域である。密閉が実際に発生する領域(すなわち、実際の密閉面)は、一定範囲の要素(例えば、顔面上の患者インターフェースの配置位置、位置決めおよび安定化構造における張力、および患者の顔の形状)に応じて、所与の治療セッションにおいて患者によって日々変化し得る。
【0177】
一形態において、目標シール形成領域が、シール形成構造3100の外面上に配置される。
【0178】
本技術の特定の形態において、シール形成構造3100は、生体適合性材料(例えば、シリコーンゴム)から構成される。
【0179】
本技術によるシール形成構造3100は、柔らかく、可撓性でありかつ弾力性のある材料(例えば、シリコーン)から構成され得る。
【0180】
本技術の特定の形態において、1つよりも多くのシール形成構造3100を含むシステムが提供される。各シール形成構造3100は、異なるサイズおよび/または形状範囲に対応するように構成される。例えば、システムは、小さなサイズの頭ではなく大きなサイズの頭に適したシール形成構造3100の一形態および大きなサイズの頭ではなく小さなサイズの頭に適した別のものを含み得る。
【0181】
5.3.1.1 密閉機構
一形態において、シール形成構造は、圧力アシスト密閉機構を用いる密閉フランジを含む。使用時において、密閉フランジは、プレナムチャンバ3200内のシステム陽圧に容易に応答してその下側上に作用して、面と緊密な密閉係合を形成させ得る。圧力アシスト機構は、位置決めおよび安定化構造における弾性張力と共に作用し得る。
【0182】
一形態において、シール形成構造3100は、密閉フランジおよび支持フランジを含む。密閉フランジは、厚さが約1mm未満(例えば、約0.25mm~約0.45mm)の比較的肉薄の部材を含む。この部材は、プレナムチャンバ3200の縁部長さの周囲に延びる。支持フランジは、密閉フランジよりも比較的肉厚であり得る。支持フランジは、密閉フランジと、プレナムチャンバ3200の周縁部との間に配置され、周辺長さの周囲の少なくとも一部に延びる。支持フランジは、バネ様要素であるかまたはバネ様要素を含み、密閉フランジを使用時に座屈しないように支持するよう機能する。
【0183】
一形態において、シール形成構造は、圧縮密閉部またはガスケット密閉部を含み得る。使用時において、圧縮密閉部またはガスケット密閉部は、例えば位置決めおよび安定化構造における弾性張力に起因して圧縮状態となるように、構築および配置される。
【0184】
一形態において、シール形成構造は、張力部を含む。使用時において、張力部は、例えば密閉フランジの隣接領域により、ぴんと張られた状態で保持される。
【0185】
一形態において、シール形成構造は、粘着面または接着面を有する領域を含む。
【0186】
本技術の特定の形態において、シール形成構造は、圧力アシスト密閉フランジ、圧縮密閉部、ガスケット密閉部、張力部、および粘着面または接着面を有する部位のうち1つ以上を含み得る。
【0187】
5.3.1.2 鼻梁または鼻堤領域
一形態において、非侵襲的患者インターフェース3000は、使用時に患者の顔の鼻梁領域上にまたは鼻堤領域上に密閉を形成するシール形成構造を含む。
【0188】
一形態において、シール形成構造は、使用時において患者の顔の鼻梁領域上または鼻堤領域上にシールを形成するように構築されたサドル状領域を含む。
【0189】
5.3.1.3 上唇領域
一形態において、非侵襲的患者インターフェース3000は、患者の顔の上唇領域(すなわち、上唇)上に使用時に密閉を形成するシール形成構造を含む。
【0190】
一形態において、シール形成構造は、使用時において患者の顔の上唇領域上にシールを形成するように構築されたサドル状領域を含む。
【0191】
5.3.1.4 顎領域
一形態において、非侵襲的患者インターフェース3000は、使用時に患者の顔の顎領域上に密閉を形成するシール形成構造を含む。
【0192】
一形態において、シール形成構造は、使用時において患者の顔の顎領域上にシールを形成するように構築されたサドル状領域を含む。
【0193】
5.3.1.5 前額領域
一形態において、シール形成構造は、シール使用時において患者の顔の前額領域上にシールを形成する。このような形態において、プレナムチャンバは、使用時において眼を被覆し得る。
【0194】
5.3.1.6 鼻枕
一形態において、非侵襲的患者インターフェース3000のシール形成構造は、一対の鼻パフまたは鼻枕を含む。各鼻パフまたは鼻枕は、患者の鼻の各鼻孔とのシールを形成するように構成および配置される。
【0195】
本技術の一態様による鼻枕は、円錐台を含む。円錐台のうち少なくとも一部は、患者の鼻の下側、柄部、円錐台の下側上の可撓性領域上に密閉を形成し、円錐台を柄部へ接続させる。加えて、本技術の鼻枕が接続される構造は、柄部のベースに隣接する可撓性領域を含む。可撓性領域は、自在接合構造を促進するように機能し得る。自在接合構造は、円錐台の変位および角度双方と、鼻枕が接続される構造との相互移動に対応する。例えば、円錐台は、柄部が接続された構造に向かって軸方向に変位し得る。
【0196】
5.3.2 プレナムチャンバ
プレナムチャンバ3200は、使用時に密閉が形成される領域において平均的な人の顔の表面外形に対して相補的である形状の周囲を有する。使用時において、プレナムチャンバ3200の周辺縁部は、顔の隣接する表面に近接して位置決めされる。顔との実際の接触は、シール形成構造3100によって提供される。シール形成構造3100は、使用時においてプレナムチャンバ3200の縁部全体の周りに延び得る。いくつかの形態において、プレナムチャンバ3200およびシール形成構造3100は、単一の均質的材料ピースから形成される。
【0197】
本技術のいくつかの形態において、プレナムチャンバ3200は、使用時において患者の眼を被覆しない。換言すると、眼は、プレナムチャンバによって規定される加圧空間外にある。このような形態の場合、押しつけがさが低減しかつ/またはより着用者の快適性が増すことが多いため、治療コンプライアンスが向上し得る。
【0198】
本技術の特定の形態において、プレナムチャンバ3200は、透明材料(例えば、透明ポリカーボネート)から構築される。透明材料の利用により、患者インターフェースの押しつけがましさが低減され得、治療へのコンプライアンスの向上が補助され得る。透明材料の利用により、臨床医が患者インターフェースの配置様態および機能を確認することが補助され得る。
【0199】
本技術の特定の形態において、プレナムチャンバ3200は、半透明材料から構成される。半透明材料を用いることにより、患者インターフェースの押しつけがましさを低減することができ、治療へのコンプライアンスの向上を補助することができる。
【0200】
5.3.3 位置決めおよび安定化構造
本技術の患者インターフェース3000のシール形成構造3100は、使用時において位置決めおよび安定化構造3300によって密閉位置において保持され得る。
【0201】
一形態において、位置決めおよび安定化構造3300により、顔から浮き上がるためのプレナムチャンバ3200中の陽圧の効果に打ち勝つのに少なくとも充分な保持力が得られる。
【0202】
一形態において、位置決めおよび安定化構造3300により、患者インターフェース3000上への引力に打ち勝つだけの保持力が得られる。
【0203】
一形態において、位置決めおよび安定化構造3300により、患者インターフェース3000上への破壊的作用の可能性(例えば、管引き摺りまたは患者インターフェースとの不慮の干渉に起因するもの)を解消するための安全マージンとして保持力が得られる。
【0204】
本技術の一形態において、患者が睡眠時に装着されるように構成された位置決めおよび安定化構造3300が提供される。一実施例において、位置決めおよび安定化構造3300は、装置の感知される嵩または実際の嵩を低減するように、目立たない外形または断面厚さを有する。一実施例において、位置決めおよび安定化構造3300は、矩形断面を有する少なくとも1つのストラップを含む。一実施例において、位置決めおよび安定化構造3300は、少なくとも1つの平坦ストラップを含む。
【0205】
本技術の一形態において、患者が患者の頭部の後部領域を枕に載せた状態で仰臥位睡眠位置において寝る際の妨げとなるような過度に大きいまたは嵩張るサイズにならないように構成された位置決めおよび安定化構造3300が提供される。
【0206】
本技術の一形態において、患者が患者の頭部の側部領域を枕に載せた状態で側臥位睡眠位置において寝る際の妨げとなるような過度に大きいまたは嵩張るサイズにならないように構成された位置決めおよび安定化構造3300が提供される。
【0207】
本技術の一形態において、位置決めおよび安定化構造3300は、位置決めおよび安定化構造3300の前方部位と位置決めおよび安定化構造3300の後方部位との間に配置された結合解除部位を備える。この結合解除部は、圧縮に耐えず、例えば可撓性またはぺらぺらのストラップであり得る。結合解除部は、患者が頭を枕に載せて横たわったときに結合解除部の存在により後部への力が位置決めおよび安定化構造3300に沿って伝達されてシールが妨害される事態を回避できるように、構築および配置される。
【0208】
本技術の一形態において、位置決めおよび安定化構造3300は、布地患者接触層、発泡材料内側層および布地外側層の積層物から構成されたストラップを含む。一形態において、発泡材料は、湿気(例えば、汗)がストラップを通過できるような多孔性である。一形態において、布地外側層は、フック材料部分と係合するループ材料を含む。
【0209】
本技術の特定の形態において、位置決めおよび安定化構造3300は、伸張可能である(例えば、弾力性と共に伸張可能である)ストラップを含む。例えば、ストラップは、使用時にはピンと張った状態にされて、シール形成構造を患者の顔の一部と密着させる力を方向付けるように、構成され得る。一実施例において、ストラップは、タイとして構成され得る。
【0210】
本技術の一形態において、位置決めおよび安定化構造は第1のタイを含み、第1のタイは、使用時においてその下縁部の少なくとも一部が上を通過して患者の頭の上耳底点へ移動し、後頭骨を被覆することなく頭頂骨の一部を被覆するように、構築および配置される。
【0211】
鼻専用マスクまたはフルフェイスマスクに適した本技術の一形態において、位置決めおよび安定化構造は、第2のタイを含む。第2のタイは、使用時においてその上縁部の少なくとも一部が患者頭部の下側の下耳底点の下側を通過し、患者頭部の後頭骨を被覆するかまたは患者頭部の後頭骨の下側に載置されるように、構築および配置される。
【0212】
鼻専用マスクまたはフルフェイスマスクに適した本技術の一形態において、位置決めおよび安定化構造は、第1のタイおよび第2のタイが相違に離隔方向に移動する傾向を低減させるように第1のタイおよび第2のタイを相互接続させるように構築および配置された第3のタイを含む。
【0213】
本技術の特定の形態において、位置決めおよび安定化構造3300は、屈曲可能であり例えば非剛性であるストラップを含む。本態様の利点として、患者が睡眠時に体を横たえたときにストラップがより快適になっている点がある。
【0214】
本技術の特定の形態において、位置決めおよび安定化構造3300は、内部を水蒸気が通過できるように呼吸可能なように構成されたストラップを含む。
【0215】
本技術の特定の形態において、1つよりも多くの位置決めおよび安定化構造3300を含むシステムが提供される。各位置決めおよび安定化構造3300は、異なるサイズおよび/または形状範囲に対応するための保持力を提供するように構成される。例えば、システムは、小さなサイズの頭ではなく大きなサイズの頭に適しかつ大きなサイズの頭ではなく小さなサイズの別の頭に適した位置決めおよび安定化構造3300の一形態を含み得る。
【0216】
5.3.4. 通気部
一形態において、患者インターフェース3000は、吐き出されたガス(例えば、二酸化炭素)の押し出しを可能にするように構成および配置された通気部3400を含む。
【0217】
特定の形態において、通気部3400は、プレナムチャンバ内の圧力が雰囲気に対して正であるときにプレナムチャンバ3200の内部から雰囲気への連続的通気流れを可能にするように構成される。通気部3400は、使用時においてプレナムチャンバ内の治療圧力を維持しつつ、通気流量の大きさが呼気されたCO2の患者による再呼吸を低減できるだけの充分な大きさになるように、構成される。
【0218】
本技術による一形態の通気部3400は、複数の穴(例えば、約20個~約80個の穴または約40個~約60個の穴または約45個~約55個の穴)を含む。
【0219】
通気部3400は、プレナムチャンバ3200内に配置され得る。あるいは、通気部3400は、結合解除構造(例えば、スイベル)内に配置される。
【0220】
5.3.5 結合解除構造(複数または単数)
一形態において、患者インターフェース3000は、少なくとも1つの結合解除構造(例えば、スイベルまたは球窩)を含む。
【0221】
5.3.6 接続ポート
接続ポート3600は、空気回路4170への接続を可能にする。
【0222】
5.3.7 前額支持部
一形態において、患者インターフェース3000は、前額支持部3700を含む。
【0223】
5.3.8 窒息防止弁
一形態において、患者インターフェース3000は、窒息防止弁を含む。
【0224】
5.3.9 ポート
本技術の一形態において、患者インターフェース3000は、プレナムチャンバ3200内の量へのアクセスを可能にする1つ以上のポートを含む。一形態において、これにより、臨床医が補充酸素を供給することが可能になる。一形態において、これにより、プレナムチャンバ3200内のガス(例えば、圧力)の特性を直接測定することが可能になる。
【0225】
5.4 用語集
本技術の開示目的のため、本技術の特定の形態において、以下の定義のうち1つ以上が適用され得る。本技術の他の形態において、別の定義も適用され得る。
【0226】
5.4.1. 一般
空気:本技術の特定の形態において、空気は大気を意味し得、本技術の他の形態において、空気は、他の呼吸可能なガスの組み合わせ(例えば、酸素を豊富に含む大気)を意味し得る。
【0227】
雰囲気:本技術の特定の形態において、「雰囲気」という用語は、(i)治療システムまたは患者の外部、および(ii)治療システムまたは患者を直接包囲するものを意味するものとしてとられるべきである。
【0228】
例えば、加湿器に対する雰囲気湿度とは、加湿器を直接包囲する空気の湿度であり得る(例えば、患者が睡眠をとっている部屋の内部の湿度)。このような雰囲気湿度は、患者が睡眠をとっている部屋の外部の湿度と異なる場合がある。
【0229】
別の実施例において、雰囲気圧力は、身体の直接周囲または外部の圧力であり得る。
【0230】
特定の形態において、雰囲気(例えば、音響)ノイズは、例えばRPTデバイスから発生するかまたはマスクまたは患者インターフェースから発生するノイズ以外の、患者の居る部屋の中の背景ノイズレベルとみなすことができる。雰囲気ノイズは、部屋の外の発生源から発生し得る。
【0231】
自動的な気道陽圧(APAP)療法:SDB発症の兆候の存在または不在に応じて、例えば、呼吸間に最小限界と最大限界との間で治療圧力を自動的に調節することが可能なCPAP療法。
【0232】
持続的気道陽圧(CPAP)療法:治療圧力が患者の呼吸サイクルを通じてほぼ一定である呼吸圧療法。いくつかの形態において、気道への入口における圧力は、呼息時において若干上昇し、吸息時において若干低下する。いくつかの形態において、圧力は、患者の異なる呼吸サイクル間において変動する(例えば、部分的な上気道閉塞の兆候の検出に応答して増加され、部分的な上気道閉塞の通知の不在時において低減される)。
【0233】
流量:単位時間あたりに送出される空気の瞬時の量(または質量)。流量とは、瞬間の量を指し得る。場合によっては、流量について言及した場合、スカラー量(すなわち、大きさのみを有する量)を指す。他の場合において、流量について言及した場合、ベクトル量(すなわち、大きさおよび方向両方を持つ量)を指す。流量には、符号Qが付与され得る。「流量」を簡略的に「流れ」と呼ぶ場合もある。
【0234】
患者の呼吸の実施例において、流量は、患者の呼吸サイクルの吸気部分に対してノミナルに陽圧であり得るため、患者の呼吸サイクルの呼気部分に対して負であり得る。合計流量Qtは、RPTデバイスから退出する空気の流量である。通気流量Qvは、吐き出されたガスの流出を可能にするために通気孔から退出する空気の流量である。漏洩流量Qlは、患者インターフェースシステムまたは他の場所からの漏洩の流量である。呼吸流量Qrは、患者の呼吸器系中に受容される空気の流量である。
【0235】
加湿器:「加湿器」という単語は、患者の医療呼吸状態を改善するために治療上有益な量の水(H2O)蒸気を空気流れへ提供することが可能な物理的構造を備えて構築、配置または構成された加湿装置を意味するものとして解釈される。
【0236】
漏洩:「漏洩」という用語は、意図しない空気流れとしてとられる。一実施例において、漏洩は、マスクと患者の顔との間のシールが不完全であることに起因して発生し得る。別の実施例において、漏洩は、周囲に対する回りエルボーにおいて発生し得る。
【0237】
ノイズ伝導(音響):本文書において、伝導ノイズとは、空気圧式経路(例えば、空気回路および患者インターフェースおよびその内部の空気)によって患者へ搬送されるノイズを指す。一形態において、伝導ノイズは、空気回路の端部における音圧レベルを測定することにより、定量化され得る。
【0238】
ノイズ放射(音響):本文書において、放射ノイズとは、周囲空気によって患者へ搬送されるノイズを指す。一形態において、放射ノイズは、当該対象の音響パワー/圧力レベルをISO3744に従って測定することにより、定量化され得る。
【0239】
ノイズ通気(音響):本文書において、通気ノイズとは、任意の通気(例えば、患者インターフェース中の通気孔)を通じた空気流れにより生成されるノイズを指す。
【0240】
患者:呼吸器疾患に罹患しているかまたはしていない人。
【0241】
圧力:単位面積あたりの力。圧力は、多様な単位で表現され得る(例えば、cmH2O、g-f/cm2、及びヘクトパスカル)。1cmH2Oは、1g-f/cm2に等しく、およそ0.98ヘクトパスカルである。本明細書において、他に明記無き限り、圧力はcmH2Oの単位で付与される。
【0242】
患者インターフェース中の圧力には記号Pmが付与され、現時点においてマスク圧力Pmが達成すべき目標値を表す治療圧力には記号Ptが付与される。
【0243】
呼吸圧力治療(RPT):雰囲気に対して典型的には陽圧である治療圧力における空気供給の気道入口への付加。
【0244】
人工呼吸器:患者が呼吸動作の一部または全てを行い際に圧力補助を提供する機械的デバイス。
【0245】
5.4.1.1 材料
シリコーンまたはシリコーンエラストマー:合成ゴム。本明細書において、シリコーンについて言及される場合、液体シリコーンゴム(LSR)または圧縮成形シリコーンゴム(CMSR)を指す。市販のLSRの一形態として、Dow Corningによって製造されるSILASTIC(この登録商標下において販売される製品群に含まれる)がある。別のLSR製造業者として、Wackerがある。他に逆の明記無き限り、例示的形態のLSRのASTMD2240によって測定した場合のショアA(またはタイプA)押込み硬さは、約35~約45である。
【0246】
ポリカーボネート:ビスフェノールAカーボネートの熱可塑性ポリマーである。
【0247】
5.4.1.2 機械的特性
弾性:弾性変形時にエネルギーを吸収することおよび除荷時にエネルギーを解放することが可能な材料の能力。
【0248】
弾性のある:除荷時に実質的に全てのエネルギーを解放する。例えば特定のシリコーンおよび熱可塑性エラストマーを含む。
【0249】
硬度:材料自体の変形に抵抗する能力(例えば、ヤング係数または規格化されたサンプルサイズ上において測定された押込硬さスケールによって記述されたもの)。
―「軟性」材料は、シリコーンまたは熱可塑性エラストマー(TPE)を含み得、例えば指圧力下において容易に変形し得る。
―「硬質」材料は、ポリカーボネート、ポリプロピレン、鋼またはアルミニウムを含み得、例えば指圧力下において容易に変形し得ない。
【0250】
構造または構成要素の剛度(または剛性):構造または構成要素が負荷を受けたときに変形に抵抗する能力。負荷は、力またはモーメントであり得る(例えば、圧縮、伸張、屈曲またはねじれ)。構造または構成要素は、異なる方向において異なる抵抗を提供し得る。
【0251】
フロッピー構造または構成要素:自重を支持させられた際に比較的短期間(例えば、1秒)以内に形状を変化させる(例えば、屈曲する)構造または構成要素。
【0252】
剛性の構造または構成要素:使用時において典型的に遭遇する負荷を受けた際に実質的に形状変化の無い構造または構成要素。このような用途の実施例として、患者インターフェースを例えばおよそ20~30cmH2Oの圧力の負荷において患者気道入口に対して密閉した様態でセットアップおよび維持することがあり得る。
【0253】
一実施例として、I形ばりは、第2の直交方向と比較した第1の方向において、異なる曲げ剛性(曲げ負荷に対する抵抗)を含み得る。別の実施例において、構造または構成要素は、第1の方向においてはフロッピーであり得、第2の方向においては剛性であり得る。
【0254】
5.4.2 呼吸サイクル
無呼吸:いくつかの定義によれば、無呼吸とは、所定の閾値を下回った流れが例えば10秒間の継続期間にわたって継続した場合に発生したと言われる。閉塞性無呼吸とは、患者の労作にもかかわらず、何らかの気道閉塞により空気の流れが許されないときに発生すると言われる。中枢性無呼吸とは、気道が開通しているにも関わらず呼吸努力の低下または呼吸努力の不在に起因して無呼吸が検出された状態を指すと言われる。混合無呼吸とは、呼吸努力の低下または不在が気道閉塞と同時発生した状態を指すと言われる。
【0255】
呼吸速度:患者の自発呼吸速度であり、通常は毎分あたりの呼吸回数で測定される。
【0256】
負荷サイクル:吸息時間Tiの合計呼吸時間Ttotに対する比。
【0257】
労作(呼吸):呼吸努力は、呼吸しようとしている人の自発呼吸によって行われる動きを指すと言われる。
【0258】
呼吸サイクルの呼気部分:呼気流れの開始から吸気流れの開始までの期間。
【0259】
流れ制限:流れ制限は、患者による労作の増大が流量の対応する増大を引き起こさない患者の呼吸における状況であると解釈される。呼吸サイクルの吸気部分において流れ制限が発生した場合、当該流れ制限は吸気流れ制限と称することができる。呼吸サイクルの呼気部分において流れ制限が発生した場合、当該流れ制限は呼気流れ制限と称することができる。
【0260】
流れ制限吸気の波形の種類:
(i) 平坦化:上昇の後に比較的平坦な部位が続いた後、下降が発生すること。
(ii) M字型:立ち上がりにおいて1つおよび立ち下がりにおいて1つの2つの局所的ピークを持ち、これら2つのピークの間に比較的平坦な部位がある。
(iii) 椅子状:単一の局所的ピークを持ち、このピークが立ち上がり部分に発生した後、比較的平坦な部位が続く。
(iv) 逆椅子状:比較的平坦な部位の後に単一の局所的ピークが続き、このピークが立ち下がり部分に発生する。
【0261】
呼吸低下:一部の定義によれば、呼吸低下は、流れの中断ではなく、流れの低下を意味する。一形態において、閾値速度を下回った流れ低下が継続期間にわたって続いた場合、呼吸低下が発生したと言われる。呼吸努力の低下に起因して呼吸低下が検出された場合、中枢性呼吸低下が発生したと言われる。成人の一形態において以下のうちいずれかが発生した場合、呼吸低下と見なされ得る:
(i)患者呼吸の30%の低下が少なくとも10秒+関連する4%の脱飽和、または、
(ii)患者呼吸の(50%未満の)低下が少なくとも10秒間継続し、関連して脱飽和が少なくとも3%であるかまたは覚醒が発生する。
【0262】
過呼吸:流れが通常の流量よりも高いレベルまで増加すること。
【0263】
呼吸サイクルの吸気部分:吸気流れの開始から呼気流れの開始までの期間が、呼吸サイクルの吸気部分としてとられる。
【0264】
開通性(気道):気道が開いている度合いまたは気道が開いている範囲。気道開通性とは、開口である。気道開通性の定量化は、例えば、開通性を示す値(1)と、閉鎖(閉塞)を示す値(0)で行われ得る。
【0265】
呼吸終末陽圧(PEEP):肺中の大気を越える圧力であり、呼気終了時に存在する。
【0266】
ピーク流量(Qpeak):呼吸流れ波形の吸気部分における流量最大値。
【0267】
呼吸気流量、空気流量、患者の空気流量、呼吸気空気流量(Qr):これらの用語は、RPTデバイスの呼吸空気流量の推定を指すものとして理解され得、通常リットル/分で表される患者の実際の呼吸流量である「真の呼吸流量」または「真の呼吸気流量」と対照的に用いられる。
【0268】
1回換気量(Vt):余分な努力をせずに通常の呼吸時に吸い込まれたかまたは吐き出された空気の量である。原則的に、吸気量Vi(吸気された空気の量)は、呼気量Ve(呼気された空気の量)に等しいため、単一の一回換気量Vtは、いずれかの量に等しいものとして規定され得る。実際には、一回換気量Vtは、何らかの組み合わせ(例えば、吸気量Viと呼気量Veの平均)として推定される。
【0269】
(吸息)時間(Ti):呼吸流量波形の吸気部分の継続期間。
【0270】
(呼息)時間(Te):呼吸流量波形の呼気部分の継続期間。
【0271】
(合計)時間(Ttot):呼吸流量波形の一つの吸気部分の開始と呼吸流量波形の次の吸気部分の開始との間の合計継続期間。
【0272】
典型的な最近の換気:所定の時間スケールにわたる換気Ventの直近値が密集する傾向となる換気値(すなわち、換気の直近値の中心の傾向の度合い)。
【0273】
上気道閉塞(UAO):部分的な上気道閉塞および合計上気道閉塞両方を含む。上気道上の圧力差の増加(スターリングレジスタ挙動)と共に流量がわずかに増加するかまたは低下し得る流れ制限の状態と関連し得る。
【0274】
換気(Vent):患者の呼吸器系によって行われるガス交換率の測定。換気の測定は、単位時間あたりの吸気および呼気流のうち片方または双方を含み得る。1分あたりの体積として表される場合、この量は、「分換気」と呼ばれることが多い。分換気は、単に体積として付与されることもあり、1分あたりの体積として理解される。
【0275】
5.4.3 換気
適応サーボ人工呼吸器(ASV):一定の目標換気を持つのではなく変更が可能なサーボ人工呼吸器。変更可能な目標換気は、患者の何らかの特性(例えば、患者の呼吸特性)から学習され得る。
【0276】
バックアップレート:人工呼吸器のパラメータであり、(自発呼吸努力によってトリガされない場合に)人工呼吸器から患者へ送達される最小呼吸速度(典型的には、1分あたりの呼吸数)を確立させる。
【0277】
サイクル:人工呼吸器の吸気フェーズの終了。自発呼吸をしている患者へ人工呼吸器から呼吸を送達する場合、呼吸サイクルの吸気部分の終了時において、当該人工呼吸器は、呼吸送達を停止するようサイクルされると言われる。
【0278】
呼気の気道陽圧(EPAP):、人工呼吸器が所与の時期に達成しようとする所望のマスク圧力の生成のために、呼吸内において変化する圧力が付加される基本圧力。
【0279】
終了時呼気圧力(EEP):呼吸の呼気部分の終了時において人工呼吸器が達成しようとする所望のマスク圧力。圧力波形テンプレートΠ(Φ)が呼気終了時にゼロの値である(すなわち、Φ=1のときにΠ(Φ)=0である場合)、EEPはEPAPに等しい。
【0280】
吸息の気道陽圧(IPAP):呼吸の吸気部分時に人工呼吸器が達成しようとする最大の所望のマスク圧力。
【0281】
圧力補助:人工呼吸器吸気時における当該人工呼吸器呼気時における圧力増加を示す数であり、吸気時の最大値と、基本圧力との間の圧力差を主に意味する(例えば、PS=IPAP-EPAP)。いくつかの文脈において、圧力補助とは、(人工呼吸器が実際に達成する差ではなく)人工呼吸器が達成しようとする差を意味する。
【0282】
サーボ人工呼吸器:患者換気を有しかつ目標換気を有する人工呼吸器であり、患者換気を目標換気に近づけるために圧力補助レベルを調節する。
【0283】
自発/タイミング(S/T):自発呼吸している患者の呼吸の開始を検出しようとする、人工呼吸器または他のデバイスのモード。しかし、デバイスが所定期間の間に呼吸を検出できない場合、デバイスは、呼吸送達を自動的に開始する。
【0284】
スイング:圧力補助に相当する用語。
【0285】
トリガ:人工呼吸器が自発呼吸する患者へ空気の呼吸を送達する場合、患者自身が呼吸サイクルの呼吸部分を開始したとき、当該人工呼吸器が呼吸送達を行うようトリガされたと言う。
【0286】
5.4.4 解剖学的構造
5.4.4.1 顔の解剖学的構造
翼(Ala):外部の外壁または各鼻穴の「翼」(複数形:alar)
【0287】
鼻翼角度:
【0288】
Alare:鼻翼上の最外側の点。
【0289】
翼曲率(または鼻翼頂上)点:各翼の曲線状基準線における最後方点であり、翼および頬の結合によって形成される折り目において見受けられる。
【0290】
耳介:耳の視認できる部分全体。
【0291】
(鼻)骨格:鼻の骨格は、鼻骨、上顎骨の前頭突起および前頭骨の鼻部分を含む。
【0292】
(鼻)軟骨格:鼻の軟骨格は、中隔軟骨、外側軟骨、大軟骨および小軟骨を含む。
【0293】
鼻柱:鼻孔を分離する皮膚片であり、鼻尖点から上唇へ延びる。
【0294】
鼻柱角度:鼻穴の中点を通じて引かれる線と、鼻下点と交差しつつフランクフルト水平に対して垂直に引かれる線との間の角度。
【0295】
フランクフォート水平面:眼窩縁の最下側点から左耳点へ延びる線。耳点は、ノッチ上側から耳介の耳珠への最も深い点である。
【0296】
眉間:軟組織中に配置され、前額部の正中矢状において最も顕著な点。
【0297】
外側鼻軟骨:軟骨の概して三角形の板。その上側周縁は鼻骨および上顎骨の前頭突起へ取り付けられ、その下側周縁は大鼻翼軟骨へ接続される。
【0298】
唇、下側(下唇:labrale inferius):
【0299】
唇、上側(上唇:labrale superius):
【0300】
大鼻翼軟骨:軟骨の板であり、外側鼻軟骨の下側に配置される。これは、鼻孔の前方部分の周囲において曲線状になる。その後端は、3つまたは4つの翼の小軟骨を含む強靱な線維膜により、上顎骨の前頭突起へ接続される。
【0301】
鼻孔(小鼻):概して楕円体の翼穴であり、鼻腔への入口を形成する。鼻孔(nares)の単数形は鼻孔(naris)(鼻穴)である。これらの鼻孔は、鼻中隔によって分離される。
【0302】
鼻唇溝または鼻唇折り目:皮膚の折り目または溝であり、鼻の各側から口の角部へ延びて、頬を上唇から分離させる。
【0303】
鼻唇角:鼻柱と上唇との間の角度であり、鼻下点と交差する。
【0304】
下耳底点:耳介の顔の皮膚への取り付けの最低点。
【0305】
上耳底点:耳介の顔の皮膚への取り付けの最高点。
【0306】
鼻尖点:鼻の最も突出した点または先端であり、頭部の部分の残り部分の側面図中に確認され得る。
【0307】
人中:鼻中隔の下側境界から上唇領域中の唇の上部へ延びる正中線溝。
【0308】
ポゴニオン:軟組織上に配置された、顎の最前方中点。
【0309】
(鼻)堤:鼻堤は、鼻の正中線隆起であり、セリオンから鼻尖点へ延びる。
【0310】
矢状面:前方(前)から後方(後)へ続く垂直面である。正中矢状面は、右半分および左半分に分割する矢状面である。
【0311】
セリオン:軟組織上に配置された、前頭鼻骨縫合の領域上の最も凹状の点である。
【0312】
中隔軟骨(鼻):鼻中隔軟骨は、隔膜の一部であり、鼻腔の前部分を分割する。
【0313】
鼻翼最下点:翼ベースの下側周縁における点であり、翼ベースは上(上)唇の皮膚と接合する。
【0314】
鼻下点:軟組織上に配置され、鼻柱が正中矢状における上唇と合体する点。
【0315】
スプラメントン:下唇中点と軟組織ポゴニオンとの間の下唇の正中線中の最も凹状の点。
【0316】
5.4.4.2 頭蓋骨の解剖学的構造
前頭骨:前頭骨は、前額部として知られる領域に対応する大型垂直部分である前頭鱗を含む。
【0317】
下顎骨:下顎骨は、下側顎部を形成する。オトガイ隆起は、顎部の骨隆起であり、顎を形成する。
【0318】
上顎骨:上顎骨は、上側顎部を形成し、下顎の下側および眼窩の下側に配置される。上顎骨の前頭突起は、鼻の側部によって上方に突出し、その外側境界の部分を形成する。
【0319】
鼻骨:鼻骨は、2つの小さな長方形骨であり、個人によってサイズおよび形態が異なる。鼻骨は、顔の中間部分および上部分に並んで配置され、その接合により鼻の「ブリッジ」を形成する。
【0320】
鼻根点:前頭骨および2本の鼻骨の交差であり、眼と鼻のブリッジの上側との間に直接設けられた凹領域である。
【0321】
後頭骨:後頭骨は、頭蓋の裏および下側部分に配置される。後頭骨は、楕円穴である大後頭孔を含み、この穴を通じて、頭蓋内腔が椎管と連痛する。大後頭孔の後側の曲面板は、後頭鱗である。
【0322】
眼窩:頭蓋骨中の骨空洞であり、眼球を含む。
【0323】
頭頂骨:頭頂骨は、相互に接合されると頭蓋の頂部および側部を形成する骨である。
【0324】
側頭骨:側頭骨は、頭蓋骨のベースおよび側部上に配置され、こめかみとして知られる顔の部分を支持する。
【0325】
頬骨:顔に含まれる2つの頬骨は、顔の上側部分および外側部分中に配置され、頬の隆起を形成する。
【0326】
5.4.4.3 呼吸器系の解剖学的構造
横隔膜:シート状の筋肉であり、胸郭下部上に延びる。横隔膜は、心臓、肺および肋骨を含む胸腔を腹腔から分離させる。横隔膜が収縮すると、胸腔の容量が増加し、肺中に空気が引き込まれる。
【0327】
喉頭:声帯ひだを収容する喉頭または発声器であり、咽頭の下部(下咽頭)を気管へ接続させる。
【0328】
肺:ヒトにおける呼吸臓器。肺の伝導性ゾーンは、気管、気管支、気管支、および終末細気管支を含む。呼吸ゾーンは、呼吸気管支、肺胞管および肺胞を含む。
【0329】
鼻腔:鼻腔(または鼻窩)は、顔の中央の鼻の上方および後方の空気が充填された大きな空間である。鼻腔は、鼻中隔と呼ばれる垂直フィンによって2つに分割される。鼻腔の側部には、鼻甲介または鼻介骨と呼ばれる3つの水平伸長物がある。鼻腔の前方には鼻があり、後方は後鼻孔を介して鼻咽頭内に繋がる。
【0330】
咽頭:鼻腔の直接下側(下方)に配置されかつ食道および喉頭の上方に配置された咽喉の部分。咽頭は、従来から以下の3つの部分へ区分される:鼻咽頭(上咽頭)(咽頭の鼻部分)、口咽頭(中咽頭)(咽頭の口部分)、および咽喉(下咽頭)。
【0331】
5.4.5 患者インターフェース
窒息防止弁(AAV):マスクシステムの構成要素またはサブアセンブリであり、フェールセーフ様態での雰囲気中への開口により、患者による過度のCO2の再呼吸の危険性を低減させる。
【0332】
エルボー:エルボーは、内部を移動する空気の流れの軸を方向付けて、角度を通じて方向を変化させる構造の実施例である。一形態において、角度はおよそ90度であり得る。別の形態において、角度は、90度超過または未満であり得る。エルボーは、ほぼ円形の断面を持ち得る。別の形態において、エルボーは、楕円または矩形の断面を持ち得る。特定の形態において、エルボーは、噛み合い構成要素に対して例えば約360度で回転可能であり得る。特定の形態において、エルボーは、噛み合い構成要素から例えばスナップ接続を介して取り外すことが可能であり得る。特定の形態において、エルボーは、製造時にワンタイムスナップを介して噛み合い構成要素へ組み付けることが可能である一方、患者が取り外すことはできない。
【0333】
フレーム:フレームは、ヘッドギアを接続する2つ以上の点間の引張荷重を支持するマスク構造を意味するものとしてとられる。マスクフレームは、マスク中の非気密負荷支持構造であり得る。しかし、いくつかの形態のマスクフレームは、気密であってもよい。
【0334】
機能的死空間:
【0335】
ヘッドギア:ヘッドギアは、頭部上において使用されるように設計された、一形態の位置決めおよび安定化構造を意味するものとしてとられる。例えば、ヘッドギアは、患者インターフェースを呼吸治療の送達のために患者の顔上の所定位置に配置および保持するように構成された1つ以上の支柱、タイおよび補剛材の集合を含み得る。いくつかのタイは、柔らかい可撓性の弾性材料(例えば、発泡材料および布地の層状複合材)によって形成される。
【0336】
膜:膜は、典型的には肉薄の要素を意味するものとしてとられ、好適には屈曲に対して実質的に抵抗せずかつ伸縮に対しては抵抗する。
【0337】
プレナムチャンバ:マスクプレナムチャンバは、空間の容積を少なくとも部分的に封入する壁を有する患者インターフェースの一部を意味するものとしてとられ、容積中の空気は、加圧されて使用時において気圧を超える。シェルは、マスクプレナムチャンバの壁の一部を形成し得る。
【0338】
シール:名詞(「シール」)として用いられる場合は構造を指し得、動詞(「密閉(する)」)として用いられる場合はその効果を指し得る。2つの要素は、別個の「シール」要素自体を必要とすることなく両者間において「シール」するかまたは「密閉」効果を得るように、構築および/または配置され得る。
【0339】
シェル:シェルは、屈曲、引っ張りおよび圧縮剛性を有する曲線状の比較的肉薄構造を意味するものとしてとられる。例えば、マスクの曲線状構造壁は、シェルであり得る。いくつかの形態において、シェルはファセットされ得る。いくつかの形態において、シェルは気密であり得る。いくつかの形態において、シェルは気密でない場合もある。
【0340】
補剛材:補剛材は、別の構成要素の剛軟度を少なくとも1つの方向において増加させるように設計された構造構成要素を意味するものとしてとられる。
【0341】
支柱:支柱は、別の構成要素の圧縮抵抗を少なくとも1つの方向において増加させるように設計された構造構成要素を意味するものとしてとられる。
【0342】
スイベル(名詞):構成要素のサブアセンブリであり、共通軸の周囲において好適には独立して好適には低トルク下において回転するように構成される。一形態において、スイベルは、少なくとも360度の角度で回転するように構成され得る。別の形態において、スイベルは、360度未満の角度で回転するように構成され得る。空気送達導管の文脈において用いられる場合、構成要素のサブアセンブリは好適には、一対組み合わせの円筒導管を含む。使用時において、スイベルからの空気流れの漏れはほとんど無い。
【0343】
タイ(名詞):張力に抵抗するように設計された構造。
【0344】
通気:(名詞):マスクまたは導管の内部の周囲空気への空気流れを可能にする構造であり、吐き出されたガスの臨床的に有効な洗い流しを可能にする。例えば、臨床的に有効な洗い流しにおいては、約10リットル/分~約100リットル/分の流量がマスク設計および治療圧力に応じて用いられ得る。
【0345】
5.4.6 構造の形状
本技術による製品は、1つ以上の三次元機械構造(例えば、マスククッションまたはインペラ)を含み得る。三次元構造は、二次元表面によって制限され得る。これらの表面は、関連付けられた表面の方向、位置、機能または他の何らかの特性を記述するためのラベルを用いて区別され得る。例えば、構造は、前表面、後表面、内面および外面のうち1つ以上を含み得る。別の実施例において、シール形成構造は、顔接触(例えば、外側の)表面と、別個の非顔接触(例えば、下側または内側の)表面を含み得る。別の実施例において、構造は、第1の表面および第2の表面を含み得る。
【0346】
三次元構造の形状および表面の説明を容易にするために、構造の表面を通じた点pにおける断面について先ず検討する。
図3B~
図3Fを参照されたい。
図3B~
図3Fは、表面上における点pにおける断面例と、その結果得られる平面曲線の例とを示す。
図3B~
図3Fは、pにおける外向き法線ベクトルも示す。pにおける外向き法線ベクトルは、表面から離隔方向に延びる。いくつかの実施例において、架空の小さな人が表面上に直立している観点から、この表面について説明する。
【0347】
5.4.6.1 一次元における曲率
pにおける平面曲線の曲率は、符号(例えば、正、負)および大きさ(例えば、pにおいて曲線に接する円形の1/半径)を持つものとして記述され得る。
【0348】
正の曲率:pにおける曲線が外向き法線に向かって曲がる場合、その点における曲率は、正の値を持つものとしてとられる(この架空の小さな人が点pから立ち去る場合、上り坂を歩行する必要がある)。
図3B(
図3Cと比較して比較的大きな正の曲率)および
図3C(
図3Bと比較して比較的小さな正の曲率)を参照されたい。このような曲線を、凹状と呼ぶことが多い。
【0349】
ゼロ曲率:pにおける曲線が直線である場合、曲率はゼロとしてとられる(この架空の小さな人が点pから立ち去る場合、上向きでも下向きでもない水平面を歩行することができる)。
図3Dを参照されたい。
【0350】
負の曲率:pにおける曲線が外向き法線から離隔方向に曲がる場合、その点およびその方向における曲率は、負の値を持つものとしてとられる(この架空の小さな人が点pから立ち去る場合、下り坂を歩行する必要がある)。
図3E(
図3Fと比較して比較的小さな負の曲率)および
図3F(
図3Eと比較して比較的大きな負の曲率)を参照されたい。このような曲線は、凸状と呼ばれることが多い。
【0351】
5.4.6.2 二次元表面の曲率
本技術による二次元表面上の所与の点における形状の記述は、複数の垂直断面を含み得る。複数の断面は、外向き法線(「法平面」)を含む面において表面を切断し得、各断面は、異なる方向においてとられ得る。各断面の結果、対応する曲率を有する平面曲線が得られる。その点における異なる曲率は、同一符号または異なる符号を持ち得る。その点における曲率はそれぞれ、(例えば、比較的小さな)大きさを有する。
図3B~
図3F中の平面曲線は、特定の点におけるこのような複数の断面の例であり得る。
【0352】
主要な曲率および方向:曲線の曲率が最大値および最小値をとる法平面の方向を主要な方向と呼ぶ。
図3B~
図3Fの実施例において、最大曲率は
図3Bにおいて発生し、最小は
図3Fにおいて発生するため、
図3Bおよび
図3Fは、主要な方向における断面である。pにおける主要な曲率は、主要な方向における曲率である。
【0353】
表面の領域:表面上の連結された点の集合。領域内のこの1組の点は、類似の特性(例えば、曲率または符号)を持ち得る。
【0354】
サドル領域:(上り坂または下り坂を歩行し得る架空の人が向く方向に応じて)各点において主要な曲率が反対の符号(すなわち、片方が正の符号および他方が負の符号)を有する領域。
【0355】
ドーム領域:各点において主要な曲率が同一符号(双方とも正(「凹状ドーム」)または双方とも負(「凸状ドーム」))を持つ領域。
【0356】
円筒型領域:1つの主要な曲率がゼロ(または、例えば製造公差内のゼロ)をとり、他方の主要な曲率が非ゼロである領域。
【0357】
平面領域:主要な曲率双方がゼロであるか(または例えば製造交差内のゼロである)表面の領域。
【0358】
表面の縁部:表面または領域の境界または限界。
【0359】
経路:本技術の特定の形態において、「経路」は、数学的―トポロジー的意味合いにおける経路(例えば、表面上におけるf(0)からf(1)への連続空間曲線)を意味するものとしてとられる。本技術の特定の形態において、「経路」は、例えば表面上の1組の点を含むルートまたはコースとして記述され得る。(架空の人の経路は、表面上において歩行する場所であり、庭の経路に類似する)。
【0360】
経路長さ:本技術の特定の形態において、「経路長さ」とは、表面に沿ったf(0)からf(1)への距離(すなわち、表面上の経路に沿った距離)を指すものとしてとられる。表面上の2つの点間において1つよりも多くの経路があり得、このような経路は、異なる経路長さを持ち得る。(架空の人の経路長さは、表面上を経路に沿って歩行する距離である)。
【0361】
直線距離:直線距離は、表面上の2つの点間の距離であるが、表面は考慮しない。平面領域上において、表面上の2つの点間の直線距離と同一の経路長さを有する表縁上の距離がある。非平面表面上において、2つの点間の直線距離と同一の経路長さを有する経路は存在し得ない。(架空の人にとって、直線距離は、「カラスが飛ぶ」距離に対応する)。
【0362】
5.4.6.3 空間曲線
空間曲線: 平面曲線と異なり、空間曲線は、任意の特定の平面内に必ずしも存在しない。空間曲線は閉鎖され得る。すなわち、終点を有さない。空間曲線は、三次元空間の一次元ピースとみなされ得る。DNA螺旋の鎖上を歩行している架空の人物は、空間曲線に沿って歩行する。典型的なヒトの左耳は、左手螺旋を含む(
図3Qを参照)。典型的なヒトの右耳は、右手螺旋を含む(
図3Rを参照)。
図3Sは、右手螺旋を示す。構造の縁部(例えば、膜またはインペラの縁部)は、空間曲線をたどり得る。一般的に、空間曲線は、空間曲線上の各点における曲率およびねじれによって記述され得る。ねじれとは、平面から発生する曲線の様態の尺度である。ねじれは、符号および大きさを有する。空間曲線上の点におけるねじれは、当該点における接線ベクトル、法線ベクトルおよび従法線ベクトルに対して特徴付けられ得る。
【0363】
接線単位ベクトル(または単位接線ベクトル):曲線上の各点について、当該点におけるベクトルは、当該点からの方向および大きさを指定する。接線単位ベクトルとは、当該点における曲線と同じ方向を向く単位ベクトルである。架空の人物が曲線に沿って飛行しており、特定の点において自身の車両から落ちた場合、接線ベクトルの方向は、その人物が移動しているはずの方向である。
【0364】
単位法線ベクトル:架空の人物が曲線に沿って移動している場合、この接線ベクトルそのものが変化する。接線ベクトルが変化している方向と同じ方向を向く単位ベクトルは、単位主法線ベクトルと呼ばれる。これは、接線ベクトルに対して垂直である。
【0365】
従法線単位ベクトル:従法線単位ベクトルは、接線ベクトルおよび主法線ベクトル双方に対して垂直である。その方向は、右手の法則(例えば
図3Pを参照)または表すあるいは左手の法則(
図3O)によって決定され得る。
【0366】
接触平面:単位接線ベクトルおよび単位主法線ベクトルを含む平面。
図3Oおよび
図3Pを参照されたい。
【0367】
空間曲線のねじれ:空間曲線の点におけるねじれとは、当該点における従法線単位ベクトルの変化速度の大きさである。これは、曲線の接触平面からの逸脱の程度を測定する。平面内にある空間曲線のねじれはゼロである。空間曲線の接触平面からの逸脱が比較的少量である場合、その空間曲線のねじれの大きさは比較的小さい(例えば、緩やかに傾斜する螺旋状経路)。空間曲線の接触平面からの逸脱が比較的大量である場合、その空間曲線のねじれの大きさは比較的大きい(例えば、急勾配に傾斜する螺旋状経路)。
図3Sを参照して、T2>T1であるため、
図3Sの螺旋の最上部コイルの近隣のねじれの大きさは、
図3Sの螺旋の最下部コイルのねじれの大きさよりも大きい。
【0368】
図3Pの右手の法則を参照して、右手従法線の方向に向かって曲がる空間曲線は、右手方向に正のねじれとしてみなされ得る(例えば、
図3Sに示すような右手螺旋)。右手従法線方向から離隔方向を向く空間曲線は、右手の負のねじれを持つものとしてみなされ得る(例えば、左手螺旋)。
【0369】
同様に、左手の法則(
図3Oを参照)を参照して、左手従法線方向を向く空間曲線は、左手の正のねじれ(例えば、左手螺旋)を持つものとしてみなされ得る。よって、左手の正の方向は、右手の負の方向に相当する。
図3Tを参照されたい。
【0370】
5.4.6.4 穴
表面は、一次元穴を持ち得る(例えば、平面曲線または空間曲線によって境界付けられた穴)。穴を含む肉薄構造(例えば、膜)の場合、この構造は、一次元穴を有するものとして記述され得る。例えば、
図3Iに示す構造の表面中の一次元穴が平面曲線によって境界付けられる様子を参照されたい。
【0371】
構造は、二次元穴(例えば、表面によって境界付けられた穴)を持ち得る。例えば、可膨張性タイヤは、タイヤ内面によって境界付けられた二次元穴を有する。別の実施例において、空気またはゲルのための空洞を備えたブラダーは、二次元穴を持ち得る。例えば
図3Lのクッション、および二次元穴を境界付ける内面が示される
図3Mおよび
図3Nにおける
図3Lの例示的断面を参照されたい。さらに別の実施例において、導管は、(例えばその入口またはその出口において)一次元穴を含み得、導管の内面によって境界付けられた二次元穴を含み得る。
図3Kに示す構造を通じておりかつ図示のように表面によって境界付けられた二次元穴も参照されたい。
【0372】
5.5 他の注意事項
他に文脈から明確に分かる場合および一定の範囲の値が提供されていない限り、下限の単位の1/10、当該範囲の上限と下限の間、および記載の範囲の他の任意の記載の値または介入値に対する各介入値は本技術に包含されることが理解される。介入範囲中に独立的に含まれるこれらの介入範囲の上限および下限が記載の範囲における制限を特に超えた場合も、本技術に包含される。記載の範囲がこれらの制限のうち1つまたは双方を含む場合、これらの記載の制限のいずれかまたは双方を超える範囲も、本技術に包含される。
【0373】
さらに、本明細書中に値(単数または複数)が本技術の一部として具現される場合、他に明記無き限り、このような値が近似され得、実際的な技術的実行が許容または要求する範囲まで任意の適切な有効桁までこのような値を用いることが可能であると理解される。
【0374】
他に明記しない限り、本明細書中の全ての技術用語および科学用語は、本技術が属する分野の当業者が一般的に理解するような意味と同じ意味を持つ。本明細書中に記載の方法および材料に類似するかまたは等しい任意の方法および材料を本技術の実践または試験において用いることが可能であるが、限られた数の例示的な方法および材料が本明細書中に記載される。
【0375】
特定の材料が構成要素の構築に好適に用いられるものとして記載されているが、特性が類似する明白な代替的材料が代替物として用いられる。さらに、それとは反対に記載無き限り、本明細書中に記載される任意および全ての構成要素は、製造可能なものとして理解されるため、集合的にまたは別個に製造され得る。
【0376】
本明細書中及び添付の特許請求の範囲において用いられるように、単数形である「a」、「an」および「the」は、文脈から明らかにそうでないことが示されない限り、その複数の均等物を含む点に留意されたい。
【0377】
本明細書中に記載される公開文献は全て、これらの公開文献の対象である方法および/または材料の開示および記載、参考のために援用される。本明細書中に記載の公開文献は、本出願の出願日前のその開示内容のみのために提供するものである。本明細書中のいずれの内容も、本技術が先行特許のためにこのような公開文献に先行していないと認めるものと解釈されるべきではない。さらに、記載の公開文献の日付は、実際の公開文献の日付と異なる場合があり、個別に確認が必要であり得る。
【0378】
「comprises」および「comprising」という用語は、要素、構成要素またはステップを非排他的な意味合いで指すものとして解釈されるべきであり、記載の要素、構成要素またはステップが明記されていない他の要素、構成要素またはステップと共に存在、利用または結合され得ることを示す。
【0379】
詳細な説明において用いられる見出しは、読者の便宜のためのものであり、本開示または特許請求の範囲全体において見受けられる内容を制限するために用いられるべきではない。これらの見出しは、特許請求の範囲または特許請求の範囲の制限の範囲の解釈において用いられるべきではない。
【0380】
本明細書中の技術について、特定の実施例を参照して述べてきたが、これらの実施例は本技術の原理および用途を例示したものに過ぎないことが理解されるべきである。いくつかの場合において、用語および記号は、本技術の実施に不要な特定の詳細を示し得る。例えば、「第1の(第1の)」および「第2の(第2の)」(など)という用語が用いられるが、他に明記無き限り、これらの用語は任意の順序を示すことを意図しておらず、別個の要素を区別するために用いられる。さらに、本方法におけるプロセスステップについての記載または例示を順序付けて述べる場合があるが、このような順序は不要である。当業者であれば、このような順序が変更可能でありかつ/またはその態様を同時にまたはさらに同期的に行うことが可能であることを認識する。
【0381】
よって、本技術の意図および範囲から逸脱することなく、例示的な実施例において多数の変更例が可能であり、また、他の配置構成が考案され得ることが理解されるべきである。
【符号の説明】
【0382】
患者 1000
同床者 1100
患者インターフェース 3000
非侵襲的患者インターフェース 3000
シール形成構造 3100
プレナムチャンバ 3200
位置決めおよび安定化構造 3300
通気部 3400
接続ポート 3600
前額支持部 3700
RPTデバイス 4000
空気回路 4170
加湿器 5000
患者インターフェース 6000
シール形成構造 6100
クッションアセンブリ 6150
プレナムチャンバ 6200
ヘッドギア 6300
後方ヘッドギアストラップ 6310
管 6350
中間導管部 6352
リップ部位 6354
アパチャ 6355
調節機構 6360
蛇腹管部 6362
接続ポート 6600
コネクタアセンブリ 7600
エルボーアセンブリ 7700
エルボー部材 7710
第1の端部 7712
管状端部 7713
第2の端部 7714
凹部 7715
側部凹状部 7715S
上側凹状部 7715U
ラグ 7716
管状端部 7717
チャンネル 7717C
停止部 7719
通気孔 7720
隆起 7722
フランジ 7722
シェルフ 7723
クリップ部材 7730
ピンチアーム 7740
ピンチアーム 7740
キャッチ部 7750
キャッチ部 7750
キャッチ 7755
凹部 7757
接続部 7760
ボタン部 7780
指用把持部 7781
スイベルコネクタ 7790
突起 7795
リング部材 7900
シール溝部 7905
テーパ状部 7907
第1の側面 7910
第1のフランジ 7915
第2の側面 7920
第2のフランジ 7925
チャンネル 7930
クリップフランジ 7940
ランプ 7941
クリップチャンネル 7945
シール部材 7950
接続部 7952
密閉部 7954
エルボーアセンブリ 8700
エルボー部材 8710
クリップ部材 8730
接続部 8760