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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】二次電池及びその電極部材
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/13 20100101AFI20221213BHJP
   H01M 50/538 20210101ALI20221213BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M50/538
H01M4/66 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021520320
(86)(22)【出願日】2018-11-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-13
(86)【国際出願番号】 CN2018117479
(87)【国際公開番号】W WO2020077740
(87)【国際公開日】2020-04-23
【審査請求日】2021-04-13
(31)【優先権主張番号】201811206647.4
(32)【優先日】2018-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】513196256
【氏名又は名称】寧徳時代新能源科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Contemporary Amperex Technology Co., Limited
【住所又は居所原語表記】No.2,Xingang Road,Zhangwan Town,Jiaocheng District,Ningde City,Fujian Province,P.R.China 352100
(74)【代理人】
【識別番号】100167689
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 征二
(74)【代理人】
【識別番号】100222106
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 秀紀
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼子格
(72)【発明者】
【氏名】李▲偉▼
(72)【発明者】
【氏名】薛▲慶▼瑞
(72)【発明者】
【氏名】李静
(72)【発明者】
【氏名】王鵬翔
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼▲揚▼
【審査官】渡部 朋也
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-100170(JP,A)
【文献】特開平11-102711(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108598491(CN,A)
【文献】国際公開第2018/021214(WO,A1)
【文献】特開2013-026057(JP,A)
【文献】特開2015-181112(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M4/13、4/66
H01M50/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基体(11)と、導電層(12)と、活物質層(13)とを備えた二次電池の電極部材であって、
導電層(12)は、絶縁基体(11)の表面に設けられており、活物質層(13)が塗布された本体部121と、本体部(121)から延びる突部(122)とを含み、突部(122)には、活物質層(13)が塗布されておらず、
活物質層(13)は、第1の部分(131)と第2の部分(132)とを含み、第1の部分(131)は、活物質層(13)の突部(122)から遠い端部に位置しており、第2の部分(132)は、第1の部分(131)の突部(122)に近い側に位置しており、且つ、第1の部分(131)の厚みは、第2の部分(132)の厚みよりも薄く、
高さ方向(Z)において、第1の部分(131)の寸法と活物質層(13)の全体寸法との比は、3%~20%であり、
第2の部分(132)の密度は、第1の部分(131)の密度よりも大きい、
電極部材。
【請求項2】
第1の部分(131)の厚さは、突部(122)から離れる方向に向かって徐々に減少している、
ことを特徴とする請求項1に記載の電極部材。
【請求項3】
第1の部分(131)の厚さと第2の部分(132)の厚さとの差は、0.5μm~20μmである、
ことを特徴とする請求項1に記載の電極部材。
【請求項4】
絶縁基体(11)と、導電層(12)と、活物質層(13)とを備えた二次電池の電極部材であって、
導電層(12)は、絶縁基体(11)の表面に設けられており、活物質層(13)が塗布された本体部121と、本体部(121)から延びる突部(122)とを含み、突部(122)には、活物質層(13)が塗布されておらず、
活物質層(13)は、第1の部分(131)と第2の部分(132)とを含み、第1の部分(131)は、活物質層(13)の突部(122)から遠い端部に位置しており、第2の部分(132)は、第1の部分(131)の突部(122)に近い側に位置しており、且つ、第1の部分(131)の厚みは、第2の部分(132)の厚みよりも薄く、
高さ方向(Z)において、第1の部分(131)の寸法と活物質層(13)の全体寸法との比は、3%~20%であり、
活物質層(13)は、第3の部分(133)をさらに含み、第3の部分(133)は、第2の部分(132)の突部(122)に近い側に位置しており、且つ、第3の部分(133)の厚さは第2の部分(132)の厚さよりも薄く、
第3の部分(133)の厚さは、突部(122)に近い方向に向かって徐々に減少している、
ことを特徴とする電極部材。
【請求項5】
第1の部分(131)の厚さは、突部(122)から離れる方向に向かって徐々に減少している、
ことを特徴とする請求項4に記載の電極部材。
【請求項6】
第1の部分(131)の厚さと第2の部分(132)の厚さとの差は、0.5μm~20μmである、
ことを特徴とする請求項4に記載の電極部材。
【請求項7】
前記電極部材は、突部(122)の絶縁基体(11)から遠い側に設けられており、第3の部分(133)に接続された保護層(14)をさらに備える、
ことを特徴とする請求項に記載の電極部材。
【請求項8】
絶縁基体(11)の延性と導電層(12)の延性との差は、同じ作用力で4%以下である、
ことを特徴とする請求項1に記載の電極部材。
【請求項9】
絶縁基体(11)の延性は、10%未満である、
ことを特徴とする請求項に記載の電極部材。
【請求項10】
請求項1~のいずれか1項に記載の電極部材を含む電極組立体を備える、
ことを特徴とする二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池分野に関し、特に、二次電池及びその電極部材に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池の電極部材は、一般的に、集電体と、集電体の表面に塗布された活物質層とを含む。二次電池の安全性能を向上させるために、一部の電極部材は、多層構造の集電体を選択し、図1及び図2を参照して、前記集電体は、絶縁基体11と、絶縁基体11の表面に設けられた導電層12とを含み、活物質層13は、導電層12の表面に塗布されている。導電層12は、活物質層13が塗布された本体部121と、活物質層13が塗布されていない突部122とを備える。活物質層13と、本体部121と、絶縁基体11の本体部121に対応する部分とは電気発生領域P1を形成しており、突部122と、絶縁基体11の突部122に対応する部分とは導電領域P2を形成しており、導電領域P2は、二次電池の電極端子に電気的に接続されており、電極端子を介して充放電を行うために用いられている。
【0003】
電極部材の製造過程において、活物質層13を薄くプレスしてエネルギー密度を高めるために、活物質層13をロールプレスする必要がある。絶縁基材11は、柔軟な材質(例えばPETプラスチック)であり、大きい延性を有する。図2を参照すると、電気発生領域P1の厚さは導電領域P2の厚さよりもはるかに大きいため、ローラ9は活物質層13のみに対し圧力を加え、電気発生領域P1の絶縁基体11は大きい延性を有し、展延する過程で電気発生領域P1の絶縁基体11は導電領域P2の絶縁基体11に対し張力を付与するので、導電領域P2の絶縁基体11を展延させる。これに対応して、導電領域P2の絶縁基体11は、電気発生領域P1の絶縁基体11に対し反力を与えて、電気発生領域P1の絶縁基体11の展延が制限される。電気発生領域P1の厚さが均一である場合には、前記反力は、導電領域P2から離れる方向に沿って徐々に減少する(即ち、電気発生領域P1の絶縁基体11の延性が徐々に増加する)。このため、図3を参照して、電極部材がロールプレスされると、電気発生領域P1の導電領域P2から離れた一端の長さは導電領域P2の長さよりも大きくなり、電極部材の全体が撓んでしまう。
【0004】
二次電池では、正負極性の電極部材が一体に巻かれており、電気発生領域P1が撓むと、巻いた後の電気発生領域P1の端部を整列させることができず、負極電極部材の活物質層13が正極電極部材の活物質層13を完全に覆うことができず、充電中に、正極電極部材の活物質層13から放出したリチウムは、負極電極部材の活物質層13に全て吸蔵することができず、リチウムが析出し、二次電池の性能に影響を及ぼす。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、かかる背景技術の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、電気発生領域の撓みを低減させ、二次電池のリチウムの析出を避けることができる二次電池及びその電極部材を提供することにある。
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、二次電池及びその電極部材を提供する。
【0007】
電極部材は、絶縁基体と、導電層と、活物質層とを備える。導電層は、絶縁基体の表面に設けられており、活物質層が塗布された本体部と、本体部から延びる突部とを含み、突部には、活物質層が塗布されていない。活物質層は、第1の部分と第2の部分とを含み、第1の部分は、活物質層の突部から遠い端部に位置しており、第2の部分は、第1の部分の突部に近い側に位置しており、且つ、第1の部分の厚みは、第2の部分の厚みよりも薄い。
【0008】
第1の部分の厚さは、突部から離れる方向に向かって徐々に減少している。
【0009】
高さ方向において、第1の部分の寸法と活物質層の全体寸法との比は、3%~20%である。
【0010】
第2の部分の密度は、第1の部分の密度よりも大きい。
【0011】
第1の部分の厚さと第2の部分の厚さとの差は、0.5μm~20μmである。
【0012】
活物質層は、第3の部分をさらに含み、第3の部分は、第2の部分の突部に近い側に位置しており、且つ、第3の部分の厚さは第2の部分の厚さよりも薄く、第3の部分の厚さは、突部に近づく方向に向かって徐々に減少している。
【0013】
前記電極部材は、突部の絶縁基体から遠い側に設けられており、第3の部分に接続された保護層をさらに備える。
【0014】
絶縁基体の延性と導電層の延性との差は、同じ作用力で4%以下である。
【0015】
絶縁基体の延性は、10%未満である。
【0016】
二次電池は、前記電極部材を含む電極組立体を備える。
【0017】
本発明の有利な効果は、以下の通りである。第2の部分の厚みが第1の部分の厚みよりも厚いため、ロールプレス加工時に第2の部分が受けるロールプレスの圧力が大きく、第1の部分が受けるロールプレスの圧力は小さく、即ち、電気発生領域の第2の部分に対応する部分の延性は大きく、電気発生領域の第1の部分に対応する部分の延性は小さい。一方、ロールプレス加工時に、導電領域に力がかからず、展延がほとんどないため、ロールプレス後の電極部材の高さ方向に沿った両端の延性は小さく、電極部材の中央部の延性は大きい。本願は、第1の部分の厚みを小さくすることにより、電極部材の高さ方向に沿った両端の長さの差を低減させ、電極部材の全体の撓み変形を小さくし、二次電池のリチウムの析出を避ける。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、従来の電極部材の模式図である。
図2図2は、図1の電極部材のロールプレス過程における模式図である。
図3図3は、図1の電極部材のロールプレスした後の模式図である。
図4図4は、本発明による二次電池の模式図である。
図5図5は、本発明による電極組立体の断面図である。
図6図6は、本発明による電極部材の巻回後の模式図である。
図7図7は、図6の電極部材の展開後の模式図である。
図8図8は、図7のA-A線に沿った断面図である。
図9図9は、図7の電極部材の成形中の模式図である。
図10図10は、図9のB-B線に沿った断面図である。
図11図11は、図9の電極部材のロールプレスした後の模式図である。
図12図12は、本発明による電極部材の別の実施例の模式図である。
図13図13は、図12のC-C線に沿った断面図である。
図14図14は、本発明による電極部材のさらに別の実施例の模式図である。
図15図15は、図14のD-D線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本願の実施例における技術案については、本願の実施例における図面を参照して明確に且つ完全に説明する。ここで、記載されている実施例は、すべての実施例ではなく、本願の実施例の一部にすぎない。以下の少なくとも1つの例示的な実施例の説明は、実際には単に例示的なものであり、本願及びその用途又は使用を限定するものではない。当業者が本願の実施例に基づいて創造的に働かなく得られる他の全ての実施例は、本願の範囲内に含まれる。
【0020】
本願の記載において、「第1」、「第2」等の用語を用いて部品を限定するのは、該当部品の区別を容易にするためのものであり、特別の意味がないので、本発明の範囲を限定するものとして理解されるべきではない。
【0021】
本発明の二次電池は、図5を参照して、正極部材2と、負極部材3と、正極部材2と負極部材3との間に設けられたダイアフラム4とを含む電極組立体を備えている。正極部材2、ダイアフラム4及び負極部材3は積層されて扁平状に巻かれている。電極組立体は、二次電池の充放電機能を実現するためのコア部品である。
【0022】
本発明の二次電池は、正極部材2、ダイアフラム4及び負極部材3が巻き付けてなる電極組立体が包装袋内に直接封入されたパウチセルであってもよい。前記包装袋は、アルミプラスチックフィルムであってもよい。
【0023】
もちろん、本願の二次電池は、ハードシェル電池であってもよい。具体的には、図4を参照すると、二次電池は、電極組立体と、ケース5と、上蓋板6と、電極端子7と、コネクタ片8とを主に備えている。
【0024】
ケース5は、六面体形状又は他の形状を有してもよい。ケース5の内部には、電極組立体及び電解液を収容するための中空室が形成されている。ケース5は、一端に開口部を形成しており、電極組立体は、前記開口部を介してケース5の収容室に設けられてもよい。ケース5は、アルミニウムやアルミニウム合金等の導電金属の材料で形成されていてもよいし、プラスチック等の絶縁材料で形成されていてもよい。
【0025】
上蓋板6は、ケース5に設けられており、且つケース5の開口部を覆って、電極組立体をケース5内に閉じ込める。電極端子7は上蓋板6に設けられており、電極端子7の上端は上蓋板6の上側に突出し、下端は上蓋板6を貫通してケース5内に延びている。コネクタ片8は、ケース5内に設けられて電極端子7に固定されている。電極端子7とコネクタ片8はいずれも2つであり、正極部材2は一方のコネクタ片8を介して一方の電極端子7に電気的に接続されており、負極部材3は他方のコネクタ片8を介して他方の電極端子7に電気的に接続されている。
【0026】
二次電池では、正極部材2及び負極部材3の少なくとも一方に、後述する電極部材1が用いられている。
【0027】
図6図11は、本発明の電極部材1の第1の実施例を示す模式図である。図6図11を参照して、電極部材1は、絶縁基体11と、導電層12と、活物質層13とを含む。
【0028】
絶縁基体11の材質は、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムやPP(ポリプロピレン)フィルムであってもよい。絶縁基体11の厚さは、1μm~20μmとすることができる。
【0029】
導電層12は2層であり、それぞれ絶縁性基体11の両面に設けられている。具体的には、導電層12の材料は、金属導電材料、炭素系導電材料のうちの少なくとも1種であり、金属導電材料は、アルミニウム、銅、ニッケル、チタン、銀、ニッケル銅合金、アルミニウム-ジルコニウム合金のうちの少なくとも1種であることが好ましく、前記炭素系導電材料は、黒鉛、アセチレンブラック、グラフェン、カーボンナノチューブの少なくとも1種であることが好ましい。導電層12は、気相成長法(vapor deposition)、無電解めっき法(electroless plating)の少なくとも1つにより絶縁基体11の表面に形成することができる。その中で、気相成長法は、物理気相成長法(Physical Vapor Deposition、PVD)、例えば、熱蒸着法(Thermal Evaporation Deposition)が好ましい。
【0030】
活物質層13は、電極部材1の極性に応じた活物質を含んでおり、前記活物質は、例えば、電極部材1が正極性である場合に、マンガン酸リチウム又はリン酸鉄リチウムであってもよく、電極部材1が負極性である場合に、黒鉛又はケイ素であってもよい。活物質と、接着剤と、導電剤と、溶媒とをスラリーとした後、スラリーを導電層12の絶縁基体11から離れた外表面に塗布し、スラリーを硬化させて活物質層13を形成することができる。活物質層13は2つであり、且つ2つの導電層12にそれぞれ塗布されている。
【0031】
活物質層13は、導電層12の一部の領域のみを覆っている。具体的には、図7及び図8を参照して、導電層12は、活物質層13が塗布された本体部121と、本体部121から延びる突部122とを含み、突部122に活物質層13が塗布されていない。
【0032】
説明の便宜のため、活物質層13と、本体部121と、絶縁基体11の本体部121に対応する部分とを電気発生領域P1と言い、突部122と、絶縁基体11の突部122に対応する部分とを導電領域P2と言う。二次電池の使用において、電気発生領域P1の活物質層13と電解液等とは電気化学反応を発生して充放電過程を形成する。導電領域P2はコネクタ片8に接続されて、二次電池の外部に電流を取り出すことができる。
【0033】
図7を参照して、複数の導電領域P2は、幅方向Xにおいて間隔を開けて配置されておる。二次電池では、正負極性の電極部材1は巻かれて電極組立体が形成されており、図6を参照して、電極部材1が巻かれて成形された後、前記複数の導電領域P2は、厚さ方向Yにおいて積層されて配置され、コネクタ片8に溶接により固定されている。
【0034】
導電層12が薄いため、切断の過程で導電層12に発生するバリが小さく、十数μmのダイアフラム4を突き破ることが困難であるので、短絡を避けて安全性能を向上させることができる。また、異物が二次電池の電極部材1を突き刺さった場合に、導電層12の厚みが小さいため、導電層12の異物により突き刺された箇所に発生するバリが小さく、ダイアフラム4を突き破ることが困難である。従って、短絡を避けて安全性能を向上させることができる。
【0035】
前記電極部材1は、さらに、突部122の絶縁基体11から遠い側に設けられ、且つ活物質層13に接続された保護層14を含む。保護層14は、接着剤と、三酸化アルミニウム及びオキシ水酸化アルミニウムの少なくとも一方を含む絶縁材料とを含む。接着剤と、絶縁材料と、溶媒とを混合して、スラリーを調製し、前記スラリーは、突起122の表面に塗布し、硬化後に保護層14を形成する。保護層14は、導電層12よりも硬度が大きい。
【0036】
前記電極部材1は、さらに、複数の導電構造15を含み、各導電構造15は、突起122の保護層14によって覆われていない領域に溶接されている。図6を参照して、電極部材1が巻き付け成形されると、前記複数の導電構造15が厚さ方向Yにおいて積層されて配置されており、且つ隣接する2つの導電領域P2ごとの間に何れも導電構造15が配置されている。前記複数の導電構造15は、2つの導電層12の合流出力を達成するために、コネクタ片8に同時に溶接されている。
【0037】
活物質層13は、突部122から遠い端部に位置する第1の部分131と、第1の部分131の突部122に近い側に位置する第2の部分132とを有し、且つ第1の部分131の厚みは第2の部分132の厚みよりも薄い。
【0038】
第1の実施例の電極部材1は、以下のステップで成形することができる。
(1)絶縁基材11の表面に気相成長法又は無電解めっき法により導電層12を形成することで、複合テープ材料を作製する。
(2)図9を参照して、導電層12の表面に活物質層13と保護層14とを同時に塗布する。塗布時には、活物質層13の保護層14から遠い一端の厚みを薄くさせる。
(3)活物質層13をロールプレスすることで、活物質層13を圧密して、密度を高める。
(4)ロールプレス終了後、導電層12に金属箔材(例えばアルミニウム箔)を溶接した後、前記金属箔材、保護層14、導電層12及び絶縁基体11を同時に切断することで、図7に示す電極部材1を得る。
【0039】
図11は、電極部材1のステップ(3)によるロールプレス加工後の形状を示している。第2の部分132の厚さは第1の部分131の厚さよりも厚いため、ロールプレス加工時に第2の部分132が受けるロールプレスの圧力は大きく、第1の部分131が受けるロールプレスの圧力は小さい。即ち、電気発生領域P1の第2の部分132に対応する部分の延性は大きく、電気発生領域P1の第1の部分131に対応する部分の延性は小さい。一方、ロールプレス加工中、導電領域P2が力を受けず、ほとんど展延しないため、図11を参照して、ロールプレスした後、電極部材1の高さ方向Zに沿った両端の延性が小さく、電極部材1の中央部の延性が大きい。本願では、第1の部分131の厚みを薄くさせることにより、電極部材1の高さ方向Zに沿った両端の長さの差を低減させ、電極部材1全体の撓み変形を小さくして、二次電池のリチウムの析出を避ける。
【0040】
絶縁基体11の弾性率が小さいため、電気発生領域P1をロールプレスするときに、電気発生領域P1の絶縁基体11が突部122の内側に展延して、突部122の内側の絶縁基体11が膨らんで変形し、突部122が絶縁基体11の作用力によって破断しやすい。本願において、保護層14は高い強度を有しており、電極部材1をロールプレスする過程で突部122に支持力を付与し、突部122の変形を規制し、突部122にクラックの発生する確率を低減し、電極部材1の過電流能力を向上させることができる。
【0041】
二次電池の作動時には、振動等により突部122が外れることがある。好ましくは、保護層14を活物質層13に接続することにより、保護層14を活物質層13に固定し、保護層14の電極部材1への結合力を大きくして耐震性を高め、保護層14が突部122とともに外れることを避ける。また、突部122は、活物質層13の根元付近(即ち、突部122と本体領域121との境界)で最もクラックを発生しやすいので、保護層14と活物質層13とを接続する際に、突部122の破断を防止し、電極部材1の過電流能力を向上させることができる。
【0042】
高さ方向Zに沿って、第1の部分131の寸法と活物質層13の全体寸法との比は、3%~20%である。絶縁基体11の弾性率が小さいため、ロールプレス加工時に第2の部分132に対応する絶縁基体11が第1の部分131に対応する絶縁基体11に対し作用力を加えて、第1の部分131に対応する絶縁基体11を展延させ、前記作用力は、導電領域P2から離れる方向に向かって徐々に減少する。第1の部分131の寸法と活物質層13の全体寸法との比が3%未満であると、電気発生領域P1の導電領域P2から遠い一端は、前記作用力によって依然として大きく展延され、電極部材1の高さ方向Zに沿った両端の長さの差を小さくする効果は制限される。一方、第1の部分131の寸法と活物質層13の全体寸法との比が20%を超えると、活物質層13の容量を低減させ、エネルギー密度に影響を及ぼす。
【0043】
ロールプレス加工時には、第2の部分132が受けるロールプレスの圧力が最大となるため、圧密した後の第2の部分132の密度は、第1の部分131の密度よりも大きい。
【0044】
第1の部分131の厚さと第2の部分132の厚さとの差は、0.5μm~20μmである。前記厚さの差が0.5μm未満であると、第1の部分131は依然として大きなロールプレスの圧力を受け、電気発生領域P1の導電領域P2から遠い一端は依然として大きく展延し、電極部材1の高さ方向Zに沿った両端の長さの差を小さくする効果は制限される。前記厚みの差が20μmを超えると、活物質層13の容量を低減させ、エネルギー密度に影響を及ぼす。
【0045】
一般的に、絶縁基材11の延性は導電層12の延性よりも大きいため、ロールプレス加工時に絶縁基材11は導電層12に対し作用力を加えて導電層12を展延させる。絶縁基体11の延性と導電層12の延性との差が大きすぎると、前記作用力によって導電層12が破断しやすくなり、導電層12の過電流能力に影響を及ぼす。従って、同じ作用力で、絶縁基体11の延性と導電層12の延性との差が4%以下であることが好ましい。なお、前記延性とは、一定の圧力において、材料の元の長さに対する伸び量の百分率を意味する。
【0046】
絶縁基体11の延性が大きいほど、電極部材1の高さ方向Zに沿った両端の長さの差が大きくなり、同時に、導電層12をロールプレス加工中に引き切り易くなるので、絶縁基体11の延性は10%未満であることが好ましい。さらに、絶縁基体11の延性は、1%~3%であることが好ましい。
【0047】
次に、他の2つの実施例について説明する。説明を簡単にさせるために、以下では、他の2つの実施例の、第1の実施例と異なる部分のみを主に説明し、説明していない部分については第1実施例を参照して理解することができる。
【0048】
図12及び図13は、本発明の電極部材の第2の実施例を示す模式図である。図12及び図13を参照して、第2の実施例では、第1の部分131の厚さは、突部122から離れる方向に向かって徐々に減少している。電極部材1の高さ方向Zに沿った両端の長さの差を小さくするためには、電気発生領域P1の導電領域P2から遠い一端の延性を小さくする必要がある。従って、第1の部分131では、電極部材1の高さ方向Zに沿った両端の長さの差を小さくするために、突部122から遠いほど、その厚さを薄くする必要がある。
【0049】
図8を参照して、第1の実施例では、第1の部分131が均一に塗布されているため、第1の部分131と第2の部分132との境界部の厚さの差が大きくなり、ロールプレス加工時には、第1の部分131と第2の部分132との境界に応力が集中するため、応力によって導電層12が破断しやすく、過電流能力に影響を及ぼす。一方、第2の実施例では、第1の部分131が突部122から離れる方向に向かって徐々に薄くなり、第1の部分131と第2の部分132との境界でのスムーズな連結が実現され、さらに応力が分散されて応力集中が低減され、応力による導電層12の切断を避ける。
【0050】
図14及び図15は、本発明の電極部材の第3の実施例を示す模式図である。図14及び図15を参照して、第3の実施例では、活物質層13は、第2の部分132の突部122に近い側に位置する第3の部分133をさらに含み、第3の部分133の厚みは第2の部分132の厚みよりも薄い。第3の部分133は、活物質層13の突部122に近い一端に位置している。
【0051】
ロールプレス加工中、本体部121はロールプレスの圧力を受けるが、突部122はロールプレスの圧力を受けないため、両者の境界に応力が集中する。図13を参照して、第2の実施例では、突部122が第2の部分132に直接隣接し、第2の部分132の厚みが大きいため、本体部121と突部122との境界における応力が大きくなり、本体部121と突部122とが容易に分離してクラックが形成され、過電流能力に影響を及ぼす。第3の実施例では、第3の部分133の厚さを薄くすることにより、本体部121と突部122との境界における応力を低減させ、クラックの発生する確率を小さくすることができる。
【0052】
また、第3の部分133の厚さは、突部122に近づく方向に向かって徐々に減少している。第3の部分133は、突部122に近づく方向に向かって徐々に薄くなり、第1の部分131と第3の部分133との境界でのスムーズな連結が実現され、さらに応力が分散されて応力集中が低減され、応力による導電層12の切断を回避する。
【0053】
突部122は第3の部分133に隣接しているので、保護層14は第3の部分133に接続されている。
【符号の説明】
【0054】
なお、符号は以下のように説明する。
1電極部材、P2導電領域、11絶縁基体、2正極部材、12導電層、3負極部材、121本体部、4ダイアフラム、122突部、5ケース、13活物質層、6上蓋板、131第1の部分、7電極端子、132第2の部分、8コネクタ片、133第3の部分、9ローラ、14保護層、X幅方向、15導電構造、Y厚み方向、P1電気発生領域、Z高さ方向。
図1
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