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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】造形物の製造方法及び造形装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/40 20170101AFI20221213BHJP
   B29C 64/112 20170101ALI20221213BHJP
   B29C 64/209 20170101ALI20221213BHJP
   B29C 64/336 20170101ALI20221213BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20221213BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20221213BHJP
   B33Y 40/20 20200101ALI20221213BHJP
【FI】
B29C64/40
B29C64/112
B29C64/209
B29C64/336
B33Y10/00
B33Y30/00
B33Y40/20
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021111792
(22)【出願日】2021-07-05
(62)【分割の表示】P 2017118531の分割
【原出願日】2017-06-16
(65)【公開番号】P2021154752
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2021-07-05
(31)【優先権主張番号】P 2017018418
(32)【優先日】2017-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000137823
【氏名又は名称】株式会社ミマキエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100166545
【弁理士】
【氏名又は名称】折坂 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100142653
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 直樹
(72)【発明者】
【氏名】八角 邦夫
(72)【発明者】
【氏名】古川 貴一
【審査官】北澤 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-151524(JP,A)
【文献】特開2015-180537(JP,A)
【文献】特開平06-023854(JP,A)
【文献】特開2016-002714(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0121813(US,A1)
【文献】特開平10-044248(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00-64/40
B33Y 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
造形の材料の層を積層することで立体的な造形物を製造する造形物の製造方法であって、
積層に用いる材料である積層材料の層を重ねて形成することにより、前記積層材料で形成されていない領域である空隙を内部に有する前記造形物を造形し、
かつ、前記積層材料とは異なる物質である充填用材料で内部を満たした状態で前記空隙を形成し、前記充填用材料の上に更に前記積層材料を積層した後、前記空隙内の前記充填用材料を除去することにより、前記空隙が空になるように前記造形物を形成し、
前記充填用材料は、前記空隙内で流動性を維持する流動性材料であることを特徴とする造形物の製造方法。
【請求項2】
前記空隙の内部と前記造形物の外部とをつなぐ孔を更に形成し、前記孔を介して、前記空隙内の前記充填用材料を除去することを特徴とする請求項1に記載の造形物の製造方法。
【請求項3】
前記流動性材料として、前記積層材料よりも比重の大きな物質を用いることを特徴とする請求項1又は2に記載の造形物の製造方法。
【請求項4】
造形の材料の層を積層することで立体的な造形物を製造する造形物の製造方法であって、
積層に用いる前記造形の材料である積層材料の層を重ねて形成することにより、前記造形物を造形し、
サポート材を用いて、造形中の前記造形物を支持する固体のサポート層を形成し、
前記サポート層は、前記サポート材で形成されていない領域である空隙を内部に有し、
前記サポート材とは異なる物質である充填用材料で内部を満たした状態で前記空隙を形成し、前記充填用材料の上に更に前記サポート材を積層した後、前記空隙内の前記充填用材料を除去することにより、前記空隙が空になるように前記サポート層を形成し、
前記充填用材料は、前記空隙内で流動性を維持する流動性材料であることを特徴とする造形物の製造方法。
【請求項5】
造形の材料の層を積層することで立体的な造形物を製造する造形装置であって、
前記造形の材料を吐出するヘッド部と、
前記ヘッド部の動作を制御する制御部と
を備え、
前記制御部は、前記ヘッド部に、積層に用いる材料である積層材料で形成されていない領域である空隙を内部に有する状態で前記造形物を形成させ、
前記空隙は、前記積層材料とは異なる物質である充填用材料で内部を満たした状態で形成され、
前記制御部は、前記ヘッド部に、前記充填用材料の上に更に前記積層材料を積層させ、
前記空隙は、前記充填用材料の上に前記積層材料が積層された後に前記充填用材料が除去されることで、空になるように形成され
前記充填用材料は、前記空隙内で流動性を維持する流動性材料であることを特徴とする造形装置。
【請求項6】
造形の材料の層を積層することで立体的な造形物を製造する造形装置であって、
積層に用いる前記造形の材料である積層材料及びサポート材を吐出するヘッド部と、
前記ヘッド部の動作を制御する制御部と
を備え、
前記制御部は、前記ヘッド部に、前記積層材料を用いて、前記造形物を造形させ、前記サポート材を用いて、造形中の前記造形物を支持する固体のサポート層を形成させ、
前記サポート層は、前記サポート材で形成されていない領域である空隙を内部に有し、
前記空隙は、前記サポート材とは異なる物質である充填用材料で内部を満たした状態で形成され、
前記制御部は、前記ヘッド部に、前記充填用材料の上に更に前記サポート材を積層させ、
前記空隙は、前記充填用材料の上に前記サポート材が積層された後に前記充填用材料が除去されることで、空になるように形成され、
前記充填用材料は、前記空隙内で流動性を維持する流動性材料であることを特徴とする造形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、造形物の製造方法及び造形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェットヘッドを用いて造形物を造形する造形装置(3Dプリンタ)が知られている(例えば、特許文献1参照。)。このような造形装置においては、例えば、インクジェットヘッドにより形成するインクの層を複数層重ねることにより、積層造形法で造形物を造形する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-71282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
造形装置により造形物を造形する場合、造形物の重量は、造形時に積層する材料である積層材料の比重及び造形物の大きさに応じて決まることになる。しかし、造形物の用途等によっては、造形物の重量について、より重く又は軽くしたい場合がある。また、造形物の形状によっては、例えば、単純に造形を行うと重量のバランスが崩れる場合等がある。そして、このような場合、造形物の重心の調整することが望ましい場合もある。そのため、従来、より適切な方法で造形物を製造することが望まれていた。そこで、本発明は、上
記の課題を解決できる造形物の製造方法及び造形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願の発明者は、造形物の造形時において、造形物の形状をそのまま形成するのではなく、内部に空隙(空洞)を設けることで、重量や重心等の調整を行うことを考えた。このように構成すれば、例えば、造形物の外観に影響を与えることなく、造形物の重量や重心等を適切に形成できる。また、更なる鋭意研究により、このような効果を得るために必要な特徴を見出し、本発明に至った。
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明は、造形の材料の層を積層することで立体的な造形物を製造する造形物の製造方法であって、前記造形物の少なくとも一部の重量について、積層に用いる材料である積層材料で充填して形成した場合の重量である充填時重量とは異なる重量である設定重量に設定して、前記設定重量が設定されている前記造形物の少なくとも一部について、前記積層材料で形成されていない領域である空隙を内部に有する状態で形成することで、前記設定重量に合わせて形成することを特徴とする。
【0007】
このように構成すれば、例えば、造形物の重量について、所望の重量に適切に調整できる。また、この場合、造形物内に空隙を形成する位置等を調整することで、例えば、造形物の重心を調整すること等も可能になる。そのため、このように構成すれば、例えば、造形物の重量や重心について、所望の状態により近づけることができる。また、これにより、例えば、造形物をより適切に製造することができる。
【0008】
また、この構成において、設定重量の設定時には、例えば、造形物の重心の方向を指定する指示である重心指示を更に操作者から受け付けてもよい。この場合、例えば、重心指示に基づき造形物の重心の方向を設定することが好ましい。造形物の重心の方向を設定するとは、例えば、造形物の重心の向きが重心指示のとおりになるように、造形物を造形することである。
【0009】
また、この構成においては、例えば、内部に複数の空隙を有する状態で造形物を形成することが考えられる。このように構成すれば、例えば、造形物の重量や重心をより適切に形成できる。また、空隙の内部については、例えば、積層材料と比重が異なる物質を入れること等も考えられる。この場合、例えば、積層材料よりも比重の大きな物質を入れること等が考えられる。また、設定重量や重心の設定によっては、例えば、積層材料よりも比重の小さな物質を空隙に入れることも考えられる。
【0010】
また、造形物の重量を軽くするためには、例えば、空隙について、空になるように形成してもよい。この場合、空隙が空になるとは、例えば、造形物の造形が完了したした時点で空隙が空になることである。また、この場合、造形物の造形が完了したした時点とは、例えば、造形物の造形に関連する全ての工程が完了した時点のことである。また、空隙が空になるとは、意図的に他の物質等を充填せずに、周囲の空気等のみが空隙に入った状態にすることである。
【0011】
また、造形物内に複数の空隙を形成する場合、それぞれの空隙に入れる物質等について、空隙毎に異ならせてもよい。また、一部の空隙のみに積層材料と比重が異なる物質を入れ、他の空隙を空にしてもよい。このように構成すれば、例えば、複数の空隙の組み合わせにより、造形物の重量や重心をよりきめ細かく調整できる。また、この場合、例えば、同じ形状の複数の空隙を形成することが好ましい。このように構成すれば、例えば、空隙を形成する動作を共通化することで、造形の動作が複雑になること等を適切に防ぐことができる。
【0012】
また、造形物の構成について、例えば、空隙内に錘を入れ、造形物の向きに応じて空隙内で錘が移動するように形成すること等も考えられる。このように構成すれば、造形物の向きに応じて造形物の重心を変化させることができる。また、これにより、例えば、より多様な造形物を造形すること等が可能になる。
【0013】
また、空隙の形成時において、内部に他の物質を入れる場合、例えば、その物質の上に更に積層材料を積層することが考えられる。また、内部を空にする空隙を形成する場合には、例えば、予め用意された蓋で空隙の開口部を塞ぎ、その上に更に積層材料を形成すること等が考えられる。
【0014】
また、内部を空にする空隙の形成時において、例えば、流動性材料等の充填用材料で内部を満たした状態で空隙を形成すること等も考えられる。この場合、充填用材料の上に積層材料を積層した後に、予め形成された孔等を介して、充填用材料を除去する。この場合、例えば、充填用材料を除去するための孔として、空隙の内部と造形物の外部とをつなぐ貫通孔を形成すること等が考えられる。
【0015】
また、この場合、充填用材料として、例えば、積層材料よりも比重の高い流動性材料等を用いることが好ましい。このように構成すれば、例えば、充填用材料の上に積層材料の層を適切に形成できる。また、この場合、例えば充填用材料として流動性材料を用いることにより、積層材料の層の形成後に、充填用材料を適切に除去できる。また、造形物に求められる品質等によっては、例えば少なくとも一部の空隙について、造形物の完成後にも内部に流動性材料が入ったままにすること等も考えられる。このような流動性材料としては、例えば、水、飽和炭化水素(パラフィン系、ナフテン系等)、又は鉱物油、グリセリン、又はこれらの混合物等を用いることが考えられる。また、実用上、流動性材料としては、水又は水を主成分とする液体等を好適に用いることができる。
【0016】
また、このような流動性材料を用いる場合、造形の動作中に溢れた流動性材料を貯留するために、造形台上に壁部を形成すること等も考えられる。この場合、造形台とは、例えば、造形中の造形物を上面に載置する台状部材である。また、より具体的に、この場合、例えば、造形物の造形時に、間に隙間を空けて造形中の造形物の周囲を囲む壁部を造形台上に更に形成することが考えられる。このように構成すれば、例えば、造形物の空隙内から流動性材料が溢れた場合に、造形中の造形物と壁部との間に流動性材料を適切に貯留できる。
【0017】
また、流動性材料を用いて行う造形の仕方としては、例えば、造形台を挟んでヘッド部と対向する位置に配設される液体貯留容器等を用いること等も考えられる。この場合、ヘッド部とは、例えば、造形の材料を吐出する構成のことである。また、この場合、例えば、造形物の造形中の少なくとも一部の期間において、造形中の造形物を造形台と共に液体貯留容器内の液体に浸漬することが考えられる。このように構成した場合も、空隙内から流動性材料が溢れた場合に、液体貯留容器内に前記流動性材料を適切に貯留できる。また、この場合、液体貯留容器内の液体について、例えば造形物の外側で造形物を支持する流動性のサポート材として用いること等も考えられる。
【0018】
また、本発明の構成として、上記と同様の特徴を有する造形装置等を用いることも考えられる。この場合も、例えば、上記と同様の効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、例えば、造形物の重量等を調整して、造形物をより適切に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係る造形物の製造方法を実行する造形システム10の一例を示す図である。図1(a)は、造形システム10の構成の一例を示す。図1(b)、(c)は、造形装置12の要部の構成の一例を示す。
図2】造形物50について更に詳しく説明をする図である。図2(a)は、従来の方法で製造した造形物50の構成の一例を示す。図2(b)は、本例において造形する造形物50の構成の一例を示す。図2(c)は、本例において形成する空隙の形状の一例を示す。
図3】造形物50の重量や重心を設定する動作について説明をする図である。図3(a)は、造形システム10の機能を示す機能ブロック図である。図3(b)は、本例において行う重心の設定の一例を示す図である。
図4】造形物50の構成の変形例を示す図である。図4(a)は、ルアーとして用いる造形物50の構成の一例を示す。図4(b)は、図4(a)に示した造形物50を造形する動作について更に詳しく説明をする図である。図4(c)は、造形物50の内部に設置する枠体70及び錘72をより詳細に示す斜視図である。
図5】造形物50の更なる変形例について説明する図である。図5(a)は、本変形例における造形物50の構成の一例を示す。図5(b)は、本変形例における造形物50の構成の他の例を示す。
図6】造形装置12の構成の変形例を示す図である。
図7】造形物50の構成の更なる変形例を示す図である。図7(a)は、本変形例における造形物50について、副走査方向と直交する断面の構成の例を示す。図7(b)は、造形の途中における造形物50を示す断面図である。
図8】造形物50を造形する造形の動作の更なる変形例を示す図である。
図9】造形装置12の構成の更なる変形例について説明をする図である。図9(a)は、本変形例における造形装置12の構成の一例を示す。図9(b)は、造形装置12におけるヘッド部102の構成の一例を示す。図9(c)は、本変形例において造形する造形物50の構成の一例を示す。
図10】造形の動作や造形装置12の構成の更なる変形例について説明をする図である。図10(a)は、本変形例における造形装置12の構成の一例を示す。図10(b)、(c)は、固体の状態のサポート層52の要否と造形物50の形状との関係の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る造形物の製造方法を実行する造形システム10の一例を示す。図1(a)は、造形システム10の構成の一例を示す。本例において、造形システム10は、立体的な造形物を造形する造形システム(3次元造形システム)であり、造形装置12及び制御PC14を備える。
【0022】
造形装置12は、造形の材料の層を積層することで立体的な造形物を製造する装置であり、造形物を示すデータを制御PC14から受け取り、このデータに基づいて造形物の造形を行う。また、より具体的に、本例において、造形装置12は、造形しようとする造形物について重量及び重心の設定がされたデータ(重量/重心設定済みデータ)を受け取り、このデータに従って造形物の造形を行う。
【0023】
また、後に更に詳しく説明をするように、本例において、造形装置12は、重量及び重心の設定に応じて、例えば、内部に複数の空隙(空洞)を有する造形物を造形する。また、必要に応じて、少なくとも一部の空隙内に充填材を充填することで、造形物の重量及び重心を調整する。造形物についての重量及び重心の設定等については、後に更に詳しく説明をする。
【0024】
制御PC14は、造形装置12の動作を制御するコンピュータ(ホストPC)である。また、本例において、制御PC14は、例えば汎用のデータ形式等で造形物を示す3次元データに基づき、重量/重心設定済みデータを生成する。また、この場合、重量及び重心の設定について、例えば造形システム10の操作者(オペレータ)から指示を受け取り、この指示に基づき、重量/重心設定済みデータを生成する。そして、生成した重量/重心設定済みデータを造形装置12へ送ることにより、造形装置12に造形の動作を実行させる。
【0025】
尚、上記のように、本例において、造形システム10は、複数の装置である造形装置12及び制御PC14により構成されている。しかし、造形システム10の変形例において、造形システム10は、一台の装置により構成されてもよい。この場合、例えば、制御PC14の機能を含む一台の造形装置12により造形システム10を構成すること等が考えられる。
【0026】
続いて、造形装置12の具体的な構成について、説明をする。図1(b)、(c)は、造形装置12の要部の構成の一例を示す。また、図1(b)、(c)は、造形の動作中における互いに異なるタイミングについて、造形装置12の要部の動作の一例を模式的に示している。また、本例において、造形装置12は、インクジェットヘッドを用いて積層造形法で造形物50を造形する装置であり、図中に示すように、造形部、充填部、及び充填材選択部に分かれている。積層造形法とは、例えば、複数の層を重ねて造形物50を造形する方法である。造形物50とは、例えば、立体的な三次元構造物のことである。
【0027】
また、造形装置12の各部のうち、造形部は、造形の材料を積層する動作を行う部分である。また、充填部は、造形物50の内部に形成される空隙に充填材を充填する動作を行う部分である。充填材選択部は、空隙に充填する充填材を選択する動作を行う部分である。また、これらの各部での動作を実行するための具体的な構成として、本例において、造形装置12は、ヘッド部102、造形台104、走査駆動部106、トレイ108、吸着ユニット110、ガイドバー112、及び制御部120を有する。
【0028】
尚、以下に説明をする点を除き、造形装置12は、公知の造形装置と同一又は同様の構成を有してよい。より具体的に、以下に説明をする点を除き、造形装置12は、例えば、インクジェットヘッドを用いて造形物50の材料となる液滴を吐出することで造形を行う公知の造形装置と同一又は同様の構成を有してよい。また、造形装置12は、図示した構成以外にも、例えば、造形物50の造形等に必要な各種構成を更に備えてよい。
【0029】
ヘッド部102は、造形物50の材料を吐出する部分である。また、本例において、造形物50の材料としては、インクを用いる。この場合、インクとは、例えば、インクジェットヘッドから吐出する液体のことである。また、より具体的に、本例において、ヘッド部102は、複数のインクジェットヘッドを有する。また、これらの複数のインクジェットヘッドは、造形物50の材料として、所定の条件に応じて硬化するインクを吐出する。また、ヘッド部102は、紫外線を発生する紫外線光源を更に有しており、着弾後のインクに紫外線を照射することにより、インクを硬化させる。また、これにより、造形物50を構成する各層を重ねて形成して、積層造形法で造形物を造形する。また、本例では、インクとして、紫外線の照射により液体状態から硬化する紫外線硬化型インク(UVインク)を用いる。
【0030】
また、ヘッド部102は、造形物50の材料に加え、サポート層52の材料を更に吐出する。また、これにより、造形装置12は、造形物50の周囲に、必要に応じて、サポート層52を形成する。サポート層52とは、例えば、造形中の造形物50の外周を囲むこ
とで造形物50を支持する積層構造物のことである。サポート層52は、造形物50の造形時において、必要に応じて形成され、造形装置12において行う造形の工程の完了後(積層動作の完了後)に除去される。また、図1(b)、(c)においては、図示の便宜上、造形中の造形物50について、サポート層52とまとめて図示をしている。
【0031】
尚、本例において、造形物50の材料として用いるインクは、積層に用いる材料である積層材料の一例である。また、この場合、造形物50の材料として用いるインクとは、例えば、サポート層52の材料以外のインクのことである。また、本例において、ヘッド部102は、例えば、インクを硬化させる前にインクの層を平坦化させる平坦化手段を更に有する。平坦化手段としては、例えば、硬化前のインクの一部をかき取ることでインクの層を平坦化するローラ等を好適に用いることができる。
【0032】
また、本例において造形する造形物50として、造形装置12は、例えば、表面が着色された造形物50を造形してもよい。この場合、ヘッド部102は、例えば、カラー表現の基本色(プロセスカラー)の各色のインク用のインクジェットヘッドを有する。また、この場合、ヘッド部102は、例えば、光反射性の領域の形成に用いる光反射性のインク(例えば白色のインク)や、無色透明のクリアインク用のインクジェットヘッド等を更に有することが好ましい。この場合、光反射性の領域は、造形物50の表面における着色された領域の内側に形成される。また、ヘッド部102は、例えば、造形物50の内部の形成に用いる造形専用のインク用のインクジェットヘッド等を更に有してもよい。
【0033】
造形台104は、造形中の造形物50を支持する台状部材であり、造形中の造形物50を上面に載置する。また、インクの層の形成時において、造形台104は、例えば図1(b)に示すように、造形装置12の造形部において、ヘッド部102と対向させて造形物50を支持する。また、本例において、造形台104は、少なくとも上面が積層方向(図中のZ方向)へ移動可能な構成を有しており、走査駆動部106に駆動されることにより、造形物50の造形の進行に合わせて、少なくとも上面を移動させる。この場合、積層方向とは、例えば、積層造形法において造形の材料が積層される方向のことである。また、より具体的に、本例において、積層方向は、主走査方向(図中のY方向)及び副走査方向(図中のX方向)と直交する方向である。
【0034】
また、本例において、造形台104は、積層方向と直交する面内の方向にも移動可能であり、例えば造形物50内の空隙に充填材の充填を行うタイミングにおいて、例えば図1(c)に示すように、ヘッド部102と対向する位置を離れて、充填部へ移動する。また、これにより、充填部において、造形物50を吸着ユニット110に対向させる。
【0035】
走査駆動部106は、造形中の造形物50に対して相対的に移動する走査動作をヘッド部102に行わせる駆動部である。この場合、造形中の造形物50に対して相対的に移動するとは、例えば、造形台104に対して相対的に移動することである。また、ヘッド部102に走査動作を行わせるとは、例えば、ヘッド部102が有するインクジェットヘッドに走査動作を行わせることである。また、本例において、走査駆動部106は、主走査動作(Y走査)、副走査動作(X走査)、及び積層方向走査(Z走査)をヘッド部102に行わせる。
【0036】
主走査動作とは、例えば、主走査方向へ移動しつつインクを吐出する動作のことである。副走査動作とは、例えば、主走査方向と直交する副走査方向へ造形台104に対して相対的に移動する動作のことである。積層方向走査とは、例えば、造形物50に対して相対的に積層方向へヘッド部102を移動させる動作のことである。造形台104は、ヘッド部102又は造形台104の少なくとも一方を移動させることにより、ヘッド部102にこれらの走査動作を行わせる。
【0037】
また、本例において、走査駆動部106は、更に、造形物50の空隙内に充填材を充填する動作の実行時等において、造形台104及び吸着ユニット110等を移動させる。より具体的に、空隙内に充填材を充填する動作の実行時において、走査駆動部106は、例えば図1(b)に示すように、充填材選択部において、吸着ユニット110に充填材(図中の充填材62a、b)を吸着させる。そして、吸着後、図1(c)に示すように、充填材を保持した状態の吸着ユニット110を充填部に移動させる。また、吸着ユニット110の移動に合わせて、走査駆動部106は、更に、造形中の造形物50を支持している造形台104を充填部に移動させる。また、これにより、充填部において、造形物50と吸着ユニット110とを対向させる。そして、造形物50内に形成されている空隙に対して吸着ユニット110が保持している充填材の位置を合わせ、吸着ユニット110による充填材等の吸着を停止することで、空隙内に充填材を設置する。
【0038】
また、例えば内部に充填材を充填しない空隙を造形物50内に形成する場合、走査駆動部106は、吸着ユニット110に、充填材に代えて、蓋60を吸着させる。そして、充填部において、空隙の開口部を塞ぐ(覆う)ように、蓋60を設置させる。この場合、空隙の開口部とは、積層方向における上側に開口する開口部のことである。
【0039】
トレイ108は、充填材選択部において蓋60や充填材62a、b等を保持する保持部である。この場合、蓋60は、上記においても説明をしたように、必要に応じて造形物50内の空隙の開口部を塞ぐための部材である。また、充填材62a、bは、造形物50内の空隙に入れられる部材である。また、本例において、トレイ108は、充填材62a、bとして、造形物50の材料の各インクとは比重が異なる充填材を保持する。この場合、充填材について、各インクとは比重が異なるとは、例えば、充填材の重量について、各インクで充填材と同じ形状の物体を形成した場合と異なることである。
【0040】
また、本例においては、複数種類の充填材62a、bとして、互いに重さの異なる充填材を用いる。この場合、例えば、複数種類の充填材62a、bの一方として各インクよりも比重の小さな充填材を用い、他方として各インクよりも比重の大きな充填を用いることが考えられる。このように構成すれば、例えば、造形物50の重量や比重について、より多様な調整等を適切に行うことができる。
【0041】
尚、図1(b)、(c)においては、図示の便宜上、充填材62a、bの形状について、簡略化して、直方体状に図示している。しかし、充填材62a、bの形状については、例えば、空隙の形状に合わせた形状にすることが好ましい。空隙の形状等については、後に更に詳しく説明をする。
【0042】
吸着ユニット110は、トレイ108に保持されている蓋60や充填材62a、bを吸着して移動させる構成である。本例において、吸着ユニット110は、上記においても説明をしたように、充填材選択部にあるトレイ108に保持されている蓋60や充填材62a、bを吸着して、充填部へ移動させる。また、充填部において、造形物50内の空隙の上部への蓋60の設置や、空隙内への充填材62a、bの設置を行う。
【0043】
また、本例において、吸着ユニット110は、走査駆動部106に駆動されることにより、ガイドバー112に沿って移動する。ガイドバー112は、吸着ユニット110の移動をガイドする棒状部材である。また、本例において、ガイドバー112は、副走査方向へ延伸しており、副走査方向における吸着ユニット110の移動をガイドする。
【0044】
制御部120は、例えば造形装置12のCPUであり、造形装置12の各部を制御することにより、造形物50の造形の動作を制御する。本例において、制御部120は、制御
PC14から受け取る重量/重心設定済みデータに基づき、造形物50内に複数の空隙を形成する。また、必要に応じて、少なくとも一部の空隙内に、充填材を設置する。また、これにより、制御部120は、造形装置12に、重量や重心が調整された状態で造形物50を造形させる。この場合、重量や重心が調整された状態で造形物50を造形させるとは、例えば、造形システム10の操作者から受け取る重量や重心の設定に基づき、内部に空隙を形成しない状態で造形物50を造形する場合と重量や重心が異なる状態で造形物50を造形することである。本例によれば、例えば、造形物の重量等を調整して、造形物をより適切に製造することができる。
【0045】
尚、上記においては、造形装置12の構成について、主に、蓋60や充填材62a、bを吸着ユニット110で自動的に設置する場合の構成を説明した。この場合、造形の動作の途中において、空隙が形成されたタイミングで、造形部においてインクの層を積層する動作を一時停止する。そして、充填部にて、蓋60や充填材62a、bの設置を行う。また、蓋60等の設置後、造形部にて、インクの層を積層する動作を継続する。また、造形装置12の構成の変形例においては、例えば蓋60や充填材62a、bについて、操作者による手作業等で設置を行ってもよい。この場合、例えば、インクの層を積層する動作を適宜中断して、蓋60や充填材62a、bの設置を行うことが考えられる。
【0046】
続いて、本例において製造する造形物50について、更に詳しく説明をする。図2は、造形物50について更に詳しく説明をする図である。図2(a)は、従来の方法で製造した造形物50の構成の一例を示す図であり、造形物50について、副走査方向と直交する断面の構成の一例を簡略化して示す。
【0047】
造形装置により造形物50を製造する場合、例えば図中に示す鳥の形状の造形物50のように、様々な形状の造形物50を造形することが考えられる。そして、この場合、例えば造形物50の造形を単純に行うと、通常、図中に示すように、造形物50の全体がモデル部202になる構成になる。この場合、造形物50におけるモデル部202とは、造形物50において、造形の材料のインクで形成される部分である。また、モデル部202については、例えば、造形に用いる素材(造形素材)のままの領域等と考えることもできる。
【0048】
しかし、このようにして造形物50を造形した場合、造形物50の形状によっては、重心に偏りが生じ、本来の姿勢で設置すると造形物50が倒れてしまう場合がある。この場合、造形物50を本来の姿勢で設置するとは、例えば鳥の形状の造形物50を造形する場合に鳥が立った姿勢で造形物50を設置する場合のように、造形物50で表現する対象の本来の姿勢で造形物50を設置することである。
【0049】
また、重心の問題に対しては、例えば図中に示すように、造形物50の最下部に台座を形成することで、造形物50の全体でのバランスを調整すること等も考えられる。しかし、この場合も、台座以外の部分においてバランスの悪い部分があると、造形物50が壊れやすくなる場合がある。より具体的には、例えば、図中に示すように鳥の形状の造形物50を造形する場合、鳥の脚部が細い部分になるため、脚部より上側の部分の重量の影響で折れやすくなること等が考えられる。
【0050】
また、重心の問題以外に、例えば造形物50の重量自体が問題になること等も考えられる。例えば、図2(a)に示すように従来の方法で造形物50を造形する場合、造形物50の重量は、造形に用いるインクの比重と造形物50のサイズとにより決まることになる。そして、この場合、造形物50のサイズが大きくなると、その分だけ重量が増大することになる。しかし、造形物50の用途によっては、造形物50の重量について、より重くしたい場合や、軽くしたい場合等も考えられる。
【0051】
これに対し、本例においては、上記においても説明をしたように、造形物50内に複数の空隙を形成し、必要に応じて少なくとも一部の空隙に充填材を充填することで、造形物50の重量や重心の調整を行う。図2(b)は、本例において造形する造形物50の構成の一例を示す図であり、造形物50の一例について、副走査方向と直交する断面の構成の一例を簡略化して示す。図2(c)は、本例において形成する空隙の形状の一例を示す。
【0052】
上記においても説明をしたように、本例において、造形装置12(図1参照)は、内部に複数の空隙を有する造形物50を造形する。この場合、空隙とは、造形物50の内部におけるモデル部202以外の部分である。また、より具体的に、本例においては、造形物50の内部に、複数種類の空隙204a~dを形成する。また、これらのうち、空隙204a~cは、造形物50における本体部分の内部に形成される空隙であり、同じ形状で形成される。この場合、造形物50における本体部分とは、造形物50の全体から台座等の付加的な部分を除いた部分のことである。また、空隙が同じ形状とは、例えば、空隙を囲む壁面(側面)の形状が同じになっていることである。
【0053】
また、図中に示すように、本例においては、造形物50の本体部分に形成される全ての空隙について、形状を同じに固定している。このように構成すれば、例えば、空隙を形成する動作を共通化することで、造形の動作が複雑になること等を適切に防ぐことができる。また、この場合、例えば、重量/重心設定済みデータを生成する設計動作をより簡素化することもできる。また、形状が固定された小型の空隙を多数個形成することにより、例えば、造形物50の重量や重心について、細かな調整をより適切に行うことが可能になる。また、例えば、空隙に充填する充填材として、一定の形状の充填材を共通で使うことが可能になる。更には、本例の造形装置12を用いる場合のように、空隙上への蓋の設置や空隙内への充填材の設置等を自動的に行う場合、空隙の形状を同じにすることで、制御をより容易にすることもできる。
【0054】
また、本例において、造形物50内の空隙は、サポート層を用いずに形成する。そのため、空隙としては、図2(c)に空隙204として示すように、側面が積層方向にオーバーハングしない形状で形成する。この場合、オーバーハングしない形状とは、図中に示す角度θをおよそ90°以下にすることである。
【0055】
また、本例においては、空隙204a~cの内部の状態を互いに異ならせることにより、各空隙の位置の重量を互いに異ならせる。また、図中に示すように、空隙204a~cのそれぞれとして、複数の空隙を形成する。このように構成すれば、例えば、造形物50の重量や重心について、適切に調整することができる。
【0056】
また、より具体的に、空隙204a~cのうち、空隙204aは、空になる空隙である。この場合、空隙が空になるとは、少なくとも造形物50の造形に関連する工程が全て完了した状態において、空隙が空になることである。また、空隙が空になるとは、意図的に他の物質等を充填せずに、周囲の空気等のみが空隙に入った状態にすることである。このような空の空隙204aを造形物50内に形成することにより、例えば、造形物50の重量を軽量化することができる。
【0057】
また、積層造形法において造形物50の材料として用いる紫外線硬化型インクは、硬化後の樹脂の状態で、例えば1~1.2程度の比重を有する。そのため、空の空隙204aを形成した場合、1cmの容積あたり1~1.2g(グラム)程度の割合で造形物50を軽量化することができる。そして、この場合、例えば造形物50の一部の内部に空の空隙204aを形成することで、造形物50の重心を調整すること等も可能になる。
【0058】
ここで、造形物50の内部に空隙を形成する場合、空隙の上に更に更にインクの層を積層することが必要になる。そのため、本例において、空の空隙204aを形成する場合、上記においても説明をしたように、蓋60を用いて、空隙204aの開口部を塞ぐ。この場合、空隙204aを形成した後、蓋60で空隙204aの開口部を塞ぎ、蓋60の上に更にインクを積層する。このように構成すれば、例えば、造形物50の内部に空の空隙204aを適切に形成できる。また、空隙204aについては、例えば、蓋60のみを設置して、充填材を設置しない空隙等を考えることもできる。
【0059】
また、空隙204b、cは、内部に充填材を充填する空隙である。また、これらのうち、空隙204bは、モデル部202の形成に用いるインクよりも比重の小さな軽い充填材が設置される空隙である。また、本例において、空隙204bに設置される充填材は、例えば、充填材62a、b(図1参照)のうちの一方の充填材である。このような空隙204bを形成することにより、空の空隙204aを形成する場合よりは重量を重くした状態で、造形物50の一部を軽量化することができる。
【0060】
また、空隙204cは、モデル部202の形成に用いるインクよりも比重の大きな重い充填材が設置される空隙である。また、本例において、空隙204cに設置される充填材は、例えば、充填材62a、bのうちの他方の充填材である。このような空隙204cを形成することにより、造形物50の一部について、モデル部202にした場合よりも重量化することができる。
【0061】
尚、空隙204cに設置する充填材としては、例えば金属等で形成された充填材を用いること等が考えられる。より具体的には、例えば、比重が7~8程度の鉄鋼で形成された充填材等を用いること等が考えられる。この場合、空隙204cに充填材を設置することにより、1cmの容積あたり6~7g(グラム)程度の割合で造形物50を重量化することができる。また、空隙204c用の充填材としては、例えば、比重が2.7程度のアルミで形成された充填材等を用いること等も考えられる。この場合、空隙204cに充填材を設置することにより、1cmの容積あたり1.5~1.7g(グラム)程度の割合で造形物50を重量化することができる。また、空隙204c用の充填材としては、例えばSUS(ステンレス鋼)で形成された充填材等を用いること等も考えられる。
【0062】
また、図中に示すように、本例において、空隙204b、c用の充填材としては、空隙204b、cに合わせた形状の充填材を用いる。この場合、空隙204b、cについては、例えば蓋60を設置しなくても、その上にインクの層を形成可能である。そのため、本例においては、空隙204b、cについて、充填材上にインクの層を形成することで、蓋60を用いずに開口部を塞ぐ。
【0063】
また、造形物50に形成される空隙のうち、空隙204dは、造形物50の台座として形成される部分の内部に形成される空隙である。この場合、造形物50の台座とは、例えば、所定の向きで造形物50を設置した場合に重力方向の最下部で造形物50の全体を支える部分である。また、この場合、造形物50を安定して支えるためには、台座の部分について、十分に重く形成することが好ましい。このように構成すれば、例えば、造形物50の全体の重心を低くすることで、水平安定性を適切に高めることができる。
【0064】
また、台座の部分については、重量を大きくすれば十分であり、細かい調整等は必要ない。そのため、本例において、空隙204dについては、他の空隙204a~cと形状を異ならせて、より大きな空隙にしている。また、空隙204dには、例えば空隙204cと同様に、比重の大きな重い充填材が設置される。
【0065】
尚、空隙204dに設置する充填材としては、空隙の形状に合わせ、空隙204b、c
用とは形状が異なるより大きな充填材を用いることが考えられる。この場合、造形装置12におけるトレイ108(図1参照)は、例えば、空隙204d用の充填材を更に保持する。また、空隙204d用の大きな充填材については、例えば造形の動作中に、操作者による手動で設置してもよい。また、空隙204dに対しては、例えば、空隙204b、c用と同じ形状の充填材を複数個並べて設置すること等も考えられる。
【0066】
以上のような空隙204a~dを形成することにより、例えば、造形物50の重量や重心を適切に変化させることができる。また、これらの数や分布を変更することにより、造形物50の重量や重心を適切に調整できる。
【0067】
また、より具体的に、図示した場合においては、造形物50について、重量方向において下から順にA~Dの4つの領域に分け、下の部分を重量化して、上の部分を軽量化する。例えば、台座と、本体における一番下側の部分とを含む領域Aについては、空隙204c、dを形成することにより、例えば比重が2~6程度になるように形成する。また、領域Aの上の領域Bについては、空隙を形成しないことにより、モデル部202のそのままの比重で、例えば比重が1~1.2程度になるように形成する。また、領域Bの上の領域Cについては、空隙204bを形成することにより、例えば比重が0.2~0.6程度になるように形成する。そして、更に上の領域Cについては、空隙204aを形成することにより、例えば比重が0.1~0.4程度になるように形成する。このように構成すれば、重心が低く安定した造形物50を適切に造形できる。
【0068】
ここで、図2(b)においては、造形物50の重量及び重心について、単純に、下の部分を重量化して、上の部分を軽量化する場合を図示している。しかし、造形物50の重量や重心については、造形物50で表現する対象に合わせてより詳細に設定すること等も考えられる。より具体的に、例えば、造形物50を示す3次元データ(元データ)について、例えば3Dスキャナによる撮影等により作成する場合、造形物50の重量について、3Dスキャナで測定される被測定物の重量に合わせて造形を行うこと等が考えられる。また、この場合、例えば測定結果に対し、縮小又は拡大をして造形を行うのであれば、重量についてもその倍率に合わせて変倍して造形を行うことが考えられる。また、重心についても、被測定物に合わせて造形物50の重心を設定することが考えられる。
【0069】
また、元データについて、例えばCADで作成する場合、造形物50で表現しようとする対象の本来の材質の比重や容積等に基づいて、好ましい重量や重心を想定することが考えられる。また、この場合も、縮小又は拡大をして造形を行うのであれば、その倍率に合わせて重量を変倍して造形を行うことが考えられる。また、重心については、上記のようにして想定した重心に合わせて造形物50の重心を設定することが考えられる。
【0070】
また、本例における造形物50の造形動作については、例えば、造形物50の少なくとも一部について、上記のような空隙204a~dを内部に有する状態で形成して、予め設定された設定重量に合わせる動作等を考えることもできる。この場合、設定重量とは、例えば、造形物50の少なくとも一部に対して設定される重量である。また、設定重量は、例えば、空隙を形成せずに形成した場合の重量である充填時重量とは異なる重量に設定される。また、この場合、空の空隙204aや、モデル部202と比重が異なる充填材を設置する空隙204b、c等を形成することにより、造形物50の各部について、設定重量に合わせて造形物50の造形を行う。
【0071】
また、本例においては、造形物50内に空隙を形成することにより、例えば、造形に用いるインクを節約すること等も可能になる。より具体的に、例えば空隙を形成せずに造形物50を造形する場合、外観において表面付近と比べて重要性の低い内部の領域についても、高価な材料(インク)で形成することになる。これに対し、造形物50内に空隙を形
成する場合、例えば空隙内を空にすることで、インクの使用量を適切に低減できる。また、空隙内を充填材で充填する場合にも、例えば、インクよりも低コストの材料を用いることができる。そのため、本例によれば、造形物50の製造コストを低減すること等も可能になる。
【0072】
続いて、造形物50の重量や重心を設定する動作について、更に詳しく説明をする。図3は、造形物50の重量や重心を設定する動作について説明をする図である。図3(a)は、造形システム10の機能を示す機能ブロック図である。図3(b)は、本例において行う重心の設定の一例を示す図である。
【0073】
尚、図3(a)は、造形物50の重量や重心を設定する動作に関連する造形システム10の様々な機能について、模式的に示した図である。そのため、必ずしも各ブロックが物理的な構成(例えば電子回路のユニット等)に対応するものではない。また、図3(a)に示す各ブロックのうち、造形を示すブロックは、例えば、造形装置12(図1参照)の機能を示している。また、造形以外の機能を示すブロックは、例えば、制御PC14(図1参照)の機能を示している。また、造形システム10の構成の変形例においては、造形以外の少なくとも一部の機能について、造形装置12で実行してもよい。
【0074】
図1に関連して上記においても説明をしたように、本例において、制御PC14は、造形装置12に造形させる造形物50を示す3次元データに基づき、重量/重心設定済みデータを生成する。また、この場合、制御PC14は、例えばCADソフトウェアの操作や、クライアントサーバー等から3次元データを受け付けることにより、造形の元データとなる3次元データの入力を行う。また、制御PC14は、入力された3次元データ(元データ)に基づき、元データのままで造形を行った場合の造形物50の重量を計算する(元データ重量計算)。
【0075】
また、本例において、制御PC14は、更に、造形物50に対する重量及び重心の設定の指示を操作者から受け取る。より具体的に、この場合、操作者は、造形物50の重量について、最終的に欲しい重量の設定を行う(重量設定)。この場合、最終的に欲しい重量とは、造形が完了した時点における最終的な造形物50の重量(造形物50の全体の重量)のことである。
【0076】
また、操作者は、更に、造形物50の重心について、最終的に欲しい重心の方向を設定する(重心設定)。この場合、最終的に欲しい重心の方向とは、造形の完了後に造形物50を設置する向きに合わせた重心の方向のことである。また、より具体的に、重心の設定については、例えば、副走査方向(X方向)、主走査方向(Y方向)、及び積層方向(Z方向)からなるXYZ方向のうち、いずれの方向のいずれの側を端部にするかを選択することで行う。すなわち、この場合、+X、-X、+Y、-Y、+Z、-Zの6つの方向の中からいずれかを選択することになる。この場合、例えば図3(b)において符号Aを付した向きで造形物50を造形する場合には-Zを選択し、符号Bを付した向きで造形物50を造形する場合には+Yを選択することになる。
【0077】
また、操作者により重量及び重心の設定がされた後、制御PC14は、元データに対応する重量と設定された重量(設定重量)との差分を算出する(元データ重量と設定重量との差分計算)。そして、この算出結果に基づき、造形物50内に空隙や充填材を追加するための演算や制御を行い、造形装置12へ供給する重量/重心設定済みデータを生成する(データ制御)。
【0078】
また、より具体的に、この場合、制御PC14は、例えば、算出した重量の差分に基づき、差分を無くすために必要な空隙の形状及び個数を選択する(空隙形状・個数選択)。
また、この場合、例えば、予め用意された複数種類の空隙の形状を記憶している空隙形状メモリから空隙の形状を読み出して利用することで、空隙の形状及び個数の選択を行う。また、それぞれの空隙について、充填材の設置の要否と、充填材を設置(充填)する場合に用いる充填材の種類の選択とを行う(充填材選択)。また、これにより、それぞれの空隙に対する充填材の割り当て等を行う。また、この場合、予め用意された複数種類の充填材について種類毎の重量や形状等を記憶している充填材重量メモリから充填材の重量及び形状等を読み出して利用することで、充填材の割り当て等を行う。また、本例において、充填材形状メモリは、空にする空隙の開口部を覆う蓋の形状を更に記憶している。そして、空にする空隙に対しては、充填材形状メモリから読み出す蓋の形状等に基づき、蓋の割り当てを行う。
【0079】
また、空隙の形状及び個数や使用する充填材が決まることで造形物50の重量が設定重量に合わせられた後には、例えば空隙を形成する位置の調整や選択等を行うことで、重心の方向を調整する(重心調整位置選択)。この場合、操作者により設定された重心の方向に合わせ、重い充填材をいれる空隙を重心方向に配置して、軽い充填材を入れる空隙を重心方向と逆の方向に配置すること等により、重心の方向の調整を行う。
【0080】
そして、上記のように重量や重心の調整を行った後、調整後の状態に合わせて、空隙や充填材についての設定を行った重量/重心設定済みデータを生成する。そして、生成したデータを、造形装置12へ出力する(重量/重心設定済みデータ出力)。また、これにより、造形装置12に、重量や重心が調整された造形物50を造形させる(造形)。本例によれば、例えば、造形物50の重量及び重心を調整して、造形物50をより適切に製造することができる。
【0081】
ここで、上記においては、造形物50の重量や重心を設定する動作について、一つの例を具体的に説明した。しかし、重量や重心を設定する具体的な動作については、上記において説明をした動作に限らず、様々に変更してもよい。例えば、重量を設定する重量設定の動作について、より一般化して、例えば、造形物50の少なくとも一部に対して所望の設定重量を設定する動作等と考えることもできる。また、重心を設定する動作については、例えば、造形物50の重心の方向を指定する指示である重心指示をユーザから受け付ける動作等と考えることもできる。
【0082】
また、上記においては、重量や重心の調整について、主に、制御PC14で自動的に行う場合の動作について、説明をした。しかし、造形システム10の動作の変形例においては、例えば、操作者の操作により手動で重量や重心の調整を行うこと等も考えられる。この場合、例えば、空隙の個数及び形状、使用する充填材、及び空隙の位置等について操作者自身で決定することで、造形物50の重量や重心の調整を行うことが考えられる。
【0083】
続いて、造形システム10により造形する造形物50の変形例や造形システム10による造形の動作の変形例について、説明をする。図4は、造形物50の構成の変形例を示す。尚、以下に説明をする点を除き、図4において、図1~3と同じ符号を付した構成は、図1~3における構成と同一又は同様の特徴を有してよい。
【0084】
上記においては、空隙を空のままにしない場合について、主に、空隙の形状に合わせた形状の充填材を空隙内に設置する構成を説明した。しかし、造形物50の構成の変形例においては、例えば、空隙のサイズよりも小さな物体を空隙内に設置すること等も考えられる。また、この場合、例えば、空隙内でこの物体が移動可能なように物質を設置することも考えられる。
【0085】
より具体的に、図4においては、魚釣りに用いるルアーを造形物50として造形する場
合について、造形物50の構成の一例を示している。図4(a)は、ルアーとして用いる造形物50の構成の一例を示す。また、図4(a)においては、図示の便宜上、造形物50の内部に形成する空隙204の様子について、破線を用いて透過的に図示している。
【0086】
図中に示すように、本変形例においては、ルアーの本体となる樹脂部分をインクの層の積層により形成して、その内部に形成する空隙204内に、空隙204のサイズよりも小さな物体である金属球の錘72を入れている。また、錘72の移動空間となる空隙204内での錘72の移動をより容易にするため、空隙204内に中空の枠体70を設置して、その中に錘72を入れている。枠体70としては、例えば、金属の薄板(例えば、SUS薄板)等で形成した枠体を好適に用いることができる。また、枠体70内には、図中に示すように、複数の錘72を入れている。
【0087】
このように構成した場合、造形の完了後(ルアーの使用時等)の状態において、空隙204内の錘72は、造形物50の向きに応じて空隙204内で移動することになる。また、この場合、錘72の移動に伴い、造形物50の重心が移動(変動)することになる。また、より具体的に、ルアーである造形物50の使用時において、ルアーの頭部には、図中に示すように、道糸がつながれる。そして、この場合、道糸を引くと、ルアー本体は前方(頭部方向)に進むが、慣性により、ルアー内部の錘72は後方(尾部方向)に移動(残る)する。また、その結果、重心が後方になり、ルアーの尾部が下がることになる。また、道糸を引くのを止めると、ルアー本体は水の抵抗で停止するが、慣性により錘は前方(頭部方向)に移動する。また、その結果、重心が前方になり頭部が下がることになる。そして、このような動作を繰り返すと、ルアーがピッチング(上下動)し、魚を誘うことができる。
【0088】
図4(b)は、図4(a)に示した造形物50を造形する動作について更に詳しく説明をする図であり、図4(a)中に一点鎖線で示した部分に対応する断面(断面AA)の構成を示す。図4(c)は、造形物50の内部に設置する枠体70及び錘72をより詳細に示す斜視図である。
【0089】
本変形例のような造形物50を造形する場合、インクの層を積層する動作の途中、空隙204内に枠体70及び錘72を入れ、その上に更にインクの層を形成することになる。また、より具体的に、この場合、例えば図4(b)に示すように、空隙204となる領域の周囲にモデル部202が形成されるまでインクの層を積層したタイミングで積層の動作を一時停止して、空隙204内に枠体70及び錘72を設置する。そして、これらの設置後、インクの層の積層を再開して、積層方向における枠体70の上に更にモデル部202を形成する。このように構成すれば、重心の位置が変化する造形物50を適切に造形できる。また、これにより、例えば、多様な造形物50をより適切に造形できる。
【0090】
続いて、空の空隙204の構成や空隙204の形成の仕方について、変形例を説明する。図5は、造形物50の更なる変形例について説明する図であり、蓋60(図1参照)を用いずに空の空隙204を形成する場合について、空隙204の構成や空隙204の形成の仕方の一例を示す。図5(a)は、本変形例における造形物50の構成の一例を示す。図5(b)は、本変形例における造形物50の構成の他の例を示す。
【0091】
尚、以下に説明をする点を除き、図5において、図1~4と同じ符号を付した構成は、図1~4における構成と同一又は同様の特徴を有してよい。また、図5(a)、(b)のうち、図5(a)は、造形物50の構成をより簡略化して示す図であり、造形物50の一例について、副走査方向と直交する断面の構成の例を示す。また、図5(b)は、図5(a)よりも詳細な部分を含めて造形物50の構成を示す図であり、図5(a)に示した造形物50とは形状等が異なるひょうたん形状の造形物50について、主走査方向と直交す
る断面の構成、及び積層方向と直交する断面の構成の例を示す。また、図5においては、図示の便宜上、造形物50内の空隙204として、空の空隙204のみを図示している。しかし、造形物50の構成の更なる変形例においては、例えば図2に図示した造形物50等と同様に、内部に充填材を設置した空隙204を更に形成してもよい。
【0092】
本変形例において、空の空隙204の形成は、空隙204の開口部を塞ぐ蓋等を用いずに行う。また、この場合、積層材料として用いるインクとは異なる物質である充填用材料を用い、造形の動作の途中では空隙204内を一時的に充填用材料で満たし、その後に充填用材料を除去することで、蓋を用いずに空の空隙204を形成する。より具体的に、この場合、インクの層を積層することで内部に空隙204を含む造形物50を造形する動作において、例えば積層の動作を中断して空隙204内に充填用材料を充填することで、充填用材料で内部を満たした状態で空隙204を形成する。そして、空隙204内の充填用材料の上に更にインクを積層する。また、必要に応じて、これらの動作を繰り返す。そして、造形物50が完成するまでの間に空隙204内の充填用材料を除去することにより、空隙204が空になるように造形物50を形成する。
【0093】
また、この場合、図5(a)においては図示を省略しているが、例えば図5(b)における充填材排出孔212のように、空隙204の内部と造形物50の外部とをつなぐ孔を形成することが好ましい。この場合、充填材排出孔212等の孔は、造形物50の表面からモデル部202を貫通して、空隙204の内部に達する貫通孔である。このように構成すれば、例えば、充填材排出孔212等の孔を介して、充填用材料を適切に除去できる。
【0094】
また、この場合、充填用材料としては、例えば、孔からの除去が可能な流動性材料を用いることが好ましい。この場合、流動性材料とは、例えば、モデル部202の形成に用いるインク等と異なり、造形が完了するタイミングでも流動性を維持する物質のことである。また、流動性材料については、例えば、空隙204内で流動性を維持する物質等と考えることもできる。また、より具体的に、本変形例において、流動性材料は、空隙204内で液体の状態で存在する物質である。また、この場合、空隙204の上へのインクの層の積層時には、空隙204内を流動性材料で満たした状態で、流動性材料の上にインクの層を積層する。このように構成すれば、流動性材料の除去後に空になる空隙204を適切に形成できる。
【0095】
ここで、流動性材料等の充填用材料をより適切に除去するためには、充填材排出孔212として用いる孔に加え、図5(b)に示すように、空気注入孔210として用いる孔を更に形成することが好ましい。空気注入孔210は、充填材排出孔212とは異なる位置で造形物50の外部と空隙204の内部とをつなぐ貫通孔である。このように構成した場合、空隙204から充填用材料を除去する除去時において、例えばポンプ等で空気注入孔210を介して空気を送り込むことで、より容易かつ適切に充填用材料を除去できる。また、充填用材料の除去については、例えば、充填材排出孔212の側をシリンジ等で吸引することで行うこと等も考えられる。この場合も、空気注入孔210を介して造形物50の外部から空気が入るようにすることで、より容易かつ適切に充填用材料を除去できる。また、充填用材料の除去時には、例えば、ポンプ等を使用して空気注入孔210から空気を送り込むことと、充填材排出孔212の側でシリンジ等を用いて行う吸引との両方を併用してもよい。
【0096】
また、空気注入孔210及び充填材排出孔212については、造形物50の表面において目立たないように形成することが好ましい。また、この場合、必要最小限のサイズの小さな孔にすることが好ましい。空気注入孔210及び充填材排出孔212の形成については、例えば空隙204等と同様にインクの層の積層時に形成してもよく、積層動作の完了後にドリル等で形成してもよい。
【0097】
また、充填用材料の除去に用いる孔については、例えば図5(b)における空気注入孔210及び充填材排出孔212のように、造形物50の全体に対して2個以上の孔を形成することが好ましい。また、この場合、図5(a)、(b)に示すように、隣接する空隙204が接触することで複数の空隙204がつながるようにすることで、造形物50の形成する孔の数を適切に低減できる。この場合、複数の空隙204がつながるとは、例えば、複数の空隙204の間で充填用材料が流通可能な状態にすることである。また、この場合、造形物50に形成する空の空隙204について、全ての空隙204がつながるように形成することが好ましい。
【0098】
また、充填用材料として流動性材料を用いる場合において、流動性材料としては、その上へのインクの層の形成時にインクが沈まないような材料を用いることが必要である。そのため、流動性材料としては、例えば、モデル部202を構成するインクの比重(例えば、1.1程度)よりも比重の大きな物質を用いることが好ましい。より具体的に、このような流動性材料としては、例えば、フッ素系不活性液、ハイドロフルオロエーテル、又はフルオロカーボン類等を用いることが考えられる。
【0099】
また、充填用材料として用いる流動性材料については、例えば、周囲のモデル部202を構成するインクとの接触により化学反応等を起こさない材料であること等が好ましい。この場合、インクとの接触により化学反応等を起こさないとは、例えば、インクに対して化学的なアタック(反応)をしないことである。また、充填用材料としては、例えば、充填材排出孔212等の孔からの除去時において、シリンジ等を使用して適切に抜き取り可能な物質を用いることが好ましい。また、造形物50の造形のコスト等を考えた場合、流動性材料については、例えば、使用後に回収して、フィルタリング等をすることで、再利用が可能になる物質であることが好ましい。
【0100】
また、流動性材料については、比重が小さな液体を用いる場合であっても、粘度が十分に高い物質であれば、充填用材料としてとして使用可能である。この場合、例えば、流動性材料の上等のオーバーハングした部分へ吐出されたインクが流動性材料中に沈み込む前にインクを硬化させることが可能な粘度を有していれば、流動性材料の上へのインクの層を適切に積層できる。そのため、このような物質であれば、充填用材料としてとして使用可能である。また、より具体的に、このような流動性材料としては、例えば、水、飽和炭化水素(パラフィン系、ナフテン系等)、又は鉱物油、グリセリン、又はこれらの混合物等を用いることが考えられる。また、後に更に詳しく説明をするように、実用上、流動性材料としては、例えば水等を好適に用いることができる。
【0101】
以上のように、本変形例によれば、例えば、造形物50の内部に空の空隙204を適切に形成できる。また、これにより、例えば、造形物50の重量を適切に軽量化できる。また、例えば、造形物50の重量や重心の調整等を適切に行うこと等も可能になる。また、この場合、例えば、モデル部202を構成するインクの使用量を低減することもできる。また、これにより、例えば、造形物50の製造コストを適切に低減することもできる。
【0102】
また、本変形例においては、空隙204の開口部を塞ぐ蓋等を用いることなく、空隙204を形成することが可能である。そして、この場合、空隙204の形状について、蓋の形状等に合わせること等も不要になる。そのため、本変形例によれば、例えば造形物50の形状等に合わせ、様々な形状の空隙204を形成すること等も可能になる。また、これにより、様々な形状の造形物50を造形する場合において、内部に空の空隙204をより適切に形成できる。
【0103】
尚、この場合も、空隙204を囲む壁面については、積層されるインクの面に対して9
0度未満の角度で、オーバーハングしない形状で形成することが好ましい。このように構成すれば、空隙204を形成する動作について、より容易かつ適切に行うことができる。また、造形物50内において空隙204を形成する位置については、図1~4を用いて説明をした場合等と同様に、設定された重量や重心に向きに応じて決定すること等が考えられる。また、この場合において、造形物50を安定(低重心化)にするためには、造形物50の設置時に重力方向の下側になる位置(低位置)には空隙204を形成しないことが好ましい。
【0104】
また、造形物50の造形時に行う空隙204への充填用材料(流動性材料)の充填については、例えば装置により自動的(自動式)に行ってもよく、操作者の操作による手動(手動式)で行ってもよい。また、自動式での充填を行う場合、充填用材料を充填する機能を有する造形装置12を用いて造形物50を形成することが考えられる。
【0105】
図6は、造形装置12の構成の変形例を示す図であり、充填用材料を充填する機能を有する造形装置12の構成の一例を示す。尚、以下に説明をする点を除き、図6において、図1~5と同じ符号を付した構成は、図1~5における構成と同一又は同様の特徴を有してよい。例えば、以下に説明をする点を除き、図6に示す造形装置12は、例えば、図1に示した造形装置12と同一又は同様の特徴を有してよい。また、図6に示す造形装置12は、図中に示す構成以外に、図1の造形装置12と同一又は同様の各構成を更に備えてもよい。
【0106】
本変形例において、造形装置12は、インクの層の形成に用いるヘッド部102等に加え、充填用材料(流動性材料)を充填するための構成として、充填ユニット130及びガイドバー132を備える。充填ユニット130は、例えばインクジェットヘッド又はディスペンサ等の機能により充填用材料を吐出する吐出装置であり、吐出ノズル302又はブレード304を有する。吐出ノズル302は、充填用材料を吐出する吐出口であり、それぞれの空隙204(図5参照)に対し、例えば、空隙204の充填に必要な量の液体の状態の充填用材料を吐出する。
【0107】
また、ブレード304は、空隙204への充填用材料の充填後に余分な充填用材料を除去するための部材である。また、本変形例において、ブレード304は、少なくとも積層されているインクの層の上面を傷つけない程度の柔らかいシリコンゴムブレードであり、空隙204の開口部の位置でスキージ動作を行うことにより、空隙204からあふれ出している余分な充填用材料を除去する。また、より具体的に、図示した構成において、ブレード304は、シリコンゴムブレードを4枚用いた4枚羽の回転ブレードである。また、この場合、例えばブレード304をCCW(半時計方向)回転させながら造形台104を副走査方向と平行に図中の左方向へ移動させることにより、スキージ動作を行う。
【0108】
尚、充填用材料の充填時において、充填量を精密に制御できるのであれば、ブレード304を用いて行うスキージの工程を省略してもよい。また、この場合、必要な精密さの程度は、例えば造形に用いるインクの平坦化時に除去する量の割合(造形材の平坦化除去率)、インクの層の1層分の厚さ、及び空隙204の容積等によって決まる。また、ガイドバー132は、主走査方向への充填ユニット130の移動をガイドするガイド部材である。ガイドバー132に沿って充填ユニット130を移動させることにより、造形物50内の様々な位置に形成される空隙204に対し、充填用材料を適切に充填できる。
【0109】
また、本変形例において、充填用材料の充填は、インクの層の積層を一旦中断して行う。より具体的に、この場合、造形装置12における造形部でヘッド部102により行う造形動作の途中において、例えば一つの空隙204の形成が終了するタイミングで、空隙204の形成の終了を示す信号(空隙形成終了信号)を発生させる。そして、この空隙形成
終了信号に基づいてインクを積層する動作を一時停止して、造形台104を造形部から充填部へ移動させる。また、充填部において、充填ユニット130の吐出ノズル302から充填用材料を吐出することにより、空隙204への充填用材料の充填を自動的に行う。このように構成すれば、例えば、空隙204の上にオーバーハングしたインクの層を形成する前に、充填用材料を適切に充填できる。
【0110】
また、空隙204への充填を行った後には、造形台104を造形部へ戻し、空隙204中の充填用材料の上へインクの層を更に形成する。この場合、ヘッド部102におけるインクジェットヘッドから吐出するインクは、Z方向と平行に図面の下側に相当する方向へ飛翔して、空隙204内の充填用材料上に着弾(付着)する。そして、この場合、着弾後に速やかに紫外線を照射して、インクを硬化させることで、空隙204の上にインクの層を適切に形成できる。
【0111】
また、この場合、例えば、造形物50を構成する全てのインクの層を形成した後、空隙204中の充填用材料を除去することで、空の空隙204を造形物50内に形成する。このように構成すれば、例えば、充填用材料の充填を自動的に行いつつ、空の空隙204を内部に有する造形物50を適切に造形することができる。
【0112】
ここで、充填用材料の充填時には、充填を行う前までに形成されたインクの層の上面である一時停止時の積層上面に対し、空隙204中での充填用材料の上面(液面)が一時停止時の積層上面を越えないように充填を行うことが好ましい。このように構成すれば、余分な充填用材料が空隙204の外にあふれること等を適切に防ぐことができる。また、この場合、例えば、充填用材料の上面の位置を光学センサ等で検知しながら充填を行い、一時停止時の積層上面に達したタイミングで充填を停止すること等も考えられる。このように構成すれば、高い精度でより適切に充填用材料の充填を行うことができる。
【0113】
また、この場合、必ずしも一時停止時の積層上面と同じ高さまで充填用材料を充填しなくても、一時停止時の積層上面に十分に近い位置まで充填用材料を充填すれば、その上へのインクの層の形成を適切に行うことができる。そのため、充填用材料の充填が完了する時点において、充填用材料の上面の位置は、一時停止時の積層上面よりも低くてもよい。また、より具体的に、例えば、空隙204の容積にもよるが、充填が完了する時点での充填用材料の上面の位置について、例えば一時停止時の積層上面との差が1mm以内程度であれば、その後に行うインクの層の積層時の平坦化で除去するインクの量(平坦化除去量)の分で埋める(補う)ことができる。
【0114】
また、本変形例における上記のような充填の動作については、例えば、造形中の造形物50において空隙204が形成される毎に空隙204への充填用材料の充填を行う動作等と考えることもできる。この場合、空隙204が形成される毎に充填用材料の充填を行うとは、例えば、空隙204の周囲を囲むインクの層の形成時において、空隙204の周囲を囲む全ての層を形成したタイミングで充填用材料の充填を行うことである。
【0115】
また、更なる変形例においては、それぞれの空隙204について、一つの空隙204が完成する前の途中の時点でも充填用材料の充填を行ってもよい。この場合、例えば、空隙204の周囲を囲むインクの層の形成時において、予め設定された複数層のインクの層を形成する毎に充填の動作を行うこと等が考えられる。また、この場合、例えば、空隙204の形状に応じたタイミングで充填の動作を行うこと等も考えられる。より具体的には、例えば、オーバーハング形状を含む壁面に囲まれる空隙204を形成する場合等において、壁面のオーバーハング形状が生じるタイミングで充填の動作等を行うこと等も考えられる。また、造形に求められる品質等によっては、空隙204の周囲を囲むインクの層の形成時において、1層のインクの層を形成する毎に充填の動作を行うこと等も考えられる。
【0116】
また、上記においても説明をしたように、空隙204へ充填用材料を充填する動作については、手動式で行うことも考えられる。この場合も、例えば、一つの空隙204を形成する毎にインクの層を積層する動作を一時停止して、充填用材料の充填を行う。また、この場合、一時停止については、操作者が積層の動作を監視することで行ってもよく、空隙形成終了信号を発生することで自動的に行ってもよい。また、これらの場合、造形装置12は、例えば、操作者の指示や空隙形成終了信号に応じてインクの層の積層を一時停止する機能を有する。また、一時停止を自動的に行う場合、充填用材料を充填する操作を操作者に求める機能を有することが好ましい。
【0117】
また、手動での充填を行う場合、操作者は、空隙204に対し、例えばシリンジ等を用いて、充填用材料を充填する。また、この場合、例えば少し多めに充填用材料を注入し、その後に一時停止時の積層上面に対して柔らかいブレード等でスキージして、余分な充填用材料を除去することが好ましい。また、充填を行った後には、一時停止をしたインクの層の上から、積層を再開する。
【0118】
続いて、造形物50の構成の更なる変形例について、説明をする。図7は、造形物50の構成の更なる変形例を示す。図7(a)は、本変形例における造形物50について、副走査方向と直交する断面の構成の例を示す。図7(b)は、造形の途中における造形物50を示す断面図である。尚、以下に説明をする点を除き、図7において、図1~6と同じ符号を付した構成は、図1~6における構成と同一又は同様の特徴を有してよい。
【0119】
また、本変形例においても、造形の途中において空隙204に流動性材料等の充填用材料を充填して、その後に充填用材料を除去することにより、内部に空の空隙204を有する造形物50を造形する。また、この場合、図6に関連して上記においても説明をしたように、蓋の形状等に合わせて空隙204を形成する必要等がなくなるため、様々な形状の空隙204を形成することが可能になる。そのため、本変形例においては、造形物50における外周面に沿った部分のみをモデル部202として、それ以外の部分を空隙204にして、造形物50を造形する。この場合、図中に示すように、造形物50の表面に沿った所定の厚さの部分のみが、モデル部202になる。この場合、厚さとは、造形物50の表面と直交する法線方向における厚さのことである。また、この場合、造形物50の表面に沿ったモデル部202の内部の全体が空隙204になる。本変形例によれば、例えば、造形物50の重量を大幅に低減することができる。また、造形に使用するインクの使用量についても大幅に低減して、造形物50の造形コストを適切に抑えることができる。
【0120】
また、このような造形物50を形成する場合、空隙204の周囲を囲む壁面は、様々な角度で傾斜することになる。より具体的に、例えば図7に示すような造形物50を造形する場合、空隙204の周囲を囲む壁面の少なくとも一部は、オーバーハング形状になる。そのため、この場合、空隙204への充填用材料の充填については、モデル部202を形成するインクの層の積層の動作と並行して行い、例えば図7(b)に示すように、積層されるインクの層の上面(積層の上面)と、充填される充填用材料の上面(充填物の上面)とを常に合わせて行うことが好ましい。このように構成すれば、様々な形状の空隙204を適切に形成することができる。また、この場合も、例えば空隙204と造形物50の外部とをつなぐ貫通孔である空気注入孔210及び充填材排出孔212を形成することで、空隙204内に一旦充填した充填用材料を適切に除去できる。
【0121】
また、造形物50の構成、造形物50を造形する造形の動作、及び造形装置12の構成等については、更なる変形例を考えることもできる。例えば、上記においては、図6及び図7を用いて、全ての空隙204について、充填用材料を除去する場合について、説明をした。しかし、造形物50の構成の変形例においては、例えば、一部の空隙204につい
て、充填用材料を除去せずに、充填用材料が充填されたままにすること等も考えられる。
【0122】
また、上記においては、充填用材料として、主に、液体等の流動性材料を用いる場合について、説明をした。しかし、充填用材料としては、液体以外の材料を用いること等も考えられる。この場合、例えば、充填時に固体であり、所定の条件に応じて液化又は気化するような充填用材料を用いること等も考えられる。また、より具体的には、例えばドライアイスのように、固体の状態から気体の状態に昇華する物質等を充填用材料として用いること等も考えられる。また、例えば充填時に液体の充填用材料を用いる場合についても、例えば、充填用材料を気化させて除去すること等も考えられる。
【0123】
続いて、造形物50を造形する造形の動作や造形装置12の構成の更なる変形例について、説明をする。図8は、造形物50を造形する造形の動作の更なる変形例を示す図であり、図6に示した場合と同一又は同様の構成の造形装置12を用いて造形を行う場合について、造形物50の造形の仕方の変形例を示す。尚、以下に説明をする点を除き、図8において、図1~7と同じ符号を付した構成は、図1~7における構成と同一又は同様の特徴を有してよい。
【0124】
上記においても説明をしたように、図6を用いて説明をした造形の動作においては、充填用材料として液体状の流動性材料を充填ユニット130から吐出することにより、造形物50の空隙を充填する。また、これにより、例えば、空隙内でのサポート層として流動性材料を機能させ、空隙の上にオーバーハングしたインクの層を形成する。そして、これらの点については、図8に示す場合においても、同一又は同様にして造形の動作を行う。そして、その上で、図8に示す造形の動作の変形例においては、空隙からのオーバーフロー等により流動性材料が空隙から溢れた場合に造形台104上で流動性材料が大きく広がること等を防ぐために、造形台104上に壁部54を更に形成する。また、これにより、流動性材料が空隙から溢れた場合に、壁部54に囲まれる領域内に流動性材料を貯留する。
【0125】
また、より具体的に、本変形例においては、例えば図中に示すように、溢れた流動性材料を造形台104上に保持するための壁部54を形成する。壁部54については、例えば、造形台104から流動性材料が流出することを防ぐための構成等と考えることもできる。また、壁部54について、オーバーフローした流動性材料を保持するための構成等と考えることもできる。また、この場合、例えば造形物50を造形する動作の初期において、造形物50の造形と並行して(造形物50の造形と同時に)、造形中の造形物50の周囲を囲む壁部54を造形台104上に形成する。また、この場合において、造形物50及びサポート層52との間に流動性材料を貯留できるように、造形物50及びサポート層52との間に隙間を空けた状態で造形物50及びサポート層52の周囲を囲むように、造形台104上に壁部54を形成する。造形物50及びサポート層52の周囲を囲むとは、例えば、造形物50の外側に形成されたサポート層52の更に外側を囲むことである。
【0126】
このように構成した場合、空隙から溢れた流動性材料は、造形台104上で広く広がることなく、壁部54に囲まれた領域内において造形物50と壁部54との間に貯留されることになる。そのため、このように構成すれば、例えば、空隙から流動性材料が溢れた場合も、周囲への影響を適切に抑えることができる。また、この場合、造形装置12において行う造形物50の造形の工程が完了した後(積層動作の完了後)には、例えば造形物50及びサポート層52を造形台104から剥離する前又は後等に、壁部54に囲まれた範囲内の流動性材料のみをスポイトでの吸い取り等で除去して、造形台104の清掃をすればよい。また、流動性材料の除去については、例えば、布による拭き取り等で行ってもよい。また、流動性材料の大部分をスポイト等で除去した後に、布による拭き取りを行うこと等も考えられる。また、壁部54については、例えば流動性材料を除去した後に崩せば
、造形台104上から容易かつ適切に除去できる。そのため、本変形例によれば、例えば、流動性材料を用いて行う造形の動作をより適切に行うことができる。
【0127】
ここで、造形物50及びサポート層52の剥離については、例えば壁部54の除去後に行うことが好ましい。このように構成すれば、例えば、周囲の余計なもの(壁部54)がない状態で剥離の作業をより容易に行うことができる。また、壁部54の高さ(積層方向における高さ)については、溢れた流動性材料が壁部54の外側に漏れ出さない高さ(必要な高さ)であればよい。そのため、壁部54の高さは、例えば図中に示すように、造形物50よりも低くてもよい。また、壁部54については、サポート層52及び造形物50の形成に用いるいずれかの材料(インク)で形成することが考えられる。より具体的に、壁部54については、例えば、サポート層52の材料として用いるインク(サポート材)で形成すること等が考えられる。また、壁部54について、造形物50の造形に用いるいずれかのインクで形成してもよい。この場合、例えば、造形物50の内部の形成に用いる造形専用のインク(モデル材、造形材インク)、クリアインク、着色用のインク(加飾インク、カラーインク)のうちのいずれか又はこれらの複数のインクを用いて形成することが考えられる。また、壁部54について、例えば、サポート材及び、造形物50の造形に用いるインクの両方を用いて形成してもよい。
【0128】
また、図6に関連して上記においても説明をしたように、造形物50の空隙内に流動性材料を充填する場合には、流動性材料が空隙から溢れることを防ぐために、空隙内での流動性材料の上面(液面)が積層上面を越えないように制御することが考えられる。しかし、造形に求められる品質等によっては、空隙内にできるだけ多くの流動性材料を充填することが好ましい場合もある。そして、このような場合、空隙内をほぼ完全に満たすと、表面張力の影響により、通常、表面が少し盛り上がった状態になる。また、この場合、例えば空隙内の流動性材料が不足しないように、必要最小限の量よりも多めの流動性材料を吐出すること等も考えられる。そして、このような場合、積層動作の途中で積層面を超える余分な流動性材料は、充填ユニット130におけるブレード304の動作等により、空隙からオーバーフローして、造形中の造形物50の上面から流出することになる。また、その結果、造形中に造形台104上へ溢れ出る流動性材料の量が多くなること等も考えられる。これに対し、本変形例によれば、例えば、造形台104上へ溢れ出る流動性材料の量が多くなる場合にも、溢れ出た流動性材料を一定の領域内の適切に貯留できる。
【0129】
また、上記においては、図6図8等を用いて、主に、ヘッド部102とは別の充填ユニット130を用いて流動性材料を吐出する場合の構成や動作について、説明をした。しかし、造形装置12の構成の更なる変形例においては、例えば、ヘッド部102内の構成により流動性材料を吐出してもよい。
【0130】
図9は、造形装置12の構成の更なる変形例について説明をする図である。図9(a)は、本変形例における造形装置12の構成の一例を示す。図9(b)は、造形装置12におけるヘッド部102の構成の一例を示す。図9(c)は、本変形例において造形する造形物50の構成の一例を示す。尚、以下に説明をする点を除き、図9において、図1~8と同じ符号を付した構成は、図1~8における構成と同一又は同様の特徴を有してよい。
【0131】
図6図8等を用いて上記においても説明をしたように、充填ユニット130(図6参照)を用いて流動性材料の吐出を行う場合、インクを積層する動作を一時停止させて、流動性材料の吐出を行うことが考えられる。しかし、この場合、造形を一時停止させる回数が多くなると、造形に要する時間が大幅に増大するおそれがある。これに対し、本変形例においては、ヘッド部102内の構成により流動性材料を吐出することにより、造形物50を構成するインクを積層する動作を一時停止させることなく、例えばインクの層を形成するための主走査動作中に流動性材料を更に吐出する。
【0132】
より具体的に、本変形例において、造形装置12は、流動性材料を吐出可能なヘッド部102を備える。また、ヘッド部102は、キャリッジ400、複数のインクジェットヘッド、複数の紫外線光源408、及び平坦化ローラ410を有する。キャリッジ400は、ヘッド部102における各構成を保持する保持部材である。また、本例において、ヘッド部102は、複数のインクジェットヘッドとして、インクジェットヘッド402w、インクジェットヘッド402y、インクジェットヘッド402m、インクジェットヘッド402c、インクジェットヘッド402k、インクジェットヘッド402t、インクジェットヘッド404、及びインクジェットヘッド406を有する。これらの複数のインクジェットヘッドは、例えば、副走査方向における位置を揃えて、主走査方向へ並べて配設される。
【0133】
また、これらのインクジェットヘッドのうち、インクジェットヘッド402w、インクジェットヘッド402y、インクジェットヘッド402m、インクジェットヘッド402c、インクジェットヘッド402k、及びインクジェットヘッド402t、(以下、インクジェットヘッド402w~tという)は、造形物50の材料として用いるインクを吐出するインクジェットヘッドであり、互いに異なる色のインクを吐出する。より具体的に、インクジェットヘッド402wは、白色(W色)のインクを吐出する。インクジェットヘッド402yは、イエロー色(Y色)のインクを吐出する。インクジェットヘッド402mは、マゼンタ色(M色)のインクを吐出する。インクジェットヘッド402cは、シアン色(C色)のインクを吐出する。インクジェットヘッド402kは、ブラック色(K色)のインクを吐出する。また、インクジェットヘッド402tは、クリアインクを吐出する。この場合、クリアインクとは、例えば、無色の透明色(T)であるクリア色のインクのことである。
【0134】
また、ヘッド部102が有するインクジェットヘッドのうち、インクジェットヘッド404は、サポート層52の材料であるサポート材として用いられるインクを吐出する。サポート材としては、例えば、サポート層用の公知の材料を好適に用いることができる。また、インクジェットヘッド404としては、例えば、インクジェットヘッド402w~tと同一又は同様のインクジェットヘッドを好適に用いることができる。また、インクジェットヘッド406は、流動性材料を吐出するインクジェットヘッドである。インクジェットヘッド406は、例えば主走査動作時に流動性材料を吐出することにより、造形物50の造形中の造形の動作と並行して流動性材料を吐出する。インクジェットヘッド406としても、例えば、インクジェットヘッド402w~tと同一又は同様のインクジェットヘッドを好適に用いることができる。
【0135】
尚、本変形例においては、ヘッド部102がインクジェットヘッド406を有することにより、ヘッド部102内の構成により流動性材料を吐出する。また、本変形例のヘッド部102については、例えば、図1~8等に示した構成におけるヘッド部102に対してインクジェットヘッド406を追加した構成等と考えることもできる。
【0136】
複数の紫外線光源408は、インクを硬化させるための光源(UV光源)であり、紫外線硬化型インクを硬化させる紫外線を発生する。また、本例において、複数の紫外線光源408のそれぞれは、間にインクジェットヘッドの並びを挟むように、ヘッド部102における主走査方向の一端側及び他端側のそれぞれに配設される。紫外線光源408としては、例えば、UVLED(紫外LED)等を好適に用いることができる。平坦化ローラ410は、造形物50の造形中に形成されるインクの層を平坦化するための平坦化手段である。平坦化ローラ410は、例えば主走査動作時において、インクの層の表面と接触して、硬化前のインクの一部を除去することにより、インクの層を平坦化する。また、本変形例において、平坦化ローラ410は、積層動作の途中で造形物50の空隙において積層面
を超える余分な流動性材料を除去するための構成としても機能する。この場合、例えば、インクの層の平坦化の動作においてインクと共に余分な流動性材料を除去することが考えられる。また、例えば図8に示した充填ユニット130におけるブレード304と同様に、平坦化ローラ410により余分な流動性材料を積層面から押し出すこと等も考えられる。
【0137】
このように構成した場合、ヘッド部102により造形を行う造形部の他に充填部等を設けることなく、造形部の機能の一部として流動性材料の吐出を行うことができる。そのため、本変形例によれば、例えば、造形装置12の構成をより簡素化及び小型化すること等が可能になる。また、この場合、上記においても説明をしたように、インクを積層する動作を一時停止させることなく、造形物50の空隙内へ流動性材料を充填することができる。そのため、本変形例によれば、一時停止により造形に要する時間が増大することを防ぐこともできる。また、これにより、例えば、造形物50の造形をより効率的に行うこともできる。
【0138】
また、この場合、空隙内へ流動性材料を吐出するタイミングで造形の一時停止を行う必要がないため、より高い自由度で空隙を形成すること等も可能になる。そのため、本変形例によれば、例えば、形成する空隙の形状や個数の自由度をより高めること等も可能になる。また、この場合、インクジェットヘッドを用いて流動性材料を吐出することにより、流動性材料の吐出量や吐出位置について、より精密に制御することもできる。また、これにより、例えば、様々な形状の空隙をより適切に形成することができる。
【0139】
また、この場合、例えば図9(c)に示すように、造形物50の形状に合わせた空隙204をより高い精度で形成すること等が可能になる。より具体的に、図9(c)において、左側の図は、完成した造形物50の外観(造形物外観)の一例を示す。また、右側の図は、造形物50の断面の様子をサポート層52の断面と共に示す。また、図9(c)に示す造形物50については、造形物50の形状の変形例と考えることもできる。この場合も、造形物50は、例えば図7に示した造形物50等と同様に、モデル部202及び空隙204を有する。また、この場合、造形物50における空隙204については、例えば、ヘッド部102におけるインクジェットヘッド406から吐出する流動性材料を利用して形成する。より具体的に、この場合、造形物50の造形時において、空隙204を形成すべき領域に流動性材料を充填した状態で周囲のモデル部202を形成することで、モデル部202及び空隙204を有する造形物50を造形する。また、この場合、空隙204内に充填した流動性材料については、造形に関連する全ての工程の完了までに造形物50内から抜き取ることが考えられる。この場合、例えば造形物50の表面の一部に孔を形成しておき、その孔を介して流動性材料を抜き取ること等が考えられる。また、造形物50の用途や求められる品質等によっては、空隙204内に流動性材料を充填したままの状態で、造形物50の造形に関連する全ての工程を完了してもよい。
【0140】
ここで、上記において説明をした各構成において、造形物50の外部のサポート層52の材料(外部のサポート材)としては、固体の状態でモデル部202を支持するサポート材を用いる。また、より具体的には、このようなサポート材として、例えば紫外線硬化樹脂を含む紫外線硬化型インク等を用いることが考えられる。これに対し、上記において説明をした各構成のように、流動性材料を用いて造形物50内に空隙204を形成する場合、空隙204内に充填する流動性材料について、空隙204内で周囲のモデル部202を支持するサポート部を構成する材料(流動性のサポート材)等と考えることもできる。そして、このように考えた場合、造形物50の内部の空隙204に流動性材料を充填する構成について、例えば、造形物50の内部の空隙204用のサポート材としては流動性材料を用い、造形物50の外部用のサポート材としては紫外線硬化型インクを用いる構成等と考えることもできる。
【0141】
また、造形の動作や造形装置12の構成の更なる変形例においては、例えば造形物50の外側で造形物50(モデル部202)を支持するためのサポート材としても、流動性材料を用いてもよい。また、この場合、例えば、水槽状の液体貯留容器500を用いて、造形物50を造形すること等が考えられる。
【0142】
図10は、造形の動作や造形装置12の構成の更なる変形例について説明をする図である。図10(a)は、本変形例における造形装置12の構成の一例を示す。尚、以下に説明をする点を除き、図10において、図1~9と同じ符号を付した構成は、図1~9における構成と同一又は同様の特徴を有してよい。
【0143】
本変形例において、造形装置12は、例えば、図9(a)に示した造形装置12の構成に加え、液体貯留容器500を更に備える。液体貯留容器500は、液体を貯留する水槽状の容器であり、第1液室502、第2液室504、フィルタ506、及びポンプ508を有する。第1液室502は、造形中の造形物50を液体に浸漬するための液室である。第1液室502は、造形台104を内部に収容可能なサイズの液室であり、造形台104を挟んでヘッド部102と対向する位置に配設され、造形中の造形物50を上面に載置している造形台104を内部に収容することにより、第1液室502内の液体に造形台104と共に造形物50を浸漬する。また、本変形例において、第1液室502の液面は、図中に示すようにオーバーフローをすることにより、ヘッド部102の下面より低く、かつ、造形中の積層面に合わせた位置に常に維持されている。また、第1液室502の液面の高さ(液面の位置)については、例えば、液体がオーバーフローする出口の高さを調整することで設定が可能である。また、この場合、造形装置12は、造形の動作の進行に応じて積層方向(液体の深さ方向)における造形台104の位置を積層高さ分だけ徐々に変化させ、第1液室502における深い位置へ造形台104を移動させる。
【0144】
また、第2液室504は、第1液室502のオーバーフローにより第1液室502から溢れた液体を貯留する液室である。第2液室504の液面の位置については、例えば図中に示すように、第1液室502の液面の位置よりも下になるように調整する。また、本変形例において、第1液室502と第2液室504とは、フィルタ506及びポンプ508を介して繋がっている。フィルタ506は、第2液室504から第1液室502へ流れる液体を濾過するフィルタである。ポンプ508は、第2液室504から第1液室502へ向けて液体を流すポンプであり、少なくとも造形物50の造形中に第2液室504から第1液室502へ液体を送り込む。このように構成すれば、フィルタ506で液体を濾過しつつ、第1液室502と第2液室504との間で液体を適切に循環させることができる。また、ポンプ508により第2液室504から第1液室502へ液体を送り、かつ、第1液室502から溢れた液体を第2液室504へ流すことにより、第1液室502の液面の位置を適切に調整できる。また、この場合、例えば図中に示すように、積層上面の位置と第1液室502内の液体の液面の位置とが一致するように調整を行うことが好ましい。また、このように液体を循環させることにより、例えば、液体貯留容器500内の液体を適切に再利用することができる。また、例えば長期間の使用により液体が汚れた場合等には、図示を省略した廃液口から液体を排出して、新しい液体に交換することが好ましい。
【0145】
このように構成した場合、例えば、造形物50の外周側においてオーバーハングする部分についても、固体の状態のサポート層を形成することなく、第1液室502内の液体により適切に支持できる。この場合、固体の状態のサポート層とは、例えば、紫外線硬化型インクで形成するサポート層のことである。そのため、本変形例においても、例えば、様々な形状の造形物50を適切に造形することができる。
【0146】
また、上記においても説明をしたように、造形物50の造形時に固体の状態のサポート
層を形成した場合、造形装置12において行う造形の工程の完了後にサポート層を除去することが必要になる。そして、この場合、サポート層の除去に多くの時間が必要になり、造形物50の造形を効率的に行うことが難しくなる場合もある。また、除去したサポート層が廃棄物になり、廃棄のコストや手間がかかること等も考えられる。これに対し、本変形例によれば、このような問題を適切に防ぐことができる。そのため、本変形例によれば、例えば、造形物50の造形を効率的かつ適切に行うことができる。
【0147】
また、この場合も、例えばヘッド部102から流動性材料を吐出することにより、造形物50の内部に空隙を形成することができる。そして、この場合、例えば空隙内から流動性材料が溢れたとしても、第1液室502内に流動性材料を貯留することができる。そのため、例えば図9を用いて説明をした場合のように造形台104上に壁部54(図9参照)等を形成しなくても、流動性材料を適切に管理することができる。
【0148】
また、この場合、第1液室502内に最初から貯留しておく液体については、例えば、ヘッド部102から吐出する流動性材料と同じ液体にすることが好ましい。このように構成すれば、例えば、流動性材料が流れ込むことで第1液室502内の液体の組成が変化すること等を適切に防ぐことができる。また、造形に求められる条件等によっては、第1液室502内に最初から貯留しておく液体として、ヘッド部102から吐出する流動性材料と異なる液体を用いてもよい。
【0149】
また、本変形例においても、第1液室502内の液体のみで造形物50を支持するのではなく、固体の状態のサポート層52を更に形成してもよい。より具体的に、例えば図中に示すように、造形物50の一部を支えるために固体の状態のサポート層52を形成すること等が考えられる。このように構成すれば、例えば、造形中により確実に支持することが好ましい部分等について、固体の状態でサポート層52を用いてより確実に支持することができる。また、この場合、例えば、造形物50の造形を開始する前に造形台104上にサポート層52を形成して、その上に形成する造形物50の一部を支持すること等が考えられる。
【0150】
また、造形しようとする造形物50の形状によっては、固体の状態のサポート層52を形成することが必要になる場合もある。図10(b)、(c)は、固体の状態のサポート層52の要否と造形物50の形状との関係の一例を示す。また、これらのうち、図10(b)は、固体の状態のサポート層52を形成せずに造形可能な造形物50の形状の一例を示す。図10(c)は、固体の状態のサポート層52を形成することが必要になる造形物50の形状の一例を示す。
【0151】
また、より具体的に、図10(b)に示す造形物50は、造形台104上において下から連続的に連なる形状の造形物50である。このような形状の造形物50の場合、造形物50を構成するいずれのインクの層の形成時においても、第1液室502内の液体(液面)での支持を行うことで、インクの層を適切に形成できる。そのため、この場合、固体の状態のサポート層52を形成しなくても、造形物50を適切に造形することができる。
【0152】
しかし、図10(c)に示す造形物50を造形する場合、図中に下方凸部152として示す部分のような部分が存在することで、造形台104上において下から連続的に連なる形状にはならない。そして、このような非連続的な造形物50のような造形を行う場合、単に液体で造形中のインクの層を支持ずるのみでは、適切に造形を行うことができないと考えられる。より具体的に、この場合、形成中のインクの層において下方凸部152に含まれる部分は、造形台104上において下から連続的に連なる他の部分から離れた状態で形成される。そして、この場合、単に液体上にインクの層を形成するのみでは、下方凸部152に含まれる部分の位置が定まらず、例えば液体上に浮かんで意図しない位置へ流れ
ていくおそれがある。そのため、このような場合には、例えば図中に示すように、固体の状態のサポート層52を形成して、下方凸部152に含まれる部分と繋げることが好ましい。このように構成すれば、例えば、下方凸部152に含まれる部分が意図しない位置へ流れていくこと等を適切に防ぐことができる。また、これにより、例えば、様々な形状の造形物50をより適切に造形することができる。
【0153】
続いて、流動性材料を用いて造形物50に空隙を形成する動作等に関し、更なる補足説明等を行う。上記においては、流動性材料として用いる物質の一例として、例えば、水、飽和炭化水素(パラフィン系、ナフテン系等)、又は鉱物油、グリセリン、又はこれらの混合物等を用いること等を説明した。しかし、造形に用いる流動性材料として必要な機能を満たすのであれば、これら以外の物質を流動性材料として用いてもよい。
【0154】
また、この場合、流動性材料として必要な機能については、例えば、造形物50の造形に用いるインクを流動性材料の上に吐出した場合にインクを適切に硬化させ得ること等が考えられる。そして、そのためには、例えば、流動性材料の上にインクの液滴が吐出された場合において、インクを硬化させるために必要な時間内でインクが流動性材料中に降下(沈降)することや、変質等が生じないことが必要である。また、より具体的に、流動性材料としては、例えば、(a)比重がインクに近いか重い物質、又は(b)粘度が高く、インクが沈むのに時間がかかる物質等を用いることが考えられる。(a)に該当する材料としては、例えばパラフィン系溶剤を用いることが考えられる。また、フッ素系不活性液、例えばハイドロフルオロエーテルやフルオロカーボン類等を用いることも考えられる。また、(b)に該当する材料としては、例えば、グリセリンや、グリセリンと水との混合液等を用いることが考えられる。
【0155】
尚、その上に形成するインクの層を支持するという機能のみを考えた場合、より高粘度である方がインクの沈み込みが少ないため、空隙を充填する充填材としての機能は良好であるといえる。しかし、この場合、最後に造形物50から抜き取りを行う場合に、抜き取りが難しくなるおそれがある。そのため、流動性材料の粘度については、抜き取りの動作等も考慮して、適度な粘度に調整することが好ましい。また、流動性材料をインクジェットヘッドから吐出する場合には、粘度が高いと吐出が困難になる。そのため、この場合には、流動性材料の粘度について、例えば1m~30mPa・sec.程度に調整することが好ましい。また、流動性材料に対しては、例えば流動性材料の劣化防止や、特性の調整等の目的で、防腐剤、界面活性剤、酸化防止剤、又は増粘剤等の添加剤を添加してもよい。
【0156】
また、インクの沈降速度との兼ね合いにより、インク(インク滴)の比重は流動性材料よりも大きくてもよい。そのため、流動性材料としては、使用するインクの物性に応じて、例えば、上記に示したように、飽和炭化水素(パラフィン系、ナフテン系等)、鉱物油等を好適に用いることができる。また、シリコンオイル等の液体を用いること等も考えられる。
【0157】
また、本願の発明者は、実験等により、実用上、流動性材料として水を好適に用いることができること等も確認した。また、水としては、例えば水道水等を好適に用いることができる。流動性材料として水を用いる場合、例えば、流動性材料のコストを大幅に低減することが可能になる。また、環境への負荷等を大幅に低減すること等も可能になる。また、この場合、流動性材料の粘度が十分に低くなるため、インクジェットヘッドを用いて流動性材料を適切に吐出することも可能になる。また、流動性材料としては、例えば、各種の添加剤等を添加した水を用いてもよい。また、例えば、水を主成分とする液体を用いること等も考えられる。
【0158】
また、上記においては、流動性材料の用途について、主に、造形物50内に空隙を形成する場合に用いることについて、説明をした。しかし、造形の動作の更なる変形例においては、例えば、流動性材料を用いて、サポート層内に空隙を形成すること等も考えられる。このように構成すれば、例えば、サポート層の材料として用いる紫外線硬化型インク等の使用量を低減できる。また、これにより、造形のコストを大幅に低減することができる。また、この場合、サポート層の一部を液体の状態にすることで、例えば、サポート層の除去に要する時間を短縮すること等も可能になる。また、例えば、サポート層の除去により発生する廃棄物の量を低減すること等も可能になる。
【0159】
また、この場合、サポート層の材料として用いる紫外線硬化型インクについては、サポート層における固体の部分を構成するサポート材(固体部分用のサポート材)の一例である。また、この場合、固体部分用のサポート材と流動性材料との関係について、固体部分用のサポート材が流動性材料により徐々に溶解する関係にすること等も考えられる。より具体的に、例えば、固体部分用のサポート材として水溶性の材料を用い、流動性材料として水等を用いる場合、サポート層における固体部分は、造形物50の造形中に、流動性材料によりある程度溶解することになる。そのため、このように構成すれば、例えば、サポート層の除去に要する時間をより適切に短縮できる。また、この場合、例えば図8図9等を用いて説明をしたように、造形物50の周囲に流動性材料を貯留すれば、サポート層の外側部分についても、造形中にある程度溶解させることができる。そのため、このように構成すれば、サポート層の除去に要する時間を更に短縮することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0160】
本発明は、例えば造形物の製造方法に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0161】
10・・・造形システム、12・・・造形装置、14・・・制御PC、50・・・造形物、52・・・サポート層、54・・・壁部、60・・・蓋、62・・・充填材、70・・・枠体、72・・・錘、102・・・ヘッド部、104・・・造形台、106・・・走査駆動部、108・・・トレイ、110・・・吸着ユニット、112・・・ガイドバー、120・・・制御部、130・・・充填ユニット、132・・・ガイドバー、152・・・下方凸部、202・・・モデル部、204・・・空隙、210・・・空気注入孔、212・・・充填材排出孔、302・・・吐出ノズル、304・・・ブレード、400・・・キャリッジ、402・・・インクジェットヘッド、404・・・インクジェットヘッド、406・・・インクジェットヘッド、408・・・紫外線光源、410・・・平坦化ローラ、500・・・液体貯留容器、502・・・第1液室、504・・・第2液室、506・・・フィルタ、508・・・ポンプ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10