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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】化学療法の改善
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/352 20060101AFI20221213BHJP
   A61K 31/337 20060101ALI20221213BHJP
   A61K 33/24 20190101ALI20221213BHJP
   A61K 31/282 20060101ALI20221213BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20221213BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
A61K31/352
A61K31/337
A61K33/24
A61K31/282
A61P35/00
A61P43/00 121
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2021127278
(22)【出願日】2021-08-03
(62)【分割の表示】P 2018555499の分割
【原出願日】2017-04-21
(65)【公開番号】P2021169534
(43)【公開日】2021-10-28
【審査請求日】2021-08-12
(31)【優先権主張番号】62/326,144
(32)【優先日】2016-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518356338
【氏名又は名称】ノクソファーム リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100182730
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 浩明
(72)【発明者】
【氏名】グレイアム ケリー
【審査官】伊藤 幸司
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-513812(JP,A)
【文献】特表2006-504705(JP,A)
【文献】国際公開第2005/049008(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0036834(US,A1)
【文献】British Journal of Cancer,2009年,100(4),pp.649-655
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌の処置又は予防を必要としている人において癌を処置または予防するための方法に使用するためのプラチン、タキサン、またはこれらの組合せを含む第1の組成物であって前記処置又は予防が;
次の構造式で表されるイドロノキシル、
【化1】
またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくは多形体を含む第2の組成物を投与することを含み、
ここで当該方法は:
治療用量の前記第1の組成物を28日以上投与する処置サイクルを含み、
前記第2の組成物が前記人の直腸、膣または尿道に投与される、組成物。
【請求項2】
癌の処置又は予防を必要としている人において癌を処置または予防するための方法に使用するための、次の構造式で表されるイドロノキシル;
【化2】
または、その薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくは多形体を含む第2の組成物であって、前記処置又は予防が、プラチン、タキサン、またはこれらの組合せを含む第1の組成物を投与することを含み、
ここで当該方法は:
治療用量の前記第1の組成物を28日以上投与する処置サイクルを含み
前記第2の組成物が、前記人の直腸、膣または尿道に投与される、組成物。
【請求項3】
前記第1の組成物が静脈内に投与される、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記第1の組成物が投与される前に、前記第2の組成物が投与される、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記第1の組成物が投与される前に、前記第2の組成物が少なくとも5日間にわたって毎日投与される、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記第1の組成物が前記第2の組成物が最初に投与された日の少なくとも1日後に初めて投与される、請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
前記第1および第2の組成物が処置サイクルに従って投与され、前記処置サイクルにおいて、
- 前記第2の組成物が14日以下の期間にわたって毎日投与され;
- 前記第1の組成物が前記処置サイクル中に1回投与され、前記第1の組成物が、前記第2の組成物が投与された最初の日の次の日に投与される、請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記処置サイクルが30~90日からなる、請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記処置サイクルが1.5~2か月からなる、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記第1の組成物を5又は6回より少ない処置サイクル投与する、請求項1~9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
前記第1の組成物を2~5回の処置サイクル投与する、請求項10項に記載の組成物。
【請求項12】
前記第1の組成物を3又は4回の処置サイクル投与する、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記第2の組成物が、100~3000mgの1日量のイドロノキシルを提供するように投与される、請求項1~の12いずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
前記第2の組成物が、400~1600mgの1日量のイドロノキシルを提供するように投与される、請求項1~13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
前記タキサンがパクリタキセル、ドセタキセル、カルバジタキセルである、請求項1~14のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
前記プラチンがシスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチンまたはネダプラチンである、請求項1~15のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項17】
前記プラチンがカルボプラチンである、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記癌が、前立腺癌、乳癌、卵巣癌、小細胞肺癌、神経芽腫及び肉腫からなる群から選択される、請求項1~17のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項19】
前記イドロノキシルが少なくとも部分的に油性基剤中に溶解している、請求項1~18のいずれか1項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は癌の化学療法に関し、特に、白金構造に基づく薬物およびタキサン構造に基づく薬物を特に含む化学療法、または白金およびタキサンを含む併用化学療法に対して薬物抵抗性または非感受性を有する癌の治療法に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞分裂の阻害(細胞分裂停止)または細胞死(細胞毒性)を目的として細胞に致死性および亜致死性損傷を与える薬物は、異常な細胞増殖を特徴とする状態の処置において医学界で広く使用されている。これには、良性および悪性の新生物、異形成および化生、ならびに関節リウマチなどの非癌性状態が含まれる。
【0003】
これらの薬物は、一般に、集合的に細胞毒性化学療法と呼ばれる。これらをカテゴリー化する1つの基準は、その一般的な化学構造である。
【0004】
この種類の薬物の一例は、白金錯体に基づく関連化合物の群である。これらは非公式にプラチン(platin)と呼ばれ、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチンおよびネダプラチンなどの市販の実体を含む。
【0005】
プラチンは、そのDNAに結合し、その修復機構を妨げて、最終的に細胞死をもたらすことにより、増殖性細胞に対して活性である。細胞プロセスにおける第1段階は、水の分子がプラチン分子の塩化物イオンの1つを置換することであると考えられる。得られた中間体構造は次に、DNAヌクレオチド上の単一の窒素に結合することができる。その後、第2の塩化物もまた別の水分子によって置換され、白金剤は次に第2のヌクレオチドに結合する。シスプラチンのDNAとの結合研究は、同じ鎖上の2つの隣接するグアニンにおいて窒素7に対する優先度を示している。また程度は低いが、アデニンへ、かつ鎖を越えて結合する。
【0006】
シスプラチンのDNAへの結合は、鎖内架橋の生成およびDNA付加物の形成を引き起こす。付加物、すなわち薬物-DNA複合体はDNA修復タンパク質の注意を引き付け、これは、不可逆的に結合されることになる。プラチン薬物の結合により得られたDNA形状の歪みは効果的な修復を防止し、それにより、細胞死になる。
【0007】
細胞毒性化学療法の別の例は、タクスス(Taxus)属(イチイ)の植物から最初に同定され、タキサジエンコアを特徴とするのでタキサンと呼ばれる薬物の群である。タキサンの市販の例としては、パクリタキセル、ドセタキセルおよびカバジタキセルが挙げられる。
【0008】
タキサン類の薬物の主な作用機構は、細胞の微小管の破壊である。微小管は、細胞分裂の前に染色体が集合する紡錘体を提供することにより、細胞分裂にとって不可欠である。タキサンは、微小管内のグアノシン二リン酸結合チューブリンを安定化し、それにより、脱重合が防止されるので細胞分裂プロセスが阻害される。
【0009】
これらの2つの種類の細胞毒性薬はそれぞれ単独療法としての使用、すなわちそれらを単独で使用することが認可されているが、両方の作用機構の組合せがいずれかの単独の機構よりも有益な抗癌効果をもたらし得るという理論的根拠と共に、両方の種類を組み合わせて投与することが一般的である。
【0010】
これらの2つの種類の細胞毒性薬は、これらの間で、癌、特に固形癌の管理において2つの最も一般的に使用される治療を表す。
【0011】
プラチンおよびタキサンに基づく化学療法の全てに関する固有の問題はその非選択性である。すなわち、これらは癌細胞と非癌細胞とを区別しない。いずれの場合もその分子標的は、健康な細胞および癌性細胞の両方に共通している。その治療的使用は、薬剤の細胞毒性効果が細胞の代謝活性および成長速度に正比例することに依存しており、これは、癌患者では癌組織であることが多い。
【0012】
しかしながら、体内の全ての組織は程度の差はあっても細胞分裂を受け、これらの組織もプラチンおよびタキサンに基づく化学療法の細胞毒性効果にさらされる。最もリスクのある組織は、腸の内層、骨髄、毛包、精巣および神経組織である。症状としては、貧血、白血球減少、悪心、嘔吐、下痢、粘膜炎、脱毛、聴力障害および末梢神経損傷が挙げられる。
【0013】
これらの薬剤のこの固有の非選択性は4つの残念な結果を招く。
【0014】
第1に、任意の時点および処置期間における薬物の量に関して、患者に与えることができる薬物の量を制限する働きをする。これは、大多数の場合に処置が治癒的であるとは思えないことを意味する効果がある。これについての証拠は、プラチンおよびタキサンに基づく化学療法が依然として最も一般的に使用される癌治療の形であるにもかかわらず、一般的な癌形態の大部分について、かつあまり一般的でない形態の多くについて10年の生存見込みが過去40年にわたって少ししかまたは全く改善を示していないという事実にある。口、食道、胃、大腸、腎臓、膀胱、膵臓、脳、卵巣および子宮頸部の癌の場合、生存見込みは非常に悪いままである。
【0015】
第2に、標準的な投薬量に関連するプラチンおよびタキサンに基づく化学療法の厳しさにさえ耐えることができない可能性のある患者において、プラチンおよびタキサンに基づく化学療法を使用する能力を制限する働きをする。これは、特に、高齢もしくは虚弱な個人、または心血管疾患などの癌に関連しない基礎疾患のある個人を指す。
【0016】
第3に、若年患者(乳児、小児、青年)を身体的損傷にさらし、これは永久的な可能性があり、生涯にわたる重大な結果をもたらす。
【0017】
第4に、癌細胞による薬物抵抗性機構の発生を克服するために投薬量のレベルが上昇されることを妨げる。このような機構は多くの研究の主題となっており、薬物を細胞から排出する働きをするポンピング機構の上方制御、薬物の細胞内への侵入を阻止するタンパク質の上方制御、DNA修復機構などの修復機構の上方制御、および標的経路の代替としてのシグナル伝達経路の上方制御を含む様々な異なる生物学的応答が記載されているが、ほとんど不明のままである。このような薬物抵抗性機構は、本質的に起こる(一次抵抗性として知られている)か、あるいはプラチンおよびタキサンに基づく化学療法にさらされた後に発生する(獲得抵抗性として知られている)。一次および獲得抵抗性に関与する機構は同様であると考えられる。1つの形態の細胞毒性薬に対する抵抗性は、一般に、その細胞毒性作用の機構に関係なく他の形態の細胞毒性薬に対する抵抗性を付与する。これは、多剤耐性として知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
従って、癌および望ましくない細胞増殖に関連する疾患の処置のために、プラチンおよび/またはタキサンに基づいた細胞毒性化学療法を含む、新規の、改善された、より良好な、および/または代替の処置レジメンを特定することが強く必要とされている。
【0019】
さらに、プラチンおよび/またはタキサン治療の使用に関連する健康への望ましくない影響に対処する薬剤を利用する方法が必要とされている。
【0020】
さらに、他の方法ではこのような治療に耐えることができない高齢者、虚弱者および慢性疾患者などの個人に対してこのような治療が有効なレベルで施されることを可能にし得る、プラチンおよび/またはタキサン治療の望ましくない副作用を改善することが必要とされている。
【0021】
さらに、プラチンおよび/またはタキサンに対する薬物抵抗性機構の存在を克服するような方法で細胞毒性薬を送達できることが必要とされている。
【0022】
また、治療効果のために必要とされるプラチンおよび/またはタキサンの投薬量または量を最小限にすることも必要とされている。
【0023】
本明細書における任意の従来技術への言及は、この従来技術が任意の権限において共通の一般知識の一部を形成すること、あるいはこの従来技術が、従来技術の他の断片と関連する、および/または結合されるものとして理解されることが当業者により合理的に予期され得ることを承認または暗示するものではない。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明は、上記で議論された必要性または制限の1つまたは複数に対処しようとするものであり、一実施形態において、癌を処置または予防するための方法を提供する。本方法は、それを必要としている人に、
- プラチン;または
タキサン;または
プラチンおよびタキサンの組合せ
を含む第1の組成物と、
- 一般式(I):
【化1】
(式中、
は、H、またはRCOであり、ここで、Rは、C1~10アルキルまたはアミノ酸であり;
は、H、OH、またはRであり、ここで、Rは、アミノ酸またはCORであり、Rは既に定義した通りであり;
AおよびBはそれらの間にある原子と一緒に、
【化2】
の群から選択される6員環を形成し、ここで、
は、H、COR(ここで、Rは、H、OH、C1~10アルキルまたはアミノ酸である)、CO(ここで、Rは、C1~10アルキルである)、COR(ここで、Rは、H、C1~10アルキルまたはアミノ酸である)、COOH、COR(ここで、Rは既に定義した通りである)、またはCONHR(ここで、Rは既に定義した通りである)であり;
は、H、CO(ここで、Rは既に定義した通りである)、またはCOROR(ここで、RおよびRは既に定義した通りである)であり、2つのR基が同じ基に結合される場合、これらは同一であるか、または異なっており;
は、H、CO(ここで、Rは既に定義した通りである)、COROR(ここで、RおよびRは既に定義した通りである)、置換もしくは非置換アリール、または置換もしくは非置換ヘテロアリールであり;
Xは、O、NまたはSであり;
Yは、
【化3】
(ここで、Rは、H、またはC1~10アルキルである)であり;かつ
【化4】
は、単結合または二重結合のいずれかを表す)
の化合物を含む第2の組成物と
を投与することを含み、第2の組成物は、人の直腸、膣または尿道に投与される。
【0025】
本方法は、最適以下または治療量以下の用量のプラチン、タキサン、またはこれらの組合せを利用し得る。
【0026】
本方法は、プラチン単独、またはタキサン単独、またはプラチンおよびタキサンの組合せ単独では処置されない癌細胞の処置に適用可能であり得る。
【0027】
別の態様では、本方法は、プラチン単独、またはタキサン単独、またはプラチンおよびタキサンの組合せ単独による治療に対して獲得抵抗性を有する癌細胞の処置に適用可能であり得る。
【0028】
一実施形態では、第1および第2の組成物は処置サイクルに従って投与され、処置サイクルにおいて、
- 第1の組成物は処置サイクル中に1回投与され、第1の組成物は、第2の組成物が最初に投与された後に、初めて投与される;
- 第2の組成物は、少なくとも処置サイクルの期間にわたって投与される。
【0029】
処置サイクルは、第1の組成物の投与の日に始まり、第1の組成物の次の投与の期日が来る前日に完了する。従って、1回目の処置サイクルは、第1の組成物の1回目の投与の日に始まり、第1の組成物の2回目の投与の期日が来る前日に完了する。
【0030】
本方法は、2回以上の処置サイクルを含み得る。
【0031】
本方法は、6回未満の処置サイクル、好ましくは2~4回の処置サイクルを含み得る。
【0032】
本方法に従う処置サイクルは21~28日よりも長く、好ましくは30、60または90日であり得る。
【0033】
さらなる実施形態では、第2の組成物は、1回目の処置サイクルよりも前の期間に第1の組成物の投与がない状態で投与され得る。
【0034】
上記の方法において、タキサンはパクリタキセルでよく、プラチンはカルボプラチンでよい。
【0035】
別の実施形態では、人において癌を処置または予防する際に使用するための、本明細書に記載される一般式(I)の化合物が提供されており、本化合物は、その人の直腸、膣または尿道に提供され、その人は、プラチンまたはタキサンまたはプラチンおよびタキサンの組合せを受けたことがあるか、あるいは受ける予定である。一実施形態では、その人は、最適以下の用量のプラチンまたはタキサンまたはプラチンおよびタキサンの組合せを受けたことがあるか、あるいは受ける予定である。その人の癌細胞は、プラチン単独、またはタキサン単独、またはプラチンおよびタキサンの組合せ単独では処置されない細胞でよく、例えば、細胞は、タキサンまたはプラチン治療に対する抵抗性を発現していてもよい。
【0036】
プラチンまたはタキサンまたはプラチンおよびタキサンの組合せは、第1の組成物の形態で提供され得る。一般式(I)の化合物は、第2の組成物の形態で提供され得る。
【0037】
一実施形態では、一般式(I)の化合物は、第1の組成物をまだ受けたことがなく、かつ受ける予定である人において使用するためのものである。別の実施形態では、一般式(I)の化合物は、第1の組成物を受けたことがある人において使用するためのものである。
【0038】
一実施形態では、第1および第2の組成物は処置サイクルに従って使用するためのものであり、処置サイクルにおいて、
- 第1の組成物は処置サイクル中に1回投与され、第1の組成物は、第2の組成物が最初に投与された後に、初めて投与される;
- 第2の組成物は、少なくとも処置サイクルの期間にわたって投与される。
【0039】
処置サイクルは、第1の組成物の投与の日に始まり、第1の組成物の次の投与の期日が来る前日に完了する。従って、1回目の処置サイクルは、第1の組成物の1回目の投与の日に始まり、第1の組成物の2回目の投与の期日が来る前日に完了する。一般式(I)の化合物は、2回以上の処置サイクルまたは6回未満の処置サイクル、好ましくは2~4回の処置サイクルを受けた人において使用するためのものであり得る。一般式(I)の化合物は、21~28日よりも長い、好ましくは30、60または90日である処置サイクルにおいて使用するためのものであり得る。
【0040】
一般式(I)の化合物は、1回目の処置サイクルよりも前の期間に第1の組成物の投与がない状態で使用するためのものであり得る。
【0041】
好ましくは、タキサンはパクリタキセルでよく、プラチンはカルボプラチンでよい。
【0042】
別の実施形態では、人において癌を処置または予防するための、本明細書に記載される一般式(I)の化合物の使用が提供されており、本化合物は、その人の直腸、膣または尿道に提供され、その人は、プラチンまたはタキサンまたはプラチンおよびタキサンの組合せを受けたことがあるか、あるいは受ける予定である。一実施形態では、その人は、最適以下の用量のプラチンまたはタキサンまたはプラチンおよびタキサンの組合せを受けたことがあるか、あるいは受ける予定である。その人の癌細胞は、プラチン単独、またはタキサン単独、またはプラチンおよびタキサンの組合せ単独では処置されない細胞でよく、例えば、細胞は、タキサンまたはプラチン治療に対する抵抗性を発現していてもよい。
【0043】
プラチンまたはタキサンまたはプラチンおよびタキサンの組合せは、第1の組成物の形態で提供され得る。一般式(I)の化合物は、第2の組成物の形態で提供され得る。
【0044】
一実施形態では、一般式(I)の化合物は、第1の組成物をまだ受けたことがなく、かつ受ける予定である人において使用される。別の実施形態では、一般式(I)の化合物は、第1の組成物を受けたことがある人において使用される。
【0045】
別の実施形態では、一般式(I)の化合物は、第1の組成物を受けたことがある人において使用される。一実施形態では、第1および第2の組成物は処置サイクルに従って使用され、処置サイクルにおいて、
- 第1の組成物は処置サイクル中に1回投与され、第1の組成物は、第2の組成物が最初に投与された後に、初めて投与される;
- 第2の組成物は、少なくとも処置サイクルの期間にわたって投与される。
【0046】
処置サイクルは、第1の組成物の投与の日に始まり、第1の組成物の次の投与の期日が来る前日に完了する。従って、1回目の処置サイクルは、第1の組成物の1回目の投与の日に始まり、第1の組成物の2回目の投与の期日が来る前日に完了する。一般式(I)の化合物は、2回以上の処置サイクルまたは6回未満の処置サイクル、好ましくは2~4回の処置サイクルを受けた人において使用され得る。一般式(I)の化合物は、21~28日よりも長い、好ましくは30、60または90日である処置サイクルにおいて使用され得る。
【0047】
一般式(I)の化合物は、1回目の処置サイクルよりも前の期間に第1の組成物の投与がない状態で使用され得る。
【0048】
好ましくは、タキサンはパクリタキセルでよく、プラチンはカルボプラチンでよい。
【0049】
別の実施形態では、プラチン、またはタキサン、またはプラチンおよびタキサンの組合せを受けたことがあるか、あるいは受ける予定である人において癌を処置または予防するための薬剤の製造における、本明細書に記載される一般式(I)の化合物の使用が提供されている。一実施形態では、その人は、最適以下の用量のプラチンまたはタキサンまたはプラチンおよびタキサンの組合せを受けたことがあるか、あるいは受ける予定である。癌細胞は、プラチン単独、またはタキサン単独、またはプラチンおよびタキサンの組合せ単独では処置されない細胞でよく、例えば、細胞は、タキサンまたはプラチン治療に対する抵抗性を発現していてもよい。好ましくは、タキサンはパクリタキセルでよく、プラチンはカルボプラチンでよい。
【発明を実施するための形態】
【0050】
本発明の特定の実施形態がこれから詳細に言及される。本発明は実施形態と共に記載されるが、本発明をそれらの実施形態に限定するのは意図されないことが理解されるであろう。反対に、本発明は、特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内に含まれ得る全ての変更、修飾、および等価物を包含することが意図される。
【0051】
当業者は、本発明の実施において使用され得る、本明細書に記載されるものと類似または等価の多くの方法および材料を認識するであろう。本発明は、記載される方法および材料に決して限定されない。
【0052】
本明細書において開示および定義される発明は、言及されるかあるいは本文から明らかである個々の特徴の2つ以上の代替的な組合せの全てに及ぶことが理解されるであろう。これらの異なる組合せは全て本発明の種々の代替的な態様を構成する。
【0053】
本明細書で使用される場合、文脈が他に必要とする場合を除いて、「含む(comprise)」という用語、ならびに「含む(comprising)」、「含む(comprises)」および「含む(comprised)」などのこの用語の変化形は、さらなる添加物、成分、整数またはステップを排除することは意図されない。
【0054】
一実施形態では、癌を処置または予防するための方法が提供されており、本方法は、それを必要としている人に、
- プラチン、タキサン、またはこれらの組合せを含む第1の組成物と、
- 一般式(I)
【化5】
(式中、
は、H、またはRCOであり、ここで、Rは、C1~10アルキルまたはアミノ酸であり;
は、H、OH、またはRであり、ここで、Rは、アミノ酸またはCORであり、Rは既に定義した通りであり;
AおよびBはそれらの間にある原子と一緒に、
【化6】
の群から選択される6員環を形成し、ここで、
は、H、COR(ここで、Rは、H、OH、C1~10アルキルまたはアミノ酸である)、CO(ここで、Rは、C1~10アルキルである)、COR(ここで、Rは、H、C1~10アルキルまたはアミノ酸である)、COOH、COR(ここで、Rは既に定義した通りである)、またはCONHR(ここで、Rは既に定義した通りである)であり;
は、H、CO(ここで、Rは既に定義した通りである)、またはCOROR(ここで、RおよびRは既に定義した通りである)であり、2つのR基が同じ基に結合される場合、これらは同一であるか、または異なっており;
は、H、CO(ここで、Rは既に定義した通りである)、COROR(ここで、RおよびRは既に定義した通りである)、置換もしくは非置換アリール、または置換もしくは非置換ヘテロアリールであり;
Xは、O、NまたはSであり;
Yは、
【化7】
(ここで、Rは、H、またはC1~10アルキルである)であり;かつ
【化8】
は、単結合または二重結合のいずれかを表す)
の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくは多形体を含む第2の組成物と
を投与することを含み、第2の組成物は、人の直腸、膣または尿道に投与される。
【0055】
好ましい実施形態では、式(I)の化合物は、
【化9】
【化10】
(式中、
は、HまたはCORであり、ここで、Rは既に定義した通りであり;
は、COまたはCORであり、ここで、RおよびRは既に定義した通りであり;
10は、CORまたはCORORであり、ここで、RおよびRは既に定義した通りであり;
11は、HまたはOHであり;
12は、H、COOH、CO(ここで、Rは既に定義した通りである)、またはCONHR(ここで、Rは既に定義した通りである)であり;かつ
【化11】
は、単結合または二重結合のいずれかを表す)
からなる群から選択される。
【0056】
好ましくは、式(I)の化合物は、
【化12】
(式中、R11およびR12は上記で定義した通りである)
である。
【0057】
さらにより好ましくは、式(I)の化合物は、
【化13】
であり、別名イドロノキシルとして知られている(フェノキソジオール;デヒドロエクオール;ハギニン(Haginin)E(2H-1-ベンゾピラン-7-0,1,3-(4-ヒドロキシフェニル)としても知られている)。
【0058】
別の好ましい実施形態では、Rは、置換もしくは非置換アリール、または置換もしくは非置換ヘテロアリールである。好ましくは、Rは、アルコキシ基によって置換されたアリールである。好ましくは、アルコキシ基はメトキシである。別の好ましい実施形態では、Rはヒドロキシである。
【0059】
好ましい実施形態では、式(I)の化合物は、
【化14】
であり得る。
【0060】
本明細書で使用される場合、「アルキル」という用語は、1~10個、またはその間の任意の範囲の炭素原子を有する(すなわち、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個の炭素原子を含有する)直鎖または分枝鎖炭化水素ラジカルを指す。アルキル基は任意選択的に置換基によって置換され、多置換度が可能である。本明細書で使用される「アルキル」の例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、n-ペンチル、イソペンチルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0061】
本明細書で使用される場合、「C1~10アルキル」という用語は、それぞれ少なくとも1個かつ最大で10個、またはその間の任意の範囲の炭素原子を含有する(例えば、2~5個の炭素原子を含有するアルキル基もC1~10の範囲内である)、上記で定義されたアルキル基を指す。
【0062】
好ましくは、アルキル基は1~5個の炭素を含有し、より好ましくは、メチル、エチルまたはプロピルである。
【0063】
本明細書で使用される場合、「アリール」という用語は、任意選択的に、置換されたベンゼン環を指す。アリール基は任意選択的に置換基によって置換され、多置換度が可能である。
【0064】
本明細書で使用される場合、「ヘテロアリール」という用語は、1つまたは複数の窒素、硫黄、および/または酸素へテロ原子(ここで、N-オキシドおよび酸化硫黄および二酸化硫黄は許容されるヘテロ原子置換である)を含有する単環式5員、6員または7員芳香環を指し、任意選択的に、3個までのメンバーによって置換され得る。本明細書で使用される「ヘテロアリール」基の例としては、フラニル、チオフェニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、オキソ-ピリジル、チアジアゾリル、イソチアゾリル、ピリジル、ピリダジル、ピラジニル、ピリミジルおよびこれらの置換された形が挙げられる。
【0065】
本明細書で使用される「置換基」は、対象の分子内の原子に共有結合された分子部分を指す。例えば、「環置換基」は、環員である原子、好ましくは炭素または窒素原子に共有結合されたハロゲン、アルキル基、または本明細書に記載される他の置換基などの部分であり得る。「置換される」という用語は、本明細書で使用される場合、指定の原子上の任意の1つまたは複数の水素が、表示される置換基からの選択により置き換えられることを意味するが、ただし、指定の原子の通常の原子価を上回ることはなく、置換によって、安定した化合物、すなわち、単離し、特徴付けし、かつ生物活性について試験することができる化合物が生じるものとする。
【0066】
本明細書全体を通して使用される「任意選択的に置換される」または「置換され得る」などの用語は、基が1つまたは複数の非水素置換基によってさらに置換されていてもよいし、されていなくてもよいことを示す。特定の官能基に適している、化学的に可能な置換基は、当業者に明らかであろう。
【0067】
置換基の例としては、C~Cアルキル、C~Cハロアルキル、C~Cハロアルコキシ、C~Cヒドロキシアルキル、C~Cヘテロシクリル、C~Cシクロアルキル、C~Cアルコキシ、C~Cアルキルスルファニル、C~Cアルキルスルフェニル、C~Cアルキルスルホニル、C~Cアルキルスルホニルアミノ、アリールスルホノアミノ、アルキルカルボキシ、アルキルカルボキシアミド、オキソ、ヒドロキシ、メルカプト、アミノ、アシル、カルボキシ、カルバモイル、アミノスルホニル、アシルオキシ、アルコキシカルボニル、ニトロ、シアノまたはハロゲンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0068】
第1および第2の組成物、ならびにこれらの活性成分は、以下にさらに詳細に記載される。
【0069】
A.第1の組成物
A.1 プラチン
本明細書で使用される「プラチン」という用語は、癌などの増殖性疾患の処置において有用な白金ベースの化学療法薬を指す。プラチンのいくつかの非限定的な例としては、シスプラチン、オキサリプラチン、ネダプラチン、リポプラチン、ピクプラチン(picplatin)、サトラプラチン(JM216)、ピコプラチン(AMD473)、ネダプラチン、ZD0473、四硝酸トリプラチン(triplatin tetranitrate)(BBR3464)およびカルボプラチン、ならびにこれらの塩、溶媒和物、多形体および誘導体が挙げられる。好ましくは、本発明において使用されるプラチンは、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチンまたはネダプラチンである。より好ましくは、プラチンはカルボプラチンである。
【0070】
本発明の組成物において使用されるプラチン濃度は、担体 共可溶化剤、安定剤、投与経路、ならびに投与されるプラチンの所望の総用量に基づいて異なり得る。
【0071】
患者に送達される実際の用量は、当業者に認識されるように、多数の因子に基づいて異なる。用量は、多くの場合、患者の血清中クレアチニンを組み込んだ式から得られる推定クレアチニンクリアランスを用いて計算される。他の因子には、年齢、性別、体重、患者の状態(腎機能障害など)、癌のタイプおよび程度、患者が以前に処置されたことがあるかどうかなどが含まれる。このような因子に基づいて薬物投薬量を決定するために種々の予測変数が使用される。患者の糸球体ろ過率(GFR)を考慮に入れるCalvert式が一般的に使用される。カルボプラチンについては、最大用量は、一般に、標的の曲線下面積(AUC)に基づいて上限が定められ、カルボプラチン投与のためにCalvert式で使用されるGFRは、125ml/分を超えないことが推奨される。
【0072】
Cockcroft-Gault式は、腎機能低下の患者の薬物投薬量を決定するために使用されることが多く、これは、種々の患者コホートに対してさらなる推奨も有する。
【0073】
最近の利用可能な推奨は、その個々の患者の必要性についての医療提供者の考察と共に、患者に与える薬物の量を決定するために考慮される。正常な腎機能を有するこれまで未処置の成人におけるカルボプラチンの推奨用量は400mg/mであり、15~60分間にわたる単回の静脈内注入として与えられる。
【0074】
投薬レジメンは、患者へ与えられる薬物の量を含むだけでなく、投与頻度および薬物を投与するサイクルの総数も含む。これらの因子は患者間でも異なることになり、当業者により証明され得るいくつかの因子によって決定することができ、さらなるモニタリングからの試験結果に基づいて変更され得る。例えば、患者の好中球または血小板数が十分でなければ、投与は繰り返してはならない、あるいはより少ない用量で繰り返すべきである。
【0075】
例えば、腎機能障害がなく、かつカルボプラチンが静脈内に投与される典型的な卵巣癌患者は、カルボプラチンが3~4週間ごとに6サイクル投与され得る。
【0076】
A.2 タキサン
本明細書で使用される「タキサン」という用語は、タクスス(Taxus)属植物に由来し、タキサジエンコアを含むジテルペンの群を指し、タキサン、タキシン、およびタキソイド、ならびにこれらの誘導体または類似体を含む。「タキサン」という用語は、天然に存在するタキサン、および人工的に修飾または合成されたタキサンの両方を含む。タキサンの例としては、パクリタキセル(タキソール)、ドセタキセル、カルバジタキセル、ならびにこれらの塩、溶媒和物、多形体および/または誘導体が挙げられる。好ましくは、本発明において使用されるタキサンは、パクリタキセルまたはドセタキセルである。より好ましくは、タキサンはパクリタキセルである。
【0077】
本発明の組成物において使用されるタキサン濃度は、担体 共可溶化剤、安定剤、投与経路、ならびに投与されるタキサンの所望の総用量に基づいて異なり得る。上記のプラチンと同様に、タキサンの投薬量および投薬レジメンも、多数の因子に基づいて、各患者について注意深く考慮されなければならない。また投薬レジメンは、処置に対する患者の応答(例えば、重度の好中球減少または重度の末梢神経障害など)による影響も受けるであろう。
【0078】
既に処置された卵巣癌患者の場合、通常、3週間ごとに3時間にわたって135~175mg/mが使用される。乳癌患者の場合、典型的な用量は、4~6回のコースで3週間ごとに3時間にわたって静脈内に投与される175mg/mであり得るが、非小細胞肺癌では通常、3週間ごとに3時間にわたって135mg/mまたは175mg/mのいずれかの用量で静脈内に投与され得る。
【0079】
経口投与の場合、医薬組成物中のタキサンの濃度は、約2~約100mg/ml、好ましくは約6~約60mg/mlまたはそれ以上、好ましくは約10~約50mg/mlの範囲であり得る。
【0080】
A.3 プラチン/タキサンの組合せ
プラチンおよびタキサンの組合せは、卵巣癌などのいくつかの形態の癌(白金抵抗性癌の患者を含む)の処置において有効であることが判明している。好ましくは、パクリタキセルと、カルボプラチンまたはシスプラチンのいずれかとの組合せが利用される。より好ましくは、パクリタキセルと、カルボプラチンとの組合せが利用される。
【0081】
本発明の組成物において与えられる各薬物の濃度は、担体 共可溶化剤、安定剤、投与経路、ならびに投与されるプラチンおよびタキサンの所望の総用量に基づいて異なり得る。
【0082】
同様に、処置レジメンは、薬物のそれぞれの用量、投与頻度および投与タイプに応じて異なり得る。例えば、卵巣癌の第一線の処置のためにシスプラチンと共に使用される場合、パクリタキセルは、通常、135mg/mの濃度で使用され、24時間にわたる静脈内投与の後、75mg/mのシスプラチンが静脈内投与されるか、あるいは175mg/mのパクリタキセルの3時間にわたる静脈内投与の後、シスプラチン75mg/mが投与される。プラチン薬物に関して患者の状態がこれらの用量におけるさらなる処置を許せば、これらの処置レジメンはいずれも通常3週間ごとに繰り返される。
【0083】
A.4 投与
プラチンおよびタキサンは、一般に、癌の処置のために静脈内に(iv)与えられているが、これらの薬物は、他の経路によっても治療的な利益を伴って投与され得るという認識が高まっている。
【0084】
好ましくは、第1の組成物は静脈内投与に適している。通常、組成物は、好ましくは意図されるレシピエントの血液と等張である、プラチンまたはタキサンの無菌水性調製物である。これらの調製物は、化合物を水またはグリシン緩衝液と混合し、得られた溶液を無菌にし、血液と等張にすることによって都合よく調製され得る。
【0085】
注射可能な製剤は、一般に、0.1%~60%w/vのプラチンまたはタキサンを含有し、0.1ml/分/kgの速度で、あるいは必要に応じて投与される。
【0086】
通常、第1の組成物は、直腸、膣または尿道に与えられない。
【0087】
B.第2の組成物
B.1 イソフラボノイド
本明細書で使用される「イソフラボノイド」という用語は広く解釈されなければならず、イソフラボン、イソフラベン、イソフラバン、イソフラバノン、イソフラバノール、ならびに一般的に式1に記載されるものを含む類似または関連化合物が含まれる。イソフラボノイドコア構造のいくつかの非限定的な例は、以下に示される:
【化15】
(式中、
【化16】
は、単結合または二重結合のいずれかを表す)。
【0088】
上記の化合物の合成方法は、国際公開第1998/008503号パンフレットおよび国際公開第2005/049008号パンフレットならびに合成のためにその中で引用される参考文献において記載されている(これらの内容は、参照によって全体が本明細書中に援用される)。
【0089】
B.2 坐薬、ペッサリーまたは尿道デバイスを形成するための基剤
以下の開示において、「基剤」は、坐薬、ペッサリーまたは尿道内デバイスにおいて担体として一般的に使用される物質を指すことができる。
【0090】
一実施形態では、基剤は、式(I)に従う化合物の基剤中での少なくとも部分的、好ましくは完全な溶解を可能にする、式(I)に従う化合物に対する溶媒力を有する。
【0091】
基剤は、一般に、油性、すなわち疎水性または親油性であり得る。
【0092】
基剤は油または脂肪を含む、あるいは油または脂肪からなることができる。
【0093】
一実施形態では、基剤は、基剤の50~65%w/wの量の飽和脂肪酸を含む。ステアリン酸は、基剤の25~40%w/wの量で含まれ得る。パルミチン酸は、基剤の25~30%w/wの量で含まれ得る。ミリスチン酸、アラキジン酸およびラウリン酸などのより長鎖の脂肪酸は、基剤の2%w/w未満の量で含まれ得る。
【0094】
一実施形態では、親油性坐薬基剤は脂肪酸を含有し、基剤の脂肪酸の50~100%が飽和脂肪酸であり、好ましくは、基剤の脂肪酸の90~99%が飽和脂肪酸である。基剤の脂肪酸の30~60%、好ましくは約40%がステアリン酸であり得る。基剤の脂肪酸の20~30%、好ましくは約25%がパルミチン酸であり得る。基剤の脂肪酸の15~25%、好ましくは約20%がラウリン酸であり得る。基剤の脂肪酸の5~10%、好ましくは約8%がミリスチン酸であり得る。
【0095】
通常、油性基剤は、基剤の35~50%w/wの量の不飽和脂肪酸を含む。一価不飽和脂肪酸は、基剤の30~45%w/wの量で含まれ得る。オレイン酸は、基剤の30~40%w/wの量で含まれ得る。リノール酸およびアルファリノレン酸などの多価不飽和脂肪酸は、基剤の0~5%w/wの量で含まれ得る。
【0096】
カカオ脂(theobroma oil)(ココアバター)は、(a)その無毒性および非刺激性、ならびに(b)その低融点(体腔内に入れたときに体温で容易に溶けることを意味する)のために坐薬の伝統的な基剤であったが、いくつかの理由で、次第に取って代わられている。1つの理由は、その天然起源の結果であるその組成の可変性である。またカカオ脂は多形性でもあり、これは、2つ以上の結晶形態で存在できることを意味する。別の理由は、その低融点のために配合製品を冷蔵で保持する必要があることであり、熱帯地域では不適切とされる。これにより、より大きい粘稠度、酸敗の可能性の低下、ならびに特定の配合、加工、および貯蔵要求に対して相転移(融解および凝固)を調整するより優れた能力など、カカオ脂よりも優れた様々な利点を提供するいくつかの代用製品がもたらされている。
【0097】
それにもかかわらず、カカオ脂または同様の組成および物理化学的特性を有する脂肪基剤は、本発明の好ましい実施形態であることが分かった。
【0098】
通常、油性基剤は、優位の(基剤の45%w/wよりも多い)飽和脂肪酸を含む。好ましくは、油性基剤は、カカオ脂(ココアバター)、または実質的にカカオ脂の脂肪酸プロファイルと同じもしくは同一の飽和脂肪酸プロファイルを有する、その油画分もしくは誘導体もしくは合成型である。
【0099】
基剤として有用な脂肪酸を提供または獲得するために使用され得る油の他の例としては、キャノーラ油、ヤシ油、大豆油、植物油、およびヒマシ油などの天然源から得られるものが挙げられる。これらの源に由来する油は、飽和脂肪酸を含有する油画分を得るために分画され得る。
【0100】
基剤は、固い脂肪、バターまたは獣脂から形成または誘導されてもよい。
【0101】
基剤は、エステル化または非エステル化脂肪酸鎖を含み得る。脂肪酸鎖は、好ましくはC9~20鎖長の飽和脂肪酸鎖のモノ、ジおよびトリグリセリドの形態であり得る。
【0102】
坐薬基剤は、合成油または脂肪から形成されてもよく、例としては、Fattibase、Wecobee、Witepesoll(Dynamit Nobel,Germany)、Suppocire(Gatefosse,France、HydrokoteおよびDehydagが挙げられる。
【0103】
最終製品中の坐薬基剤の割合は、活性医薬品成分の投薬量および他の医薬品または不活性成分(もしあれば)の存在に依存するが、例として、製剤の約1~99%w/wの量で提供され得る。
【0104】
B.3 製造
本発明の坐薬、ペッサリーおよび尿道適用のためのデバイスは、以下のように調製され得る。式(I)に従う化合物は、式(I)に従う化合物の基剤中での少なくとも部分的、好ましくは完全または実質的に完全な溶解を可能にする条件下で、溶融形態の坐薬基剤(上記の通り)と接触される。次に、この溶液は、PVC、ポリエチレン、またはアルミニウム型などの適切な型の中に注がれる。例えば、式(I)に従う化合物は、約35℃~約50℃、好ましくは約40℃~約44℃の温度で基剤と接触され得る。式(I)に従う化合物は、基剤との接触の前に粉砕または篩過することができる。
【0105】
一実施形態では、製造のために提供される条件、およびそれから形成される製剤またはデバイスは、所与の投薬単位のための式(I)に従う化合物の少なくとも50%、好ましくは60%、好ましくは70%、好ましくは80%、好ましくは90%、好ましくは95%が投薬単位中に溶解されることを少なくとも可能にする、あるいは提供する。これらの実施形態では、所与の投薬単位のための式(I)に従う化合物の50%以下の、好ましくは所与の投薬単位のための式(I)に従う化合物の40%以下、好ましくは30%以下、好ましくは20%以下、好ましくは10%以下、好ましくは5%以下が、投薬単位の坐薬基剤との混合物であってもよい(すなわち、基剤中に溶解されていなくてもよい)。
【0106】
一実施形態では、投薬単位に添加された式(I)に従う化合物は全て基剤中に溶解される。この実施形態では、式(I)に従う化合物は坐薬基剤との混合物のままではない。これは、投薬単位で与えられる式(I)に従う化合物の全ての取込みの可能性を増大させると考えられる。
【0107】
成分を混合する薬局業務において一般的に行われるように坐薬基剤を式(I)に従う化合物と混合、または混和、またはブレンドすることは、得られる混合物が治療的な利益を提供する可能性がより低くなると考えられるので、製造プロセスの目的がそれではないことは理解されるであろう。これに関連して、任意の他の賦形剤、担体または他の医薬品活性物質は、例えば、式(I)に従う化合物が帯電分子種(他の医薬品活性物質、担体または賦形剤)と複合体を形成する(その結果、複合体、従ってそれに含有される式(I)に従う化合物が坐薬基剤中に溶解する傾向を低下させることになる)場合に起こり得るように、式(I)に従う化合物の基剤中での溶解を妨害しないことが特に重要である。
【0108】
任意選択的に、坐薬、ペッサリーまたは尿道内デバイスは、崩壊時間または潤滑性を増大させるため、あるいは貯蔵における接着を低減するために、例えば、セチルアルコール、マクロゴールまたはポリビニルアルコールおよびポリソルベートにより、パッキングの前に被覆されてもよい。
【0109】
製造した各バッチからの1つまたは複数のサンプル坐薬、ペッサリー、または尿道内デバイスは、好ましくは、品質管理のための本発明の溶解方法によって試験される。好ましい実施形態によると、各バッチからのサンプルは、基剤の少なくとも約75または80重量%が2時間以内に溶解するかどうかを決定するために試験される。
【0110】
通常、本発明に従う坐薬、ペッサリーまたは同様のデバイスは全体を通して実質的に疎水性または親油性であり、親水性の担体もしくは医薬品活性物質などの親水性物質、または別の医薬品化合物、担体もしくは賦形剤に対する(または、これらとの)式(I)に従う化合物の連結もしくは複合体化から形成される親水性中心もしくは領域を含有しない。
【0111】
好ましくは、坐薬、ペッサリーおよび尿道適用のためのデバイスを形成するための製剤は、さらなる医薬品活性物質、細胞毒性薬または化学療法薬を含まない。この実施形態では、この製剤中の唯一の活性物質は式(I)に従う化合物であり、製剤はプラチン、タキサンまたは他の細胞毒性薬または化学療法薬を含まない。
【0112】
B.4 物理特性
坐薬の総重量は、好ましくは約2250~約2700mg、より好ましくは約2250~約2500mgの範囲である。一実施形態によると、坐薬は約2300mg~約2500mgの範囲の総重量を有する。
【0113】
坐薬またはペッサリーは、好ましくは、滑らかな魚雷形状である。
【0114】
坐薬またはペッサリーの融点は、一般に、患者の体内で溶融するのに十分であり、通常は約37℃以下である。
【0115】
C.癌の処置
上記で議論したように、本発明は癌を処置または予防するための方法を提供し、本方法は、それを必要としている人に、プラチン、タキサン、またはこれらの組合せを含む第1の組成物と、一般式(I)の化合物を含む第2の組成物とを投与することを含み、ここで、第2の組成物は、人の直腸、膣または尿道に投与される。
【0116】
本発明は、人の直腸、膣または尿道への第2の組成物の投与により、患者に対する有害事象をあまり伴わずに開業医が所望の化学療法効果を得られるようになることを認識する。一般に、プラチンまたはタキサンの従来の治療用量により必要とされる各処置サイクルが短いほど、あるいは処置サイクルの数が多いほど、患者に対する有害事象(これらが副作用または薬物抵抗性であっても)の可能性が高くなる。
【0117】
特に、本発明は、最適以下の用量のプラチンもしくはタキサンが与えられること;または最適以下の用量のこれらの化合物が、最適用量のこれらの化合物の場合に可能であるよりも高い頻繁で与えられること;または最適用量がより低い頻度、もしくはより少ない処置サイクルで与えられることを可能にする。これらの概念は以下でさらに記載される。
【0118】
C.1 最適以下の用量のプラチンおよび/またはタキサン
1つの態様では、癌を処置または予防するための方法は、最適以下または治療量以下の用量のプラチン、タキサン、またはこれらの組合せを利用する。
【0119】
最適以下または治療量以下の用量は、治療の目的を達成することができない用量である。その目的は、例えば、腫瘍サイズの縮小、癌バイオマーカー発現の上昇の減少または低下、あるいは腫瘍成長の単なる静止状態であり得る。
【0120】
好ましくは、最適以下の用量は、患者において著しい有害副作用を引き起こさない用量である。
【0121】
最適以下の用量は、当該技術分野において周知の方法に従って決定することができる。例えば、一般に、プラチンの最適または治療用量はAUC=6である。最適以下の用量は、一般に、これよりも少ない。これは、AUC=6未満の量のプラチンを提供し、治療の影響および/またはプラチン投与の副作用を測定することによって、さらに決定することができる。
【0122】
一実施形態では、プラチンの最適以下の用量は、6未満、好ましくは2~5、好ましくは3または4のAUCであり得る。
【0123】
タキサンに関して、最適用量は、通常、患者の体重の%で表される。例示的な範囲は、一般に、パクリタキセルについては125~175mg/m2であり、ドセタキセルについては60~100mg/m2である。
【0124】
一実施形態では、タキサンの最適以下の用量は、パクリタキセルについては100mg/m2であり、ドセタキセルについては50mg/m2である。
【0125】
特定の実施形態では、最適以下の用量は治療または最適用量の低減%で表されてもよい。例えば、最適以下の用量は、治療用量の90%、または80%、または70%、または60%、または50%、または40%、または30%、または20%、または10%で提供され得る。
【0126】
C.2 最適以下の用量の頻繁な投与
癌の化学療法は、処置サイクルにおいて施され得る。各処置サイクルは、通常、約21~28日からなる。例えば、21日の処置サイクルにおいて、サイクルは、細胞毒性薬が最初に与えられた日である1日目に始まる。薬物は、次の20日間は与えられない。サイクルは1日目から20日で完了する。2回目の処置サイクルが提供され得る。このサイクルは、1回目の処置サイクルが完了した次の日に薬物を与えることにより、1回目の処置サイクルが完了した次の日に始まることになる。薬物は、次の20日間は与えられない。2回目の処置サイクルは、2回目の処置サイクルの開始から20日で完了する。それに応じて、3回目、4回目、5回目およびそれ以上の処置サイクルが提供され得る。
【0127】
一般に、プラチンまたはタキサンが21日または28日に1回与えられる理由は、薬物の治療用量が非常に毒性なので、患者がより頻繁に受けることができないからである。本発明に従って与えられる治療量以下の用量のプラチンまたはタキサンはこのような著しい副作用を引き起こさず、従って、治療用量で別途可能であるよりも頻繁に与えることができる。
【0128】
一実施形態では、第1の組成物中の治療量以下の用量のプラチンおよび/またはタキサンは、7~21日ごとに、好ましくはおよそ1週間または2週間ごとに与えられる。
【0129】
C.3. より低い頻度の治療用量の投与
一般に、癌治療の目的は、治療用量が少なくとも1か月に1回与えられない場合には達成されないことが理解される。この理由は、約21~28日後に、プラチンまたはタキサンが患者から洗い流されるからである。
【0130】
本発明に従って与えられる治療用量のプラチンまたはタキサンは、各処置サイクルにおけるこれらの細胞毒性薬の効果の増強または強化を可能にし、従来の21または28日の期間よりも処置サイクルを長くすることができる。これにより、プラチンまたはタキサンの投与のための外来通院の間に患者がより多くの時間を持つことが可能になる。
【0131】
一実施形態では、治療用量は、28日よりも長い、好ましくは約30~90日、好ましくは約1.5~2か月の処置サイクルにおいて与えられる。
【0132】
C.4 より少ない処置サイクル
上記のように、癌の処置レジメンは、約5~6回の処置サイクルを含む5~6か月の期間にわたって従来通りに適用される。
【0133】
本発明に従って与えられる治療用量のプラチンまたはタキサンは、各処置サイクルにおけるこれらの細胞毒性薬の効果の増強または強化を可能にし、それにより、少ない処置サイクルしか必要とされない。
【0134】
一実施形態では、治療用量は、5~6回よりも少ない処置サイクル、好ましくは2~5サイクル、好ましくは3または4サイクルで与えられる。
【0135】
本発明によると、好ましくは、第1および第2の組成物は処置サイクルに従って投与され、処置サイクルにおいて、
- 第1の組成物は、第2の組成物が最初に投与された後に投与される;
- 第2の組成物は、少なくとも処置サイクルの期間にわたって投与される。
【0136】
一実施形態では、第2の組成物は、第1の組成物が投与される前に、少なくとも約5日間、好ましくは5~14日間にわたって毎日投与される。
【0137】
一実施形態では、第2の組成物は、第1の組成物が投与された後に約5~14日間にわたって、好ましくは、第1の組成物が投与された後に約5~7日間にわたって投与される。
【0138】
別の実施形態では、第1の組成物は、第2の組成物が最初に投与された日の少なくとも1日後に初めて投与されるが、第1の組成物は第2の組成物が最初に投与されてから数日後に投与されてもよいことが認識されるであろう。
【0139】
第1および第2の組成物は、2回以上の処置サイクル、好ましくは5回未満の処置サイクルで与えられてもよい。好ましくは、各処置サイクルは21日未満であり、最適以下の用量の第1の組成物が与えられる。処置サイクルは28日よりも長くてもよく、最適または治療用量の第1の組成物が与えられる。
【0140】
上記の実施形態では、好ましくは、第2の組成物はイドロノキシルを含み、第1の組成物はカルボプラチンおよび/またはパクリタキセルを含む。
【0141】
他の実施形態では、第1および第2の組成物の投与は、同時、連続および/または個別(相互間は即時または長期の遅延)の投与を含み得る。連続および/または個別投与は任意の順序でよい。例えば、一般式(I)の化合物の人への直腸、膣または尿道投与の前または後に、プラチンが静脈内に投与され得る。別の例として、一般式(I)の化合物の人への直腸、膣または尿道投与の前または後に、タキサンが静脈内に投与され得る。さらなる例として、タキサンが静脈内に投与された後にプラチンが静脈内投与されてもよく、その後またはそれに先行して、式(I)の化合物の直腸、膣または尿道投与が行われる。
【0142】
上記で議論したように、プラチンおよび/またはタキサンが本発明により利用される場合、全体でより少しのプラチンしか処置レジメンに必要とされないことが予想される。
【0143】
例えば、卵巣癌患者の処置の場合、約50~500mg/mの間、好ましくは100~400mg/m、より好ましくは200~300mg/mの量のプラチンが必要とされることが予想され得る。サイクルは約2~約5週間ごと、好ましくは3~4週間ごとであると予想され、約3~約8サイクル、好ましくは約4~約6サイクル繰り返されると予想されるであろう。
【0144】
例えば、既に処置された卵巣癌患者、乳癌患者またはNSCLC患者の場合、約50~300mg/mの間、好ましくは75~175mg/mの量のタキサンが必要とされることが予想され得る。サイクルは、約2~約5週間ごと、好ましくは3~4週間ごとであると予想されるであろう。
【0145】
一実施形態では、第2の組成物は可変投薬レジメンに従って提供され、約100~約3000mgの1日量の式(I)に従う化合物が提供される。一例では、式(I)の化合物は、1日1回約400mgの用量で1~2週間にわたって提供され、かつ1~2週間または1か月間またはより長い期間にわたって1日1回800mgに増大され、さらに1~2週間または1か月間またはより長い期間にわたって1日1回1600mg(2×800mg)に増大される。実際の量は、疾患の状態、年齢、体重、性別および他の薬理学的に関連する変数によって影響されることになる。
【0146】
1つの特に好ましい実施形態では、癌は原発性または続発性の前立腺癌であり、式(I)の化合物はイドロノキシルであり、製剤は、カカオ脂(ココアバター)から形成されるか、あるいはカカオ脂(ココアバター)からなる坐薬基剤を有する坐薬の形態である。イドロノキシルは、400mgまたは800mgの量で坐薬中に含有され得る。イドロノキシルは、2~4週間、または最大12か月間までの期間にわたって1日1回または2回与えることができる。
【0147】
好ましくは、タキサンはパクリタキセルであり、プラチンはカルボプラチンである。
【0148】
1つの好ましい実施形態では、式(I)に従う化合物はイドロノキシルであり、1日当たり400mg、800mgまたは1600mgの量で7~14日間にわたって投与される。またパクリタキセルは21日ごとに125mg/mまたは175mg/mの用量で静脈内に提供され、かつ/あるいはカルボプラチンは21日ごとにAUC=4またはAUC=5で静脈内に提供される。
【0149】
任意の特定の被験者に対して、疾患の重症度および組成物の投与を指示する人の専門的判断などの特定の状況に基づいて、個人に応じて特定の投薬レジメンが調整されなければならないことは当業者に理解されるであろう。
【0150】
坐薬を適用するための方法は当該技術分野において周知である。一般に、方法は、坐薬を下方および内側の痔静脈と位置合わせされた点に挿入し、それにより、薬物の下大静脈への放出を可能にすることを含む。
【0151】
ペッサリーを適用するための方法、または薬剤活性成分の尿道適用のための方法は当該技術分野において周知である。
【0152】
処置を必要とする被験者は、良性、前癌性、または非転移性の腫瘍が既にある被験者、および癌の発生または再発が予防されるべき被験者を含む。
【0153】
処置の目的または結果は、癌細胞の数を低減する;原発性腫瘍のサイズを縮小する;癌細胞の末梢臓器への浸潤を阻害する(すなわち、ある程度遅くする、好ましくは停止させる);腫瘍転移を阻害する(すなわち、ある程度遅くする、好ましくは停止させる);腫瘍成長をある程度阻害する;かつ/あるいは障害に関連する症状の1つまたは複数をある程度緩和することであり得る。
【0154】
処置の効力は、生存期間、疾患進行までの時間、奏効率(RR)、奏効期間、および/または生活の質を評価することによって測定することができる。
【0155】
処置の効力は、生存期間、疾患進行までの時間、奏効率(RR)、奏効期間、および/または生活の質を評価することによって測定することができる。
【0156】
一実施形態では、方法は、疾患進行を遅らせるために特に有用である。
【0157】
一実施形態では、方法は、全生存および無進行生存を含むヒトの生存を引き延ばすために特に有用である。
【0158】
一実施形態では、方法は、治療に対する完全寛解(処置に応答して癌の全ての兆候が消滅されている)を提供するために特に有用である。これは、必ずしも癌が治癒したことを意味しない。
【0159】
一実施形態では、方法は、治療に対する部分応答(治療に応答して、1つまたは複数の腫瘍または病変部のサイズまたは体内の癌の程度が低下されている)を提供するために特に有用である。
【0160】
「前癌性」または「前新生物性(pre-neoplasia)」は、一般に、通常癌に先行する、または癌に発展する状態または成長を指す。「前癌性」成長は、細胞周期のマーカーによって決定され得る異常な細胞周期制御、増殖、または分化を特徴とする細胞を有し得る。
【0161】
一実施形態では、癌は前癌性または前新生物性である。
【0162】
一実施形態では、癌は続発性癌または転移である。続発性癌は、任意の臓器または組織、特に、肺、肝臓、腎臓、膵臓、腸および脳などの比較的より高い血行力学的圧力(hemodynamic pressure)を有する臓器または組織に位置し得る。
【0163】
癌の他の例としては、芽細胞腫(髄芽細胞腫および網膜芽細胞腫を含む)、肉腫(脂肪肉腫および滑膜細胞肉腫を含む)、神経内分泌腫瘍(カルチノイド腫瘍、ガストリノーマ、および膵島細胞癌を含む)、中皮腫、神経鞘腫(聴神経腫を含む)、髄膜腫、腺癌、メラノーマ、白血病またはリンパ性悪性腫瘍、肺癌(小細胞肺癌(SGLG)、非小細胞肺癌(NSGLG)、肺腺癌および肺扁平上皮癌を含む)、腹膜癌、肝細胞癌、胃癌(gastric or stomach cancer)(胃腸癌を含む)、膵癌、神経膠芽腫、卵巣癌、子宮頸癌、肝癌、膀胱癌、肝細胞腫、乳癌(転移性乳癌を含む)、結腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、唾液腺癌、腎臓癌(kidney or renal cancer)、前立腺癌、甲状腺癌、肝臓癌、肛門癌、陰茎癌、精巣癌、食道癌、胆管腫瘍、ならびに頭頸部癌が挙げられる。
【0164】
[癌に]「関連する状態または症状」は、癌の結果として、癌に先立って、または癌から始まって起こる任意の病態であり得る。例えば、癌が皮膚癌である場合、状態または関連症状は微生物感染であり得る。癌が続発性腫瘍である場合、状態または症状は、腫瘍転移を有する関連臓器の臓器不全に関連し得る。一実施形態では、本明細書に記載される処置方法は、個人の癌に関連する個人の状態または症状を極小化または処置するためのものである。
【0165】
上記の実施形態において、本発明に従う方法は、癌細胞の倍加時間を妨げるか、あるいは他の方法で腫瘍成長を阻止する(腫瘍細胞に対する細胞毒性効果によるか、あるいは別途、一般には細胞複製を阻害することによる)ために有用であり得る。
【0166】
本発明の別の態様では、癌を処置または予防するための方法は、プラチン単独、またはタキサン単独、またはプラチンおよびタキサンの組合せ単独では処置されない癌細胞の処置に適用可能である。
【0167】
別の態様では、癌を処置または予防するための方法は、プラチン単独、またはタキサン単独、またはプラチンおよびタキサンの組合せ単独による治療に対して獲得抵抗性を有する癌細胞の処置に適用可能である。
【0168】
一実施形態では、処置は、PSAスコア上昇の阻害、または腫瘍成長の阻害を提供する。一実施形態では、処置は、PSAスコアの低下、好ましくはPSAスコアの50%、60%、70%、80%、90%または100%の低下を提供する。
【実施例
【0169】
実施例1
NOX66-001は、第I相の非盲検非無作為化研究である。それは、標準的な処置の選択をしなかったか、あるいはできなかった難治性固形腫瘍の患者においてカルボプラチンと組み合わせて直腸で送達されるデヒドロエクオールの用量漸増研究である。
【0170】
15人の患者は、それぞれ28日間の6回の処置サイクルを受ける。各処置サイクルは、各サイクルの1~7日目にデヒドロエクオールが直腸で投与されることを含む。カルボプラチンは各処置サイクルの2日目に静脈内に投与される。2つの異なる投薬量のカルボプラチンが投与される(処置レジメン1および2)ことになり、処置レジメン1はカルボプラチンの標準投薬量の3分の2(AUC=4)であり、処置レジメン2は標準用量(AUC=6)である。患者はより低用量のカルボプラチンから始めて、それを3回の処置サイクルにわたって受ける。用量制限毒性がなければ、患者は次により高い投薬量のカルボプラチンに進み、それをさらに最大3回の処置サイクルにわたって受ける。
【0171】
患者は、臨床応答(腫瘍の数およびサイズのX線撮影の証拠)および有害事象(毒性)について監視されることになる。この研究において特に興味深いのは、NOX66が、低用量(AUC=4)のカルボプラチンを用いて、有意な副作用を伴わずに意味のある抗癌効果を患者にもたらす能力である。
【0172】
実施例2
後期卵巣癌患者。複数回のカルボプラチンおよびパクリタキセルにより既に静脈内処置が行われ、現在、カルボプラチン/パクリタキセルによる併用治療を受けながら疾患の進行が見られることにより、多剤耐性を示している。この患者は、プラチンおよびタキサン難治性疾患の定義を満たす。
【0173】
患者は腹腔全体に多発性腫瘍を示しており、健康の悪化を受けているが、利益を提供する可能性があると考えられれば、さらなる細胞毒性化学療法に耐えるのにまだ十分に頑健であると考えられる。
【0174】
患者は、連続して7日間、12時間ごとに400mgのデヒドロエクオールで処置される。デヒドロエクオールは、カカオ脂基剤中の2グラムの固形坐薬剤形で直腸に投与される。
【0175】
カルボプラチンは、7日間のデヒドロエクオール処置レジメンの2日目に、AUC6に相当する投薬量で静脈内に注射される。
【0176】
このレジメンは、全部で6回の処置コースにわたって28日ごとに繰り返される。
【0177】
目的は、カルボプラチンが無効である癌細胞においてカルボプラチンに対する応答を誘発し、その際に患者の生存をさらに12か月延ばすことである。
【0178】
実施例3
いくつかの鼠径リンパ節および複数の骨(胸椎、大腿骨、肋骨、上腕骨)において続発性の癌を有する、去勢抵抗性転移性前立腺癌の患者。ホルモン除去療法において前進した後、この患者の標準的な次のステップは、21日ごとに18週間、3時間にわたる175mg/m2の投薬量の静脈内注射を含む、ドセタキセルによる処置コースを受けることである。
【0179】
デヒドロエクオールは、ドセタキセルの投与の前日に始まる連続した7日間、1日1回400mgの投薬量で補助治療として投与され、ドセタキセル治療コースの期間中繰り返される。デヒドロエクオールは、カカオ脂基剤中の2グラムの固形坐薬剤形で直腸に投与される。
【0180】
目的は2つある。第1の目的は、奏効率を報告された30%から40~100%まで増大させることであり、奏効は、完全寛解、部分寛解または疾患の進行がないことであり、長期生存がもたらされる。第2の目的は、奏効の程度および持続期間の両方を増大させることであり、この場合も長期生存の結果につながる。
【0181】
実施例4
多発性腫瘍ならびに腹部および脳に続発性腫瘍を有し、生存予後が2か月である、非小細胞肺癌の高齢男性患者。患者は、放射線療法および化学療法のコースを繰り返し受けたことがある。治療の副作用、高齢(85歳)および広範な病状の複合効果は、彼が任意のさらなる治療に適していないと考えられることを意味する。患者は、それにもかかわらずさらなる処置を要求する。
【0182】
低減された投薬量のカルボプラチンと組み合わせて、デヒドロエクオールが補助治療として投与される。
【0183】
デヒドロエクオールは、連続した7日間、1日2回400mgの投薬量で与えられ、カカオ脂基剤中の2グラムの固形坐薬剤形で直腸に投与される。処置は3か月間にわたって28日ごとに繰り返される。
【0184】
カルボプラチンは、3か月間にわたって28日ごとに、デヒドロエクオールの処置コースの2日目にAUC=3の投薬量で静脈内に投与される。
【0185】
目的は、軽微な(グレード1)疲労以外の任意の処置副作用の発生を伴わずに、全ての腫瘍が収縮し、新たな腫瘍の発達がない、意味のある抗癌効果を達成することである。予想される結果は、少なくとも12か月の生存利益である。
【0186】
実施例5
2歳の小児は原発性の抵抗性ステージ3神経芽細胞腫を有し、これは、手術で切除不能であり、局所的に広がっており、種々のこれまでの化学療法レジメンに応答することができなかったことを意味する。患者は、高用量のカルボプラチンおよびイリノテカンの組合せにより攻撃的に処置される予定である。小児のための高用量のカルボプラチン治療は、通常、5日間の処置期間にわたって1000~1200mg/m2の範囲であり、21~28日ごとに5~6回繰り返される。この投薬量は、患者の治癒において適度に成功しているが、通常、生涯にわたる著しい身体障害をもたらす。
【0187】
この実施例における処置レジメンは、21日ごとに5回、静脈内に投与されるカルボプラチンおよびイリノテカンの併用療法である。カルボプラチンの投薬量は500mg/m2であり、イリノテカンの投薬量は50mg/m2である。
【0188】
デヒドロエクオールは、併用化学療法処置の前日に始まる連続した5日間、毎日400mgの投薬量で直腸に投与される。400mgのデヒドロエクオールは1mlのカカオ脂中に溶解され、液体として直腸で投与される(ツベルクリンシリンジによる)。