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特許7193636多重解像度参照画像管理を使用した映像符号化
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】多重解像度参照画像管理を使用した映像符号化
(51)【国際特許分類】
   H04N 19/59 20140101AFI20221213BHJP
   H04N 19/503 20140101ALI20221213BHJP
   H04N 19/46 20140101ALI20221213BHJP
【FI】
H04N19/59
H04N19/503
H04N19/46
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021532909
(86)(22)【出願日】2019-12-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-25
(86)【国際出願番号】 IB2019060579
(87)【国際公開番号】W WO2020115725
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2021-06-07
(31)【優先権主張番号】62/776,997
(32)【優先日】2018-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/706,675
(32)【優先日】2019-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521248394
【氏名又は名称】ベイジン、ターチア、インターネット、インフォメーション、テクノロジー、カンパニー、リミテッド
【氏名又は名称原語表記】BEIJING DAJIA INTERNET INFORMATION TECHNOLOGY CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 明
(72)【発明者】
【氏名】ワン、シャンリン
(72)【発明者】
【氏名】チェン、イ-ウェン
(72)【発明者】
【氏名】チェン、ユンフェイ
(72)【発明者】
【氏名】ウェン、シン
(72)【発明者】
【氏名】チェン、ユコン
(72)【発明者】
【氏名】ホアン、ユエ
【審査官】鉢呂 健
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-529204(JP,A)
【文献】特表2015-522988(JP,A)
【文献】特開平10-341443(JP,A)
【文献】MISRA, Kiran et al.,AHG18/21: Absolute signaling for resolution switching,Joint Collaborative Team on Video Coding (JCT-VC) of ITU-T SG16 WP3 and ISO/IEC JTC1/SC29/WG11 7th Meeting: Geneva, CH, 21-30 November, 2011, [JCTVC-G715],JCTVC-G715 (version 3),ITU-T,2011年11月19日,<URL: http://phenix.it-sudparis.eu/jct/doc_end_user/documents/7_Geneva/wg11/JCTVC-G715-v3.zip>: JCTVC-G715-ResolutionSwitching.doc: pp. 1-4
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 19/00-19/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つ以上の画像のセットを復号して、前記2つ以上の画像のセットのそれぞれの復号された画像を取得するためにすることであって、前記セットが、第1の空間解像度で符号化される第1の画像、および前記第1の空間解像度とは異なる第2の空間解像度で符号化される第2の画像を少なくとも含む、復号することと、
対応する空間解像度に基づいて、前記2つ以上の画像のセットの前記それぞれの復号された画像を復号画像バッファに格納することと、
前記復号画像バッファに格納される前記2つ以上の画像のセットの前記それぞれの復号された画像を使用して参照画像のリストを取得することと、を含み、
前記参照画像のリストは、前記それぞれの復号された画像の前記対応する空間解像度を変えることなく、前記2つ以上の画像のセットの後に続く画像を復号するために用いられ、少なくとも前記第1の空間解像度および前記第2の空間解像度で復号された画像を含む、映像復号方法。
【請求項2】
前記第1の空間解像度から前記第2の空間解像度への解像度の低下を含め、前記第2の空間解像度が、前記第1の空間解像度よりも小さく、前記方法が、水平方向にのみ前記解像度を低下させること、垂直方向にのみ前記解像度を低下させること、または水平方向および垂直方向の両方において前記解像度を低下させることをさらに含む、請求項1に記載の映像復号方法。
【請求項3】
前記方法が、画像パラメータセットを使用して、前記2つ以上の画像のセットの各画像について画像幅および画像高さをシグナリングすることをさらに含む、請求項1に記載の映像復号方法。
【請求項4】
前記シグナリングすることが、前記2つ以上の画像のセットの第1の次元におけるルマサンプルの第1の量をシグナリングすること、および前記2つ以上の画像のセットの第2の次元におけるルマサンプルの第2の量をシグナリングすることをさらに含む、請求項3に記載の映像復号方法。
【請求項5】
前記シグナリングすることが、前記2つ以上の画像のセットについて以前の画像幅および以前の画像高さに対する比の値をシグナリングすることをさらに含む、請求項3に記載の映像復号方法。
【請求項6】
前記比の値が、分子および分母を使用してシグナリングされる、請求項5に記載の映像復号方法。
【請求項7】
前記比の値が、既定の分子および分母のセットへの指標値としてシグナリングされる、請求項5に記載の映像復号方法。
【請求項8】
前記2つ以上の画像のセットの後に続く前記画像は、前記参照画像のリストの参照画像に基づいて第3の空間解像度で符号化された現在の画像を含み、前記第3の空間解像度と、前記参照画像の空間解像度との比が、前記現在の画像を復号する際に動きベクトルを調節するために決定される、請求項1に記載の映像復号方法。
【請求項9】
2つ以上の画像のセットを復号して、前記2つ以上の画像のセットのそれぞれの復号された画像を取得するように構成されるデコーダであって、前記セットが、第1の空間解像度で符号化される第1の画像、および前記第1の空間解像度とは異なる第2の空間解像度で符号化される第2の画像を少なくとも含む、デコーダと、
対応する空間解像度に基づいて、前記2つ以上の画像のセットの前記それぞれの復号された画像を格納するように構成される復号画像バッファと、を備え、
前記デコーダが、前記復号画像バッファに格納される前記2つ以上の画像のセットの前記それぞれの復号された画像を使用して参照画像のリストを取得するように構成され、
前記参照画像のリストは、前記それぞれの復号された画像の前記対応する空間解像度を変えることなく、前記2つ以上の画像のセットの後に続く画像を復号するために用いられ、少なくとも前記第1の空間解像度および前記第2の空間解像度で復号された画像を含む、映像復号装置。
【請求項10】
前記第1の空間解像度から前記第2の空間解像度への解像度の低下を含め、前記第2の空間解像度が、前記第1の空間解像度よりも小さく、前記装置が、水平方向にのみ前記解像度を低下させる、垂直方向にのみ前記解像度を低下させる、または水平方向および垂直方向の両方において前記解像度を低下させるようにさらに構成される、請求項9に記載の映像復号装置。
【請求項11】
画像パラメータセットを使用して、前記2つ以上の画像のセットの各画像について画像幅および画像高さをシグナリングするようにさらに構成される、請求項9に記載の映像復号装置。
【請求項12】
前記2つ以上の画像のセットの第1の次元におけるルマサンプルの第1の量をシグナリングし、前記2つ以上の画像のセットの第2の次元におけるルマサンプルの第2の量をシグナリングするようにさらに構成される、請求項11に記載の映像復号装置。
【請求項13】
前記2つ以上の画像のセットについて以前の画像幅および以前の画像高さに対する比の値をシグナリングするようにさらに構成される、請求項11に記載の映像復号装置。
【請求項14】
前記比の値が、分子および分母を使用してシグナリングされる、請求項13に記載の映像復号装置。
【請求項15】
前記比の値が、既定の分子および分母のセットへの指標値としてシグナリングされる、請求項13に記載の映像復号装置。
【請求項16】
前記2つ以上の画像のセットの後に続く前記画像は、前記参照画像のリストの参照画像に基づいて第3の空間解像度で符号化された現在の画像を含み、前記第3の空間解像度と、前記参照画像の空間解像度との比が、前記現在の画像を復号する際に動きベクトルを調節するために決定される、請求項9に記載の映像復号装置。
【請求項17】
1つまたは複数のプロセッサにより実行されると、前記1つまたは複数のプロセッサに請求項1~8のいずれか一項に記載の方法を実行させる、映像符号化のための一組の命令を格納する非一時的コンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年12月7日に出願された米国仮特許出願第62/776,997号に対する優先権を主張するものである。上述した出願の全開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、概して、映像符号化および圧縮に関する。より詳細には、本開示は、参照画像管理を使用して映像符号化を実施するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
この章は、本開示に関連した背景情報を提供する。この章に含まれる情報は、必ずしも先行技術と見なされるべきではない。
【0004】
様々な映像符号化技術のうちのいずれかが、映像データを圧縮するために使用され得る。映像符号化は、1つまたは複数の映像符号化規格に従って実施され得る。いくつかの例証的な映像符号化規格は、Versatile Video Coding(VVC)、Joint Exploration Test Model(JEM)、High Efficiency Video Coding(H.265/HEVC)、 Advanced Video Coding(H.264/AVC)、およびMoving Picture Experts Group(MPEG)符号化を含む。映像符号化は、一般に、ビデオ画像またはシーケンスに固有の冗長性を活用する予測方法(例えば、インター予測、イントラ予測、または同様のもの)を利用する。映像符号化技術の1つの目標は、映像品質の劣化を回避または最小限にしながら、映像データをより低いビットレートを使用する形式へ圧縮することである。
【0005】
多くのビデオコーディック仕様に準じて、復号画像バッファ(DPB)に保存される画像は、複数の目的のために、識別および管理される必要がある。例えば、これらの画像は、インター予測を実施するために参照画像として使用され得る。追加的または代替的に、これらの画像は、表示用の出力画像としての役割を果たし得る。同時に、これらの画像と関連付けられた情報はまた、時間動きベクトル導出における動きベクトル(MV)のスケーリング、および/または加重予測におけるサンプル値のスケーリングなどのような動作に使用され得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
この章は、本開示の一般的概要を提供し、その全範囲またはその特徴のすべての包括的開示ではない。
【0007】
本開示の第1の態様によると、映像符号化方法は、1つまたは複数のプロセッサ、および1つまたは複数のプロセッサによって実行されるべき複数のプログラムを格納するメモリを有するコンピューティングデバイスにおいて実施される。本方法は、2つ以上の画像のセットを符号化することを含み、このセットは、第1の空間解像度で符号化される第1の画像、および第1の空間解像度とは異なる第2の空間解像度で符号化される第2の画像を少なくとも含む。2つ以上の画像のセットは、デコーダに動作可能に結合される復号画像バッファに格納される。2つ以上の画像のセットは、それらの対応する画像解像度に基づいて復号画像バッファに格納される。復号画像バッファに格納される2つ以上の画像のセットは、2つ以上の画像のセットの後に続く1つまたは複数の連続画像を符号化するための参照画像のセットとして使用される。2つ以上の画像のセットは、少なくとも2つの異なる空間解像度を有する画像を含む参照画像リスト内に組み込まれる。
【0008】
本開示の第2の態様によると、映像符号化装置が提供される。本装置は、2つ以上の画像のセットを符号化するように構成されるコーダを含む。本セットは、第1の空間解像度で符号化される第1の画像、および第1の空間解像度とは異なる第2の空間解像度で符号化される第2の画像を少なくとも含む。2つ以上の画像のセットは、デコーダに動作可能に結合される復号画像バッファに格納される。2つ以上の画像のセットは、それらの対応する画像解像度に基づいて復号画像バッファに格納される。復号画像バッファは、2つ以上の画像のセットを格納するように構成されるコンピュータ可読記憶デバイスを含む。2つ以上の画像のセットは、第1および第2の空間解像度に基づいて復号画像バッファに格納される。2つ以上の画像のセットは、デコーダに動作可能に結合される復号画像バッファに格納される。2つ以上の画像のセットは、それらの対応する画像解像度に基づいて復号画像バッファに格納される。復号画像バッファに格納される2つ以上の画像のセットは、2つ以上の画像のセットの後に続く1つまたは複数の連続画像を符号化するための参照画像のセットとして使用される。2つ以上の画像のセットは、少なくとも2つの異なる空間解像度を有する画像を含む参照画像リスト内に組み込まれる。
【0009】
以後、本開示の例証的で非限定的な実施形態のセットが、添付の図面と併せて説明される。構造、方法、または機能性のバリエーションが、本明細書に提示される例に基づいて当業者により実施され得、またそのようなバリエーションはすべて、本開示の範囲内に含まれる。矛盾が存在しない場合、異なる実施形態の教示は、互いと組み合わされ得るが、その必要がない場合もある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】多くの映像符号化規格と併せて使用され得る例証的なエンコーダを示すブロック図である。
図2】多くの映像符号化規格と併せて使用され得る例証的なデコーダを示すブロック図である。
図3】多くの映像符号化規格と併せて使用され得るパラメータセットの例を示す図である。
図4】時間動きベクトル予測子(TVMP)を導出するための動きベクトルスケーリングを示す図である。
図5】スケーラブル映像符号化構造の例を示す図である。
図6】2つの異なる空間解像度で符号化される画像のセットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示に使用される用語は、本開示を制限するのではなく、特定の例を例証することを目的とする。単数形“a”、“an”、および“the”は、本開示ならびに添付の特許請求の範囲において使用される場合、他の意味が間違いなく文脈に含まれない限り、複数形も指す。用語「および/または」は、本明細書で使用される場合、1つまたは複数の関連付けられた列挙項目の任意またはすべての可能性のある組み合わせを指すということを理解されたい。
【0012】
用語「第1」、「第2」、「第3」などは、様々な情報を説明するために本明細書で使用され得るが、情報がこれらの用語によって制限されるべきではないということを理解されたい。これらの用語は、情報の1つのカテゴリを他から区別するためだけに使用される。例えば、本開示の範囲から逸脱することなく、第1の情報は、第2の情報と名付けられてもよく、また同様に、第2の情報もまた、第1の情報と名付けられてもよい。本明細書で使用される場合、用語「~の場合(if)」は、文脈に応じて、「とき(when)」、または「~の際(upon)」、または「~に応答して(in response to)」を意味すると理解され得る。
【0013】
本明細書全体を通した、「1つの実施形態」、「実施形態」、「別の実施形態」、または単数形もしくは複数形での同様のものへの言及は、実施形態と関連して説明される1つまたは複数の特定の特徴、構造、または特性が、本開示の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本開示全体を通した様々な場所における表現「1つの実施形態において」、または「実施形態において」、「別の実施形態において」、または単数形もしくは複数形での同様のものは、必ずしもすべて同じ実施形態に言及していない。さらには、1つまたは複数の実施形態における特定の特徴、構造、または特性は、任意の好適な様式で組み合わされてもよい。
【0014】
概念的に、多くの映像符号化規格は、背景技術の章で先に述べたものを含め、類似している。例えば、事実上すべての映像符号化規格が、ブロックベースの処理を使用し、映像圧縮を達成するために同様の映像符号化ブロック図を共有する。
【0015】
図1は、多くの映像符号化規格と併せて使用され得る例証的なエンコーダ100のブロック図を示す。エンコーダ100において、映像フレームは、処理のために複数のブロックへと区切られる。所与の映像ブロックごとに、インター予測手法またはイントラ予測手法のいずれかに基づいて予測が形成される。インター予測では、1つまたは複数の予測子が、以前に再構築されたフレームからの画素に基づいて、動き推定および動き補償を通じて形成される。イントラ予測では、予測子は、現在のフレーム内の再構築された画素に基づいて形成される。モード決定を通じて、最良の予測子が、現在のブロックを予測するために選択され得る。
【0016】
現在のブロックとその予測子との間の差を表す予測残差が、変換102モジュールに送信される。次いで変換係数が、エントロピー低減のために変換102モジュールから量子化104モジュールへ送信される。次いで量子化係数が、圧縮映像ビットストリームを生成するためにエントロピー符号化106モジュールに供給される。図1に示されるように、ブロック区切り情報、動きベクトル、参照画像インデックス、およびイントラ予測モードなどの、インター予測モジュールおよび/またはイントラ予測112モジュールからの予測関連情報110もまた、エントロピー符号化106モジュールを通じて供給され、圧縮映像ビットストリーム114に保存される。
【0017】
エンコーダ100において、デコーダ関連モジュールもまた、予測の目的のために画素を再構築するために必要とされる。まず、予測残差が、逆量子化116ブロックおよび逆変換118モジュールを通じて再構築される。この再構築された予測残差は、ブロック予測子120と組み合わされて、現在のブロックのためのフィルタリングされていない再構築画素を生成する。
【0018】
符号化効率および視覚品質を向上させるために、インループフィルタが一般に使用される。例えば、デブロッキングフィルタは、AVC、HEVC、およびVVCの現在のバージョンにおいて利用可能である。HEVCでは、SAO(Sample Adaptive Offset:サンプル適応オフセット)と呼ばれる追加のインループフィルタが、符号化効率をさらに向上させるために規定される。VVC規格の今現在のバージョンでは、ALF(Adaptive Loop Filter:適応ループフィルタ)と呼ばれるさらに別のインループフィルタが盛んに調査されており、それは、最終規格に含まれる可能性が十分にある。
【0019】
これらのインループフィルタ動作は任意選択である。これらの動作を実施することが、符号化効率および視覚品質を向上させることを助ける。それらはまた、計算複雑性を軽減するために、エンコーダ100によってもたらされる決定として、オフにされてもよい。
【0020】
イントラ予測およびインター予測のフィルタオプションがエンコーダ100によってオンにされる場合、イントラ予測は、通常、フィルタリングされていない再構築画素に基づく一方、インター予測は、フィルタリングされた再構築画素に基づくということに留意されたい。
【0021】
図2は、多くの映像符号化規格と併せて使用され得る例証的なデコーダ200を示すブロック図である。このデコーダ200は、図1のエンコーダ100に存在する再構築関連セクションに類似する。デコーダ200(図2)において、入ってくる映像ビットストリーム201は、まず、エントロピー復号化202モジュールを通じて復号されて、量子化係数レベルおよび予測関連情報を導出する。次いで量子化係数レベルが、逆量子化204ブロックおよび逆変換206モジュールを通じて処理されて、再構築予測残差を取得する。イントラ/インターモードセレクタ212ブロックに実装されるブロック予測子機構は、復号された予測情報に基づいて、イントラ予測208手順または動き補償210プロセスのいずれかを実施するように構成される。フィルタリングされていない再構築画素のセットは、加算器214を使用して、逆変換206モジュールからの再構築予測残差およびブロック予測子機構によって生成される予測出力を合計することによって取得される。インループフィルタがオンにされている状況では、フィルタリング動作が、これらの再構築画素に対して実施されて、出力のための最終再構築映像を導出する。
【0022】
ある特定のヘッダ情報の損失から生じる壊滅的な影響が理由で、パラメータセットがH.264/AVC映像符号化規格に導入された。このヘッダ情報は、シーケンスヘッダ、および/または画像ヘッダの形態で存在し得る。例えば、多くの映像符号化アプリケーションにおいて、画像は、スライスなどの複数セグメントに区切られ得、各セグメントがそれ自身のトランスポートユニット(例えば、RTPパケット)内で伝達される。通常、前述のヘッダ情報は、画像の第1のセグメントと一緒に伝達される。この場合、画像の第1のパケットの損失は、このヘッダデータの不在に起因して、完全に誤った画像をもたらし得る。
【0023】
パラメータセットは、映像ビットストリームのいずれかの部分(図1の114または図2の201)であり得るか、あるいは、信頼性の高いチャネルを使用した帯域外伝送、またはエンコーダ100(図1)およびデコーダ200(図2)内のハードコーディングなどの他の手段を通じて、デコーダによって受信され得る。図3を参照すると、パラメータセット300は各々、異なるスコープを有する異なるタイプのデータを含み得る。例えば、シーケンスパラメータセット(SPS)302は、映像シーケンスレベル情報を伝えるように規定される。画像パラメータセット(PPS)304も、画像レベル情報を伝えるように規定される。パラメータセットは、スライスヘッダ308から、直接的または間接的に参照され得る識別情報を含む。
【0024】
HEVCでは、映像パラメータセット(VPS)306と呼ばれる別のタイプのパラメータセットが、能力交換(capability exchange)およびセッションネゴシエーションに関するケースをサポートするために、複数のレイヤおよびサブレイヤに適用可能である情報を伝えるために導入された。所与の映像シーケンスの各レイヤは、それらが同じまたは異なるSPS302を有するかどうかにかかわらず、同じVPS306を参照する。
【0025】
VPS306は、1)不必要な重複を回避するために、複数のレイヤまたは動作点によって共有される共通構文要素、2)セッションネゴシエーションに必要とされる動作点の必須情報、例えば、プロファイルおよびレベル、ならびに3)単一のSPS302に属さない他の動作点特有の情報、例えば、レイヤまたはサブレイヤのための仮想参照デコーダ(HRD:Hypothetical Reference Decoder)パラメータを含む、情報を伝える。H.264/AVCは、比較可能なパラメータセットを有さず、その結果、上に列挙される情報は、各SPS302において繰り返されなければならない。
【0026】
図3に示されるように、スライスヘッダ308は、識別子pps_idを通じてPPS304を参照し得る。同様に、PPS304は、識別子sps_idを通じてSPS302を参照し得、SPSは、識別子vps_idを通じてVPSを参照し得る。
【0027】
インター予測のために、動きモデルは、所与の参照画像から予測ブロックを形成する方法を記述するように規定される。
【0028】
H.265/HEVC、H.264/AVC、および先行技術の映像符号化規格では、並進動きモデルのみが、規定され、ブロックベースの動き補償(MC)のために使用される。このモデルに基づいて、参照画素位置(x,y)が、
=x+a
=y+b
として導出され得る。
【0029】
ここで、(x,y)は、現在の画素の位置である。パラメータaおよびbは、動きベクトル(a,b)の水平および垂直成分である。そのような動きモデルは単純であり、それは、回転、ズーム、またはせん断写像(shear mapping)などの非並進運動をモデル化するために使用することができない。
【0030】
より効率的なインター予測を達成するため、より複雑なアフィン動きモデルが、最新のVVC規格では使用される。現在のところ、4パラメータおよび6パラメータの両方のアフィンモデルがサポートされている。一般的な6パラメータアフィンモデルは、以下のように表現され得る:
=a*x+b*y+c
=d*x+e*y+f
【0031】
ここで、(a,b,c,d,e,f)は、決定され、エンコーダからデコーダへ伝送されるべきパラメータである。
【0032】
単純化として、以下に示される4パラメータアフィンモデルもまた、単なる回転、ズーム、および並進の組み合わせに制限される動きを分類するために、VVCにおいてサポートされる。
=a*x+b*y+c
=-b*x+a*y+f
【0033】
4パラメータアフィンモデルは、6パラメータアフィンモデルよりも一般的ではないが、符号化され伝送されるべきパラメータが少ない。動きが回転、ズーム、および並進に制限される場合、通常、4パラメータアフィンモデルが、レートひずみ(RD:Rate Distortion)の観点から好ましい。
【0034】
HEVCでは、現在のブロックの動きベクトルは、その参照画像のうちの1つにおける動きベクトルを使用して予測され得る。そのような動きベクトル予測子は、時間動きベクトル予測子(TMVP)と呼ばれる。手順のセットは、所与の現在のブロックについてTMVPを導出するためにHEVCにおいて規定される。
【0035】
特に、このTMVPの導出において、スケーリングされた動きベクトルが、参照画像リスト内の以前に符号化された画像であるコロケーテッド画像(collocated picture)のMVから導出される。TMVPの導出において、スライスヘッダ内の明示的フラグ(collocated_from_l0_flag)は、まず、デコーダに送信されて、コロケーテッド画像が、リスト1と呼ばれる第2の参照画像リストに対して、リスト0と呼ばれる第1の参照画像リストから選択されるかどうかを示す。本開示の以下の説明において、簡単のために、リスト0は、L0とも称され、同様に、リスト1は、L1とも称される。コロケーテッド参照指数(collocated_ref_idx)がさらに、そのリスト内のどの画像がTMVPを導出するためのコロケーテッド画像として選択されるかを示すために送信される。時間動き候補のL0およびL1 MVは、表1に示されるようなコロケーテッド画像のコロケーテッドブロック内の異なるリストのMVについて、既定の順序に従って、独立して導出される。
【0036】
表1は、HEVC内のTMVPのためにコロケーテッドブロックから時間MVを導出するためのアルゴリズムの一例を示す。
【0037】
【表1】
【0038】
図4は、時間動きベクトル予測子(TVMP)を導出するための動きベクトルスケーリング手順を例示する。TMVPを導出するためのスケーリングされた動きベクトルは、点線401によって図示されるように取得され、これは、Picture Order Count(POC)距離tb403およびtd404のセットを使用してコロケーテッド予測ユニット(PU)402の選択された動きベクトルからスケーリングされ、ここで、tb403は、現在の画像の参照画像と現在の画像との間のPOC差(POC距離とも呼ばれる)であるように規定され、td404は、コロケーテッド画像の参照画像とコロケーテッド画像との間のPOC差であるように規定される。時間マージ候補の参照画像指標は、ゼロに等しく設定される。スケーリングプロセスの実用化は、HEVC仕様書に記載されている。Bスライスの場合、2つの動きベクトルが取得される。第1の動きベクトルは、参照画像リスト0のためであり、第2の動きベクトルは、参照画像リスト1のためである。第1および第2の動きベクトルは、両方向予測TMVPを構築するために組み合わされる。
【0039】
先の章で説明されたように、以前に復号/再構築された画像は、復号画像バッファ(DPB)に保存される。これらの画像は、必要とされるときにそれらが利用可能であり、もはや必要とされないときにDPBから永久に除去されるように、ある特定の規則に基づいて管理される。DPB内の画像は、インター予測のための参照画像として使用されること、および/または表示のために出力されることなど、複数の目的のために使用される。それらはまた、時間動きベクトル予測子(TMVP)を導出することにおける動きベクトルスケーリングのための、および加重予測におけるサンプル値スケーリングのための情報を提供する。
【0040】
AVCおよびHEVCの両方において、DPBに保存される画像は、画像が、復号順に連続画像を符号化するために参照画像として依然として使用されるかどうか、および/または画像が、出力(または表示)のために必要とされるかどうかを決定するために、復号参照画像マーキングプロセスを通じて管理される。画像がいずれの場合にも必要とされない場合、それは、DPBから除去され、対応するメモリ空間は、他の画像のために使用され得る。両方の規格において、参照画像は、2つのタイプ:短期参照画像および長期参照画像に分類される。
【0041】
参照画像マーキングプロセスは、AVC対HEVCにおける異なる機構を通じて達成される。H.264/AVCでは、復号参照画像マーキングのための2つの機構すなわち、黙示的なスライドウィンドウプロセスおよび明示的なメモリ管理制御動作(MMCO)プロセスが存在する。スライドウィンドウプロセスは、参照フレームの数がSPSにおいて規定された所与の最大数(max_num_ref_frames)に等しいとき、短期参照画像を「参照のために使用されていない」とマークする。短期参照画像は、最近復号された短期画像がDPB内に保持されるように、先入れ先出し方式で格納される。
【0042】
明示的なMMCOプロセスは、複数のMMCOコマンドを含み得る。MMCOコマンドは、1つまたは複数の短期または長期参照画像を「参照のために使用されていない」とマークする、すべての画像を「参照のために使用されていない」とマークする、または、現在の参照画像もしくは既存の短期参照画像を長期としてマークし、長期参照画像指数をその長期参照画像に割り当て得る。
【0043】
H.265/HEVCでは、参照画像セット(RPS)を通じた参照画像管理のための完全に異なる手法が導入された。特定のスライスごとに、RPSは、現在の画像または任意の後続の画像によって使用される参照画像の完全なセットを規定する。参照画像のこのセットはすべて、DPB内に保持されることになる。H.264/AVCにおける機構とは異なり、RPS概念では、DPB内の参照画像の正しいステータスを維持するために復号順でのより前の画像からの情報の必要性はない。
【0044】
通信チャネルの利用可能な帯域幅における一時的変動に適応するために、ビットストリームの映像解像度を変えることが望ましい場合がある。これは、サイマルキャスト(simulcast)またはスケーラブル映像符号化のいずれかを通じて達成され得る。
【0045】
サイマルキャストの場合、同じ映像のためのものであるが異なる空間解像度を有するビットストリームが、別々に生成され、ブロードキャスト方式で同時に送信され得る。受信デバイスは、受信デバイスの帯域幅に基づいて、異なる解像度にあるビットストリーム間で適応的に選択し得る。そのような解像度切り替えは、通常、ランダムアクセスポイントとしての役割を果たし得るキー画像(例えば、IDR画像)の位置で発生する。
【0046】
スケーラブル映像符号化において、同じ映像のためのものであるが異なる空間解像度を有するビットストリームは、レイヤ方式で合同で生成され、各レイヤが異なる映像解像度に対応する。そのようなジョイント符号化を通じて、これらの異なる解像度映像間のある特定の相関が、ビットレートを低減するためにさらに利用され得る。
【0047】
図5は、スケーラブル映像符号化構造の例を示す。この例では、2つのレイヤが存在し、基本レイヤ501および拡張レイヤ502とそれぞれ称され得る。この例では、基本レイヤ501は、拡張レイヤ502よりも低い空間解像度および低い時間解像度の両方を有する。サイマルキャストと比較して、レイヤ間予測(垂直の矢印によって示される)が、拡張レイヤ502符号化効率を向上させるためにサポートされ得る。
【0048】
H.264/AVCのスケーラブル映像符号化プロファイルによると、いくつかの項目のうちのいずれかは、コロケーテッド基本レイヤ501ブロックからのレイヤ間予測のために使用され得る。これらの項目は、イントラ予測された領域内の再構築画素、動きベクトル、および/またはブロックテクスチャ予測残差を使用することを含む。加えて、コロケーテッド基本レイヤ501ブロックからの項目は、基本レイヤ501および拡張レイヤ502が異なる空間解像度を有するときに適切にアップサンプリングおよび/またはスケーリングされる必要がある。この場合、アップサンプリング/スケーリングされた中間データを格納するために追加のバッファが必要とされ得る。レイヤ間予測のために必要とされる任意の追加のバッファを除き、各レイヤは、それ自身のDPBを有する。
【0049】
サイマルキャストの場合のように、スケーラブル映像符号化におけるより低い空間解像度からより高い空間解像度へのビットストリーム切り替えは、ランダムアクセスポイントとしての役割を果たし得るキー画像(例えば、IDR画像)の位置で発生し得る。基本レイヤ501は常に必要とされるため、拡張レイヤ502から基本レイヤ501への切り替えは、いかなる画像位置でも発生し得る。
【0050】
AOMedia Video 1(AV1)は、2015年に創業された、半導体産業、ビデオオンデマンドプロバイダ、およびウェブブラウザデベロッパからの企業のコンソーシアム、Alliance for Open Media(AOMedia)によって開発されたオープンなロイヤリティフリーの映像符号化フォーマットである。
【0051】
AV1では、「フレーム超解像」と呼ばれる特徴がサポートされる。この符号化モードによると、画像は、より低い空間解像度で符号化され、次いで、参照バッファのセットを更新する前に、最大解像度へ規範的にインループで超解像される。そのような方法は、非常に低いビットレートで知覚的利点を提供することが知られている。動作を計算的に扱いやすいものに保つため、超解像プロセスは、線形アップスケーリングへ分解され、その後に、より高い空間解像度でウィーナーフィルタに基づいたループ復旧ツールを適用することが続く。さらに、ラインバッファ内のオーバーヘッドなしに、費用対効果の高いハードウェア実装を可能にするために、アップスケーリング/ダウンスケーリングは、水平にのみ動作するように制約される。
【0052】
H.264/AVCおよびH.265/HEVCなどの既存の映像符号化規格では、映像は、一定の空間解像度で符号化される。この空間解像度が、より低いビットレートシナリオおよび/またはより低い利用可能帯域幅に適応するために低減される必要がある状況においては、ランダムアクセスをサポートすることができる画像(例えば、IDR画像)が、IDR画像と一緒にシグナリングされることになる新規のパラメータセット情報(例えば、SPS、PPSなど)と共に必要とされる。この機構の問題は、画像がイントラ符号化されるため、通常、IDR画像を送信するのに非常にコストがかかることである。より低いビットレートがIDR画像に対して強いられる場合、その視覚品質は、著しく損なわれる場合がある。
【0053】
AVCおよび/またはHEVCのスケーラブル延長プロファイルにより、空間解像度は、より低いビットレートシナリオに適応するために基本レイヤ501画像ビットストリームを保持するだけで、低減され得る。しかしながら、スケーラブル映像符号化は、マルチレイヤを伴う。その符号化効率は、通常、単一レイヤを符号化するほどは効率的ではない。マルチレイヤ復号(およびいくつかの場合においては、マルチレイヤ動き補償)がサポートされなければならないため、デコーダ複雑性がより高い。デコーダ側でのそのような更なる複雑性は、実際には非常に望ましくない。
【0054】
AV1では、そのようなケースは、フレーム超解像の符号化モードを通じてはるかに良好にサポートされる。この場合、フレーム解像度低減は、インター予測画像を含め、いかなる所与の画像位置でも発生し得る。しかしながら、それは、DPB内の画像がすべて同じ空間解像度を有するようにするために、フレームアップスケーリングプロセスを必要とし、その後に超解像プロセスが続いてから、将来の使用のために再構築画像をDPBに保存する。
【0055】
本開示によると、画像は、任意の画像位置において異なる空間解像度で符号化され得る。空間解像度における変化は、任意の画像位置において発生し得、ランダムアクセスをサポートする画像(例えば、IDR画像)で発生する必要はない。加えて、再構築画像をスケーリングして元の映像解像度に戻すために必要とされるアップスケーリングプロセスおよび超解像プロセスは存在しない。代わりに、再構築画像は、どんな画像解像度でそれらが符号化されるかに関係なく、DPBに直接保存される。
【0056】
画像解像度の低下は、水平方向に制限されない。それは、水平方向および垂直方向の両方において発生し得る。
【0057】
図6は、2つの異なる空間解像度で符号化される画像のセットを例示する。例えば、本開示の教示に基づいて、DPBバッファは、少なくとも2つの異なる空間解像度を有する画像を含み得る。図6に示されるように、画像がK、K+1、…K+6…というそれらの時間的順序に従って符号化されると仮定して、画像は、必要とされるときにはいつでも、ビットレートを節約するために空間的に低下され得る。この例では、Kで示される第1の画像601、およびK+1で示される第2の画像602は、両方とも第1の空間解像度にある。しかしながら、K+2で示される第3の画像603は、より低いビットレートに適応するために、第1の解像度よりも低い第2の空間解像度へ縮小される。これは、例えば、通信チャネル上の利用可能帯域幅の減少に起因して発生し得る。第4の画像604(K+3)、第5の画像605(K+4)、および第6の画像606(K+5)はすべて、第2の(より低い)空間解像度で符号化される。第7の画像607(K+6)では、通信チャネル帯域幅が十分に改善し、第7の画像607は、第1および第2の画像601および602に適用された第1の(より高い)解像度で符号化され得る。
【0058】
本開示において、画像は、いかなる更なるアップスケーリングおよび/または超解像もせずに、それらが符号化され、DPBに直接保存される解像度へと再構築される。図6に示される例では、第3、第4、第5、および第6の画像603、604、605、および606(K+2、K+3、K+4、およびK+5)はすべて、第2の(より低い)空間解像度でDPBに保存される一方、第1、第2、および第7の画像601、602、および607(K、K+1、およびK+6)は、第1の(より高い)解像度でDPBに保存される。言い換えると、セット内の第1の空間解像度を有する画像は、第1の空間解像度で直接復号画像バッファに格納され、セット内の第2の空間解像度を有する画像は、第2の空間解像度で直接復号画像バッファに格納される。その結果、復号画像バッファは、異なる空間解像度を有する画像を格納する。1つまたは複数の例において、復号画像バッファは、通信チャネル内の異なる利用可能帯域幅に基づいて、画像をそれらの元の空間解像度で格納する。
【0059】
したがって、本開示によると、参照画像リストは、異なる空間解像度を有する画像を含み得る。そのような特徴は、根本にある復号参照画像マーキングプロセスに直交するということは言及するに値する。例えば、それは、H.264/AVCにおけるスライドウィンドウまたはMMCOプロセスと一緒に使用され得る。それはまた、H.265/HEVCにおけるRPSおよびその関連参照画像リスト生成プロセスと一緒に使用され得る。
【0060】
参照画像リスト内で異なる空間解像度画像を可能にするための主な動機は、VVCにおけるより複雑な動きモデルの可用性である。例えば、アフィン予測により、良好な予測を達成することに必要とされるズーム効果は、参照画像が、符号化されている現在の画像とは異なる空間解像度を有するときに自動的に操作される。
【0061】
HEVCにおいて、画像幅および高さは、SPS302(図3)内のビデオシーケンスレベルでシグナリングされ、ビデオシーケンス内のすべての画像は同じサイズを有すると仮定される。本開示によると、画像幅および画像高さは、例えばPPS304内で、直接的および/または間接的に画像レベルでシグナリングされる。元の映像解像度は、依然として、例えばSPS302内で、シーケンスレベルでシグナリングされ得る。
【0062】
そのようなシグナリングは、様々な形態をとり得る。例えば、PPS304内で、画像幅および高さは、各次元に沿っていくつのルマサンプル値(luma sample values)があるかに関してシグナリングされ得る。代替的または追加的に、ルマサンプル値は、元のビデオ画像幅および高さに対する比の値として、PPS304内でシグナリングされ得る。例えば、そのような比の値は、1/4、1/2、3/4、および1.0などであり得る。これらの比の値は、分母および分子としてシグナリングされ得る。それらはまた、既定の分母および分子のセットへの指標値としてシグナリングされ得る。
【0063】
本開示によると、動きベクトルスケーリングは、画像POC差に加えて、画像解像度に基づき得る。例えば、画像空間解像度の相対比率に応じて、動きベクトルスケーリングは、それに従って調節され得る。
【0064】
本開示によると、参照画像が、符号化されている現在の画像とは異なる空間解像度を有する状況では、グローバル動きベクトルが、これら2つの空間解像度に基づいて導出されて、異なる空間解像度を有することに起因するこれら2つの画像間のズーム効果に少なくとも対処し得る。
【0065】
符号化されるべき現在の画像について、グローバル動きベクトルが、参照画像ごとに導出され得る。現在の画像内のブロックごとに復号および/またはシグナリングされる動きベクトルは、復号および/またはシグナリングされる動きベクトルのための対応する参照画像と関連付けられたグローバル動きベクトルを使用して予測されたと仮定される。その結果、現在のブロックについての実際の動きベクトルは、ブロックのシグナリングされた動きベクトルおよびグローバル動きベクトルから合同で導出される。
【0066】
符号化されるべき現在の画像が参照画像と同じ空間解像度を有する状況では、グローバル動きベクトルは、その参照画像で使用するために必要とされない場合がある。
【0067】
グローバル動きベクトルは、様々な動きモデルを使用し得る。例えば、それは、上で述べた異なる画像間のズーム効果を伝えるためにアフィン動きモデルを使用し得る。それはまた、ズーム効果を伝えるために他の動きモデルを使用し得る。
【0068】
本開示によると、そのようなグローバル動きベクトルは、デコーダへビットストリーム内で明示的にシグナリングされる必要はない。代わりに、それは、エンコーダ側およびデコーダ側の両方において同じ規則セットに基づいて導出され得る。同じ規則セットは、グローバル動きベクトルを決定する因子の1つとして少なくとも画像空間解像度を含み得る。
【0069】
本開示の別の実施形態によると、参照画像ごとのグローバル動きベクトルは、デコーダへビットストリーム内でシグナリングされ得る。そのようなシグナリングはまた、様々な形態をとり得る。例えば、グローバル動きベクトルの各々が、動きベクトルとして直接的にシグナリングされ得る。グローバル動きベクトルの各々はまた、水平および垂直の次元に沿ったスケーリング比としてシグナリングされ得る。代替的に、グローバル動きベクトルの各々はまた、既定の動きベクトルおよび/またはスケーリング比のセットへの指標値としてシグナリングされ得る。
【0070】
本開示によると、DPB内のより低い/より高い解像度画像を現在の画像の空間解像度へアップサンプリング/ダウンサンプリングする必要はないが、フィルタのセットが、より良好な動き補償予測またはより良好な表示のために使用されるべき好ましい画像アップサンプリング/ダウンサンプリングフィルタを示すために、依然としてデコーダにシグナリングされ得る。そのようなシグナリングは、ヘッダ情報内、またはSPS302およびPPS304内に置かれ得る。それはまた、SEI(補足エンハンスメント情報)としてシグナリングされ得る。
【0071】
いくつかの例では、2つ以上の画像のセットは、ランダムアクセスをサポートするいかなる画像も含まない。
【0072】
いくつかの例では、第1の空間解像度から第2の空間解像度への解像度の低下を含め、第2の空間解像度は、第1の空間解像度よりも小さく、本方法は、水平方向にのみ解像度を低下させること、垂直方向にのみ解像度を低下させること、または水平方向および垂直方向の両方において解像度を低下させることをさらに含む。
【0073】
いくつかの例では、本方法は、動的に変化する帯域幅容量を有する通信チャネル上で、符号化された2つ以上の画像のセットを送信すること、および通信チャネルの帯域幅容量が減少することに応答して、第2の空間解像度を第1の空間解像度より小さくなるように設定することをさらに含む。
【0074】
いくつかの例では、本方法は、動的に変化する帯域幅容量を有する通信チャネル上で、符号化された2つ以上の画像のセットを送信すること、および通信チャネルの帯域幅容量が増加することに応答して、第2の空間解像度を第1の空間解像度より大きくなるように設定することをさらに含む。
【0075】
いくつかの例では、2つ以上の画像のセットは、異なる空間解像度を有する画像を含む参照画像リストを含む。
【0076】
いくつかの例では、アフィン予測は、2つ以上の画像のセットのための強化されたズーム効果を提供するために使用され、参照画像リストは2つ以上の画像を含み、各画像は、現在符号化されている新規画像とは異なる空間解像度を有する。
【0077】
いくつかの例では、本方法は、画像パラメータセットを使用して、2つ以上の画像のセットの各画像について画像幅および画像高さをシグナリングすることをさらに含む。
【0078】
いくつかの例では、本方法は、2つ以上の画像のセットの第1の次元におけるルマサンプルの第1の量をシグナリングすること、および2つ以上の画像のセットの第2の次元におけるルマサンプルの第2の量をシグナリングすることによって、画像幅および画像高さをシグナリングすることをさらに含む。
【0079】
いくつかの例では、本方法は、2つ以上の画像のセットについて以前の画像幅および以前の画像高さに対する比の値をシグナリングすることによって、画像幅および画像高さをシグナリングすることをさらに含む。いくつかの例では、比の値は、分子および分母としてシグナリングされる。いくつかの例では、比の値は、既定の分子および分母のセットへの指標値としてシグナリングされる。
【0080】
いくつかの例では、本方法は、動きベクトルスケーリングを実施すること、および第1の空間解像度と第2の空間解像度との差に応答して、動きベクトルスケーリングを調節することをさらに含む。
【0081】
いくつかの例では、本方法は、第1の画像と第2の画像との間のズーム効果に対処するために、第1の空間解像度および第2の空間解像度に基づいてグローバル動きベクトルを導出することを含む。
【0082】
いくつかの例では、本方法は、2つ以上の画像のセット内の対応する画像ごとにそれぞれのグローバル動きベクトルを導出することであって、2つ以上の画像のセットが、参照画像のセットを含み、2つ以上の画像のセット内の各画像が、複数のブロックを含む、導出すること、および2つ以上の画像のセットの複数のブロックのブロックごとに、シグナリングされた動きベクトルを復号することをさらに含む。シグナリングされた動きベクトルは、2つ以上の画像のセット内の対応する画像と関連付けられたそれぞれのグローバル動きベクトルを使用して予測される。現在の画像の現在のブロックについての実際の動きベクトルは、シグナリングされた動きベクトルおよびグローバル動きベクトルから合同で導出される。
【0083】
いくつかの例では、本方法は、第1の画像と第2の画像との間のズーム効果を伝えるためにアフィン動きモデルを使用することをさらに含む。
【0084】
いくつかの例では、本方法は、デコーダおよびコーダの両方において適用されている同じ規則セットに基づいて、デコーダにおいて各々それぞれのグローバル動きベクトルを導出することをさらに含む。同じ規則セットは、第1の空間解像度および/または第2の空間解像度のうちの少なくとも一方を考慮する。
【0085】
いくつかの例では、本方法は、水平次元に沿った第1のスケーリング比および垂直次元に沿った第2のスケーリング比を使用して、各々それぞれのグローバル動きベクトルをシグナリングすることをさらに含む。
【0086】
いくつかの例では、本方法は、既定の動きベクトルまたはスケーリング比のセットへインデックス化する指標値のセットを使用して、各々それぞれのグローバル動きベクトルをシグナリングすることをさらに含む。
【0087】
いくつかの例では、本方法は、ヘッダ情報、補足エンハンスメント情報、画像パラメータセット、またはシーケンスパラメータセットのうちの少なくとも1つを使用することによって、選択されたフィルタをシグナリングすることをさらに含む。
【0088】
いくつかの例では、2つ以上の画像のセットは、ランダムアクセスをサポートするいかなる画像も含まない。
【0089】
いくつかの例では、第1の空間解像度から第2の空間解像度への解像度の低下を含め、第2の空間解像度は、第1の空間解像度よりも小さく、本装置は、水平方向にのみ解像度を低下させるため、垂直方向にのみ解像度を低下させるため、または水平方向および垂直方向の両方において解像度を低下させるようにさらに構成される。
【0090】
いくつかの例では、本装置は、動的に変化する帯域幅容量を有する通信チャネル上で、符号化された2つ以上の画像のセットを送信するように構成される、および通信チャネルの帯域幅容量が減少することに応答して、第2の空間解像度を第1の空間解像度より小さくなるように設定するように構成されるデータ送信器をさらに含む。
【0091】
いくつかの例では、本装置は、動的に変化する帯域幅容量を有する通信チャネル上で、符号化された2つ以上の画像のセットを送信するように構成される、および通信チャネルの帯域幅容量が増加することに応答して、第2の空間解像度を第1の空間解像度より大きくなるように設定するように構成される、データ送信器をさらに含む。
【0092】
いくつかの例では、2つ以上の画像のセットは、異なる空間解像度を有する画像を含む参照画像リストを含む。
【0093】
いくつかの例では、アフィン予測手順は、2つ以上の画像のセットのための強化されたズーム効果を提供するために実施され、参照画像リストは2つ以上の画像を含み、各画像は、現在符号化されている新規画像とは異なる空間解像度を有する。
【0094】
いくつかの例では、本装置は、画像パラメータセットを使用して、2つ以上の画像のセットの各画像について画像幅および画像高さをシグナリングするように構成される送信器をさらに含む。いくつかの例では、送信器は、2つ以上の画像のセットの第1の次元におけるルマサンプルの第1の量をシグナリングし、2つ以上の画像のセットの第2の次元におけるルマサンプルの第2の量をシグナリングすることによって、画像幅および画像高さをシグナリングするようにさらに構成される。いくつかの例では、送信器は、2つ以上の画像のセットについて以前の画像幅および以前の画像高さに対する比の値をシグナリングすることによって、画像幅および画像高さをシグナリングするようにさらに構成される。
【0095】
いくつかの例では、比の値は、分子および分母としてシグナリングされる。
【0096】
いくつかの例では、比の値は、既定の分子および分母のセットへの指標値としてシグナリングされる。
【0097】
いくつかの例では、本装置は、動きベクトルスケーリングを実施し、第1の空間解像度と第2の空間解像度との差に応答して、動きベクトルスケーリングを調節するようにさらに構成される。
【0098】
いくつかの例では、本装置は、第1の画像と第2の画像との間のズーム効果に対処するために、第1の空間解像度および第2の空間解像度に基づいてグローバル動きベクトルを導出するようにさらに構成される。
【0099】
いくつかの例では、本装置は、2つ以上の画像のセット内の対応する画像ごとにそれぞれのグローバル動きベクトルを導出することであって、2つ以上の画像のセットが、参照画像のセットを含み、2つ以上の画像のセット内の各画像が、複数のブロックを含む、導出すること、および2つ以上の画像のセットの複数のブロックのブロックごとに、シグナリングされた動きベクトルを復号することのようにさらに構成される。シグナリングされた動きベクトルは、2つ以上の画像のセット内の対応する画像と関連付けられたそれぞれのグローバル動きベクトルを使用して予測される。現在の画像の現在のブロックについての実際の動きベクトルは、シグナリングされた動きベクトルおよびグローバル動きベクトルから合同で導出される。
【0100】
いくつかの例では、本装置は、第1の画像と第2の画像との間のズーム効果を伝えるために、アフィン動きモデルを使用するようにさらに構成される。
【0101】
いくつかの例では、本装置は、デコーダおよびコーダの両方において適用されている同じ規則セットに基づいて、各々それぞれのグローバル動きベクトルを導出するように構成されるデコーダをさらに含む。同じ規則セットは、第1の空間解像度または第2の空間解像度のうちの少なくとも一方を考慮する。
【0102】
いくつかの例では、本装置は、水平次元に沿った第1のスケーリング比および垂直次元に沿った第2のスケーリング比を使用して、各々それぞれのグローバル動きベクトルをシグナリングするようにさらに構成される。
【0103】
いくつかの例では、本装置は、既定の動きベクトルまたはスケーリング比のセットへインデックス化する指標値のセットを使用して、各々それぞれのグローバル動きベクトルをシグナリングするようにさらに構成される。
【0104】
いくつかの例では、本装置は、ヘッダ情報、補足エンハンスメント情報、画像パラメータセット、またはシーケンスパラメータセットのうちの少なくとも1つを使用することによって、選択されたフィルタをシグナリングするようにさらに構成される。
【0105】
1つまたは複数の例において、説明される機能は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームフェア、またはそれらの任意の組み合わせで実装され得る。ソフトウェアで実装される場合、機能は、1つまたは複数の命令またはコードとして、コンピュータ可読媒体に格納されるか、またはそれを通じて伝送され、ハードウェアベースの処理ユニットによって実行され得る。コンピュータ可読媒体は、データ記憶媒体などの有形媒体に対応するコンピュータ可読記憶媒体、または、例えば、通信プロトコルに従って、1つの場所から別の場所へのコンピュータプログラムの転送を促進する任意の媒体を含む通信媒体を含み得る。このように、コンピュータ可読媒体は、一般的に、(1)非一時的である有形のコンピュータ可読記憶媒体、または(2)信号もしくは搬送波などの通信媒体に対応し得る。データ記憶媒体は、本出願に記載される実装形態の実施のために命令、コード、および/またはデータ構造を取得するために、1つもしくは複数のコンピュータまたは1つもしくは複数のプロセッサによってアクセスされ得る任意の利用可能な媒体であり得る。コンピュータプログラム製品は、コンピュータ可読媒体を含み得る。
【0106】
さらに、上の方法は、特定用途向け集積回路(ASIC)、デジタル信号プロセッサ(DSP)、デジタル信号処理デバイス(DSPD)、プログラマブル論理デバイス(PLD)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、コントローラ、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、または他の電子部品を含む、1つまたは複数の回路を含む装置を使用して実施され得る。本装置は、上述の方法を実施するための他のハードウェアまたはソフトウェア構成要素と併せて回路を使用し得る。上に開示される各モジュール、サブモジュール、ユニット、またはサブユニットは、1つまたは複数の回路を使用して少なくとも部分的に実施され得る。
【0107】
本発明の他の実施形態は、本明細書の検討およびここに開示される発明の実践から、当業者には明らかであろう。本出願は、本発明の一般原則に従う本発明のいかなるバリエーション、使用、または適合も網羅することが意図され、本開示からのそのような発展を、当該技術分野における既知または慣習的な実践内に入るものとして含む。本明細書および例は、例示にすぎないと考えられることが意図され、本発明の真の範囲および趣旨は以下の特許請求の範囲によって示される。
【0108】
本発明は、上に説明される、および添付の図面において図示される正確な例に限定されないこと、ならびに様々な変形および変更が本発明の範囲から逸脱することなくなされ得ることを理解されたい。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6