IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ パイオニア株式会社の特許一覧

特許7193572移動体制御装置、移動体制御方法、および、移動体制御装置用プログラム
<>
  • 特許-移動体制御装置、移動体制御方法、および、移動体制御装置用プログラム 図1
  • 特許-移動体制御装置、移動体制御方法、および、移動体制御装置用プログラム 図2
  • 特許-移動体制御装置、移動体制御方法、および、移動体制御装置用プログラム 図3
  • 特許-移動体制御装置、移動体制御方法、および、移動体制御装置用プログラム 図4
  • 特許-移動体制御装置、移動体制御方法、および、移動体制御装置用プログラム 図5
  • 特許-移動体制御装置、移動体制御方法、および、移動体制御装置用プログラム 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】移動体制御装置、移動体制御方法、および、移動体制御装置用プログラム
(51)【国際特許分類】
   B60W 60/00 20200101AFI20221213BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20221213BHJP
   B60W 30/182 20200101ALI20221213BHJP
   B60W 50/035 20120101ALI20221213BHJP
【FI】
B60W60/00
G08G1/16 C
B60W30/182
B60W50/035
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021059774
(22)【出願日】2021-03-31
(62)【分割の表示】P 2016203500の分割
【原出願日】2016-10-17
(65)【公開番号】P2021113047
(43)【公開日】2021-08-05
【審査請求日】2021-03-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】弁理士法人インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100120189
【弁理士】
【氏名又は名称】奥 和幸
(72)【発明者】
【氏名】柴▲崎▼ 裕昭
【審査官】佐々木 佳祐
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/097907(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00-10/30
B60W 30/00-60/00
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の地物に対する移動体の相対位置を検出する第1検出手段と、
前記移動体の走行状態を検出する第2検出手段と、
前記第1検出手段の相対位置の検出精度が所定以下の場合、前記第1検出手段の検出結果を用いた前記移動体の第1運転制御から前記第2検出手段の検出結果を用いた前記移動体の第2運転制御に切替える制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記検出精度が所定以下である期間が、前記切替え後、所定期間以内である場合、前記第2運転制御を継続し、
前記相対位置の検出精度が所定値以下である期間が、前記切替え後、所定期間より長い場合、前記第2運転制御により所定の位置に前記移動体を停止させ、
前記所定期間が、前記移動体の走行状態に応じて設定されることを特徴とする移動体制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の移動体制御装置において、
前記相対位置の検出精度が、前記所定値以下になった後、前記検出精度が回復した場合、前記第2運転制御から前記第1運転制御に切り替えることを特徴とする移動体制御装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の移動体制御装置において、
前記第2運転制御への切替後の位置の誤差を算出する誤差算出手段を更に備え、
前記位置の誤差が、所定誤差より大きい場合、前記第2運転制御により所定の位置に前記移動体を停止させることを特徴とする移動体制御装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の移動体制御装置において、
前記第2検出手段の検出結果および地図情報に基づいた前記第2運転制御により、前記移動体が制御されることを特徴とする移動体制御装置。
【請求項5】
第1検出手段が、所定の地物に対する移動体の相対位置を検出する第1検出ステップと、
第2検出手段が、前記移動体の走行状態を検出する第2検出ステップと、
制御手段が、前記第1検出手段の相対位置の検出精度が所定値以下の場合、前記第1検出手段の検出結果を用いた前記移動体の第1運転制御から前記第2検出手段の検出結果を用いた前記移動体の第2運転制御に切替える制御ステップと、
を含み、
前記制御ステップにおいて、前記検出精度が所定値以下である期間が、前記切替え後、所定期間以内である場合、前記第2運転制御を継続し、
前記相対位置の検出精度が所定値以下である期間が、前記切替え後、所定期間より長い場合、前記第2運転制御により所定の位置に前記移動体を停止させ、
前記所定期間が、前記移動体の走行状態に応じて設定されることを特徴とする移動体制御方法。
【請求項6】
コンピュータを、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の移動体制御装置として機能させることを特徴とする移動体制御装置用プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、移動体制御装置、移動体制御方法、および、移動体制御装置用プログラムの技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
移動体の一例の車両の自動運転を行う制御装置が開発されている。例えば、下記特許文献1には、車両の走行状態、車両の周辺状況、および運転者の状態の少なくともいずれかを取得する検知し、自動運転を行うための条件を満たしているか否かを判断して、車両を自動運転する自動運転車両制御装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-106854号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載されている技術では、悪天候等により位置が正確に測定できなくなった場合、単に、自動運転の解除の通知をしたり、停車地点に誘導して停止されたりしているだけであった。
【0005】
そこで本願は、上記の各問題点に鑑みて為されたもので、その課題の一例は、正確に位置計測ができなくなった場合でも、安定的に自動運転を継続する移動体制御装置等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、所定の地物に対する移動体の相対位置を検出する第1検出手段と、前記移動体の走行状態を検出する第2検出手段と、
前記第1検出手段の相対位置の検出精度が所定以下の場合、前記第1検出手段の検出結果を用いた前記移動体の第1運転制御から前記第2検出手段の検出結果を用いた前記移動体の第2運転制御に切替える制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記検出精度が所定以下である期間が、前記切替え後、所定期間以内である場合、前記第2運転制御を継続し、前記相対位置の検出精度が所定値以下である期間が、前記切替え後、所定期間より長い場合、前記第2運転制御により所定の位置に前記移動体を停止させ、前記所定期間が、前記移動体の走行状態に応じて設定されることを特徴とする。
【0007】
また請求項に記載の発明は、第1検出手段が、所定の地物に対する移動体の相対位置を検出する第1検出ステップと、第2検出手段が、前記移動体の走行状態を検出する第2検出ステップと、制御手段が、前記第1検出手段の相対位置の検出精度が所定以下の場合、前記第1検出手段の検出結果を用いた前記移動体の第1運転制御から前記第2検出手段の検出結果を用いた前記移動体の第2運転制御に切替える制御ステップと、を含み、前記制御ステップにおいて、前記検出精度が所定以下である期間が、前記切替え後、所定期間以内である場合、前記第2運転制御を継続し、前記相対位置の検出精度が所定値以下である期間が、前記切替え後、所定期間より長い場合、前記第2運転制御により所定の位置に前記移動体を停止させ、前記所定期間が、前記移動体の走行状態に応じて設定されることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る移動体制御装置の概要構成の一例を示すブロック図である。
図2】実施例に係る車両制御装置の概要構成の一例を示すブロック図である。
図3】外界センサによるセンシングの一例を示す模式図である。
図4】地物の分布の一例を示す模式図である。
図5】地物の一例を示す模式図である。
図6】実施例に係る車両制御装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本願を実施するための形態について、図1を用いて説明する。なお図1は、実施形態に係る移動体制御装置の概要構成の一例を示すブロック図である。
【0010】
図1に示すように、移動体制御装置1は、第1検出手段1aと、第2検出手段1bと、制御手段1cと、を備えて構成されている。
【0011】
この構成において第1検出手段1aは、所定の地物に対する移動体の相対位置を検出する。ここで、地物の一例として、建物、道路標識、道路上のペイント(白線、停止線など)、信号機、樹木等、地理上で場所を特定できる存在物が挙げられる。またこれらの地物について、移動体が走行時に参照するデータ(地図など)上に、その位置情報や属性情報があらかじめ記録されていてもよい。その位置情報は、その地物の絶対位置の情報でもよいし、道路からの位置を特定する情報であってもよい。道路からの位置を特定する情報は、たとえば道路上の位置基準点からの相対位置などである。移動体の一例として、車両、自動二輪車、航空機、船舶等が挙げられる。
【0012】
相対位置を検出するセンサは、移動体の外界を測定するセンサであって、自動運転に必要な情報を取得するセンサ(外界センサ)である。外界センサとして、例えば、カメラ、レーダ、走行空間センサ(LIDAR:Light Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and Ranging)等が挙げられる。外界センサとして、移動体の周りに設置された障害物センサでもよい。相対位置は、移動体と地物との距離、角度、移動体を基点とした地物のxyz座標等で表す。
【0013】
第2検出手段1bは、移動体の走行状態を検出する。
【0014】
ここで、走行状態の一例として、移動体の加速度、速度、進行方向、傾き等が挙げられる。走行状態の一例として、ステアリングホイールの角度、ブレーキ、ギア、ワイパー等の操作状態、方向指示器の指示方向、ライトのオン・オフ状態等が挙げられる。移動体の走行状態を検出するセンサは、例えば、移動体自体の走行状態を計測する車両に搭載されたセンサ(内界センサ)である。移動体の走行状態を検出するセンサの一例として、ジャイロセンサ、加速度センサ、速度センサ、車輪回転角センサ、舵角センサ等が挙げられる。なお、移動体の絶対位置を取得するGPS(Global Positioning System)などのGNSS
(Global Navigation Satellite System)測位システムは、内界センサに含めてもよいし、含めなくてもよい。
【0015】
制御手段1cは、第1検出手段1aの相対位置の検出精度が所定以下の場合、第1検出手段1aの検出結果を用いた移動体の第1運転制御から第2検出手段の検出結果を用いた移動体の第2運転制御に切替える。
【0016】
第1運転制御は、第1検出手段1a(例えば、外界センサ)により検出した地物との相対位置に基づく自動運転制御である。より具体的には、第1運転制御においては、例えば、第1検出手段1aの検出結果(地物からの相対位置)と、移動体が走行時に参照するデータとして予め取得あるいは設定している地物の位置情報(地図データにおける、当該地物の道路からの相対位置や絶対位置など)と照合等を行なうことで、現在の移動体の道路上の位置を継続的に推定する。そして、その推定位置を、例えば、移動体が走行時に参照するデータとして、予め取得あるいは設定している予定ルートの道路の走行レーンの情報(地図データにおけるレーン位置など)と照合しながら、移動体が走行レーン上を適切に走行するよう移動体の走行を継続的に制御する。このようにして推定された移動体の推定位置情報は、高精度な外界センサと高精度な「移動体が走行時に参照するデータ(すなわち、地物の詳細な位置情報等を含む地図データ)」を組み合わせることで、従来のGPS測位よりも飛躍的に位置推定精度が向上させることができる。
【0017】
第2運転制御は、第2検出手段1b(例えば、内界センサ)により検出した移動体の位置に基づく自動運転制御である。より具体的には、第2運転制御においては、第2検出手段の検出結果から、ある設定された起点位置からの移動体の移動距離や方位を推定することで、現在の移動体の道路上の位置を継続的に推定する。具体的には、例えば、道路上の位置あるいは道路との位置関係が特定できているか、あるいは推定できている起点位置からの移動体の相対位置を推定することでもよいし、絶対位置が特定できているかあるいは推定できている起点位置を基に移動体の絶対位置を算出することでもよい。起点位置は第2検出手段以外の手段で推定または特定し設定された位置である。起点位置の設定は、例えば、GNSS測位システムなどにより行ってもよいが、以下の説明では第1検出手段1aの検出結果を用いた設定の例について述べる。
【0018】
相対位置の検出精度の低下の一例として、天候、汚れの付着等によるセンサの機能低下による正確に位置計測ができない場合、地物の変化、消失等により位置計測ができない場合、外界センサの故障した場合等が挙げられる。また、相対位置の検出精度が所定以下として、外界センサの機能低下による相対位置を計算するための信号が取得できなかった(検出不能)、外界センサの信号のレベルが低い等が挙げられる。また、相対位置の検出精度が所定以下として、地物の変化、消失等により、位置計測ができなかった(検出不能)等が挙げられる。また、相対位置の検出精度が所定以下として、前回までの計測結果と比べて不連続な値を示すなど異常な値が検出された場合等が挙げられる。また、相対位置の検出精度が所定以下として、計測した相対位置と地物の絶対位置とから算出される移動体の絶対位置と、GPS等により算出した絶対位置との差異がGPS等の誤差を上回る等が挙げられる。
【0019】
第1検出手段1aの検出結果を用いた移動体の第1運転制御から第2検出手段の検出結果を用いた移動体の第2運転制御に切替える際には、第2運転制御に使用する起点位置を設定してもよい。起点位置には、例えば、切り替える前のなるべく直近の正常と推定される第1検出手段1aの検出結果を用いた移動体の第1運転制御による推定位置およびその位置上を走行した通過時刻を設定する。そして、第2運転制御では第2検出手段の検出結果をその通過時刻まで遡って用いることで、設定した位置が既に推定できている起点位置からの移動体の移動距離や方位を推定することで、現在の移動体の道路上の位置を継続的に推定する。なお、第2運転制御による位置推定および走行は、起点位置が更新されない限り走行を続けると第2検出手段の精度に応じて誤差が累積し走行精度は落ちてくるものと考えられる。
【0020】
また、制御手段1cは、検出精度が所定以下である期間が、切替え後、所定期間以内である場合、第2運転制御を継続する。所定期間の一例として、数秒、数10秒、数分、数10分等が挙げられる。所定期間は、第2運転制御による移動体の走行精度に依存し、累積誤差が許容範囲(例えば、10cm以内)の範囲内に収まっていられる時間ならばよい。あるいは、予定ルートの道路または車線内からはみ出ずに走行していられる時間ならばよい。また、所定期間の一例として、所定期間が、移動体の走行状態に応じて設定されてもよい。例えば、走行状態の一例が移動体の速度の場合、移動体の速度が遅い場合、所定時間を長くして、速度が遅い場合、所定時間を短くする。また、第2検出手段の精度に影響する状況、例えば、カーブが多い場合(走行状態として、移動体の左右方向の変化が大きい場合)、道路が凸凹道の場合(走行状態として、移動体の上下振動が大きい場合)、天候により道路の状態が悪い場合(走行状態として、タイヤがスリップしている、降雨センサにより雨、雪を検出する場合)等の走行状態が悪い場合、所定時間を短くしてもよい。
【0021】
なお、相対位置の検出精度が、所定以下になった後、検出精度が回復した場合、第2運転制御から前記第1運転制御に切り替えてもよい。検出精度が回復した場合の一例として、再び信号が取得できるようになった場合や、検出精度が所定より上がった場合、検出精度が、所定より値が大きい第2の所定より上がった場合等が挙げられる。
【0022】
また、相対位置の検出精度が所定以下である期間が、切替え後、所定期間より長い場合、第2運転制御により所定の位置に移動体を停止させてもよい。所定の位置は、例えば、路肩等の停車可能な位置である。
【0023】
なお、停止する際、停止する旨を移動体の運転者に通知してもよい。また、移動体制御装置1は、前方の移動体に対して追随運転を行ってもよい。移動体制御装置1は、慣性走行を行ってもよい。移動体制御装置1は、手動運転に切り替えてもよい。
【0024】
第2運転制御への切替後の位置の誤差を算出し、位置の誤差が、所定誤差より大きい場合、第2運転制御により所定の位置に移動体を停止させてもよい。内界センサによる第2運転制御による走行の位置の誤差は、推定誤差でもよい。例えば、単位距離当たりの平均誤差に、第2運転制御への切替後の走行距離をかけた値である。このように、第2運転制御による走行により、誤差が累積的に増加する。単位距離当たりの平均誤差は、走行状態によって変えてもよい。例えば、走行状態が悪い場合、単位距離当たりの平均誤差を増加させる。
【0025】
また、所定誤差は、例えば、道路車線内からはみ出ずに走行しうる許容誤差などから設定する。例えば、10センチなどである。所定誤差は、走行状態に応じて設定されてもよい。移動体制御装置1は、走行状態が悪い場合、所定誤差を低く設定する。
【0026】
以上説明したように、実施形態に係る車両制御装置10の動作によれば、移動体の相対位置が正確に計測できなくなった場合でも、安定的に自動運転を継続することができる。
【実施例
【0027】
[1.車両体制御装置の構成および機能概要]
次に、上述した実施形態に対応する具体的な実施例について、図2から図5を用いて説明する。なお以下に説明する実施例は、移動体の一例である車両等に取り付けられた車両制御装置に対して、本願を適用した場合の実施例である。
【0028】
図2は、実施例に係る車両制御装置の概要構成の一例を示すブロック図である。図3は、外界センサによるセンシングの一例を示す模式図である。図4は、地物の分布の一例を示す模式図である。図5は、地物の一例を示す模式図である。
【0029】
図2に示すように、実施形態に係る移動体制御装置1の一例としての車両制御装置10は、記憶部11と、通信部12と、入出力インターフェース部13と、制御部14と、を有する。そして、制御部12と、車両Vの走行を制御する駆動装置20と、車両Vの外界を測定する外界センサ30と、車両V自体の走行状態を計測する内界センサ31、GPSセンサ32等の各種センサと、入出力インターフェース部13を介して接続されている。制御部14と入出力インターフェース部13とは、システムバス15を介して接続されている。また、車両制御装置10は、タイマー機能を有する(図示せず)。
【0030】
記憶部11は、例えば、不揮発性メモリ等からなる。記憶部11は、車両制御装置10を制御するための各種プログラム、車両Vをナビゲーションするための地図情報、各地物5の地物情報等を記憶したりする。地物情報として、各地物の絶対位置、各地物を特定するための特徴量(例えば、地物の形状)等が挙げられる。記憶部11には、各地物の地物のID番号に関連づけられて、緯度および経度あるいは道路からの相対位置と、特徴量等が記憶されている。
【0031】
なお、各種プログラム、地図情報、地物情報は、例えば、無線通信網等のネットワークを介して取得されるようにしてもよいし、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)等の記録媒体に記録されてドライブ装置を介して読み込まれるようにしてもよい。
【0032】
通信部12は、無線通信機能を有する。通信部12は、ネットワークの移動体通信網等に接続し、交通情報等を取得する。
【0033】
入出力インターフェース部13は、各部と制御部14とのインターフェースである。入出力インターフェース部13は、記憶部11および通信部12と、制御部14との間のインターフェース処理を行う。入出力インターフェース部13は、駆動装置20と、外界センサ30と、内界センサ31と、GPSセンサ32と接続する。
【0034】
制御部14は、例えば、CPU(Central Processing Unit)12aと、ROM(Read Only Memory)14bと、RAM(Random Access Memory)14cと、を有する。制御部
14は、CPU14aが、ROM14bや、RAM14cや、記憶部11に記憶された各種プログラムを読み出して実行し、駆動装置20を制御する。
【0035】
駆動装置20は、アクセル量を制御して、車両Vの速度および加速度を制御する。駆動装置20は、操舵角度を制御して、車両Vの進行方向を変更する。駆動装置20は、ブレーキ量を制御して、車両Vを減速および停止させる。また、駆動装置20は、ライト、方向指示器等も制御する。
【0036】
外界センサ30の一例のLIDARは、図3に示すように、車両Vの周りの地物5を検出できるように、車両Vの前方2カ所、後方2カ所に設置されている。外界センサ30は、車両Vの上に設置されていてもよい。また、外界センサ30の一例がカメラの場合、ウインドシールドの上方に設置されてもよい。外界センサ30の一例がレーダの場合、車両Vの前方と後方に設置されてもよい。外界センサ30の一例が障害物センサの場合、車両Vの周りに設置されてもよい。
【0037】
外界センサ30が、LIDARの場合、近赤外線、紫外線、可視光線を、放射してスキャンして、反射光を検出することにより、物体までの距離、幅を測定し、3次元点群データを取得する。3次元点群データの各点の距離の情報が含まれるため、外界センサ30の一例のLIDARの測定結果に、物体までの距離、方向、形状等の情報が含まれる。さらに、制御部14が、3次元点群データから物体認識を行い、地物を特定する。
【0038】
外界センサ30が、走行している車両Vの周りに存在する地物5を検出する。図4に示すように、地物5は、道路沿いに、または、道路上の車両Vから検出できる位置に存在する。図5に示すように、地物5は、建物、道路標識、樹木、道路上のペイント等である。
【0039】
内界センサ31として、加速度センサ、ジャイロセンサ、車輪の角速度センサ、舵角センサ等が挙げられる。加速度センサは、例えば圧電素子からなり、車両Vの加速度を検出し、加速度データを出力する。ジャイロセンサは、例えば、振動型、回転型等の機械式、光ファイバーを利用した光学式のジャイロセンサである。ジャイロセンサは、車両Vの方向、傾斜等を検出する。角速度センサは、車両の車輪の回転に伴って発生されているパルス信号からなる車速パルスを計測する。
【0040】
また、内界センサ31として、車両Vのブレーキ、ギア、ワイパー等の操作状態、方向指示器の指示方向、ライトのオン・オフ状態を検出するセンサが挙げられる。
【0041】
GPSセンサ32は、複数のGPS衛星から、測位用データを含む下り回線データを搬送する電波を受信する。測位用データは、緯度および経度情報等から車両Vの絶対位置を検出するために用いられる。なお、GPSセンサ32による絶対位置の検出には、マルチパス等数メールから数十メートルの誤差が生じる。
【0042】
なお、車両制御装置10は、ナビゲーション機能を有し、現在地から目的までのルートを計算する。
【0043】
[2.車両制御装置の動作]
実施例に係る車両制御装置10の動作について、図6を用い説明する。なお、ここでの説明は車両Vの位置を絶対位置として取得する場合について説明するが、車両Vの位置は道路上の位置(道路からの相対位置)として算出してもよい。
【0044】
図6は、実施例に係る車両制御装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【0045】
図6に示すように、車両制御装置10は、第1運転制御による自動運転を行う(ステップS1)。具体的には、制御部14は、外界センサ30により検出した地物5との相対位置に基づく第1運転制御による自動運転を開始する。
【0046】
制御部14は、地物5との相対位置(外界センサ30の検出結果)と、地物5の絶対位置とから算出された車両Vの絶対位置と、地図情報とから、予定ルートに従った第1運転制御による自動運転を行う。より具体的には、制御部14は、外界センサ30の検出結果と、車両Vが走行時に参照するデータとして、予め取得あるいは設定している地物の位置情報と照合等を行なうことで、現在の車両Vの道路上の位置を継続的に推定する。そして、制御部14は、その推定位置を、例えば、車両Vが走行時に参照するデータとして、予め取得あるいは設定している予定ルートの道路の走行レーンの情報と照合しながら、車両Vが走行レーン上を適切に走行するよう車両Vの走行を継続的に制御する。
【0047】
次に、車両制御装置10は、所定の地物に対する車両の相対位置を検出する(ステップS2)。具体的には、制御部14は、外界センサ30が測定した車両Vの周りの3次元点群データや画像から、地物5の形状等の特徴量を抽出する。制御部14は、記憶部11を参照して、特徴量から、所定の地物5を特定する(地物IDを特定する)。なお、所定の地物5は、複数でもよい。
【0048】
制御部14は、特定した地物5の、LIDARの測定結果の3次元点群データに含まれる、距離と方向の情報に基づき、所定の地物5に対する車両Vの相対位置を求める。制御部14は、記憶部11を参照して、地物IDに基づき、特定した地物の絶対位置を求める。制御部14は、所定の地物5に対する車両Vの相対位置と、地物5の絶対位置とから、車両Vの絶対位置を算出する。なお、制御部14は、複数の地物5の各相対位置からの車両Vの各位置を算出し、各位置の値の中央値、算術平均等により、車両Vの位置を計算してもよい。
【0049】
なお、天候、汚れの付着等による外界センサの信号のレベルが低下した場合、地物の変化、消失等により位置計測ができない場合等、相対位置が検出不能とする。
【0050】
車両制御装置10は、所定の地物に対する移動体の相対位置を検出する第1検出手段の一例として機能する。
【0051】
次に、車両制御装置10は、車両の走行状態を検出する(ステップS3)。具体的には、制御部14は、内界センサ31のデータに基づき、車両Vの速度、加速度、進行方向等を検出する。
【0052】
車両制御装置10は、前記移動体の走行状態を検出する第2検出手段の一例として機能する。
【0053】
次に、車両制御装置10は、検出された相対位置の検出精度が所定以下か否かを判定する(ステップS4)。具体的には、制御部14は、相対位置が検出不能か否かを判定する。また、相対位置の検出精度として、制御部14は、GPSセンサ32に基づく絶対位置と、外界センサ30に基づく絶対位置との差異を計算し、この位置の差異が所定以上(例えば、GPSセンサ32の誤差の距離が、所定の距離以上)であるか否かを判定する。
【0054】
検出された相対位置の検出精度が所定以下の場合(ステップS4;YES)、車両制御装置10は、第2運転制御による自動運転を行う(ステップS5)。具体的には、制御部14は、外界センサ30の検出結果を用いた第1制御による自動運転から、内界センサ31の検出結果を用いた第2制御による自動運転に切り替える。例えば、直前の外界センサ30による絶対位置を起点位置として、内界センサ31の検出結果から、車両Vの移動距離や方位を推定することで、車両Vの現在位置を継続的に推定し、地図情報に基づき、予定ルートに従った第2運転制御による自動運転を行う。制御方法として、例えば、直前の外界センサ30による絶対位置を起点位置として、内界センサ31の検出結果から車両Vの現在位置を算出し、現在位置と予定ルートとの差分が減少するように、制御部14は、駆動装置20を制御する。
【0055】
車両制御装置10は、前記相対位置の検出精度が所定以下の場合、前記第1検出手段の検出結果を用いた前記移動体の第1運転制御から前記第2検出手段の検出結果を用いた前記移動体の第2運転制御に切替える制御手段の一例として機能する。
【0056】
検出された相対位置の検出精度が所定以下でない場合(ステップS4;NO)、ステップS2の処理に戻り、第1運転制御による自動運転を継続する。
【0057】
車両制御装置10は前記検出精度が所定以下である期間が、前記切替え後、所定期間以内である場合、前記第2運転制御を継続する制御手段の一例として機能する
【0058】
ステップS5の処理の後、車両制御装置10は、所定の地物に対する車両の相対位置を検出する(ステップS6)。具体的には、制御部14は、ステップS2のように、所定の地物5に対する車両Vの相対位置を検出する。
【0059】
次に、車両制御装置10は、車両の走行状態を検出する(ステップS7)。具体的には、制御部14は、ステップS3のように、車両Vの走行状態を検出する。
【0060】
次に、車両制御装置10は、検出された相対位置の検出精度が所定以下か否かを判定する(ステップS8)。具体的には、制御部14は、ステップS4のように、出された相対位置の検出精度が所定以下か否かを判定する。
【0061】
検出された相対位置の検出精度が所定以下の場合(ステップS8;YES)、車両制御装置10は、検出精度が所定以下である期間が、所定期間以内か否かを判定する(ステップS9)。具体的には、制御部14は、ステップS5において、タイマー機能により、第1運転制御から第2運転制御に切り替わった後から、所定期間経過したか否かを判定する。
【0062】
なお、所定期間は、車両Vの走行状態に応じて設定されてもよい。例えば、制御部14は、内界センサ31の速度センサ等の結果により、車両Vの速度が遅い場合、所定時間を長くして、速度が遅い場合、所定時間を短くする。また、カーブが多かったり、カーブがきつかったりで、内界センサ31のジャイロセンサ等の結果により、車両Vの左右方向の変化が大きい場合、制御部14は、所定時間を短くしてもよい。道路が凸凹道で、内界センサ31の結果により、上下振動が大きい場合、制御部14は、所定時間を短くしてもよい。天候により道路の状態が悪く、内界センサ31の結果により、タイヤがスリップしている、降雨センサにより雨、雪を検出する場合、制御部14は、所定時間を短くしてもよい。これらのように、走行の条件が悪い場合、制御部14は、所定期間を短くして、第2運転制御による自動運転の継続を短くする。
【0063】
検出された相対位置の検出精度が所定以下でない場合(ステップS8;NO)、車両制御装置10は、ステップS1の処理に戻り、第2運転制御から第1運転制御による自動運転に切り替える。車両Vの走行は、予定ルートに従った第1運転制御による自動運転に戻る。
【0064】
検出された相対位置の検出精度が所定以下でない場合、即ち、相対位置の検出精度が回復した場合の一例として、例えば、車両Vが移動していて、次の地物5を検出して相対位置が検出できた場合、外界センサの汚れが取れた場合、天気が回復して地物5を検出できた場合等が挙げられる。
【0065】
車両制御装置10は、前記相対位置の検出精度が、前記所定以下になった後、前記検出精度が回復した場合、前記第2運転制御から前記第1運転制御に切り替える制御手段の一例として機能する。
【0066】
検出精度が所定以下である期間が、所定期間以内でない場合(ステップS9;NO)、車両制御装置10は、第2運転制御による停止の制御を行う(ステップS10)。具体的には、制御部14は、第2運転制御および地図情報に基づき、路肩等の停車できる所定の位置に、車両Vを停止させ、自動運転を終了する。
【0067】
なお、車両制御装置10は、停止する際、停止する旨を運転者に通知してしてもよい。また、車両制御装置10は、前方の車両に対して追随運転を行ってもよい。車両制御装置10は、慣性走行を行ってもよい。車両制御装置10は、手動運転に切り替えてもよい。
【0068】
また、車両制御装置10は、外界センサのLIDARのみの検出精度が低下した場合、カメラや障害物センサ等の他の外界センサにより、所定の位置に停止したり、自動運転してもよい。
【0069】
車両制御装置10は、前記相対位置の検出精度が所定以下である期間が、前記切替え後、所定期間より長い場合、前記第2運転制御により所定の位置に前記移動体を停止させる手段の一例として機能する。
【0070】
検出精度が所定以下である期間が、所定期間以内である場合(ステップS9;YES)、車両制御装置10は、ステップ6の処理に戻り、第2運転制御を用いた自動運転を継続する。
【0071】
以上説明したように、実施例に係る動作によれば、第1運転制御から第2運転制御に切り替わった後、相対位置の検出精度が所定以下である期間が、所定期間以内であるとき、第2運転制御を継続するので、正確に地物5の位置計測ができなくなった場合でも、回復するまでしばらくの間は第2運転制御により安定的に自動運転を継続することができる。
【0072】
また、相対位置の検出精度が、所定以下になった後、検出精度が回復したとき、第2運転制御から第1運転制御に切り替える場合、第1運転制御により安定的に自動運転を継続することができる。
【0073】
また、相対位置の検出精度が所定以下である期間が、第2運転制御に切替え後、所定期間より長いとき、第2運転制御により所定の位置に車両Vを停止させる場合、車両Vを停止でき、停車位置から、運転者は、手動運転を始めることができる。
【0074】
また、所定期間が、移動体の一例である車両Vの走行状態に応じて設定される場合、車両Vの走行状態に応じて、安定的に自動運転を継続することができる。
【0075】
また、第2運転制御への切替後の位置の誤差を算出し、位置の誤差が、所定誤差より大きいとき、第2運転制御により所定の位置に車両Vを停止させる場合、車両Vを停止でき、停車位置から、運転者は、手動運転を始めることができる。
【0076】
また、第2検出手段の検出結果および地図情報に基づいた第2運転制御により、車両Vが制御される場合、地図情報により、より安定的に自動運転を継続することができる。
【符号の説明】
【0077】
1:移動体制御装置
1a:第1検出手段
1b:第2検出手段
1c:制御手段
5:地物
10:車両制御装置(移動体制御装置)
14:制御部
V:車両(移動体)
図1
図2
図3
図4
図5
図6