(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】遠心分離機
(51)【国際特許分類】
B04B 1/08 20060101AFI20221213BHJP
B04B 7/08 20060101ALI20221213BHJP
B04B 7/14 20060101ALI20221213BHJP
B04B 9/12 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
B04B1/08
B04B7/08
B04B7/14
B04B9/12
(21)【出願番号】P 2021532954
(86)(22)【出願日】2019-12-09
(86)【国際出願番号】 EP2019084149
(87)【国際公開番号】W WO2020120365
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-08-03
(32)【優先日】2018-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2018-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2019-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】509005513
【氏名又は名称】アルファ-ラヴァル・コーポレート・アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】カスパー・ホグルンド
【審査官】谷本 怜美
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第02567754(EP,A1)
【文献】特開昭62-254855(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03384993(EP,A1)
【文献】国際公開第2015/181177(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B04B 1/00-15/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の不動部分(3)と、
第2の不動部分(4)と、
分離円板の積み重ね(19)が回転の軸(X)の周りに回転するように配置される分離空間(17)を包囲する回転子ケーシング(2)であって、軸方向において
前記第1の不動部分(3)と
前記第2の不動部分(4)との間に配置される回転子ケーシング(2)と、
分離される流体混合物の前記分離空間(17)への供給のための送り込み入口(20)と、
第1の密度の分離相の排出のための軽量相出口(21)、および、前記第1の密度より大きい第2の密度の分離相の排出のための重量相出口(22)であって、前記送り込み入口(20)、前記軽量相出口、および前記重量相出口のうちの2つは、前記回転子ケーシング(2)の第1の軸方向端(5)に配置される、軽量相出口(21)および重量相出口(22)と、
前記送り込み入口、前記軽量相出口、および前記重量相出口のうちの前記2つを、前記第1の不動部分(3)において、対応する入口導管および/または出口導管に封止して連結する第1の封止組立体と
を備えた、流体混合物を分離するための、遠心分離機(100)のための交換可能な分離挿入体(1)において、
前記第1の封止組立体(15)が、前記回転子ケーシング(2)に取り付けられる回転可能部(15b)と、前記第1の不動部分(3)に取り付けられる不動部(15a)とを備え、
前記回転可能部(15b)と前記不動部(15a)とは軸方向に整列されて互いに接して封止され、
前記送り込み入口(20)、前記軽量相出口、および前記重量相出口のうちの前記2つのうちの第1のものが、軸方向で前記回転の軸に配置され、前記送り込み入口(20)、前記軽量相出口、および前記重量相出口のうちの前記2つのうちの第2のものは、前記送り込み入口(20)、前記軽量相出口、および前記重量相出口のうちの前記2つのうちの前記第1のものと前記第2のものとの両方が前記回転可能部(15b)を通じて導かれ、前記対応する入口導管および/または出口導管が前記第1の封止組立体(15)の前記不動部(15a)を通じて導かれるような手法で、前記送り込み入口(20)、前記軽量相出口、および前記重量相出口のうちの前記2つのうちの前記第1のものの軸方向外側に配置されていることを特徴とする、遠心分離機(100)のための交換可能な分離挿入体(1)。
【請求項2】
前記軽量相出口(21)が、前記第1の軸方向端(5)に配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の遠心分離機(100)のための交換可能な分離挿入体(1)。
【請求項3】
前記送り込み入口(20)が、前記第1の軸方向端(5)に配置されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の遠心分離機(100)のための交換可能な分離挿入体(1)。
【請求項4】
不動の前記重量相出口が、前記第1の軸方向端に配置されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の遠心分離機(100)のための交換可能な分離挿入体(1)。
【請求項5】
前記回転可能部(15b)が、前記送り込み入口(20)のための中心孔と、前記軽量相出口または前記重量相出口(21)の一方のための少なくとも1つの出口孔とを伴う板形成された封止要素であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の遠心分離機(100)のための交換可能な分離挿入体(1)。
【請求項6】
前記不動部(15a)が、2つの同心で配置されて環状に形成された封止要素(15f、15g)を備えていることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の遠心分離機(100)のための交換可能な分離挿入体(1)。
【請求項7】
環状に形成された前記封止要素(15f)の内側は、中心孔の軸方向外側および少なくとも1つの出口孔の軸方向内側で前記回転可能部(15b)と係合するように配置されていることを特徴とする、請求項6に記載の遠心分離機(100)のための交換可能な分離挿入体(1)。
【請求項8】
少なくとも1つの流体連結部(15d、15e)が、2つの環状に形成された前記封止要素(15f)の少なくとも内側の中に形成されていることを特徴とする、請求項6または7に記載の遠心分離機(100)のための交換可能な分離挿入体(1)。
【請求項9】
2つの環状に形成された前記封止要素(15f)の少なくとも内側が、前記第1の封止組立体(15)の前記回転可能部(15b)を向くその表面において凹部(28)を有し、前記凹部(28)が少なくとも1つの前記流体連結部(15d、15e)に連結されていることを特徴とする、請求項8に記載の遠心分離機(100)のための交換可能な分離挿入体(1)。
【請求項10】
少なくとも1つの前記流体連結部(15d、15e)が、前記凹部(28)のうちの少なくとも1つに流体を供給するための封止流体入口(15d)を備えていることを特徴とする、請求項9に記載の遠心分離機(100)のための交換可能な分離挿入体(1)。
【請求項11】
少なくとも1つの前記流体連結部(15d、15e)が、前記凹部(28)のうちの少なくとも1つから流体を除去するための封止流体出口(15e)も備えていることを特徴とする、請求項10に記載の遠心分離機(100)のための交換可能な分離挿入体(1)。
【請求項12】
前記封止流体入口(15d)と前記封止流体出口(15e)とは、閉循環システム(37)を形成する容器(36)に両方とも取り付けられていることを特徴とする、請求項11に記載の遠心分離機(100)のための交換可能な分離挿入体(1)。
【請求項13】
ポンプ(38)が、液体を前記第1の封止組立体(15)に供給するために前記封止流体入口(15d)に配置されていることを特徴とする、請求項12に記載の遠心分離機(100)のための交換可能な分離挿入体(1)。
【請求項14】
容器(36)が、液体を前記第1の封止組立体(15)に供給するために予め加圧されていることを特徴とする、請求項11に記載の遠心分離機(100)のための交換可能な分離挿入体(1)。
【請求項15】
不動フレーム(30)と、前記不動フレーム(30)に軸支される回転可能部材(31)とを備える遠心分離機(100)であって、請求項1から14のいずれか一項に記載の交換可能な分離挿入体(1)を備え、交換可能な前記分離挿入体は、前記回転子ケーシングが前記回転可能部材(31)に嵌め込まれ、前記第1の不動部分および前記第2の不動部分が前記不動フレーム(30)に嵌め込まれるような手法で配置されていることを特徴とする、遠心分離機(100)。
【請求項16】
前記遠心分離機(100)は、不動フレーム(30)と、前記不動フレーム(30)に軸支される回転可能部材(31)とを備え、交換可能な前記分離挿入体(1)が、前記回転可能部材(31)の中に挿入されて固定されるように構成されていることを特徴とする、請求項1から14のいずれか一項に記載の遠心分離機(100)のための交換可能な分離挿入体(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の概念は遠心分離機の分野に関する。より詳細には、本発明の概念は、流体混合物を分離するための遠心分離機のための交換可能な分離挿入体と、そのような交換可能な分離挿入体を備える遠心分離機とに関する。
【背景技術】
【0002】
遠心分離機は、概して、液体混合物または気体混合物からの液体および/または固体の分離のために使用される。動作の間、分離されることになる流体混合物は、回転ボウルへと導入され、遠心力によって、重い粒子または水などの密度の大きい液体は回転ボウルの周辺に集まる一方で、より密度の小さい液体は回転の中心軸のより近くに集まる。これは、例えば、周辺と回転軸の近くとに配置された別々の出口を用いて、分離された分級物の回収をそれぞれ可能にする。
【0003】
発酵ブロスなどの医薬製品を処理するとき、処理された製品と接触した回転ボウルおよび分離機の部品の定置洗浄処理の必要性を排除することが望ましいとされ得る。より有用なのは、回転ボウルを全体として交換すること、つまり、使い捨ての解決策を用いることであり得る。これは、処理の衛生面の視点からも有利である。
【0004】
国際公開第2015/181177号(特許文献1)は、回転可能な外側ドラムと、外側ドラムに配置される交換可能な内側ドラムとを備える、流動製品の遠心処理のための分離機を開示している。内側ドラムは、流動製品を浄化するための手段を備える。外側ドラムは、外側ドラムの下方に配置されるモータによって、駆動スピンドルを介して駆動される。内側ドラムは、分離機の上方の端に配置される流体連結部を有する外側ドラムを通じて、鉛直方向上向きに延びる。
【0005】
しかしながら、コンパクトであり、操作者にとって扱うのが容易である、遠心分離のための使い捨ての解決策に対して、技術的な要求がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
先行技術の1つまたは複数の制限を少なくとも一部で克服することが本発明の目的である。具体的には、コンパクトであり、操作者にとっての操縦性および取り扱い性を高めることができる交換可能な分離挿入体を提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
したがって、遠心分離機のための交換可能な分離挿入体は、分離円板の積み重ねが回転の軸の周りに回転するように配置される分離空間を包囲する回転子ケーシングを備える。前記回転子ケーシングは、軸方向において第1の不動部分と第2の不動部分との間に配置される。挿入体は、分離される流体混合物の前記分離空間への供給のための送り込み入口と、第1の密度の分離相の排出のための軽量相出口と、前記第1の密度より大きい第2の密度の分離相の排出のための重量相出口とをさらに備える。
【0009】
前記送り込み入口、前記軽量相出口、および前記重量相出口のうちの2つは、前記回転子ケーシングの第1の軸方向端に配置される。第1の封止組立体が、前記送り込み入口、前記軽量相出口、および前記重量相出口のうちの前記2つを、前記第1の不動部分において、対応する入口導管および/または出口導管に封止して連結する。
【0010】
前記第1の封止組立体は、前記回転子ケーシングに取り付けられる回転可能部と、前記不動部分に取り付けられる不動部とを備える。
【0011】
前記回転可能部と前記不動部とは軸方向で並べられ、互いに接して封止する。
【0012】
前記送り込み入口、前記軽量相出口、および前記重量相出口のうちの前記2つのうちの第1のものは、軸方向で回転の軸に配置され、前記送り込み入口、前記軽量相出口、および前記重量相出口のうちの前記2つのうちの第2のものは、前記送り込み入口、前記軽量相出口、および前記重量相出口のうちの前記2つのうちの前記第1のものと前記第2のものとの両方が前記回転可能部を通じて導かれ、前記対応する入口導管および/または出口導管が前記第1の封止組立体の前記不動部を通じて導かれるような手法で、前記送り込み入口、前記軽量相出口、および前記重量相出口のうちの前記2つのうちの前記第1のものの軸方向外側に配置される。
【0013】
前記軽量相出口は前記第1の軸方向端に配置され得る。
【0014】
前記送り込み入口は前記第1の軸方向端に配置され得る。
【0015】
前記不動の重量相出口は前記第1の軸方向端に配置され得る。
【0016】
前記回転可能部は、前記送り込み入口のための中心孔と、軽量相出口または重量相出口の一方のための少なくとも1つの出口孔とを伴う板形成された封止要素であり得る。
【0017】
前記不動部は、2つの同心で配置されて環状に形成された封止要素を備え得る。
【0018】
前記環状に形成された封止要素の内側は、前記中心孔の軸方向外側および前記少なくとも1つの出口孔の軸方向内側で回転可能部と係合するように配置され得る。
【0019】
少なくとも1つの流体連結部が、前記2つの環状に形成された封止要素の少なくとも内側の中に形成され得る。
【0020】
前記2つの環状に形成された封止要素の少なくとも内側は、前記第1の封止組立体の前記回転可能部を向くその表面において凹部を有し、その凹部は前記少なくとも1つの流体連結部に連結され得る。
【0021】
前記少なくとも1つの流体連結部は、前記凹部のうちの少なくとも1つに流体を供給するための封止流体入口を備え得る。
【0022】
前記少なくとも1つの流体連結部は、前記凹部のうちの少なくとも1つから流体を除去するための封止流体出口も備え得る。
【0023】
前記封止流体入口と前記封止流体出口とは、閉循環システムを形成する容器に両方とも取り付けられ得る。
【0024】
ポンプが、液体を第1の封止組立体に供給するために前記封止流体入口に配置され得る。
【0025】
前記容器は、液体を前記第1の封止組立体に供給するために予め加圧され得る。
【0026】
交換可能な分離挿入体は、両方とも遠心分離機に含まれる不動フレームに軸支される回転可能部材の中に挿入されて固定されるように構成される。
【0027】
本発明の別の態様によれば、遠心分離機が、不動フレームと、前記不動フレームに軸支される回転可能部材とを備え、遠心分離機が交換可能な分離挿入体を備え、交換可能な分離挿入体が、前記回転子ケーシングが前記回転可能部材に嵌め込まれ、前記第1の不動部分および前記第2の不動部分が前記不動フレームに嵌め込まれるような手法で配置される。
【0028】
本発明の概念の上記および追加の目的、特徴、および利点は、添付の図面を参照しつつ、以下の例示の非限定的な詳細な記載を通じてより良く理解される。図面では、他に述べられていない場合、同様の符号が同様の要素のために使用されている。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本開示による交換可能な分離挿入体の形態での分離機ボウルの概略的な外部の側面図である。
【
図2】本開示による交換可能な分離挿入体を備える遠心分離機の概略的な断面図である。
【
図3】本開示による交換可能な分離挿入体の概略的な断面図である。
【
図4】本開示による遠心分離機ボウルを備える遠心分離機の概略図である。
【
図5】本開示による交換可能な分離挿入体の一部の概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は、交換可能な分離挿入体1の形態での本開示の遠心分離機ボウル1aの外部の側面図を示している。挿入体1は、回転軸(X)によって定められる軸方向において見られるように、第1の不動部分3と第2の不動部分4との間に配置された回転子ケーシング2を備える。第1の不動部分3は挿入体1の第1の軸方向端5にあり、第2の不動部分4は挿入体1の第2の軸方向端6に配置されている。
図1に開示されている実施形態では、第1の不動部分3および第1の軸方向端5は交換可能な分離挿入体1の下方部に据えつけられており、第2の不動部分4および第2の軸方向端6は交換可能な分離挿入体1の上方部に据えつけられている。
【0031】
送り込み入口は、この例では第1の軸方向の下方の端5に配置されており、送り込みが、第1の不動部分3に配置された不動の入口導管7を介して供給される。不動の入口導管7は回転軸(X)に配置されている。第1の不動部分3は、分離液体軽量相とも呼ばれるより小さい密度の分離液体相のための不動の出口導管9をさらに備える。
【0032】
液体重量相とも呼ばれるより大きい密度の分離相の排出のために、上方の不動部分4に配置されている不動の出口導管8がある。したがって、この実施形態では、送り込みは、下方の軸方向端5を介して供給され、分離軽量相は下方の軸方向端5を介して排出され、分離重量相は上方の軸方向端6を介して排出される。
【0033】
回転子ケーシング2の外面は第1の円錐台部分10と第2の円錐台部分11とを備える。第1の円錐台部分10は軸方向において第2の円錐台部分11の下方に配置されている。外面は、第1の円錐台部分10および第2の円錐台部分11の仮想的な頂点が両方とも、回転軸(X)に沿う同じ方向を指すように配置されており、この方向は、ここでは挿入体1の下方の軸方向端5に向かう軸方向下向きである。
【0034】
さらに、第1の円錐台部分10は、第2の円錐台部分11の開く角度より大きい開く角度を有する。第1の円錐台部分10の開く角度は、回転子ケーシング2の分離空間17の中に含まれる分離円板の積み重ねの開く角度と実質的に同じであり得る。第2の円錐台部分11の開く角度は、回転子ケーシング2の分離空間の中に含まれる分離円板の積み重ねの開く角度より小さくなり得る。例として、第2の円錐台部分11の開く角度は、外面が回転軸と5度未満などの10°未満である角度αを形成するようにされ得る。下向きを指す仮想的な頂点を伴う2つの円錐台部分10および11を有する回転子ケーシング2は、挿入体1を回転可能部材31へと上方から挿入させることができる。したがって、外面の形は、外側の回転可能部材31との適合性を増加させ、回転可能部材31は、第1の円錐台部分10と第2の円錐台部分11との係合など、回転子ケーシング2の外面の全部または一部と係合することができる。
【0035】
回転子ケーシング2を第1の不動部分3から分離する下方封止筐体12の中に配置される下方回転可能シールと、回転子ケーシング2を第2の不動部分4から分離する上方封止筐体13の中に配置される上方回転可能シールとがある。下方封止筐体12の中の封止境界面の軸方向位置は符号15cで印されており、上方封止筐体13の中の封止境界面の軸方向位置は符号16cで印されている。したがって、第1の回転可能シール15および第2の回転可能シール16のこのような不動部15a、16aと回転可能部15b、16bとの間に形成される封止境界面は、回転子ケーシング2と挿入体1の第1の不動部分3および第2の不動部分4との間の境界面または境界も形成している。
【0036】
冷却液体などの封止流体を第1の回転可能シール15へと供給および引き込むための封止流体入口15dおよび封止流体出口15eと、同様に、冷却液体などの封止流体を第2の回転可能シール16へと供給および引き込むための封止流体入口16dおよび封止流体出口16eとがさらにある。
【0037】
図1には、回転子ケーシング2の中に包囲された分離空間17の軸方向位置も示されている。この実施形態では、分離空間17は、回転子ケーシング2の第2の円錐台部分11の中に実質的に位置決めされている。分離空間17の重量相回収空間17cが第1の下方の軸方向位置17aから第2の上方の軸方向位置17bまで延びている。分離空間17の内周面は、角度αと実質的に同じである回転軸(X)との角度、つまり、第2の円錐台部分11の外面と回転軸(X)との間の角度を形成することができる。したがって、分離空間17の内径は第1の軸方向位置17aから第2の軸方向位置17bへと連続的に増加し得る。角度αは5度未満などの10度未満であり得る。
【0038】
交換可能な分離挿入体1は、操作者による挿入体1の操縦性および取り扱い性を高めるコンパクトな形態を有する。例として、挿入体の下方の軸方向端5における分離空間17と第1の不動部分3との間の軸方向の距離は、15cm未満などの20cm未満であり得る。この距離は
図1においてd1で印されており、この実施形態では、分離空間17の重量相回収空間17cの最も下の軸方向位置17aから第1の回転可能シール15の封止境界面15cまでの距離である。さらなる例として、分離空間17が円錐台状の分離円板の積み重ねを備える場合、積み重ねにおいて軸方向で最も下にあり、第1の不動部分3に最も近い円錐台状の分離円板は、5cm未満などの10cm未満である第1の不動部分3からの軸方向の距離d2に仮想的な頂点18が位置決めされた状態で配置され得る。距離d2は、この実施形態では、軸方向で最も下の分離円板の仮想的な頂点18から第1の回転可能シール15の封止境界面15cまでの距離である。
【0039】
図2は、遠心分離機100の中に挿入されている交換可能な分離挿入体1の概略的な図面を示しており、遠心分離機100は、不動フレーム30と、上玉軸受33aおよび下玉軸受33bの形態での支持手段を用いてフレームによって支持されている回転可能部材31とを備えている。ここでは、駆動ベルト32を介して回転の軸(X)の周りに回転可能部材31を回転させるように配置されている駆動ユニット34もある。しかしながら、電気的な直接の駆動など、他の駆動手段が可能である。
【0040】
交換可能な分離挿入体1は、回転可能部材31の中に挿入および固定されている。したがって、回転可能部材31は、回転子ケーシング2の外面と係合するための内面を備える。上玉軸受33aおよび下玉軸受33bは両方とも、回転子ケーシング2の外面の円筒部分14が軸受平面において軸方向に位置決めされるように、回転子ケーシング2の中で分離空間17の軸方向で下方に位置決めされている。したがって、円筒部分14は、少なくとも1つの大きな玉軸受の中への挿入体の搭載を容易にする。上玉軸受33aおよび下玉軸受33bは、少なくとも120mmなど、少なくとも80mmの内径を有し得る。
【0041】
さらに、
図2において見られるように、挿入体1は、最も下の分離円板の仮想的な頂点18が、軸方向において、上玉軸受33aおよび下玉軸受33bの少なくとも1つの軸受平面に、またはその下方に位置決めされるように、回転可能部材31の中で位置決めされている。
【0042】
さらに、分離挿入体は、挿入体1の軸方向の下方の端5が、軸方向において、支持手段、つまり、上玉軸受33aおよび下玉軸受33bの下方に位置決めされるように、分離機100の中に搭載されている。回転子ケーシング2は、この例では、回転可能部材31によって外部でだけ支持されるように配置されている。
【0043】
分離挿入体1は、挿入体1の上部および下部において入口および出口への容易なアクセスを可能とするように分離機100の中にさらに搭載される。
【0044】
図3は、本開示の交換可能な分離挿入体1の実施形態の断面の概略図を示している。挿入体1は、回転軸(X)の周りに回転するように配置され、第1の下方の不動部分3と第2の上方の不動部分4との間に配置される回転子ケーシング2を備える。したがって、第1の不動部分3は挿入体1の軸方向の下方の端5に配置されており、第2の不動部分4は挿入体1の軸方向の上方の端6に配置されている。
【0045】
送り込み入口20が、この例では軸方向の下方の端5に配置されており、送り込みが、第1の不動部分3に配置された対応する不動の入口導管7を介して供給される。不動の入口導管7は、プラスチック管などの管を備え得る。
【0046】
不動の入口導管7は、分離される材料が回転中心において供給されるように回転軸(X)に配置されている。送り込み入口20は、分離される流体混合物を受け入れるためのものである。
【0047】
送り込み入口20は、この実施形態では、入口錐状部10aの頂部に配置されており、入口錐状部10aは、挿入体1の外側において、第1の円錐台状の外面10も形成している。入口20からの流体混合物を分離空間17へと分配するために送り込み入口に配置されたさらなる分配器24がある。
【0048】
分離空間17は、第1の下方の軸方向位置17aから第2の上方の軸方向位置17bまで軸方向で延びている外側の重量相回収空間17cを備える。分離空間17は、積み重ね19の分離円板同士の間の隙間によって形成される径方向で内側の空間をさらに備える。
【0049】
分配器24は、この実施形態では、回転軸(X)において、挿入体1の下方の端5を向いて指す頂点を伴う円錐状の外面を有する。分配器24の外面は、入口錐状部10aと同じ円錐角を有する。分離される流体混合物を、入口20における軸方向で下方の位置から、分離空間17における径方向で上方の位置まで軸方向で上向きに連続的に案内するための、外面に沿って延びる複数の分配通路24aがさらにある。この軸方向で上方の位置は、分離空間17の重量相回収空間17cの第1の下方の軸方向位置17aと実質的に同じである。分配通路24aは、例えば、真っ直ぐな形または湾曲した形を有し、そのため、分配器24の外面と入口錐状部10aとの間で延び得る。分配通路24aは、軸方向で下方の位置から軸方向で上方の位置まで分岐し得る。さらに、分配通路24aは、軸方向で下方の位置から軸方向で上方の位置まで延びる管の形態であり得る。
【0050】
分離空間17において同軸に配置される円錐台状の分離円板の積み重ね19がさらにある。積み重ね19における分離円板は、仮想的な頂点が分離挿入体1の軸方向で下方の端5を指す状態、つまり、入口20に向けて指す状態で配置されている。積み重ね19における最も下の分離円板の仮想的な頂点18は、挿入体1の軸方向の下方の端5における第1の不動部分3から10cm未満である距離に配置され得る。積み重ね19は、少なくとも40枚の分離円板など、少なくとも50枚の分離円板など、少なくとも100枚の分離円板など、少なくとも150枚の分離円板など、少なくとも20枚の分離円板を備え得る。明確性の理由のため、数枚だけの円板が
図1では示されている。この例では、分離円板の積み重ね19は分配器24の上に配置されており、したがって、分配器24の円錐状の外面は、円錐台状の分離円板の円錐部分と同じ角度を回転軸(X)に対して有し得る。分配器24の円錐形は、積み重ね19における分離円板の外径とおおよそ同じかまたはそれ以上の直径を有する。したがって、分配通路24aは、積み重ね19における円錐台状の分離円板の外周の径方向位置の外側である径方向位置P
1にある分離空間17における軸方向外側の位置17aへと分離させるように流体混合物を案内するように配置される。
【0051】
分離空間17の重量相回収空間17cは、この実施形態では、第1の下方の軸方向位置17aから第2の上方の軸方向位置17bへと連続的に増加する内径を有する。分離空間17から分離重量相を移送するための出口導管23がさらにある。この導管23は、分離空間17の径方向で外側の位置から重量相出口22へと延びている。この例では、導管23は、中心位置から径方向に外に分離空間17へと延びる単一の管の形態である。しかしながら、少なくとも3つ、少なくとも5つの出口導管23など、少なくとも2つのこのような出口導管23があり得る。したがって、出口導管23は、径方向で外側の位置に配置される導管入口23aと、径方向で内側の位置における導管出口23bとを有し、出口導管23は、導管入口23aから導管出口23bへの上向きの傾斜で配置されている。例として、出口導管23は、径方向平面に対して、少なくとも5度など、少なくとも10度など、少なくとも2度の上向きの傾斜で傾斜させられ得る。
【0052】
出口導管23は、導管入口23aが分離空間17の軸方向で最も上の部分17bから分離重量相を移送するために配置されるように、分離空間17における軸方向で上方の位置に配置されている。出口導管23は、導管入口23aが、分離空間17の周辺から、つまり、分離空間17の内面において分離空間17における径方向で最も外側の位置から、分離重量相を移送するために配置されるように、分離空間17へと径方向で外へさらに延びている。
【0053】
不動の出口導管23の導管出口23bは重量相出口22において途切れており、重量相出口22は、第2の上方の不動部分4に配置された対応する不動の出口導管8に連結されている。したがって、分離重量相は、上部を介して、つまり、分離挿入体1の上方の軸方向端6において排出される。
【0054】
さらに、分離円板の積み重ね19を通じて分離空間17において径方向で内向きに通過した分離液体軽量相は、回転子ケーシング2の軸方向で下方の端に配置された液体軽量相出口21において回収される。液体軽量相出口21は、挿入体1の第1の下方の不動部分3に配置された対応する不動の出口導管9に連結されている。したがって、分離液体軽量相は、交換可能な分離挿入体1の第1の下方の軸方向端5を介して排出される。
【0055】
第1の不動部分3に配置された不動の出口導管9と、第2の不動部分4に配置された不動の重量相出口導管8とは、プラスチック管などの管を備え得る。
【0056】
図3において、および、さらに詳細には
図5において、回転子ケーシング2を第1の不動部分3から分離する下方の第1の回転可能シール15は、下方封止筐体12の中に配置されており、回転子ケーシング2を第2の不動部分4から分離する上方の第2の回転可能シール16は、上方封止筐体13の中に配置されている。第1の回転可能シール15および第2の回転可能シール16は密閉シールであり、したがって、機械的に密封して封止された入口および出口を形成する。
【0057】
下方回転可能シール15は、いかなる追加の入口管なしで入口錐状部10aに直接的に取り付けることができ、つまり、送り込み入口20は、下方の第1の回転可能シール15の軸方向ですぐ上方の入口錐状部10aの頂点において形成され得る。このような配置は、大きい直径において下方の第1の機械的シール15のしっかりとした取り付けを可能にして軸方向の振れを最小限にする。
【0058】
下方の第1の回転可能シール15は、入口20を不動の入口導管7に封止して連結し、液体軽量相出口21を不動の液体軽量相導管9に封止して連結する。したがって、下方の第1の回転可能シール15は、同心で二重の機械的シールを形成しており、少ない部品での容易な組み立てを可能にする。
【0059】
下方の第1の回転可能シール15は、挿入体1の第1の不動部分3に配置された不動部15aと、回転子ケーシング2の軸方向で下方の部分に配置された回転可能部15bとを備える。回転可能部15bは、
図5に示された実施形態において、回転子ケーシング2に配置された回転可能な封止環体を備え、不動部15aは、挿入体1の第1の不動部分3に配置された2つの不動で同心の封止環体15f、15gを備える。
図3では、不動部15aは、第1の不動部分3に配置された1つの不動の封止環体である。回転可能な封止環体と不動の封止環体とを互いと係合させ、それによって少なくとも1つの封止境界面15cを環体同士の間に形成するために、少なくとも1つのバネ構成などのさらなる手段(
図3には示されていない)がある。
図5では、不動で同心の封止環体15f、15gはバネ構成15h、15jをそれぞれ有する。バネ構成は、不動の封止環体の各々の上側において周囲に配置される少なくとも1つのバネから成る。
図5に開示されている実施形態では、バネは、不動の封止環体の各々の上側において周囲に配置される螺旋バネである。形成された下方の封止境界面15cは、回転の軸(X)に対する径方向平面と実質的に平行に延びる。したがって、この下方の封止境界面15cは、回転子ケーシング2と挿入体1の第1の不動部分3との間に境界または境界面を形成する。冷却液体、緩衝液体、またはバリア液体などの液体を、下方の第1の回転可能シール15に供給するために、および、下方の第1の回転可能シール15から除去するために、第1の不動部分3に配置されるさらなる連結部15d、15eがある。この液体は、封止環体同士の間の境界面15cに供給され得る。このような液体を供給するために、封止流体入口15dの形態で1つだけのこのような連結部があり得る。
図3および
図5では、前記液体を除去するための封止流体入口15dおよび封止流体出口15eがある。他の実施形態では、液体を供給するための2つ以上の連結部、および/または、前記液体を除去するための2つ以上の連結部があり得る。
図5による実施形態では、内側の封止環体15fについての封止流体入口15dおよび封止流体出口15eと、示されていないが、同じく外側の封止環体15gについての封止流体入口および封止流体出口とが開示されている。封止流体入口15dおよび封止流体出口15eは、前記内側の封止環体15fにおける少なくとも1つの凹部28に連結されており、凹部28は、回転可能シール15の回転可能部15bに向けて開放している。
図5に開示されている実施形態における凹部28は、内側の封止環体15fの環体の形態に続く環体の形態とされているが、他の実施形態では、代わりに、周方向に配置された、いくつかの凹部があり得る。外側の封止環体15gにも、凹部29または同じ手法での凹部が設けられている。したがって、液体が、液体を供給するための連結部15dに供給されるとき、液体は凹部28、29を満たし、冷却液体、緩衝液体、またはバリア液体として供する。前記液体を供給および除去するための連結部15d、15eは、液体供給源および液体容器36にそれぞれ連結され得る。
図5に開示されている実施形態では、連結部15d、15eは、閉循環システム37において、この場合にはバッグである液体容器36に連結されており、閉循環システム37では、液体は、液体を供給するための連結部15dを通じて封止環体15f、15gへと移送され、液体を除去するための連結部15eを通じて前記液体容器36へと戻すように移送される。循環は、
図4に開示されている実施形態では、ポンプ38によって提供される。内側の封止環体15fと外側の封止環体15gとの両方に液体を供給するための1つの閉循環システムがあり得る。代わりに他の実施形態では、封止環体15f、15gの各々は、それら自体の閉循環システムと、延いてはポンプとを有してもよい。ポンプの代わりに、閉循環システムにおける圧力は、予め加圧されている液体容器によって提供されてもよい。封止環体との間で液体を循環させることで、シール15における漏れを制御することが可能である。
図5では、重量が増加または低下しているかどうかを決定するために、液体容器36の重量を連続的または間欠的に測る目盛39が示されている。重量における変化から、封止液体がシールから漏れ出しているのか、処理液体がシールへと漏れているのかを決定することが可能である。
【0060】
同様に、
図3は、重量相出口22を不動の出口導管8に封止して連結する上方の第2の回転可能シール16を開示している。上方の機械的シールも同心で二重の機械的シールであり得る。上方回転可能シール16は、挿入体1の第2の不動部分4に配置された不動部16aと、回転子ケーシング2の軸方向で上方の部分に配置された回転可能部16bとを備える。回転可能部16bは、この実施形態では、回転子ケーシング2に配置された回転可能な封止環体であり、不動部16aは、挿入体1の第2の不動部分4に配置された2つの不動の封止環体である。回転可能な封止環体と不動の封止環体とを互いと係合させ、それによって少なくとも1つの封止境界面16cを環体同士の間に形成するために、少なくとも1つのバネなどのさらなる手段(図示されていない)がある。形成された封止境界面16cは、回転の軸(X)に対する径方向平面と実質的に平行に延びる。したがって、この封止境界面16cは、回転子ケーシング2と挿入体1の第2の不動部分4との間に境界または境界面を形成する。冷却液体、緩衝液体、またはバリア液体などの液体を、上方回転可能シール16に供給するために、および、上方回転可能シール16から除去するために、第2の不動部分4に配置されるさらなる連結部16d、16eがある。この液体は、前記下方の第1の回転可能シール15と同様に、封止環体同士の間の境界面16cに供給され得る。連結部16d、16eは、前記下方の第1の回転可能シール15との関連で記載した閉循環システム37に連結され得る、または、それ自体の閉循環システムを有し得る。
【0061】
さらに、
図3は、移送状態での交換可能な分離挿入体1を示している。移送の間に第1の不動部分3を回転子ケーシング2に固定するために、下方の第1の回転可能シール15を回転子ケーシング2の円筒部分14に軸方向で固定するスナップ留めの形態での下方固定手段25がある。交換可能挿入体1を回転組立体に搭載すると、スナップ留め25は、回転子ケーシング2が下方の第1の回転可能シール15において軸(X)の周りに回転可能となるように解放され得る。
【0062】
さらに、移送の間、回転子ケーシング2に対する第2の不動部分4の位置を固定する上方固定手段27a、27bがある。上方固定手段は、第2の不動部分4における係合部材27bと係合し、それによって第2の不動部分4の軸方向の位置を固定する回転子ケーシング2に配置された係合部材27aの形態である。さらに、回転子ケーシング2および第2の不動部分4との封止する当接で移送または設定の位置に配置されるスリーブ部材26がある。スリーブ部材26は、さらには弾性であり、ゴムスリーブの形態であり得る。スリーブ部材26は、回転子ケーシング2を第2の不動部分4に対して回転させることができるように、移送または設定の位置から取り外し可能である。したがって、スリーブ部材26は、回転子ケーシング2に接して径方向に封止し、設定または移送の位置において第2の不動部分4に接して径方向に封止する。交換可能な挿入体1を回転組立体において搭載すると、スリーブ部材26は取り外しでき、係合部材27aと27bとの間の軸方向の空間が、第2の不動部分4に対する回転子ケーシング2の回転を許容するために作り出され得る。
【0063】
下方および上方の回転可能シール15、16は機械的シールであり、入口と2つの出口とを密封で封止する。動作の間、回転可能部材31へと挿入される交換可能な分離挿入体1は回転軸(X)の周りで回転させられる。分離される液体混合物が、不動の入口導管7を介して挿入体の入口20へと供給され、次に、分配器24の分配通路24aによって分離空間17へと案内させられる。したがって、分離される液体混合物は、入口導管7から分離空間17への軸方向上向きの経路のみに沿って案内される。密度の差によって、液体混合物は液体軽量相と液体重量相とに分離される。この分離は、分離空間17に嵌め込まれた積み重ね19の分離円板同士の間の隙間によって容易にされる。分離液体重量相は、出口導管23によって分離空間17の周辺から回収され、回転軸(X)に配置された重量相出口22を介して不動の重量相出口導管8へと押し出される。分離液体軽量相は、分離円板の積み重ね19を通じて径方向で内向きに押され、液体軽量相出口21を介して不動の軽量相導管9へと導かれる。
【0064】
結果として、この実施形態では、送り込みは、下方の軸方向端5を介して供給され、分離軽量相は下方の軸方向端5を介して排出され、分離重量相は上方の軸方向端6を介して排出される。
【0065】
さらに、先に開示されているような送り込み入口20、分配器24、分離円板の積み重ね19、および出口導管23の構成のため、交換可能な分離挿入体1は自動的に脱気させられ、つまり、回転子ケーシング2の中に存在するいかなる空気も重量相出口22を介して上向きおよび外に妨げられずに進まされるように、空気溜りの存在が排除または低減させられる。したがって、静止しているとき、空気溜りはなく、挿入体1が送り込み入口20を通じて上まで満たされる場合、すべての空気は重量相出口22を通じて放出され得る。これは、分離される液体混合物、または、液体混合物のための緩衝流体が挿入体1の中に存在するとき、回転子ケーシング2の静止および回転子ケーシング2の回転の開始のときに分離挿入体1を満たすことを容易にもする。
【0066】
同じく
図3において見られるように、交換可能な分離挿入体1はコンパクトな設計を有する。例として、積み重ね19における最も下の分離円板の仮想的な頂点18との間の軸方向の距離は、下方の第1の不動部分3から、5cm未満などの10cm未満とすることができ、つまり、下方の第1の回転可能シール15の封止境界面15cから、5cm未満などの10cm未満とすることができる。
【0067】
図4は、本開示の遠心分離機ボウル1を備える遠心分離機100の例を示している。遠心分離機100は細胞培養混合物を分離するためのものであり得る。分離機100は、フレーム30と、下軸受33bおよび上軸受33aにおいてフレーム30によって回転可能に支持される中空スピンドル40と、回転子ケーシング2を有する遠心分離機ボウル1とを備える。回転子ケーシング2は、回転の軸(X)の周りでスピンドル40と一体に回転するために、スピンドル40の軸方向で上方の端に隣接させられている。回転子ケーシング2は分離空間17を包囲しており、分離空間17では、分離円板の積み重ね19が、処理される液体混合物の効果的な分離を達成するために配置されている。積み重ね19の分離円板は、仮想的な頂点が軸方向下向きを指す状態での円錐台形を有し、表面を大きくした挿入体の例である。積み重ね19は、中心において回転子ケーシング2と同軸に嵌め込まれている。
図4では、数枚だけの分離円板が示されている。積み重ね19は、例えば、200枚超の分離円板など、100枚超の分離円板を含み得る。
【0068】
回転子ケーシング2は、分離液体軽量相の排出のための機械的に密封で封止された液体出口21と、分離液体軽量相より大きい密度の相の排出のための重量相出口22とを有する。分離空間17から分離重量相を移送するための管の形態での単一の出口導管23がある。この導管23は、分離空間17の径方向で外側の位置から重量相出口22へと延びている。導管23は、径方向で外側の位置に配置された導管入口23aと、径方向で内側の位置に配置された導管出口23bとを有する。さらに、出口導管23は、径方向平面に対して導管入口23aから導管出口23bへと上向きの傾斜で配置されている。
【0069】
処理される液体混合物の前記分離空間17への供給のための機械的に密封された送り込み封止入口20もある。入口20は、この実施形態では、スピンドル40を通って延びる中心ダクト41に連結されており、したがって、スピンドル40は中空の管状の部材の形態を取っている。液体材料を底から導入することは、液体材料の緩やかな加速を与える。スピンドル40は、密閉シール15を介して遠心分離機100の底の軸方向端において不動の入口管7にさらに連結されており、そのため、分離される液体混合物は、例えばポンプを用いて、中心ダクト41へと移送され得る。分離液体軽量相は、この実施形態では、前記スピンドル40における環状の外側ダクト42を介して排出される。結果として、より小さい密度の分離液体相は、分離機100の底を介して排出される。
【0070】
第1の機械的に密封のシール15が、不動の入口管7に中空スピンドル40を封止するために底端に配置されている。密封のシール15は、スピンドル40の底端と不動の管7とを取り囲む環状のシールである。第1の密封のシール15は、入口20を不動の入口管7に対して封止し、液体軽量相出口21を不動の出口管9に対して封止する同心の二重のシールである。分離機100の上部において重量相出口22を不動の出口管8に対して封止する第2の機械的に密封のシール16もある。
【0071】
図4において見られるように、入口20、および重量相出口22、ならびに、分離重量相を排出するための不動の出口管8は、分離される液体混合物が、矢印「A」によって指示されているように回転軸(X)において前記回転子ケーシング2に入り、分離重量相が、矢印「B」によって指示されているように回転軸(X)において排出されるように、回転軸(X)の周りにすべて配置されている。排出された液体軽量相は、矢印「C」によって指示されているように、遠心分離機100の底端において排出される。
【0072】
遠心分離機100には駆動モータ34がさらに設けられている。このモータ34は、例えば、不動の要素と回転可能な要素とを備えることができ、回転可能な要素は、スピンドル40を包囲しており、動作中に駆動トルクをスピンドル40に伝え、延いては回転子ケーシング2に伝えるように、スピンドル40に連結されている。駆動モータ34は電気モータであり得る。さらに、駆動モータ34は変速手段によってスピンドル40に連結され得る。変速手段は、ピニオンと、駆動トルクを受けるためにスピンドル40に連結された要素とを備えるウォームギヤの形態であり得る。変速手段は、代替で、プロペラシャフト、駆動ベルトなどの形態を取ってもよく、駆動モータ34は、代替でスピンドル40に直接的に連結されてもよい。
【0073】
図4における分離機の動作の間、遠心分離機ボウル1と回転子ケーシング2とは、駆動モータ34からスピンドル40へと伝えられるトルクによって回転させられる。スピンドル40の中心ダクト41を介して、分離される液体混合物は入口20を介して分離空間17へと持っていかれる。入口20と分離円板の積み重ね19とは、液体混合物が分離円板の積み重ね19の外径にある径方向の位置、その外径に向かう径方向の位置、またはその外径の径方向で外側にある径方向の位置において、分離空間17に入る。
【0074】
入口20の密封の種類において、液体材料の加速は、小さい半径において開始させられ、液体が入口20を離れ、分離空間17へ入る間に徐々に増加させられる。分離空間17は、動作の間に液体で完全に満たされるように意図されている。原理的に、これは、好ましくは、空気または自由液面が、回転子ケーシング2の中に存在するものではないことを意味する。しかしながら、液体混合物は、回転子がその動作速度ですでに運転しているとき、または、静止しているとき、導入され得る。液体混合物は回転子ケーシング2へと連続的に導入され得る。
【0075】
密度の差によって、液体混合物は液体軽量相と重量相とに分離される。この分離は、分離空間17に嵌め込まれた積み重ね19の分離円板同士の間の隙間によって容易にされる。分離重量相は、導管23によって分離空間17の周辺から回収され、回転軸(X)に配置された出口22を通じて押し出される一方で、分離液体軽量相は、積み重ね19を通じて径方向で内向きに押し出されてから、スピンドル40における環状の外側ダクト42を通じて導かれる。
【0076】
図3において、および、さらに詳細には
図5において、回転子ケーシング2を第1の不動部分3から分離する下方の第1の回転可能シール15は、下方封止筐体12の中に配置されており、回転子ケーシング2を第2の不動部分4から分離する上方の第2の回転可能シール16は、上方封止筐体13の中に配置されている。第1の回転可能シール15および第2の回転可能シール16は密閉シールであり、したがって、機械的に密封して封止された入口および出口を形成する。
【0077】
下方回転可能シール15は、いかなる追加の入口管なしで入口錐状部10aに直接的に取り付けることができ、つまり、送り込み入口20は、下方の第1の回転可能シール15の軸方向ですぐ上方の入口錐状部10aの頂点において形成され得る。このような配置は、大きい直径において下方の第1の機械的シール15のしっかりとした取り付けを可能にして軸方向の振れを最小限にする。
【0078】
下方の第1の回転可能シール15は、入口20を不動の入口導管7に封止して連結し、液体軽量相出口21を不動の液体軽量相導管9に封止して連結する。したがって、下方の第1の回転可能シール15は、同心で二重の機械的シールを形成しており、少ない部品での容易な組み立てを可能にする。下方の第1の回転可能シール15は、挿入体1の第1の不動部分3に配置された不動部15aと、回転子ケーシング2の軸方向で下方の部分に配置された回転可能部15bとを備える。回転可能部15bは、
図5に示された実施形態において、回転子ケーシング2に配置された回転可能な封止環体を備え、不動部15aは、挿入体1の第1の不動部分3に配置された2つの不動で同心の封止環体15f、15gを備え、軽量相導管9は前記2つの同心の封止環体15f、15gの間に配置され、入口導管7は、回転の軸Xにおいて内側環体15fに配置される。
図3では、不動部15aは、第1の不動部分3に配置された1つの不動の封止環体である。回転可能な封止環体と不動の封止環体とを互いと係合させ、それによって少なくとも1つの封止境界面15cを環体同士の間に形成するために、少なくとも1つのバネ構成などのさらなる手段(
図3には示されていない)がある。
図5では、不動で同心の封止環体15f、15gはバネ構成15h、15jをそれぞれ有する。バネ構成は、不動の封止環体の各々の上側において周囲に配置される少なくとも1つのバネから成る。
図5に開示されている実施形態では、バネは、不動の封止環体の各々の上側において周囲に配置される螺旋バネである。形成された下方の封止境界面15cは、回転の軸(X)に対する径方向平面と実質的に平行に延びる。したがって、この下方の封止境界面15cは、回転子ケーシング2と挿入体1の第1の不動部分3との間に境界または境界面を形成する。冷却液体、緩衝液体、またはバリア液体などの液体を、下方の第1の回転可能シール15に供給するために、および、下方の第1の回転可能シール15から除去するために、第1の不動部分3に配置されるさらなる連結部15d、15eがある。この液体は、封止環体同士の間の境界面15cに供給され得る。このような液体を供給するために、封止流体入口15dの形態で1つだけのこのような連結部があり得る。
図3および
図5では、前記液体を除去するための封止流体入口15dおよび封止流体出口15eがある。他の実施形態では、液体を供給するための2つ以上の連結部、および/または、前記液体を除去するための2つ以上の連結部があり得る。
図5による実施形態では、内側の封止環体15fについての封止流体入口15dおよび封止流体出口15eと、示されていないが、同じく外側の封止環体15gについての封止流体入口および封止流体出口とが開示されている。封止流体入口15dおよび封止流体出口15eは、前記内側の封止環体15fにおける少なくとも1つの凹部28に連結されており、凹部28は、回転可能シール15の回転可能部15bに向けて開放している。
図5に開示されている実施形態における凹部28は、内側の封止環体15fの環体の形態に続く環体の形態とされているが、他の実施形態では、代わりに、周方向に配置された、いくつかの凹部があり得る。外側の封止環体15gにも、凹部29または同じ手法での凹部が設けられている。したがって、液体が、液体を供給するための連結部15dに供給されるとき、液体は凹部28、29を満たし、冷却液体、緩衝液体、またはバリア液体として供する。前記液体を供給および除去するための連結部15d、15eは、液体供給源および液体容器36にそれぞれ連結され得る。
図5に開示されている実施形態では、連結部15d、15eは、閉循環システム37において、この場合にはバッグである液体容器36に連結されており、閉循環システム37では、液体は、液体を供給するための連結部15dを通じて封止環体15f、15gへと移送され、液体を除去するための連結部15eを通じて前記液体容器36へと戻すように移送される。循環は、
図4に開示されている実施形態では、ポンプ38によって提供される。内側の封止環体15fと外側の封止環体15gとの両方に液体を供給するための1つの閉循環システムがあり得る。代わりに他の実施形態では、封止環体15f、15gの各々は、それら自体の閉循環システムと、延いてはポンプとを有してもよい。ポンプの代わりに、閉循環システムにおける圧力は、予め加圧されている液体容器によって提供されてもよい。封止環体との間で液体を循環させることで、シール15における漏れを制御することが可能である。
図5では、重量が増加または低下しているかどうかを決定するために、液体容器36の重量を連続的または間欠的に測る目盛39が示されている。重量における変化から、封止液体がシールから漏れ出しているのか、処理液体がシールへと漏れているのかを決定することが可能である。
【0079】
同様に、
図3は、重量相出口22を不動の出口導管8に封止して連結する上方の第2の回転可能シール16を開示している。上方の機械的なシールも同心で二重の機械的シールであり得る。上方回転可能シール16は、挿入体1の第2の不動部分4に配置された不動部16aと、回転子ケーシング2の軸方向で上方の部分に配置された回転可能部16bとを備える。回転可能部16bは、この実施形態では、回転子ケーシング2に配置された回転可能な封止環体であり、不動部16aは、挿入体1の第2の不動部分4に配置された2つの不動の封止環体である。回転可能な封止環体と不動の封止環体とを互いと係合させ、それによって少なくとも1つの封止境界面16cを環体同士の間に形成するために、少なくとも1つのバネなどのさらなる手段(図示されていない)がある。形成された封止境界面16cは、回転の軸(X)に対する径方向平面と実質的に平行に延びる。したがって、この封止境界面16cは、回転子ケーシング2と挿入体1の第2の不動部分4との間に境界または境界面を形成する。冷却液体、緩衝液体、またはバリア液体などの液体を、上方回転可能シール16に供給するために、および、上方回転可能シール16から除去するために、第2の不動部分4に配置されるさらなる連結部16d、16eがある。この液体は、前記下方の第1の回転可能シール15と同様に、封止環体同士の間の境界面16cに供給され得る。連結部16d、16eは、前記下方の第1の回転可能シール15との関連で記載した閉循環システム37に連結され得る、または、それ自体の閉循環システムを有し得る。
【0080】
別の実施形態では、図示されていないが、送り込み入口および軽量相出口を第1の軸方向端に配置する代わりに、送り込み入口および重量相出口が回転子ケーシングのこの端に配置される。重量相出口導管は前記2つの同心の封止環体の間に配置され、入口導管は回転の軸Xにおいて内側環体に配置される。
【0081】
そのため、第1の封止組立体は、前記送り込み入口を不動の入口導管に封止して連結し、前記重量相出口を前記第1の不動部分において不動の重量相出口導管に封止して連結する。
【0082】
したがって、送り込み入口と重量相出口との両方が、回転可能部を通じて導かれ、前記第1の封止組立体の前記不動部を通じて導かれる不動の送り込み入口導管および不動の重量相出口導管にそれぞれ連結されるような手法で、送り込み入口は回転の軸において軸方向に配置され、重量相出口は前記送り込み入口の軸方向外側に配置される。
【0083】
なおも別の実施形態では、図示されていないが、送り込み入口および軽量相出口を第1の軸方向端に配置する代わりに、軽量相出口および重量相出口が回転子ケーシングのこの端に配置される。軽量相出口導管は前記2つの同心の封止環体の間に配置され、重量相導管は回転の軸Xにおいて内側環体に配置される。
【0084】
そのため、第1の封止組立体15は、前記軽量相出口を不動の軽量相導管に封止して連結し、前記重量相出口を前記第1の不動部分において不動の重量相出口導管に封止して連結する。
【0085】
したがって、軽量相出口と重量相出口との両方が、回転可能部15bを通じて導かれ、前記第1の封止組立体15の前記不動部15aを通じて導かれる前記不動の軽量相出口導管および前記不動の重量相出口導管にそれぞれ連結されるような手法で、重量相出口は回転の軸において軸方向に配置され、軽量相出口は前記重量相出口の軸方向外側に配置される。
【0086】
図示されていないこれらの実施形態では、封止は、冷却液体、緩衝液体、またはバリア液体の回路として図との関連で記載された実施形態と同じ手法で形成される。当業者には、例えば、円板の積み重ねおよび分配器の位置がひっくり返され、そのためそれらの頂点が常に入口を向いて指しているといった、ボウルの内部がこれらの実施形態にどのように適合させられるかは明らかである。
【0087】
上記では、本発明の概念が、限られた数の例を参照して主に記載されている。しかしながら、当業者によって容易に理解されるように、上記に開示されているもの以外の例が、添付の特許請求の範囲によって定められているように、本発明の概念の範囲内で等しく可能である。
【符号の説明】
【0088】
1 交換可能な分離挿入体、遠心分離機ボウル
1a 遠心分離機ボウル
2 回転子ケーシング
3 第1の不動部分
4 第2の不動部分
5 第1の軸方向端、下方の軸方向端、第1の軸方向の下方の端、軸方向の下方の端
6 第2の軸方向端、上方の軸方向端、軸方向の上方の端
7 不動の入口導管、不動の管、不動の入口管
8 不動の出口導管、不動の重量相出口導管、不動の出口管
9 不動の出口導管、不動の軽量相導管、不動の出口管
10 第1の円錐台部分、第1の円錐台状の外面
10a 入口錐状部
11 第2の円錐台部分
12 下方封止筐体
13 上方封止筐体
14 円筒部分
15 第1の回転可能シール、下方回転可能シール、第1の機械的に密封のシール
15a、16a 不動部
15b、16b 回転可能部
15c、16c 封止境界面の軸方向位置、封止境界面
15d、16d 封止流体入口、連結部
15e、16e 封止流体出口、連結部
15f、15g 封止環体
15h、15j バネ構成
16 第2の回転可能シール、第2の機械的に密封のシール、上方回転可能シール
17 分離空間
17a 第1の下方の軸方向位置、最も下の軸方向位置、軸方向外側の位置
17b 第2の上方の軸方向位置、軸方向で最も上の部分
17c 重量相回収空間
18 仮想的な頂点
19 積み重ね
20 送り込み入口、送り込み封止入口
21 液体軽量相出口、液体出口
22 重量相出口
23 不動の出口導管
23a 導管入口
23b 導管出口
24 分配器
24a 分配通路
25 下方固定手段、スナップ留め
26 スリーブ部材
27a、27b 上方固定手段、係合部材
28 凹部
29 凹部
30 不動フレーム
31 回転可能部材
32 駆動ベルト
33a 上玉軸受、上軸受
33b 下玉軸受、下軸受
34 駆動ユニット、駆動モータ
36 液体容器
37 閉循環システム
38 ポンプ
39 目盛
40 中空スピンドル
41 中心ダクト
42 外側ダクト、環状の外側ダクト
100 遠心分離機
d1、d2 距離
P1 径方向位置
X 回転軸、回転の軸
α 角度