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特許7193568脱フッ化水素処理によるE-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFC-1234ze)の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】脱フッ化水素処理によるE-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFC-1234ze)の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 5/04 20060101AFI20221213BHJP
   C07C 17/25 20060101ALI20221213BHJP
   C07C 21/18 20060101ALI20221213BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20221213BHJP
【FI】
C09K5/04 F
C07C17/25
C07C21/18
C07B61/00 300
【請求項の数】 8
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021045705
(22)【出願日】2021-03-19
(62)【分割の表示】P 2017508524の分割
【原出願日】2015-08-06
(65)【公開番号】P2021095578
(43)【公開日】2021-06-24
【審査請求日】2021-04-09
(31)【優先権主張番号】62/037,138
(32)【優先日】2014-08-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515269383
【氏名又は名称】ザ ケマーズ カンパニー エフシー リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シェン ペン
(72)【発明者】
【氏名】マリオ ジョセフ ナッパ
【審査官】林 建二
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-540718(JP,A)
【文献】特開2000-063300(JP,A)
【文献】特開2008-069147(JP,A)
【文献】特開平11-140002(JP,A)
【文献】特開2008-150356(JP,A)
【文献】特表2013-525487(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 5/00-5/20
C07B 31/00-63/04
C07C 1/00-409/44
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記製造方法によって製造される式CF3CH=CHFのフルオロプロペンの冷媒としての使用であって、前記製造方法が
a)1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンと少なくとも10重量%のZ-1,3,3,3-テトラフルオロプロペンとの混合物を、気相中、酸素含有ガスの存在下で、フッ素化されたCr23又はフッ化アルミナ上のCr/Niからなる群から選択される少なくとも1つの触媒を含む触媒と接触させて、Z-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン、E-1,3,3,3,-テトラフルオロプロペン、フッ化水素、及び任意選択的に未反応の1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンを含む混合物を形成する工程と、
b)前記Z異性体及び、存在する場合には、任意の未反応の1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンから前記E-1,3,3,3-テトラフルオロプロペンを分離する工程と、
c)前記E-1,3,3,3-テトラフルオロプロペンを回収する工程と、
を含む、使用。
【請求項2】
前記E異性体の1,3,3,3-テトラフルオロプロペンへの選択性が少なくとも94%である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記E異性体の1,3,3,3-テトラフルオロプロペンへの選択性が少なくとも98%である、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
前記方法が、Z-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン、又はZ-1,3,3,3-テトラフルオロプロペンと1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンとの混合物を回収する工程と、並びに、Z-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン、又はZ-1,3,3,3-テトラフルオロプロペンと1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンとの混合物を、工程a)に戻して再利用する工程と、を更に含む、請求項1に記載の使用。
【請求項5】
工程a)で製造された前記フッ化水素が分離され、回収される、請求項1に記載の使用。
【請求項6】
前記酸素含有ガスが酸素又は空気である、請求項1に記載の使用。
【請求項7】
前記触媒が、フッ素化されたCr23、及びニッケル、コバルト、マンガン、又は亜鉛塩からなる群から選択される少なくとも1種のメンバーを含む共触媒を含む、請求項1に記載の使用。
【請求項8】
E-1,3,3,3-テトラフルオロプロペンがZ-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン、フッ化水素及び任意の未反応の1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンから分離され、回収され、且つZ-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン、フッ化水素及び任意の未反応の1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンが接触工程に戻される、請求項1に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は概して、フッ素化オレフィンを合成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フルオロカーボン業界は、過去数十年の間、モントリオール議定書の結果として、段階的に廃止されるオゾン層破壊性のクロロフルオロカーボン(CFC)及びヒドロクロロフルオロカーボン(HCFC)の代替冷媒を見出すことに取り組んできた。多くの用途についての解決策は、冷媒、溶媒、消火剤、発泡剤、及び噴射剤として使用するためのヒドロフルオロカーボン(HFC)化合物を商業化することであった。現時点で最も広く使用されているHFC冷媒、HFC-134a、及びHFC-125等のこれら新規化合物は、オゾン層破壊係数がゼロであるので、モントリオール議定書の結果として段階的に廃止される現在の規制による影響を受けることはない。
【0003】
オゾン層破壊の問題に加えて、これら用途の多くにおける別の環境問題は、地球温暖化である。したがって、低オゾン層破壊規格を満たし、かつ低地球温暖化係数を有する組成物が必要とされている。特定のヒドロフルオロオレフィンが、これら両目標を満たすと考えられる。したがって、塩素を含有せず、同様に低地球温暖化係数を有する、水素化炭化水素及びフルオロオレフィンを提供する製造プロセスが必要とされている。
【0004】
いずれもゼロオゾン層破壊係数及び低地球温暖化係数を有するHFC-1234yf(CF3CF=CH2)及びHFC-1234ze(CF3CH=CHF)が、潜在的冷媒として認識されている。米国特許出願公開第2006/0106263 A1号には、CF3CF2CH3又はCF3CHFCH2Fの触媒的気相脱フッ化水素処理によるHFC-1234yfの製造、及びCF3CH2CHF2の触媒的気相脱フッ化水素処理によるHFC-1234ze(E異性体とZ異性体の混合物)の製造が開示されている。
【0005】
ヒドロフルオロオレフィン類を製造するためのヒドロフルオロカーボン類の触媒的脱フッ化水素処理は通常、脱フッ化水素処理触媒を用いて気相で実施される。気相脱フッ化水素処理触媒は当該技術分野において周知である。これらの触媒としては、アルミナ、フッ化アルミニウム、フッ化アルミナ、フッ化アルミニウム上の金属化合物、フッ化アルミナ上の金属化合物;酸化クロム、フッ化酸化クロム、及び立方晶トリフッ化クロム;マグネシウム、亜鉛、及びマグネシウムと亜鉛及び/又はアルミニウムの混合物の酸化物、フッ化物、及びオキシフッ化物;酸化ランタン及びフッ化酸化ランタン;炭素、酸洗浄炭素、活性炭素、三次元マトリックスの炭質材料;並びに炭素上に支持された金属化合物が挙げられるが、これらに限定されない。金属化合物は、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、クロム、鉄、コバルト、ロジウム、ニッケル、銅、亜鉛、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の金属の酸化物、フッ化物、及びオキシフッ化物である。別の方法では、脱フッ化水素処理は、水酸化カリウム又は水酸化ナトリウムなどの苛性物質の水溶液又はアルコール溶液との反応を経て液相で実施することができる。
【0006】
HFC-245faの触媒的脱フッ化水素処理により、一般に、HFC-1234zeのE異性体及びZ異性体の混合物が製造される。選択した特定の触媒に依存して、Z異性体の量は15~23%の間で変化し得る。また、苛性物質又は他の強塩基の水溶液を用いた液相での脱フッ化水素処理により、両方の異性体の混合物が製造される。2種類の異性体の比率は温度によって若干変わるが、約13~15%のZ異性体が典型的に形成される。E異性体は冷却用途で最も有用であるので、Z異性体からE異性体を分離した後、Z異性体は、典型的には、別個の工程でE異性体へと異性化されるか、又はフッ化水素を加えることによって245faに変換されるかのいずれかである。これら代替方法はいずれも、コストを増大させる追加工程を必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
HFC-1234ze及びHFC-1234yfを製造するためのより選択的かつ効果的な製造プロセスの必要性が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
式CF3CH=CHFのフルオロプロパンの製造方法であって、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンとZ-,1,3,3,3-テトラフルオロプロペンとの混合物を、気相中、任意選択的に酸素含有ガスの存在下で、フッ素化されたCr23又はフッ化アルミナ上のCr/Niからなる群から選択される少なくとも1つの触媒を含む触媒と接触させて、Z-1,3,3,3-テトラフルオロプロパン、E-1,3,3,3,-テトラフルオロプロペン、及び任意選択的に未反応の1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンを含む混合物を形成することと、Z異性体、及び存在する場合には、未反応の1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンからE-1,3,3,3-テトラフルオロプロペンを分離することと、前記Z-1,3,3,3-テトラフルオロプロペンを戻して更なる1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンと共に反応器に供給することと、を含む方法、について記述する。
【0009】
上述の一般説明及び以下の「発明を実施するための形態」の説明は、単なる例示かつ説明であり、添付されている請求項で定義されている本発明を制限するものではない。
【発明を実施するための形態】
【0010】
式CF3CH=CHFのフルオロプロパンの製造方法であって、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンとZ-,1,3,3,3-テトラフルオロプロペンとの混合物を、気相中、任意選択的に酸素含有ガスの存在下で、フッ素化されたCr23又はフッ化アルミナ上のCr/Niからなる群から選択される少なくとも1つの触媒を含む触媒と接触させて、Z-1,3,3,3-テトラフルオロプロパン、E-1,3,3,3,-テトラフルオロプロペン、及び任意選択的に未反応の1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンを含む混合物を形成することと、Z異性体及び、存在する場合には、未反応の1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンから前記E-1,3,3,3-テトラフルオロプロペンを分離することと、前記Z-1,3,3,3-テトラフルオロプロペンを戻して更なる1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンと共に反応器に供給することと、を含む方法、について記述する。
【0011】
脱フッ化水素反応は当該技術分野において周知である。HFC-245faの脱フッ化水素処理については特に研究が行われてきた。気相法及び液相法はいずれも周知である。1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze)は、二重結合に対してZ異性体及びE異性体の両方として存在する。気相法及び液相法のいずれにおいても、Z異性体とE異性体の混合物が製造されることが知られているが、E異性体が圧倒的に多くなる。Z異性体の製造における選択性は、温度、及び触媒の選択に依存して、約10%から約23%まで様々であり得る。1atmにおけるE異性体の沸点は約-19℃であり、Z異性体の沸点は約+9℃である。多くの用途でE異性体が好ましい。通常望ましくないZ異性体の形態での収率損失を最低限に抑えるために、Z異性体をE異性体に異性化するための異性化工程を追加するか、又はZ-1234zeをHFC-245faに変換し戻すフッ素化工程を追加することが必要となる。
【0012】
上記に数多くの態様及び実施形態が記述されているが、これらは単に例示であり、限定するものではない。本明細書を読んだ後、当業者は、本発明の範囲から逸脱することなく、他の態様及び実施形態が可能であることを理解するであろう。
【0013】
実施形態のうちの任意の1つ以上の他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明及び特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【0014】
脱フッ化水素処理は当該技術分野において周知であり、蒸気相で行われることが好ましい。脱フッ化水素反応は、任意の好適な反応槽又は反応器内で行うことができるが、反応槽又は反応器は、好ましくは、ニッケル、並びにハステロイ、モネル、及びインコネルなどのその合金のようなフッ化水素の腐食作用に耐性を有する材料、又はフルオロポリマーでライニングした容器から構成されなければならない。これらは、脱フッ化水素処理触媒を充填した単一の管又は複数の管であってもよい。
【0015】
該方法で有用な触媒としては、フッ化酸化クロムなどのクロム系触媒が挙げられ、該触媒は、担持されていなくてもよく、又は活性炭素、グラファイト、フッ化グラファイト、又はフッ化アルミナなどの担体上に担持されていてもよい。クロム触媒は単独で使用されてもよく、又はニッケル、コバルト、マンガン、又は亜鉛塩から選択される共触媒の存在下で使用されてもよい。一実施形態では、クロム触媒は、高表面積酸化クロム、又はその製造が欧州特許第486,333号において報告されているフッ化アルミナの上のクロム/ニッケル(Cr/Ni/AlF3)である。別の実施形態では、触媒はフッ化ギネー緑触媒(Guignet's green catalyst)である。クロム触媒は、典型的には触媒を窒素流下にて所定時間にわたって350~400℃に加熱した後、該触媒をHF及び窒素又は空気流下にて更に所定時間にわたって加熱する手順によって、使用に先立って活性化させることが好ましい。
【0016】
一実施形態では、本発明において用いられるフッ化物活性化ギネー緑触媒のギネー緑は、500℃~800℃でホウ酸をアルカリ金属二クロム酸塩と反応(結合)させた後、反応生成物を加水分解することによって生成されるので、ギネー緑は、ホウ素、アルカリ金属、及び水和水を含有している。通常のアルカリ金属二クロム酸塩は、二クロム酸ナトリウム及び/又は二クロム酸カリウムである。反応の後には、典型的には、空気中で反応生成物を冷却する工程、この固体を粉砕して粉末を製造する工程、その後の加水分解、濾過、乾燥、ミリング、及びスクリーニング工程が続く。ギネー緑は帯青緑色であるが、主に緑色顔料として知られており、したがって緑色顔料は一般にギネー緑と呼ばれる。触媒として使用する場合もまた、米国特許第3,413,363号に開示されているようにギネー緑と呼ばれる。米国特許第6,034,289号には、好ましくはアルファ形態であるCr23触媒が開示されており、ギネー緑もまた、組成:Cr23 79~83%、H2O 16~18重量%、B25 1.5~2.7%を有し(コラム2~3にまたがる文)、かつアルファ形態に変換可能である(コラム3、l.3)、市販の緑色顔料であるとして開示されている。米国特許第7,985,884号は、実施例1に開示されたギネー緑の組成物中、ギネー緑中のアルカリ金属(54.5%のCr、1.43%のB、3400ppmのNa、及び120ppmのK)が存在することを記載している。
【0017】
触媒の物理的形状は重要ではなく、例えば、ペレット、押出品、粉末、又は顆粒を含むことができる。触媒のフッ化物活性化は、触媒の最終形状で実施されることが好ましい。
【0018】
一実施形態では、本願発明者らは、HFC-245faと、少なくとも約10重量%のHFO-1234zeのZ異性体との混合物を、酸素含有ガスの存在下で脱フッ化水素反応器に供給することによって、更なるZ異性体の形成を抑制することができるので、脱フッ化水素処理によって変換されたHFC-245faは実質的にE-HFO-1234zeのみを生成することを発見した。供給量が約10%未満では、更なるZ-1234zeの形成はある程度抑制される。Z-1234zeの供給量が約10%超では、分離して再利用しなければならない追加物質の存在をもたらすだけである。Z異性体生成物の更なる形成を抑制するために必要であるZ-1234zeの量は、変換率にある程度依存する。70%の245fa変換率では、供給物中に約10~11%のZ異性体が必要である。80%の変換率では、供給物中に約13%のZ異性体が必要である。
【0019】
一実施形態では、反応槽は200℃~375℃の温度に保持することができる。別の実施形態では、反応槽は250℃~350℃の温度に保持することができる。更に別の実施形態では、反応槽は275℃~325℃の温度に保持することができる。
【0020】
反応圧力は、大気圧より低い圧力、大気圧、又は大気圧より高い圧力とすることができる。一実施形態では、反応は、97kPa~約689kPa(14psig~約100psig)の圧力で行われる。別の実施形態では、反応は、97kPa~約414kPa(14psig~約60psig)の圧力で行われる。更に別の実施形態では、反応は、276kPa~約586kPa(40psig~約85psig)の圧力で行われる。更に別の実施形態では、反応は、345kPa~517kPa(50psig~75psig)の圧力で行われる。一般的に、大気圧以上に高められた反応器内の圧力は、このプロセスにおける反応物質の接触時間を増加させるように作用する。接触時間が長くなると、プロセスにおける変換度が必然的に増加するので、温度を高くする必要がない。
【0021】
反応器の温度及び接触時間に応じて、反応器の生成混合物は異なる量の未反応HFC-245faを含有することになる。次に、E-1,3,3,3-テトラフルオロプロペンを、Z-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン、フッ化水素、及びすべての未反応HFC-245faから分離し、未反応HFC-245faは追加のHFC-245faと共に反応器に戻されて再利用される。フッ化水素は、苛性物質水溶液に反応器排出液を通過させることによってスクラビングで除去されてもよく、又はフッ化水素は蒸留によって除去されてもよい。
【0022】
一実施形態では、反応器への供給物は、約30℃~約100℃の温度に気化器で予備加熱される。別の実施形態では、反応器への供給物は、約30℃~約80℃の温度に気化器で予備加熱される。
【0023】
いくつかの実施形態では、不活性希釈ガスが、ヒドロクロロフルオロプロパンのキャリアガスとして用いられる。一実施形態では、キャリアガスは、窒素、アルゴン、ヘリウム、又は二酸化炭素から選択される。
【0024】
本発明で使用するとき、用語「備える(comprises)」、「備える(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(has)」、「有する(having)」、又はこれらの他の任意の変化形は、非排他的な包含を網羅することを意図する。例えば、要素のリストを含むプロセス、方法、物品、又は装置は、これらの要素に必ずしも限定されるものではなく、そのようなプロセス、方法、物品、又は装置に対して明示的に記載されていない、又はこれらに固有のものではない、他の要素も含む場合がある。更に、明示的に逆の記載がない限り、「又は」は、包括的な又はを指し、排他的な又はを指すものではない。例えば、条件A又はBは、以下のいずれかを満たす。Aは真であり(又は存在し)かつBは偽である(又は存在しない)、Aは偽であり(又は存在しないものであり)かつBは真である(又は存在する)、並びに、A及びBの両者が真である(又は存在する)。
【0025】
移行句「~からなる」は、特定されない任意の要素、工程、又は成分を除外する。特許請求の範囲における場合には、材料に通常付随する不純物を除き、このような句は、列挙された材料以外の材料を包むことに対して特許請求の範囲を限る。語句「からなる」が序文の直後ではなく請求項の本文の節内で現れるとき、この語句はその節内に示される要素のみを制限するものであり、他の要素が特許請求の範囲全体から除外されるわけではない。移行句「から本質的になる」は、文字通り開示されているものに加えて、材料、工程、特徴、成分、又は要素を含む、組成物、方法を定義するために使用されるが、ただし、これらの追加的に含まれる材料、工程、特徴、成分、又は要素は、請求される発明の基本的及び新規の特徴(複数可)、特に本発明の任意のプロセスの所望の結果を達成するための作用機序に実質的に影響を及ぼす。用語「本質的に~からなる」は、「含む」と「からなる」との間の中間の立場を占める。
【0026】
また、「a」又は「an」の使用は、本明細書に記載される要素及び成分を説明するために採用される。これは、単に便宜上、及び本発明の範囲の一般的な意味を与えるためのものである。この記載は、1つ又は少なくとも1つを含むものと解釈されるべきであり、単数形は、別の意味を有することが明白でない限り、複数形も含む。
【0027】
特に定義しない限り、本明細書で使用される全ての技術的及び科学的用語は、本発明の属する当該技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同一の意味を有する。本明細書に記載されるものと類似又は同等の方法及び材料を、本発明の実施形態の実施又は試験において使用することができるが、好適な方法及び材料を以下に記載する。本明細書において言及する全ての刊行物、特許出願、特許、及び他の参照文献は、特定の一説を引用するものでない限り、その全文が参照により本明細書に組み込まれる。矛盾する場合、定義を含めて本明細書が優先される。更に、材料、方法、及び実施例は、単なる例証であり、限定することを意図するものではない。
【実施例
【0028】
本明細書に記述される概念について以下の実施例で更に説明するが、これは、特許請求の範囲に記載する本発明の範囲を限定するものではない。
【0029】
(実施例1)
実施例1は、Z-HFC-1234zeの存在下でCr23に通過させる245faの脱フッ化水素処理を示す。
【0030】
インコネル管(外径1.3センチメートル(1/2インチ))に、以下の通りに調製したCr23触媒(Johnson Mathey)を10cc(8グラム)充填した。押出し物の形態の酸化クロムを粉砕し、12/20メッシュの篩にかけた。反応管に充填後、触媒層の温度を300℃に上昇させて、窒素(30cc/分)で200分間パージした。次いで窒素流を60cc/分に低下させて、HFを20cc/分で60分間送り込んだ。この温度を325℃に300分間上昇させた。次に、窒素流を30cc/分に低下させて、HF流を30cc/分に30分間上昇させた。次に、窒素流を12cc/分に低下させて、HF流を48cc/分に60分間上昇させた。次に、窒素流を中止して、HF流を48cc/分に30分間上昇させた。次いで、反応器の温度を250℃に30分間低下させた。その後HFを止めて、反応器を30cc/分の窒素でパージした。次に、反応器の温度を300℃で安定にし、窒素流を止めて、CF3CH2CHF2、又はZ-1234zeの量を変化させたCF3CH2CHF2のいずれかを、1.44mL/時間で送り込んだ。反応器内での接触時間は45秒であった。CF3CH2CHF2を50℃で蒸発させた。反応器排出液の一部を、一連のバルブに通過させて、GCMSにより分析した。Z-1234ze、245fa、及びE-1234zeに関する量はモル部として表されている。結果を表1に要約する。
【0031】
【表1】
【0032】
(実施例2)
実施例2は、Z-HFC-1234zeの存在下でCr23に通過させる245faの脱フッ化水素処理を示す。
【0033】
インコネル管(外径1.3センチメートル(1/2インチ))に、以下の通りに調製したCr23触媒(ギネー緑)を10cc(8グラム)充填した。押出し形状の酸化クロムを粉砕し、12/20メッシュの篩にかけた。反応器管に充填後、触媒層の温度を300℃に上昇させて、窒素(30cc/分)で200分間パージした。次いで窒素流を60cc/分に低下させて、HFを20cc/分で60分間送り込んだ。この温度を325℃に300分間上昇させた。次に、窒素流を30cc/分に低下させて、HF流を30cc/分に30分間上昇させた。次に、窒素流を12cc/分に低下させて、HF流を48cc/分に60分間上昇させた。次に、窒素流を中止して、HF流を48cc/分に30分間上昇させた。次いで、反応器の温度を250℃に30分間低下させた。その後HFを止めて、反応器を30cc/分の窒素でパージした。次に、反応器の温度を300℃で安定にし、窒素流を止めて、CF3CH2CHF2、又はZ-1234zeの量を変化させたCF3CH2CHF2のいずれかを、1.44mL/時間で送り込んだ。反応器内での接触時間は45秒であった。CF3CH2CHF2を50℃で蒸発させた。反応器排出液の一部を、一連のバルブに通過させて、GCMSにより分析した。Z-1234ze、245fa、及びE-1234zeに関する量はモル部として表されている。結果を表2に要約する。
【0034】
【表2】
【0035】
(実施例3)
実施例3は、Z-HFC-1234zeの存在下でCr23に通過させる245faの脱フッ化水素処理を示す。
【0036】
インコネル管(外径1.3センチメートル(1/2インチ))に、以下の通りに調製したCr23触媒(Johnson Mathey)を10cc(8グラム)充填した。押出し形状の酸化クロムを粉砕し、12/20メッシュの篩にかけた。反応器管に充填後、触媒層の温度を300℃に上昇させて、窒素(30cc/分)で200分間パージした。次いで窒素流を60cc/分に低下させて、HFを20cc/分で60分間送り込んだ。この温度を325℃に300分間上昇させた。次に、窒素流を30cc/分に低下させて、HF流を30cc/分に30分間上昇させた。次に、窒素流を12cc/分に低下させて、HF流を48cc/分に60分間上昇させた。次に、窒素流を中止して、HF流を48cc/分に30分間上昇させた。次いで、反応器の温度を250℃に30分間低下させた。その後HFを止めて、反応器を30cc/分の窒素でパージした。次に、反応器の温度を300℃で安定にし、窒素流を止めて、CF3CH2CHF2、又はZ-1234zeの量を変化させたCF3CH2CHF2のいずれかを、1.44mL/時間で送り込んだ。反応器内での接触時間は45秒であった。CF3CH2CHF2を50℃で蒸発させた。反応器排出液の一部を、一連のバルブに通過させて、GCMSにより分析した。Z-1234ze、245fa、及びE-1234zeに関する量はモル部として表されている。結果を表3に要約する。
【0037】
【表3】
【0038】
(実施例4)
実施例4は、Z-HFC-1234zeの存在下でCr23の上を通過させる245faの脱フッ化水素処理を示す。
【0039】
インコネル管(外径1.3センチメートル(1/2インチ))に、以下の通りに調製したCr23触媒(Newport Cr)を10cc(8グラム)充填した。押出し形状の酸化クロムを粉砕し、12/20メッシュの篩にかけた。反応器管に充填後、触媒層の温度を300℃に上昇させて、窒素(30cc/分)で200分間パージした。次いで窒素流を60cc/分に低下させて、HFを20cc/分で60分間送り込んだ。この温度を325℃に300分間上昇させた。次に、窒素流を30cc/分に低下させて、HF流を30cc/分に30分間上昇させた。次に、窒素流を12cc/分に低下させて、HF流を48cc/分に60分間上昇させた。次に、窒素流を中止して、HF流を48cc/分に30分間上昇させた。次いで、反応器の温度を250℃に30分間低下させた。その後HFを止めて、反応器を30cc/分の窒素でパージした。次に、反応器の温度を300℃で安定にし、窒素流を止めて、CF3CH2CHF2、又はZ-1234zeの量を変化させたCF3CH2CHF2のいずれかを、1.44mL/時間で送り込んだ。反応器内での接触時間は45秒であった。CF3CH2CHF2を50℃で蒸発させた。反応器排出液の一部を、一連のバルブに通過させて、GCMSにより分析した。Z-1234ze、245fa、及びE-1234zeに関する量はモル部として表されている。結果を表4に要約する。
【0040】
【表4】
【0041】
(実施例5)
実施例4は、Z-HFC-1234zeの存在下でフッ化アルミに通過させる245faの脱フッ化水素処理を示す。
【0042】
インコネルチューブ(外径1.3センチメートル(1/2インチ))に、10cc(6.1グラム)のAl2O3触媒(Sigma-Aldrichより購入)を充填する。押出し形状のAl2O3を粉砕し、12/20メッシュの篩にかける。反応器管に充填後、触媒層の温度を300℃に上昇させて、窒素(30cc/分)で200分間パージする。次いで窒素流を60cc/分に低下させて、HFを、20cc/分で60分間送り込む。この温度を325℃に300分間上昇させる。次いで窒素流を、30cc/分に低下させて、HF流を、30cc/分に30分間上昇させる。次に、窒素流を12cc/分に低下させて、HF流を48cc/分に60分間上昇させる。次に、窒素流を中止して、HF流を48cc/分に30分間上昇させる。次いで、反応器の温度を250℃に30分間低下させる。その後HFを止めて、反応器を30cc/分の窒素でパージする。次に、反応器の温度を300℃で安定にし、窒素流を止めて、CF3CH2CHF2、又はZ-1234zeの量を変化させたCF3CH2CHF2のいずれかを、1.44mL/時間で送り込む。反応器内での接触時間は45秒である。CF3CH2CHF2を50℃で蒸発させる。反応器排出液の一部を、一連のバルブに通過させて、GCMSにより分析する。Z-1234ze、245fa、及びE-1234zeに関する量はモル部として表されている。結果を表5に要約する。
【0043】
【表5】
【0044】
一般記述又は実施例において上述された作業の全てが必要なわけではなく、特定の作業の一部は必要でない場合があり、また、1つ以上の更なる作業を上述の作業に加えて実施してもよいことに注意されたい。また更に、作業が記載されている順序は、必ずしも実施される順序ではない。
【0045】
上述の明細書において、具体的な実施例を参照して本発明の概念が記述されている。しかしながら、下記の特許請求の範囲に示されている本発明の範囲から逸脱することなく、様々な修正及び変更をなすことが可能であることが、当業者は理解されよう。したがって、本明細書及び図は、限定的な意味ではなく例示として見なされるものであり、そのような修正は全て、本発明の範囲内に含まれることが意図される。
【0046】
利益、その他の利点、及び問題の解決策が、具体的な実施形態に関連して上記に記述されている。しかしながら、これらの利益、利点、問題の解決策、及び、任意の利益、利点又は解決策を生じる場合がある又はより明らかにする場合があるようないかなる特徴も、特許請求の範囲の一部又は全てにおいて必須、必要、又は不可欠な特徴として解釈されるものではない。
【0047】
明確にするために、別個の実施形態の文脈において本明細書に記述されている特定の特徴は、単一の実施形態中で組み合わせて提供されてもよいことが理解されるべきである。逆に、簡潔にするために、単一の実施形態の文脈において記述されている様々な特徴も、別個に提供されてよく、また任意の下位組み合わせで提供されてもよい。更に、範囲で記載した値に対する言及は、その範囲内の各値及び全ての値を含む。