(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】直動機構およびスカラロボット
(51)【国際特許分類】
F16D 1/06 20060101AFI20221213BHJP
B25J 19/00 20060101ALI20221213BHJP
F16H 25/22 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
F16D1/06 210
B25J19/00 Z
F16H25/22 Z
(21)【出願番号】P 2022529627
(86)(22)【出願日】2022-02-18
(86)【国際出願番号】 JP2022006563
【審査請求日】2022-05-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】山口 陽平
【審査官】藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-080837(JP,A)
【文献】特開2018-130805(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 1/06
B25J 19/00
F16H 25/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の軸線に沿って延びるシャフトと、
該シャフトが貫通する空洞が設けられた構造部材と、
該構造部材に対して前記シャフトを前記軸線回りに回転可能に支持するスプラインナットおよび前記軸線方向に移動可能に支持するボールねじナットとを備え、
前記スプラインナットおよび前記ボールねじナットが、それぞれに設けられた取付フランジによって、前記構造部材を挟んだ両側から該構造部材に対して着脱可能に取り付けられ、
前記スプラインナットおよび前記ボールねじナットの少なくとも一方は、前記空洞内において自身の前記取付フランジの外径より大きい外径を有する動力伝達部材が固定されるとともに、該動力伝達部材より大きい外径を有するアダプタを介在させて前記構造部材に取り付けられ
、
前記構造部材が、前記空洞と外部とを連通させる開口部であって、前記動力伝達部材を前記軸線に沿って、通過させることができる大きさの開口部を備える直動機構。
【請求項2】
前記構造部材に着脱可能に取り付けられ、前記スプラインナットおよび前記ボールねじナットの少なくとも一方を取り囲むカバー部材を備える請求項1に記載の直動機構。
【請求項3】
前記カバー部材が、前記スプラインナットを取り囲む第1カバー部と、前記ボールねじナットを取り囲む第2カバー部とを備える請求項2に記載の直動機構。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の直動機構を備え、
前記構造部材が、水平回転可能に支持される第1アームに対して、鉛直方向に延びる第1軸線回りに回転可能に支持された第2アームであり、
前記シャフトが、前記第2アームの先端部を前記第1軸線に平行な第2軸線に沿って貫通し、
前記スプラインナットおよび前記ボールねじナットの一方が、前記第2アームの前記第1アーム側の第1表面に対して着脱可能に取り付けられ、他方が前記第2アームの前記空洞を挟んだ前記第1表面と反対側の第2表面に対して着脱可能に取り付けられているスカラロボット。
【請求項5】
前記スプラインナットに回転力を供給するスプラインナット用モータおよび前記ボールねじナットに回転力を供給するボールねじナット用モータを備え、
前記スプラインナット用モータが、前記第2アームの前記スプラインナットが取り付けられている前記第1表面あるいは前記第2表面と同一側に取り付けられ、
前記ボールねじナット用モータが、前記第2アームの前記ボールねじナットが取り付けられている前記第1表面あるいは前記第2表面と同一側に取り付けられている請求項4に記載のスカラロボット。
【請求項6】
前記スプラインナットに回転力を供給するスプラインナット用モータおよび前記ボールねじナットに回転力を供給するボールねじナット用モータを備え、
前記スプラインナット用モータおよび前記ボールねじナット用モータが、前記第2アームの前記第2表面側に取り付けられている請求項4に記載のスカラロボット。
【請求項7】
前記スプラインナット用モータおよび前記ボールねじナット用モータのいずれか一方が、前記第1表面において、前記シャフトよりも先端側に配置されている請求項5に記載のスカラロボット。
【請求項8】
前記第1アームと前記第2アームとを前記第1軸線回りに回転可能に接続する柱状の接続部を備え、
該接続部が、前記第2アームの前記第1表面側に配置される部材よりも前記第1軸線方向に大きい請求項4から請求項7のいずれかに記載のスカラロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、直動機構およびスカラロボットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
水平多関節ロボットにおいて、アームの先端部を鉛直方向に延びる軸線に沿って貫通する作業軸と、作業軸を軸線方向に移動させるボールねじナットおよび軸線回りに回転させるスプラインナットとを備える直動機構が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
このボールねじナットおよびスプラインナットは、それぞれアームの先端部の上面および下面に設けられた作業軸を貫通させる第1の穴および第3の穴を塞ぐ位置に、外側から着脱可能に取り付けられており、アームの内部に収容された従動プーリと接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の直動機構において、スプラインナットに取り付けられている従動プーリは、アームの先端部の第3の穴よりも大きいため、スプラインナットをアームの先端部から取り外す場合には、スプラインナットから従動プーリを取り外さなければならない。そのためには、アームの先端部の上面からボールねじナットを取り外し、それにより露出する第1の穴を利用して、スプラインナットに取り付けられている従動プーリを取り出す必要がある。すなわち、スプラインナットだけを交換する場合であっても、ボールねじナットを取り外さなければならず、作業が大掛かりになってしまう。
したがって、大掛かりな作業を必要とすることなく、ボールねじナットおよびスプラインナットを独立して交換できることが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、所定の軸線に沿って延びるシャフトと、該シャフトが貫通する空洞が設けられた構造部材と、該構造部材に対して前記シャフトを前記軸線回りに回転可能に支持するスプラインナットおよび前記軸線方向に移動可能に支持するボールねじナットとを備え、前記スプラインナットおよび前記ボールねじナットが、それぞれに設けられた取付フランジによって、前記構造部材を挟んだ両側から該構造部材に対して着脱可能に取り付けられ、前記スプラインナットおよび前記ボールねじナットの少なくとも一方は、前記空洞内において自身の前記取付フランジの外径より大きい外径を有する動力伝達部材が固定されるとともに、該動力伝達部材より大きい外径を有するアダプタを介在させて前記構造部材に取り付けられ、
前記構造部材が、前記空洞と外部とを連通させる開口部であって、前記動力伝達部材を前記軸線に沿って、通過させることができる大きさの開口部を備える直動機構である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本開示の一実施形態に係るスカラロボットの全体構成を示す側面図である。
【
図2】
図1のスカラロボットの第2アームおよび直動機構の一部を示す部分的な縦断面図である。
【
図3】
図2に示す直動機構からボールスプラインナットを取り外した状態の部分的な縦断面図である。
【
図4】
図1のスカラロボットにおける直動機構の第1の変形例を示す部分的な縦断面図である。
【
図5】
図1のスカラロボットにおける直動機構の第2の変形例を示す部分的な縦断面図である。
【
図6】
図1のスカラロボットの第1の変形例を示す側面図である。
【
図7】
図1のスカラロボットの第2の変形例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本開示の一実施形態に係る直動機構1およびスカラロボット100について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る直動機構1は、例えば、
図1に示されるように、天井Rに吊り下げて設置される天吊り型のスカラロボット100に備えられている。
【0008】
スカラロボット100は、ベース20と、ベース20に支持された第1アーム30と、第1アーム30に支持された第2アーム(構造部材)40とを備えている。
第1アーム30は、鉛直方向に延びるJ1軸線A回りに回転可能にベース20に支持されている。
第2アーム40は、J1軸線Aに平行なJ2軸線(第1軸線)B回りに回転可能に第1アーム30に支持されている。
【0009】
第2アーム40は、
図2に示されるように、内部に空洞Sを備える中空構造となっており、上面(第1表面)41および下面(第2表面)42には、それぞれ空洞Sと外部とを連通する開口部41a,42aが設けられている。
また、
図3に示されるように、上面41の開口部41aの周縁部には、鉛直方向に延びる複数のねじ孔41bが設けられ、下面42の開口部42aの周縁部には、鉛直方向に延びる複数のねじ孔42bが設けられている。
【0010】
また、直動機構1は、
図1から
図3に示されるように、第2アーム40の先端部を、鉛直方向に延びるJ3軸線(軸線、第2軸線)Cに沿って貫通するシャフト50と、シャフト50を駆動する駆動機構60とを備えている。
【0011】
シャフト50は、例えば、長手軸に沿って貫通する中空孔55を備えるボールねじスプラインシャフトである。
シャフト50の上端51は、
図2に示されるように、第2アーム40の開口部41aから鉛直上方に突出している。また、シャフト50の下端52は、第2アーム40の開口部42aから鉛直下方に突出しており、下端52には、ハンド等のツール(図示略)が取り付けられる取付部53が取り付けられている。
【0012】
駆動機構60は、第2アーム40に対して、開口部41aおよび開口部42aを塞ぐ位置に、それぞれ取り外し可能に取り付けられたボールねじナット70およびボールスプラインナット(スプラインナット)80を備えている。また、駆動機構60は、ボールねじナット70に回転力を供給するサーボモータ(ボールねじナット用モータ)75と、ボールスプラインナット80に回転力を供給するサーボモータ(スプラインナット用モータ)85とを備えている。さらに、駆動機構60は、各サーボモータ75,85の回転力を、それぞれボールねじナット70およびボールスプラインナット80に伝達するためのプーリ(動力伝達部材)73,83およびベルト74,84を備えている。
【0013】
ボールねじナット70は、
図3に示されるように、固定部71と、固定部71に対してJ3軸線C回りに、図示しない軸受によって回転可能に支持された可動部72とを備えている。
固定部71には、外周面から全周にわたって、径方向外方に張り出した取付フランジ71aが設けられており、取付フランジ71aには、板厚方向に貫通する複数の貫通孔71bが設けられている。取付フランジ71aを第2アーム40の上面41に密着させつつ、貫通孔71bを貫通させたボルト71cを上面41のねじ孔41bに締結することにより、ボールねじナット70が第2アーム40の上面41に固定されている。
【0014】
可動部72は、図示しない複数のボールを介在させて、内周面をシャフト50の外周面に噛み合わせている。また、可動部72の一部は、空洞S内に収容されており、プーリ73が取り付けられている。
また、
図2に示されるように、プーリ73とサーボモータ75のモータシャフトに取り付けられた駆動プーリ75aとの間には、ベルト74が掛け渡されている。サーボモータ75の回転力が、ベルト74を経由してプーリ73に伝達されることにより、可動部72が固定部71に対してJ3軸線C回りに回転し、シャフト50をJ3軸線C方向に移動させる。
【0015】
ボールスプラインナット80は、固定部81と、固定部81に対してJ3軸線C回りに、図示しない軸受によって回転可能に支持された可動部82とを備えている。
固定部81は、外周面から全周にわたって、径方向外方に張り出した取付フランジ81aを備えており、取付フランジ81aには、板厚方向に貫通する複数の貫通孔81bが設けられている。貫通孔81bを貫通させたボルト81cによって、取付フランジ81aを後述するアダプタ90に固定することにより、ボールスプラインナット80が、アダプタ90を介在させて、第2アーム40の下面42に対して着脱可能に取り付けられている。
【0016】
可動部82は、図示しない複数のボールを介在させて、内周面をシャフト50の外周面に噛み合わせている。また、
図2に示されるように、可動部82の一部は、空洞S内に収容されており、プーリ83が取り付けられている。プーリ83とサーボモータ85のモータシャフトに取り付けられた駆動プーリ85aとの間には、ベルト84が掛け渡されており、プーリ83は、駆動プーリ85aよりも十分に大きな外径を有している。そして、サーボモータ85の回転力が、ベルト84を経由してプーリ83に伝達されることにより、可動部82が固定部81に対してJ3軸線C回りに回転し、シャフト50をJ3軸線C回りに回転させる。
【0017】
アダプタ90は、
図2および
図3に示されるように、ボールスプラインナット80の固定部81が挿入される内孔91を備えた円環状の部材であって、プーリ83の外径寸法よりも大きい外径を有する取付フランジ92を備えている。
内孔91には段部91aが設けられており、段部91aには、内孔91に挿入された固定部81の複数の貫通孔81bに対応する位置に、ねじ孔91bが設けられている。内孔91に固定部81を挿入させた状態において、貫通孔81bを貫通させたボルト81cをねじ孔91bに締結することにより、アダプタ90がボールスプラインナット80に対して固定されている。
【0018】
また、取付フランジ92には、板厚方向に貫通する複数の貫通孔92bが設けられている。貫通孔92bを貫通させたボルト92cを、第2アーム40のねじ孔42bに締結することによって、アダプタ90が第2アーム40の下面42に対して、鉛直下方から着脱可能に取り付けられている。すなわち、アダプタ90は、ボールスプラインナット80を第2アーム40に取り付けるための中継部材である。
【0019】
このように構成された直動機構1およびスカラロボット100の作用について以下に説明する。
本実施形態に係るスカラロボット100によれば、ベース20に対する第1アーム30のJ1軸線A回りの回転および第1アーム30に対する第2アーム40のJ2軸線B回りの回転によって、シャフト50を所望の位置に2次元的に位置決めすることができる。
【0020】
そして、サーボモータ75を作動することにより、ボールねじナット70の可動部72をJ3軸線C回りに回転させ、第2アーム40に対してシャフト50をJ3軸線C方向に直線移動させることができる。また、サーボモータ85を作動することによって、ボールスプラインナット80の可動部82をJ3軸線C回りに回転させ、第2アーム40に対してシャフト50をJ3軸線C回りに回転させることができる。
これにより、所望の水平位置に位置決めされたシャフト50を回転および上下動させ、シャフト50の下端52の取付部53に取り付けられたツールの上下方向位置およびJ3軸線C回りの角度を調節することができる。
【0021】
この場合において、サーボモータ85により発生した回転は、駆動プーリ85aの外径よりも大きい外径のプーリ83を経由してボールスプラインナット80の可動部82に伝達されるため、サーボモータ85からの回転を減速させることができる。すなわち、減速機を用いなくても、シャフト50に作用させる回転を減速させ、シャフト50を大きなトルクで回転させることができる。また、プーリ83の外径の大きさを変更するだけで、容易にシャフト50に作用させる回転の減速比を変更することができる。
これにより、減速機を採用する場合に比べて、構成を簡素化することができ、製造コストを低く抑えることができるとともに、直動機構1の重量増加およびサイズの大型化を抑えることができる。
【0022】
次に、本実施形態に係るスカラロボット100の直動機構1の保守方法について、以下に説明する。
本実施形態に係る直動機構1において、例えば、ボールスプラインナット80の保守を行う場合には、まず、第2アーム40の下方からサーボモータ85を固定しているボルトを緩め、プーリ83と駆動プーリ85aとの間に掛け渡されたベルト84を取り外す。また、シャフト50の下端52から取付部53を取り外しておく。
【0023】
この状態において、
図3に示すように、アダプタ90を第2アーム40の下面42に固定しているボルト92cを取り外し、アダプタ90をJ3軸線Cに沿って、鉛直下方へと移動させる。これにより、アダプタ90とともに、アダプタ90に固定されているボールスプラインナット80および、ボールスプラインナット80の可動部82に固定されているプーリ83を、一体的に第2アーム40から取り外すことができる。この場合において、空洞S内に配置されているプーリ83は、下面42からアダプタ90を取り外すことによって開放された開口部42aを通過して、空洞S内から外部へと取り出される。
【0024】
その後、取り出されたボールスプラインナット80からプーリ83およびアダプタ90を取り外し、新しいボールスプラインナット80と交換する。交換した後は、上記手順と逆の手順によって、新しいボールスプラインナット80に再び、プーリ83とアダプタ90とを取り付けて、アダプタ90を第2アーム40の下面42に取り付け、元の状態に戻す。これにより、ボールスプラインナット80の保守作業が終了する。
【0025】
本実施形態によれば、ボールスプラインナット80を第2アーム40に取り付けているアダプタ90を、第2アーム40の下面42から取り外すことにより、下面42の開口部42aを大きく開放させることができる。そのため、可動部82には、サーボモータ85の回転を減速するために取付フランジ81aより外径が大きいプーリ83が取り付けられているが、プーリ83を取り外すことなく、ボールスプラインナット80を第2アーム40から下方に取り外すことができる。
【0026】
また、ボールスプラインナット80を取り外す際には、アダプタ90を第2アーム40の下面42から鉛直下方、すなわち、第2アーム40の上面41に取り付けられているボールねじナット70から離間する方向に移動させる。そのため、アダプタ90の移動経路上において、ボールねじナット70が障害となることがない。すなわち、ボールねじナット70の第2アーム40に対する取付状態を維持したまま、ボールスプラインナット80だけを第2アーム40から取り外すことができる。
【0027】
このように、本実施形態によれば、ボールスプラインナット80に入力される回転を容易に減速することができ、かつ、そのボールスプラインナット80を保守する場合の作業工数を低減することができるという利点がある。
【0028】
本実施形態においては、ボールねじナット70に固定されているプーリ73は、ボールねじナット70を第2アーム40の上面41に固定する取付フランジ71aよりも小さい外径を有するので、ボールねじナット70は上面41に直接取り付けられている。すなわち、ボールねじナット70は、アダプタ90を使用することなく、第2アーム40に取り付けられている。
【0029】
そのため、ボールねじナット70は、シャフト50とともに、ボールスプラインナット80とは独立して、第2アーム40から上方に容易に取り外すことができる。したがって、ボールねじナット70を保守する場合には、ボールスプラインナット80を取り外さずに済むという利点がある。
なお、ボールねじナット70に外径の大きなプーリ73を取り付ける場合には、ボールスプラインナット80と同様にして、ボールねじナット70についてもアダプタ90を介在させて、第2アーム40に取り付けることにしてもよい。
【0030】
この場合には、第2アーム40の上面41の開口部41aの内径を、アダプタ90の外径を超えない範囲かつ、ボールねじナット70に取り付けられる外径の大きいプーリ73が通過可能な範囲に設定すればよい。これにより、ボールねじナット70に入力される回転を容易に減速することができるとともに、ボールねじナット70の取り外しを容易に行うことができる。
【0031】
また、上述した実施形態においては、ボールねじナット70およびボールスプラインナット80のいずれか一方が、アダプタ90を介在させて第2アーム40に取り付けられていた。これに代えて、ボールねじナット70およびボールスプラインナット80の両者が、それぞれアダプタ90を介在させて第2アーム40に取り付けられていてもよい。
【0032】
また、本実施形態においては、サーボモータ75,85の両者が、第2アーム40の下面42側から取り付けられている。これに代えて、
図4に示されるように、サーボモータ75が第2アーム40の上面41側から取り付けられ、サーボモータ85が第2アーム40の下面42側から取り付けられてもよい。
【0033】
この場合においては、サーボモータ75,85が、互いに鉛直方向に対向して配置されるため、サーボモータ75とサーボモータ85とが、径方向に隣接して配置されることがない。これにより、各サーボモータ75,85の径方向の周囲には、より広いスペースを確保することができ、各サーボモータ75,85の配置の自由度が向上するとともに、組立時や保守時などの作業性を改善することができる。
また、サーボモータ75およびサーボモータ85を、それぞれボールねじナット70およびボールスプラインナット80に、より近接させて配置することが可能となるため、第2アーム40の大型化を抑えることもできる。
【0034】
また、本実施形態においては、サーボモータ75,85が、いずれも第2アーム40のシャフト50より基端側に配置されているが、これに代えて、
図5に示すように、サーボモータ75が、第2アーム40の上面41のシャフト50より先端側に配置されてもよい。
【0035】
この場合において、サーボモータ75とJ2軸線Bとの径方向の距離は、シャフト50とJ2軸線Bとの距離よりも大きい。すなわち、第2アーム40を、シャフト50が第1アーム30に接触するまで、J2軸線B回りに回転させたとしても、サーボモータ75が第1アーム30に接触することがない。したがって、サーボモータ75を第2アーム40の上面41、すなわち第1アーム30側に配置した場合であっても、サーボモータ75と第1アーム30との干渉を回避するために、第2アーム40のJ2軸線B回りの可動範囲を制限せずに済む。
【0036】
また、本実施形態においては、
図6に示されるように、スカラロボット100が、第1アーム30と第2アーム40との間に、第1アーム30と第2アーム40とをJ2軸線B回りに相対回転可能に接続する接続部35を備えてもよい。
【0037】
図6に示される形態においては、シャフト50のストローク上限における、第2アーム40から上方に突出するシャフト50の突出量よりも、接続部35のJ2軸線B方向の寸法が大きく設定されている。すなわち、シャフト50が、第1アーム30側に最も突出した状態のまま、第2アーム40がJ2軸線B回りに回転したとしても、シャフト50が第1アーム30に干渉することがない。
これにより、第2アーム40を第1アーム30に対して、J2軸線B回りに360°以上回転させることができる。
【0038】
また、例えば、サーボモータ75が第2アーム40の上面41側に取り付けられており、サーボモータ75の高さ寸法がシャフト50の上方への突出量より大きい場合には、接続部35のJ2軸線B方向の寸法は、サーボモータ75の高さ寸法より大きくすればよい。これにより、上記と同様に、第2アーム40のJ2軸線B回りの回転角度を360°以上にすることができる。
【0039】
また、本実施形態においては、
図7に示されるように、第2アーム40に着脱可能に取り付けられ、第2アーム40の空洞Sより外側に露出する直動機構1を液密状態に取り囲むカバー部材10を備えていてもよい。
例えば、カバー部材10が、第2アーム40より上方に突出するシャフト50およびボールねじナット70の一部を取り囲む第1カバー部11を備えている。同様に、カバー部材10が、第2アーム40より下方に突出するシャフト50およびボールスプラインナット80の一部と、サーボモータ75,85とを取り囲む第2カバー部12を備えている。また、第2カバー部12の下面には、シャフト50が貫通する貫通孔が設けられている。
【0040】
これにより、第2アーム40の外側に露出する直動機構1が、第1カバー部11および第2カバー部12によって、外部の塵埃や水分から保護されるため、直動機構1の保守の頻度を低減することができる。
【0041】
また、
図7に示す形態においては、ボールねじナット70を第1カバー部11が取り囲み、ボールスプラインナット80を第2カバー部12が取り囲んでいる。そのため、ボールねじナット70およびボールスプラインナット80のいずれか一方のみを保守する場合には、第1カバー部11および第2カバー部12のうち、保守対象のナットを取り囲んでいる一方のみを、第2アーム40から取り外せばよい。
【0042】
また、本実施形態においては、ボールねじナット70およびボールスプラインナット80を、それぞれ第2アーム40の上面41側および下面42側に取り付けた。これに代えて、ボールねじナット70を第2アーム40の下面42側に取り付け、ボールスプラインナット80を第2アーム40の上面41側に取り付けてもよい。
【0043】
また、本実施形態においては、スカラロボット100は、天井Rから吊り下げられる天吊り型のロボットを例示したが、床面あるいは壁面に設置されるスカラロボットであってもよい。
【符号の説明】
【0044】
1 直動機構
10 カバー部材
11 第1カバー部
12 第2カバー部
30 第1アーム
35 接続部
40 第2アーム(構造部材)
41 上面(第1表面)
42 下面(第2表面)
50 シャフト
70 ボールねじナット
71a 取付フランジ
73 プーリ(動力伝達部材)
75 サーボモータ(ボールねじナット用モータ)
80 ボールスプラインナット(スプラインナット)
81a 取付フランジ
83 プーリ(動力伝達部材)
85 サーボモータ(スプラインナット用モータ)
90 アダプタ
100 スカラロボット
B J2軸線(第1軸線)
C J3軸線(軸線、第2軸線)
S 空洞
【要約】
所定の軸線(C)に沿って延びるシャフト(50)と、シャフトが貫通する空洞(S)が設けられた構造部材(40)と、構造部材に対してシャフト(50)を軸線(C)回りに回転可能に支持するスプラインナット(80)および軸線(C)方向に移動可能に支持するボールねじナット(70)とを備え、スプラインナット(80)およびボールねじナット(70)が、それぞれに設けられた取付フランジ(81a),(71a)によって、構造部材(40)を挟んだ両側から構造部材(40)に対して着脱可能に取り付けられ、スプラインナット(80)およびボールねじナット(70)の少なくとも一方は、空洞(S)内において自身の取付フランジ(81a)の外径より大きい外径を有する動力伝達部材(83)が固定されるとともに、動力伝達部材(83)より大きい外径を有するアダプタ(90)を介在させて構造部材(40)に取り付けられている直動機構(1)である。