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特許7193690フィルム加工システム及びフィルム加工方法
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  • 特許-フィルム加工システム及びフィルム加工方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-13
(45)【発行日】2022-12-21
(54)【発明の名称】フィルム加工システム及びフィルム加工方法
(51)【国際特許分類】
   B31B 70/88 20170101AFI20221214BHJP
【FI】
B31B70/88
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018090670
(22)【出願日】2018-05-09
(65)【公開番号】P2019195930
(43)【公開日】2019-11-14
【審査請求日】2021-04-19
(73)【特許権者】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100153497
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 信男
(74)【代理人】
【識別番号】100110515
【氏名又は名称】山田 益男
(72)【発明者】
【氏名】宍戸 翔太朗
(72)【発明者】
【氏名】森 拓也
【審査官】佐藤 秀之
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-143620(JP,A)
【文献】特開2017-226128(JP,A)
【文献】特表2009-545461(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0284032(US,A1)
【文献】特開2009-166350(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B31B 70/00
B65B 9/00
B65H 35/00
A61F 13/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム材を走行させる送り機構と、加工ローラを有する加工ユニットと、加工位置を調整する位置制御部とを有するフィルム加工システムであって、
前記加工ユニットは、前記送り機構によるフィルム材の走行区間に配置されるとともに、加工位置をフィルム材の走行方向前後に移動させる位置調整機構と、走行時のフィルム材の所定時間範囲における送り量を検出する送り量検出部を有し、
前記位置制御部は、演算部と、位置指令部とを有し、
前記演算部は、前記送り量検出部で検出された送り量検出値から位置調整量を演算するように構成され、
前記位置指令部は、前記演算部で演算された位置調整量を基に前記加工ユニットの位置調整機構に位置制御信号を出力するよう構成され、
前記送り機構は、フィルム材を間欠走行させる間欠送り機構であり、
前記位置指令部は、フィルム材の間欠走行の停止中に、前記位置調整機構に位置制御信号を出力し加工位置をフィルム材の走行方向前後に移動させることを特徴とするフィルム加工システム。
【請求項2】
前記加工ローラを有する加工ユニットが、エンボスローラを有するエンボスユニットであることを特徴とする請求項1に記載のフィルム加工システム。
【請求項3】
前記位置調整機構は、前記加工ユニット全体をフィルム材の走行方向前後に移動させるユニット移動機構であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のフィルム加工システム。
【請求項4】
前記演算部は、フィルム材の複数回の間欠走行における前記送り量検出部で複数の送り量検出値から求めた統計量に基づいて位置調整量を演算するように構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のフィルム加工システム。
【請求項5】
前記送り量検出部は速度検出器を有し、フィルム材の所定時間範囲における走行速度を検出し、検出された走行速度から所定の時間範囲におけるフィルム材の送り量を算出するように構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のフィルム加工システム。
【請求項6】
前記速度検出器は、レーザードップラー速度検出器であることを特徴とする請求項5に記載のフィルム加工システム。
【請求項7】
フィルム材を間欠走行させ、加工ローラを有する加工ユニットにより、加工位置を調整しつつ加工を行うフィルム加工方法であって、
前記加工ユニットは、フィルム材の走行区間に配置されるとともに、加工位置をフィルム材の走行方向前後に移動させる位置調整機構を有し、
走行時のフィルム材の所定の時間範囲における送り量を検出し、
検出された送り量検出値から位置調整量を演算し、
フィルム材の間欠走行の停止中に加工ユニットの位置調整機構を作動させて加工位置を調整することを特徴とするフィルム加工方法。
【請求項8】
前記位置調整機構は、前記加工ユニット全体をフィルム材の走行方向前後に移動させるユニット移動機構であることを特徴とする請求項7に記載のフィルム加工方法。
【請求項9】
フィルム材を間欠走行させ、フィルム材の複数回の間欠走行における複数の送り量検出値から求めた統計量に基づいて位置調整量を演算することを特徴とする請求項7または請求項8に記載のフィルム加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルム材を走行させる送り機構と、加工ローラを有する加工ユニットと、加工位置を調整する位置制御機構とを有するフィルム加工システム、及び、フィルム材を走行させ、加工ローラを有する加工ユニットにより、加工位置を調整しつつ加工を行うフィルム加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パウチ容器等の製造において、長尺のフィルム材を原反ロールから繰り出して走行させ、シール工程、カット工程を行うものは周知であり、その際に、走行中のフィルム材に印刷や凹凸のエンボス、カット等の加工を行うことも公知である。
長尺のフィルム材に印刷が既に施されている場合、さらなる印刷工程、シール工程、カット工程、エンボス工程等を行う際に、元の印刷との位置ずれをできる限り少なくすることが求められている。
【0003】
例えば、間欠送りの停止時に処理されるシール工程やカット工程では、印刷マーク等の停止位置をセンサやカメラ等で検出して位置ずれ量を求め、間欠送りの停止位置を調整するものが公知である(特許文献1等参照)。
また、エンボス工程において、印刷マーク等の位置をセンサやカメラ等で検出して、エンボスローラの回転を調整するものが公知である(特許文献2等参照)。
さらに、カット工程において、印刷マーク等の位置をセンサやカメラ等で検出して、カット装置の位置を調整するものが公知である(特許文献3等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-100466号公報
【文献】特開2013-91315号公報
【文献】特開2013-103344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これら公知の手段では、印刷マーク等の位置を検出し特定のタイミングでの位置ずれ量を基に調整していることから、フィルム材の停止時に処理を行うシール工程やカット工程では、ある程度精度良く調整することが可能である。
しかしながら、フィルム材の走行中にエンボスローラ等の加工ローラで処理を行う加工工程では、毎回のランダムな位置ずれは不可避であり、初期状態では位置ずれ量が許容範囲に収まるように調整していたが、実際の稼働時においては、フィルムのテンション(張り量)の変動によってフィルムの送り量が変動する等の原因によって、位置ずれ量が変動して許容される位置ずれ量の範囲を超えることがあった。
フィルム材を高速で走行させた場合、もともとランダムに変化する許容された位置ずれがあるため、正確にフィードバックして調整することは難しいという問題があった。
本発明は、このような課題を解決するものであり、フィルム材の走行中に加工ローラで処理を行う加工工程において、簡単な設備で、フィルム材を高速で走行させた場合でも、加工の位置ずれ量を許容範囲内に調整可能なフィルム加工システム及びフィルム加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るフィルム加工システムは、フィルム材を走行させる送り機構と、加工ローラを有する加工ユニットと、加工位置を調整する位置制御部とを有するフィルム加工システムであって、前記加工ユニットは、前記送り機構によるフィルム材の走行区間に配置されるとともに、加工位置をフィルム材の走行方向前後に移動させる位置調整機構と、走行時のフィルム材の所定時間範囲における送り量を検出する送り量検出部を有し、前記位置制御部は、演算部と、位置指令部とを有し、前記演算部は、前記送り量検出部で検出された送り量検出値から位置調整量を演算するように構成され、前記位置指令部は、前記演算部で演算された位置調整量を基に前記加工ユニットの位置調整機構に位置制御信号を出力するよう構成され、前記送り機構は、フィルム材を間欠走行させる間欠送り機構であり、前記位置指令部は、フィルム材の間欠走行の停止中に、前記位置調整機構に位置制御信号を出力し加工位置をフィルム材の走行方向前後に移動させることにより、前記課題を解決するものである。
【0007】
本発明に係るフィルム加工方法は、フィルム材を間欠走行させ、加工ローラを有する加工ユニットにより、加工位置を調整しつつ加工を行うフィルム加工方法であって、前記加工ユニットは、フィルム材の走行区間に配置されるとともに、加工位置をフィルム材の走行方向前後に移動させる位置調整機構を有し、走行時のフィルム材の所定時間範囲における送り量を検出し、検出された送り量検出値から位置調整量を演算し、フィルム材の間欠走行の停止中に加工ユニットの位置調整機構を作動させて加工位置を調整することにより、前記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るフィルム加工システム及びフィルム加工方法によれば、走行時のフィルム材の所定時間範囲における送り量を検出し、検出された送り量検出値から位置調整量を演算することにより、張力変動等を要因とする位置ずれ量であっても、加工ローラで処理を行う加工工程で高速で走行させても、正確に加工位置ずれ量を許容範囲内に調整することが可能となる。
また、フィルム材を間欠走行させ、フィルム材が停止している時、位置調整機構を作動させることにより、間欠送りの停止時に処理を行うシール工程、カット工程と同一の送り機構のラインに組み込んで高速で走行させても、位置ずれ量を許容範囲内に調整することが可能となる。
【0009】
請求項2に係る構成によれば、走行時のフィルム材に対するエンボス加工の位置ずれ量を許容範囲内に調整することが可能となる。
請求項3及び請求項8に係る構成によれば、加工ユニット全体をフィルム材の走行方向前後に移動させて位置調整することにより、加工ローラの回転のタイミングを調整する必要がなく、演算量が少なく応答性も良い制御を行うことができ、高速で走行させても正確に加工位置ずれ量を許容範囲内に調整することが可能となる。
請求項4及び請求項9に係る構成によれば、間欠送りの個々の変動による制御の発散を防止でき、所定の位置誤差の範囲で安定的に調整可能となり、さらに高速で使用することが可能となる。
請求項5に係る構成によれば、送り量検出部は速度検出器を有し、フィルム材の所定時間範囲における走行速度を検出し、検出された走行速度から所定の時間範囲におけるフィルム材の送り量を算出するように構成されていることにより、さらに装置が簡素化される。
請求項6に係る構成によれば、速度検出器がレーザードップラー速度検出器であることにより、さらに装置が簡素化される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1実施形態に係るフィルム加工システムを組み込んだパウチ製造ラインの概略説明図。
図2】本発明の第1実施形態に係るフィルム加工システムのエンボスユニットのエンボス動作説明図。
図3】本発明の第1実施形態に係るフィルム加工システムのエンボスユニットの位置調整の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態に係るフィルム加工システムはパウチ製品に成形されるフィルムにエンボス加工を行うものであり、図1に概略で示すように、原反ロールFRを繰り出してパウチを製造するパウチ製造ライン10内で使用される。
図1に示すパウチ製造ライン10では、原反繰出部11で原反ロールFRから繰り出されて2枚にカットされたフィルム材Fが、ダンサーロール12で間欠送りに変換され、注口成形部13を経て重ねられ、ボトムシール部14、サイドシール部15及びカット部16の順に送られてパウチ製品に成形される。
本発明の一実施形態に係るフィルム加工システムのエンボスユニット100は、ダンサーロール12と注口成形部13の間の配置されている。
2枚フィルム材Fのうちの一方のフィルム材Fにのみエンボス加工を行ってもよく、両方のフィルム材Fにエンボス加工を行ってもよい。
また、注口成形部13より下流にエンボスユニット100を配置し、両方フィルムを重ねた状態あるいはシール後にエンボス加工を行ってもよい。
また、上記実施形態は、エンボスローラ110を有するエンボスユニット100を使用したフィルム加工システムであるが、加工ローラによりフィルム送り中に加工するものであれば、印刷、カット等の加工ユニットを有するフィルム加工システムにも適用可能である。
【0012】
エンボスユニット100では、図2に示すように、フィルム材Fを挟んで対向する位置にエンボス型111を有したエンボスローラ110と押さえローラ120が配置されている。
また、本実施形態では、エンボスローラ110の下流側に、フィルム材Fを送るフィードローラ130が配置されている。
エンボスローラ110と押さえローラ120の間隔は、エンボス型111以外の部分では、フィルム材Fの厚み以上であり、エンボス型111の部分ではフィルム材Fを厚み方向に圧縮するよう設定され、エンボス型111の形状のエンボスEBがエンボスローラ110側に凸部として形成されるように構成されている。
本実施形態では、エンボスローラ110にはエンボス型111が180°ずれて2箇所設けられており、半回転で1回のエンボス加工を行うように構成されているが、エンボス型111を1箇所としてもよく、3箇所以上としてもよい。
また、エンボスローラ110と押さえローラ120の直径は、同じでもよく、異なるものであってもよい。
【0013】
次に、エンボス位置の調整について、図3に基づいて説明する。
エンボスユニット100の上流には、フィルム材Fの速度を検出する速度検出部であるレーザードップラー速度検出器140が配置されており、所定の時間範囲において検出された速度からフィルムFの移動量を算出し、算出したフィルムFの移動量は位置制御部150に入力される。
エンボスユニット100は位置調整機構であるユニット移動機構160によって、全体をフィルム材Fの走行方向前後に移動可能に構成されている。
位置制御部150は、演算部と位置指令部(図示せず)とを有しており、演算部がレーザードップラー速度検出器140で検出されたフィルム材Fの送り速度検出値から算出されたフィルムFの送り量に基づいて位置調整量を演算し、位置指令部が演算部で演算された位置調整量を基にユニット移動機構160に位置制御信号を出力するよう構成されている
【0014】
エンボスユニット100とレーザードップラー速度検出器140は、ダンサーロール12より下流の間欠送り区間に配置されている。
間欠送り区間では、フィルム材Fは停止、送りが交互に繰り返されるため、レーザードップラー速度検出器140による速度の検出は、フィルム材Fの送り時に行われる。
エンボス型111がフィルムFを挟んでいるときは、フィルム材Fの送り速度はエンボスローラ110の回転に依存し、フィルムテンションの変動による送り速度の変動は、エンボス型111がフィルムFを挟んでいないときに現れるため、速度の検出は、エンボスローラ110の動き始めからエンボス型111がフィルムFを挟み始めるまで、あるいは、エンボス型111がフィルムFを解放してからエンボスローラ110が動き終わるまでのタイミングで行われる。
フィードローラ130はエンボスローラ110と同期するため、エンボスローラ110の動き始め、動き終わりは、フィードローラ130の動き始め、動き終わりとしてもよい。
なお、加工中はエンボス型111がフィルムFを強い力で挟んでおり、エンボス型111がフィルムFを解放するとフィルムFに与えられる力も解放され、その勢いによって送り量が一時的に不連続な状態になり適切に送り量の測定ができない可能性がある。
したがって、速度の検出は、エンボスローラ110の動き始めからエンボス型111がフィルムを挟み始めるまでに行うのが望ましい。
印刷加工やカット加工の場合は、加工ローラーの印刷面やカッター部から解放された時の変形も少なく、送り量が一時的に不連続な状態となることもないため、速度の検出は、印刷面やカッター部がフィルムFを挟んでいない時間範囲であれば、いずれのタイミングでもよい。
【0015】
エンボスユニット100は、初期時に各エンボスEBの位置が所定の誤差の範囲内に収まるようユニット移動機構160により最適な位置にセットされる。
この時、レーザードップラー速度検出器140の検出値もフィルム材Fの間欠送り毎に所定の誤差の範囲内に収まるのが理想状態であるが、実際の稼働時には、フィルムFのテンション(張り量)の変動によって、フィルムFの送り量の誤差も大きくなる。
この送り量の誤差が、エンボスEBの位置の誤差と相関することから、位置制御部150は、レーザードップラー速度検出器140で検出されたフィルム材Fの送り速度検出値から位置調整量を演算することができる。
【0016】
さらに、複数回の間欠送りにおける複数の速度検出値から求めた統計量、例えば、20回の間欠送りの検出値の平均値を求め、その誤差を修正する方向にユニット移動機構160に移動指令を出してエンボスユニット100をフィルム材Fの走行方向前後に移動することで、毎回のランダムな速度変化や実際の稼働時の長期的な速度変化による制御の発散を防止して、安定して各エンボスEBの位置が所定の誤差の範囲内に収まるように調整される。
ユニット移動機構160の移動は、フィルム材Fがエンボスローラ110と押さえローラ120から直接力を受けない間欠走行の停止中に行うことで、エンボス加工に支障を与えることはない。
【0017】
なお、上記実施形態では、送り量検出部としてレーザードップラー速度検出器140を用いているが、フィルム材Fの送り時の所定のタイミングでの単位時間あたりの送り量が検出可能であれば、送り量検出部として従来のCCDカメラや、光学センサを用いてもよい。
また、位置制御部150は、機能的に上記の演算部及び位置指令部を有するものであれば、物理的には単体のコントローラであってもよく、パウチ製造ライン10の他のコントローラや全体の制御装置に組み込まれていてもよい。
【符号の説明】
【0018】
10 ・・・ パウチ製造ライン
11 ・・・ 原反繰出部
12 ・・・ ダンサーロール
13 ・・・ 注口成形部
14 ・・・ ボトムシール部
15 ・・・ サイドシール部
16 ・・・ カット部
100 ・・・ エンボスユニット(加工ユニット)
110 ・・・ エンボスローラ(加工ローラ)
111 ・・・ エンボス型
120 ・・・ 押さえローラ
130 ・・・ フィードローラ
140 ・・・ レーザードップラー速度検出器(送り量検出部)
150 ・・・ 位置制御部
160 ・・・ ユニット移動機構(位置調整機構)
F ・・・ フィルム材
FR ・・・ 原反ロール
EB ・・・ エンボス
図1
図2
図3