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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】座席シートおよびシートコア材
(51)【国際特許分類】
   A47C 27/15 20060101AFI20221213BHJP
   A47C 7/18 20060101ALI20221213BHJP
   B29C 39/10 20060101ALI20221213BHJP
   B29C 44/00 20060101ALI20221213BHJP
   B29C 44/12 20060101ALI20221213BHJP
   B29K 105/04 20060101ALN20221213BHJP
   B29L 31/58 20060101ALN20221213BHJP
【FI】
A47C27/15 A
A47C7/18
B29C39/10
B29C44/00 A
B29C44/12
B29K105:04
B29L31:58
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021101162
(22)【出願日】2021-06-17
(62)【分割の表示】P 2017080866の分割
【原出願日】2017-04-14
(65)【公開番号】P2021154144
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2021-07-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100076048
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 喜幾
(74)【代理人】
【識別番号】100141645
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 健司
(72)【発明者】
【氏名】松本 真人
【審査官】松江 雅人
(56)【参考文献】
【文献】特表2000-517210(JP,A)
【文献】実開昭58-175756(JP,U)
【文献】特開2018-175107(JP,A)
【文献】特開2018-068336(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 7/18,27/14-15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡樹脂のクッション材の裏面側に発泡樹脂のシートコア材が一体成形された座席シートであって、
前記シートコア材の裏面において前記クッション材裏面の端縁部と隣接する端縁部より裏面側に突出する凸部が形成されていると共に、当該凸部の形成位置より内側に、当該凸部が突出するシートコア材の裏面の前記端縁部より低くなるよう凹んだ陥凹部が形成されており、
前記凸部の突出端部は、前記陥凹部を挟んで当該凸部の反対側に位置する前記シートコア材の裏面より低い位置に位置するようになっている
ことを特徴とする座席シート。
【請求項2】
発泡樹脂のクッション材の裏面側に発泡樹脂のシートコア材が一体成形された座席シートであって、
前記シートコア材は、前記クッション材を構成する発泡樹脂の単位重量よりも小さい発泡樹脂により形成されており、
前記シートコア材の裏面において前記クッション材裏面の端縁部と隣接する端縁部に、前記クッション材の端縁部から離れるに従って傾斜するテーパー溝となるよう陥凹部が形成されている
ことを特徴とする座席シート。
【請求項3】
発泡樹脂のクッション材の裏面側に発泡樹脂のシートコア材が一体成形された座席シートであって、
前記シートコア材の裏面において前記クッション材裏面の端縁部と隣接する端縁部に、前記クッション材の端縁部から離れるに従って傾斜する断面三角形のテーパー溝となるよう陥凹部が形成されており、
前記テーパー溝は、一方の面が前記クッション材の端縁部から離れるに従って斜めに下降する傾斜面となっており、他方の面は前記シートコア材の裏面に対して垂直になっている
ことを特徴とする座席シート。
【請求項4】
前記クッション材には、座面から前記シートコア材に至るように貫通する貫通部が形成されている請求項1~の何れか一項に記載の座席シート。
【請求項5】
座席シートの発泡樹脂のクッション材に接合される発泡樹脂のシートコア材であって、
当該シートコア材の裏面において前記クッション材裏面の端縁部と隣接する端縁部より裏面側に突出する凸部が形成されていると共に、当該凸部の形成位置より内側に、当該凸部が突出するシートコア材の裏面の前記端縁部より低くなるよう凹んだ陥凹部が形成されており、
前記凸部の突出端部は、前記陥凹部を挟んで当該凸部の反対側に位置する前記シートコア材の裏面より低い位置に位置するようになっている
ことを特徴とするシートコア材。
【請求項6】
座席シートの発泡樹脂のクッション材に接合される発泡樹脂のシートコア材であって、
前記シートコア材の裏面において前記クッション材裏面の端縁部と隣接する端縁部に、前記クッション材の端縁部から離れるに従って傾斜する断面三角形のテーパー溝となるよう陥凹部が形成されており、
前記テーパー溝は、一方の面が前記クッション材の端縁部から離れるに従って斜めに下降する傾斜面となっており、他方の面は前記シートコア材の裏面に対して垂直になっている
ことを特徴とするシートコア材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、第1の発泡樹脂からなる座席シート用のクッション材に接合される第2の発泡樹脂からなるシートコア材と、前記座席シートを製造する方法とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図8に示すように、例えば車両用の座席10は、乗員が腰掛ける座席シート12と、乗員が背中をもたせ掛けるシートバック15とからなる。なお、図8の車両用座席10は、化粧用の表皮シートを装着する前の状態で示してあるので、前記座席シート12およびシートバック15はウレタン等の発泡樹脂で成形したパッド自体が露出状態になっている。そして本発明は、前記座席シート12のシートコア材に関するものである。また、明細書では車両用の座席シート12に特定して説明するが、本発明は車両用に限定されるものでなく、広く民生用座席のシートにも適用されるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平9-70330号公報
【文献】特開2010-259535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば車両用の座席シート(シートパッド)12は、ウレタン等の発泡樹脂を成形した弾力性を有する素材で構成されている。しかし車両軽量化の要請に応えて、発泡樹脂基材からなるクッション材(以下、第1基材ともいう)よりも軽量な発泡樹脂基材からなるシートコア材(以下、第2基材ともいう)を該第1基材に接着等の手段で接合して一体化する傾向が増加している。ここで第1基材としては、例えば発泡ウレタンパッドが採用され、また第2基材としてはビーズ発泡体のEPP(発泡ポリプロピレン)や同じくビーズ発泡体のポリスチレンフォーム(発泡スチロール)等が採用されている。図9は、車両後ろの座席シート12を反転して裏側を上にした状態を示す斜視図であって、該座席シート12における略全体の部分をなして乗員が腰掛ける部位を第1基材14が占め、該第1基材14の裏側の必要個所に軽量の第2基材16が接合されることで、シートパッド全体の軽量化を達成している。なお、座席シート12を車両のフレーム等(図示せず)に取り付けるには、前記第2基材16に埋設した金具等を介して前記フレーム等に装着するようになっている。
【0005】
前述の第1基材14に第2基材16を接合した車両用座席シート12を製造するには、図10に概略的に示す発泡型18を使用する。すなわち図10の発泡型18は、前記第1基材14を成形する下型20と、該下型20に開閉自在に枢着した上型22とから構成され、前記上型22のキャビティ面22aに別の発泡型で所定形状に成形した第2基材16がセットされる。次いで、前記下型20のキャビティ面20aに第1基材14の原料となるウレタン発泡樹脂原料が供給され、該下型20に対し前記上型22を閉じて型締めすることで、前記ウレタン発泡樹脂原料が発泡して第1基材14になり、これが前記第2基材16と接着することで前記座席シート12が一体成形される。このように座席シート12は発泡型18で成形されるが、図10に示すように、上型22に予めセットした第2基材16の端縁部16aの高さと、該発泡型18で後から発泡成形される第1基材14の端縁部14aの高さとの面位置が一致している場合、図11に示す不都合を生ずることがある。すなわち、発泡型18内で発泡して上昇するウレタン発泡樹脂原料が、該発泡型18における上型22と、例えば発泡ポリプロピレンからなる第2基材16との僅かな隙間に侵入して、該第2基材16の裏面にウレタン発泡樹脂の薄い膜が展延して固化してしまう。
【0006】
このように、座席シート12における第2基材16の裏面に、ウレタン発泡樹脂の薄膜が広がって固化していると、前述した如く車両へ座席シート12を取り付ける際に、該第2基材16は車両床面のフレームに該ウレタン薄膜を介して接触するため、乗員の着座時や車両走行時にウレタン薄膜とフレームとが擦れ合って不快な異音を生じてしまう。この異音発生を防止するため、第2基材16の裏面に広がったウレタン薄膜の部位に不織布テープを貼る対策が採られるが、これは工程上の手間になる。また、座席シート12の成形後に、前記ウレタン薄膜を第2基材16から剥離することも行われるが、同じく無駄な手間が掛かってしまう。そこで、発泡型18による座席シート12の成形時にウレタン薄膜が第2基材16の裏面へ侵入しないように、前記上型22に第2基材16(発泡ポリプロピレン)をぴったりと合わせる必要がある。しかし、第2基材16も型成形品なので成形収縮や変形等を起こしやすく、このため第2基材16が上型型面から浮き上がってしまい金型型面との間に隙間が発生するのを防ぐことが難しい。
【0007】
本発明は、第1基材であるクッション材に第2基材であるシートコア材を接合した座席シートを成形する際に、クッション材を構成する発泡樹脂がシートコア材の裏側にリークして該シートコア材の裏面に樹脂薄膜が形成されるのを未然に防止して、該樹脂薄膜に起因する異音の発生をなくすると共に、後工程で樹脂薄膜を除去する無用の手間もなくするようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決し、所期の目的を達成するため第1の発明は、
座席シートの発泡樹脂のクッション材に接合される発泡樹脂のシートコア材であって、
前記クッション材裏面の端縁部と隣接する前記シートコア材の端縁部で、かつ該クッション材を構成する発泡樹脂が侵入するのを不可とする領域の外側に上型との当接予定領域を構成し、
前記侵入不可領域と前記当接予定領域との間に該侵入不可領域および当接予定領域よりも低い陥凹部が形成されていることを要旨とする。
この発明によれば、発泡型でクッション材となるべき発泡樹脂原料を発泡させた際に、その発泡樹脂原料が発泡してキャビティ内で成長し、シートコア材と発泡型との隙間から圧力下に侵入しても、その発泡樹脂原料の侵入はシートコア材に設けた陥凹部により阻止される。また、シートコア材の当接予定領域は上型に当接しているので、発泡型での発泡樹脂原料が侵入するのを一次的に防ぐことができる。なお、発泡樹脂原料の発泡圧が高い場合は、発泡樹脂原料が侵入してしまうことはあり得るが、この侵入した発泡樹脂原料は前記陥凹部に回収されるため更に広がることがない。
【0009】
第2の発明では、前記シートコア材の端縁部であって、前記当接予定領域と前記陥凹部としての溝部との間に凸部が形成されていることを要旨とする。
この発明によれば、当接予定領域から侵入した発泡樹脂原料は凸部により阻止することができる。
【0010】
第3の発明では、前記発泡樹脂の侵入不可領域は、前記シートコア材の端縁部で、かつ前記陥凹部としての溝部を挟んで前記クッション材の端縁部と反対側に存在することを要旨とする。
【0011】
第4の発明では、前記陥凹部は、前記シートコア材の端縁部に形成され、前記クッション材の端縁部から離れるに従って傾斜するテーパー溝であることを要旨とする。
この発明によれば、発泡型でクッション材となるべき発泡樹脂原料を発泡させた際に、その発泡樹脂原料が発泡してキャビティ内で成長し、シートコア材と発泡型との隙間から圧力下に侵入しても、侵入した発泡樹脂原料はテーパー溝に回収されて更に広がることがない。
【0012】
第5の発明では、前記発泡樹脂の侵入不可領域は、前記シートコア材の端縁部で、かつ前記陥凹部を挟んで前記クッション材の端縁部と反対側に存在することを要旨とする。
【0013】
前記課題を解決し、所期の目的を達成するため第6の発明は、
発泡樹脂のシートコア材を発泡樹脂のクッション材に接合した座席シートを製造する方法において、
発泡樹脂の侵入不可領域の外側に形成した上型との当接予定領域と、前記侵入不可領域および前記当接予定領域の間に設けられて該侵入不可領域および該当接予定領域よりも低くなっている陥凹部とを裏面の端縁部に備えたシートコア材を発泡型の上型にセットして、該シートコア材の前記陥凹部を前記上型に指向させる工程と、
前記発泡型の下型に供給した発泡樹脂原料を型締め後に発泡させて前記クッション材を成形することで、クッション材の端縁部が前記シートコア材の端縁部に隣接して接合されている座席シートを成形する工程とからなることを要旨とする。
この発明によれば、発泡型でクッション材となるべき発泡樹脂原料を発泡させた際に、その発泡樹脂原料が発泡してキャビティ内で成長し、シートコア材と発泡型との隙間から圧力下に陥凹部へ侵入しても、発泡樹脂原料の更なる侵入は該陥凹部により阻止される。
【0014】
第7の発明では、前記発泡型の上型に下向きに突出する突条部が設けられ、前記シートコア材を該上型にセットした際に前記突条部は、該シートコア材に形成した当接予定領域に当接するようになっていることを要旨とする。
この発明によれば、発泡型を閉じることで突条部がシートコア材の当接予定領域に接触するので、高い発泡圧を伴って発泡樹脂原料が侵入しても、前記当接予定領域への侵入を一次的に防ぐことができる。
【0015】
第8の発明では、前記発泡型の上型に下向きに突出する仕切り片が設けられ、前記シートコア材を該上型にセットした際に、前記仕切り片は該シートコア材に形成した前記陥凹部としてのテーパー溝へ侵入して、該テーパー溝の壁面に当接するようになっていることを要旨とする。
この発明によれば、発泡型の上型にシートコア材をセットした際に、該上型の仕切り片がシートコア材のテーパー溝の壁部に当接して発泡樹脂の更なる侵入を阻止し得る。
【0016】
第9の発明では、前記発泡型の下型に設けた支持部が該発泡型の上型に向けて突出し、前記シートコア材を上型にセットしてから該発泡型を閉じることで、前記支持部が該シートコア材を該上型に対して強制的に押圧するようになっていることを要旨とする。
この発明によれば、発泡型における下型に対し上型を閉じた際に、該上型に予めセットしたシートコア材を支持部がバックアップするので、発泡型の内部で発泡樹脂原料が発泡しても、発泡圧によりシートコア材が上型に対し変位したり暴れたりすることがない。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、クッション材にシートコア材を接合して座席シートを一体成形する際に、該シートコア材に陥凹部が形成してあるため、クッション材を構成する発泡樹脂がシートコア材の裏面側にリークして発泡樹脂の侵入不可領域に発泡樹脂薄膜が広がって固化することがない。このため、発泡樹脂薄膜がシートコア材に広がって固化していることに起因する異音の発生や、該発泡樹脂の薄膜を除去するための無用の手間等が省かれる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】(a)はシートコア材をセットした上型を下型に型閉じし、内部でクッション材になるべき発泡樹脂原料を発泡させて座席シートを成形している状態を示す発泡型の縦断面図であって、シートコア材の端縁部に陥凹部および凸部が形成されている状態を示す。(b)はシートコア材の端縁部の拡大図である。
図2図1(a)を拡大した縦断面図であって、クッション材となる発泡樹脂の一部が上型のキャビティ面とシートコア材の端縁部との隙間に侵入している状態を示している。
図3】(a)は実施例2に係る発泡型の縦断面図であり、(b)は図3(a)の円形で囲んだ部分の拡大図である。
図4】実施例2に係るシートコア材の縦断面図である。
図5】上型にセットしたシートコア材の拡大縦断面図であって、上型に設けた仕切り片がシートコア材のテーパー溝に臨んでいる。
図6】(a)は上型のキャビティ面とシートコア材の端縁部との間に隙間が保持されている状態を示す断面図であり、(b)は上型のキャビティ面とシートコア材の端縁部との間に隙間が形成されていない状態を示す断面図である。
図7】(a)は実施例2の座席シートを成形する発泡型の縦断面図であり、(b)は図7(a)の円形で囲んだ部分の拡大図である。
図8】座席シートとシートバックとを備える車両用座席の概略斜視図であって、化粧用の表皮シートは取り去ってある。
図9】座席シートを裏返した状態での斜視図であって、座席シートの基体をなすクッション材に軽量化のためのシートコア材が接合された状態を示している。
図10】シートコア材をセットした上型により下型を閉じ、内部でクッション材になるべき発泡樹脂原料を発泡させて座席シートを成形している状態を示す発泡型の縦断面図であって、クッション材の端縁部とシートコア材の端縁部とは同じ高さで隣接している。
図11図10に示す発泡型において、クッション材になるべき発泡樹脂原料の一部が上型とシートコア材との隙間に侵入して、シートコア材の裏側の端縁部における発泡樹脂の侵入不可領域まで発泡樹脂薄膜が広がっている状態を説明した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明に係るシートコア材および座席シートの製造方法の好適な実施例について、図面を参照しながら以下に説明する。実施例に係る座席シートの基体的な構成は、図8図11で説明した通りであるから、既出の部材については同一の符号を付して説明を省略する。なお、第2基材16の端縁部16aについて「外方」とは、図1(b)において左側を指し、また「内方」とは右側を指すものとする。また、前述した如く、座席シート12の「クッション材」を第1基材14と表記し、「シートコア材」を第2基材16と表記する。更に、車両用の座席シートを実施例として説明するが、本発明に係る座席シートのシートコア材および座席シートの製造方法は車両搭載に限られるものではなく、家庭用や事務用等の民生用途に広く適用し得るものである。
【実施例1】
【0020】
実施例1に係る座席シート12は、例えばウレタン発泡樹脂を素材とし該座席シート12の基体をなす第1基材14と、この第1基材14の裏面の適所に接合した例えばビーズ成形の発泡ポリプロピレン(EPP)の第2基材16とからなる。この場合、前記第2基材16を構成する発泡ポリプロピレンの単位重量は、前記第1基材14を構成するウレタン発泡樹脂の単位重量よりも小さいものが選定使用される。図1(a)は、図10と同様に発泡型18で座席シート12の発泡成形が完了した状態を示すもので、上型22にセットした第2基材16と第1基材14とが接合している。この状態で、座席シート12の裏面において図1(b)に拡大して示すように、前記第1基材14に隣接している第2基材16における端縁部16aの開放端(外方)には、該第1基材14の端縁部14aの高さよりも低くなった領域24が該端縁部16aに沿って延設されている。この領域24は、上型22のキャビティ面22aに突設した突条部28(後述)に密着的に当接する部位であるので、上型22との「当接予定領域」と以下称する。また、第2基材16の端縁部16aであって、かつ当接予定領域24を挟んで内側、すなわち前記第1基材14の端縁部14aと反対側の位置に所用高さの凸部26が突出形成されている。なお、当接予定領域24および凸部26は、第2基材16における端縁部16aの全周囲に亘って設けることは要件でなく、第1基材14になるウレタン発泡樹脂が第2基材16の裏側でリークするのが好ましくない部位にだけ配置するようにしても良い。
【0021】
前記上型22を下型20に対し閉じた際に、該上型22が第2基材16の当接予定領域24に対応する部位には、図1(b)および図2に示す如く、突条部28が下方へ突出形成されている。このため、型締め時に前記突条部28は当接予定領域24に侵入して、その底面に接触するようになっている。また、図1(b)および図2から判明するように、第2基材16に設けた前記凸部26は上型22のキャビティ面22aには到達せず、僅かな隙間を保持し得るように寸法設定してある。更に、前記第2基材16の端縁部16aであって、かつ前記凸部26を挟んだ内側、すなわち前記第1基材14の端縁部14aと反対側の位置に所用深さの溝部(陥凹部)30が凹設されて、該凸部26に沿って延在している。この溝部(陥凹部)30は、前記シートコア材(第2基材)16を前記上型22にセットした際に、該上型22のキャビティ面22aとの間で空間を画成するためのものである。また、図1(b)に示すように、前記第2基材16の端縁部16aであって、前記溝部30を挟んだ内側、すなわち前記第1基材14の端縁部14aの反対側には、該第1基材14を構成するウレタン発泡樹脂が侵入して広がるのを不可とするウレタン侵入不可領域32が広がっている。そして、前記溝部(陥凹部)30は、このウレタン侵入不可領域32および当接予定領域24より低くなるよう形成されている。このウレタン侵入不可領域32とは、座席シート12のシートコア材(第2基材)16において、先に説明したように、座席シート12を車両床面のフレーム等に取り付ける場合に、第2基材16が該フレーム等に直接当接する部位や、後工程で表皮シートを座席シート12に外掛けする際の係止具(図示せず)を装着する溝穴が存在する領域をいう。例えば、ウレタン侵入不可領域32に前記溝穴が凹設されている場合、仮にウレタン発泡樹脂がリークして該溝穴に溜まって固化すると、この固化したウレタン発泡樹脂を溝穴から取り出す手間を要してしまうので、この領域32へのウレタン発泡樹脂の侵入を不可としておく必要がある。
【0022】
図2に示すように、前記発泡型18における下型20のキャビティ面20aには、例えば断面が台形をなす支持部34が設けられ、前記上型22に向けて突出している。前記支持部34の突出高さは、第2基材16をセットした上型22を下型20に型締めした際に、該支持部34の先端が第2基材16に当接して、該第2基材16を上型22へ強制的に押し付け得る寸法に設定してある。
【0023】
殊に図1(b)に示す如く、第2基材16の端縁部16aに前記当接予定領域24および凸部26を形成したことにより、前記発泡型18で第1基材14を発泡成形する際に、該第1基材14の原料となるウレタン発泡樹脂が第2基材16のウレタン侵入不可領域32へ侵入して残留することがない。すなわち、発泡型18による座席シート12の成形は、後述する実施例1の製造方法において説明する如くであって、例えば図2に示すように、上型22を下型20に対し型締めし、上型22にセットした第2基材16と下型20との間に画成されるキャビティでウレタン発泡樹脂原料を発泡させる。すると前記キャビティで発泡したウレタン発泡樹脂原料は次第に成長して上昇し、図2に示す上型22のキャビティ面22aにまで到達する。発泡中のウレタン発泡樹脂原料は圧力を伴っているため、上型22の前記突条部28と第2基材16の当接予定領域24との当接面へ強引に侵入しようとするが、ここは両部材24,28が密着しているので侵入が一次的に阻まれる。しかし、発泡時の圧力が高い場合は、ウレタン発泡樹脂原料は当接予定領域24と突条部28との隙間から侵入し、更に前記凸部26を乗り越えることもあり得る。このとき前記凸部26を乗り越えたウレタン発泡樹脂原料は、隣接して設けた前記溝部30で回収(トラップ)される。このため、ウレタン発泡樹脂原料が第2基材16の端縁部16aに位置するウレタン侵入不可領域32へ到達することはない。なお、ウレタン侵入不可領域32は、先に述べたように、座席シート12を車両の床面に取り付ける際にフレーム等と直に接触する部位であるから、該ウレタン侵入不可領域32にウレタン発泡樹脂の薄膜が存在しないことで、着座時や走行時に異音を発生することが防止される。また、ウレタン侵入不可領域32は、前述した如く、表皮シートを座席シート12に上掛けする際の取付具を装着する溝穴が凹設される場所でもあるので、ウレタン発泡樹脂が侵入しないことで該溝穴にウレタン発泡樹脂が溜まって固化することがない。従って、前記溝穴から固まったウレタン発泡樹脂を穿り出す後手間を要しなくなる。
【0024】
更に、上型22にセットした第2基材16は、図2に関して説明したように、下型20から上方へ突出している前記支持部34によりバックアップされているので、発泡型18内での発泡成形時にも、第2基材16が上型22から変位したり暴れたりすることがない。この場合、発泡成形された第1基材14には、脱型後に前記支持部34の抜け跡が陥凹溝になって残留する。この抜け跡としての陥凹溝は、座席シート12に表皮シートを被覆する際に使用されるホグリング部材(図示せず)を挿入する部位としても活用可能である。
【実施例2】
【0025】
図3は、本発明に係る座席シート12の実施例2を示すもので、上型22のキャビティ面22aに第2基材16をセットした状態の縦断面図である。また、前記座席シート12が、ウレタン発泡樹脂の第1基材14に発泡ポリプロピレン(EPP)の第2基材16を接合した構造である点で、実施例1の座席シート12と共通している。実施例2の座席シート12では、殊に図3(b)に拡大して示すように、第2基材16の端縁部16aには、第1基材14の端縁部14aから離れるに従って斜めに下降する断面三角形のテーパー溝(陥凹部)36が形成され、該テーパー溝36は端縁部16aに沿って延在している。このテーパー溝(陥凹部)36は、前記シートコア材(第2基材)16を前記上型22にセットした際に、該上型22のキャビティ面22aとの間で空間を画成するためのものである。また、図3および図4に示すように、第2基材16における前記テーパー溝36の形成箇所に隣接した端縁部16aで、かつ第1基材14の端縁部14aとは反対側に、先に説明したウレタン侵入不可領域32が存在している。更に、図5に示す如く、発泡型18における上型22のキャビティ面22aには、該上型22を下型20に向け閉じて型締めした際に、第2基材16の前記テーパー溝36の縦壁に当接して、該テーパー溝36へ侵入したウレタン発泡樹脂がウレタン侵入不可領域32へ広がるのを阻止する仕切り片38が下向きに設けられている。なお、第2基材16の開放端よりの端縁部16aと、該第2基材16がセットされる上型22との位置関係は、図6(a)に示すように、僅かな隙間が保持されるようにしても、図6(b)に示すように、相互に密着させるようにしても良い。但し、第1基材14となるウレタン発泡樹脂がテーパー溝36へ侵入するのを一次的に阻止する観点からは、図6(b)の構成が好ましい。
【0026】
このように実施例2の発明では、第2基材16の端縁部16aにテーパー溝36を形成したことによって、発泡型18で第1基材14となるべきウレタン発泡樹脂原料を発泡させても、そのウレタン発泡樹脂原料が第2基材16のウレタン侵入不可領域32へ侵入して残留することがない。すなわち、例えば図7(a)に示すように、上型22に第2基材16をセットした後に、下型20のキャビティ面20aへ第1基材14となるべきウレタン発泡樹脂原料を供給し、次いで上型22を下型20に型閉じすると、該キャビティ中でウレタン発泡樹脂原料が発泡を開始する。前記キャビティで発泡したウレタン発泡樹脂原料は成長して上昇し、図7(b)の拡大図に示す如く、前記上型22のキャビティ面22aに到達する。この場合、図6(a)に示すように、上型22と第2基材16の端縁部16aとに若干の隙間がある場合は、上型22のキャビティ面22aに到達したウレタン発泡樹脂原料は圧力下に前記隙間から内部へ侵入する。しかし、侵入したウレタン発泡樹脂原料は前記テーパー溝36に回収され、そこで滞留した後に固化するに到る。従って、一旦は侵入したウレタン発泡樹脂原料も、テーパー溝36内でトラップされて侵入が阻止され、従って第2基材16における端縁部16aの内側に存在するウレタン侵入不可領域32へのウレタン侵入は確実に阻止される。
【0027】
また、図6(b)に示すように、上型22のキャビティ面22aと第2基材16の端縁部16aとを密着的に当接させた場合は、発泡型18で発泡して成長するウレタン発泡樹脂原料が内部へ侵入し難い利点がある。しかし、ウレタン発泡樹脂原料の発泡圧が高い場合は、上型22と第2基材16の端縁部16aとの当接部へ強制的にウレタン発泡樹脂原料が侵入して来るが、このときも最終的には前記テーパー溝36に滞留して固化する。従って、第2基材16の前記ウレタン侵入不可領域32へウレタン発泡樹脂原料が侵入するのが未然に防止される。なお、前記テーパー溝36へ発泡したウレタン発泡樹脂原料が侵入して滞留するとき、このウレタン発泡樹脂原料は、第2基材16の開放端側端縁部(当接予定領域24)と上型22のキャビティ面22aとの狭い隙間を通過するので、該隙間の通過時に粘度が上昇すると共に該隙間を通過後に流速が落ちるため、該ウレタン発泡樹脂原料はテーパー溝36を充満させてしまうことはない。また、図7(b)に拡大して示すように、上型22のキャビティ面22aで、第1基材14の端縁部14aおよび第2基材16の当接予定領域24と対応する部位は、緩やかな上り勾配(図7(b)において右方向へ緩傾斜)を付してある。このように上型22のキャビティ面22aに上り勾配を付した理由は、次の通りである。すなわち、第1基材14となるウレタン発泡樹脂が第2基材16に形成したテーパー溝36と対応する上型22には前記上り勾配を付してあるために、該テーパー溝36で形成される空間が大きくできる。このため、テーパー溝36で滞留したウレタン発泡樹脂がウレタン侵入不可領域32まで侵入するのを防ぐことができる。
【0028】
なお、第1基材14から第2基材16の当接予定領域24(実施例1)やテーパー溝36(実施例2)へウレタン発泡樹脂原料が侵入して固化した部分は、第2基材16に対しアンカーとして機能し、両部材14,16が剥離するのを防ぐ効果がある。
【0029】
(実施例1の製造方法)
次に、実施例1に係る座席シートの製造方法について説明する。最初に、図示しない別の発泡型を使用して前記第2基材16を発泡成形する。この発泡型のキャビティは、図1に示す当接予定領域24、凸部26および溝部30を成形する型形状を有しているので、該発泡型に、例えば発泡ポリプロピレン(EPP)のビーズ原料を供給して発泡させることにより前記第2基材16が得られる。得られた第2基材16は、図1に示す如く、裏側の端縁部16aとなる部位に当接予定領域24が設けられていると共に、該当接予定領域24よりも内側に凸部26が設けられ、更に前記凸部26の内側に前記溝部30が形成されている。
【0030】
このように、別の発泡型で予め必要な形状を付与した第2基材16を発泡成形した後に、この第2基材16を、図1に示すように、発泡型18における上型22のキャビティ面22aにセットして、該第2基材16に設けられている前記当接予定領域24、凸部26および溝部30を該上型22に指向させる。次いで、発泡型18の下型20に前記第1基材14になるべき発泡樹脂原料、例えばウレタン発泡樹脂原料を供給し型締めして発泡させる。所定のキュアリングタイムを経た後に発泡型18を開放して脱型することで、第1基材14の裏側の端縁部14aとなる部位を前記第2基材16の端縁部16aに隣接させた状態で、第2基材16が第1基材14に接合された座席シートが成形される。この発泡形成中に、ウレタン発泡樹脂原料が第2基材16における端縁部16aのウレタン侵入不可領域32へ侵入するのが、前記当接予定領域24、凸部26および溝部30により有効に阻止されることは、前述した通りである。
【0031】
(実施例2の製造方法)
次に、実施例2に係る座席シートの製造方法について説明する。実施例1の製造方法に関し述べたように、図示しない別の発泡型を使用して前記第2基材16を発泡成形する。この発泡型のキャビティは、図3(b)に示すテーパー溝36を成形する型形状を有しているので、該発泡型に、例えば発泡ポリプロピレン(EPP)のビーズ原料を供給して発泡させることにより第2基材16が得られる。得られた第2基材16は、図3(b)および図4に示す如く、端縁部16aとなる部位に前記テーパー溝36が設けられている。また、前記テーパー溝36の更に内側には、前記ウレタン侵入不可領域32が存在している。そして、テーパー溝36も前記ウレタン侵入不可領域32および当接予定領域24より低くなっている。
【0032】
このように、別の発泡型で予め必要な形状を付与した第2基材16を発泡成形した後に、この第2基材16を、図3(a)に示すように、発泡型18における上型22のキャビティ面22aにセットして、該第2基材16に設けられている前記テーパー溝36を該上型22に指向させる。次いで、発泡型18の下型20に第1基材14になるべき発泡樹脂原料、例えばウレタン発泡樹脂原料を供給し型締めして発泡させる。所定のキュアリングタイムを経た後に発泡型18を開放して脱型することで、第1基材14の端縁部14aとなる部位を前記第2基材16の端縁部16aに隣接させた状態で、第2基材16が第1基材14に接合された座席シートが成形される。この発泡形成中に、ウレタン発泡樹脂原料が第2基材16における端縁部16aのウレタン侵入不可領域32へ侵入する不都合が、前記テーパー溝36により阻止されることは、前述した通りである。
【符号の説明】
【0033】
12 座席シート(シートパッド),14 クッション材(第1基材),14a 端縁部,
16 シートコア材(第2基材),16a 端縁部,18 発泡型,20 下型,
22 上型,24 当接予定領域,26 凸部,28 突条部,30 溝部(陥凹部),
32 侵入不可領域,34 支持部,36 テーパー溝(陥凹部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11