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特許7193662ペプチド成分の皮膚再生および治癒混合物とその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】ペプチド成分の皮膚再生および治癒混合物とその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/499 20060101AFI20221213BHJP
   A61K 31/198 20060101ALI20221213BHJP
   A61K 38/03 20060101ALI20221213BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20221213BHJP
   A61K 38/06 20060101ALI20221213BHJP
   A61K 38/07 20060101ALI20221213BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20221213BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20221213BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20221213BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20221213BHJP
   A61K 47/30 20060101ALI20221213BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20221213BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20221213BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20221213BHJP
   C07K 4/00 20060101ALN20221213BHJP
   C07K 14/00 20060101ALN20221213BHJP
   C07K 5/083 20060101ALN20221213BHJP
   C07K 5/113 20060101ALN20221213BHJP
   C07K 5/103 20060101ALN20221213BHJP
【FI】
A61K31/499
A61K31/198
A61K38/03
A61K38/16
A61K38/06 ZNA
A61K38/07
A61K9/06
A61K47/42
A61K47/44
A61K47/36
A61K47/30
A61K47/32
A61P17/02
A61P43/00 121
C07K4/00
C07K14/00
C07K5/083
C07K5/113
C07K5/103
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021565146
(86)(22)【出願日】2020-01-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-07
(86)【国際出願番号】 IB2020050418
(87)【国際公開番号】W WO2020152568
(87)【国際公開日】2020-07-30
【審査請求日】2021-12-02
(31)【優先権主張番号】PV2019-34
(32)【優先日】2019-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CZ
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521322339
【氏名又は名称】グローブテック イノヴェーション エスアールオー
【氏名又は名称原語表記】GlobeTech Innovation s.r.o.
(74)【代理人】
【識別番号】100139723
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 洋
(72)【発明者】
【氏名】クラール,ウラジミール
(72)【発明者】
【氏名】マルタセク,パヴェル
【審査官】春田 由香
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-532713(JP,A)
【文献】特表2016-516023(JP,A)
【文献】国際公開第2017/136600(WO,A1)
【文献】Sklenar, Z. et al.,Formulation and release of alaptide from cellulose-based hydrogels,Acta Veterinaria Brno,2012年,Vol.81,p.301-306,doi:10.2754/avb201281030301
【文献】Opatrilova, R. et al.,In vitro permeation of micronized and nanonized alaptide from semisolid formulations,The Scientific World Journal,2013年,Vol.2013,Article ID 787283, 8 pages,doi:10.1155/2013/787283
【文献】Bacci, S. et al.,The pro-healing effect of exendin-4 on wounds produced by abrasion in normoglycemic mice,European Journal of Pharmacology,2015年,Vol.764,p.346-352,doi:10.1016/j.ejphar.2015.06.056
【文献】今堀 和友, 山川 民夫 監修,生化学辞典,第3版,株式会社 東京化学同人,p.624
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/00-38/58
A61K 31/00-31/80
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
A61K 8/00- 8/99
A61Q 19/00-19/10
PubMed
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚欠損の局所的処置および/または局所的創傷治癒に使用するための、局所的治癒ペプチド成分の医薬混合物であって、スピロ環状ジケトピペラジンペプチド、ならびにアルギニンアミノ酸およびシステインアミノ酸を含み、前記スピロ環状ジケトピペラジンペプチドが、構造式
【化1】
を有するアラプチド(8-メチル-6,9-ジアザスピロ[4.5]デカン-7,10-ジオン)であり、該医薬混合物はゲルマトリックス中にマトリックス1gあたり0.001~50mgの範囲の量で含まれる、医薬混合物。
【請求項2】
2~40アミノ酸を有する線状ペプチドをさらに含む、請求項1に記載の皮膚欠損の局所的処置および/または局所的創傷治癒に使用するための医薬混合物。
【請求項3】
前記2~40アミノ酸を有する線状ペプチドが、金属錯体ペプチドである、請求項2に記載の皮膚欠損の局所的処置および/または局所的創傷治癒に使用するための医薬混合物。
【請求項4】
前記金属錯体ペプチドがCu-GHKである、請求項3に記載の皮膚欠損の局所的処置および/または局所的創傷治癒に使用するための医薬混合物。
【請求項5】
前記2~40アミノ酸を有する線状ペプチドが、以下のアミノ酸の配列:GHK、Cu-GHK、Zn-GHK、DAHK:を有するペプチドの群から選択される、請求項2に記載の皮膚欠損の局所的処置および/または局所的創傷治癒に使用するための医薬混合物。
【請求項6】
前記2~40アミノ酸を有する線状ペプチドが、以下のアミノ酸の配列:
a) Cu-GHK
b) DAHK
c) Pal-GHK
d) GEKG
e) HGEGTFTSDLSKQMEEEAVRLFIEWLKNGGPSSGAPPPS
を有するペプチドの群から選択される、請求項2に記載の皮膚欠損の局所的処置および/または局所的創傷治癒に使用するための医薬混合物。
【請求項7】
前記マトリックスが、タンパク質マトリックス、脂質マトリックス、糖類マトリックス、または合成高分子マトリックス、あるいはそれらの混合物である、請求項1~のいずれか一項に記載の皮膚欠損の局所的処置および/または局所的創傷治癒に使用するための医薬混合物。
【請求項8】
タンパク質マトリックス、脂質マトリックス、または糖類マトリックス、あるいはそれらの混合物中に、マトリックス1グラムあたり0.1~5mgの範囲の量で含まれる、請求項に記載の皮膚欠損の局所的処置および/または局所的創傷治癒に使用するための医薬混合物。
【請求項9】
前記タンパク質マトリックスがコラーゲンを含む、請求項に記載の皮膚欠損の局所的処置および/または局所的創傷治癒に使用するための医薬混合物。
【請求項10】
前記糖類マトリックスがキトサンおよび/またはヒアルロン酸を含む、請求項に記載の皮膚欠損の局所的処置および/または局所的創傷治癒に使用するための医薬混合物。
【請求項11】
前記脂質マトリックスがレシチンを含む、請求項に記載の皮膚欠損の局所的処置および/または局所的創傷治癒に使用するための医薬混合物。
【請求項12】
前記合成高分子マトリックスがポリアクリルアミドを含む、請求項に記載の皮膚欠損の局所的処置および/または局所的創傷治癒に使用するための医薬混合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
創傷の局所または経皮投与および処置のための、および/または創傷治癒の改善のための医薬品および化粧品、製剤、および方法。活性物質がペプチドおよび他の生物学的成分である皮膚治療および処置。治癒が困難な創傷を含む創傷の治癒、美容医学、化粧品。
【背景技術】
【0002】
標準的な状況下では、急性創傷治癒の過程は3つの段階に分けられる。最初の炎症期とそれに続く組織の強力なリモデリングおよび増殖(増殖期)の後に、再上皮化、皮膚血管新生、および創傷閉鎖を伴う「成熟期」がさらに続く。再上皮化には、上皮組織、とりわけケラチノサイトの移動と増殖が含まれる。血管新生は、成長因子ポリペプチドを含む多数の可溶性サイトカイン、ならびに細胞と細胞マトリックスの相互作用によって調節される、既存の管からの新しい血管の形成である。慢性創傷は、通常、炎症状態に長期間とどまるため、標準的な急性創傷とは異なる処置プロファイルを有する。非治癒性創傷は、糖尿病や静脈うっ血のある患者、および動けない患者に最も頻繁に見られる。前述の事実を考慮すると、創傷治癒に関連する急性および慢性の状況に伴う上皮および血管の創傷の治癒メカニズムを安全かつ効果的に促進する新しい生体分子を提供することが望ましいであろう。
【0003】
慢性創傷は、通常、炎症状態に長期間とどまるため、標準的な急性創傷とは異なる処置プロファイルを有する。治癒が困難な創傷は、糖尿病や静脈血栓症の患者、および動けない患者に最も頻繁に見られる。前述の事実を考慮すると、創傷治癒に関連する急性および慢性の状況に伴う上皮および血管の創傷の治癒メカニズムを特異的に、安全かつ効果的に促進する新しい生体分子を提供することが望ましいであろう。
【0004】
糖尿病の人は皮膚の再生能力が非常に低い。糖尿病の皮膚関連の合併症により、乾燥し、ひび割れが生じやすく、さらに治癒が遅い皮膚がもたらされる。糖尿病の人は、遅くかつ不十分な皮膚の治癒に苦しむことがよくある。糖尿病患者における下肢切断の主な原因は下肢の痛みと潰瘍であり、現在、糖尿病患者の約10%が生涯の間に切断を必要とする。切断の主な理由は、潰瘍の形成と現時点では不治である皮膚の損傷とに関連する感染症である。糖尿病の人の四肢切断の平均リスクは、糖尿病のない人の平均リスクと比較して15倍高い。
【0005】
現在採用されている慢性創傷の処置は、効果的な治療結果に到達することができない。これらの医薬品のほとんどは血管新生に焦点を当てているが、糖尿病は内皮機能障害を含むことが多い。再生治癒は、迅速かつ効果的な再上皮化を特徴とする。糖尿病患者における慢性創傷の新しいより効果的な処置が必要とされている。上皮細胞の不十分な移動は、非治癒性創傷の特徴であり、糖尿病はしばしば内皮機能障害を伴う。したがって、特にケラチノサイトが関与する再上皮化に焦点を当てることにより、現在採用されている処置の治療結果が改善される可能性がある。
【0006】
非治癒性の創傷および静脈瘤性潰瘍の現在採用されている処置は不十分である。皮膚の欠陥を処置する最適な方法はこれまで発見されていない。
【0007】
患者の自家細胞を利用した静脈性潰瘍の新しい処置方法が開発された。しかしながら、そのような処置は要求が厳しく、長引くものである。現在採用されている慢性創傷の処置は、効果的な治療結果に到達することができない。これらの医薬品のほとんどは血管新生に焦点を当てているが、糖尿病は内皮機能障害を含むことが多い。
【0008】
最近、創傷治癒を支援する様々な医薬品が開発されている。これらの例には、ベクラペルミン(Beclapermin)、ジョンソン・エンド・ジョンソン(Johnson & Johnson)による遺伝子組み換え組換えPDGF、またはPDGFとデキサメタゾンを含む哺乳動物組織の再生と回復のための医薬組成物(特許文献1)が含まれる。特許文献2は、TGF-βを含む創傷治癒のための調製物を開示し、特許文献3および4は、FGFを含む創傷治癒のための調製物を開示する。前述の医薬品はすべて、成長因子、サイトカインまたはケモカイン、コラーゲンまたはヒアルロン酸である。これらの医薬品の欠点は、単一細胞タイプに特異的ではないことによる副作用である。
【0009】
ペプチドは制御効果を有し、これはペプチドが生細胞の挙動に影響を与えることができることを意味する。たとえば、皮膚再生のためのいくつかの細胞経路の天然のモジュレーターとしてのGHK(グリシル-L-ヒスチジル-L-リジン)ペプチドは、ヒトの血漿、唾液、および尿中に存在するが、その濃度は年齢とともに減少する。GHKは、銅などの皮膚の再生に必要な微量元素の摂取を促進する。このペプチドはCu2+と錯体を形成して作用し、創傷や皮膚の治癒を促進し、酵素プロセスに関与する(非特許文献1)。GHKは、コラーゲンおよびグリコサミノグリカンの合成と分解の両方を刺激し、メタロプロテアーゼおよびその阻害剤の活性を調節する。それは、コラーゲン、デルマタン硫酸、コンドロイチン硫酸、低分子プロテオグリカンまたはデコリンを刺激する。また、放射線療法後の線維芽細胞の複製活力の再生を促進する。この分子は、免疫細胞および内皮細胞を創傷部位に引き付ける。
【0010】
顔色(complexion)および/または皮膚の治療または美容処置に使用される他のペプチドの中には、受容体に直接結合するPal-Lys-Val-Lys-OH構造を有するシグナルペプチドSyn(登録商標)-Coll(パルミトイルトリペプチド-5)がある(非特許文献2)。さらに、デコリニル(Decorinyl(商標))(テトラペプチド;非特許文献3)は、線維芽細胞を刺激してコラーゲンを産生させ、エラスチン、グリコサミノグリカン、プロテオグリカン、およびフィブロネクチンの増量を促す。ペプチドは神経伝達物質を阻害する:アルジレリン(Argireline)(登録商標)(次の構造を有する:N-アセチル-L-α-グルタミル-L-α-グルタミル-L-メチオニル-L-グルタミニル-L-アルギニル-L-アルギニンアミド)、Vialox(登録商標)(次の構造を有する:H-Gly-Pro-Arg-Pro-Ala-NH)、およびSyn(登録商標)-ake(非特許文献3)は、筋肉活動の最小閾値を上げることにより、顔の筋肉の収縮を減らし、その結果、しわの形成を減らす。
【0011】
以下の酵素を阻害するペプチド:グリシン大豆タンパク質(プレレゲン(Preregen(登録商標));非特許文献4および5)およびセリシン(非特許文献3)は、受容体へのエージングプロセスに関与する酵素を直接的または間接的に阻害する(非特許文献2)。それらは線維芽細胞を刺激してコラーゲンを産生させ、エラスチン、グリコサミノグリカン、プロテオグリカン、フィブロネクチンの増量を促す。
【0012】
アラプチド(Alaptid):8-メチル-6,9-ジアザスピロ[4.5]デカン-7,10-ジオン、またはシクロ(L-アラニル-1-アミノ-1-シクロペンタンカルボニル)、C14、Mr 182.2g/mol、CAS:90058-29-0:は、メラノサイトを刺激するホルモンL-プロリル-L-ロイシルグリシンアミドの放出を阻害する物質群(MIF)に属する。治療薬としてのMIFホルモン自体の使用は、その容易な酵素加水分解によって制限される。特にこの欠点を排除する目的で、一連のMIFスピロ誘導体が調製された(特許文献5(Kasafirek E. et al. Cs. pat. 231 227, 1986);特許文献6(1994);特許文献7(Cs. pat. 260 899, 1989)。アラプチドは、酵素的安定性の観点とその薬力学的プロファイルの両方の観点から、最良の類似体として選択された。他の効果に加えて、アラプチドは実験動物モデルで有意な治療効果を有する物質として実証されている(特許文献8(Kasafirek E. et al. Cs. pat. 276 270, 1992))
【0013】
アラプチドは、メラノサイト刺激ホルモンの放出の阻害に悪影響を及ぼし、したがって表皮におけるメラノサイトの濃度を増加させる可能性がある。メラノサイトは、メラノソームとして知られる細胞小器官を介してケラチノサイトの形成および機能に大きな影響を与える(非特許文献6および7)。ケラチノサイトは、基底層から有棘層および顆粒層を経て角質層に移動し、そこで表皮の回復を促進する(非特許文献8)。
【0014】
アラプチドは、水や他のプロトン性溶媒への溶解度の値が低い化合物(logPは-0.67に等しい)である。この事実は、処置された創傷上の白い被覆の形で処置中にアラプチドが部分的に分離するなど、ある欠点をもたらす。製剤に溶解したアラプチドの濃度が低いと、角質層を介して吸収される活性物質の量が少なくなり得る。アラプチドナノ粒子の使用結果が最近公開されている;例えば、PV2011-232。生理学的環境におけるアラプチドの限られた溶解性は、その治癒可能性を完全に利用することを可能にしない。活性物質を含む液体形態の調製では、親水性媒体へのアラプチドの低い溶解度は、治癒対象部位でのアラプチドの部分的な分離につながり得る重大な欠点を表す。アラプチドの溶解度が低いことは、表皮の下層でのその吸収の低下の原因でもあり得る。
【0015】
アラプチドの効果は、例えば、セルロース系ヒドロゲルからのアラプチドの放出について記載する非特許文献9など、多くの刊行物から知られている。
【0016】
組織の再生のためのアミノ酸およびペプチドの使用はよく知られている。スポーツ関連の再生の目的で、例えば経口投与用に、アミノ酸をペプチドと組み合わせて、筋肉を再生する。アミノ酸およびペプチドは、皮膚の老化を防ぐ多くの化粧配合物にも含まれている。このような化粧品は、顔色/皮膚の乾燥を抑え、皮膚を保護して潤いを与え、その柔軟性と若々しい外観を改善し、表面的および深いしわを埋める。組織の再生を促進するアミノ酸およびペプチドの特性は知られているが、顔色/皮膚に関連して、それらは主に美容および美容医学によって強調されている。
【0017】
特許文献9は、特にしわの寄った皮膚または強い光傷害にさらされた皮膚の局所処置のための化粧組成物を開示する。化粧組成物は、トリペプチドからヘキサペプチドまでであるコラーゲン合成を刺激する薬剤、および細胞外マトリックスと線維芽細胞との間の相互作用を高める薬剤を含む。化粧組成物はまた、抽出物、UVフィルター、保湿物質またはアミノ酸などの他の美容的活性物質も含み得る。
【0018】
特許文献10は、アミノ酸、およびペプチドの銅との錯体を含む化粧組成物を開示する。この組成物は、ボディローションまたは化粧用ウェットワイプなどの化粧品に使用され、皮膚の乾燥を防ぎ、その保護を確実にする。
【0019】
特許文献11は、治癒効果があるとされる少なくとも1つのアミノ酸を含む、銅とのペプチド錯体の水溶液を開示する。しかしながら、この水溶液は前述の文献で試験されておらず、この事実はそのような溶液の効力に関して疑念を生じさせる。
【0020】
特許文献12は、ペプチドおよびアミノ酸を含むゼラチンマトリックスの組成物を開示する。このような製剤は、瘢痕形成を防ぐために、新鮮な創傷の近くに注射することによって適用される。組成物の試験は、婦人科手術の後に実施され、患者の切開部位を取り囲む粘膜に組成物が適用された。この処置は、試験した患者の粘膜の瘢痕を実際に減少させ、患者の妊娠成功の可能性を高めた。
【0021】
特許文献13は、特許文献12と同様の組成物を開示する。ただし、この文献では、この組成物は、骨、軟骨、靭帯、および腱を治癒するために使用される。ここでも組成物は注射によって適用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【文献】欧州特許出願公開第0575484号明細書
【文献】米国特許第5981606号明細書
【文献】米国特許第6800286号明細書
【文献】米国特許第5155214号明細書
【文献】旧チェコスロバキア特許第231227号明細書
【文献】米国特許第5318973号明細書
【文献】旧チェコスロバキア特許第260899号明細書
【文献】旧チェコスロバキア特許第276270号明細書
【文献】欧州特許出願公開第1640041号明細書
【文献】米国特許出願公開第20050209131号明細書
【文献】国際公開第03/030926号
【文献】米国特許出願公開第20130108700号明細書
【文献】国際公開第2005/042048号
【非特許文献】
【0023】
【文献】Gorouhi F, Maibach HI. Role of topical peptides in preventing or treating aged skin. Int J Cosmet Sci. 2009; 31: 327-345
【文献】Brzoska T, Bohm M, Lugering A, Loser K, Luger TA. Terminal signal: anti-inflammatory effects of melanocyte-stimulating hormone related peptides beyond the pharmacophore. Adv Exp Med Biol. 2010; 681: 107-116
【文献】Lupo MP, Cole AL. Cosmeceutical peptides. Dermatol Ther. 2007; 20: 343-349
【文献】Sudel KM, Venzke K, Mielke H, Breitenbach U, Mundt C, Jaspers S, et al. Novel aspects of intrinsic and extrinsic aging of human skin: beneficial effects of soy extract. Photochem Photobiol. 2005; 81: 581-587
【文献】Andre-Frei V, Perrier E, Augustin C, Damour O, Bordat P, Schumann K, et al. A comparison of biological activities of a new soya biopeptide studied in an in vitro skin equivalent model and human volunteers. Int J Cosmet Sci. 1999; 21: 299-311
【文献】McGrath J.A., Eady R.A., Pope F.M. Rook's textbook of dermatology, 7th ed. Blackwell Publishing, 2004, pp.3-7
【文献】James W., Berger T. Elston D. Andrews' diseases of the skin: Clinical dermatology, 10th ed. Saunders, 2005, pp. 5-6
【文献】Watt F.M. The epidermal keratinocyte. BioEssays 1988, 8, 163-167
【文献】Sklenar, Zbynek, et al. “Formulation and release of alaptide from cellulose-based hydrogels.”, Acta Veterinaria Brno 81.3 (2013): 301-306
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明は、治癒が困難な糖尿病性創傷を含めて、創傷の迅速な治癒において驚くべき効力(efficacy)を示し、ペプチドと、以下の成分:ペプチド(2~40アミノ酸);アミノ酸(L-、D-またはラセミ体の、アルギニンおよび/またはシステイン):の少なくとも1つとの組み合わせに基づく、ペプチド成分の皮膚再生および治癒混合物を開示する。前述の成分の混合物は、個別に適用された成分よりも、動物モデルおよびヒトにおける創傷治癒で最大100%高いin vivoでの効力を有することが実証されている。
【0025】
局所的治癒ペプチド成分(topically curative peptide component)の混合物中のアミノ酸は、亜酸化窒素(NO)またはスルファン(HS)のドナー(供与体)として働く。
【0026】
ペプチド成分の皮膚再生および治癒混合物は、少なくとも1つのペプチドを0.001~50mg/ml(またはg)のマトリックスまたは製剤の範囲の濃度で含む。ペプチドの濃度が0.001mg/ml(またはg)のマトリックス以上で治療効果が得られるが、ペプチドの濃度が50mg/ml(またはg)のマトリックスを超えて増加すると所望の治療効果をもたらさないことがin vivo試験に基づいて実証されている。
【0027】
製剤のpH値は3.0~9.0の範囲である。好ましくは、製剤は、製剤適用前に、少なくとも20mM、より好ましくは50mM~100mMまで、そして最も好ましくは少なくとも120mMのイオン強度を有する。
【0028】
ペプチド成分の皮膚再生および治癒混合物は、化粧品的または薬学的に許容される1つの溶媒中、あるいは、水、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、エトキシル化またはプロポキシル化ジグリコール、環状ポリオールなどの化粧品的または薬学的に許容される溶媒の混合物中に溶解させることができる。ペプチド成分の皮膚再生および治癒混合物は、好ましくは、リポソームなどの医薬または化粧品ベクターを用いて溶解させることができ、あるいは局所的治癒ペプチド成分の混合物は、粉末有機ポリマー、またはタルクもしくはベントナイトなどの粉末ミネラルに吸着させることができる。一般に、局所的治癒ペプチド成分の混合物は、任意の化粧品的または薬学的に許容されるベクター中に固定され得る。
【0029】
ペプチド成分の皮膚再生および治癒混合物は、他の活性物質、化粧品的または薬学的に活性な物質と組み合わせて使用することができる。最終製剤は、顔色/皮膚のケアに焦点を当てた美容目的で、あるいは医薬品として使用される。製剤は若返りおよび活性化の特性を有する。
【0030】
ペプチド成分の皮膚再生および治癒混合物は、シグナルまたは保護基(tBoc、タグ)などの他の基を有するペプチドを含み得る。ペプチドはまた、他の活性物質を担持するものなど、ナノ粒子および/またはリポソームに関連するものであってよい。ペプチドはまた、グリコシル化、ペグ化(PEG化)、アセチル化、メチル化、ユビキチン化、ヒドロキシル化、パルミトイル化、リン酸化またはその他によって修飾されていてもよいが、そのような修飾がペプチドの治癒特性に影響を及ぼさないことを条件とする。
【0031】
驚くべきことに、小さなペプチド(12アミノ酸未満の配列)は、完全長の天然タンパク質よりも創傷治癒の改善に関してより効果的であることが発見された。さらに、そのような効力の増強は、完全長ペプチドのすべてのフラグメントによって共有されるわけではないことが発見された。驚くべきことに、本発明者らは、本発明によるペプチドが完全長タンパク質よりも創傷治癒においてより効果的であり、そのような効力の増強が創傷の自然治癒に使用される完全長の治癒ペプチドおよびタンパク質のすべてのフラグメントにより共有されるわけではないことを実証した。さらに、ペプチドと、アミノ酸または他のペプチドとの組み合わせは、処置に使用される個々のペプチドよりも治癒においてより高い効力を示した。
【0032】
さらに、ペプチド金属錯体(peptide metalocomplex)にCuまたはZnが存在すると、金属が存在しないペプチドによる処置と比較して、効力が5~10%高まることが発見された;局所的治癒ペプチド成分の混合物は、好ましくは、塩基性ペプチドおよびその金属錯体の両方を含む。このような調製物の治癒効果は、ペプチドまたはペプチド金属錯体のいずれかを含む調製物の治癒効果と比較して、8~12%高まる。局所的治癒ペプチドの混合物は、好ましくは、Cu-GHKペプチド金属錯体を含み、Cu-GHKは、天然の自己物質であるが、その量は、年齢とともに減少する。このため、怪我や慢性創傷の処置は、年齢が高くなるほど難しくなる。ペプチド金属錯体を含むペプチド成分の皮膚再生および治癒混合物は、特に非治癒性創傷の場合に増強された効力を示す。
【0033】
金属錯体は、ペプチドが無水メタノール(MeOH)またはアセトニトリルに溶解または懸濁され、金属(好ましくはCu2+またはZn2+)の濃縮溶液が2当量塩基(好ましくはナトリウムメトキシド(MeONa)または別の強塩基)とともに混合物に添加される、単純な合成によって実験室環境で調製される。混合物は周囲温度で40~120分間撹拌される。次に、それぞれのペプチド金属錯体が抽出および乾燥される。乾燥ペプチド金属錯体は、ペプチド成分の皮膚再生および治癒混合物の多くの実施形態で使用される。
【0034】
ペプチド成分の皮膚再生および治癒混合物は、線維芽細胞および上皮細胞(ケラチノサイトなど)の増殖性成長を刺激し、実験動物およびヒトの志願者における創傷治癒過程全体にプラスの効果をもたらす。試験段階において、ペプチド成分の皮膚再生および治癒混合物が効果的にしわを埋め、顔色を若返らせ、しみ(dark spot)やあざを明るくし、そばかすやあざの除去などの美容整形後の傷跡の形成を防ぐことも発見された。ペプチド成分の皮膚再生および治癒混合物は、火傷の処置のため、外科手術および顕微手術後、一般的な損傷で、または擦過射部位(grazed site)などの損傷した皮膚のより広い領域にも使用されている。
【0035】
研究中に、前述の組み合わせ中のアラプチド(Alaptid)などのジケトピペラジンスピロ環状ペプチド(diketopiperazine spirocyclic peptide)が、抗菌効果も有する濃度で真皮細胞の成長を大幅に改善する特性を有することも実証された。この大きな利点は、特に、敗血症および感染が創傷の治癒を妨げる主要な障害である、治癒が困難な、炎症を起こしたまたは糖尿病性の創傷において利用することができる。
【0036】
さらに、ペプチド成分の皮膚再生および治癒混合物は、創傷での細胞間物質の分解および沈着の制御により、急性創傷および慢性創傷の両方の治癒において役割を果たすメタロプロテアーゼの機能にも影響を与えることが実証された。ペプチド成分の皮膚再生および治癒混合物は、創傷部位のメタロプロテアーゼのレベルを高め、それにより、創傷での細胞間物質の分解が加速され、創傷の治癒が可能になる。
【0037】
ペプチド成分の皮膚再生および治癒混合物には、2つの主要なグループの治癒タンパク質、すなわちジケトピペラジンスピロ環状ペプチド(diketopiperazine spirocyclic peptide)および線状ペプチドが使用された。どちらのグループも、天然と合成に分けることができる。GHKペプチド(Gly-His-Lys)またはDAHKペプチド(Asp-Ala-His-Lys)などの天然ペプチドは、皮膚の再生に重要な役割を果たす。それらは皮膚細胞の増殖、それらの再生および寿命に影響を及ぼす。天然ペプチドと合成ペプチドの組み合わせが好ましいことが実証されている。合成タンパク質の例として、CARタンパク質またはジケトピペラジンペプチド(例えば、アラプチド)を挙げることができる。ジケトピペラジンペプチドとGHKペプチド/Cu-GHKペプチドの1:1の比率での組み合わせは、非常に有益であることが実証されている。アルギニンと組み合わせたGHKペプチド/Cu-GHKペプチド混合物の性能は実証されており、同程度に好ましいと思われ、そのような混合物での処置は、ジケトピペラジン+GHK/Cu-GHKの混合物での処置と比較して約1/10長くかかる。少なくとも2つのタイプのジケトピペラジンペプチドの混合物も処置に好ましい。治癒が困難な創傷の場合、2つのジケトピペラジンの組み合わせは、1つのジケトピペラジンを個別に適用するよりも最大70%効果が高い。また、タンパク質(好ましくは、コラーゲン、フィブリノーゲンまたはエラスチン)の存在下でのGHKタンパク質/Cu-GHKタンパク質とアルギニンとの組み合わせが有益であることが実証されている。糖尿病性創傷などの治癒が困難な創傷の場合、ペプチドの混合物に、NOのドナー(供与体)としてアルギニンなどのアミノ酸、および/または、HSのドナー(供与体)としてアミノ酸のシステインを添加することが好ましい。アミノ酸の添加は効力の改善をもたらす。
【0038】
ペプチド成分の皮膚再生および治癒混合物に使用されるジケトピペラジンペプチドは、次の一般式により説明することができる:
【化1】
【0039】
一般構造:
【化2】
【0040】
具体的な化学物質の例:
【化3】
【0041】
(S)-異性体:
【化4】
【0042】
一般構造:
【化5】
【0043】
具体的な化学物質の例:
【化6】
【0044】
ペプチド成分の皮膚再生および治癒混合物には、次のようなジケトピペラジンタンパク質の誘導体も使用された:
構造化学名:8-メチル-6,9-ジアザスピロ[4.5]デカン-7,10-ジオン、および構造式:
【化7】
を有するアラプチド(Alaptid);アラプチド-CD複合体(Alaptid-CD complex);6-メチル-メチルアラプチド(6-methyl-MeAlaptid);6,9-ジメチルアラプチド(6,9-di-MeAlaptid)、6-エチルアラプチド(6-EtAlaptid);6-ヘキシルアラプチド(6-hexylAlaptid);9-エチルアラプチド(9-ethylAlaptid);6-パルアラプチド、6-パルミトイル8-メチル-6,9-ジアザスピロ[4.5]デカン-7,10-ジオン(6-Pal alaptide)。
【0045】
ペプチド成分の皮膚再生および治癒混合物には、以下のアミノ酸配列または使用名を有する線状ペプチドも使用された:
a) Cu-GHK
b) DAHK
c) カルノシンAH
d) PLG
e) TFA-VWV-OH
f) KDI-シトルリン
g) Pal-GHK
h) Pal-GQPR
i) KRFK
j) Pal-KVK-bisTFA
k) Pal-KTTKS-OH
l) Pal-GQPR
m) Pal-VGVAPG
n) GEKG
o) PKEK
p) FVAPFP
q) Mn-GHK
r) GPRPA
s) YAGFL
t) AP-Dab-NHBn-2-アセテート
u) エキセジン(Exendin)-4 HGEGTFTSDLSKQMEEEAVRLFIEWLKNGGPSSGAPPPS
v) YVSPGMKNVNWWSHWWHATD
w) X-NH-GPAG-CO-Y(X=H、Boc、Fmoc、Me、Et;Y=OH、OMe、OEt、ONa、OK、ONH
x) VYYVGRK
y) c[WCKPKPKPRCH-NH2])
z) QHREDGS
aa) YGRRRRRQRRRP
bb) H-LEPPPLKPADALGV-OH
cc) AG30 MLSLIFLHRLKSMRKRLDRKLRLWHRKNYP
dd) AG30/5C MLKLIFLHRLKRMRKRLKRKLRLWHRKRYK
ee) AH90 ATAWDFGPHGLLPIRPIRIRPLCG
ff) CW49 APFRMGICTTN
gg) Cys-KR12 KRIVKRIKKWLR
hh) エスクレチン(Esculentin)-1a(1-21) GIFSKLAGKKIKNLLISGLKG
ii) hBD-1 DHYNCVSSGGQCLYSACPIFTKIQGTCYRGKAKCCK
jj) hBD-2 GIGDPVTCLKSGAICHPVFCPRRYKQIGTCGLPGTKCCKKP
kk) ヒスタチン-1 DSHEKRHHGYRRKFHEKHHSHREFPFYGDYGSNYLYDN
ll) ヒスタチン-2 RKFHEKHHSHREFPFYGDYGSNYLYDN
mm) ヒスタチン-3 DSHAKRHHGYKRKFHEKHHSHRGYRSNYLYDN
nn) IDR-1018 VRLIVAVRIWRR
oo) LL-37 LLGDFFRKSKEKIGKEFKRIVQRIKDFLRNLVPRTES
pp) Pep19-2.5 GCKKYRRFRWKFKGKFWFWG
qq) PLL-37 PLLGDFFRKSKEKIGKEFKRIVQRIKDFLRNLVPRTES
rr) SHAP1 APKAMKLLKKLLKLQKKGI
ss) SR-0007 MLKLIFLHRLKRMRKRLKRK
tt) SR-0379 MLKLIFLHRLKRMRKRLkRK
uu) テンポリン(Temporin)A FLPLIGRVLSGIL
vv) テンポリン(Temporin)B LLPIVGNLLKSLL
【0046】
ペプチド成分の皮膚再生および治癒混合物は、好ましくは、溶液、懸濁液、乳濁液、軟膏、バーム、チンキ剤、エリキシル剤、パッチ、包帯(bandage)、被覆材料(dressing material)、アルギン酸塩被覆材または湿布、局所溶液、注入液または外科的洗浄液の形態であり得る。前述の形態のマトリックスは、好ましくはタンパク質を含む。
【0047】
ペプチド成分の皮膚再生および治癒混合物は、好ましくは、ゲルマトリックスと配合して創傷に適用される。ゲルマトリックスは、1:1の重量比のタンパク質および糖類成分と、Ca2+、Mg2+、およびZn2+(好ましくは酢酸カルシウム、酢酸亜鉛または酢酸マグネシウムの形態)を含む緩衝水溶液とを含む。ゲルのpH値は、好ましくは3~9の範囲である。陽イオンの存在のおかげで、コラーゲンとの錯体形成および/または陽イオン制御ゲル化のいずれかによってゲルが形成される。タンパク質成分は、好ましくは、コラーゲン、スプリットコラーゲン、フィブリノーゲン、スプリットフィブリノーゲン、エラスチン、スプリットエラスチン、ゼラチン、加水分解ゼラチン、BSAなどである。糖類成分は、好ましくは、ヒアルロン酸、ペクチン、アルギン酸塩、カラギーナン、アルギン酸、酸化型および非酸化型のセルロース、セルロース誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロースおよびその塩)、他のカルボキシル化糖類、キトサン、カプリル酸ソルビタン、亜麻仁ガム、ペクチン酸塩、ならびに他のオリゴ糖類および多糖類などである。マトリックスはまた、ポリアクリルアミド、ポリ乳酸・グリコール酸共重合体(またはポリ(乳酸-co-グリコール酸))(PLGA)およびポリ乳酸(PLA)などの合成ポリマーによって形成され得る。
【0048】
ゲルマトリックスは、皮膚の水和、栄養補給および調整(tuning)を提供し、慢性創傷、褥瘡、糖尿病性合併症の処置ならびにレーザーおよび美容整形後の処置のために、ペプチド成分の皮膚再生および治癒混合物と組み合わせて使用するのに好ましい。さらに、ゲルマトリックスは、ペプチド成分の皮膚再生および治癒混合物と組み合わせて、しわを伸ばし、新しいしわの形成を減速させ、肌の老化(complexion ageing)の過程を効果的に減速させ、皮膚細胞を刺激してコラーゲンおよびエラスチンを生成し、肌の色を明るくしかつ均一にする。ペプチド成分の皮膚再生および治癒混合物を配合して創傷に適用されるゲルは、好ましくは無菌である。
【0049】
マトリックスはまた、水中油型または油中水型であってよく、ペプチドおよび/またはアミノ酸および/またはタンパク質は、好ましくは脂質相に存在する。脂質相は、好ましくは、ホスファチジルコリンまたは他のレシチンも含む。レシチンは、好ましくは、亜酸化窒素、ペプチド、またはその両方を含むリポソームまたはミセルまたは他の構造の形態で組成物中に存在する。好ましくは、ペプチド成分の皮膚再生および治癒混合物のためのマトリックスは、皮膚(例えば怪我をした)に塗布または噴霧することができるゲル、クリーム、ローション、軟膏、溶液、固体「スティック」などの形態である。
【0050】
調製されたペプチド成分の皮膚再生および治癒混合物は、創傷治癒の加速において高い効力を達成する。この結果は、治癒に使用される短縮ペプチド鎖に基づいており、またNOおよびHSのドナーを添加することによる。ペプチド成分の皮膚再生および治癒混合物は、健康な患者における治癒に必要な時間を標準処置と比較してほぼ3分の1(8週間から3週間)に短縮し、慢性皮膚欠損のある病気の患者では治癒に必要な時間を7分の1(20週間から3週間)に短縮する;慢性的に炎症を起こした創傷を有する一部の患者では、ペプチド成分の皮膚再生および治癒混合物は、切断術対象の他の方法では維持できない症例での処置を可能にする。実施例1によるペプチド成分の混合物を含む調製物(ペプチド+Arg+Cys)を使用して、そのような製剤で治癒した創傷および/または皮膚欠損は、マウスモデルでは平均3週間で、健康な患者では3週間で治癒し、糖尿病患者では、治癒は3~7週間で達成された。実施例2および3によるペプチド+Arg/Cysに基づく調製物、または実施例5、6、および7によるペプチド+ペプチド+Arg+Cysに基づく調製物を用いて、創傷は、マウスモデルでは4週間で、健康な患者では4週間で治癒し、治癒が困難な創傷の場合、治癒は4~9週間で達成された。実施例4による調製物ペプチド+ペプチドを用いて、マウスモデルの創傷は平均5週間で治癒し、健康な患者では5週間で治癒し、治癒が困難な創傷の治癒は5~12週間かかった。実施例8Aによる調製物、すなわち、ゲルマトリックス中にペプチド自体を加えた対照群(アラプチドをモデルとして使用した)では、マウスモデルの創傷は平均して7週間で治癒し、健康な患者では7週間で治癒し、治癒が困難な創傷の治癒には7~20週間かかった。実施例8Bによる調製物、すなわちゲルマトリックス自体を適用した対照群では、マウスモデルの創傷は平均して8週間で治癒し、健康な患者では8週間で治癒し、治癒が困難な創傷の治癒には8~20週間かかった;ただし、完全に治癒したのは1人の患者だけであった。実施例8Cによる調製物、すなわち処置なしの対照群では、マウスモデルの創傷は平均して8週間で治癒し、健康な患者では8週間で治癒し、治癒が困難な創傷の治癒は5人のうち1人の患者でのみ完了し、すなわち、31週間で、試験したすべての対象に赤い斑点が残ったままであった。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1-1】マウスモデルで使用される選択された製剤の比較
図1-2】図1-1の続き
図1-3】図1-2の続き
図1-4】図1-3の続き
図1-5】図1-4の続き
図2】実施例1Bに記載された調製物によるマウスでの実験的創傷治癒の21日目の40倍拡大の組織学的画像
図3】実施例2に記載の調製物によるマウスでの実験的創傷治癒の28日目の40倍拡大の組織学的画像
図4】実施例7に記載の調製物によるマウスでの実験的創傷治癒の28日目の40倍拡大の組織学的画像
図5】実施例8Bに記載の調製物によるマウスでの実験的創傷治癒の50日目の40倍拡大の組織学的画像
図6】選択された患者に使用された選択された調製物の比較
図7】選択された調製物を使用した創傷治癒の表
図8】選択された調製物を使用した創傷治癒のグラフ
【実施例
【0052】
実施例1
ペプチド金属錯体の調製
Cu-GHK
1.5gのGHKを50mlの100%メタノールに周囲温度で懸濁させ、連続的に攪拌しながら、0.25gの酢酸銅(CuOAc)を5mlの水溶液および5mlのMeONa(1M)の形態で添加した。混合物を周囲温度で130rpmの速度で120分間撹拌した。次に、ペプチド金属錯体を抽出して乾燥させた。
【0053】
調製物の製造-ペプチド+Arg+Cys
1A 1%Cu-GHKワセリン
1gの粉末GHKペプチド(Gly-His-Lys)、0.3gの粉末L-アルギニン、および0.1gの粉末L-システインを、98.6gの薬用ワセリンに3000rpmで混合した。Cu-GHKペプチドの含有量が1%の調製物を調製した。
【0054】
1B 1%Cu-GHKマトリックスゲル
1gの粉末Cu-GHKペプチド(Gly-His-Lys)、0.3gの粉末L-アルギニン、および0.1gの粉末L-システインを、コラーゲン7g、ペクチン7g、および5%酢酸カルシウムを含むpH7のリン酸緩衝液86gからなるゲルマトリックスに混合した。ゲルマトリックスの成分を一緒に混合し、マグネチックスターラーを使用して300rpmで5分間、次に130rpmでさらに25分間撹拌した。次に、Cu-GHKペプチドとL-Argをゲルマトリックスに添加し、混合物を2,000rpmでさらに5分間撹拌した。
【0055】
1C 1.2%GHKワセリン
1.2gの粉末GHKペプチド(Gly-His-Lys)、0.3gの粉末L-アルギニン、および0.1gの粉末L-システインを、98.6gの薬用ワセリンに3000rpmで混合した。GHKペプチドの含有量が1%の調製物を調製した。
【0056】
1D 1%DAHK(1:0.3:0.1)ワセリン
1gの粉末DAHKペプチド(Asp-Ala-His-Lys)、0.35gの粉末L-アルギニン、および0.1gの粉末L-システインを、98.6gの薬用ワセリンに3,000rpmで混合した。DAHKペプチドの含有量が1%の調製物を調製した。
【0057】
1E 0.5%DAHKマトリックス軟膏
0.5gの粉末DAHKペプチド(Asp-Ala-His-Lys)、0.15gの粉末D-アルギニン、および0.08gの粉末D-システインを、以下からなるマトリックスに混合した:流動パラフィン8.0g、硬質パラフィン12.0g、ステアリルアルコール2.0g、プロピレングリコール5.5g、Slovasol 2430(1-(2-メトキシイソプロポキシ)-2-プロパノール)3.0g、カルボメラ(Carbomera)0.5g、トリエタノールアミン0.6g、メチルパラベン0.2g、プロピルパラベン0.05g、および精製水67.65g。
【0058】
混合物を5000回転で2時間撹拌した。
【0059】
すべての成分を、0.5%のDAHKペプチドを含むエマルジョンに均質化した。
【0060】
1F 1%アラプチドワセリン
1gの粉末アラプチド、0.4gの粉末L-アルギニン、および0.1gの粉末L-システインを、98.6gの薬用ワセリンに3,000rpmで混合した。アラプチドの含有量が1%の調製物を調製した。
【0061】
1G 5%アラプチドマトリックスエマルジョン
5gの粉末アラプチドを4gの精製ココナッツオイルに混合し、乳化剤を添加し、混合物を水82gと混合した。乳化剤は、9gの9%トリデシルアルコールエトキシレートから構成された。
【0062】
乳化剤の存在下で、2つの非混和性液体を混合した。得られた多分散エマルジョンを2gの粉末ラセミアルギニンおよび0.5gの粉末ラセミシステインと混合し、さらに周囲温度および3000rpmでホモジナイザーにおいて均質化した。均質化により、調製したエマルジョンの安定性が向上した。アラプチドの含有量が5%のエマルジョンを調製した。
【0063】
1H 2%エキセンジン-4ワセリン
2gの粉末エキセンジン-4、0.3gの粉末L-アルギニン、および0.1gの粉末L-システインを、98.6gの薬用ワセリンに3,000rpmで混合した。エキセンジン-4の含有量が2%の調製物を調製した。
【0064】
1I 1% 3-メチル-1,4-ジアザスピロ[5.6]ドデカン-2,5-ジオンワセリン
1gの粉末3-メチル-1,4-ジアザスピロ[5.6]ドデカン-2,5-ジオン、0.3gの粉末L-アルギニン、および0.1gの粉末L-システインを、98.6gの薬用ワセリンに3,000rpmで混合した。3-メチル-1,4-ジアザスピロ[5.6]ドデカン-2,5-ジオンの含有量が1%の調製物を調整した。
【0065】
1J 1% GEKGワセリン
1gの粉末GEKG、0.5gの粉末L-アルギニン、および0.2gの粉末L-システインを、98.6gの薬用ワセリンに3,000rpmで混合した。GEKGの含有量が1%の調製物を調製した。
【0066】
実施例2
調製物の製造-ペプチド+Arg
1% Zn-GHKマトリックスゲル
1gの粉末Zn-GHKペプチド(Gly-His-Lys)および0.2gの粉末D-アルギニンを、ゼラチン7g、カラギーナン7g、および5%酢酸亜鉛を含むpH7のリン酸緩衝液86gからなるゲルマトリックスに混合した。ゲルマトリックスの成分を一緒に混合し、マグネチックスターラーを使用して300rpmで5分間、次に130rpmでさらに25分間撹拌した。次に、Zn-GHKペプチドおよびL-Argをゲルマトリックスに添加し、混合物を2,000rpmでさらに5分間撹拌した。
【0067】
実施例3
調製物の製造-ペプチド+Cys
1% DAHKマトリックスゲル
1gの粉末DAHKペプチドおよび0.2gの粉末L-アルギニンを、ゼラチン2g、キトサン1g、ヒアルロン酸1gおよびコラーゲン3g、カラギーナン7g、および5%酢酸マグネシウムを含むpH7のリン酸緩衝液86gからなるゲルマトリックスに混合した。ゲルマトリックスの成分を一緒に混合し、マグネチックスターラーを使用して300rpmで5分間、次に130rpmでさらに25分間撹拌した。次に、DAHKペプチドおよびL-Argをゲルマトリックスに添加し、混合物を2,000rpmでさらに5分間撹拌した。
【0068】
実施例4
調製物の製造-溶液中のペプチド+ペプチド
4A GHK+アラプチド溶液
1.5gの粉末GHKタンパク質および1gの粉末アラプチドを、97.5gの精製水中で撹拌した。混合物を5,000rpmで15分間撹拌した。毎回使用する前に、混合物を3,000rpmで2分間撹拌した。
【0069】
4B GHK+DAHK溶液
1gの粉末GHKおよび1gの粉末DAHKを98gの精製水中で撹拌した。混合物を4,500rpmで10分間撹拌した。毎回使用する前に、混合物を3,000rpmで1分間撹拌した。
【0070】
4C アラプチド+4,6,7-トリエチル-4,7-ジアザスピロ[2.5]オクタン-5,8-ジオン溶液
1gの粉末アラプチドおよび1.5gの粉末4,6,7-トリエチル-4,7-ジアザスピロ[2.5]オクタン-5,8-ジオンを、97.5gの精製水中で撹拌した。混合物を5,000rpmで20分間撹拌した。毎回使用する前に、混合物を3,000rpmで2分間撹拌した。
【0071】
実施例5
調製物の製造-ペプチド+ペプチド+Argマトリックスゲル
1gの粉末DAHKペプチドおよび1gの粉末GHKペプチド、ならびに0.2gの粉末L-アルギニンを、加水分解ゼラチン6g、BSA1g、カルボキシメチルセルロース5g、ヒアルロン酸2g、および5%酢酸カルシウムを含むpH6のホウ酸緩衝液86gからなるゲルマトリックス中に混合した。ゲルマトリックスの成分を一緒に混合し、マグネチックスターラーを使用して300rpmで5分間、次に130rpmでさらに25分間撹拌した。次に、DAHKペプチド、GHKペプチド、およびL-Argをゲルマトリックスに添加し、混合物を3,000rpmでさらに5分間撹拌した。
【0072】
実施例6
調製物の製造-ペプチド+ペプチド+Cysマトリックスゲル
1gの粉末DAHKペプチドおよび1gの粉末アラプチド、ならびに0.2gの粉末L-システインを、スプリットエラスタン3g、加水分解ゼラチン1g、BSA3g、カルボキシメチルセルロース5g、カラギーナン1g、アルギン酸1g、および1%酢酸亜鉛を含むpH7.5のホウ酸緩衝液86gからなるゲルマトリックス中に混合した。ゲルマトリックスの成分を一緒に混合し、マグネチックスターラーを使用して400rpmで15分間、次に130rpmでさらに25分間撹拌した。次に、DAHKペプチド、アラプチド、およびL-Cysをゲルマトリックスに添加し、混合物を5,000rpmでさらに2分間撹拌した。
【0073】
実施例7
調製物の製造-ペプチド+ペプチド+Arg+Cysマトリックスゲル
1gの粉末GHKペプチドおよび1gの粉末アラプチドおよび0.5gの粉末L-アルギニン、および0.2gのL-システインを、スプリットコラーゲン6g、フィブリノーゲン1g、オキソセルロース4g、アルギン酸塩1g、ペクチン酸塩1g、亜麻仁ガム1g、および1%酢酸亜鉛を含むpH7のリン酸緩衝液86gからなるゲルマトリックス中に混合した。ゲルマトリックスの成分を一緒に混合し、マグネチックスターラーを使用して400rpmで15分間、次に130rpmでさらに25分間撹拌した。次に、DAHKペプチド、アラプチド、およびL-Cysをゲルマトリックスに添加し、混合物を5,000rpmでさらに2分間撹拌した。
【0074】
実施例8
8A 調製物の製造-ペプチドマトリックスゲル
3gの粉末アラプチドを、コラーゲン4g、スプリットコラーゲン3g、ヒアルロン酸1g、アルギン酸塩3g、カラギーナン3g、および3%酢酸マグネシウムを含むpH6.5の酢酸緩衝液86gからなるゲルマトリックス中に混合した。ゲルマトリックスの成分を一緒に混合し、マグネチックスターラーを使用して400rpmで15分間、次に130rpmでさらに25分間撹拌した。次に、アラプチドをゲルマトリックスに添加し、混合物を5,000rpmでさらに5分間撹拌した。
【0075】
8B 調製物の製造-マトリックスゲル
対照ゲルマトリックスは、コラーゲン7g、ペクチン7g、および5%酢酸カルシウムを含むpH7のリン酸緩衝液86gから調製した。ゲルマトリックスの成分を一緒に混合し、マグネチックスターラーを使用して300rpmで5分間、次に130rpmでさらに25分間撹拌した。次に、ゲルマトリックスを2,000rpmでさらに1分間撹拌した。
【0076】
実施例9
個々の調製物の効力の試験
効力を比較するために、個々の実施例に基づく調製物を、薬用ワセリンと混合することによって標準化された濃度で製造した。このアプローチにより、試験製剤の一様性が保証された。さらに、製造したすべての製剤を試験した。図7および8は、個々の試験群での創傷の完全な治癒に必要なin vivoの日数を示す。所与の群の調製物を表す選択された製剤が示されている。結果は、製剤の効果が、使用されるペプチドとは無関係であるが、特定の比率でのペプチドとアミノ酸の組み合わせに依存することを示す。調製物の効力を比較するために、近交系実験用マウスの動物モデルを選択し、滅菌メスを使用して腹腔内に人工創傷をつくった。各実験対象に、長さ約1cm、深さ約3mmの2つの傷を生じさせた。マウスモデルでの試験に続いて、健康な負傷した患者、ならびに糖尿病の負傷した患者および/または非治癒性の創傷を有する患者で試験を実施した。健康な患者の場合、特に顕微手術に起因する創傷、糖尿病患者では、治癒が困難な創傷、静脈性潰瘍、褥瘡性潰瘍および瘻孔が関係した。マウスおよび患者の試験群は、常に5匹または5人の試験対象を含んでいた。創傷に、毎日0.002gのペプチド、すなわち1日に0.2gの1%ペプチド製剤を適用した。マウスでの試験は24時間ごとに評価され、患者での試験は患者自身によって毎日記録された-創傷の簡単な説明と共に写真が毎日撮影された。記録は、後で主治医によって評価された。
【0077】
実施例1による調製物、すなわちペプチド+Arg+Cysが使用された場合に、加速された創傷治癒の最良の効果が達成されたことが発見された。さらに、ゲルマトリックス中の製剤は、ワセリンマトリックス中の治癒ペプチド成分の混合物の製剤と比較して、相乗効果を有することが実証された。ゲルマトリックス中の製剤は、創傷のより迅速な治癒を提供する。実施例1の製剤で処置した創傷は、マウスモデルでは平均3週間で治癒し、健康な患者では3週間で治癒し、治癒が困難な創傷の治癒には3~7週間かかった。実施例2、3、および7による調製物では、マウスモデルの創傷は平均4週間で治癒し、健康な患者では4週間で治癒し、治癒が困難な創傷の治癒には4~9週間かかった。実施例4による調製物では、マウスモデルの創傷は平均5週間で治癒し、健康な患者では5週間で治癒し、治癒が困難な創傷の治癒には5~12週間かかった。実施例5および6による調製物では、マウスモデルの創傷は平均4週間で治癒し、健康な患者では4週間で治癒し、治癒が困難な創傷の治癒には4~8週間かかった。実施例8Aによる調製物、すなわち、ゲルマトリックス中にペプチド自体を添加した対照群(アラプチドをモデルとして使用した)では、マウスモデルの創傷は平均7週間で治癒し、健康な患者では7週間で治癒し、治癒が困難な創傷治癒には7~20週間かかった。実施例8Bによる調製物、すなわちゲルマトリックス自体を適用した対照群では、マウスモデルの創傷は平均8週間で治癒し、健康な患者では8週間で治癒し、治癒が困難な創傷の治癒には8~20週間かかった;ただし、完全に治癒したのは1人の患者だけであった。実施例8Cによる調製物、すなわち処置なしの対照群では、マウスモデルの創傷は平均8週間で治癒し、健康な患者では8週間で治癒し、治癒が困難な創傷の治癒は5人のうち1人の患者でのみ完了し、すなわち、31週間で、試験したすべての対象に赤い斑点が残ったままであった。
【0078】
実施例10
10A 実施例1Bによる調製物の効果、アンチエイジング、しわ伸ばし
30~60歳の35人の女性の群で試験した。試験前に、すべての女性の顔の写真を、レンズCanon EF 100 2,8L USMを備えたカメラCanon 5D mark III(フルフレーム)によって撮影した。写真は、顔を500Wの出力を持つ3つのスタジオ照明器具に曝して、シャッター11、ISO 100で撮影した。群を対照と試験対象に分けた。対照群にはプラセボ調製物を適用し、試験対象群には実施例1Bによる調製物を適用した。プラセボは、ペプチドとアミノ酸を添加していないゲルマトリックスであった。
【0079】
女性に、実施例1Bによる調製物を1日2回、6週間適用した。試験の完了後、女性の顔を再び記録し、すなわち、女性の顔の写真をマクロレンズカメラで撮影した。試験前後の各女性の写真を画像分析によって比較した。1日2回の6週間の適用で、平均で70%のしわ伸ばし(wrinkle smoothing)が達成されたが、対照群では、おそらくゲルマトリックスによって提供される水和のせいで、8%のしわ伸ばしが達成された。
【0080】
10B 実施例7による調製物の効果、アンチエイジング、しわ伸ばし
28~59歳の35人の女性の群で試験した。試験前に、すべての女性の顔の写真を、レンズCanon EF 100 2,8L USMを備えたカメラCanon 5D mark III(フルフレーム)によって撮影した。写真は、顔を500Wの出力を持つ3つのスタジオ照明器具に曝して、シャッター11、ISO 100で撮影した。女性に、実施例7の調製物を1日2回、6週間適用した。試験完了後、女性の顔を再び記録し、すなわち、女性の顔の写真をマクロレンズカメラで撮影した。試験前後の各女性の写真を比較した。1日2回の6週間の適用で、平均で62%のしわ伸ばしが達成された。
【0081】
産業上の利用可能性
創傷、火傷、非治癒性および糖尿病性創傷の治癒を促進するための調製物、美容医学および化粧品。
最後に、本発明の好ましい実施態様を項分け記載する。
[実施態様1]
ペプチド成分の皮膚再生および治癒混合物であって、以下の群:2~40アミノ酸からなるペプチド、アルギニンアミノ酸、システインアミノ酸:からの少なくとも2つのペプチド成分を含み、前記ペプチド成分の少なくとも1つは2~40アミノ酸からなるペプチドであり、前記2~40アミノ酸からなるペプチドは線状ペプチドまたはスピロ環状ジケトピペラジンペプチドであることを特徴とする、ペプチド成分の皮膚再生および治癒混合物。
[実施態様2]
2~40アミノ酸からなるペプチド、アルギニンアミノ酸、およびシステインアミノ酸を含むことを特徴とする、実施態様1に記載のペプチド成分の皮膚再生および治癒混合物。
[実施態様3]
線状ペプチド、スピロ環状ジケトピペラジンペプチド、アルギニンアミノ酸、およびシステインアミノ酸を含むことを特徴とする、実施態様2に記載のペプチド成分の皮膚再生および治癒混合物。
[実施態様4]
少なくとも1つの2~40アミノ酸からなるペプチドが、金属錯体ペプチドであることを特徴とする、実施態様1に記載のペプチド成分の皮膚再生および治癒混合物。
[実施態様5]
前記金属錯体ペプチドがCu-GHKであることを特徴とする、実施態様4に記載のペプチド成分の皮膚再生および治癒混合物。
[実施態様6]
前記線状ペプチドが、以下のアミノ酸の配列:GHK、Cu-GHK、Zn-GHK、DAHK:を有する群から選択されることを特徴とする、実施態様1に記載のペプチド成分の皮膚再生および治癒混合物。
[実施態様7]
線状ペプチドおよびスピロ環状ジケトピペラジンペプチドを含むことを特徴とする、実施態様1に記載のペプチド成分の皮膚再生および治癒混合物。
[実施態様8]
線状ペプチドの混合物を含むことを特徴とする、実施態様1に記載のペプチド成分の皮膚再生および治癒混合物。
[実施態様9]
スピロ環状ジケトピペラジンペプチドの混合物を含むことを特徴とする、実施態様1に記載のペプチド成分の皮膚再生および治癒混合物。
[実施態様10]
前記スピロ環状ジケトピペラジンペプチドが、一般式:
【化8】
を有することを特徴とする、実施態様1に記載のペプチド成分の皮膚再生および治癒混合物。
[実施態様11]
前記スピロ環状ジケトピペラジンペプチドが、以下の構造式:
【化9】
を有するアラプチド(8-メチル-6,9-ジアザスピロ[4.5]デカン-7,10-ジオン)であることを特徴とする、実施態様1に記載のペプチド成分の皮膚再生および治癒混合物。
[実施態様12]
前記線状ペプチドが、以下のアミノ酸の配列を有する群から選択されることを特徴とする、実施態様1に記載のペプチド成分の皮膚再生および治癒混合物:
a) Cu-GHK
b) DAHK
c) Ala-His
d) PLG
e) TFA-VWV-OH
f) KDI-シトルリン
g) Pal-GHK
h) Pal-GQPR
i) KRFK
j) Pal-KVK-bisTFA
k) Pal-KTTKS-OH
l) Pal-GQPR
m) Pal-VGVAPG
n) GEKG
o) PKEK
p) FVAPFP
q) Mn-GHK
r) GPRPA
s) YAGFL
t) AP-Dab-NHBn-2-アセテート
u) HGEGTFTSDLSKQMEEEAVRLFIEWLKNGGPSSGAPPPS
v) YVSPGMKNVNWWSHWWHATD
w) X-NH-GPAG-CO-Y(X=H、Boc、Fmoc、Me、Et;Y=OH、OMe、OEt、ONa、OK、ONH ),
x) VYYVGRK
y) c[WCKPKPKPRCH-NH2])
z) QHREDGS
aa) YGRRRRRQRRRP
bb) H-LEPPPLKPADALGV-OH
cc) MLSLIFLHRLKSMRKRLDRKLRLWHRKNYP
dd) MLKLIFLHRLKRMRKRLKRKLRLWHRKRYK
ee) ATAWDFGPHGLLPIRPIRIRPLCG
ff) APFRMGICTTN
gg) KRIVKRIKKWLR
hh) GIFSKLAGKKIKNLLISGLKG
ii) DHYNCVSSGGQCLYSACPIFTKIQGTCYRGKAKCCK
jj) GIGDPVTCLKSGAICHPVFCPRRYKQIGTCGLPGTKCCKKP
kk) DSHEKRHHGYRRKFHEKHHSHREFPFYGDYGSNYLYDN
ll) RKFHEKHHSHREFPFYGDYGSNYLYDN
mm) DSHAKRHHGYKRKFHEKHHSHRGYRSNYLYDN
nn) VRLIVAVRIWRR
oo) LLGDFFRKSKEKIGKEFKRIVQRIKDFLRNLVPRTES
pp) GCKKYRRFRWKFKGKFWFWG
qq) PLLGDFFRKSKEKIGKEFKRIVQRIKDFLRNLVPRTES
rr) APKAMKLLKKLLKLQKKGI
ss) MLKLIFLHRLKRMRKRLKRK
tt) MLKLIFLHRLKRMRKRLKRK
uu) FLPLIGRVLSGIL
vv) LLPIVGNLLKSLL。
[実施態様13]
タンパク質または脂質または糖類または合成高分子のマトリックスあるいはそれらの混合物中に、マトリックス1グラムあたり0.001~50mgの範囲の量で含まれることを特徴とする、実施態様1に記載のペプチド成分の皮膚再生および治癒混合物。
[実施態様14]
タンパク質または脂質または糖類のマトリックスあるいはそれらの混合物中に、マトリックス1グラムあたり0.1~5mgの範囲の量で含まれることを特徴とする、実施態様13に記載のペプチド成分の皮膚再生および治癒混合物。
[実施態様15]
前記タンパク質マトリックスがコラーゲンを含むことを特徴とする、実施態様13に記載のペプチド成分の皮膚再生および治癒混合物。
[実施態様16]
前記糖類マトリックスがキトサンおよび/またはヒアルロン酸を含むことを特徴とする、実施態様13に記載のペプチド成分の皮膚再生および治癒混合物。
[実施態様17]
前記脂質マトリックスがレシチンを含むことを特徴とする、実施態様13に記載のペプチド成分の皮膚再生および治癒混合物。
[実施態様18]
前記合成高分子マトリックスがポリアクリルアミドを含むことを特徴とする、実施態様13に記載のペプチド成分の皮膚再生および治癒混合物。
[実施態様19]
皮膚欠損の処置に使用するため、および/または創傷治癒および/または皮膚再生のための、実施態様1に記載のペプチド成分の皮膚再生および治癒混合物。
図1-1】
図1-2】
図1-3】
図1-4】
図1-5】
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【配列表】
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