(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】サービスラン・ガスタービン部品の修理のための事前準備
(51)【国際特許分類】
B23K 1/00 20060101AFI20221213BHJP
C23C 24/08 20060101ALI20221213BHJP
B22F 5/04 20060101ALI20221213BHJP
B22F 7/08 20060101ALI20221213BHJP
C22C 30/00 20060101ALI20221213BHJP
B23K 35/30 20060101ALI20221213BHJP
F01D 25/00 20060101ALI20221213BHJP
F02C 7/00 20060101ALN20221213BHJP
【FI】
B23K1/00 330P
C23C24/08 B
B22F5/04
B22F7/08 E
C22C30/00
B23K35/30 340M
F01D25/00 X
F01D25/00 L
F02C7/00 C
F02C7/00 D
(21)【出願番号】P 2021507024
(86)(22)【出願日】2019-08-06
(86)【国際出願番号】 US2019045262
(87)【国際公開番号】W WO2020101766
(87)【国際公開日】2020-05-22
【審査請求日】2021-09-02
(32)【優先日】2018-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】599078705
【氏名又は名称】シーメンス エナジー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110003317
【氏名又は名称】特許業務法人山口・竹本知的財産事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【氏名又は名称】山本 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100169627
【氏名又は名称】竹本 美奈
(72)【発明者】
【氏名】グーナキカー,ソメシュ ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ヤーブロー,ジェームズ エー.
(72)【発明者】
【氏名】ガルシア,マーク エー.
【審査官】山下 浩平
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-188760(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0154082(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0142112(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第1881154(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0199930(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 1/00
C23C 24/08
B22F 5/04
B22F 7/08
C22C 30/00
B23K 35/30
F01D 25/00
F02C 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
修理面(110)を暴露するために、サービスランのタービン部品(102)の損傷部分(108)を除去すること(106)と、
前記タービン部品(102)の前記修理面(1
10)に、予備焼結プリフォーム(114)を施用すること(112)と、
前記予備焼結プリフォーム(114)とタービン部品(102)とを一緒に加熱して、前記予備焼結プリフォーム(114)および前記タービン部品(102)の冷却時に、前記修理面(110)上に置換保護コーティング(118)を含むろう付け部(116)を形成すること(120)と、
を含む、修理する方法であって、
前記予備焼結プリフォーム(114)は、ボンドコート粉末とろう付け粉末との混合物から形成されており、
前記ボンドコート粉末は、重量%で、
Ni: 33.0~35.0、
Cr: 21.4~23.4、
Si: 8.6~9.2、
Al: 2.4~3.0、
W : 1.2~1.6、
Ta: 0.6~0.8、
B : 0.45~0.65、
C : 0.05~0.15、
Fe: 0.15~0.45、および
残余のCo、
を含み、前記ろう付け粉末は、重量%で、
N : 32、
C : 21、
Al: 8、
Y : 0.5、および
残余のCo、
を含む、方法(100)。
【請求項2】
前記ボンドコート粉末が、TiおよびZrからなる群から選択される要素を重量で0.01~0.3含む、請求項1に記載の方法(100)。
【請求項3】
前記ボンドコート粉末が、重量%で、
Ni: 34、
Cr: 22.4、
Si: 8.9、
Al: 2.7、
W : 1.4、
Ta: 0.7、
B : 0.55、
C : 0.12、
Fe: 0.3、および
残余のCo、
の組成を含む、請求項1
または2に記載の方法(100)。
【請求項4】
前記ボンドコート粉末および前記ろう付け粉末が、1:1の重量比で提供される、請求項1
から3のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項5】
前記加熱することが、少なくとも1100℃+/25℃の温度で行われる、請求項1
から4のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項6】
前記保護コーティング(118)上に遮熱コーティングを施用することをさらに含む、請求項1
から5のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項7】
ボンドコート粉末およびろう付け粉末の焼結混合物を含む予備焼結プリフォーム(114)であって、前記ボンドコート粉末は、
Ni: 33.0~35.0、
Cr: 21.4~23.4、
Si: 8.6~9.2、
Al: 2.4~3.0、
W : 1.2~1.6、
Ta: 0.6~0.8、
B : 0.45~0.65、
C : 0.05~0.15、
Fe: 0.15~0.45、および
残余のCo、
を含み、
前記ろう付け粉末は重量%で、
N : 32、
C : 21、
Al: 8、
Y : 0.5、および
残余のCo、
を含む、
予備焼結プリフォーム(114)。
【請求項8】
前記ボンドコート粉末が、重量%
で、
Ni: 34、
Cr: 22.4、
Si: 8.9、
Al: 2.7、
W : 1.4
Ta: 0.7
B : 0.55
C : 0.12
Fe: 0.3、および
残余のCo、
を含む、請求項7に記載の予備焼結プリフォーム(114)。
【請求項9】
前記ボンドコート粉末が、TiおよびZrからなる群から選択される要素を重量で0.01~0.3で含む、請求項7
または8に記載の予備焼結プリフォーム(114)。
【請求項10】
前記ボンドコート粉末および前記ろう付け粉末が、前記予備焼結プリフォーム中に、1:1重量比で含まれる、請求項7
から9のいずれか一項に記載の予備焼結プリフォーム(114)。
【請求項11】
ボンドコート組成物であって、
重量%で、
Ni: 33.0~35.0、
Cr: 21.4~23.4、
Si: 8.6~9.2、
Al: 2.4~3.0、
W : 1.2~1.6、
Ta: 0.6~0.8、
B : 0.45~0.65、
C : 0.05~0.15、
Fe: 0.15~0.45、および
残余のCo、
を含む、ボンドコート組成物。
【請求項12】
前記ボンドコート組成物が、重量%で、
Ni: 34、
Cr: 22.4、
Si: 8.9、
Al: 2.7、
W : 1.4
Ta: 0.7
B : 0.55
C : 0.12
Fe: 0.3、および
残余のCo、
を含む、請求項11に記載のボンドコート組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、超合金部品の修理に関し、特に、既知の構造および方法と比較して、耐酸化性が向上し、材料の消耗が少ないボンドコートを超合金部品に提供する予備焼結プリフォームおよびそれを使用するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンは、当技術分野でよく知られている。ガスタービンサイクルの熱効率を高めるために、ガスタービン分野で継続的な研究が行われている。これが達成された一つの方法は、ますます耐熱性の高い材料、または高温で経時的にその構造的完全性を維持することができる材料を開発することである。このため、ガスタービンエンジンの高温ガス経路部品は、しばしば超合金材料から形成される。「超合金」という語は、本明細書では、高温、例えば>1000℃で優れた機械的強度および耐クリープ性を示す高耐食性および耐酸化性合金を指すために、当該技術分野で一般的に使用されているように使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許第6,670,046号明細書
【文献】米国特許第6,235,370号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
材料の改善にもかかわらず、エンジン効率を高めるために、より高い動作温度でガスタービン駆動するという動きは、部品の表面に保護コーティングを施すことにつながっている。いくつかの例では、この保護コーティングは、耐酸化性金属ボンドコート(例えば、当該技術分野で公知のMCrAlY合金)および熱絶縁遮熱コーティング(TBC)の両方を含む。このような場合、ボンドコートは、TBCの部品の表面への付着性をさらに改善する。
【0005】
他の例では、保護コーティングは、ボンドコートだけを含み、これは、ある程度の熱保護を有する部品に耐酸化コーティングを提供するために適用されてもよい。いずれの場合も、現行のボンドコート適用技術は、部品の耐用年数にわたっておよび/または制限された厚さによって、ボンドコートが継続的に損失することを特徴とする。例えば、熱溶射ボンドコートは、限られた厚さのコーティングしか提供できないことが分かっている。ボンドコート材料の堆積時にコーティング厚さが増加すると、圧縮力が増加し、ボンドコート材料の破壊または消耗を招く。
【0006】
加えて、下層の基材に損傷を有するボンドコートを有するサービスラン部品の修理では、保護コーティングは、典型的に、コーティングから化学的に剥がされる。その後、当技術分野で公知のようなろう付けまたは溶接技術を利用して、下にある基板を修理する。次に、部品に保護コーティング(ボンドコートまたはボンドコートおよびTBC)を施用する。これらすべてのステップを合計すると、かなりのコストと時間が発生するため、修理の費用を負担するのではなく、部品の廃棄につながることがしばしばある。従って、コスト及び時間を低減し、耐酸化性の向上及び材料消耗の低減をもたらすサービスラン部品の修理のために、改良されたボンドコート適用技術が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の説明において、示す図面に鑑みて説明される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の態様によって調製された部品を採用するガスタービンエンジンの実施形態を示す図である。
【
図2】
図2は、本発明の一態様による修理プロセスの略図である。
【
図3】
図3は、本発明の一態様による既存の保護コーティングの除去を示す。
【
図4】
図4は、本発明の一態様による既存の保護コーティングの除去を示す。
【
図5】
図5は、本発明の一態様による、部品上に置換保護コーティングを形成するための部品へのPSP(本明細書に記載されるような組成を有する)の適用を図示する。
【
図6】
図6は、本発明の一態様による、部品上に置換保護コーティングを形成するための部品へのPSP(本明細書に記載されるような組成を有する)の適用を図示する。
【
図7】
図7は、本発明の一態様による、修理面への遮熱コーティングの適用を示す図である。
【
図8】
図8は、本明細書に記載されるPSPによって適用されるボンドコートと従来の熱溶射ボンドコートとの耐酸化性を示すグラフである。
【0009】
本発明者らは、タービン部品のベース基板の修理を提供すると同時に部品にボンドコートを追加する、予備焼結プリフォーム(PSP)およびそれを利用するための方法を開発することによって当技術分野の欠点に取り組んだ。さらに、得られたボンドコートは、試験されており、優れた耐熱性および耐酸化性、下層のタービン部品への付着性の改善、および類似のボンドコート材料の溶射を含む既知の適用技術と比較して、タービン部品の耐用年数にわたるボンドコートの消耗の低減を示す。さらに、本明細書に記載される予備焼結プリフォームおよび方法を介して、ボンドコートは、ボンドコートが剥離または消耗する危険性なしに、より厚い層として施用されてもよい。より厚い層は、有利には、下層の部品に対する追加の熱保護を提供する。予備焼結プリフォームは、リングセグメント、ブレード、ベーン等のサービスランのガスタービン部品の修理にさらに適していてもよい。
【0010】
本発明の一態様によれば、以下を含む修理する方法が提供される。
修理面を暴露するために、サービスランのタービン部品の損傷部分を除去することと、
タービン部品の修理面に、予備焼結プリフォームを施用することと、
予備焼結プリフォームとタービン部品とを一緒に加熱して、予備焼結プリフォームおよびタービン部品の冷却時に、修理面上に置換保護コーティングを備えるろう付け部を形成することと、
を含む、修理する方法であって、
予備焼結プリフォームは、第1の粉末と第2の粉末との混合物から形成されており、
第1の粉末は、重量%で、
Ni: 33.0~35.0、
Cr: 21.4~23.4、
Si: 8.6~9.2、
Al: 2.4~3.0、
W : 1.2~1.6、
Ta: 0.6~0.8、
B : 0.45~0.65、
C : 0.05~0.15、
Fe: 0.15~0.45、および
残余のCo、
を含み、第2の粉末は、重量%で、
N : 32、
C : 21、
Al: 8、
Y : 0.5、および
残余のCo、
を含む。
【0011】
別の態様によれば、第1の粉末と第2の粉末との焼結混合物を含む予備焼結プリフォームが提供され、ここで、第1の粉末は重量%で、
Ni: 33.0~35.0、
Cr: 21.4~23.4、
Si: 8.6~9.2、
Al: 2.4~3.0、
W : 1.2~1.6、
Ta: 0.6~0.8、
B : 0.45~0.65、
C : 0.05~0.15、
Fe: 0.15~0.45、および
残余のCo、
を含み、第2の粉末は、重量%で、
N : 32、
C : 21、
Al: 8、
Y : 0.5、および
残余のCo、
を含む。
【0012】
さらに別の態様によれば、重量%で、
Ni: 33.0~35.0、
Cr: 21.4~23.4、
Si: 8.6~9.2、
Al: 2.4~3.0、
W : 1.2~1.6、
Ta: 0.6~0.8、
B : 0.45~0.65、
C : 0.05~0.15、
Fe: 0.15~0.45、および
残余のCo、
を含む、ボンドコート組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、図面を参照すると、
図1は、圧縮機セクション4、燃焼器セクション6、およびタービンセクション8を有する公知のガスタービンエンジン2を示している。タービンセクション8には、静止翼形セクション18(一般に「ベーン」と呼ばれる)と回転翼形セクション16(一般に「ブレード」と呼ばれる)の交互列がある。ブレード16の各列は、ロータ軸12を有するロータ10上に配置された取り付けディスク14に接続された翼形の円形アレイによって形成される。ブレード16は、ロータ10から半径方向外側に延び、ブレード先端部で終端する。ベーン18は、エンジン2の外側ケーシング26に取り付けられているベーンキャリア22、24の内面から半径方向内側に延びている。ベーン18の列の間には、リングシール20がベーンキャリア22の内面に取り付けられている。リングシール20は、回転ブレード16の位置でベーン18の列の間の高温ガス経路ガイドとして作用する静止部品である。リングシール20は、ベーンキャリア22、24に直接、またはベーンキャリア22、24に取り付けられた金属隔離リング(図示せず)に取り付けるなどして間接的に取り付けられた複数のリングセグメント21によって一般的に形成される。エンジン運転中、高温/高速ガス28は、タービンセクション8内のベーン18およびブレード16の列を通って、主にロータ軸12に対して軸方向に流れる。
【0014】
図2は、その上に保護コーティング104を有するサービスランのタービン部品102を修理するための方法100における非限定的な工程を示している。第1の工程において、そして
図3~
図44に示すように、方法100は、修理面110(
図4)を暴露するために、サービスランタービン部品102(
図3)の損傷部分108を除去する工程106を含む。損傷部分108は、保護コーティング104の全てではない場合には、保護コーティングの少なくとも一部を含む。特定の実施形態では、部品102のベース基板103の一部(内部に欠陥(亀裂等)を含む)も除去することができる。他の実施形態において、ベース基板103は、除去されず、欠陥は、以下に説明するように、溶融されたPSP材料で充填される。保護コーティング104は、ボンドコートを単独で、またボンドコートを遮熱コーティング(TBC)と組み合わせて含むことができる。あるいは、保護コーティング104は、任意の他の適切な温度および耐酸化性コーティングを含んでもよい。サービスランタービン部品102は、ベーン18またはリングセグメント21のような、上述したガスタービンエンジン2の任意の部品とすることができる。損傷部分108の除去は、部品102の表面を機械加工することなどによって、任意の適切な方法によって行うことができる。
【0015】
機械加工が利用される場合、機械加工は、金属ベース基板から金属および/またはセラミック材料を除去するために、関連技術において公知の任意の機械的(非化学的)プロセスを含んでもよい。機械加工プロセスの非限定的な例は、CNC(コンピュータ数値制御)研削技術を含む研削プロセス、並びに隆起領域および/または遊離した材料を除去するために機械加工された表面を機械的にブレンドするための公知のプロセスを含む。ブレンドおよび洗浄技術は、得られた機械加工された表面が均一な形状(例えば、平坦、弓形、凸形、凹形等)であり、生産汚染がないことを保証するために使用されてもよい。機械加工された表面(例えば、背面側、円周方向端部、前面および後面)の非ガス通路側面は、ガス通路表面のグリットブラストを避けるように注意しながら、洗浄二次表面を提供するために、随意にグリットブラスト加工されてもよい。
【0016】
摩耗または損傷した保護コーティング104を除去するための化学技術の代わりに機械加工(研削)を使用することにより、関連技術において既に知られている化学除去プロセスにしばしば伴う不整合および欠陥が回避される。化学的技術とは異なり、機械加工は、摩耗または損傷した保護コーティング104を完全に除去する一方で、部品102から除去される基板材料の量を最小限に抑えることができる。機械加工ステップは、従来技術の化学的洗浄/溶接ビルドアップ技術を使用する場合、一般に避けられない表面の不整合や欠陥のない機械加工された表面を提供することができる。
【0017】
特定の実施形態では、方法100は、機械加工(修理)された表面110を洗浄する工程をさらに含んでもよい。例えば、これは、当技術分野で公知のフッ化物イオン洗浄(FIC)プロセスを介して、その後のろう付けに適した部品の表面から行うことができる。いくつかの実施形態では、FICプロセスは、フッ化水素ガスによる洗浄を含んでもよい。FIC洗浄の使用は、機械加工された表面から、および修復された表面110上に存在する微視的および巨視的亀裂内に、望ましくない酸化物および残留被覆残留物(例えば、拡散被覆残留物)を有利に除去する。他の実施形態では、修復表面1、10の洗浄は、金属ベースの材料特性に応じて、真空洗浄、水素洗浄、または真空洗浄、水素洗浄および/またはフッ化物イオン洗浄の組合せを用いて行うことができる。
【0018】
再び
図2を参照して、修理面110が調製された後、方法100は、タービン部品102の修理面110に予備焼結プリフォーム(PSP)114を適用する工程112(
図5)、およびPSP 114およびタービン部品102を一緒に加熱して、PSP 114およびタービン部品102の冷却時に修理面110上に置換保護コーティング118を含むろう付け部116を形成する工程120をさらに含む。反復するために、保護コーティング118は、少なくともボンドコートを含む。特定の実施形態において、PSP 114は、スポット溶接などの適切な方法または構造によって、部品102の表面に一時的に固定される。加熱120は、PSP 114および部品102を所定の温度、またはそれに近い温度にさらすことによって行うことができる。一実施形態によると、所定の温度は、PSP 114の材料の溶液温度を含む。特定の実施形態では、加熱は2125°F±25°F(1163℃±3℃)の温度で行われる。加熱120は、さらに、等張的(isocratically)に、または温度勾配を伴って行われ得る。一実施形態では、PSP 114を適切に溶融させ、部品102内への溶融材料の拡散がベース基板(存在する場合)内のあらゆる欠陥を充填することを可能にするために、所望の温度またはその付近の温度をある期間保持する。一実施形態では、加熱(ろう付け)は、アルゴンガス等の存在下などの不活性雰囲気中で行われる。
【0019】
以下に説明するように、PSP 114の組成は、PSP 114が、部品102を(欠陥を埋めるために下層の基板と適合する材料を供給することによって)修理すること、および部品102のための少なくともボンドコートを含む置換用保護コーティング118を提供することの両方ができるような組成である。PSP 114は、任意の適切なプロセスによって提供または形成されてもよい。一実施形態では、PSP 114は、第1の(ボンドコート)粉末と第2の(ろう付け)粉末とを所定の量および比率で第2の粉末に混合することによって調製される。得られた粉末混合物に加熱(焼結)処理を施し、粉末混合物を焼結し、PSP 114を形成する。PSP 114は、所定の厚さと、修理面110の形状に相補的な形状とを有し、一緒に配置されたときに表面と表面との接触を提供することができる。PSP 114の所定の厚さは、部品102の表面を適切に保護するために必要な厚さを有する保護コーティングを得るように制御されてもよい。上述のように、本明細書に記載されるPSP 114の使用は、さらに、従来のプロセス、例えば保護コーティングの熱溶射適用と比較して、より厚い保護コーティングを部品102に加えることを可能にする。典型的には、PSP 114の形状は、焼結が生じる鋳型の形状によって決定される。PSP 114の厚さは、部品102の表面を適切に保護するために必要な厚さを有する置換保護コーティング118を得るように制御される。特定の実施形態において、結果として生じるPSP 114は、例えば、加熱工程120の結果としての保護コーティング118の最終的な形状およびサイズを決定づけるために、切断によってさらに成形されてもよい。
【0020】
PSP 114を形成する際、第1の(ボンドコート)粉末は、熱条件に対して部品102の表面に接着し、かつ保護するように構成された熱保護金属合金を含む。本発明の態様では、ボンドコート粉末は、重量%で、
Ni: 33.0~35.0、
Cr: 21.4~23.4、
Si: 8.6~9.2、
Al: 2.4~3.0、
W : 1.2~1.6、
Ta: 0.6~0.8、
B : 0.45~0.65、
C : 0.05~0.15、
Fe: 0.15~0.45、および
残余のCo、
を含む。
【0021】
特定の実施では、ボンドコート粉末は、重量%で、
Ni: 34、
Cr: 22.4、
Si: 8.9、
Al: 2.7、
W : 1.4、
Ta: 0.7、
B : 0.55、
C : 0.12、
Fe: 0.3、および
残余のCo、
を含む。
【0022】
ある実施形態において、ボンドコート粉末は、TiおよびZrからなる群から選択される要素を0.01~0.3重量、さらに含む。一態様によれば、ボンドコート粉末は、付着性、熱抵抗、および耐酸化性の改善、ならびに既知の材料と比較しての材料消耗の低減を実験的に試験することによって示した。
【0023】
第2の(ろう付け)粉末は、部品の表面に結合することができるろう付け材料として働き、下層の部品102の材料と同様の強度のろう付け部116を生じる組成物を含む。このようにして、PSP 114は、下層の部品102を修理する材料を提供するとともに、優れたボンドコート(置換保護コーティング118)を提供する。特定の実施形態において、第2の(ろう付け)粉末は、質量%で以下の組成物を含むろう付け粉末を含む。
N :32、
C :21、
Al: 8、
Y : 0.5、および
残余のCo。
【0024】
現在、上記の組成の材料は、Praxair Surface Technologies社の商品名CO-210で市場から入手可能である。
【0025】
部品102のベース基板103は合金材料を含み、特定の実施形態では、当該技術分野で周知のような、ニッケル基またはコバルト基超合金材料のような超合金材料を含む。「超合金」という語は、高温においてさえ、優れた機械的強度および耐クリープ性を示す、耐腐食性および耐酸化性の高い合金を指すと理解され得る。例示的な超合金材料は市場から入手可能であり、商標名ならびにブランド名である、Hastelloy、Inconel Alloy(例えば、IN 738、IN 792、IN 939)、Rene Alloy(例えば、Rene N5、Rene 41、Rene 80、Rene 108、Rene 142、Rene 220)、Haynes Alloy、Mar M、CM 247、CM 247、LC、C263、718、X-750、ECY 768、262、X45、PWA 1483、およびCMSX(例えば、CMSX-4)単結晶合金、GTD 111、GTD 222、MGA 1400、MGA 2400、PSM 116、CMSX-8、CMSX-10、PWA 1484、IN 713C、Mar-M-200、PWA 1480、IN 100、IN 700、Udimet 600、Udimet 500、およびチタンアルミナイドなどで販売されている。本発明者らは、上記の第2の(ろう付け)粉末が、Hastelloy X、Inconel (IN) 738、およびInconel (IN) 939の商品名で現在市場から入手可能な超合金から形成される部品102の修理に特に適していることを見出した。従って、一実施形態では、ベース基板103は、Hastelloy X、IN 738材料のうちの一方を含む。
【0026】
存在する場合、Hastelloy Xは、典型的に、以下の公称組成を重%で含む。
残余のNi
Cr: 22
Fe: 18
Mo: 9
Co: 1.5
W : 0.6
C : 0.1
Mn: 最大1.0
Si: 最大1.0
B : 最大 .008
Nb: 最大0.5
Al: 最大0.5
Ti: 最大0.15
残余のNi。
【0027】
さらに、存在する場合、IN 738は、典型的に、以下の公称組成を重量%で含む。
C : 0.11~0.17
Co: 8.50
Cr: 16.0
Mo: 1.75
W : 2.60
Ta: 1.75
Nb: 0.90
Al: 3.40
Ti: 3.40
B : .010
Fe: 最大0.05
Mn: 最大 .02
Si: 最大 .30
S : 最大 .015
残余のNi
【0028】
さらに、存在する場合、IN 939は、典型的に、重量%で以下の公称組成を含む。
Cr: 22.4
Co: 19
Al: 1.9
Ti: 3.7
Ta: 2.5
W : 1.6
Zr: 0.1
C : .15
B : 1
【0029】
第1の(ボンドコート)粉末および第2の(ろう付け)粉末は、互いに対して任意の適切な比率で提供されてもよい。特定の実施形態では、第1の(ボンドコート)粉末は、全粉末組成物の25~75重量%の比で提供される。特定の実施形態において、第1の(ボンドコート)粉末および第2の(ろう付け)は、1:1比または50:50重量%で提供される。このようにして、粉末混合物と得られたPSPは容易に再現可能である。粉末粒子の粒径は、任意の適切なサイズおよび範囲であってもよい。一実施形態では、粉末粒子は、約10(2000マイクロメートル)~約1250(10マイクロメートル)の範囲のメッシュサイズを有する。本明細書で使用される「約」という語は、記載された値からプラスまたはマイナス2%である量を指す。いくつかの実施態様において、第1の粉末および第2の粉末の粉末サイズは、約-120~+325メッシュの範囲である。さらに、必要な場合、粉末混合物は、液体バインダーを使用してペーストに一緒に結合されてもよく、この場合、液体バインダーは、粉末混合物の約5体積%~約15体積%の範囲である。
【0030】
本発明の一態様によれば、PSP 114を修理面110に直接適用して、それにろう付け/ボンドコート混合物を施用することにより、PSP 114を修理面110に(例えば、抵抗タック溶接(resistance tack welding)を用いて)より正確に配置し、接合することができる。加えて、PSP 114の使用はまた、結果として生じる保護コーティング118の厚さに対する改善された制御を提供し、論議されるように、例えば、溶射に対してより厚いボンドコートを部品102表面に適用することを可能にする。
【0031】
特定の実施形態において、方法100は、部品102表面上に、部品102表面上に存在し得る亀裂および他の不均質性を充填するために、ろう付けペーストを施用することを含んでもよい。ろう付けペーストは、例えば、上述したように液体バインダーを用いて一緒に結合されるペースト形態の粉末混合物を含んでもよい。随意のろう付けペーストの使用は、部品の表面の事前処理は、PSP 114の部品102の表面への接触および結合に影響を及ぼし得る亀裂、溝、または他の不均質性をもたらす特定の実施形態において有益であり得る。
【0032】
PSP 114および加熱120ステップの適用において、少なくとも1つのPSP 114が、修理面110上の所望の修復領域を覆うように、1つまたは複数のPSP 114が、部品102の表面上に施用されてもよい。特定の実施形態では、複数のPSP114は、互いに積層されて、より厚い保護コーティング118またはグレーデッド保護コーティング118を生成し、ここで、保護コーティング118の組成は、その厚さに沿って変更される。別の実施形態では、部品112の表面を正確に覆う第1のPSP 114が部品112の表面に施用され、第2のPSP 114が第1のPSP 114の上部に施用され、第2のPSP 114は、第1のPSP 114よりも大きな表面積を有し、部品112の表面の各エッジを張り出すように配置される。さらに他の実施形態では、単一のPSP 114を部品112の表面上に配置することができ、ここで単一のPSP 114は、部品112の表面を部分的にまたは完全に覆うことができ、あるいは部品112の表面の少なくとも1つの境界(エッジ)を張り出すことができる。
【0033】
加熱工程120および置換保護コーティング118を有するろう付け部116の形成に続いて、特定の実施形態では、
図7に示すように、追加の耐熱性材料、例えば、遮熱コーティング122を、置換保護コーティング118に施用することができる。TBC 122は、当技術分野で公知のように、溶射法、スラリーベースコーティング堆積法、または蒸着法のような任意の適切な方法によって施用することができる。一実施形態によると、TBC 122は、プラズマ溶射法のような熱溶射法を介して適用される。
【0034】
TBC 122は、部品102に施用されたときに、当該部品102に温度抵抗を増加させる任意の適切な材料を含んでもよい。一実施形態では、TBC 122は、安定化ジルコニア材料を含む。例えば、TBC 122は、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)を含んでもよく、このジルコニウム酸化物(ZrO2)は、所定濃度の酸化イットリウム(Y2O3)、パイロクロア、または当技術分野で公知の他の耐熱性材料を含む。別の実施形態では、TBC 122は、米国特許第6,670,046号明細書、6,235,370号明細書のような当技術分野で公知の摩擦性傾斜絶縁体(FGI)を含んでもよく、これらの文献は参照により本明細書に組み込まれる。TBC 122は、その意図された用途に適した任意の所望の厚さを有してよいと考えられる。
【実施例】
【0035】
本明細書に記載されるシステムおよび方法は、本質的に例示的であり、開示の範囲を限定することを意図しない、以下の例を通して、さらに説明される。
【0036】
実施例1
本明細書に記載されるボンドコート粉末およびろう付け粉末を含むPSP 114を、MCrAlYコーティング粉末とともに調製した。PSPを第1の部品の表面にろう付けし、MCrAlY粉末を第2の部品の表面に熱溶射した。次いで、堆積された材料を、1000時間の間、次の950℃、1010℃、1079℃、および1,121℃の温度に曝した。これらの温度は、ガスタービンリングセグメント部品の一般的な動作条件の範囲をカバーする。結果は、
図8に図示されており、材料の損失または消耗は、本明細書に記載される組成を有するPSP対熱溶射MCrAlY粉末の方が低いことを示している。
【0037】
本発明の種々の実施形態が本明細書に示され、説明されているが、このような実施形態は、単に例として提供されるものであることは明らかである。本明細書の発明から逸脱することなく、多数の変形、変更及び置換を行うことができる。従って、発明は、特許請求範囲の趣旨および範囲によってのみ限定されることを意図している。