(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】水性ハイブリッド感圧粘着剤組成物およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C09J 183/04 20060101AFI20221213BHJP
C09J 133/00 20060101ALI20221213BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20221213BHJP
C09J 11/08 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
C09J183/04
C09J133/00
C09J11/06
C09J11/08
(21)【出願番号】P 2020565485
(86)(22)【出願日】2018-06-12
(86)【国際出願番号】 CN2018090727
(87)【国際公開番号】W WO2019237235
(87)【国際公開日】2019-12-19
【審査請求日】2021-05-14
(73)【特許権者】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(73)【特許権者】
【識別番号】590002035
【氏名又は名称】ローム アンド ハース カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ルー、ルイワ
(72)【発明者】
【氏名】ディン、リー
(72)【発明者】
【氏名】チュー、ツァオホイ
(72)【発明者】
【氏名】ジョウ、イェン
(72)【発明者】
【氏名】リウ、ツイホア
(72)【発明者】
【氏名】シュイ、ボチ
(72)【発明者】
【氏名】ファン、ロンロン
【審査官】仁科 努
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104263314(CN,A)
【文献】特表2015-529725(JP,A)
【文献】特表2017-526760(JP,A)
【文献】特開2007-197514(JP,A)
【文献】特開2009-280717(JP,A)
【文献】特開2002-317165(JP,A)
【文献】国際公開第2008/003191(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第108047968(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105255438(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108467707(CN,A)
【文献】特開2005-112969(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 183/04
C09J 11/06
C09J 11/08
C09J 133/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性ハイブリッド感圧粘着剤組成物であって、
(A)100質量部のシリコーン感圧粘着剤、
(B)5~80質量部のアクリル感圧粘着剤、
(C
)水、ならびに
(D)0.1~10質量部のアミノ官能性アルコキシシラン化合物、その加水分解物、またはその加水分解縮合物、
を含み
成分(A)および(B)が成分(C)に乳化または分散して
おり、
成分(A)が、
(A1)1分子あたり1つ以上のシリコン原子と結合したヒドロキシ基を有する直鎖状または部分的に分岐状のジオルガノポリシロキサン、および
(A2)R
3
SiO
1/2
シロキサン単位およびSiO
4/2
シロキサン単位を含む樹脂性オルガノポリシロキサン(式中、RがC
1~20
アルキル基を表し、R
3
SiO
1/2
シロキサン単位とSiO
4/2
シロキサン単位とのモル比が0.5~1.2の範囲である)
を、成分(A2)/成分(A1)の質量比が0.5~2の範囲であるような量で含む、水性ハイブリッド感圧粘着剤組成物。
【請求項2】
成分(A)が、成分(A1)と(A2)との合計100質量部あたり1~30質量部の量の(A3)乳化剤をさらに含む、請求項
1に記載の水性ハイブリッド感圧粘着剤組成物。
【請求項3】
成分(A3)がポリビニルアルコールおよび/またはポリエーテルで修飾されたオルガノポリシロキサンである、請求項
2に記載の水性ハイブリッド感圧粘着剤組成物。
【請求項4】
成分(D)が、アミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、アミノエチルアミノプロリルトリエトキシシラン、アミノエチルアミノプロピルメチルジメトキシシラン、アミノエチルアミノイソプロピルメチルジメトキシシラン、それらの混合物、それらの加水分解物、またはそれらの加水分解縮合物である、請求項1に記載の水性ハイブリッド感圧粘着剤組成物。
【請求項5】
靴底を粘着させるのに有用な、請求項1~
4のいずれかに記載の水性ハイブリッド感圧粘着剤組成物。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれかに記載の水性ハイブリッド感圧粘着剤組成物を製造する方法であって、
(i)水に乳化または分散したシリコーン感圧粘着剤と水に乳化または分散したアクリル感圧粘着剤とを混合し、水性ハイブリッド感圧粘着剤組成物を形成すること、および、次いで
(ii)アミノ官能性アルコキシシラン化合物、その加水分解物、またはその加水分解縮合物を、前記水性ハイブリッド感圧粘着剤組成物と混合すること、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性のハイブリッド感圧粘着剤(PSA)組成物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
加圧して粘着剤製品を基材と結合する場合に、感圧粘着剤(PSA)組成物は、基材に結合する粘着剤製品に形成され得る。シリコーンPSA組成物、アクリルPSA組成物、ハイブリッドPSA組成物などが様々な用途に利用可能であることはよく知られている。
【0003】
シリコーンPSA組成物は、優れた高温性能と低温性能との両方を呈し、優れた化学的不活性、電気絶縁特性、および低表面エネルギー基材に粘着させる能力を有する。しかしながら、シリコーンPSA組成物の欠点は、他の技術と比較してコストが高いことである。他の限界として、アクリルPSAと比較すると、必要な場合に、タックが低く、限定された粘着力の構築が含まれる。
【0004】
一方、アクリルPSA組成物は、他のPSAと比較して比較的低コストであり、様々な異なる表面によく粘着し、必要に応じて、表面への粘着を構築するように策定することができる。しかしながら、アクリルPSA組成物の不利点には、不十分な高温性能、不十分な低温性能、低い表面エネルギーの表面への粘着不能が含まれる。
【0005】
したがって、シリコーンで修飾されたアクリルPSA組成物などのハイブリッドPSA組成物が研究されている。例えば、米国特許出願公開第US2012/0095159A1号は、シリコーンポリマー成分、シリコーン樹脂成分およびアクリルポリマー成分を共に化学的に反応させてハイブリッドのシリコーン・アクリレート・ポリマーを形成することによるシリコーン・アクリル・ハイブリッド感圧粘着剤組成物を開示しており、アクリルポリマー成分は、共有結合で自己架橋し、シリコーンポリマー成分および/またはシリコーン樹脂成分と共有結合している。
【0006】
しかしながら、ハイブリッドのシリコーン・アクリレート・ポリマーはゲルを形成する傾向があるため、ポリマーを形成するための化学反応は有機溶媒中で行われる。さらに、安全性および環境上の利点から水性のPSA組成物が望ましいが、ハイブリッドのシリコーン・アクリレート・ポリマーを水に乳化または分散させることが困難であるため、このような水性の組成物を調製することは困難であった。
【0007】
米国特許出願公開第US2015/0284612A1号は、アクリルモノマー混合物の乳化重合によって調製されたアクリル乳化樹脂と、ビニル基などの反応基を有する反応性シリコーン樹脂から形成されたシードとを含むアクリル-シリコーン系ハイブリッド乳化粘着剤組成物を開示している。
【0008】
しかしながら、アクリルモノマーと、ビニル基を有する反応性シリコーン樹脂との水中での反応性が低いため、このようなシリコーン移行の問題が、硬化したアクリル-シリコーン系のハイブリッドPSAから観察される。さらに、硬化したアクリル-シリコーン系のハイブリッドPSAは、不十分な引きはがし粘着力を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】米国特許出願公開第US2012/0095159A1号
【0010】
【文献】米国特許出願公開第US2015/0284612A1号
【発明の概要】
【0011】
技術的な問題
本発明は、上記で引用された従来技術の欠陥を克服するために追求され、様々な用途のための新規な水性ハイブリッド感圧粘着剤組成物、特に靴底用の粘着剤を提供する目的を有する。本発明の別の目的は、新規の水性ハイブリッド感圧粘着剤組成物を製造する方法を提供することである。
【0012】
問題の解決策
本発明は、下記を含む水性のハイブリッド感圧粘着剤組成物を提供する。
(A)100質量部のシリコーン感圧粘着剤、
(B)5~80質量部のアクリル感圧粘着剤、
(C)成分(A)および(B)を成分(C)に乳化または分散させるのに十分な量の水、ならびに
(D)0.1~10質量部のアミノ官能性アルコキシシラン化合物、その加水分解物、またはその加水分解縮合物、
ここで、成分(A)および(B)は、成分(C)に乳化または分散している。
【0013】
特定の例示的実施形態において、成分(A)は、(A1)1分子あたり1つ以上のシリコン原子と結合したヒドロキシ基を有する直鎖状または部分的に分岐状のジオルガノポリシロキサンと、(A2)R3SO1/2シロキサン単位およびSiO4/2シロキサン単位を含む樹脂性オルガノポリシロキサンとを、成分(A2)/成分(A1)の質量比が0.5~2の範囲になるような量で含み、式中、RはC1~20アルキルを表し、R3SiO1/2シロキサン単位とSiO4/2シロキサン単位とのモル比は0.5~1.2の範囲である。
【0014】
これらまたは他の特定の例示的実施形態では、成分(A)はさらに、(A3)成分(A1)と(A2)の合計100質量部あたり1~30質量部の量の乳化剤および/または増粘剤を含む。
【0015】
これらまたは他の特定の例示的実施形態では、成分(A3)は、ポリビニルアルコールおよび/またはポリエーテルで修飾されたオルガノポリシロキサンである。
【0016】
これらまたは他の特定の例示的実施形態において、成分(D)は、アミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、アミノエチルアミノプロリルトリエトキシシラン、アミノエチルアミノプロピルメチルジメトキシシラン、アミノエチルアミノイソプロピルメチルジメトキシシラン、それらの混合物、それらの加水分解物、またはそれらの加水分解縮合物である。
【0017】
これらまたは他の特定の例示的実施形態では、水性のハイブリッド感圧粘着剤組成物は、様々な基材、特に靴底に使用される材料への粘着に有用である。したがって、例示的な用途は、靴底を靴の上部に粘着させることである。
【0018】
本発明は、上記のような水性のハイブリッド感圧粘着剤組成物を製造する方法も提供し、本方法は、
(i)水に乳化または分散したシリコーン感圧粘着剤と、水に乳化または分散したアクリル感圧粘着剤とを混合し、水性のハイブリッド感圧粘着剤組成物を形成すること、ならびに、次に
(ii)アミノ官能性アルコキシシラン化合物、その加水分解物、またはその加水分解縮合物を、水性のハイブリッド感圧粘着剤組成物と混合すること、を含む。
【0019】
発明の効果
本発明の水性のハイブリッド感圧粘着剤組成物は、硬化して良好な引きはがし粘着力および低いシリコーン移行性を呈する感圧粘着剤を形成することができる。さらに、本発明の方法は、特徴として、水性のハイブリッド感圧粘着剤組成物の製造を効率的に実施することができる。
【0020】
定義
本明細書では、「含む(comprising)」または「含む(comprise)」という用語は、「含む(including)」、「含む(include)」、「本質的に~からなる」、および「~からなる」の概念を意味し包含するために最も広い意味で使用される。例示的な例を列挙するための「例えば(for example)」、「例えば(e.g.)」、「など」、および「含む」の使用は、列挙される例のみに限定されない。したがって、「例えば」または「など」は、「例えば、しかし限定されない」または「など、しかし限定されない」を意味し、他の類似または同等の例を包含する。本明細書で使用される「約」という用語は、機器分析によって、またはサンプル取扱いの結果として測定される数値の僅かな変動を合理的に包含または説明するのに役立つ。かかる僅かな変動は、数値の±0~25、±0~10、±0~5、または±0~2.5%ほどであり得る。さらに、「約」という用語は、値の範囲を伴う場合に、両方の数値に適用される。さらに、「約」という用語は、明確に述べられていない場合であっても、数値に適用される場合がある。
【0021】
一般に、本明細書で使用する場合、値の範囲のハイフン「-」またはダッシュ「-」は、「~(to)」または「から(through)」であり、「>」は、「上回る」または「より大きい」であり、「≧」は、「少なくとも」または「以上」であり、「<」は、「下回る」または「未満」であり、「≦」は、「最大で」または「以下」である。個別的に、前述の特許出願、特許、および/または特許出願公開の各々は、1つ以上の非限定的な実施形態において参照によりその全体が本明細書に明示的に組み込まれる。一般に、本明細書で使用される場合、値の範囲内のハイフン「-」またはダッシュ「-」は、「~」または「から」である。
【0022】
添付の特許請求の範囲は、「発明を実施するための形態」に記載される表現および特定の化合物、組成物、または方法に限定されないことが理解されるべきであり、添付の特許請求の範囲の範疇にある特定の実施形態間で異なる場合がある。様々な実施形態の特定の特徴または態様を説明するための本明細書に依拠する任意のマーカッシュグループに関して、他のすべてのマーカッシュメンバーから独立したそれぞれのマーカッシュグループの各メンバーから異なる、特別な、および/または予期しない結果が得られる場合があることを認識されたい。マーカッシュグループの各メンバーは、個別に、およびまたは組み合わせて依拠され得、添付の特許請求の範囲の範疇の特定の実施形態に好適なサポートを提供する。
【0023】
さらに、本発明の様々な実施形態の説明に依拠する任意の範囲および部分範囲は、添付の特許請求の範囲の範疇に独立してかつ集合的に該当し、そのような値が本明細書に明示的に書かれていない場合であっても、それらの全体および/または小数値を含むすべての範囲を説明および企図すると理解されたい。当業者は、列挙された範囲および部分範囲が本発明の様々な実施形態を十分に説明し、有効にし、かつかかる範囲および部分範囲が関連する半分、3分の1、4分の1、5分の1などにさらに詳しく説明され得ることを容易に認識する。単なる一例として、「0.1~0.9の」範囲は、下3分の1、すなわち0.1~0.3、中3分の1、すなわち0.4~0.6、および上3分の1、すなわち0.7~0.9にさらに詳しく説明され、これは、個別および集合的に添付の特許請求の範囲の範疇にあり、個別および/または集合的に依拠され、添付の特許請求の範囲の範疇の特定の実施形態に好適なサポートを提供する。さらに、「少なくとも」、「より大きい」、「未満」、「以下」などの範囲を定義または修飾する言語に関して、かかる言語は部分範囲、および/または上限もしくは下限を含むことを理解されたい。別の例として、「少なくとも10」という範囲には、少なくとも10~35の部分範囲、少なくとも10~25の部分範囲、25~35の部分範囲などが本質的に含まれ、各部分範囲は、個別および/または集合的に依拠され、添付の特許請求の範囲の範疇の特定の実施形態に好適なサポートを提供する。最後に、開示された範囲内の個別の数字は、依拠され、添付の特許請求の範囲の範疇の特定の実施形態に好適なサポートを提供する。例えば、「1~9」という範囲には、3などの様々な個別の整数、ならびに4.1などの小数点(または小数)を含む個別の数値が含まれ、これは、依拠され、添付の特許請求の範囲の範疇の特定の実施形態に好適なサポートを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の水性のハイブリッド感圧粘着剤組成物は、
(A)シリコーン感圧粘着剤、
(B)アクリル感圧粘着剤、
(C)水、および
(D)アミノ官能性アルコキシシラン化合物、その加水分解物、またはその加水分解縮合物、を含む。
【0025】
本発明では、成分(A)はシリコーン感圧粘着剤である。シリコーン感圧粘着剤は、一般的に、(A1)1分子当たり1つ以上のケイ素原子と結合したヒドロキシ基を有する直鎖状または部分的に分岐状のジオルガノポリシロキサン、ならびに(A2)R3SiO1/2シロキサン単位およびSiO4/2シロキサン単位を含む樹脂性オルガノポリシロキサン、を含む。
【0026】
成分(A1)は、1分子あたり1つ以上のケイ素原子と結合したヒドロキシ基を有する直鎖状または部分的に分岐状のジオルガノポリシロキサンである。成分(A1)の分子構造の例には、直鎖および部分的に分岐状の直鎖が含まれる。ヒドロキシ基以外のシリコン原子結合基の例には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、およびドデシル基などのC1~20アルキル基、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、およびドデセニル基などのC2~20アルケニル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基、およびピレニル基などのC6~20アリール基、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルエチル基、ナフチルプロピル基、アントラセニルエチル基、フェナントリルエチル基、およびピレニルエチル基などのC7~20アラルキル基が含まれる。
【0027】
25℃での成分(A1)の粘度は限定されないが、好ましくは少なくとも100mm2/秒である。前述の理由は下記の通りである。成分(A1)の粘度が上記の下限値未満である場合、本組成物を硬化させることにより得られるハイブリッド感圧粘着剤は、引きはがし粘着力が不十分となる傾向がある。成分(A1)は、高粘度のガム状ジオルガノポリシロキサンであり得る。このようなジオルガノポリシロキサンガムは、50以上のウィリアムス可塑度を有する。
【0028】
成分(A2)は、R3SiO1/2シロキサン単位およびSiO4/2シロキサン単位を含む樹脂性オルガノポリシロキサンである。
【0029】
上記の式において、RはC1~20アルキル基を表す。アルキル基の例には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、およびドデシル基が含まれる。
【0030】
成分(A2)において、R3SiO1/2シロキサン単位と、SiO4/2シロキサン単位とのモル比は、0.5~1.2の範囲、あるいは0.6~1.1の範囲、あるいは0.7~1.1の範囲であることが望ましい。この理由は下記の通りである。比率が引用された下限よりも小さい場合、本組成物を硬化することによって提供されるハイブリッド感圧粘着剤は、不十分な引きはがし粘着を有する傾向があり、他方で、比率が上記で引用された上限を超える場合、本組成物を硬化させることにより得られるハイブリッド感圧粘着剤は、タックが不十分となる傾向がある。
【0031】
成分(A2)の含有量は、成分(A2)/成分(A1)の質量比が0.5~2の範囲、あるいは0.8~2の範囲、あるいは1.0~2の範囲にあるような量であり得る。この理由は下記の通りである。比率が引用された下限よりも小さい場合、本組成物を硬化することによって提供されるハイブリッド感圧粘着剤は、不十分な剥離粘着を有する傾向があり、他方で、比率が上記で引用された上限を超える場合、本組成物を硬化させることにより得られるハイブリッド感圧粘着剤は、タックが不十分となる傾向がある。
【0032】
成分(A)用のシリコーン感圧粘着剤は、水中の成分(A1)および(A2)の混合物を安定化するために、(A3)乳化剤をさらに含み得る。
【0033】
成分(A3)として有用な乳化剤の例には、陰イオン性、陽イオン性、非イオン性または両性の界面活性剤が含まれる。これらのうちの1つ以上の混合物を使用することもできる。好適な陰イオン性有機界面活性剤には、高級脂肪酸のアルカリ金属石鹸、アルキルアリールスルホン酸塩、例えばドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、長鎖(脂肪)アルコール硫酸塩、オレフィン硫酸塩およびスルホン酸塩、硫酸化モノグリセリド、硫酸化エステル、スルホン化エトキシル化アルコール、スルホコハク酸塩、アルカンスルホン酸塩、リン酸エステル、イソチオン酸アルキル、タウリン酸アルキルおよび/またはサルコシン酸アルキルが挙げられる。好適な陽イオン性有機界面活性剤には、アルキルアミン塩、第四級アンモニウム塩、スルホニウム塩およびホスホニウム塩が挙げられる。好適な非イオン性界面活性剤には、シロキサンポリオキシアルキレンコポリマー、長鎖(脂肪)アルコールまたは(脂肪)酸とのエチレンオキシドの縮合物、例えばC12~16アルコール、アミンまたはアミドとのエチレンオキシドの縮合物、エチレンおよびプロピレンオキシドの縮合生成物、グリセロール、スクロースまたはソルビトールのエステル、脂肪酸アルキロールアミド、スクロースエステル、フルオロ界面活性剤および脂肪アミンオキシドが挙げられる。好適な両性有機洗剤用界面活性剤には、イミダゾリン化合物、アルキルアミノ酸塩およびベタインが挙げられる。有機界面活性剤が非イオン性または陰イオン性であることがより好ましい。陰イオン性界面活性剤と非イオン性界面活性剤の混合物が特に好ましい。
【0034】
成分(A3)として有用な他の乳化剤の例には、ポリビニルアルコール、およびポリエーテルで修飾したオルガノポリシロキサンが含まれる。乳化剤は、ポリエーテルで修飾されたMQ(式中、MはR3SiO1/2であり、QはSiO4/2であり、RはC1~20アルキルを表す)樹脂であることがより好ましい。
【0035】
上記の式では、Rは上記のこれと同義である。
【0036】
ポリエーテルで修飾されたMQ樹脂では、R3SiO1/2シロキサン単位とSiO4/2シロキサン単位とのモル比は限定されていないが、0.5~1.5の範囲、あるいは0.5~1.2の範囲、あるいは0.6~1.1の範囲であり得る。
【0037】
ポリエーテルで修飾されたMQ樹脂の製造方法は限定されないが、ジネオデカン酸ジメチルスズ、オクタン酸第一スズ、テトラ(イソプロポキシ)チタン、テトラ(n-ブトキシ)チタン、テトラ(t-ブトキシ)チタン、ジ(イソプロポキシ)ビス(アセト酢酸エチル)チタン、ジ(イソプロポキシ)ビス(メチルアセトアセテート)チタン、およびジ(イソプロポキシ)ビス(アセチルアセトナート)チタンなどの縮合触媒の存在下で、MQ樹脂とヒドロキシル化ポリエーテルとの反応により生成され得る。
【0038】
成分(A3)は、好ましくは、1~30質量部、あるいは成分(A1)と(A2)の合計100質量部に基づいて5~15質量部の量で存在する。この理由は下記の通りである。含有量が引用された下限よりも小さい場合、水性シリコーン感圧粘着剤は不安定な傾向があり、他方で、含有量が上記で引用された上限を超える場合、本組成物を硬化させることにより得られるハイブリッド感圧粘着剤は、タックが不十分となる傾向がある。
【0039】
成分(A)用のシリコーン感圧粘着剤は、水中の成分(A1)および(A2)の混合物を安定化するために、増粘剤をさらに含み得る。増粘剤の例には、キサンタンガム、およびヒドロキシアルキルセルロースが含まれる。
【0040】
水性のハイブリッド感圧粘着剤組成物を製造するための好ましいプロセスは、水性のシリコーン感圧粘着剤組成物を使用することである。乳化剤は、水中での成分(A)の乳化および/または分散を促進するために添加される。
【0041】
形成される乳濁液の粒子サイズは、一般に、50ナノメートル(nm)~50ミクロンの範囲であり、より低い粒子サイズの乳濁液は、例えば、ホモジナイザー、sonolator、マイクロフルイダイザー、またはローターおよびステータタイプの高剪断ミキサーにおいて、高剪断の適用によって生成される。
【0042】
本発明において、成分(B)は、アクリルまたはアクリレートモノマーなどのモノマーの重合によって生成されるアクリル感圧粘着剤である。さらに、成分(B)は、アクリルまたはアクリレートモノマーを、エチレン性不飽和カルボン酸モノマー、モノビニリデン芳香族モノマー、ニトリルモノマー、ハロゲン化ビニルモノマー、ビニルエステルモノマー、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートモノマーおよび(メタ)アクリルアミドモノマーなどの他のモノマーと重合させることにより生成され得る。
【0043】
一般に、好ましいアクリレートモノマーは、(メタ)アクリル酸、C1~10アルキル(メタ)アクリレート、あるいはアルコキシC1~10アルキル(メタ)アクリレート、あるいはC1~8アルキル(メタ)アクリレートまたはアルコキシC1~8アルキル(メタ)アクリレートである。このようなアクリレートモノマーの例には、n-ブチルアクリレート、sec-ブチルアクリレート、エチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、tert-ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、4-メチル-2-ペンチルアクリレート、2-メチルブチルアクリレートおよびtert-ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、およびセチルメタクリレート、メトキシエチルメタクリレート、エトキシエチルメタクリレート、メトキシエチルアクリレート、エトキシエチルアクリレート、ブトキシエチルメタクリレート、メトキシブチルアクリレートおよびメトキシエトキシエチルアクリレートが含まれる。好ましいアクリレートモノマーは、n-ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、エトキシエチルアクリレートおよびメトキシエチルアクリレートであり、n-ブチルアクリレートが特に好ましい。多くの場合、2つ以上のアクリレートモノマーが使用される。アクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステルおよびアルコキシアルキル(メタ)アクリレートモノマーは、唯一のモノマーまたはモノマー混合物の一部分として用いることができる。
【0044】
代表的なモノビニリデン芳香族モノマーには、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、t-ブチルスチレン、ビニルトルエン、およびハロゲン化スチレンが挙げられる。1つ以上のモノビニリデン芳香族モノマーの混合物も用いることができる。好ましいモノマーはスチレンおよびα-メチルスチレンである。
【0045】
本発明で有用な「ニトリルモノマー」には、直鎖または分岐鎖に2~4個の炭素原子を含む重合可能な不飽和脂肪族ニトリルモノマーが含まれ、これは場合によりハロゲン、アセチル、または追加のニトリル基で置換され得る。このようなニトリルモノマーには、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、クロロアクリロニトリル、およびフマロニトリルが含まれ、アクリロニトリルが好ましい。
【0046】
本明細書で有用な「ハロゲン化ビニルモノマー」には、ハロゲン化ビニルおよびハロゲン化ビニリデンが含まれる。本発明に好適なハロゲン化ビニルモノマーには、臭化ビニル、臭化ビニリデン、塩化ビニルおよび塩化ビニリデンが挙げられる。塩化ビニルおよび塩化ビニリデンが特に好ましい。
【0047】
本明細書で有用な「ビニルエステルモノマー」には、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル、2-エチルヘキサン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、およびベルサチン酸のビニルエステルが挙げられる。本発明での使用に最も好ましいビニルエステルモノマーは酢酸ビニルである。
【0048】
本明細書で有用な「ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートモノマー」には、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、または他の高級アルキレンオキシド、またはそれらの混合物に基づくヒドロキシアルキル・アクリレートおよびメタクリレートのモノマーが挙げられる。例は、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、およびヒドロキシブチルアクリレートである。好ましいヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートモノマーは、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、およびヒドロキシブチルアクリレートである。
【0049】
本明細書で有用な「(メタン)アクリルアミドモノマー」には、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、およびジアセトンアクリルアミドなどのα、β-オレフィン不飽和カルボン酸のアミドが挙げられる。好ましい(メタ)アクリルアミドモノマーはアクリルアミドである。
【0050】
水性のハイブリッド感圧粘着剤組成物を製造するための好ましいプロセスは、水性のアクリル感圧粘着剤組成物を使用することである。水性アクリル感圧粘着剤組成物を製造する方法は当技術分野で知られており、例えば、国際公開第WO94/03550A1号、米国特許出願公開第US2008/0281005A1号、および国際公開第WO2018/027888A1号を参照のこと。界面活性剤または乳化剤は、水中での成分(B)の乳化を促進するために添加される。
【0051】
本明細書での使用に好適な界面活性剤または乳化剤には、重合プロセスのために当技術分野で典型的に知られている従来の界面活性剤が含まれる。界面活性剤は、水相および/またはモノマー相に添加することができる。シードプロセスにおける界面活性剤の有効量は、粒子をコロイドとして安定化し、粒子間の接触を最小限に抑え、凝集を防止するのに役立つよう選択された量である。非シードプロセスでは、界面活性剤の有効量は、粒子サイズに影響を与えるために選択された量になるであろう。
【0052】
界面活性剤は、陰イオン性および非イオン性界の面活性剤から選択され得る。これらのうちの1つ以上の混合物を使用することもできる。好適な陰イオン性有機界面活性剤には、高級脂肪酸のアルカリ金属石鹸、アルキルアリールスルホン酸塩、例えばドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、長鎖(脂肪)アルコール硫酸塩、オレフィン硫酸塩およびスルホン酸塩、硫酸化モノグリセリド、硫酸化エステル、スルホン化エトキシル化アルコール、スルホコハク酸塩、アルカンスルホン酸塩、リン酸エステル、イソチオン酸アルキル、タウリン酸アルキルおよび/またはサルコシン酸アルキルが挙げられる。好適な非イオン性界面活性剤には、シロキサンポリオキシアルキレンコポリマー、長鎖(脂肪)アルコールまたは(脂肪)酸とのエチレンオキシドの縮合物、例えばC12~16アルコール、アミンまたはアミドとのエチレンオキシドの縮合物、エチレンおよびプロピレンオキシドの縮合生成物、グリセロール、スクロースまたはソルビトールのエステル、脂肪酸アルキロールアミド、スクロースエステル、フルオロ界面活性剤および脂肪アミンオキシドが挙げられる。有機界面活性剤が非イオン性または陰イオン性であることがより好ましい。陰イオン性界面活性剤と非イオン性界面活性剤の混合物が特に好ましい。
【0053】
形成される乳濁液の粒子サイズは、一般に、50ナノメートル(nm)~50ミクロンの範囲である。
【0054】
本発明において、成分(B)用の水性アクリル感圧粘着剤組成物は、当技術分野で知られている任意の乳濁液タイプのアクリル感圧粘着剤から選択され得る。これらの例には、RHOPLEX(商標)N-1031粘着剤、ROBOND(商標)PS-8915、ROBOND(商標)PS-1088 ADHESIVE(Dow Chemical Companyから市販されている)またはそれらの任意の組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0055】
本発明において、成分(B)の含有量は、成分(A)の100質量部あたりで、5~80質量部、あるいは10~80質量部、あるいは20~80質量部、あるいは30~80質量部、あるいは40~80質量部、あるいは5~70質量部、あるいは10~70質量部、あるいは20~70質量部、あるいは5~60質量部、あるいは10~70質量部、あるいは20~60質量部、あるいは30~70質量部、あるいは40~70質量部である。この理由は下記の通りである。含有量が引用された下限よりも小さい場合、本組成物を硬化することによって提供されるハイブリッド感圧粘着剤は、不十分な粘着となる傾向があり、他方で、含有量が上記で引用された上限を超える場合、本組成物を硬化させることにより得られるハイブリッド感圧粘着剤は、低温および/または高温でタックが不十分となる傾向がある。
【0056】
成分(C)は、本発明の水性のハイブリッド感圧粘着剤成分を形成するための水である。成分(C)は限定されないが、水道水、精製水、ミネラルウォーター等に例示される。
【0057】
成分(C)の含有量は限定されないが、成分(A)および(B)を水に乳化または分散させるのに十分な量である。したがって、成分(A)と(B)との両方が水性感圧粘着剤である場合、成分(C)は任意の成分であり、即ち、水が成分(A)および(B)から持ち込まれるであろうため、成分(C)を混合物に個別に追加する必要がない場合がある。
【0058】
成分(D)は、水性のハイブリッド感圧粘着剤組成物を硬化させるためのアミノ官能性アルコキシシラン化合物、その加水分解物、またはその加水分解縮合物である。成分(D)の例には、アミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、アミノエチルアミノプロリルトリエトキシシラン、アミノエチルアミノプロピルメチルジメトキシシラン、アミノエチルアミノイソプロピルメチルジメトキシシラン、それらの混合物、それらの加水分解物、またはそれらの加水分解縮合物が含まれる。
【0059】
本発明において、成分(D)の含有量は、成分(A)と(B)の合計100質量部に基づいて、0.1~10質量部、あるいは0.1~5質量部、あるいは0.5~10質量部、あるいは0.5~5質量部である。この理由は下記の通りである。含有量が引用された下限よりも小さい場合、水性シリコーン感圧粘着剤は未硬化の傾向があり、他方で、含有量が上記で引用された上限を超える場合、本組成物を硬化させることにより得られるハイブリッド感圧粘着剤は、タックが不十分となる傾向がある。
【0060】
本発明の水性ハイブリッド感圧粘着剤組成物の製造方法は限定されないが、好ましくは以下を含む。
(i)水に乳化または分散したシリコーン感圧粘着剤と、水に乳化または分散したアクリル感圧粘着剤とを混合し、水性のハイブリッド感圧粘着剤組成物を形成すること、ならびに、次に
(ii)アミノ官能性アルコキシシラン化合物、その加水分解物、またはその加水分解縮合物を、水性のハイブリッド感圧粘着剤組成物と混合すること、を含む。
【0061】
ステップ(i)では、水に乳化または分散したアクリル感圧粘着剤の含有量は、水に乳化または分散したシリコーン感圧粘着剤中の不揮発性物質100質量部あたりにおいて、水に乳化または分散したアクリル感圧粘着剤中の不揮発性物質が5~80質量部、あるいは20~80質量部、あるいは30~80質量部、あるいは40~80質量部、あるいは20~70質量部、あるいは20~60質量部、あるいは30~70質量部、あるいは40~70質量部であるような量である。
【0062】
この方法では、プロセスはさらに以下のステップを含み得る。得られた乳濁液を加熱および真空化し、必要または要望に応じて、希釈剤を除去し、一方、乳濁液に水を添加して除去される水を補う。
【0063】
ステップ(ii)では、アミノ官能性アルコキシシラン化合物、その加水分解物、またはその加水分解縮合物の含有量は、アミノ官能性アルコキシシラン化合物、その加水分解物、またはその加水分解縮合物が、水性のハイブリッド感圧粘着剤組成物の非揮発性物質100質量部に基づいて、0.1~10質量部、あるいは0.1~5質量部、あるいは0.5~10質量部、あるいは0.5~5質量部であるような量である。
【0064】
ローラーコーター、ブレードコーター、マイヤーロッドまたはエアコーターを含む既知のコーティングプロセスを使用して、本発明の感圧粘着剤組成物を用いてそのような製品を調製することができる。樹脂は、一時的な保護のため、従来の剥離紙を有する場合も有しない場合もある物品に直接コーティングし得る。あるいは、粘着剤を剥離紙上にコーティングした後、剥離紙と第2の表面との両方を一緒にロールに通すことによってコーティングが望まれる第2の表面に移行することができる。
【0065】
コーティングされた基材は、標準の方法により、通常は、循環熱風または赤外線ランプを使用してコーティングされた基材を乾燥させる加熱トンネルまたはオーブンに通すことにより乾燥される。乾燥時間は、基材の熱容量、加熱のタイプ、オーブン温度、空気速度(循環空気が使用される場合)、およびオーブンまたは加熱トンネルを通る基材の通過速度などの多くの要因の関数になるであろう。当業者は、製品の特定の装置における最適な乾燥条件を決定するために好適な時間/温度の関係を容易に決定し得る。
【実施例】
【0066】
本発明を具体的に説明するため、以下に例を示すが、本発明は、以下の実施例に限定されない。以下の実施例において、物性値は25℃で測定される値であり、感圧粘着剤の特性は下記の通りに測定した。
【0067】
<感圧粘着シートの作成>
水性感圧粘着剤組成物を約65g/m2のクレープ紙上にコーティングし、100℃未満の温度で2分間および170℃で2分間硬化させ、約50g/m2の乾燥粘着剤コーティング重量を得た。
【0068】
粘着力
上記の感圧粘着シートを1インチ幅にカットし、SUS(鋼使用ステンレス)パネルにラミネートした。0.5時間の待機後、Adhesion/Release Tester AR-1500(ChemInstruments、フェアフィールド、オハイオ州、米国)を使用して、感圧粘着シート(基材上のテープ)をSUSパネルから剥離する。剥離速度および角度は、0.3m/分および180°に設定した。
【0069】
<シリコーン移行ランキング>
上記の試験後、SUS(鋼使用ステンレス)パネルの外観を目視で確認する。SUSパネルのシリコーン量をランク付けするために6つのレベルが定義された。「OK」は、剥離後、視覚的にSUS上にシリコーンが見られなかったことを意味し、「5」は最悪の場合を意味し、ほとんどのシリコーンがSUSに移行する。
【0070】
<室温で持ち上げる>
上記の感圧粘着クレープ紙シートを0.2インチ幅にカットし、靴モデル上に0.5時間ラミネートし、粘着不良がないか確認する。「P」は合格を意味し、「F」は失敗を意味する。
【0071】
<90℃で10分間持ち上げる>
上記の感圧粘着クレープ紙シートを0.2インチにカットし、靴モデル上にラミネートした後、90℃のオーブンに10分間入れ、取り出して粘着不良がないか確認する。「P」は合格を意味し、「F」は失敗を意味する。
【0072】
<参考実施例1>
水性のシリコーンPSA1の調製
140のウィリアムス可塑度を有する8.5質量部のヒドロキシル末端シリコーンジメチルポリシロキサンガム、約80,000mm2/秒の粘度を有する12.6質量部のヒドロキシル基末端ポリジメチルシロキサン、16.4質量部の70質量%のMQ樹脂/キシレン溶液1(ここで、Mは(CH3)3SiO1/2であり、QはSiO2であり、M/Q比は0.75である)、および23.1質量部の75質量%のMQ樹脂/キシレン溶液2(ここで、Mは(CH3)3SiO1/2であり、QはSiO4/2であり、M/Q比は0.9である)を共に混合して、シリコーンPSA1を得た。シリコーンPSA1のポリジメチルシロキサンあたりのMQ樹脂の質量比は1.4である。
【0073】
6.1質量部のポリエーテルで修飾されたMQ樹脂(本質的に(CH3)3SiO1/2単位およびSiO2単位からなる1質量部のMQ樹脂であって、(CH3)3SiO1/2単位とSiO2単位とのモル比が0.75であるMQ樹脂、ならびに約6200の分子量を有し、エチレンオキシド単位とプロピレンオキシド単位とのモル比が約1:1であり、3質量部のヒドロキシル化ポリオキシエチレン-ポリプロピレンコポリマーを、オクタン酸第一スズ触媒を用いて、4質量部のキシレン中で加熱することから誘導される剥離反応生成物)は、シリコーンPSA1と混合し、均一な混合物を得た。次に、6.1質量部の水を高剪断で添加し、厚いO/W(水中油)相を形成した。次に、27.11質量部の水を装填し、水性のシリコーンPSA1を得た。水性シリコーンPSA1の不揮発性含有量は55質量%である。
【0074】
<参考実施例2>
水性のシリコーンPSA2の調製
140のウィリアムス可塑度を有する9.35質量部のヒドロキシル末端シリコーンジメチルポリシロキサンガム、約80,000mm2/秒の粘度を有する13.86質量部のヒドロキシル基末端ポリジメチルシロキサン、15.21質量部の70質量%のMQ樹脂/キシレン溶液1(ここで、Mは(CH3)3SiO1/2であり、QはSiO2であり、M/Q比は0.75である)、および21.42質量部の75質量%のMQ樹脂/キシレン溶液2(ここで、Mは(CH3)3SiO1/2であり、QはSiO4/2であり、M/Q比は0.9である)を共に混合して、シリコーンPSA2を得た。シリコーンPSA2のポリジメチルシロキサンあたりのMQ樹脂の質量比は1.2である。
【0075】
6.1質量部のポリエーテルで修飾されたMQ樹脂(本質的に(CH3)3SiO1/2単位およびSiO2単位からなる1質量部のMQ樹脂であって、(CH3)3SiO1/2単位とSiO2単位とのモル比が0.75であるMQ樹脂、ならびに約6200の分子量を有し、エチレンオキシド単位とプロピレンオキシド単位とのモル比が約1:1であり、3質量部のヒドロキシル化ポリオキシエチレン-ポリプロピレンコポリマーを、オクタン酸第一スズ触媒を用いて、4質量部のキシレン中で加熱することから誘導される剥離反応生成物)は、シリコーンPSA2と混合し、均一な混合物を得た。次に、6.1質量部の水を高剪断で添加し、厚いO/W(水中油)相を形成した。次に、27.87質量部の水を装填し、水性のシリコーンPSA2を得た。水性シリコーンPSA2の不揮発性含有量は55質量%である。
【0076】
<参考実施例3>
水性のシリコーンPSA3の調製
140のウィリアムス可塑度を有する7.35質量部のヒドロキシル末端シリコーンジメチルポリシロキサンガム、約80,000mm2/秒の粘度を有する10.89質量部のヒドロキシル基末端ポリジメチルシロキサン、17.92質量部の70質量%のMQ樹脂/キシレン溶液1(ここで、Mは(CH3)3SiO1/2であり、QはSiO2であり、M/Q比は0.75である)、および25.24質量部の75質量%のMQ樹脂/キシレン溶液2(ここで、Mは(CH3)3SiO1/2であり、QはSiO4/2であり、M/Q比は0.9である)を共に混合して、シリコーンPSA3を得た。シリコーンPSA3のポリジメチルシロキサンあたりのMQ樹脂の質量比は1.8である。
【0077】
6.1質量部のポリエーテルで修飾されたMQ樹脂(本質的に(CH3)3SiO1/2単位およびSiO2単位からなる1質量部のMQ樹脂であって、(CH3)3SiO1/2単位とSiO2単位とのモル比が0.75であるMQ樹脂、ならびに約6200の分子量を有し、エチレンオキシド単位とプロピレンオキシド単位とのモル比が約1:1であり、3質量部のヒドロキシル化ポリオキシエチレン-ポリプロピレンコポリマーを、オクタン酸第一スズ触媒を用いて、4質量部のキシレン中で加熱することから誘導される剥離反応生成物)は、シリコーンPSA3と混合し、均一な混合物を得た。次に、6.1質量部の水を高剪断で添加し、厚いO/W(水中油)相を形成した。次に、26.31質量部の水を装填し、水性のシリコーンPSA3を得た。水性シリコーンPSA3の不揮発性含有量は55質量%である。
【0078】
<実施例1~6および比較実施例1~4>
以下の成分(A)および(B)を混合した後、表1および2に示す組成物(質量部)に成分(D)を混合することにより、水性ハイブリッド感圧粘着剤組成物を調製した。感圧粘着剤組成物の物性値を評価した。これらの結果を表1および2に示す。
【0079】
下記の成分を、成分(A)として使用した。
成分(a1):参照実施例1で製造された水性シリコーンPAS1
成分(a2):参照実施例2で製造された水性シリコーンPAS2
成分(a3):参照実施例3で製造された水性シリコーンPAS3
【0080】
下記の成分を成分(B)として使用した。
成分(b1):水性アクリルPAS1(不揮発性含有量は54質量%であり、商品名:RHOPLEX(商標)N-1031Adhesive、The Dow Chemical Companyから市販されている)
成分(b2):水性アクリルPAS2(不揮発性含有量は50質量%であり、商品名:ROBOND(商標)PS-8915、The Dow Chemical Companyから市販されている)
成分(b3):水性アクリルPAS3(不揮発性含有量は45質量%であり、商品名:ROBOND(商標)PS-1088 ADHESIVE、The Dow Chemical Companyから市販されている)
【0081】
下記の成分を、成分(D)として使用した。
成分(d1):アミノエチルアミノイソプロピルメチルジメトキシシラン(商品名:RDOWSIL(商標)Z-8090、Dow Silicones Corporationから市販されている)
【0082】
【0083】
【0084】
産業上の利用可能性
本発明による当該水性ハイブリッド感圧粘着剤組成物により、良好な引きはがし粘着力を有する、実用的で、安全で、環境に優しい乳化型感圧粘着剤を得ることができた。産業上の利用可能性は、水性の感圧粘着剤のほぼすべての潜在的な用途、特に靴底の粘着への適用を網羅する。