(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】プリプレグ及び板金属張り積層板
(51)【国際特許分類】
C08J 5/24 20060101AFI20221213BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20221213BHJP
C08J 5/04 20060101ALI20221213BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20221213BHJP
C08K 3/38 20060101ALI20221213BHJP
C08L 9/00 20060101ALI20221213BHJP
C08L 71/12 20060101ALI20221213BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
C08J5/24 CEQ
B32B15/08 U
C08J5/04 CEZ
C08K3/22
C08K3/38
C08L9/00
C08L71/12
C08L101/00
(21)【出願番号】P 2021076876
(22)【出願日】2021-04-28
【審査請求日】2021-04-28
(32)【優先日】2020-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】501296612
【氏名又は名称】南亞塑膠工業股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】NAN YA PLASTICS CORPORATION
【住所又は居所原語表記】NO.201,TUNG HWA N.RD.,TAIPEI,TAIWAN
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【氏名又は名称】辻田 朋子
(74)【代理人】
【識別番号】100196313
【氏名又は名称】村松 大輔
(72)【発明者】
【氏名】廖 徳超
(72)【発明者】
【氏名】陳 豪昇
(72)【発明者】
【氏名】張 宏毅
(72)【発明者】
【氏名】張 智凱
(72)【発明者】
【氏名】劉 家霖
【審査官】磯部 洋一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-132858(JP,A)
【文献】特開2007-224269(JP,A)
【文献】特開2016-113543(JP,A)
【文献】特開2011-236316(JP,A)
【文献】特開平11-255992(JP,A)
【文献】特開2005-232313(JP,A)
【文献】特開2019-006837(JP,A)
【文献】特開2012-229319(JP,A)
【文献】国際公開第2015/122379(WO,A1)
【文献】特開2015-193704(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0353004(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/24
C08J 5/04
C08L 101/00
C08L 71/12
C08L 9/00
C08K 3/22
C08K 3/38
B32B 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
補強材及び熱硬化性樹脂層を含むプリプレグであって、
前記熱硬化性樹脂層は、前記補強材が、ポリフェニレンエーテル樹脂、液体ポリブタジエン樹脂、架橋剤、及びフィラーを含む熱硬化性樹脂組成物に含浸されてなり、かつ、前記熱硬化性樹脂組成物の総重量が100重量部であった場合、前記フィラーの添加量が50重量部~70重量部であり、前記フィラーは、粒状の誘電体フィラー、及び片状の熱伝導性フィラーを含
み、
前記粒状の誘電体フィラーは、支持性誘電体フィラー、及び充填性誘電体フィラーを含み、
前記支持性誘電体フィラーの粒子径が30μmから50μmであり、かつ前記支持性誘電体フィラーにおいて、アルミナとシリカとの重量比が5:5~8:2であり、
前記充填性誘電体フィラーの粒子径が5μmから20μmであり、かつ前記充填性誘電体フィラーにおいて、アルミナとシリカとの重量比が2:8~5:5である、ことを特徴とするプリプレグ。
【請求項2】
前記熱硬化性樹脂組成物の総重量が100重量部であった場合、前記粒状の誘電体フィラーの含有量が30重量部から50重量部であり、前記片状の熱伝導性フィラーの含有量が5重量部から25重量部である、請求項1に記載のプリプレグ。
【請求項3】
アルミナは前記粒状の誘電体フィラーの総重量の30wt%から70wt%を占め、シリカは前記粒状の誘電体フィラーの総重量の30wt%から70wt%を占める、請求項
1に記載のプリプレグ。
【請求項4】
前記片状の熱伝導性フィラーは、窒化ホウ素であり、かつ前記片状の熱伝導性フィラーの外径は、5μmから60μmである、請求項1に記載のプリプレグ。
【請求項5】
前記粒状の誘電体フィラーの純度は99.2%を上回って、前記片状の熱伝導性フィラーの純度は99.0%を上回る、請求項1に記載のプリプレグ。
【請求項6】
前記粒状の誘電体フィラーは、前記片状の熱伝導性フィラーの周りに分布され、かつ、前記片状の熱伝導性フィラーは、前記粒状の誘電体フィラーの支持によって立ったままの状態となる、請求項1に記載のプリプレグ。
【請求項7】
補強材及び熱硬化性樹脂層を含む樹脂基板と、前記樹脂基板に配置される金属層とを含む、金属張り積層板であって、
前記熱硬化性樹脂層は、前記補強材を熱硬化性樹脂組成物に含浸してなり、前記熱硬化性樹脂組成物にポリフェニレンエーテル樹脂、液体ポリブタジエン樹脂、架橋剤、及びフィラーが含まれ、前記熱硬化性樹脂組成物の総重量が100重量部であった場合、前記フィラーの添加量が50重量部~70重量部であり、前記フィラーは、粒状の誘電体フィラー、及び片状の熱伝導性フィラーを含み、
前記粒状の誘電体フィラーは、支持性誘電体フィラー、及び充填性誘電体フィラーを含み、
前記支持性誘電体フィラーの粒子径が30μmから50μmであり、かつ前記支持性誘電体フィラーにおいて、アルミナとシリカとの重量比が5:5~8:2であり、
前記充填性誘電体フィラーの粒子径が5μmから20μmであり、かつ前記充填性誘電体フィラーにおいて、アルミナとシリカとの重量比が2:8~5:5である、
前記金属張り積層板の熱伝導率は1W/mK~2.0W/mKである、ことを特徴とする金属張り積層板。
【請求項8】
前記金属張り積層板の誘電正接は0.002以下である、請求項
7に記載の金属張り積層板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリプレグ及び板金属張り積層板に関し、特に誘電特性、熱伝導率及び剥離強度が優れたプリプレグ及び板金属張り積層板に関する。
【背景技術】
【0002】
ミリ波(mmWave)とは、波長が1mm~10mm、周波数が30GHz~300GHzの電磁波のことで、超高周波(extremely high frequency,EHF)とも呼ばれる。ミリ波は、主に電子通信、軍事通信、科学研究、医療などの分野で利用されており、第5世代無線システム(5thgeneration Wireless system,5G)開発のキーテクノロジーとなっている。 5G無線通信の規格を満たすためには、高周波伝送が開発の主流であることになるため、当業界では、高周波基板を基地局アンテナ、衛星レーダー、車載レーダー、無線通信用アンテナや電力増幅器などに適用させるように、高周波伝送用(例えば、6GHz~77GHzの周波数帯)の高周波基板材料の開発に力を入れている。
【0003】
樹脂基板を高周波伝送が可能な高周波基板とするために、樹脂基板には通常、高い比誘電率(Dk)と低い誘電正接(Df)が求められる。本発明では、比誘電率が高く、誘電正接が小さい樹脂基板を「誘電特性の優れた樹脂基板」と呼んでいる。
【0004】
樹脂基板の誘電特性を仕様通りにするために、従来の技術では樹脂材料にシリカ、水酸化アルミニウム、窒化ホウ素などをフィラーとして添加していた。シリカ、水酸化アルミニウムおよび/または窒化ホウ素の添加は、樹脂基板の誘電特性を調整するだけでなく、樹脂基板の熱膨張係数(coefficient of thermal expansion,CTE)の低減にも役立つが、回路基板の熱伝導率(thermal conductivity)を改善するものではない。回路基板の熱伝導性をさらに高めるために、樹脂材料に窒化ホウ素を追加することができる。窒化ホウ素自体の熱伝導率は、二酸化ケイ素や酸化アルミニウムよりも優れているため、樹脂基板の熱伝導率を向上させる効果が得られる。
【0005】
市販されている窒化ホウ素のほとんどは、フレーク状をしている。補強材に樹脂材料を含浸させると、フレーク状の窒化ホウ素がランダムな角度で基板に付着されている。しかし、金属のプレス工程を経ると、フレーク状の窒化ホウ素はほとんどが横たわって平ら状になる。即ち、窒化ホウ素は、基板の表面(X-Y平面)とほぼ平行で、基板の厚み方向(Z軸)には立ち上がらない。このように、横たわる窒化ホウ素は、回路基板の厚さ方向(Z軸方向)の熱伝導率を効果的に高めることができず、窒化ホウ素を添加することで高められる熱伝導率の量が制限されてしまう。
【0006】
市販の回路基板の熱伝導率は約0.2W/mKから0.6W/mKの範囲となるのが一般的であるが、回路基板の熱伝導率を1W/mK以上にするためには、30重量部から50重量部の窒化ホウ素を樹脂材料に添加する必要がある(樹脂材料中の樹脂の総重量は100重量部となる)。しかし、窒化ホウ素を多量(30重量部~50重量部)に添加すると、樹脂材料の流動性が悪化し、樹脂基材と金属層(例えば銅箔)との密着性が低下する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、既存の技術の不足に対し、プリプレグ及び板金属張り積層板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記技術的課題を解決するために、本発明が採用する技術手段の1つとしては、次のようなプリプレグを提供することである。プリプレグは、補強材、及び熱硬化性樹脂層を含む。前記熱硬化性樹脂層は、前記補強材を熱硬化性樹脂組成物に含浸してなる。前記熱硬化性樹脂組成物は、ポリフェニレンエーテル樹脂、液体ポリブタジエン樹脂、架橋剤及びフィラーを含む。熱硬化性樹脂組成物には、前記熱硬化性樹脂組成物の総重量を100重量部とする場合、前記フィラーの添加量が50重量部~70重量部であり、前記フィラーは、粒状の誘電体フィラー、及び片状の熱伝導性フィラーを含む。
【0009】
好ましい実施形態において、前記熱硬化性樹脂組成物の総重量が100重量部であった場合、前記粒状の誘電体フィラーの含有量が30重量部から50重量部であり、前記片状の熱伝導性フィラーの含有量が5重量部から25重量部である。
【0010】
好ましい実施形態において、前記粒状の誘電体フィラーは、支持性誘電体フィラー、及び充填性誘電体フィラーを含み、前記支持性誘電体フィラーの粒子径が30μmから50μmであり、前記充填性誘電体フィラーの粒子径が5μmから20μmである。
【0011】
好ましい実施形態において、前記粒状の誘電体フィラーは、支持性誘電体フィラー、及び充填性誘電体フィラーを含み、前記支持性誘電体フィラーはアルミナとシリカの混合物であり、前記充填性誘電体フィラーはアルミナとシリカの混合物である。
【0012】
好ましい実施形態において、アルミナは前記粒状の誘電体フィラーの総重量の30wt%から70wt%を占め、シリカは前記粒状の誘電体フィラーの総重量の30wt%から70wt%を占める。
【0013】
好ましい実施形態において、前記片状の熱伝導性フィラーは窒化ホウ素であり、前記片状の熱伝導性フィラーの外径は、5μmから60μmである。
【0014】
好ましい実施形態において、前記粒状の誘電体フィラーの純度は99.2%を上回って、前記片状の熱伝導性フィラーの純度は99.0%を上回る。
【0015】
好ましい実施形態において、前記粒状の誘電体フィラーは、前記片状の熱伝導性フィラーの周りに分布され、かつ前記片状の熱伝導性フィラーは前記粒状の誘電体フィラーによって立ったままの状態となる。
【0016】
上記技術的課題を解決するために、本発明が採用する技術手段のもう1つとしては、次のような金属張り積層板を提供する。金属張り積層板は、樹脂基板、及び金属層を含む。前記樹脂基板は、補強材、及び熱硬化性樹脂層を含み、前記熱硬化性樹脂層は、前記補強材を熱硬化性樹脂組成物に含浸させてなるものである。前記熱硬化性樹脂組成物は、ポリフェニレンエーテル樹脂、液体ポリブタジエン樹脂、架橋剤、及びフィラーを含む。前記熱硬化性樹脂組成物の総重量が100重量部であった場合、前記フィラーの添加量が50重量部~70重量部であり、前記フィラーは、粒状の誘電体フィラー、及び片状の熱伝導性フィラーを含む。前記金属層が前記樹脂基板に配置される。
【0017】
好ましい実施形態において、前記金属張り積層板の誘電正接(10GHz)は0.002以下である。
【発明の効果】
【0018】
本発明による有益な効果の1つとして、本発明が提供するプリプレグ及び板金属張り積層板は、「前記熱硬化性樹脂組成物の総重量を100重量部とする場合、前記フィラーの添加量が50重量部~70重量部である」及び「前記フィラーは、粒状の誘電体フィラー、及び片状の熱伝導性フィラーを含む」という技術的手段によって、金属張り積層板の熱伝導率を高めるとともに、片状の熱伝導性フィラーの含有量が高すぎるため熱硬化性樹脂層と金属層との接着力が悪いという問題を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明に係る実施形態の金属張り積層板を示す斜視模式図である。
【
図2】
図1におけるII部分を示す拡大模式図である。
【
図3】本発明に係る他の実施形態の金属張り積層板を示す斜視模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の特徴及び技術内容がより一層分かるように、以下本発明に関する詳細な説明と添付図面を参照する。しかし、提供される添付図面は参考と説明のために提供するものに過ぎず、本発明の特許請求の範囲を制限するためのものではない。
【0021】
下記より、具体的な実施例で本発明が開示する「プリプレグ及び板金属張り積層板」に係る実施形態を説明する。当業者は本明細書の公開内容により本発明のメリット及び効果を理解し得る。本発明は他の異なる実施形態により実行又は応用できる。本明細書における各細節も様々な観点又は応用に基づいて、本発明の精神逸脱しない限りに、均等の変形と変更を行うことができる。また、本発明の図面は簡単で模式的に説明するためのものであり、実際的な寸法を示すものではない。以下の実施形態において、さらに本発明に係る技術事項を説明するが、公開された内容は本発明を限定するものではない。
【0022】
なお、本明細書において「第1」、「第2」、「第3」等の用語で各種の部品又は信号を説明する場合があるが、これらの部品又は信号はこれらの用語によって制限されるものではない。これらの用語は、主として一つの部品と別の部品、又は一つの信号と別の信号を区分するためのものであることが理解されたい。また、本明細書に用いられる「又は」という用語は、実際の状況に応じて、関連する項目中の何れか一つ又は複数の組合せを含み得る。
【0023】
現在の技術における回路基板の熱伝導性が低いという問題を解決するために、本発明は、金属張り積層板の材料に粒状の誘電体フィラー、及び片状の熱伝導性フィラーを添加する。本発明では、粒状の誘電体フィラーの添加によって、片状の熱伝導性フィラーは、金属圧合ステップを経たとしても、倒れることなく立ったままの状態を維持でき、ほぼ熱硬化性樹脂層の厚さ方向に延在するため、厚さ方向における金属張り積層板の熱伝導率を向上させることを図ることができる。即ち、粒状の誘電体フィラー及び片状の熱伝導性フィラーを合わせて利用することによって、本発明は、比較的に少ない(5重量部乃至20重量部)片状の熱伝導性フィラーを添加することによって、片状の熱伝導性フィラーの添加量が多すぎることで樹脂材料の流動性低下、または樹脂基板と金属層との接着力の低下につながることなく、金属張り積層板の熱伝導率を(1W/mKから1.5W/mK)以上にすることができる。
【0024】
図1及び
図2を参照されたい。
図1は、本発明に係る特定の実施形態の金属張り積層板を示す斜視模式図である。
図2は、
図1におけるII部分を示す拡大模式図である。本発明に係る金属張り積層板1は、補強材10、熱硬化性樹脂層20、及び金属層30を含む。本発明に係る金属張り積層板1は、優れた誘電特性及び熱伝導率を両立させることができ、高周波数基板に適用し得る。また、本発明では、熱伝導率が向上であっても、樹脂材料の流動性或いは樹脂基板(補強材10及び補強材10に形成された熱硬化性樹脂層20)と、金属層30との接着力に悪い影響が及ばされていない。
【0025】
補強材10は、連続した材料であってもよく、補強材10は、繊維状の布や絶縁紙であってもよいが、これに限定されるものではない。補強材10は、ガラス繊維、炭素繊維、黒鉛繊維、酸化アルミニウム繊維、炭化ケイ素繊維、窒化ケイ素繊維、ボロン繊維、またはこれらの組み合わせであってもよいものから形成される。好ましくは、補強材10は、ガラス繊維であってもよいが、これに限定されない。補強材10は30μm~200μmの厚さを持つ。
【0026】
熱硬化性樹脂層20は、補強材10を熱硬化性樹脂組成物に含浸させてなる。
【0027】
本実施形態において、熱硬化性樹脂層20は、補強材10の相対面に配置されてもよいが、補強材10を完全に包んでもよい。熱硬化性樹脂層20の厚さは20μm~200μmである。
【0028】
熱硬化性樹脂組成物は、ポリフェニレンエーテル樹脂、液体ポリブタジエン樹脂、架橋剤、フィラー及び溶媒を含む。本発明において、熱硬化性樹脂組成物の総重量を100重量部とした場合、ポリフェニレンエーテル樹脂の添加量は20重量部~40重量部であり、液体ポリブタジエン樹脂の添加量は40重量部~70重量部であり、架橋剤の添加量は20重量部~40重量部であり、フィラーの添加量は50重量部~70重量部であり、溶媒の添加量は30重量部~50重量部である。
具体的に、ポリフェニレンエーテル樹脂は単一種類のポリフェニレンエーテル樹脂で形成されてもよいが、複数種類のポリフェニレンエーテル樹脂で混合され形成されてもよい。また、実際のニーズに応じて、前記一種または複数種類のポリフェニレンエーテル樹脂に対し変性を行ってもよい。即ち、ポリフェニレンエーテル樹脂に変性基を持たせるようになる。
【0029】
本発明において、ポリフェニレンエーテル樹脂の重量平均分子量(weight-average molecular Weight,Mw)は1000g/mol~20000g/molである。好ましくは、ポリフェニレンエーテル樹脂の重量平均分子量が2000g/mol~10000g/molである。さらに好ましくは、ポリフェニレンエーテル樹脂の重量平均分子量が2000g/mol~2200g/molである。ポリフェニレンエーテル樹脂の重量平均分子量が20000g/mol未満である場合、溶媒への融解性が高いため、本発明の金属張り積層板1の製造に向いている。
【0030】
液体ポリブタジエン樹脂とは低分子量ポリブタジエンゴム(liquid polybutadiene,LPB)をいい、液体ポリブタジエン樹脂の重量平均分子量は1000g/mol~10000g/molであり、液体ポリブタジエン樹脂の粘度は2500 mPa・s~15000 mPa・sである。
【0031】
架橋剤としては、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、トリアリルシアヌレート(TAC)またはイソメチルイソシアナート(TMAIC)が挙げられるが、本発明はこの例に制限されない。
【0032】
溶媒としては、トルエン、アセトンまたはメチルエチルケトンが挙げられるが、本発明はこの例に制限されない。
【0033】
フィラーは、粒状の誘電体フィラー21、及び片状の熱伝導性フィラー22を含み、粒状の誘電体フィラー21は、本発明に係る金属張り積層板1の誘電特性を調整するために利用される。片状の熱伝導性フィラー22は、金属張り積層板1を向上させるために利用される。かつ、粒状の誘電体フィラー21は、片状の熱伝導性フィラー22の周りに分布されるため、片状の熱伝導性フィラー22は、粒状の誘電体フィラー21の支持によって、傾斜または立ったままの状態に維持しながら、熱硬化性樹脂層20の厚さ方向に沿って延在する。このように、厚さ方向における金属張り積層板1の熱伝導率を高める効果を果たせることができる。
【0034】
本発明において、技術的用語「粒状の誘電体フィラー」とは、誘電体フィラーが球状または不規則状を呈すことをいい、即ち、その各方向での寸法同士の差はあまり大きくない。また、技術的用語「片状の熱伝導性フィラー」とは、フィラーがある方向の厚さが特に薄くて、薄片状に形成されたことをいう。
【0035】
粒状の誘電体フィラー21が効果的に片状の熱伝導性フィラー22を支持できるために、本発明に係る粒状の誘電体フィラー21はさらに、支持性誘電体フィラー211、及び充填性誘電体フィラー212を含み、かつ、支持性誘電体フィラー211は、充填性誘電体フィラー212に比べて粒子径が大きい。
【0036】
このようにして、粒状の誘電体フィラー21は、本発明に係る金属張り積層板1の誘電特性を調整し得る以外、さらに、片状の熱伝導性フィラー22の傾斜または立ったままの状態を支持・維持する効果を向上させることができる。充填性誘電体フィラー212は比較的に小さい粒子径を有するため、支持性誘電体フィラー211及び/または片状の熱伝導性フィラー22の間に充填することによって、粒状の誘電体フィラー21と片状の熱伝導性フィラー22との間の充填をより緊密にすることができる。また、本発明に係る金属張り積層板1にはさらに優れた誘電特性を持たせることができる。また、充填性誘電体フィラー212は、支持性誘電体フィラー211が片状の熱伝導性フィラー22を支持する効果を強めることができるのみならず、より多くの熱伝経路を形成させることができるため、本発明に係る金属張り積層板1の熱伝導率をさらに高めることができる。具体的に、本発明に係る金属張り積層板1の熱伝導率は1W/Mk~1.5W/Mkも至れる。従来の回路基板での0.3W/mK~0.6W/mKよりも明らかに優れている。
【0037】
なお、支持性誘電体フィラー211(充填性誘電体フィラー212が添加されない)のみを利用すると、フィラーはゆるやかに積み上げていくため、片状の熱伝導性フィラー22の傾斜または立ったままの状態を効果的に支持することはできない上に、本発明に係る金属張り積層板1の平坦性及び熱伝導率に悪い影響がかかっていることは注意されたい。
好ましい実施形態において、支持性誘電体フィラー211の粒子径が30μmから50μmであり、充填性誘電体フィラー212の粒子径が5μmから20μmである。なお、片状の熱伝導性フィラー22の外径は20μm~60μmである。このようにして、粒状の誘電体フィラー21(支持性誘電体フィラー211及び充填性誘電体フィラー212)と、片状の熱伝導性フィラー22とのより緊密に積み上げられて、片状の熱伝導性フィラー22の傾斜または立ったままの状態を維持することができる。そのため、熱圧合ステップを経たとしても、本発明に係る金属張り積層板1は依然として優れた熱伝導率を維持することができる。
【0038】
本実施形態において、前記熱硬化性樹脂組成物の総重量が100重量部であった場合、粒状の誘電体フィラー21の含有量が30重量部から50重量部であり、片状の熱伝導性フィラー22の含有量が5重量部から25重量部である。即ち、粒状の誘電体フィラー21の含有量と片状の熱伝導性フィラー22の含有量との重量比は、1.2~10である。さらに具体的に、前記熱硬化性樹脂組成物の総重量が100重量部であった場合、支持性誘電体フィラー211の含有量は20重量部~40重量部であり、充填性誘電体フィラー212の含有量は10重量部~25重量部である。
【0039】
本発明において、片状の熱伝導性フィラー22は窒化ホウ素(BN)であってもよい。本発明において、粒状の誘電体フィラー21には、シリカ(SiO2)とアルミナ(Al2O3)とがともに含まれ、かつアルミナの含有量がシリカの含有量よりも大きいのが一般的である。
【0040】
本発明にかかる特定の実施形態において、アルミナは、粒状の誘電体フィラー21の30wt%~70wt%を占め、シリカは、粒状の誘電体フィラー21の30wt%~70wt%を占める。好ましくは、アルミナは、粒状の誘電体フィラー21の30wt%以上で50wt%未満を占め、シリカは、粒状の誘電体フィラー21の50wt%から70wt%を占める。なかでも、シリカは溶融系シリカまたは結晶系シリカであってもよい。金属張り積層板1全体的な誘電特性を考えれば、溶融系シリカが好ましい。
【0041】
また、シリカ及びアルミナの添加量は比誘電率の目標値に応じて調整しえることが一般的である。本発明に係る特定の実施形態において、金属張り積層板1の比誘電率は3~8である。好ましくは、金属張り積層板1の比誘電率は3.5~6であるが、本発明はこの例に制限されない。具体的に、比誘電率の目標値が高い場合、より多いアルミナを添加することが好ましい。なお、比誘電率の目標値が低い場合、アルミナの添加量を減らし、シリカで必要なフィラー量を充足してもよい。
【0042】
具体的に、支持性誘電体フィラー211としては、例えば、シリカ、アルミナまたはシリカとアルミナとの混合物が挙げられる。充填性誘電体フィラー212としては、例えば、シリカ、アルミナ、またはシリカとアルミナとの混合物が挙げられる。実施形態好ましい実施形態において、支持性誘電体フィラー211はアルミナとシリカの混合物であり、かつ、支持性誘電体フィラー211において、アルミナとシリカとの重量比が5:5~8:2である。前記充填性誘電体フィラー212はアルミナとシリカの混合物であり、かつ、充填性誘電体フィラー212において、アルミナとシリカとの重量比が2:8~5:5である。
【0043】
また、比誘電率及び熱伝導率の他、金属張り積層板1の誘電正接も重要な評価アイテムである。金属張り積層板1の誘電正接を減らすために、本発明に、純度が99.2%を上回る粒状の誘電体フィラー。及び純度が99.0%を上回る片状の熱伝導性フィラーを使用している。このように、金属張り積層板1の誘電正接を0.002以下にすることができる。
【0044】
技術的用語「純度が99.2%を上回る」とは、粒状の誘電体フィラーにおけるシリカ及びアルミナ以外の不純物の含有量が0.8%未満であることをいう。また、技術的用語「純度が99.0%を上回る」とは、片状の熱伝導性フィラーにおける窒化ホウ素以外の不純物の含有量が1.0%未満であることをいう。本実施形態において、不純物は、例えば、ナトリウム、カルシウム、鉄、マグネシウムの化合物が含まれるが、これらの例に制限されない。
【0045】
金属層30は、熱硬化性樹脂層20に配置され、様々な金属張り積層板1に応じて、数の異なる金属層30を配置するようになる。例えば、熱硬化性樹脂層20の一方面に金属層30を配置することによって、片面金属張り積層板(例えば、
図1に示すように)が得られる。熱硬化性樹脂層20の両相対面のそれぞれに金属層30を配置することによって、両面金属張り積層板(例えば、
図3に示すように)が得られる。
本発明に係る金属張り積層板1の製造方法は、まず、上記実施形態のような補強材10を用意する。本実施形態において、ガラス繊維を持って補強材10として利用され、補強材10に前処理(例えば、表面変性)を行う。
【0046】
そして、熱硬化性樹脂組成物を調製する。熱硬化性樹脂組成物に、上記のように、ポリフェニレンエーテル樹脂、液体ポリブタジエン樹脂、架橋剤、フィラー、及び溶媒が含まれ、フィラー(粒状の誘電体フィラー21及び片状の熱伝導性フィラー22)は、熱硬化性樹脂組成物に均一に分散される。
【0047】
具体的に、熱硬化性樹脂組成物の総重量を100重量部とする場合、熱硬化性樹脂組成物に、支持性誘電体フィラー211の含有量が20重量部~40重量部であり、充填性誘電体フィラー212の含有量が10重量部~25重量部であり、片状の熱伝導性フィラー22の含有量が5重量部~25重量部である。
【0048】
前記前処理された補強材10をフィラー(粒状の誘電体フィラー21及び片状の熱伝導性フィラー22)が分散されている熱硬化性樹脂組成物に含浸させる。含浸が完成した後、熱硬化性樹脂組成物が含浸された補強材10を取り出し、溶媒を除去するために乾燥させてから、補強材10の表面に熱硬化性樹脂層20が形成され、半硬化のプリプレグ(補強材10及び熱硬化性樹脂層20を含む)が得られ、それを実際のニーズに合わせてカットすることも可能である。
【0049】
最後に、前記プリプレグと金属層30とを熱圧合することによって、金属層30をプリプレグに配置させ、乾燥させた後、本発明に係る金属張り積層板1が得られる。なかでも、乾燥後のプリプレグは硬化され、樹脂基板となり、金属張り積層板1は、前記樹脂基板、及び樹脂基板に配置された金属層30を含む。
【0050】
本発明において、粒状の誘電体フィラー21、及び片状の熱伝導性フィラー22の添加によって、誘電特性を制御しながら熱伝導率を高める効果も得られることを証明するために、本発明では、条件が相違となる金属張り積層板1を調製した。各金属張り積層板1の相違点は、主に熱硬化性樹脂層20に含まれるフィラーの粒子径、含有量、及び比率であった。各金属張り積層板1の製造パラメータは下記表1に示されている。また、本発明は、各金属張り積層板1に評価を行った。各金属張り積層板1の評価結果も下記の表1に示されており、評価方法は下記の通りである。
【0051】
(1)熱伝導解析試験:界面材料熱抵抗・熱伝導率測定器(瑞菱科技株式会社、台湾、Model LW-9389)を用いて、ASTM-D5470の試験方法を準拠して熱伝導解析試験を行った。
(2)比誘電率(10GHz):誘電率測定器(Dielectric Analyzer)(型番 HP Agilent E5071C)によって周波数10GHzでの誘電率の測定を行った。
(3)誘電正接(10GHz):誘電体アナライザ(Dielectric Analyzer)(型番 HP Agilent E5071C)によって10GHzでの誘電正接の測定を行った。
(4)剥離強度試験:IPC-TM-650-2.4.8の試験方法を準拠し、銅張り基板の剥離強度を測定した。
【0052】
表1:実験例1~8の金属張り積層板の調製条件、及び評価を示している。なかでも、フィラーの含有量は、熱硬化性樹脂組成物の総重量を基準(100重量部)にしたものである。支持性誘電体フィラーはAl
2O
3及びSiO
2の混合物、充填性誘電体フィラーはAl
2O
3及びSiO
2の混合物、片状の熱伝導性フィラーは窒化ホウ素、Al
2O
3:SiO
2はフィラーにおけるアルミナとシリカとの重量比であった。
【表1】
【0053】
表1の記載から分かるように、本発明は、粒状の誘電体フィラー21、及び片状の熱伝導性フィラー22を利用し、さらに支持性誘電体フィラー211及び充填性誘電体フィラー212の粒子径寸法を制御することによって、前記片状の熱伝導性フィラー22を熱硬化性樹脂層20の厚さ方向に沿って傾斜または立ったままの状態に維持させることができ、このように、金属張り積層板1の熱伝導率を1.0W/mK~2.0W/mKまで高めることができる。より具体的に、金属張り積層板1の熱伝導率は1.0W/mK~1.8W/mKとなった。そのために、既存の技術に対して、本発明は大量な窒化ホウ素を加えなくても、熱伝導率を向上させる効果が得られる。
【0054】
表1に記載の結果から分かるように、本発明は、粒状の誘電体フィラー21と片状の熱伝導性フィラー22との含有率を制御することによって、金属張り積層板1の熱伝導率(1W/mK~2.0W/mK)、及び剥離強度(5.0lb/in~8.0lb/in)を同時に高めることができる。かつ、金属張り積層板1は優れた誘電特性、即ち、適当な比誘電率(3~8)及び誘電正接(0.002未満)を有するため、高周波数伝送領域に適用されることができる。
[実施形態による有益な効果]
【0055】
本発明による有益な効果として、本発明が提供するプリプレグ及び板金属張り積層板1は、「前記熱硬化性樹脂組成物の総重量を100重量部とする場合、前記フィラーの添加量が50重量部~70重量部である」及び「前記フィラーは、粒状の誘電体フィラー21、及び片状の熱伝導性フィラー22を含む」という技術的手段によって、金属張り積層板1の熱伝導率を向上させ、片状の熱伝導性フィラー22の含有量が高すぎることによる金属層30との接着力が足りないという問題から回避することができる。
【0056】
さらに、本発明が提供するプリプレグ及び板金属張り積層板1は、「前記熱硬化性樹脂組成物の総重量を100重量部とする場合、前記粒状の誘電体フィラーの含有量が30重量部から50重量部であり、前記片状の熱伝導性フィラーの含有量が5重量部から25重量部である」或いは「前記支持性誘電体フィラー211の粒子径が30μmから50μmであり、前記充填性誘電体フィラー212の粒子径が5μmから20μmである」という技術的手段によって、前記片状の熱伝導性フィラー22が熱硬化性樹脂層20の厚さ方向に沿って傾斜または直立に立つのを維持し得、金属張り積層板1における厚さ方向の熱伝導率を向上させる効果が求められる。
【0057】
さらに、本発明が提供するプリプレグ及び板金属張り積層板1は、「前記支持性誘電体フィラー211はアルミナとシリカの混合物であり、前記充填性誘電体フィラー212はアルミナとシリカの混合物である」或いは「前記粒状の誘電体フィラー21は30wt%~70wt%のアルミナ、及び30wt%~70wt%のシリカを含む」という技術的手段によって、金属張り積層板1の比誘電率を目標値に向上させるかまたは制御させることができる。
【0058】
さらに、本発明が提供するプリプレグ及び板金属張り積層板1は、「前記粒状の誘電体フィラー21の純度は99.2%を上回って、前記片状の熱伝導性フィラー22の純度は99.0%を上回る。」という技術的手段によって、金属張り積層板1に低誘電正接、及び高熱伝導率を持たせることができる。
【0059】
以上に開示される内容は本発明の好ましい実施可能な実施例に過ぎず、これにより本発明の特許請求の範囲を制限するものではないので、本発明の明細書及び添付図面の内容に基づき為された等価の技術変形は、全て本発明の特許請求の範囲に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0060】
1:金属張り積層板
10:補強材
20:熱硬化性樹脂層
21:粒状の誘電体フィラー
211:支持性誘電体フィラー
212:充填性誘電体フィラー
22:片状の熱伝導性フィラー
30:金属層
X、Y、Z:方向