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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-13
(45)【発行日】2022-12-21
(54)【発明の名称】充填システムおよび充填方法
(51)【国際特許分類】
   B67C 7/00 20060101AFI20221214BHJP
   B29C 49/36 20060101ALI20221214BHJP
   B29C 49/42 20060101ALI20221214BHJP
【FI】
B67C7/00
B29C49/36
B29C49/42
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018081476
(22)【出願日】2018-04-20
(65)【公開番号】P2019189254
(43)【公開日】2019-10-31
【審査請求日】2021-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100153497
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 信男
(74)【代理人】
【識別番号】100110515
【氏名又は名称】山田 益男
(72)【発明者】
【氏名】岩下 健
(72)【発明者】
【氏名】原田 天章
(72)【発明者】
【氏名】大頭 貢
【審査官】▲高▼橋 杏子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-166264(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0325941(US,A1)
【文献】特開2016-104648(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102008030156(DE,A1)
【文献】特開2001-278227(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B67C 3/00-11/06
B29C 49/00-49/46
B29C 49/58-49/68
B29C 49/72-51/28
B29C 51/42
B29C 51/46
B65B 53/00-55/24
A61L 2/00-2/28
A61L 11/00-12/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
殺菌済みの容器に内容液を充填する充填システムであって、
ブロー成形ターレットを有した容器成形ユニットと、前記容器成形ユニットの下流側に配置され容器に内容液を充填する充填部を有した充填ユニットと、前記ブロー成形ターレットおよび前記充填部の間に設置された容器搬送路と、殺菌処理機構とを備え、
前記殺菌処理機構は、前記ブロー成形ターレットの容器リリースポイントよりも上流側においてプリフォームまたは容器に本殺菌処理を施す本殺菌機と、前記容器搬送路において容器に補完殺菌処理を施す補完殺菌機とを備え
前記容器成形ユニットは、プリフォームの容器口部を金型の外部に出した状態で前記金型内に配置された加熱したプリフォーム内にエアーを吹き込むことで、容器をブロー成形するように構成され、
前記本殺菌機は、プリフォームまたは容器の内面、または、プリフォームまたは容器の内面および外面に本殺菌処理を施すように構成され、
前記補完殺菌機は、容器口部側から容器に向けて、容器口部の内面側温度以上の殺菌流体を噴出する殺菌流体ノズルを有した殺菌流体噴出器と、前記殺菌流体ノズルの下流側に設置され、容器口部側から容器に向けて、容器口部の内面側温度以上のホットエアーを噴出するホットエアーノズルを有したホットエアー噴出器とを備えることを特徴とする充填ステム。
【請求項2】
前記殺菌流体ノズルおよび前記ホットエアーノズルは、前記容器搬送路を搬送される容器の容器口部からノズル長手方向に離れた位置から殺菌流体またはホットエアーを噴出するように設置されていることを特徴とする請求項に記載の充填システム。
【請求項3】
前記殺菌流体ノズルおよび前記ホットエアーノズルの内径は、容器口部の内径よりも小さく設定されていることを特徴とする請求項または請求項に記載の充填システム。
【請求項4】
前記殺菌流体噴出器は、前記殺菌流体ノズルから殺菌流体を70m/s以上の流速で吹き出すように構成され、
前記ホットエアー噴出器は、前記ホットエアーノズルからホットエアーを80m/s以上の流速で吹き出すように構成されていることを特徴とする請求項乃至請求項のいずれかに記載の充填システム。
【請求項5】
前記容器搬送路に設置される搬送機を更に備え、
前記搬送機は、前記殺菌流体ノズルおよび前記ホットエアーノズルを設置した区間において、容器を正立状態で搬送するように構成されていることを特徴とする請求項乃至請求項のいずれかに記載の充填システム。
【請求項6】
前記殺菌流体噴出器は、前記容器搬送路における容器搬送方向に沿って前記殺菌流体ノズルを移動させる殺菌流体ノズル移動手段を有し、
前記ホットエアー噴出器は、前記容器搬送路における容器搬送方向に沿ってホットエアーノズルを移動させるホットエアーノズル移動手段を有していることを特徴とする請求項乃至請求項のいずれかに記載の充填システム。
【請求項7】
前記容器成形ユニットは、プリフォーム内に無菌エアーを吹き込むブロー機を備えていることを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれかに記載の充填システム。
【請求項8】
殺菌済みの容器に内容液を充填する充填方法であって、
容器成形ユニットのブロー成形ターレットの容器リリースポイントよりも上流側においてプリフォームまたは容器に本殺菌処理を施し、
前記ブロー成形ターレットおよび充填部の間の容器搬送路において、容器に補完殺菌処理を施し、
前記容器成形ユニットは、プリフォームの容器口部を金型の外部に出した状態で前記金型内に配置された加熱したプリフォーム内にエアーを吹き込むことで、容器をブロー成形するように構成され、
前記補完殺菌処理では、容器口部側から容器に向けて、容器口部の内面側温度以上の殺菌流体を噴出した後に、容器口部側から容器に向けて、容器口部の内面側温度以上のホットエアーを容器に噴出することを特徴とする充填方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、殺菌済みの容器に内容液を充填する充填システムおよび充填方法に関し、特に、容器成形から内容液の充填・密封までを一貫して行うインラインブロー式の充填システムおよび充填方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、同一工場内において、ブロー成形による容器成形から、内容液の充填・密封までを一貫して行うインラインブロー式の充填システムが知られており(例えば、特許文献1を参照)、このような充填システムでは、無菌環境に維持された充填ユニットに容器を搬送する前に、容器を充分に殺菌する必要がある。
【0003】
容器の殺菌方法としては、様々なものが知られており、例えば、容器成形ユニットのブロー成形ターレットと充填ユニットの充填部との間に設けられた容器搬送路において、過酸化水素等の殺菌剤を容器内に塗布して容器を殺菌することや、容器をブロー成形する前の段階において、容器の予備成形体であるプリフォームに過酸化水素等の殺菌剤を塗布して、プリフォームを殺菌することが公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-231356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、ブロー成形ターレットと充填部との間の容器搬送路において容器に殺菌剤を塗布する場合、容器内に内容液を充填する時までに、容器内の殺菌剤の濃度を規定値以下まで下げる処置を施す必要があることから、ブロー成形ターレットと充填部との間の容器搬送路を長く確保する必要があるという問題があった。
【0006】
また、容器をブロー成形する前の段階においてプリフォームに過酸化水素等の殺菌剤を塗布する場合、その後のブロー成形においてプリフォーム内に吹き出すエアーによって殺菌剤を吹き飛ばし、容器内の殺菌剤の濃度を下げることができるものの、ブロー成形時において塵埃等が容器を汚染する懸念がある。
【0007】
そこで、本発明は、これらの問題点を解決するものであり、容器に対して確実な殺菌処理を施しつつも、ブロー成形ターレットと充填部との間の容器搬送路を短くすることが可能な充填システムおよび充填方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の充填システムは、殺菌済みの容器に内容液を充填する充填システムであって、ブロー成形ターレットを有した容器成形ユニットと、前記容器成形ユニットの下流側に配置され容器に内容液を充填する充填部を有した充填ユニットと、前記ブロー成形ターレットおよび前記充填部の間に設置された容器搬送路と、殺菌処理機構とを備え、前記殺菌処理機構は、前記ブロー成形ターレットの容器リリースポイントよりも上流側においてプリフォームまたは容器に本殺菌処理を施す本殺菌機と、前記容器搬送路において容器に補完殺菌処理を施す補完殺菌機とを備え、前記容器成形ユニットは、プリフォームの容器口部を金型の外部に出した状態で前記金型内に配置された加熱したプリフォーム内にエアーを吹き込むことで、容器をブロー成形するように構成され、前記本殺菌機は、プリフォームまたは容器の内面、または、プリフォームまたは容器の内面および外面に本殺菌処理を施すように構成され、前記補完殺菌機は、容器口部側から容器に向けて、容器口部の内面側温度以上の殺菌流体を噴出する殺菌流体ノズルを有した殺菌流体噴出器と、前記殺菌流体ノズルの下流側に設置され、容器口部側から容器に向けて、容器口部の内面側温度以上のホットエアーを噴出するホットエアーノズルを有したホットエアー噴出器とを備えることにより、前記課題を解決するものである。
また、本発明の充填方法は、殺菌済みの容器に内容液を充填する充填方法であって、容器成形ユニットのブロー成形ターレットの容器リリースポイントよりも上流側においてプリフォームまたは容器に本殺菌処理を施し、前記ブロー成形ターレットおよび充填部の間の容器搬送路において、容器に補完殺菌処理を施し、前記容器成形ユニットは、プリフォームの容器口部を金型の外部に出した状態で前記金型内に配置された加熱したプリフォーム内にエアーを吹き込むことで、容器をブロー成形するように構成され、前記補完殺菌処理では、容器口部側から容器に向けて、容器口部の内面側温度以上の殺菌流体を噴出した後に、容器口部側から容器に向けて、容器口部の内面側温度以上のホットエアーを容器に噴出することにより、前記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0009】
本請求項1、に係る発明によれば、ブロー成形ターレットの容器リリースポイントよりも上流側においてプリフォームまたは容器に本殺菌処理を施すとともに、ブロー成形ターレットおよび充填部の間の容器搬送路において、容器に補完殺菌処理を施すように構成されている。これにより、ブロー成形時において塵埃等が容器を汚染する恐れがある場合等であっても、その後の補完殺菌処理によって容器を殺菌し、内容液の充填までに容器を確実に殺菌できるばかりでなく、本殺菌処理と補完殺菌処理に分割して容器に殺菌を施すことで、補完殺菌処理において容器に塗布される過酸化水素等の殺菌剤の量を低減することが可能であるため、容器内の殺菌剤の濃度を規定値以下まで下げることが容易であり、ブロー成形ターレットと充填部との間の容器搬送路を短く設計することができる。
【0010】
本願請求項に係る発明によれば、補完殺菌処理において、容器口部側から容器に向けて、容器口部の内面側温度以上の殺菌流体を噴出した後に、容器口部側から容器に向けて、容器口部の内面側温度以上のホットエアーを容器に噴出することにより、ホットエアーの噴出によって容器内部の余分な殺菌剤を吹き飛ばして除去できるばかりでなく、ブロー成形によって生じる容器口部や容器底部等の容器各部の内面間の温度差を低減し、容器各部の内面に塗布された殺菌剤による殺菌効果を均一にすることが可能であるため、補完殺菌処理において容器に塗布される殺菌剤の量を低減することを実現して、容器内の殺菌剤の濃度を規定値以下まで下げることを容易にし、ブロー成形ターレットと充填部との間の容器搬送路を短く設計することができる。
すなわち、過酸化水素等の殺菌剤は、容器表面に塗布された後に乾燥させることで活性化して殺菌効果を発揮するが、プリフォームを加熱し、2軸延伸するブロー成形後には、容器口部側の内面の温度(約50℃程度)よりも容器底部側の内面の温度(約90℃程度)が高くなっており、この容器各部の内面間の温度差に起因して、その後の補完殺菌処理において容器内面に塗布される殺菌剤の乾燥の程度にも、容器各部の内面間で差が生じ、その結果、容器各部の内面間で殺菌効果が不均一になってしまうという問題があった。そして、このように、容器各部の内面間で殺菌効果が不均一となると、容器内面全体を所望の殺菌レベル以上で殺菌するために、殺菌剤の量を多くする必要があり、その結果、殺菌剤を塗布した後に、容器内面全体の殺菌剤の濃度を規定値以下まで下げるために、容器搬送路を長く確保する必要が生じてしまう。
そこで、本願請求項に係る発明では、容器口部側から容器に向けて、容器口部の内面側温度以上の殺菌流体を噴出した後に、容器口部側から容器に向けて、容器口部の内面側温度以上のホットエアーを容器に噴出することにより、ブロー成形によって生じる容器口部の内面や容器底部の内面等の容器各部の内面間の温度差を低減することが可能であるため、容器各部の内面間における殺菌効果の均一化、殺菌剤の量の低減、および、容器搬送路の短縮化を実現することができる。
【0011】
本願請求項に係る発明によれば、殺菌流体ノズルおよびホットエアーノズルが、容器搬送路を搬送される容器の容器口部からノズル長手方向に離れた位置から殺菌流体またはホットエアーを噴出するように設置されていることにより、各ノズルを容器内部に挿入するように構成された場合と比較して、装置構成を簡素化できるばかりでなく、容器各部の内面のうち、ブロー成形直後で温度が低い容器口部の内面を効率的に温めることが可能であるため、容器各部の内面間の温度差を効率的に低減することができる。
本願請求項に係る発明によれば、殺菌流体ノズルおよびホットエアーノズルの内径が、容器口部の内径よりも小さく設定されていることにより、各ノズルから噴出される殺菌流体およびホットエアーの流速を向上させることができるばかりでなく、容器内部に殺菌流体およびホットエアーを確実に送り込み、容器各部の内面間の温度差を効率的に低減することができる。
本願請求項に係る発明によれば、殺菌流体ノズルから殺菌流体を70m/s以上の流速で吹き出すとともに、ホットエアーノズルからホットエアーを80m/s以上の流速で吹き出すことにより、容器内部に殺菌流体およびホットエアーを確実に送り込むことが可能であるため、容器各部の内面間の温度差を確実に低減することができる。
本願請求項に係る発明によれば、容器搬送路に設置される搬送機が、殺菌流体ノズルおよびホットエアーノズルを設置した区間において、容器を正立状態で搬送するように構成されていることにより、容器内の余分なガスが容器口部から抜け出し易くなる。
本願請求項に係る発明によれば、殺菌流体噴出器が、容器搬送路における容器搬送方向に沿って殺菌流体ノズルを移動させる殺菌流体ノズル移動手段を有し、ホットエアー噴出器が、容器搬送路における容器搬送方向に沿ってホットエアーノズルを移動させるホットエアーノズル移動手段を有している。これにより、殺菌流体ノズルおよびホットエアーノズルを容器口部に対向させた状態を長く維持することが可能であるため、過酸化水素等の殺菌剤を容器の内面に効率的に塗布できるばかりでなく、殺菌流体やホットエアーによって容器口部の内面を効率的に温めることが可能であるため、容器各部の内面間の温度差を効率的に低減することができる。
本願請求項に係る発明によれば、容器成形ユニットが、プリフォーム内に無菌エアーを吹き込むブロー機を備えていることにより、プリフォーム内に無菌エアーを吹き込んでブロー成形を行うことで、ブロー成形時における容器の汚染を抑制し、補完殺菌処理において必要とされる殺菌レベルを低く抑えることが可能であるため、殺菌剤の量の低減、および、容器搬送路の短縮化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る充填システムを示す説明図。
図2】殺菌流体ノズルおよびホットエアーノズルの設置状態を上方から見て概略的に示す説明図。
図3】殺菌流体ノズルおよびホットエアーノズルの設置状態を側方から見て概略的に示す説明図。
図4】殺菌流体ノズルおよびホットエアーノズルと容器との位置関係を概略的に示す説明図。
図5】実験例の条件および結果を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の一実施形態に係る充填システム10について、図面に基づいて説明する。
【0014】
まず、充填システム10は、殺菌済みの容器Cに殺菌された内容液を無菌充填するものであり、図1に示すように、ブロー成形ターレット23を有した容器成形ユニット20と、容器成形ユニット20の下流側に配置された充填ユニット30と、ブロー成形ターレット23および充填ユニット30の充填部33の間に設置された容器搬送路80と、容器成形ユニット20と充填ユニット30との間に設置された容器転送ユニット40と、本殺菌機60および補完殺菌機70を有した殺菌処理機構50とを備えている。
【0015】
以下に、充填システム10の各構成要素について、図1図3に基づいて説明する。
【0016】
まず、容器成形ユニット20は、図1に示すように、プリフォームを投入する入口部21と、入口部21の下流側に配置されプリフォームを加熱する加熱部22と、加熱部22の下流側に配置され、プリフォーム内に無菌エアーを吹き込むことで容器Cをブロー成形するブロー機(図示しない)が設置されたブロー成形ターレット23と、ブロー成形ターレット23の下流側に配置され容器Cを搬送する複数のターレットから成る搬送部24と、搬送部24の下流側に配置された出口部25と、容器成形ユニット20全体を覆うボックス26とを備えている。
なお、容器成形ユニット20のボックス26内は、HEPAフィルタを通した無菌エアーをFFU(Fan Filter Unit)により上部から吹き込むことにより、陽圧に保たれている。
【0017】
また、充填ユニット30は、図1に示すように、容器Cを投入する入口部31と、入口部31の下流側に配置され容器Cを搬送する複数のターレットから成る搬送部32と、搬送部32の下流側に配置され容器C内に内容液を充填する充填部33と、充填部33の下流側に配置され容器Cの口部に殺菌済みのキャップを装着するキャッピング部34と、キャッピング部34の下流側に配置されキャップを装着した容器Cを搬出する出口部35と、充填ユニット30全体を覆うボックス36とを備えている。
【0018】
充填ユニット30における各工程は、その内部を無菌状態に維持されたボックス36内で行われる。このボックス36では、充填部33付近において外部から無菌エアーを導入し、入口部31付近および出口部35付近において無菌エアーを回収(排気)することにより、ボックス36内が陽圧に保たれる。
【0019】
容器転送ユニット40は、図1に示すように、複数(本実施形態では2つ)のターレット41と、容器成形ユニット20の出口部25に接続された入口部42と、充填ユニット30の入口部31に接続された出口部43と、容器転送ユニット40全体を覆うボックス44とを備えている。
【0020】
各ターレット41には、容器Cの首部を把持する複数のグリッパー(図示しない)が備え付けられている。容器転送ユニット40は、図2図3に示すように、後述する殺菌流体ノズル72およびホットエアーノズル74を設置した区間において、容器Cを正立状態(すなわち、容器口部C1側を上方に向けた上向き状態)で、容器Cをグリッパー搬送するように構成されている。
【0021】
なお、容器転送ユニット40のボックス44内は、陽圧に保たれるが、容器転送ユニット40のボックス44内の圧力は、充填ユニット30のボックス36内の気圧や容器成形ユニット20のボックス26の気圧よりも低く維持されている。
【0022】
また、殺菌処理機構50は、図1に示すように、ブロー成形ターレット23の容器リリースポイントRPよりも上流側においてプリフォームまたは容器Cに本殺菌処理を施す本殺菌機60と、容器搬送路80において容器Cに補完殺菌処理を施す補完殺菌機70とを備えている。
【0023】
本殺菌機60は、本実施形態では、図1に示すように、容器成形ユニット20の入口部21および加熱部22の間に設置され、プリフォームの内面、または内面および外面に殺菌剤(本実施形態では過酸化水素)を吹き出すことで、加熱部22におけるプリフォームの加熱も利用して、プリフォームを殺菌するように構成されている。
【0024】
また、補完殺菌機70は、図1に示すように、容器転送ユニット40内に設置され、容器Cの主に内面に補完殺菌処理を施すように構成されている。
【0025】
補完殺菌機70は、図1図2に示すように、複数の殺菌流体ノズル72を有した殺菌流体噴出器71と、殺菌流体ノズル72の下流側に設置される複数のホットエアーノズル74を有したホットエアー噴出器73とを備えている。
【0026】
殺菌流体噴出器71の複数の殺菌流体ノズル72は、ターレット41による容器搬送方向に沿って設置され、本実施形態では、図2に示すように、17本の殺菌流体ノズル72が、2つのターレット41のうち上流側のターレット41Aの外周縁付近に沿って並べて設置されている。
各殺菌流体ノズル72は、図3に示すように、ターレット41Aによって正立状態で搬送される容器Cの上方に固定状態で設置され、容器口部C1からノズル長手方向(本実施形態では上下方向)に離れた位置から、容器口部C1側から容器Cに向けて(下方に向けて)殺菌流体を噴出するように構成されている。
殺菌流体ノズル72の内径は、容器口部C1の内径よりも小さく設定されている。
本実施形態では、殺菌流体ノズル72から噴出される殺菌流体として、過酸化水素(殺菌剤)をホットエアーに混合させたものを利用している。しかしながら、殺菌流体ノズル72から噴出される殺菌流体の具体的態様は、過酸化水素等の殺菌剤の成分を有したものであれば、如何なるものでもよい。
【0027】
また、ホットエアー噴出器73の複数のホットエアーノズル74は、ターレット41による容器搬送方向に沿って設置され、本実施形態では、図2に示すように、15本のホットエアーノズル74が、2つのターレット41のうち下流側のターレット41Bの外周縁付近に沿って並べて設置されている。
各ホットエアーノズル74は、図3に示すように、ターレット41によって正立状態で搬送される容器Cの上方に固定状態で設置され、容器口部C1からノズル長手方向(本実施形態では上下方向)に離れた位置から、容器口部C1側から容器Cに向けて(下方に向けて)ホットエアーを噴出するように構成されている。
ホットエアーノズル74の内径は、容器Cの内径よりも小さく設定されている。
【0028】
なお、本実施形態においては、本殺菌機60による殺菌効果(殺菌能力)は、補完殺菌機70による殺菌効果(殺菌能力)よりも高く設定され、具体的には、本殺菌機60による殺菌効果は3Dよりも大きく設定され、補完殺菌機70による殺菌効果は3D以下に設定され、本殺菌機60および補完殺菌機70による殺菌効果は6D以上に設定されている。
なお、殺菌効果(D)は、殺菌効果(D)=LOG((初発菌数)/(生残菌数))の式で表され、例えば、100個の菌数が10個に減少した場合、LOG(100/10)=1Dとなる。
【0029】
[実験例]
次に、殺菌流体およびホットエアーを容器Cに向けて噴出した場合の、容器Cの各部の内面(容器口部C1の内面、容器胴部C2の内面、容器底部C3の内面)の温度変化を確認するために行った実験例について、図4および図5に基づいて説明する。
【0030】
まず、容器成形ユニット20では、加熱したプリフォームを金型内に配置した後に、プリフォームを長手方向に引き伸ばしながら、エアーを吹き込んで周方向に膨らませることで、容器Cをブロー成形するが、この際、プリフォームの容器口部C1(首部)を金型の外部に出した状態でプリフォームを金型内に配置すること等に起因して、ブロー成形直後の容器Cの各部の内面の温度は、容器口部C1の内面の温度が最も低く、容器底部C3の内面の温度が最も高くなる。具体的には、ブロー成形直後における、容器口部C1の内面の温度は約50℃程度、容器胴部C2の内面の温度は約70℃程度、容器底部C3の内面の温度は約90℃程度になる。
【0031】
そのため、本実験例では、以下に示す実験条件のように、容器口部C1の内面の温度が最も低く、容器底部C3の内面の温度が最も高くなるように、温度を調節された容器Cを用意し、このような容器Cに対して殺菌流体およびホットエアーを、それらの流量及び流速を変えて噴出して、容器口部C1の内面、容器胴部C2の内面、容器底部C3の内面の温度変化を測定した。
また、本実験例では、図4に示すように、容器Cを正立状態で保持した状態で、容器Cの上方から容器Cに対して殺菌流体およびホットエアーを噴出した。
【0032】
本実験例において使用した容器Cの実験条件については、以下の通りである。
容器口部C1の内径:28mm
容器C:容量が200mlのPET(ポリエチレンテレフタレート)ボトル
【0033】
また、殺菌流体の噴出の実験条件については、以下の通りである。
殺菌流体:濃度35.2%の過酸化水素(殺菌剤)をホットエアーに混合させた流体
ホットエアーの温度:約80℃
ホットエアーの流量:30L/min~50L/min
殺菌流体ノズル72の内径:2mm~4mm
殺菌流体ノズル72と容器Cとの間隔D:2mm~30mm
殺菌流体(ホットエアー)の噴出時間:2.5秒
【0034】
また、ホットエアーの噴出の実験条件については、以下の通りである。
ホットエアーの温度:約80℃
ホットエアーの流量:150L/min~250L/min
ホットエアーノズル74の内径:5mm~10mm
ホットエアーノズル74と容器Cとの間隔D:2mm~30mm
ホットエアーの噴出時間:2.5秒
【0035】
上記の実験例の結果から、容器Cに対する殺菌流体およびホットエアーの噴出によって、容器口部C1の内面、容器胴部C2の内面、および容器底部C3の内面の間の温度差を縮小させることができることが分かった。
【0036】
具体的には、まず、容器口部C1の内面については、殺菌流体およびホットエアーの噴出が進むに従って、その温度が概ね徐々に上昇することが確認された。
【0037】
また、容器胴部C2の内面および容器底部C3の内面については、殺菌流体およびホットエアーの噴出時に、その温度が概ね徐々に温度が下降することが確認された。
【0038】
そして、図5に示すように、初期温度が最も低い容器口部C1の内面と初期温度が最も高い容器底部C3の内面との間の温度差は、殺菌流体およびホットエアーの噴出が完了した時点での温度差について、最も低い値で4.2℃に縮小することが分かった。なお、経験的に、容器内温度差が15℃以内であれば、容器Cの各部の殺菌効果を均一にすることができる。
【0039】
また、容器Cの各部(容器口部C1、容器胴部C2、容器底部C3)の内面間の温度差を低減させ、容器各部の内面において殺菌剤による殺菌効果を均一にするためには、諸条件を以下の通りに設定することが好ましい。なお、下記の諸条件は、容器Cが、容量が100ml~2000mlのPETボトルである場合に好適である。
殺菌流体の温度:容器口部C1の内面温度以上で、容器口部C1の耐熱温度以下(例えば、50℃以上かつ150℃以下(更に好ましくは、70℃以上かつ130℃以下))、ここでの容器口部C1の内面温度は、殺菌流体を噴出する直前の、容器口部C1の内面温度である。
ホットエアーの温度:容器口部C1の内面温度以上で、容器口部C1の耐熱温度以下(例えば、50℃以上かつ150℃以下(更に好ましくは、70℃以上かつ130℃以下))、ここでの容器口部C1の内面温度は、ホットエアーを噴出する直前の、容器口部C1の内面温度である。
殺菌流体ノズル72と容器Cとの間隔D:2~40mm(更に好ましくは、10~30mm)
ホットエアーノズル74と容器Cとの間隔D:2~40mm(更に好ましくは、10~30mm)
殺菌流体ノズル72からの殺菌流体の吹き出し速度:70~1000m/s(更に好ましくは、150~300m/s)
ホットエアーノズル74からのホットエアーの吹き出し速度:80~1000m/s(更に好ましくは、150~300m/s)
殺菌流体の流量:20~60L/min(更に好ましくは、30~50L/min)
ホットエアーの流量:100~400L/min(更に好ましくは、150~300L/min)
各容器Cに対してホットエアーを噴出する(当てる)総時間(合計時間):0.5~2.5秒(更に好ましくは、1.0~2.0秒)
各容器Cに対して殺菌流体を噴出する(当てる)総時間(合計時間):0.5~2.5秒(更に好ましくは、1.0~2.0秒)
【0040】
以上、本発明の実施形態を詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行なうことが可能である。
【0041】
例えば、上述した実施形態では、殺菌流体噴出器71およびホットエアー噴出器73が、正立状態で搬送される容器Cの上方から殺菌流体またはホットエアーを噴出するものとして説明したが、容器Cに対する殺菌流体およびホットエアーの噴出態様は、容器口部C1側から容器Cに向けて殺菌流体およびホットエアーを噴出するものであれば、如何なるものでもよい。例えば、倒立状態(すなわち、容器口部C1側を下方に向けた下向き状態)で搬送される容器Cの下方から殺菌流体およびホットエアーを噴出してもよく、また、横向き状態(すなわち、容器口部C1側を側方に向けた横向き状態)で搬送される容器Cの側方から殺菌流体およびホットエアーを噴出してもよい。
また、殺菌流体およびホットエアーを下方や上方に向けて吹き出す場合、鉛直方向に沿って吹き出す必要はなく、鉛直方向に対して斜めに吹き出してもよく、また、殺菌流体およびホットエアーを側方に向けて吹き出す場合、水平方向に沿って吹き出す必要はなく、水平方向に対して斜めに吹き出してもよい。
また、正立状態で搬送される容器Cの上方から殺菌流体を噴出するとともに、倒立状態で搬送される容器Cの下方からホットエアーを噴出する等、容器Cに対する殺菌流体およびホットエアーの噴出の方向を異ならせてもよい。
また、殺菌流体噴出器71による殺菌流体の噴出位置の上流側において、容器口部C1側から容器に向けて、容器口部C1の内面側温度以上のホットエアーを噴出する第2のホットエアー噴出器を更に設けてもよい。
【0042】
また、上述した実施形態では、補完殺菌機70が容器転送ユニット40内に設置されているものとして説明したが、補完殺菌機70の具体的な設置位置は、ブロー成形ターレット23および充填部33の間の容器搬送路80内であれば如何なるものでもよく、例えば、容器成形ユニット20の搬送部24に、殺菌流体噴出器71およびホットエアー噴出器73の少なくとも一方を設置してもよい。
また、容器成形ユニット20の搬送部24に、補完殺菌機70を設置した場合、搬送部24を構成するターレットが、容器搬送路80に設置され殺菌流体ノズル72およびホットエアーノズル74を設置した区画において容器Cを搬送する搬送機として機能する。
また、上記搬送機の具体的態様は、ターレットを用いて容器Cを搬送するものに限定されず、容器Cを搬送可能なものであれば如何なるものでもよく、例えば、容器Cを直線状に搬送するコンベア等から搬送機を構成してもよい。
【0043】
また、上述した実施形態では、殺菌流体ノズル72やホットエアーノズル74が固定された状態で設置されているものとして説明したが、殺菌流体噴出器71およびホットエアー噴出器73の設置態様は上記に限定されない。例えば、殺菌流体噴出器71に、容器搬送方向に沿って殺菌流体ノズル72を移動させる殺菌流体ノズル移動手段を設けるとともに、ホットエアー噴出器73に、容器搬送方向に沿ってホットエアーノズル74を移動させるホットエアーノズル移動手段を設けることにより、容器搬送路80を搬送される容器Cに追従して殺菌流体ノズル72およびホットエアーノズル74を移動させてもよい。この場合、殺菌流体ノズル72およびホットエアーノズル74を容器口部C1に対向させた状態を長く維持し、容器Cの内部に多くの殺菌流体およびホットエアーを送り込むことができる。
【0044】
また、上述した実施形態では、本殺菌機60が、容器成形ユニット20の入口部21および加熱部22の間においてプリフォームに殺菌処理を施すように構成されているものとして説明したが、本殺菌機60の具体的構成は上記に限定されず、ブロー成形ターレット23の容器リリースポイントRPよりも上流側において殺菌剤を塗布して殺菌処理を施すように設置されていればよい。例えば、殺菌剤入りのガスでブロー成形をすることで、容器Cの殺菌処理を施すように構成してもよい。
また、搬送部24において、ブロー成形後の容器Cを、当該容器Cの内部の無菌保持を目的に、容器口部C1側から容器底部C3側に向かってエアーを吹き出した中を、通過させるように搬送してもよい。
【0045】
また、上述した実施形態では、充填ユニット30の各部(充填部33やキャッピング部34等)を纏めて、1つの無菌ボックスで覆うものとして説明したが、充填部33やキャッピング部34を別の無菌ボックスで覆うように構成してもよい。
【0046】
また、上述した実施形態では、補完殺菌機70が、容器Cの主に内面に補完殺菌処理を施すように構成されているものとして説明したが、補完殺菌機70の具体的態様は、上記に限定されず、例えば、容器Cの主に外面のみに補完殺菌処理を施すように構成されていてもよく、また、容器Cの外面および内面に補完殺菌処理を施すように構成されていてもよい。
また、補完殺菌機70によって容器Cの外面に補完殺菌処理を施す場合、上述した容器Cの主に内面に補完殺菌処理を施すための殺菌流体噴出器71およびホットエアー噴出器73に代えて(または、殺菌流体噴出器71およびホットエアー噴出器73に加えて)、容器Cの外面に補完殺菌処理を施す処理器として、容器Cの外面に殺菌流体を噴出する噴出器や、容器Cの外面に電子線(EB)を照射する照射器や、容器Cの外面に紫外線(UV)を照射する照射器等を設け(または、組み合わせて設け)ればよい。
【符号の説明】
【0047】
10 ・・・ 充填システム
20 ・・・ 容器成形ユニット
21 ・・・ 入口部
22 ・・・ 加熱部
23 ・・・ ブロー成形ターレット
24 ・・・ 搬送部
25 ・・・ 出口部
26 ・・・ ボックス
30 ・・・ 充填ユニット
31 ・・・ 入口部
32 ・・・ 搬送部
33 ・・・ 充填部
34 ・・・ キャッピング部
35 ・・・ 出口部
36 ・・・ ボックス
40 ・・・ 容器転送ユニット
41 ・・・ ターレット(搬送機)
42 ・・・ 入口部
43 ・・・ 出口部
44 ・・・ ボックス
50 ・・・ 殺菌処理機構
60 ・・・ 本殺菌機
70 ・・・ 補完殺菌機
71 ・・・ 殺菌流体噴出器
72 ・・・ 殺菌流体ノズル
73 ・・・ ホットエアー噴出器
74 ・・・ ホットエアーノズル
80 ・・・ 容器搬送路
C ・・・ 容器
C1 ・・・ 容器口部
C2 ・・・ 容器胴部
C3 ・・・ 容器底部
RP ・・・ ブロー成形ターレットの容器リリースポイント
図1
図2
図3
図4
図5