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特許7193583移動端末試験システム及び移動端末試験方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】移動端末試験システム及び移動端末試験方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 17/15 20150101AFI20221213BHJP
   H04B 17/29 20150101ALI20221213BHJP
   H04Q 1/20 20060101ALI20221213BHJP
   H04M 3/26 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
H04B17/15
H04B17/29
H04Q1/20
H04M3/26 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021104533
(22)【出願日】2021-06-24
【審査請求日】2021-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000000572
【氏名又は名称】アンリツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003694
【氏名又は名称】弁理士法人有我国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金子 明誉
(72)【発明者】
【氏名】横堀 邦幸
【審査官】佐藤 敬介
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-152753(JP,A)
【文献】特開2011-199719(JP,A)
【文献】特開2013-012924(JP,A)
【文献】特開2003-283443(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 17/15
H04B 17/29
H04Q 1/20
H04M 3/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3GPP規格で規定されたテストケースの1以上の試験を移動端末(100)に対して実行する移動端末試験システム(1)であって、
前記移動端末にDL信号を送信する制御を行うDL制御部(22a)と、前記移動端末から送信されるUL信号を検出するUL検出部(22b)とを含み、前記テストケースの試験の測定を測定装置(10)に実行させる試験実行制御部(22)と、
前記UL検出部により所望の信号が検出されたか否かを判断する第1判断部(24b)と、
前記テストケースの試験が終了したか否かを判断する第2判断部(24c)と、
前記第1判断部が、前記UL検出部により所望の信号が検出されなかったと判断した場合に、前記テストケースの試験が正常に行われていない旨を表示する表示部(31)と、を備え
前記DL制御部は、前記第2判断部が前記テストケースの試験が終了したと判断した場合に、前記移動端末からUL信号を送信させるためのDL信号を送信する制御を行うことを特徴とする移動端末試験システム。
【請求項2】
前記試験実行制御部は、前記第1判断部が、前記UL検出部により所望の信号が検出されなかったと判断した場合に、前記テストケースの実行中の試験を前記測定装置に再実行させることを特徴とする請求項1に記載の移動端末試験システム。
【請求項3】
前記試験実行制御部は、前記テストケースの試験の再実行回数が所定値に達した場合に、再実行回数が所定値に達した試験の再実行を停止することを特徴とする請求項2に記載の移動端末試験システム。
【請求項4】
3GPP規格で規定されたテストケースの1以上の試験を移動端末(100)に対して実行する移動端末試験方法であって、
前記移動端末にDL信号を送信する制御を行うDL制御ステップと、前記移動端末から送信されるUL信号を検出するUL検出ステップとを含み、前記テストケースの試験の測定を測定装置(10)に実行させる試験実行制御ステップ(S14)と、
前記UL検出ステップにより所望の信号が検出されたか否かを判断する第1判断ステップ(S32,S36)と、
前記テストケースの試験が終了したか否かを判断する第2判断ステップ(S34)と、
前記第1判断ステップが、前記UL検出ステップにより所望の信号が検出されなかったと判断した場合に、前記テストケースの試験が正常に行われていない旨を表示する表示ステップ(S38)と、を含み、
前記DL制御ステップは、前記第2判断ステップが前記テストケースの試験が終了したと判断した場合に、前記移動端末からUL信号を送信させるためのDL信号を送信する制御を行うことを特徴とする移動端末試験方法。
【請求項5】
前記試験実行制御ステップは、前記第1判断ステップが、前記UL検出ステップにより所望の信号が検出されなかったと判断した場合に、前記テストケースの実行中の試験を前記測定装置に再実行させることを特徴とする請求項4に記載の移動端末試験方法。
【請求項6】
前記試験実行制御ステップは、前記テストケースの試験の再実行回数が所定値に達した場合に、再実行回数が所定値に達した試験の再実行を停止することを特徴とする請求項5に記載の移動端末試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動端末試験システム及び移動端末試験方法に関し、特に、移動端末の3GPP規格に準拠したコンフォーマンステストを実行する移動端末試験システム及び移動端末試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各国でミリ波帯の周波数を運用する5Gのサービスが開始され、5Gスマートフォンなどの5G用移動端末の生産が本格化している。5G用移動端末の設計開発会社又はその製造工場においては、5G用移動端末が備えている無線通信アンテナを介して送信電波の出力レベルや受信感度を測定し、5G用移動端末が所定の基準を満たしているか否かを判定する性能試験が行われる。
【0003】
このような性能試験の中には、移動端末や基地局装置が3GPP(3rd Generation Partnership Project)規格に準拠しているか否かを確認するコンフォーマンステストがある。コンフォーマンステストでは、試験目的、合否判定基準、試験条件、Test IDで識別される試験項目、及び試験手順が定義されたテストケース(Test Case:TC)が実行される。
【0004】
特許文献1には、1つの移動端末の機能・性能等に応じたテストケースに対応して、各種試験装置を制御して試験を実施する試験システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-199719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
3GPP規格に準拠したコンフォーマンステストでは、テストケースの試験項目ごとの合否判定基準として、合格(PASS)判定基準と、試験項目によっては不合格(FAIL)判定基準が定められている。しかしながら、PASS判定基準及びFAIL判定基準を偶然満たす測定結果(不正な判定)や、これらの判定基準では判断できない測定結果(判定の失敗)が得られる可能性がある。
【0007】
例えば、図6に示すように、あるテストケースのPASS判定基準が、移動端末の出力パワーが所定の上限値以下であればよいと定められていた場合には、移動端末から信号が出力されていなくても(すなわち、出力パワーがゼロであっても)PASS判定基準を満たしてしまい、不正な判定が得られることになる。また、例えば、試験手順上で本来存在しないはずのPRACH(Physical Random Access CHannel)等の情報を含むUL信号が発生している状態で試験判定を行おうとする場合は、意図しない結果が得られる可能性が不正な判定になる可能性より高く、判定の失敗となる。
【0008】
従来の試験システムは、上述のような不正な判定や判定の失敗を検知できないという問題があった。
【0009】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであって、3GPP規格のコンフォーマンステストの要件を満たしつつ、試験結果の信頼性を向上させることができる移動端末試験システム及び移動端末試験方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係る移動端末試験システムは、3GPP規格で規定されたテストケースの1以上の試験を移動端末に対して実行する移動端末試験システムであって、前記移動端末にDL信号を送信する制御を行うDL制御部と、前記移動端末から送信されるUL信号を検出するUL検出部とを含み、前記テストケースの試験の測定を測定装置に実行させる試験実行制御部と、前記UL検出部により所望の信号が検出されたか否かを判断する第1判断部と、前記テストケースの試験が終了したか否かを判断する第2判断部と、前記第1判断部が、前記UL検出部により所望の信号が検出されなかったと判断した場合に、前記テストケースの試験が正常に行われていない旨を表示する表示部と、を備え、前記DL制御部は、前記第2判断部が前記テストケースの試験が終了したと判断した場合に、前記移動端末からUL信号を送信させるためのDL信号を送信する制御を行う構成である。
【0011】
この構成により、本発明に係る移動端末試験システムは、移動端末の端末状態を示す情報を含むUL信号が所望の信号であるか否かを判断することにより、3GPP規格に準拠したテストケースの試験が正常に行われているか否かを検知することができる。これにより、本発明に係る移動端末試験システムは、3GPP規格のコンフォーマンステストの要件を満たしつつ、試験結果の信頼性を向上させることができる。
また、この構成により、本発明に係る移動端末試験システムは、テストケースの試験が終了したと判断した場合に、移動端末からUL信号を送信させるためのDL信号を送信するようになっている。これにより、本発明に係る移動端末試験システムは、試験の終了時に移動端末が正常に動作しているか否かを確認することにより、得られた試験結果が適切であるか否かを判断することができる。
【0012】
また、本発明に係る移動端末試験システムにおいては、前記試験実行制御部は、前記第1判断部が、前記UL検出部により所望の信号が検出されなかったと判断した場合に、前記テストケースの実行中の試験を前記測定装置に再実行させる構成であってもよい。
【0013】
この構成により、本発明に係る移動端末試験システムは、移動端末の端末状態を示す情報を含むUL信号が所望の信号ではなかった場合に、テストケースの実行中の試験を測定装置に再実行させるようになっている。これにより、本発明に係る移動端末試験システムは、移動端末の端末状態の異常を早期に検知し、適切でない可能性が高い試験結果が得られた試験を再実行することができる。
【0014】
また、本発明に係る移動端末試験システムにおいては、前記試験実行制御部は、前記テストケースの試験の再実行回数が所定値に達した場合に、再実行回数が所定値に達した試験の再実行を停止する構成であってもよい。
【0015】
この構成により、本発明に係る移動端末試験システムは、テストケースの試験の再実行回数が所定値に達した場合に、再実行回数が所定値に達した試験の再実行を停止するようになっている。これにより、本発明に係る移動端末試験システムは、適切でない可能性が高い試験結果が連続して得られた試験をスキップして、他の試験を実行することにより、試験時間を短縮することができる。
【0018】
また、本発明に係る移動端末試験方法は、3GPP規格で規定されたテストケースの1以上の試験を移動端末に対して実行する移動端末試験方法であって、前記移動端末にDL信号を送信する制御を行うDL制御ステップと、前記移動端末から送信されるUL信号を検出するUL検出ステップとを含み、前記テストケースの試験の測定を測定装置に実行させる試験実行制御ステップと、前記UL検出ステップにより所望の信号が検出されたか否かを判断する第1判断ステップと、前記テストケースの試験が終了したか否かを判断する第2判断ステップと、前記第1判断ステップが、前記UL検出ステップにより所望の信号が検出されなかったと判断した場合に、前記テストケースの試験が正常に行われていない旨を表示する表示ステップと、を含み、前記DL制御ステップは、前記第2判断ステップが前記テストケースの試験が終了したと判断した場合に、前記移動端末からUL信号を送信させるためのDL信号を送信する制御を行う構成である。
【0019】
また、本発明に係る移動端末試験方法においては、前記試験実行制御ステップは、前記第1判断ステップが、前記UL検出ステップにより所望の信号が検出されなかったと判断した場合に、前記テストケースの実行中の試験を前記測定装置に再実行させる構成であってもよい。
【0020】
また、本発明に係る移動端末試験方法においては、前記試験実行制御ステップは、前記テストケースの試験の再実行回数が所定値に達した場合に、再実行回数が所定値に達した試験の再実行を停止する構成であってもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、3GPP規格のコンフォーマンステストの要件を満たしつつ、試験結果の信頼性を向上させることができる移動端末試験システム及び移動端末試験方法を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施形態に係る移動端末試験システムの構成を示すブロック図である。
図2】本発明の実施形態に係る移動端末試験システムが備える測定装置の構成を示すブロック図である。
図3】本発明の実施形態に係る移動端末試験システムを用いる移動端末試験方法の処理を示すフローチャートである。
図4】ある試験条件の組合せにおける試験項目ごとの試験結果の表示例を示す表である。
図5図3のフローチャートにおける処理と並行して行われる処理を示すフローチャートである。
図6】試験の判定が適正である場合と不適正である場合の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る移動端末試験システム及び移動端末試験方法の実施形態について、図面を用いて説明する。
【0025】
図1に示す本実施形態に係る移動端末試験システム1は、主にレイヤ1、レイヤ2、レイヤ3の各レイヤを有する通信プロトコルに従う疑似基地局として動作して、3GPP規格で規定されたテストケースの1以上の試験を移動端末100に対して実行するものである。移動端末試験システム1は、測定装置10と、制御装置20と、操作部30と、表示部31と、を備える。
【0026】
測定装置10は、移動端末100と無線通信接続又は有線通信接続を行って、3GPP規格で規定されたテストケースの試験に必要な移動端末100の送受信特性を測定するとともに、移動端末100の通信状態及び動作状態(以下、「端末状態」とも称する)が正常であるか否かを判断するための情報を出力するようになっている。端末状態とは、例えば、移動端末100の電源がオフになっている、移動端末100が呼接続の状態にある、移動端末100が通信できない状態にある、などの状態である。測定装置10は、移動端末100の送信特性として、例えば、送信電力、エラーベクトル振幅(EVM)、IQコンスタレーション、スペクトラム等を測定可能である。また、測定装置10は、移動端末100の受信特性として、例えば、パケットエラーレート(PER)やフレーム受信レート(FRR)等を測定可能である。
【0027】
図2に示すように、測定装置10は、発振部11と、RF送受信部12と、BB送信部13と、BB受信部14と、を有する。
【0028】
発振部11は、RF送受信部12、BB送信部13、及びBB受信部14におけるそれぞれの作動クロックの位相の同期や周波数変換を行うための基準信号(同期信号)を生成する基準信号生成器11aを有する。例えば、RF送受信部12の作動クロックの周波数は数百MHzから数十GHzであり、BB送信部13及びBB受信部14の作動クロックの周波数は数百MHzである。
【0029】
RF送受信部12は、移動端末100が備える複数のアンテナとの間でRF信号を送受信するn個の励振RF部12#1~12#nと、RF測定部12aと、を有する。RF送受信部12が送受信するRF信号には、テストケースの試験の測定を行うための信号と、移動端末100の端末状態を検知するための信号とが含まれる。
【0030】
励振RF部#1~#nのそれぞれには、基準信号生成器11aにより生成された基準信号が入力される。励振RF部12#1~12#nのそれぞれは、移動端末100から受信したRF信号(以下、「UL信号」とも称する)をベースバンド信号(BB_UL信号)に変換してBB受信部14に出力する。また、励振RF部#1~#nのそれぞれは、BB送信部13から入力されたベースバンド信号(BB_DL信号)をRF信号(以下、「DL信号」とも称する)に変換して移動端末100に送信する。RF測定部12aは、例えば、励振RF部12#1~12#nから出力されたBB_UL信号のパワーを測定することにより、移動端末100の送信電力を測定できるようになっている。
【0031】
BB送信部13は、信号発生部13aと、DL変調部13bと、を有する。信号発生部13aは、I成分ベースバンド信号と、その直交成分信号であるQ成分ベースバンド信号を発生させるようになっている。DL変調部13bは、I成分ベースバンド信号とQ成分ベースバンド信号のそれぞれに対して基準信号生成器11aからの基準信号を用いて周波数変換を行い、さらに両者を合成したBB_DL信号を出力する変調処理を行う。
【0032】
BB受信部14は、UL復調部14aと、UL測定部14bと、を有する。UL復調部14aは、励振RF部12#1~12#nから入力されたBB_UL信号を復調して、互いに直交するI成分ベースバンド信号とQ成分ベースバンド信号を生成するようになっている。UL測定部14bは、UL復調部14aにより復調されたI成分ベースバンド信号とQ成分ベースバンド信号に基づいて、移動端末100から送信されたUL信号のIQコンスタレーション等の解析結果や、レイヤ1、レイヤ2、レイヤ3の各レイヤで移動端末100とRF送受信部12との間でやり取りされる各種情報を取得するようになっている。
【0033】
ここで、レイヤ1は、物理層であり、PHY(PHYsical layer)からなる。レイヤ2は、データリンク層であり、MAC(Medium Access Control layer)、RLC(Radio Link Control layer)、PDCP(Packet Data Convergence Protocol layer)からなる。レイヤ3は、ネットワーク層であり、RRC(Radio Resource Control layer)からなる。
【0034】
PHYに関して、DL変調部13b及びUL復調部14aは、移動端末100とRF送受信部12との間で送受信される通信データを変調及び復調する。また、PHYに関して、DL変調部13b及びUL復調部14aは、通信データを送受信するために、多重化、チャネルコーディングなどを行なう。MACに関して、DL変調部13b及びUL復調部14aは、下位層のPHYと、上位層のRLC、PDCP、RRCとの間におけるデータ変換を実施する。RLCに関して、DL変調部13b及びUL復調部14aは、移動端末100との間におけるフロー制御、誤りデータの処理、データ再送などの処理を行なう。PDCPに関して、DL変調部13b及びUL復調部14aは、秘匿、正当性確認、順序整列、ヘッダ圧縮などを行なう。RRCに関して、DL変調部13b及びUL復調部14aは、移動端末100との間での無線区間で確立する仮想的なコネクションである無線ベアラの設定、移動端末100に対するシステム情報や呼出情報の報知などを行なう。
【0035】
制御装置20は、例えばCPU、ROM、RAM、HDDなどを含むマイクロコンピュータ又はパーソナルコンピュータ等で構成され、移動端末試験システム1を構成する上記各部の動作を制御するものである。また、制御装置20は、ROM等に記憶された所定のプログラムをRAMに移してCPUで実行することにより、後述するテストケース記憶部21、試験実行制御部22、状態記憶部23、端末状態判断部24、合否判定部25、及び試験結果記憶部26の少なくとも一部をソフトウェア的に構成することが可能である。なお、テストケース記憶部21、試験実行制御部22、状態記憶部23、端末状態判断部24、合否判定部25、及び試験結果記憶部26の少なくとも一部は、FPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)などのディジタル回路で構成することも可能である。あるいは、テストケース記憶部21、試験実行制御部22、状態記憶部23、端末状態判断部24、合否判定部25、及び試験結果記憶部26の少なくとも一部は、ディジタル回路によるハードウェア処理と所定のプログラムによるソフトウェア処理とを適宜組み合わせて構成することも可能である。
【0036】
テストケース記憶部21は、3GPP規格に準拠したコンフォーマンステストのテストケースの情報を記憶している。
【0037】
試験実行制御部22は、移動端末100にDL信号を送信する制御を行うDL制御部22aと、移動端末100から送信されるUL信号を検出するUL検出部22bとを含み、テストケース記憶部21から読み出したテストケースの試験の測定を測定装置10に実行させる制御を行う。
【0038】
DL制御部22aは、測定装置10からDL信号を送信させる制御を行う。また、DL制御部22aは、後述する第2判断部24cが、テストケースの試験が終了したと判断した場合に、移動端末100からUL信号を送信させるためのDL信号を測定装置10から送信する制御を行うようになっている。
【0039】
UL検出部22bは、移動端末100から送信されるUL信号の検出に加えて、測定装置10のRF送受信部12から出力される特定のRF信号の有無の情報、RF測定部12aから出力されるBB_UL信号のパワー値などの情報、UL測定部14bから出力される解析結果や各レイヤの状態などの情報を検出するようになっている。
【0040】
例えば、UL検出部22bは、RRC/NAS(Non Access Stratum)状態について、試験時のRRC設定に基づき、特定のRRC応答を検出する。この特定のRRC応答は、SCG(Secondary Cell Group)failure報告やpagingへの反応などである。また、例えば、UL検出部22bは、RRC状態について、レイヤ2の設定に基づき、通信の発生(UL/DLのハンドシェイク)を検出する。また、例えば、UL検出部22bは、RRC状態について、レイヤ1の設定に基づき、SRS(Sounding Reference Signal)やCRC(Cyclic Redundancy Check)エラーや、RLF(Radio Link Failure)の疑われるPRACHなどの特定の信号又は情報を検出する。
【0041】
また、UL検出部22bは、3GPP規格に準拠したコンフォーマンステストにおける各試験項目それぞれの試験環境を乱さず検出できるUL信号として、例えば以下に述べるような信号を検出する。
【0042】
測定装置10からDL信号が移動端末100に送信されることにより、移動端末100から測定装置10にUL信号が送信される試験では、UL検出部22bは、PRACH、SRS(Sounding Reference Signal)、PUCCH(Physical Uplink Control CHannel)、PUSCH(Physical Uplink Shared CHannel)などの情報を含むUL信号を「所望の信号」として検出する。つまり、所望の信号とは、通信プロトコル上、移動端末100から送信されるべき信号である。ここでのPUCCHの検出は、例えば、HARQ ACK(Hybrid Automatic Repeat reQuest-ACKnowledgement)によるスループット発生やCSI(Channel State Information) reportの任意下限値等の検出を含む。また、ここでのPUSCHの検出は、例えばmeasurement reportの検出を含む。
【0043】
また、測定装置10からDL信号が移動端末100に送信されても、移動端末100から測定装置10にUL信号が本来送信されない試験では、UL検出部22bは、SCG failure、4Gのdetach、5Gのderegistration、PRACHなどの情報を含むUL信号を所望でない信号(「所望の信号」ではない信号)として検出する。つまり、所望でない信号とは、通信プロトコル上、移動端末100から送信されるべきでない信号である。
【0044】
また、試験後の状態では、測定装置10から試験後の端末状態を確認するためのDL信号が移動端末100に送信される。このとき、UL検出部22bは、RRC_IDLE時のpaging応答を含むPRACH、detach状態のcell reselection時のPRACH、RRC_CONNECTED時のRRC release応答などの情報を含むUL信号を所望の信号として検出する。
【0045】
また、試験実行制御部22は、測定装置10から移動端末100に送信されたDL信号に含まれる情報と、UL検出部22bにより検出されたUL信号に含まれる情報とを、移動端末100の端末状態の情報として状態記憶部23に記憶させるようになっている。
【0046】
端末状態判断部24は、第0判断部24aと、第1判断部24bと、第2判断部24cと、を含む。第0判断部24aは、状態記憶部23に記憶された情報に基づいて、UL検出部22bがUL信号を検出したか否かを判断するようになっている。
【0047】
第1判断部24bは、状態記憶部23に記憶された情報に基づいて、UL検出部22bにより所望の信号が検出されたか否かを判断するようになっている。試験実行制御部22は、UL検出部22bにより所望の信号が検出されなかったと第1判断部24bが判断した場合に、テストケースの試験が正常に行われていない旨を表示部31に表示させるようになっている。
【0048】
第2判断部24cは、UL検出部22bによりUL信号が検出されなかったと第0判断部24aが判断した場合に、状態記憶部23に記憶された情報に基づいて、テストケースの試験が終了したか否かを判断するようになっている。
【0049】
試験実行制御部22は、UL検出部22bにより所望の信号が検出されなかったと第1判断部24bが判断した場合に、テストケースの実行中の試験を測定装置10に再実行させる。また、試験実行制御部22は、テストケースの試験の再実行回数が所定値に達した場合に、再実行回数が所定値に達した試験の再実行を停止する。そして、次に実行予定の試験がある場合には、試験実行制御部22は、その実行予定の試験を実行するように測定装置10を制御する。
【0050】
合否判定部25は、測定装置10による測定結果と合否判定基準に基づいて、テストケースの試験結果が合格(PASS)であるか不合格(FAIL)であるかを判定するようになっている。さらに、合否判定部25は、実行済みのテストケースの試験条件又は試験条件の組合せごとの試験結果が、それぞれPASSであるかFAILであるかを試験結果記憶部26に記憶させるようになっている。
【0051】
試験条件は、移動端末100が送受信するRF信号の周波数、強度、及び位相に関する試験を行うために、測定装置10に設定される条件である。試験条件は、例えば、試験周波数[Low/Mid/High Range]、BWP配置[Low/Mid/High test channel bandwidth]、BWP帯域幅、SCS(Subcarrier Spacing)[Lowest, Mid, Highest]、RB(Resource Block)配置、変調方式、SNR(Signal-to-Noise Ratio)限界、TCI(Transmission Configuration Indicator)のQCL(Quasi Co-Location)設定[SSB(Synchronization Signal/PBCH block)/CSI-RS(Channel State Information Reference Signal)]などである。
【0052】
操作部30は、ユーザによる操作入力を受け付けるためのものであり、例えば表示部31の表示画面に対応する入力面への接触操作による接触位置を検出するためのタッチセンサを備えるタッチパネルで構成される。操作部30は、ユーザが表示画面に表示されている特定の項目の位置を指やスタイラス等で触れた際に、タッチセンサが表示画面上で検出した位置と項目の位置との一致を認識することにより、各項目に割り当てられた機能を実行するための信号を制御装置20に出力する。操作部30は、表示部31に操作可能に表示されるものであってもよく、あるいは、キーボード又はマウスのような入力デバイスを含んで構成されるものであってもよい。
【0053】
ユーザによる操作部30への操作入力により、移動端末100の仕様、各種試験条件のパラメータなどの設定を行うことが可能である。
【0054】
表示部31は、液晶ディスプレイやCRT等の表示機器で構成され、制御装置20による表示制御に基づき、測定装置10による移動端末100に対する送受信特性の測定に関わる設定画面や試験結果などの各種表示内容を表示画面に表示するようになっている。この表示内容には、例えば、テストケースの実行順序の予定、測定装置10による移動端末100の送受信特性の測定結果などが含まれる。さらに、表示部31は、各種条件を設定するためのボタン、ソフトキー、プルダウンメニュー、テキストボックスなどの操作対象の表示を行うようになっている。
【0055】
以下、移動端末試験システム1を用いる移動端末試験方法について、図3のフローチャートを参照しながら説明する。ここでは、5Gバンドn1について、移動端末100の最大送信レベルの特性に関するテストケースを実行する場合を例に挙げて説明する。なお、それぞれの試験条件は説明のための例示である。
【0056】
まず、試験実行制御部22は、5Gバンドn1のLow/Mid/High Rangeのうちのいずれかを測定装置10に設定する(ステップS11)。
【0057】
次に、試験実行制御部22は、BWP帯域幅として、例えば、10MHz、20MHz、40MHzのうちのいずれかを測定装置10に設定する(ステップS12)。
【0058】
次に、試験実行制御部22は、SCSとして、例えば、15kHz、30kHzのうちのいずれかを測定装置10に設定する(ステップS13)。以上のステップS11~S13は、試験条件の設定を行うためのステップである。
【0059】
次に、試験実行制御部22は、Test IDが1~6のいずれかの試験項目の試験の測定を、ステップS11~S13で設定された試験条件の組合せで測定装置10に実行開始させる(試験実行制御ステップS14)。このステップS14には、DL制御部22aが移動端末100にDL信号を送信する制御を行うDL制御ステップと、UL検出部22bが移動端末100から送信されるUL信号を検出するUL検出ステップとが含まれる。また、ステップS14における試験手順に並行して、後述する図5のフローチャートの処理が繰り返し実行される。
【0060】
次に、合否判定部25は、測定装置10による最大送信レベルに関する測定結果に基づいて、ステップS14で実行された試験項目の試験結果がPASSであるかFAILであるかを判定する(ステップS15)。また、合否判定部25は、試験結果を試験結果記憶部26に記憶させる。
【0061】
次に、試験実行制御部22は、後述する図5のフローチャートの処理で、試験の再実行が推奨されているか否かを判断する(ステップS16)。試験の再実行が推奨されている場合には、試験実行制御部22は、実行中の試験項目の試験を途中で切り上げ、ステップS17の処理を実行する。一方、試験の再実行が推奨されていない場合には、試験実行制御部22は、実行中の試験項目の試験を完了させた後にステップS18の処理を実行する。
【0062】
ステップS17において、試験実行制御部22は、実行中の試験項目の試験の再実行回数があらかじめ定められた上限値に達したか否かを判断する。実行中の試験項目の試験の再実行回数があらかじめ定められた上限値に達した場合には、試験実行制御部22は、実行中の試験項目の試験の再実行を停止した後に、ステップS18の処理を実行する。一方、実行中の試験項目の試験の再実行回数があらかじめ定められた上限値に達していない場合には、再びステップS14以降の処理が実行される。
【0063】
ステップS18において、試験実行制御部22は、ステップS11~S13で設定された試験条件の組合せにおいて未実行の試験項目の試験が残っているか否かを判断する。ステップS11~S13で設定された試験条件の組合せにおいて未実行の試験項目の試験が残っている場合には、再びステップS14以降の処理が実行される。一方、ステップS11~S13で設定された試験条件の組合せにおいて全ての試験項目の試験が完了した場合には、ステップS19の処理が実行される。
【0064】
ステップS19において、試験実行制御部22は、図4に示すように、ステップS11~S13で設定された試験条件の組合せでの試験項目の試験結果を、表示部31の表示画面に表示制御する。なお、ステップS17において、再実行回数があらかじめ定められた上限値に達したと判断された試験の試験結果は、表示部31に表示させないか、あるいは、その試験結果の信頼性が低い旨が表示部31に表示されることが望ましい。図4は、Test IDが4の試験項目の試験結果の信頼性が低い例を示している。
【0065】
次に、試験実行制御部22は、ステップS11~S13で設定されていない試験条件の組合せが残っているか否かを判断する(ステップS20)。未設定の試験条件の組合せが残っている場合には、再びステップS11以降の処理が実行される。一方、全ての試験条件の組合せが設定された場合には一連の処理が終了する。
【0066】
このように、試験実行制御部22は、ステップS11~S13で試験条件の組合せを変更しながら、各試験項目の試験を実行する。
【0067】
以下、図3のフローチャートのステップS14と並行して行われる処理について、図5のフローチャートを参照しながら説明する。
【0068】
まず、試験実行制御部22は、状態記憶部23に記憶された移動端末100の端末状態を読み出す(ステップS31)。
【0069】
次に、端末状態判断部24の第1判断部24bは、ステップS14でUL検出部22bにより所望の信号が検出されたか否かを判断する(第1判断ステップS32)。ここでの所望の信号とは、例えば、Mobility試験でのpaging応答を含むPRACHなどの情報を含むUL信号、接続状態でのSRS、PUCCH、PUSCHなどの情報を含むUL信号、NSA(Non-StandAlone)における試験対象外のLTE制御信号などである。ステップS14でUL検出部22bにより所望の信号が検出されたと第1判断部24bが判断した場合には、ステップS39の処理が実行される。一方、ステップS14でUL検出部22bにより所望の信号が検出されなかったと第1判断部24bが判断した場合には、ステップS33の処理が実行される。ここで、所望でない信号とは、SCGFailureInformation、4GのDETACH REQUEST、5GのDEREGISTRATION REQUEST、試験手順にないPRACHなどの情報を含むUL信号である。
【0070】
ステップS33において、端末状態判断部24の第0判断部24aは、ステップS14でUL検出部22bによりUL信号が検出されたか否かを判断する。ステップS14でUL検出部22bによりUL信号が検出されたと第0判断部24aが判断した場合には、ステップS37の処理が実行される。一方、ステップS14でUL検出部22bによりUL信号が検出されなかったと第0判断部24aが判断した場合には、ステップS34の処理が実行される。
【0071】
ステップS34において、端末状態判断部24の第2判断部24cは、ステップS14で実行開始された試験項目の試験が終了したか否かを判断する(第2判断ステップS34)。試験終了手順では基本的に移動端末100の送受信を停止する必要があるため、第2判断部24cは、試験実行制御部22が移動端末100の送受信を停止する制御を行ったか否かを判断することにより、ステップS14で実行開始された試験項目の試験が終了したか否かを判断する。ステップS14で実行開始された試験項目の試験が終了したと第2判断部24cが判断した場合には、ステップS35の処理が実行される。一方、ステップS14で実行開始された試験項目の試験が終了していないと第2判断部24cが判断した場合には、ステップS39の処理が実行される。
【0072】
ステップS35において、試験実行制御部22のDL制御部22aは、移動端末100からUL信号を送信させるためのDL信号を測定装置10から送信する制御を行う。ここでは、移動端末100のスループット測定などが行われる。つまり、ステップS35の処理は、DL信号に対して移動端末100が応答するかどうかを確認する処理である。
【0073】
次に、端末状態判断部24の第1判断部24bは、ステップS14でUL検出部22bにより所望の信号が検出されたか否かを判断する(第1判断ステップS36)。ここでの所望の信号とは、例えば、RRC_IDLE時のpaging応答を含むPRACH、detach状態のcell reselection時のPRACH、RRC_CONNECTED時のRRC release応答などの情報を含むUL信号である。ステップS14でUL検出部22bにより所望の信号が検出されたと第1判断部24bが判断した場合には、ステップS39の処理が実行される。一方、ステップS14でUL検出部22bにより所望の信号が検出されなかったと第1判断部24bが判断した場合には、ステップS37の処理が実行される。ここで、所望の信号が検出されなかった理由としては、例えば、移動端末100のバッテリー切れ、移動端末100と測定装置10とを接続する同軸ケーブルが外れたことなどが考えられる。
【0074】
ステップS37において、端末状態判断部24は、試験の再実行を推奨する旨の信号を試験実行制御部22に出力する。これにより、試験実行制御部22は、ステップS14において、実行中の試験項目の試験を測定装置10に再実行(再現性確認も含む)させることになる。
【0075】
次に、試験実行制御部22は、テストケースの試験が正常に行われていない旨を表示部31に表示させる制御を行う(表示ステップS38)。
【0076】
ステップS39において、試験実行制御部22は、現在の移動端末100の端末状態を状態記憶部23に記憶させる。
【0077】
以上説明したように、本実施形態に係る移動端末試験システム1は、移動端末100の端末状態を示す情報を含むUL信号が所望の信号であるか否かを判断することにより、3GPP規格に準拠したテストケースの試験が正常に行われているか否かを検知することができる。これにより、本実施形態に係る移動端末試験システム1は、3GPP規格のコンフォーマンステストの要件を満たしつつ、試験結果の信頼性を向上させることができる。
【0078】
また、本実施形態に係る移動端末試験システム1は、移動端末100の端末状態を示す情報を含むUL信号が所望の信号ではなかった場合に、テストケースの実行中の試験を測定装置10に再実行させるようになっている。これにより、本実施形態に係る移動端末試験システム1は、移動端末100の端末状態の異常を早期に検知し、適切でない可能性が高い試験結果が得られた試験を再実行することができる。
【0079】
また、本実施形態に係る移動端末試験システム1は、テストケースの試験の再実行回数が所定値に達した場合に、再実行回数が所定値に達した試験の再実行を停止するようになっている。これにより、本実施形態に係る移動端末試験システム1は、適切でない可能性が高い試験結果が連続して得られた試験をスキップして、他の試験を実行することにより、試験時間を短縮することができる。
【0080】
また、本実施形態に係る移動端末試験システム1は、テストケースの試験が終了したと判断した場合に、移動端末100からUL信号を送信させるためのDL信号を送信するようになっている。これにより、本実施形態に係る移動端末試験システム1は、試験の終了時に移動端末100が正常に動作しているか否かを確認することにより、得られた試験結果が適切であるか否かを判断することができる。
【符号の説明】
【0081】
1 移動端末試験システム
10 測定装置
20 制御装置
21 テストケース記憶部
22 試験実行制御部
22a DL制御部
22b UL検出部
24 端末状態判断部
24a 第0判断部
24b 第1判断部
24c 第2判断部
25 合否判定部
30 操作部
31 表示部
100 移動端末
【要約】
【課題】3GPP規格のコンフォーマンステストの要件を満たしつつ、試験結果の信頼性を向上させることができる移動端末試験システム及び移動端末試験方法を提供する。
【解決手段】3GPP規格で規定されたテストケースの試験を移動端末100に対して実行する移動端末試験システム1であって、移動端末100にDL信号を送信する制御を行うDL制御部22aと、移動端末100から送信されるUL信号を検出するUL検出部22bとを含み、テストケースの試験の測定を測定装置10に実行させる試験実行制御部22と、UL検出部22bにより所望の信号が検出されたか否かを判断する第1判断部24bと、第1判断部24bが、UL検出部22bにより所望の信号が検出されなかったと判断した場合に、テストケースの試験が正常に行われていない旨を表示する表示部31と、を備える。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6