(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】成形機
(51)【国際特許分類】
B22D 17/32 20060101AFI20221213BHJP
B29C 45/77 20060101ALI20221213BHJP
B29C 45/76 20060101ALI20221213BHJP
B29C 45/53 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
B22D17/32 C
B29C45/77
B29C45/76
B29C45/53
(21)【出願番号】P 2022016234
(22)【出願日】2022-02-04
【審査請求日】2022-06-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003458
【氏名又は名称】芝浦機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119035
【氏名又は名称】池上 徹真
(74)【代理人】
【識別番号】100141036
【氏名又は名称】須藤 章
(74)【代理人】
【識別番号】100178984
【氏名又は名称】高下 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】三田 哲也
【審査官】池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-318542(JP,A)
【文献】特開2014-131836(JP,A)
【文献】特開平01-099107(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 17/00-17/32
B29C 45/00-48/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型を型締めする型締装置と、
スリーブの中にプランジャを摺動させ、前記金型に液状材料を供給し、前記プランジャの速度又は位置を測定するセンサを含む射出装置と、
前記プランジャの速度又は位置を制御する制御装置であって、
前記プランジャの速度又は位置の目標値を記憶する記憶部と、
前記センサの測定に基づく入力値と、前記目標値とを比較する比較部と、
前記比較部の比較結果に基づき前記プランジャの速度又は位置を補正するための指令値を算出する演算部と、
前記指令値に対するフィルタリング処理を実行するフィルタと、
を含む制御装置と、
を備え
、
前記指令値は、前記射出装置に含まれ前記プランジャの速度を制御する速度制御用バルブによって流される作動油の流量を指定する値であることを特徴とする成形機。
【請求項2】
前記フィルタはローパスフィルタであることを特徴とする請求項1記載の成形機。
【請求項3】
前記フィルタはデジタルフィルタであることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の成形機。
【請求項4】
前記制御装置は、前記指令値に対する前記フィルタリング処理の実行又は不実行を切り替える切り替え部を、更に含むことを特徴とする請求項1ないし請求項3いずれか一項記載の成形機。
【請求項5】
前記制御装置は、前記フィルタの特性を変更する特性変更部を、更に含むことを特徴とする請求項1ないし請求項4いずれか一項記載の成形機。
【請求項6】
前記制御装置は、前記射出装置の動作条件に基づき前記フィルタの特性の変更を決定し、前記特性変更部に前記フィルタの特性の変更を指令する特性決定部を、更に含
み、前記動作条件は射出シリンダの動作速度であり、変更される前記フィルタの特性はカットオフ周波数又はフィルタ次数であることを特徴とする請求項5記載の成形機。
【請求項7】
金型を型締めする型締装置と、
スリーブの中にプランジャを摺動させ、前記金型に液状材料を供給し、前記プランジャの速度又は位置を測定するセンサを含む射出装置と、
前記プランジャの速度又は位置を制御する制御装置であって、
前記プランジャの速度又は位置の目標値を記憶する記憶部と、
前記センサの測定に基づく入力値と、前記目標値とを比較する比較部と、
前記比較部の比較結果に基づき前記プランジャの速度又は位置を補正するための指令値を算出する演算部と、
前記指令値に対するフィルタリング処理を実行するフィルタと、
を含む制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記プランジャを第1の期間、第1の速度で移動させ、前記プランジャを前記第1の期間の後の第2の期間、前記第1の速度よりも速い第2の速度で移動させ、前記第1の期間の間、前記フィルタによる前記指令値に対する前記フィルタリング処理を実行し、前記第2の期間の間、前記フィルタによる前記指令値に対する前記フィルタリング処理を実行しないことを特徴とす
る成形機。
【請求項8】
金型を型締めする型締装置と、
スリーブの中にプランジャを摺動させ、前記金型に液状材料を供給し、前記プランジャの速度又は位置を測定するセンサを含む射出装置と、
前記プランジャの速度又は位置を制御する制御装置であって、
前記プランジャの速度又は位置の目標値を記憶する記憶部と、
前記センサの測定に基づく入力値と、前記目標値とを比較する比較部と、
前記比較部の比較結果に基づき前記プランジャの速度又は位置を補正するための指令値を算出する演算部と、
前記指令値に対するフィルタリング処理を実行するフィルタと、
を含む制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記プランジャを第1の期間の間、前記フィルタによる前記指令値に対する前記フィルタリング処理を第1のフィルタ特性で実行し、前記第1の期間の後の第2の期間の間、前記フィルタによる前記指令値に対する前記フィルタリング処理を前記第1のフィルタ特性と異なる第2のフィルタ特性で行うことを特徴とす
る成形機。
【請求項9】
前記第1のフィルタ特性は第1のカットオフ周波数であり、前記第2のフィルタ特性は第2のカットオフ周波数であり、前記第2のカットオフ周波数は、前記第1のカットオフ周波数よりも高いことを特徴とする請求項8記載の成形機。
【請求項10】
金型を型締めする型締装置と、
スリーブの中にプランジャを摺動させ、前記金型に液状材料を供給し、前記プランジャの速度又は位置を測定するセンサを含む射出装置と、
前記プランジャの速度又は位置を制御する制御装置であって、
前記プランジャの速度又は位置の目標値を記憶する記憶部と、
前記センサの測定に基づく入力値と、前記目標値とを比較する比較部と、
前記比較部の比較結果に基づき前記プランジャの速度又は位置を補正するための指令値を算出する演算部と、
前記指令値に対するフィルタリング処理を実行するフィルタと、
を含む制御装置と、
を備え、
前記目標値は、前記フィルタリング処理に伴う前記プランジャの速度又は位置の制御の遅延を補償するオフセットを含むことを特徴とす
る成形機。
【請求項11】
前記射出装置は、前記プランジャの速度を制御する速度制御用バルブを含み、前記指令値に基づき、前記速度制御用バルブが制御されることを特徴とする請求項
8ないし請求項10いずれか一項記載の成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型内の空洞に液状材料を充填し成形品を製造する成形機に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイカストマシンは、型締装置を用いて型締めされた金型内の空洞に、射出装置を用いて溶湯を充填することで、成形品(ダイカスト品)を製造する。射出装置は、例えば、アクチュエータとして、射出シリンダを含む。射出シリンダは、例えば、スリーブの中を摺動するプランジャに連結可能なロッドと、ロッドに固定される射出ピストンと、内部にピストンを摺動可能に収容するシリンダチューブと、を含む。シリンダチューブは、ロッドが配置されるロッド側室と、射出ピストンを間に挟んでロッド側室の反対側に位置するヘッド側室と、を内部に有する。
【0003】
ヘッド側室に作動油が供給されることによって、射出ピストンがロッド側へ移動する。射出ピストンの移動に伴い、プランジャがスリーブの中を金型の方向に前進し、溶湯が金型内の空洞に充填される。
【0004】
プランジャの位置又は速度は、プランジャの位置又は速度を測定するセンサの測定に基づき制御装置を用いて制御される。例えば、センサの測定に基づく制御装置への入力値と、制御装置にあらかじめ記憶された目標値とを比較して、プランジャの位置又は速度が目標値に近づくように補正される。
【0005】
成形品に不良が発生することを抑制する観点から、プランジャの位置又は速度の制御の精度の向上が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、プランジャの位置又は速度の制御の精度を向上できる成形機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様の成形機は、金型を型締めする型締装置と、スリーブの中にプランジャを摺動させ、前記金型に液状材料を供給し、前記プランジャの速度又は位置を測定するセンサを含む射出装置と、前記プランジャの速度又は位置を制御する制御装置であって、前記プランジャの速度又は位置の目標値を記憶する記憶部と、前記センサの測定に基づく入力値と、前記目標値とを比較する比較部と、前記比較部の比較結果に基づき前記プランジャの速度又は位置を補正するための指令値を算出する演算部と、前記指令値に対するフィルタリング処理を実行するフィルタと、を含む制御装置と、を備え、前記指令値は前記射出装置に含まれ前記プランジャの速度を制御する速度制御用バルブによって流される作動油の流量を指定する値である。
【0009】
上記態様の成形機において、前記フィルタはローパスフィルタであることが好ましい。
【0010】
上記態様の成形機において、前記フィルタはデジタルフィルタであることが好ましい。
【0011】
上記態様の成形機において、前記制御装置は、前記指令値に対する前記フィルタリング処理の実行又は不実行を切り替える切り替え部を、更に含むことが好ましい。
【0012】
上記態様の成形機において、前記制御装置は、前記フィルタの特性を変更する特性変更部を、更に含むことが好ましい。
【0013】
上記態様の成形機において、前記制御装置は、前記射出装置の動作条件に基づき前記フィルタの特性の変更を決定し、前記特性変更部に前記フィルタの特性の変更を指令する特性決定部を、更に含み、前記動作条件は射出シリンダの動作速度であり、変更される前記フィルタの特性は、カットオフ周波数又はフィルタ次数であることが好ましい。
【0014】
本発明の別の一態様の成形機は、金型を型締めする型締装置と、スリーブの中にプランジャを摺動させ、前記金型に液状材料を供給し、前記プランジャの速度又は位置を測定するセンサを含む射出装置と、前記プランジャの速度又は位置を制御する制御装置であって、前記プランジャの速度又は位置の目標値を記憶する記憶部と、前記センサの測定に基づく入力値と、前記目標値とを比較する比較部と、前記比較部の比較結果に基づき前記プランジャの速度又は位置を補正するための指令値を算出する演算部と、前記指令値に対するフィルタリング処理を実行するフィルタと、を含む制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記プランジャを第1の期間、第1の速度で移動させ、前記プランジャを前記第1の期間の後の第2の期間、前記第1の速度よりも速い第2の速度で移動させ、前記第1の期間の間、前記フィルタによる前記指令値に対する前記フィルタリング処理を実行し、前記第2の期間の間、前記フィルタによる前記指令値に対する前記フィルタリング処理を実行しない。
【0015】
本発明の別の一態様の成形機は、金型を型締めする型締装置と、スリーブの中にプランジャを摺動させ、前記金型に液状材料を供給し、前記プランジャの速度又は位置を測定するセンサを含む射出装置と、前記プランジャの速度又は位置を制御する制御装置であって、前記プランジャの速度又は位置の目標値を記憶する記憶部と、前記センサの測定に基づく入力値と、前記目標値とを比較する比較部と、前記比較部の比較結果に基づき前記プランジャの速度又は位置を補正するための指令値を算出する演算部と、前記指令値に対するフィルタリング処理を実行するフィルタと、を含む制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記プランジャを第1の期間の間、前記フィルタによる前記指令値に対する前記フィルタリング処理を第1のフィルタ特性で実行し、前記第1の期間の後の第2の期間の間、前記フィルタによる前記指令値に対する前記フィルタリング処理を前記第1のフィルタ特性と異なる第2のフィルタ特性で行う。
【0016】
本発明の別の一態様の成形機は、金型を型締めする型締装置と、スリーブの中にプランジャを摺動させ、前記金型に液状材料を供給し、前記プランジャの速度又は位置を測定するセンサを含む射出装置と、前記プランジャの速度又は位置を制御する制御装置であって、前記プランジャの速度又は位置の目標値を記憶する記憶部と、前記センサの測定に基づく入力値と、前記目標値とを比較する比較部と、前記比較部の比較結果に基づき前記プランジャの速度又は位置を補正するための指令値を算出する演算部と、前記指令値に対するフィルタリング処理を実行するフィルタと、を含む制御装置と、を備え、前記目標値は、前記フィルタリング処理に伴う前記プランジャの速度又は位置の制御の遅延を補償するオフセットを含む。
【0017】
上記態様の成形機において、前記目標値は、前記フィルタリング処理に伴う前記プランジャの速度又は位置の制御の遅延を補償するオフセットを含むことが好ましい。
【0018】
上記態様の成形機において、前記射出装置は、前記プランジャの速度を制御する速度制御用バルブを含み、前記指令値に基づき、前記速度制御用バルブが制御されることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、プランジャの位置又は速度の制御の精度を向上できる成形機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】第1の実施形態の成形機の全体構成を示す模式図。
【
図2】第1の実施形態の射出装置の構成を示す模式図。
【
図11】第3の実施形態の成形機の変形例のブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0022】
なお、本明細書では、液圧の一例として、油圧を用いて説明する。例えば、液圧ポンプの一例として油圧ポンプを用いて説明する。油圧にかえて、例えば、水圧を用いることも可能である。また、本明細書では、作動液の一例として、作動油を用いて説明する。
【0023】
(第1の実施形態)
第1の実施形態の成形機は、金型を型締めする型締装置と、スリーブの中にプランジャを摺動させ、金型に液状材料を供給する射出装置と、プランジャの速度又は位置を測定するセンサと、プランジャの速度又は位置を制御する制御装置であって、プランジャの速度又は位置の目標値を記憶する記憶部と、センサの測定に基づく入力値と、目標値とを比較する比較部と、比較部の比較結果に基づきプランジャの速度又は位置の補正値を算出する演算部と、補正値に対するフィルタリング処理を実行するフィルタと、を含む制御装置と、を備える。
【0024】
図1は、第1の実施形態の成形機の全体構成を示す模式図である。
図1は、一部に断面図を含む側面図である。第1の実施形態の成形機は、ダイカストマシン100である。ダイカストマシン100は、例えば、コールドチャンバ式のダイカストマシンである。
【0025】
ダイカストマシン100は、型締装置10、押出装置12、射出装置14、金型18、及び制御ユニット20を備える。
【0026】
ダイカストマシン100は、ベース22、固定ダイプレート24、可動ダイプレート26、リンクハウジング28、タイバー30、スリーブ31、及びプランジャ33を備える。プランジャ33は、プランジャチップ33aとプランジャロッド33bを有する。
【0027】
ダイカストマシン100は、金型18の内部(
図1中の空洞Ca)に液状金属(溶湯)を射出して充填し、その液状金属を金型18内で凝固させることにより、ダイカスト品(成形品)を製造する機械である。金属は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、亜鉛合金、又は、マグネシウム合金である。液状金属(溶湯)は、液状材料の一例である。
【0028】
金型18は、固定金型18aと可動金型18bを含む。金型18は、型締装置10と射出装置14との間に設けられる。
【0029】
固定ダイプレート24はベース22の上に固定される。固定ダイプレート24は、固定金型18aを保持することが可能である。
【0030】
可動ダイプレート26は、ベース22の上に型開閉方向に移動可能に設けられる。型開閉方向とは、
図1に示す型開方向及び型閉方向の両方向を意味する。可動ダイプレート26は、可動金型18bを固定金型18aに対向して保持することが可能である。
【0031】
リンクハウジング28は、ベース22の上に設けられる。リンクハウジング28には、型締装置10を構成するリンク機構の一端が固定される。
【0032】
固定ダイプレート24とリンクハウジング28は、タイバー30により固定される。タイバー30は、固定金型18aと可動金型18bに型締力が加えられている間は、型締力を支える。
【0033】
型締装置10は、金型18の開閉及び型締めを行う機能を有する。
【0034】
射出装置14は、金型18の空洞Caに溶湯を供給し、溶湯を加圧する機能を有する。射出装置14は、スリーブ31の中を摺動するプランジャ33に連結可能なロッド80を備える。射出装置14は、スリーブ31の中にプランジャ33を摺動させ、金型18に溶湯を供給する。
【0035】
図2は、第1の実施形態の射出装置の構成を示す模式図である。
【0036】
射出装置14は、射出シリンダ44、油圧ポンプ46、油タンク48、アキュムレータ50、変位センサ52(センサ)、圧力センサ53、射出用バルブ54、速度制御用バルブ56、方向切替バルブ58、第1の開閉バルブ60、第2の開閉バルブ62、充填補充用バルブ64、第1の流路70a、第2の流路70b、第3の流路70c、第4の流路70d、第5の流路70e、及び第6の流路70fを備える。
【0037】
射出シリンダ44は、ロッド80、射出ピストン82、シリンダチューブ84、ロッド側室86、ヘッド側室88を含む。
【0038】
ロッド80は、スリーブ31の中を摺動するプランジャ33に連結可能である。ロッド80の移動により、スリーブ31の中をプランジャ33が移動する。
【0039】
射出ピストン82は、ロッド80に固定される。射出ピストン82は、シリンダチューブ84に摺動可能に収容される。射出ピストン82は、例えば円柱状である。
【0040】
シリンダチューブ84は、射出ピストン82を摺動可能に収容する。シリンダチューブ84は、例えば、円筒状である。
【0041】
シリンダチューブ84の内部のロッド80側に、ロッド側室86が設けられる。ロッド側室86には、ロッド80が配置される。
【0042】
シリンダチューブ84の内部のロッド80側と反対側にヘッド側室88が設けられる。射出ピストン82を間に挟んで、ヘッド側室88はロッド側室86の反対側に位置する。
【0043】
油圧ポンプ46は、例えば、図示しないポンプ用電動機によって駆動される。油圧ポンプ46は、油タンク48から作動油を吸い上げ、吐出する機能を有する。油圧ポンプ46は、例えば、アキュムレータ50への作動油の供給、及び、射出シリンダ44への作動油の供給に寄与する。
【0044】
油圧ポンプ46によって吐出される作動油の吐出量又は吐出圧力は可変である。油圧ポンプ46は、例えば、可変容量形ポンプである。可変容量形ポンプは、作動油の吐出量及び吐出圧力を変化させることが可能である。
【0045】
油タンク48は、例えば、アキュムレータ50や射出シリンダ44へ供給する作動油を貯留する。また、油タンク48は、例えば、アキュムレータ50や射出シリンダ44で使用された作動油を回収する。
【0046】
アキュムレータ50は、ヘッド側室88に供給される作動油の流量を大きくする機能を有する。アキュムレータ50は、高圧の封入ガスを用いてエネルギーを蓄積し、瞬間的にそのエネルギーを放出することで、作動油の流量を大きくする。アキュムレータ50を設けることで、射出シリンダ44を高速に動作させることが可能となる。
【0047】
第1の流路70aは、油圧ポンプ46とアキュムレータ50を接続する。第1の流路70aを用いて、油圧ポンプ46からアキュムレータ50に作動油を供給して、アキュムレータ50に作動油を充填し蓄圧することが可能である。
【0048】
また、第1の流路70aは、第2の流路70bを経由して、ヘッド側室88に接続される。射出シリンダ44の射出動作の際に、第1の流路70aを用いて第2の流路70bに作動油を補充することが可能となる。
【0049】
第6の流路70fは、第4の流路70dを経由して、油圧ポンプ46とヘッド側室88を接続する。第6の流路70fは、いわゆるポンプラインである。第6の流路70fと第4の流路70dを用いて、油圧ポンプ46からヘッド側室88に作動油を供給することが可能となる。第4の流路70dは、第1の流路70aと異なる。
【0050】
また、第6の流路70fは、第5の流路70eを経由して、油圧ポンプ46とロッド側室86を接続する。第6の流路70fと第5の流路70eを用いて、油圧ポンプ46からロッド側室86に作動油を供給することが可能である。
【0051】
第3の流路70cは、ロッド側室86と油タンク48を接続する。第3の流路70cを用いて、ロッド側室86から排出される作動油を油タンク48に回収することが可能である。
【0052】
第1の流路70aないし第6の流路70fは、例えば、鋼管又はホースにより構成される。
【0053】
射出用バルブ54は、第2の流路70bに設けられる。射出用バルブ54は、ヘッド側室88とアキュムレータ50との間に設けられる。射出用バルブ54は、アキュムレータ50からヘッド側室88への作動油の供給を許容又は遮断する。
【0054】
射出用バルブ54は、例えば、パイロット式の逆止弁によって構成されており、パイロット圧が導入されていない時は、アキュムレータ50からヘッド側室88への作動油の流れを許容すると共に、その反対方向の流れを遮断する。射出用バルブ54にパイロット圧が導入されている時は、双方の流れを遮断する。射出用バルブ54は、ヘッド側室88からアキュムレータ50への作動油の逆流を防止する機能を有する。
【0055】
射出用バルブ54が開状態の時に、アキュムレータ50からヘッド側室88への作動油の流れが許容される。射出用バルブ54が閉状態の時に、アキュムレータ50からヘッド側室88への作動油の流れが遮断される。
【0056】
速度制御用バルブ56は、第3の流路70cに設けられる。速度制御用バルブ56は、ロッド側室86と油タンク48との間に設けられる。速度制御用バルブ56は、ロッド側室86から油タンク48に排出される作動油の流量を制御する。
【0057】
速度制御用バルブ56による作動油の流量の制御により、射出ピストン82の前進速度が制御される。速度制御用バルブ56による作動油の流量の制御により、プランジャ33の前進速度が制御される。速度制御用バルブ56により、いわゆる、メータアウト制御が行われる。速度制御用バルブ56が閉状態の場合、ロッド側室86と油タンク48との間の作動油の流れが遮断される。
【0058】
速度制御用バルブ56の種類は、作動油の流量が制御可能であれば、特に限定されるものではない。速度制御用バルブ56は、例えば、フィードバック制御がなされるサーボバルブである。速度制御用バルブ56は、例えば、図示しないサーボアンプによって制御される。
【0059】
方向切替バルブ58は、第6の流路70fと第4の流路70dとの間、及び、第6の流路70fと第5の流路70eとの間に設けられる。方向切替バルブ58は、ヘッド側室88と油圧ポンプ46との間、及び、ロッド側室86と油圧ポンプ46との間に設けられる。
【0060】
方向切替バルブ58は、油圧ポンプ46から第6の流路70fを通って供給される作動油の流路を、第4の流路70dと第5の流路70eとの間で切り替える機能を有する。方向切替バルブ58は、油圧ポンプ46から供給される作動油の供給先を、ヘッド側室88とロッド側室86との間で切り替える機能を有する。
【0061】
例えば、作動油をヘッド側室88に供給することで、射出ピストン82が前進する。また、例えば、作動油をロッド側室86に供給することで、射出ピストン82が後退する。
【0062】
方向切替バルブ58の種類は、油圧ポンプ46から供給される作動油の流れる方向を切り替えることが可能であれば、特に限定されるものではない。方向切替バルブ58は、例えば、電磁石を用いてスプールを動かす電磁切替弁である。
【0063】
第1の開閉バルブ60は、第4の流路70dに設けられる。第1の開閉バルブ60は、ヘッド側室88と方向切替バルブ58との間に設けられる。第1の開閉バルブ60は、方向切替バルブ58とヘッド側室88との間の作動油の流れを許容又は遮断する。
【0064】
第1の開閉バルブ60が開状態の時に、方向切替バルブ58とヘッド側室88との間の作動油の流れが許容される。第1の開閉バルブ60が閉状態の時に、方向切替バルブ58とヘッド側室88との間の作動油の流れが遮断される。
【0065】
第1の開閉バルブ60の種類は、作動油の流れを許容及び遮断することが可能であれば、特に限定されるものではない。
【0066】
第2の開閉バルブ62は、第5の流路70eに設けられる。第2の開閉バルブ62は、ロッド側室86と方向切替バルブ58との間に設けられる。第2の開閉バルブ62は、方向切替バルブ58とロッド側室86との間の作動油の流れを許容又は遮断する。
【0067】
第2の開閉バルブ62が開状態の時に、方向切替バルブ58とロッド側室86との間の作動油の流れが許容される。第2の開閉バルブ62が閉状態の時に、方向切替バルブ58とロッド側室86との間の作動油の流れが遮断される。
【0068】
第2の開閉バルブ62の種類は、作動油の流れを許容及び遮断することが可能であれば、特に限定されるものではない。
【0069】
充填補充用バルブ64は、第1の流路70aに設けられる。充填補充用バルブ64は、アキュムレータ50と油圧ポンプ46との間に設けられる。充填補充用バルブ64は、ヘッド側室88と油圧ポンプ46との間に設けられる。
【0070】
充填補充用バルブ64は、例えば、アキュムレータ50と油圧ポンプ46との間の作動油の流れを許容又は遮断する。充填補充用バルブ64は、例えば、ヘッド側室88と油圧ポンプ46との間の作動油の流れを許容又は遮断する。
【0071】
充填補充用バルブ64の種類は、作動油の流れを許容及び遮断することが可能であれば、特に限定されるものではない。
【0072】
変位センサ52は、ロッド80の変位を測定する機能を有する。変位センサ52は、ロッド80に固定されるプランジャ33の変位を間接的に測定する機能を有する。変位センサ52は、センサの一例である。
【0073】
変位センサ52は、例えば、光学式又は磁気式のリニアエンコーダである。変位センサ52で測定されるロッド80の変位から、ロッド80の速度を算出することが可能である。変位センサ52で測定されるロッド80の変位から、ロッド80に固定されるプランジャ33の速度を算出することが可能である。
【0074】
また、変位センサ52で測定されるロッド80の変位から、スリーブ31の中のプランジャ33の位置を算出することが可能である。変位センサ52で測定されるロッド80の変位から、スリーブ31の中のプランジャチップ33aの位置を算出することが可能である。
【0075】
圧力センサ53は、ヘッド側室88の中の作動油の圧力を測定する機能を有する。
【0076】
押出装置12は、製造されたダイカスト品を金型18から押し出す機能を有する。
【0077】
スリーブ31は、金型18の空洞Caに通じる。スリーブ31は、例えば、固定金型18aに連結された筒状の部材である。スリーブ31は、例えば、円筒形状である。
【0078】
プランジャ33は、スリーブ31の中を摺動する。プランジャ33は、プランジャチップ33aとプランジャロッド33bを含む。プランジャロッド33bの先端に固定されたプランジャチップ33aが、スリーブ31の中を前後方向に摺動する。スリーブ31の中をプランジャチップ33aが前方へ摺動することにより、スリーブ31の中の溶湯が金型18の中に押し出される。
【0079】
制御ユニット20は、制御装置32、ヒューマンマシンインターフェース34(HMI34)を含む。制御ユニット20は、型締装置10、押出装置12、及び、射出装置14を用いたダイカストマシン100の成形動作を制御する機能を有する。
【0080】
HMI34は、例えば、制御装置32の表示装置として機能する。HMI34は、例えば、ダイカストマシン100の成形条件、動作状況等を画面に表示する。
【0081】
HMI34は、例えば、制御装置32の入力装置として機能する。HMI34は、例えば、オペレータの入力操作を受け付ける。オペレータは、HMI34を用いて、ダイカストマシン100の成形条件等の設定が可能となる。HMI34は、例えば、液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイを用いたタッチパネルである。
【0082】
制御装置32は、各種の演算を行って、ダイカストマシン100の各部に制御指令を出力する機能を有する。制御装置32は、例えば、成形条件等を記憶する機能を有する。制御装置32は、例えば、射出装置14の動作を制御する。
【0083】
制御装置32は、例えば、制御回路である。制御装置32は、例えば、ハードウェアとソフトウェアとの組み合わせで構成される。制御装置32は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、半導体メモリ、及び半導体メモリに記憶された制御プログラムを含む。
【0084】
図3は、第1の実施形態の成形機のブロック図である。
図3は、HMI34、制御装置32、射出シリンダ44、及び変位センサ52を含むブロック図である。
【0085】
制御装置32は、記憶部32a、比較部32b、演算部32c、フィルタ32d、及び指令部32eを含む。
【0086】
速度制御用バルブ56がサーボバルブの一例である。射出装置14は、サーボバルブを制御するサーボアンプを含む。
【0087】
記憶部32aは、プランジャ33の速度又は位置の目標値を記憶する。記憶部32aは、例えば、所定の時間におけるプランジャ33の速度の目標値を記憶する。記憶部32aは、例えば、スリーブ31の所定の位置におけるプランジャ33の速度の目標値を記憶する。
【0088】
記憶部32aは、例えば、記憶デバイスである。記憶部32aは、例えば、ハードディスク又は半導体メモリである。
【0089】
記憶部32aに記憶されるプランジャ33の速度又は位置の目標値は、例えば、ダイカストマシン100を用いたダイカスト品の製造前に、HMI34から制御装置32に入力される。
【0090】
比較部32bは、変位センサ52の測定に基づく入力値と、記憶部32aに記憶された目標値とを比較する。変位センサ52の測定に基づき、所定の時間のプランジャ33の速度を算出することができる。また、変位センサ52の測定に基づき、スリーブ31の所定の位置におけるプランジャ33の速度を算出することができる。
【0091】
例えば、所定の時間のプランジャ33の速度が制御装置32に入力される入力値である場合を考える。
【0092】
比較部32bは、所定の時間のプランジャ33の速度の入力値と、記憶部32aに記憶された目標値とを比較する。比較部32bは、例えば、入力値と目標値との差分を算出する。
【0093】
比較部32bは、例えば、比較回路である。比較部32bは、例えば、ハードウェアとソフトウェアとの組み合わせで構成される。比較部32bは、例えば、CPU、半導体メモリ、及び半導体メモリに記憶された制御プログラムを含む。
【0094】
演算部32cは、比較部32bの比較結果に基づきプランジャ33の速度又は位置を補正するための指令値を算出する。指令値により、例えば、速度制御用バルブ56が制御される。指令値は、例えば、速度制御用バルブ56よって流される作動油の流量を指定する。指令値により、例えば、速度制御用バルブ56の開度が変更されることで、作動油の流量が変更され、プランジャ33の速度が補正される。
【0095】
速度制御用バルブ56は、例えば、サーボバルブである。指令値は、例えば、速度制御用バルブ56を制御するサーボアンプに入力される。サーボアンプは、例えば、入力された指令値に基づき、速度制御用バルブ56の開度を変更する。
【0096】
演算部32cは、例えば、演算回路である。演算部32cは、例えば、ハードウェアとソフトウェアとの組み合わせで構成される。演算部32cは、例えば、CPU、半導体メモリ、及び半導体メモリに記憶された制御プログラムを含む。
【0097】
フィルタ32dは、指令値に対するフィルタリング処理を実行する。フィルタ32dは、例えば、デジタルフィルタである。
【0098】
フィルタ32dは、例えば、ローパスフィルタである。指令値に対して、フィルタリング処理を実行することにより、例えば、指令値の高周波成分が除去される。
【0099】
指令部32eは、例えば、射出装置14にフィルタリング処理が実行された後の指令値を出力する機能を有する。例えば、指令部32eにより、射出装置14の速度制御用バルブ56を制御するサーボアンプに指令値が出力される。
【0100】
指令部32eは、例えば、指令回路である。
【0101】
次に、第1の実施形態の成形機の作用及び効果について説明する。
【0102】
ダイカストマシンでダイカスト品を製造する際、プランジャ速度は、例えば、射出シリンダを動作させるアキュムレータの圧力の低下や、スリーブの抵抗により低下する。プランジャの速度の低下を補正するため、プランジャの位置又は速度は、プランジャの位置又は速度を測定するセンサの測定に基づき制御装置を用いて制御される。例えば、センサの測定に基づく制御装置への入力値と、制御装置にあらかじめ記憶された目標値とを比較して、プランジャの速度が目標値に近づくように補正する。
【0103】
プランジャの速度が目標値から乖離すると、ダイカスト品に不良が発生するおそれがある。ダイカスト品に不良が発生することを抑制する観点から、プランジャの速度の制御の精度の向上が望まれる。
【0104】
図4は、比較例の成形機の動作の説明図である。比較例の成形機はダイカストマシンである。比較例のダイカストマシンは、制御装置がフィルタを含まない点で、第1の実施形態のダイカストマシン100と異なる。
【0105】
図4は、比較例のダイカストマシンのプランジャの速度制御の説明図である。
図4(a)は、アキュムレータ圧力の時間変化を示す図である。
図4(b)は、プランジャ速度の時間変化を示す図である。
図4(c)は、制御装置の指令部から射出装置の速度制御用バルブのサーボアンプに送られる指令値の時間変化を示す図である。
図4(d)は、補正後のプランジャ速度の時間変化を示す図である。
【0106】
図4では、プランジャ速度を一定に保つ場合を例に説明している。言い換えれば、
図4では、プランジャ速度の目標値が一定の値である場合を例に説明している。
【0107】
図4(a)に示すように、射出シリンダを動作させるアキュムレータの圧力は時間と共に低下する。アキュムレータの圧力が低下すると、射出シリンダの速度が低下し、
図4(b)に示すようにプランジャ速度が低下する。
【0108】
比較例のダイカストマシンでは、例えば、プランジャの変位をモニタする変位センサの測定に基づき、プランジャ速度を補正する。具体的には、変位センサの測定から得られたプランジャ速度と、記憶部に記憶されたプランジャ速度の目標値を比較部で比較する。そして、演算部において、比較結果から、プランジャ速度を補正する指令値を算出する。
【0109】
そして、
図4(c)に示すように、制御装置の指令部から、射出装置の速度制御用バルブを制御するサーボアンプに送られる指令値を増加させる。指令値を増加させることにより、例えば、速度制御用バルブの開度が上がり、プランジャの速度が増加する。
【0110】
結果として、
図4(d)に示すように、プランジャ速度が一定の速度となる。言い換えれば、プランジャ速度が目標値となるようにプランジャ位置が制御される。
【0111】
プランジャチップがスリーブを摺動する際、いわゆるカジリ現象(Galling pneomenon)が生ずる場合がある。カジリ現象が生じると、例えば、プランジャ速度に振動が生じる。
【0112】
カジリ現象が生ずる原因は、例えば、スリーブのいわゆるバナナ現象(Banana phenomenon)にある。バナナ現象は、スリーブ上下の温度差によりスリーブが上方向に湾曲する現象である。バナナ現象が生じると、プランジャチップとスリーブとの隙間に溶湯が差し込まれ、差し込まれた溶湯が凝固してカジリ現象が生じる。
【0113】
図5は、比較例の成形機の動作の説明図である。
図5は、比較例のダイカストマシンのプランジャの速度制御の説明図である。
図5(a)は、アキュムレータ圧力の時間変化を示す図である。
図5(b)は、プランジャ速度の時間変化を示す図である。
図5(c)は、制御装置の指令部から射出装置の速度制御用バルブのサーボアンプに送られる指令値の時間変化を示す図である。
図5(d)は、補正後のプランジャ速度の時間変化を示す図である。
【0114】
図5では、プランジャ速度を一定に保つ場合を例に説明している。言い換えれば、
図5では、プランジャ速度の目標値が一定の値である場合を例に説明している。
【0115】
図5(a)に示すように、射出シリンダを動作させるアキュムレータの圧力は時間と共に低下する。アキュムレータの圧力が低下すると、射出シリンダの速度が低下し、
図5(b)に示すようにプランジャ速度が低下する。
【0116】
図5(b)では、アキュムレータの圧力の低下に加え、カジリ現象が生じている場合のプランジャ速度を示す。
図5(b)に示すように、カジリ現象が生じることにより、プランジャ速度に振動が生ずる。
【0117】
比較例のダイカストマシンでは、
図5(c)に示すように、制御装置の指令部から、射出装置の速度制御用バルブを制御するサーボアンプに送られる指令値を変化させる。指令値は、アキュムレータの圧力の低下及びカジリ現象に起因するプランジャ速度を補正するために変化する。指令値が変化することにより、例えば、速度制御用バルブの開度が変化し、プランジャの速度が変化する。
【0118】
結果として、
図5(d)に示すように、プランジャ速度が補正される。アキュムレータの圧力の低下に伴うプランジャ速度の低下は補正される。一方、カジリ現象によるプランジャ速度の振動は増幅され、プランジャ速度の振幅が大きくなる。プランジャ速度の振幅が大きくなると、金型18内への溶湯の供給が不安定となり、ダイカスト品に不良が発生するおそれがある。
【0119】
図6は、第1の実施形態の成形機の動作の説明図である。
図6は、第1の実施形態のダイカストマシン100のプランジャ33の速度制御の説明図である。
図6(a)は、アキュムレータ圧力の時間変化を示す図である。
図6(b)は、プランジャ速度の時間変化を示す図である。
図6(c)は、制御装置の指令部から射出装置の速度制御用バルブのサーボアンプに送られる指令値の時間変化を示す図である。
図6(d)は、補正後のプランジャ速度の時間変化を示す図である。
【0120】
図6では、プランジャ速度を一定に保つ場合を例に説明している。言い換えれば、
図6では、プランジャ速度の目標値が一定の値である場合を例に説明している。
【0121】
図6(a)に示すように、射出シリンダ44を動作させるアキュムレータ50の圧力は時間と共に低下する。アキュムレータ50の圧力が低下すると、射出シリンダ44の速度が低下し、
図6(b)に示すようにプランジャ速度が低下する。
【0122】
図6(b)では、アキュムレータ50の圧力の低下に加え、カジリ現象が生じている場合のプランジャ速度を示す。
図6(b)に示すように、カジリ現象が生じることにより、プランジャ速度に振動が生ずる。
【0123】
第1の実施形態のダイカストマシン100では、例えば、プランジャ33の変位をモニタする変位センサ52の測定に基づき、プランジャ速度を補正する。具体的には、変位センサ52の測定から得られたプランジャ速度と、記憶部32aに記憶されたプランジャ速度の目標値を比較部32bで比較する。そして、演算部32cにおいて、比較部32bの比較結果から、プランジャ速度を補正する指令値を算出する。
【0124】
そして、算出された指令値に対し、フィルタ32dがフィルタリング処理を実行する。フィルタ32dは、例えば、ローパスフィルタである。
【0125】
そして、
図6(c)に示すように、制御装置32の指令部から、射出装置14の速度制御用バルブ56を制御するサーボアンプにフィルタリング処理を行った指令値を送る。
図6(c)には、フィルタリング処理を行った場合の指令値を実線で示す。また、
図6(c)には比較のために、フィルタリング処理を行わない場合の指示値を点線で示す。
【0126】
図6(c)に示すように、指令値にフィルタリング処理を行うことで、カジリ現象に伴うプランジャ速度の振幅を抑制するための指令値の変化が抑制される。
【0127】
結果として、
図6(d)に示すように、プランジャ速度が補正される。アキュムレータの圧力の低下に伴うプランジャ速度の低下は補正される。また、カジリ現象によるプランジャ速度の振動の増幅は抑制され、プランジャ速度の振幅は、フィルタリング処理を行わない場合と比べて、小さくなる。
【0128】
また、カジリ現象によるプランジャ速度の振動は抑制され、プランジャ速度の振幅は、プランジャ速度の補正を行わない場合と比べても、小さくなる。
【0129】
第1の実施形態のダイカストマシン100によれば、指令値にフィルタリング処理を行うことで、カジリ現象によるプランジャ速度の振動が抑制される。言い換えれば、第1の実施形態のダイカストマシン100によれば、プランジャの位置又は速度の制御の精度を向上できる。したがって、ダイカスト品の不良の発生が抑制される。
【0130】
第1の実施形態のダイカストマシン100は、比較部32bの入力側ではなく出力側にフィルタ32dを設ける。例えば、フィルタを比較部32bの入力側に設けると、現実に生じているカジリ現象によるプランジャ33の変位がノイズとして除去されることになる。現実に生じているプランジャ33の変位が除去されることで、プランジャの位置又は速度の制御の精度が低下するおそれがある。フィルタを比較部32bの出力側に設けることで、現実に生じているプランジャ33の変位と目標値との比較が比較部32bで可能となる。よって、プランジャの位置又は速度の制御の精度を向上できる。
【0131】
また、フィルタを比較部32bの出力側に設けることで、例えば、既存の比較部32bや演算部32cの構成を維持できる。したがって、例えば、既存のダイカストマシンへの制御装置32の適用が容易となる。
【0132】
フィルタ32dは、カジリ現象によるプランジャ速度の振動を抑制する観点から、ローパスフィルタであることが好ましい。
【0133】
フィルタ32dは、デジタルフィルタであることが好ましい。フィルタ32dがデジタルフィルタであることで、例えば、フィルタ32dのサイズの小型化が可能である。また、フィルタ32dがデジタルフィルタであることで、例えば、所望のフィルタ特性を実現することが容易である。
【0134】
以上、第1の実施形態によれば、制御装置32が指令値に対しフィルタリング処理を行うフィルタ32dを含むことで、プランジャの位置又は速度の制御の精度を向上できる成形機が実現できる。
【0135】
(第2の実施形態)
第2の実施形態の成形機は、制御装置は、指令値に対するフィルタリング処理の実行又は不実行を切り替える切り替え部を、更に含む点で、第1の実施形態の成形機と異なる。以下、第1の実施形態と重複する内容については、一部省略する場合がある。
【0136】
図7は、第2の実施形態の成形機のブロック図である。
図7は、HMI34、制御装置32、射出シリンダ44、及び変位センサ52を含むブロック図である。
【0137】
制御装置32は、記憶部32a、比較部32b、演算部32c、フィルタ32d、指令部32e、及び切り替え部32fを含む。
【0138】
切り替え部32fは、指令値に対するフィルタリング処理の実行又は不実行を切り替える機能を有する。第2の実施形態のダイカストマシンは、切り替え部32fにより、プランジャ33が移動している所定の期間、演算部32cが算出した指令値に対し、フィルタリング処理を実行することが可能である。また、第2の実施形態のダイカストマシンは、切り替え部32fにより、プランジャ33が移動している別の所定の期間、演算部32cが算出した指令値に対し、フィルタリング処理を実行しないようにすることが可能である。
【0139】
切り替え部32fは、例えば、切り替え回路である。切り替え部32fは、例えば、ハードウェアとソフトウェアとの組み合わせで構成される。切り替え部32fは、例えば、CPU、半導体メモリ、及び半導体メモリに記憶された制御プログラムを含む。
【0140】
図8は、第2の実施形態の成形機の動作の説明図である。
図8は、プランジャ速度の時間変化を示す図である。
【0141】
図8に示すように、第2の実施形態の制御装置32は、例えば、プランジャ33を第1の期間t1、第1の速度v1で移動させる。そして、プランジャ33を第1の期間t1の後の第2の期間t2、第1の速度v1よりも速い第2の速度v2で移動させる。
【0142】
制御装置32は、第1の期間t1の間、フィルタ32dによる指令値に対するフィルタリング処理を実行し、第2の期間t2の間、フィルタ32dによる指令値に対するフィルタリング処理を実行しない。
【0143】
フィルタリング処理を実行する第1の期間t1と、フィルタリング処理を実行しない第2の期間t2は、例えば、あらかじめ記憶部32aに記憶される。
【0144】
例えば、プランジャ33がスリーブ31内を移動する全期間において、フィルタリング処理を実行すると、カジリ現象が生じない場合は、プランジャ33の速度の指令値が鈍化し、プランジャの位置又は速度の制御の精度が低下するおそれがある。
【0145】
第2の実施形態の成形機は、例えば、カジリ現象が生じやすい第1の期間t1の間だけフィルタリング処理を実行し、カジリ現象が生じにくい第2の期間t2の間はフィルタリング処理を実行しない。したがって、カジリ現象が生じにくい期間におけるプランジャの位置又は速度の制御の精度の低下が抑制される。
【0146】
以上、第2の実施形態によれば、制御装置32が指令値に対しフィルタリング処理を行うフィルタ32dを含むことで、プランジャの位置又は速度の制御の精度を向上できる成形機が実現できる。また、制御装置32が指令値に対するフィルタリング処理の実行又は不実行を切り替える切り替え部32fを含むことで、プランジャの位置又は速度の制御の精度を更に向上できる。
【0147】
(第3の実施形態)
第3の実施形態の成形機は、制御装置は、フィルタの特性を変更する特性変更部を、更に含む点で、第1の実施形態の成形機と異なる。以下、第1の実施形態と重複する内容については、一部省略する場合がある。
【0148】
図9は、第3の実施形態の成形機のブロック図である。
図9は、HMI34、制御装置32、射出シリンダ44、及び変位センサ52を含むブロック図である。
【0149】
制御装置32は、記憶部32a、比較部32b、演算部32c、フィルタ32d、指令部32e、及び特性変更部32gを含む。
【0150】
特性変更部32gは、フィルタの特性を変更する機能を有する。フィルタの特性は、例えば、カットオフ周波数である。フィルタの特性は、例えば、フィルタ次数である。
【0151】
制御装置32は、例えば、プランジャ33が移動している第1の期間の間、フィルタ32dによる指令値に対するフィルタリング処理を第1のフィルタ特性で実行し、第1の期間の後の第2の期間の間、フィルタ32dによる指令値に対するフィルタリング処理を第1のフィルタ特性と異なる第2のフィルタ特性で行うことが可能である。制御装置32は、例えば、プランジャ33を第1の期間、第1の速度で移動させ、プランジャ33を第1の期間の後の第2の期間、第1の速度よりも速い第2の速度で移動させ、第1の期間の間、フィルタ32dによる指令値に対するフィルタリング処理を第1のフィルタ特性で実行し、第2の期間の間、フィルタ32dによる指令値に対するフィルタリング処理を第1のフィルタ特性と異なる第2のフィルタ特性で行うことが可能である。
【0152】
特性変更部32gは、例えば、特性変更回路である。特性変更部32gは、例えば、ハードウェアとソフトウェアとの組み合わせで構成される。特性変更部32gは、例えば、CPU、半導体メモリ、及び半導体メモリに記憶された制御プログラムを含む。
【0153】
図10は、第3の実施形態の成形機の動作の説明図である。
図10は、プランジャ速度の時間変化を示す図である。
【0154】
図10に示すように、第3の実施形態の制御装置32は、例えば、プランジャ33を第1の期間t1、第1の速度v1で移動させる。そして、プランジャ33を第1の期間t1の後の第2の期間t2、第1の速度v1よりも速い第2の速度v2で移動させる。
【0155】
制御装置32は、第1の期間t1の間、フィルタ32dによる指令値に対するフィルタリング処理を第1のカットオフ周波数f1で実行する。また、制御装置32は、第2の期間t2の間、フィルタ32dによる指令値に対するフィルタリング処理を第1のカットオフ周波数f1よりも高い第2のカットオフ周波数f2で実行する。
【0156】
フィルタ32dは、ローパスフィルタである。第1の期間t1の間のフィルタ32dの通過帯域は、第2の期間t2の間のフィルタ32dの通過帯域よりも狭い。
【0157】
第1のカットオフ周波数f1でフィルタリング処理を実行する第1の期間t1と、第2のカットオフ周波数f2でフィルタリング処理を実行する第2の期間t2は、例えば、あらかじめ記憶部32aに記憶される。
【0158】
例えば、プランジャ33がスリーブ31内を移動する全期間において、狭い通過帯域でフィルタリング処理を実行すると、カジリ現象が生じない場合は、プランジャ33の速度の指令値が鈍化し、プランジャの位置又は速度の制御の精度が低下するおそれがある。
【0159】
第3の実施形態のダイカストマシンは、例えば、カジリ現象が生じやすい第1の期間t1の間だけフィルタ32dの通過帯域を狭くし、カジリ現象が生じにくい第2の期間t2の間はフィルタ32dの通過帯域を広くする。したがって、カジリ現象が生じにくい期間におけるプランジャの位置又は速度の制御の精度の低下が抑制される。
【0160】
(変形例)
第3の実施形態の成形機の変形例は、制御装置は、射出装置の動作条件に基づきフィルタの特性の変更を決定し、特性変更部にフィルタの特性の変更を指令する特性決定部を更に含む点で、第3の実施形態の成形機と異なる。
【0161】
図11は、第3の実施形態の成形機の変形例のブロック図である。
図11は、HMI34、制御装置32、射出シリンダ44、及び変位センサ52を含むブロック図である。
【0162】
制御装置32は、記憶部32a、比較部32b、演算部32c、フィルタ32d、指令部32e、特性変更部32g、及び特性決定部32hを含む。
【0163】
特性決定部32hは、射出装置14の動作条件に基づきフィルタの特性の変更を決定し、特性変更部32gにフィルタの特性の変更を指令する機能を有する。フィルタの特性は、例えば、カットオフ周波数である。フィルタの特性は、例えば、フィルタ次数である。
【0164】
特性決定部32hは、例えば、記憶部32aに記憶された射出装置14の動作条件に基づき、自動的にフィルタの特性の変更を決定し、自動的に特性変更部32gにフィルタの特性の変更を指令する。射出装置14の動作条件は、例えば、射出シリンダ44の動作速度である。
【0165】
特性決定部32hは、例えば、特性決定回路である。特性決定部32hは、例えば、ハードウェアとソフトウェアとの組み合わせで構成される。特性決定部32hは、例えば、CPU、半導体メモリ、及び半導体メモリに記憶された制御プログラムを含む。
【0166】
第3の実施形態の変形例のダイカストマシンは、例えば、特性決定部32hを含むことで、射出装置14の動作条件に応じた最適なフィルタの特性を自動的に決定し、フィルタ32dに適用することができる。したがって、プランジャの位置又は速度の制御の精度が向上する。
【0167】
以上、第3の実施形態及び変形例によれば、制御装置32が指令値に対しフィルタリング処理を行うフィルタ32dを含むことで、プランジャの位置又は速度の制御の精度を向上できる成形機が実現できる。また、制御装置32がフィルタの特性を変更する特性変更部32gを含むことで、プランジャの位置又は速度の制御の精度を更に向上できる。
【0168】
(第4の実施形態)
第4の実施形態の成形機は、目標値は、フィルタリング処理に伴うプランジャの速度又は位置の制御の遅延を補償するオフセットを含む点で、第1の実施形態の成形機と異なる。以下、第1の実施形態と重複する内容については、一部省略する場合がある。
【0169】
第4の実施形態のダイカストマシンにおいて、制御装置32の記憶部32aに記憶されるプランジャ33の速度又は位置の目標値は、フィルタリング処理に伴うプランジャ33の速度又は位置の制御の遅延を補償するオフセットを含む。
【0170】
例えば、プランジャ33の速度が、加速又は減速を含む動作をする場合、指令値にフィルタリング処理を行うことで、プランジャ33の制御に遅延が生じる場合がある。あらかじめ、記憶部32aに記憶されるプランジャ33の速度又は位置の目標値にフィルタリング処理に伴うプランジャ33の速度又は位置の制御の遅延を補償するオフセットを含ませることで、制御の遅延が抑制できる。したがって、プランジャの位置又は速度の制御の精度が向上する。
【0171】
以上、第4の実施形態によれば、プランジャの位置又は速度の制御の精度を向上できる成形機が実現ができる。
【0172】
第1ないし第4の実施形態では、成形機として溶湯を金型に充填するダイカストマシンを例に説明したが、例えば、樹脂材料を金型に充填する射出成形機に本発明を適用することも可能である。
【0173】
また、第1ないし第4の実施形態では、フィルタ32dがデジタルフィルタである場合を例に説明したが、例えば、フィルタ32dにアナログフィルタを適用することも可能である。
【0174】
また、第1ないし第4の実施形態では、フィルタ32dがローパスフィルタである場合を例に説明したが、例えば、フィルタ32dにバンドパスフィルタやハイパスフィルタを適用することも可能である。
【0175】
また、第1ないし第4の実施形態では、射出シリンダ44がメータアウト制御される場合を例に説明したが、射出シリンダ44はメータイン制御されても構わない。
【0176】
また、第1ないし第4の実施形態では、射出シリンダ44が油圧シリンダの場合を例に説明したが、射出シリンダ44に電動シリンダを適用することも可能である。射出シリンダ44に電動シリンダを適用する場合、指令部32eから出される指令値は、例えば、射出シリンダ44を駆動するサーボモータの動作を制御する値である。
【0177】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。実施形態においては、成形機などで、本発明の説明に直接必要としない部分については記載を省略したが、必要とされる、成形機などに関わる要素を適宜選択して用いることができる。
【0178】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全ての成形機は、本発明の範囲に包含される。本発明の範囲は、特許請求の範囲及びその均等物の範囲によって定義されるものである。
【符号の説明】
【0179】
10 型締装置
12 押出装置
14 射出装置
18 金型
18a 固定金型
18b 可動金型
20 制御ユニット
22 ベース
24 固定ダイプレート
26 可動ダイプレート
28 リンクハウジング
30 タイバー
31 スリーブ
32 制御装置
32a 記憶部
32b 比較部
32c 演算部
32d フィルタ
32e 指令部
32f 切り替え部
32g 特性変更部
32h 特性決定部
33 プランジャ
33a プランジャチップ
33b プランジャロッド
34 ヒューマンマシンインターフェース(HMI)
44 射出シリンダ
46 油圧ポンプ
48 油圧タンク
50 アキュムレータ
52 変位センサ(センサ)
53 圧力センサ
54 射出用バルブ
56 速度制御用バルブ
58 方向切替バルブ
60 第1の開閉バルブ
62 第2の開閉バルブ
64 充填補充用バルブ
70a 第1の流路
70b 第2の流路
70c 第3の流路
70d 第4の流路
70e 第5の流路
70f 第6の流路
70g 第7の流路
80 ロッド
82 射出ピストン
84 シリンダチューブ
86 ロッド側室
88 ヘッド側室
99 ダイカスト品
100 ダイカストマシン(成形機)
Ca 空洞
f1 第1のカットオフ周波数
f2 第2のカットオフ周波数
t1 第1の期間
t2 第2の期間
v1 第1の速度
v2 第2の速度
【要約】
【課題】プランジャの位置又は速度の制御の精度を向上できる成形機を提供する。
【解決手段】実施形態の射出装置は、金型を型締めする型締装置と、スリーブの中にプランジャを摺動させ、金型に液状材料を供給し、プランジャの速度又は位置を測定するセンサを含む射出装置と、プランジャの速度又は位置を制御する制御装置であって、プランジャの速度又は位置の目標値を記憶する記憶部と、センサの測定に基づく入力値と、目標値とを比較する比較部と、比較部の比較結果に基づきプランジャの速度又は位置を補正するための指令値を算出する演算部と、指令値に対するフィルタリング処理を実行するフィルタと、を含む制御装置と、を備える。
【選択図】
図3