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特許7193544熱間圧延における酸化物スケール生成を低減するための化学的方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】熱間圧延における酸化物スケール生成を低減するための化学的方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 26/00 20060101AFI20221213BHJP
   C09D 7/65 20180101ALI20221213BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20221213BHJP
   C01B 33/20 20060101ALI20221213BHJP
   C01B 33/40 20060101ALI20221213BHJP
   C23C 24/08 20060101ALI20221213BHJP
   C09D 1/00 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
C23C26/00 C
C09D7/65
C09D7/61
C01B33/20
C01B33/40
C23C24/08 C
C09D1/00
【請求項の数】 38
(21)【出願番号】P 2020543641
(86)(22)【出願日】2019-02-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-06-03
(86)【国際出願番号】 US2019018363
(87)【国際公開番号】W WO2019161311
(87)【国際公開日】2019-08-22
【審査請求日】2020-09-25
(31)【優先権主張番号】62/631,223
(32)【優先日】2018-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520302523
【氏名又は名称】クェーカー・ケミカル・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100133765
【弁理士】
【氏名又は名称】中田 尚志
(72)【発明者】
【氏名】ジン,ウェイジア
(72)【発明者】
【氏名】マーフィー,ジム
(72)【発明者】
【氏名】ビアード,エイミー
【審査官】松岡 徹
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-072011(JP,A)
【文献】特開平09-182910(JP,A)
【文献】米国特許第03440112(US,A)
【文献】米国特許第03861938(US,A)
【文献】特開昭49-030237(JP,A)
【文献】特開平07-062429(JP,A)
【文献】特開平02-133512(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00
C23C 26/00
C23C 28/00
C23C 24/00
B21B 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化物、窒化物、ホウ化物、金属酸化物、これらの混合物、又はこれらの複合材料から選択される少なくとも1つの高融点無機材料、
少なくとも1つのシリケート、及び
グラファイト、ダイヤモンド、及びシリコン粉末から選択される少なくとも1つの二酸化ケイ素代替物、
を含み、
二酸化ケイ素を5.0重量%未満含む、
熱間加工時の酸化物スケール形成を低減するための、金属基材上に形成された保護コーティングであって、
前記高融点無機材料の総量は30.0重量%~90.0重量%であり、
前記シリケートの総量は0.1重量%~3.5重量%であり、
前記二酸化ケイ素代替物の総量は5.0重量%~50重量%であり、
前記重量%は、前記保護コーティングの総重量に対して測定される、保護コーティング。
【請求項2】
前記少なくとも1つの高融点無機材料が、か焼酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム(ZrO)、炭化ケイ素、及びこれらの組み合わせから成る群より選択される、請求項1に記載の保護コーティング。
【請求項3】
前記少なくとも1つの高融点無機材料が、か焼酸化アルミニウムと炭化ケイ素との組み合わせである、請求項2に記載の保護コーティング。
【請求項4】
前記少なくとも1つの高融点無機材料が、5μm~44μmの範囲内のメジアン粒子サイズを有する、請求項1に記載の保護コーティング。
【請求項5】
前記高融点無機材料の総量が、30.0重量%~40.0重量%、30.0重量%~50.0重量%、30.0重量%~60.0重量%、30.0重量%~70.0重量%、30.0重量%~80.0重量%、30.0重量%~90.0重量%、40.0重量%~50.0%、40.0重量%~60.0重量%、40.0重量%~70.0重量%、40.0重量%~80.0重量%、40.0重量%~90.0重量%、50.0重量%~60.0重量%、50.0重量%~70.0重量%、50.0重量%~80.0重量%、50.0重量%~90.0重量%、60.0重量%~70.0重量%、60.0重量%~80重量%、60.0重量%~90.0重量%、70.0重量%~80.0重量%、70.0重量%~90.0重量%、及び80.0重量%~90.0重量%から選択され、前記重量%は、保護コーティングの総重量に対して測定される、請求項1に記載の保護コーティング。
【請求項6】
前記高融点無機材料の総量が、保護コーティングの総重量に対して40.0重量%~90.0重量%である、請求項1に記載の保護コーティング。
【請求項7】
前記少なくとも1つのシリケートが、クレイである、請求項1に記載の保護コーティング。
【請求項8】
前記クレイが、カオリン、タルク、石英、長石、ベントナイト、カイアナイト、ハロイサイト、ディッカイト、ナクライト、イライト、モンモリロナイト、パイロフィライト、スメクタイト、ノントロナイト、アタパルガイト、パリゴルスカイト、セピオライト、ホルマイト、クロライト、及びアルミノシリケート、並びにこれらの組み合わせから成る群より選択される、請求項7に記載の保護コーティング。
【請求項9】
前記クレイが、カオリン又はベントナイトである、請求項8に記載の保護コーティング。
【請求項10】
前記シリケートの総量が、保護コーティングの総重量に対して0.1重量%~2.0重量%である、請求項7~請求項9のいずれか一項に記載の保護コーティング。
【請求項11】
前記少なくとも1つの高融点無機材料、前記少なくとも1つのシリケート、前記少なくとも1つの二酸化ケイ素代替物、及び水を含む保護コーティングスラリーを前記金属基材上に塗布すること、及び、
前記金属基材を乾燥すること、
を含む、請求項1に記載の保護コーティングの形成する方法。
【請求項12】
前記保護コーティングスラリーの総重量に対して、水が20.0重量%~50.0重量%の範囲内の量で前記保護コーティングスラリーに存在する、請求項11に記載の方法
【請求項13】
前記保護コーティングスラリーが、分散剤、増粘剤、又は消泡剤、及びこれらの組み合わせから成る群より選択される添加剤をさらに含み、前記分散剤は、ポリアクリレートポリマーから選択され、前記増粘剤は、カルボキシメチルセルロースから選択される親水性ポリマーであり、前記消泡剤は、界面活性剤から選択される、請求項11に記載の方法
【請求項14】
前記添加剤が、保護コーティングスラリーの総重量に対して0.1重量%~2.0重量%の範囲内の量で存在する、請求項13に記載の方法
【請求項15】
炭化物、窒化物、ホウ化物、金属酸化物、これらの混合物、又はこれらの複合材料から選択される少なくとも1つの高融点無機材料、
少なくとも1つのシリケート、及び
グラファイト、ダイヤモンド、及びシリコン粉末から選択される少なくとも1つの二酸化ケイ素代替物、
を含み、
二酸化ケイ素を5.0重量%未満含む、
熱間加工時の酸化物スケール形成を低減するための、金属基材上に形成された保護コーティングであって、
前記高融点無機材料の総量は45.0重量%~90.0重量%であり、
前記シリケートの総量は0.1重量%~3.0重量%であり、
前記二酸化ケイ素代替物の総量は5.0重量%~50重量%であり、
前記重量%は、前記保護コーティングの総重量に対して測定される、保護コーティング。
【請求項16】
前記少なくとも1つの高融点無機材料が、か焼酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム(ZrO)、炭化ケイ素、及びこれらの組み合わせから成る群より選択される、請求項15に記載の保護コーティング。
【請求項17】
前記少なくとも1つのシリケートが、クレイである、請求項15に記載の保護コーティング。
【請求項18】
前記クレイが、カオリン、タルク、石英、長石、ベントナイト、カイアナイト、ハロイサイト、ディッカイト、ナクライト、イライト、モンモリロナイト、パイロフィライト、スメクタイト、ノントロナイト、アタパルガイト、パリゴルスカイト、セピオライト、ホルマイト、クロライト、及びアルミノシリケート、並びにこれらの組み合わせから成る群より選択される、請求項17に記載の保護コーティング。
【請求項19】
前記クレイが、カオリンである、請求項18に記載の保護コーティング。
【請求項20】
前記少なくとも1つの高融点無機材料が、か焼酸化アルミニウムと炭化ケイ素との混合物である、請求項16に記載の保護コーティング。
【請求項21】
前記クレイが、ベントナイトである、請求項18に記載の保護コーティング。
【請求項22】
前記二酸化ケイ素代替物が、シリコン粉末及びグラファイトから選択される、請求項15に記載の保護コーティング。
【請求項23】
前記二酸化ケイ素代替物が、シリコン粉末である、請求項22に記載の保護コーティング。
【請求項24】
前記シリコン粉末が、保護コーティングの総重量に対して10.0重量%~46.0重量%の範囲内の量で存在する、請求項23に記載の保護コーティング。
【請求項25】
前記保護コーティングが、保護コーティングの総重量に対して20.0重量%~50.0重量%のか焼酸化アルミニウム、10.0重量%~30.0重量%のSiC、10.0重量%~30.0重量%のシリコン粉末、及び0.1重量%~2.0重量%のベントナイトクレイを含む、請求項15に記載の保護コーティング。
【請求項26】
前記少なくとも1つの高融点無機材料、前記少なくとも1つのシリケート、前記少なくとも1つの二酸化ケイ素代替物、及び水を含む保護コーティングスラリーを前記金属基材上に塗布すること、及び、
前記金属基材を乾燥すること、
を含む、請求項1に記載の保護コーティングの形成する方法
【請求項27】
前記保護コーティングスラリーの総重量に対して、水が20.0重量%~50.0重量%の範囲内の量で前記保護コーティングスラリーに存在する、請求項26に記載の方法
【請求項28】
金属基材の熱間加工時の酸化物スケール形成を低減する方法であって、
炭化物、窒化物、ホウ化物、金属酸化物、これらの混合物、又はこれらの複合材料から選択される少なくとも1つの高融点無機材料、少なくとも1つのシリケート、及びグラファイト、ダイヤモンド、及びシリコン粉末から選択される少なくとも1つの二酸化ケイ素代替物を、水性キャリアと混合して、保護コーティングスラリーを調製する工程、
前記保護コーティングスラリーを金属基材の表面上に塗布する工程、
前記保護コーティングスラリーでコーティングされた金属基材を加熱オーブン中で乾燥する工程、及び
前記オーブン乾燥したコーティング金属基材を、2~10時間にわたって金属熱間加工炉で加熱する工程、
を含み、それによって、二酸化ケイ素を5.0重量%未満含む焼結保護コーティングが、前記金属基材上に形成され、前記金属基材上に形成される金属酸化物スケールの量が低減され、
ここで、
前記高融点無機材料の総量は30.0重量%~90.0重量%であり、
前記シリケートの総量は0.1重量%~3.5重量%であり、
前記二酸化ケイ素代替物の総量は5.0重量%~50.0重量%であり、
前記重量%は、前記保護コーティングの総重量に対して測定される、
方法。
【請求項29】
前記焼結保護コーティングを前記金属基材から除去する工程をさらに含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記金属熱間加工炉の温度が、1250℃である、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記金属基材が、鋼材を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記保護コーティングスラリーが、0.1kg/m~10.0kg/mの範囲内の量で塗布される、請求項28に記載の方法。
【請求項33】
前記保護コーティングスラリーが、少なくとも1.0kg/mの量で塗布される、請求項28に記載の方法。
【請求項34】
材料ロスが低減された金属材料を製造する方法であって、
炭化物、窒化物、ホウ化物、金属酸化物、これらの混合物、又はこれらの複合材料から選択される少なくとも1つの高融点無機材料、少なくとも1つのシリケート、及びグラファイト、ダイヤモンド、及びシリコン粉末から選択される少なくとも1つの二酸化ケイ素代替物を、水性キャリアと混合して、保護コーティングスラリーを調製する工程、
前記保護コーティングスラリーを金属基材の表面上に塗布して、保護コーティングスラリーでコーティングされた金属基材を形成する工程、
前記保護コーティングスラリーでコーティングされた金属基材を2~10時間にわたって金属熱間加工炉で加熱し、それによって、二酸化ケイ素を5.0重量%未満含む焼結保護コーティングが前記金属基材上に形成される、工程、及び
前記保護コーティングと酸化物スケールとを剥離して、熱間加工された金属材料を得る工程、
を含み、
ここで、
前記高融点無機材料の総量は30.0重量%~90.0重量%であり、
前記シリケートの総量は0.1重量%~3.5重量%であり、
前記二酸化ケイ素代替物の総量は5.0重量%~50.0重量%であり、
前記重量%は、前記保護コーティングの総重量に対して測定される、
方法。
【請求項35】
前記金属熱間加工炉の温度が、1250℃である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記金属基材が、鋼材を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記保護コーティングスラリーが、0.1kg/m~10kg/mの範囲内の量で塗布される、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記保護コーティングスラリーが、少なくとも1.0kg/mの量で塗布される、請求項35に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願についての記載
本出願は、その全内容が参照により本明細書に援用される2018年2月15日に出願された米国仮特許出願第62/631,223号の優先権を主張するものである。
【0002】
技術分野
本発明は、長い熱処理計画の過程で金属を酸化から一時的に保護する熱処理保護コーティング全般に関し、詳細には、鋼材の製造又は作製における鋼材熱間圧延の過程で酸化物スケールを低減するための高温保護コーティング膜に関する。
【背景技術】
【0003】
従来の鋼板の熱間圧延プロセスは、主として、ビレットの再加熱、熱間圧延、及びカーリングを含む(図1)。再加熱プロセスの過程で、鋼ビレットは、再加熱炉中で天然ガスを燃焼することにより、およそ1250℃まで加熱される。再加熱炉の内部の厳しい酸化雰囲気、高温、及び長い保持時間のために、厚い酸化物スケール(数mmの厚さの可能性がある)が、ビレット表面に形成される。鋼材上の酸化物スケールの主成分は、ウスタイト、マグネタイト、及びヘマタイトであり、60体積%~95体積%がウスタイトである。この酸化物スケールは、再加熱炉の出口近くで鋼材の表面から除去される必要があり、酸化に起因するロス率は、0.5%~2.5%に達し得る(Graf et al.参照)。これは、鋼材加工の生産性を低下させるだけでなく、鋼材の表面品質にも影響を及ぼす。
【0004】
高融点無機材料を含有する組成物を鋼材表面に塗布することで、保護コーティング層が形成され、それによって、再加熱プロセス時の鋼材表面の酸化/脱炭を防止することができる。保護コーティングに関する報告が成されており、例えば、中国特許第102584258号(‘258)には、再加熱炉中の鋼ビレットを1250℃~1500℃の温度で2時間~6時間にわたって保護することができる(すなわち、酸化物スケールの生成を80%超低減する)高温保護コーティングについて記載されている。この中国特許‘258に記載されている保護コーティング組成物は、以下の表1の通りの成分の混合物から構成されていた。
【0005】
【表1】
【発明の概要】
【0006】
そのような保護コーティングに関するいくつかの研究が行われてはきたが、金属基材に対する熱間加工操作時の酸化物スケール形成をブロックする方法が、依然として強く求められている。
【0007】
一実施形態では、本開示は、熱間加工時の酸化物スケール形成を低減するための金属基材に対する保護コーティングを提供し、保護コーティングは、約30.0重量%~約90重量%の範囲内の量で与えられる少なくとも1つの高融点無機材料、及び約0.5重量%~約30.0重量%の範囲内の量で与えられる少なくとも1つのシリケートを含み、重量%は、保護コーティング組成物の総重量に対して測定される。
【0008】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの高融点無機材料は、炭化物、窒化物、ホウ化物、金属酸化物、これらの混合物、又はこれらの複合材料である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの高融点無機材料は、か焼酸化アルミニウム、ケイ酸ジルコニウム(ZrO・SiO、Zircopax(商標))、ケイ酸ジルコニウムとシリカとの混合物(Zircopax Plus(商標))、酸化ジルコニウム(ZrO)、炭化ケイ素、及びこれらの組み合わせから成る群より選択される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの高融点無機材料は、ケイ酸ジルコニウム、シリカ、及び炭化ケイ素の混合物、又はか焼酸化アルミニウムと炭化ケイ素との混合物である。
【0009】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの高融点無機材料は、約5μm~約44μmの範囲内のメジアン粒子サイズを有する。
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの高融点無機材料は、約30.0重量%~約40.0重量%、約30.0重量%~約50.0重量%、約30.0重量%~約60.0重量%、約30.0重量%~約70.0重量%、約30.0重量%~約80.0重量%、約30.0重量%~約90.0重量%、約40.0重量%~約50.0%、約40.0重量%~約60.0重量%、約40.0重量%~約70.0重量%、約40.0重量%~約80.0重量%、約40.0重量%~約90.0重量%、約50.0重量%~約60.0重量%、約50.0重量%~約70.0重量%、約50.0重量%~約80重量%、約50.0重量%~約90.0重量%、約60.0重量%~約70.0重量%、約60.0重量%~約80.0重量%、約60.0重量%~約90.0重量%、約70.0重量%~約80.0重量%、約70.0重量%~約90.0重量%、約80.0重量%~約90.0重量%から選択される量の範囲で与えられ、重量%は、保護コーティングの総重量に対して測定される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの高融点無機材料は、保護コーティングの総重量に対して約40.0重量%~約90.0重量%の範囲内の量で与えられる。
【0010】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのシリケートは、クレイである。いくつかの実施形態では、クレイは、カオリン、タルク、石英、長石、ベントナイト、カイアナイト、ハロイサイト、ディッカイト、ナクライト、イライト、モンモリロナイト、パイロフィライト、スメクタイト、ノントロナイト、アタパルガイト、パリゴルスカイト、セピオライト、ホルマイト、クロライト、アルミノシリケート、及びこれらの混合物から成る群より選択される。いくつかの実施形態では、クレイは、カオリン又はベントナイトである。
【0011】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのシリケートは、保護コーティング組成物の総重量に対して約0.1重量%~約2.0重量%の範囲内の量で与えられる。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのシリケートは、保護コーティングの総重量に対して約10.0重量%~約30.0重量%の範囲内の量で与えられる。
【0012】
いくつかの実施形態では、保護コーティングは、さらに、キャリアとして水を含む。いくつかの実施形態では、水は、保護コーティングの総重量に対して約20.0重量%~約50.0重量%の範囲内の量で与えられる。
【0013】
いくつかの実施形態では、保護コーティングは、さらに、分散剤、増粘剤、消泡剤、又はこれらの組み合わせから選択される添加剤を含み、分散剤は、ポリアクリレートポリマーから選択され、増粘剤は、カルボキシメチルセルロースから選択される親水性ポリマーであり、消泡剤は、界面活性剤から選択される。いくつかの実施形態では、添加剤は、保護コーティングの総重量に対して約0.1重量%~約2.0重量%の範囲内の量で与えられる。
【0014】
一実施形態では、本開示は、熱間加工時の酸化物スケール形成を低減するための金属基材に対する保護コーティングを提供し、保護コーティングは、約45.0重量%~約90.0重量%の少なくとも1つの高融点無機材料、約10.0重量%~約46.0重量%の少なくとも1つのシリケートを含み、重量%は、保護コーティングの総重量に対して測定される。
【0015】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの高融点無機材料は、炭化物、窒化物、ホウ化物、金属酸化物、これらの混合物、又はこれらの複合材料である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの高融点無機材料は、か焼酸化アルミニウム、ケイ酸ジルコニウム(ZrO・SiO、Zircopax(商標))、ケイ酸ジルコニウムとシリカとの混合物(Zircopax Plus(商標))、酸化ジルコニウム(ZrO)、炭化ケイ素、及びこれらの組み合わせから成る群より選択される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの高融点無機材料は、ケイ酸ジルコニウム、シリカ、及び炭化ケイ素の混合物である。
【0016】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのシリケートは、クレイである。いくつかの実施形態では、クレイは、カオリン、タルク、石英、長石、ベントナイト、カイアナイト、ハロイサイト、ディッカイト、ナクライト、イライト、モンモリロナイト、パイロフィライト、スメクタイト、ノントロナイト、アタパルガイト、パリゴルスカイト、セピオライト、ホルマイト、クロライト、及びアルミノシリケート、並びにこれらの混合物から成る群より選択される。いくつかの実施形態では、クレイは、カオリンである。
【0017】
一実施形態では、本開示は、熱間加工時の酸化物スケール形成を低減するための金属基材に対する保護コーティングを提供し、保護コーティングは、約45.0重量%~約90.0重量%の少なくとも1つの高融点無機材料、約0.1重量%~約3.0重量%の少なくとも1つのシリケートを含み、重量%は、保護コーティングの総重量に対して測定される。
【0018】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの高融点無機材料は、炭化物、窒化物、ホウ化物、金属酸化物、これらの混合物、又はこれらの複合材料である。
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの高融点無機材料は、か焼酸化アルミニウム、ケイ酸ジルコニウム(ZrO・SiO、Zircopax(商標))、ケイ酸ジルコニウムとシリカとの混合物(Zircopax Plus(商標))、酸化ジルコニウム(ZrO)、炭化ケイ素、及びこれらの組み合わせから成る群より選択される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの高融点無機材料は、ケイ酸ジルコニウム、シリカ、及び炭化ケイ素の混合物である。
【0019】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのシリケートは、クレイである。いくつかの実施形態では、クレイは、カオリン、タルク、石英、長石、ベントナイト、カイアナイト、ハロイサイト、ディッカイト、ナクライト、イライト、モンモリロナイト、パイロフィライト、スメクタイト、ノントロナイト、アタパルガイト、パリゴルスカイト、セピオライト、ホルマイト、クロライト、アルミノシリケート、及びこれらの混合物から成る群より選択される。いくつかの実施形態では、クレイは、ベントナイトである。
【0020】
いくつかの実施形態では、保護コーティングは、実質的に二酸化ケイ素を含まない。いくつかの実施形態では、保護コーティングは、シリコン粉末又はグラファイトから選択される、二酸化ケイ素に対する代替物を含む。いくつかの実施形態では、代替物は、シリコン粉末である。
【0021】
いくつかの実施形態では、シリコン粉末は、保護コーティングの総重量に対して約10.0重量%~約46.0重量%の範囲内の量で存在する。
いくつかの実施形態では、保護コーティング組成物は、保護コーティングの総重量に対して約20.0重量%~約50.0重量%のか焼酸化アルミニウム、約20.0重量%~約40.0重量%のSiC、約10.0重量%~約30.0重量%のシリコン粉末、及び約0.1重量%~約2.0重量%のベントナイトクレイから本質的に成る。
【0022】
いくつかの実施形態では、保護コーティング組成物は、さらに、キャリアとして水を含む。いくつかの実施形態では、水は、保護コーティングの総重量に対して約20.0重量%~約50.0重量%の範囲内の量で与えられる。
【0023】
一実施形態では、本開示は、金属基材の熱間加工時の酸化物スケール形成を低減する方法を提供し:少なくとも1つの高融点無機材料及び少なくとも1つのシリケートを、水性キャリアと混合して、スラリーを調製する工程;スラリーを金属基材の表面上に塗布する工程;スラリーコーティング金属基材を加熱オーブン中で乾燥する工程、及び続いて、オーブン乾燥したコーティング金属基材を、2~10時間にわたって金属熱間加工炉の温度の熱に掛ける工程、を含み、それによって、緻密な焼結保護膜が、金属基材上に形成され、それによって、金属基材上に形成される金属酸化物スケールの量が低減される。
【0024】
いくつかの実施形態では、方法は、さらに、緻密な焼結保護コーティング膜を金属基材から除去する工程を含む。
いくつかの実施形態では、金属熱間加工炉の温度は、1250℃である。
【0025】
いくつかの実施形態では、金属基材は、鋼材を含む。
いくつかの実施形態では、保護コーティングは、約0.1kg/m~約10.0kg/mの範囲内の量で塗布される。
【0026】
いくつかの実施形態では、スラリー保護コーティングは、少なくとも1.0kg/mの量で塗布される。
一実施形態では、本開示は、材料ロスが低減された金属材料を製造する方法を提供し:少なくとも1つの高融点無機材料及び少なくとも1つのシリケート粉末を、水性キャリアと混合して、スラリーを調製する工程;スラリーを金属基材の表面上に塗布して、スラリーコーティング金属基材を形成する工程;並びにスラリーコーティング金属基材を、2~10時間にわたって金属熱間加工炉の温度で加熱し、それによって、緻密な焼結保護コーティング膜が、金属基材上に形成される、工程、並びに保護コーティング膜と酸化物スケールとを剥離して、熱間加工された金属材料を得る工程、を含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、金属熱間加工炉の温度は、1250℃である。
いくつかの実施形態では、金属基材は、鋼材を含む。
いくつかの実施形態では、保護コーティングは、約0.1kg/m~約10kg/mの範囲内の量で塗布される。いくつかの実施形態では、保護コーティングは、少なくとも1.0kg/mの量で塗布される。
【0028】
1つの実施形態では、本開示は、加熱に掛けられる金属表面を保護するための組成物を提供し、組成物は、約0.01%~約100%の相対濃度のシリケート、及び約0.01%~約100%の相対濃度のクレイを含む。
【0029】
1つの実施形態では、組成物は、さらに、約0.01%~約100%の相対濃度の液体を含む。1つの実施形態では、液体は、約0.01%~約100%の相対濃度の水を含む。
【0030】
1つの実施形態では、組成物は、さらに、約0.01%~約100%の相対濃度の分散剤を含む。1つの実施形態では、分散剤は、約0.01%~約100%の相対濃度のポリアクリレートポリマーを含む。
【0031】
1つの実施形態では、組成物は、さらに、約0.01%~約100%の相対濃度の増粘剤を含む。1つの実施形態では、増粘剤は、約0.01%~約100%の相対濃度のカルボキシメチルセルロースを含む。
【0032】
1つの実施形態では、クレイは、約0.01%~約100%の相対濃度の少なくとも1つのケイ酸アルミニウム及び約0.01%~約100%の相対濃度のシリカを含む。1つの実施形態では、クレイは、約0.01%~約100%の相対濃度のカオリナイトを含む。1つの実施形態では、クレイは、約0.01%~約100%の相対濃度のカオリンクレイを含む。1つの実施形態では、クレイは、約0.01%~約100%の相対濃度のベントナイトクレイを含む。1つの実施形態では、クレイは、約0.01%~約100%の相対濃度のケイ酸ジルコニウムを含む。
【0033】
1つの実施形態では、組成物は、さらに、約0.01%~約100%の相対濃度の炭化物を含む。1つの実施形態では、炭化物は、約0.01%~約100%の相対濃度の炭化ケイ素を含む。
【0034】
1つの実施形態では、組成物は、さらに、約0.01%~約100%の相対濃度のシリコンを含む。1つの実施形態では、組成物は、さらに、約0.01%~約100%の相対濃度の消泡剤を含む。
【0035】
本発明の一実施形態では、本開示は、加熱に掛けられる金属表面を保護するための焼結セラミック組成物を提供し、組成物は、約0.01%~約100%の相対濃度のシリケート、及び約0.01%~約100%の相対濃度のクレイを含む。1つの実施形態では、クレイは、約0.01%~約100%の相対濃度のケイ酸アルミニウム及び約0.01%~約100%の相対濃度のシリカの少なくとも1つを含む。1つの実施形態では、クレイは、約0.01%~約100%の相対濃度のカオリナイトを含む。1つの実施形態では、クレイは、約0.01%~約100%の相対濃度のカオリンクレイを含む。
【0036】
1つの実施形態では、クレイは、約0.01%~約100%の相対濃度のベントナイトクレイを含む。1つの実施形態では、クレイは、約0.01%~約100%の相対濃度のケイ酸ジルコニウムを含む。
【0037】
1つの実施形態では、組成物は、さらに、約0.01%~約100%の相対濃度の炭化物を含む。1つの実施形態では、炭化物は、約0.01%~約100%の相対濃度の炭化ケイ素を含む。
【0038】
1つの実施形態では、組成物は、さらに、約0.01%~約100%の相対濃度のシリコンを含む。1つの実施形態では、組成物は、さらに、約0.01%~約100%の相対濃度の消泡剤を含む。
【0039】
本発明の一実施形態では、本開示は、金属基材の熱間圧延プロセス時のスケール形成を低減する方法を提供し:請求項1に記載の組成物を基材の表面に塗布する工程;表面上に焼結セラミック組成物を形成する工程;及び金属基材を加熱する工程を含む。
【0040】
1つの実施形態では、方法は、さらに、セラミック組成物を金属基材から除去する工程を含む。1つの実施形態では、金属基材は、鋼材を含む。1つの実施形態では、コーティング組成物は、約0.1kg/m~約10kg/mで塗布される。
【0041】
本発明の一実施形態では、本開示は、金属基材の熱間圧延の方法を提供し:組成物を基材の表面に塗布する工程;表面上に焼結セラミック組成物を形成する工程;及び金属基材を加熱する工程を含む。
【0042】
1つの実施形態では、方法は、さらに、セラミック組成物を金属基材から除去する工程を含む。1つの実施形態では、金属基材は、鋼材を含む。
1つの実施形態では、コーティング組成物は、約0.1kg/m~約10kg/mで塗布される。1つの実施形態では、焼結セラミックコーティング膜は、約0.1kg/m~約10kg/mで形成される。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1図1は、ホットストリップミル及び酸化物スケールの分類を示す。
図2図2は、熱による粉末粒子の焼結プロセスを示す。
図3図3は、セラミックボウル上のフリット3110の1250℃で20分間の焼結外観を示す。コーティングありの場合、透明なグレーズ膜がセラミック表面上に形成し、ボウルを不浸透性及び耐水性としている。
図4図4A、4B、及び4Cは、鋼材表面(Q-panel(登録商標))上の、1060℃で20分間(図4A)、1250℃で20分間(図4B)、及び1250℃で4時間(図4C)でのフリット3110の焼結を示す。図4Aでは、Q-panel上に不透明のグレーズが形成された。図4Bでは、グレーズが透明となった。4時間の加熱後、図4Cは、Q-panelが完全に黒色のスケールに変換されたことを示している。
図5図5Aは、酸化物スケールサンプルのSEM/EDX画像を示す。図5Bは、図5Aのスケールサンプルの原子構成を示す。
図6図6A、6B、及び6Cは、鋼材表面(Q-panel(登録商標))上の、加熱前(図6A)、1100℃で4時間加熱後(図6B)、及び1250℃で4時間後(図6C)でのカオリンの焼結を示す。
図7図7A及び7Bは、加熱後のアルミナコーティング膜(図7A)、及び指での圧力によるアルミナコーティング膜の変形(図7B)を示す。
図8図8A及び8Bは、加熱前(図8A)及び加熱後(図8B)のブランクパネル及びコーティングパネルを示す。
図9図9Aは、図8Bの丸で囲んだ領域のSEM/EDX画像を示す。図9Bは、図9A中に示される3か所、P001、P002、及びP003の原子構成を示す。
図10】酸化物スケール減少に対するコーティング塗布率の効果を示す。
図11図11A及び11Bは、パイロットミル試験における4311-12Aでのコーティングからの結果を示す。図11Aは、コーティングなしの板上のスケール厚さを示し、図11Bは、4311-12Aでコーティングした板上のスケール厚さを示す。
【発明を実施するための形態】
【0044】
1つの態様において、本発明は、金属基材上、具体的には鋼材表面上における高温での酸化物スケール形成を妨げることによって重量ロスを回避するための保護コーティング膜の使用、及び金属表面上での保護コーティングの形成方法を提供する。そうして形成された保護コーティングは、良好な耐高温特性を有する。この種類のコーティングは、金属基材を重量ロスから保護し、例えば、酸化物スケール生成を、実験用炉では80%低減し、パイロット炉では52%低減する。
【0045】
本発明の1つの目的は、金属表面上に、1250℃で少なくとも4時間にわたって金属表面(すなわち、鋼材)上に留まることができる保護コーティングを形成することである。本開示での保護コーティングは、そのような要件を満たしている。
【0046】
金属の熱間加工において金属の重量ロスの効果的な低減を実現するために、保護コーティングは、高温に適応可能な完全で緻密な無機膜層でなければならない。保護コーティングは、再加熱炉中の高温(約1250℃)に長時間(すなわち、2~10時間)にわたって耐える高い融点を有するべきであるだけでなく、金属表面への酸素の浸透を抑制することができる細孔のない膜が形成されるように、高い焼結度を有するべきである。加えて、保護コーティングは、金属が炉から排出された後、酸化物スケールと共に容易に剥離除去することができる。
【0047】
一実施形態では、本開示は、少なくとも1つの高温無機材料及び少なくとも1つのシリケートを含有する無機粒子組成物を焼結することによって、金属基材上に保護コーティングを作製する方法を提供し、無機粒子は、焼結によって互いに結合される。そうして形成された保護コーティングは、保護コーティングの構成成分である無機粒子から、無機粒子が互いに結合するまで焼結されて作製された膜である。
【0048】
焼結は、ある材料の粒子の、その融点未満の温度での、又は混合物の場合はその主構成成分の融点未満の温度での、粒子が互いに結合されるまでの熱処理である。これは、典型的には、材料の強度及び密度を増加させる。「焼結された」の用語は、温度の上昇に従って粒子混合物中で発生する粒子間の結合及び充填を意味する。この変換は、温度の上昇と共に加速し、なぜなら、粒子の表面がますます化学的に活性となるからである。加えて、温度の上昇によって、粒子表面がより滑りやすくなり、粒子は、より自由に密度を高め続けるように再配列する。同様に、より微細な粒子サイズは、表面積を増加させ、さらにより強度を高めることになる。焼結は、プロセスでもあり状態でもある。
【0049】
一実施形態では、金属基材上に保護コーティングを作製する方法は:(1)構成成分の無機材料の混合物を含有するグリーンコートを形成する工程;(2)グリーンコートを、再加熱炉中、約1250℃で焼結する工程、を含み、グリーンコート層とは、未焼結層である。
【0050】
グリーンコート層を有する金属基材が、再加熱炉中で加熱される場合、室温から1250℃までのゆるやかな温度の上昇の過程で(例:10℃/分)、グリーンコート層は、次第に脱水及び乾燥されて、粉末コートを形成する。温度がさらに上昇すると、粉末コートの焼結が開始し、粉末コートの厚さも細孔サイズも減少し、それによって、多孔性及び透過性が次第に低下する(図2)。構成成分の無機材料の軟化温度に到達すると、無機材料は軟化し、無機材料の溶融が開始する。焼結プロセスの過程で、粉末コートの多孔性が急激に低下し、粉末コートの密度が大きく上昇する(緻密化)。構成成分の無機材料の溶融温度よりも高く温度がさらに上昇すると、粉末コートは、溶融して液体状態となり、次に金属基材の表面に融合する強く緻密な無限膜を形成する。この膜は、金属表面を酸化性雰囲気から実質的に防護し、それによって、酸化物スケールの生成を防止する。
【0051】
セラミック焼結プロセスにおいて、より高い温度及びより長い保持時間は、焼結コーティング膜の相対密度を増加させ得るが、再加熱炉中での加熱の時間及び温度の調節には、限界がある。1250℃において、高融点無機材料粒子中にブレンドされた低融点粒子が、焼結後の保護コーティング層の相対密度を増加させることができることが見出された。1250℃において、低融点粒子は、液相に溶融可能であり、高融点無機材料粒子間のギャップを充填可能であることが観察された。相対密度は増加され、高融点無機材料粒子間の細孔は、解放され、それによって、高融点無機材料粒子は、溶融し焼結された粒子を保持して、金属基材の表面に維持する。
【0052】
本明細書で述べる保護コーティングは、少なくとも1つの高融点無機材料及び少なくとも1つのシリケートクレイを含む。保護コーティングは、加熱された金属基材の表面上に酸化物スケールが形成されることを実質的に低減又は防止する。いくつかの実施形態では、金属表面上の保護コーティングは、金属熱間加工時に、固体粒子状無機材料の混合物(例:Al、SiOの原材料)を加熱することによって形成される。
【0053】
焼結前のグリーンコートは、多孔性で緻密ではなく、したがって、再加熱炉内部の酸化性雰囲気は、細孔を通って金属基材の表面に拡散することができ、金属と反応して金属酸化物スケールを形成する。したがって、焼結前のグリーンコート層の段階では、グリーンコートは、金属を保護するように作用することはできない。
【0054】
本明細書で述べるグリーンコートは、金属基材の表面に直接噴霧されてよく、又はブラシ塗布されてよく、続いての焼結プロセスでは、金属熱処理プロセス(すなわち熱間圧延前の予備加熱)において、金属基材に耐高温性を付与する緻密な保護膜層を形成することができる。したがって、金属製造プロセスの生産性を、さらには金属製品の表面品質を、向上させることができる。
【0055】
定義
上記のセクション及び本明細書の残りの部分全体を通して用いられる場合、特に定めのない限り、本明細書で用いられるすべての技術的及び科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書で言及されるすべての特許文献及び刊行物は、その全内容が参照により援用される。
【0056】
「金属基材」の用語は、本明細書で用いられる場合、その表面が少なくとも部分的に金属から構成される基材全般を意味する。金属としては、様々な種類の鋼材を挙げることができ、普通炭素鋼、低炭素鋼、又は合金鋼などである。
【0057】
「高融点無機材料」の用語は、本明細書で用いられる場合、2000℃以上の溶融温度を有する微細に粉砕された無機材料全般を意味する。高融点無機材料は、結晶若しくはガラス形態のアルカリ金属酸化物又はアルカリ土類金属酸化物、例えば、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属のアルミノシリケート又はアルミノボレート、さらには炭化物、窒化物、ホウ化物、及びケイ化物などの非酸化物であってよい。高融点材料は、金属基材へのコーティングの接着性を高めるための、さらには保護コーティングの多孔性マイクロ環境を制御する補助とするための、保護コーティング組成物に対するフィラーとして機能することができる。
【0058】
「シリケート」の用語は、本明細書で用いられる場合、1つのケイ素原子が正四面体の各頂点にある4つの酸素原子に囲まれ、それらと結合しているケイ素四面体を有するシリケート鉱物(例:シリケートクレイ)全般を意味する。これらのSiO 四面体単位は、酸素原子を共有することができ、様々な方法で連結することができ、それによって構造が異なる結果となる。これらの構造のトポロジーが、シリケートの分類の基礎を形成する。例えば、フィロシリケートは、各四面体が、他の3つの四面体の各々と1つの酸素原子を共有するシート構造を有する。シリケート鉱物は、様々なカチオンが進入可能である空隙(すなわち、結晶学的サイト)を含有する酸素原子の3次元配列を有する。四面体(4配位)サイト以外に、6配位、8配位、及び12配位サイトも一般的である。四面体サイトは、一般的に、ケイ素及びアルミニウムによって占有され、6配位サイトは、アルミニウム、鉄、チタン、マグネシウム、リチウム、マンガン、及びナトリウムによって占有され、8配位サイトは、ナトリウム、カルシウム、及びカリウムによって占有され、12配位サイトは、カリウムによって占有される。
【0059】
「フリット」の用語は、本明細書で用いられる場合、特別な溶融オーブン中で溶融し、急冷してガラスを形成し、造粒したガラス組成物全般を意味する。フリットは、ガラスを構成する複数の公知の無機成分を含有する(例:Al及びSiO)。フリットは、ガラスを構成する複数の公知の無機成分を混合することによって製造される。混合された複数の無機成分が溶融されて、溶融ガラスが製造される。溶融ガラスは、急冷され、固化される。固化されたガラスは、必要に応じて粉砕される。
【0060】
「グレーズ」の用語は、本明細書で用いられる場合、焼成によってセラミック体に融合されたガラス質物質の不浸透性層又はコーティング全般を意味する。グレーズの原材料は、一般的に、シリカなどのガラス形成剤、酸化ナトリウム、酸化カリウム、及び酸化カルシウムを含む様々な金属酸化物などのセラミックフラックスを含み、加えて、クレイ由来のアルミナ、及び酸化ジルコニウム又は酸化スズなどの乳白剤を含んでよい。
【0061】
「モル%」としても知られる「%」の用語は、本明細書で用いられる場合、一般的に、焼成されたグレーズ又はガラスの酸化物組成を表すために用いられる。用語「%」は、酸化物分子の数のパーセントを表している(それらの重量を比較する分析値とは対照的に)。用語「%」は、各種類の酸化物の数のパーセントの表現である。数のパーセント「%」は、焼成されたグレーズ又はガラス中の酸化物含有量を比較するための相対値である。例えば、ケイ酸ジルコニウム(ZrO・SiO)の酸化物含有量に対する数のパーセント「%」は、32.79%のSiO、67.21%のZrOを含む。
【0062】
単位「重量%」(重量パーセント)は、本明細書で用いられる場合、一般的に、保護コーティングの総重量に対する原材料の重量パーセントの表現である。本明細書で述べる重量%は、本出願全体を通して保護コーティングを作製するために用いられるすべての原材料に対する重量パーセントの計算に適用可能である。
【0063】
金属材料を製造するために保護コーティングを有する金属基材を「加熱すること」の用語は、本明細書で用いられる場合、金属材料を熱間加工すること全般を意味する。熱間加工としては、熱間押出加工、熱間穿孔圧延(hot piercing rolling)、熱間圧延、及び熱間鍛造が挙げられる。加熱された金属材料が、熱間加工され、例えば、金属材料は、ロールによって圧延されて、金属板又は金属棒が製造される。
【0064】
1.保護コーティング
本発明の一実施形態では、本開示は、少なくとも1つの高融点無機材料(例:炭化ケイ素)及び少なくとも1つのシリケートを含む、金属基材の熱間加工時の酸化物スケールを低減するための保護コーティングを提供する。「保護コーティング」の用語は、本明細書で用いられる場合、ウェットスラリーコーティング、スラリーコーティングから得られる乾燥粉末コーティング(グリーンコートとしても知られる)、及び乾燥粉末コーティングを高温下(例:金属熱間圧延における再加熱炉の温度)で焼成した後の焼結コーティング膜などのいかなる中間コーティングをも意味する。
【0065】
(a)高融点無機材料
いくつかの実施形態では、高融点無機材料は、少なくとも約2000℃の融点を有する。いくつかの実施形態では、高融点無機材料は、約2000℃~約3000℃の範囲内の融点を有する。いくつかの実施形態では、高融点無機材料は、2000℃~2730℃の範囲内の融点を有する。いくつかの実施形態では、高融点無機材料は、約2100℃~約2300℃の範囲内の融点を有する。1つの実施形態では、高融点無機材料は、約2020℃の融点を有する。1つの実施形態では、高融点無機材料は、約2070℃の融点を有する。1つの実施形態では、高融点無機材料は、約2730℃の融点を有する。
【0066】
いくつかの実施形態では、高融点無機材料は、3000℃よりも高い融点を有する超高温セラミック材料である。いくつかの実施形態では、超高温セラミック材料は、約3265℃の融点を有する。いくつかの実施形態では、高融点無機材料は、3600℃よりも高い融点を有する超高温セラミック材料である。
【0067】
いくつかの実施形態では、高融点無機材料は、ホウ化物、炭化物、窒化物、金属酸化物、又はこれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、保護コーティングは、アルミナ(Al)、ジルコニア(ZrO)、ケイ酸ジルコニウム(ジルコンとしても知られる、ZrO・SiO)、二酸化ハフニウム(HfO)、二酸化トリウム(ThO)、二酸化ウラン(UO)、マグネシア(MgO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化ベリリウム(BeO)、酸化イットリウム(イットリア、Y)、マグネシウムアルミネート(MgAl)、炭化タングステン(WC)、炭化ケイ素(SiC)、炭化チタン(TiC)、炭化ジルコニウム(ZrC)、炭化タンタル(TaC)、窒化タンタル(TaN)、二ホウ化ジルコニウム(ZrB)、窒化チタン(TiN)、窒化ハフニウム(HfN)、シリカムライト、鉄(II)クロマイト、マグネシア-クロマイト、窒化ホウ素(BN)、及びこれらの複合体から選択される1又は複数の高融点無機材料を含んでよい。
【0068】
いくつかの実施形態では、高融点無機材料は、ケイ酸ジルコニウム(ジルコンとしても知られる)である。ケイ酸ジルコニウムは、極めて安定であり、硬く、緻密である。ケイ酸ジルコニウム粒子は、角張っており、非常に硬く、耐熱性であり、ボールミリングによって非常に小さい粒子サイズとされた場合であっても、グレーズ溶融物に容易に溶解することはない。ジルコンは、ケイ酸ジルコニウムの一般名であり、Zircopax(商標)、Zircosil(商標)などの商品名で販売されている(ZrO・SiO、32.79% SiO、67.21% ZrO)。
【0069】
いくつかの実施形態では、高融点無機材料は、Zircopax Plus(商標)、Superpax(商標)、Ultrox(商標)、Zircosil(商標)、及びExcelopax(商標)を含む商品名で販売されているケイ酸ジルコニウム乳白剤である。Zircopax Plus(商標)ブランドのケイ酸ジルコニウム乳白剤は、95.0重量%~100重量%の量のケイ酸ジルコニウムと0.1重量%~1.0重量%の量のシリカとの混合物を含む(0.10% TiO、1.30% HfO、0.53% Al、32.50% SiO、64.80% ZrO、0.02% Fe)。いくつかの実施形態では、ケイ酸ジルコニウム乳白剤は、2100℃~2300℃の範囲内の融点を有する。
【0070】
いくつかの実施形態では、高融点無機材料は、か焼酸化アルミニウム;ケイ酸ジルコニウム(ZrO・SiO、Zircopax(商標));ケイ酸ジルコニウムとシリカとの混合物(Zircopax Plus(商標));酸化ジルコニウム(ZrO);炭化ケイ素;及びこれらの組み合わせから成る群より選択されてよい。1つの実施形態では、高融点無機材料は、炭化ケイ素を含む。1つの実施形態では、高融点無機材料は、炭化ケイ素と、ケイ酸ジルコニウム及びシリカ(すなわち、Zircopax Plus(商標))との混合物を含む。1つの実施形態では、高融点無機材料は、炭化ケイ素とか焼酸化アルミニウムとの混合物を含む。1つの実施形態では、高融点無機材料は、ケイ酸ジルコニウムとシリカとの混合物(Zircopax Plus(商標))を含む。
【0071】
いくつかの実施形態では、アルミナ(好ましくは、か焼された形態)が、焼成範囲を広げるために、及び保護コーティング(焼結後)の硬度を高めるために、骨材及び充填材として用いられてよい。アルミナは、収縮を低減し、チキソトロピーを高め、キルン中での強度を提供し、反りを最小限に抑え、グレーズの適合性に有益に作用し、及び保護コーティングに焼成後の強度を付与する。いくつかの実施形態では、グレーズ溶融物を安定化させるために、純か焼酸化アルミニウムが、グレーズに導入されてよい。いくつかの実施形態では、高融点無機材料は、アルミナ(Al)である。1つの実施形態では、高融点無機材料は、100重量%のか焼酸化アルミニウムを含む。いくつかの実施形態では、高融点無機材料は、か焼酸化アルミニウムである(溶融温度2020℃、典型的には、100~300USメッシュの平均粒子サイズを有する)。
【0072】
一実施形態では、高融点無機材料は、か焼酸化アルミニウムと炭化ケイ素とから成る。一実施形態では、高融点無機材料は、ケイ酸ジルコニウム、シリカ、及び炭化ケイ素から成る。
【0073】
無機材料の粒子サイズは、保護コーティングの品質及び金属基材へのコーティング塗布の容易さに影響を与え得る。無機材料の粒子サイズが小さすぎる場合(例:1μm未満、ナノ粒子)、得られる中間粉末コートは、ウェットグリーンコートがオーブン中で乾燥された際に、クラックを生じ得る。粒子サイズが大きすぎる場合、無機材料は、金属基材へ塗布するためのスラリー組成物の形成において水への懸濁が困難である。適切な粒子サイズを有する無機材料を賢明に選択することにより、保護コーティングの品質を制御することができる。
【0074】
高融点無機材料の適切なメジアン粒子サイズは、約100μm以下、約95μm以下、約90μm以下、約85μm以下、約80μm以下、約75μm以下、約70μm以下、約65μm以下、約60μm以下、約55μm以下、約50μm以下、約49μm以下、約48μm以下、約47μm以下、約46μm以下、約45μm以下、約44μm以下であってよい。いくつかの実施形態では、高融点無機材料は、10μm~70μmの範囲内のメジアン粒子サイズを有してよい。いくつかの実施形態では、高融点無機材料は、10μm~44μmの範囲内のメジアン粒子サイズを有してよい。いくつかの実施形態では、高融点無機材料は、約5μm~約44μmの範囲内のメジアン粒子サイズを有してよい。いくつかの実施形態では、高融点無機材料は、約44μmのメジアン粒子サイズを有してよい。
【0075】
いくつかの実施形態では、高溶融温度無機材料は、ケイ酸ジルコニウム(ZrO・SiO、Zircopax(商標))を含む。いくつかの実施形態では、Zircopax(商標)は、約1.3μmのメジアン粒子サイズを有する。いくつかの実施形態では、高溶融温度無機材料は、ケイ酸ジルコニウム乳白剤(Superpax(商標))を含む。いくつかの実施形態では、Superpax(商標)材料は、約0.74μmのメジアン粒子サイズを有する。いくつかの実施形態では、高融点無機材料は、約0.55μmのメジアン粒子サイズを有するケイ酸ジルコニウム乳白剤(Excelopax(商標))を含む。いくつかの実施形態では、高融点無機材料は、約1μm~約300μmの範囲内のメジアン粒子サイズを有するケイ酸ジルコニウム乳白剤(Zircopax Plus(商標))を含む。いくつかの実施形態では、Zircopax Plus(商標)は、約1μm、約5μm、約10μm、約15μm、約20μm、約25μm、約30μm、約35μm、約40μm、約45μm、約50μm、約55μm、約60μm、約65μm、約70μm、約75μm、約80μm、約85μm、約90μm、約95μm、約100μm、約105μm、約110μm、約115μm、約120μm、約125μm、約130μm、約135μm、約140μm、約145μm、約150μm、約155μm、約160μm、約165μm、約170μm、約175μm、約180μm、約185μm、約190μm、約195μm、約200μm、約205μm、約210μm、約215μm、約220μm、約225μm、約230μm、約235μm、約240μm、約245μm、約250μm、約255μm、約260μm、約265μm、約270μm、約275μm、約280μm、約285μm、約290μm、約295μm、又は約300μmから選択されるメジアン粒子サイズを有する。
【0076】
いくつかの実施形態では、保護コーティング中の高融点無機材料の量は、約10.0重量%、約11.0重量%、約12.0重量%、約13.0重量%、約14.0重量%、約15.0重量%、約13.0重量%、約14.0重量%、約15.0重量%、約16.0重量%、約17.0%、約18.0重量%、約19.0重量%、約20.0重量%、約21.0重量%、約22.0重量%、約23.0重量%、約24.0重量%、約25.0重量%、約26.0重量%、約27.0重量%、約28.0重量%、約29.0重量%、約30.0重量%、約31.0重量%、約32.0重量%、約33.0重量%、約34.0重量%、約35.0重量%、約36.0重量%、約37.0重量%、約38.0重量%、約39.0重量%、約40.0重量%、約41.0重量%、約42.0重量%、約43.0重量%、約44.0重量%、約45.0重量%、約46.0重量%、約47.0重量%、約48.0重量%、約49.0重量%、約50.0重量%、約51.0重量%、約52.0重量%、約53.0重量%、約54.0重量%、約55.0重量%、約60.0重量%、約61.0重量%、約62.0重量%、約63.0重量%、約64.0重量%、約65.0重量%、約67.0重量%、約68.0重量%、約69.0重量%、約70.0重量%、約71.0重量%、約72.0重量%、約73.0重量%、約74.0重量%、約75.0重量%、約76.0重量%、約77.0重量%、約78.0重量%、約79.0重量%、約80.0重量%、約81.0重量%、約82.0重量%、約83.0%、約84.0重量%、約85.0重量%、約87.0重量%、約88.0重量%、約89.0重量%、約90.0重量%、約91.0重量%、約92.0重量%、約93.0重量%、約94.0重量%、約95.0重量%、約96.0重量%、約97.0重量%、約98.0重量%、約99.0重量%、約100.0重量%から選択される重量パーセントで与えられる。
【0077】
いくつかの実施形態では、保護コーティング中の高融点無機材料は、約45.0重量%~約50.0重量%の範囲内の重量パーセントで与えられる。いくつかの実施形態では、保護コーティング中の高融点無機材料は、約30.0重量%~約70.0重量%の範囲内の重量パーセントで与えられる。いくつかの実施形態では、保護コーティング中の高融点無機材料は、約45.0重量%~約70.0重量%の範囲内の重量パーセントで与えられる。いくつかの実施形態では、保護コーティング中の高融点無機材料は、約40.0重量%~約90.0重量%の範囲内の重量パーセントで与えられる。いくつかの実施形態では、保護コーティング中の高融点無機材料は、約60.0重量%~約90.0重量%の範囲内の重量パーセントで与えられる。いくつかの実施形態では、保護コーティング中の高融点無機材料は、約45.0重量%~約100重量%の範囲内の重量パーセントで与えられる。いくつかの実施形態では、保護コーティング中の高融点無機材料は、約60.0重量%~100重量%の範囲内の重量パーセントで与えられる。いくつかの実施形態では、保護コーティング中の高融点無機材料は、約75.0重量%~約100重量%の範囲内の重量パーセントで与えられる。
【0078】
いくつかの実施形態では、保護コーティング中の高融点無機材料の量は、少なくとも20.0重量%の重量パーセントで与えられる。1つの実施形態では、保護コーティング中の少なくとも1つの高融点無機材料は、約10.0重量%~約90.0重量%の範囲内の重量パーセントで与えられる。1つの実施形態では、保護コーティング中の少なくとも1つの高融点無機材料は、約10.0重量%~約30.0重量%、約20.0重量%~約40.0重量%、約20.0重量%~約50.0重量%、約30.0重量%~約40.0重量%、約30.0重量%~約50.0重量%、約30.0重量%~約70.0重量%、約40.0重量%~約50.0重量%、約40.0重量%~約60.0重量%、約40.0重量%~約70.0重量%、約40.0重量%~約80.0重量%、約40.0重量%~約90.0重量%、約46.0重量%~約90.0重量%、約47.7重量%~約70.0重量%、約45.0重量%~100重量%、約60.0重量%~100重量%、又は約75.0重量%~100重量%の範囲から選択される重量パーセントで与えられる。
【0079】
(b)シリケート
いくつかの実施形態では、保護コーティングは、少なくとも1つのシリケートを含む。いくつかの実施形態では、シリケートとしては、クレイ、グレーズ、二酸化ケイ素、フリット、又はこれらの組み合わせが挙げられ得る。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのシリケートは、クレイを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのシリケートは、フリットを含む。
【0080】
いくつかの実施形態では、保護コーティング中の少なくとも1つのシリケートの量は、少なくとも10.0重量%の重量パーセントで与えられる。1つの実施形態では、保護コーティング中の少なくとも1つのシリケートの量は、約0.1重量%~約50.0重量%の範囲内の重量パーセントで与えられる。1つの実施形態では、保護コーティング中の少なくとも1つのシリケートの量は、約0.1重量%~約46.0重量%の範囲内の重量パーセントで与えられる。他の実施形態では、保護コーティング中のシリケートの量は、約0.1重量%、約0.5重量%、約0.75重量%、約1.0重量%、約1.25重量%、約1.50重量%、約1.75重量%、約2.0重量%、約3.0重量%、約4.0重量%、約5.0重量%、約6.0重量%、約7.0重量%、約8.0重量%、約9.0重量%、約10.0重量%、約11.0重量%、約12.0重量%、約13.0重量%、約14.0重量%、約15.0重量%、約16.0重量%、約17.0重量%、約18.0重量%、約19.0重量%、約20.0重量%、約21.0重量%、約22.0重量%、約23.0重量%、約24.0重量%、約25.0重量%、約26.0重量%、約27.0重量%、約28.0重量%、約29.0重量%、約30.0重量%、約31.0重量%、約32.0重量%、約33.0重量%、約34.0重量%、約35.0重量%、約36.0重量%、約37.0重量%、約39.0重量%、約40.0重量%、約41.0重量%、約42.0重量%、約43.0重量%、約44.0重量%、約45.0重量%、約46.0重量%、約47.0重量%、約48.0重量%、約49.0重量%、又は約50.0重量%から選択される重量パーセントで与えられる。他の実施形態では、保護コーティング中のシリケートの量は、約10.0重量%~約30.0重量%の範囲内の重量パーセントで与えられる。1つの実施形態では、保護コーティング中の少なくとも1つのシリケートの量は、約15.0重量%~約46.0重量%の範囲内の重量パーセントで与えられる。他の実施形態では、保護コーティング中の少なくとも1つのシリケートの量は、約0.1重量%~約3.5重量%の範囲内の重量パーセントで与えられる。
【0081】
1つの実施形態では、保護コーティング中の少なくとも1つの高融点無機材料は、約46.0重量%~約84.0重量%の範囲内の重量パーセントで与えられ、保護コーティング中の少なくとも1つのシリケートの量は、約15.0重量%~約46.0重量%の範囲内の重量パーセントで与えられる。1つの実施形態では、保護コーティング中の少なくとも1つの高融点無機材料は、約61.0重量%~約84.0重量%の範囲内の重量パーセントで与えられ、保護コーティング中の少なくとも1つのシリケートの量は、約0.1重量%~約3.5重量%の範囲内の重量パーセントで与えられる。
【0082】
1つの実施形態では、保護コーティング中のシリケートは、約17.6重量%の重量パーセントで与えられるカオリンである。1つの実施形態では、保護コーティング中のシリケートは、約0.5重量%の重量パーセントで与えられるベントナイトクレイである。
【0083】
(1)クレイ
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのシリケートは、クレイを含む。本明細書全体を通して、「クレイ」の用語は、水と混合されると可塑性となる微細に粉砕された土状材料を意味することを意図している。クレイは、カリウム、ナトリウム、マグネシウム、又は鉄を例とする少量の不純物を含有する水和ケイ酸アルミニウムを含む。「クレイ」の用語は、水和ケイ酸アルミニウム又はシリカが豊富で、アルカリ及び鉄が少なく、溶融することなく高温に耐えることができる硬質及び軟質の埋め込まれたクレイ(embedded clay)を含む。
【0084】
いくつかの実施形態では、クレイは、加熱された場合であっても、ガスを発生する傾向が低く、クレイは、再加熱炉内部の火炎によって破壊されることがない。したがって、クレイ材料を保護コーティング中に含めることによって、高融点無機材料が金属基材の表面から外れることを防止することができる。クレイは、高融点無機材料を水性媒体中で均一に分散させ、金属基材表面への塗布が容易である懸濁液を形成する。さらに、クレイは、塗布された保護コーティング層を金属基材の表面と結合させ、及び高融点無機材料が金属基材の表面から外れることを防止する。いくつかの実施形態では、クレイは、アルミナ源として、及び無機材料の固体スラリーに対してより良好な懸濁特性及び硬化特性を与えるように作用し得る。
【0085】
セラミック業界で一般的に用いられるいくつかのクレイを、以下の表2に挙げる。クレイは、アルミナ(Al)及び二酸化ケイ素(SiO)の含有量が多い。クレイは、通常は、グレーズよりも高い焼結温度を有し、例えば、カオリンは、約1750℃の融点、及び約1300℃の焼結温度を有する。
【0086】
1つの実施形態では、クレイは、38.8%~98.2%のSiO、及び0.3%~38.0%のAlを含有する材料であり、さらに、Fe、CaO、MgO、TiO、ZrO、NaO、及びKOから選択される金属酸化物のうちの1又は複数も含有する。1つの実施形態では、クレイは、カオリン、タルク、石英、長石、ベントナイト、カイアナイト、ハロイサイト、ディッカイト、ナクライト、イライト、モンモリロナイト、パイロフィライト、スメクタイト、ノントロナイト、アタパルガイト、パリゴルスカイト、セピオライト、ホルマイト、クロライト、及びアルミノシリケート、並びにこれらの混合物から成る群より選択される。1つの実施形態では、クレイは、カオリン又はベントナイトである。1つの実施形態では、クレイは、47.0%のSiO、及び約38.0%のAl、及びFe、CaO、MgO、NaO、KOを含有するカオリンである。1つの実施形態では、クレイは、48.16%~49.87%のSiO、及び14.86%~14.98%のAlを含有するベントナイトクレイであり、さらに、Fe、CaO、MgO、NaO、KO、TiO、Pも含有する。
【0087】
【表2】
【0088】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのシリケートは、炭素質クレイ、ボールクレイ、カオリンクレイ、陶土、及び他の適切なクレイから成る群より選択されるクレイを含む。特定のクレイは、カオリン、タルク、石英、長石、ベントナイト、カイアナイト、ハロイサイト、ディッカイト、ナクライト、イライト、モンモリロナイト、パイロフィライト、スメクタイト、ノントロナイト、アタパルガイト、パリゴルスカイト、セピオライト、ホルマイト、クロライト、及びアルミノシリケート、並びにこれらの混合物から成る群より選択され得る。いくつかの実施形態では、クレイは、カオリン、又はベントナイト、及びこれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、クレイは、ベントナイトを含む。別の実施形態では、クレイは、カオリンを含む。
【0089】
いくつかの実施形態では、クレイは、例えば、38.8%~98.2%のSiO、及び0.3%~38.0%のAlを含有し、さらに、Fe、CaO、MgO、TiO、ZrO、NaO、及びKOから選択される金属酸化物のうちの1又は複数も含有する。一実施形態では、クレイは、約47.0%~約69.3%のSiO、及び約24.3%~約38.0%のAlを含有し、さらに、Fe、CaO、MgO、NaO、及びKOも含有する(カオリン)。一実施形態では、クレイは、72.9%のSiO、及び15.0%のAlを含有し、さらに、CaO、NaO、及びKOも含有する(長石)。一実施形態では、シリケートは、98.2%のSiO、及び0.3%のAlを含有し、さらに、Fe、CaO、MgOも含有する(石英)。一実施形態では、クレイは、53.5%のSiO、0.5%のAl、及び29.5%のMgOを含有し、さらに、Fe、CaO、KO、TiOも含有する(タルク)(上記表2を参照)。
【0090】
一実施形態では、クレイは、48.16%~49.87%のSiO、及び14.86%~14.98%のAlを含有するベントナイトであり、さらに、Fe、CaO、MgO、NaO、KO、TiO、及びPも含有する。いくつかの実施形態では、ベントナイトクレイは、ナトリウムベントナイト又はカルシウムベントナイトである。
【0091】
一実施形態では、クレイは、47.0%のSiO、及び38.0%のAlを含有するカオリンであり、さらに、Fe、CaO、MgO、NaO、及びKOを含有する(表2のカオリン)。
【0092】
(2)グレーズの原材料及びフリット
いくつかの実施形態では、シリケートは、グレーズを形成するための原材料組成物を含む。グレーズは、ガラスに非常に類似する組成を有するガラス質コーティングである。グレーズの原材料の典型的な例としては、石英、クレイ、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、及び低融点を有する酸化物(CaO及びBaOなど)が挙げられる。
【0093】
フリットは、ほとんどすべてのセラミックグレーズの主成分であり、ガラス面が必要とされる様々な材料の多くの組成物中に存在する。フリットは、典型的には、非常に低い焼結温度を有する。フリット中のAl及びSiOの量が多い程、フリットの焼結点が高くなる。以下の表3は、3つの最も一般的な種類のフリット、及びそれらの対応する特性を示す。
【0094】
【表3】
【0095】
いくつかの実施形態では、保護コーティングは、粒子状セラミックグレーズ材料を含む。いくつかの実施形態では、保護コーティングは、少なくとも1つのセラミックグレーズ材料とカオリンクレイとの混合物を含む。1つの実施形態では、保護コーティング組成物は、Ferro Frit 3134(商標)及びカオリンクレイを含む。いくつかの実施形態では、保護コーティング中のグレーズセラミック材料の量は、約80.0重量%の重量パーセントで与えられる。
【0096】
(c)添加剤
いくつかの実施形態では、保護コーティングは、所望に応じて、バインダー、可塑剤、及び焼結の過程で燃焼除去することができる他の添加剤を含んでよい。添加剤の例としては、限定されないが、有機バインダー、分散剤、増粘剤、又は有機消泡剤が挙げられる。いくつかの実施形態では、保護コーティング組成物は、有機増粘剤と分散剤との混合物を含有してよい。1つの実施形態では、保護コーティング中の添加剤は、約0.1重量%~約3.0重量%の範囲内の重量パーセントで与えられる。
【0097】
いくつかの実施形態では、保護コーティング組成物は、分散剤を含有してよい。分散剤の例としては、限定されないが、アニオン性ポリアクリレートが挙げられる。1つの実施形態では、分散剤は、Davant(登録商標)811(2-プロペン酸ナトリウム塩のホモポリマー)である。ある特定の実施形態では、保護コーティング中の分散剤は、約0.1重量%~約1.5重量%の範囲内の重量パーセントで与えられる。ある特定の実施形態では、保護コーティング中の分散剤は、約0.1重量%、約0.2重量%、約0.3重量%、約0.4重量%、約0.5重量%、約0.6重量%、約0.7重量%、約0.8重量%、約0.9重量%、約1.0重量%、約1.1重量%、約1.2重量%、約1.3重量%、約1.4重量%、又は約1.5重量%から選択される重量パーセントで与えられる。ある特定の実施形態では、保護コーティング中の分散剤は、約0.5重量%の重量パーセントで与えられる。ある特定の実施形態では、保護コーティング中の分散剤は、約1.0重量%の重量パーセントで与えられる。
【0098】
いくつかの実施形態では、保護コーティング組成物は、有機増粘剤を含有してよい。適切な有機増粘剤の例としては、限定されないが、ポリアクリル酸の塩、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、アクリル酸アンモニウム、メタクリル酸アンモニウム、又はジメチルアンモニウム塩酸塩のポリマー、カラゲナンなどのポリサッカリド、マイクロファイバーセルロース、及びこれらの混合物から成る群より選択される親水性有機ポリマー材料が挙げられる。1つの実施形態では、有機増粘剤は、Aqualon(登録商標)CMC 7L(カルボキシメチルセルロースナトリウム)である。いくつかの実施形態では、保護コーティング中の有機増粘剤の量は、約0.1重量%~約2.0重量%の範囲内の重量パーセントで与えられる。いくつかの実施形態では、保護コーティング中の有機増粘剤の量は、約0.1重量%、約0.2重量%、約0.3重量%、約0.4重量%、約0.5重量%、約0.6重量%、約0.7重量%、約0.8重量%、約0.9重量%、約1.0重量%、約1.1重量%、約1.2重量%、約1.3重量%、約1.4重量%、約1.5重量%、約1.6重量%、約1.7重量%、約1.8重量%、約1.9重量%、又は約2.0重量%から選択される重量パーセントで与えられる。いくつかの実施形態では、保護コーティング中の有機増粘剤の量は、約0.3重量%の重量パーセントで与えられる。いくつかの実施形態では、保護コーティング中の有機増粘剤の量は、約0.5重量%の重量パーセントで与えられる。
【0099】
いくつかの実施形態では、保護コーティング組成物は、有機消泡剤を含有してよい。適切な有機消泡剤の例としては、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステルとグリセロール脂肪酸エステルとの混合物、トリグリセリド、ステロール及びステロール誘導体、ソルビタン脂肪酸エステル及びポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステル、糖エステル、ポリエチレングリコールアルキルエーテル及びポリエチレングリコールアルキルフェノールエーテル、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、低級アルコール脂肪酸エステル、並びにこれらの組み合わせから成る群より選択される非イオン性界面活性剤が挙げられる。いくつかの実施形態では、有機消泡剤は、脂肪酸を含んでよい。脂肪酸の例としては、カプリル酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、又はオレイン酸が挙げられる。いくつかの実施形態では、有機消泡剤は、(1)アルブミン、ゼラチン、及び糖たんぱく質などの単純な複合された誘導タンパク質として分類される物質、及び(2)レシチンを例とするリン脂質の分類内に含まれる物質を含む、両性界面活性剤を含む。1つの実施形態では、有機消泡剤は、Triton(登録商標)CF-32界面活性剤(アルキルアミンEO/PO、HLB=11)である。いくつかの実施形態では、保護コーティング中の有機消泡剤は、保護コーティング組成物の総重量に対して約0.1重量%~約1.0重量%の範囲内の重量パーセントで与えられる。いくつかの実施形態では、保護コーティング中の有機消泡剤は、約0.1重量%、約0.2重量%、約0.3重量%、約0.4重量%、約0.5重量%、約0.6重量%、約0.7重量%、約0.8重量%、約0.9重量%、又は約1.0重量%の重量パーセントで与えられる。いくつかの実施形態では、保護コーティング中の有機消泡剤は、約0.3重量%の重量パーセントで与えられる。
【0100】
いくつかの実施形態では、保護コーティングは、液体キャリアを含有してよい。いくつかの実施形態では、液体キャリアは、水を含む。いくつかの実施形態では、保護コーティングは、粒子状固体無機材料の水性懸濁液(スラリー)の形態である。いくつかの実施形態では、保護コーティング中の液体キャリアは、約20.0重量%~約50.0重量%の範囲内の重量パーセントで与えられる。いくつかの実施形態では、保護コーティング中の液体キャリアは、約20.0重量%、約21.0重量%、約22.0重量%、約23.0重量%、約24.0重量%、約25.0重量%、約26.0重量%、約27.0重量%、約28.0重量%、約29.0重量%、約30.0重量%、約31.0重量%、約32.0重量%、約33.0重量%、約34.0重量%、約35.0重量%、約36.0重量%、約37.0重量%、約38.0重量%、約39.0重量%、約40.0重量%、約41.0重量%、約42.0重量%、約43.0重量%、約44.0重量%、約45.0重量%、約46.0重量%、約47.0重量%、約48.0重量%、約49.0重量%、又は約50.0重量%から選択される重量パーセントで与えられる。いくつかの実施形態では、保護コーティング中の液体キャリアは、約33.0重量%の重量パーセントで与えられる。
【0101】
2.二酸化ケイ素を含む保護コーティング(012A組成物)
いくつかの実施形態では、保護コーティングは、湿潤スラリーである。いくつかの実施形態では、保護コーティングは、二酸化ケイ素を含む。
【0102】
いくつかの実施形態では、湿潤スラリーは、カオリン、ケイ酸ジルコニウム及びシリカ(Zircopax Plus(商標))、炭化ケイ素、並びに水を含む。
いくつかの実施形態では、湿潤スラリー中に与えられる二酸化ケイ素は、クレイに由来する。いくつかの実施形態では、クレイは、カオリンである。いくつかの実施形態では、湿潤スラリー中のクレイは、約10.0重量%~約30.0重量%の範囲内の重量パーセントで与えられる。
【0103】
いくつかの実施形態では、湿潤スラリーは、約20.0重量%~約40.0重量%のSiCを含む。いくつかの実施形態では、湿潤スラリー中の水は、約20.0重量%~約50.0重量%の範囲内の重量パーセントで与えられる。
【0104】
いくつかの実施形態では、湿潤スラリー中の高融点無機材料は、約30.0重量%~約70.0重量%の範囲内の重量パーセントで与えられる。いくつかの実施形態では、湿潤スラリー中の高融点無機材料は、ケイ酸ジルコニウム及びシリカ(Zircopax Plus(商標))、並びに炭化ケイ素を含む。いくつかの実施形態では、湿潤スラリー中の高融点無機材料は、約10.0重量%~約30.0重量%のケイ酸ジルコニウム及びシリカ(Zircopax Plus(商標))、並びに約20.0重量%~約40.0重量%の炭化ケイ素を含む。いくつかの実施形態では、湿潤スラリーは、約17.0重量%~約30.0重量%のケイ酸ジルコニウム及びシリカ(Zircopax Plus(商標))、並びに約30.7重量%~約40.0重量%のSiCを含む。
【0105】
いくつかの実施形態では、湿潤スラリーは、約10.0重量%~約30.0重量%のカオリン、約10.0重量%~約30.0重量%のケイ酸ジルコニウム及びシリカ(Zircopax Plus(商標))、並びに約20.0重量%~約40.0重量%の炭化ケイ素を含む。
【0106】
いくつかの実施形態では、保護コーティングは、再加熱炉の内部で高温下で焼成した後、焼結された緻密な膜である。いくつかの実施形態では、保護コーティングは、二酸化ケイ素を含む。いくつかの実施形態では、保護コーティング中に与えられる二酸化ケイ素は、クレイに由来する。いくつかの実施形態では、クレイは、カオリンである。いくつかの実施形態では、保護コーティング中のクレイは、約15.0重量%~約46.0重量%の範囲内の重量パーセントで与えられる。
【0107】
いくつかの実施形態では、保護コーティングは、カオリン、ケイ酸ジルコニウム及びシリカ(Zircopax Plus(商標))、並びに炭化ケイ素を含む。
いくつかの実施形態では、保護コーティングは、約31.0重量%~約61.0重量%のSiCを含む。
【0108】
いくつかの実施形態では、保護コーティング中の高融点無機材料は、約46.0重量%~100.0重量%の範囲内の重量パーセントで与えられる。いくつかの実施形態では、保護コーティング中の高融点無機材料は、ケイ酸ジルコニウム及びシリカ(Zircopax Plus(商標))、並びに炭化ケイ素を含む。いくつかの実施形態では、保護コーティング中の高融点無機材料は、約15.0重量%~約46.0重量%のケイ酸ジルコニウム及びシリカ(Zircopax Plus(商標))、並びに約31.0重量%~約61.0重量%の炭化ケイ素を含む。
【0109】
いくつかの実施形態では、保護コーティングは、約15.0重量%~約46.0重量%のカオリン、約15.0重量%~約46.0重量%のケイ酸ジルコニウム及びシリカ(Zircopax Plus(商標))、並びに約31.0重量%~約61.0重量%の炭化ケイ素を含む。
【0110】
3.二酸化ケイ素を実質的に含まない保護コーティング(052A組成物)
いくつかの実施形態では、保護コーティングは、カオリンクレイなどの別の材料由来の二酸化ケイ素を含む純二酸化ケイ素を実質的に含まない。「実質的に含まない」とは、保護コーティング組成物が含有する二酸化ケイ素が、保護コーティングの総重量に対して約5.0重量%未満であることを意味するものと理解されるべきである。いくつかの実施形態では、「実質的に含まない」とは、保護コーティング組成物が含有する二酸化ケイ素が、保護コーティングの総重量に対して約4.0重量%未満であることを意味する。いくつかの実施形態では、「実質的に含まない」とは、保護コーティング組成物が含有する二酸化ケイ素が、保護コーティングの総重量に対して約3.0重量%未満であることを意味する。いくつかの実施形態では、「実質的に含まない」とは、保護コーティング組成物が含有する二酸化ケイ素が、保護コーティングの総重量に対して約2.0重量%未満であることを意味する。いくつかの実施形態では、「実質的に含まない」とは、保護コーティング組成物が含有する二酸化ケイ素が、保護コーティングの総重量に対して約1.0重量%未満であることを意味する。いくつかの実施形態では、「実質的に含まない」とは、保護コーティング組成物が含有する二酸化ケイ素が、保護コーティングの総重量に対して約0.5重量%未満であることを意味する。いくつかの実施形態では、「実質的に含まない」とは、保護コーティング組成物が含有する二酸化ケイ素が、保護コーティングの総重量に対して約0重量%であることを意味する。いくつかの実施形態では、「実質的に含まない」とは、保護コーティング組成物が含有する二酸化ケイ素が、保護コーティング組成物の総重量に対して、約0.4重量%未満、約0.3重量%未満、約0.2重量%未満、約0.1重量%未満、約0.05重量%未満、約0.01重量%未満、約0.001重量%未満、又は0重量%であることを意味する。
【0111】
いくつかの実施形態では、保護コーティングは、二酸化ケイ素又は二酸化ケイ素の由来化合物(例:クレイ)に対する代替物として、固体無機粒子を含有する。いくつかの実施形態では、二酸化ケイ素代替物は、スケールと鋼材表面との間にファイアライト(FeSiO)が生成されることを防止又は低減するために用いられる。ファイアライトは、高温でのFeOとSiOとの反応生成物として知られる。ファイアライトは、鋼材表面のスケール層に固着し得ることが報告された。したがって、下流の熱間圧延操作で酸化物スケール層を除去することが困難である。
【0112】
いくつかの実施形態では、固体無機粒子としては、グラファイト、ダイヤモンド、又はシリコン粉末が挙げられ得る。1つの実施形態では、固体無機粒子は、シリコン粉末を含む。
【0113】
いくつかの実施形態では、保護コーティング中の二酸化ケイ素代替物は、約5.0重量%~約50.0重量%の範囲内の重量パーセントで与えられてよい。いくつかの実施形態では、保護コーティング中の二酸化ケイ素代替物は、約10.0重量%~約30.0重量%の範囲内の重量パーセントで与えられてよい。いくつかの実施形態では、保護コーティング中の二酸化ケイ素代替物は、約15.0重量%~約46.0重量%の範囲内の重量パーセントで与えられてよい。いくつかの実施形態では、保護コーティング中の二酸化ケイ素代替物は、約5.0重量%、約6.0重量%、約7.0重量%、約8.0重量%、約9.0重量%、約10.0重量%、約11.0重量%、約12.0重量%、約13.0重量%、約14.0重量%、約15.0重量%、約16.0重量%、約17.0重量%、約18.0重量%、約19.0重量%、約20.0重量%、約21.0重量%、約22.0重量%、約23.0重量%、約24.0重量%、約25.0重量%、約26.0重量%、約27.0重量%、約28.0重量%、約29.0重量%、約30.0重量%、約31.0重量%、約32.0重量%、約33.0重量%、約34.0重量%、約35.0重量%、約36.0重量%、約37.0重量%、約38.0重量%、約39.0重量%、約40.0重量%、約41.0重量%、約42.0重量%、約43.0重量%、約44.0重量%、約45.0重量%、約46.0重量%、約47.0重量%、約48.0重量%、約49.0重量%、又は約50.0重量%から選択される重量パーセントで与えられてよい。
【0114】
一実施形態では、二酸化ケイ素代替物は、シリコン粉末である。いくつかの実施形態では、保護コーティング中のシリコン粉末は、約10.0重量%~約50.0重量%の範囲内の重量パーセントで与えられてよい。いくつかの実施形態では、保護コーティング中のシリコン粉末は、約10.0重量%~約30.0重量%の範囲内の重量パーセントで与えられてよい。いくつかの実施形態では、保護コーティング中のシリコン粉末は、約15.0重量%~約46.0重量%の範囲内の重量パーセントで与えられてよい。いくつかの実施形態では、保護コーティング中のシリコン粉末は、約9.0重量%、約10.0重量%、約11.0重量%、約12.0重量%、約13.0重量%、約14.0重量%、約15.0重量%、約16.0重量%、約17.0重量%、約18.0重量%、約19.0重量%、約20.0重量%、約21.0重量%、約22.0重量%、約23.0重量%、約24.0重量%、約25.0重量%、約26.0重量%、約27.0重量%、約28.0重量%、約29.0重量%、約30.0重量%、約31.0重量%、約32.0重量%、約33.0重量%、約34.0重量%、約35.0重量%、約36.0重量%、約37.0重量%、約38.0重量%、約39.0重量%、約40.0重量%、約41.0重量%、約42.0重量%、約43.0重量%、約44.0重量%、約45.0重量%、約46.0重量%、約47.0重量%、約48.0重量%、約49.0重量%、又は約50.0重量%から選択される重量パーセントで与えられてよい。
【0115】
一実施形態では、保護コーティングは、湿潤スラリーである。いくつかの実施形態では、湿潤スラリーは、炭化ケイ素、アルミナ、二酸化ケイ素代替物、及び水を含む。いくつかの実施形態では、湿潤スラリーは、炭化ケイ素、か焼酸化アルミニウム、及びシリコン粉末、及び水を含む。いくつかの実施形態では、湿潤スラリーは、さらに、分散剤、クレイ、及び消泡剤を含む。いくつかの実施形態では、湿潤スラリーは、さらに、約0.1重量%~約2.0重量%の範囲内の重量パーセントのベントナイトクレイを含む。いくつかの実施形態では、湿潤スラリーは、さらに、約0.5重量%の重量パーセントのベントナイトクレイを含む。
【0116】
1つの実施形態では、保護コーティング中の少なくとも1つの高融点無機材料は、約40.0重量%~約90.0重量%の範囲内の重量パーセントで与えられる。いくつかの実施形態では、湿潤スラリー中の炭化ケイ素は、約20.0重量%~約40.0重量%の範囲内の重量パーセントで与えられる。いくつかの実施形態では、湿潤スラリー中のか焼酸化アルミニウムは、約20.0重量%~約50.0重量%の範囲内の重量パーセントで与えられる。いくつかの実施形態では、湿潤スラリー中のシリコン粉末は、約10.0重量%~約30.0重量%の範囲内の重量パーセントで与えられる。
【0117】
いくつかの実施形態では、湿潤スラリーは、約20.0重量%~約40.0重量%のSiC、及び約10.0重量%~約30.0重量%のシリコン粉末を含む。いくつかの実施形態では、湿潤スラリーは、約20.0重量%~約50.0重量%のか焼酸化アルミニウム、及び約10.0重量%~約30.0重量%のシリコン粉末を含む。いくつかの実施形態では、湿潤スラリーは、約20.0重量%~約40.0重量%のSiC、及び約20.0重量%~約50.0重量%のか焼酸化アルミニウムを含む。
【0118】
いくつかの実施形態では、湿潤スラリーは、約20重量%~約40重量%のSiC、約20.0重量%~約50.0重量%のか焼酸化アルミニウム、及び約10重量%~約30重量%のシリコン粉末を含む。1つの実施形態では、湿潤スラリーは、約20重量%~約50重量%のか焼酸化アルミニウム、約20重量%~約40重量%のSiC、約10重量%~約30重量%のシリコン粉末、及び約0.1重量%~約2.0重量%のベントナイトクレイを含む。
【0119】
いくつかの実施形態では、保護コーティングは、再加熱炉の内部で高温下で焼成した後、焼結された緻密な膜である。いくつかの実施形態では、本開示は、1250℃の予備加熱炉中で少なくとも4時間にわたって鋼材表面上に維持される保護コーティングを提供する。保護コーティングは、酸化に起因する金属基材の重量ロスを少なくとも約80%実質的に低減する。さらに、保護コーティングは、加熱の完了後、自然に剥離する非常に優れた能力を有する。
【0120】
いくつかの実施形態では、保護コーティングは、炭化ケイ素、アルミナ、及び二酸化ケイ素代替物を含む。保護コーティングは、炭化ケイ素、アルミナ、及び炭化ケイ素を含む。いくつかの実施形態では、保護コーティングは、さらに、約0.15重量%~約3.0重量%の範囲内の重量パーセントのベントナイトクレイを含む。
【0121】
1つの実施形態では、保護コーティング中の少なくとも1つの高融点無機材料は、約61.0重量%~約100.0重量%の範囲内の重量パーセントで与えられる。いくつかの実施形態では、保護コーティング中のか焼酸化アルミニウムは、約31.0重量%~約77.0重量%の範囲内の重量パーセントで与えられる。いくつかの実施形態では、保護コーティング中のシリコン粉末は、約15.0重量%~約46.0重量%の範囲内の重量パーセントで与えられる。
【0122】
いくつかの実施形態では、保護コーティングは、約31.0重量%~約61.0重量%のSiC、及び約15.0重量%~約46.0重量%のシリコン粉末を含む。いくつかの実施形態では、保護コーティングは、約31.0重量%~約77.0重量%のか焼酸化アルミニウム、及び約15.0重量%~約46.0重量%のシリコン粉末を含む。いくつかの実施形態では、保護コーティングは、約31.0重量%~約61.0重量%のSiC、及び約31.0重量%~約77.0重量%のか焼酸化アルミニウムを含む。
【0123】
いくつかの実施形態では、保護コーティングは、約31.0重量%~約61.0重量%のSiC、約31.0重量%~約77.0重量%のか焼酸化アルミニウム、及び約15.0重量%~約46.0重量%のシリコン粉末を含む。1つの実施形態では、保護コーティングは、約31.0重量%~約77.0重量%のか焼酸化アルミニウム、約31.0重量%~約61.0重量%のSiC、約15.0重量%~約46.0重量%のシリコン粉末、及び約0.15重量%~約3.0重量%のベントナイトクレイを含む。
【0124】
4.保護コーティングの作製方法
いくつかの実施形態では、保護コーティング組成物は、湿潤スラリーであり、例えば、コーティング又はスプレーによって周囲温度で金属基材の表面上に塗布することができる、ある特定の流動性を有する粒子状無機材料の液体懸濁液である。いくつかの実施形態では、各原材料は、液体懸濁液の原材料を均一に分散するために、及びスプレー時のノズルの詰まりを回避するために、325USメッシュ(44ミクロン)以下の粒子サイズを有する。
【0125】
本発明の1つの態様では、本開示は、金属基材表面上に、湿潤スラリーでコーティングされた金属基材を熱間加工炉中で長時間(例:少なくとも4時間)にわたって高温で焼成することによって形成される保護コーティングを作製する方法を提供する。本発明の1つの実施形態では、本開示は、金属基材表面上に、湿潤スラリーでコーティングされた金属基材を熱間圧延予備加熱炉中で高温で焼成することによって形成される保護コーティングを作製する方法を提供する。1つの実施形態では、本開示は、鋼材表面上の保護コーティングを提供する。
【0126】
本発明の1つの態様では、本開示は、金属基材の熱間加工時の酸化物スケール形成を低減する方法を提供し:少なくとも1つの高融点無機材料及び少なくとも1つのシリケートを、水性キャリアと混合して、スラリーを調製する工程;スラリーを金属基材の表面上に塗布する工程;スラリーコーティング金属基材をオーブン中で乾燥する工程、及び続いて、オーブン乾燥したスラリーコーティング金属基材を、少なくとも4時間にわたって熱間加工炉の温度での加熱に掛ける工程、を含み、それによって、緻密な膜が、金属基材上に形成され、それによって、金属基材上に形成される酸化物スケールの量が低減される。
【0127】
いくつかの実施形態では、スラリーの塗布量は、酸化物スケールによる重量ロス防止に対して著しい影響を有する(図10参照)。1つの実施形態では、金属基材表面に塗布されるスラリーの量は、少なくとも約0.1kg/mである。いくつかの実施形態では、金属基材に塗布されるスラリーの量は、約0.1kg/m~約10kg/mの範囲内である。いくつかの実施形態では、金属基材に塗布されるスラリーの量は、約0.1、約0.5、約0.75、約1.0、約1.25、約1.50、約1.75、約2.0、約2.05、約2.10、約2.15、約2.20、約2.25、約2.30、約2.35、約2.40、約2.45、約2.50、約2.55、約2.60、約2.65、約2.70、約2.75、約2.80、約2.85、約2.90、約2.95、約3.0、約3.05、約3.10、約3.15、約3.20、約3.25、約3.30、約3.35、約3.40、約3.45、約3.50、約3.55、約3.60、約3.65、約3.70、約3.75、約3.80、約3.85、約3.90、約3.95、約4.0、約4.05、約4.10、約4.15、約4.20、約4.25、約4.30、約4.35、約4.0、約4.45、約4.50、約4.55、約4.60、約4.65、約4.70、約4.75、約4.80、約4.85、約4.90、約4.95、約5.0、約5.05、約5.10、約5.15、約5.20、約5.25、約5.30、約5.35、約5.40、約5.45、約5.50、約5.55、約5.60、約5.65、約5.70、約5.75、約5.80、約5.85、約5.90、約5.95、約6.0、約6.05、約6.10、約6.15、約6.20、約6.25、約6.30、約6.35、約6.40、約6.45、約6.50、約6.55、約6.60、約6.65、約6.70、約6.75、約6.80、約6.85、約6.90、約6.95、約7.0、約7.05、約7.10、約7.15、約7.20、約7.25、約7.30、約7.35、約7.40、約7.45、約7.50、約7.55、約7.60、約7.65、約7.70、約7.75、約7.80、約7.85、約7.90、約7.95、約8.0、約8.05、約8.10、約8.15、約8.20、約8.25、約8.30、約8.35、約8.40、約8.45、約8.50、約8.55、約8.60、約8.65、約8.70、約8.75、約8.80、約8.85、約8.90、約8.95、約9.0、約9.05、約9.10、約9.15、約9.20、約9.25、約9.30、約9.35、約9.40、約9.45、約9.50、約9.55、約9.60、約9.65、約9.70、約9.75、約9.80、約9.90、約9.95、又は約10.0kg/mから選択され、本段落中の上記数値のすべてに、単位kg/mが当てはめられる。いくつかの実施形態では、塗布されるコーティングの量は、1kg/m超である。
【0128】
いくつかの実施形態では、熱間加工炉における加熱温度は、約350℃~約2300℃の範囲内である。いくつかの実施形態では、熱間加工炉における加熱温度は、約850℃~約1250℃の範囲内である。いくつかの実施形態では、熱間加工炉における加熱温度は、約1250℃である(すなわち、熱間圧延の予備加熱炉)。
【0129】
いくつかの実施形態では、熱間加工は、熱間圧延のための鋼基材の予備加熱であってよい。いくつかの実施形態では、金属基材は、鋼材を含んでよい。いくつかの実施形態では、鋼材は、ステンレス鋼、低炭素鋼、及びこれらの合金であってよい。
【0130】
本発明の1つの態様では、本開示は、材料ロスが低減された金属材料を製造する方法を提供し:少なくとも1つの高融点無機材料及び少なくとも1つのシリケート粉末を、水性キャリアと混合して、スラリーを調製する工程;スラリーを金属基材の表面上に塗布して、スラリーコーティング金属基材を形成する工程;並びにスラリーコーティング金属基材を、少なくとも4時間にわたって熱間加工炉の温度で加熱し、それによって、緻密な膜が、金属基材上に形成され、それによって、金属基材上に形成される金属酸化物スケールの量が低減される、工程、並びに保護コーティングと酸化物スケールとを剥離して、金属材料を得る工程、を含む。
【0131】
本明細書で述べる保護コーティングは、加熱前の周囲温度で金属基材に塗布することができ、すなわち、コーティングは、周囲温度で金属表面にスプレー又はコーティングされ、その後、金属基材の表面上で乾燥粉末コーティング層へと形成され、乾燥粉末コーティングされた金属基材は、さらに、炉中での熱処理に掛けられて、熱間加工の過程で発生するような温度で大気中の酸素と接触した際のスケール生成から実質的に保護するための金属表面に接着した不浸透性焼結保護コーティング膜が作製される。いくつかの実施形態では、保護コーティング組成物は、湿潤化学的手段によって金属表面に塗布されてよい。いくつかの実施形態では、保護コーティング組成物は、スプレー、ローラー、フローコーティング、ナイフコーティング、プレス、又は浸漬の手段によって金属基材に塗布されてよい。
【0132】
1つの実施形態では、金属基材表面に塗布されるコーティングの量は、少なくとも約0.1kg/mである。いくつかの実施形態では、塗布されるコーティングの量は、約0.1kg/m~約10kg/mである。いくつかの実施形態では、塗布されるコーティングの量は、少なくとも0.1、0.5、0.75、1.0、1.25、1.50、1.75、2.0、2.05、2.10、2.15、2.20、2.25、2.30、2.35、2.40、2.45、2.50、2.55、2.60、2.65、2.70、2.75、2.80、2.85、2.90、2.95、3.0、3.05、3.10、3.15、3.20、3.25、3.30、3.35、3.40、3.45、3.50、3.55、3.60、3.65、3.70、3.75、3.80、3.85、3.90、3.95、4.0、4.05、4.10、4.15、4.20、4.25、4.30、4.35、4.0、4.45、4.50、4.55、4.60、4.65、4.70、4.75、4.80、4.85、4.90、4.95、5.0、5.05、5.10、5.15、5.20、5.25、5.30、5.35、5.40、5.45、5.50、5.55、5.60、5.65、5.70、5.75、5.80、5.85、5.90、5.95、6.0、6.05、6.10、6.15、6.20、6.25、6.30、6.35、6.40、6.45、6.50、6.55、6.60、6.65、6.70、6.75、6.80、6.85、6.90、6.95、7.0、7.05、7.10、7.15、7.20、7.25、7.30、7.35、7.40、7.45、7.50、7.55、7.60、7.65、7.70、7.75、7.80、7.85、7.90、7.95、8.0、8.05、8.10、8.15、8.20、8.25、8.30、8.35、8.40、8.45、8.50、8.55、8.60、8.65、8.70、8.75、8.80、8.85、8.90、8.95、9.0、9.05、9.10、9.15、9.20、9.25、9.30、9.35、9.40、9.45、9.50、9.55、9.60、9.65、9.70、9.75、9.80、9.90、9.95、又は10.0kg/mである。いくつかの実施形態では、コーティング塗布率の量は、少なくとも1kg/mである。
【0133】
いくつかの実施形態では、熱間加工における加熱温度は、約350℃~約2300℃の範囲内である。いくつかの実施形態では、熱間加工における加熱温度は、約2時間~約10時間にわたる約800℃~約1300℃の範囲内である。いくつかの実施形態では、熱間加工における加熱温度は、約2時間~約10時間にわたる約850℃~約1250℃の範囲内である。いくつかの実施形態では、熱間加工における加熱温度は、4時間にわたる約1250℃である。
【0134】
いくつかの実施形態では、熱間加工は、熱間圧延のための鋼基材の予備加熱であってよい。いくつかの実施形態では、金属基材は、鋼材を含んでよい。いくつかの実施形態では、鋼材は、ステンレス鋼、低炭素鋼、及び合金鋼であってよい。
【0135】
本明細書に包含される実施形態を、以降で、以下の例を参照して記載する。これらの例は、単に例示の目的で提供されるものであり、本明細書に包含される本開示は、いかなる形であってもこれらの例に限定されるものとして解釈されるべきではなく、むしろ、本明細書で提供される教示内容の結果として明らかとなるあらゆる変型例を包含するものとして解釈されるべきである。
【0136】
実施例
一般手順
本発明の組成物は、本技術分野において公知の様々な方法によって作製されてよい。そのような方法は、以下の例の方法を、さらには以下で具体的に例示される方法を含む。セラミックコーティングの技術分野において一般的に実践される技術を含むそのような方法の改変も、用いられてよい。
【0137】
高せん断ブレンダー(RW20、IKA(登録商標)製)に、50gの水に入れた50gの固体粒子を添加して撹拌し、液体懸濁液を形成した。こうして形成した液体懸濁液を、ドローダウンバー又はブラシにより、塗布率約0.1kg/m~約10kg/mで、鋼材Q-Panel(登録商標)R-46(Q-Lab corporation、寸法:152×102×0.8mm、又は直径:65mm)又はAISI 1040低炭素鋼板(寸法:153×102×6.4mm)に塗布して、スラリーコーティング鋼板を形成した。未コーティング鋼板の重量を秤量し、重量(w1)を記録する。コーティング鋼板を、100℃で半時間、炉(Fisher Scientific(商標)、30~約300℃)中で乾燥し、乾燥粉末コーティング鋼板を形成した。乾燥粉末コーティング鋼板を、冷却後に秤量し、重量(w2)を記録した。乾燥粉末コーティング鋼板を、セラミック膜焼成炉(Nabertherm(商標)C450、30~約3000℃)に入れ、1250℃で4時間加熱して、焼結保護コーティング膜でコーティングされた鋼板を形成した。保護コーティング膜を有する鋼板を炉から取り出し、冷却し、水道水の流水を適用してセラミックコーティング膜で保護された鋼板上のスケールを除去し、熱処理鋼板を得た。熱処理鋼板を秤量し、重量(w3)を記録した。
【0138】
鋼材重量ロス防止のパーセント及びコーティング塗布率を、以下のようにして算出する。
スケール重量ロス(スケール重量)=w1-w3 (式1)
重量ロス防止パーセント(%)=(w1-w3)/w1×100% (式2)
コーティング塗布率(kg/m)=(w2-w1)/鋼板の表面積(m) (式3)
代表的な保護コーティング組成物の配合のいくつかを、以下の表4にまとめて示す。
【0139】
【表4】
【0140】
表4に記載した保護コーティングを用いて、様々な種類の鋼材、合金鋼の表面をコーティングし、続いて加熱炉中での熱間加工に掛けることで、実験室試験及びパイロットミル試験の両方において、高温酸化ロスの50%~80%の低減が得られる。熱間加工の生産性及び生産量が改善される。したがって、経済的及び社会的有益性が向上される。代表的な例を、以下の例1~7に記載する。
【0141】
例1.
50gのFerro Frit 3110及び50gの水を、高せん断ブレンダー(IKA(登録商標)RW 20)による均一撹拌下で一緒に混合して、化学組成が3.7% Al、69.8% SiO、2.4% KO、15.2% NaO、6.3% CaO、2.6% Bを含む固体懸濁液(スラリー)を形成した(Ferro Frit 3110の組成については表2を参照)。スラリーを、ブラシ又はドローダウンバーによって、鋼材Q-Panel(登録商標)R-46(Q-Lab corporation、寸法:152×102×0.8mm又は直径:65mm)の表面の一部分に塗布して、グレーズ材料Frit 3110のスラリーでコーティングされた鋼板を得た。スラリーでコーティングされた鋼板を、100℃で半時間、オーブン(Fisher Scientific(商標)、30~約300℃)中で乾燥し、粉末コーティング鋼板を形成させた。乾燥粉末コーティング鋼板を、炉(Nabertherm(商標)C450(30~約3000℃))に入れ、1060℃で20分間加熱し、続いて1250℃で4時間加熱した。1060℃で20分間加熱した後、半透明グレーズ膜がQ-panelの表面上に形成され(図4A)、グレーズ膜は、1250℃での20分間で透明となった(図4B)。透明膜は、加熱加工中、均一な膜であった。膜は、冷却すると破壊された。
【0142】
1250℃で20分間加熱した後、下にある鋼材表面は、依然としてスケール生成のない光沢面であった。形成された透明ガラス様膜は、鋼材表面を保護し、その保護は、約20分間持続した。1250℃で4時間の後、グレーズ膜は消滅し、酸化物スケールが観察された(図4~5)。フリット-3110は、1250℃よりも非常に低い760~927℃の焼結点を有する。1250℃での長時間の加熱に掛けると、透明グレーズ膜は、溶融して液体となり、鋼板表面から流れ去った。
【0143】
1250℃で4時間加熱した後、鋼板は完全に黒色のスケールに変換された(図4C)。図5のEDS/EDXは、表面が主として酸化鉄であることを示した。
例2.
50グラム(50g)のか焼酸化アルミニウムの325USメッシュ(44ミクロン、セラミック供給業者からのアルミナ仕様については表5参照)、及び50gの水を、高せん断ブレンダー(IKA(登録商標)RW 20)による均一撹拌下で一緒に混合して、化学組成が99.0%超のAlを高融点無機材料(融点2000℃、かさ密度1.25g/cm)として含む固体懸濁液(スラリー)を形成した。固体懸濁液を、ブラシ又はドローダウンバーによって、AISI 1040低炭素鋼版(寸法:153×102×6.4mm)の表面に1kg/m~10kg/mの範囲内のコーティング重量率で塗布し、か焼酸化アルミニウムスラリーコーティング鋼板を得た。
【0144】
【表5】
【0145】
スラリーコーティング鋼板を、100℃で半時間、オーブン中(Fisher Scientific(商標)655G)、30~約300℃で乾燥し、か焼酸化アルミニウム粉末コーティング鋼板を形成させた。粉末コーティング鋼板を炉に入れ、1250℃で加熱して、か焼酸化アルミニウムの白色膜でコーティングされた鋼板を得た。4時間加熱した後、白色か焼酸化アルミニウム膜は、依然として視認可能であった(図7A)。か焼酸化アルミニウム膜は、ゆるく、指での圧力で変形しただけでクラックが発生した(図7B)。か焼酸化アルミニウム膜は、鋼材酸化による重量ロスを21%防止した(表6)。
【0146】
コントロールとして、ブランク板を、アルミナコーティング板と一緒に加熱した。ブランク板は、89.1g減少し、アルミナコーティング板の減少は、70.8gであった。コーティングされたアルミナ膜は、18.3gの鋼材又は21%を保護した(表6参照)。鋼板に対するより良好な保護(及び重量ロスのより多い保護)のためには、より高い相対密度が必要である。ナノAl粒子と325メッシュアルミナとの混合物も試験した。ナノアルミナ粒子は、325メッシュアルミナ粒子間の隙間を埋めることができるが、出来たばかりの膜は、100℃での乾燥中にクラックを生じた。セラミック産業では、小サイズの粒子が乾燥時にセラミック体におけるクラック形成を引き起こし得ることは一般的である。
【0147】
【表6】
【0148】
相対密度は、試料の焼結度を直接反映している。充分に焼結されたアルミナ試料の最大密度は、3.94g/cm、又は相対密度100%に到達可能である。研究により、アルミナの相対密度は、室温から1250℃まで10℃/分で加熱した後、52%まで上昇し得ることが示された。焼結アルミナコーティングの相対密度は、1250℃で4時間の保持時間により、52%から61%にさらに上昇し得る。
【0149】
例3.
フリット、クレイ、及びアルミナを一緒にブレンドした。フリットは、FeO生成の前に1250℃未満で焼結し、クレイとアルミナとを一緒に固着させ、膜の焼結点を低下させ得る。
【0150】
カルボキシメチルセルロースナトリウム(Aqualon(登録商標)CMC 7L)(0.3g、Ceramic Shop)と水(33.4ml)とを、撹拌下で混合した。得られた混合物を、CMCが完全に溶解するまで、85~約90℃で約2時間にわたって加熱した。熱CMC水溶液を、50℃未満まで冷却した。冷却したCMC溶液に、Darvan(登録商標)811(1.0g、Ceramic Shop)を撹拌下で添加し、続いてカオリン(17.6g、Ceramic Shop)、Zircopax Plus(商標)(17.0g、Ceramic Shop)、及び炭化ケイ素(30.7g、Superior Graphite)を添加した。得られた混合物を、さらに2時間撹拌してスラリーを形成した(17.6重量% カオリンクレイ、17.0重量% Zircopax Plus(商標)、30.7重量% 炭化ケイ素、0.3重量% CMC、及び1.0重量% Darvan(登録商標)811、及び33.4重量% DI水)(4311-012A 実験室配合)。
【0151】
スラリーを、ブラシによって低炭素鋼板のAISI 1040鋼板(寸法:153×102×6.4mm)の表面に塗布して、スラリーコーティング鋼板を形成した。スラリーコーティング鋼板を、60℃で約30分間、実験用オーブン(Fisher Scientific(商標)655G)中で乾燥して、粉末コーティング鋼板を形成した。粉末コーティング鋼板を、実験用炉(Nabertherm(商標)C450)中、1250℃で4時間熱処理し、その間に、粉末コーティングは、鋼板の表面上で焼結して、焼結保護膜コーティング層を形成した。この場合、保護コーティング層によって、鋼材表面上に非常に優れた緻密性の非常に薄い鉄スケールが形成されただけであった。保護コーティング層は、急冷によって自然に剥離することができ(図8B)、鋼板表面は、残渣を残さずに均一で清浄に維持された。
【0152】
SEM/EDXによる外観の結果を示す図9を参照すると、4311-012Aのコーティング組成物から形成された焼結保護コーティング膜層を有する鋼板が、ブランクと比較して、酸化物スケールの形成を低減したことが分かる(図8(B))。さらに、それは、酸化ロスの82%の低減も示した(表7)。
【0153】
【表7】
【0154】
例4.パイロットミル試験
17.6重量% カオリンクレイ、17.0重量% Zircopax Plus(商標)、30.7重量% 炭化ケイ素、0.3重量% カルボキシメチルセルロースナトリウム(Aqualon(登録商標)CMC 7L)、1.0重量% 分散剤(Darvan(登録商標)811)、及び33.4重量% DI水(パイロットミル4311-12A配合)を一緒に混合して、スラリーを形成した。
【0155】
スラリーを、高ケイ素合金板(高Si(2.5%))、中ケイ素合金板(中Si(1.6%)及びMn(1.6%))、並びに低ケイ素合金板(低Si(0.005%)及びMn(0.1%))を含む合金の表面に(図11、表9)、2.2mmノズルを有するペイントガンを用いて、0.1kg/mのコーティング塗布率(表8)で2バールの圧力でスプレーし(図11)、スラリーコーティング合金板を作製した。スラリーコーティング合金板を、60℃で約30分間、実験用オーブン(Fisher Scientific(商標)655G)中で乾燥して、粉末コーティング合金鋼板を形成した。粉末コーティング合金鋼板を、パイロットミルの炉中、1180~1200℃で45分間熱処理し、この場合、炉の操作パラメータは、酸素2~5%、露点56℃である。
【0156】
【表8】
【0157】
SEM/EDXによる外観の結果及び対応する鉄スケールの厚さを示す図11及び表9を参照すると、4311-012Aのコーティング組成物から形成された保護セラミックコーティング層を有する合金板が、保護コーティング層のない鋼材の場合(すなわち、374μm)よりも非常に薄い鉄スケール(例:179μm)を有していたことが分かる。さらに、それは、0.1kg/mのコーティング重量での様々な合金において、酸化ロスの27~52%の低減を示した(表9)。
【0158】
【表9】
【0159】
パイロットミル試験は、この製品が、設計コーティング重量(1.0kg/m)の10分の1であるコーティング重量0.1kg/mで、様々な合金に対してスケールを27~約52%低減したことを示した。図10の実験室での結果は、コーティング重量が高い程、より多いスケールの低減を得ることができることを示した。したがって、パイロットミルでより高いコーティング重量が試験された場合、スケール厚さをさらに低減可能であると考えることは妥当である。
【0160】
本明細書で述べる保護コーティングは、鉄鋼産業に対して多大なコスト削減をもたらし得る。上記の中国特許‘258と比較すると、4311-12A保護コーティング配合は、純金属酸化物の一部をクレイを用いて置き換えて、原材料コストを低減している。その最終コストは、非常に概略的な計算で、中国特許‘258で請求される配合の半分未満であり得る。
【0161】
表10は、スラブを30トンと仮定し、再加熱炉中でのスケールロスは2%である。実験室試験データ、1kg/mコーティングで82%の質量保護、を各スラブに対して適用すると、保護コーティングは、約0.49トンの鋼材を保護することができ、これは、コストにすると約$245である。パイロットミル試験データ、0.1kg/mコーティングで27%~52%の質量保護、を各スラブに対して適用すると、保護コーティングは、約0.16~約0.31トンの鋼材を保護することができ、これは、コストにすると約$81~$155である。
【0162】
【表10】
【0163】
例5.
57.0重量%のFrit 3134(10.14% NaO、19.51% CaO、2.0% Al、22.79% B、45.6% SiO)、14.0重量%のカオリンクレイ、及び29.0重量%のDI水(4276-100A配合)を一緒に混合して、スラリーを形成した。固体懸濁液を、ブラシ又はドローダウンバーによって鋼材の表面に0.1kg/mのコーティング塗布率で塗布して、スラリーコーティング鋼板を形成した。スラリーコーティング金属基材をオーブン中で乾燥して、粉末コーティング鋼板を形成した。粉末コーティング鋼板を、熱間圧延のための再加熱炉中、1250℃で4時間の熱処理に掛け、緻密なセラミック膜コーティングを鋼材表面に形成した。鋼材表面のそうして形成された保護膜は、1250℃で短い時間(20分間)では安定である。
【0164】
例6.
66重量パーセント(66.0重量%)のか焼酸化アルミニウム(325USメッシュ)、0.5重量%のカルボキシメチルセルロースナトリウム(Aqualon(登録商標)CMC 7L)、0.5重量%の分散剤(Darvan(登録商標)811)、及び33.0重量%のDI水(4311-35A配合)を一緒に混合して、スラリーを形成した。固体懸濁液を、ブラシ又はドローダウンバーによって鋼板の表面に0.1kg/mのコーティング塗布率で塗布して、スラリーコーティング鋼板を形成した。スラリーコーティング鋼板を、60℃で約30分間、実験用オーブン(Fisher Scientific(商標)655G)中で乾燥して、粉末コーティング鋼板を形成させた。粉末コーティング鋼板を、熱間圧延のための再加熱炉中、1250℃で4時間の熱処理に掛け、緻密なセラミック膜コーティングを鋼材表面に形成した。鋼材重量ロスの21%低減が見られた。
【0165】
例7.4311-52A配合
カルボキシメチルセルロースナトリウム(Aqualon(登録商標)CMC 7L)(0.5g、Ceramic Shop)と水(33.2ml)とを、撹拌下で混合した。得られた混合物を、CMCが完全に溶解するまで、85~90℃で約2時間にわたって加熱した。熱CMC水溶液を、50℃未満まで冷却した。冷却したCMC溶液に、Darvan(登録商標)811(0.5g、Ceramic Shop)を撹拌下で添加し、続いてか焼酸化アルミニウム(33.0g、325USメッシュ、Ceramic Shop)、シリコン粉末(19.0g、Vesta)、炭化ケイ素(13.0g、Superior Graphite)、及びベントナイトクレイ(0.5g、Ceramic Shop)を添加した。得られた混合物を2時間にわたって撹拌した。消泡剤(0.3g、Dow Chemical)を混合物に添加して、スラリー(33.0重量% か焼酸化アルミニウム(325USメッシュ)、19.0重量% シリコン粉末、13.0重量% 炭化ケイ素、0.5重量% ベントナイトクレイ、0.5重量% CMC、及び0.5重量% Darvan(登録商標)811、及び33.2重量% DI水)を形成した。
【0166】
スラリーを、ブラシによって低炭素鋼板のAISI 1040鋼板(寸法:153×102×6.4mm)の表面に塗布して、スラリーコーティング鋼板を形成した。スラリーコーティング鋼板を、60℃で約30分間、実験用オーブン(Fisher Scientific(商標)655G)中で乾燥して、粉末コーティング鋼板を形成した。粉末コーティング鋼板を、実験用炉(Nabertherm(商標)C450)中、1250℃で4時間熱処理し、焼結保護膜コーティング層を形成した。保護コーティング層により、鋼材表面上に非常に優れた緻密性の非常に薄い鉄スケールが形成されただけであった。保護コーティング膜層は、急冷によって自然に剥離することができ、鋼材基材表面は、残渣を残さずに均一で清浄に維持された。鋼材重量ロスの80%を超える低減が見られた。
【0167】
比較例1.
50グラム(50g)のカオリン及び50gの水を、高せん断ブレンダー(IKA(登録商標)RW 20)による均一撹拌下で一緒に混合して、化学組成が38.0% Al、47.0% SiO、0.8% KO、0.2% NaO、0.1% CaO、0.4% Fe、0.2% MgOを含むスラリーを形成した(表3を参照)。スラリーを、ブラシ又はドローダウンバーによって、鋼材Q-Panel(登録商標)R-46(Q-Lab corporation、寸法:152×102×0.8mm又は直径:65mm)の表面に塗布して、カオリンでコーティングされた鋼板を得た(図6A)。コーティング鋼板を炉に入れ、それぞれ1000℃、1100℃、及び1250℃で4時間加熱した。
【0168】
1100℃で、カオリンは板の一部分でのみ視認可能であり、ほとんどの領域は黒色に見えた。黒色層を除去した後、板の重量ロスは、12.4%であった(表11)。1250℃では、カオリンはもはや視認できず、それは、100%のスケールから構成されている(w3=0.0g)(表11)。
【0169】
【表11】
【0170】
カオリンは1250℃よりも高い融点及び焼結点を有するが、スケールが存在することは、カオリンが1250℃で不安定であることを示唆するものと思われる。これは、約1200℃の融点を有するFeOの存在に起因している可能性がある。セラミック業界では「黒色酸化鉄」として知られるFeOは、色を付与するために広くグレーズで用いられている最も一般的なフラックスの1つである。酸化焼成は、赤色(Fe)を発生し、還元焼成は、黒色を発生する(FeO+Fe)。グレーズ中の提案される量は、約15%である。1250℃では、FeOの生成に起因して、コーティング膜の1成分としてカオリンを溶融する可能性が高い。その結果、膜の融点が大きく低下し得る。したがって、黒色酸化鉄の出現を回避するために、保護コーティングは、非常により高い融点を有する成分から成っているべきである。
【0171】
参考文献
1.Graf et al., Scale development on steel during hot strip rolling, Metallurgia Italiana, 2014, vol. 106, S. 43-49.
2.Gao et al., The discussion to reduce steel billet oxidation burning loss, Henan Metallurgy, 2006-01.
3.Grieshaber et al., Next Generation Reheat Furnace Control:ZoloSCAN Laser Combustion Diagnostics, PR-366-314-2014 AISTech Conference.
4.Li et al., Laiwu Steel Group Ltd, 中国特許第102584258号
5.Wang et al., Two-step sintering of fine alumina-zirconia ceramics, Ceramics International, 2008.
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