IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 旭化成株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-生体情報測定器 図1
  • 特許-生体情報測定器 図2
  • 特許-生体情報測定器 図3
  • 特許-生体情報測定器 図4
  • 特許-生体情報測定器 図5
  • 特許-生体情報測定器 図6
  • 特許-生体情報測定器 図7
  • 特許-生体情報測定器 図8
  • 特許-生体情報測定器 図9
  • 特許-生体情報測定器 図10
  • 特許-生体情報測定器 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】生体情報測定器
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/1455 20060101AFI20221213BHJP
【FI】
A61B5/1455
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021503490
(86)(22)【出願日】2020-02-10
(86)【国際出願番号】 JP2020005146
(87)【国際公開番号】W WO2020179375
(87)【国際公開日】2020-09-10
【審査請求日】2021-11-11
(31)【優先権主張番号】P 2019040897
(32)【優先日】2019-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】壷井 佑夏
(72)【発明者】
【氏名】山田 真士
【審査官】▲高▼木 尚哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-075354(JP,A)
【文献】特許第3035791(JP,B2)
【文献】特開平04-215742(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/06-5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血流のある生体組織に、第1の波長の光を照射する第1発光部と、
前記第1発光部と近接して配置され、前記生体組織に前記第1の波長と異なる第2の波長の光を照射する第2発光部と、
前記生体組織を透過又は反射した前記第1の波長の光及び前記第2の波長の光を受光する第1受光部と、
前記第1受光部に近接して配置され、前記生体組織を透過又は反射した前記第1の波長の光及び前記第2の波長の光を受光する第2受光部と、
前記第1受光部及び前記第2受光部のそれぞれで受光した前記第1の波長の光の受光量に基づいて、前記第1の波長の光の吸光係数の時間に対する変化を算出し、前記第1受光部及び前記第2受光部のそれぞれで受光した前記第2の波長の光の受光量に基づいて、前記第2の波長の光の吸光係数の時間に対する変化を算出し、前記第1の波長の光の吸光係数の時間に対する変化及び前記第2の波長の光の吸光係数の時間に対する変化から動脈血中酸素飽和度を算出する演算処理部と、
を備え
前記第1の波長及び前記第2の波長は、400nm以上1000nm以下であり、
前記第1発光部は、前記第1の波長の光として赤色光を発光し、
前記第2発光部は、前記第2の波長の光として赤外光を発光し、
前記演算処理部は、以下の式(6)から前記赤色光と前記赤外光との拍動成分による吸光係数の比Rμaを算出し、前記吸光係数の比Rμaに基づいて前記動脈血中酸素飽和度を算出する生体情報測定器。
【数1】
式(6)中、μa,Redは赤色光Redの吸収係数、μa,IRは赤外光IRの吸収係数を示す。また、hは正規化勾配、λIRは赤外光IRの波長、λRedは赤色光Redの波長、Δρは、前記第1発光部及び前記第2発光部と前記第1受光部との間の距離と、前記第1発光部及び前記第2発光部と前記第2受光部との間の距離との差分、ρは前記第1発光部及び前記第2発光部と前記第1受光部との間の距離と、前記第1発光部及び前記第2発光部と前記第2受光部との間の距離との平均、IH,Red,P1は前記第1受光部で受光した赤色光の受光強度の時間に対する振幅変動の最大振幅、IL,Red,P1は前記第1受光部で受光した赤色光の受光強度の時間に対する振幅変動の最小振幅、IH,IR,P1は前記第1受光部で受光した赤外光の受光強度の時間に対する振幅変動の最大振幅、IL,IR,P1は前記第1受光部で受光した赤外光の受光強度の時間に対する振幅変動の最小振幅、IH,Red,P2は前記第2受光部で受光した赤色光の受光強度の時間に対する振幅変動の最大振幅、IL,Red,P2は前記第2受光部で受光した赤色光の受光強度の時間に対する振幅変動の最小振幅、IH,IR,P2は前記第2受光部で受光した赤外光の受光強度の時間に対する振幅変動の最大振幅、IL,IR,P2は前記第2受光部で受光した赤外光の受光強度の時間に対する振幅変動の最小振幅である。
【請求項2】
前記第1受光部及び前記第2受光部、並びに前記第1発光部及び前記第2発光部は、それぞれ、前記第1発光部及び前記第2発光部と前記第1受光部との間の距離ρ1が、前記第1発光部及び前記第2発光部と前記第2受光部との間の距離ρ2と異なるように配置される
請求項1に記載の生体情報測定器。
【請求項3】
前記第2受光部は、前記第1発光部及び前記第2発光部の中点と前記第1受光部とを通る第1の直線L1上に配置される
請求項2に記載の生体情報測定器。
【請求項4】
前記第2受光部は、前記中点に対して前記第1受光部と同じ方向に配置される
請求項3に記載の生体情報測定器。
【請求項5】
前記第1発光部と前記第1受光部及び前記第2受光部との間の距離、並びに前記第2発光部と前記第1受光部及び前記第2受光部との間の距離は、1mm以上100mm以下である
請求項1から4のいずれか1項に記載の生体情報測定器。
【請求項6】
前記演算処理部は、以下の式(5)から前記動脈血中酸素飽和度を算出する
請求項1から5のいずれか1項に記載の生体情報測定器。
【数2】
式(5)中に示すεHHb,Redは、還元ヘモグロビンに対する赤色光のモル吸光係数、εHHb,IRは、還元ヘモグロビンに対する赤外光のモル吸光係数、εO2Hb,Redは、酸化ヘモグロビンに対する赤色光Redのモル吸光係数、εO2Hb,IRは、酸化ヘモグロビンに対する赤外光IRのモル吸光係数、Rμaは、赤色光と赤外光との拍動成分による吸光係数の比である。
【請求項7】
前記第1受光部及び前記第2受光部を含み、前記第1の波長の光及び前記第2の波長の光を受光する互いに近接して配置された3つ以上の複数の受光部を備え、
前記演算処理部は、前記複数の受光部のそれぞれで受光した前記第1の波長の光の受光量に基づいて、前記第1の波長の光の吸光係数の時間に対する変化を算出し、前記複数の受光部のそれぞれで受光した前記第2の波長の光の受光量に基づいて、前記第2の波長の光の吸光係数の時間に対する変化を算出し、前記第1の波長の光の吸光係数の時間に対する変化及び前記第2の波長の光の吸光係数の時間に対する変化から前記動脈血中酸素飽和度を算出する
請求項1に記載の生体情報測定器。
【請求項8】
血流のある生体組織に、第1の波長の光を照射する第1発光部と、
前記第1発光部と近接して配置され、前記生体組織に前記第1の波長と異なる第2の波長の光を照射する第2発光部と、
前記生体組織に、前記第1の波長の光を照射する第3発光部と、
前記第3発光部と近接して設けられ、前記生体組織に、前記第2の波長の光を照射する第4発光部と、
前記生体組織を透過又は反射した前記第1の波長の光及び前記第2の波長の光を受光する受光部と、
前記受光部で受光した前記第1発光部からの前記第1の波長の光及び前記第3発光部からの前記第1の波長の光の受光量に基づいて、前記第1の波長の光の吸光係数の時間に対する変化を算出し、前記受光部で受光した前記第2発光部からの前記第2の波長の光及び前記第4発光部からの前記第2の波長の光の受光量に基づいて、前記第2の波長の光の吸光係数の時間に対する変化を算出し、前記第1の波長の光の吸光係数の時間に対する変化及び前記第2の波長の光の吸光係数の時間に対する変化から動脈血中酸素飽和度を算出する演算処理部と、
を備え
前記第1の波長及び前記第2の波長は、400nm以上1000nm以下であり、
前記第1発光部及び前記第3発光部は、前記第1の波長の光として赤色光を発光し、
前記第2発光部及び前記第4発光部は、前記第2の波長の光として赤外光を発光し、
前記演算処理部は、以下の式(6)から前記赤色光と前記赤外光との拍動成分による吸光係数の比Rμaを算出し、前記吸光係数の比Rμaに基づいて前記動脈血中酸素飽和度を算出する生体情報測定器。
【数3】
式(6)中、μa,Redは赤色光Redの吸収係数、μa,IRは赤外光IRの吸収係数を示す。また、hは正規化勾配、λIRは赤外光IRの波長、λRedは赤色光Redの波長、Δρは、前記第1発光部及び前記第2発光部と前記受光部との間の距離と、前記第3発光部及び前記第4発光部と前記受光部との間の距離との差分、ρは前記第1発光部及び前記第2発光部と前記受光部との間の距離と、前記第3発光部及び前記第4発光部と前記受光部との間の距離との平均、IH,Red,P1は前記受光部で受光した前記第1発光部からの赤色光の受光強度の時間に対する振幅変動の最大振幅、IL,Red,P1は前記受光部で受光した前記第1発光部からの赤色光の受光強度の時間に対する振幅変動の最小振幅、IH,IR,P1は前記受光部で受光した前記第2発光部からの赤外光の受光強度の時間に対する振幅変動の最大振幅、IL,IR,P1は前記受光部で受光した前記第2発光部からの赤外光の受光強度の時間に対する振幅変動の最小振幅、IH,Red,P2は前記受光部で受光した前記第3発光部からの赤色光の受光強度の時間に対する振幅変動の最大振幅、IL,Red,P2は前記受光部で受光した前記第3発光部からの赤色光の受光強度の時間に対する振幅変動の最小振幅、IH,IR,P2は前記受光部で受光した前記第4発光部からの赤外光の受光強度の時間に対する振幅変動の最大振幅、IL,IR,P2は前記受光部で受光した前記第4発光部からの赤外光の受光強度の時間に対する振幅変動の最小振幅である。
【請求項9】
前記受光部、並びに前記第1発光部、前記第2発光部、前記第3発光部及び前記第4発光部は、前記第1発光部及び前記第2発光部と前記受光部との間の距離ρ1が、前記第3発光部及び前記第4発光部と前記受光部との間の距離ρ2と異なるように配置される
請求項に記載の生体情報測定器。
【請求項10】
前記第3発光部は、前記受光部と前記第1発光部及び前記第2発光部の中点とを通る直線Lと平行かつ前記第1発光部を通る第2の直線L2上に配置され、
前記第4発光部は、前記受光部と前記第1発光部及び前記第2発光部の中点とを通る直線Lと平行かつ前記第2発光部を通る第3の直線L3上に配置される
請求項に記載の生体情報測定器。
【請求項11】
前記第3発光部は、前記受光部と前記第1発光部とを通る直線L1上に配置され、
前記第4発光部は、前記受光部と前記第2発光部とを通る直線L2上に配置される
請求項に記載の生体情報測定器。
【請求項12】
前記第3発光部は、前記受光部に対して前記第1発光部と同じ方向に配置され、
前記第4発光部は、前記受光部に対して前記第2発光部と同じ方向に配置される
請求項10又は11のいずれか1項に記載の生体情報測定器。
【請求項13】
前記演算処理部は、以下の式(5)から前記動脈血中酸素飽和度を算出する
請求項8から12のいずれか1項に記載の生体情報測定器。
【数4】
式(5)中に示すεHHb,Redは、還元ヘモグロビンに対する赤色光のモル吸光係数、εHHb,IRは、還元ヘモグロビンに対する赤外光のモル吸光係数、εO2Hb,Redは、酸化ヘモグロビンに対する赤色光Redのモル吸光係数、εO2Hb,IRは、酸化ヘモグロビンに対する赤外光IRのモル吸光係数、Rμaは、赤色光と赤外光との拍動成分による吸光係数の比である。
【請求項14】
前記第1発光部、前記第2発光部、前記第3発光部及び前記第4発光部を含み、前記第1の波長の光又は前記第2の波長の光を発光する5つ以上の複数の発光部を備え、
前記演算処理部は、前記受光部で受光した前記第1の波長の光の受光量に基づいて、前記第1の波長の光の吸光係数の時間に対する変化を算出し、前記受光部で受光した前記第2の波長の光の受光量に基づいて、前記第2の波長の光の吸光係数の時間に対する変化を算出し、前記第1の波長の光の吸光係数の時間に対する変化及び前記第2の波長の光の吸光係数の時間に対する変化から前記動脈血中酸素飽和度を算出する
請求項に記載の生体情報測定器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、生体情報測定器に関する。
【背景技術】
【0002】
体内の血液中にどの程度の酸素が含まれているかを示す生体指標の一つとして、経皮的動脈血中酸素飽和度(SpO、以下動脈血中酸素飽和度という場合がある)が知られている。動脈血中酸素飽和度は、一般に、生体組織に赤色光及び赤外光を照射し、毛細血管を透過した透過光を測定することにより推定することができる。2つの波長の光は、酸化ヘモグロビン(OHb)及び還元ヘモグロビン(HHb)に対する吸光特性に差を有している。動脈血中酸素飽和度は、この吸光特性の差を利用することにより推測される。具体的には、主に指等にプローブ(センサ)を装着し、2種類の波長の光(赤色光及び赤外光)を指等に照射してそれぞれの透過光又は反射光の強度を測定する。酸化ヘモグロビンの飽和量は、2種類の波長の光の透過光又は反射光の強度に基づいて算出される。
【0003】
例えば、以下に示す特許文献1、2には、生体を透過した赤色光と赤外光とを1つの受光素子で受光して、動脈血中酸素飽和度の推定を行うオキシメータが開示されている。動脈血中酸素飽和度は、通常、酸化ヘモグロビン(OHb)の濃度と、酸化ヘモグロビン(OHb)及び還元ヘモグロビン(HHb)の濃度の和との比(理論値)で決まる。ところが、実際の動脈血中酸素飽和度は、上述した理論値と乖離する。そこで、特許文献1,2に開示された装置では、生体組織中の光散乱を考慮して、上述した理論値を校正する校正式、又は理論値と動脈血中酸素飽和度とが対応付けられたテーブルを用いて動脈血中酸素飽和度を推定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭62-102736号公報
【文献】特開2010-233908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したような校正式やテーブルを用いて推定した動脈血中酸素飽和度は、生体内での光の散乱が十分に考慮されておらず、依然として実際の動脈血中酸素飽和度との乖離が大きい場合がある。特に、動脈血中酸素飽和度が低い場合には、推定した動脈血中酸素飽和度と実際の動脈血中酸素飽和度との乖離が大きくなる傾向がある。
【0006】
そこで、本開示は、生体の測定環境や測定位置に関わらず、高い精度で動脈血中酸素飽和度を推定可能な生体情報測定器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するために、本開示の一態様に係る生体情報測定器は、血流のある生体組織に、第1の波長の光を照射する第1発光部と、第1発光部と近接して配置され、生体組織に第1の波長と異なる第2の波長の光を照射する第2発光部と、生体組織を透過又は反射した第1の波長の光及び第2の波長の光を受光する第1受光部と、第1受光部に近接して配置され、生体組織を透過又は反射した第1の波長の光及び第2の波長の光を受光する第2受光部と、第1受光部及び第2受光部のそれぞれで受光した第1の波長の光の受光量に基づいて、第1の波長の光の吸光係数の時間に対する変化を算出し、第1受光部及び第2受光部のそれぞれで受光した第2の波長の光の受光量に基づいて、第2の波長の光の吸光係数の時間に対する変化を算出し、第1の波長の光の吸光係数の時間に対する変化及び第2の波長の光の吸光係数の時間に対する変化から動脈血中酸素飽和度を算出する演算処理部と、を備え、第1発光部は、第1の波長の光として赤色光を発光し、第2発光部は、第2の波長の光として赤外光を発光し、演算処理部は、以下の式(6)から赤色光と赤外光との拍動成分による吸光係数の比Rμaを算出し、吸光係数の比Rμaに基づいて動脈血中酸素飽和度を算出することを特徴とする。
【数5】
式(6)中、μa,Redは赤色光Redの吸収係数、μa,IRは赤外光IRの吸収係数を示す。また、hは正規化勾配、λIRは赤外光IRの波長、λRedは赤色光Redの波長、Δρは、第1発光部及び第2発光部と第1受光部との間の距離と、第1発光部及び第2発光部と第2受光部との間の距離との差分、ρは第1発光部及び第2発光部と第1受光部との間の距離と、第1発光部及び第2発光部と第2受光部との間の距離との平均、IH,Red,P1は第1受光部で受光した赤色光の受光強度の時間に対する振幅変動の最大振幅、IL,Red,P1は第1受光部で受光した赤色光の受光強度の時間に対する振幅変動の最小振幅、IH,IR,P1は第1受光部で受光した赤外光の受光強度の時間に対する振幅変動の最大振幅、IL,IR,P1は第1受光部で受光した赤外光の受光強度の時間に対する振幅変動の最小振幅、IH,Red,P2は第2受光部で受光した赤色光の受光強度の時間に対する振幅変動の最大振幅、IL,Red,P2は第2受光部で受光した赤色光の受光強度の時間に対する振幅変動の最小振幅、IH,IR,P2は第2受光部で受光した赤外光の受光強度の時間に対する振幅変動の最大振幅、IL,IR,P2は第2受光部で受光した赤外光の受光強度の時間に対する振幅変動の最小振幅である。
【0008】
また、本開示の他の態様に係る生体情報測定器は、血流のある生体組織に、第1の波長の光を照射する第1発光部と、第1発光部と近接して配置され、生体組織に第1の波長と異なる第2の波長の光を照射する第2発光部と、生体組織に、第1の波長の光を照射する第3発光部と、第3発光部と近接して設けられ、生体組織に、第2の波長の光を照射する第4発光部と、生体組織を透過又は反射した第1の波長の光及び第2の波長の光を受光する受光部と、受光部で受光した第1発光部からの第1の波長の光及び第3発光部からの第1の波長の光の受光量に基づいて、第1の波長の光の吸光係数の時間に対する変化を算出し、受光部で受光した第2発光部からの第2の波長の光及び第4発光部からの第2の波長の光の受光量に基づいて、第2の波長の光の吸光係数の時間に対する変化を算出し、第1の波長の光の吸光係数の時間に対する変化及び第2の波長の光の吸光係数の時間に対する変化から動脈血中酸素飽和度を算出する演算処理部と、を備え、第1発光部及び第3発光部は、第1の波長の光として赤色光を発光し、第2発光部及び第4発光部は、第2の波長の光として赤外光を発光し、演算処理部は、以下の式(6)から赤色光と赤外光との拍動成分による吸光係数の比Rμaを算出し、吸光係数の比Rμaに基づいて動脈血中酸素飽和度を算出することを特徴とする。
【数6】
式(6)中、μa,Redは赤色光Redの吸収係数、μa,IRは赤外光IRの吸収係数を示す。また、hは正規化勾配、λIRは赤外光IRの波長、λRedは赤色光Redの波長、Δρは、第1発光部及び第2発光部と受光部との間の距離と、第3発光部及び第4発光部と受光部との間の距離との差分、ρは第1発光部及び第2発光部と受光部との間の距離と、第3発光部及び第4発光部と受光部との間の距離との平均、IH,Red,P1は受光部で受光した第1発光部からの赤色光の受光強度の時間に対する振幅変動の最大振幅、IL,Red,P1は受光部で受光した第1発光部からの赤色光の受光強度の時間に対する振幅変動の最小振幅、IH,IR,P1は受光部で受光した第2発光部からの赤外光の受光強度の時間に対する振幅変動の最大振幅、IL,IR,P1は受光部で受光した第2発光部からの赤外光の受光強度の時間に対する振幅変動の最小振幅、IH,Red,P2は受光部で受光した第3発光部からの赤色光の受光強度の時間に対する振幅変動の最大振幅、IL,Red,P2は受光部で受光した第3発光部からの赤色光の受光強度の時間に対する振幅変動の最小振幅、IH,IR,P2は受光部で受光した第4発光部からの赤外光の受光強度の時間に対する振幅変動の最大振幅、IL,IR,P2は受光部で受光した第4発光部からの赤外光の受光強度の時間に対する振幅変動の最小振幅である。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、生体の測定環境や測定位置に関わらず、高い精度で動脈血中酸素飽和度を推定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の第一実施形態に係る生体情報測定器の一構成例を示すブロック図である。
図2】本開示の第一実施形態に係る生体情報測定器の生体に対する接触面における発光部及び受光部の配置を示す平面図である。
図3】本開示の第一実施形態に係る生体情報測定器において、生体に発光部及び受光部を配置した状態及び発光部から発光された光の光路を示す断面模式図である。
図4】生体に入射した入射光の受光量(強度I)の時間に対する透過光の受光量(強度)の振幅変動を説明する図である。
図5】本開示の第二実施形態に係る生体情報測定器の生体に対する接触面における発光部及び受光部の配置を示す平面図である。
図6】本開示の第三実施形態に係る生体情報測定器の生体に対する接触面における発光部及び受光部の配置を示す平面図である。
図7】本開示の第三実施形態に係る生体情報測定器において、生体に発光部及び受光部を配置した状態及び発光部から発光された光の光路を示す断面模式図である。
図8】本開示の第四実施形態に係る生体情報測定器の生体に対する接触面における発光部及び受光部の配置を示す平面図である。
図9】本開示の第五実施形態に係る生体情報測定器の生体に対する接触面における発光部及び受光部の配置を示す平面図である。
図10】本開示の第六実施形態に係る生体情報測定器の生体に対する接触面における発光部及び受光部の配置を示す平面図である。
図11】本開示の第七実施形態に係る生体情報測定器の生体に対する接触面における発光部及び受光部の配置を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本開示の実施の形態を説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、あくまでも例示であり、以下に明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本開示は、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変形(例えば各実施形態を組み合わせる等)して実施することができる。また、以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付して表している。図面は模式的なものであり、必ずしも実際の寸法や比率等とは一致しない。図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることがある。
【0012】
1.従来の動脈血中酸素飽和度(SpO)の測定方法について
まず、従来の動脈血中酸素飽和度(SpO)の測定方法について説明する。
従来、酸化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンの光波長に対する吸収係数の違いを利用して、2波長の光を用いて動脈血中酸素飽和度(SpO)を推測することが行われている。2波長の光を用いて推測した動脈血中酸素飽和度(SpO)は、以下の式(1)で示される。
【数1】
【0013】
ここで、式(1)中、Rは以下の式(2)で示される。
【数2】
【0014】
式(2)中、ARedは赤色光Redの吸光度、AIRは赤外光IRの吸光度、IL,Redは赤色光Redの受光量(強度)の時間に対する振幅変動の最小振幅、IH,Redは赤色光Redの受光量(強度)の時間に対する振幅変動の最大振幅、IL,IRは赤外光IRの受光量(強度)の時間に対する振幅変動の最小振幅、IH,IRは赤外光IRの受光量(強度)の時間に対する振幅変動の最大振幅である。ここで、赤色光Redの受光量(強度)の時間に対する振幅変動の最小振幅、最大振幅は脈動の振幅を意味する。また、式(2)中、εO2Hb,Redは酸化ヘモグロビン(OHb)に対する赤色光Redのモル吸光係数、εHHb,Redは還元ヘモグロビン(HHb)に対する赤色光Redのモル吸光係数、εO2Hb,IRは、酸化ヘモグロビン(OHb)に対する赤外光IRのモル吸光係数、εHHb,IRは還元ヘモグロビン(HHb)に対する赤外光IRのモル吸光係数である。式(2)中、[OHb]は酸化ヘモグロビン濃度、[HHb]は還元ヘモグロビン濃度である。
【0015】
式(1)は、以下の式(3)で示されるBeer-Lambert則と、式(4)で示される動脈血中酸素飽和度(SpO)の理論式とから求められる。
【数3】
ここで、式(3)中、Aは吸光度、Iは入射光の強度、Iは透過光の強度、εはモル吸光係数、Cは吸光体モル濃度、dは距離(吸光体の厚さ)である。
【0016】
【数4】
ここで、式(4)中、[OHb]は酸化ヘモグロビン濃度、[HHb]は還元ヘモグロビン濃度である。
【0017】
しかしながら、式(3)で示すBeer-Lambert則は、光が透過する生体組織(特に拍動成分である動脈血以外の生体組織)における光の散乱を考慮したモデルではない。このため、式(1)を用いて推定した動脈血中酸素飽和度(式(1)から推定した理論値)は、実際の動脈血中酸素飽和度との乖離が大きい。従来のSpO測定器は、いわゆる「透過型」の測定器であり、ほとんどが指に対して測定光を照射してSpOが測定されている。指は毛細血管が多く、また、透過型の測定器であれば波長の違いによる生体内での光路差が小さいため、透過型の測定器を用いることによりSpOを精度よく測定することができていた。
【0018】
しかしながら、指での測定は、低温環境下では末梢血管が収縮し、測定精度が低下するという問題があった。また、例えば指以外の位置にセンサを取り付けてSpOを測定する場合、特に、反射型の測定器を用いた場合には、波長ごとの生体内での光路差が大きくなるため、測定精度がより低下するという問題があった。
【0019】
そこで、本開示者らは、生体の様々な位置で精度よくSpOを測定可能な生体情報測定器及び生体情報測定方法を提案している。
以下、各実施形態において、生体情報測定器及び生体情報測定方法について詳細に説明する。
【0020】
2.第一実施形態
以下、図1から図4を用いて、第一実施形態に係る生体情報測定器及び生体情報測定方法について説明する。図1は、第一実施形態に係る生体情報測定器100の構成を示すブロック図である。図2は、本実施形態に係る生体情報測定器100の生体に対する接触面における発光部20(発光部20a,20b)及び受光部30(受光部30a,30b)の配置を示す平面図である。図3は、図2のIII-III断面を示しており、生体に発光部20(20a,20b)及び受光部30(30a,30b)を配置した状態及び発光部20から発光された光の光路OP1,OP2を示す断面模式図である。図4は、生体に入射した入射光の受光量(強度I)の時間に対する透過光の受光量(強度)の振幅変動を説明する図である。
【0021】
[生体情報測定器]
図1に示すように、第一実施形態に係る生体情報測定器100は、発光部20と受光部30とを有するセンサ部10と、演算処理部40及び制御部50等を有するマイクロプロセッサ60と、を備えている。生体情報測定器100は、パルスオキシメータである。生体情報測定器100は、例えば、センサ部10とマイクロプロセッサ60とが図示しない筺体に収容され、発光部20と受光部30とが外部に露出して生体と密着可能なように構成されている。また、生体情報測定器100は、生体情報測定器100で測定した動脈血中酸素飽和度(SpO)を表示する表示部72や生体情報測定器100を操作する操作部74等と接続されていても良い。表示部72は、例えば液晶ディスプレイ(Liquid Crystal Display:LCD)、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ(Organic Electro-Luminescence Display:OLED)等の既存の表示部を用いることができる。また、操作部74は、キーボード、タッチパネル、ボタン、音声入力部等の既存の入力部を用いることができる。なお、生体情報測定器100は、表示部72や操作部74等を、内部に備えていても良い。
【0022】
生体情報測定器100は、発光部20として発光部20aと発光部20bとを備え、受光部30として受光部30aと受光部30bとを備えている。生体情報測定器100は、発光部20a,20bで発光され、生体を透過した異なる波長の光を受光部30a、30bでそれぞれ受光する。発光部20a,20b、及び受光部30a、30bは、それぞれ、受光部30aと発光部20a,20bとの間の距離が、受光部30bと発光部20a,20bとの間の距離と異なるように配置される。
すなわち、生体情報測定器100は、異なる波長の光を、生体を介して複数箇所(例えば受光部30a、30b配置位置の2か所)で受光する。生体情報測定器100では、受光部30a、30bで測定した受光量から、受光部30a、30bの配置位置間における生体中の酸化ヘモグロビン(OHb)と還元ヘモグロビン(HHb)とのそれぞれの各波長での光量の減衰量を測定する。生体情報測定器100では、上述した吸光度の傾きを利用して、より高い精度で動脈血中酸素飽和度(SpO)を測定する。
【0023】
以下、生体情報測定器100の各部について詳細に説明する。
【0024】
(発光部)
図1から図3に示すように、発光部20は、発光部20aと、発光部20bとを備えている。また、発光部20は、3つ以上の発光部を備えていても良い。
発光部20aは、第1の波長の光(例えば赤色光)を発光する第1発光部である。発光部20aは、血流のある生体に密着して配置され、生体に対して第1の波長の光を照射する。
発光部20bは、第1の波長と異なる第2の波長の光(例えば赤外光)を発光する第2発光部である。発光部20bは、発光部20aと同様に、血流のある生体に密着して配置され、生体に対して第2の波長の光を照射する。発光部20bは、発光部20aと近接して配置される。
発光部20a、20bは、所定の周期で交互に発光する。
【0025】
発光部20a、20bは、発光素子として、例えば、発光ダイオード(Light Emitting Diode:LED)や小型のレーザ等を含んでいる。
発光部20a,20bから発光される光は、還元ヘモグロビンを測定するために用いられる赤色光又は赤外光であることが好ましい。発光部20aから発光される光の波長(第1の波長)及び発光部20bから発光される光の波長(第2の波長)は、400nm以上1000nm以下であることが好ましく、650nm以上950nm以下であることがより好ましい。
【0026】
発光部20a,20bから発光される光の波長が400nm以上である場合、光のヘモグロビンへの吸収が大きすぎず、生体への影響が少なくなるため好ましい。また、発光部20a,20bから発光される光の波長が650nm以上である場合、受光部30a、30bにおける受光量が十分となるためより好ましい。
また、発光部20a,20bから発光される光の波長が1000nm以下である場合、生体組織内の水に対する光の吸収が大きすぎず、受光部30a、30bにおける受光量が十分となるため好ましい。また、発光部20a,20bから発光される光の波長が950nm以下である場合、生体組織内の水に対する光の吸収の影響がより小さくなり、光の吸収に起因するノイズが少なくなるため好ましい。
【0027】
生体情報測定器100では、酸化ヘモグロビン(OHb)と還元ヘモグロビン(HHb)に対する光の吸収係数の相違を利用して動脈血中酸素飽和度(SpO)を測定する。このため、発光部20aから発光される光が赤色光であり、発光部20bから発光される光が赤外光であることが好ましい。
【0028】
(受光部)
図1から図3に示すように、受光部30は、受光部30aと、受光部30bとを備えている。また、受光部30は、3つ以上の受光部を備えていても良い。
受光部30aは、生体組織を透過又は反射した第1の波長の光(例えば赤色光)及び第2の波長の光(例えば赤外光)を受光する。
受光部30bは、受光部30aに近接して配置され、生体組織を透過又は反射した第1の波長の光(例えば赤色光)及び第2の波長の光(例えば赤外光)を受光する。
受光部30a、30bは、発光部20a、20bで交互に発光した赤色光と赤外光の双方を、受光時間を分割して受光する。なお、受光部30a、30bが赤外光受光素子と赤色光受光素子とをそれぞれ備える場合には、上述した受光時間の分割は行われない。
受光部30a、30bは、受光素子として、例えば、フォトダイオード(Photodiode:PD)等を含んでいる。
【0029】
図2に示すように、受光部30a、30bは、発光部20a,20bと受光部30aとの間の距離(ρ1)が、発光部20a,20bと受光部30bとの間の距離(ρ2)と異なるように配置される。以下、ρ1を第1受光部距離、ρ2を第2受光部距離とする。受光部30aと発光部20a及び発光部20bとの間の距離ρ1、受光部30bと発光部20a及び発光部20bとの間の距離ρ2は、それぞれ1mm以上100mm以下であることが好ましく、1mm以上50mm以下であることがより好ましい。距離ρ1、ρ2が1mm以上である場合、平均自由工程よりも十分大きいという、生体内での光の拡散方程式の仮定を満たすため、高精度に測定を行うことができる。また、距離ρ1、ρ2が100mm以下である場合、拡散光の受光量が十分であるため好ましい。さらに、距離ρ1、ρ2が40mm以下である場合、センサ部10が小型となりセンサ部10を生体表面に貼り付けが容易であるため好ましい。
【0030】
図2に示すように、受光部30bは、発光部20a及び発光部20bの中点C1と受光部30aとを通る直線L1上に配置される。これにより、受光部30a、30b、並びに発光部20a及び発光部20bの中点C1は、例えば同一直線上に配置される。また、受光部30bは、中点C1に対して受光部30aと同じ方向に配置される。この場合、図3に示すように、例えば発光部20aから生体を介して受光部30aに光が透過する光路OP1と、発光部20aから生体を介して受光部30bに光が透過する光路OP2とが近くなる。すなわち、発光部20aと受光部30aとの間の赤色光の光路OP1(生体中の経路)、及び発光部20aと受光部30bとの間の赤色光の光路OP2(生体中の経路)において、生体組織の構成が近くなる。同様に、発光部20bと受光部30aとの間の赤外光の経路(生体中の経路)、及び発光部20bと受光部30bとの間の赤外光の経路(生体中の経路)において、生体組織の構成が近くなる。このため、光路差による受光量の誤差が小さくなり、より高精度に動脈血中酸素飽和度(SpO)を推定することができる。
【0031】
(マイクロプロセッサ)
マイクロプロセッサ60は、演算処理部40と、制御部50と、図示しないアナログ-デジタル変換部(A/D変換部)及びデジタル-アナログ変換部(D/A変換部)等を有している。アナログ-デジタル変換部(A/D変換部)は、例えばマイクロプロセッサ60に入力されるアナログ信号をデジタル信号に変換する。また、デジタル-アナログ変換部(D/A変換部)は、マイクロプロセッサ60から出力されるデジタル信号をアナログ信号に変換する。
【0032】
(制御部)
制御部50は、例えば、発光部20a,20bを駆動する駆動回路、受光部30a、30bから出力された電圧を電流に変換するVI変換部、VI変換部の出力を増幅する増幅回路(それぞれ図示せず)を有している。また、制御部50は、駆動回路を制御する駆動制御部や、演算処理部40を制御する演算制御部(それぞれ図示せず)を有している。制御部50は、操作部74を介して外部から入力された操作指示に基づき、駆動制御部や演算制御部の制御を行う。
【0033】
(演算処理部)
演算処理部40は、受光部30a、30bからの受光量に応じた出力が入力され、動脈血中酸素飽和度(SpO)の演算を行う。また、演算処理部40は、演算結果として、動脈血中酸素飽和度(SpO)を外部の表示部72に出力する。
演算処理部40は、受光部30a、30bのそれぞれで受光した第1の波長の光の受光量に基づいて第1の波長の光の吸光係数の時間に対する変化を算出し、受光部30a、30bのそれぞれで受光した第2の波長の光の受光量に基づいて、第2の波長の光の吸光係数の時間に対する変化を算出する。演算処理部40は、第1の波長の光の吸光係数の時間に対する変化及び第2の波長の光の吸光係数の時間に対する変化から動脈血中酸素飽和度を算出する。ここで、第1の波長の光の吸光係数の時間に対する変化及び第2の波長の光の吸光係数の時間に対する変化とは、発光部20a,20bと受光部30aとの距離ρ1、発光部20a,20bと受光部30bとの距離ρ2に対する光の吸光係数の時間に対する変化を示す。
具体的には、演算処理部40は、第1の波長の光の吸光係数の時間に対する変化及び第2の波長の光の吸光係数の時間に対する変化として、第1の波長の光と第2の波長の光との拍動成分による吸光係数の比Rμaを算出し、吸光係数の比Rμaに基づいて動脈血中酸素飽和度(SpO)を算出する。吸光係数の比Rμaは、第1の波長の光及び第2の波長の光の振幅変動(最大振幅及び最小振幅、詳細は後述する)を用いて算出することができる。例えば、第1の波長の光が赤色光Redであり、第2の波長の光が赤外光IRである場合、演算処理部40は、赤色光Red及び赤外光IRの吸光係数の時間に対する変化から、赤色光Redの吸収係数μa,Red及び赤外光IRの吸収係数μa,IRの比Rμa(μa,Red/μa,IR)を算出する。吸収係数は、光の散乱の要素が除かれており、従来原理よりも実際の測定系に近いSpO値を得ることができる。
以下、演算処理部40における演算について、詳細に説明する。
【0034】
図3に示すように、生体情報測定器100のセンサ部10では、発光部20a,20bから出射した光を生体の皮膚面に照射し、反射、散乱しながら生体内を透過した透過光(出射光)を、受光部30a,30bでそれぞれ受光する。発光部20a,20bから出射した光は、図3に示すように、生体内の皮下脂肪層SF、血管層BV、筋肉層M、骨B等の層を透過し得る。このとき、図4に示すように、入射光は、生体内に存在する動脈や静脈やその他の体組織によって一部吸収されて、発光部20a,20bにおいて出射光として観測される。図4に示すように、透過光の受光量(強度)の振幅は、拍動成分(AC(Alternating Current)成分)の最大振幅IHと最小振幅ILとの間で振動する。
【0035】
演算処理部40は、上述したように、赤色光Redの吸収係数μa,Red及び赤外光IRの吸収係数μa,IRの比Rμaを算出し、吸収係数の比Rμaに基づいて、動脈血中酸素飽和度(SpO)を算出する。
演算処理部40は、吸収係数の比Rμaを決定するために、受光部30a,30bから以下の8つのパラメータ(透過光の強度)を取得する。
H,Red,P1、IL,Red,P1、IH,IR,P1、IL,IR,P1、IH,Red,P2、IL,Red,P2、IH,IR,P2、IL,IR,P2
【0036】
H,Red,P1、IL,Red,P1は、赤色光Redの発光部からの距離がρ1の位置P1に配置された受光部で受光した赤色光Redの受光量(強度)の時間に対する振幅変動の最大振幅(IH,Red,P1)、最小振幅(IL,Red,P1)である。IH,Red,P1、IL,Red,P1は、発光部20aと、発光部20aからの距離がρ1である位置P1に配置された受光部30aとの組み合わせにより測定される。
また、IH,IR,P1、IL,IR,P1は、赤外光IRの発光部からの距離がρ1の位置P1に配置された受光部で受光した赤外光IRの受光量(強度)の時間に対する振幅変動の最大振幅(IH,IR,P1)、最小振幅(IL,IR,P1)である。IH,IR,P1、IL,IR,P1は、発光部20bと、発光部20bからの距離がρ1である位置P1に配置された受光部30aとの組み合わせにより測定される。
また、IH,Red,P2、IL,Red,P2は、赤色光Redの発光部からの距離がρ2の位置P2に配置された受光部30bで受光した赤色光Redの受光量(強度)の時間に対する振幅変動の最大振幅(IH,Red,P2)、最小振幅(IL,Red,P2)である。IH,Red,P1、IL,Red,P1は、発光部20aと、発光部20aからの距離がρ2である位置P2に配置された受光部30bとの組み合わせにより測定される。
さらに、IH,IR,P2、IL,IR,P2は、赤外光IRの発光部からの距離がρ2の位置P2に配置された受光部30bで受光した赤外光IRの受光量(強度)の時間に対する振幅変動の最大振幅(IH,IR,P2)、最小振幅(IL,IR,P2)である。IH,IR,P2、IL,IR,P2L,IR,P2は、発光部20bと、発光部20bからの距離がρ2である位置P2に配置された受光部30bとの組み合わせにより測定される。
【0037】
具体的に、本実施形態に係る生体情報測定器100では、動脈血中酸素飽和度(SpO)を、以下の式(5)から算出する。式(5)に基づいて算出したSpO(理論値)は、生体中の光散乱の影響を考慮しているため、実際のSpOの値との乖離が小さくなる。
【数5】
【0038】
ここで、式(5)中に示すεHHb,Redは、還元ヘモグロビン(HHb)に対する赤色光Redのモル吸光係数、εHHb,IRは、還元ヘモグロビン(HHb)に対する赤外光IRのモル吸光係数、εO2Hb,Redは、酸化ヘモグロビン(OHb)に対する赤色光Redのモル吸光係数、εO2Hb,IRは、酸化ヘモグロビン(OHb)に対する赤外光IRのモル吸光係数を示す。また、Rμaは、赤色光Redと赤外光IRとの拍動(AC)成分による吸光係数(μa,Red、μa,IR)の比であり、以下の式(6)で示す。
【0039】
【数6】
【0040】
式(6)中、μa,Redは赤色光Redの吸収係数、μa,IRは赤外光IRの吸収係数を示す。また、hは正規化勾配(~6.3×10-4[mm-1/nm))、λIRは赤外光IRの波長、λRedは赤色光Redの波長、Δρは、第1受光部距離ρ1と第2受光部距離ρ2との差分、ρは第1受光部距離ρ1と第2受光部距離ρ2との平均を示す。Δρは、発光部20(20a,20b)と受光部30aとの間の距離ρ1と、発光部20(20a,20b)と受光部30bとの間の距離ρ2との差分(ρ2-ρ1)であり、2つの測定点P1,P2間の距離(受光部30a,30bの位置の間の距離)を示す。また、ρは、2つの測定点P1,P2(受光部30a,30bの)の中点C2と発光部20との距離を示す。
【0041】
式(6)から分かるように、吸収係数の比Rμaは、受光部30、30bから得た8つのパラメータを用いて算出される。
式(5)は、式(1)に示す従来のSpO算出の理論式におけるR値(赤外光IRの吸光度AIRと赤色光Redの吸光度ARedとの比(ARed/AIR))を、吸光係数の比Rμaで置き換えた式となっている。
吸光度A(ARed,AIR)は、光の散乱の要素が含まれたパラメータである。光の散乱は、光の吸収と異なりヘモグロビンの増減の影響を大きく反映しない。このため、光の散乱の要素は、SpO算出の際には本来であれば除くべき要素である。これに対して、吸光係数の比Rμaは、光の散乱の要素が除かれたパラメータである。このため、本実施形態に係る生体情報測定器100で得られる吸光係数の比Rμaを用いて算出されたSpOは、動脈血以外の生体組織での光の散乱の影響が考慮された値となっている。
【0042】
[第一実施形態の効果]
第一実施形態に係る生体情報測定器100では、2つの測定点で検出した2波長の光(第1の波長の光及び第2の波長の光)の受光量に基づいて、2つの光の吸光係数の時間に対する変化をそれぞれ算出し、動脈血中酸素飽和度を算出する。このため、拍動成分(動脈血)以外の体組成への光の散乱が考慮されており、算出したSpOの実際のSpOの値からの乖離が小さくなる。
【0043】
[第一実施形態の変形例]
第一実施形態に係る生体情報測定器100では、2つの測定点(受光部)を用いて2波長の光を検出する場合について説明したが、これに限られない。すなわち、第一実施形態に係る生体情報測定器100では、3つ以上の発光部を用いて2波長の光を検出してもよい。
【0044】
3.第二実施形態
以下、図1及び図4を参照しつつ、図5を用いて、第二実施形態に係る生体情報測定器200について説明する。図5は、第二実施形態に係る生体情報測定器200の生体に対する接触面における発光部20(発光部20a,20b,20c,20d)及び受光部30の配置を示す平面図である。
なお、生体情報測定器200は、第一実施形態の生体情報測定器100に対して発光部20、受光部30の配置が変更され、これに伴い演算処理部40での処理が一部変更された以外は、生体情報測定器100と同様であるため、説明を省略する。
【0045】
(受光部)
図5に示すように、受光部30は、1つの受光部で構成されている。
受光部30は、生体組織を透過又は反射した第1の波長の光(例えば赤色光)、第2の波長の光(例えば赤外光)を受光する。詳しくは後述する。
受光部30は、発光部20a、20b、20c及び20dで順に発光した赤色光と赤外光を、受光時間を分割してそれぞれ受光する。
【0046】
(発光部)
図5に示すように、発光部20は、発光部20a、発光部20b、発光部20c及び発光部20dを備えている。発光部20a、発光部20bは、第一実施形態の発光部20a、発光部20bと同様であるため、説明を省略する。
発光部20cは、発光部20aから発光される第1の波長の光と同様に、第1の波長の光(例えば赤色光)を照射する第3発光部である。発光部20cは、血流のある生体に密着して配置され、生体に対して第1の波長の光を照射する。
発光部20dは、発光部20bから発光される第2の波長の光と同様に、第2の波長の光(例えば赤外光)を発光する第4発光部である。第2の波長は、第1の波長と異なる。すなわち、発光部20cと発光部20dとは、互いに異なる波長の光を発光する。発光部20dは、発光部20a~発光部20cと同様に、血流のある生体に密着して配置され、生体に対して第2の波長の光を照射する。発光部20dは、発光部20cと近接して配置される。
発光部20a~20dは、発光部20a,20bが互いに近接して位置P1に配置され、発光部20c,20dが互いに近接して位置P2に配置される。発光部20a,20bは受光部30との間の距離(ρ1)が、発光部20c、20dと受光部30との間の距離(ρ2)と異なるように配置される。
なお、発光部20は、5つ以上の発光部を備えていても良い。この場合、上述の発光部20a,20b及び発光部20c,20dのように、異なる波長の光を発光する発光部同士が近接して配置されるようにする。
【0047】
図5に示すように、発光部20cは、受光部30と発光部20a、20bの中点C1とを通る直線Lと平行かつ発光部20aを通る直線L2上に配置される。発光部20cは、受光部30に対して発光部20aと同じ方向に配置される。また、発光部20dは、直線Lと平行かつ発光部20bを通る直線L3上に配置される。発光部20dは、受光部30に対して発光部20bと同じ方向に配置される。
この場合、第一実施形態と同じように、発光部20a~20dから生体を介して受光部30に光が透過する光路が互いに近くなるため、光路上の生体組織の構成が近くなる。このため、光路差による受光量の誤差が小さくなり、より高精度に動脈血中酸素飽和度(SpO)を推定することができる。
【0048】
(演算処理部)
演算処理部40は、受光部30で受光した発光部20a,20cからの第1の波長の光(例えば赤色光)の受光量に基づいて、第1の波長の光の吸光係数の時間に対する変化を算出する。また、演算処理部40は、受光部30で受光した発光部20b,20dからの第2の波長の光(例えば赤外光)の受光量に基づいて、第2の波長の光の吸光係数の時間に対する変化を算出する。演算処理部40は、第1の波長の光の吸光係数の時間に対する変化及び第2の波長の光の吸光係数の時間に対する変化から動脈血中酸素飽和度を算出する。
演算処理部40は、第1の波長の光の吸光係数の時間に対する変化及び第2の波長の光の吸光係数の時間に対する変化から、赤色光Redの吸収係数μa,Red及び赤外光IRの吸収係数μa,IRの比Rμaを算出し、吸収係数の比Rμaに基づいて、動脈血中酸素飽和度(SpO)を算出する。演算処理部40は、吸収係数の比Rμaを決定するために、受光部30から以下の8つのパラメータ(透過光の強度)を取得する。
H,Red,P1、IL,Red,P1、IH,IR,P1、IL,IR,P1、IH,Red,P2、IL,Red,P2、IH,IR,P2、IL,IR,P2
【0049】
H,Red,P1、IL,Red,P1は、赤色光Redを発光する発光部20aと、発光部20aからの距離がρ1である位置P1に配置された受光部30との組み合わせにより測定される。
また、IH,IR,P1、IL,IR,P1は、赤外光IRを発光する発光部20bと、発光部20bからの距離がρ1である位置P1に配置された受光部30との組み合わせにより測定される。
また、IH,Red,P2、IL,Red,P2は、赤色光Redを発光する発光部20cと、発光部20cからの距離がρ2である位置P2に配置された受光部30との組み合わせにより測定される。
さらに、IH,IR,P2、IL,IR,P2は、赤外光IRを発光する発光部20dと、発光部20dからの距離がρ2である位置P2に配置された受光部30との組み合わせにより測定される。
【0050】
演算処理部40は、動脈血中酸素飽和度(SpO)を、第一実施形態と同様に以下の式(5)から算出する。
【数7】
【0051】
ここで、式(5)中に示すεHHb,Redは、還元ヘモグロビン(HHb)に対する赤色光Redのモル吸光係数、εHHb,IRは、還元ヘモグロビン(HHb)に対する赤外光IRのモル吸光係数、εO2Hb,Redは、酸化ヘモグロビン(OHb)に対する赤色光Redのモル吸光係数、εO2Hb,IRは、酸化ヘモグロビン(OHb)に対する赤外光IRのモル吸光係数を示す。また、Rμaは、赤色光Redと赤外光IRとのAC成分による吸光係数(μa,Red、μa,IR)の比である。
【0052】
本実施形態に係る生体情報測定器100では、赤色光と赤外光との吸収係数の比Rμa(μa,Red/μa,IR)を、受光部30で受光した第1の波長の光及び第2の波長の光(発光部20a~20dで発光された光)の受光量(強度)に基づいて算出する。第二実施形態では、第一実施形態と同様に、以下の式(6)に基づいて吸収係数の比Rμaを算出する。
【0053】
【数8】
【0054】
式(6)中、μa,Redは赤色光Redの吸収係数、μa,IRは赤外光IRの吸収係数を示す。また、hは正規化勾配(~6.3×10-4[mm-1/nm))、λIRは赤外光IRの波長、λRedは赤色光Redの波長、Δρは、第1受光部距離ρ1と第2受光部距離ρ2との差分、ρは第1受光部距離ρ1と第2受光部距離ρ2との間の距離の平均を示す。Δρは、発光部20(20a,20b)と受光部30との間の距離ρ1と、発光部20(20c,20d)と受光部30との間の距離ρ2との差分(ρ2-ρ1)であり、2つの発光点間の距離(発光部20a,20bと、発光部20c,20dとの間の距離)を示す。また、ρは、2つの発光点(発光部20a,20b、及び発光部20c,20d)の中点C3と、受光部30との距離を示す。
【0055】
[第二実施形態の効果]
第二実施形態に係る生体情報測定器200では、第一実施形態に係る生体情報測定器100と同様に、拍動成分(動脈血)以外の体組成への光の散乱が考慮されているため、実際のSpOの値との乖離が小さくなる。
【0056】
4.第三実施形態
第一実施形態では、受光部30bが、発光部20a及び発光部20bの中点C1と受光部30aとを通る直線L1上で、かつ中点C1に対して受光部30aと同じ方向に配置された生体情報測定器100の例について示したが、この構成に限られない。
例えば、第三実施形態に係る生体情報測定器100Bは、図6及び図7に示すように、受光部30bが、発光部20a及び発光部20bの中点C1と受光部30aとを通る直線L1上で、かつ中点C1に対して受光部30aと反対の方向に配置されていても良い。図7は、図6のVII-VII断面を示しており、生体に発光部20(20a,20b)及び受光部30(30a,30b)を配置した状態及び発光部20から発光された光の光路OP1,OP2を示す断面模式図である。発光部20a,20bから出射した光は、図7に示すように、生体内の皮下脂肪層SF、血管層BV、筋肉層M、骨B等の層を透過し得る。
【0057】
このような生体情報測定器100Bでは、生体を介して光が透過する光路(発光部20a、20bから受光部30a,30bまでの光路)上の生体組織の構成が互いに異なる可能性が高い。このため、第一実施形態の生体情報測定器100と比較して光路差による誤差が大きくなる可能性がある。しかしながら、生体情報測定器100Bに対しても第一実施形態で説明した生体中の光散乱の影響が考慮された測定原理を適用することができる。
【0058】
5.第四実施形態
第一実施形態及び第三実施形態では、受光部30bが、発光部20a及び発光部20bの中点C1と受光部30aとを通る直線L1上に配置された生体情報測定器100,100Bの例についてそれぞれ示したが、この構成に限られない。
第四実施形態に係る生体情報測定器100C,100Dは、図8(A)又は図8(B)に一構成例を示すように、受光部30bが、発光部20a及び発光部20bの中点C1と受光部30aとを通る直線L1上以外の位置に配置された構成となっている。
【0059】
図8(A)に示す生体情報測定器100Cは、平面視で、受光部30a及び受光部30bが中点C1に対して互いに反対側に配置(図8(A)中において、中点C1の右側領域と左側領域に分かれて配置)されている。
一方、図8(B)に示すように、生体情報測定器100Dは、平面視で、受光部30a及び受光部30bが中点C1に対して互いに同じ側(図8(B)中、中点C1の右側領域)に配置されている。なお、生体情報測定器100Dにおいて、受光部30a及び受光部30bは、図8(B)中、中点C1の左側領域に配置されていてもよい。
この場合も第三実施形態に係る生体情報測定器100Bと同様に、第一実施形態の生体情報測定器100と比較して光路差による誤差が大きくなる可能性がある。しかしながら、生体情報測定器100C,100Dに対しても第一実施形態で説明した生体中の光散乱の影響が考慮された測定原理を適用することができる。
【0060】
6.第五実施形態
第二実施形態では、発光部20cが、受光部30と発光部20a、20bの中点C1とを通る直線Lと平行かつ発光部20aを通る直線L2上に配置され、かつ受光部30に対して発光部20aと同じ方向に配置された生体情報測定器200について示したが、この構成に限られない。
例えば、第五実施形態に係る生体情報測定器200Bは、図9に示すように、発光部20cが、受光部30と発光部20a、20bの中点C1とを通る直線Lと平行かつ発光部20aを通る直線L2上に配置され、かつ受光部30に対して発光部20aと反対側に配置されている。また、生体情報測定器200Bは、図9に示すように、発光部20dが、直線Lと平行かつ発光部20bを通る直線L2上に配置され、かつ受光部30に対して発光部20bと反対側に配置されている。
【0061】
このような生体情報測定器200Bでは、第二実施形態の生体情報測定器200と比較して光路差による誤差が大きくなる可能性がある。しかしながら、生体情報測定器200Bに対しても第二実施形態で説明した生体中の光散乱の影響が考慮された測定原理を適用することができる。
【0062】
7.第六実施形態
第二実施形態及び第五実施形態では、発光部20cが、受光部30と中点C1とを通る直線Lと平行かつ発光部20aを通る直線L2上に配置され、発光部20dが、直線Lと平行かつ発光部20bを通る直線L3上に配置された生体情報測定器200,200Bの例についてそれぞれ示したが、この構成に限られない。
第六実施形態に係る生体情報測定器200C,200Dは、図10(A)又は図10(B)に一構成例を示すように、発光部20c,20dが、直線L2,L3上以外の位置にそれぞれ配置された構成となっている。
【0063】
図10(A)に示す生体情報測定器200Cは、平面視で、発光部20a,20bと発光部20c、20dとが受光部30に対して互いに反対側に配置(図10(A)中において、受光部30の右側領域と左側領域に分かれて配置)されている。
一方、図10(B)に示すように、生体情報測定器200Dは、発光部20a,20bと発光部20c、20dとが受光部30に対して互いに同じ側(図10(B)中、受光部30の右側領域)に配置されている。なお、生体情報測定器200Dにおいて、発光部20a,20bと発光部20c、20dとは、図10(B)中、受光部30の左側領域に配置されていてもよい。
この場合も第五実施形態に係る生体情報測定器200Bと同様に、第二実施形態の生体情報測定器200と比較して光路差による誤差が大きくなる可能性がある。しかしながら、生体情報測定器200C,200Dに対しても第二実施形態で説明した生体中の光散乱の影響が考慮された測定原理を適用することができる。
【0064】
8.第七実施形態
第七実施形態に係る生体情報測定器200Dは、図11に示すように、発光部20cが、受光部30と発光部20aとを通る直線L4上に配置され、受光部30に対して発光部20aと反対側に配置されていても良い。また、発光部20dが、受光部30と発光部20bとを通る直線L5上に配置され、受光部30に対して発光部20bと反対側に配置されていても良い。
【0065】
このような生体情報測定器200Dでは、第二実施形態の生体情報測定器200と比較して光路差による誤差が大きくなる可能性がある。しかしながら、生体情報測定器200Dに対しても第二実施形態で説明した生体中の光散乱の影響が考慮された測定原理を適用することができる。
【0066】
以上、各実施形態により本開示の具体的な構成を説明したが、本開示の範囲は、図示され記載された例示的な実施形態に限定されるものではなく、本開示が目的とするものと均等な効果をもたらす全ての実施形態をも含む。さらに、本開示の範囲は、請求項により画される発明の特徴の組み合わせに限定されるものではなく、全ての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる所望する組み合わせによって画されうる。
【符号の説明】
【0067】
C1,C2,C3 中点
L,L1,L2,L3,L4,L5 直線
10 センサ部
20,20a,20b,20c,20d 発光部
30,30a,30b 受光部
40 演算処理部
50 制御部
60 マイクロプロセッサ
72 表示部
74 操作部
100,100B,100C,200,200B~200D 生体情報測定器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11