(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法、情報処理システム、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G01R 31/392 20190101AFI20221213BHJP
【FI】
G01R31/392
(21)【出願番号】P 2022513409
(86)(22)【出願日】2020-09-04
(86)【国際出願番号】 JP2020033695
(87)【国際公開番号】W WO2022049745
(87)【国際公開日】2022-03-10
【審査請求日】2022-02-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118876
【氏名又は名称】鈴木 順生
(72)【発明者】
【氏名】山本 幸洋
(72)【発明者】
【氏名】波田野 寿昭
(72)【発明者】
【氏名】丸地 康平
(72)【発明者】
【氏名】三ッ本 憲史
【審査官】青木 洋平
(56)【参考文献】
【文献】特許第5386443(JP,B2)
【文献】特許第6134438(JP,B1)
【文献】特開2020-119712(JP,A)
【文献】特開平07-045308(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0106868(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0352125(US,A1)
【文献】韓国登録特許第10-1776507(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/36-31/396
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電池内の複数の電池ユニットそれぞれに掛けられた電力に関する計測データに基づき、前記複数の電池ユニットそれぞれに対し、SoHを算出するSoH算出部と、
前記計測データに基づき、前記複数の電池ユニットそれぞれに対し、前記電池ユニット内の複数のセルまたは電池サブユニットに掛けられた各電圧のうちの最大電圧および最小電圧に基づくSoHである最大最小電圧SoHを算出する最大最小電圧SoH算出部と、
算出されたSoHおよび最大最小電圧SoHに基づき、前記複数の電池ユニットそれぞれに対し、SoHに対する最大最小電圧SoHの割合であるSoHレシオを算出するSoHレシオ算出部と、
を備える情報処理装置。
【請求項2】
算出されたSoHレシオは、対応する電池ユニット内の最も劣化したセルまたは電池サブユニットが、その他のセルまたは電池サブユニットと比べて、どれほど劣化が進んでいるかを表す、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
算出されたSoHレシオに基づき、前記複数の電池ユニットから、警告対象とする電池ユニットを検出する検出部
をさらに備える請求項1または2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記検出部は、算出されたSoHレシオが1の値から離れた度合いに基づき、前記複数の電池ユニットから、警告対象とする電池ユニットを検出する
請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記検出部は、
所定期間内の複数の時点において算出されたSoHレシオの標準偏差を算出し、
算出された標準偏差に基づいて閾値を決定し、
前記所定期間の経過後に、決定された閾値と、算出されたSoHレシオと、を比較することにより、警告対象とする電池ユニットを検出する
請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記検出部は、前記閾値を、算出された標準偏差の倍数とする
請求項5に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記検出部は、警告対象とする電池ユニットが検出された場合に、前記蓄電池を警告対象とする
請求項3ないし6のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記検出部は、算出されたSoHまたは最大最小電圧SoHに基づき、前記複数の電池ユニットから、劣化した電池ユニットを検出する
請求項3ないし7のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項9】
算出されたSoHに基づいて劣化した電池ユニットが検出された場合には、前記電池ユニットに対応する警告を示す情報を出力し、
算出されたSoHレシオに基づいて警告対象とする電池ユニットが検出された場合には、前記セルまたは前記電池サブユニットに対応する警告を示す情報を出力する、
出力部をさらに備える請求項8に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記出力部は、算出されたSoHに基づいて劣化した電池ユニットが検出されず、かつ、算出されたSoHレシオに基づいて警告対象とする電池ユニットが検出されなかった場合に、前記蓄電池、前記電池ユニット、前記電池サブユニット、および前記セルの少なくともいずれかが正常であることを示す情報を出力する、
請求項9に記載の情報処理装置。
【請求項11】
算出されたSoHに基づいて劣化した電池ユニットが検出されず、かつ、算出されたSoHレシオに基づいて警告対象とする電池ユニットが検出されなかった場合に、前記蓄電池、前記電池ユニット、前記電池サブユニット、および前記セルの少なくともいずれかが正常であることを示す情報を出力する、
出力部をさらに備える請求項8に記載の情報処理装置。
【請求項12】
前記SoH算出部、前記最大最小電圧SoH算出部、前記SoHレシオ算出部、および前記検出部の少なくともいずれかの処理結果に関する情報を出力する
出力部をさらに備える請求項3ないし8のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項13】
前記検出部は、算出されたSoH、最大最小電圧SoH、およびSoHレシオの少なくともいずれかに基づき、前記蓄電池、前記電池ユニット、前記電池サブユニット、および前記セルの少なくともいずれかに対する複数の警告に関する分類のうちから一つを選択し、
前記出力部は、選択された分類を示す情報を出力する
請求項12に記載の情報処理装置。
【請求項14】
前記最大最小電圧SoH算出部は、前記電池ユニットの充電時には前記電池ユニットの電圧の代わりに前記最大電圧を用い、前記電池ユニットの放電時には前記電池ユニットの電圧の代わりに前記最小電圧を用いて、前記電池ユニットの最大最小電圧SoHを算出する
請求項1ないし13のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項15】
前記SoHは、前記電池ユニットの仕様の満充電容量に対する評価時点の満充電容量の割合で表される
請求項1ないし14のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項16】
前記SoHは、前記電池ユニットの第1時点の満充電容量に対する第2時点の満充電容量の割合で表される
請求項1ないし15のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項17】
前記SoH算出部は、前記電池ユニットの単位期間あたりの電圧値の分布の標準偏差または分散と、SoHと、の一般的な関係を示す参照データに基づいてSoHを算出する、
請求項1ないし16のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項18】
蓄電池内の複数の電池ユニットそれぞれに掛けられた電力に関する計測データに基づき、前記複数の電池ユニットそれぞれに対し、SoHを算出するステップと、
前記計測データに基づき、前記複数の電池ユニットそれぞれに対し、前記電池ユニット内の複数のセルまたは電池サブユニットに掛けられた各電圧のうちの最大電圧および最小電圧に基づくSoHである最大最小電圧SoHを算出するステップと、
算出されたSoHおよび最大最小電圧SoHに基づき、前記複数の電池ユニットそれぞれに対し、SoHに対する最大最小電圧SoHの割合であるSoHレシオを算出するステップと、
を備える情報処理方法。
【請求項19】
蓄電池内の複数の電池ユニットそれぞれに掛けられた電力に関する計測データに基づき、前記複数の電池ユニットそれぞれに対し、SoHを算出するステップと、
前記計測データに基づき、前記複数の電池ユニットそれぞれに対し、前記電池ユニット内の複数のセルまたは電池サブユニットに掛けられた各電圧のうちの最大電圧および最小電圧に基づくSoHである最大最小電圧SoHを算出するステップと、
算出されたSoHおよび最大最小電圧SoHに基づき、前記複数の電池ユニットそれぞれに対し、SoHに対する最大最小電圧SoHの割合であるSoHレシオを算出するステップと、
を備えるプログラム。
【請求項20】
蓄電池と、情報処理装置と、を備えた情報処理システムであって、
前記蓄電池は複数の電池ユニットを含み、
前記複数の電池ユニットは、それぞれ、セルまたは電池サブユニットを含み、
前記情報処理装置は、
蓄電池内の複数の電池ユニットそれぞれに掛けられた電力に関する計測データに基づき、前記複数の電池ユニットそれぞれに対し、SoHを算出するSoH算出部と、
前記計測データに基づき、前記複数の電池ユニットそれぞれに対し、前記電池ユニット内の複数のセルまたは電池サブユニットに掛けられた各電圧のうちの最大電圧および最小電圧に基づくSoHである最大最小電圧SoHを算出する最大最小電圧SoH算出部と、
算出されたSoHおよび最大最小電圧SoHに基づき、前記複数の電池ユニットそれぞれに対し、SoHに対する最大最小電圧SoHの割合であるSoHレシオを算出するステップと、
を備える情報処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、情報処理装置、情報処理方法、情報処理システム、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電池の劣化を早期に検知するために、電池のSoH(State of Health)を推定する様々な技術が提唱されている。例えば、電池の稼働データに基づき、充電量(SoC、State of Charge)と電圧の関係を統計的に処理してSoHを同定する電圧標準偏差法が知られている。充放電電力量およびそれをシステム容量仕様で正規化した等価サイクル回数とSoHのデータ列に基づくSoHの傾きを用いることは劣化の予兆検知手法として有効であるが、当該傾きを算出するためのデータ期間および劣化加速の閾値をどのように設定するかといった問題があり、設定によっては検知の正確性に疑義が生じるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5386443号公報
【文献】特許第6134438号公報
【非特許文献】
【0004】
【文献】株式会社東芝、「電力系統用蓄電システムの健全性評価手法」、東芝レビューvol.73、No.6、2018年11月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の一実施形態は、電池システムの劣化の予兆情報を高精度に生成する情報処理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様としての情報処理装置は、SoH算出部と、最大最小電圧SoH算出部と、SoHレシオ算出部と、を備える。前記SoH算出部は、蓄電池内の複数の電池ユニットそれぞれに掛けられた電力に関する計測データに基づき、前記複数の電池ユニットそれぞれに対し、SoHを算出する。前記最大最小電圧SoH算出部は、前記計測データに基づき、前記複数の電池ユニットそれぞれに対し、前記電池ユニット内の複数のセルまたは電池サブユニットに掛けられた各電圧のうちの最大電圧および最小電圧に基づくSoHである最大最小電圧SoHを算出する。前記SoHレシオ算出部は、算出されたSoHおよび最大最小電圧SoHに基づき、前記複数の電池ユニットそれぞれに対し、SoHに対する最大最小電圧SoHの割合であるSoHレシオを算出する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の一実施形態に係る情報処理装置の一例を示すブロック図。
【
図2】劣化加速の検出対象である蓄電池の構成の第1例を示す図。
【
図3】劣化加速の検出対象である蓄電池の構成の第2例を示す図
【
図7】SoH、最大最小電圧SoH、およびSoHレシオのグラフ形状の比較図。
【
図8】情報処理装置の全体処理の概略フローチャート。
【
図9】検出および出力の具体例を示す概略フローチャート。
【
図10】最大最小電圧SoHの算出処理の概略フローチャート。
【
図11】本発明の一実施形態におけるハードウェア構成の一例を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
【0009】
(本発明の一実施形態)
図1は、本発明の一実施形態に係る情報処理装置の一例を示すブロック図である。本実施形態に関する情報処理装置1は、記憶部11と、データ取得部12と、算出部13と、検出部14と、入出力部15と、を備える。算出部13は、SoH算出部131と、最大最小電圧SoH算出部132と、SoHレシオ算出部133と、を備える。
【0010】
情報処理装置1は、蓄電池の劣化加速に関する情報、言い換えれば指標、を生成する装置である。当該情報に基づいて、蓄電池の劣化加速の検出が行われるが、蓄電池の劣化加速の検出は、情報処理装置1で行われてもよいし、外部の装置で行われてもよい。例えば、クラウドサーバが、通信ネットワークを介して、当該情報を収集して、劣化加速の検出を行うことも考えられる。本実施形態では、劣化加速の検出について説明するために、情報処理装置1が検出部14を備えて劣化加速の検出も行うとする。
【0011】
劣化加速の検出対象である蓄電池は、電気エネルギーを蓄積(充電)および放電可能な蓄電池である。また、当該蓄電池は、複数の単位電池(セル)を備えており、単位電池は、例えば、二次電池電力貯蔵システム(BESS)のように、電池モジュール、電池盤といった複数の電池ユニットに分けられているとする。本実施形態では、これらの電池ユニットの劣化を検出し、当該検出に基づいて蓄電池の劣化を検出する。
【0012】
図2は、劣化加速の検出対象である蓄電池の構成の第1例を示す図である。
図2の例では、直列に接続された複数のセル21を含む複数の電池モジュール22によって蓄電池2が構成されている。複数の電池モジュール22は並列に接続されている。
図2の例では、電池モジュール22が前述の電池ユニットに相当する。
【0013】
図3は、劣化加速の検出対象である蓄電池の構成の第2例を示す図である。
図3の例では、直列に接続された複数の電池モジュール22を含む複数の電池盤23によって蓄電池2が構成されている。複数の電池盤23は並列に接続されている。複数の電池モジュール22は、1つ以上のセルが含まれている。
図3の例では、電池盤23が前述の電池ユニットに相当する。なお、電池盤23内の電池モジュール22のように、電池ユニット内に別の電池ユニットが含まれている場合は、電池ユニット内に別の電池ユニットを電池サブユニットと記載する。なお、複数の電池モジュール22に含まれるセルの構成は、
図2の例のような構成でなくてもよい。
【0014】
なお、各電池ユニット内のセルまたは電池サブユニットの数は、同数でも異なってもよい。また、各電池ユニット内の電池サブユニットには、同一の劣化状態においてかかる電圧が同等となるように配列されているものとする。また、
図2のように、各電池ユニット内に電池サブユニットがない場合は、各電池ユニット内の各セルには、同一の劣化状態においてかかる電圧が同等となるように配列されているものとする。
【0015】
各電池ユニットの電圧、電流、温度等のパラメータは計測可能であり、計測データとして情報処理装置1に送信されるものとする。例えば、BESSが有する、BMU(Battery Management Unit)、CMU(Cell Monitoring Unit)などが、各電池ユニットのパラメータを計測してもよいし、電池ユニットのパラメータを計測可能な機器を、別途、蓄電池2内に設置してもよい。なお、計測データは、直接、蓄電池2が情報処理装置1に送信してもよいし、蓄電池2の情報を収集する装置などを介して送信されていてもよい。このようにして、稼働中の蓄電池2の計測データを取得することにより、蓄電池2が稼働中であっても電池ユニットの劣化加速をモニタリングすることができる。例えば、BESSでは、短周期の充放電を24時間365日行われているが、本実施形態によれば、このようなBESSに対する健全性評価を、BESSを停止することなく実施することができる。ただし、過去の計測データに基づいて過去の時点の劣化加速について推定してもよいし、稼働していない蓄電池を評価してもよい。
【0016】
各電池ユニットに関する計測データには、少なくとも蓄電池2のSoHを算出するために必要なデータが含まれているとする。SoHは、蓄電池2の劣化状態を示す指標である。なお、蓄電装置の劣化状態をどのようにして表すかは、適宜に定めてよい。例えば、劣化によって低下する満充電容量、劣化によって増加する内部抵抗などを用いて定義すればよい。
【0017】
本説明では、SoHを、電池ユニットの仕様の満充電容量に対する評価時点の満充電容量の割合(評価時点の満充電容量/仕様の満充電容量)とする。評価時点は、任意の時点でよい。例えば、前述のBESSでは、計測データは、毎日、1日分の計測結果を含むCSVファイルとして保存されることが多い。この1日分の計測データから、その日に扱った電力量を算出することができるため、計測データが保存された時点を評価時点としてもよい。また、BESSでは、計測結果に基づき、例えば、横軸が電力量を示し、縦軸がSoHを示すといったSoH推移ランチャートを生成することもあり得る。このBESSと同様にして、任意の評価時点に至るまでの累積の等価サイクル回数に対するSoHなどを算出してもよい。
【0018】
ただし、SoHを、第1時点の満充電容量に対する第2時点の満充電容量の割合(第2時点の満充電容量/第1時点の満充電容量)としてもよい。第1時点および第2時点は任意の時点であるが、第2時点は第1時点よりも後の時点であり、第2時点のほうが電池ユニットの劣化が進行しているとする。また、第1時点は未使用時点でもよく、その場合、第1時点の満充電容量は、仕様の満充電容量以上とすることが一般的である。
【0019】
電池ユニットのSoHの算出方法は、従来手法を用いてよい。例えば、計測データに、各電池ユニットの電圧を含め、電圧の時系列データに基づいて、電圧値の分布の標準偏差または分散などを算出する。そして、電圧値の分布の標準偏差または分散などとSoHとの一般的な関係を示す参照データを予め様々に劣化させた蓄電池から作成しておき、当該参照データに基づいて、算出された標準偏差または分散からSoHを算出する方法が知られている。そのような方法を用いてSoHを算出すればよい。
【0020】
また、最大最小電圧SoHを算出するために、電池ユニットが充電中であるか放電中であるかを示すデータが計測データに含まれる。例えば、蓄電池に充放電される電流の向きが、電流の正負によって表されている場合は、蓄電池に充放電される電流が計測データに含まれる。また、最大最小電圧SoHを算出するために、電池ユニットに含まれる電池サブユニットの電圧値のうちの最大値および最小値が計測データに含まれる。
図2のように、電池ユニットに電池サブユニットが含まれていない場合は、電池ユニット内の各セルの電圧値のうちの最大値および最小値が計測データに含まれる。なお、SoHの算出に用いられないパラメータの値が計測データに含まれていてもよい。
【0021】
情報処理装置1の内部構成について説明する。なお、
図1に示した構成要素は、劣化加速の検出を行うためのものであり、他の構成要素は省略されている。また、各構成要素は、細分化されてもよいし、まとめられてもよい。例えば、記憶部11は、保存されるファイルなどに応じて、分けられていてもよい。また、記憶部11以外の構成要素を演算部とみなしてもよい。また、各構成要素の処理結果は、次の処理が行われる構成要素に送られてもよいし、記憶部11に記憶され、次の処理が行われる構成要素は記憶部11にアクセスして処理結果を取得してもよい。
【0022】
記憶部11は、情報処理装置1の処理に用いられるデータを記憶する。当該データとしては、例えば、蓄電池2から取得した計測データ、SoHを算出するための参照データ、アラートを出力するためのデータなどがあるとする。なお、記憶部11に記憶されるデータは限られるものではなく、例えば、情報処理装置1の各構成要素の処理結果などが記憶されてもよい。
【0023】
データ取得部12は、蓄電池2から計測データを取得し、記憶部11に蓄積する。蓄積された計測データは履歴として用いられる。例えば、各電池ユニットに掛けられた電圧の推移などが蓄積された計測データより確認することができる。
【0024】
なお、蓄電池2からリアルタイムに計測データを取得し、1日分といった単位時間あたりの計測データを一つのファイルにまとめて記憶部11に記憶させてもよい。あるいは、蓄電池2が、例えば、単位時間あたりの計測データをまとめて送信し、当該計測データを1ファイルとして記憶部11に記憶させてもよい。また、単位時間と保存形式は、適宜に定めてよい。
【0025】
算出部13は、蓄積された計測データに基づき、劣化加速の検出を行うための情報を生成する。
図1の例では、処理の内容に応じて、算出部13を、SoH算出部131と、最大最小電圧SoH算出部132と、SoHレシオ算出部133と、に分けている。
【0026】
SoH算出部131は、蓄積された計測データに基づき、蓄電池2の電池ユニットごとにSoHを算出する。例えば、前述の通り、1日などといった単位期間あたりの電池ユニットの電圧値の分布の標準偏差または分散などを算出する。そして、参照データに基づいて、算出された標準偏差または分散から、電池ユニットのSoHを算出する。
【0027】
最大最小電圧SoH算出部132は、蓄積された計測データに基づき、蓄電池2の電池ユニットごとに最大最小電圧SoHを算出する。最大最小電圧SoHは、電池ユニット内の電池サブユニットに掛けられた各電圧のうちの最大電圧および最小電圧に基づくSoHである。電池ユニット内に電池サブユニットがない場合は、電池ユニット内のセルに掛けられた各電圧のうちの最大電圧および最小電圧に基づくSoHである。
【0028】
電池ユニットに含まれるセルまたは電池サブユニットは、劣化によって、それらの内部抵抗の値に差が生じる。そのため、各セルまたは電池サブユニットの電圧もそれぞれ異なるようになる。最大最小電圧SoH算出部132は、充電時は各セルまたは各電池サブユニットに掛けられた電圧のうちの最大電圧を電池ユニットの電圧とみなし、放電時は各セルまたは各電池サブユニットに掛けられた電圧のうちの最小電圧を電池ユニットの電圧とみなす。そして、SoH算出部131と同様にして、電池ユニットのSoHを算出する。言い換えれば、最大最小電圧SoH算出部132は、電池ユニットの充電時には電池ユニットの電圧の代わりに内部のセルまたは電池サブユニットの最大電圧と、電池ユニットの放電時には電池ユニットの電圧の代わりに内部のセルまたは電池サブユニットの最小電圧とを用いて合成された最大最小電圧データから電池ユニットのSoHを算出し、算出されたSoHを最大最小電圧SoHとする。
【0029】
電池ユニットの充電時に最大電圧となるセルまたは電池サブユニットと、電池ユニットの放電時に最小電圧となるセルまたは電池サブユニットは、一致するとは限らず、電池ユニット内のセルまたは電池サブユニットのうち、最も劣化が大きい状態を仮に示すものである。すなわち、最大最小電圧SoHは、電池ユニット内で最も劣化が進んだ状態の可能性を示すため、SoHと比べて小さい値となる。
【0030】
例えば、充放電中の蓄電池を停止させずにそのSoHを評価することができる電圧標準偏差法が知られている。電圧標準偏差法では、充放電中のセルのSOC(State of Charge)をX座標とし、当該セルの端子電圧をY座標としたプロットの軌跡図を用いる。当該プロットは、充放電電力が同じであっても、SoHの低下に応じてY軸方向の分布、言い換えれば端子電圧のばらつき、が広がることが知られている。電圧標準偏差法は、当該分布に基づいて、SoHを推定している。この電圧標準偏差法を用いて最大最小電圧SoHを算出する場合、Y座標が最大電圧のプロットと、Y座標が最小電圧のプロットとが、軌跡図に示されることになる。ゆえに、Y軸方向の分布は非常に大きくなる。このことからも、最大最小電圧SoHは、SoHと比べて小さい値となることが分かる。
【0031】
SoHレシオ算出部133は、各電池ユニットに対し、SoHレシオを算出する。SoHレシオは、電池ユニットのSoHに対する当該電池ユニットの最大最小電圧SoHの割合(最大最小電圧SoH/SoH)を表す。前述の通り、最大最小電圧SoHは電池ユニット内で最も劣化が進んだ状態に依存する。一方、SoHは、電池ユニット内の全てのセルまたは電池サブユニットに依存する。そのため、最も劣化が進んだ状態がその他のセルまたは電池サブユニットと比べてほぼ同じである場合ではSoHレシオは1に近い値となり、最も劣化が進んだ状態がその他のセルまたは電池サブユニットと比べて大きい場合、SoHレシオは1よりも小さな値となる。すなわち、SoHレシオは、電池ユニット内の最も劣化した状態した状態が、その他と比べて、どれほど劣化が進んでいるかを表す。SoHレシオを指標として用いることにより、電池ユニット全体では健全度を保っているように見えても、内部のセルまたは電池サブユニットの一部において劣化がその他と比べて進行していることを認識することができる。
【0032】
検出部14は、各電池ユニットのSoHレシオに基づき、警告対象とする電池ユニットを検出する。言い換えれば、SoHレシオに基づき、劣化がその他と比べて進行しているセルまたは電池サブユニットが存在している電池ユニットが存在するかを検索し、検出された電池ユニットを警告対象とする。なお、警告内容は適宜に決めてよい。例えば、警告対象とされた電池ユニットを、劣化または故障したとみなしてもよいし、今後、突発的に劣化または故障する恐れがあるとみなしてもよい。また、警告対象とする電池ユニットが検出された場合に、検出部14は、当該電池ユニットと同様に、蓄電池2を警告対象としてもよい。すなわち、蓄電池2を劣化または故障したとみなしてもよいし、今後、突発的に劣化または故障する恐れがあるとみなしてもよい。例えば、SoHレシオが1の値から離れた度合いに応じて、警告対象とする電池ユニットを検出してもよいし、警告内容も変えてよい。
【0033】
SoH、最大最小電圧SoH、およびSoHレシオに基づく劣化加速の検出について説明する。
図4は、SoHの推移を示す図である。
図5は、最大最小電圧SoHの推移を示す図である。
図4および
図5の横軸は、充放電の等価サイクル数であり、
図4および
図5に、例えば一日ごとに、一つの電池盤に対するプロットが示されている。等価サイクル数とは、累積の充放電電力量を電池盤の仕様の電力量で除した数値であり、これまでに電池盤に印可された電力が電池盤の満充電容量の何回分に相当するかを表す。
図4(A)および
図5(A)は電池盤の最大最小SoH、
図4(B)および
図5(B)は電池盤のSoHを示す。
図4は当該電池盤を構成するユニットの劣化が比較的均一な場合、
図5は当該電池盤を構成するユニットの劣化進行が異なっている場合を示す。また、
図4および
図5に示された直線は、全プロットによる近似曲線を示す。
【0034】
図4(A)および
図5(A)では、プロットが徐々に近似曲線から離れている。そのため、近似曲線からある程度離れた時点で交換が行われている。このように、電池ユニットの劣化がその他と比べて異なる場合、近似曲線と比較することにより、つまり、各電池ユニットを比較することにより、劣化を検出することができる。
【0035】
しかし、
図4(B)および
図5(B)のように、各電池ユニットがその他の電池ユニットと同じように劣化する場合、プロットが近似曲線から離れない。つまり、各電池ユニットを比較しても劣化を検出することができない。相対的に劣化を検出できないため、特定の閾値または等価サイクル数に応じた閾値関数を設けて、劣化を絶対的に検出する必要がある。しかし、いつの時点で、どれほど劣化するかを予測することは困難である。例えば、劣化がリニアに低下するとも限らない。また、あまりにも厳しい値にすると誤検知の恐れもあり、適切な閾値を定めることが困難である。
【0036】
図6は、SoHレシオの推移を示す図である。
図6では、全ての電池盤(図例では数十個)に対するプロットが示されている。サイクル数が少ない初期段階では、各電池ユニット内のセルまたは電池サブユニットに劣化の差はなく、かかる電圧も差がないため、各電池ユニットにおいてSoHと最大最小電圧SoHとはほぼ同じ値となる。ゆえに、サイクル数が少ない初期段階では、
図6に示すように、SoHレシオはほぼ1となる。その後、他よりも劣化が進行したセルまたは電池サブユニットが現れると、充電時および放電時にそれらにかかる電力はバラつく。したがって、最大最小電圧SoHとSoHとには差が生じる。したがって、SoHレシオは1から乖離する。この乖離度合いによって、一部のユニットで劣化が加速したと検出すればよい。SoHレシオは、他の電池盤との比較によるものではないため、各電池ユニットがその他の電池ユニットと同じように劣化しても劣化を検出することができる。
【0037】
図7は、SoH、最大最小電圧SoH、およびSoHレシオのグラフ形状の比較図である。実線のグラフがSoHレシオの推移を示す。一点破線のグラフが最大最小電圧SoHの推移を示す。破線のグラフがSoHの推移を示す。SoHレシオは、
図7に示すように、SoHおよび最大最小電圧SoHの推移よりも急激に下降する。そのため、SoHレシオを用いることにより、SoHおよび最大最小電圧SoHを用いた時よりも、各電池ユニットの劣化加速の検出の精度を高めることができる。
【0038】
SoHレシオが1からどれ程乖離したかによって劣化は検出されるが、この検出のための閾値は予め記憶部11に記憶されていてもよい。あるいは、劣化推部が、当該閾値を算出してもよい。例えば、SoHレシオの一定期間内における標準偏差σを算出し、当該標準偏差に基づいて閾値を算出してもよい。例えば、SoHレシオの一定期間内において算出した標準偏差σを基準ばらつきとし、例えば、3σ、4σ、4.5σ、6σなどといった標準偏差の倍数を閾値にしてもよい。標準偏差を求める期間は、SoHレシオがほぼ1と想定される初期期間でもよいし、劣化加速の検出を行う時点を中心とした期間でもよい。
【0039】
検出部は、算出されたSoHまたは最大最小電圧SoHに基づき、複数の電池ユニットから、劣化した電池ユニットを検出してもよい。また、検出部14は、SoH、最大最小電圧SoH、およびSoHレシオの少なくともいずれかに基づき、劣化に関する複数の分類のうちから一つを選択してもよい。例えば、「正常」、「一部の電池ユニットに劣化加速傾向あり」、「電池ユニット全体が劣化加速傾向あり」といった分類と、それらの分類に対応する値の範囲と、を予め定めておく。そして、SoH、最大最小電圧SoH、およびSoHレシオのいずれかが、いずれの分類に該当するか検出する。あるいは、SoH、最大最小電圧SoH、およびSoHレシオの少なくとも二つの組み合わせに基づいて、いずれの分類に該当するかを検出してもよい。例えば、SoHが所定閾値以上であり、かつ、SoHレシオが所定閾値未満である場合に、ユーザに注意を促すための分類を選択するとしてもよい。このように、複数の条件に合致する電池ユニットをしたときに、警告対象として検出してもよい。なお、値の範囲は、適宜に定めてよく、前述の標準偏差に基づく値としてもよい。
【0040】
入出力部15は、各構成要素の処理結果を出力する。例えば、算出されたSoH、最大最小電圧SoH、SoHレシオなどを出力してもよい。また、劣化加速の検出の結果を出力してもよい。警告対象とされた電池ユニットが検出されたことをユーザに通知するために、警告を示す情報、言い換えればアラート、を出力してもよい。警告対象とされた電池ユニットのIDなどの識別番号を出力してもよい。また、警告対象とされた電池ユニットがなかった場合において、ユーザに正常であることを示す情報を出力してもよい。また、計測データなどといった記憶部11に記憶されているデータを出力してもよい。
【0041】
また、警告対象とされたものの種類に応じて、出力内容も変えてよい。例えば、SoHまたは最大最小電圧SoHに基づいて劣化した電池ユニットを検出した場合には電池ユニットに関するアラートを出力し、SoHレシオに基づいて劣化した電池ユニットを検出した場合には、電池ユニット内のセルまたは電池サブユニットが問題であることを示すために、セルまたは電池サブユニットに関するアラートを出力してもよい。
【0042】
また、入出力部15の出力形式は、特に限られるものではなく、例えば、画像でも音声でもよい。また、劣化加速の検出の結果に応じて、出力形式を変えてもよい。例えば、推定された分類に応じて、予め記憶部11に記憶された複数のアラート画像および音声の少なくとも一つを出力してもよい。
【0043】
次に、構成要素の各処理の流れについて説明する。
図8は、本実施形態に係る情報処理装置1の全体処理の概略フローチャートである。
【0044】
データ取得部が電池ユニットに関する計測データを取得し、記憶部11に記憶する(S101)。SoH算出部131が、記憶部11に蓄積された計測データに基づき、SoHを算出する。(S102)。前述のとおり、具体的には、計測データの電圧の時系列データから、電圧値の分布の標準偏差などを算出して、対応するSoHを参照データから取得すればよい。
【0045】
また、最大最小電圧SoH算出部132は、記憶部11に蓄積された計測データに基づき、最大最小電圧SoHを算出する。最大最小電圧SoHの算出は、SoHの算出の際の電圧を、前述の通り、充電時は最大電圧を用い、放電時は最小電圧を用いて、求めればよい(S103)。
【0046】
SoHレシオ算出部133が、算出されたSoHおよび最大最小電圧SoHに基づき、SoHレシオを算出する(S104)。検出部14は、算出されたSoHレシオなどに基づき、アラートの出力に関する条件を満たす電池ユニットなどが存在するかを検索する(S105)。当該条件は、適宜に定めてよく、例えば、SoHレシオに関するものでもよいし、SoHに関するものでもよい。例えば、SoHレシオなどが、所定閾値を下回った否かでもよいし、所定範囲内であるかどうかでもよい。
【0047】
条件を満たさない場合(S106のNO)は、S101の処理に戻る。そして、データ取得部が、再度、計測データを取得して、SoHレシオの算出が行われる。条件を満たす電池ユニットなどが存在する場合(S106のYES)は、入出力部15が、アラートに関する画像、音声といった出力を出力する(S107)。そして、入出力部15が、ユーザ、他の装置、他の構成要素などから出力に対する停止信号を受け付け(S108)、入出力部15が出力を停止して、フローは終了する。
【0048】
検出と出力の具体例をさらに示す。
図9は、検出および出力の具体例を示す概略フローチャートである。本フローは、
図8に示したS105からS107の処理を、より実践的な処理として示したものである。
【0049】
まず、検出部14が算出部13によって算出された各電池ユニットのSoHおよびSoHレシオの値を確認する(S201)。算出されたSoHが閾値を下回った電池ユニットが検出された場合(S202のYES)、入出力部15が、SoHが閾値を下回った電池ユニットに対するアラートを出力する。例えば、電池ユニットの識別番号などを示して、どの電池ユニットが閾値を下回ったことを明確に示してもよい。
【0050】
一方、算出されたSoHが閾値を下回った電池ユニットが検出されなかった場合(S202のNO)は、SoHレシオが閾値を下回った電池ユニットが検出されたかどうかが確認される。算出されたSoHレシオが閾値を下回った電池ユニットが検出された場合(S204のYES)、入出力部15は、SoHレシオが閾値を下回った電池ユニット内のセルまたは電池サブユニットに対するアラートを出力する(S205)。すなわち、電池ユニット内のセルまたは電池サブユニットのいずれかが問題があることを示す。このようにして、電池ユニット全体の問題ではなく、内部のセルまたは電池サブユニットが問題であることを示してもよい。
【0051】
一方、算出されたSoHレシオが閾値を下回った電池ユニットが検出されなかった場合(S204のNO)は、警告すべき電池ユニット等がないため、入出力部15は、その旨を示す情報を出力する(S206)。なお、蓄電池、電池ユニット、電池サブユニット、およびセルの全てが正常であると示す必要はなく、正常と示す対象は、モニタリングルールなどに応じて、適宜に定めてよい。
【0052】
最大最小電圧SoHの算出の理解のため、最大最小電圧SoHの算出処理のフローも説明する。
図10は、最大最小電圧SoHの算出処理の概略フローチャートである。本フローは、
図8に示したS103の詳細を示したものである。本フローの主体は、最大最小電圧SoH算出部である。
【0053】
最大最小電圧SoH算出部は、計測データを読み込む(S301)。ここでは、計測データには、各計測時点における電圧、電流などの計測項目の値が、行(レコード)ごとに示されているとする。最大最小電圧SoH算出部は、次の計測時点におけるレコードを確認する(S302)。S302の1回目の処理では、最初の計測時点におけるレコードが確認される。
【0054】
当該レコードの電池ユニットに流れた電流が正である、つまり、電池ユニットが充電されている場合(S303のYES)は、当該時点のレコードの電池ユニットの電圧を、同レコードの各セルまたは電池サブユニットの電圧のうちの最大値に置き換えられる(S304)。当該レコードの電池ユニットに流れた電流が正でない、つまり、電池ユニットが放電されている場合(S303のNO)は、当該時点のレコードの電池ユニットの電圧を、同レコードの各セルまたは電池サブユニットの電圧のうちの最小値に置き換えられる(S305)。
【0055】
計測データ内の全時点のレコードが確認されていない場合(S306のNO)は、S302の処理に戻り、次の計測時点におけるレコードが確認される。こうして、計測データ内の全レコードに対し、S304またはS305の処理が行われる。計測データ内の全時点のレコードが確認された場合(S306のYES)は、計測データの変更が終了したため、最大最小電圧SoH算出部は、変更された計測データに基づいてSoHを算出し、算出されたSoHを最大最小電圧SoHとする(S307)。このように、電池ユニットの充放電に応じて、電池ユニットの電圧が、セルまたは電池サブユニットの最大電圧または最小電圧に置き換えられて、最大最小電圧SoHが算出される。
【0056】
なお、
図8から
図1おのフローチャートは一例であり、上記に限られるものではない。処理の順序等は限られるものではないし、一部が省略されてもよい。例えば、前述の通り、劣化加速の検出を外部の装置が行う場合は、S104の処理の後、入出力部15がSoHレシオなどを出力すればよい。また、S102とS103の処理は並列に行われてもよい。また、出力に対する停止信号を受け付けなかった場合は、出力を停止することなく、再び、S101の処理に戻ってもよい。また、
図9のフローでは、SoHおよびSoHレシオを用いたが、最大最小電圧SoHを確認して、最大最小電圧SoHに関するアラートを出力してもよい。
【0057】
以上のように、本実施形態によれば、SoHレシオを用いることにより、蓄電池2に含まれる複数の電池ユニットから、劣化がその他と比べて進行している電池ユニットを検出することができる。これにより、複数の電池ユニットの劣化の偏りが小さい場合でも、故障するリスクの高い電池ユニットを従来手法よりも早期に検出することができる。また、他の電池ユニットとSoHレシオを比較する必要はないため、電池ユニットのロットなどに起因する初期性能ばらつきも考慮しなくてすむ。
【0058】
なお、上記の実施形態の少なくとも一部は、プロセッサ、メモリなどを実装しているIC(Integrated Circuit:集積回路)などの専用の電子回路(すなわちハードウェア)により実現されてもよい。また、上記の実施形態の少なくとも一部は、ソフトウェア(プログラム)を実行することにより、実現されてもよい。例えば、汎用のコンピュータ装置を基本ハードウェアとして用い、コンピュータ装置に搭載されたCPUなどのプロセッサにプログラムを実行させることにより、上記の実施形態の処理を実現することが可能である。例えば、1台または複数台のコンピュータにより、情報処理装置1を構成することができる。
【0059】
例えば、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体に記憶された専用のソフトウェアをコンピュータが読み出すことにより、コンピュータを上記の実施形態の装置とすることができる。記憶媒体の種類は特に限定されるものではない。また、通信ネットワークを介してダウンロードされた専用のソフトウェアをコンピュータがインストールすることにより、コンピュータを上記の実施形態の装置とすることができる。こうして、ソフトウェアによる情報処理が、ハードウェア資源を用いて、具体的に実装される。
【0060】
図11は、本発明の一実施形態におけるハードウェア構成の一例を示すブロック図である。情報処理装置1は、プロセッサ31と、主記憶装置32と、補助記憶装置33と、ネットワークインタフェース34と、デバイスインタフェース35と、を備え、これらがバス36を介して接続されたコンピュータ装置3として実現できる。記憶部11は、主記憶装置32または補助記憶装置33により実現可能であり、その他の構成要素は、プロセッサ31により実現可能である。
【0061】
なお、
図11のコンピュータ装置3は、各構成要素を一つ備えているが、同じ構成要素を複数備えていてもよい。また、
図11では、1台のコンピュータ装置3が示されているが、ソフトウェアが複数のコンピュータ装置にインストールされて、当該複数のコンピュータ装置それぞれがソフトウェアの異なる一部の処理を実行してもよい。
【0062】
プロセッサ31は、コンピュータの制御装置および演算装置を含む電子回路である。プロセッサ31は、コンピュータ装置3の内部構成の各装置などから入力されたデータやプログラムに基づいて演算処理を行い、演算結果や制御信号を各装置などに出力する。具体的には、プロセッサ31は、コンピュータ装置3のOS(オペレーティングシステム)や、アプリケーションなどを実行し、コンピュータ装置3を構成する各装置を制御する。プロセッサ31は、上記の処理を行うことができれば特に限られるものではない。
【0063】
主記憶装置32は、プロセッサ31が実行する命令および各種データなどを記憶する記憶装置であり、主記憶装置32に記憶された情報がプロセッサ31により直接読み出される。補助記憶装置33は、主記憶装置32以外の記憶装置である。なお、これらの記憶装置は、電子情報を格納可能な任意の電子部品を意味するものとし、メモリでもストレージでもよい。また、メモリには、揮発性メモリと、不揮発性メモリがあるが、いずれでもよい。
【0064】
ネットワークインタフェース34は、無線または有線により、通信ネットワーク4に接続するためのインタフェースである。ネットワークインタフェース34は、既存の通信規格に適合したものを用いればよい。ネットワークインタフェース34により、通信ネットワーク4を介して通信接続された外部装置5Aと情報のやり取りが行われてもよい。
【0065】
デバイスインタフェース35は、外部装置5Bと直接接続するUSBなどのインタフェースである。外部装置5Bは、外部記憶媒体でもよいし、データベースなどのストレージ装置でもよい。
【0066】
外部装置5Aおよび5Bは、前述のシミュレータ107でもよいし、出力装置でもよいし、入力装置でもよい。出力装置は、例えば、画像を表示するための表示装置でもよいし、音声などを出力する装置などでもよい。例えば、LCD(Liquid Crystal Display)、CRT(Cathode Ray Tube)、PDP(Plasma Display Panel)、スピーカなどがあるが、これらに限られるものではない。入力装置は、キーボード、マウス、タッチパネルなどのデバイスを備え、これらのデバイスにより入力された情報をコンピュータ装置3に与える。入力装置からの信号はプロセッサ31に出力される。
【0067】
上記に、本発明の一実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、移行を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0068】
1 情報処理装置
11 記憶部
12 データ取得部
13 算出部
14 検出部
15 入出力部
2 蓄電池
21 単位電池(セル)
22 電池モジュール
23 電池盤
3 コンピュータ装置
31 プロセッサ
32 主記憶装置
33 補助記憶装置
34 ネットワークインタフェース
35 デバイスインタフェース
36 バス
4 通信ネットワーク
5(5A、5B) 外部装置