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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】リチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0569 20100101AFI20221213BHJP
   H01M 4/136 20100101ALI20221213BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20221213BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20221213BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20221213BHJP
   H01M 50/434 20210101ALI20221213BHJP
   H01M 50/449 20210101ALI20221213BHJP
   H01M 50/46 20210101ALI20221213BHJP
   H01M 50/489 20210101ALI20221213BHJP
【FI】
H01M10/0569
H01M4/136
H01M4/36 A
H01M4/38 Z
H01M10/052
H01M50/434
H01M50/449
H01M50/46
H01M50/489
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021520392
(86)(22)【出願日】2020-05-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-13
(86)【国際出願番号】 KR2020006907
(87)【国際公開番号】W WO2020242219
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2021-04-13
(31)【優先権主張番号】10-2019-0062459
(32)【優先日】2019-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0064307
(32)【優先日】2019-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0063973
(32)【優先日】2020-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ミョンジュン・ソン
(72)【発明者】
【氏名】ミョンソン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ミンス・キム
(72)【発明者】
【氏名】インテ・パク
【審査官】結城 佐織
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-513673(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/0569
H01M 4/136
H01M 4/36
H01M 4/38
H01M 10/052
H01M 50/449
H01M 50/46
H01M 50/489
H01M 50/434
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極、負極、分離膜及び電解液を含むリチウム二次電池であって、
前記正極は下記数式1で表されるSC factor値が0.45以上で、
【数1】
(前記数式1において、
Pは正極内の正極活物質層の空隙率(%)で、
Lは正極内の正極活物質層の単位面積当たりの硫黄の質量(mg/cm )で、
αは10(定数)である。)
前記電解液は溶媒及びリチウム塩を含み、
前記溶媒は下記数式2で表されるDV factor値が1.75以下である第1溶媒;及びフッ素化されたエーテル系溶媒である第2溶媒を含み、
前記正極は表面改質された炭素材を含む硫黄-炭素複合体を含み、
前記表面改質された炭素材に含まれた炭素の含量は98重量%以上であることを特徴とするリチウム二次電池:
【数2】
(前記数式2において、DVは単位体積当たりの双極子モーメント(D・mol/L)で、
μは溶媒の粘度(cP、25℃)で、
γは100(定数)である。)。
【請求項2】
前記表面改質された炭素材の比表面積は280ないし4500m/gで、気孔の体積は2.3ないし5cm/gである、請求項に記載のリチウム二次電池。
【請求項3】
前記表面改質された炭素材を含む硫黄-炭素複合体の比表面積は10ないし20m/gで、気孔の体積は0.04ないし1cm/gである、請求項に記載のリチウム二次電池。
【請求項4】
前記分離膜は多孔性基材及び前記多孔性基材の少なくとも一面に形成された二硫化モリブデンコーティング層を含むものである、請求項1からのいずれか一項に記載のリチウム二次電池。
【請求項5】
前記二硫化モリブデンコーティング層は厚さが0.1ないし10μmである、請求項に記載のリチウム二次電池。
【請求項6】
前記二硫化モリブデンコーティング層は前記多孔性基材の一面に形成され、前記二硫化モリブデンコーティング層は負極に対面して配置される、請求項に記載のリチウム二次電池。
【請求項7】
前記第1溶媒はDV factor値が1.5以下である、請求項1からのいずれか一項に記載のリチウム二次電池。
【請求項8】
前記リチウム二次電池は下記数式3で表されるNS factor値が3.5以下である、請求項1からのいずれか一項に記載のリチウム二次電池:
【数3】
(前記数式3において、
SC factorは前記数式1によって定義された値と同一で、
DV factorは前記数式2によって定義された値と同一である。)。
【請求項9】
前記リチウム二次電池は下記数式4で表されるED factor値が850以上である、請求項1からのいずれか一項に記載のリチウム二次電池:
【数4】
(前記数式4において、
VはLi/Liに対する放電公称電圧(V)で、
SC factorは前記数式1によって定義された値と同一で、
Cは0.1C rateで放電時の放電容量(mAh/g)で、
Dは電解液の密度(g/cm)である。)。
【請求項10】
前記第1溶媒は、プロピオニトリル、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ガンマ-ブチロラクトン、トリエチルアミン及び1-ヨードプロパンからなる群から選択される1種以上を含む、請求項1からのいずれか一項に記載のリチウム二次電池。
【請求項11】
前記第2溶媒は、1H,1H,2´H,3H-デカフルオロジプロピルエーテル、ジフルオロメチル2,2,2-トリフルオロエチルエーテル、1,2,2,2-テトラフルオロエチルトリフルオロメチルエーテル、1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピルジフルオロメチルエーテル、ペンタフルオロエチル2,2,2-トリフルオロエチルエーテル及び1H,1H,2´H-パーフルオロジプロピルエーテルからなる群から選択される1種以上を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載のリチウム二次電池。
【請求項12】
前記溶媒は前記溶媒の全体重量を基準にして第1溶媒を1ないし50重量%で含む、請求項1から11のいずれか一項に記載のリチウム二次電池。
【請求項13】
前記溶媒は前記溶媒の全体重量を基準にして第2溶媒を50ないし99重量%で含む、請求項1から12のいずれか一項に記載のリチウム二次電池。
【請求項14】
前記溶媒は第1溶媒と第2溶媒を1:1ないし1:9の重量比で含む、請求項1に記載のリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年05月28日付韓国特許出願第10-2019-0062459号、2019年05月31日付韓国特許出願第10-2019-0064307号及び2020年05月28日付韓国特許出願第10-2020-0063973号に基づく優先権の利益を主張し、該当韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容は本明細書の一部として含む。
【0002】
本発明は、リチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0003】
二次電池の応用領域が電気自動車(electric vehicle;EV)やエネルギー貯蔵装置(energy storage system;ESS)などに拡大されることにつれ、単位重量当たりのエネルギー貯蔵密度(~250Wh/kg)が相対的に低いリチウム-イオン二次電池は、このような製品に対する適用に限界がある。これと違って、リチウム-硫黄二次電池は理論上単位重量当たりの高いエネルギー貯蔵密度(~2、600Wh/kg)を具現することができるので、次世代二次電池技術として脚光を浴びている。
【0004】
リチウム-硫黄二次電池は、硫黄-硫黄結合(sulfur-sulfur bond)を有する硫黄系物質を正極活物質で使用し、リチウム金属を負極活物質で使用した電池システムである。このようなリチウム-硫黄二次電池は、正極活物質の主な材料である硫黄が世界的に資源量が豊かで、毒性がなく、単位原子当たりの低い重量を持つという長所がある。
【0005】
リチウム-硫黄二次電池は、放電時に負極活物質であるリチウムが電子を出してイオン化しながら酸化され、正極活物質である硫黄系物質が電子を受け入れて還元される。この時、リチウムの酸化反応は、リチウム金属が電子を出してリチウム陽イオンの形態に変換される過程である。また、硫黄の還元反応は硫黄-硫黄結合が2つの電子を受け入れて硫黄陰イオンの形態に変換される過程である。リチウムの酸化反応によって生成されたリチウム陽イオンは電解質を通じて正極に伝達され、硫黄の還元反応によって生成された硫黄陰イオンと結合して塩を形成する。具体的に、放電前の硫黄は環形のS構造を持っているが、これは還元反応によってリチウムポリスルフィド(lithium polysulfide、Li、x=8、6、4、2)に変換され、このようなリチウムポリスルフィドが完全に還元される場合は、リチウムスルフィド(LiS)が最終的に生成されるようになる。
【0006】
正極活物質の硫黄は低い電気伝導性によって固相(solid-state)形態では電子及びリチウムイオンとの反応性を確保しがたい。従来のリチウム-硫黄二次電池は、このような硫黄の反応性を改善するためにLi形態の中間ポリスルフィド(intermediate polysulfide)を生成して液相(liquid-state)反応を誘導し、反応性を改善する。この場合、電解液の溶媒として、リチウムポリスルフィドに対して溶解性が高いジオキソラン(dioxolane)、ジメトキシエタン(dimethoxyethane)などのエーテル系溶媒が使われる。また、従来のリチウム-硫黄二次電池は反応性を改善するためにカソライト(catholyte)タイプのリチウム-硫黄二次電池システムを構築するが、この場合、電解液に溶けやすいリチウムポリスルフィドの特性によって電解液の含量によって硫黄の反応性及び寿命特性が影響を受ける。また、高いエネルギー密度を構築するためには低含量の電解液を注液しなければならないが、電解液の含量が減少することによって電解液内のリチウムポリスルフィドの濃度が増加し、活物質の流動性減少及び副反応の増加により、正常な電池駆動が難しい。
【0007】
このようなリチウムポリスルフィドの溶出は電池の容量及び寿命特性に悪影響を及ぼすので、リチウムポリスルフィドの溶出を抑制するための様々な技術が提案された。
【0008】
一例として、特許文献1は、炭素材としてグラフェンでコーティングした3次元構造のカーボンナノチューブ凝集体を使用することでリチウムポリスルフィドが溶けることを遮断し、硫黄-カーボンナノチューブ複合体の導電性を向上させることができることを開示している。
【0009】
また、特許文献2は、グラフェンにフッ酸処理してグラフェン表面に気孔を形成し、前記気孔に硫黄粒子を成長させる方法を通じて製造された硫黄を含むグラフェン複合体を正極活物質で使用することでリチウムポリスルフィドの溶出を抑制し、電池容量減少を最小化することができることを開示している。
【0010】
また、特許文献3及び特許文献4は様々な形態の炭素材を含む硫黄-炭素複合体をリチウム-硫黄二次電池に適用して電池の性能を改善することができることを開示している。
【0011】
これらの特許は、正極活物質で使われる硫黄-炭素複合体の構造または素材を異にすることでリチウムポリスルフィドの溶出を防止し、リチウム-硫黄二次電池の性能が低下する問題をある程度改善したが、その効果が十分ではない。よって、高エネルギー密度のリチウム-硫黄二次電池を構築するためには、高ローディング、低気孔度の電極を駆動することができる電池システムを必要とし、該当技術分野ではこのような電池システムに対する研究が持続的に行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】韓国公開特許第2016-0037084号公報
【文献】韓国登録特許第1379716号公報
【文献】韓国公開特許第2018-0116927号公報
【文献】韓国公開特許第2015-0044833号公報
【非特許文献】
【0013】
【文献】Abbas Fotouhi et al.、Lithium-Sulfur Battery Technology Readiness and Applications-A Review、Energies 2017、10、1937。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ここで、本発明者らは前記問題を解決するために多角的に研究した結果、正極と電解液を特定条件で調節する場合、高エネルギー密度及び長い寿命のリチウム-硫黄二次電池を具現することができることを確認して本発明を完成した。また、さらに正極活物質に熱処理によって表面改質された炭素材を含んだり、分離膜に二硫化モリブデンコーティング層を形成する場合、高エネルギー密度及び長い寿命のリチウム-硫黄二次電池を具現することができることを確認した。
【0015】
よって、本発明の目的は、エネルギー密度及び寿命特性に優れるリチウム二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記目的を達成するために、本発明は、正極、負極、分離膜及び電解液を含むリチウム二次電池であって、
前記正極は下記数式1で表されるSC factor値が0.45以上で、
【0017】
【数1】
(前記数式1において、
Pは正極内の正極活物質層の空隙率(%)で、
Lは正極内の正極活物質層の単位面積当たりの硫黄の質量(mg/cm)で、
αは10(定数)である。)
前記電解液は溶媒及びリチウム塩を含み、
前記溶媒は下記数式2で表されるDV factor値が1.75以下である第1溶媒;及びフッ素化されたエーテル系溶媒である第2溶媒を含むことを特徴とするリチウム二次電池を提供する:
【0018】
【数2】
(前記数式2において、DVは単位体積当たりの双極子モーメント(D・mol/L)で、
μは溶媒の粘度(cP、25℃)で、
γは100(定数)である。)。
【0019】
前記正極は表面改質された炭素材を含む硫黄-炭素複合体を含み、前記炭素材に含まれた炭素の含量は98重量%以上であってもよい。
【0020】
前記炭素材の比表面積は280ないし4500m/gで、気孔の体積は2.3ないし5cm/gであってもよい。
【0021】
前記硫黄-炭素複合体の比表面積は10ないし20m/gで、気孔の体積は0.04ないし1cm/gであってもよい。
【0022】
前記分離膜は多孔性基材及び前記多孔性基材の少なくとも一面に形成された二硫化モリブデンコーティング層を含むものであってもよい。
【0023】
前記二硫化モリブデンコーティング層は、厚さが0.1ないし10μmであってもよい。
【0024】
前記二硫化モリブデンコーティング層は前記多孔性基材の一面に形成され、前記二硫化モリブデンコーティング層は負極に対面して配置されてもよい。
【0025】
前記第1溶媒はDV factor値が1.5以下であってもよい。
【0026】
前記リチウム二次電池は、下記数式3で表されるNS factor値が3.5以下であってもよい:
【0027】
【数3】
(前記数式3において、
SC factorは前記数式1によって定義された値と同一で、
DV factorは前記数式2によって定義された値と同一である。)。
【0028】
前記リチウム二次電池は、下記数式4で表されるED factor値が850以上であってもよい。
【0029】
【数4】
(前記数式4において、
VはLi/Liに対する放電公称電圧(V)で、
SC factorは前記数式1によって定義された値と同一で、
Cは0.1C rateで放電する時の放電容量(mAh/g)で、
Dは電解液の密度(g/cm)である。)。
【0030】
前記第1溶媒は、プロピオニトリル、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ガンマ-ブチロラクトン、トリエチルアミン及び1-ヨードプロパンからなる群から選択される1種以上を含むものであってもよい。
【0031】
前記第2溶媒は、1H,1H,2´H,3H-デカフルオロジプロピルエーテル、ジフルオロメチル2,2,2-トリフルオロエチルエーテル、1,2,2,2-テトラフルオロエチルトリフルオロメチルエーテル、1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピルジフルオロメチルエーテル、ペンタフルオロエチル2,2,2-トリフルオロエチルエーテル及び1H,1H,2´H-パーフルオロジプロピルエーテルからなる群から選択される1種以上を含むものであってもよい。
【0032】
前記溶媒は前記溶媒の全体重量を基準にして第1溶媒を1ないし50重量%で含むものであってもよい。
【0033】
前記溶媒は前記溶媒の全体重量を基準にして第2溶媒を50ないし99重量%で含むものであってもよい。
【0034】
前記溶媒は第1溶媒と第2溶媒を3:7ないし1:9の重量比で含むものであってもよい。
【発明の効果】
【0035】
本発明の一具現例によるリチウム二次電池は、正極及び電解液を特定条件で調節することでリチウム二次電池の性能及び寿命特性を改善させることができる。
【0036】
また、本発明の別の一具現例によるリチウム二次電池は、正極及び電解液を特定条件で調節すると同時に、正極活物質に含まれる炭素材として熱処理によって表面改質された炭素材を使って硫黄を均一に担持することができてリチウム二次電池の寿命特性を向上させることができる。
【0037】
また、本発明のまた別の一具現例によるリチウム二次電池は、正極及び電解液を特定条件で調節すると同時に、二硫化モリブデンコーティング層を含む分離膜を備えて、従来のリチウム二次電池では具現しにくかった高エネルギー密度及び長い寿命特性を示す。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】製造例1及び比較製造例1でそれぞれ製造された表面改質されたCNTを含む硫黄-炭素複合体(熱処理群)及びCNTを含む硫黄-炭素複合体(未処理群)の走査電子顕微鏡(SEM)写真である。
図2】製造例1及び比較製造例1でそれぞれ製造された表面改質されたCNTを含む硫黄-炭素複合体(熱処理群)及びCNTを含む硫黄-炭素複合体(未処理群)の粉体抵抗測定グラフである。
図3】実施例1及び比較例1でそれぞれ製造されたリチウム-硫黄二次電池のサイクル回数によるED factor値を示すグラフである。
図4】本発明の製造例2による分離膜の走査電子顕微鏡(SEM)イメージである。
図5】本発明の実験例4による実施例及び比較例の電池性能評価結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明をより詳しく説明する。
【0040】
本明細書及び特許請求の範囲に使われた用語や単語は通常的や辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者は自分の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義することができるという原則に即して本発明の技術的思想に符合する意味と概念で解釈しなければならない。
【0041】
本発明で使用した用語は、単に特定実施例を説明するために使われたもので、本発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は文脈上明らかに違うことを意味しない限り、複数の表現を含む。本発明において、「含む」または「持つ」などの用語は、明細書上に記載された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであって、一つまたはそれ以上の別の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものなどの存在または付加可能性を予め排除しないものと理解しなければならない。
【0042】
本明細書で使われている用語「ポリスルフィド」は「ポリスルフィドイオン(S 2-、x=8、6、4、2))」及び「リチウムポリスルフィド(LiまたはLiS 、x=8、6、4、2)」をいずれも含む概念である。
【0043】
本発明は、正極、負極、これらの間に介在された分離膜及び電解液を含むリチウム二次電池を提供する。具体的に、前記リチウム二次電池は正極活物質として硫黄を含むリチウム-硫黄二次電池であってもよい。
【0044】
リチウム-硫黄二次電池は様々な二次電池の中で高い放電容量及びエネルギー密度を持ち、正極活物質で使われる硫黄は埋蔵量が豊かで安価であるため電池の製造単価を下げることができ、環境にやさしいという利点で次世代二次電池として脚光を浴びている。
【0045】
しかし、従来のリチウム-硫黄二次電池システムの場合、前述したリチウムポリスルフィドの溶出を抑制することができず、硫黄の損失が発生し、これによって電気化学反応に参加する硫黄の量が急減して実際の駆動においては理論放電容量及び理論エネルギー密度全部を具現することができない。特に、このように溶出されたリチウムポリスルフィドは、電解液の中に浮遊または沈澱されること以外も、負極であるリチウム金属と直接反応して負極の表面にLiSの形態で固着されることによって、リチウム金属の負極を腐食させ、一定サイクル以後、初期容量及びサイクル特性が急激に低下する問題を発生させる。
【0046】
従来の技術ではリチウムポリスルフィドの溶出を抑制することができる物質を添加剤または保護層の形態で正極や分離膜に導入、正極活物質の構造または素材変更、電解質の組成変更などの方法が提案されたが、リチウムポリスルフィド溶出の改善効果が微々たるだけでなく、正極活物質である硫黄を入れることができる量(すなわち、ローディング量)に制限があり、電池の安定性に深刻な問題を引き起こしたり、工程側面で非効率的という短所がある。
【0047】
ここで、本発明の一具現例による正極、負極、分離膜及び電解液を含むリチウム二次電池は、正極活物質層の空隙率(または気孔度)が低く、正極活物質である硫黄のローディング量が高い正極を含み、電解液に含まれた溶媒が特定条件を充たすように調節することで、電池の性能及び寿命特性を改善させることができる。
【0048】
また、本発明の別の一具現例によるリチウム二次電池は上述した正極及び電解液の条件にさらに正極活物質に含まれる炭素材を熱処理して表面を改質することで、電池の性能及び寿命特性を改善させることができる。
【0049】
また、本発明のまた別の一具現例によるリチウム二次電池は上述したような正極及び電解液の条件にさらに多孔性基材の表面に二硫化モリブデンコーティング層を含む分離膜を使うことで、電池のエネルギー密度を向上させることができる。
【0050】
リチウム二次電池(1)
本発明の一具現例によるリチウム二次電池は、正極、負極、分離膜及び電解液を含むリチウム二次電池に係り、前記正極は下記数式1で表されるSC factor値が0.45以上で、
【0051】
【数5】
(前記数式1において、
Pは正極内の正極活物質層の空隙率(%)で、
Lは正極内の正極活物質層の単位面積当たりの硫黄の質量(mg/cm)で、
αは10(定数)である。)
前記電解液は溶媒及びリチウム塩を含み、
前記溶媒は下記数式2で表されるDV factor値が1.75以下である第1溶媒;及びフッ素化されたエーテル系溶媒である第2溶媒を含む:
【0052】
【数6】
(前記数式2において、DVは単位体積当たりの双極子モーメント(D・mol/L)で、
μは溶媒の粘度(cP、25℃)で、
γは100(定数)である。)。
【0053】
正極
本発明による正極は、正極集電体と前記正極集電体の一面または両面に塗布された正極活物質層を含むことができる。
【0054】
前記正極集電体は正極活物質を支持し、当該電池に化学的変化を引き起こさずに高い導電性を持つものであれば特に制限されない。例えば、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、パラジウム、焼成炭素、銅やステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、銀などで表面処理したもの、アルミニウム-カドミウム合金などが使われることができる。
【0055】
前記正極集電体はその表面に微細な凹凸を形成して正極活物質との結合力を強化させることができ、フィルム、シート、ホイル、メッシュ、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など様々な形態を使うことができる。
【0056】
前記正極集電体の厚さは特に制限しないが、例えば3ないし500μmであってもよい。
【0057】
前記正極活物質層は正極活物質と選択的に導電材及びバインダーを含むことができる。
【0058】
前記正極活物質は硫黄系化合物を含む。前記硫黄系化合物は、無機硫黄(S)、Li(n≧1)、2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール(2,5-dimercapto-1,3,4-thiadiazole)、1,3,5-トリチオシアヌル酸(1,3,5-trithiocyanuic acid)などのようなジスルフィド化合物、有機硫黄化合物及び炭素-硫黄ポリマー((C、x=2.5ないし50、n≧2)からなる群から選択される1種以上であってもよい。好ましくは無機硫黄(S)を使うことができる。
【0059】
前記硫黄系化合物は単独では電気伝導性がないから伝導性物質である炭素材と複合化して使われる。好ましくは、前記正極活物質は硫黄-炭素複合体であってもよい。この時、用語「複合体(composite)」とは、2つ以上の材料が組み合わせされて物理的・化学的に相異なる相(phase)を形成しながら、より有効な機能を発現する物質を意味する。
【0060】
前記硫黄-炭素複合体で炭素材は前述した硫黄系化合物が均一且つ安定的に固定される骨格を提供し、硫黄の低い電気伝導度を補って電気化学反応がスムーズに行われるようにする。
【0061】
前記炭素材は一般的に様々な炭素材質の前駆体を炭化させることで製造される。前記炭素材は表面及び内部に一定しない多数の気孔を含むことができる。前記気孔の平均直径は1ないし200nm範囲であり、空隙率は炭素材の全体積の10ないし90%範囲であってもよい。もし前記気孔の平均直径が前記範囲未満の場合、気孔の大きさが分子レベルに過ぎないため硫黄の含浸が不可能であり、これと逆に前記範囲を超過する場合、炭素材の機械的強度が弱化して電極の製造工程に適用するに好ましくない。
【0062】
前記炭素材の形態は、球形、棒形、針状、板状、チューブ型またはバルク型で、リチウム二次電池に通常使われるものであれば制限せずに使われてもよい。
【0063】
前記炭素材は多孔性構造であるか、または比表面積が高いもので、当業界で通常使われるものであればいずれもかまわない。例えば、前記多孔性炭素材では、グラファイト(graphite);グラフェン(graphene);デンカブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;単層カーボンナノチューブ(SWCNT)、多層カーボンナノチューブ(MWCNT)などのカーボンナノチューブ(CNT);グラファイトナノファイバー(GNF)、カーボンナノファイバー(CNF)、活性化炭素ファイバー(ACF)などの炭素繊維;天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛及び活性炭素からなる群から選択された1種以上であってもよいが、これに制限されない。
【0064】
本発明の硫黄-炭素複合体において、前記硫黄系化合物は前記硫黄-炭素複合体の全体重量を基準にして50重量%ないし90重量%で含まれることができる。例えば、前記硫黄系化合物の含量は50重量%以上、55重量%以上、60重量%以上または65重量%以上であってもよく、75重量%以下、80重量%以下、85重量%以下または90重量%以下であってもよい。
【0065】
本発明の硫黄-炭素複合体において、前記炭素材は前記硫黄-炭素複合体の全体重量を基準にして10重量ないし50重量%で含まれることができる。例えば、前記炭素材の含量は10重量%以上、15重量%以上、20重量%以上または25重量%以上であってもよく、35重量%以下、40重量%以下、45重量%以下または50重量%以下であってもよい。
【0066】
これによって前記硫黄-炭素複合体において、炭素材と硫黄系化合物の重量比は1:1ないし1:9であってもよい。例えば、前記重量比は1:1以下、1:1.5以下または1:2以下であってもよく、1:3以上、1:4以上、1:5以上、1:6以上、1:7以上、1:8以上または1:9以上であってもよい。
【0067】
前記硫黄系化合物の含量が前述した範囲未満の場合、硫黄-炭素複合体内の炭素材の含量が相対的に多くなることにつれ、比表面積が増加してスラリー製造の際にバインダーの含量が増加する。このようなバインダー使容量の増加は、結局正極の面抵抗を増加させて電子移動(electron pass)を防ぐ絶縁体の役目をするようになって電池の性能を低下させることがある。これと逆に、前記硫黄系化合物の含量が前述した範囲を超過する場合、炭素材と結合できなかった硫黄または硫黄化合物どうしで集まったり、多孔性炭素材の表面に再溶出されることによって電子を受けにくくなり、電気化学的反応に参加することができなくなって電池容量の損失が発生することがある。
【0068】
前記硫黄-炭素複合体は前述した硫黄系化合物と炭素材が単純混合されて複合化されたり、コア-シェル構造のコーティング形態または担持形態を持つことができる。前記コア-シェル構造のコーティング形態は、硫黄系化合物または炭素材の中でいずれか一つが別の物質をコーティングしたものであって、一例として炭素材表面を硫黄系化合物で包んだり、この逆になることがある。また、担持形態は炭素材の内部に硫黄系化合物が担持された形態であってもよい。前記硫黄-炭素複合体の形態は、前記提示した硫黄系化合物と炭素材の含量比を充たすものであれば、いかなる形態でも使用可能であり、本発明で限定しない。
【0069】
本発明による硫黄-炭素複合体の平均直径は本発明で特に限定せず様々であってもよいが、0.5μmないし20μmであってもよい。例えば、前記硫黄-炭素複合体の平均直径は0.5μm以上、1μm以上、1.5μm以上、2μm以上、2.5μm以上であってもよく、11μm以下、13μm以下、15μm以下、17μm以下、19μm以下または20μm以下であってもよい。
【0070】
前記正極活物質は、前述した組成以外に遷移金属元素、IIIA族元素、IVA族元素、これらの元素の硫黄化合物、及びこれらの元素と硫黄の合金の中で選択される一つ以上の添加剤をさらに含むことができる。
【0071】
前記遷移金属元素にはSc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、AuまたはHgなどが含まれ、前記IIIA族元素にはAl、Ga、In、Tiなどが含まれ、前記IVA族元素にはGe、Sn、Pbなどが含まれる。
【0072】
前記導電材は電解質と正極活物質を電気的に連結させ、集電体(current collector)から電子が正極活物質まで移動する経路の役目をする物質であって、導電性を有するものであれば制限されずに使うことができる。
【0073】
例えば、前記導電材としては、スーパーP(Super-P)、デンカブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック、カーボンブラックなどのカーボンブラック;カーボンナノチューブ、グラフェン、フラーレンなどの炭素誘導体;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;またはポリアニリン、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリピロールなどの伝導性高分子を単独または混合して使うことができる。
【0074】
前記導電材の含量は前記正極活物質を含む混合物の全体重量を基準にして0.01ないし30重量%で添加されてもよい。
【0075】
前記バインダーは正極活物質を正極集電体に維持させ、正極活物質の間を有機的に連結させて、これらの間の結着力をより高めるもので、当該業界で公知された全てのバインダーを使うことができる。
【0076】
例えば、前記バインダーは、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride、PVdF)またはポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene、PTFE)を含むフッ素樹脂系バインダー;スチレン-ブタジエンゴム(styrene butadiene rubber、SBR)、アクリロニトリル-ブチジエンゴム、スチレン-イソプレンゴムを含むゴム系バインダー;カルボキシメチルセルロース(carboxyl methyl cellulose、CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロースを含むセルロース系バインダー;ポリアルコール系バインダー;ポリエチレン及び/またはポリプロピレンを含むポリオレフィン系バインダー;ポリイミド系バインダー;ポリエステル系バインダー;及びシラン系バインダー;からなる群から選択された1種、2種以上の混合物または共重合体を使うことができる。
【0077】
前記バインダーの含量は前記正極活物質を含む混合物の全体重量を基準にして0.5ないし30重量%で添加されてもよい。バインダーの含量が0.5重量%未満であれば、正極の物理的性質が低下して正極内活物質と導電材が脱落することがあり、30重量%を超過すれば、正極で活物質と導電材の割合が相対的に減少して電池の容量が減少することがある。
【0078】
上述した組成を含む本発明の正極、具体的に、正極活物質層の空隙率は60ないし80%、好ましくは65ないし75%であってもよい。前記正極の空隙率が60%に及ばない場合は、正極活物質、導電材及びバインダーを含む正極活物質層の充填度が高すぎて正極活物質の間にイオン伝導及び/または電気伝導を示す十分な電解液が維持できなくなって電池の出力特性やサイクル特性が低下することがあって、電池の過電圧及び放電容量減少がひどくなる問題がある。これと逆に、前記正極の空隙率が80%を超過して高すぎる空隙率を持つ場合、集電体と物理的及び電気的連結が低くなって接着力が低下し、反応が難しくなる問題があり、高くなった空隙率を電解液が充填されて電池のエネルギー密度が低くなる問題があるので、前記範囲で適切に調節する。
【0079】
前記正極は当分野に知られている通常の方法で製造することができる。例えば、正極活物質に溶媒、必要に応じてバインダー、導電材、充填剤のような添加剤を混合及び撹拌してスラリーを製造した後、これを金属材料の集電体に塗布(コーティング)し、圧縮した後で乾燥して正極を製造することができる。
【0080】
具体的に、先ず、スラリーを製造するための溶媒に前記バインダーを溶解させた後、導電材を分散させる。スラリーを製造するための溶媒では、正極活物質、バインダー及び導電材を均一に分散させることができ、容易に蒸発されるものを使うのが好ましく、代表的には、アセトニトリル、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、水、イソプロピルアルコールなどを使うことができる。次に、正極活物質を、または選択的に添加剤とともに、前記導電材が分散された溶媒に再び均一に分散させて正極スラリーを製造する。スラリーに含まれる溶媒、正極活物質、または選択的に添加剤の量は本出願において特に重要な意味を持たず、単にスラリーを塗布しやすいように適切な粘度を持てば十分である。このように製造されたスラリーを集電体に塗布し、乾燥して正極を形成する。前記スラリーはスラリーの粘度及び形成しようとする正極の厚さによって適切な厚さで集電体に塗布することができる。
【0081】
前記塗布は当業界に通常的に公知された方法によって行ってもよいが、例えば、前記正極活物質スラリーを前記正極集電体の一側上面に分配させた後、ドクターブレード(doctor blade)などを利用して均一に分散させて行うことができる。その他にも、ダイキャスティング(die casting)、コンマコーティング(comma coating)、スクリーンプリンティング(screen printing)などの方法を通じて行うことができる。
【0082】
前記乾燥は特に制限しないが、50ないし200℃の真空オーブンで1日以内で行う。
【0083】
上述した組成及び方法で製造された本発明の正極は、下記数式1で表されるSC factor値によって分けられる。
【0084】
【数7】
(前記数式1において、
Pは正極内の正極活物質層の空隙率(%)で、
Lは正極内の正極活物質層の単位面積当たりの硫黄の質量(mg/cm)で、
αは10(定数)である。)。
【0085】
本発明によるリチウム二次電池は、上述した正極だけでなく、後述する負極、分離膜及び電解質などの有機的結合によって高エネルギー密度を具現し、本発明によると、リチウム二次電池が高エネルギー密度を具現するために、前記SC factor値は0.45以上、好ましくは0.5以上であってもよい。本発明において、前記SC factor値の上限は特に制限されないが、実際のリチウム二次電池の駆動を考慮した時、前記SC factor値は4.5以下であってもよい。前記SC factor値が0.45以上の場合、従来のリチウム二次電池は実際駆動時の電池のエネルギー密度などの性能が低下するが、本発明によるリチウム二次電池の場合は、実際駆動する時も電池の性能が低下されずに維持される。
【0086】
負極
本発明による負極は、負極集電体とその一面または両面に形成された負極活物質層で構成されることができる。または前記負極はリチウム板金であってもよい。
【0087】
前記負極活物質層は負極活物質と選択的に導電材及びバインダーを含むことができる。
【0088】
前記負極活物質は、リチウムイオン(Li)を可逆的に挿入(intercalation)または脱挿入(deintercalation)できる物質、リチウムイオンと反応して可逆的にリチウム含有化合物を形成することができる物質、リチウム金属またはリチウム合金を含むことができる。
【0089】
前記リチウムイオンを可逆的に挿入または脱挿入できる物質は、例えば、結晶質炭素、非晶質炭素またはこれらの混合物であってもよい。
【0090】
前記リチウムイオンと反応して可逆的にリチウム含有化合物を形成することができる物質は、例えば、酸化スズ、チタンナイトレート、またはシリコーンであってもよい。
【0091】
前記リチウム合金は、例えば、リチウム(Li)とナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)、フランシウム(Fr)、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、ラジウム(Ra)、アルミニウム(Al)及びスズ(Sn)からなる群から選択される金属の合金であってもよい。
【0092】
好ましくは、前記負極活物質はリチウム金属であってもよく、具体的に、リチウム金属薄膜またはリチウム金属粉末の形態であってもよい。
【0093】
前記負極活物質を除いた集電体、導電材、バインダーなどの構成及び負極の製造方法は、上述した正極で使われた物質及び方法などが利用されることができる。
【0094】
分離膜
本発明による分離膜は、正極と負極を物理的に分離するだけでなく、リチウムポリスルフィドを吸着する役目を同時にする分離膜であって、多孔性基材を含む。
【0095】
本発明の分離膜を構成する多孔性基材は、負極と正極を互いに分離または絶縁させながら前記正極と負極の間でリチウムイオンを輸送できるようにする。前記多孔性基材は、非伝導性または絶縁性物質からなってもよく、フィルムのような独立的な部材であってもよい。
【0096】
具体的に、前記多孔性基材は多孔性高分子フィルムを単独で、またはこれらを積層して使うことができ、例えば、高融点のガラス繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維などからなる不織布またはエチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体及びエチレン/メタクリレート共重合体などのようなポリオレフィン系高分子で製造した多孔性高分子フィルムを使うことができるが、これに限定されるものではない。
【0097】
前記多孔性基材の材質は本発明で特に限定せず、通常リチウム二次電池に使われる多孔性基材であれば、いずれも使用可能である。例えば、前記多孔性基材は、ポリエチレン(polyethylene)、ポリプロピレン(polypropylene)などのポリオレフィン(polyolefin)、ポリエチレンテレフタレート(polyethyleneterephthalate)、ポリブチレンテレフタレート(polybutyleneterephthalate)などのポリエステル(polyester)、ポリアミド(polyamide)、ポリアセタール(polyacetal)、ポリカーボネート(polycarbonate)、ポリイミド(polyimide)、ポリエーテルエーテルケトン(polyetheretherketone)、ポリエーテルスルホン(polyethersulfone)、ポリフェニレンオキシド(polyphenyleneoxide)、ポリフェニレンスルフィド(polyphenylenesulfide)、ポリエチレンナフタレン(polyethylenenaphthalate)、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene)、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride)、ポリ塩化ビニル(polyvinyl chloride)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、セルロース(cellulose)、ナイロン(nylon)、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(poly(p-phenylene benzobisoxazole)及びポリアリレート(polyarylate)からなる群から選択された1種以上の材質を含むことができる。
【0098】
前記多孔性基材の厚さは特に制限されないが、1ないし100μm、好ましくは5ないし50μmであってもよい。前記多孔性基材の厚さの範囲が前述した範囲に限定されるものではないが、厚さが前述した下限より薄すぎる場合は、機械的物性が低下して電池使用中に分離膜が損傷されやすい。
【0099】
前記多孔性基材に存在する気孔の平均直径及び空隙率も特に制限されないが、それぞれ0.001ないし50μm及び10ないし95%であってもよい。
【0100】
電解液
本発明による電解液はリチウム塩を含む非水系電解液であって、リチウム塩と溶媒で構成される。前記電解液は1.5g/cm未満の密度を持つ。前記電解液が1.5g/cm以上の密度を持つ場合、電解液の重さが増加することによってリチウム二次電池の高エネルギー密度を具現しがたい。
【0101】
前記リチウム塩は非水系有機溶媒に容易に溶解される物質であって、例えば、LiCl、LiBr、LiI、LiClO、LiBF、LiB10Cl10、LiB(Ph)、LiCBO、LiPF、LiCFSO、LiCFCO、LiAsF、LiSbF、LiAlCl、LiSOCH、LiSOCF、LiSCN、LiC(CFSO、LiN(CFSO、LiN(CSO、LiN(SOF)、クロロボランリチウム、低級脂肪族カルホン酸リチウム、テトラフェニルホウ酸リチウム及びリチウムイミドからなる群から一つ以上であってもよい。本発明の一具体例において、前記リチウム塩はLiTFSIなどのようなリチウムイミドが好ましい。
【0102】
前記リチウム塩の濃度は、電解液混合物の正確な組成、塩の溶解度、溶解された塩の伝導性、電池の充電及び放電条件、作業温度及びリチウム二次電池分野に公知された他の要因のような多くの要因から、0.1M、ないし8.0Mであってもよく、具体的には、0.1M以上、0.5M以上、または1.0M以上であってもよく、3.0M以下、5.0M以下、または8.0M以下であってもよい。もし、リチウム塩の濃度が前記範囲未満であれば電解液の伝導度が低くなって電池性能が低下することがあって、前記範囲超過であれば電解液の粘度が増加してリチウムイオン(Li)の移動性が減少することがあるので、前記範囲内で適正濃度を選択することが好ましい。
【0103】
前記溶媒は第1溶媒及び第2溶媒を含む。前記第1溶媒は溶媒で1重量%以上含まれた構成成分の中で単位体積当たりの最も高い双極子モーメント(dipole moment)を持つものであり、よって高い双極子モーメント(dipole moment)及び低い粘度を持つことを特徴とする。双極子モーメントが高い溶媒を使う場合、硫黄の固相反応性を改善する効果を有するが、このような効果は溶媒自体が低い粘度を持つ時優秀に発現される。本発明における第1溶媒は、下記数式2で表されるDV factorによって分けられる。
【0104】
【数8】
(前記数式2において、
DVは単位体積当たりの双極子モーメント(D・mol/L)で、
μは溶媒の粘度(cP、25℃)で、
γは100(定数)である。)。
【0105】
本発明によれば、前記DV factor値は1.75以下、好ましくは1.5以下であってもよい。本発明において、前記DV factor値の下限は特に制限されないが、実際のリチウム二次電池の駆動を考慮する時、前記DV factor値は0.1以上であってもよい。前記第1溶媒のようにDV factor値が1.75以下の溶媒を混合する場合、気孔度が低く、正極活物質である硫黄のローディング量が高い正極がリチウム-硫黄二次電池に適用された時も電解液の機能性がそのまま維持され、電池の性能が低下されない。
【0106】
本発明において、第1溶媒は上述したDV factor値の範囲に含まれれば、その種類は特に限定されないが、プロピオニトリル(Propionitrile)、ジメチルアセトアミド(Dimethylacetamide)、ジメチルホルムアミド(Dimethylformamide)、ガンマ-ブチロラクトン(Gamma-Butyrolactone)、トリエチルアミン(Triethylamine)及び1-ヨードプロパン(1-iodopropane)からなる群から選択される1種以上を含むことができる。
【0107】
前記第1溶媒は電解液を構成する溶媒の全体重量を基準にして1ないし50重量%であってもよく、具体的に1重量%以上、5重量%以上または10重量%以上であってもよく、30重量%以下、40重量%以下または50重量%以下であってもよい。本発明による溶媒が上述した重量%範囲内で第1溶媒を含む場合、気孔度が低く、正極活物質である硫黄のローディング量が高い正極とともに使った時も電池性能改善効果を示すことができる。
【0108】
本発明のリチウム二次電池は、前記SC factorと前記DV factorを組み合わせたNS factorによってさらに分けられる。前記NS factorは下記数式3で表される。
【0109】
【数9】
(前記数式3において、
SC factorは前記数式1によって定義された値と同一で、
DV factorは前記数式2によって定義された値と同一である。)。
【0110】
本発明において、前記NS factor値は3.5以下、3.0以下、または2.7以下であってもよい。本発明において、前記NS factor値の下限は特に制限されないが、実際のリチウム二次電池の駆動を考慮する時、前記NS factor値は0.1以上であってもよい。前記NS factor値を前記範囲内で調節する場合、リチウム二次電池の性能改善効果がより優れる。
【0111】
本発明において、第2溶媒はフッ素化されたエーテル系溶媒である。従来は電解液の粘度を調節するために、希釈剤(diluent)でジメトキシエタン(dimethoxyethane)、ジメチルカーボネート(dimethylcarbonate)などの溶媒が使われたが、このような溶媒を希釈剤で使う場合、本発明のような高ローディング、低気孔度の正極を含む電池を駆動することができない。よって、本発明で第2溶媒は第1溶媒とともに本発明による正極を駆動するために添加される。前記第2溶媒は該当技術分野で一般に使われるフッ素化されたエーテル系溶媒であればその種類は特に限定されないが、1H,1H,2´H,3H-デカフルオロジプロピルエーテル(1H,1H,2´H,3H-Decafluorodipropyl ether)、ジフルオロメチル2,2,2-トリフルオロエチルエーテル(Difluoromethyl 2,2,2-trifluoroethyl ether)、1,2,2,2-テトラフルオロエチルトリフルオロメチルエーテル(1,2,2,2-Tetrafluoroethyl trifluoromethyl ether)、1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピルジフルオロメチルエーテル(1,1,2,3,3,3-Hexafluoropropyl difluoromethyl ether)、ペンタフルオロエチル2,2,2-トリフルオロエチルエーテル(Pentafluoroethyl 2,2,2-trifluoroethyl ether)及び1H,1H,2´H-パーフルオロジプロピルエーテル(1H,1H,2´H-Perfluorodipropyl ether)からなる群から選択される1種以上を含むことができる。
【0112】
前記第2溶媒は電解液を構成する溶媒の全体重量を基準にして50ないし99重量%、好ましくは60ないし95重量%、より好ましくは70ないし90重量%で含むことができる。本発明による溶媒が上述した重量%範囲内で第2溶媒を含む場合、第1溶媒と同様気孔度が低く、正極活物質である硫黄のローディング量が高い正極とともに使った時も電池性能改善効果を示すことができる。前記第1溶媒と第2溶媒を混合する時、電池性能改善効果を考慮して第2溶媒は第1溶媒と同一であるか、それ以上の量が電解液に含まれることができる。本発明によれば、前記溶媒は第1溶媒及び第2溶媒を1:1ないし1:9、好ましくは3:7ないし1:9重量比(第1溶媒:第2溶媒)で含むことができる。
【0113】
本発明のリチウム-硫黄二次電池用非水系電解液は、添加剤として硝酸または亜硝酸系化合物をさらに含むことができる。前記硝酸または亜硝酸系化合物は、リチウム電極に安定的な被膜を形成し、充放電効率を向上させる効果がある。このような硝酸または亜硝酸系化合物は本発明で特に限定しないが、硝酸リチウム(LiNO)、硝酸カリウム(KNO)、硝酸セシウム(CsNO)、硝酸バリウム(Ba(NO)、硝酸アンモニウム(NHNO)、亜硝酸リチウム(LiNO)、亜硝酸カリウム(KNO)、亜硝酸セシウム(CsNO)、亜硝酸アンモニウム(NHNO)などの無機系硝酸または亜硝酸化合物;メチルナイトレート、ジアルキルイミダゾリウムナイトレート、グアニジンナイトレート、イミダゾリウムナイトレート、ピリジニウムナイトレート、エチルナイトレート、プロピルナイトレート、ブチルナイトレート、ペンチルナイトレート、オクチルナイトレートなどの有機系硝酸または亜硝酸化合物;ニトロメタン、ニトロプロパン、ニトロブタン、ニトロベンゼン、ジニトロベンゼン、ニトロピリジン、ジニトロピリジン、ニトロトルエン、ジニトロトルエンなどの有機ニトロ化合物、及びこれらの組み合わせからなる群から選択された1種が可能であり、好ましくは硝酸リチウムを使用する。
【0114】
また、前記電解液は充放電特性、難燃性などの改善を目的としてその他添加剤をさらに含むことができる。前記添加剤の例としては、ピリジン、トリエチルホスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n-グライム(glyme)、ヘキサリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N-置換オキサゾリジノン、N,N-置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アムモニウム塩、ピロール、2-メトキシエタノール、三塩化アルミニウム、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、プロペンスルトン(PRS)、ビニレンカーボネート(VC)などを挙げることができる。
【0115】
本発明によるリチウム二次電池は、下記数式4で表されるED factor値によって分けられる。
【0116】
【数10】
(前記数式4において、
VはLi/Liに対する放電公称電圧(V)で、
SC factorは前記数式1によって定義された値と同一で、
Cは0.1C rateで放電時の放電容量(mAh/g)で、
Dは電解液の密度(g/cm)である。)。
【0117】
前記ED factorはその値が高いほど実際のリチウム二次電池で高いエネルギー密度を具現することができる。本発明によれば、前記ED factor値は850以上、好ましくは870以上、より好ましくは891以上であってもよい。本発明において、前記ED factor値の上限は特に制限されないが、実際リチウム二次電池の駆動を考慮する時、前記ED factor値は10000以下であってもよい。前記ED factor値の範囲は、本発明によるリチウム二次電池が従来のリチウム二次電池より向上されたエネルギー密度を具現することができることを意味する。
【0118】
本発明のリチウム二次電池は、正極と負極の間に分離膜を配置して電極組立体を形成し、前記電極組立体は円筒状電池ケースまたは角形電池ケースに入れた後、電解質を注入して製造することができる。または、前記電極組立体を積層した後、これを電解質に含浸させて得られた結果物を電池ケースに入れて、密封して製造することもできる。
【0119】
また、本発明は前記リチウム二次電池を単位電池で含む電池モジュールを提供する。
【0120】
前記電池モジュールは、高温安定性、長いサイクル特性及び高い容量特性などが要求される中大型デバイスの電源で使われることができる。
【0121】
前記中大型デバイスの例は、電池的モーターによって動力を受けて動くパワーツール(power tool);電気自動車(electric vehicle;EV)、ハイブリッド電気自動車(hybrid electric vehicle;HEV)、プラグ-インハイブリッド電気自動車(plug-in hybrid electric vehicle;PHEV)などを含む電気車;電気自転車(E-bike)、電気スクーター(E-scooter)を含む電気二輪車;電気ゴルフカート(electric golf cart);電力貯蔵用システムなどを挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0122】
リチウム二次電池(2)
本発明の別の一具現例によるリチウム二次電池は、正極、負極、分離膜及び電解液を含むリチウム二次電池に係り、
前記正極は、前記数式1で表されるSC factor値が0.45以上で、
前記電解液は溶媒及びリチウム塩を含み、前記溶媒は前記数式2で表されるDV factor値が1.75以下である第1溶媒;及びフッ素化されたエーテル系溶媒である第2溶媒を含み、
前記正極は表面改質された炭素材を含む硫黄-炭素複合体を含み、
前記炭素材に含まれた炭素の含量は98重量%以上であってもよい。
【0123】
この時、リチウム二次電池の正極に含まれた硫黄-炭素複合体に含まれた表面改質された炭素材を除いた正極の構成、負極、分離膜及び電解液に対する内容は、前記一具現例によるリチウム二次電池で開示されたものと同一である。
【0124】
本発明の別の一具現例によるリチウム二次電池において、前記「表面改質された炭素材」とは、熱処理によって硫黄を均一に担持することができる形態で表面改質された炭素材を意味する。
【0125】
一般的な炭素材、すなわち、熱処理をしていない炭素材は炭素以外に酸素と水素を含む官能基を一緒に含むものであってもよく、前記熱処理をしていない炭素材に含まれた炭素の含量は97.5重量%以下であってもよい。また、前記酸素と水素を含む官能基は、ヒドロキシル、カルボキシ及びケトンからなる群から選択される1種以上であってもよい。前記官能基は親水性官能基であってもよい。
【0126】
前記炭素材は熱処理によって前記官能基が除去されて炭素の含量が増加し、前記熱処理された炭素材内に含まれた炭素の含量は前記炭素材の全体重量を基準にして98重量%以上であってもよい。また、前記炭素の含量は特に制限されないが、100重量%未満であってもよい。前記炭素の含量が98重量%未満であれば、炭素材表面の形態が炭素材の表面に存在する前記官能基によって硫黄の担持量が減少し、硫黄が均一に担持されがたい。
【0127】
前記炭素材は比表面積が280m/g以上、285m/g以上または290m/g以上であってもよく、500m/g以下、1000m/g以下、1500m/g以下、2000m/g以下、2500m/g以下、3000m/g以下、3500m/g以下または4500m/g以下であってもよい。この時、前記比表面積は通常のBET法を通じて測定することができる。前記微小多孔性炭素材の比表面積が前記280m/g未満の場合、硫黄との接触面積の低下による反応性低下の問題があり、これと逆に4500m/g超過の場合、過度な比表面積による副反応増加問題、及び正極スラリーを製造する時に必要なバインダー添加量が増える問題があり得る。
【0128】
前記炭素材は気孔の体積が2.3cm/g以上、2.4cm/g以上または2.5cm/g以上であってもよく、3.0cm/g以下、3.5cm/g以下、4.0cm/g以下、4.5cm/g以下または5cm/g以下であってもよい。この時、前記気孔体積は通常のBET法を通じて測定することができる。前記微小多孔性炭素材の気孔の体積が2.3cm/g未満の場合、気孔構造内に硫黄があまり含浸されないし、これと逆に5cm/g超過の場合、電極の気孔度が増加して気孔を満たすための電解液の量が増加するので、高エネルギー密度を達成しがたい問題があり得る。前記炭素材の形態は、球形、棒形、針状、板状、繊維型、チューブ型またはバルク型で、リチウム-硫黄二次電池に通常使われるものであれば制限せずに使われることができる。
【0129】
本発明の別の一具現例によるリチウム二次電池の正極において、前記熱処理によって表面改質された炭素材を含む硫黄-炭素複合体は、前記硫黄-炭素複合体は硫黄が電解質へ流出されることを減少させ、硫黄が含まれた電極の電気伝導度を高めることができる。
【0130】
前記硫黄-炭素複合体に含まれた硫黄と炭素材の含量、硫黄と炭素材の種類は、本発明の一具現例によるリチウム二次電池の正極に含まれた硫黄-炭素複合体と同一である。
【0131】
本発明の別の一具現例によるリチウム二次電池の正極において、前記熱処理された炭素を含む前記硫黄-炭素複合体は、比表面積が10m/g以上、12m/g以上、13m/g以上または14m/g以上であってもよく、15m/g以下、16m/g以下、17m/g以下または20m/g以下であってもよい。前記熱処理された炭素を含む硫黄-炭素複合体の比表面積が10m/g未満の場合は、硫黄が炭素材の表面に均一に含浸されず、セルの性能が低下するという点で好ましくないし、20m/gを超過する場合は、電極製造時のバインダー添加量が増えるという点で好ましくない。
【0132】
本発明において、前記熱処理された硫黄-炭素複合体は、気孔の体積が0.04cm/gないし1cm/gであってもよく、具体的に、0.04cm/g以上、0.05cm/g以上または0.06cm/g以上であってもよく、0.5cm/g以下、0.8cm/g以下または1cm/g以下であってもよい。前記硫黄-炭素複合体の気孔の体積が0.04cm/g未満の場合は、硫黄-炭素複合体に硫黄が含浸されず、表面に別に存在したり集まる現象が生じる点で好ましくないし、1cm/gを超過する場合は、硫黄が含浸される空間が多いにもかかわらず硫黄-複合体の気孔を活用しないため高エネルギー密度の電極製造が難しいという点で好ましくない。
【0133】
本発明の別の一具現例によるリチウム二次電池は、好ましくはSC factorが0.6ないし0.7で、ED factorが1300以上、1400以上、1500以上または1600以上であってもよい。
【0134】
本発明の別の一具現例によるリチウム二次電池において、前記硫黄-炭素複合体は熱処理によって表面改質された炭素材を使って製造されてもよく、前記熱処理によって表面改質された炭素材は前述したような炭素の含量、比表面積及び気孔面積を持つことができる。
【0135】
前記硫黄-炭素複合体は、(P1)不活性気体下で炭素材を熱処理する段階;及び(P2)前記熱処理された炭素材に硫黄を含浸する段階;によって製造されることができる。
【0136】
前記(P1)段階で熱処理温度は700℃以上、750℃以上または800℃以上であってもよく、900℃以下、950℃以下または1000℃以下であってもよい。前記熱処理温度が700℃未満であれば炭素材表面の改質が望むほど進められず、炭素の含量、比表面積及び気孔の体積の増加率が微々たるものであり、前記熱処理温度が1000℃超過であれば炭素材の物性が変性して伝導度が低下することがある。
【0137】
また、熱処理時間は1時間以上、1.5時間以上または2.5時間であってもよく、4時間以下、4.5時間以下または5時間以下であってもよいが、炭素の含量、比表面積及び気孔の体積が充分に増加するほどの時間であればこれに制限されるものではない。
【0138】
前記不活性気体は、窒素、ヘリウム、アルゴン、ネオン、クリプトン、キセノン及びラドンからなる群から選択された1種以上を含むことができ、好ましくは窒素であってもよい。
【0139】
また、前記(P2)段階では、前記熱処理された炭素材に硫黄を含浸させることがある。具体的に、前記熱処理された炭素材と硫黄を混合した後、溶融拡散法(melt difusion)方式を通じて硫黄を前記熱処理された炭素材に含浸させることがある。
【0140】
リチウム二次電池(3)
本発明のまた別の一具現例によるリチウム二次電池は、正極、負極、分離膜及び電解液を含むリチウム二次電池に係り、
前記正極は前記数式1で表されるSC factor値が0.45以上で、
前記電解液は溶媒及びリチウム塩を含み、前記溶媒は前記数式2で表されるDV factor値が1.75以下である第1溶媒;及びフッ素化されたエーテル系溶媒である第2溶媒を含み、
前記分離膜は多孔性基材及び前記多孔性基材の少なくとも一面に形成された二硫化モリブデンコーティング層を含むことができる。
【0141】
この時、正極、負極及び電解液に係わる内容は、前記一具現例によるリチウム二次電池で開示されたとおりである。
【0142】
本発明のまた別の一具現例によるリチウム二次電池において、前記分離膜は正極と負極を物理的に分離するだけでなく、リチウムポリスルフィドを吸着する役目を同時に行う分離膜であって、多孔性基材及び前記多孔性基材の少なくとも一面に形成された二硫化モリブデンコーティング層を含む。
【0143】
前記分離膜を構成する多孔性基材は、前記一具現例によるリチウム二次電池に含まれた分離膜に含まれた多孔性基材で開示されたのと同一である。
【0144】
前記分離膜は前記二硫化モリブデンコーティング層を含んでリチウムポリスルフィドを吸着することで従来のリチウム二次電池でのリチウムポリスルフィドの溶出によって発生する硫黄の流失、及びこれによる容量減少(capacity loss)問題を解決してリチウム二次電池の容量及び寿命を向上させることができ、硫黄の高ローディング時も安定的に駆動可能である。
【0145】
また、前記二硫化モリブデンは、リチウムポリスルフィドを分離膜のコーティング層に拘束してリチウムポリスルフィドのシャトル効果(shuttle effect)によって発生する負極表面での副反応、一例として負極で使われるリチウム金属と反応して界面にLiSの高抵抗層を形成したり、負極の界面でリチウムが析出されるリチウムデンドライトの成長問題を解消して電池のクーロン効率(coulomb efficiency)と寿命を改善させることができる。
【0146】
特に、リチウムデンドライトの成長問題と係わって二硫化モリブデンは層状構造を有し、200ないし500cm/V・sの面内キャリア移動度(in-plane carrier mobility)を示すので、リチウムイオンの挿入/脱挿入が容易なだけでなく、イオンの移動が容易である。よって、本発明の分離膜は二硫化モリブデンコーティング層を含むことでリチウム金属の界面抵抗を減少させ、リチウム金属の表面に一定したリチウムの流れを促進することでリチウム金属表面での電子移動速度を制御し、リチウムイオンの均一な分布をはかってリチウムデンドライトの成長を効果的に抑制することができる。
【0147】
前記二硫化モリブデンはナノシート形状であってもよく、前記ナノシートの厚さは1nm以上、2nm以上または3nm以上であってもよく、10nm以下、15nm以下または20nm以下であってもよい。
【0148】
前記二硫化モリブデンコーティング層を前記多孔性基材の一面に形成する場合、前記二硫化モリブデンコーティング層は負極または正極に対面して配置されることができ、本発明で特に限定しない。ただし、本発明のリチウム-硫黄二次電池が負極活物質でリチウム金属を含む場合、前記二硫化モリブデンコーティング層が負極に対面して配置されることが好ましい。この時、前記二硫化モリブデンコーティング層は負極と対面して形成されることで正極から拡散されたリチウムポリスルフィドとリチウム金属との間の副反応を抑制するだけでなく、リチウムデンドライトが成長することを防止して電池の寿命及び安定性を高めることができる。
【0149】
本発明のまた別の一具現例によるリチウム二次電池に含まれた分離膜で前記二硫化モリブデンコーティング層の厚さは特に限定せず、前述した効果を確保しながら電池の内部抵抗を高めない範囲を持つ。一例として、前記二硫化モリブデンコーティング層の厚さは0.1μm以上、0.2μm以上または0.3μm以上であってもよく、1μm以下、5μm以下または10μm以下であってもよい。前記二硫化モリブデンコーティング層の厚さが0.1μm未満の場合、コーティング層としての機能を行うことができず、これと逆に10μmを超過すれば界面抵抗が高くなって電池駆動時の内部抵抗の増加をもたらすことがある。
【0150】
本発明のまた別の一具現例によるリチウム二次電池に含まれた分離膜の製造方法は特に限定せず、通常の技術者によって公知の方法、またはこれを変形する様々な方法が利用可能である。
【0151】
一例として、前記分離膜の製造方法は、
(a)二硫化モリブデンを含むコーティング用組成物を製造する段階、及び
(b)前記コーティング用組成物を多孔性基材の少なくとも一面に塗布する段階を含む。
【0152】
先ず、二硫化モリブデンを含むコーティング用組成物を製造する段階(a)を行う。
【0153】
前記二硫化モリブデンは直接製造したり市販されている製品を利用することができ、これに制限されない。
【0154】
前記コーティング用組成物は前述した二硫化モリブデン以外に溶媒をさらに含むことができ、前記溶媒は前記二硫化モリブデンを溶解させることができるものであれば特に限定しない。一例として、前記溶媒は水とアルコールの混合溶媒、または一つあるいはそれ以上の有機溶媒の混合物であってもよく、この場合、前記アルコールは炭素数1ないし6の低級アルコール、好ましくはメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどであってもよい。有機溶媒では、酢酸、ジメチルホルムアミド(dimethyl formamide;DMF)、N-メチル-2-ピロリドン(N-methyl-2-pyrrolidone;NMP)ジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide;DMSO)などの極性溶媒、アセトニトリル、エチルアセテート、メチルアセテート、フルオロアルカン、ペンタン、2,2,4-トリメチルペンタン、デカン、シクロヘキサン、シクロペンタン、ジイソブチレン、1-ペンテン、1-クロロブタン、1-クロロペンタン、o-キシレン、ジイソプロピルエーテル、2-クロロプロパン、トルエン、1-クロロプロパン、コロロベンゼン、ベンゼン、ジエチルエーテル、ジエチルスルフィド、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、アニリン、ジエチルアミン、エーテル、四塩化炭素、メチレンクロリド(methylene chloride)及びテトラヒドロフラン(tetrahydrofuran;THF)などの非極性溶媒を使うこともできる。好ましくは、ジメチルホルムアミド、メチレンクロリド及びN-メチル-2-ピロリドンからなる群から選択される1種以上であってもよい。
【0155】
前記溶媒の含量は、容易にコーティングできるぐらいの濃度を持つレベルで含有されてもよく、具体的含量はコーティング方法及び装置によって変わる。一例として、前記欠陷を含む二硫化モリブデンを溶媒に分散させた後、これを混合してコーティング用組成物を製造することができ、この時、最終コーティング用組成物の濃度が0.1ないし10重量%(固形分の含量)の範囲になるように調節した後コーティングする。
【0156】
次いで、前述したコーティング用組成物を多孔性基材の少なくとも一面に塗布する段階(b)を行う。
【0157】
前記段階(b)での塗布は本発明で特に限定せず、公知の湿式コーティング方式であれば、いずれも可能である。一例として、ドクターブレード(Doctor blade)などを利用して均一に分散させる方法、ダイキャスティング(Die casting)、コンマコーティング(Comma coating)、スクリーンプリンティング(Screen printing)、減圧ろ過コーティング(vacuum filtration coating)などの方法などを挙げることができる。
【0158】
さらに、前記段階(b)以後、溶媒を除去するための乾燥工程をさらに行うことができる。前記乾燥工程は溶媒を充分に取り除くことができる水準の温度及び時間で遂行し、その条件は溶媒の種類によって変わることがあるので、本発明で特に言及しない。一例として、乾燥は30℃ないし200℃の真空オーブンで行うことができ、乾燥方法では温風、熱風、低湿風による乾燥、真空乾燥などの乾燥法を利用することができる。乾燥時間に対しては特に限定されないが、通常30秒ないし24時間の範囲で行われる。
【0159】
本発明によるコーティング用組成物の濃度またはコーティング回数などを調節して最終的に形成されるコーティング層の厚さを調節することができる。
【0160】
本発明のリチウム二次電池は正極と負極の間に分離膜を配置して電極組立体を形成し、前記電極組立体は円筒状電池ケースまたは角形電池ケースに入れた後、電解質を注入して製造することができる。または、前記電極組立体を積層した後、これを電解質に含浸させて得られた結果物を電池ケースに入れて、密封して製造することもできる。
【0161】
また、本発明は前記リチウム二次電池を単位電池で含む電池モジュールを提供する。
【0162】
前記電池モジュールは、高温安定性、長いサイクル特性及び高い容量特性などが要求される中大型デバイスの電源で使われることができる。
【0163】
前記中大型デバイスの例としては、電池的モーターによって動力を受けて動くパワーツール(power tool);電気自動車(electric vehicle;EV)、ハイブリッド電気自動車(hybrid electric vehicle;HEV)、プラグ-インハイブリッド電気自動車(plug-in hybrid electric vehicle;PHEV)などを含む電気車;電気自転車(E-bike)、電気スクーター(E-scooter)を含む電気二輪車;電気ゴルフカート(electric golf cart);電力貯蔵用システムなどを挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0164】
以下、本発明を理解しやすくするために好ましい実施例を提示するが、下記実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明の範疇及び技術思想の範囲内で様々な変更及び修正が可能であることは当業者にとって自明なことであり、このような変形及び修正が添付の特許請求の範囲に属することも当然である。
【0165】
炭素材の熱処理有無及び電解液の溶媒の種類による実験
[製造例1:表面改質された炭素材を含む硫黄-炭素複合体製造(熱処理群)]
チューブ炉(tube furnace、ハンテク、HTF-Q70)で、窒素雰囲気及び820℃の温度条件でカーボンナノチューブ(CNT)を熱処理して表面改質した。
【0166】
前記熱処理されたCNTと硫黄を30:70の重量比で混合した後、コンベクションオーブン(convention oven、ゼイオテク、OF-22)で溶融拡散法で前記熱処理されたCNTに硫黄を含浸させ、表面改質された炭素材を含む硫黄-炭素複合体を製造した。
【0167】
[比較製造例1:硫黄-炭素複合体製造(未処理群)]
熱処理されていないCNTを使ったことを除いて、製造例1と同様の方法で硫黄-炭素複合体を製造した。
【0168】
[実施例1]
(1)正極製造
前記製造例1で製造された表面改質された炭素材を含む硫黄-炭素複合体(熱処理群)90重量%、バインダーとしてスチレンブタジエンゴム/カルボキシメチルセルロース(SBR/CMC7:3)5重量%及び導電材としてデンカブラック5重量%を混合し、水に溶解させて濃度(固形分含量を基準にした濃度20%)である正極スラリーを製造した。
【0169】
前記正極スラリーをアルミニウム集電体上にコーティングして正極活物質層を形成し、乾燥及び圧延して正極を製造した。製造された正極で電極の重量と電極の厚さ(TESA社TESA-μHITE装備利用)を測定して計算された正極活物質層の空隙率は70%で、正極活物質層の単位面積当たりの硫黄の質量は4.7mg/cmであった。これに基づいて計算されたSC factor値は0.6817であった。
【0170】
(2)リチウム-硫黄二次電池製造
上述した方法で製造した正極と負極を対面するように位置させた後、厚さ20μm及び気孔度45%のポリエチレン分離膜を前記正極と負極の間に介在した。
【0171】
その後、ケースの内部に電解液を注入してリチウム-硫黄二次電池を製造した。この時、前記電解液は有機溶媒に3.0M濃度のリチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(LiTFSI)を溶解させて製造したものであり、前記有機溶媒はプロピオニトリル(第1溶媒)と1H,1H,2´H,3H-デカフルオロジプロピルエーテル(第2溶媒)を3:7の重量比(w/w)で混合した溶媒を使用した。前記第1溶媒で単位体積当たりの双極子モーメントは97.1D・mol/Lで、BROOKFIELD AMETEK社LVDV2T-CP粘度計を利用して測定した溶媒の粘度は0.38cPであった。これに基づいて計算されたDV factor値は0.39であった。製造された電池の充放電は45℃で行った。
【0172】
[比較例1]
比較製造例1で製造された硫黄-炭素複合体(未処理群)を使ったことを除いて実施例1と同様の方法でリチウム-硫黄二次電池を製造した。
【0173】
[比較例2]
比較製造例1で製造された硫黄-炭素複合体(未処理群)と比較電解液を使ったことを除いて実施例1と同様の方法でリチウム-硫黄二次電池を製造した。前記比較電解液は有機溶媒にLiNOを1重量%添加して製造したもので、前記有機溶媒はDOL(ジオキソラン)(第1溶媒)とDME(ジメトキシエタン)(第2溶媒)を5:5の体積比で混合した溶媒である(比較電解液:DOL:DME(5:5、v/v)、1.0M LiTFSI、1.0wt%のLiNO)。
【0174】
[比較例3]
比較電解液を使ったことを除いて実施例1と同様の方法でリチウム-硫黄二次電池を製造した。前記比較電解液は有機溶媒にLiNOを1重量%添加して製造したもので、前記有機溶媒はDOL(ジオキソラン)(第1溶媒)とDME(ジメトキシエタン)(第2溶媒)を5:5の体積比で混合した溶媒である(比較電解液:DOL:DME(5:5、v/v)、1.0M LiTFSI、1.0wt%のLiNO)。
【0175】
[実験例1]
製造例1及び比較製造例1でそれぞれ製造された表面改質された硫黄-炭素複合体(熱処理群)及び硫黄-炭素複合体(未処理群)の表面形状、比表面積、気孔度及び熱重量分析に対する実験を実施した。
【0176】
(1)熱処理有無による炭素材の成分分析
製造例1で熱処理されたCNT及び比較製造例1の熱処理されていないCNTの成分を分析し、その結果は下記表1に示すとおりである。成分分析は元素分析機(Elemental Analyzer、EA、Thermo ScientificTM、Flash2000)を利用した。
【0177】
【表1】
【0178】
前記表1に示されたように、CNTを熱処理すればCNT内のCの含量が増加することが分かる。
【0179】
(2)比表面積と気孔度
製造例1で製造された、熱処理されたCNT及びこれを利用した硫黄-炭素複合体(熱処理群)と比較製造例1のCNT及びこれを利用した硫黄-炭素複合体(未処理群)の比表面積及び気孔の体積を測定し、その結果は下記表2に示すとおりである。この時、比表面積(Surface area、a)及び気孔の体積(pore volume)は通常のBJH(barrettjoyner-halenda)法を利用して測定した。
【0180】
【表2】
【0181】
前記表2に示されたように、CNTを熱処理すれば比表面積と気孔の体積が増加し、熱処理されたCNTを含む硫黄-炭素複合体も比表面積と気孔の体積が増加することが分かる。
【0182】
(3)表面形状観察
図1は製造例1及び比較製造例1でそれぞれ製造された表面改質されたCNTを含む硫黄-炭素複合体(熱処理群)及びCNTを含む硫黄-炭素複合体(未処理群)の走査電子顕微鏡(SEM)写真である。SEM写真はSEM測定機器(JEOL、JSM7610F)を使って撮影したものである。
【0183】
図1を参照すれば、製造例1の硫黄-炭素複合体に比べて比較製造例1の絡まった(entangled)CNT表面に硫黄が部分的に集まっている形状を示し、これより硫黄が内部に不均一に含浸されたのが分かる。
【0184】
(4)粉体抵抗測定
図2は製造例1及び比較製造例1でそれぞれ製造された表面改質されたCNTを含む硫黄-炭素複合体(熱処理群)及びCNTを含む硫黄-炭素複合体(未処理群)の粉体抵抗測定グラフである。
【0185】
前記粉体抵抗測定グラフは、粉体抵抗測定装備(ハンテク、HPRM-FA2)を使って0~2000kgfの圧力をかけた状態で測定したパウダーの抵抗値を伝導度に換算した値を利用したものである。
【0186】
図2を参照すれば、測定された全ての圧力値で製造例1の伝導度が比較製造例1に比べて高いものと表れた。また、硫黄-炭素複合体の伝導度が高くなるにつれ電極の伝導度が向上されるので、電池駆動の際に抵抗が減少して電池性能向上を期待することができる。
【0187】
実験例2
実施例及び比較例でそれぞれ製造された正極及び二次電池に対する条件を整理し、下記表3に示す。
【0188】
実施例及び比較例で製造された電池の性能を充放電測定装置(LAND CT-2100A、武漢(Wuhan)、中国)を利用して評価した。0.1Cの速度で充電及び放電して電池性能を評価し、初放電結果に対して前記数式4に定義されたようにED factorを計算した。前記計算された結果を下記表3に示す。
【0189】
また、実施例1及び比較例1でそれぞれ製造されたリチウム-硫黄二次電池のサイクル回数によるED factor値を測定して図3に示す。
【0190】
【表3】
【0191】
前記表3及び図3を参照すれば、熱処理されて表面改質された炭素材を含む硫黄-炭素複合体と電解液(DV factor値が1.75以下である第1溶媒;及びフッ素化されたエーテル系溶媒である第2溶媒を含む電解液)を一緒に使う実施例1のED factorが相対的に高いものと表れた。
【0192】
このような結果を通じて、熱処理されて表面改質された炭素材を含む硫黄-炭素複合体は、電解液(DV factor値が1.5以下である第1溶媒;及びフッ素化されたエーテル系溶媒である第2溶媒を含む電解液)でさらに効果的な性能を示すことが分かる。
【0193】
分離膜のコーティング層形成有無及び電解液溶媒の種類による実験
[製造例2]
多孔性基材で20μmのポリエチレン(気孔度68%)フィルムを準備した。
【0194】
溶媒であるエタノールに二硫化モリブデン(シグマアルドリッチ社製)を1重量%含むコーティング用組成物を前記多孔性基材上に塗布してコーティング層を形成した後、60℃で12時間乾燥し、1μmの厚さでコーティング層が形成された分離膜を製造した。
【0195】
[実施例2]
正極活物質で硫黄-炭素複合体(S/C7:3重量部)を90重量部、導電材でデンカブラックを5重量部、バインダーでスチレンブタジエンゴム/カルボキシメチルセルロース(SBR/CMC7:3)5重量部を投入し、ミキシングして正極活物質層形成用スラリーを製造した。
【0196】
次いで、前記製造されたスラリーを20μm厚さのアルミニウム集電体上に塗布し、50℃で12時間乾燥してロールプレス(roll press)機器で圧搾して正極を製造した(正極のローディング量:6.6mAh/cm)。製造された正極で正極活物質層の空隙率は68%で、正極活物質層の単位面積当たりの硫黄の質量は4.91mg/cmであった。これに基づいて計算されたSC factor値は0.72であった。
【0197】
上述した方法で製造した正極と負極を対面するように位置させた後、これらの間に前記製造例2で製造された分離膜のコーティング層が負極と対面するように介在して電極組立体を製造した。この時、負極では60μm厚さのリチウムホイルを使った。
【0198】
次いで、前記電極組立体をケース内部に位置させた後、電解液を注入してリチウム-硫黄二次電池を製造した。この時、前記電解液は、有機溶媒に3M濃度のリチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(LiTFSI)を溶解させて製造し、ここで前記有機溶媒はプロピオニトリル(第1溶媒)と1H,1H,2´H,3H-デカフルオロジプロピルエーテル(第2溶媒)を3:7の重量比で混合した溶媒を使用した。前記第1溶媒で単位体積当たりの双極子モーメントは97.1D・mol/Lで、BROOKFIELD AMETEK社LVDV2T-CP粘度計を利用して測定した溶媒の粘度は0.38cPであった。これに基づいて計算されたDV factor値は0.39であった。製造された電池の充放電は45℃で行った。
【0199】
[比較例4]
二硫化モリブデンコーティング層を形成していない多孔性基材をそのまま分離膜で使用したことを除いては、前記実施例2と同様の方法でリチウム-硫黄二次電池を製造した。
【0200】
[比較例5]
電解液の製造条件を変更して1,3-ジオキソランとジメチルエーテルを1:1の体積比で混合した有機溶媒に1M濃度のリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)と1重量%の硝酸リチウム(LiNO)を溶解させて製造した電解液を使用したことを除いては、前記実施例2と同様の方法でリチウム-硫黄二次電池を製造した。
【0201】
実施例及び比較例の条件を整理して下記表4に示す。
【0202】
【表4】
【0203】
実験例3.走査電子顕微鏡分析
製造例2で製造した分離膜に対して走査電子顕微鏡(scanning electron microscope;SEM)で観察した。走査電子顕微鏡では日立(hitachi)社のS-4800を利用した。この時得られた結果は図4に示す。
【0204】
図4を通じて製造例2の分離膜の場合、基材上に二硫化モリブデンを含むコーティング層が均一に形成されることを確認することができる。
【0205】
実験例4.電池性能評価
充放電測定装置(LAND CT-2001A、武漢(Wuhan)、中国)を利用して初期5サイクルの間0.1Cの電流密度で充電-放電を行い、その後、0.1C充電と0.2C放電を実施しながら実施例2及び比較例4によるリチウム-硫黄二次電池のED factor値を測定した。この時得られた結果は図5に示す。
【0206】
図5に示すように、実施例2による電池のED factor値は、電流密度に構わずいずれも優れることを確認することができる。
【0207】
具体的に、二硫化モリブデンコーティング層を含む分離膜を使用した実施例2によるリチウム-硫黄二次電池は、二硫化モリブデンコーティング層を形成していない比較例4によるリチウム-硫黄二次電池に比べて高いED factor値を持つことを確認することができる。また、比較例4によるリチウム-硫黄二次電池の場合、10サイクル以後ED factor値が急激に低下する一方、実施例2によるリチウム-硫黄二次電池は35サイクルまでED factor値を安定的に維持することを確認することができる。このような結果より、本発明のリチウム-硫黄二次電池は従来のリチウム-硫黄二次電池では具現することができなかったより高いエネルギー密度を安定的に具現できると同時に寿命特性も向上されることが分かる。
図1
図2
図3
図4
図5