(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】交換可能な分離挿入体
(51)【国際特許分類】
B04B 1/08 20060101AFI20221213BHJP
B04B 7/14 20060101ALI20221213BHJP
C12N 1/02 20060101ALI20221213BHJP
C12N 5/071 20100101ALI20221213BHJP
C12M 1/10 20060101ALN20221213BHJP
【FI】
B04B1/08
B04B7/14
C12N1/02
C12N5/071
C12M1/10
(21)【出願番号】P 2021532956
(86)(22)【出願日】2019-12-09
(86)【国際出願番号】 EP2019084137
(87)【国際公開番号】W WO2020120357
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-08-05
(32)【優先日】2018-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2018-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】509005513
【氏名又は名称】アルファ-ラヴァル・コーポレート・アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】カスパー・ホグルンド
(72)【発明者】
【氏名】ペーテル・トールヴィド
【審査官】谷本 怜美
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-254855(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0203306(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B04B 1/00-15/12
C12M 1/00- 3/10
C12N 1/00- 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠心分離機(100)のための交換可能な分離挿入体(1)であって、
分離円板の積み重ね(19)が配置される分離空間(17)を包囲する回転子ケーシング(2)であって、回転軸(X)の周りに回転するように配置される回転子ケーシング(2)と、
第1の不動部分(3)および第2の不動部分(4)であって、前記回転子ケーシング(2)が、軸方向において該第1の不動部分(3)と該第2の不動部分(4)との間に配置される、第1の不動部分(3)および第2の不動部分(4)と、
分離される流体混合物の前記分離空間(17)への供給のための送り込み入口(20)と、
第1の密度の分離相の排出のための軽量相出口(21)、および、前記第1の密度より大きい第2の密度の分離相の排出のための重量相出口(22)であって、前記送り込み入口(20)が前記回転子ケーシング(2)の第1の軸方向端(5)に配置され、該軽量相出口(21)および該重量相出口(22)の一方が、前記回転子ケーシング(2)の前記第1の軸方向端(5)と反対の第2の軸方向端(6)に配置される、軽量相出口(21)および重量相出口(22)と、
前記送り込み入口(20)を、前記第1の不動部分(3)において不動の入口導管(7)に封止して連結する第1の回転可能シール(15)と、
前記軽量相出口(21)および前記重量相出口(22)の一方を、前記第2の不動部分(4)において不動の出口導管(8)に封止して連結するための第2の回転可能シール(16)と、
を含んでなる
交換可能な分離挿入体(1)において、
前記回転子ケーシング(2)、前記第1の不動部分(3)、および前記第2の不動部分(4)含む当該交換可能な分離挿入体(1)は、遠心分離機へ挿入されるようにあらかじめ組み立てられて準備された挿入体を形成していることを特徴とする、交換可能な分離挿入体(1)。
【請求項2】
前記軽量相出口(21)が前記第1の軸方向端(5)に配置され、前記重量相出口(22)は前記第2の軸方向端(6)に配置され、前記第2の回転可能シール(16)は、前記重量相出口(22)を、前記第2の不動部分(4)において不動の出口導管(8)を封止して連結するためのものであることを特徴とする、請求項1に記載の交換可能な分離挿入体(1)。
【請求項3】
前記第1の回転可能シール(15)は、前記軽量相出口(21)を前記第1の不動部分(3)において不動の出口導管(9)に封止して連結するためにも配置されていることを特徴とする、請求項2に記載の交換可能な分離挿入体(1)。
【請求項4】
前記回転子ケーシング(2)は、分離相のためのさらなる出口がないことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の交換可能な分離挿入体(1)。
【請求項5】
前記分離空間(17)の重量相回収空間(17c)が第1の軸方向位置(17a)から第2の軸方向位置(17b)へと延在し、前記分離空間(17)の内径が前記第1の軸方向位置(17a)から前記第2の軸方向位置(17b)へと連続的に増加していることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の交換可能な分離挿入体(1)。
【請求項6】
分離重量相を前記分離空間(17)の径方向で外側の位置から前記重量相出口(22)へと移送するために配置される少なくとも1つの出口導管(23)をさらに備えていることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の交換可能な分離挿入体(1)。
【請求項7】
少なくとも1つの前記出口導管(23)が、前記分離空間(17)の軸方向で上方の部分に配置されていることを特徴とする、請求項6に記載の交換可能な分離挿入体(1)。
【請求項8】
前記第1の不動部分(3)が、前記分離空間(17)の重量相回収空間(17c)から20cm未満である軸方向の距離に配置されていることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の交換可能な分離挿入体(1)。
【請求項9】
前記不動の入口導管(7)が前記回転軸(X)に配置されていることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の交換可能な分離挿入体(1)。
【請求項10】
分離重量相のための前記不動の出口導管(8)が、前記回転軸(X)に配置されていることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の交換可能な分離挿入体(1)。
【請求項11】
前記回転子ケーシング(2)が、外部の軸受によって外部だけで支持されるように配置されていることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の交換可能な分離挿入体(1)。
【請求項12】
前記回転子ケーシング(2)の外面が、前記分離空間(17)を中に定める第1の円錐台部分(10)および第2の円錐台部分(11)を備え、前記第1の円錐台部分(10)が、前記第2の円錐台部分(11)の開く角度より大きい開く角度を有し、前記第1の円錐台部分(10)および前記第2の円錐台部分(11)の仮想的な頂点が両方とも前記回転軸(X)に沿う同じ軸方向を指すことを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の交換可能な分離挿入体(1)。
【請求項13】
前記第2の円錐台部分(11)の前記開く角度は、第2の円錐台部分(11)の外面が、10度未満である前記回転軸(X)に対する角度αを形成するようになされていることを特徴とする、請求項12に記載の交換可能な分離挿入体(1)。
【請求項14】
分離円板の前記積み重ね(19)が、円錐台状の分離円板を備えていることを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に記載の交換可能な分離挿入体(1)。
【請求項15】
前記円錐台状の分離円板は、仮想的な頂点が前記第1の不動部分(3)に向けて指す状態で配置されていることを特徴とする、請求項14に記載の交換可能な分離挿入体(1)。
【請求項16】
前記第1の不動部分(3)が、前記分離空間(17)の重量相回収空間(17c)から20cm未満である軸方向の距離に配置されていることを特徴とする、請求項15に記載の交換可能な分離挿入体(1)。
【請求項17】
当該分離挿入体の第1の端部(5)に最も近い軸方向で最も下の分離円板の仮想的な頂点が、前記第1の不動部分(3)から10cm未満に配置されていることを特徴とする、請求項14に記載の交換可能な分離挿入体(1)。
【請求項18】
交換可能な前記分離挿入体(1)が、1つのユニットとして取り扱われるように構成されるあらかじめ組み立てられた挿入体(1)を形成していることを特徴とする、請求項1から17のいずれか一項に記載の交換可能な分離挿入体(1)。
【請求項19】
異なる密度の流体混合物における少なくとも2つの成分を分離するための方法であって、
a)請求項1から18のいずれか一項に記載の交換可能な分離挿入体を備えた遠心分離機を提供するステップと、
b)流体混合物を、分離空間への送り込み入口へと供給するステップと、
c)分離軽量相を前記分離空間から軽量相出口を介して排出するステップと、
d)分離重量相を前記分離空間から重量相出口を介して排出するステップと
を含んでなることを特徴とする、方法。
【請求項20】
前記流体混合物が哺乳類の細胞培養混合物などの細胞培養混合物であることを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の概念は遠心分離機の分野に関する。より詳細には、本発明の概念は、遠心分離機のための交換可能な分離挿入体に関する。
【背景技術】
【0002】
遠心分離機は、概して、液体混合物または気体混合物からの液体および/または固体の分離のために使用される。動作の間、分離されることになる流体混合物は、回転ボウルへと導入され、遠心力によって、重い粒子または水などの密度の大きい液体は回転ボウルの周辺に集まる一方で、より密度の小さい液体は回転の中心軸のより近くに集まる。これは、例えば、周辺と回転軸の近くとに配置された別々の出口を用いて、分離された分級物の回収をそれぞれ可能にする。
【0003】
発酵ブロスなどの医薬製品を処理するとき、処理された製品と接触した回転ボウルおよび分離機の部品の定置洗浄処理の必要性を排除することが望ましいとされ得る。より有用なのは、回転ボウルを全体として交換すること、つまり、使い捨ての解決策を用いることであり得る。これは、処理の衛生面の視点からも有利である。
【0004】
国際公開第2015/181177号(特許文献1)は、回転可能な外側ドラムと、外側ドラムに配置される交換可能な内側ドラムとを備える、流動製品の遠心処理のための分離機を開示している。内側ドラムは、流動製品を浄化するための手段を備える。外側ドラムは、外側ドラムの下方に配置されるモータによって、駆動スピンドルを介して駆動される。内側ドラムは、分離機の上方の端に配置される流体連結部を有する外側ドラムを通じて、鉛直方向上向きに延びる。
【0005】
しかしながら、操作者にとって扱うのが容易である、遠心分離のための使い捨ての解決策に対して、技術的な要求がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
先行技術の1つまたは複数の制限を少なくとも一部で克服することが本発明の目的である。具体的には、操作者にとっての操縦性および取り扱い性を高めることができる交換可能な分離挿入体を提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様として、遠心分離機のための交換可能な分離挿入体であって、
分離円板の積み重ねが配置される分離空間を包囲する回転子ケーシングであって、回転の軸(X)の周りに回転するように配置される回転子ケーシングと、
第1の不動部分および第2の不動部分であって、前記回転子ケーシングは、軸方向において前記第1の不動部分と前記第2の不動部分との間に配置される、第1の不動部分および第2の不動部分と、
分離される流体混合物の前記分離空間への供給のための送り込み入口と、
第1の密度の分離相の排出のための軽量相出口、および、前記第1の密度より大きい第2の密度の分離相の排出のための重量相出口であって、前記送り込み入口は前記回転子ケーシングの第1の軸方向端に配置され、前記軽量相出口および前記重量相出口の一方は、回転子ケーシングの第1の軸方向端と反対の第2の軸方向端に配置される、軽量相出口および重量相出口と、
前記送り込み入口を、前記第1の不動部分において不動の入口導管に封止して連結する第1の回転可能シールと、
前記軽量相出口および前記重量相出口の一方を、前記第2の不動部分において不動の出口導管に封止して連結するための第2の回転可能シールと
を備える交換可能な分離挿入体が提供される。
【0009】
したがって、回転子ケーシングと、第1の不動部分と、第2の不動部分とを備える交換可能な分離挿入体があらかじめ組み立てられた挿入体を形成し得る。したがって、交換可能な分離挿入体は、遠心分離機へと挿入されるように準備され得る。遠心分離機の回転可能部材が、挿入体の回転子ケーシングのための回転可能支持体として機能できる。このような回転する部材は、回転可能部材を回転の軸(X)の周りに回転させるための駆動ユニットに連結され得る回転組立体の一部であり得る。
【0010】
実施形態によれば、交換可能な分離挿入体は、1つのユニットとして取り扱われるように構成されるあらかじめ組み立てられた挿入体を形成し得る。したがって、使用者は、挿入体が遠心分離機に配置されるとき、挿入体を容易に取り扱うことができ、同様に、遠心分離機において挿入体が同じかまたは同様の種類の新規の挿入体に交換されるとき、挿入体を容易に取り扱うことができる。
【0011】
実施形態によれば、交換可能な分離挿入体は使い捨ての分離挿入体である。したがって、挿入体は、使い捨てのために適合され、廃棄可能な挿入体であり得る。したがって、交換可能な挿入体は、医薬産業における1回の製品バッチなど、1つの製品バッチの処理のためのものであり、その後に廃棄され得る。
【0012】
交換可能な分離挿入体は、ポリマ材料を備え得る、または、ポリマ材料から成り得る。例として、回転子ケーシングおよび分離円板の積み重ねは、ポリプロピレン、プラチナ硬化シリコーン、またはBPA無しのポリカーボネートなどのポリマ材料を備え得る、または、このようなポリマ材料のものであり得る。挿入体のポリマ部品は射出成形され得る。しかしながら、交換可能な分離挿入体は、ステンレス鋼などの金属部品も備え得る。例えば、分離円板の積み重ねはステンレス鋼の円板を備え得る。
【0013】
交換可能な挿入体は、封止された無菌ユニットであり得る。
【0014】
回転子ケーシングは、気体混合物または液体混合物などの流体混合物の分離が起こる分離空間を包囲する。分離空間は、回転の軸を中心として配置される分離円板の積み重ねを備える。
【0015】
回転子ケーシングは、軸方向において見られるように、第1の不動部分と第2の不動部分との間にさらに配置される。したがって、第1の不動部分は下方の不動部分とすることができ、第2の不動部分は上方の不動部分とすることができる。
【0016】
回転子ケーシングは、第1の不動部分および第2の不動部分に対して回転可能である。
【0017】
分離される流体混合物を前記分離空間へと供給または案内するためのものである送り込み入口は、回転子ケーシングの第1の軸方向端に配置される。これは回転子ケーシングの下方の端であり得る。さらに、前記軽量相出口および前記重量相出口の一方が、回転子ケーシングの第1の軸方向端と反対の第2の軸方向端に配置される。したがって、第2の端は回転子ケーシングの上方の端であり得る。
【0018】
例として、軽量相出口と重量相出口との両方が第2の軸方向端に配置されてもよい。代替として、前記軽量相出口および前記重量相出口の一方が第2の軸方向端に配置され、他方が第1の軸方向端に配置される。例として、重量相出口は第2の軸方向端に配置されてもよく、軽量相出口および送り込み入口は第1の軸方向端に配置されてもよい。
【0019】
送り込み入口を不動の入口導管に封止して連結する第1の回転可能シールがある。したがって、この入口導管は第1の不動部分にある。前記軽量相出口および前記重量相出口の一方を、前記第2の不動部分において不動の出口導管に封止して連結するための第2の回転可能シールもある。
【0020】
結果として、第1の回転可能シールは回転子ケーシングと第1の不動部分との間の境界に配置でき、第2の回転可能シールは回転子ケーシングと第2の不動部分との間の境界に配置できる。
【0021】
回転可能シールは機械的シールであり得る。機械的シールは密封のシールとすることができ、密封のシールは、不動部分と回転子ケーシングとの間に気密の封止を生じさせ、つまり、回転子ケーシングおよび交換可能な挿入体の外部からの空気が送り込みを汚染するのを防止するようになっているシールを言っている。そのため、交換可能な分離挿入体の回転子ケーシングは、動作の間に液体で完全に満たされるように配置され得る。これは、空気または自由液面が、交換可能な分離挿入体の動作中に回転子ケーシングの中に存在するものではないことを意味する。したがって、本明細書で使用されているように、機械的に密封のシールは、液体密封シールなどの半密封のシールと比較して、完全に密封のシールである。
【0022】
機械的シールは不動部と回転可能部とを備え得る。
【0023】
したがって、実施形態では、第1の回転可能シールは、挿入体の第1の不動部分に配置される不動部と、回転子ケーシングの第1の軸方向端に配置される回転可能部とを備える。
【0024】
さらに、実施形態によれば、第2の回転可能シールは、挿入体の第2の不動部分に配置される不動部と、回転子ケーシングの第2の軸方向端に配置される回転可能部とを備える。
【0025】
入口導管が挿入体の下方の軸方向端に配置され得、少なくとも1つの出口導管が挿入体の上方の軸方向端に配置され得るため、交換可能な分離挿入体は、分離される流体混合物が挿入体の底から供給されるように配置でき、分離相のうちの少なくとも1つは、挿入体の上端から排出されるように配置され得る。
【0026】
本発明の第1の態様は、交換可能な挿入体の一方の軸方向端における入口と、第2の軸方向端における2つの出口とを有することが、操作者による挿入体の操縦性および取り扱い性を増加させるという洞察に基づかれている。したがって、各々の端においていくつかの連結部を有することは、交換可能な挿入体の一方だけの端にすべての連結部を有するより良好であることが分かった。さらに、分離機の両端を使用することは、処理される材料を回転軸(X)において送り込むことと、分離相のうちの1つを回転軸(X)において排出することとの両方を可能にし、それによって、分離相のうちの1つを回転エネルギーの大きさの低下した状態で排出させる。
【0027】
例として、交換可能な分離挿入体が細胞培養混合物を分離するために使用される場合、細胞培養は、発酵器の底から直接的に引き込まれ、挿入体の軸方向で下方の端における入口に連結でき、細胞を含む分離重量相は、挿入体の軸方向で上方の端において排出でき、細胞によって経験させられる回転エネルギーおよびせん断力を低下させる。これは、交換可能な分離機挿入体が、発酵器の底から分離機の挿入体の底への直接的で容易な連結を可能にする点において、有利である。
【0028】
本発明の第1の態様の実施形態では、前記軽量相出口は前記第1の軸方向端に配置され、重量相出口は第2の軸方向端に配置され、前記第2の回転可能シールは、前記重量相出口を、前記第2の不動部分において不動の出口導管に封止して連結するためのものである。
【0029】
したがって、軽量相は、送り込みが供給される同じ軸方向端において排出され得る。
【0030】
さらに、第1の回転可能シールは、前記軽量相出口を前記第1の不動部分において不動の出口導管に封止して連結するためにも配置され得る。
【0031】
したがって、第1の回転可能シールは、入口と軽量相出口との両方を封止するための同心で二重のシールであり得る。
【0032】
代替として、軽量相出口を第1の不動部分において不動の出口導管に封止して連結するための、第1の機械的シール以外の第3の機械的シールがある。
【0033】
本発明の第1の態様の実施形態では、回転子ケーシングは、分離相のための任意のさらなる出口がない。
【0034】
したがって、回転子ケーシングは、例えば、分離空間の周辺に堆積させられるスラッジ相などを排出するためのいかなる周辺ポートもない一続きのものであり得る。したがって、交換可能な挿入体は軽量相出口および重量相出口だけを備え得る。
【0035】
本発明の第1の態様の実施形態では、分離空間は第1の軸方向位置から第2の軸方向位置へと延び、分離空間の内径は前記第1の軸方向位置から前記第2の軸方向位置へと連続的に増加する。例として、分離空間の重量相回収空間が第1の軸方向位置から第2の軸方向位置へと延び、分離空間の内径は前記第1の軸方向位置から前記第2の軸方向位置へと連続的に増加し得る。
【0036】
したがって、分離空間の内径は軸方向において徐々に増加し得る。例として、第1の軸方向位置は入口のより近くとすることができ、第2の軸方向位置は出口のより近くとすることができる。間欠的な低下のない内径の連続的な増加は、分離空間の第2の軸方向位置における分離重量相の回収を容易にすることができる。
【0037】
本発明の第1の態様の実施形態では、挿入体は、分離重量相を分離空間の径方向で外側の位置から重量相出口へと移送するために配置される少なくとも1つの出口導管を備える。
【0038】
出口導管は、中心部分から分離空間へと延びる管であり得る。したがって、このような出口導管は、径方向で外側の位置に配置される導管入口と、径方向で内側の位置の導管出口とを有する。例として、挿入体は単一の出口導管を備え得る。他の例では、挿入体は、少なくとも3つ、少なくとも5つの出口導管など、少なくとも2つのこのような出口導管を備え得る。
【0039】
少なくとも1つの出口導管は、分離空間に開口する導管入口が、分離空間の内側の半径または直径が最大となる位置になるように配置され得る。
【0040】
少なくとも1つの出口導管は、重量相出口に最も近い分離空間の軸方向端に配置され得る。したがって、本発明の第1の態様の実施形態では、少なくとも1つの出口導管は分離空間の軸方向で上方の部分に配置される。例として、出口導管は分離空間の第2の軸方向位置に配置され得る。
【0041】
少なくとも1つの出口導管は、分離空間における分離重量相の重量相出口への移送を容易にすることができる。
【0042】
さらに、少なくとも1つの出口導管は、導管入口から導管出口へと、径方向平面に対して、傾斜を伴って、またはある角度で配置され得る。傾斜は、出口に向かう傾斜であり得る。これは、導管における分離重量相の移送を容易にすることができる。
【0043】
本発明の第1の態様の実施形態では、第1の不動部分は、分離空間の重量相回収空間から、10cm未満などの20cm未満である軸方向の距離に配置される。
【0044】
したがって、分離空間は、分離円板の積み重ねの径方向で外側にある空間である重量相回収空間を備え得る。分離空間は、そのため分離円板の積み重ねの円板同士の間の隙間によって形成される径方向で内側の部分も備え得る。
【0045】
結果として、入口における回転可能シールは回転子ケーシングの近くに配置でき、つまり、第1の不動部分は回転子ケーシングの近くに位置させることができる。
【0046】
これは、取り扱うのが容易であるコンパクトな交換可能な分離挿入体を提供する。さらに、第1の回転可能シールの回転可能部は、回転子ケーシングの軸方向で下方の部分に直接的に配置され得る。
【0047】
さらに、第2の不動部分も、分離空間の重量相回収空間から、10cm未満などの20cm未満である軸方向の距離に配置され得る。これは、分離挿入体のコンパクト性をさらに増進することになる。
【0048】
例として、第1の不動部分は、分離円板の積み重ねから、10cm未満などの20cm未満に配置され得る。
【0049】
本発明の第1の態様の実施形態では、送り込み入口は回転軸(X)に配置される。本発明の第1の態様の実施形態では、不動の入口導管は回転軸(X)に配置される。
【0050】
本発明の第1の態様の実施形態では、分離重量相のための不動の出口導管は回転軸(X)に配置される。これは、分離重量相のより穏やかな処理を提供する点において有利であり得る。分離重量相が回転軸(X)から小さい半径において排出される場合、回転力はより小さくなる。これは、例えば細胞培養を分離するとき、有利であり得る。このような細胞はせん断に敏感である可能性があり、そのため、回転軸から小さい直径において細胞を排出することができることは有利であり得る。
【0051】
さらに、これは、入口と1つの液体出口との両方を回転の軸に配置させる点において有利であり得る。結果として、実施形態では、不動の入口導管、送り込み入口、分離重量相のための重量相出口および不動の出口導管のすべてが回転軸(X)に配置される。
【0052】
本発明の第1の態様の実施形態では、回転子ケーシングは、外部の軸受によって外部だけで支持されるように配置される。
【0053】
したがって、回転子ケーシングと、交換可能な分離挿入体全体とは、任意の軸受がなくてもよい。
【0054】
さらに、交換可能な分離挿入体は、外部の軸受によって支持されるように配置される任意の回転可能なシャフトがなくてもよい。
【0055】
本発明の第1の態様の実施形態では、回転子ケーシングの外面は、分離空間を中に定める第1の円錐台部分および第2の円錐台部分を備え、第1の円錐台部分は、第2の円錐台部分の開く角度より大きい開く角度を有し、第1の円錐台部分および第2の円錐台部分の仮想的な頂点は両方とも回転軸(X)に沿う同じ軸方向を指す。
【0056】
したがって、円錐台部分は円錐台形を有し、円錐台形は円錐の錐台の形を有する形を言っており、円錐の錐台の形は、細長い端または先端が除去されている円錐の形である。したがって、円錐台形は、対応する円錐の形の先端または頂点が位置させられる仮想的な頂点を有する。第1の円錐台部分および第2の円錐台部分の円錐台形の軸は、回転子ケーシングの回転軸と軸方向で並べられる。円錐台部分の軸は、対応する円錐形の高さの方向、または、対応する円錐形の頂点を通る軸の方向である。
【0057】
したがって、回転子ケーシングの外面は、同じ軸方向を指す2つの円錐台部分を備え得る。第1の円錐台部分および第2の円錐台部分は、分離空間と同じ軸方向位置にある回転子ケーシングの一部分であり得る。したがって、分離空間の内面も第1の円錐台部分と第2の円錐台部分とを備えてもよく、第1の円錐台部分は、第2の円錐台部分の開く角度より大きい開く角度を有し、第1の円錐台部分および第2の円錐台部分の仮想的な頂点は両方とも回転軸(X)に沿う同じ軸方向を指す。
【0058】
第1の円錐台部分は、第2の円錐台部分より回転子ケーシングの第1の軸方向端の近くに配置され得る。第1の円錐台部分は、分離円板の積み重ねの円錐台状の分離円板と同じ開く角度を有し得る。
【0059】
さらに、例として、第2の円錐部分の開く角度は、第2の円錐台部分の外面が、10度未満である回転軸に対する角度αを形成するようにされる。これは、例えば、挿入体を遠心分離機の回転可能部材へと挿入するとき、または、挿入体を分離機から取り出し、別の交換可能な挿入体と交換するときなど、交換可能な分離挿入体の容易な取り扱いを可能にすることができる。
【0060】
第1の態様の実施形態では、交換可能な挿入体は、液体を前記第1の回転可能シールおよび/または少なくとも1つの第2の回転可能シールに供給するための導管をさらに備える。
【0061】
したがって、冷却液体などの液体を第1の回転可能シールに供給するための導管が第1の不動部分にあり得る。さらに、冷却液体などの液体を少なくとも1つの第2の回転可能シールに供給するための導管が第2の不動部分にあり得る。
【0062】
分離空間に配置される分離円板の積み重ねは、回転の軸(X)を中心として同軸に配置される。このような分離円板は、分離表面の拡大した挿入体を分離空間において形成する。分離円板は切頂円錐の形態を有することができ、つまり、積み重ねは、円錐台状の分離円板の積み重ねであり得る。したがって、第1の態様の実施形態では、分離円板の積み重ねは円錐台状の分離円板を備える。
【0063】
例として、円錐台状の分離円板は、前記第1の不動部分に向けて指す仮想的な頂点を有し得る。したがって、仮想的な頂点は、送り込み入口および分離機の軸方向で下方の一部を向いて指し得る。さらに、挿入体の第1の端に最も近い軸方向で最も下の分離円板の仮想的な頂点は、第1の不動部分から10cm未満に配置され得る。これはさらに、交換可能な分離挿入体をよりコンパクトにする。
【0064】
仮想的な頂点が第1の不動部分に向けて指す状態で円錐台状の分離円板が配置されるとき、第1の不動部分は、分離空間の重量相回収空間から、10cm未満などの20cm未満である軸方向の距離に配置され得る。
【0065】
分離円板は、代替で、回転の軸の周りに配置される軸方向の円板であってもよい。
【0066】
分離円板は、例えば、ステンレス鋼など、金属を備え得る、または金属材料のものであり得る。分離円板はさらに、プラスチック材料を備え得る、または、プラスチック材料のものであり得る。
【0067】
本発明の概念の第2の態様によれば、異なる密度のものである流体混合物の少なくとも2つの成分を分離するための方法であって、
a)先の第1の態様による交換可能な分離挿入体を備える遠心分離機を提供するステップと、
b)前記流体混合物を、前記分離空間への送り込み入口へと供給するステップと、
c)分離軽量相を前記分離空間から軽量相出口を介して排出するステップと、
d)分離重量相を前記分離空間から重量相出口を介して排出するステップと
を含む方法が提供される。
【0068】
この態様は、先の態様と同じまたは対応する利点を概して呈することができる。第2の態様に関連して使用される用語および定義は、先の第1の態様に関連して検討されているものと同じである。
【0069】
流体混合物は、例えば、哺乳類の細胞培養混合物などの細胞培養混合物であり得る。したがって、分離重量相は、細胞培養混合物からの分離細胞相を含み得る。
【0070】
本発明の概念の上記および追加の目的、特徴、および利点は、添付の図面を参照しつつ、以下の例示の非限定的な詳細な記載を通じてより良く理解される。図面では、他に述べられていない場合、同様の符号が同様の要素のために使用されている。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【
図1】本開示による交換可能な分離挿入体の形態の概略的な外部の側面図である。
【
図2】本開示による交換可能な分離挿入体を備える遠心分離機の概略的な断面図である。
【
図3】本開示による交換可能な分離挿入体の概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0072】
図1は、本開示による交換可能な分離挿入体1の外側の側面図である。挿入体1は、回転軸(X)によって定められる軸方向において見られるように、第1の下方の不動部分3と第2の上方の不動部分4との間に配置された回転子ケーシング2を備える。挿入体1は、挿入体1の下方の軸方向端5に配置される第1の不動部分3を備える。挿入体1は、挿入体1の上方の軸方向端6に配置される第2の不動部分4を備える。
【0073】
送り込み入口は、この例では軸方向の下方の端5に配置されており、送り込みが、第1の不動部分3に配置された不動の入口導管7を介して供給される。不動の入口導管7は回転軸(X)に配置されている。第1の不動部分3は、分離液体軽量相とも呼ばれるより小さい密度の分離液体相のための不動の出口導管9をさらに備える。
【0074】
液体重量相とも呼ばれるより大きい密度の分離相の排出のために、上方の不動部分4に配置されている不動の出口導管8がある。したがって、この実施形態では、送り込みは、下方の軸方向端5を介して供給され、分離軽量相は下方の軸方向端5を介して排出され、分離重量相は上方の軸方向端6を介して排出される。
【0075】
回転子ケーシング2の外面は第1の円錐台部分10と第2の円錐台部分11とを備える。第1の円錐台部分10は軸方向において第2の円錐台部分11の下方に配置されている。外面は、第1の円錐台部分10および第2の円錐台部分11の仮想的な頂点が両方とも、回転軸(X)に沿う同じ方向を指すように配置されており、この方向は、ここでは挿入体1の下方の軸方向端5に向かう軸方向下向きである。
【0076】
さらに、第1の円錐台部分10は、第2の円錐台部分11の開く角度より大きい開く角度を有する。第1の円錐台部分の開く角度は、回転子ケーシング2の分離空間17の中に含まれる分離円板の積み重ねの開く角度と実質的に同じであり得る。第2の円錐台部分11の開く角度は、回転子ケーシング2の分離空間の中に含まれる分離円板の積み重ねの開く角度より小さくなり得る。例として、第2の円錐台部分11の開く角度は、外面が回転軸と5度未満などの10°未満である角度αを形成するようにされ得る。下向きを指す仮想的な頂点を伴う2つの円錐台部分10および11を有する回転子ケーシング2は、挿入体1を回転可能部材30へと上方から挿入させることができる。したがって、外面の形は、外側の回転可能部材30との適合性を増加させ、回転可能部材30は、第1の円錐台部分10と第2の円錐台部分11との係合など、回転子ケーシング2の外面の全部または一部と係合することができる。
【0077】
回転子ケーシング2を第1の不動部分3から分離する下方封止筐体12の中に配置される下方回転可能シールと、回転子ケーシング2を第2の不動部分4から分離する上方封止筐体13の中に配置される上方回転可能シールとがある。下方封止筐体12の中の封止境界面の軸方向位置は符号15cで印されており、上方封止筐体13の中の封止境界面の軸方向位置は符号16cで印されている。したがって、第1の回転可能シール15および第2の回転可能シール16のこのような不動部15a、16aと回転可能部15b、16bとの間に形成される封止境界面は、回転子ケーシング2と挿入体1の第1の不動部分3および第2の不動部分4との間の境界面または境界も形成している。
【0078】
冷却液体などの封止流体を第1の回転可能シール15へと供給および引き込むための封止流体入口15dおよび封止流体出口15eと、同様に、冷却液体などの封止流体を第2の回転可能シール16へと供給および引き込むための封止流体入口16dおよび封止流体出口16eとがさらにある。
【0079】
図1には、回転子ケーシング2の中に包囲された分離空間17の軸方向位置も示されている。この実施形態では、分離空間は、回転子ケーシング2の第2の円錐台部分11の中に実質的に位置決めされている。分離空間17の重量相回収空間(17c)が第1の下方の軸方向位置17aから第2の上方の軸方向位置17bまで延びている。分離空間17の内周面は、角度αと実質的に同じである回転軸(X)との角度、つまり、第2の円錐台部分11の外面と回転軸(X)との間の角度を形成することができる。したがって、分離空間17の内径は第1の軸方向位置17aから第2の軸方向位置17bへと連続的に増加し得る。角度αは5度未満などの10度未満であり得る。
【0080】
交換可能な分離挿入体1は、操作者による挿入体1の操縦性および取り扱い性を高めるコンパクトな形態を有する。例として、挿入体の下方の軸方向端5における分離空間17と第1の不動部分3との間の軸方向の距離は、15cm未満などの20cm未満であり得る。この距離は
図1においてd1で印されており、この実施形態では、分離空間17の重量相回収空間(17c)の最も下の軸方向位置17aから第1の回転可能シール15の封止境界面15cまでの距離である。さらなる例として、分離空間17が円錐台状の分離円板の積み重ねを備える場合、積み重ねにおいて軸方向で最も下にあり、第1の不動部分3に最も近い円錐台状の分離円板は、5cm未満などの10cm未満である第1の不動部分3からの軸方向の距離d2に仮想的な頂点18が位置決めされた状態で配置され得る。距離d2は、この実施形態では、軸方向で最も下の分離円板の仮想的な頂点18から第1の回転可能シール15の封止境界面までの距離である。
【0081】
図2は、遠心分離機100の中に挿入されている交換可能な分離挿入体1の概略的な図面を示しており、遠心分離機100は、不動フレーム30と、上玉軸受33aおよび下玉軸受33bの形態での支持手段を用いてフレームによって支持されている回転可能部材31とを備えている。ここでは、駆動ベルト32を介して回転の軸31の周りに回転可能部材31を回転させるように配置されている駆動ユニット34もある。しかしながら、電気的な直接の駆動など、他の駆動手段が可能である。
【0082】
交換可能な分離挿入体1は、回転可能部材31の中に挿入および固定されている。したがって、回転可能部材31は、回転子ケーシング2の外面と係合するための内面を伴う貫通孔を備える。つまり、挿入体1の回転子ケーシング2は回転可能部材31の中に固定される。第1の不動部分3および第2の不動部分4は回転可能部材31から延び出し、遠心分離機100の使用の間に不動のままとなるように遠心分離機100に固定される。
【0083】
挿入体1の搭載の後、上玉軸受33aおよび下玉軸受33bは両方とも、回転子ケーシング2の外面の円筒部分14が軸受平面において軸方向に位置決めされるように、回転子ケーシング2の中で分離空間17の軸方向で下方に位置決めされる。したがって、円筒部分14は、少なくとも1つの大きな玉軸受の中への挿入体の搭載を容易にする。上玉軸受33aおよび下玉軸受33bは、少なくとも120mmなど、少なくとも80mmの内径を有し得る。
【0084】
さらに、
図2において見られるように、挿入体1は、最も下の分離円板の仮想的な頂点18が、軸方向において、上玉軸受33aおよび下玉軸受33bの少なくとも1つの軸受平面に、またはその下方に位置決めされるように、回転可能部材31の中で位置決めされている。
【0085】
さらに、分離挿入体は、挿入体1の軸方向の下方部5が、軸方向において、支持手段、つまり、上玉軸受33aおよび下玉軸受33bの下方に位置決めされるように、分離機100の中に搭載されている。回転子ケーシング2は、この例では、回転可能部材31によって外部でだけ支持されるように配置されている。
【0086】
分離挿入体1は、挿入体1の外側から入口、出口、および回転可能シールへの容易なアクセスを可能にするように分離機100の中にさらに搭載される。
【0087】
図3は、本開示の交換可能な分離挿入体1の実施形態の断面の概略図を示している。挿入体1は、回転軸(X)の周りに回転するように配置される回転子ケーシング2と、第1の下方の不動部分3と、第2の上方の不動部分4とを備える。回転子ケーシング2は第1の不動部分3と第2の不動部分4との間に配置される。したがって、第1の不動部分3は挿入体の軸方向の下方の端5に配置されており、第2の不動部分4は挿入体1の軸方向の上方の端6に配置されている。
【0088】
送り込み入口20が、この例では軸方向の下方の端5に配置されており、送り込みが、第1の不動部分3に配置された不動の入口導管7を介して供給される。不動の入口導管7は、プラスチック管などの管を備え得る。
【0089】
不動の入口導管7は、分離される材料が回転中心において供給されるように回転軸(X)に配置されている。送り込み入口20は、分離される流体混合物を受け入れるためのものである。
【0090】
送り込み入口20は、この実施形態では、入口錐状部10aの頂部に配置されており、入口錐状部10aは、挿入体1の外側において、第1の円錐台状の外面10も形成している。入口24からの流体混合物を分離空間17へと分配するために送り込み入口に配置されたさらなる分配器24がある。
【0091】
分離空間17は、第1の下方の軸方向位置17aから第2の上方の軸方向位置17bまで軸方向で延びている径方向で外側の重量相回収空間17cを備える。分離空間は、積み重ね19の分離円板同士の間の隙間によって形成される径方向で内側の空間をさらに備える。
【0092】
分配器24は、この実施形態では、回転軸(X)において、挿入体1の下方の端5を向いて指す頂点を伴う円錐状の外面を有する。分配器24の外面は、入口錐状部10aと同じ円錐角を有する。分離される流体混合物を、入口における軸方向で下方の位置から、分離空間17における軸方向で上方の位置まで軸方向で上向きに連続的に案内するための、外面に沿って延びる複数の分配通路24aがさらにある。この軸方向で上方の位置は、分離空間17の重量相回収空間17cの第1の下方の軸方向位置17aと実質的に同じである。分配通路24aは、例えば、真っ直ぐな形または湾曲した形を有し、そのため、分配器24の外面と入口錐状部24aとの間で延び得る。分配通路24は、軸方向で下方の位置から軸方向で上方の位置まで分岐し得る。さらに、分配通路24は、軸方向で下方の位置から軸方向で上方の位置まで延びる管の形態であり得る。
【0093】
しかしながら、分配通路24aは、例えば、分配器および/または分離円板の積み重ねにおける軸方向の分配開口によって、分離円板の積み重ねの中にある径方向位置において、分離される液体または流体を分離空間へと供給するように配置されてもよい。このような開口は、積み重ねの中に軸方向の分配通路を形成することができる。
【0094】
分離空間17において同軸に配置される円錐台状の分離円板の積み重ね19がさらにある。積み重ね19における分離円板は、仮想的な頂点が分離挿入体の軸方向で下方の端5を指す状態、つまり、入口20に向けて指す状態で配置されている。積み重ね19における最も下の分離円板の仮想的な頂点18は、挿入体1の軸方向の下方の端5における第1の不動部分3から10cm未満である距離に配置され得る。積み重ね19は、少なくとも40枚の分離円板など、少なくとも50枚の分離円板など、少なくとも100枚の分離円板など、少なくとも150枚の分離円板など、少なくとも20枚の分離円板を備え得る。明確性の理由のため、数枚だけの円板が
図1では示されている。この例では、分離円板の積み重ね19は分配器24の上に配置されており、したがって、分配器24の円錐状の外面は、円錐台状の分離円板の円錐部分と同じ角度を回転軸(X)に対して有し得る。分配器24の円錐形は、積み重ね19における分離円板の外径とおおよそ同じかまたはそれ以上の直径を有する。したがって、分配通路24aは、積み重ね19における円錐台状の分離円板の外周の径方向位置の外側である径方向位置P
1にある分離空間17における軸方向位置17aへと分離させるように流体混合物を案内するように配置される。
【0095】
分離空間17の重量相回収空間17cは、この実施形態では、第1の下方の軸方向位置17aから第2の上方の軸方向位置17bへと連続的に増加する内径を有する。分離空間17から分離重量相を移送するための出口導管23がさらにある。この導管23は、分離空間17の径方向で外側の位置から重量相出口22へと延びている。この例では、導管は、中心位置から径方向に外に分離空間17へと延びる単一の管の形態である。しかしながら、少なくとも3つ、少なくとも5つの出口導管23など、少なくとも2つのこのような出口導管23があり得る。したがって、出口導管23は、径方向で外側の位置に配置される導管入口23aと、径方向で内側の位置における導管出口23bとを有し、出口導管23は、導管入口23aから導管出口23bへの上向きの傾斜で配置されている。例として、出口導管は、径方向平面に対して、少なくとも5度など、少なくとも10度など、少なくとも2度の上向きの傾斜で傾斜させられ得る。
【0096】
出口導管23は、導管入口23aが分離空間17の軸方向で最も上の部分17bから分離重量相を移送するために配置されるように、分離空間17における軸方向で上方の位置に配置されている。出口導管23は、導管入口23aが、分離空間17の周辺から、つまり、分離空間17の内面において分離空間における径方向で最も外側の位置から、分離重量相を移送するために配置されるように、分離空間17へと径方向で外へさらに延びている。
【0097】
不動の出口導管23の導管出口23bは重量相出口22において途切れており、重量相出口22は、第2の上方の不動部分4に配置された不動の出口導管8に連結されている。したがって、分離重量相は、上部を介して、つまり、分離挿入体1の上方の軸方向端6において排出される。
【0098】
さらに、分離円板の積み重ね19を通じて分離空間17において径方向で内向きに通過した分離液体軽量相は、回転子ケーシング2の軸方向で下方の端に配置された液体軽量相出口21において回収される。液体軽量相出口21は、挿入体1の第1の下方の不動部分3に配置された不動の出口導管9に連結されている。したがって、分離液体軽量相は、交換可能な分離挿入体1の第1の下方の軸方向端5を介して排出される。
【0099】
第1の不動部分3に配置された不動の出口導管9と、第2の不動部分4に配置された不動の重量相導管8とは、プラスチック管などの管を備え得る。
【0100】
回転子ケーシング2を第1の不動部分3から分離する、下方封止筐体12の中に配置されている下方の回転可能シール15と、回転子ケーシングを第2の不動部分4から分離する、上方封止筐体13の中に配置されている上方の回転可能シールとがさらにある。第1の回転可能シール15および第2の回転可能シール16は密閉シールであり、したがって、機械的に密封して封止された入口および出口を形成する。
【0101】
下方回転可能シール15は、いかなる追加の入口管なしで入口錐状部10aに直接的に取り付けることができ、つまり、入口は、下方の回転可能シール15の軸方向ですぐ上方の入口錐状部の頂点において形成され得る。このような配置は、大きい直径において下方の機械的シールのしっかりとした取り付けを可能にして軸方向の振れを最小限にする。
【0102】
下方の回転可能シール15は、入口20を不動の入口導管7に封止して連結し、液体軽量相出口21を不動の液体軽量相導管9に封止して連結する。したがって、下方の回転可能シール15は、同心で二重の機械的シールを形成しており、少ない部品での容易な組み立てを可能にする。下方の回転可能シール15は、挿入体1の第1の不動部分3に配置された不動部15aと、回転子ケーシング2の軸方向で下方の部分に配置された回転可能部15bとを備える。回転可能部15bは、この実施形態では、回転子ケーシング2に配置された回転可能な封止環体であり、不動部15aは、挿入体1の第1の不動部分3に配置された不動の封止環体である。回転可能な封止環体と不動の封止環体とを互いと係合させ、それによって少なくとも1つの封止境界面15cを環体同士の間に形成するために、少なくとも1つのバネなどのさらなる手段(図示されていない)がある。形成された封止境界面は、回転の軸(X)に対する径方向平面と実質的に平行に延びる。したがって、この封止境界面15cは、回転子ケーシング2と挿入体1の第1の不動部分3との間に境界または境界面を形成する。冷却液体、緩衝液体、またはバリア液体などの液体を、下方回転可能シール15に供給するために、第1の不動部分3に配置されるさらなる連結部15dおよび15eがある。この液体は、封止環体同士の間の境界面15cに供給され得る。
【0103】
同様に、上方の回転可能シール16は、重量相出口22を不動の出口導管8に封止して連結する。上方の機械的シールも同心で二重の機械的シールであり得る。上方回転可能シール16は、挿入体1の第2の不動部分4に配置された不動部16aと、回転子ケーシング2の軸方向で上方の部分に配置された回転可能部16bとを備える。回転可能部16bは、この実施形態では、回転子ケーシング2に配置された回転可能な封止環体であり、不動部16aは、挿入体1の第2の不動部分4に配置された2つの不動の封止環体である。回転可能な封止環体と不動の封止環体とを互いと係合させ、それによって少なくとも1つの封止境界面16cを環体同士の間に形成するために、少なくとも1つのバネなどのさらなる手段(図示されていない)がある。形成された封止境界面16cは、回転の軸(X)に対する径方向平面と実質的に平行に延びる。したがって、この封止境界面16cは、回転子ケーシング2と挿入体1の第2の不動部分4との間に境界または境界面を形成する。冷却液体、緩衝液体、またはバリア液体などの液体を、上方回転可能シール16に供給するために、第2の不動部分4に配置されるさらなる連結部16d、16eがある。この液体は、封止環体同士の間の境界面16cに供給され得る。
【0104】
さらに、
図3は、移送状態での交換可能な分離挿入体を示している。移送の間に第1の不動部分3を回転子ケーシング2に固定するために、下方の回転可能シール15を回転子ケーシング2の円筒部分14に軸方向で固定するスナップ留めの形態での下方固定手段25がある。交換可能挿入体1を回転組立体に搭載すると、スナップ留め25は、回転子ケーシング2が下方の回転可能シールにおいて軸(X)の周りに回転可能となるように解放され得る。
【0105】
さらに、移送の間、回転子ケーシング2に対する第2の不動部分4の位置を固定する上方固定手段27a、27bがある。上方固定手段は、第2の不動部分4における係合部材27bと係合し、それによって第2の不動部分4の軸方向の位置を固定する回転子ケーシング2に配置された係合部材27aの形態である。さらに、回転子ケーシング2および第2の不動部分4との封止する当接で移送または設定の位置に配置されるスリーブ部材26がある。スリーブ部材26は、さらには弾性であり、ゴムスリーブの形態であり得る。スリーブ部材は、回転子ケーシング2を第2の不動部分4に対して回転させることができるように、移送または設定の位置から取り外し可能である。したがって、スリーブ部材26は、回転子ケーシング2に接して径方向に封止し、設定または移送の位置において第2の不動部分4に接して径方向に封止する。交換可能な挿入体1を回転組立体において搭載すると、スリーブ部材は取り外しでき、係合部材27aと27bとの間の軸方向の空間が、第2の不動部分4に対する回転子ケーシング2の回転を許容するために作り出され得る。
【0106】
下方および上方の回転可能シール15、16は機械的シールであり、入口と2つの出口とを密封で封止する。
【0107】
動作の間、回転可能部材31へと挿入される交換可能な分離挿入体1は回転軸(X)の周りで回転させられる。分離される液体混合物が、不動の入口導管7を介して挿入体の入口20へと供給され、次に、分配器24の案内通路24によって分離空間17へと案内させられる。したがって、分離される液体混合物は、入口導管7から分離空間17への軸方向上向きの経路のみに沿って案内される。密度の差によって、液体混合物は液体軽量相と液体重量相とに分離される。この分離は、分離空間17に嵌め込まれた積み重ね19の分離円板同士の間の隙間によって容易にされる。分離液体重量相は、出口導管22によって分離空間17の周辺から回収され、回転軸(X)に配置された重量相出口22を介して不動の重量相出口導管8へと押し出される。分離液体軽量相は、分離円板の積み重ね19を通じて径方向で内向きに押され、液体軽量相出口21を介して不動の軽量相導管9へと導かれる。
【0108】
結果として、この実施形態では、送り込みは、下方の軸方向端5を介して供給され、分離軽量相は下方の軸方向端5を介して排出され、分離重量相は上方の軸方向端6を介して排出される。
【0109】
さらに、先に開示されているような入口20、分配器24、分離円板の積み重ね19、および出口導管23の構成のため、交換可能な分離挿入体1は自動的に脱気させられ、つまり、回転子ケーシングの中に存在するいかなる空気も重量相出口を介して上向きおよび外に妨げられずに進まされるように、空気溜りの存在が排除または低減させられる。したがって、静止しているとき、空気溜りはなく、挿入体1が送り込み入口を通じて上まで満たされる場合、すべての空気は重量相出口22を通じて放出され得る。これは、分離される液体混合物、または、液体混合物のための緩衝流体が挿入体1の中に存在するとき、回転子ケーシングの静止および回転子ケーシングの回転の開始のときに分離挿入体1を満たすことを容易にもする。
【0110】
同じく
図3において見られるように、交換可能な分離挿入体1はコンパクトな設計を有する。例として、積み重ね19における最も下の分離円板の仮想的な頂点18との間の軸方向の距離は、第1の不動部分3から、5cm未満などの10cm未満とすることができ、つまり、下方の回転可能シール15の封止境界面15cから、5cm未満などの10cm未満とすることができる。
【0111】
上記では、本発明の概念が、限られた数の例を参照して主に記載されている。しかしながら、当業者によって容易に理解されるように、上記に開示されているもの以外の例が、添付の特許請求の範囲によって定められているように、本発明の概念の範囲内で等しく可能である。
【符号の説明】
【0112】
1 交換可能な分離挿入体
2 回転子ケーシング
3 第1の下方の不動部分、第1の不動部分
4 第2の上方の不動部分、第2の不動部分
5 第1の軸方向端、下方の軸方向端、軸方向の下方の端
6 第2の軸方向端、上方の軸方向端、軸方向の上方の端
7 不動の入口導管
8 不動の出口導管、不動の重量相出口導管
9 不動の出口導管、不動の軽量相導管
10 第1の円錐台部分、第1の円錐台状の外面
10a 入口錐状部
11 第2の円錐台部分
12 下方封止筐体
13 上方封止筐体
14 円筒部分
15 第1の回転可能シール、下方回転可能シール
15a、16a 不動部
15b、16b 回転可能部
15c、16c 封止境界面の軸方向位置、封止境界面
15d、16d 封止流体入口、連結部
15e、16e 封止流体出口、連結部
16 第2の回転可能シール、上方回転可能シール
17 分離空間
17a 第1の下方の軸方向位置、最も下の軸方向位置、第1の軸方向位置
17b 第2の上方の軸方向位置、軸方向で最も上の部分、第2の軸方向位置
17c 重量相回収空間
18 仮想的な頂点
19 積み重ね
20 送り込み入口
21 液体軽量相出口
22 重量相出口
23 不動の出口導管
23a 導管入口
23b 導管出口
24 分配器
24a 分配通路
25 下方固定手段、スナップ留め
26 スリーブ部材
27a、27b 上方固定手段、係合部材
30 不動フレーム
31 回転可能部材
32 駆動ベルト
33a 上玉軸受
33b 下玉軸受
34 駆動ユニット
100 遠心分離機
d1、d2 距離
P1 径方向位置
X 回転軸、回転の軸
α 角度