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特許7193682電気剥離性粘着シート、及び電気剥離性粘着シートの剥離方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】電気剥離性粘着シート、及び電気剥離性粘着シートの剥離方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/29 20180101AFI20221213BHJP
   C09J 7/28 20180101ALI20221213BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20221213BHJP
【FI】
C09J7/29
C09J7/28
C09J7/38
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022566719
(86)(22)【出願日】2022-03-15
(86)【国際出願番号】 JP2022011549
【審査請求日】2022-11-01
(31)【優先権主張番号】P 2021053317
(32)【優先日】2021-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100158481
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 俊秀
(72)【発明者】
【氏名】天野 泰之
(72)【発明者】
【氏名】川田 智史
【審査官】福山 駿
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-28388(JP,A)
【文献】特開2020-147761(JP,A)
【文献】特開2020-50846(JP,A)
【文献】特開2019-156912(JP,A)
【文献】特開2019-156914(JP,A)
【文献】国際公開第2018/230606(WO,A1)
【文献】特開2011-52056(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体、中間層、及び導電層をこの順で有する導電性基材と、当該導電性基材の前記導電層側に電気剥離性を有する第1粘着剤層が積層し、前記支持体側に第2粘着剤層が積層した電気剥離性粘着シートであって、
前記導電性基材は、当該導電性基材の面広がり方向において、前記第1粘着剤層及び前記第2粘着剤層よりも伸びて露出する延出部を実質的に有さず、
前記中間層の少なくとも一部が、導電性粘着剤層を含む構成である、電気剥離性粘着シート。
【請求項2】
前記導電性粘着剤層が、前記導電層との接触箇所と非接触箇所を有するパターン化した層である、請求項1に記載の電気剥離性粘着シート。
【請求項3】
前記中間層が、前記導電性粘着剤層と擬似接着剤層を含む構成である、請求項1又は2に記載の電気剥離性粘着シート。
【請求項4】
前記中間層の端部に、少なくとも一つの、端子を挿入可能な端子接続部を有するもしくは形成可能である、請求項1~3のいずれか一項に記載の電気剥離性粘着シート。
【請求項5】
前記端子接続部が、前記中間層の前記導電層との非接触箇所を含む空間から構成される、請求項4に記載の電気剥離性粘着シート。
【請求項6】
前記中間層の少なくとも端部の一部が、前記導電層と接触箇所を有する擬似接着剤層を含む構成であり、前記擬似接着剤層の接触箇所の少なくとも一部を前記導電層から剥離することで、前記端子接続部が形成される、請求項4に記載の電気剥離性粘着シート。
【請求項7】
第1粘着剤層を導電性被着体に貼付した際に、電圧印加装置と接続した二つの端子のうち、一方の端子を前記導電性粘着剤層の内部に差し込み、他方の端子を導電性被着体に電気的に接続し、両端子に電圧を印加することで、前記導電性被着体に対する前記第1粘着剤層の粘着力が低下する、請求項1~6のいずれか一項に記載の電気剥離性粘着シート。
【請求項8】
第1粘着剤層を導電性被着体に貼付した際に、電圧印加装置と接続した二つの端子のうち、一方の端子を、前記端子接続部を介して前記導電性粘着剤層の内部に差し込み、他方の端子を導電性被着体に電気的に接続し、両端子に電圧を印加することで、前記導電性被着体に対する前記第1粘着剤層の粘着力が低下する、請求項4~6のいずれか一項に記載の電気剥離性粘着シート。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の電気剥離性粘着シートが有する第1粘着剤層を導電性被着体に貼付した後に、当該導電性被着体から前記粘着シートを剥離する方法であって、
電圧印加装置と接続した二つの端子のうち、一方の端子を前記導電性粘着剤層の内部に差し込み、他方の端子を導電性被着体に電気的に接続し、両端子に電圧を印加することで、前記導電性被着体に対する前記第1粘着剤層の粘着力が低下させて、前記導電性被着体から前記粘着シートを剥離する、粘着シートの剥離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気剥離性粘着シート及び当該電気剥離性粘着シートの剥離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
粘着シートの特性の一つとして、例えば、仮固定用テープ、表面保護フィルム、塗装用又は装飾用マスキングテープ、再剥離可能なメモ等の用途において、再剥離性が求められる場合がある。
再剥離性粘着シートは、被着体に貼付された際に、運搬時、貯蔵時、加工時等においては被着体から剥離しない程度の粘着力が求められる一方、機能を果たし終えた後には、容易に除去し得る再剥離性が求められる。
【0003】
ところで、このような再剥離性粘着シートに用いられる粘着剤として、電圧を印加することにより粘着力が低下することができる粘着剤や粘着シートが知られている。
例えば、特許文献1には、導電層と基材層とを備える通電用基材と、導電層側に形成された電気剥離性の第1の粘着剤層と、基材層側に形成された第2の粘着剤層とを有する粘着シートであって、通電用基材が、当該粘着シートの面広がり方向において、第1の粘着剤層及び第2の粘着剤層よりも伸びて延出する延出部を有する、電気剥離性粘着シートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-156914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された電気剥離性粘着シートは、通電用基材が面方向に延出した延出部を有しているため、例えば、電子部品の仮固定用途に用いた場合、通電用基材の延出部が他の部材と接触してしまい、電子機器の誤作動及び不具合の原因ともなりかねない。
このような状況下、様々な用途で好適に使用でき、電圧印加によって粘着力を容易に低下させることができる新規な電気剥離性粘着シートが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、支持体、中間層、及び導電層をこの順で有する導電性基材と、導電性基材の導電層側に電気剥離性を有する第1粘着剤層を積層し、支持体側に第2粘着剤層を積層し、前記導電性基材は、面広がり方向において、粘着剤層よりも伸びて露出する延出部を実質的に有さず、前記中間層の少なくとも一部が、導電性粘着剤層を含む構成である電気剥離性粘着シートを提供する。
具体的には、本発明は、下記態様[1]~[9]を提供する。
[1]支持体、中間層、及び導電層をこの順で有する導電性基材と、当該導電性基材の前記導電層側に電気剥離性を有する第1粘着剤層が積層し、前記支持体側に第2粘着剤層が積層した電気剥離性粘着シートであって、
前記導電性基材は、当該導電性基材の面広がり方向において、前記第1粘着剤層及び前記第2粘着剤層よりも伸びて露出する延出部を実質的に有さず、
前記中間層の少なくとも一部が、導電性粘着剤層を含む構成である、電気剥離性粘着シート。
[2]前記導電性粘着剤層が、前記導電層との接触箇所と非接触箇所を有するパターン化した層である、上記[1]に記載の電気剥離性粘着シート。
[3]前記中間層が、前記導電性粘着剤層と擬似接着剤層を含む構成である、上記[1]又は[2]に記載の電気剥離性粘着シート。
[4]前記中間層の端部に、少なくとも一つの、端子を挿入可能な端子接続部を有するもしくは形成可能である、上記[1]~[3]のいずれか一項に記載の電気剥離性粘着シート。
[5]前記端子接続部が、前記中間層の前記導電層との非接触箇所を含む空間から構成される、上記[4]に記載の電気剥離性粘着シート。
[6]前記中間層の少なくとも端部の一部が、前記導電層と接触箇所を有する擬似接着剤層を含む構成であり、前記擬似接着剤層の接触箇所の少なくとも一部を前記導電層から剥離することで、前記端子接続部が形成される、上記[4]に記載の電気剥離性粘着シート。
[7]第1粘着剤層を導電性被着体に貼付した際に、電圧印加装置と接続した二つの端子のうち、一方の端子を前記導電性粘着剤層の内部に差し込み、他方の端子を導電性被着体に電気的に接続し、両端子に電圧を印加することで、前記導電性被着体に対する前記第1粘着剤層の粘着力が低下する、上記[1]~[6]のいずれか一項に記載の電気剥離性粘着シート。
[8]第1粘着剤層を導電性被着体に貼付した際に、電圧印加装置と接続した二つの端子のうち、一方の端子を、前記端子接続部を介して前記導電性粘着剤層の内部に差し込み、他方の端子を導電性被着体に電気的に接続し、両端子に電圧を印加することで、前記導電性被着体に対する前記第1粘着剤層の粘着力が低下する、上記[4]~[6]のいずれか一項に記載の電気剥離性粘着シート。
[9]上記[1]~[8]のいずれか一項に記載の電気剥離性粘着シートが有する第1粘着剤層を導電性被着体に貼付した後に、当該導電性被着体から前記粘着シートを剥離する方法であって、
電圧印加装置と接続した二つの端子のうち、一方の端子を前記導電性粘着剤層の内部に差し込み、他方の端子を導電性被着体に電気的に接続し、両端子に電圧を印加することで、前記導電性被着体に対する前記第1粘着剤層の粘着力が低下させて、前記導電性被着体から前記粘着シートを剥離する、粘着シートの剥離方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の好適な一態様の電気剥離性粘着シートは、取り付け空間が制限されている電子部品、建築部材、車両等の仮固定用途等の様々な用途で好適に使用でき、電圧印加によって粘着力を容易に低下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】(a)は、本発明の一態様の電気剥離性粘着シートの構成の一例を示した、粘着シート1aの厚さ方向の模式断面図であり、(b)は、(a)に示された粘着シート1aが有する導電層と中間層のみを取り出した積層構造を中間層側から観察した際の平面図である。
図2】(a)は、本発明の一態様の電気剥離性粘着シートの構成の一例を示した、粘着シート1bの厚さ方向の模式断面図であり、(b)は、(a)に示された粘着シート1bが有する導電層と中間層のみを取り出した積層構造を中間層側から観察した際の平面図である。
図3】(a)は、本発明の一態様の電気剥離性粘着シートの構成の一例を示した、粘着シート1cの厚さ方向の模式断面図であり、(b)は、(a)に示された粘着シート1cが有する導電層と中間層のみを取り出した積層構造を中間層側から観察した際の平面図である。
図4】(a)は、本発明の一態様の電気剥離性粘着シートの構成の一例を示した、粘着シート2aの厚さ方向の模式断面図であり、(b)は、(a)に示された粘着シート2aが有する導電層と中間層のみを取り出した積層構造を中間層側から観察した際の平面図である。
図5】(a)は、本発明の一態様の電気剥離性粘着シートの構成の一例を示した、粘着シート2bの厚さ方向の模式断面図であり、(b)は、(a)に示された粘着シート2bが有する導電層と中間層のみを取り出した積層構造を中間層側から観察した際の平面図である。
図6】(a)は、本発明の一態様の電気剥離性粘着シートの構成の一例を示した、粘着シート2cの厚さ方向の模式断面図であり、(b)は、(a)に示された粘着シート2cが有する導電層と中間層のみを取り出した積層構造を中間層側から観察した際の平面図である。
図7】本発明の一態様の電気剥離性粘着シートである、図1の粘着シート1aの剥離方法の一例を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書に記載された数値範囲は、上限値及び下限値を任意に組み合わせることができる。例えば、数値範囲として「好ましくは20~120、より好ましくは40~90」と記載されている場合、「20~90」との範囲や「40~120」との範囲も、本明細書に記載された数値範囲に含まれる。また、例えば、数値範囲として「好ましくは20以上、より好ましくは40以上であり、また、好ましくは120以下、より好ましくは90以下である」と記載されている場合、「20~90」との範囲や「40~120」との範囲も、本明細書に記載された数値範囲に含まれる。
加えて、本明細書に記載された数値範囲として、例えば「60~100」との記載は、「60以上、100以下」という範囲であることを意味する。
さらに、本明細書に記載された上限値及び下限値の規定において、それぞれの選択肢の中から適宜選択して、任意に組み合わせて、下限値~上限値の数値範囲を規定することができる。
また、本明細書に記載された好ましい態様として記載の各種要件は複数組み合わせることができる。
【0010】
本明細書において、例えば「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」及び「メタクリレート」の双方を示す語として用いており、他の類似用語についても同様である。
また、電気剥離性粘着剤組成物の「有効成分」とは、電気剥離性粘着剤組成物に含まれる成分のうち、水や有機溶媒の希釈溶媒を除いた成分を意味する。
【0011】
本明細書において、電気剥離性粘着シートを構成する各層の厚さは、JIS K6783、Z1702、Z1709に準拠して測定された値を意味し、例えば、定圧厚さ測定器(株式会社テクロック製、製品名「PG-02J」)を用いて測定できる。
【0012】
本明細書において、質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定されるポリスチレン換算の値であり、具体的には実施例に記載の方法に基づいて測定された値である。
【0013】
本明細書において、対象物が「導電性」であるか否かの判断は、以下の試験方法に基づいて行うことができる。
(導電性か否かを判断する試験方法)
電圧印加装置及び豆電球を直列につないだ電気回路の途中に、リード線を介して対象物を接続して電気回路を作成する。なお、リード線は、その先端を対象物の表面に接触させて被着体と接続させる。直流電源装置で2.5Vの電圧を印加して、作成した電気回路に流した際の豆電球の点灯の有無を目視で観察する。豆電球の点灯を確認した場合は、対象物を「導電性」と判断する。一方で、豆電球の点灯が確認できなかった場合は、対象物を「非導電性(絶縁性)」と判断する。
【0014】
本明細書において、対象となる粘着剤層が「電気剥離性」を有するか否かの判断は、以下の試験方法に基づいて行うことができる。
(電気剥離性か否かを判断する試験方法)
対象となる粘着剤層の一方の粘着面上にアルミニウム箔(例えば、日本金属箔工業社製、製品名「アルミタンタイSツヤ50フクオカ」、厚さ:50μm)を積層して試験シートを作製する。試験シートが有する粘着剤層の他方の粘着面を、被着体であるステンレス板(SUS304、360番研磨)に貼付し、重さ2kgのローラーを用い、1往復させて、試験シートを被着体に圧着させた後、23℃、50%RH(相対湿度)の環境下で、貼付後30分間静置したものを、測定用サンプルとする。
なお、上記測定用サンプルは2つ用意し、一方の測定用サンプルに対して、23℃、50%RH(相対湿度)の環境下で、引張試験機(例えば、オリエンテック社製、製品名「テンシロン」)を用いて、剥離速度300mm/分、剥離角度180°の条件で、測定用サンプルの試験シートを被着体から剥離した際に測定される値(単位:N/25mm)を電圧印加前の粘着力とする。
次に、他方の粘着力測定用サンプルに対して、電圧印加装置(例えば、株式会社高砂製作所製、製品名「KH-100H」)を用いて、陽極端子を試験シートのアルミニウム箔に接続し、陰極端子を被着体であるステンレス板に接続し、10Vの電圧を60秒間印加する。そして、電圧印加後、1分間放置した後、23℃、50%RH(相対湿度)の環境下で、引張試験機を用いて、剥離速度300mm/分、剥離角度180°の条件で、測定用サンプルの試験シートを剥離した際に測定される値(単位:N/25mm)を電圧印加後の粘着力とする。
電圧印加前後の粘着力の値から、下記式(i)により、粘着力減少率を算出する。
・式(i):〔粘着力減少率(%)〕=100-〔電圧印加後の試験シートの粘着力〕/〔電圧印加前の試験シートの粘着力〕×100
ここで、上記の粘着力減少率が50%以上であれば、測定対象の粘着剤層は「電気剥離性の粘着剤層」と判断する。一方で、粘着力減少率が50%未満であれば、測定対象の粘着剤層を「非電気剥離性の粘着剤層」と判断する。
【0015】
〔電気剥離性粘着シートの構成〕
本発明の電気剥離性粘着シート(以下、単に「粘着シート」ともいう)は、支持体、中間層、及び導電層をこの順で有する導電性基材と、当該導電性基材の前記導電層側に電気剥離性を有する第1粘着剤層を積層し、前記支持体側に第2粘着剤層を積層した構成を有し、下記要件(I)及び(II)を満たす構成を有する。
・要件(I):前記導電性基材は、当該導電性基材の面広がり方向において、前記第1粘着剤層及び前記第2粘着剤層よりも伸びて露出する延出部を実質的に有さない。
・要件(II):前記中間層の少なくとも一部が、導電性粘着剤層を含む構成である。
【0016】
図1~6の(a)は、本発明の一態様の粘着シートの構成の一例を示した、それぞれの粘着シートの厚さ方向の模式断面図が示されている。
図1(a)に示す粘着シート1a等のように、本発明の一態様の粘着シートは、鉛直方向z(厚さ方向)にて、支持体11、中間層12、及び導電層13をこの順で有する導電性基材10を備える。
導電性基材10は、支持体11と中間層12との層間、及び、中間層12と導電層13との層間の少なくとも一方の層間に、易接着層等の他の層を設けてもよく、他の層を設けずに、直接積層してもよい。ただし、図1~6の(a)に示されるように、支持体11、中間層12、及び導電層13がこの順で直接積層した構成であることが好ましい。
【0017】
そして、図1(a)に示す粘着シート1a等のように、本発明の一態様の粘着シートは、導電性基材10の導電層13側に第1粘着剤層21を積層し、支持体11側に第2粘着剤層22を積層した構成を有する。
第1粘着剤層21は、電気剥離性を有しており、電圧印加によって粘着力が低下し得る粘着剤層である。一方で、第2粘着剤層22は、電気剥離性を有する粘着剤層であってもよく、非電気剥離性の粘着剤層であってもよい。
【0018】
また、取扱性の観点から、図1(a)に示す粘着シート1a等のように、本発明の一態様の粘着シートは、第1粘着剤層21の粘着表面上にさらに剥離材31が積層し、第2粘着剤層22の粘着表面上にさらに剥離材32が積層した構成を有することが好ましい。
なお、2つの剥離材31、32は、剥離力に差が生じるように調整されていることが好ましい。
【0019】
本発明の粘着シートは、要件(I)のとおり、導電性基材は、当該導電性基材の面広がり方向において、第1粘着剤層及び第2粘着剤層よりも伸びて露出する延出部を実質的に有さない。
要件(I)で規定する「導電性基材の面広がり方向」とは、導電性基材を鉛直方向zから平面視した際の図1(b)のような平面図における、導電性基材の横方向x及び縦方向yの双方を指す。
要件(I)を満たす粘着シートは、図1(a)に示された粘着シート1aの鉛直方向zにおける模式断面図から、導電性基材の横方向xにおける長さが、第1粘着剤層及び第2粘着剤層の横方向xにおける長さ以下(当該長さと同じもしくは当該長さよりも短い)である。また、導電性基材の縦方向yにおける長さも、第1粘着剤層及び第2粘着剤層の横方向yにおける長さ以下(当該長さと同じ、もしくは、当該長さよりも短い)である。そのため、図1(a)の粘着シート1aの模式断面図において、導電性基材が第1粘着剤層及び第2粘着剤層よりも伸びて露出する延出部を実質的に有さない。
【0020】
上述の特許文献1に開示された電気剥離型粘着シートは、導電性基材が、導電性基材の面広がり方向において、第1粘着剤層及び第2粘着剤層よりも伸びて露出する延出部が存在する(特許文献1の図1参照)。特許文献1に開示された電気剥離型粘着シートでは、延出部は、電流を流すための端子の接続用の部位に該当する。
しかしながら、延出部が存在する電気剥離型粘着シートを電子部品、建築部材、車両等の仮固定用途に用いた場合、通電用基材の延出部が他の部材と接触してしまうことがあり、電子機器の誤作動及び不具合が生じる要因ともなる。
このような問題を回避するため、本発明の粘着シートでは、要件(I)で規定するとおり、導電性基材が第1粘着剤層及び第2粘着剤層よりも伸びて露出する延出部を実質的に有さない。
【0021】
要件(I)の「延出部を実質的に有さない」とは、所定の目的をもって延出部を設ける構成を取り入れることを否定する規定であって、製造上の問題から、導電性基材が、第1粘着剤層及び第2粘着剤層よりも、横方向x及びは縦方向yにおいてわずかにはみ出している部位が存在するような構成までを除外する規定ではない。
要件(I)に記載の「延出部」に該当するか否かの判断は、対象部位に端子を接続可能か否かで判断することができる。例えば、長さ31mm、直径3mmのワニグチクリップ端子を対象部位に接続可能か否かを確認し、接続可能であれば、当該対象部位を「延出部」と判断してもよい。
【0022】
なお、製造上の問題から、導電性基材が、第1粘着剤層及び第2粘着剤層よりも、横方向x又は縦方向yにおいてわずかにはみ出してしまう部位が存在するような構成であっても、横方向x又は縦方向yにおけて、はみ出してしまう部位の長さは短いほど好ましい。
横方向x又は縦方向yにおいて、はみ出してしまう部位の長さとしては、上記ワニグチクリップ端子が接続できない程度の長さであればよく、好ましくは5mm未満、より好ましくは2mm未満、更に好ましくは1mm未満、より更に好ましくは100μm未満、特に好ましくは10μm未満である。
【0023】
また、本発明の一態様の粘着シートは、要件(II)で規定のとおり、中間層の少なくとも一部が、導電性粘着剤層を含む構成である。
例えば、図1に示す粘着シート1aは、中間層12が導電性粘着剤層121から構成されており、当該導電性粘着剤層121の一方の表面は、導電層13の一方の表面と全面と接触しており、導電層13との非接触箇所を有していない構成である。
図1に示す粘着シート1aが有する第1粘着剤層を導電性被着体に貼付した後に、当該導電性被着体から前記粘着シートを剥離する場合、一方の端子を導電性粘着剤層121の内部に差し込み、他方の端子を導電性被着体に電気的に接続し、両端子に電圧を印加することで、導電性積層体に対する第1粘着剤層の粘着力が低下させることができる。その結果、導電性被着体から粘着シートを剥離することができる。
【0024】
図1に示す粘着シート1aとは異なる構成として、本発明の一態様の粘着シートは、中間層の少なくとも一部を構成する導電性粘着剤層が、導電層との接触箇所と非接触箇所を有するパターン化した層であってもよい。図2~6に示す粘着シート1b~1d及び2a~2bは、そのような粘着シートの構成の一例を示している。
そして、図2~6に示す粘着シート1b~1dのように、本発明の一態様の粘着シートは、中間層の端部に、少なくとも一つの、端子を挿入可能な端子接続部を有するもしくは形成可能である構成を有していてもよい。
端子接続部を有する粘着シートとすることで、端子を、端子接続部を介して、中間層の少なくとも一部を構成する導電性粘着剤層の内部に差し込む作業がより容易となる。また、端子接続部において端子が、粘着シートの支持体より上の層と導電層より下の層とで挟持された状態となるため、端子を固定することもできる。
【0025】
図2~4には、中間層12の端部に、少なくとも一つの、端子を挿入可能な端子接続部Xが既に形成されており、当該端子接続部を有する粘着シートの構成の一例を示している。図2~4に示すように、中間層12は、導電性粘着剤層121の貼付表面が接触箇所12aにて導電層13と貼付され接触し、端子接続部Xは、中間層12の導電層13との非接触箇所12bを含む空間から構成されている。
図2~4に示された粘着シート2b、2c、2dは、このような構成を有するため、端子接続部Xを有しつつ、接触箇所12aでは、導電性粘着剤層121と導電層13とが密着しているため、導電性基材10の層間密着性を良好とし、且つ、安定した導通性を確保することができる。
【0026】
本発明の一態様の粘着シートにおいて、端子接続部を有する構成である場合、端子接続部は、中間層の端部のいずれの位置に設けてもよい。
例えば、図2に示す粘着シート1bでは、中間層12の右端部に端子接続部Xを有する。粘着シート1bを被着体から剥離する際には、中間層の右端部に有する端子接続部Xに端子を挿入して、導電性粘着剤層121の内部に端子を差し込むことができる。
【0027】
本発明の一態様の粘着シートにおいて、端子接続部を有する構成である場合、端子接続部を設ける位置及び個数は特に制限はなく、用途に応じて適宜設定することができる。
図3に示す粘着シート1cは、中間層12の端部をすべて含むように、中間層12の外縁に沿って端子接続部Xが設けられた構成となっている。粘着シート1cでは、中間層12のいずれの端部においても、端子接続部Xが設けられているため、任意の位置の端部から端子を挿入し、導電性粘着剤層121の内部に端子を差し込むことができる。また、粘着シートの内側に導電性粘着剤層121と導電層13との接触箇所12aがあるため、導電性基材10の層間密着性も良好とし、且つ、安定した導通性を確保することができる。
【0028】
また、図4に示す粘着シート1dのように、中間層12は、導電層13との接触箇所12aと非接触箇所12bとが所定の繰り返しパターンで交互に存在するような構成であってもよい。粘着シート1dのような構成であれば、中間層12の端部の一部において、接触箇所12aで導電性粘着剤層121が導電層13と密着しており、その接触箇所12aが複数存在するので、端部での導電性基材10の層間密着性も良好とし、且つ、安定した導通性を確保することができる。また、粘着シート1dは、中間層12の端部の一部に複数の端子接続部Xを有するため、端子を挿入する位置を比較的自由に選択し、選択した位置から端子を挿入して、導電性粘着剤層121の内部に端子を差し込むことができる。
【0029】
また、本発明の一態様の粘着シートは、中間層の端部に、少なくとも一つの、端子を挿入可能な端子接続部を形成可能な構成を有していてもよい。
なお、本明細書でいう「端子接続部を形成可能な構成」とは、外力を加える前は端子接続部を有していないが、導電層13と中間層12との層間を剥離するような外力を加えることで、中間層12に端子接続部が形成され得る構成を意味する。
図5~6は、中間層の少なくとも端部の一部が、端子接続部を形成可能な構成を有する粘着シートの一例を示している。本態様における粘着シートでは、導電層13と中間層12との層間を剥離するような外力を加えることで、中間層の一部に端子接続部を形成可能な構成とすることが好ましい。
このような端子接続部を形成可能な中間層とするために、本発明一態様の粘着シートが有する中間層の少なくとも一部は、導電層と接触箇所を有する擬似接着剤層を含む構成であってもよい。このような構成であれば、導電層と擬似接着剤層との層間の少なくとも一部を剥離するような外力を加えることで、擬似接着剤層の導電層との接触箇所の少なくとも一部が導電層の表面から剥離し、端子接続部が形成されることとなる。
【0030】
擬似接着剤層は、わずかな力で層間剥離ができる程度に弱く接着されているが、一度、弱く接着している状態を解除して剥離した後に、再度接着しない性質を有することが好ましい。
擬似接着剤層がこのような性質を有していれば、中間層の一部が擬似接着剤層を含む構成である粘着シートは、当該粘着シートを被着体に貼付時には当該擬似接着剤層は導電層と弱く接着されており、粘着シートの層間密着性は良好に保たれている。そして、当該粘着シートを被着体から剥離する際には、まず、擬似接着剤層と導電層との層間を剥離することで、導電層との非接触箇所を含む空間が生じて、端子接続部を形成することが可能となる。
【0031】
図5に示す粘着シート2aは、中間層12が、導電性粘着剤層121と擬似接着剤層122を含む構成であり、擬似接着剤層122が中間層の少なくとも一部の端部に存在している。中間層12の一部を構成する導電性粘着剤層121が導電層13に貼付されているため、導電性基材10の層間密着性は良好となり、且つ、安定した導通性を確保することができる。また、擬似接着剤層122も、導電層13に擬似接着しているため、端子接続部を形成する前においては、導電性基材10は端部においても層間密着性が良好である。
端子接続部を形成する際には、外力を加えて、導電層13と擬似接着剤層122との少なくとも一部の界面Lで剥離することで、中間層12に端子接続部を形成することができる。粘着シート2aでは、端子接続部を形成した後においても、導電性粘着剤層121が導電層13に密着しているため、導電性基材10の層間密着性を良好のまま保持することができ、且つ、安定した導通性を確保することができる。
【0032】
図6に示す粘着シート2bが有する中間層12は、端部をすべて含むように中間層12の外縁に沿って擬似接着剤層122が設けられており、中間層12の内部には導電性粘着剤層121が設けられた構成となっている。粘着シート2bは、中間層12のいずれの端部においても、外力を加えて、導電層13と擬似接着剤層122との少なくとも一部の界面Lで剥離することで、中間層12の所望の位置に端子接続部を形成することができる。
なお、粘着シート2bは、導電層13と擬似接着剤層122との界面Lの一部で剥離すれば端子接続部を形成可能であり、界面Lのすべてを剥離する必要は無い。そのため、端子接続部を形成した後においても、端子接続部を形成した以外の箇所の擬似接着剤層122では、導電層13と擬似接着されているため、導電性基材10の端部の層間密着性を良好のまま保持することができる。
【0033】
本発明の一態様の粘着シートにおいて、中間層を平面視した際の中間層の全面積100%に対する、導電性粘着剤層が占める面積割合は、5%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、35%以上、40%以上、45%以上、50%以上、55%以上、60%以上、65%以上、又は70%以上としてもよく、また、100%以下、95%以下、90%以下、85%以下、80%以下、75%以下、70%以下、65%以下、60%以下、又は55%以下としてもよい。
【0034】
図5~6の粘着シート2a~2bにように、端子接続部を形成可能な粘着シートにおいて、中間層を平面視した際の中間層の全面積100%に対する、擬似接着剤層が占める面積割合は、0.1%以上、0.2%以上、0.3%以上、0.4%以上、0.5%以上、1.0%以上、2.0%以上、3.0%以上、4.0%以上、5.0%以上、6.0%以上、7.0%以上、又は8.0%以上としてもよく、また、80%以下、70%以下、65%以下、60%以下、55%以下、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、又は30%以下としてもよい。
【0035】
本発明の一態様において、導電層の厚さと中間層の厚さとの比〔導電層/中間層〕は、好ましくは1/99~99/1、より好ましくは3/97~97/3、更に好ましくは5/95~95/5、より更に好ましくは7/93~90/10、特に好ましくは10/90~85/15である。
【0036】
本発明の一態様において、中間層の厚さと支持体の厚さとの比〔中間層/支持体〕は、好ましくは5/95~95/5、より好ましくは6/94~94/6、更に好ましくは7/93~93/7、より更に好ましくは8/92~92/8、特に好ましくは10/90~90/10である。
【0037】
導電性基材の厚さは、好ましくは5~1000μm、より好ましくは10~500μm、更に好ましくは15~300μm、より更に好ましくは17~200μm、特に好ましくは20~150μmである。
【0038】
以下、本発明の一態様の粘着シートを構成する各層について説明する。
【0039】
<支持体>
本発明の一態様の粘着シートが有する支持体は、当該粘着シートに自己支持性及び絶縁性を付与して取扱い易い粘着シートとするための機能を有する。
本発明の一態様で用いる支持体は、例えば、樹脂基材、繊維基材、紙基材、発泡体基材等が挙げられる。
【0040】
樹脂基材を構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体等のビニル系樹脂;ポリスチレン;アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体;三酢酸セルロース;ポリカーボネート;ポリウレタン、アクリル変性ポリウレタン等のウレタン樹脂;ポリメチルペンテン;ポリスルホン;ポリエーテルエーテルケトン;ポリエーテルスルホン;ポリフェニレンスルフィド;ポリエーテルイミド、ポリイミド等のポリイミド系樹脂;ポリアミド系樹脂;アクリル樹脂;フッ素系樹脂;等が挙げられる。
これらの樹脂は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、樹脂基材は、上述の樹脂と共に、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、着色剤等の各種添加剤を含有していてもよい。
【0041】
なお、樹脂基材は、未延伸でもよいし、縦又は横等の一軸方向あるいは二軸方向に延伸されていてもよい。
また、樹脂基材は、内部に空洞を含む空洞含有層を有する樹脂フィルムであってもよい。なお、当該空洞含有層の少なくとも一方の表面側に、さらに空洞を含まない樹脂層が積層した樹脂基材としてもよい。
【0042】
繊維基材を構成する繊維としては、例えば、天然パルプ繊維、リンターパルプ等の天然繊維;ガラス繊維等の無機繊維;ポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維等の炭素繊維;アラミド繊維、フェノール繊維等の化学繊維;等が挙げられる。また、繊維基材の形態としては、不織布であってもよく、織布であってもよい。
【0043】
紙基材を構成する紙材としては、例えば、薄葉紙、中質紙、上質紙、含浸紙、コート紙、アート紙、硫酸紙、グラシン紙等が挙げられる。
【0044】
発泡体基材は、各種樹脂から構成されることが好ましく、当該樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合ポリマー、エチレン-酢酸ビニル共重合ポリマー等のポリオレフィン系樹脂;ポリウレタン系樹脂;アクリル系ゴムやその他のエラストマー等のゴム系樹脂;等が挙げられる。
【0045】
本発明の一態様で用いる支持体は、単層基材であってもよく、2層以上を積層してなる複層基材であってもよい。
複層基材としては、例えば、2種以上の樹脂フィルムを積層してなる積層樹脂フィルムや、紙基材をポリエチレン等の熱可塑性樹脂でラミネートしてなるラミネート基材等が挙げられる。
【0046】
なお、本発明の一態様で用いる支持体が、樹脂基材やラミネート基材である場合、これらの基材の表面に対して、酸化法や凹凸化法等の表面処理、あるいはプライマー処理を施してもよい。
酸化法としては、特に限定されず、例えば、コロナ放電処理法、プラズマ処理法、クロム酸酸化(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理等が挙げられる。
凹凸化法としては、特には限定されず、例えば、サンドブラスト法、溶剤処理法等が挙げられる。
【0047】
本発明の一態様で用いる支持体の厚さは、粘着シートの用途に応じて適宜設定され、例えば、1μm以上、3μm以上、5μm以上、7μm以上、10μm以上、20μm以上、30μm以上、40μm以上、又は50μm以上としてもよく、また、2000μm以下、1000μm以下、500μm以下、300μm以下、150μm以下、又は100μm以下としてもよい。
【0048】
<導電層>
本発明の一態様の粘着シートが有する導電層は、外部から挿入する端子からの電流を第1粘着剤層まで流し、第1粘着剤層の粘着力を低下させる機能を担う層である。
本発明の一態様の粘着シートが有する導電層は、導電材料から形成されていればよいが、金属材料から形成される層であることが好ましい。
導電層を形成する金属材料としては、例えば、アルミニウム、銅、タングステン、鉄、モリブデン、ニッケル、チタン、銀、金、白金等の単体金属;ステンレス鋼、炭素鋼等の鋼鉄、真鍮、リン青銅、ジルコニウム銅合金、ベリリウム銅、鉄ニッケル、ニクロム、ニッケルチタン、カンタル、ハステロイ、レニウムタングステン等の合金;スズドープ酸化インジウム等が挙げられる。
また、導電層は、導電性ポリマーから形成される層であってもよい。
【0049】
導電層の厚さは、粘着シートの用途に応じて適宜設定され、例えば、1μm以上、5μm以上、10μm以上、20μm以上、30μm以上、40μm以上、50μm以上、又は60μm以上としてもよく、また、1000μm以下、700μm以下、500μm以下、300μm以下、200μm以下、150μm以下、又は100μm以下としてもよい。
【0050】
<中間層>
本発明の一態様の粘着シートが有する中間層は、少なくとも一部に導電性粘着剤を含む構成であればよいが、さらに擬似接着剤層を含む構成であってもよい。また、非導電性粘着剤層や接着剤層を含む構成であってもよい。
【0051】
中間層の厚さは、粘着シートの用途に応じて適宜設定され、例えば、1μm以上、2μm以上、5μm以上、7μm以上、10μm以上、20μm以上、30μm以上、又は40μm以上としてもよく、また、700μm以下、500μm以下、300μm以下、200μm以下、150μm以下、又は100μm以下としてもよい。
【0052】
中間層を構成する導電性粘着剤層は、以下の導電性粘着剤組成物(xα)から形成することができ、非導電性粘着剤層は、以下の粘着剤組成物(x)から形成することができる。なお、導電性粘着剤組成物(xα)は、粘着剤組成物(x)に導電性フィラーを配合することで調製することができる。
また、中間層を構成する接着剤層は、以下の接着剤組成物(w)から形成することができる。また、中間層を構成する擬似接着剤層は、以下の擬似接着剤組成物(z)から形成することができる。
以下、粘着剤組成物(x)、導電性粘着剤組成物(xα)、接着剤組成物(w)、及び擬似接着剤組成物(z)について説明する。
【0053】
(粘着剤組成物(x))
中間層の少なくとも一部が粘着剤層を含む構成である場合、当該粘着剤層は、非電気剥離性であり、且つ、非導電性の粘着剤組成物(x)から形成することができる。
粘着剤組成物(x)は、少なくとも粘着性樹脂を含み、粘着性樹脂の種類や形成される粘着剤層に要求される特性に応じて、さらに各種添加剤を含有してもよい。
なお、後述の導電性粘着剤組成物(xα)は、粘着剤組成物(x)に、さらに導電性フィラーを配合することで調製することができる。また、後述の電気剥離性粘着剤組成物(y)は、粘着剤組成物(x)に、さらにイオン性化合物を配合することで調製することができる。
【0054】
本発明の一態様で用いる粘着性樹脂としては、粘着性を有する樹脂であればよく、例えば、アクリル系ポリマー、ウレタン系ポリマー、ゴム系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、オレフィン系ポリマー、シリコーン系ポリマー、及びこれらのポリマーに重合性官能基を有する硬化型ポリマー等が挙げられる。
これらの粘着性樹脂は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、本発明の一態様で用いる粘着性樹脂は、エマルション型ポリマーであってもよく、非エマルション型ポリマーであってもよい。
【0055】
本発明の一態様で用いる粘着性樹脂の質量平均分子量は、形成される粘着剤層の粘着力を良好とする観点から、好ましくは1万~200万、より好ましくは2万~180万、更に好ましくは3万~150万、より更に好ましくは4万~120万、特に好ましくは5万~100万である。
【0056】
粘着剤組成物(x)中の粘着性樹脂の含有量は、粘着剤組成物(x)の有効成分の全量(100質量%)に対して、好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは60質量%以上、より更に好ましくは70質量%以上、特に好ましくは80質量%以上であり、また、100質量%以下、99質量%以下、97質量%以下、又は95質量%以下としてもよい。
【0057】
粘着剤組成物(x)に含まれる各種添加剤としては、例えば、架橋剤、粘着付与剤、相溶化剤、濡れ剤、増粘剤、消泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、軟化剤(可塑剤)、充填剤、防錆剤、顔料、染料等が挙げられる。
これらの他の添加剤としては、一般的な粘着剤組成物に使用される添加剤を用いることができる。
また、各添加剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0058】
これらの各種添加剤のそれぞれの配合量は、添加剤の種類に応じて適宜設定されるが、粘着剤組成物(x)に含まれる粘着性樹脂の全量100質量部に対して、好ましくは0.01~50質量部、より好ましくは0.05~40質量部、更に好ましくは0.1~30質量部である。
【0059】
非電気剥離性の粘着剤層は、他層の表面上に、粘着剤組成物(x)を塗布して塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥させることで形成させることができる。
ここで、他層の表面上に塗布し易くし、作業性を向上させる観点から、粘着剤組成物(x)は、さらに水や有機溶媒で希釈して、溶液の形態としてもよい。
有機溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、シクロヘキサン、n-ヘキサン、トルエン、キシレン、n-プロパノール、イソプロパノール等が挙げられる。
なお、これらの有機溶媒は、粘着性樹脂の合成時に使用された有機溶媒をそのまま用いてもよいし、粘着性樹脂の合成時に使用された有機溶媒以外の1種以上の有機溶媒を加えてもよい。
【0060】
(導電性粘着剤組成物(xα))
中間層の少なくとも一部を構成する導電性粘着剤層は、上述の粘着剤組成物(x)に、導電性フィラーを配合してなる導電性粘着剤組成物(xα)から形成することで調製できる。
つまり、導電性粘着剤組成物(xα)は、上述の粘着性樹脂と、導電性フィラーとを含む組成物であり、粘着性樹脂の種類に応じて、さらにオリゴマー成分、粘着付与剤、及び架橋剤から選ばれる1種以上をさらに含むことがより好ましく、上記以外の他の添加剤を含有してもよい。
【0061】
本発明の一態様で用いる導電性粘着剤組成物(xα)の酸価は、導電層の酸化劣化を抑制し、経時によっても電気剥離性が良好で保持される粘着シートとする観点から、好ましくは5.0mgKOH/g以下であり、より好ましくは3.0mgKOH/g以下、更に好ましくは1.0mgKOH/g以下、より更に好ましくは0.5mgKOH/g以下、特に好ましくは0.1mgKOH/g以下である。
【0062】
[粘着性樹脂]
導電性粘着剤組成物(xα)に含まれる粘着性樹脂としては、上述の粘着剤組成物(x)に含まれる粘着性樹脂と同じものが挙げられ、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
粘着性樹脂の質量平均分子量(Mw)は、好ましくは1万~200万、より好ましくは2万~150万、更に好ましくは3万~100万である。
【0063】
粘着性樹脂の含有量は、当該導電性粘着性組成物(xα)の有効成分の全量(100質量%)に対して、好ましくは30~99.99質量%、より好ましくは40~99.95質量%、より好ましくは50~99.90質量%、更に好ましくは60~99.80質量%、より更に好ましくは70~99.50質量%である。
【0064】
成分(P):アクリル系ポリマー
導電性粘着剤組成物(xα)に含まれる粘着性樹脂は、少なくともアクリル系ポリマー(P)を含むことが好ましい。
粘着性樹脂中のアクリル系ポリマー(P)の含有割合は、導電性粘着性組成物(xα)に含まれる粘着性樹脂の全量(100質量%)に対して、好ましくは30~100質量%、より好ましくは50~100質量%、更に好ましくは70~100質量%、より更に好ましくは85~100質量%である。
【0065】
アクリル系ポリマー(P)は、アルキル(メタ)アクリレート(p1’)(以下、「モノマー(p1’)」ともいう)に由来する構成単位(p1)と、(メタ)アクリロイルモルホリン(以下、「モノマー(p2’)」ともいう)に由来の構成単位(p2)とを有するアクリル系共重合体が好ましく、構成単位(p1)及び(p2)と共に、さらに官能基含有モノマー(p3’)(以下、「モノマー(p3’)」ともいう)に由来する構成単位(p3)を含むアクリル系共重合体がより好ましい。
なお、上記のモノマー(p1’)~(p3’)は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、アクリル系ポリマー(P)は、上記構成単位(p1)~(p3)以外の他のモノマーに由来する構成単位を有していてもよい。
【0066】
モノマー(p1’)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられ、ブチル(メタ)アクリレート及び2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートが好ましく、ブチル(メタ)アクリレートがより好ましい。
構成単位(p1)の含有量は、アクリル系ポリマー(P)の構成単位の全量(100質量%)に対して、好ましくは50~99.5質量%、より好ましくは60~99質量%、更に好ましくは70~97質量%、より更に好ましくは80~95質量%である。
【0067】
モノマー(a2’)としては、アクリロイルモルホリンが好ましい。
構成単位(a2)の含有量は、アクリル系ポリマー(P)の構成単位の全量(100質量%)に対して、好ましくは0.5~35質量%、より好ましくは1.0~30質量%、更に好ましくは3.0~25質量%、より更に好ましくは5.0~20質量%である。
【0068】
モノマー(a3’)としては、例えば、ヒドロキシ基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、アミノ基含有物モノマー、シアノ基含有モノマー、ケト基含有モノマー等が挙げられる。
なお、本発明においては、(メタ)アクリロイルモルホリンは、モノマー(a2)に該当するものであり、当該モノマー(a3’)からは除外される。
構成単位(a3)の含有量は、アクリル系ポリマー(P)の構成単位の全量(100質量%)に対して、好ましくは0.1~30質量%、より好ましくは0.2~20質量%、更に好ましくは0.3~10質量%、より更に好ましくは0.5~5質量%である。
【0069】
また、本発明の一態様で用いるアクリル系ポリマー(P)において、カルボキシ基含有モノマーに由来する構成単位の含有量は極力少ないことが好ましく、カルボキシ基含有モノマーに由来する構成単位を含有しないことがより好ましい。
カルボキシ基含有モノマーに由来する構成単位の含有量は、アクリル系ポリマー(P)の構成単位の全量(100質量%)に対して、好ましくは2.0質量%以下、より好ましくは1.0質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下、より更に好ましくは0.0質量%である。
【0070】
[導電性フィラー]
本発明の一態様で用いる導電性フィラーとしては、例えば、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、スズ、亜鉛等の金属系フィラー;酸化亜鉛系、酸化チタン系、酸化スズ系、酸化インジウム系、酸化アンチモン系等の金属酸化物系フィラー;炭素系フィラー;等が挙げられる。
これらの導電性フィラーは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0071】
導電性フィラーの平均粒子径(平均長径)としては、好ましくは0.01~2000μm、より好ましくは0.05~1000μm、更に好ましくは0.07~500μm、より更に好ましくは0.1~100μmである。
【0072】
導電性フィラーの含有量は、導電性粘着性組成物(xα)に含まれる粘着性樹脂の全量100質量部に対して、好ましくは0.01~20質量部、より好ましくは0.05~15質量部、より好ましくは0.1~10質量部、更に好ましくは0.3~7質量部、より更に好ましくは0.5~4.5質量部、特に好ましくは0.7~3.8質量部である。
また、導電性粘着性組成物(xα)中の炭素系フィラーの含有量は、当該導電性粘着性組成物(xα)の有効成分の全量(100質量%)に対して、好ましくは0.01~20質量%、より好ましくは0.05~10質量%、更に好ましくは0.10~7質量%、より更に好ましくは0.20~5質量%、特に好ましくは0.30~3.5質量%である。
【0073】
成分(Q):炭素系フィラー
本発明の一態様で用いる導電性フィラーは、炭素系フィラー(Q)を含むことが好ましい。
炭素系フィラー(Q)の含有割合は、導電性粘着性組成物(xα)に含まれる導電性フィラーの全量(100質量%)に対して、好ましくは50~100質量%、より好ましくは70~100質量%、更に好ましくは80~100質量%、より更に好ましくは90~100質量%、特に好ましくは95~100質量%である。
【0074】
炭素系フィラー(Q)としては、炭素原子を含む導電性フィラーが挙げられ、具体的には、カーボンナノ材料、カーボンブラック、ミルド炭素繊維、黒鉛等が挙げられ、カーボンナノ材料が好ましい。
カーボンナノ材料は、六員環配列構造を主構造とするグラファイトシートを含む物質からなるものであるが、グラファイト構造中にホウ素原子や窒素原子等の炭素原子以外の原子を含有していてもよく、カーボンナノ材料が他の物質を内包している形態であってもよく、さらに、カーボンナノ材料が他の導電性物質に修飾されている形態であってもよい。
【0075】
具体的なカーボンナノ材料としては、例えば、カーボンナノチューブ(CNT)、カーボンナノファイバー、カーボンナノホーン、カーボンナノコーン、フラーレン等が挙げられ、カーボンナノチューブが好ましい。
カーボンナノチューブは、炭素6員環構造を主構造とするグラファイト(黒鉛)シートが円筒状に閉じた構造を有する筒状の炭素多面体である。
カーボンナノチューブには、1層の黒鉛シートが円筒状に閉じた構造を有する単層カーボンナノチューブと、2層の黒鉛シートが円筒状に閉じた構造を有する二層カーボンナノチューブと、黒鉛シートが3層以上同心筒状に閉じた多層構造を有する多層カーボンナノチューブとがあり、これらのうちのいずれか2種以上を併用することもできる。
【0076】
本発明の一態様で用いる炭素系フィラー(Q)の平均アスペクト比は、好ましくは3.0以上、より好ましくは5.0以上、より好ましくは10以上、更に好ましくは50以上、より更に好ましくは100以上、特に好ましくは130以上であり、また、好ましくは10000以下、より好ましくは2000以下、更に好ましくは1000以下、より更に好ましくは400以下である。
【0077】
本明細書において、「炭素系フィラーのアスペクト比」とは、対象となる炭素系フィラーの短辺の長さ(L)に対する長辺の長さ(H)の割合〔(H)/(L)〕より算出される値である。
炭素系フィラーの長辺の長さ(H)は、対象となる炭素系フィラーの長尺方向の長さを意味し、実際の測定においては、対象となる炭素系フィラーの最も離れた2地点の距離を「長辺の長さ(H)」としてもよい。
一方、炭素系フィラーの短辺の長さ(L)は、対象となる炭素系フィラーの任意の点における接線方向に対して垂直に切断したときの切断面において、当該断面が円又は楕円であれば、直径又は長径であり、当該断面が多角形であれば、当該多角形の外接円の直径を意味する。
【0078】
本発明の一態様で用いる炭素系フィラー(Q)の長辺の長さ(H)の平均としては、好ましくは0.01~2000μm、より好ましくは0.1~1000μm、更に好ましくは0.3~500μm、より更に好ましくは0.5~100μmである。
本発明の一態様で用いる炭素系フィラー(Q)の短辺の長さ(L)の平均としては、好ましくは1~1000nm、より好ましくは2~750nm、より好ましくは3~500nm、更に好ましくは5~100nm、より更に好ましくは7~50nmである。
なお、発明において、任意に選択した10個の炭素系フィラーの「長辺の長さ(H)」、「短辺の長さ(L)」及び「アスペクト比」をそれぞれ測定し、これらの平均値を、それぞれ「長辺の長さ(H)の平均」、「短辺の長さ(L)の平均」、及び「平均アスペクト比」とみなすこともできる。
【0079】
本発明の一態様で用いる炭素系フィラー(Q)の形状としては、粘着剤層中にて炭素系フィラーを均一に分散し得るような形状であれば特に制限はないが、柱状、筒状、錘状、繊維状、及びこれらを組み合わせた形状が好ましく、柱状、筒状、繊維状、及びこれらを組み合わせた形状がより好ましい。
なお、本発明の一態様で用いる炭素系フィラー(Q)は、上記観点から、毛糸のような、複数の単糸が絡み合ってなる繊維状物によって形成された形状を有する炭素系フィラーが好ましく、複数の単糸が絡み合ってなる繊維状物によって形成された筒状の炭素系フィラーがより好ましい。
【0080】
[オリゴマー成分]
本発明の一態様で用いる導電性粘着剤組成物(xα)に含まれるオリゴマー成分は、粘着性樹脂の柔軟性や相溶性を向上させる目的で添加される、質量平均分子量が10000未満のオリゴマーである。
オリゴマー成分の質量平均分子量としては、好ましくは10000未満、より好ましくは1000~8000、更に好ましくは5000~7000である。
【0081】
オリゴマー成分としては、粘着性樹脂の種類に応じて適宜選択され、例えば、アクリル系オリゴマー、ウレタン系オリゴマー、ポリイソブチレン系オリゴマー、ポリエステル系オリゴマー、及びポリオレフィン系オリゴマー等が挙げられる。
これらのオリゴマー成分は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
なお、本発明の一態様においては、粘着性樹脂と同じ種類(系統)のオリゴマーを含むことが好ましい。
【0082】
オリゴマー成分の含有量は、導電性粘着剤組成物(xα)に含まれる粘着性樹脂100質量部に対して、好ましくは0.5~40質量部、より好ましくは1.0~30質量部、より好ましくは1.5~20質量部、更に好ましくは2.0~10質量部、より更に好ましくは2.5~7.5質量部である。
【0083】
[粘着付与剤]
本発明の一態様で用いる導電性粘着剤組成物(xα)は、さらに粘着付与剤を含有してもよい。
粘着付与剤としては、ロジン樹脂、ロジンフェノール樹脂、及びそのエステル化合物等のロジン系樹脂;これらロジン系樹脂を水素化した水素化ロジン系樹脂;テルペン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、芳香族変性テルペン系樹脂等のテルペン系樹脂;これらテルペン系樹脂を水素化した水素化テルペン系樹脂;石油ナフサの熱分解で生成するペンテン、イソプレン、ピペリン、1.3-ペンタジエン等のC5留分を共重合して得られるC5系石油樹脂及びこのC5系石油樹脂の水素化石油樹脂;石油ナフサの熱分解で生成するインデン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン、β-メチルスチレン等のC9留分を共重合して得られるC9系石油樹脂及びこのC9系石油樹脂の水素化石油樹脂;等が挙げられる。
これらの粘着付与剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0084】
粘着付与剤の軟化点は、粘着力の向上の観点から、好ましくは60~170℃、より好ましくは75~150℃、更に好ましくは85~140℃、より更に好ましくは90~135℃である。
なお、粘着付与剤の軟化点の値は、JIS K2531に準拠して測定した値である。
【0085】
粘着付与剤の含有量は、導電性粘着剤組成物(xα)に含まれる粘着性樹脂100質量部に対して、好ましくは1~50質量部、より好ましくは1.5~40質量部、更に好ましくは2~30質量部、より更に好ましくは3~20質量部である。
【0086】
[架橋剤]
本発明の一態様で用いる導電性粘着剤組成物(xα)は、さらに架橋剤を含有してもよい。特に、粘着性樹脂が上述のアクリル系ポリマー(P)を含む場合には、形成される導電性粘着剤層の粘着力を向上させる観点から、架橋剤を含有することが好ましい。
【0087】
架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、キレート系架橋剤等が挙げられ、これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
架橋剤の含有量は、導電性粘着剤組成物(xα)に含まれる粘着性樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01~15質量部、より好ましくは0.05~10質量部、更に好ましくは0.1~7.0質量部、より更に好ましくは0.2~4.0質量部である。
【0088】
[その他の添加剤]
本発明の一態様で用いる導電性粘着剤組成物(xα)は、本発明の効果を損なわない範囲において、さらに他の添加剤を含有してもよい。
他の添加剤としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、硬化促進剤(触媒)、光安定剤、樹脂安定剤、充填剤、顔料、増量剤、赤外線吸収剤、近赤外線吸収剤、防腐・防かび剤、防錆剤、可塑剤、高沸点溶剤等が挙げられる。
これらの添加剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0089】
(接着剤組成物(w))
中間層の少なくとも一部が接着剤層を含む構成である場合、当該接着剤層は、重合体成分及び必要に応じて各種添加剤を含有する接着剤組成物(w)から形成することができる。
【0090】
重合体成分としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリルウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、ゴム系樹脂、フェノキシ系樹脂、熱硬化性ポリイミド等が挙げられる。
これらの重合体成分は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0091】
各種添加剤としては、充填材が挙げられる。充填材は、有機充填材及び無機充填材のいずれでもよいが、無機充填材であることが好ましい。
無機充填材としては、例えば、シリカ、アルミナ、タルク、炭酸カルシウム、チタンホワイト、ベンガラ、炭化ケイ素、窒化ホウ素等の粉末;これら無機充填材を球形化したビーズ;これら無機充填材の表面改質品;これら無機充填材の単結晶繊維;ガラス繊維等が挙げられる。
【0092】
(擬似接着剤組成物(z))
中間層の少なくとも一部が擬似接着剤層を含む構成である場合、当該擬似接着剤層は、擬似接着剤組成物(z)から形成することができる。
擬似接着剤組成物(z)は、ブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、スチレン、ヒドロキシ基含有モノマー、及びカルボキシ基含有モノマーに由来する構成単位を有するアクリル系共重合体と、架橋剤とを含有する組成物であることが好ましい。
【0093】
なお、前記水酸基含有モノマー及び前記カルボキシ基含有モノマーとしては、後述の粘着剤組成物(y)に含まれるアクリル系ポリマー(A)を、モノマー(a2’)として構成し得る、ヒドロキシ基含有モノマー及びカルボキシ基含有モノマーとして例示されたモノマーと同じものが挙げられる。
【0094】
前記アクリル系共重合体を構成する構成単位の全量(100質量%)に対する、上記モノマーに由来する構成単位の含有量は、以下に示す範囲内で調整することが好ましい。
・ブチル(メタ)アクリレートに由来する構成単位:好ましくは40~80質量%、より好ましくは40~65質量%。
・メチル(メタ)アクリレートに由来する構成単位:好ましくは1~30質量%、より好ましくは3~15質量%。
・スチレンに由来する構成単位:好ましくは1~15質量%、より好ましくは1~10質量%。
・ヒドロキシ基含有モノマーに由来する構成単位:好ましくは1~10質量%、より好ましくは1~5質量%。
・カルボキシ基含有モノマーに由来する構成単位:好ましくは0.1~1質量%、より好ましくは0.1~0.5質量%。
【0095】
前記アクリル系共重合体は、上記以外のモノマーに由来する構成単位を有していてもよい。また、前記アクリル系共重合体の共重合形態については特に制限はなく、ランダム共重合体、ブロック共重合体、及びグラフト共重合体のいずれであってもよい。
前記アクリル系共重合体の質量平均分子量は、好ましくは10万~200万、より好ましくは20万~170万、更に好ましくは30万~150万、特に好ましくは50万~120万である。
前記アクリル系共重合体は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0096】
前記架橋剤としては、粘着剤組成物(x)で用いられるものと同じもの使用できるが、イソシアネート系架橋剤及びキレート系架橋剤を含むことが好ましく、少なくともイソシアネート系架橋剤を含むことがより好ましく、イソシアネート系架橋剤及びキレート系架橋剤を併用することが更に好ましい。
擬似接着剤組成物(z)における架橋剤の含有量は、擬似接着剤組成物(z)に含まれる前記アクリル系共重合体100質量部に対して、好ましくは0.01~30質量部、より好ましくは0.1~20質量部、更に好ましくは0.5~10質量部である。
【0097】
擬似接着剤組成物(z)は、本発明の目的が損なわれない範囲で、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、軟化剤、充填剤、架橋促進剤等の各種添加剤を含有してもよい。
【0098】
<第1粘着剤層>
本発明の一態様の粘着シートが有する第1粘着剤層は、電気剥離性を有する粘着剤層であればよい。なお、電気剥離性を有する粘着剤層とは、電圧印加によって粘着力が低下する粘着剤層を意味する。
本発明の一態様の粘着シートにおいて、被着体に貼付して、10V、60秒間の電圧を印加した際の、電圧印加前後における下記式(i)
・式(i):〔粘着力減少率(%)〕=100-〔電圧印加後の試験シートの粘着力〕/〔電圧印加前の試験シートの粘着力〕×100
から算出される粘着力減少率は、好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上、更に好ましくは80%以上、より更に好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上である。
【0099】
第1粘着剤層の厚さは、用途等に応じて適宜調整されるが、好ましくは0.5~120μm、より好ましくは1~100μm、更に好ましくは5~80μm、より更に好ましくは7~70μm、特に好ましくは10~60μmである。
【0100】
第1粘着剤層の形成材料としては、電気剥離性を有する粘着剤層を形成し得るものであればよいが、以下に示す電気剥離性粘着剤組成物(y)(以下、「粘着剤組成物(y)」ともいう)が好ましい。
【0101】
(電気剥離性粘着剤組成物(y))
粘着剤組成物(y)は、上述の粘着剤組成物(x)に、後述するイオン性化合物(B)(以下、「成分(B)」ともいう)を配合することで調製することができる。
また、粘着剤組成物(y)は、イオン性化合物(B)と共に、粘着性樹脂として、アクリル系ポリマー(A)(以下、「成分(A)」ともいう)を配合してなる組成物であることが好ましい。
なお、本明細書において、例えば、「成分(A)及び成分(B)を配合してなる組成物」とは、当該組成物の原料として、成分(A)及び成分(B)を用いている旨を意味する。そのため、例えば、成分(B)がアルカリ金属塩である場合には、当該アルカリ金属塩が粘着剤組成物中にてカチオンとアニオンに電離した態様等も含まれる。
【0102】
本発明の一態様で用いる粘着剤組成物(y)において、電圧印加前は高粘着性を有すると共に、電圧印加によって容易に粘着性を低下させ得る粘着剤組成物とする観点から、成分(A)及び成分(B)の合計配合量は、当該粘着剤組成物(y)の有効成分の全量(100質量%)に対して、好ましくは60~100質量%、より好ましくは70~100質量%、更に好ましくは80~100質量%、より更に好ましくは90~100質量%、特に好ましくは95~100質量%である。
【0103】
本発明の一態様で用いる粘着剤組成物(y)は、さらに架橋剤(C)を配合又は含有することが好ましい。
また、本発明の一態様で用いる粘着剤組成物(y)は、各種添加剤を配合又は含有してもよく、また、さらに水や有機溶媒で希釈して、溶液の形態としてもよい。
各種添加剤の種類及び含有量(配合量)、並びに、有機溶媒の種類については、上述の粘着剤組成物(x)の記載と同じである。
【0104】
(A)成分:アクリル系ポリマー
本発明の一態様で用いるアクリル系ポリマー(A)は、アルキル(メタ)アクリレート(以下、「モノマー(a1’)」ともいう)に由来する構成単位(a1)を有する粘着性樹脂であればよいが、電圧印加前は高粘着性を有すると共に、電圧印加によって容易に粘着性を低下させ得る粘着剤組成物とする観点から、構成単位(a1)と共に、官能基含有モノマー(以下、「モノマー(a2’)」ともいう)に由来する構成単位(a2)を有する共重合体であることが好ましい。
【0105】
アクリル系ポリマー(A)が共重合体である場合、共重合の形態については、特に制限はなく、ランダム共重合体、ブロック共重合体、及びグラフト共重合体のいずれであってもよい。
本発明の一態様で用いるアクリル系ポリマー(A)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0106】
アクリル系ポリマー(A)の質量平均分子量は、電圧印加前において高粘着性を有する粘着剤組成物とする観点から、好ましくは5万~200万、より好ましくは10万~150万、更に好ましくは20万~120万、より更に好ましくは30万~100万、特に好ましくは40万~90万である。
【0107】
本発明の一態様で用いるアクリル系ポリマー(A)は、モノマー(a1’)及び(a2’)以外の他のモノマー(以下、「モノマー(a3’)」ともいう)に由来する構成単位(a3)を有する共重合体であってもよい。
【0108】
なお、本発明の一態様で用いるアクリル系ポリマー(A)において、構成単位(a1)及び(a2)の含有割合としては、アクリル系ポリマー(A)の構成単位の全量(100質量%)に対して、55質量%以上、60質量%以上、65質量%以上、70質量%以上、75質量%以上、80質量%以上、85質量%以上、90質量%以上、又は95質量%以上としてもよく、また、100質量%以下、99質量%以下、95質量%以下、90質量%以下、又は85質量%以下としてもよい。
【0109】
[モノマー(a1’)、構成単位(a1)]
モノマー(a1’)が有するアルキル基の炭素数としては、好ましくは1~30、より好ましくは1~20、更に好ましくは1~16、より更に好ましくは1~12、特に好ましくは4~8である。
なお、モノマー(a1’)が有するアルキル基は、直鎖アルキル基であってもよく、分岐鎖アルキル基であってもよい。
【0110】
具体的なモノマー(a1’)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート(n-プロピル(メタ)アクリレート、i-プロピル(メタ)アクリレート)、ブチル(メタ)アクリレート(n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、s-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート)、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらのモノマー(a1’)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、モノマー(a1’)としては、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、及び2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種が好ましく、ブチル(メタ)アクリレート又は2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートがより好ましく、ブチル(メタ)アクリレートが更に好ましい。
【0111】
本発明の一態様で用いるアクリル系ポリマー(A)において、構成単位(a1)の含有割合としては、アクリル系ポリマー(A)の構成単位の全量(100質量%)に対して、電圧印加前の粘着性をより良好とし、上述の構成単位(a2)の含有割合を確保し、凝集力をより向上させ得る粘着剤組成物とする観点から、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは50質量%以上、より更に好ましくは60質量%以上、特に好ましくは70質量%以上であり、また、好ましくは99.99質量%以下、より好ましくは99.90質量%以下、更に好ましくは99.0質量%以下、より更に好ましくは97.0質量%以下、特に好ましくは95.0質量%以下であり、さらに、90.0質量%以下、又は85質量%以下としてもよい。
【0112】
[モノマー(a2’)、構成単位(a2)]
モノマー(a2’)としては、例えば、ヒドロキシ基含有モノマー、カルボキシ基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー等が挙げられる。
これらのモノマー(a2’)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0113】
ヒドロキシ基含有モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;ビニルアルコール、アリルアルコール等の不飽和アルコール類等が挙げられる。
なお、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類が有するアルキル基の炭素数としては、好ましくは1~10、より好ましくは1~8、更に好ましくは1~6、より更に好ましくは2~4であり、当該アルキル基は、直鎖アルキル基であってもよく、分岐鎖アルキル基であってもよい。
【0114】
カルボキシ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸等のエチレン性不飽和モノカルボン酸;フマル酸、イタコン酸、マレイン酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和ジカルボン酸;2-カルボキシルエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0115】
エポキシ基含有モノマーとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、β-メチルグリシジル(メタ)アクリレート、(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート、3-エポキシシクロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル;グリシジルクロトネート、アリルグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0116】
これらの中でも、本発明の一態様で用いるアクリル系ポリマー(A)は、構成単位(a2)として、カルボキシ基含有モノマーに由来する構成単位(a2-1)を有する共重合体であることが好ましい。
【0117】
上記観点から、本発明の一態様で用いるアクリル系ポリマー(A)において、構成単位(a2-1)の含有割合としては、アクリル系ポリマー(A)が有する構成単位(a2)の全量(100質量%)に対して、好ましくは60~100質量%、より好ましくは70~100質量%、更に好ましくは80~100質量%、より更に好ましくは90~100質量%、特に好ましくは95~100質量%である。
【0118】
本発明の一態様で用いるアクリル系ポリマー(A)において、構成単位(a2)の含有割合としては、アクリル系ポリマー(A)の構成単位の全量(100質量%)に対して、凝集力をより向上させつつ、構成単位(a1)の含有量を確保し、電圧印加前の粘着性をより良好とした粘着剤組成物とする観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.10質量%以上、更に好ましくは1.0質量%以上、より更に好ましくは3.0質量%以上、特に好ましくは5.0質量%以上であり、さらに、10.0質量%以上、又は15質量%以上としてもよく、また、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは40質量%以下、より更に好ましくは30質量%以下、特に好ましくは20質量%以下である。
【0119】
[モノマー(a3’)、構成単位(a3)]
モノマー(a1’)及び(a2’)以外のモノマー(a3’)としては、特に制限は無いが、例えば、エチレン、プロピレン、イソブチレン等のオレフィン類、塩化ビニル、ビニリデンクロリド等のハロゲン化オレフィン類、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等のジエン系モノマー類、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリロイルモルホリン、N-ビニルピロリドン等が挙げられる。
これらのモノマー(a3’)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0120】
本発明の一態様で用いるアクリル系ポリマー(A)において、構成単位(a3)の含有割合としては、アクリル系ポリマー(A)の構成単位の全量(100質量%)に対して、0質量%以上、1質量%以上、5質量%以上、10質量%以上、又は15質量%としてもよく、また、45質量%以下、40質量%以下、35質量%以下、30質量%以下、25質量%以下、20質量%以下、15質量%以下、10質量%以下、又は5質量%以下としてもよい。
【0121】
本発明の一態様で用いる粘着剤組成物において、電圧印加前は高粘着性を有すると共に、電圧印加によって容易に粘着性を低下させ得る粘着剤組成物とする観点から、成分(A)の配合量(含有量)は、当該粘着剤組成物の有効成分の全量(100質量%)に対して、好ましくは25~97質量%、より好ましくは30~95質量%、更に好ましくは40~93質量%、より更に好ましくは50~90質量%、特に好ましくは60~87質量%である。
【0122】
成分(B):イオン性化合物
本発明の一態様で用いるイオン性化合物(B)としては、例えば、アルカリ金属塩(B1)、有機第四級アンモニウム塩(B2)、及びイオン液体(B3)から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0123】
これらの中でも、本発明の一態様で用いる成分(B)は、アルカリ金属塩(B1)及びイオン液体(B3)から選ばれる1種以上を含むことが好ましい。
また、本発明の一態様で用いる成分(B)は、主成分としてアルカリ金属塩(B1)又はイオン液体(B3)を用いることが好ましい。
なお、本明細書において、上記「主成分」とは、成分(B)を構成する成分のうち、最も含有量が多い成分を意味する。
【0124】
成分(B)の主成分がアルカリ金属塩(B1)である場合、アルカリ金属塩(B1)以外の成分(B)の含有量は、アルカリ金属塩(B1)の全量100質量部に対して、100質量部未満、0~90質量部、0~50質量部、0~30質量部、0~20質量部、0~10質量部、0~5質量部、0~1質量部、0~0.1質量部、0~0.01質量部、0~0.001質量部、又は0~0.0001質量部であってもよい。
【0125】
成分(B)の主成分がイオン液体(B3)である場合、イオン液体(B3)以外の成分(B)の含有量は、イオン液体(B3)の全量100質量部に対して、100質量部未満、0~90質量部、0~50質量部、0~30質量部、0~20質量部、0~10質量部、0~5質量部、0~1質量部、0~0.1質量部、0~0.01質量部、0~0.001質量部、又は0~0.0001質量部であってもよい。
【0126】
本発明で用いる粘着剤組成物において、粘着性樹脂(成分(A))の全量100質量部に対する、成分(B)の配合割合は、電圧印加によって容易に粘着性を低下させ得る粘着剤組成物とする観点から、好ましくは3質量部以上、より好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上、更に好ましくは13質量部以上、更に好ましくは15質量部超、より更に好ましくは16質量部以上、特に好ましくは18質量部以上であり、また、電圧印加前において高粘着性を有する粘着剤組成物とする観点から、好ましくは200質量部以下、より好ましくは180質量部以下、更に好ましくは160質量部以下、更に好ましくは150質量部以下、より更に好ましくは130質量部以下、特に好ましくは120質量部以下であり、さらに、100質量部以下、90質量部以下、80質量部以下、70質量部以下、60質量部以下、50質量部以下、45質量部以下、40質量部以下、35質量部以下、又は30質量部以下としてもよい。
【0127】
≪成分(B1):アルカリ金属塩≫
本発明の一態様で用いるアルカリ金属塩(B1)としては、常温(25℃)では固体であるが、液体中でカチオン(アルカリ金属イオン)とアニオンとに電離する化合物であればよい。
具体的なアルカリ金属塩(B1)としては、例えば、MCl、MBr、MI、MAlCl、MAlCl、MBF、MPF、MSCN、MClO、MNO、CHCOOM、C19COOM、CFCOOM、CCOOM、MCHSO、MCFSO、MCSO、MCOSO、MC13OSO、MC17OSO、M(CFSON、M(CSON、M(CSON、M(CSON、M(CFSOC、MAsF、MSbF、MNbF、MTaF、M(CN)N、M(CFSO)(CFCO)N、M(CHPO、M(CPO、MCH(OCOSO、MC(CH)SO、M(CPF、CHCH(OH)COOM、M(FSON等(ただし、Mは、アルカリ金属原子である)が挙げられる。Mは、Li、Na、又はKが好ましく、Na又はKがより好ましく、Naが更に好ましい。
これらのアルカリ金属塩(B1)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0128】
これらの中でも、本発明の一態様で成分(B)として用いるアルカリ金属塩(B1)は、下記一般式(b-1)で表されるアルカリ金属塩(B11)を含有することが好ましい。
【化1】
【0129】
上記式(b-1)中、Rは、それぞれ独立に、フッ素原子、又はフッ素化アルキル基である。フッ素化アルキル基の炭素数としては、好ましくは1~10、より好ましくは1~8、更に好ましくは1~4、より更に好ましくは1~3、特に好ましくは1~2である。本明細書において、「フッ素化アルキル基」とは、アルキル基が有する少なくとも一つの水素原子が、フッ素原子に置換された基を意味し、直鎖であってもよく、分岐鎖であってもよい。
フッ素化アルキル基の中でも、アルキル基が有するすべての水素原子がフッ素原子に置換された、パーフルオロアルキル基が好ましい。パーフルオロアルキル基の炭素数の好適な範囲は、上記のフッ素化アルキル基の炭素数の好適範囲と同じである。
本発明の一態様においては、Rは、フッ素原子、又はパーフルオロアルキル基であることが好ましく、フッ素原子、-CF、-C、-C、又は-Cであることがより好ましく、フッ素原子又は-CFであることが更に好ましい。
【0130】
Mは、アルカリ金属原子(リチウム原子(Li)、ナトリウム原子(Na)、カリウム原子(K)、ルビジウム原子(Rb)、セシウム原子(Cs)、フランシウム原子(Fr))であるが、Li、Na又はKであることが好ましく、Na又はKであることがより好ましく、Naであることが更に好ましい。
【0131】
≪成分(B2):有機第四級アンモニウム塩≫
本発明の一態様で用いる有機第四級アンモニウム塩(B2)としては、常温(25℃)では固体であり、下記一般式(b-2)で表される化合物であればよい。
なお、有機第四級アンモニウム塩(B2)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【化2】
【0132】
上記一般式(b-2)中、R11~R14は、それぞれ独立して、炭素数1~4のアルキル基である。Xは、F、Cl、Br、I、ClO、BF、PF、又は[(R15N]SO(R15は、それぞれ独立して、炭素数1~4のアルキル基)である。
【0133】
具体的な有機第四級アンモニウム塩(B2)としては、例えば、テトラブチル、テトラプロピル、テトラエチル、テトラメチル、トリエチルブチル、トリエチルプロピル、トリエチルメチル等のアンモニウムブロミド又はアンモニウムクロリド;テトラブチル、テトラプロピル、テトラエチル、テトラメチル、トリエチルブチル、トリエチルプロピル、トリエチルメチル等のアンモニウムテトラフルオロボレート;テトラブチル、テトラプロピル、テトラエチル、テトラメチル、トリエチルブチル、トリエチルプロピル、トリエチルメチル等のアンモニウムヘキサフルオロフォスフェート;テトラブチル、テトラプロピル、テトラエチル、テトラメチル、トリエチルブチル、トリエチルプロピル、トリエチルメチル等のアンモニウムパークロレート;テトラブチル、テトラプロピル、テトラエチル、テトラメチル、トリエチルブチル、トリエチルプロピル、トリエチルメチル等のアンモニウムサルフェート;等が挙げられる。
【0134】
≪成分(B3):イオン液体≫
本発明の一態様で用いるイオン液体(B3)としては、常温(25℃)で液体である溶融塩であって、有機カチオンとその対イオンであるアニオンとから構成される化合物であればよい。
イオン液体(B3)を構成する有機カチオンとしては、例えば、下記一般式(b-3-i)~(b-3-viii)のいずれかで表されるカチオンが挙げられる。これらの中でも、イオン液体(B3)を構成する有機カチオンは、下記一般式(b-3-ii)で表されるカチオンが好ましい。
【化3】
【0135】
上記式(b-3-i)~(b-3-iv)中、Rは、それぞれ独立して、炭素数1~20のアルキル基、又は炭素数1~20のアルケニル基である。
また、上記式(b-3-v)~(b-3-viii)中、Rは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、-(CO)-Rで表される基(nは1~20の整数、Rは炭素数1~20のアルキル基)、又はアミノ基である。
【0136】
、R及びRとして選択し得る、前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基(n-プロピル基、i-プロピル基)、ブチル基(n-ブチル基、i-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基)、ペンチル基(n-ペンチル基、i-ペンチル基、ネオペンチル基)、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基等が挙げられる。
当該アルキル基は、直鎖アルキル基であってもよく、分岐鎖アルキル基であってもよい。
【0137】
及びRとして選択し得る、前記アルケニル基としては、例えば、エテニル基(ビニル基)、プロぺニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、オクタデセニル基等が挙げられる。
当該アルケニル基は、直鎖アルケニル基であってもよく、分岐鎖アルケニル基であってもよい。
【0138】
なお、前記一般式(b-3-i)~(b-3-ii)のいずれかで表されるカチオンの炭素原子と結合している少なくとも一つの水素原子は、炭素数1~20のアルキル基に置換されていてもよい。具体的な当該アルキル基としては、上述のとおりである。
【0139】
前記一般式(b-3-i)で表されるカチオン、及び、当該カチオンの少なくとも一つの水素原子が前記アルキル基で置換されたカチオンとしては、例えば、下記式(b-3-i-1)~(b-3-i-11)のいずれかで表されるカチオンが挙げられる。
【化4】
【0140】
前記一般式(b-3-ii)で表されるカチオン、及び、当該カチオンの少なくとも一つの水素原子が前記アルキル基で置換されたカチオンとしては、例えば、下記式(b-3-ii-1)~(b-3-ii-26)のいずれかで表されるカチオンが挙げられ、下記式(b-3-ii-1)~(b-3-ii-15)のいずれかで表されるカチオンが好ましく、下記式(b-3-ii-1)~(b-3-ii-3)及び(b-3-ii-9)~(b-3-ii-10)のいずれかで表されるカチオンがより好ましく、下記式(b-3-ii-1)~(b-3-ii-3)のいずれかで表されるカチオンが更に好ましく、下記式(b-3-ii-2)で表されるカチオンがより更に好ましい。
【化5】
【0141】
前記一般式(b-3-iii)で表されるカチオンとしては、例えば、下記式(b-3-iii-1)~(b-3-iii-6)のいずれかで表されるカチオンが挙げられる。
【化6】
【0142】
前記一般式(b-3-iv)で表されるカチオンとしては、例えば、下記式(b-3-iv-1)~(b-3-iv-6)のいずれかで表されるカチオンが挙げられる。
【化7】
【0143】
前記一般式(b-3-v)~(b-3-viii)のいずれかで表されるカチオンとしては、例えば、下記式のいずれかで表されるカチオンが挙げられる。
【化8】
【0144】
イオン液体(B3)を構成するアニオンとしては、例えば、Cl、Br、I、AlCl 、AlCl 、BF 、PF 、SCN、ClO 、NO 、CHCOO、CFCOO、CHSO 、CFSO 、CSO 、(CFSO、(CSO、(CSO、(CSO、(CFSO、AsF 、SbF 、NbF 、TaF 、(CN)、CSO 、(CSO、CCOO、(CFSO)(CFCO)N、C19COO、(CHPO 、(CPO 、CHOSO 、COSO 、COSO 、C13OSO 、C17OSO 、CH(OCOSO 、C(CH)SO 、(CPF 、CHCH(OH)COO、(FSO、B(CN) 、C(CN) 、N(CN) 、p-トルエンスルホネートアニオン、2-(2-メトキシエチル)エチルサルフェートアニオン等が挙げられる。
これらの中でも、本発明の一態様で用いるイオン液体(B3)を構成するアニオンとしては、(CFSO又は(FSOが好ましい。
【0145】
成分(C):架橋剤
本発明の一態様で用いる粘着剤組成物は、さらに架橋剤(C)を配合してなるものであることが好ましい。架橋剤(C)を配合することで、電圧印加前は高粘着性を有すると共に、電圧印加によって容易に粘着性を低下させ得る粘着剤組成物により調製し易くなる。
なお、架橋剤(C)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の一態様で用いる架橋剤(C)としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、イミン系架橋剤、金属キレート系架橋剤等が挙げられる。
【0146】
本発明の一態様で用いる粘着剤組成物において、電圧印加前は高粘着性を有すると共に、電圧印加によって容易に粘着性を低下させ得る粘着剤組成物により調製し易くする観点から、成分(C)の配合量は、粘着性樹脂(成分(A))の全量100質量部に対して、好ましくは0.001~10.0質量部、より好ましくは0.005~7.0質量部、更に好ましくは0.010~5.0質量部、より更に好ましくは0.015~2.0質量部、特に好ましくは0.020~1.0質量部である。
【0147】
<第2粘着剤層>
本発明の一態様の粘着シートが有する第2粘着剤層は、非電気剥離性の粘着剤層とする場合には、上述の粘着剤組成物(x)から形成することができ、電気剥離性の粘着剤層とする場合には、上述の粘着剤組成物(y)から形成することができる。
【0148】
第2粘着剤層の厚さは、用途等に応じて適宜調整されるが、好ましくは0.5~120μm、より好ましくは1~100μm、更に好ましくは3~80μm、より更に好ましくは5~70μm、特に好ましくは10~60μmである。
【0149】
<剥離材>
本発明の一態様の粘着シートが有する剥離材は、剥離材用基材の片面又は両面に剥離剤を塗布して得ることができる。
剥離材用基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体、ポリウレタン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン(メタ)アクリル酸共重合体、ポリスチレン、ポリカーボネート、フッ素樹脂、低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、トリアセチルセルロース等の樹脂フィルムや、上質紙、コート紙、グラシン紙等の紙基材、これらの紙基材にポリエチレン等の熱可塑性樹脂をラミネートしたラミネート紙等が挙げられる。
【0150】
用いる剥離剤としては、例えば、シリコーン系樹脂、オレフィン系樹脂、長鎖アルキル系樹脂、アルキド系樹脂、フッ素系樹脂、イソプレン系樹脂やブタジエン系樹脂等のゴム系エラストマー等が挙げられる。
【0151】
剥離材の厚さは、特に制限は無いが、好ましくは5~300μm、より好ましくは10~200μmである。なお、剥離材用基材としてポリエチレンテレフタレート系フィルムを用いる場合は、好ましくは10~100μmである。
【0152】
〔電気剥離性粘着シートの剥離方法〕
本発明の一態様の粘着シートは、導電性材料から構成された被着体に貼付して用いられることが好ましい。
当該被着体を構成する導電性材料としては、例えば、アルミニウム、スズドープ酸化インジウム、銅、鉄、銀、白金、金等の金属やそれら金属の合金等が挙げられる。これらの導電性材料は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0153】
本発明の一態様の粘着シートは、電圧印加装置と接続した二つの端子のうち、一方の端子を前記導電性粘着剤層の内部に差し込み、他方の端子を導電性被着体に電気的に接続し、両端子に電圧を印加することで、前記導電性被着体に対する前記第1粘着剤層の粘着力が低下することで、被着体から当該粘着シートを剥離することができる。
【0154】
また、本発明の一態様の粘着シートが有する中間層の端部に、少なくとも一つの、端子を挿入可能な端子接続部を有するもしくは形成可能である構成である場合、電圧印加装置と接続した二つの端子のうち、一方の端子を、前記端子接続部を介して前記導電性粘着剤層の内部に差し込み、他方の端子を導電性被着体に電気的に接続し、両端子に電圧を印加することで、前記導電性被着体に対する前記第1粘着剤層の粘着力が低下することで、被着体から当該粘着シートを剥離することができる。
【0155】
本発明の一態様の粘着シートがこのような特性を有していることから、本発明は、下記〔I〕の粘着シートの剥離方法も提供する。
〔I〕本発明の一態様の電気剥離性粘着シートが有する第1粘着剤層を導電性被着体に貼付した後に、当該導電性被着体から前記粘着シートを剥離する方法であって、
電圧印加装置と接続した二つの端子のうち、一方の端子を前記導電性粘着剤層の内部に差し込み、他方の端子を導電性被着体に電気的に接続し、両端子に電圧を印加することで、前記導電性被着体に対する前記第1粘着剤層の粘着力が低下させて、前記導電性被着体から前記粘着シートを剥離する、粘着シートの剥離方法。
【0156】
図7は、本発明の一態様の電気剥離性粘着シートである、図2の粘着シート1bの剥離方法の一例を示した模式図である。
図7(a)では、図2の粘着シート1bの剥離材31、32を除去し、第1粘着剤層21の粘着表面を導電性被着体200に貼付し、第2粘着剤層22の粘着表面を被着体300に貼付した状態を示している。図7(a)において、粘着シート1bを導電性被着体200から剥離する方法について説明する。
【0157】
図7(a)に示す粘着シート1bは、中間層の端部に、少なくとも一つの、端子を挿入可能な端子接続部を有する。そのため、電圧印加装置110と接続した二つの端子のうち、一方の端子101を、端子接続部を介して、導電性粘着剤層121の内部に差し込む。なお、端子接続部が複数存在する場合には、任意の端子接続部に挿入すればよい。また、端子101は、導電性粘着剤層121の内部に差し込みやすくするために、針状の端子であることが好ましい。
一方、他方の端子102は、導電性被着体200に電気的に接続される。
【0158】
なお、図1(a)に示す粘着シート1aのように、端子接続部を有さない粘着シートである場合には、中間層の端部の任意の位置から、一方の端子101を導電性粘着剤層121の内部に差し込む。
また、図5~6に示された粘着シート2a~2bのような、中間層12の少なくとも端部の一部に、導電層13との接触箇所を有する擬似接着剤層122を含む構成である場合には、中間層12の擬似接着剤層122を、導電層13から剥離して端子接続部を形成する作業を行う必要がある。その後、図7(a)に示すような作業を行えばよい。
【0159】
そして、両端子に電圧を印加することで、導電性粘着剤層121と導電層13を介して、導電性被着体200と貼付している第1粘着剤層に電圧が印加され、第1粘着剤層の粘着力が低下する。電圧印加後に、図7(b)に示すように、第1粘着剤層の粘着力が低下しているため、容易に導電性被着体から粘着シートを剥離することができる。
【0160】
印加する電圧(印加電圧)は、好ましくは1~200V、より好ましくは3~140V、更に好ましくは6~120Vであり、当該範囲の電圧を印加する時間(印加時間)は、好ましくは1~180秒、より好ましくは5~120秒、更に好ましくは10~90秒である。
【実施例
【0161】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。但し、本発明は、以下の実施例になんら限定されるものではない。
なお、各成分の各種物性値は、以下に記載の方法により測定した。
【0162】
<質量平均分子量(Mw)>
ゲル浸透クロマトグラフ装置(東ソー株式会社製、製品名「HLC-8020」)を用いて、下記の条件下で測定し、標準ポリスチレン換算にて測定した値を用いた。
(測定条件)
・カラム:「TSK guard column HXL-H」「TSK gel GMHXL(×2)」「TSK gel G2000HXL」(いずれも東ソー株式会社製)を順次連結したもの
・カラム温度:40℃
・展開溶媒:テトラヒドロフラン
・流速:1.0mL/min
【0163】
<導電性フィラーのアスペクト比>
走査型電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、製品名「S-4700」)を用いて、無作為に抽出した10個の導電性フィラーを観察して、それぞれの「長辺の長さ(H)」及び「短辺の長さ(L)」を測定し、さらに「アスペクト比(H/L)」を算出した。そして、10個の平均値を、対象となる導電性フィラーの「長辺の長さ(H)の平均」、「短辺の長さ(L)の平均」、「平均アスペクト比」とした。
【0164】
<導電性粘着剤組成物(xα)の酸価>
剥離フィルム(リンテック株式会社製、商品名「SP-PET381031」、厚さ:38μm)の剥離処理面上に、導電性粘着剤組成物(xα)を塗布し、乾燥して、導電性粘着剤層を形成し、形成した導電性粘着剤層を0.3g(固形分)秤量して採取し、トルエン中に溶解させ、固形分濃度1質量%の試験溶液を調製する。
当該試験溶液に対して、指示薬として、フェノールフタレインのアルコール溶液を2~3滴加えた後、0.1N水酸化カリウムのアルコール溶液で滴定した。溶液が赤色となった時を終点とし、このときの滴定量と試料質量から、酸価(単位:mgKOH/g)を算出する。
【0165】
実施例1
[粘着シートの作製]
以下の手順で、図1に示された粘着シート1bと同様の構成を有する粘着シート(横50mm×縦50mm)を作製した。
(1)粘着剤組成物(x)の調製
表1に示す種類及び配合量(有効成分比)にて、各成分を添加し、希釈溶媒である酢酸エチルで希釈して粘着剤組成物(x)を調製した。
【表1】
【0166】
(2)第2粘着剤層の形成
剥離紙(リンテック株式会社製、商品名「SP-8Eアイボリー」、厚さ:116μm)の剥離処理面に、乾燥後の厚さが20μmとなるように、上記(1)で調製した粘着剤組成物(x)を塗布し、100℃で1分間乾燥させて、剥離紙上に、第2粘着剤層を形成し、横50mm×縦50mmの大きさに切断し、積層体(i)を作製した。
【0167】
(3)導電性粘着剤組成物(xα)の調製
表2に示す種類及び配合量(有効成分比)にて、各成分を添加し、希釈溶媒である酢酸エチルで希釈して導電性粘着剤組成物(xα)を調製した。なお、導電性粘着剤組成物(xα)の酸価は0.0mgKOH/gであった。
【表2】
【0168】
(4)導電性基材の作製
横50mm×縦50mmの大きさに調整したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東レ株式会社製、厚さ25μmのPETフィルム)の一方の表面上に、左側から横45mm×縦50mmの領域に、乾燥後の厚さが20μmとなるように、上記(3)で調製した粘着剤組成物(xα)を塗布し、100℃で1分間乾燥させて、導電性粘着剤層を形成した。なお、PETフィルムの右側から横5mm×縦50mmの領域には導電性粘着剤層は形成されていない。
そして、形成した導電性粘着剤層の粘着表面、及び、導電性粘着剤層が形成されておらず表出しているPETフィルムの表面に、横50mm×縦50mmの大きさに調整した導電層であるアルミニウム箔(株式会社UACJ製、製品名「1N30」、厚さ:50μm)を積層し、導電性基材を作製した。
【0169】
(5)電気剥離性粘着剤組成物(y)の調製
表2に示す種類及び配合量(有効成分比)にて、各成分を添加し、希釈溶媒である酢酸エチルで希釈して電気剥離性粘着剤組成物(y)を調製した。
【表3】
【0170】
(6)第1粘着剤層の形成
剥離フィルム(リンテック株式会社製、商品名「SP-PET381031」、厚さ:38μm)の剥離処理面上に、乾燥後の厚さが50μmとなるように、上記(5)で調製した電気剥離性粘着剤組成物(y)を塗布し、100℃で2分間乾燥させて、剥離フィルム上に、第1粘着剤層を形成し、横50mm×縦50mmの大きさに切断し、積層体(ii)を作製した。
【0171】
(7)粘着シートの作製
上記(2)で作製した積層体(i)の第2粘着剤層の粘着表面を、上記(4)で作製した導電性基材のPETフィルム側に貼付し、また、上記(6)で作製した積層体(ii)の第1粘着剤層の粘着表面を、前記導電性基材の導電層のアルミニウム箔側に貼付して、図1に示された粘着シート1bと同じ構成を有する粘着シートを作製した。
【0172】
[電気剥離性試験]
作製した粘着シートを用いて、以下の方法に基づいて、電圧印加によって被着体に貼付した粘着シートが剥離できるか否かの電気剥離性試験を行った。
まず、図7(a)に示すように、粘着シートが有する第1粘着剤層を導電性被着体に貼付し、電圧印加装置の端子を接続した。具体的には、上記(7)で作製した粘着シートの剥離フィルムを除去して表出した第1粘着剤層21の粘着表面を、導電性被着体200であるステンレス板に貼付した。そして、電圧印加装置110(株式会社高砂製作所社製、製品名「直流電源装置(KX-100H)」の陽極側の針状の端子101を粘着シートの右端の端子接続部の任意の位置から挿入し、当該端子接続部を介して、導電性粘着剤層121の内部に差し込み、電気的に接続した。一方で、電圧印加装置110の陰極側の端子102は、導電性被着体200と電気的に接続した。なお、図7(a)では、第2粘着剤層の粘着表面は被着体300と貼付した構成が示されているが、本試験においては、被着体300とは貼付せずに、剥離紙をそのまま積層した状態で試験を行った。
そして、10Vの電圧を60秒間印加し、電圧印加後に1分間静置した。
静置後、23℃、50%RH(相対湿度)の環境下で、図7(b)に示すように、導電性被着体200から粘着シートを手で剥離したところ、極めて容易に剥離できることが確認された。
【符号の説明】
【0173】
1a、1b、1c、1d、2a、2b 粘着シート
10 導電性基材
11 支持体
12 中間層
121 導電性粘着剤層
122 擬似接着剤層
12a 接触箇所
12b 非接触箇所
13 導電層
21 第1粘着剤層
22 第2粘着剤層
31、32 剥離材
X 端子接続部
101、102 端子
110 電圧印加装置
200 導電性被着体
300 被着体
【要約】
支持体、中間層、及び導電層をこの順で有する導電性基材と、当該導電性基材の前記導電層側に電気剥離性を有する第1粘着剤層が積層し、前記支持体側に第2粘着剤層が積層した電気剥離性粘着シートであって、前記導電性基材は、当該導電性基材の面広がり方向において、前記第1粘着剤層及び前記第2粘着剤層よりも伸びて露出する延出部を実質的に有さず、前記中間層の少なくとも一部が、導電性粘着剤層を含む構成である、電気剥離性粘着シートを提供する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7