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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-13
(45)【発行日】2022-12-21
(54)【発明の名称】乗物用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/70 20060101AFI20221214BHJP
   B60N 2/90 20180101ALI20221214BHJP
   B60N 2/58 20060101ALI20221214BHJP
   B60N 2/72 20060101ALI20221214BHJP
【FI】
B60N2/70
B60N2/90
B60N2/58
B60N2/72
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018172588
(22)【出願日】2018-09-14
(65)【公開番号】P2020044878
(43)【公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116034
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 啓輔
(74)【代理人】
【識別番号】100144624
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 達也
(72)【発明者】
【氏名】溝井 健介
(72)【発明者】
【氏名】高橋 俊彦
【審査官】岡▲さき▼ 潤
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2003/0062758(US,A1)
【文献】特開2015-020597(JP,A)
【文献】特許第6309130(JP,B1)
【文献】特開2017-149235(JP,A)
【文献】特開2002-328674(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102008064663(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/70
B60N 2/90
B60N 2/58
B60N 2/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右に離間して配置された一対のサイドフレームと、前記一対のサイドフレームの前端部同士を連結するフロントフレームと、前記一対のサイドフレームの後端部同士を連結するリアフレームとを有するシートクッションフレームと、
前記シートクッションフレームの上側を覆うシートクッションパッドと、
前記一対のサイドフレームの間に配置され、前記シートクッションフレームに架設された布状支持部材と
前記布状支持部材を、前記フロントフレームと前記リアフレームに架設するための前後方向に延びる一対の架設部材とを備え、
前記布状支持部材は、乗員からの荷重を前記シートクッションパッドを介して下から支持し、乗員の座骨に対応する座骨対応部が、当該座骨対応部の周囲の部分よりも支持力が弱く形成され
前記一対の架設部材は、
前記布状支持部材の左右の縁部に沿って配置されて前記左右の縁部を支持する中間部と、
前記フロントフレームに支持された前支持部と、
前記リアフレームに支持された後支持部と、を有し、
前記中間部は、底部と、前記底部と前記前支持部を繋ぎ、前側が上に位置するように前記底部に対して傾斜する前傾斜部と、前記底部と前記後支持部を繋ぎ、後側が上に位置するように前記底部に対して傾斜する後傾斜部とを有し、
前記座骨対応部は、前後方向における位置が前記底部と前記前傾斜部の両方と重なっていることを特徴とする乗物用シート。
【請求項2】
前記布状支持部材は、乗員の尾骨に対応する尾骨対応部が、当該尾骨対応部の周囲の部分よりも支持力が弱く形成されていることを特徴とする請求項1に記載の乗物用シート。
【請求項3】
前記座骨対応部は、前記尾骨対応部よりも支持力が弱く形成されていることを特徴とする請求項2に記載の乗物用シート。
【請求項4】
前記布状支持部材は、乗員の尾骨に対応する尾骨対応部が、当該尾骨対応部の周囲の部分よりも支持力が弱く形成され、前記尾骨対応部は、前後方向において、前記底部の範囲に位置していることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の乗物用シート。
【請求項5】
前記一対のサイドフレームのそれぞれに固定された一対の側部支持部材であって、前記布状支持部材を右側の前記サイドフレームおよび左側の前記サイドフレームに連結する一対の側部支持部材をさらに備え、
前記一対の側部支持部材は、それぞれ、前記中間部に連結されていることを特徴とする請求項から請求項のいずれか1項に記載の乗物用シート。
【請求項6】
前記一対のサイドフレームのそれぞれに固定された一対の側部支持部材であって、前記布状支持部材を右側の前記サイドフレームおよび左側の前記サイドフレームに連結する一対の側部支持部材をさらに備え、
前記一対の側部支持部材は、それぞれ、前記布状支持部材の左右の側部に連結され、
前記側部支持部材が前記布状支持部材に連結されている連結部の少なくとも一部は、前後方向における位置が、前記座骨対応部の位置と重なることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載の乗物用シート。
【請求項7】
前記連結部は、前後方向に複数並んで設けられていることを特徴とする請求項に記載の乗物用シート。
【請求項8】
前記布状支持部材は、乗員の尾骨に対応する尾骨対応部が、当該尾骨対応部の周囲の部分よりも支持力が弱く形成され、前記側部支持部材が前記布状支持部材に連結されている連結部の少なくとも一部は、前後方向における位置が、前記尾骨対応部の位置と重なることを特徴とする請求項または請求項に記載の乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車などの乗物に搭載される乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの乗物に搭載される乗物用シートは、シートクッションパッドの下に、複数のSバネを左右または前後に架設し、乗員の荷重をSバネにより受ける構造が一般的に採用されている。また、このSバネに代えて、不織布などの布状の部材を線状部材を介してシートフレームに架設し、布状の部材で乗員の荷重を受ける構造も知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開昭58-82162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、長時間座っても快適なシートにするためには、着座時に体にかかる圧力(体圧)が良好に分散され、局部的に高い圧力がかからないようにすることが求められる。
【0005】
そこで、本発明は、体圧を良好に分散させることができる乗物用シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記した目的を達成するため、本発明の乗物用シートは、左右に離間して配置された一対のサイドフレームを有するシートクッションフレームと、シートクッションフレームの上側を覆うシートクッションパッドと、一対のサイドフレームの間に配置され、シートクッションフレームに架設された布状支持部材とを備える。布状支持部材は、乗員からの荷重をシートクッションパッドを介して下から支持し、乗員の座骨に対応する座骨対応部が、当該座骨対応部の周囲の部分よりも支持力が弱く形成されていることを特徴とする。
【0007】
このような構成によれば、布状支持部材がSバネ等に比較して変形しやすいことによって、乗員の体形に馴染み、体圧が分散されやすい。その上、布状支持部材は、乗員の座骨に対応する座骨対応部が、当該座骨対応部の周囲よりも支持力が弱くなっているので、最も体圧が大きくなりやすい座骨付近の体圧を良好に分散させることができる。
【0008】
前記した乗物用シートにおいて、布状支持部材は、乗員の尾骨に対応する尾骨対応部が、当該尾骨対応部の周囲の部分よりも支持力が弱く形成されていてもよい。
【0009】
このような構成によれば、尾骨付近の体圧を良好に分散させることができる。
【0010】
この場合、座骨対応部は、尾骨対応部よりも支持力が弱く形成されていることが望ましい。
【0011】
前記した乗物用シートにおいて、シートクッションフレームは、一対のサイドフレームの前端部同士を連結するフロントフレームと、一対のサイドフレームの後端部同士を連結するリアフレームとを有することができる。そして、布状支持部材を、フロントフレームとリアフレームに架設するための前後方向に延びる一対の架設部材をさらに備えることができる。この場合、一対の架設部材は、布状支持部材の左右の縁部に沿って配置されて左右の縁部を支持する中間部と、フロントフレームに支持された前支持部と、リアフレームに支持された後支持部と、を有することができる。
【0012】
この場合、中間部は、底部と、底部と前支持部を繋ぎ、前側が上に位置するように底部に対して傾斜する前傾斜部と、底部と後支持部を繋ぎ、後側が上に位置するように底部に対して傾斜する後傾斜部とを有していることが望ましい。そして、座骨対応部は、前後方向における位置が底部および前傾斜部の両方と重なっていてもよい。
【0013】
架設部材が、底部と、前傾斜部と、後傾斜部とを有することで、布状支持部材が乗員の体形に馴染み、体圧を良好に分散させることができる。また、座骨対応部の前後方向における位置が底部および前傾斜部の両方と重なっていることで、座骨付近の体圧を良好に分散させることができる。
【0014】
布状支持部材は、乗員の尾骨に対応する尾骨対応部が、当該尾骨対応部の周囲の部分よりも支持力が弱く形成され、尾骨対応部は、前後方向において、底部の範囲に位置していることが望ましい。
【0015】
このような構成によれば、尾骨付近の体圧を良好に分散させることができる。
【0016】
前記した乗物用シートは、一対のサイドフレームのそれぞれに固定された一対の側部支持部材であって、布状支持部材を右側のサイドフレームおよび左側のサイドフレームに連結する一対の側部支持部材をさらに備えることができる。一対の側部支持部材は、それぞれ、中間部に連結されていることが望ましい。
【0017】
このような構成によれば、側部支持部材によって、架設部材を支持し、それにより布状支持部材に局部的な力を与えることなく布状支持部材を支持することができる。また、側部支持部材によって、乗員の側部を支えることができるので、座骨付近の体圧を良好に分散させることができる。
【0018】
前記した乗物用シートは、一対のサイドフレームのそれぞれに固定された一対の側部支持部材であって、布状支持部材を右側のサイドフレームおよび左側のサイドフレームに連結する一対の側部支持部材をさらに備えることができる。一対の側部支持部材は、それぞれ、布状支持部材の左右の側部に連結されていてもよい。そして、側部支持部材が布状支持部材に連結されている連結部の少なくとも一部は、前後方向における位置が、座骨対応部の位置と重なることが望ましい。
【0019】
このように、連結部の少なくとも一部が、前後方向における位置が、座骨対応部の位置と重なるように配置されることで、乗員の座骨の左右側方を側部支持部材で支えることができ、座骨付近の体圧を良好に分散させることができる。
【0020】
この場合、連結部は、前後方向に複数並んで設けられていてもよい。
【0021】
また、布状支持部材は、乗員の尾骨に対応する尾骨対応部が、当該尾骨対応部の周囲の部分よりも支持力が弱く形成され、側部支持部材が布状支持部材に連結されている連結部の少なくとも一部は、前後方向における位置が、尾骨対応部の位置と重なることが望ましい。
【0022】
このような構成によれば、連結部の少なくとも一部が、前後方向における位置が、尾骨対応部の位置と重なるように配置されることで、乗員の尾骨の左右側方を側部支持部材で支えることができ、尾骨付近の体圧を良好に分散させることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、布状支持部材は、乗員の座骨に対応する座骨対応部が、当該座骨対応部の周囲よりも支持力が弱くなっているので、最も体圧が大きくなりやすい座骨付近の体圧を良好に分散させることができる。
【0024】
また、尾骨対応部が、当該尾骨対応部の周囲の部分よりも支持力が弱く形成されていることで、尾骨付近の体圧を良好に分散させることができる。
【0025】
また、架設部材が、底部と、前傾斜部と、後傾斜部とを有することで、布状支持部材が乗員の体形に馴染み、体圧を良好に分散させることができる。また、座骨対応部の前後方向における位置が底部および前傾斜部の両方と重なっていることで、座骨付近の体圧を良好に分散させることができる。
【0026】
また、尾骨対応部が、底部に配置されていることで、尾骨付近の体圧を良好に分散させることができる。
【0027】
また、側部支持部材を備えることによって、架設部材を良好に支持することができる。また、側部支持部材によって、乗員の側部を支えることができるので、座骨付近の体圧を良好に分散させることができる。
【0028】
また、連結部の少なくとも一部は、前後方向における位置が、座骨対応部の位置と重なるように配置されることで、乗員の座骨の左右側方を側部支持部材で支えることができ、座骨付近の体圧を良好に分散させることができる。
【0029】
また、連結部の少なくとも一部は、前後方向における位置が、尾骨対応部の位置と重なるように配置されることで、乗員の尾骨の左右側方を側部支持部材で支えることができ、尾骨付近の体圧を良好に分散させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】実施形態に係る乗物用シートを示す斜視図である。
図2】クッションフレームを示す斜視図である。
図3】側部支持部材とワイヤの連結部の断面図である。
図4】クッションフレームの平面図である。
図5図4のX-X線断面図である。
図6】第1変形例における図5に相当する図である。
図7】第2変形例における図5に相当する図である。
図8】第3変形例における図2に相当する図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、添付の図面を参照しながら発明の実施形態について説明する。なお、本明細書において、前後、左右、上下は、シートに座った者(着座者)から見た、前後、左右、上下を基準とする。
図1に示すように、本実施形態の乗物用シートは、自動車に搭載される車両用シートSとして構成され、シートクッションS1と、シートバックS2と、ヘッドレストS3とを備えている。
【0032】
図2に示すように、シートクッションS1の内部には、シートフレームFが内蔵されている。シートフレームFは、シートクッションS1の骨格を構成するシートクッションフレームF1と、シートバックS2の骨格を構成するシートバックフレームF2を有する。シートクッションS1は、シートクッションフレームF1に、ウレタンフォームなどからなり、シートクッションフレームF1の上側を覆うシートクッションパッドP1(図1参照)と、布地や皮革などからなる表皮材を被せることで構成されている。シートバックS2は、シートバックフレームF2にシートバックパッドP2(図1参照)と、表皮材を被せることで構成されている。
【0033】
また、シートクッションS1は、布状支持部材20と、一対の架設部材の一例としての一対の金属製のワイヤ30と、一対の側部支持部材40とを有している。
【0034】
シートクッションフレームF1は、左右のサイドフレーム11と、フロントフレーム12と、リアフレーム13とを備えている。
左右のサイドフレーム11は、左右に離間して配置されている。左右のサイドフレーム11の少なくとも片方の後端部には、シートバックフレームF2が図示しないリクライニング機構を介して回動可能に取り付けられている。
【0035】
フロントフレーム12とリアフレーム13は、前後に離間して配置されている。
フロントフレーム12は、一対のサイドフレーム11の前端部同士を連結している。詳しくは、フロントフレーム12は、金属製のパイプからなるパイプフレーム12Aと、金属板からなるパンフレーム12Bとを含む。パイプフレーム12Aおよびパンフレーム12Bは、いずれも、一対のサイドフレーム11の前端部同士を連結している。
リアフレーム13は、金属製のパイプからなり、一対のサイドフレーム11の後端部同士を連結している。
【0036】
布状支持部材20は、一対のサイドフレーム11の間に配置されている。布状支持部材20は、乗員からの荷重をシートクッションパッドP1を介して下から支持する。布状支持部材20は、織布または不織布などの布により構成された、適度な柔軟性を有する部材である。布状支持部材20は、適度な強度を持たせるため、プラスチック、ゴム、エラストマー等の含浸またはコーティング等により補強されていてもよい。また、基材となる布を複数枚重ね合わせてもよい。さらに、布状支持部材20は、部分的に繊維または糸の密度を変更し、または、部分的に糸の種類を変更してもよい。このような構成によっても、布状支持部材20の支持力を部分的に変更することが可能である。
【0037】
布状支持部材20は、乗員の座骨に対応する座骨対応部21が、当該座骨対応部21の周囲の部分よりも支持力が弱く形成されている。本実施形形態においては、座骨対応部21は、一例として、乗員の左右の座骨に対応する部分(座骨の真下)に形成された2つの貫通孔からなる。座骨対応部21は、互いに左右に並んで配置されている。
また、布状支持部材20は、乗員の尾骨に対応する尾骨対応部22が、当該尾骨対応部22の周囲の部分よりも支持力が弱く形成されている。本実施形形態においては、尾骨対応部22は、一例として、乗員の尾骨に対応する部分(尾骨の真下)に形成された1つの貫通孔からなる。尾骨対応部22は、座骨対応部21よりも後の位置で、左右中央に配置されている。
なお、ここでの「支持力が弱い」とは、貫通孔や凹みにより支持力が弱い場合や、周囲の部分よりも撓みやすい構造、材料からなることにより支持力が弱い場合を含む。
【0038】
一対のワイヤ30は、布状支持部材20を、フロントフレーム12とリアフレーム13に架設するための前後方向に延びる部材である。一対のワイヤ30は、布状支持部材20の左右の縁部20Eに沿って配置されて左右の縁部20Eを支持する中間部31と、フロントフレーム12のパイプフレーム12Aに支持された前支持部32と、リアフレーム13に支持された後支持部33と、を有する。
前支持部32は、フック形状を有し、パイプフレーム12Aに上から引っ掛かっている。後支持部33は、フック形状を有し、リアフレーム13に上から引っ掛かっている。
【0039】
側部支持部材40は、布状支持部材20を右側のサイドフレーム11および左側のサイドフレーム11に連結する部材である。また、側部支持部材40は、乗員の臀部および大腿部を側方から支持する部材であり、一対のサイドフレーム11のそれぞれに固定されている。側部支持部材40は、板状に形成された樹脂からなり、サイドフレーム11を覆うカバー部41と、乗員を支持する支持部42と、ワイヤ30と連結した連結部43とを有する。
【0040】
カバー部41は、サイドフレーム11の前後方向の中央部から後端部にかけて、サイドフレーム11の上側および左右内側を覆っている。すなわち、側部支持部材40は、サイドフレーム11の後端部を覆うインナーカバーを兼ねている。
支持部42は、カバー部41の左右内側の下端から、シートフレームFの左右中央側および下方に向けて斜めに延びている。
連結部43は、支持部42の、側部支持部材40の左右内側に延びた下端部に設けられている。各連結部43は、前後方向に複数、一例として、3つ並んで設けられている。
【0041】
図3に示すように、布状支持部材20の左右方向の端部には、ループ24が形成されている。具体的には、布状支持部材20の右端部が折り畳まれて縫合部23により前後方向に沿って縫われることで、ループ24が形成されている。ループ24の中には、ワイヤ30が通っている。なお、図3には、布状支持部材20の右端部の周辺を示しているが、左端部周辺も右端部と同様の構造を有している。
【0042】
図4に示すように、布状支持部材20の左右の縁部20Eには、ワイヤ30を露出させる切欠き25が形成されている。切欠き25は、連結部43に対応して、3箇所形成されている。
【0043】
図3に示すように、連結部43は、上方に向けて開口したフック形状を有している。ワイヤ30の中間部31は、布状支持部材20の切欠き25から露出した部分が、連結部43のフックに上から係合している。これにより、側部支持部材40は、中間部31に連結されている。そして、側部支持部材40は、ワイヤ30を介して、布状支持部材20の側部に連結されている。
【0044】
図4に示すように、側部支持部材40の連結部43の少なくとも一部は、前後方向における位置が、座骨対応部21の位置と重なっている。具体的には、前後に並ぶ3つの連結部43のうち、前から2つの連結部43は、その全体が、前後方向において座骨対応部21と重なる位置に配置されている。
【0045】
また、側部支持部材40の連結部43の少なくとも一部は、前後方向における位置が、尾骨対応部22の位置と重なっている。具体的には、前後に並ぶ3つの連結部43のうち、一番後ろの連結部43は、その一部が、前後方向において尾骨対応部22と重なる位置に配置されている(Wで示した範囲を参照)。
【0046】
図5に示すように、ワイヤ30の中間部31は、底部31Aと、前傾斜部31Bと、後傾斜部31Cとを有する。
底部31Aは、最も下に位置し、略水平に前後に延びるように配置されている。
前傾斜部31Bは、底部31Aと前支持部32を繋ぎ、前側が上に位置するように底部31Aに対して傾斜している。
後傾斜部31Cは、底部31Aと後支持部33を繋ぎ、後側が上に位置するように底部31Aに対して傾斜している。後傾斜部31Cの底部31Aに対する傾きθは、前傾斜部31Bの底部31Aに対する傾きθより大きい。
布状支持部材20は、ワイヤ30の形状に倣い、底部31Aに対応する底布部20Aと、前傾斜部31Bに対応する傾斜した前布部20Bと、後傾斜部31Cに対応する傾斜した後布部20Cとを有している。
【0047】
座骨対応部21は、前後方向における位置が、底部31Aおよび前傾斜部31Bの両方と重なっている(図4も参照)。すなわち、座骨対応部21は、底布部20Aと前布部20Bに渡って配置されている。
尾骨対応部22は、前後方向において、底部31Aの範囲に位置している。すなわち、尾骨対応部22は、底布部20Aに配置されている。
【0048】
以上のように構成された車両用シートSによれば、次のような作用効果を奏することができる。
布状支持部材20は、金属のSバネ等に比較して変形しやすいため、形状が乗員の体形に馴染みやすく、体圧が分散されやすい。その上、布状支持部材20は、乗員の座骨に対応する座骨対応部21が、当該座骨対応部21の周囲よりも支持力が弱くなっているので、最も体圧が大きくなりやすい座骨付近の体圧を良好に分散させることができる。
【0049】
また、布状支持部材20は、乗員の尾骨に対応する尾骨対応部22が、当該尾骨対応部22の周囲よりも支持力が弱くなっているので、尾骨付近の体圧を良好に分散させることができる。
【0050】
また、ワイヤ30が、底部31Aと、前傾斜部31Bと、後傾斜部31Cとを有することで、布状支持部材20が乗員の体形に馴染みやすいので、体圧を良好に分散させることができる。また、座骨対応部21の前後方向における位置が、底部31Aおよび前傾斜部31Bの両方と重なっていることで、座骨付近の体圧を良好に分散させることができる。
【0051】
また、尾骨対応部22は、前後方向において、底部31Aの範囲に位置しているので、尾骨付近の体圧を良好に分散させることができる。
【0052】
また、側部支持部材40は、ワイヤ30の中間部31に連結されているので、側部支持部材40によって、ワイヤ30を支持し、それにより、布状支持部材20に局部的な力を掛けることなく布状支持部材20を支持することができる。また、側部支持部材40によって、乗員の臀部や大腿部の側部を支えることができるので、座骨付近の体圧を良好に分散させることができる。
【0053】
また、連結部43の少なくとも一部は、前後方向における位置が、座骨対応部21の位置と重なるように配置されている。このため、乗員の座骨の左右側方を側部支持部材40で支えることができ、座骨付近の体圧を良好に分散させることができる。
【0054】
また、連結部43の少なくとも一部は、前後方向における位置が、尾骨対応部22の位置と重なるように配置されている。このため、乗員の尾骨の左右側方を側部支持部材40で支えることができ、尾骨付近の体圧を良好に分散させることができる。
【0055】
以上に発明の一実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではない。具体的な構成については、下記のように発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
【0056】
例えば、前記実施形態においては、布状支持部材20が一枚の布からなっていたが、複数枚の布に分割して構成してもよい。例えば、図6に示す第1変形例のように、後布部20Cは底布部20Aと別体に構成されていてもよい。
【0057】
また、前記実施形態においては、後傾斜部31Cが、底部31Aに対してθで傾く部分のみから構成されていたが、図7に示すように、後傾斜部31Cが、底部31Aに対してθで傾く第1後傾斜部131Cと、底部31Aと第1後傾斜部131Cを繋ぎ、θよりも小さい角度θで底部31Aに対して傾く第2後傾斜部131Dとから構成されていてもよい。この場合、布状支持部材20も、第1後傾斜部131Cに対応する急傾斜部121Cと、第2後傾斜部131Dに対応する緩傾斜部121Dとを有することができる。
【0058】
このような構成によれば、布状支持部材20をより乗員の体型に馴染んだ形として、体圧の分散を図ることができる。
また、この場合においては、尾骨対応部22は、前後方向における位置が、底部31Aおよび第1後傾斜部131Cの両方と重なっていてもよい。
【0059】
前記実施形態においては、座骨対応部21および尾骨対応部22は、貫通孔により形成されていたが、図8に示すように、薄い撓みやすい部材が配置されていてもよい。図8に示す例では、座骨対応部221および尾骨対応部222に周囲の布よりも伸縮性が高いメッシュが配置されている。メッシュは、周囲のより丈夫な布の部分に接着、溶着または縫製などにより固定されている。
【0060】
このように、周囲より撓みやすいシート状の部材を座骨対応部221および尾骨対応部222に配置することで、座骨対応部221および尾骨対応部222の支持力を調整し、体圧を良好に分散させることができる。
【0061】
ここで、座骨対応部221と尾骨対応部222の支持力は同じでなくてもよく、例えば、座骨対応部221のメッシュを粗くすることにより、座骨対応部221の支持力が尾骨対応部222の支持力より弱く形成されていてもよい。このような構成により、最も荷重が掛かる座骨周辺の体圧を良好に分散させることができる。
【0062】
また、フロントフレーム12のうち、パイプフレーム12Aにワイヤ30を支持させていたが、パンフレーム12Bにワイヤ30を支持させてもよい。リアフレーム13においても同様である。
【0063】
また、前記実施形態においては、前側から2つの連結部43は、前後方向において、全体が座骨対応部21と重なっていたが、前後方向において、一部のみが座骨対応部21と重なっていてもよい。
【0064】
また、前記実施形態においては、最も後の連結部43は、前後方向において、一部のみが尾骨対応部22と重なっていたが、前後方向において、全体が尾骨対応部22と重なっていてもよい。
【0065】
また、連結部43は、前後方向において、座骨対応部21および尾骨対応部22と異なる位置に配置されていてもよい。
【0066】
前記実施形態においては、架設部材としての金属製のワイヤ30により、布状支持部材20をシートクッションフレームF1に架設させていたが、架設部材は、金属以外のワイヤであってもよいし、樹脂などの線状の部材でもよい。また、架設部材は、左右のサイドフレームに架け渡されていてもよい。
【0067】
また、側部支持部材40は、ワイヤ30を介して布状支持部材40と連結されていたが、他の構成により連結されていてもよい。例えば、布状支持部材にハトメを設け、側部支持部材をハトメに引っ掛けたり、ハトメと側部支持部材を他の紐やフック等で連結することもできる。
【0068】
また、前記実施形態においては、布状支持部材をシートクッションに設けていたが、シートバックに布状支持部材を設け、乗員からの荷重をシートバックパッドを介して布状支持部材で受けるように構成することもできる。
【0069】
また、前記実施形態では、乗物用シートとして自動車に搭載される車両用シートSを例示したが、これに限定されず、自動車以外の乗物、例えば、鉄道車両や船舶、航空機などに搭載されるシートであってもよい。
【0070】
また、前記した実施形態および変形例で説明した各要素を、任意に組み合わせて実施してもよい。
【符号の説明】
【0071】
11 サイドフレーム
12 フロントフレーム
12A パイプフレーム
12B パンフレーム
13 リアフレーム
20 布状支持部材
20E 縁部
21 座骨対応部
22 尾骨対応部
30 ワイヤ
31 中間部
31A 底部
31B 前傾斜部
31C 後傾斜部
32 前支持部
33 後支持部
40 側部支持部材
43 連結部
F シートフレーム
F1 シートクッションフレーム
P1 シートクッションパッド
S 車両用シート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8