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特許7193566金属セパレータの検査方法及び金属セパレータの検査装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】金属セパレータの検査方法及び金属セパレータの検査装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/0206 20160101AFI20221213BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20221213BHJP
【FI】
H01M8/0206
H01M8/10 101
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021042394
(22)【出願日】2021-03-16
(65)【公開番号】P2022142274
(43)【公開日】2022-09-30
【審査請求日】2021-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】岸本 政昭
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 聡志
(72)【発明者】
【氏名】向笠 大悟
(72)【発明者】
【氏名】島田 航弥
(72)【発明者】
【氏名】浅野 光穂
【審査官】上野 文城
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-103307(JP,A)
【文献】特開2007-033377(JP,A)
【文献】特開2018-035901(JP,A)
【文献】特開2019-160409(JP,A)
【文献】特開2009-110822(JP,A)
【文献】特開2017-097969(JP,A)
【文献】特開2015-225733(JP,A)
【文献】特開2020-181763(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/0206
H01M 8/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1セパレータと第2セパレータとを溶接した金属セパレータの検査方法であって、
金属セパレータの溶接部に撮像装置の撮像部位を位置決めするステップと、
高さ検出器が前記撮像装置の撮像部位の近傍における前記金属セパレータの撓みを検出し、駆動装置により、前記金属セパレータの撓みに応じて、前記金属セパレータ又は前記撮像装置を高さ方向に変位させることにより、前記撮像装置と前記金属セパレータの撮像部位との距離を一定に保つステップと、
前記撮像装置で前記溶接部の撮像を行うステップと、
を有する、金属セパレータの検査方法。
【請求項2】
請求項1記載の金属セパレータの検査方法であって、
前記金属セパレータは、燃料電池の電解質膜に積層されて発電セルを構成するものであり、
前記金属セパレータの表面には前記電解質膜と当接してガスの漏洩を防止する凸状に形成されたビードシールを有し、
前記高さ検出器は、前記ビードシールの高さを検出することで、前記撮像装置の近傍における前記金属セパレータの撓みを検出する、
金属セパレータの検査方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の金属セパレータの検査方法であって、前記金属セパレータを支持するステージ装置を有し、前記ステージ装置は、前記撮像装置の撮像位置が前記金属セパレータにおいて前記溶接部が線状に並んだ溶接ラインに沿うように前記金属セパレータを移動させ、
前記駆動装置は、前記ステージ装置が前記金属セパレータを移動させている間、前記高さ検出器の撓み検出結果に基づいて、前記撮像装置と前記金属セパレータの撮像部位との距離を一定に保つ、
金属セパレータの検査方法。
【請求項4】
燃料電池の金属セパレータを支持するステージ装置と、
前記金属セパレータの溶接部を撮像する撮像装置と、
前記金属セパレータにおいて前記溶接部の近傍の撓みを検出する高さ検出器と、
前記高さ検出器の検出結果に応じて前記ステージ装置又は撮像装置を高さ方向に変位させて前記撮像装置と前記溶接部との距離を一定に保持する駆動機構と、を備えた、金属セパレータの検査装置。
【請求項5】
請求項4記載の金属セパレータの検査装置であって、
前記金属セパレータは、燃料電池の電解質膜に積層されて発電セルを構成するものであり、
前記金属セパレータの表面には前記電解質膜と当接してガスの漏洩を防止する凸状に形成されたビードシールを有し、
前記高さ検出器は、前記ビードシールの高さを検出することで、前記撮像装置の近傍における前記金属セパレータの撓みを検出する、金属セパレータの検査装置。
【請求項6】
請求項5記載の金属セパレータの検査装置であって、前記高さ検出器は前記ビードシールに当接する接触式センサよりなる、金属セパレータの検査装置。
【請求項7】
請求項5記載の金属セパレータの検査装置であって、前記高さ検出器は非接触式センサよりなる、金属セパレータの検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池に用いられる金属セパレータの検査方法及び金属セパレータの検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ビードシールや流路溝に相当する凹凸構造をプレス加工で形成した2枚の金属セパレータを用意し、これらを厚さ方向に重ね合わせて溶接することで、金属セパレータを組み立てることが記載されている。
【0003】
上記の金属セパレータの溶接部は、冷媒流路やビードシール等の凸状の構造物に隣接する平坦な面接触部分に沿って設けられている。このような溶接部には、溶接不良によって、途切れや、金属セパレータを貫通するような孔が生じることがある。このような溶接不良が生じると、金属セパレータの一方の面のガス(例えば、燃料ガス)が金属セパレータの他方の面のガス(例えば、酸化剤ガス)側にリークするおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-125258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そのため、金属セパレータの溶接部について、適切に溶接が行われているか否かを検査する必要がある。しかしながら、金属セパレータの溶接部は、微小なため、カメラを用いた外観検査を行う場合には溶接部を光学的に拡大する必要がある。このような光学系は、焦点深度が浅く、対象物とカメラとの距離を高い精度で一定に保つ必要がある。
【0006】
ところが、金属セパレータは、薄い金属板よりなるため、平面方向に撓みやうねりが生じており、溶接部がある平坦部の高さは、通常は一定にはならない。そのため、溶接部の高さが変わるたびに、カメラの光学系の制御によるピント調整を都度行う必要があり、ピント調整の完了待ちに時間を要し、検査工程の時間が長くなり生産性が悪いという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、溶接部の外観を迅速に検査できる金属セパレータの検査方法及び金属セパレータの検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下の開示の一観点は、第1セパレータと第2セパレータとを溶接した金属セパレータの検査方法であって、金属セパレータの溶接部に撮像装置の撮像部位を位置決めするステップと、高さ検出器が前記撮像装置の撮像部位の近傍における前記金属セパレータの撓みを検出し、駆動装置により、前記金属セパレータの撓みに応じて、前記金属セパレータ又は前記撮像装置を高さ方向に変位させることにより、前記撮像装置と前記金属セパレータの撮像部位との距離を一定に保つステップと、前記撮像装置で前記溶接部の撮像を行うステップと、を有する、金属セパレータの検査方法にある。
【0009】
本発明の別の一観点は、燃料電池の金属セパレータを支持するステージ装置と、前記金属セパレータの溶接部を撮像する撮像装置と、前記金属セパレータにおいて前記溶接部の近傍の撓みを検出する高さ検出器と、前記高さ検出器の検出結果に応じて前記ステージ装置を高さ方向に変位させて前記撮像装置と前記溶接部との距離を一定に保持する駆動機構と、を備えた、金属セパレータの検査装置にある。
【発明の効果】
【0010】
上記観点の金属セパレータの検査方法及び金属セパレータの検査装置によれば、撮像装置の焦点合わせ機能に頼るのではなく、高さ検出器の検出結果に基づいて金属セパレータ又は撮像装置の少なくとも一方を上下方向に変位させる。これにより、撮像装置を用いた溶接部の外観検査を迅速化できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】検査対象となる金属セパレータの平面図である。
図2図1のビードシール及び溶接部の断面図である。
図3】第1実施形態に係る金属セパレータの検査装置の概略構成図である。
図4】実施形態に係る金属セパレータの検査方法を示すフローチャートである。
図5図3の高さ検出器の接触子及び溶接部の位置関係を示す説明図である。
図6】第2実施形態に係る金属セパレータの検査装置の概略構成図である。
図7】高さ検出器の変形例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、金属セパレータの検査方法及び金属セパレータの検査装置について好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
燃料電池の発電セル10は、図2に示すように、電解質膜・電極構造体(MEA)12と、MEA12の両側にそれぞれ配置された金属セパレータ14(バイポーラ板)とを備えて構成される。通常、所定の数の発電セル10が積層されることにより燃料電池スタックが構成される。燃料電池スタックは、例えば、車載用燃料電池スタックとして燃料電池車両(燃料電池電気自動車等)に組み込まれる。
【0014】
図2に示す電解質膜・電極構造体(MEA)12は、高分子イオン交換膜からなる電解質膜を備えており、電解質膜の一方の面にアノード電極が配置され他方の面にカソード電極が配置されてなる。本実施形態のMEA12は、電解質膜の外周部に枠状に形成された樹脂フィルムを接合したものであってもよい。
【0015】
発電セル10では、MEA12が図1に示す金属セパレータ14により挟持される。MEA12のアノード電極側に配設された金属セパレータ14を「第1セパレータ14a」ともいい、MEA12のカソード電極側に配設された金属セパレータ14を「第2セパレータ14c」ともいう。第1セパレータ14a及び第2セパレータ14cは、例えば、横長(又は縦長)の長方形状に形成されている。
【0016】
第1セパレータ14a及び第2セパレータ14cは、例えば、鋼板、ステンレス鋼板、アルミニウム板、めっき処理鋼板、あるいはその金属表面に防食用の表面処理を施した金属薄板の断面を波形にプレス成形して構成される。第1セパレータ14aと第2セパレータ14cとは、図2に示すように厚さ方向に重ね合わされて一体に接合されて、一枚の金属セパレータ14を構成する。
【0017】
図1に示すように、第1セパレータ14aのMEA12に向かう面14asには、燃料ガスが流入する連通孔16aと燃料ガスが流出する連通孔16fとに連通する燃料ガス流路18が設けられる。具体的に、燃料ガス流路18は、第1セパレータ14aとMEA12との間に形成される。燃料ガス流路18は、矢印B方向に延在する複数本の直線状流路溝(又は波状流路溝)を有する。
【0018】
第1セパレータ14aのMEA12に向かう面14asには、流体(燃料ガス、酸化剤ガス又は冷却媒体)の漏れを防止するためのビードシール20がプレス成形により設けられる。ビードシール20は、第1セパレータ14aの外周部を周回する外側ビードシール22と、連通孔16a~16fの周囲を周回する連通孔ビードシール24とを有する。ビードシール20は、MEA12に向かって膨出(突出)して、MEA12と気密及び液密に当接する。
【0019】
図2に示すように、第2セパレータ14cのMEA12に向かう面14csにも流体の漏れを防止するためのビードシール20が設けられている。第2セパレータ14cのビードシール20は、第1セパレータ14aのビードシール20と対向して配置されている。第2セパレータ14cのビードシール20のうち、第1セパレータ14aの外側ビードシール22に対向して設けられたビードシール20は、第2セパレータ14cの外側ビードシール28である。
【0020】
特に図示しないが、第2セパレータ14cのMEA12に向かう面14csにも、図1の燃料ガス流路18と同様に、矢印B方向に延在する複数本の直線状流路溝(又は波状流路溝)よりなる酸化剤ガス流路が設けられている。酸化剤ガス流路は、図1の酸化剤ガスが流入する連通孔16d及び酸化剤ガスが流出する連通孔16cに連通する。
【0021】
図2に示すように、ビードシール20の頂部には、樹脂等の柔軟な素材よりなるシール部材30が設けられてもよい。
【0022】
第1セパレータ14aと、第2セパレータ14cとは、ビードシール20に隣接する平坦部分32a、32cにおいて密着するように当接しており、その平坦部分32a、32cの所定箇所は溶接部34によって一体的に接合されている。
【0023】
図1の溶接ライン36には、溶接部34(図2参照)が点状又は線状に形成されて延在している。図示のように、溶接ライン36は、外側ビードシール22の外周側と、連通孔16a、16c、16d、16fを囲む連通孔ビードシール24の外周側とに設けられている。溶接ライン36により、第1セパレータ14aと第2セパレータ14cとの隙間が液密及び気密に閉塞される。
【0024】
以上のような金属セパレータ14において、溶接部34に不良が生じると、金属セパレータ14を厚さ方向に貫通する孔や、溶接ライン36の分断部分が形成されることがある。このような孔や分断部分が生じていると、水素ガスや空気が漏洩してしまう。そこで、金属セパレータ14の製造工程では、第1セパレータ14aと第2セパレータ14cとを溶接した後に、溶接部34の外観検査を行う。
【0025】
以下、本実施形態の金属セパレータ14の検査装置40について説明する。
【0026】
図3に示すように、検査装置40は、主な構成要素として、ステージ装置43と、撮像装置46と、画像処理部48と、高さ検出器50と、高さ制御回路54と、を含む。ステージ装置43は、金属セパレータ14を支持するステージ42とステージ42を変位させるステージドライバ44とを有する。
【0027】
ステージ42は、水平方向(図3の矢印XY方向)に平行な主面42aを有しており、その主面42aの上に金属セパレータ14が載置される。ステージ42は、検査の間、金属セパレータ14を保持して金属セパレータ14と一体的に移動する。ステージ42には、ステージドライバ44が取り付けられている。ステージドライバ44は、ステージ42をステージ42の主面42aを水平方向(矢印XY方向)及び高さ方向(上下方向であり、図3の矢印Z方向)に変位させる。ステージドライバ44は、撮像装置46の撮像位置が金属セパレータ14の溶接ライン36に沿って移動するように、ステージ42を水平方向に駆動する。また、ステージドライバ44は、金属セパレータ14の撓みに応じて入力される高さ制御回路54からの制御信号に基づいて、ステージ42を高さ方向(矢印Z方向)に変位させる。
【0028】
撮像装置46は、例えばカメラであり、ステージ42の上方にステージ42に対向する向きとなっている。撮像装置46の光軸(撮像範囲の中心)は、ステージ42の主面42aに略垂直な向きに配置されている。撮像装置46は、ステージ42側とは独立したフレーム52によって支持されている。フレーム52には、高さ検出器50も固定されている。従って、撮像装置46と高さ検出器50との間の位置関係は一定に保たれ、互いの位置関係は変化しない。
【0029】
撮像装置46は、ステージ42の主面42aに載置された金属セパレータ14の表面を撮像し、溶接部34の画像データを取得して画像処理部48に出力する。撮像装置46は、固定された焦点距離で溶接部34を撮像する。なお、撮像装置46は、画像データに基づいて自動的に焦点合わせを行う機能を有してもよい。画像処理部48は、溶接部34の画像データに基づいて、溶接部34の孔あきや溶接の途切れ等の溶接不良を検出する。
【0030】
高さ検出器50は、金属セパレータ14の表面に当接する接触子51を先端に有するアーム51aと、アーム51aの変形を検出するセンサとを備える。高さ検出器50の接触子51は、撮像装置46の撮像部位の近傍で、金属セパレータ14の表面と当接するように配置されている。金属セパレータ14が上方に撓んでいる場合には、接触子51を通じてアーム51aが変形する。高さ検出器50は、アーム51aの変形に応じた検出値を出力する。すなわち、高さ検出器50は、金属セパレータ14の撓みに応じた検出値を出力する。
【0031】
高さ制御回路54は、高さ検出器50の検出値が基準回路56に設定された一定値に保たれるように、フィードバック信号をステージドライバ44に出力する回路である。特に限定されるものではないが、高さ制御回路54は、差動増幅回路として構成することができる。この場合には、高さ検出器50の出力端子を高さ制御回路54の反転入力端子54aに接続すると、撮像装置46と金属セパレータ14との距離を一定に保つフィードバックループが構成される。基準回路56は、高さ制御回路54の非反転入力端子54bに接続される。基準回路56の出力値は、撮像装置46の位置が適切な位置に保たれるように設定される。
【0032】
すなわち、金属セパレータ14の撓みにより接触子51の当接部位の高さが高くなると、高さ検出器50の出力信号が増大する。高さ制御回路54は、高さ検出器50の出力信号が増大すると、ステージ42を下方に下げる制御信号を出力端子54cからステージドライバ44に出力する。また、金属セパレータ14の撓みにより、接触子51の当接部位の高さが低くなると、高さ検出器50の出力信号が減少する。高さ制御回路54は、高さ検出器50の出力信号が基準回路56の出力値を下回ると、ステージ42を上方に変位させる制御信号をステージドライバ44に出力する。このように、高さ制御回路54は、検査の間、撮像装置46と金属セパレータ14との距離とを一定に保つように制御する。なお、高さ制御回路54は、同様の機能を有するマイクロコンピュータ等で構成してもよい。
【0033】
次に、検査装置40を用いた金属セパレータ14の検査方法について説明する。
【0034】
まず、検査対象となる金属セパレータ14を検査装置40のステージ42の主面42aに載置する。このとき、図5に示すように、高さ検出器50の接触子51は、平坦な当接面51bの部分が、金属セパレータ14で突出したビードシール20に当接する。
【0035】
次に、図4のステップS10において、検査装置40は、位置決めを行う。ここでは、ステージドライバ44がステージ装置43を駆動して、撮像装置46の光軸(撮像範囲の中心)の位置を、金属セパレータ14の溶接部34(図2参照)に合わせる。
【0036】
次に、ステップS20において、検査装置40は、撮像範囲における金属セパレータ14の撓みを検出し、金属セパレータ14の撓みに応じて高さ調整を行う。本実施形態では、金属セパレータ14の局所的な撓みを、図5に示す高さ検出器50の接触子51で検出する。具体的には、接触子51をビードシール20に当接させてビードシール20の高さを検出する。ビードシール20は、気密性を担保するために、平坦な部分に対する突出高さが一定となるように、高い精度で形成されている。従って、ビードシール20の頂部の高さは、金属セパレータ14の撓み(高さ方向の変位)と精度よく一致する。そのため、ビードシール20の頂部の高さを検出することで、金属セパレータ14の撓みを精度よく検出できる。
【0037】
なお、接触子51の底部には、当接面51bの幅は、ビードシール20よりも幅広に形成されているため、接触子51の中心位置がビードシール20の頂部から外れていても、ビードシール20の頂部の高さを検出できる。そのため、接触子51の配置位置の精度が低くても、ビードシール20の頂部の高さを容易に検出できる。
【0038】
その後、高さ検出器50の出力値に基づいて、高さ制御回路54がステージ装置43のステージドライバ44に制御信号を出力し、高さ検出器50の出力値が、基準回路56の基準値と一致するまで、ステージ42の高さの調整を行う。
【0039】
次に、ステップS30において、撮像装置46が溶接部34の撮像を行い、画像データを画像処理部48に出力する。画像処理部48は、画像データに基づいて溶接部34の欠陥を検出する。
【0040】
次に、ステップS40において、検査装置40は、全ての溶接部34の撮像が完了したか否かを判断する。検査装置40が全ての溶接部34の撮像が完了していないと判断した場合(ステップS40:NO)には、ステップS10に戻り、次の溶接部34に撮像部位を移動させる。また、ステップS40において、撮像装置46が全ての溶接部34の撮像が完了したと判断した場合(ステップS40:YES)には、金属セパレータ14についての外観検査を終了する。
【0041】
以上のように、検査装置40を用いた金属セパレータ14の検査方法において、金属セパレータ14の撓みによって、溶接ライン36に沿って撮像装置46の光軸が移動している間に、溶接ライン36の高さが変化する。本実施形態の検査装置40は、溶接ライン36の高さを、高さ検出器50の接触子51が検出し、高さ制御回路54の制御信号に基づいて、ステージドライバ44がステージ42を上下方向に変位させる。これにより、撮像装置46の撮像位置における金属セパレータ14の表面と撮像装置46との距離は、適切な焦点距離に保たれる。すなわち、撮像装置46の焦点合わせが不要になり、金属セパレータ14の移動速度を増加させることができ、溶接ライン36に沿った溶接部34の検査を素早く実施できる。
【0042】
(第2実施形態)
以下、図6を参照しつつ第2実施形態に係る検査装置40Aについて説明する。なお、検査装置40Aにおいて、図3の検査装置40と同様の構成については、同一の符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0043】
図6に示すように、検査装置40Aは、撮像装置46及び高さ検出器50を支持するフレーム52Aが撮像装置駆動部58によって支持されている。撮像装置駆動部58は、フレーム52Aと共に、撮像装置46及び高さ検出器50を上下方向(矢印Z方向)に変位させる。なお、本実施形態の検査装置40Aにおいて、ステージドライバ44はステージ42を水平方向にのみ移動させ、ステージ42側は上下方向に変位しない。
【0044】
高さ検出器50の出力端子は、高さ制御回路54の非反転入力端子に入力される。高さ制御回路54の出力端子54cは撮像装置駆動部58に接続されている。撮像装置駆動部58は、高さ制御回路54の制御信号に応じて撮像装置46の高さを変える。金属セパレータ14の撓みによって、撮像部位の高さが高くなると、高さ検出器50の検出値が増大し、それに応じて高さ制御回路54の制御信号の値も増大し、撮像装置駆動部58が撮像装置46の位置を上昇させるように動作する。また、撮像装置46と金属セパレータ14の撮像部位との距離が増加すると、高さ検出器50の検出値が減少し、それに応じて高さ制御回路54の出力値が減少する。その結果、撮像装置駆動部58が撮像装置46の位置を下降させる。以上の動作により、外観検査の間、撮像装置46と金属セパレータ14の撮像部位との距離が適切な焦点距離に保たれる。
【0045】
(その他の実施形態)
上記の実施形態で説明した高さ検出器50は、ビードシール20の頂部に接触子51を当接する接触式センサで構成する例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、図7に示す高さ検出器50Aのように、ビードシール20の頂部の高さを、非接触で検出する非接触式センサで構成してもよい。非接触式センサとしては、レーザ変位計、近接センサ、可視光変位センサ、超音波センサ、渦電流式変位センサ等を用いることができる。
【0046】
また、ステージ42側ではなく、撮像装置46側を溶接ライン36に沿って移動させるように構成してもよい。
【0047】
以上に説明した金属セパレータ14の検査方法及び検査装置40、40Aは、以下の効果を奏する。
【0048】
金属セパレータ14の検査方法は、第1セパレータ14aと第2セパレータ14cとを溶接した金属セパレータ14の検査方法であって、金属セパレータ14の溶接部34に撮像装置46の撮像部位を位置決めするステップS10と、高さ検出器50が撮像装置46の撮像部位の近傍における金属セパレータ14の撓みを検出し、駆動装置(例えば、ステージドライバ44又は、撮像装置駆動部58)により、金属セパレータ14の撓みに応じて、金属セパレータ14又は撮像装置46を高さ方向に変位させることにより、撮像装置46と金属セパレータ14の撮像部位との距離を一定に保つステップS20と、撮像装置46で溶接部34の撮像を行うステップS30と、を有する。
【0049】
上記の金属セパレータ14の検査方法によれば、高さ検出器50の検出結果を利用して撮像装置46と金属セパレータ14の撮像部位との距離を一定に保つことができるため、金属セパレータ14が撓んでいても撮像装置46の焦点合わせが不要になる。これにより、金属セパレータ14の検査をより迅速に行うことができ、生産性が向上する。
【0050】
上記の金属セパレータ14の検査方法において、金属セパレータ14は、燃料電池の電解質膜(例えば、MEA12)に積層されて発電セル10を構成するものであり、金属セパレータ14の表面には電解質膜と当接してガスの漏洩を防止する凸状に形成されたビードシール20を有し、高さ検出器50は、ビードシール20の高さを検出することで、撮像装置46の近傍における金属セパレータ14の撓みを検出する。金属セパレータ14において、ビードシール20は、ガスの漏洩を防ぐために、高い精度で形成されており、ビードシール20の高さは、金属セパレータ14の撓みを正確に反映している。この方法は、ビードシール20の高さを高さ検出器50で検出することで、精度よく金属セパレータ14の撓みを検出できる。
【0051】
上記の金属セパレータ14の検査方法において、金属セパレータ14を支持するステージ装置43を有し、ステージ装置43は、撮像装置46の撮像位置が金属セパレータ14において溶接部34が線状に並んだ溶接ラインに沿うように金属セパレータ14を移動させ、駆動装置は、ステージ装置43が金属セパレータ14を移動させている間、高さ検出器50の撓み検出結果に基づいて、撮像装置46と金属セパレータ14の撮像部位との距離を一定に保つ。この方法によれば、撮像装置46で溶接ライン36に沿って溶接部34の検査を行うことができ、効率よく検査を行える。
【0052】
本実形態の金属セパレータ14の検査装置40、40Aは、燃料電池の金属セパレータ14を支持するステージ装置43と、金属セパレータ14の溶接部34を撮像する撮像装置46と、金属セパレータ14において溶接部34の近傍の撓みを検出する高さ検出器50と、高さ検出器50の検出結果に応じてステージ装置43又は撮像装置46を高さ方向に変位させて撮像装置46と溶接部34との距離を一定に保持する駆動機構(例えば、ステージドライバ44又は撮像装置駆動部58)と、を備える。
【0053】
上記の金属セパレータ14の検査装置40、40Aであって、金属セパレータ14は、燃料電池の電解質膜(例えば、MEA12)に積層されて発電セル10を構成するものであり、金属セパレータ14の表面には電解質膜と当接してガスの漏洩を防止する凸状に形成されたビードシール20を有し、高さ検出器50は、ビードシール20の高さを検出することで、撮像装置46の撮像部位の近傍における金属セパレータ14の撓みを検出してもよい。この構成によれば、金属セパレータ14の中で精度よく形成されたビードシール20の高さに基づいて精度よく金属セパレータ14の撓みを検出できる。
【0054】
上記の金属セパレータ14の検査装置40、40Aにおいて、高さ検出器50はビードシール20に当接する接触式センサとしてもよい。ビードシール20は、金属セパレータ14の中で高く突出しているため、接触式センサによって確実にビードシール20の高さを検出できる。
【0055】
上記の金属セパレータ14の検査装置40、40Aにおいて、高さ検出器50は非接触で金属セパレータ14の撓みを検出する非接触式センサでもよい。この構成によれば、ビードシール20の高さだけでなく、撮像部位の高さから直接金属セパレータ14の撓みを検出できる。
【0056】
上記において、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能なことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0057】
10…発電セル 14…金属セパレータ
20…ビードシール 34…溶接部
36…溶接ライン 40、40A…検査装置
43…ステージ装置 46…撮像装置
50、50A…高さ検出器
図1
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図7