(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】僧帽弁のための経カテーテル固着アセンブリ、僧帽弁、及び関連する方法
(51)【国際特許分類】
A61F 2/24 20060101AFI20221213BHJP
【FI】
A61F2/24
(21)【出願番号】P 2021547044
(86)(22)【出願日】2019-10-21
(86)【国際出願番号】 US2019057145
(87)【国際公開番号】W WO2020086427
(87)【国際公開日】2020-04-30
【審査請求日】2022-07-19
(32)【優先日】2018-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519358391
【氏名又は名称】オーパス メディカル セラピーズ、エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ラジャゴパル、ビベク
(72)【発明者】
【氏名】サラビア、ジェイム エデュアルド
(72)【発明者】
【氏名】リオ、イェンチン
【審査官】土谷 秀人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0289474(US,A1)
【文献】国際公開第2017/117560(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0250590(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0196393(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0340443(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
僧帽弁を低侵襲的に固定することにより、天然の僧帽弁を置換するために、アンカーを心臓の心室中隔に埋め込むためのアンカー・アセンブリであって、
血管内で導入して前記心室中隔の固着部位に固着するように構成されており、かつ、サイズ決めされている前記アンカーであって、前記アンカーは、アンカー・キャップと左心室ディスクと右心室ディスクと中隔コネクタとを備え、前記アンカー・キャップは、前記左心室ディスクから近位側に延在し、前記中隔コネクタは、前記左心室ディスクと前記右心室ディスクとの間に延在し、前記中隔コネクタは、前記心室中隔を通って延在するようにサイズ決めされており、かつ、構成されており、前記左心室ディスクおよび前記右心室ディスクが前記心室中隔の対向する側に位置決めされている、前記アンカーと、
第1の表面構成によって規定されている遠位端部分を有する送達ケーブルを備えるアンカー送達システムであって、前記アンカーは、前記送達ケーブルの前記遠位端部分の前記第1の表面構成と噛合するように、第2の構成を有する噛合部分を備える、アンカー送達システムと、
ドッキング・リングと、前記ドッキング・リングに接続されている少なくとも1つのテザー・ロッドとを備えるテザー・アセンブリであって、前記ドッキング・リングは、前記アンカー・キャップ上に位置決めされるように構成されている中央のアパーチャを規定する、テザー・アセンブリと
、
前記右心室ディスクから遠位側に延在する送達ケーブル・コネクタであって、前記送達ケーブル・コネクタは、キャビティを規定し、前記送達ケーブルの第1の表面は、前記送達ケーブル・コネクタのキャビティを噛合係合するように遠位端を規定する、送達ケーブル・コネクタと
を備える、アンカー・アセンブリ。
【請求項2】
前記第2の構成は、前記アンカー・キャップの近位端によって規定されており、前記第2の構成は、ねじ付きキャビティを規定し、前記送達ケーブルの前記遠位端部分は、前記アンカー・キャップのねじ付きキャビティを噛合係合することにより前記アンカー・キャップを位置決めするようにねじ止めされている、請求項1に記載のアンカー・アセンブリ。
【請求項3】
前記送達ケーブル・コネクタのキャビティは、ねじ付きであり、前記送達ケーブルの第1の表面の遠位端は、前記送達ケーブル・コネクタのねじ付きキャビティを噛合係合するようにねじ付きである、請求項1に記載のアンカー・アセンブリ。
【請求項4】
前記送達ケーブルは、長手方向に延在する管腔を規定し、前記アンカー・キャップは、長手方向に延在する管腔を規定し、前記中隔コネクタは、長手方向に延在する管腔を規定し、前記送達ケーブル・コネクタは、長手方向に延在する管腔を規定し、前記アンカー送達システムは、前記アンカー・キャップの前記管腔および前記中隔コネクタの前記管腔および前記送達ケーブル・コネクタの前記管腔および前記送達ケーブルの前記管腔を通って延在する送達ワイヤを更に備える、請求項3に記載のアンカー・アセンブリ。
【請求項5】
前記アンカー・キャップは、前記アンカー・キャップから径方向外側に延在する少なくとも1つの係止部材を備える、請求項1に記載のアンカー・アセンブリ。
【請求項6】
前記少なくとも1つの係止部材は、第1の係止位置と第2の位置との間で移動し、前記第1の
係止位置では、前記少なくとも1つの係止部材が前記アンカー・キャップの外表面から第1の距離を延在し、前記第2の位置では、前記少なくとも1つの係止部材が前記外表面から第2の距離を延在し、前記第1の距離は、前記第2の距離よりも長い、請求項5に記載のアンカー・アセンブリ。
【請求項7】
前記
ドッキング・リングは、前記少なくとも1つの係止部材の上に位置決めされると、前記少なくとも1つの係止部材を前記第1の係止位置から前記第2の位置へと押しやり、前記ドッキング・リングが前記アンカー・キャップ上で前記少なくとも1つの係止
部材の遠位側に位置決めされると、前記少なくとも1つの係止部材が、前記第1の係止位置において前記ドッキング・リングを係合する、請求項6に記載のアンカー・アセンブリ。
【請求項8】
前記左心室ディスクおよび前記右心室ディスクは、前記ディスクをシースに入れることおよび前記ディスクをシースから出すことを可能とするように選択された材料で形成されている、請求項1に記載のアンカー・アセンブリ。
【請求項9】
前記
噛合部分の第2の構成は、前記アンカー・キャップによって規定されており、前記アンカー・アセンブリは、アンカー軸と、前記アンカー軸上の少なくとも1つの係止部材とを更に備え、前記送達ケーブルの前記遠位端部分は、前記アンカー軸と取り外し可能に噛合するように構成されているアンカー・コネクタである、請求項1に記載のアンカー・アセンブリ。
【請求項10】
前記少なくとも1つの係止部材は、前記アンカー軸から外側に付勢されており、前記アンカー・コネクタは、遠位側のキャビティを規定し、前記アンカー軸の近位部分は、前記キャビティ内に選択的に収容されることにより、前記アンカーおよび前記アンカー送達システムを接続する、請求項9に記載のアンカー・アセンブリ。
【請求項11】
アンカー基部は、少なくとも1つのアンカー・フランジを規定し、前記アンカー・コネクタは、前記アンカー・フランジを受け入れるように構成されている少なくとも1つのアパーチャを規定する、請求項
9に記載のアンカー・アセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全体として、弁を心臓に低侵襲的に埋め込むための医療用アセンブリ、天然の心臓弁を置換するための新規な弁、及び弁を位置決めし制約するアンカー・デバイスに関する。本発明はまた、医療用アセンブリ及び弁の構成要素の埋込み方法に関する。より詳細には、本発明は、新規な経カテーテル弁、経カテーテル弁スカート、アンカー・デバイス、アンカー送達システム、及び弁送達デバイス、並びにかかるアセンブリに関連する、天然の僧帽弁の機能を置換するため、僧帽弁を横切って弁を血管内に埋め込むための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
経カテーテル弁は、大動脈弁及び肺動脈弁などの天然の心臓弁を置換するのに、安全で有効であることが証明されている。僧帽弁の置換に関しては、経カテーテル僧帽弁置換術(TMVR)の初期の臨床試験において、僧帽弁疾患の臨床上及び解剖学上の複雑さによって顕著な問題があったため、信頼性が低い。
【0003】
僧帽弁疾患は、主に僧帽弁閉鎖不全(MR)を引き起こすものであるが、弁の一次変性(例えば、粘膜腫性変性、心内膜炎、リウマチ疾患、若しくは他の原因)に起因するか、或いは、左心室拡張及び乳頭筋変位に対して二次的に生じる僧帽弁輪拡張及び/又は僧帽弁尖テザリングの組み合わせによって起こる可能性がある、弁尖接合不全(二次若しくは「機能的」僧帽弁閉鎖不全)に起因する。MRは、左心房圧を増加させて肺鬱血を引き起こし、それが鬱血性心不全の兆候及び症状に、つまり末梢浮腫、座位呼吸、発作性夜間呼吸困難、及び進行性労作持呼吸困難につながる。それに加えて、MRは左心室機能不全を悪化させて、生存率を減少させる。多くのMR患者が顕著な同時罹患率を有し、高い手術危険度を有するため、MRを治療する低侵襲的(即ち、経カテーテル的)方法を開発することが重要である。
【0004】
初期に開発された経カテーテル技術は、僧帽弁を置換するのではなく修復するため、重大な限定を有する。例えば、経カテーテル弁輪形成デバイス(Arto(MVRx,Inc.、米国カリフォルニア州サン・マテオ)、Cardioband(Edwards Lifesciences、米国カリフォルニア州アーバイン)、Carillon(Cardiac Dimensions、米国ワシントン州カークランド)、Millipede(Boston Scientific、米国マサチューセッツ州マールボロ)、Mitral Loop Cerclage(Tau-PNU Medical Co.Ltd.、韓国釜山)、Mitralign(Mitralign,Inc.、米国マサチューセッツ州テュークスベリー)は、僧帽弁輪の寸法を直接又は間接的に低減して、僧帽弁尖がより完全に接合できるようにすることによって、外科的弁輪形成術を模倣している。いずれにせよ、これらの技術は、再現性が不確実であることによって、また弁尖のテザリング又は異常に対処できないことによって限定される。反対に、MitraClip修復システム(Abbott Vascular、米国イリノイ州アボット・パーク)、又はPascalシステム(Edwards Lifesciences)は、弁尖を互いに縫縮して、外科的Alfieri縫合を再現することによって、弁尖異常を治療することができる。MitraClipシステムはFDA認可を受けており、多くの患者に有効であるが、有意な数の患者(>10%)がMitraClip後にMRを再発しており、多くの患者は解剖学的構造上の制限により、MitraClipを受けることができない。同様に、人工腱索療法(NeoChord DS1000(NeoChord,Inc.、米国ミネソタ州セント・ルイス・パーク)、Harpoon TSD-5及びV-chordal(Edwards Lifesciences))は、現在、非常に特定的な解剖学的構造(例えば、単独の弁尖逸脱)に限定されている。
【0005】
経カテーテル僧帽弁置換術(TMVR)は、解剖学的構造上の制限によって限定されず、MRを再発する患者はほとんどいない。依然として、現在の技術は、僧帽弁に固着するやり方に基づいた、限定及び不利な点を有する。僧帽弁尖に固着する場合、Fortis弁(Edward Lifesciences)は許容できない血栓形成率を有していた。また、天然弁尖に固着する場合、Tiara弁(Neovasc、カナダ国ブリティッシュ・コロンビア州リッチモンド)は、同じ血栓形成の問題なく成功裏に埋め込まれていた。同様に、僧帽弁輪を直接係合するCardiAQ(Edwards Lifesciences)、「ウィングレット」を用いて弁輪及び弁尖を穿孔するNaviGate(Navigate Cardiac Structures、米国カリフォルニア州レイク・フォレスト)、「砂時計」形状によって弁輪を係合するCephea(Abbott Vascular)、並びに「シャンペン・コルク様」の作用によって弁輪を係合するIntrepid弁(Medtronic、米国ミネソタ州ミネアポリス)は全て、血栓形成の問題なく埋め込まれてきた。
【0006】
いずれにせよ、これらのデバイスは僧帽弁輪に直接固着するので、僧帽弁輪運動の自由度を様々な程度まで拘束する。この自由度の拘束は左心室機能不全に寄与することがある。例えば、経カテーテル僧帽弁修復(Abbott VascularのMitraClipデバイスを使用)を心臓切開手術と比較した研究により、僧帽弁輪運動は心臓切開手術の場合の方が有意に少ないことが示されており、それが、心臓切開手術後の左心室駆出率(LVEF)が経カテーテル修復と比較して低いことの要因であったと、著者らは提案している。同様に、可撓性の僧帽弁輪形成リングを剛性のものと比較した研究により、剛性リングの方がLVEFが有意に少なく、それによって僧帽弁輪運動が可撓性リングの場合よりも拘束されることが見出されている。したがって、僧帽弁輪を拘束することにより、これらのデバイスは左心室機能に対して有害な影響を有する場合がある。
【0007】
同様に、ドッキング・システムを使用するTMVRデバイスは、僧帽弁輪運動を拘束することによって、左心室機能を減少させることがある。特に、Caisson(LivaNova,PLC、英国ロンドン)、HighLife(HighLife SAS、仏国パリ)、MValve(Boston Scientific)、及びSapien M3(Edwards Lifesciences)弁は全て、ドッキング・システムを使用して、経カテーテル人工器官を僧帽弁輪に固着する。
【0008】
僧帽弁輪を拘束することに加えて、これらのデバイスはまた、弁が僧帽弁前尖を開いたままにしたときに起こる、左心室流出路(LVOT)閉塞のリスクをもたらし、それによってLVOTから流出する固定閉塞を作り出す。これは、小さい肥大した心室を有する患者(女性に多い)における、又は顕著な僧帽弁輪石灰化を有する患者における、TMVRデバイスに特定的な限定である。
【0009】
これらの懸念及び限定を緩和するため、Tendyne弁(Abbott Vascular)は、LVOT閉塞のリスクが少なく、他のTMVRデバイスほど僧帽弁輪を拘束しない。Tendyneは、弁アンカーが腱索を介して心外テザーに取り付けられることによって、これを達成する。したがって、僧帽弁輪に対する固い定着は不要であり、この弁の狭い弁輪内部分は、他の弁と同じ程度まで僧帽弁前尖をLVOTに押し込まない。Tendyneの問題は、経心尖アクセス(左心室の切開)を要することであり、これが患者によっては左心室機能に有害な場合がある。
【0010】
経心尖アクセスを回避し、僧帽弁輪を拘束しないか、又はLVOT閉塞を誘発せず、Alta弁(4C Medical Therapies)は、左心房内の大きい可撓性のボール・ケージによって定位置で保持される弁輪上弁から成る。しかしながら、このボール・ケージが、線維症などの心房異常を誘発し、それによって心房細動及び/又は心房収縮期機能の損失を引き起こすかどうかは不明である。更に、天然の僧帽弁尖が機能し続けることで血流障害が引き起こされ、それによって人工弁尖機能が変わることがある。
【0011】
したがって、経心尖アクセスなしに送達することができ、LVOT閉塞のリスクが最小限であり、心房又は僧帽弁輪に固着しないことによって、心房及び僧帽弁輪が正常に機能することを可能にし、処置中に完全に再位置決め可能及び回収可能である、僧帽弁輪を横切って配置される経カテーテル弁を提供することは、関連技術において依然として望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本明細書に提示するのは、天然の僧帽弁の機能を置換する、僧帽弁を横切って低侵襲的に埋め込まれる医療用アセンブリである。本明細書に開示する方法は、経中隔アクセスによって僧帽弁を、また弁輪内又は弁輪上アンカーであることができる弁アンカーを、心室中隔に埋め込むことによって、僧帽弁輪の固着及び拘束を回避すると同時に、LVOT閉塞のリスクを最小限に抑える。したがって、有益には、システムのどの部分も、埋込みのために開胸手術及び経弁尖アクセスを要しない。
【0013】
一態様では、システムは、経大腿静脈心房間経中隔ガイドと、スネア・シースを左心室内へと送達するために心房中隔を交差するのを可能にする経中隔交差針とを備え、左心室内へのスネアの送達は心室中隔に隣接して行われる。
【0014】
システムは更に、経頸静脈心室間経中隔ガイドと、心室中隔を交差し、次いで左心室内に位置決めされたスネア・シース内へとワイヤをスネアするのを可能にする、高周波交差ワイヤとを備える。心房間経中隔ガイドを介してワイヤを体外に外在化して、ワイヤ・ループが形成され、ワイヤは経頸静脈ガイドの外側から経大腿ガイドの外側まで延在する。交換カテーテルはワイヤ・ループを超えて前進させられ、高周波ワイヤはより大きく高剛性のワイヤに交換される。
【0015】
一態様では、システムは、ワイヤ・ループを超えて前進する順行性又は逆行性アンカー送達シースと、テザーを受け入れるように構成されたアンカー・キャップに取り付けられた順行性又は逆行性心室中隔アンカーとを備える。テザーは、1つ又は複数のコードに付着するように構成され、テザーは経カテーテル弁に付着する。
【0016】
様々な態様によれば、心室中隔アンカーは、心室中隔要素によって接続された右心室及び左心室ディスクから成ってもよく、それらはそれぞれ、ニチノール、ステンレス鋼、チタン、又はコバルト・クロムなどであるがそれらに限定されない、任意の合金で構成されてもよい。アンカーの各要素は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)若しくはポリエチレン・テレフタレート(PET)などであるがそれらに限定されない合成材料、又はウシ若しくはブタの心臓周囲組織などであるがそれらに限定されない生体膜のどちらかで被覆されてもよい。
【0017】
アンカー・キャップも任意の合金で構成され、心室中隔アンカーの左心室ディスクに結合される。逆行性心室中隔アンカー(中隔の左心室側から送達される)により、アンカー・キャップの近位端は、送達ケーブルの遠位端の「雄」を受容する、内側の「雌」ねじを規定する(define)。一態様では、送達ケーブルはアンカー・キャップに取り付けられたままであり、テザーのドッキング・リングがアンカーと結合するまで、テザーをガイドするのに使用される。最後に、送達ケーブルはアンカー・キャップから緩められ、除去されてもよい。
【0018】
順行性心室中隔アンカー(中隔の右心室側から送達される)により、アンカー・キャップは、ワイヤ・ループの導管である。右心室ディスクは、順行性送達ケーブルの遠位端の「雄」を受容する、内側の「雌」ねじを規定するケーブル・コネクタを有する。順行性送達ケーブルはまた、ワイヤ・ループの導管としての役割を果たすので、ワイヤは、経大腿シースの外部で始まり、心室中隔アンカーのアンカー・キャップを経由し、中隔アンカーの右心室側に取り付けられた送達ケーブルを通り、経頸静脈シースから出る。アンカー・キャップを通って延在するワイヤ・ループは、テザーのドッキング・リングがアンカーと結合するまで、テザーをガイドする。結合後、ワイヤ・ループは除去されてもよく、順行性送達ケーブルは緩められてもよく、心室中隔アンカーが完全に配備され、テザーがアンカー・キャップに結合される。
【0019】
一態様では、テザーは、ドッキング・リング・アームの近位端に規定されるアイレットを用いて、少なくとも1つのドッキング・リング・アームに取り付けられた、ドッキング・リングを有する。各アイレットは、フックを介してアイレットに付着する、テザー・ロッドの遠位端に接続する。テザー・ロッドは任意の合金で構成され、テザー・ロッドの近位端はコードに結合される。一態様では、テザーのドッキング・リングはアンカー・キャップを超えて前進させられて、アンカー・キャップの突出する係止アームを押し下げる。別の態様では、ドッキング・リングはアンカー・キャップの端部に達して、突出する係止アームを押し出し、それによってドッキング・リングを、またしたがってテザーを適所で係止することを可能にする。別の態様では、適所に係止された後であっても、テザーは、アンカー・キャップ又はアンカーねじの位置に影響を及ぼすことなく、アンカー・キャップの長手方向軸線を中心にして自由に回転できる。回収する場合、弁送達カテーテルは係止アームを超えて戻り、それによってアームを押し下げ、テザーのドッキング・リングを後退させるのを可能にする。
【0020】
一態様では、システムは、弁を心室中隔に結合及び/又は固定するように構成されたテザーを備え、経カテーテル弁は、頂部又は下縁に統合された、弁尖を収容する本体を備える。
【0021】
一態様では、経カテーテル弁は自己拡張性であり、ニチノールで構成され、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)若しくはポリエチレン・テレフタレート(PET)などであるがそれらに限定されない合成材料、又はウシ若しくはブタの心臓周囲組織などであるがそれらに限定されない生体膜のどちらかで被覆される。
【0022】
経カテーテル心臓弁の弁尖は、一態様によれば、ウシ、ウマ、又はブタの心臓周囲組織で構成されるが、それらに限定されない。別の態様では、経カテーテル心臓弁は、展開部位における弁輪よりも大きい直径を有する膜で被覆されるので、使用の際、膜は僧帽弁輪を実質的に被覆する。
【0023】
経カテーテル弁のフレームは、その弁輪内形態では、円筒の底部が弁輪の高さ以下にあり、円筒の頂部が心房内へと延在する、円筒形状で始まる。円筒の頂部から上縁が延在し、1つ又は複数のワイヤ延長部で構成され、レーザー切断又は成形されたニチノールで作られる。これらの延長部は、線、円弧、フック、円、楕円、正弦曲線、又は3辺以上の多角形などであるがそれらに限定されない形状に適応される。上縁の延長部は、弁の本体のように、合成又は生体膜で被覆され、及び/又はそれと接続される。上縁は弁体に垂直であるか、又は凸状若しくは凹状どちらかの曲線として、心房床に向かって曲がってもよい。上縁が心房床に向かって曲がる際の封止を容易にするため、被覆生地は、「伸縮性」を可能にする織地又は編地のどちらかから成って、心房床のトポグラフィに適合する能力を改善している。
【0024】
経カテーテル弁の弁輪上形態では、フレームは、左心房の床に位置決めされた下縁で始まる。下縁は、1つ又は複数のワイヤ延長部で構成され、レーザー切断又は成形されたニチノールで作られる。これらの延長部は、線、円弧、フック、円、楕円、正弦曲線、又は3辺以上の多角形などであるがそれらに限定されない形状に適応される。下縁の延長部は、弁の本体のように、合成又は生体膜で被覆され、及び/又はそれと接続される。下縁は経カテーテル弁体に垂直であるか、又は凸状若しくは凹状どちらかの曲線として、心房床に向かって曲がってもよい。下縁が心房床に向かって曲がる際の封止を容易にするため、被覆生地は、「伸縮性」を可能にする織地又は編地のどちらかから成って、心房床のトポグラフィに適合する能力を改善している。下縁から、弁尖を収容する円筒が左心房内へと延在する。
【0025】
一態様では、弁体の内部又は外部に沿って長手方向に延びる、弁の円筒の頂部に隣接して、断面が円、楕円、放物線、若しくは双曲線の任意の部分である円筒の形状を取るか、或いは3辺以上の多角形の形状をした平坦な基部及び頂部を有する多面体の形状を取る、1つ又は複数の導管がある。これらの導管は、弁体を被覆する膜から構築されるか、又はステンレス鋼、ニチノール、若しくは他の合金で作られてもよいが、それらに限定されない。1つ又は複数の導管は中空であり、少なくとも1つのテザーに取り付けられた少なくとも1つのコードを収納し、各導管は、弁の心房表面付近で分離可能なロックに付着する。
【0026】
分離可能なロックは、経カテーテル弁を、心室中隔アンカーに結合されたテザーで構成された固着システムにしっかり固定し、アンカーは心室中隔にしっかり取り付けられる。一態様では、テザーは、アンカー・キャップを介して心室中隔アンカーに結合され、少なくとも1つのコードは、スカート本体の少なくとも1つの導管を通ってテザーから延在する。したがって、経カテーテル弁は、導管を介してコード上にねじ止めされるので、経カテーテル弁はコードと摺動可能に相互作用する。別の態様では、コードの近位端は、ユーザがアクセス可能な心臓の外部に延在する、縫合糸に付着する。
【0027】
システムは更に、近位端が送達システムに取り付けられ、遠位端が、経カテーテル弁体の近位端に取り付けられる分離可能なロックに可逆的に結合される、少なくとも1つの心房位置決めロッドを備える。位置決めロッドの内腔を縫合糸及び/又はコードが通るので、位置決めロッドは経カテーテル弁体を押すか又は引っ張り、それによって関連する上縁又は下縁に異なる力及び屈曲が加えられて、心房床に付加することが可能になる。別の態様では、位置決めロッドの回転、及び/又は位置決めロッドの内部要素の押し若しくは引きによって、分離可能なロックがコード及び/又は縫合糸を係合して、コード及び/又は縫合糸を経カテーテル弁体に固定し、心房床に対する上縁又は下縁の力及び屈曲を維持し、経カテーテル弁の位置を固定する。
【0028】
埋込みの関連方法も提供される。心臓に低侵襲的に埋め込まれる医療用デバイス及びシステムの、他の装置、方法、システム、特徴、及び利点が、以下の図面及び詳細な記載を検証することにより、当業者には明白となるであろう。全てのかかる追加の装置、方法、システム、特徴、及び利点は本明細書内に含まれ、心臓に低侵襲的に埋め込まれる医療用アセンブリの範囲内にあり、添付の特許請求の範囲によって保護されるものとする。
例えば、本願は以下の項目を提供する。
(項目1)
僧帽弁を低侵襲的に固定して天然の僧帽弁を置換するため、アンカーを心臓の心室中隔に埋め込むアンカー・アセンブリであって、
血管内で導入して前記心室中隔の固着部位に固着するように構成されサイズ決めされ、左心室ディスク、右心室ディスク、及び前記左心室ディスクと前記右心室ディスクとの間に延在する中隔コネクタから近位側に延在するアンカー・キャップを備え、前記中隔コネクタが前記心室中隔を通って延在するようにサイズ決めされ構成され、前記左心室ディスク及び前記右心室ディスクが前記心室中隔の対向する側に位置決めされた、前記アンカーと、
第1の表面構成によって規定される遠位端部分を有する送達ケーブルを備え、前記アンカーが、前記送達ケーブルの遠位端部分の第1の表面構成と噛合するような、第2の構成を有する噛合部分を備える、アンカー送達システムと、
ドッキング・リングと、前記ドッキング・リングに接続された少なくとも1つのテザー・ロッドとを備え、前記ドッキング・リングが、前記アンカー・キャップ上に位置決めされるように構成された中央のアパーチャを規定する、テザー・アセンブリとを備える、アンカー・アセンブリ。
(項目2)
前記第2の構成が、前記アンカー・キャップの近位端によって規定され、ねじ付きキャビティを規定し、前記アンカー・キャップのねじ付きキャビティを噛合係合して前記アンカー・キャップを位置決めするように、前記送達ワイヤの遠位端部分がねじ止めされる、項目1に記載のアンカー・アセンブリ。
(項目3)
前記アンカーが、前記右心室ディスクから遠位側に延在する送達ケーブル・コネクタを更に備え、前記送達ケーブル・コネクタがねじ付きキャビティを規定し、前記コネクタのねじ付きキャビティを噛合係合するように、前記送達ケーブルの第1の表面がねじ付き遠位端を規定する、項目1に記載のアンカー・アセンブリ。
(項目4)
前記送達ケーブルが長手方向に延在する管腔を規定し、前記アンカー・キャップが長手方向に延在する管腔を規定し、前記中隔コネクタが長手方向に延在する管腔を規定し、前記送達ケーブル・コネクタが長手方向に延在する管腔を規定し、前記アンカー送達システムが、前記アンカー・キャップ、前記中隔コネクタ、前記送達ケーブル・コネクタ、及び前記送達ケーブルの前記管腔を通って延在する送達ワイヤを更に備える、項目3に記載のアンカー・アセンブリ。
(項目5)
前記アンカー・キャップが、前記アンカー・キャップから径方向外側に延在する少なくとも1つの係止部材を備える、項目1に記載のアンカー・アセンブリ。
(項目6)
前記少なくとも1つの係止部材が、前記少なくとも1つの係止部材が前記アンカー・キャップの外表面から第1の距離を延在する第1の係止位置と、前記少なくとも1つの係止部材が前記外表面から第2の距離を延在する第2の位置との間で移動し、前記第1の距離が前記第2の距離よりも長い、項目5に記載のアンカー・アセンブリ。
(項目7)
前記テザー・ドッキング・リングが、前記少なくとも1つの係止部材の上に位置決めされると、前記少なくとも1つの係止部材を前記第1の係止位置から前記第2の位置へと押しやり、前記ドッキング・リングが前記アンカー・キャップ上で前記少なくとも1つの係止アームの遠位側に位置決めされると、前記少なくとも1つの係止部材が、前記第1の係止位置において前記ドッキング・リングを係合する、項目6に記載のアンカー・アセンブリ。
(項目8)
前記第1及び第2の心室ディスクが、前記ディスクをシースに入れること及びシースから出すことができるように選択された材料で形成される、項目1に記載のアンカー・アセンブリ。
(項目9)
前記アンカー噛合部分の第2の構成が前記アンカー・キャップによって規定され、前記アンカー・アセンブリが、アンカー軸と前記アンカー軸上の少なくとも1つの係止部材とを更に備え、前記送達ケーブルの遠位端部分が、前記アンカー軸と取外し可能に噛合するように構成されたアンカー・コネクタである、項目1に記載のアンカー・アセンブリ。
(項目10)
前記少なくとも1つの係止部材が前記アンカー軸から外側に付勢され、前記アンカー・コネクタが遠位側キャビティを規定し、前記アンカー軸の近位部分が前記キャビティ内に選択的に収容されて、前記アンカー及び前記アンカー送達システムを接続する、項目9に記載のアンカー・アセンブリ。
(項目11)
前記アンカー基部が少なくとも1つのアンカー・フランジを規定し、前記アンカー・コネクタが、前記アンカー・フランジを受け入れるように構成された少なくとも1つのアパーチャを規定する、項目10に記載のアンカー・アセンブリ。
(項目12)
弁を受け入れ、血管内で導入し、展開部位に埋め込むように構成され、天然の心臓弁を置換するように構成されサイズ決めされ、心房封止スカートの展開部位に隣接する心房床に実質的に形状適合し、心房床に実質的に載るように構成された、心房封止スカートであって、
ほぼ円筒状であり、弁レセプタクルを規定する、心房スカート本体と、
拘束されたときは圧縮可能であって拘束から解放されると拡張する、前記心房スカート本体の下縁部の周りで円周方向に延在する、心房スカート下縁と、
前記スカート本体のアパーチャによって規定される開いた上端部を有する、少なくとも1つの導管と、
前記スカート縁を支持し、前記スカート縁の外縁部まで実質的に外側に延在する前記スカート本体下縁部に隣接する基部端部を有する、少なくとも1つの延長部材と、
前記スカート本体を支持する少なくとも1つの本体支持体と、
前記スカート縁及び本体を形成するため、前記少なくとも1つの延長部材及び前記少なくとも1つの本体支持体を被覆する膜とを備える、心房封止スカート。
(項目13)
前記心房封止スカート本体が、弁レセプタクルを規定し、弁を受け入れるように構成された、項目12に記載の心房封止スカート。
(項目14)
前記少なくとも1つの導管が、前記心房床上に位置決めされた前記心房封止スカートを係止する係止システムを受け入れるように構成された、項目12に記載の心房封止スカ
ート。
(項目15)
前記係止システムが、前記下縁を前記心房床に対して係止する、前記導管内に位置決めされた分離可能なロックを備える、項目14に記載の心房封止スカート。
(項目16)
前記心房スカート縁が、前記心房床と形状適合する前はほぼ凸状である、項目12に記載の心房封止スカート。
(項目17)
僧帽弁を低侵襲的に埋め込んで天然の僧帽弁を置換するため、僧帽弁を心臓の心室中隔に固着するアンカー・アセンブリであって、
心室中隔に埋め込むように構成されたアンカーねじを備え、前記アンカーねじの近位端から延在するアンカー基部と、前記アンカー基部の近位端から延在する可撓性コネクタと、前記アンカー基部から近位方向に延在するアンカー軸とを備える、アンカーと、
前記アンカー基部と協働して前記アンカー基部に選択的に接続するように構成された遠位端を有するコネクタ・ロッドと、前記コネクタ・ロッドを受け入れるチャネルを規定するアンカー・コネクタとを備え、前記アンカー・コネクタが前記アンカー軸を受け入れるように構成された、アンカー送達システムとを備える、アンカー・アセンブリ。
(項目18)
前記アンカー軸が、前記アンカー軸から径方向外側に延在し、前記アンカー・コネクタの近位端面と協働するように構成された、少なくとも1つの係止部材を備える、項目17に記載のアンカー・アセンブリ。
(項目19)
前記アンカーねじに隣接する前記アンカー基部から径方向外側に延在する、少なくとも1つのスタビライザを更に備える、項目17に記載のアンカー・アセンブリ。
(項目20)
前記少なくとも1つのスタビライザが非線形である、項目19に記載のアンカー・アセンブリ。
(項目21)
前記少なくとも1つのスタビライザが、前記アンカー基部の水平方向軸線に対して鋭角で径方向外側に延在する、項目19に記載のアンカー・アセンブリ。
(項目22)
前記コネクタ・ロッドの遠位端が第1の表面構成を有し、前記アンカー軸が第2の表面構成を有するチャネルを規定し、前記第1及び表面構成が噛合係合して前記コネクタ・ロッドを前記アンカー軸に接続する、項目17に記載のアンカー・アセンブリ。
(項目23)
前記コネクタ・ロッドが前記アンカー軸から取外し可能である、項目22に記載のアンカー・アセンブリ。
(項目24)
ドッキング・リングと少なくとも1つのテザー・ロッドとを含むテザー・アセンブリを更に備え、前記ドッキング・リングが前記アンカー・コネクタを受け入れるように構成され、前記少なくとも1つのテザー・ロッドが前記ドッキング・リングから近位方向に延在する、項目18に記載のアンカー・アセンブリ。
(項目25)
前記少なくとも1つの係止部材が、前記少なくとも1つの係止部材が前記アンカー・キャップの外表面から第1の距離を延在する第1の係止位置と、前記少なくとも1つの係止部材が前記外表面から第2の距離を延在する第2の位置との間で移動し、前記第1の距離が前記第2の距離よりも長い、項目24に記載のアンカー・アセンブリ。
(項目26)
前記テザー・ドッキング・リングが、前記少なくとも1つの係止部材の上に位置決めされると、前記少なくとも1つの係止部材を前記第1の係止位置から前記第2の位置へと押しやり、前記ドッキング・リングが前記アンカー・キャップ上で前記少なくとも1つの係止アームの遠位側に位置決めされると、前記少なくとも1つの係止部材が、前記第1の係止位置において前記ドッキング・リングを係合する、項目25に記載のアンカー・アセンブリ。
(項目27)
僧帽弁を低侵襲的に固着して天然の僧帽弁を置換するため、アンカーを心臓の心室中隔に埋め込む方法であって、
埋込み部位で心室中隔に埋め込むように構成されたアンカー遠位端を含むアンカー・アセンブリであって、前記アンカーが、前記アンカー遠位端の近位端から延在するアンカー基部と、前記アンカー基部の近位端に可撓的に接続された可撓性コネクタと、前記可撓性コネクタから近位方向に延在するアンカー軸とを備える、アンカー・アセンブリを提供するステップと、
前記アンカー・コネクタを前記アンカー基部の上に位置決めすることによって、コネクタ・ロッド及びアンカー・コネクタを含むアンカー送達システムを前記アンカー・アセンブリに接続するステップと、
前記アンカー・コネクタを前記アンカー基部に係止するステップと、
前記アンカー・アセンブリを、前記心室中隔に隣接するガイドワイヤを超えて前進させるステップであって、前記アンカー遠位端が前記埋込み部位で前記心室中隔を貫通し、反対側から出る前記アンカー遠位端を埋め込む、ステップと、
ドッキング・リング及び少なくとも1つのテザー・アームを含むテザー・ドッキング・システムを、前記ドッキング・リングから前記アンカー・コネクタを超えて前進させるステップと、
前記コネクタ・ロッドを除去するステップとを含む、方法。
(項目28)
前記アンカー遠位端がアンカーねじであり、前記アンカー・アセンブリを前進させて前記心室中隔を貫通する前記ステップが、前記アンカーねじを回転させるステップを含む、項目27に記載の方法。
(項目29)
前記アンカー・アセンブリが、前記アンカー基部から径方向外側に延在する少なくとも1つのスタビライザを更に備え、前記アンカー遠位端を埋め込む前記ステップが、前記少なくとも1つのスタビライザを用いて前記アンカー遠位端を安定させるステップを含む、項目27に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】一態様による、心臓内に位置決めされた本出願の経カテーテル弁システムを示す心臓の切欠斜視図である。
【
図2】テザーを心室中隔に固着するための逆行性アンカーを示す斜視図である。
【
図3】テザーを心臓壁に固着するための逆行性アンカーの送達ケーブルを示す斜視図である。
【
図4】経カテーテル弁を逆行性アンカーに固着するためのテザーを示す斜視図である。
【
図5】経カテーテル弁をアンカーに接続するためのテザーで構成され、テザーを心室中隔に固着するためのアンカーに結合され、アンカーのLVディスクが送達ケーブルに接続された、逆行性アンカー・アセンブリを示す斜視図である。
【
図6】経カテーテル弁をアンカーに固着するための順行性アンカーの送達ケーブルを示す斜視図である。
【
図7】テザーを心室中隔に固着するための順行性アンカーを示す斜視図である。
【
図8】経カテーテル弁を順行性アンカーに固着するためのテザーを示す斜視図である。
【
図9】経カテーテル弁をアンカーに接続するためのテザーで構成され、テザーを心室中隔に固着するためのアンカーに結合され、アンカーのRVディスクが送達ケーブルに接続され、ガイドワイヤがアセンブリを通る、順行性アンカー・アセンブリを示す斜視図である。
【
図10A】弁尖が統合された経カテーテル弁体に取り付けられた上縁で構成される、弁輪内弁の側面図である。
【
図10B】弁尖が統合された経カテーテル弁体に取り付けられた上縁で構成される、弁輪内弁の上面斜視図である。
【
図11A】弁尖が統合された経カテーテル弁体に取り付けられた下縁で構成される、弁の斜視図である。
【
図11B】弁尖が統合された経カテーテル弁体に取り付けられた下縁で構成される、弁の上面図である。
【
図12】上縁の1つの縁部が凹状構成から凸状構成へと移行する弁を有する経カテーテル弁を示す側面図である。
【
図13A】心房位置決めロッド及びコードに結合された経カテーテル弁体を示す拡大側面図である。
【
図15A】非係止位置に位置決めしている経カテーテル弁体のための係止システムを示す横断面図である。
【
図15B】係止位置に位置決めしている経カテーテル弁体のための係止システムを示す横断面図である。
【
図16A】係止位置にある係止システムの部分切欠図である。
【
図17A】接続リング及びテザリング・システムを受け入れるように構成されたアンカーねじ及びアンカー・キャップを有するアンカーの1つの段階を示す斜視図である。
【
図17B】接続リング及びテザリング・システムを受け入れるように構成されたアンカーねじ及びアンカー・キャップを有するアンカーの次の段階を示す斜視図である。
【
図17C】接続リング及びテザリング・システムを受け入れるように構成されたアンカーねじ及びアンカー・キャップを有するアンカーの次の段階を示す斜視図である。
【
図17D】接続リング及びテザリング・システムを受け入れるように構成されたアンカーねじ及びアンカー・キャップを有するアンカーの次の段階を示す斜視図である。
【
図17E】接続リング及びテザリング・システムを受け入れるように構成されたアンカーねじ及びアンカー・キャップを有するアンカーの次の段階を示す斜視図である。
【
図17F】接続リング及びテザリング・システムを受け入れるように構成されたアンカーねじ及びアンカー・キャップを有するアンカーの次の段階を示す斜視図である。
【
図18】
図18Aは、経中隔穿刺が実施されており心室中隔交差ガイドが定位置にある状態を示す斜視図である。
図18Bは、経中隔穿刺後の左心室内に位置決めされたスネアを示す斜視図である。
【
図19】
図19Aは、心室中隔交差ワイヤを受け入れるスネアを示す斜視図である。
図19Bは、中隔を横切って前進する心室中隔交差カテーテルを示す斜視図である。
図19Cは、中隔を横切って前進する心室中隔交差カテーテルを示す拡大斜視図である。
【
図20】
図20Aは、経中隔ガイド内へと前進する心室中隔交差カテーテルを示す斜視図である。
図20Bは、心室中隔交差ワイヤが0.889mm(0.035インチ)ワイヤに交換されている状態を示す斜視図である。
【
図21】
図21Aは、0.889mm(0.035インチ)レール・ワイヤを超えて心室中隔へと前進する逆行性アンカー送達シースを示す斜視図である。
図21Bは、端部が右心室内にある心室中隔を横切って位置決めされた逆行性アンカー送達シースと、シース内に位置決めされた逆行性アンカーとを示す斜視図である。
【
図22】
図22Aは、逆行性アンカーの右心室ディスクが展開されている状態を示す斜視図である。
図22Bは、逆行性アンカーの左心室ディスクが展開され、0.889mm(0.035インチ)レール・ワイヤが撤回されている状態を示す斜視図である。
【
図23】経カテーテル弁を受け入れられるように完全に展開された逆行性アンカーを示す斜視図である。
【
図24】
図24Aは、中隔を通って0.889mm(0.035インチ)レール・ワイヤを超えて前進する順行性アンカー送達シースを示す斜視図である。
図24Bは、端部が左心室内にある心室中隔を横切って位置決めされた順行性アンカー送達シースと、シース内に位置決めされた順行性アンカーとを示す斜視図である。
【
図25】
図25Aは、順行性アンカーの左心室ディスクが展開されている状態を示す斜視図である。
図25Bは、順行性アンカーの右心室ディスクが展開されている状態を示す斜視図である。
【
図26】
図26Aは、緩められ除去される順行性アンカー送達ケーブルを示す斜視図である。
図26Bは、0.889mm(0.035インチ)レール・ワイヤを適所に残して除去される順行性アンカー送達ケーブルを示す斜視図である。
図26Cは、経カテーテル弁を受け入れてドック上で順行性アンカー上へと前進させるために0.889mm(0.035インチ)レール・ワイヤを適所に残して除去された経中隔ガイドを示す斜視図である。
【
図27】
図27Aは、アンカーに近付く弁送達システムを示す斜視図である。
図27Bは、アンカーのアンカー・キャップに結合されたテザーを示す斜視図である。
【
図28】
図28Aは、弁送達ガイドが部分的に撤回されて、弁の弁輪内部分が露出している状態を示す斜視図である。
図28Bは、弁送達ガイドが完全に撤回されて、左心房内の弁の上縁が露出し、心房位置決めロッドは経カテーテル弁体に接続されたままである状態を示す斜視図である。
図28Cは、心房位置決めロッドが経カテーテル弁体に接続されたままで弁が完全に露出している状態を示す拡大斜視図である。
【
図29】
図29Aは、縫合糸のみが経カテーテル弁の本体に接続されたまま、心房ロックが係合され心房位置決めロッドが撤回された状態を示す斜視図である。
図29Bは、縫合糸のみが経カテーテル弁の本体に接続されたまま、心房ロックが係合され心房位置決めロッドが撤回された状態を示す拡大斜視図である。
図29Cは、経カテーテル本体に接続された縫合糸が弁送達シースを介して本体を出ているまま、弁が展開され弁送達システムが本体から撤回された状態を示す斜視図である。
【
図30A】弁送達シースを介して経カテーテル弁の上縁の直ぐ上まで前進させた縫合糸カッターを示す斜視図である。
【
図30B】縫合糸が弁の上縁の上方で切断された後の完全に展開された弁を示す斜視図である。
【
図31A】弁尖が統合された経カテーテル弁体に取り付けられた上縁で構成される、弁輪上弁の側面図である。
【
図31B】弁尖が統合された経カテーテル弁体に取り付けられた上縁で構成される、弁輪上弁の上面斜視図である。
【
図32A】本発明の別の態様による接続リング及びテザリング・システムを受け入れるように構成されたアンカーねじ及びアンカー・キャップを有するアンカーの分解組立図である。
【
図32B】接続されたリングがアンカー・キャップを超えて前進し適所に係止された、
図32Aの固着システムを示す側面図である。
【
図33A】本発明の別の態様によるスタビライザを含む
図32のアンカーを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明は、以下の詳細な記載、実例、及び特許請求の範囲、並びにそれらの上記及び下記の記載を参照することによって、より容易に理解される。本発明のシステム、デバイス、及び/又は方法を開示し記載する前に、本発明は、当然ながら変動し得るため、別段の指定がない限り、開示する特定のシステム、デバイス、及び/又は方法に限定されないことが理解されるべきである。また、本明細書で使用する専門用語は、単に特定の態様について記載するためのものであり、限定を意図しないことが理解されるべきである。
【0031】
本発明の以下の記載は、本発明の教示を現在知られている最良の態様で可能にするものとして提供される。当業者であれば、記載する態様に対して多数の変更が行われ、それでもなお本発明の有益な結果が得られることを認識するであろう。また、本発明の所望の利益の一部は、本発明の他の特徴を利用することなくいくつかの特徴を選択することによって得られることが、明白となるであろう。したがって、当業者であれば、本発明に対する多くの修正及び適応が可能であり、更には特定の状況において望ましい場合があり、本発明の一部であることを認識するであろう。したがって、以下の記載は本発明の原理の例証として提供され、それを限定するものではない。
【0032】
本明細書で使用するとき、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈によって別段の明示がない限り、複数形を含む。したがって、例えば、「テザー」の言及は、文脈によって別段の明示がない限り、2つ以上のテザーを有する態様を含む。
【0033】
範囲は、本明細書では、「おおよそ」1つの特定の値から、並びに/或いは「おおよそ」別の特定の値までとして表される。かかる範囲が表された場合、別の態様は、一方の特定の値から、並びに/或いは他方の特定の値までを含む。同様に、値が「約」という先行詞を使用して近似として表された場合、特定の値が別の態様を形成するものと理解される。更に、範囲それぞれの終点は、他方の終点に関連して、また他方のエンドポイントとは独立して有意であると理解される。
【0034】
本明細書で使用するとき、「任意の」又は「任意に」という用語は、続いて記載されるイベント又は状況が起こっても起こらなくてもよいこと、またその記載が、前記イベント又は状況が起こる例及び起こらない例を含むことを意味する。本明細書で使用するとき、「流体」は、自由に流れる任意の物質を指し、液体、気体、及びプラズマを含む。「流体連通」は、本明細書で使用するとき、物質が関連する構成要素の間で自由に流れることができる、任意の接続又は相対的位置決めを指す。本明細書で使用するとき、「遠位」は適用の方向を指し、「近位」はデバイスのユーザの方向を指す。
【0035】
本出願は、医療用デバイス及びシステムが心臓に低侵襲的に埋め込まれること、並びにそれらのデバイス及びシステムを埋め込む方法に関する。より具体的には、本出願は、逆行性又は順行性アンカー22又は49を心室中隔20に血管内で導入し固着し、弁66(
図10A及び
図10B、
図11A及び
図11Bを参照)を逆行性又は順行性アンカー22又は49にテザリングされた心臓に埋め込んで、天然の僧帽弁を置換するためのデバイス、方法、及びシステムに関する。また、テザリング・アセンブリはアンカー22又は49と協働して、弁66又は156をアンカー22又は49に接続する。更に、弁66は、弁が上縁67又は下縁157を介してそれぞれの心房床に形状適合して、人工器官の弁周囲逆流を防ぐように、弁体68に接続される上縁67又は下縁157を含む。本明細書の開示によれば、アンカーは、テザー及び経カテーテル弁とは独立して埋め込まれる。
【0036】
逆行性アンカー・アセンブリ
図2~
図5に示される逆行性アンカー・アセンブリ44の構成要素は、アンカー・キャップ27を有するアンカー22と、テザー36の送達を可能にする送達ケーブル32とを含む。アンカー・キャップ27は左心室ディスク26に結合され、それが中隔コネクタ24を介して右心室ディスク23に接続される。送達ケーブル32は、アンカー・キャップ27に除去可能に接続される。中隔コネクタ24は、図示されるように、心室中隔をまたぐようにサイズ決めされ構成される。しかしながら、任意に、中隔コネクタ24は、異なるサイズにされて(心室中隔の厚さに応じて、より長く若しくは短く)されてもよく、断面が円、楕円、放物線、又は双曲線の任意の部分である円筒の形状を取るか、或いは3辺以上の多角形の形状をした平坦な基部及び頂部を有する多面体の形状を取ってもよい。中隔コネクタは、ステンレス鋼、ニチノール、チタン、コバルト・クロム、又は他の合金を含むがそれらに限定されない、任意の知られている合金で構築されてもよい。別の態様では、中隔コネクタ24の合金は、ウシ、ヒツジ、ブタ、若しくはウマの心膜などの生体組織で、又は治癒を促進し炎症を制限する抗炎症薬の任意の組み合わせでコーティングされてもよい。右心室及び左心室ディスクは、ステンレス鋼、ニチノール、チタン、コバルト・クロム、又は他の合金を含むがそれらに限定されない、任意の知られている合金で構築されてもよい。それに加えて、右心室及び左心室ディスクは、円、楕円、放物線、又は双曲線の任意の部分の形状、或いは3辺以上の多角形の形状を取ってもよい。右心室及び左心室ディスクは、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリエステル、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、ポリエチレン・テレフタレート(PET)、シリコーン、天然若しくは合成ゴム、又はそれらの組み合わせから成る群からの合成材料で被覆されてもよいが、それらに限定されない。右心室及び左心室ディスクはまた、成体若しくは幼体のウシ、ヒツジ、ウマ、又はブタの心膜で被覆されてもよい。更なる態様では、アンカー22は、その右心室及び左心室ディスクに沿って位置決めされた固着要素(図示なし)を有する。これらの固着要素によって、心室中隔への定着が可能になるが、必ずしも使用された主要固定メカニズムであるとは限らない。
【0037】
使用の際、逆行性アンカー22は、右心室ディスク23をシースから出して心室中隔20の右心室表面17に接触させ、次に中隔コネクタ24を露出させ、続いて左心室ディスク26をシースから出して心室中隔20の左心室表面16に接触させることによって、心室中隔に固定される。再び左心室ディスク26を、次に中隔コネクタ24を、最後に右心室ディスク23をシースに入れることによって、逆行性アンカーは心臓壁から安全に除去されて、再位置決めされるか又は完全に除去される。
【0038】
アンカー・キャップ27は、アンカー・キャップ27から径方向外側に延在する少なくとも1つの係止アーム29を備える。係止アーム29は、テザー36(後述)の一部分をアンカー・キャップ27に解放可能に固定するようにサイズ決めされ構成される。少なくとも1つの係止アーム29は、係止部材29がアンカー・キャップ27の本体から離れて第1の距離を延在する、第1の係止位置と、係止部材29がアンカー・キャップ27から第1の距離よりも短い第2の距離を延在する、第2の非係止位置との間で移動する。アンカー・キャップ27は、各係止アーム29を第1の係止位置に押し付けるように構成された、ばねなどの少なくとも1つの付勢部材(図示なし)を備える。図示されるように、複数の係止アーム29が設けられ、アンカー・キャップ27の円周の周りで均等に離隔されるが、係止アーム29が均等に離隔される必要がないことが想到される。
【0039】
次に
図3を参照すると、送達ケーブル32は、送達ワイヤ33の遠位端に位置決めされるか又はそこに形成される、遠位側ねじ付き端部部分34を有する可撓性送達ワイヤ33を含む。送達ワイヤは、ステンレス鋼、ニチノール、又は他の合金で構築されるがそれらに限定されず、親水性コーティングを有するか若しくは有さず、又はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのポリマー・コーティングを有するか若しくは有さない。遠位側ねじ付き端部部分34は、アンカー・キャップ27の近位端31に規定されたキャビティに形成された補完的なねじ山を選択的に係合するように、サイズ決めされ構成される。
図2及び
図5を参照のこと。使用の際、遠位側ねじ付き端部部分34は、アンカー・キャップ27の近位端31内へと前進し、例えばねじ込まれて、アンカー・キャップ27を可撓性ワイヤ33の遠位端に結合する。更に十分に後述するように、遠位側ねじ付き端部部分34は、アンカー22の近位端から緩められて、可撓性ワイヤ33をアンカー22から分離する。
【0040】
本開示の別の態様によれば、
図17A~
図17Fに示されるように、アンカー・アセンブリ91が示される。アンカー91は、アンカー軸92及び順行性アンカー49を含むが、このアンカー・アセンブリ91では、逆行性アンカー22は交換することができる。図示されるように、順行性アンカー49はアンカー基部94から遠位側に延在する。アンカー基部94は、少なくとも1つの、又は図示されるように複数のアンカー・フランジ96と、それらの間の陥凹区域97とを規定する。アンカー軸92は、少なくとも1つの、又は図示されるように、
図17Bに示される複数の係止部材98を含む。係止部材98は、ばね(図示なし)などによって、アンカー軸92から径方向外側に付勢される。アンカー・コネクタ99及びコネクタ・ロッド101は、アンカー軸92と協働して順行性アンカー49に接続する。アンカー・コネクタ101は、アンカー・フランジ96を受け入れるように構成された、少なくとも1つの、又は図示されるように複数のアパーチャ1020を規定する。したがって、アンカー・コネクタ99及びコネクタ・ロッド101は、アンカー軸92に噛合接続され、それによって係止部材98を内側に押しやる。アパーチャ100及びフランジ96の協働によって、アンカー・コネクタ101及びアンカー基部94が統合される。
【0041】
順行性アンカー49が埋め込まれた後、テザー・リング102がコネクタ・ロッド101及びアンカー・コネクタ99の上に適用され、順行性アンカー49の近位端に当接する。テザー・リング102は、ほぼ円筒状の第1の遠位部分103と、第1の部分103よりも大きい直径を有する第2の近位部分104とを含む。第2の部分104は、
図17E及び
図17Fに示されるように、テザー・ロッド108を受け入れるように構成された、少なくとも1つの、又は図示されるように複数のアパーチャ106を規定する。
図17Dに示されるように、アンカー・コネクタ99及びコネクタ・ロッド101は除去される。係止部材98は径方向外側に押しやられ、それによってテザー・リング102の第2の部分104を係合して、テザー・リング102をアンカー基部94上で係止する。テザー・ロッド108は、上述したように、経カテーテル弁66又は156と協働するように動作する。
【0042】
順行性アンカー・アセンブリ
図6~
図9に示される順行性アンカー・アセンブリ63の構成要素は、アンカー・キャップ58及び送達ケーブル・コネクタ51を有するアンカー49と、テザー36の送達を可能にする送達ケーブル46とを含む。アンカー・キャップ58は左心室ディスク57に結合され、それが中隔コネクタ56を介して右心室ディスク54に接続される。送達ケーブル46は、ねじ付き端部52を介して送達ケーブル・コネクタ51に除去可能に接続される。中隔コネクタ56は、図示されるように、心室中隔をまたぐようにサイズ決めされ構成される。しかしながら、任意に、中隔コネクタ56は、異なるサイズにされて(心室中隔の厚さに応じて、より長く若しくは短く)されてもよく、断面が円、楕円、放物線、又は双曲線の任意の部分である円筒の形状を取るか、或いは3辺以上の多角形の形状をした平坦な基部及び頂部を有する多面体の形状を取ってもよい。中隔コネクタは、ステンレス鋼、ニチノール、チタン、コバルト・クロム、又は他の合金を含むがそれらに限定されない、任意の知られている合金で構築されてもよい。別の態様では、中隔コネクタ56の合金は、ウシ、ヒツジ、ブタ、若しくはウマの心膜などの生体組織で、又は治癒を促進し炎症を制限する抗炎症薬の任意の組み合わせでコーティングされてもよい。右心室及び左心室ディスクは、ステンレス鋼、ニチノール、チタン、コバルト・クロム、又は他の合金を含むがそれらに限定されない、任意の知られている合金で構築されてもよい。それに加えて、右心室及び左心室ディスクは、円、楕円、放物線、又は双曲線の任意の部分の形状、或いは3辺以上の多角形の形状を取ってもよい。右心室及び左心室ディスクは、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリエステル、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、ポリエチレン・テレフタレート(PET)、シリコーン、天然若しくは合成ゴム、又はそれらの組み合わせから成る群からの合成材料で被覆されてもよいが、それらに限定されない。右心室及び左心室ディスクはまた、成体若しくは幼体のウシ、ヒツジ、ウマ、又はブタの心膜で被覆されてもよい。更なる態様では、アンカー49は、その右心室及び左心室ディスクに沿って位置決めされた固着要素(図示なし)を有する。これらの固着要素によって、心室中隔への定着が可能になるが、必ずしも主要固定メカニズムとして使用されなくてもよい。
【0043】
使用の際、順行性アンカー49は、左心室ディスク57をシースから出して心室中隔20の左心室表面16に接触させ、次に中隔コネクタ56を露出させ、続いて右心室ディスク54をシースから出して心室中隔20の右心室表面17に接触させることによって、心室中隔に固定される。再び右心室ディスク54を、次に中隔コネクタ56を、最後に左心室ディスク57をシースに入れることによって、順行性アンカーは心臓壁から安全に除去されて、再位置決めされるか又は完全に除去される。
【0044】
アンカー・キャップ58は、アンカー・キャップ58から径方向外側に延在する少なくとも1つの係止アーム61を備える。係止アーム61は、テザー36(後述)の一部分をアンカー・キャップ58に解放可能に固定するようにサイズ決めされ構成される。少なくとも1つの係止アーム61は、係止部材61がアンカー・キャップ58の本体から離れて第1の距離を延在する、第1の係止位置と、係止部材61がアンカー・キャップ58から第1の距離よりも短い第2の距離を延在する、第2の非係止位置との間で移動する。アンカー・キャップ58は、各係止アーム61を第1の係止位置に押し付けるように構成された、ばねなどの少なくとも1つの付勢部材(図示なし)を備える。図示されるように、複数の係止アーム61が設けられ、アンカー・キャップ58の円周の周りで均等に離隔されるが、係止アーム61が均等に離隔される必要がないことが想到される。
【0045】
次に
図6を参照すると、送達ケーブル46は、送達ワイヤ47の遠位端に位置決めされるか又はそこに形成される、遠位側ねじ付き端部部分48を有する可撓性送達ワイヤ47を含む。送達ケーブル46は、ワイヤ・レールを収納することができる中央チャネル(図示なし)を有する。送達ワイヤは、ステンレス鋼、ニチノール、又は他の合金で構築されるがそれらに限定されず、親水性コーティングを有するか若しくは有さず、又はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのポリマー・コーティングを有するか若しくは有さない。遠位側ねじ付き端部部分48は、送達ケーブル・コネクタ51の近位端52に規定されたキャビティに形成された補完的なねじ山を選択的に係合するように、サイズ決めされ構成される。
図7及び
図9を参照のこと。使用の際、遠位側ねじ付き端部部分48は、アンカー・キャップ51の近位端52内へと前進し、例えばねじ込まれて、送達ケーブル・コネクタ51を可撓性ワイヤ47の遠位端に結合する。更に十分に後述するように、遠位側ねじ付き端部部分48は、送達ケーブル・コネクタ51の近位端から緩められて、可撓性ワイヤ47をアンカー49から分離する。
【0046】
ハロー・アンカー・アセンブリ
本開示の別の態様によれば、
図17A~
図17Fに示されるように、ハロー・アンカー・アセンブリ91が示される。ハロー・アンカー・アセンブリ91は、(他の態様によるアンカー・キャップ58の代わりの)アンカー軸92に接続され、順行性アンカー49の残りの部分に融合されたアンカー基部94を含むが、このハロー・アンカー・アセンブリ91は、
図2に示されるようなアンカー・キャップ27の代わりに、アンカー軸92に接続されて、逆行性アンカー22の残りに融合する、アンカー基部94から成ることができる。図示されるように、順行性アンカー49はアンカー基部94から遠位側に延在する。アンカー基部94は、少なくとも1つの、又は図示されるように複数のアンカー・フランジ96と、それらの間の陥凹区域97とを規定する。アンカー軸92は、少なくとも1つの、又は図示されるように複数の、
図17Bに延長されて示される複数の係止部材98を含む。係止部材98は、ばね(図示なし)などによって、アンカー軸92から径方向外側に付勢される。アンカー・コネクタ99及びコネクタ・ロッド101は、アンカー軸92及びねじ付き端部52
図9に示されるものなど)を通って延在するワイヤ・レール64を超えて移動し、コネクタ・ロッド101に接続されたアンカー・コネクタ99は、アンカー軸92と協働する。アンカー・コネクタ99は、アンカー・フランジ96を受け入れるように構成された、少なくとも1つの、又は図示されるように複数のアパーチャ100を規定する。したがって、アンカー・コネクタ99及びコネクタ・ロッド101は、アンカー軸92に噛合接続され、それによって係止部材98を内側に押しやる。協働するアパーチャ100及びフランジ96によって、アンカー・コネクタ99及びアンカー基部94が統合される。テザー・リング102が係止部材98に固定された後、アンカー・コネクタ99及びコネクタ・ロッド101が除去されて、アンカー基部94に取り付けられたアンカー軸92を通って延在するワイヤ・レール64が残される。逆行性アンカー22に融合されたアンカー・アセンブリ91に関して、アンカー・コネクタ99及びコネクタ・ロッド101は、アンカー・コネクタ99及びコネクタ・ロッド101が除去された後に残る送達ケーブル32の上を移動する。
【0047】
図32及び
図33
ハロー・アンカー・アセンブリの別の態様が、
図32A~
図32C及び
図33に示されている。アンカー・アセンブリ91は更に、アンカー基部94とアンカー軸92との間に延在する、金属又は合金などの適切な材料で形成されてもよい、屈曲コネクタ170を含む。図示されるように、屈曲コネクタ170はコイル状構成であるが、他の構成が想到される。アンカー軸92の底部には、アンカー軸92から径方向外側に延在する少なくとも1つの、又は図示されるように3つの係止アーム98が固着される。アーム98は、例えば、任意の金属又は合金で形成される。係止アーム98は径方向内側に押しやられるが、図示されるように付勢される。したがって、係止部材98は、係止部材98と係合するように位置決めされると、テザー・リング202と協働し、アンカー・アセンブリ91の屈曲コネクタは、特にアンカーねじ93が埋め込まれるとき、テザーが埋め込まれる弁と軸線方向で整列された(例えば、心室中隔に平行である)ままであることができるようにする。
【0048】
アンカーねじ93を埋め込むため、送達ケーブル232の上に予め装填されたトルク・ドライバ(図示なし)が、アンカー基部94と噛合し、ねじを回転させることによって組織に追い込むことが可能になる。完全に埋め込まれると、トルク・ドライバが除去されて、送達ケーブル232に接続されたアンカー・アセンブリ91が残される。送達ケーブル232を超えて、テザー・ロッド208(アパーチャ206を介してテザー・リング202に取り付けられる)を介してテザーに接続されたテザー・リング202が、アンカー軸92を超えて前進させられる。テザー・リング202は係止アーム98を超えて前進し、それによってアームを内側に押し下げる。テザー・リング202の近位端が係止アーム98の下方を通ると、係止アーム98が外側に跳ねることによって、テザー・リング202が適所で制約されて、テザー・ロッド208に固着されたテザーの意図しない動きが防止される。最後に、「雄」ねじ山234がアンカー92のねじ付きキャビティによって規定されたねじ山から経脱されるように、送達ケーブル232が回転させられる。
【0049】
これらの図に示されるアンカー・アセンブリ91はまた、アンカーを安定化させ、テザーから伝達される張力による、回転移動などの移動を制限又は防止し、牽引力を提供して、ねじアンカー93が不用意に回転して埋め込まれた組織から脱結合するのを制限又は防止する、スタビライザ172を含む。少なくとも1つのスタビライザ172が提供されてもよい。
図32に示されるように、8つのスタビライザ172が示され、
図33は3つを示している。
図32に示されるように、スタビライザ172は、アンカーの長手方向軸線から径方向外側に延在する。スタビライザ172は非線形構成を有するように構成される。他の構成が想到される。
図33に示されるスタビライザ172はまた、アンカー長手方向軸線から径方向外側に延在し、水平方広寺苦戦に沿って鋭角で、例えば45度で延在する。角度は、ねじアンカー93の反対方向にほぼ面する。スタビライザはほぼ線形であるが、他の構成が想到される。例えば、心室中隔に挿入されると、スタビライザ172は組織を押しやり、また恐らくはアンカーねじの埋込みとは反対方向で組織に入って、アンカーねじ93が意図せずに撤回されるのを防ぐ。
【0050】
順行性アンカー49又は逆行性アンカー22のどちらかから成る、ハロー・アンカー・アセンブリが埋め込まれた後、テザー・リング102は、コネクタ・ロッド101及びアンカー・コネクタ99の上に適用され、順行性アンカー49又は逆行性アンカー22に融合されたアンカー基部94に当接する。テザー・リング102は、ほぼ円筒状の第1の遠位部分と、第1の部分103よりも大きい直径を有する第2の近位部分104とを含む。第2の部分104は、
図17E及び
図17Fに示されるように、テザー・ロッド108を受け入れるように構成された、少なくとも1つの、又は図示されるように複数のアパーチャ106を規定する。
図17Dに示されるように、アンカー・コネクタ99及びコネクタ・ロッド101は除去される。係止部材98は径方向外側に押しやられ、それによってテザー・リング102の第2の部分104を係合して、テザー・リング102をアンカー基部94上で係止する。テザー・ロッド108は、上述したように、経カテーテル心臓弁66又は156と協働するように動作する。
【0051】
テザー・アセンブリ
可撓性ワイヤ33が逆行性アンカー22に結合されると、可撓性ワイヤは、テザー36を逆行性アンカー22まで前進させるためのガイド・レールとして働く。順行性アンカー49の場合、ワイヤ・レール64は、アンカー・キャップ58の遠位端62に入り、送達ケーブル46の中央チャネルを通して、ねじ付き端部52を介して送達ケーブル・コネクタ51を出ることによって、順行性アンカー49までのテザー36のガイド・レールとして働く。テザー36は、ドッキング・リング43に回転可能に接続された1つ又は複数のテザー・ロッド38を含む。テザー・ロッド38は、
図4に示されるように、ドッキング・リング・アーム42に規定されたアイレット41に接続される。テザー36は、送達ケーブル33の可撓性ワイヤ32を超えて(逆行性アンカーの場合)、又はワイヤ・レール64を超えて(順行性アンカーの場合)前進させられ、テザー36のドッキング・リング43は、アンカー・キャップ27又は58の少なくとも1つの係止アーム29若しくは61を第2の非係止位置まで押し下げる。係止アーム29又は61が第2の位置にあるとき、テザー36は、ドッキング・リング43が、アンカー・キャップ27の遠位端28若しくはアンカー・キャップ58の遠位端59に当接するまで、及び/又は隣接するまで、アンカー・キャップ27又は58それぞれの係止アーム29若しくは61を超えて前進する。この時点で、アンカー・キャップ27又は58の付勢部材は、少なくとも1つの係止アーム29又は61を第1の係止位置まで押しやり、それによってドッキング・リング43を、またしたがってテザー36の残りを、逆行性アンカー22又は順行性アンカー49に解放可能に結合する。
【0052】
一態様では、逆行性アンカー22又は順行性アンカー49に結合されると、テザー36は、アンカーの長手方向軸線を中心にして丸々360度回転する。任意に、別の態様では、テザー36は、テザー36の一部分と少なくとも1つの係止アーム29又は61との相互作用によって、より少ない回転角に拘束されてもよい。
【0053】
図4に示されるように、一態様では、テザー36は、ドッキング・リング43に結合された少なくとも1つのドッキング・リング・アーム42と、ドッキング・リング・アーム42に結合された少なくとも1つのテザー・ロッド38とを備える。図示されるように、ドッキング・リング・アーム42の遠位端は、ドッキング・リング43にしっかり結合されるか、又はそれと一体的に形成される。図示されるように、少なくとも1つのドッキング・リング・アームは複数のドッキング・リング・アーム42を備える。図示されるように、複数のドッキング・リング・アーム42は、ドッキング・リングの円周の周りで均等に離隔されるが、ドッキング・リング・アーム42が均等に離隔される必要がないことが想到される。アイレット41はドッキング・リング・アーム42によって規定される。テザー・ロッド38は、アイレット41と協働するように構成されたテザー・ロッド・フック39を含む。
【0054】
各ドッキング・リング・アーム42の近位端は、それぞれのテザー・ロッド38の遠位端に回転可能に結合される。テザー・ロッド・フック39は、図示されるようにテザー・ロッド38によって規定され、各テザー・ロッド38の遠位端に結合されるか、又はそれと一体的に形成される。別の態様では、アイレット41及びテザー・ロッド・フック39は、テザー・ロッド・フック39がアイレット41に挿入されて、テザー・ロッド38をドッキング・リング43にしっかりと回転可能に結合するように、サイズ決めされ構成される。使用の際、各テザー・ロッド・フック39はアイレット41の円周の周りで回転する。
図4に示されるように、各テザー・ロッドの近位端はコード37に結合される。テザー・ロッド38及びテザー・ロッド・フック39は任意の合金で構成されてもよい。
【0055】
ワイヤ・レール送達システム
次に
図18A及び
図18Bを参照すると、ワイヤ・レール送達システムは、心房間経中隔ガイド118と心室間経中隔ガイド111とから成る。心房間経中隔ガイド118は経大腿シース117を介して大腿静脈に挿入され、ガイド118は近位ハブ119を有し、そこを通して経中隔針121が導入され、この針121はガイドの遠位側拡張器122を通って経中隔ガイド121から出る。心室間経中隔ガイド111は、経頸静脈シース109を介して頸静脈に挿入され、ガイドワイヤ116を超えて右心室18内へとガイドされる。心室間経中隔ガイド111は、ガイドの近位側ハンドル112に取り付けられた偏向ノブ113によって制御される偏向可能な遠位先端114を有し、先端は、心室中隔20の右心室表面17に向かって偏向させることができる。
【0056】
順行性及び逆行性アンカー送達シース
次に
図21A及び
図21Bを参照すると、逆行性アンカー送達シース131は、ワイヤ・レール64を超えて心房間経中隔ガイド118の近位ハブ119内へと進み、経中隔ガイドの遠位端120から出る。逆行性アンカー送達シース131の遠位端132を拡張器133が通り、ワイヤ・レール64を超えて進み、心室中隔20の左心室表面16に入って、心室中隔20の右心室表面17から出る。一旦横断すると、逆行性アンカー送達シースの遠位端132を右心室18内に残して、拡張器133が除去されて、逆行性アンカー22の送達が可能になる。
【0057】
次に
図24A及び
図24Bを参照すると、順行性アンカー送達シース134は、ワイヤ・レール64を超えて心室間経中隔ガイド111の近位側ハンドル112内へと進み、経中隔ガイドの遠位端114から出る。順行性アンカー送達シース134の遠位端136を拡張器137が通り、ワイヤ・レール64を超えて進み、心室中隔20の右心室表面17に入って、心室中隔20の左心室表面16から出る。旦横断すると、順行性アンカー送達シースの遠位端136を左心室14内に残して、拡張器137が除去されて、逆行性アンカー49の送達が可能になる。
【0058】
図示されるように、
図18Aでは、シース109は心室間経中隔ガイド111を受け入れるように構成され、シース117は心房間経中隔ガイド118を受け入れるように構成される。シース109は心室間経中隔ガイド111と流体連通し、シース117は心房間経中隔ガイド118と流体連通しているので、ヘパリン化生理食塩水などの流体は、シース109を通して心室間経中隔ガイド111を取り囲み、またシース117を通して心房間経中隔ガイド118を取り囲む。
【0059】
ワイヤ・レールを作成する方法
18Aに示されるように、J字形ワイヤ116はシース109を介して導入され、ユーザによって右心室18内へと血管内でガイドされる。J字形ワイヤ116を超えて、心室間経中隔ガイド111はシース109内へと前進させられ、ユーザによって右心室18内へと血管内でガイドされる。右心室18に入ると、J字形ワイヤ116は除去され、ガイド先端114は、ガイド先端114が心室中隔20の右心室表面17に隣接するまで、心室間経中隔ガイド111の近位側ハンドル112の偏向ノブ113によって偏向させられる。
【0060】
18Aに示されるように、J字形ワイヤ(図示なし)はシース117を介して導入され、ユーザによって右心房19内へと血管内でガイドされる。このJ字形ワイヤを超えて、心房間経中隔ガイド118は、ガイドの遠位先端120から外に突出する拡張器122を用いて、右心房19に入るまでユーザによって血管内でガイドされる。次に、J字形ワイヤは除去され、経中隔針121は、針が拡張器122の端部に近付くまで、心房間経中隔ガイド118の近位ハブ119を通して前進させられる。次に、心房間経中隔ガイド118の近位ハブ119は撤回され、遠位先端120から外に突出する拡張器122が心房中隔21に押し付けられるまで回転させられる。透視下及び心エコー・ガイド下で、経中隔針121は心房中隔21を横切って左心房11内へと前進させられ、次に心房間経中隔ガイド118の拡張器122及び遠位先端120が前進させられる。遠位先端120が左心房11に入ると、拡張器122及び経中隔針121は両方とも、心房間経中隔ガイド118の近位ハブ119から撤回される。
【0061】
図18Bに示されるように、スネア・シース123は、スネア・シース123がガイド118の遠位先端120から出るまで、心房間経中隔ガイド118の近位ハブ119に導入され、左心房11から左心室14内へと前進する。スネア124は、スネア124が心室中隔20の左心室表面16に隣接するまで、スネア・シース123を介して左心室14内へと前進させられる。
【0062】
図19Aに示されるように、高周波発生器126又は電気焼灼システム(図示なし)に接続された高周波ワイヤ127は、ワイヤ127が心室間経中隔ガイド111の遠位端114から出るまで、心室間経中隔ガイド111の近位側ハンドル112を介して前進させられ、心室中隔20を横切って左心室14内に入り、次にワイヤ127がスネア124によって捕捉される。
図19Bに示されるように、スネア124は、ワイヤがガイド118の近位ハブ119から出るまで、ワイヤを127心房間経中隔ガイド118に引き込む。次に、心室間経中隔ガイド111の近位側ハンドル112から延在するワイヤ127の部分を超えて、マイクロカテーテル128は、心室中隔120を横切ってワイヤ127を超えて前進させられる。
図19Cは、遠位側拡張器129がワイヤ127を超えて心室中隔20を横切って前進している、マイクロカテーテル128の拡大図を示している。
【0063】
図20Aに示されるように、マイクロカテーテル128は、心房間経中隔ガイド118の遠位先端120に入るまで、ワイヤ127を超えて前進させられる。マイクロカテーテル128が心房間経中隔ガイド118の内部に数センチメートル以上入ると、ワイヤ127は、心房間経中隔ガイド118の近位ハブ119を引き出すことによって除去される。
図20Bに示されるように、より大きく高剛性のJ字形ワイヤ64は、J字形ワイヤ64が心房間経中隔ガイド118の内部に位置決めされたマイクロカテーテル128から出て、最終的にガイド118の近位ハブ119から出るまで、マイクロカテーテル128を介して心室間経中隔ガイド111を通って前進させられる。
【0064】
逆行性アンカーの埋込み方法
[0018]に記載され、
図21A及び
図21Bに示されるように、逆行性アンカー・シース131が、右心室表面17に隣接して右心室18内に位置決めされると、逆行性アンカー22は、逆行性アンカー・シース131を通してワイヤ64に隣接し、遠位先端132に位置決めされる。
【0065】
図22Aに示されるように、逆行性アンカー・シース131の遠位先端132は、最初に、左心室表面16に隣接して左心室14内に入るまで後退させられる。遠位先端132を後退させるにつれて、逆行性アンカー22の自己拡張性の右心室ディスク23が展開して心室中隔20の右心室表面17に当接し、中隔コネクタ24は心室中隔20で露出する。
図22Bに示されるように、遠位先端132を更に後退させるにつれて、自己拡張性の左心室ディスク26が展開して心室中隔20の左心室表面16に当接する。次に、逆行性アンカー・シース131が心房間中隔ガイド118の近位ハブ119から除去され、J字形ワイヤ64が、心室間経中隔ガイド111の近位側ハンドル112から引っ張ることによって除去される。
【0066】
図23に示されるように、心房間経中隔ガイド118は、逆行性アンカー22が定位置にあって送達ケーブル32の可撓性ワイヤ33に依然として接続されたまま、経大腿シース117を介して身体から引き出されている。
【0067】
順行性アンカーの埋込み方法
[0019]に記載され、
図24A及び
図24Bに示されるように、順行性アンカー・シース134が、左心室表面16に隣接して左心室14内に位置決めされると、順行性アンカー49は、順行性アンカー・シース134を通してワイヤ64を超えて前進させられ、遠位先端136に位置決めされる。
【0068】
図25Aに示されるように、遠位先端136は最初に、右心室表面17に隣接して右心室18内に入るまで後退させられる。遠位先端136を後退させるにつれて、順行性アンカー49の自己拡張性の左心室ディスク57が展開して心室中隔20の左心室表面16に当接し、中隔コネクタ56は心室中隔20で露出する。
図25Bに示されるように、遠位先端136を更に後退させるにつれて、自己拡張性の右心室ディスク54が展開して心室中隔20の右心室表面17に当接する。次に、順行性アンカー・シース134が心室中隔ガイド111の近位側ハンドル112から除去される。
【0069】
図26A~
図26Bに示されるように、送達ケーブル46が緩められることによって、その遠位側ねじ端部48が送達コネクタ51から分離して、送達ケーブル46の可撓性ワイヤ47を除去することが可能になる。
図26Cに示されるように、心房間経中隔ガイド118は、順行性アンカー49が定位置にあってワイヤ64が中を通っているまま、経大腿シース117を介して身体から引き出されている。
【0070】
経カテーテル弁
図10A、
図10B、
図11A、
図11Bに示されるように、システム10は、経カテーテル心臓弁66の上端部に沿って円周方向に延在する心房封止スカート上縁67を有する、経カテーテル心臓弁66を備える。経カテーテル心臓弁66は、実質的に円筒状で示される経カテーテル弁体68と、図示されるように、左心房床12に形状適合するように構成された心房封止スカート上縁67とを含む。経カテーテル心臓弁66は、本明細書に記載するように、テザー36によって逆行性アンカー22又は順行性アンカー49に結合される。コード37は、テザー36のテザー・ロッド38に融合されるか又は別の形で結合され、アンカー22又は49が心室中隔20に定着されると、経カテーテル心臓弁66をアンカー22又は49に接続する。
【0071】
経カテーテル心臓弁66は、
図1に示されるように、僧帽弁を左心房11と左心室14との間に収めるようにサイズ決めされ構成される。経カテーテル心臓弁66は弁尖77と予め組立てられる(
図11A、
図11B)。これは例である。したがって、それにより、わずかなばらつきを含めて、これらのデバイス、システム、及び方法は、いずれかの内頸静脈、いずれかの鎖骨下静脈、いずれかの鎖骨下静脈、又はいずれかの大腿静脈を含むがそれらに限定されない静脈構造によって、血管内で配置されてもよい。
【0072】
経カテーテル心臓弁66は、自己拡張性であり(即ち、弁は、システム1のカテーテルを通って適合するように圧縮可能である)、ニチノールで構成されるが、ステンレス鋼、ニチノール、又は他の合金で作られるがそれらに限定されない要素も収容してもよい。別の態様では、経カテーテル心臓弁は、僧帽弁輪の部位展開13における弁輪よりも小さいか又はそれにほぼ等しい小さい直径を有し、それによって僧帽弁輪の拘束を低減する。
【0073】
図31A及び
図31Bに示されるように、経カテーテル心臓弁66の代替実施例は経カテーテル心臓弁156である。心房封止スカート上縁67を有する経カテーテル心臓弁66とは対照的に、経カテーテル心臓弁156は、経カテーテル心臓弁66のような頂部の代わりに、経カテーテル弁体68の底部に接続される、心房封止スカート下縁157を有する。心房封止スカート下縁157は心房床12に形状適合し、経カテーテル心臓弁157の経カテーテル弁体68は左心房11内へと延在し、それによって天然の僧帽弁尖との相互作用が最小限に抑えられて、LVOT閉塞のリスクが更に低減される。
【0074】
図10A及び
図10B、
図11A及び
図11B、並びに
図31A及び
図31Bに示されるように、少なくとも1つの導管74が経カテーテル心臓弁66又は156内に規定される。各導管は、コード37(近位端で縫合糸148に取り付けられる)の一部分が導管74を通って延在し、それによってテザー36を経カテーテル心臓弁66又は156に接続して、弁66又は156が適所で係止されるまで自由に動くことが可能になるように、サイズ及び形状が決められる。更なる態様では、経カテーテル弁66又は156は、その外径に沿って位置決めされた固着要素(図示なし)を有する。これらの固着要素は、僧帽弁輪及び/又は弁尖への定着を可能にするが、必ずしも主要固定メカニズムとして使用されなくてもよい。
【0075】
少なくとも1つのコード37はテザー36のテザー・ロッド38に結合され、コード37の近位部分は縫合糸148に結合される。一態様では、コードは、例えば非限定的に、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)又は超高分子量ポリエチレン(UHMWPE、UHMW)コードなど、強度があるが可撓性もあるコードであってもよい。使用の際、更に十分に後述するように、コード37の中央部分(遠位端と近位端との間)は、経カテーテル弁66若しくは156を通って延在し、及び/又はそれに結合されて、スカートを僧帽弁輪に対して所望の位置で保持する。
【0076】
図11A及び
図11Bはまた、経カテーテル弁66を示している。経カテーテル弁66は、経カテーテル弁体68から径方向内側に延在する弁尖77を有する。弁尖77は、ウシ、ウマ、又はブタの心膜弁尖で構成される。任意の従来の弁の機能と同様に、経カテーテル弁体68の内部に縫合された弁尖77は、拡張期(心臓の弛緩)中は開いて、血液が左心房11から左心室14内に入るのを可能にし、収縮期(心臓の収縮)中は閉じて、血液が右心室又は左心室からそれぞれ右心房又は左心房内へと逆流するのを防ぐ。
【0077】
図10A及び
図10B、
図11A及び
図11B、並びに
図31A及び
図31Bに示されるように、経カテーテル心臓弁66又は156は、経カテーテル弁体68及び心房封止スカート上縁67又は心房封止スカート下縁157によって規定され、膜状材料を含み、心房封止スカート上縁67又は下縁157は、展開部位における弁輪よりも大きい直径を有する。例えば、心房封止スカート上縁67又は下縁157は、僧帽弁輪の直径よりも大きい直径を有してもよい。別の態様では、経カテーテル心臓弁は、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリエステル、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、ポリエチレン・テレフタレート(PET)、シリコーン、天然若しくは合成ゴム、又はそれらの組み合わせから成る群からの合成材料によって形成されるが、それらに限定されない。経カテーテル心臓弁66又は156はまた、成体若しくは幼体のウシ、ヒツジ、ウマ、又はブタの心膜で被覆されてもよい。任意に、心房封止スカート上縁67又は下縁157の少なくとも一部分は、例えば非限定的に、ポリウレタン発泡体又は他のポリマーなど、代替の材料から形成されてもよい。
【0078】
別の態様では、経カテーテル心臓弁66又は156の少なくとも一部分は、その長さに沿って1つ又は複数の定着部材(図示なし)を有して、左心房床及び/又は僧帽弁輪の心房側における他の部分への更なる固着を可能にして、経カテーテル心臓弁66又は156が近位側の左心房11内へと移動するのを防ぐことによって、人工器官の不安定性(例えば、揺れ)及び弁周囲逆流を防ぐ。
【0079】
経カテーテル心臓弁66又は156は、少なくとも経カテーテル弁体68と、心房封止スカート上縁67又は下縁157とを備える。図示されるように、経カテーテル弁体68は円筒であり、可変の長さ及び直径を有する。レーザー切断又は成型されたニチノールで選択的に構成されるが、他の任意の合金の要素も収容してもよく、円周方向又は長さの任意の部分に沿って、生体膜又は上述の合成材料のいずれかで被覆されてもよい。図示されるように、上縁67又は下縁157は、経カテーテル弁体68から径方向外側に、また下側に延在して、凹面が左心房床11に面する実質的に凹状の上縁を形成する。上縁67又は下縁157は、経カテーテル心臓弁66の場合、経カテーテル弁体68の上端部の周りに円周方向で延在し、経カテーテル心臓弁156の場合、経カテーテル弁体68の下端部の周りに円周方向で延在する。
【0080】
少なくとも1つの、又は図示される複数の可撓性延長部材69が提供され、例えば、延長部材基部71によってスカート本体の頂部に取り付けられ、延長部材先端72で終端する、レーザー切断若しくは成型されたニチノールで構成されてもよいが、それに限定されない。1つ又は複数の延長部材69の間には、弾性封止膜73が隣接する延長部材69に垂直に延在する。
図10A及び
図10Bに示されるように、延長部材69は、径方向外側及び実質的に線形的に延在してもよいが、これは例示である。
図11A、
図11B、
図31A、及び
図31Bに示されるように、延長部材は非線形でほぼU字形であってもよい。図示されるように、封止膜73は、上縁67又は下縁157の周りで円周方向に延在する。円周の一部分のみに延在してもよい。経カテーテル弁体68は、上縁67又は下縁157の延長部材69のように、例えば、レーザー切断又は成型されたニチノールで構成されてもよいがそれらに限定されない、複数の支持体78を含む。図示されるように、支持体78は格子状構成を形成するが、垂直に延在する支持体を含むがそれに限定されない、他の構成が想到される。
【0081】
封止部材73は、上述したような生体組織又は合成生地のどちらかで構成される。一態様では、合成生地は、心房床のトポグラフィに適合するのに必要な「伸縮性」を可能にする織地又は編地のどちらかである。
図10A及び
図10B、
図31A及び
図31Bでは、延長部材69は、延長部材基部71を介して経カテーテル弁体68に取り付けられ、延長部材先端72は下向きに曲がり、それによって僧帽弁輪周囲の逆流を防ぐ。この構成は、1つ又は複数の導管74に取り付けられ、本明細書に記載するように導管74の心房側端部の内部に統合された1つ又は複数の分離可能なロック83(
図14A~
図14B、
図15A~
図15B、
図16A~
図16B)を介して適所に係止された、1つ又は複数の心房位置決めロッド147を介して下向きの力が加えられることを要する。
【0082】
図30A~
図30Dは、天然の僧帽弁と置換される弁の配置を示している。
図30A及び
図30Bは、心房封止スカート上縁67を有する弁を示し、
図30C及び
図30Dは、心房封止スカート下縁157を有する弁を示している。下側封止スカート157を有する僧帽弁は、これらの図に示される心房床12の上方に位置決めされる。この弁を上述したテザーとともに使用することで、弁の実質的な垂直方向の又は浮動する動きが防止される。
【0083】
テザー及び経カテーテル弁送達アセンブリ
上述の方法によれば、逆行性アンカー22又は順行性アンカー49は、逆行性アンカー送達シース131又は順行性アンカー送達シース134によって導入され、心室中隔20に固定される。アンカー・キャップ27又は58、及び送達ケーブル33(逆行性アンカーの場合)又はワイヤ・レール64(順行性アンカーの場合)のどちらかは、心臓内に残り、上述のテザー36を受け入れられる状態である。
【0084】
次に
図27A及び
図27Bを参照すると、また上述したように、テザー36は、送達ガイド141の形態で図示される経カテーテル心臓弁送達システムを通して、送達ケーブル32(図示なし)のワイヤ・レール64又は送達ワイヤ33を超えて前進させられる。テザー36は、ドッキング・リング43をアンカー・キャップ27又は58に結合することによって、アンカー・キャップ27又は58に係止する。少なくとも1つのテザー・ロッド38には、テザー・ロッド38から延在する少なくとも1つのコード37が結合される。少なくとも1つのコード37は、送達ガイド141の中央管腔151を介して体外に延在する、少なくとも1つの縫合糸148に近位側で接続される。テザーがアンカー・キャップ27又は58に係止されると、ガイド141は、アンカー22又は49、テザー36、コード37、及び埋込み部位から延在する縫合糸を残して、
図27Bに示されるように後退させられる。
図27A~
図27B、
図28A~
図28Bに示されるように、同じガイド141がテザー36及び経カテーテル心臓弁66又は156の両方を送達する。
【0085】
次に
図27A~
図27B及び
図28A~
図28Bを参照すると、経カテーテル心臓弁66又は156を所望の展開部位13に位置決めし展開する、経カテーテル心臓弁送達システム139が示されている。経カテーテル弁送達システム139は、経カテーテル弁送達ガイド141と、ノーズコーン146と、経カテーテル弁展開ノブ142と、少なくとも1つの心房位置決めロッド147とを備える。経カテーテル弁送達ガイド141は、遠位端144と、対向する近位側弁展開ノブ142と、それらの間に延在する内側ガイド管腔143とを有する。内側ガイド管腔143は、経カテーテル弁66又は156及び他のシステム構成要素が選択的且つ取外し可能に挿入されるように、サイズ決めされ構成される。経カテーテル弁送達ガイド141の少なくとも一部分は可撓性なので、経カテーテル弁ガイド141の遠位端にある先端144は、展開部位13を超えて左心室14内に位置決めされる。
【0086】
経カテーテル弁展開ノブ142は、経カテーテル弁送達ガイド141の近位端に結合される。経カテーテル弁展開ノブ142は、内側ガイド管腔143と流体連通している中央チャネル151を規定する。したがって、心房位置決めロッド147、ガイドワイヤ64、及び/又は少なくとも1つの縫合糸148は、中央チャネル151を通って内側ガイド管腔143内へと延在してもよい。図示されるように、経カテーテル展開ノブ142は回転可能であり、ノブ142が第1の方向で回転することによって、経カテーテル弁66又は156の周りにある経カテーテル弁送達ガイド141の遠位先端144が後退して、経カテーテル弁66又は156が拡張するのが可能になるように構成される。ノーズコーン146は、経カテーテル弁送達ガイド141に結合され、経カテーテル弁66又は156を展開部位13までガイドするように構成された、任意の従来のノーズコーンであってもよい。
【0087】
係止システム
図27A~
図27B、
図28B~
図28C、及び
図29Aを参照すると、少なくとも1つの心房位置決めロッド147は、遠位端153と、近位端150と、それらの間に延在する内側ロッド管腔149とを有し、内側ロッド管腔は、縫合糸148及び/又はコード37の一部分がそこを通して挿入されるようにサイズ決めされ構成される。心房位置決めロッド147の少なくとも一部分は可撓性なので、心房位置決めロッドの遠位端153は展開部位13に、又はそれに隣接して位置決めされてもよい。
【0088】
少なくとも1つの位置決めロッド147は導管74に結合される。
図13A及び
図13Bに示されるように、各導管74は、少なくとも1つのコード37をしっかり取り付けるように構成された、分離可能なロック83を収容する。したがって、コード37は、アンカー・キャップ27又は58に結合された、テザー36のテザー・ロッド38にしっかり取り付けられ、逆行性アンカー22又は順行性アンカー49どちらかの心室ディスク又は中隔コネクタを介して心室中隔20に固定され、分離可能なロック83は、例えば、左心房内のコード37をしっかり取り付ける。
【0089】
図13A、
図13B、
図14A、
図14B、
図15A、
図15B、
図16A、及び
図16Bを参照すると、係止システム82は、分離可能なロック83と、第1のゲートウェイ・ハイポチューブ84及び第2の後退するハイポチューブ86に取り付けられた、統合された内部導管74とから成る。分離可能なロック83の内部には係止クリップ87がある。次に
図30Aを参照すると、システム10は、(
図30Bに示されるように)送達シース117を貫通して少なくとも1つの縫合糸148を切断するように、サイズ決めされ構成された縫合糸カッター154を更に備える。
【0090】
心房スカートを埋め込み、位置決めし、係止する方法
使用の際、システム10は、心室間アンカー22又は49を配置し、テザー36をアンカー22又は49にドッキングすることによって、経カテーテル・アプローチを利用して、経カテーテル心臓弁66又は156を埋め込む。
図27Aに示されるように、経カテーテル弁システム139は、ワイヤ64又は送達ケーブル32の可撓性ワイヤ33のどちらかを超えて、心臓9の一部分内へと挿入される。経カテーテル弁送達ガイド141は、経カテーテル弁66又は156が遠位端144に予め装填された状態で心臓に挿入されるので、縫合糸148の少なくとも一部分も予め装填され、少なくとも1つの導管74に通されており、経カテーテル弁送達ガイド141が前進するにつれて、縫合糸148及びコード37の少なくとも一部分が、経カテーテル弁送達ガイド141の内側ガイド管腔143に沿って、またそこを超えて近位側に延在する。したがって、少なくとも1つのコード37の一部分は、経カテーテル弁送達ガイド141の遠位端144を通ってそこを超えて延在し、少なくとも1つの縫合糸148の一部分は、経カテーテル弁送達ガイド141を通ってそこを超えて延在する。経カテーテル弁送達ガイド141は、経カテーテル弁送達ガイド141の遠位端144が、経カテーテル弁66又は156が遠位端144に予め装填された状態で、展開部位13を通過して左心室14に入るように位置決めされる。
【0091】
経カテーテル弁66又は156は、展開部位13で位置決めするため、経カテーテル弁送達ガイド141の遠位端144に予め装填される。図示されるように、縫合糸148は、
図11A~
図11B及び
図31A~
図31Bに示されるように、各縫合糸148が経カテーテル弁66又は156の少なくとも1つの導管74に通されるようにして、経カテーテル弁66又は156と予め組立てられる。経カテーテル弁66又は156及び経カテーテル弁送達ガイド141の遠位端144が、単位体として前進し、展開部位に近付くにつれて、縫合糸148の端部及びコード37の一部分が、経カテーテル弁66又は156内に規定された導管74に通される。そのため、経カテーテル弁66又は156は、所望の展開部位13に達する前、少なくとも1つのコードの長さに沿って移動可能である。つまり、経カテーテル弁は、分離可能なロック83によって適所で係止されるまで、コード37上で自由に浮動している。
【0092】
経カテーテル弁66又は156が所望の展開部位13に来ると、経カテーテル弁展開ノブ142を利用して、経カテーテル弁66又は156の周りで送達ガイド141が少なくとも部分的に撤回される。ガイド141は経カテーテル弁66又は156を有さないので、弁66又は156はその完全な制約されないサイズに拡張する。任意に、経カテーテル弁の位置は調節可能なので、経カテーテル弁展開ノブ142を使用して、経カテーテル弁66又は156を折り畳んで、所望の展開部位への再位置決めを可能にすることができる。
【0093】
次に、経カテーテル送達ガイド141に予め装填された心房位置決めロッド147を、各縫合糸148を超えて前進させて、各縫合糸の一部分が内側ロッド管腔149内で延在し、各縫合糸の一部分が位置決めロッド147の近位端150を超えて延在するようにする。
図28B及び
図29Aを参照すると、位置決めロッド147は次に、経カテーテル弁ガイド141を通して前進させられ、コード37の一部分がロッド147の内側ロッド管腔149によって受け入れられ、(分離可能なロック83が取り付けられた)位置決めロッドの遠位端153が経カテーテル弁66又は156に隣接する。位置決めロッド147は、封止スカートが僧帽弁輪に対して所望の位置に来るまで、ユーザによって押し下げられる。
【0094】
所望の弁66又は156の位置が達成されるまで、テザー36の上の経カテーテル弁66又は156。所望の弁位置が達成された後、少なくとも1つの心房位置決めロッド147は、経カテーテル弁66又は156を定位置に押し込み、各導管74に収納された分離可能なロック83を介して適所に係止され、各位置決めロッド147の端部に接続される。経カテーテル弁66又は156は、各心房位置決めロッド147を通って延在する縫合糸148が解放されるまで、再位置決めされるか又は回収されてもよい。
【0095】
図28Bに示されるように、経カテーテル弁66の上縁67又は経カテーテル弁156の下縁157が左心房床12のトポグラフィに適合するような、左心房11内における経カテーテル弁66又は156の位置決めが示されている。経カテーテル弁送達システム端部144を介して、施術者は、経カテーテル弁66又は156が、経カテーテル弁体68によって規定された1つ又は複数の導管74を通って延在する、1つ又は複数のコード37を超えて並進するようにして、1つ又は複数の心房位置決めロッド147を前進させる。
図28Bに示されるように、経カテーテル上縁67又は下縁157が心房床12に接触すると、1つ又は複数の延長部材69は、局所的な解剖学的構造にしたがって、異なるように屈曲する。各心房位置決めロッド147は異なる力で押されるので、正確な張力量が達成可能であり、したがって、延長部材69が多かれ少なかれ屈曲することで、経カテーテル弁上縁67又は下縁157が心房床12の全周の周りに形状適合して、僧帽弁のオリフィスを通る逆流を限定することが容易になる。
【0096】
図12は、経カテーテル弁上縁67の凹状から凸状への変換を示している(同じ形状変化が下縁157で起こり得る)。弁が、延長部材69の延長部材基部71に取り付けられた、心房位置決めロッド147によって心房床12まで押し下げられると、延長部材先端72は上向きに屈曲して、凸状の心房床の解剖学的構造に形状適合する。経カテーテル弁66の更なる遠位方向移動(
図12では左から右で示される)又は経カテーテル弁156の更なる遠位方向移動(図示なし)によって、上縁67又は下縁157の形状が、心房床に形状適合する際、また延長部材基部71が心房位置決めロッド147によって下側に押される際、更に修正される(
図28B)。
【0097】
次に
図15A及び
図15Bを参照すると、後退するハイポチューブ86を引っ張ることで、係止クリップ87が後退し、それによって係止タブ88及び係合するコード37を押し下げる。より具体的には、第2のハイポチューブ86は後退させられ、それが係止クリップ87に接続していることにより、係止クリップ87も後退させられる。係止クリップ87は、後退の際、第1のゲートウェイ・ハイポチューブ84の接触点89に接触して、クリップ87を分離するので、第2のハイポチューブ86を除去することができる。後退するハイポチューブ86が引っ張られると、ゲートウェイ・ハイポチューブ84の内側アームが内側に反って、ゲートウェイ・ハイポチューブを除去することが可能になる。第1のゲートウェイ・ハイポチューブ84は、第2のハイポチューブ86を後退させながら、コード37を係止することが可能になるので有益である。次に、クリップ87を経カテーテル弁66又は156の導管74内に残して、ゲートウェイ・ハイポチューブ84が除去される。
図16Aは、完全に係合されたロックの切欠図を示している。一態様によれば、位置決めロッド147は、ゲートウェイ・ハイポチューブと統合されるか、又はそれに取外し可能に接続されてもよい。
図16Bは、完全に係合されたロックの完全な図を示している。
【0098】
図30Aに示されるように、経カテーテル弁を心房床12にしっかりと形状適合させて、縫合糸カッター154が縫合糸148を超えて、経カテーテル弁上縁67まで前進させられる。縫合糸カッター154は、分離可能なロック83の上方で各縫合糸148の遠位端を切断し解放する。縫合糸148及び縫合糸カッター154は次に、心臓9から除去される。
【0099】
一態様では、縫合糸148を切断する前に、経カテーテル弁66又は156が回収されるか又は再位置決めされてもよい。例えば、経カテーテル弁が除去又は再位置決めされるべきと判断された場合、心房位置決めロッド147は、縫合糸の一部分が内側ロッド管腔149内にあるようにして、各縫合糸の上に位置決めされる。位置決めロッドの遠位端153が分離可能なロック83に隣接又は接触している場合、ゲートウェイ・ハイポチューブ84及び後退するハイポチューブ86を前進させることで、分離可能なロックを位置決めロッドの遠位端に取り付け、それによってロックがコード37から外れる。各コードの係止が外れると、弁が展開部位13から除去されてもよく、及び/又は展開部位13で再位置決めされてもよい。
【0100】
別の態様では、経カテーテル弁66又は156は、弁の展開後、数日から数週間で再位置決め及び/又は除去される。この態様では、縫合糸は切断されず、スプール又は他の巻付けデバイスの周りに巻き付けられる。このデバイスは次に、弁66の経カテーテル弁上縁67に、又は弁156の経カテーテル弁体68に取り付けられる。弁を展開し処置を完了してから数日で、スプール/巻付けデバイスが再捕捉されて、縫合糸の巻出し及び回収が可能にされてもよい。心房位置決めロッド147は次に、縫合糸の一部分が内側ロッド管腔149内にあるようにして、各縫合糸を超えて位置決めされる。位置決めロッドの遠位端153が分離可能なロック83に隣接又は接触している場合、ゲートウェイ・ハイポチューブ84及び後退するハイポチューブ86を前進させることで、分離可能なロックを位置決めロッドの遠位端に取り付け、それによってロックがコード37から外れる。各コードの係止が外れると、弁が展開部位13から除去され、及び/又は展開部位13で再位置決めされる。
【0101】
本発明のいくつかの態様について上述の明細書に開示してきたが、上述の明細書及び関連図面に提示される教示の利益を有する、本発明が関連する本発明の多くの修正及び他の態様が想起されることが、当業者には理解される。したがって、本発明は上記に開示した特定の態様に限定されず、多くの修正及び他の態様が添付の特許請求の範囲内に含まれるものであることが理解される。更に、特定の用語を本明細書並びに以下の特許請求の範囲で用いているが、それらは単に一般的及び説明的な意味で使用されているものであり、記載の本発明を限定することを目的としない。