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特許7193650高マンガン低温鋼のサブマージアーク溶接のための溶接ワイヤおよび溶接方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】高マンガン低温鋼のサブマージアーク溶接のための溶接ワイヤおよび溶接方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 35/30 20060101AFI20221213BHJP
   B23K 9/18 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
B23K35/30 320C
B23K9/18 F
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021538958
(86)(22)【出願日】2019-05-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-24
(86)【国際出願番号】 CN2019089359
(87)【国際公開番号】W WO2020140379
(87)【国際公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-07-26
(31)【優先権主張番号】201910004208.3
(32)【優先日】2019-01-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519226115
【氏名又は名称】南京鋼鉄股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】孫 超
(72)【発明者】
【氏名】李 東暉
(72)【発明者】
【氏名】尹 雨群
【審査官】川口 由紀子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭55-024701(JP,A)
【文献】特開平05-192788(JP,A)
【文献】特開2018-020362(JP,A)
【文献】特表2014-507560(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107052618(CN,A)
【文献】特開2014-024098(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 35/30
B23K 9/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学組成および質量百分率が、C:0.2%~0.4%、Mn:12%~15%、Ni:16%~20%、Cr:2%~5%、P≦0.004%、S≦0.002%で残部はFeおよび不可避的不純物である、
ことを特徴とする高マンガン低温鋼のサブマージアーク溶接のための溶接ワイヤ。
【請求項2】
化学組成および質量百分率が、C:0.2%~0.4%、Mn:12%~15%、Ni:16%~20%、Cr:2%~5%、P≦0.004%、S≦0.002%、W:2%~4%、Mo:0.1%~1.2%、Ti:0.01%~0.2%、Nb:0.01%~0.2%、N:0.02%~0.1%で残部はFeおよび不可避的不純物である、
ことを特徴とする請求項1に記載の高マンガン低温鋼のサブマージアーク溶接のための溶接ワイヤ。
【請求項3】
化学組成および質量百分率が、C:0.29%、Mn:14.1%、Ni:17%、Cr:3.1%、P≦0.004%、S≦0.002%で残部はFeおよび不可避的不純物である、
ことを特徴とする請求項1に記載の高マンガン低温鋼のサブマージアーク溶接のための溶接ワイヤ。
【請求項4】
化学組成および質量百分率が、C:0.2%、Mn:15%、Ni:16%、Cr:5%、P≦0.004%、S≦0.002%で残部はFeおよび不可避的不純物である、
ことを特徴とする請求項1に記載の高マンガン低温鋼のサブマージアーク溶接のための溶接ワイヤ。
【請求項5】
化学組成および質量百分率が、C:0.4%、Mn:12%、Ni:20%、Cr:2%、P≦0.004%、S≦0.002%で残部はFeおよび不可避的不純物である、
ことを特徴とする請求項1に記載の高マンガン低温鋼のサブマージアーク溶接のための溶接ワイヤ。
【請求項6】
化学組成および質量百分率が、C:0.27%、Mn:13.8%、Ni:17.5%、Cr:3%、W:3.2%、Mo:0.6%、Ti:0.04%、Nb:0.05%、N:0.06%、P≦0.004%、S≦0.002%で残部はFeおよび不可避的不純物である、
ことを特徴とする請求項2に記載の高マンガン低温鋼のサブマージアーク溶接のための溶接ワイヤ。
【請求項7】
請求項1~6の何れか1項に記載の高マンガン低温鋼のサブマージアーク溶接のための溶接ワイヤの溶接方法であって、
直径2~4mmの前記溶接ワイヤを使用し、サブマージアーク溶接法によって、厚さが15~30mmで、Mn含有量が20%を超える高マンガン低温鋼の鋼板を溶接し、開先はV型で、溶接電流は400~560A、アーク電圧は25~32V、片側の開先角度は30°、溶接速度は30~55cm/min、溶接入熱は16~23kJ/cmである、
ことを特徴とする溶接方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接の技術分野に関わり、特に高マンガン低温鋼のサブマージアーク溶接のための溶接ワイヤおよび溶接方法に関わる。
【背景技術】
【0002】
液化天然ガス(沸点が-162℃)、液体酸素(沸点が-183℃)、液体窒素(沸点が-196℃)などの保管と輸送とには、低温条件下で機能する構造材料が必要で、主な機械的性能の要件は低温で十分な衝撃靭性を持つことである。一般的に使用されている低温鋼として、9%Ni鋼やCr-Niオーステナイト系ステンレス鋼などの材料には、高価なニッケル元素を大量に添加する必要があるため、コストが高くなっている。近年では、高マンガン低温鋼が最先端の新しい低温材料として広く注目されており、その専用マッチング溶接材料の開発も非常に重要になって来ている。
【0003】
サブマージアーク溶接法は、高度な自動化、制御可能な溶接品質、および高い溶接効率などの利点により、液化天然ガス貯蔵タンクなどの構造物の溶接に広く使用されている。高マンガン低温鋼のマンガン含有量は約24%で、構造の種類はオーステナイトで、専用のマッチング溶接ワイヤがない場合、代わりにERNiCrMo-3、ERNiCrMo-4などの9%Ni鋼溶接ワイヤが通常使用されている。これらの溶接材料のニッケル含有量は50%を超えるため、高価になっている。一方、母材と溶接材料との組成におけるマンガンとニッケルとの違いが大きすぎると、溶接継手の融着線付近の構造や性能の制御に有利ではない。高マンガン低温鋼の開発が成熟するにつれて、近年、高マンガン低温鋼専用に設計された溶接材料も登場している。特許文献1(中国特許出願番号201710194206)は、マンガン含有量が23~26%のLNG貯蔵タンクを調製するための高マンガン鋼用全自動サブマージアーク溶接ソリッドワイヤを開示している。特許文献2(中国特許出願番号201710194314)は、-196℃の作動温度に適しており、マンガン含有量が24~26%の溶融電極ガスシールド溶接ワイヤを開示している。韓国の浦項(株)も高マンガン鋼のためにマンガン含有量が約22%の専用の高マンガン溶接材料を開発した。これらの高マンガン溶接材料には、合金コストが低いという明らかな利点があるが、マンガンの含有量が多いため、溶接中に有毒なマンガンの揮発が起こりやすく、使用が難しい専用の溶接装置が必要になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】中国特許出願公開第107052618号明細書
【文献】中国特許出願公開第106938375号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の技術的問題を解決するために、本発明は、化学組成および質量百分率が、C:0.2%~0.4%、Mn:12%~15%、Ni:16%~20%、Cr:2%~5%、P≦0.004%、S≦0.002%で残部はFeおよび不可避的不純物である高マンガン低温鋼のサブマージアーク溶接用の溶接ワイヤを提供する。
【0006】
技術的効果:本発明は、マンガンとニッケルとの複合添加の合金設計を採用し、ニッケルなどの高価な元素の含有量を減らしたため、溶接ワイヤの合金コストを減らしている。また、マンガン元素を一定の含有量内に制御することで、過度に高いマンガン含有量が溶接中に有毒なマンガン揮発の形成を回避し、溶接ワイヤ使用の難しさを軽減している。使用されたマンガン・ニッケル構成要素の設計は、高マンガン低温鋼の母材との良好な適合性を有し、構成要素がシンプルで、従来の溶接ワイヤの製造方法に適しており、溶接ワイヤで形成された溶接金属は-196℃の低温でも優れた耐衝撃性を示し、高マンガン低温鋼が液化天然ガス貯蔵タンクやその他の機器のの建設に使用される場合の溶接に対する要件をよく満たしている。
【0007】
本発明によってさらに制限される技術的解決策は、以下のとおりである。
【0008】
さらに、化学組成および質量百分率が、C:0.2%~0.4%、Mn:12%~15%、Ni:16%~20%、Cr:2%~5%、P≦0.004%、S≦0.002%、W:2%~4%、Mo:0.1%~1.2%、Ti:0.01%~0.2%、Nb:0.01%~0.2%、N:0.02%~0.1%で残部はFeおよび不可避的不純物である。
【0009】
化学組成および質量百分率が、C:0.29%、Mn:14.1%、Ni:17%、Cr:3.1%、P≦0.004%、S≦0.002%で残部はFeおよび不可避的不純物である前記高マンガン低温鋼のサブマージアーク溶接のための溶接ワイヤ。
【0010】
化学組成および質量百分率が、C:0.2%、Mn:15%、Ni:16%、Cr:5%、P≦0.004%、S≦0.002%で残部はFeおよび不可避的不純物である前記高マンガン低温鋼のサブマージアーク溶接のための溶接ワイヤ。
【0011】
化学組成および質量百分率が、C:0.4%、Mn:12%、Ni:20%、Cr:2%、P≦0.004%、S≦0.002%で残部はFeおよび不可避的不純物である前記高マンガン低温鋼のサブマージアーク溶接のための溶接ワイヤ。
【0012】
化学組成および質量百分率が、C:0.27%、Mn:13.8%、Ni:17.5%、Cr:3%、W:3.2%、Mo:0.6%、Ti:0.04%、Nb:0.05%、N:0.06%、P≦0.004%、S≦0.002%で残部はFeおよび不可避的不純物である前記高マンガン低温鋼のサブマージアーク溶接のための溶接ワイヤ。
【0013】
本発明の別の目的は、直径2~4mmの溶接ワイヤを使用し、サブマージアーク溶接法によって、厚さが15~30mmで、Mn含有量が20%を超える高マンガン低温鋼の鋼板を溶接し、開先はV型で、溶接電流は400~560A、アーク電圧は25~32V、片側の開先角度は30°、溶接速度は30~55cm/min、溶接入熱は16~23kJ/cmである高マンガン低温鋼のサブマージアーク溶接のためのワイヤ溶接方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の有益な効果は次のとおりである。
【0015】
(1)本発明は高マンガン低温鋼の溶接に適用され、既存の高ニッケル(ニッケルの質量百分率が50%以上)溶接材料と比較して、コストが3分の2以上削減され、コスト面での優位性が大きく、高マンガン低温鋼が液化天然ガス貯蔵タンクやその他の機器の建設に使用される場合の溶接コストを大幅に削減できる。
【0016】
(2)本発明は、主要な合金元素としてMn、Niの化学組成設計を採用しており、安定なオーステナイト構造を得られ、Niはオーステナイトの安定性を大幅に向上することができ、有害な炭化物を形成したり、偏析の形で結晶を弱めたりすることは容易ではなく、溶接継手の低温衝撃性能を改善することもでき、低温鋼溶接材料に最適な合金元素である。但し、Niは高価であり、添加量が多いと材料費が大幅に高くなるため、Ni含有量の削減が考えられるが、Ni含有量が少なすぎると、オーステナイトを安定化させる効果が十分であるだけでなく、溶接継手の性能向上にも役立たない。したがって、本発明の溶接ワイヤの中のNi含有量は、16~20%に制御され、既存の低温鋼高Ni溶接ワイヤと比較して、Ni含有量は3分の2以上削減され、合金のコストが大幅に削減されている。
【0017】
(3)本発明において、N元素の減少によるオーステナイトの安定性の低下を補うために、他のオーステナイト安定化合金元素を添加する必要があり、Niの非常に効果的な代替元素として、Mnもオーステナイトを安定化させる強い効果を有すると同時に、固溶体強化によりオーステナイトの強度を向上させることもできる。本発明において、含有量が12%以上のMnは、他の元素と組み合わせると、安定なオーステナイト構造が得られ、-196℃でも安定した結晶構造を維持することができる。しかし、含有量が多すぎるMnは、粒界に偏析し粒界を弱める傾向があるため、低温衝撃靭性を低減し、さらに重要なことに、Mn元素が多すぎると、溶融金属状態でMn蒸気を形成し、揮発しやすくなり、溶接作業者の健康に深刻な損傷を与え、環境汚染を引き起こす。真空デガッシング実験の結果によると、Mnの質量百分率が15%以下の場合、溶融状態のワイヤ金属が3mbarの真空下で10min脱気された後、Mnの質量百分率が0.2%以下しか減少せず、揮発現象は明らかではないが、Mnの質量百分率が22%を超えると、同じ条件での真空デガッシング処理後、Mnの揮発現象が激しくなり、Mn含有量が多すぎる場合、その質量百分率の低下が1%を超えることが考えられる。したがって、本発明は、Mn含有量を15%以下に制御することにより、溶接中の溶融金属のMnの揮発が大幅に低減され、溶接ワイヤの作業性を改善した。また、高ニッケル構成要素で設計された既存の溶接ワイヤと比較すれば、本発明で採用された中高マンガン構成要素の設計は、高マンガン鋼の母材の化学組成にもっと近い、そのため、溶接継手のマンガン元素濃度勾配が低減され、溶接融着線付近の構造と特性の変化を低減し、溶接ワイヤに母材の組成と良好な適合性を持たせる。
【0018】
(4)本発明において、Crはマルテンサイト変換温度を低下させると同時に固溶体強化効果を生み出すこともでき、2%以上の含有量が本発明において役割を果たすことができるが、本発明において、Crの含有量が5%を超えると、粒界に粗い炭化物が容易形成され析出し、粒界の強度を低下させ、衝撃靭性を低下させる。
【0019】
(5)本発明において、Cは、マルテンサイト変換温度を著しく低下させ、オーステナイトの安定性を向上させる効果があり、著しい固溶体強化効果も有するが、含有量が多すぎると、過度の強化効果と粗大な炭化物の析出につながり、衝撃靭性を低下させるので、本発明は、Cの含有量を0.2~0.4%の最適範囲に制御している。
【0020】
(6)本発明は、PおよびSの含有量を厳密に制御し、この2つの元素が粒界に偏析することにより、溶接金属に液化亀裂および再熱亀裂を引き起こすことがあり、溶接金属および溶接継手の低温衝撃靭性を著しく低下させ、SもMnとMnSに形成し、溶接金属の機械的特性を劣化させるので、本発明では、溶接金属に対するこの2つの元素の悪影響を低減するようにP≦0.004%、S≦0.002%にしている。
【0021】
(7)本発明において、オーステナイト相を主成分とする溶接金属を凝固させる場合、凝固割れの傾向を低減するために、2~4%のWが添加され、凝固温度範囲および凝固割れの傾向を低減できる。粒界での粗い炭化物の析出を抑制するために、0.1~1.2%のMoが添加され、また、Moの添加は溶接金属の強度を高めることにも役立つ。0.01~0.2%のTiを添加すると、熱サイクル中の結晶粒の粗大化が妨げられ、結晶粒サイズの低減ができ、溶接金属の機械的特性の改善に役立つ。溶接金属の性能を向上させるために、0.01~0.2%のNbを添加することによって、微細で分散された炭化物析出が形成でき、強度が向上させると同時に、結晶粒の微細化にも役立ち、低温靭性を向上させる。また、0.02~0.1%の窒素元素を添加することによって、固溶体強化効果が得られ、溶接金属の機械的特性を向上させることができる。
【0022】
(8)本発明で設計された溶接ワイヤによって形成された溶接金属のV字型試験片が-196℃でのシャルピー振り子衝撃試験中の衝撃吸収エネルギーは≧34Jである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
実施例1
本実施例は、化学組成および質量百分率が、C:0.29%、Mn:14.1%、Ni:17%、Cr:3.1%、P≦0.004%、S≦0.002%で残部はFeおよび不可避的不純物である高マンガン低温鋼のサブマージアーク溶接用の溶接ワイヤを提供する。
【0024】
その溶接方法として、使用する溶接ワイヤの直径は2.4mmで、サブマージアーク溶接法によって、厚さが21mm、Mn含有量が23.8%の高マンガン低温鋼の鋼板を溶接する。高マンガン低温鋼板の開先がV型で、片側の開先角度が30°であり、フラックスはINCOFLUX9(SMC)を使用し、溶接電流は410A、アーク電圧は27V、溶接速度は34cm/min、溶接入熱は18kJ/cmである。
【0025】
溶接ワイヤで形成された溶接金属のV型試験片が-196℃でのシャルピー振り子衝撃試験(GB/T229-2007)中の衝撃吸収エネルギーKV2は69Jで、溶接金属の微細構造はオーステナイトであり、凝固割れや再熱割れがなく、高マンガン低温鋼が液化天然ガス貯蔵タンクやその他の機器の建設に使用する際の溶接金属の低温靭性に対する要件を満たしている。
【0026】
実施例2
本実施例は、化学組成および質量百分率が、C:0.2%、Mn:15%、Ni:16%、Cr:5%、P≦0.004%、S≦0.002%で残部はFeおよび不可避的不純物である高マンガン低温鋼のサブマージアーク溶接用の溶接ワイヤを提供する。
【0027】
その溶接方法として、使用する溶接ワイヤの直径は4mmで、サブマージアーク溶接法によって、厚さが18mm、Mn含有量は質量百分率が24%の高マンガン低温鋼の鋼板を溶接する。高マンガン低温鋼板の開先がV型で、片側の開先角度が30°であり、フラックスはINCOFLUX9(SMC)を使用し、溶接電流は550A、アーク電圧は30V、溶接速度は51cm/min、溶接入熱は19kJ/cmである。
【0028】
溶接ワイヤで形成された溶接金属のV型試験片が-196℃でのシャルピー振り子衝撃試験(GB/T229-2007)中の衝撃吸収エネルギーKV2は46Jで、溶接金属の微細構造はオーステナイトであり、凝固割れや再熱割れがなく、高マンガン低温鋼が液化天然ガス貯蔵タンクやその他の機器の建設に使用する際の溶接金属の低温靭性に対する要件を満たしている。
【0029】
実施例3
本実施例は、化学組成および質量百分率が、C:0.4%、Mn:12%、Ni:20%、Cr:2%、P≦0.004%、S≦0.002%で残部はFeおよび不可避的不純物である高マンガン低温鋼のサブマージアーク溶接用の溶接ワイヤを提供する。
【0030】
その溶接方法として、使用する溶接ワイヤの直径は2.4mmで、サブマージアーク溶接法によって、厚さが25mm、Mn含有量が22.5%の高マンガン低温鋼の鋼板を溶接する。高マンガン低温鋼板の開先がV型で、片側の開先角度が30°であり、フラックスはINCOFLUX9(SMC)を使用し、溶接電流は430A、アーク電圧は30V、溶接速度は37cm/min、溶接入熱は21kJ/cmである。
【0031】
溶接ワイヤで形成されたV型試験片が-196℃でのシャルピー振り子衝撃試験(GB/T229-2007)中の衝撃吸収エネルギーKV2は77Jで、溶接金属の微細構造はオーステナイトであり、凝固割れや再熱割れがなく、高マンガン低温鋼が液化天然ガス貯蔵タンクやその他の機器の建設に使用する際の溶接金属の低温靭性に対する要件を満たしている。
【0032】
実施例4
本実施例は、化学組成および質量百分率が、C:0.27%、Mn:13.8%、Ni:17.5%、Cr:3%、W:3.2%、Mo:0.6%、Ti:0.04%、Nb:0.05%、N:0.06%、P≦0.004%、S≦0.002%で残部はFeおよび不可避的不純物である高マンガン低温鋼のサブマージアーク溶接用の溶接ワイヤを提供する。
【0033】
その溶接方法として、使用する溶接ワイヤの直径は2.4mmで、サブマージアーク溶接法によって、厚さが21mm、Mn含有量が23.8%の高マンガン低温鋼の鋼板を溶接する。高マンガン低温鋼板の開先がV型で、片側の開先角度が30°であり、フラックスはINCOFLUX9(SMC)を使用し、溶接電流は405A、アーク電圧は27V、溶接速度は34cm/min、溶接入熱は18kJ/cmである。
【0034】
溶接ワイヤで形成された溶接金属のV型試験片が-196℃でのシャルピー振り子衝撃試験(GB/T229-2007)中の衝撃吸収エネルギーKV2は86Jで、溶接金属の微細構造はオーステナイトであり、凝固割れや再熱割れがなく、高マンガン低温鋼が液化天然ガス貯蔵タンクやその他の機器の建設に使用する際の溶接金属の低温靭性に対する要件を満たしている。
【0035】
本発明は、高マンガン低温鋼のサブマージアーク溶接用の低コストで使いやすい溶接ワイヤを提供する。溶接ワイヤによって形成された溶接金属は、優れた低温衝撃靭性を有し、高マンガン低温鋼が液化天然ガス貯蔵タンクやその他の機器の建設に使用する際の溶接金属の低温靭性に対する要件を満たしている。
【0036】
上記の実施例に加えて、本発明はまた、他の実施形態を有することができる。同等の置換または同等の変換によって形成されるすべての技術的解決策は、本発明の保護範囲に含まれるものとする。
【0037】
(付記)
(付記1)
化学組成および質量百分率が、C:0.2%~0.4%、Mn:12%~15%、Ni:16%~20%、Cr:2%~5%、P≦0.004%、S≦0.002%で残部はFeおよび不可避的不純物である、
ことを特徴とする高マンガン低温鋼のサブマージアーク溶接のための溶接ワイヤ。
【0038】
(付記2)
化学組成および質量百分率が、C:0.2%~0.4%、Mn:12%~15%、Ni:16%~20%、Cr:2%~5%、P≦0.004%、S≦0.002%、W:2%~4%、Mo:0.1%~1.2%、Ti:0.01%~0.2%、Nb:0.01%~0.2%、N:0.02%~0.1%で残部はFeおよび不可避的不純物である、
ことを特徴とする付記1に記載の高マンガン低温鋼のサブマージアーク溶接のための溶接ワイヤ。
【0039】
(付記3)
化学組成および質量百分率が、C:0.29%、Mn:14.1%、Ni:17%、Cr:3.1%、P≦0.004%、S≦0.002%で残部はFeおよび不可避的不純物である、
ことを特徴とする付記1に記載の高マンガン低温鋼のサブマージアーク溶接のための溶接ワイヤ。
【0040】
(付記4)
化学組成および質量百分率が、C:0.2%、Mn:15%、Ni:16%、Cr:5%、P≦0.004%、S≦0.002%で残部はFeおよび不可避的不純物である、
ことを特徴とする付記1に記載の高マンガン低温鋼のサブマージアーク溶接のための溶接ワイヤ。
【0041】
(付記5)
化学組成および質量百分率が、C:0.4%、Mn:12%、Ni:20%、Cr:2%、P≦0.004%、S≦0.002%で残部はFeおよび不可避的不純物である、
ことを特徴とする付記1に記載の高マンガン低温鋼のサブマージアーク溶接のための溶接ワイヤ。
【0042】
(付記6)
化学組成および質量百分率が、C:0.27%、Mn:13.8%、Ni:17.5%、Cr:3%、W:3.2%、Mo:0.6%、Ti:0.04%、Nb:0.05%、N:0.06%、P≦0.004%、S≦0.002%で残部はFeおよび不可避的不純物である、
ことを特徴とする付記2に記載の高マンガン低温鋼のサブマージアーク溶接のための溶接ワイヤ。
【0043】
(付記7)
直径2~4mmの溶接ワイヤを使用し、サブマージアーク溶接法によって、厚さが15~30mmで、Mn含有量が20%を超える高マンガン低温鋼の鋼板を溶接し、開先はV型で、溶接電流は400~560A、アーク電圧は25~32V、片側の開先角度は30°、溶接速度は30~55cm/min、溶接入熱は16~23kJ/cmである、
ことを特徴とする高マンガン低温鋼のサブマージアーク溶接のためのワイヤ溶接方法。