(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】マルチキャリアオンオフキーイング信号の提供のための方法、送信機、構造、トランシーバおよびアクセスポイント
(51)【国際特許分類】
H04L 27/26 20060101AFI20221213BHJP
H04L 27/04 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
H04L27/26 100
H04L27/04 Z
(21)【出願番号】P 2021504327
(86)(22)【出願日】2019-07-05
(86)【国際出願番号】 EP2019068123
(87)【国際公開番号】W WO2020025252
(87)【国際公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-03-19
(32)【優先日】2018-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】598036300
【氏名又は名称】テレフオンアクチーボラゲット エルエム エリクソン(パブル)
(74)【代理人】
【識別番号】100109726
【氏名又は名称】園田 吉隆
(74)【代理人】
【識別番号】100161470
【氏名又は名称】冨樫 義孝
(74)【代理人】
【識別番号】100194294
【氏名又は名称】石岡 利康
(74)【代理人】
【識別番号】100194320
【氏名又は名称】藤井 亮
(72)【発明者】
【氏名】ロペス, ミゲル
【審査官】吉江 一明
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-228201(JP,A)
【文献】特開2008-283288(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0152333(US,A1)
【文献】特表2009-533006(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-0964777(KR,B1)
【文献】特表2009-523359(JP,A)
【文献】Steve Shellhammer,Spec Text on MC-OOK Symbol Randomization,IEEE 802.11-18/1302r0,IEEE, インターネット<URL:https://mentor.ieee.org/802.11/dcn/18/11-18-1302-00-00ba-spec-text-on-symbol-randomization.docx>,2018年07月11日
【文献】Miguel Lopez,Spectral line suppression for MC-OOK,IEEE 802.11-18/1179r0,IEEE, インターネット<URL:https://mentor.ieee.org/802.11/dcn/18/11-18-1179-00-00ba-spectral-line-suppression-for-mc-ook.pptx>,2018年07月09日
【文献】Steve Shellhammer,WUR Power Spectral Density,IEEE 802.11-18/0824r1,IEEE, インターネット<URL:https://mentor.ieee.org/802.11/dcn/18/11-18-0824-01-00ba-wur-power-spectral-density.pptx>,2018年05月09日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 27/26
H04L 27/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信される情報を表すパターンを形成するオン波形とオフ波形とを備えるオンオフキーイング(OOK)信号を送信する方法であって、前記方法は、
基本ベースバンド波形を取得すること(1900)と、
第1のバイナリランダム化シーケンスを適用することによって、前記基本ベースバンド波形をスクランブルすること(1902)であって、前記第1のバイナリランダム化シーケンスのバイナリ値のうちの少なくとも1つが、前記基本ベースバンド波形の複素共役への、前記基本ベースバンド波形の変換を引き起こす、前記基本ベースバンド波形をスクランブルすること(1902)と、
前記オン波形について前記スクランブルされた基本ベースバンド波形を適用し、前記オフ波形について波形を適用しないことによって、送信されるべき前記情報を変調すること(1904)と、
前記変調された情報を送信すること(1906)と
を含む、方法。
【請求項2】
前記基本ベースバンド波形を前記取得することが、所望のベースバンド波形を模倣する直交周波数分割多重(OFDM)信号を生成することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記所望のベースバンド波形が、マルチキャリアオンオフキーイング(MC-OOK)シンボルに対応する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記基本ベースバンド波形を前記スクランブルすることは、バイナリ値が相互にπだけ分離された位相回転を適用する第2のバイナリランダム化シーケンスを適用することをさらに含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の
バイナリランダム化シーケンスが、第1の多項式を表すシフトレジスタ機構において生成され、前記第2の
バイナリランダム化シーケンスが、前記第1の多項式とは異なる第2の多項式を表すシフトレジスタ機構において生成される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記シフトレジスタ機構が、前記第1のバイナリランダム化シーケンスと前記第2のバイナリランダム化シーケンスの両方の前記生成のために単一のシフトレジスタを使用し、前記第1のバイナリランダム化シーケンスが前記単一のシフトレジスタの第1の位置においてタップされ、前記第2のバイナリランダム化シーケンスが前記単一のシフトレジスタの第2の位置においてタップされ、前記単一のシフトレジスタの前記第1の位置と前記第2の位置とが異なる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
送信される情報を表すパターンを形成するオン波形とオフ波形とを備えるオンオフキーイング(OOK)信号を送信するための送信機(2006)であって、前記送信機は、
基本ベースバンド波形を取得する(1900)ように構成された基本波形入力と、
第1のバイナリランダム化シーケンスを適用することによって、前記基本ベースバンド波形をスクランブルすることであって、前記第1のバイナリランダム化シーケンスのバイナリ値のうちの少なくとも1つが、前記基本ベースバンド波形の複素共役への、前記基本ベースバンド波形の変換を引き起こす、前記基本ベースバンド波形をスクランブルすること(1902)を行うように構成されたスクランブラと、
前記オン波形について前記スクランブルされた基本ベースバンド波形を適用し、前記オフ波形について波形を適用しないことによって、送信されるべき前記情報を変調する(1904)ように構成された変調器と、
前記変調された情報を送信する(1906)ように構成された送信機回路と
を備える、送信機(2006)。
【請求項8】
基本ベースバンド波形生成器を備え、前記基本ベースバンド波形生成器が、所望のベースバンド波形を模倣する直交周波数分割多重信号として前記基本ベースバンド波形を生成するように構成され、前記基本ベースバンド波形を前記基本波形入力に提供するように構成された、請求項7に記載の送信機。
【請求項9】
前記所望のベースバンド波形が、マルチキャリアオンオフキーイング(MC-OOK)シンボルに対応する、請求項8に記載の送信機。
【請求項10】
前記スクランブラは、バイナリ値が相互にπだけ分離された位相回転を適用する第2のバイナリランダム化シーケンスを適用するように構成された、請求項7から9のいずれか一項に記載の送信機。
【請求項11】
前記第1の
バイナリランダム化シーケンスが、第1の多項式を表すシフトレジスタ機構において生成され、前記第2の
バイナリランダム化シーケンスが、前記第1の多項式とは異なる第2の多項式を表すシフトレジスタ機構において生成される、請求項10に記載の送信機。
【請求項12】
シフトレジスタを備え、前記シフトレジスタ機構が、前記第1のバイナリランダム化シーケンスと前記第2のバイナリランダム化シーケンスの両方の前記生成のために前記シフトレジスタを使用し、前記第1のバイナリランダム化シーケンスが前記シフトレジスタの第1の位置においてタップされ、前記第2のバイナリランダム化シーケンスが前記シフトレジスタの第2の位置においてタップされ、前記シフトレジスタの前記第1の位置と前記第2の位置とが異なる、請求項11に記載の送信機。
【請求項13】
通信装置のプロセッサ上で実行されたとき、前記通信装置に、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法を実施させる命令を備える、コンピュータプログラム。
【請求項14】
無線ネットワークのアクセスポイントであって、前記アクセスポイントが、マルチキャリアオンオフキーイングを使用して起動パケットを送信するように構成され、前記アクセスポイントが、請求項7から12のいずれか一項に記載の送信
機を備える、アクセスポイント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、オンオフキーイング(OOK)信号を送信するための手法に関する。特に、本開示は、そのような信号を提供および送信することの低複雑度実装に関する。
【背景技術】
【0002】
オンオフキーイング(OOK)はバイナリ変調であり、ここで、論理1が、信号を送ること(オン)に関して表され、論理0が、信号を送らないこと(オフ)によって表される。ここで、状態のうちの一方が一方のバイナリシンボル値を表し得、その場合、他方の状態が他方のバイナリシンボルを表す。状態のパターンは、たとえばマンチェスターコーディングを通して提供されるような、バイナリシンボルを表し得る。
【0003】
起動無線機と呼ばれることもある、起動受信機(WUR)は、無線通信において使用される受信機における電力消費を著しく低減するための手段を提供する。WURに関する概念は、WURが、起動信号の存在を検出することが可能である必要があるにすぎないが、データ受信のために使用されないので、WURが極めて緩和された(relaxed)アーキテクチャに基づき得ることである。
【0004】
起動パケット(WUP)、すなわち、WURに送られる信号のための実現可能な変調が、OOKである。IEEE802.11ドラフト仕様、「Proposed Draft WUR PHY Specification」というタイトルのIEEE802.11-18/0152r5参照、では、WUPは、WUR物理プロトコルデータユニット(PPDU)と呼ばれる。
【0005】
現在、IEEE802.11プライマリ通信無線機(PCR:primary communications radio)に対するコンパニオン無線機として使用されるべき起動無線機について、WURとPCRの両方を装備した局の電力消費を著しく低減するというだけの目的をもって、物理(PHY)レイヤおよび媒体アクセス(MAC)レイヤを規格化するための、IEEE802.11baと称するIEEE802.11タスクグループ(TG)において進行中のアクティビティがある。
【0006】
図1は、同じアンテナを共有する、たとえばIEEE802.11通信のための、WURおよびPCRを示す。WURがオンにされ、起動メッセージを待っているとき、IEEE802.11チップセットは、エネルギーを保存するためにオフに切り替えられ得る。起動メッセージがWURによって受信されると、WURは、PCRを起動し、たとえばアクセスポイント(AP)とのWi-Fi通信を開始する。
【0007】
上述の「Proposed Draft WUR PHY Specification」というタイトルのIEEE802.11-18/0152r5では、WUPの情報ビットにマンチェスターコーディングを適用することが提案される。すなわち、たとえば、論理「0」は「10」として符号化され、論理「1」は「01」として符号化される。したがって、あらゆるデータシンボルは、(エネルギーがある)「オン」部分と、エネルギーがない「オフ」部分とを備える。さらに、逆高速フーリエ変換(IFFT)によってWUPを生成することが提案され、なぜなら、このブロックが、たとえばIEEE802.11a/g/n/acをサポートするWi-Fi送信機においてすでに利用可能であるからである。詳細には、OOKを生成するための説明される手法は、中心において13個のサブキャリアを使用すること、次いで、オンを表すためにこれらを何らかの信号でポピュレートすること、およびオフを表すためにまったく何も送信しないことである。この手法は、オン部分を生成するために複数のキャリアが使用されるという点で、旧来のOOKとはわずかに異なる。したがって、IEEE802.11baにおいて規格化されているOOK方式は、マルチキャリアOOK(MC-OOK)と呼ばれる。IFFTは、64ポイントを有し、20MHzのサンプリングレートにおいて動作しており、ただ通常の直交周波数分割多重(OFDM)に関しては、IEEE802.11a/g/n/acにおいて使用されるもののようなOFDMシンボル持続時間を有するために、IFFT動作の後にサイクリックプレフィックス(CP)が追加される。MC-OOKの重要な特徴は、MC-OOKを生成するために同じOFDMシンボルが使用されることである。言い換えれば、すべてのデータシンボルのための非0サブキャリアをポピュレートするために、同じ周波数領域シンボルが使用される。あらゆるマンチェスターコーディングされたデータシンボルの「オン」部分を生成するために同じOFDMシンボルを使用することは、いくつかの利点を有する。たとえば、同じOFDMシンボルを使用することは、MC-OOKのコヒーレント受信を可能にする。その上、オン波形の生成は、低いピーク対平均電力比を有する傾向があり得、および/または、性能についての傾向があり得る。
【0008】
図2は、OOK生成のための旧来の構造を概略的に示す。送信されるべき信号、たとえばWUPのためのビットは、たとえば、マンチェスターベースエンコーダ200においてマンチェスターコーディングされる。符号化された信号は、たとえばスイッチ構成202によって、次のシンボル時間T
sym中にどの出力信号を提供すべきかを制御する。T
symは、たとえば高データレートについて2μsであり得るか、または、T
symは、低データレートについて4μsであり得る。切替えは、本手法では所望のオン信号を模倣するマルチキャリア信号を提供するオン信号波形生成器(WG)204によって提供される信号と、本手法ではゼロ信号を提供するオフ信号波形生成器(WG)206によって提供される信号との間で行われる。切替え構成202は、送信されるべき信号シーケンスを出力し、その信号シーケンスは、旧来は処理され、無線で送信される。
【0009】
上記で言及されたマルチキャリア信号は、通常、逆高速フーリエ変換(IFFT)によって生成され、なぜなら、このブロックが、たとえば、たとえばIEEE802.11a/g/n/acをサポートするWi-Fi送信機など、いくつかの送信機においてすでに利用可能であり得るからである。
図3は、IFFTを使用して基本ベースバンド波形(BW)を生成するための構造を概略的に示す。WUPを表すためにマルチキャリア信号を生成するための例示的な手法は、OFDMマルチキャリア信号の中心において13個のサブキャリアを使用すること、オンを表すためにこれらの13個のサブキャリアを信号でポピュレートすること、およびオフを表すためにまったく何も送信しないことである。これは、マルチキャリアOOK(MC-OOK)と呼ばれることがある。一例では、IFFTは、64ポイントを有し、20MHzのサンプリングレートにおいて動作しており、ただ通常の直交周波数分割多重(OFDM)に関しては、IEEE802.11a/g/n/acにおいて使用されるもののようなOFDMシンボル持続時間を有するために、IFFT動作の後にサイクリックプレフィックス(CP)が追加される。WUPのためのMC-OOKのいくつかの例では、同じOFDMシンボルが使用される。言い換えれば、すべてのデータシンボルのための非0サブキャリアをポピュレートするために、同じ周波数領域シンボルが使用される。あらゆるマンチェスターコーディングされたデータシンボルの「オン」部分を生成するために同じOFDMシンボルを使用することは、WUPのデータ部分における強い周期的時間相関を生じ得る。これらの相関は、
図4に示されているように、スペクトル線を生じ、スペクトル線は、WUPの電力スペクトル密度(PSD)におけるスパイクである。これらのスペクトル線は、いくつかの例では、スペクトルの狭い部分において送信され得る電力を制限するローカルな地理的規制があり得るので、望ましくないことがある。
【0010】
本開示は、オン部分の生成に対する改善を提供することを目的とする。
【0011】
MC-OOKは、WUPを生成するために使用される。その上、あらゆるマンチェスターコーディングされた情報シンボルの「オン」部分を生成するために、同じOFDMシンボルが使用される。OFDMシンボルはあらゆる情報シンボルにおいて繰り返されるので、WUPのペイロードにおける強い周期的時間相関がある。これらの相関は、スペクトル線を生じ、スペクトル線は、WUPの電力スペクトル密度(PSD)におけるスパイクである。生成されたマルチキャリア信号のPSDが
図4に示されている。
【0012】
たとえば、米国では、連邦通信委員会は、2.4MHz帯域におけるデジタル変調された信号が3kHz帯域において8dBmよりも小さい電力を送信することを要求する。したがって、スペクトル線の存在は、WUPのための最大送信電力を、スペクトル線が存在しなかった場合に可能にされるものよりも小さい値に制限し得る。
【0013】
図5は、
図4における信号の電力スペクトル密度スパイクを平滑化するための位相ランダム化技法のための構造を概略的に示す。手法は、各シンボルが0度または180度のいずれかでバイナリ回転(binary rotate)される(すなわち、πの相互位相差が達成されるように、+1または-1のいずれかを乗算される)ことである。回転は、擬似ランダムに選定される。このシンボルランダム化方法が
図5に示されている。値+1および-1をとる、バイナリ位相シフトキーイング(BPSK)されたシンボルを生成するために、擬似ランダムビットストリームが使用され、次いで、オン波形がこのバイナリシンボルを乗算される。
【0014】
図6は、上記で提案されたシンボルランダム化技法がスペクトル線をどのようになくすかの説明を与える。
図4および
図6の図は、波形生成器によって生成された同じ基本ベースバンド波形を使用して作り出された。その差は、
図4の図を作り出すために、基本ベースバンド波形が使用され、
図6の図を作り出すために、スクランブルされた波形が使用されたことである。
【0015】
スペクトル線は除去されるが、PSDは、上記で説明された位相ランダム化が周波数にわたるエネルギー分布を変更しないので、オン波形の周波数応答に依存する。
図6に示されているPSDは、対称性および平坦性の欠如を呈する。スペクトル平坦性の欠如は、いくつかの規制領域における欠点である。たとえば、欧州では、2.4GHz帯域において動作し、広帯域変調技法を使用する機器について、最大電力スペクトル密度は、1MHz当たり10mWに制限される。したがって、このPSD制約を条件として、出力電力は、PSDが平坦であるときに最大化される。たとえば、欧州におけるPSD制限により、
図6の場合のようなPSDを有するWUPは、28mWの総出力電力を有し、同じ帯域幅(4MHz)を有するが平坦なPSDをもつ信号は、40mW(10mW/MHz×4MHz)の総出力電力を有し得る。したがって、改善されたスペクトル平坦性をもたらす手法が求められる。
【0016】
この背景技術セクションにおいて開示された上記の情報は、本開示の背景の理解の向上のためのものにすぎず、したがって、その情報は、当業者にすでに知られている従来技術を形成しない情報を含んでいることがある。
【発明の概要】
【0017】
「以下の参考文献は、MC-OOKを対象とする。
STEVE SHELLHAMMER(QUALCOMM):「Spec Text on Symbol Randomization」、IEEE DRAFT;2018年7月12日、XP068128503、インターネットから検索:URL:https://mentor.ieee.org/802.11/dcn/18/11-18-1302-00-00ba-spec-text-on-symbol-randomization.docx[2018-07-12に検索]
米国特許出願公開第2018/152333(A1)号(SHELLHAMMER STEPHEN JAY[US]ら)2018年5月31日(2018-05-31)
PCT国際出願公開第WO91/10182(A1)号(BELL COMMUNICATIONS RES(US))1991年7月11日(1991-07-11)。
【0018】
第1の態様によれば、送信される情報を表すパターンを形成するオン波形とオフ波形とを備えるオンオフキーイング(OOK)信号を送信する方法が提供される。本方法は、基本ベースバンド波形を取得することと、バイナリ値のうちの1つが複素共役への変換を引き起こす第1のバイナリランダム化シーケンスを適用することによって、基本ベースバンド波形をスクランブルすることと、オン波形についてスクランブルされた基本ベースバンド波形を適用し、オフ波形について波形を適用しないことによって、送信されるべき情報を変調することと、変調された情報を送信することとを含む。
【0019】
基本ベースバンド波形を取得することは、所望のベースバンド波形を模倣する直交周波数分割多重(OFDM)信号を生成することを含み得る。所望のベースバンド波形は、マルチキャリアオンオフキーイング(MC-OOK)シンボルに対応し得る。
【0020】
基本ベースバンド波形をスクランブルすることは、バイナリ値が相互にπだけ分離された位相回転を適用する第2のバイナリランダム化シーケンスを適用することを含み得る。第1のランダム化シーケンスは、第1の多項式を表すシフトレジスタ機構において生成され得、第2のランダム化シーケンスは、第1の多項式とは異なる第2の多項式を表すシフトレジスタ機構において生成される。シフトレジスタ機構は、第1のバイナリランダム化シーケンスと第2のバイナリランダム化シーケンスの両方の生成のために単一のシフトレジスタを使用し得、第1のバイナリランダム化シーケンスは単一のシフトレジスタの第1の位置においてタップされ、第2のバイナリランダム化シーケンスは単一のシフトレジスタの第2の位置においてタップされ、単一のシフトレジスタの第1の位置と第2の位置とは異なる。
【0021】
第2の態様によれば、送信される情報を表すパターンを形成するオン波形とオフ波形とを備えるオンオフキーイング(OOK)信号を送信するための送信機が提供される。本送信機は、基本ベースバンド波形を取得するように構成された基本波形入力と、バイナリ値のうちの1つが複素共役への変換を引き起こす第1のバイナリランダム化シーケンスを適用することによって、基本ベースバンド波形をスクランブルするように構成されたスクランブラと、オン波形についてスクランブルされた基本ベースバンド波形を適用し、オフ波形について波形を適用しないことによって、送信されるべき情報を変調するように構成された変調器と、変調された情報を送信するように構成された送信機回路とを備える。
【0022】
本送信機は、基本ベースバンド波形生成器を備え得、基本ベースバンド波形生成器は、所望のベースバンド波形を模倣する直交周波数分割多重信号として基本ベースバンド波形を生成するように構成され、基本ベースバンド波形を基本波形入力に提供するように構成される。所望のベースバンド波形は、マルチキャリアオンオフキーイング(MC-OOK)シンボルに対応し得る。
【0023】
スクランブラは、バイナリ値が相互にπだけ分離された位相回転を適用する第2のバイナリランダム化シーケンスを適用するように構成され得る。第1のランダム化シーケンスは、第1の多項式を表すシフトレジスタ機構において生成され得、第2のランダム化シーケンスは、第1の多項式とは異なる第2の多項式を表すシフトレジスタ機構において生成される。本送信機は、シフトレジスタを備え得、シフトレジスタ機構は、第1のバイナリランダム化シーケンスと第2のバイナリランダム化シーケンスの両方の生成のためにシフトレジスタを使用し、第1のバイナリランダム化シーケンスはシフトレジスタの第1の位置においてタップされ、第2のバイナリランダム化シーケンスはシフトレジスタの第2の位置においてタップされ、シフトレジスタの第1の位置と第2の位置とは異なる。
【0024】
第3の態様によれば、通信装置のプロセッサ上で実行されたとき、通信装置に、第1の態様による方法を実施させる命令を備えるコンピュータプログラムが提供される。
【0025】
第4の態様によれば、シーケンスを生成するための構造が提供される。本構造は、バイナリシフトレジスタと、多項式に従って線形フィードバックシフトレジスタを規定するように構成されたシフトレジスタに接続されたフィードバック構造と、シフトレジスタのエレメントの第1のグループから1つまたは複数の状態値を収集するように構成された第1の出力であって、第1のグループからの前記1つまたは複数の状態値が第1のシーケンスの値を形成する、第1の出力と、シフトレジスタのエレメントの第2のグループから1つまたは複数の状態値を収集するように構成された第2の出力であって、第2のグループからの前記1つまたは複数の状態値が第2のシーケンスの値を形成し、第2のグループのどのエレメントも第1のグループに属さない、第2の出力とを備える。
【0026】
第2の出力は、エレメントの第2のグループから状態値を収集するように構成され得、第2のグループは、第2のシーケンスが3つ以上の可能な値を有するシンボルを備えるように、シフトレジスタの複数のエレメントを備える。代替的に、第2のシーケンスはバイナリシーケンスである。第2の出力は、次いで、エレメントの第2のグループから状態値を収集するように構成され得、第2のグループは、シフトレジスタの単一のエレメントを備える。
【0027】
第1の出力は、第1のシーケンスが3つ以上の可能な値を有するシンボルを備えるように、シフトレジスタの複数のエレメントを備える、第1のグループから状態値を収集するように構成され得る。代替的に、第1のシーケンスはバイナリシーケンスである。第1の出力は、次いで、エレメントの第1のグループから状態値を収集するように構成され得、第1のグループは、シフトレジスタの単一のエレメントを備える。
【0028】
第5の態様によれば、第2の態様による送信機と、第4の態様による構造とを備えるトランシーバが提供され、構造は、送信機のための第1のシーケンスおよび第2のシーケンスを提供するように構成される。
【0029】
第6の態様によれば、無線ネットワークのアクセスポイントであって、本アクセスポイントが、マルチキャリアオンオフキーイングを使用して起動パケットを送信するように構成された、アクセスポイントが提供される。本アクセスポイントは、第2の態様による送信機または第5の態様によるトランシーバを備える。
【0030】
いくつかの実施形態による手法は、WUPのために使用される信号のPSDを平坦化し、いくつかの実施形態では、スペクトル線をなくす。利点は、PSDに限度を課する規制領域における出力電力増加の可能性である。
【0031】
いくつかの実施形態の利点は、極めて低い実装複雑度の可能性である。
【0032】
いくつかの実施形態の利点は、手法がオン波形のプロパティを維持することである。たとえば、オン波形が低いピーク対平均電力比(PAPR)を有するように設計された場合、本開示の方法は、そのPAPRを維持する。同様に、オン波形が何らかの伝搬チャネルにおける性能について最適化された場合、開示される手法は、その性能を維持する。
【0033】
いくつかの実施形態の利点は、低い相互相関をもつ複数のシーケンスを提供する構造の実装の低複雑度である。
【0034】
本開示の上記の、ならびに追加の目的、特徴および利点は、添付の図面を参照しながら、本開示の好ましい実施形態の以下の例示的で非限定的な詳細な説明を通して、より良く理解される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】旧来のWURおよびPCR構造を有する受信機を概略的に示す図である。
【
図3】IFFTを使用して基本ベースバンド波形を生成するための構造を概略的に示す図である。
【
図4】
図3に記載の構造によって生成された基本ベースバンド波形の電力スペクトル密度を示す信号図である。
【
図5】
図4における信号の電力スペクトル密度スパイクを平滑化するための位相ランダム化技法のための構造を概略的に示す図である。
【
図6】
図5の構造によって平滑化された波形の電力スペクトル密度を示す信号図である。
【
図7】一実施形態による、波形の電力スペクトル密度を平坦化するための構造を概略的に示す図である。
【
図8】信号の電力スペクトル密度(
図6参照)および信号の複素共役の信号図である。
【
図9】一実施形態による、波形の電力スペクトル密度を平坦化するための代替構造を示す図である。
【
図10】一実施形態を使用する、平坦化された電力スペクトル密度を示す信号図である。
【
図11】一実施形態による、送信機を概略的に示す図である。
【
図12】一実施形態による、送信機を概略的に示す図である。
【
図13】一実施形態による、送信機を概略的に示す図である。
【
図14】一実施形態による、第1のシーケンスを生成するための線形フィードバックシフトレジスタと、第2のシーケンスを抽出するためのアドオンタップ(addon tap)とを概略的に示す図である。
【
図15】一例による、第1のシーケンスを生成するための線形フィードバックシフトレジスタと、第2のシーケンスを抽出するためのアドオンタップ機構とを概略的に示す図である。
【
図16】一実施形態による、第1のシーケンスを生成するための線形フィードバックシフトレジスタと、第2のシーケンスを抽出するためのアドオンタップ機構とを概略的に示す図である。
【
図17】一実施形態による、送信機を概略的に示す図である。
【
図18】
図15における構造を適用したときに生成された基本ベースバンド波形の電力スペクトル密度を示す信号図である。
【
図19】一実施形態による、方法を示すフローチャートである。
【
図20】一実施形態による、ネットワークノードを概略的に示すブロック図である。
【
図21】コンピュータ可読媒体および処理デバイスを概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図7は、一実施形態による、波形の電力スペクトル密度を平坦化するための構造を概略的に示す。適切なランダム化をもつバイナリビットシーケンスが提供され、各ビット値b1について、ベースバンド波形は、ビット値の状態のうちの一方についてその複素共役によって置換され、ビット値の他方の状態について不変に保たれる。ランダム化複素共役は、構造の出力のPSDを平坦化する。
【0037】
図8は、信号の電力スペクトル密度(
図6参照)および信号の複素共役の信号図を示す。基本ベースバンド波形の複素共役バージョンによるランダム化置換によって、
図8の右側に示されているようなスペクトル成分をもつ、代替OFDM信号がランダムに提供される。代替OFDM信号は、基本ベースバンド波形と同じエンベロープを提供するが、異なるスペクトル成分をもつ。これは、時間領域OFDM波形を複素共役することによって取得される波形が、元の信号の周波数領域シンボルの複素共役である周波数領域シンボルを備える周波数領域信号を時間領域に変換することと、サブキャリアの次数を反転させることとによっても生成され得ることによる。たとえば、OFDM信号が、IFFTによって、複素数値周波数領域シンボルX
k、k=-M、...、Mから生成される場合、前記OFDM信号の複素共役は、周波数領域シンボルX
*
-kに逆離散フーリエ変換を適用することによって生成され得、ここで、星印*は複素共役を表し、指数kにおけるマイナス符号はサブキャリアの次数の反転を示す。変形態のランダム化された提供(すなわち、
図8の左側に示されているようなスペクトル成分をもつことがあり、
図8の右側に示されているようなスペクトル成分をもつことがある)は、平均ではより平坦な波形を提供し、これは、手法の一実施形態のシミュレートされた結果を示す
図10を参照しながら以下で説明される。
【0038】
図9は、一実施形態による、波形の電力スペクトル密度を平坦化するための代替構造を示す。ここで、
図5に関して説明されたスペクトル線抑制特徴は、
図7を参照しながら説明されたものと同様の手法とともに適用される。したがって、この構造は、スペクトル線抑制とPSD平坦化とを行う。
【0039】
図10は、一実施形態を使用する、平坦化された電力スペクトル密度を示す信号図である。これは、たとえば、
図9を参照しながら説明された構造を、
図3を参照しながら説明された生成器構造によって生成される基本ベースバンド信号に対して適用するときに達成される結果である。PSDは、かなり平坦で、スペクトル線がなく、したがって、OOK提供構造において使用するための良好な性能を提供する。
【0040】
出力電力の制限に関する背景技術セクションにおける説明を再び参照すると、次に、
図10の図によって示されている平坦化されたPSDの利益に関する説明が与えられる。たとえば欧州におけるPSD制限を条件として、
図10の図の場合のようなPSDを有するWUPは、背景技術セクションにおける例と同じ他の特徴を仮定すれば、35mWの総出力電力を有する。
図6および
図10を生成するために同じ基本ベースバンドオン波形が使用されるが、PSD制限された規制領域における出力電力は、送信機が
図6におけるPSDを提供する旧来の技法に従うよりも
図10におけるPSDを提供する手法に従って実装される場合、1dB大きいことに留意されたい。
【0041】
図11は、一実施形態による、送信機を概略的に示す。手短に言えば、送信機は、
図2を参照しながら説明された構造と同様のOOKのために構成されるが、
図7を参照しながら説明された構造と同様のPSD平坦化構造をもつ。PSD平坦化構造に波形を提供するオン波形生成器(WG)は、
図3を参照しながら説明された生成器と同様であり得る。
【0042】
図12は、一実施形態による、送信機を概略的に示す。手短に言えば、送信機は、
図2を参照しながら説明された構造と同様のOOKのために構成されるが、
図7を参照しながら説明された構造と同様のPSD平坦化構造と、
図5を参照しながら説明されたものと同様のスペクトル線抑制構造とをもつ。PSD平坦化構造に波形を提供するオン波形生成器(WG)は、
図3を参照しながら説明された生成器と同様であり得る。
【0043】
図13は、一実施形態による、送信機を概略的に示す。手短に言えば、送信機は、
図12を参照しながら説明されたものと同様の構造を有するが、波形生成器に接続される、
図5を参照しながら説明されたものと同様のスペクトル線抑制構造と、次いで、スペクトル線抑制構造とOOK構造との間に提供される、
図7を参照しながら説明された構造と同様のPSD平坦化構造とをもつ。
【0044】
複素共役のランダム化適用例を提供するためにPSD平坦化構造に提供されるビットシーケンスは、様々なやり方で提供され得る。1つのやり方は、線形フィードバックシフトレジスタに基づく擬似ランダムシーケンス生成器を使用することである。別のやり方は、ルックアップテーブルからシーケンスを収集することである。以下で、
図14~
図16に関して、単一のシフトレジスタ構造から複数のシーケンスを達成するための説明された手法がある。複数のシーケンスは、たとえば
図12および
図13を参照しながら説明された構造のために望まれ得、ここで、PSD平坦化構造が1つのシーケンスを要求し、スペクトル線抑制構造が1つのシーケンスを要求する。OOK構造について信号において新たな種類のスパー(spur)を引き起こす危険を冒さないために、それらの場合において別個のシーケンスを有することが望まれ、それらのシーケンスは限られた相互相関を有する。
図14~
図16を参照しながら説明される手法は、実装複雑度を低く保つという利点を有する。
【0045】
上記で説明されたように信号を平坦化する代替のやり方は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、国際出願PCT/EP2018/066984において教示される。その手法は、データシンボルに対応する第1のオンオフキーイングされた信号を送信することを含み、第1の信号は複数のオン期間と複数のオフ期間とを備える。各オン期間は、それぞれのランダムまたは擬似ランダムファクタだけオン期間内に巡回シフトされる第1の信号部分を備える。第1の信号部分の巡回シフトは、オン期間内に実施され得る。たとえば、第1の信号部分は、遅延または割合などのファクタだけオン期間においてシフトされ得、オン期間外にシフトされる第1の信号のどの部分も、オン期間の反対端においてオン期間に再導入され得る。このようにして、たとえば、オン期間は、いくつかの例では、第1の信号部分から形成された信号で埋められたままであり得る。いくつかの例では、したがって、第1の信号は、他の信号よりも平坦な周波数応答を有し得る。一例では、マンチェスターコーディングが起動パケット(WUP)のデータ部分に適用され得る。たとえば、論理「0」は「10」として符号化され、論理「1」は「01」として符号化される。したがって、あらゆるデータシンボルは、(エネルギーがある)「オン」部分と、エネルギーがない「オフ」部分とを備え、これらの部分の次数はデータシンボルに依存する。さらに、WUPは、いくつかの例では逆高速フーリエ変換(IFFT)によって生成され得、なぜなら、このブロックが、たとえば、たとえばIEEE802.11a/g/n/acをサポートするWi-Fi送信機など、いくつかの送信機においてすでに利用可能であり得るからである。WUPを表すOOK信号を生成するための例示的な手法は、
図3を参照しながら説明されたものと同様に、OFDMマルチキャリア信号の中心において13個のサブキャリアを使用すること、オンを表すためにこれらの13個のサブキャリアを信号でポピュレートすること、およびオフを表すためにまったく何も送信しないことである。これは、マルチキャリアOOK(MC-OOK)と呼ばれることがある。一例では、IFFTは、64ポイントを有し、20MHzのサンプリングレートにおいて動作しており、ただ通常の直交周波数分割多重(OFDM)に関しては、802.11a/g/n/acにおいて使用されるもののようなOFDMシンボル持続時間を有するために、IFFT動作の後にサイクリックプレフィックス(CP)が追加される。WUPのためのMC-OOKのいくつかの例では、同じOFDMシンボルが使用される。言い換えれば、すべてのデータシンボルのための非0サブキャリアをポピュレートするために、同じ周波数領域シンボルが使用される。あらゆるマンチェスターコーディングされたデータシンボルの「オン」部分を生成するために同じOFDMシンボルを使用することは、WUPのデータ部分における強い周期的時間相関を生じ得る。これらの相関は、スペクトル線を生じ、スペクトル線は、WUPの電力スペクトル密度(PSD)におけるスパイクである。これらのスペクトル線は、いくつかの例では、スペクトルの狭い部分において送信され得る電力を制限するローカルな地理的規制があり得るので、望ましくないことがある。
【0046】
第1の例示的な実施形態では、信号が単一のアンテナから送信される。WUPのデータ部分はN個のOFDMシンボルからなると仮定する。この例示的な実施形態は、以下のステップからなる。
1. K個の遅延のセットを決定する、K≧2。これらは、
である。
2. 1からKの間の値をとるN個の整数からなるランダムまたは擬似ランダムシーケンスを生成する。これらは、{m
1、...、m
N}である。
3. ランダムまたは擬似ランダム巡回シフトをデータシンボルの「オン」部分に対応するOFDMシンボルの各々に適用し、巡回シフトはシーケンスにおけるN個の整数のうちの1つに対応する。たとえば、遅延
(負値)をn番目のデータシンボルの「オン」部分に対応するOFDMシンボルに適用する。すなわち、s(t)、0≦t<T
sが、持続時間T
sを有する、「オン」部分に対応する時間領域信号である場合、遅延
だけのs(t)の巡回シフト
が、
をセットすることによって生成される。
4. n番目のデータシンボルの「オン」部分において巡回シフトされたOFDMシンボル
を備える、MC-OOK信号を送信する。
【0047】
1つの特定の例では、T
s=4μsである。K=8個の巡回シフト
のセットが、以下の表に示されているように規定される。
【0048】
別の特定の例では、T
s=2μsである。K=8個の巡回シフト
のセットが、以下の表に示されているように規定される。
【0049】
1から8の間の値を有するランダムまたは擬似ランダム整数のシーケンスが、各データシンボルのために生成され、対応する遅延だけの巡回シフトが、各データシンボルについての信号の「オン」部分に適用される。たとえば、T
s=2μsであり、n番目のデータシンボルについて生成された整数mが6である場合、
の巡回シフトが、n番目の送信されたデータシンボルの「オン」部分に適用される。
【0050】
擬似ランダムシーケンス生成を生成するための好適な手法は、
図1~
図13を参照しながら説明された手法についてと同様に、このソリューションについて望まれる。一例として、Kが2のべき乗、すなわちK=2
pである場合を考慮する。802.11規格は、擬似ランダムビットシーケンスを生成するために、生成多項式z
-7+z
-4+1をもつ線形フィードバックシフトレジスタを利用する。これらのシーケンスのいずれも、p個のビットのグループにおいて出力をグループ化することによって、使用され得る。いかなるそのようなグループも、1からKの間の整数にマッピングされ得る。
【0051】
別の例示的な実施形態は、複数のアンテナからの送信を伴う(たとえば送信ダイバーシティまたは空間ダイバーシティ)。アンテナの各々について、MC-OOK信号が、所与のマルチアンテナ送信(TX)ダイバーシティ技法に従ってデータシンボルから生成される。その場合、単一の送信アンテナについて与えられる実施形態は、各アンテナから送信されるべき信号に適用され得る。アンテナからの信号に適用されるTXダイバーシティ技法は、(たとえばGSMセルラシステムにおいて使用される)遅延ダイバーシティまたは(たとえばLTEセルラシステムにおいて使用される)巡回遅延ダイバーシティを備え得る。
【0052】
一例では、L個の送信アンテナがあり、MC-OOKが使用され、CSDが、送信機によって採用されるTXダイバーシティ技法であると仮定する。この場合、巡回遅延Δ
l、l=1、...、Lが、OFDMシンボルs(t)に適用される。したがって、1番目のアンテナを通して送信される信号は、s
l(t)=s
CS(t;Δ
l)であり、ここで、s
CS(t;Δ
l)は、Δ
lだけのs(t)の巡回シフトを示し、単一アンテナ例について上記で与えられたように規定される。この例示的な実施形態は、以下のステップからなる。
1. K個の遅延のセットを決定する、K≧2。これらは、
である。
2. 1からKの間の値をとるN個の整数からなるランダムまたは擬似ランダムシーケンスを生成する。これらは、{m
1、...、m
N}である。
3. L個のアンテナの各々について、遅延
(負値)をn番目のデータシンボルの「オン」部分に対応するOFDMシンボルに適用する。すなわち、s
l(t)、0≦t<T
sが「オン」部分に対応する時間領域信号である場合、1番目のアンテナについて、s
l(t)の巡回シフト
が、
だけ巡回遅延を適用することによって生成される。遅延
が、データシンボルごとに変化し得ることに留意されたい。
4. 1番目のアンテナを通して送信された信号におけるn番目のデータシンボルの「オン」部分において巡回シフトされたOFDMシンボル
を備える、MC-OOK信号を送信する。
【0053】
【0054】
巡回シフトシンボルランダム化は、スペクトル線を抑制し、スペクトルを平坦化する。Tsym=4μsである例では、0ns、400ns、800ns、1200ns、1600ns、2000ns、2400nsおよび2800nsによる、8つの可能な巡回シフトがある。
【0055】
巡回シフトシンボルランダム化技法のわずかな欠点は、巡回シフトシンボルランダム化技法が、オン波形におけるDC成分に起因するスペクトル線をなくすことができないことである。OFDM信号に適用される巡回シフトは、周波数領域シンボルの回転によって実装され得る。したがって、OFDM波形に適用されたとき、巡回シフトランダム化は、サブキャリアの位相のランダム化と考えられ得る。しかしながら、巡回シフトによってDCサブキャリアに適用される回転は0であり、したがって、DCサブキャリアの位相は巡回シフトランダム化によってランダム化され得ない。この欠点の実際的なソリューションは、DC成分をもたない波形をオン波形として使用することであり得る。これは、OFDM波形のDCサブキャリアをヌリングまたはブランキングすることによって達成され得る。しかしながら、たとえば、性能についてまたは他のメトリックについてオン波形を最適化するためにさらなる自由度を有するために、非ヌルDCサブキャリアを有することが望ましい状況があり得る。
【0056】
上記で説明されたような巡回シフトランダム化と組み合わせられた、
図5を参照しながら説明されたようにスペクトル線を抑制するシンボルランダム化技法が、スペクトル線を抑制し、スペクトルを平坦化するための低複雑度技法を提供する。これを達成するための構造が
図17に示され、ここで、以下で説明される低複雑度シーケンス生成の一例が適用される。
【0057】
擬似ランダムシーケンスを生成するためのよく知られている手法は、適切な多項式を使用する上述の線形フィードバックシフトレジスタである。スペクトル線の除去および信号のスペクトルプロパティの平坦化のための本明細書で説明される手法を考慮すると、2つまたはそれ以上のシーケンスを作り出すための効率的な低リソース消費ソリューションに対する要望がある。ここで、2つまたはそれ以上のシーケンスは、好ましくは、信号において新たな望ましくないスパーを導入する危険を冒さないために、限られた相関を有している。簡単なソリューションは、生成すべき各シーケンスについて1つの生成機構を有することと、たとえばそれぞれの生成機構の構造および多項式を、限られた相関を提供するように慎重に選択することとである。しかしながら、本開示では、単一のシフトレジスタ構造から2つまたはそれ以上のシーケンスを生成するための手法が提示され、ここで、レジスタエレメントおよびそれらの状態が、異なるシーケンスについて再使用される。その構造によって生成される基本シーケンスは、線形フィードバックシフトレジスタと同じプロパティを有する。追加の生成されたシーケンスは、同じ特性を有しないが、本開示の信号整形手法の目的のために低い十分な相関を有し、低い相関をもつ複数のシーケンスが望まれる他の適用例のための十分な性能をも有する。
【0058】
本開示による手法は、アクセスポイント(AP)など、送信ネットワークノードにおいて実装される。一実施形態が
図17に示されている。LFSRは、T
symごとに更新される。
【0059】
図14は、一実施形態による、第1のシーケンスを生成するための線形フィードバックシフトレジスタと、第2のシーケンスを抽出するためのアドオンタップとを概略的に示す。この図中のLFSRは、生成多項式x
-7+x
-4+1を有するが、他の生成多項式が使用され得る。OOKを示す図を再び参照すると、LFSRは、シンボル時間T
symごとに更新され、ビットb0およびb1は、LFSRの異なる状態から読み取られる。たとえば、b0は、
図14中でX
1と標示された、レジスタ中の第1の位置から抽出され得、b1は、
図14中でX
7と標示された、レジスタ中の第7の位置から抽出され得る。
【0060】
図15は、擬似ランダムビットシーケンスを生成するために使用される、生成多項式x
-7+x
-4+1をもつ線形フィードバックシフトレジスタ(LFSR)を備える構造を概略的に示すが、他の多項式が使用され得る。レジスタは、X
1~X
7と標示された7つのエレメントを含んでいる。ビットb5~b7は、レジスタのエレメント5~7から抽出される。その上、LFSRは、T
symごとに更新される。位相ランダム化と巡回シフトランダム化の両方が、ランダム位相シフトおよびランダム巡回シフトを生成するために、ランダム性のソース(source of randomness)を必要とすることに留意されたい。理想的には、ランダム性の、独立したソースが使用されるべきである。しかしながら、実装の容易さのために、同じLFSRが、両方のシーケンスを生成するために使用される。
【0061】
組み合わせられたソリューションに関する問題は、位相ランダマイザのために使用されるランダム性のソース(すなわちb7)と、巡回シフトランダマイザのためのランダム性のソース(すなわちb5、b6、b7)との間の強い相関があることである。たとえば複素共役構造および位相シフタ、または巡回シフタおよび位相シフタを含む組み合わせられた平坦化およびスペクトル線抑制構造では、これは、
図18の図に示されているような残存スペクトル線を引き起こし得る。その理由は、この例では、巡回シフトランダム化が、サブキャリアのうちの2つに0度または180度だけランダム位相シフトを加えるが、完全相関により、位相ランダマイザが180度位相シフトを反転させ、したがって、その結果、これらの2つのサブキャリアはそれらの位相をランダム化されず、これが
図18に示されている2つのスペクトル線を生じるからである。スペクトル線をなくすために、オン波形において各サブキャリアに適用される位相は、好ましくは、ゼロ平均を有する。しかし、強い相関のために、それらの位相は、ゼロ平均を有することができないことがある。一例として、0ns、400ns、800ns、1200ns、1600ns、2000ns、2400nsおよび2800nsによる、8つの可能な巡回シフトがあると仮定する。
【0062】
したがって、位相ランダム化と巡回シフトランダム化との組合せに基づくシンボルランダム化技法が望ましいので、および、実装の容易さにより、両方のランダム化技法のためのランダム性のソースとして1つのLFSRのみを使用することも望ましいので、位相ランダム化と巡回シフトランダム化と1つのLFSRのみを使用することとの組合せによってシンボルランダム化を達成するための方法が求められる。本開示における基本概念は、2つのランダム化技法が十分に無相関化されるように、同じLFSRからエントロピーまたはランダム性の2つのソースを作成することである。
【0063】
図16は、擬似ランダムビットシーケンスを生成するために使用される、生成多項式x
-7+x
-4+1をもつ線形フィードバックシフトレジスタ(LFSR)を備える構造を概略的に示すが、他の多項式が使用され得る。レジスタは、X
1~X
7と標示された7つのエレメントを含んでいる。
図17では、点線によって囲まれた、位相ランダマイザのためのランダム性のソースは、b7と標示され、レジスタ中の第7のエレメントX
7から引き出されるビットストリームである。破線によって囲まれた、巡回シフトランダマイザのためのランダム性のソースは、b1、b2、b3と標示され、レジスタの第1、第2および第3のエレメントから引き出される3ビットストリームである。これは、位相ランダマイザのためのランダム性ソースと巡回シフトランダマイザのためのランダム性ソースとの間の強い相関を断つ。
【0064】
タップされたシーケンス間の相関の減少は、LFSRレジスタ中のエレメントの第1のセットに依存するように第1のシーケンスのためのランダム性のソースを選定し、レジスタのエレメントの第2のセットに依存するように第2のシーケンスのためのランダム性のソースを選定し、それにより第1のセットと第2のセットとが重複しないことによって、達成される。それぞれのセットは、任意の組合せで、バイナリシーケンスを作り出す1つのエレメント、またはより高次のシーケンスを作り出す複数のセットを備え得る。
【0065】
バイナリ位相ランダム化は最も単純な位相ランダム化技法であるが、4相(quaternary)またはより高次の位相ランダム化技法を使用することが可能である。一例として、4相位相ランダム化の場合、オン波形の各発生について、0度、90度、180度または270度のいずれかのランダムに選定された位相が、前記オン波形に適用される。したがって、4つの位相の間でランダムに選定する必要がある。これは、レジスタのエレメント1および2から引き出されるビットストリームb1およびb2を位相ランダマイザに供給し、レジスタのエレメント5、6および7から引き出されるビットストリームb5、b6、b7を巡回シフトランダマイザに供給することによって、達成され得る。またしても、鍵は、レジスタのエレメントの2つのセット、すなわち、(位相ランダム化のために使用される){1、2}と(巡回シフトランダム化のために使用される){5、6、7}とが重複しないことである。
【0066】
図19は、本開示の方法を概略的に示すフローチャートである。本方法は、送信される情報を表すパターンを形成するオン波形とオフ波形とを備えるオンオフキーイング(OOK)信号を送信するためのものである。基本ベースバンド波形が取得される1900。基本ベースバンド波形を取得すること1900は、所望のベースバンド波形を模倣する直交周波数分割多重信号を生成することを含み得る。基本ベースバンド波形は、バイナリ値のうちの1つが複素共役への変換を引き起こす第1のバイナリランダム化シーケンスを適用することによって、スクランブルされる1902。基本ベースバンド波形をスクランブルすること1902は、バイナリ値が相互にπだけ分離された位相回転を適用する第2のバイナリランダム化シーケンスを適用することをさらに含み得る。第1のランダム化シーケンスは、第1の多項式を表すシフトレジスタ機構において生成され得、第2のランダム化シーケンスは、第1の多項式とは異なる第2の多項式を表すシフト機構において生成され得る。シフトレジスタ機構は、第1のバイナリランダム化シーケンスと第2のバイナリランダム化シーケンスの両方の生成のために単一のシフトレジスタを使用し得、第1のバイナリランダム化シーケンスは単一のシフトレジスタの第1の位置においてタップされ、第2のバイナリランダム化シーケンスは単一のシフトレジスタの第2の位置においてタップされ、単一のシフトレジスタの第1の位置と第2の位置とは異なる。
【0067】
送信されるべき情報は、オン波形についてスクランブルされた基本ベースバンド波形を適用し、オフ波形について波形を適用しないことによって、変調される1904。次いで、変調された情報が送信される1906。
【0068】
図20は、一実施形態による、ネットワークノード2000、たとえばアクセスポイントを概略的に示すブロック図である。ネットワークノードは、アンテナ構成2002と、アンテナ構成2002に接続された受信機2004と、アンテナ構成2002に接続された送信機2006と、1つまたは複数の回路を備え得る処理エレメント2008と、1つまたは複数の入力インターフェース2010と、1つまたは複数の出力インターフェース2012とを備える。インターフェース2010、2012は、オペレータインターフェースおよび/または信号インターフェース、たとえば電気的または光学的であり得る。ネットワークノード2000は、セルラ通信ネットワークにおいて動作するように構成される。特に、処理エレメント2008が、
図19を参照しながら説明された特徴を実施するように構成されることによって、ネットワークノード2000は、WUPを効率的に提供することが可能であり、低複雑度で実装される。処理エレメント2008はまた、処理エレメント2008が受信機2004および送信機2006に接続されるので受信および送信を可能にするための信号処理から、アプリケーションを実行すること、インターフェース2010、2012を制御することなどに及ぶ、多数のタスクを遂行することができる。
【0069】
本開示による方法は、特に、上記で説明された処理エレメント2008が、WUP提供をハンドリングするプロセッサを備える場合、コンピュータおよび/またはプロセッサなど、処理手段の援助を伴う実装に好適である。したがって、処理手段、プロセッサ、またはコンピュータに、
図19を参照しながら説明された特徴のうちのいずれかによる方法のうちのいずれかのステップを実施させるように構成された命令を備える、コンピュータプログラムが提供される。コンピュータプログラムは、好ましくは、
図21に示されているように、コンピュータ可読媒体2100に記憶されたプログラムコードを備え、そのプログラムコードは、処理手段、プロセッサ、またはコンピュータ2102によってロードされ、実行され得、処理手段、プロセッサ、またはコンピュータ2102に、それぞれ、本開示の実施形態による方法を、好ましくは、
図19を参照しながら説明された特徴のうちのいずれかとして実施させる。コンピュータ2102およびコンピュータプログラム製品2100は、方法のうちのいずれかのアクションが段階的に実施されるか、またはリアルタイムで方法を実施する場合、プログラムコードを連続的に実行するように構成され得る。処理手段、プロセッサ、またはコンピュータ2102は、好ましくは、通常、組込みシステムと呼ばれるものである。したがって、
図21中の図示されたコンピュータ可読媒体2100およびコンピュータ2102は、原理の理解を提供するための説明の目的のためのものにすぎないと解釈されるべきであり、エレメントの直接的な説明として解釈されるべきではない。