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  • 特許-架空送電線作業用接地板 図1
  • 特許-架空送電線作業用接地板 図2
  • 特許-架空送電線作業用接地板 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-13
(45)【発行日】2022-12-21
(54)【発明の名称】架空送電線作業用接地板
(51)【国際特許分類】
   H02G 1/02 20060101AFI20221214BHJP
   H01R 4/64 20060101ALI20221214BHJP
【FI】
H02G1/02
H01R4/64 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019004463
(22)【出願日】2019-01-15
(65)【公開番号】P2020114131
(43)【公開日】2020-07-27
【審査請求日】2021-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110000545
【氏名又は名称】弁理士法人小竹アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】黒瀬 善昭
【審査官】遠藤 尊志
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-005547(JP,A)
【文献】実開昭58-011869(JP,U)
【文献】特開2006-260775(JP,A)
【文献】特開平11-097086(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 1/00-1/10
H02G 7/00-7/22
H01R 4/58-4/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄塔の腕金に取り付けられ、架空送電線にアース線を介して接続される架空送電線作業用接地板において、
前記架空送電線の一端を支持する電線プレートを前記腕金の先端に固定する複数のボルト・ナットを使用して、前記電線プレートと共に前記腕金の先端に締め付け固定される、
ことを特徴とする架空送電線作業用接地板。
【請求項2】
前記腕金の外方に張り出す接地端子取付部が形成され、
前記接地端子取付部には、前記アース線の一端を固定する接地端子が取り付けられる、
ことを特徴とする請求項1に記載の架空送電線作業用接地板。
【請求項3】
前記架空送電線の一端側に配置された電線設置部材との接触を避ける折り曲げ部分が前記接地端子取付部に形成された、
ことを特徴とする請求項2に記載の架空送電線作業用接地板。
【請求項4】
前記腕金に固定される腕金固定部と前記接地端子取付部とを有し、
前記腕金固定部には、一対のボルト・ナットのボルトの軸部を係合するボルト穴が間隔を開けて一対形成され、
前記ボルト穴は、前記一対のボルト・ナットの配列方向に沿って延びる長穴であり、
一対の前記ボルト穴の一方は、前記一対のボルト穴の他方の長手方向一端に係合された前記ボルトの軸部を中心に前記腕金固定部が回動させられた際に、前記ボルトの軸部を前記ボルト穴の長手方向一端側に案内するボルト案内溝が接続され、
前記ボルト案内溝は、一端が前記一対のボルト穴の一方の長手方向一端側に開口し、他端が前記腕金固定部の側方に開口する、
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の架空送電線作業用接地板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、鉄塔の腕金に取り付けられる架空送電線作業用接地板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
架空送電線の点検や電気工事は、点検箇所や工事箇所を停電状態にして作業が行われるが、停電作業時でも架空送電線に誘導電流が誘起される場合がある。そこで、従来から、架空送電線の点検や電気工事は、架空送電線に誘起される誘導電流による作業者の感電事故を防止するため、鉄塔の腕金に取り付けられた架空送電線作業用接地板(以下、接地板と適宜略称する)と架空送電線とをアース線で接続し、架空送電線の誘導電流をアース線、接地板、及び鉄塔を介して地中に逃がす(アースする)ようになっている(特許文献1(特に図2)参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-119165号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、鉄塔の腕金に接地板を取り付ける作業は、予め用意された接地板の複数のボルト取付穴(接地板側ボルト取付穴)の穴間隔及び穴径と合うように、腕金にドリル等でボルト取付穴(腕金側ボルト取付穴)を穴あけ加工し、腕金側ボルト取付穴及び接地板側ボルト取付穴にボルトの軸部を挿通して、接地板を腕金にボルト・ナットで締め付け固定している。しかしながら、鉄塔の腕金にボルト取付穴をドリルで穴あけ加工する作業は、高所での作業であるため、作業者の作業負担が大きく、接地板の腕金への取付作業が容易でないという問題を有していた。
【0005】
そこで、本発明は、鉄塔の腕金への取付作業を容易に行えるようにした架空送電線作業用接地板を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、鉄塔2の腕金3に取り付けられ、架空送電線4にアース線20を介して接続される架空送電線作業用接地板1に関するものである。この発明に係る架空送電線作業用接地板1は、前記架空送電線4の一端を支持する電線プレート5を前記腕金3の先端に固定する複数のボルト・ナット6を使用して、前記電線プレート5と共に前記腕金3の先端に締め付け固定されるようになっている。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る接地板は、電線プレートを腕金の先端に固定する複数のボルト・ナットを使用して、電線プレートと共に腕金の先端に締め付け固定されるようになっているため、腕金に固定するためのボルト穴を腕金に新たに穴あけ作業する必要がなく、鉄塔の腕金への取付作業を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施例に係る架空送電線作業用接地板の取付状態を示す図であり、図1(a)は架空送電線作業用接地板と鉄塔の腕金との関係を簡略化して示す平面図、図1(b)は図1(a)のA部の拡大図、図1(c)は図1(b)のB1方向から見た腕金先端側の側面図である。
図2図2(a)は本発明の実施例に係る架空送電線作業用接地板の平面図、図2(b)は本発明の実施例に係る架空送電線作業用接地板の側面図、図2(c)は第1変形例に係る架空送電線作業用接地板の平面図、図2(d)は第2変形例に係る架空送電線作業用接地板の平面図である。
図3図3(a)は架空送電線の接地状態を示す腕金先端側の平面図であり、図3(b)は図3(a)のB2方向から見た腕金先端側の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施例を図面に基づき詳述する。
【0010】
図1から図3に示すように、本発明の実施例に係る架空送電線作業用接地板1(以下、接地板と略称する)は、鉄塔2の腕金3の先端であって、架空送電線4の一端側を引き留めるように支持する電線プレート5が複数のボルト・ナット6で固定された腕金3の先端に一対のボルト・ナット6,6で固定されている。接地板1は、平面視した形状が矩形形状の薄板である。そして、この接地板1は、腕金3に固定される腕金固定部(斜線部)7と、接地端子8が取り付けられる接地端子取付部(斜線部以外の領域)10と、を有している(図2(a)参照)。
【0011】
接地板1の腕金固定部7には、電線プレート5を腕金3に固定する複数のボルト・ナット6のうちの隣り合う一対のボルト・ナット6,6のボルト6aの軸部を係合するボルト穴(丸穴)11が一対形成されている。また、接地板1の接地端子取付部10は、架空送電線4の一端側に配置された電線設置部材12(例えば、長幹がいし13、アークホーン14)との接触を考慮する必要がない場合、図1(a)及び図1(b)に示すように平板状のままで腕金3に固定されるが、架空送電線4の一端側に配置された電線設置部材12との接触を考慮する必要がある場合、電線設置部材12との接触を避ける折り曲げ部分15が適宜形成される。なお、本実施例における接地板1の接地端子取付部10は、架空送電線4の一端側に配置された電線設置部材12との接触を回避するため、折り曲げ部分15が側辺16に沿って折り曲げ形成されている。また、接地板1の接地端子取付部10は、電線設置部材12との接触を避けるためや、作業スペースを確保するために、一部(例えば、図1(a)の点線17で区切る三角状部分18)を切り欠いてもよい。
【0012】
また、本実施例において、接地板1の接地端子取付部10は、腕金3から前方に張り出した平板状部分(腕金固定部7から前方に延出した平板状部分)に接地端子8が固定されている。接地端子8は、架空送電線4に接続されるアース線20の一端を固定するようになっており、上部のハンドル21を回動操作することにより、接地板1の接地端子取付部10に着脱可能に固定されている。なお、この接地端子8は、腕金3から側方に張り出した接地板1の接地端子取付部10(例えば、折り曲げ部分15)に着脱可能に固定してもよい。
【0013】
以上のような接地板1は、電線プレート5を腕金3の先端に固定する複数のボルト・ナット6のうちの隣り合う一対のボルト・ナット6,6のナット6b,6bをボルト6a,6aから取り外し、ナット6b,6bを取り外した一対のボルト6b,6bの軸部に一対のボルト穴11,11を係合した後、ナット6b,6bをボルト6a,6aに螺合して、一対のボルト・ナット6,6で電線プレート5と共に腕金3に締め付け固定される。
【0014】
腕金3の先端に固定された接地板1は、例えば、図3に示すように架空送電線4に電気的に接続される。すなわち、接地板1は、架空送電線4に取り付けられたアークホーン14(長幹がいし13の前方に取り付けられたアークホーン14)と、このアークホーン14を把持する接地棒22の金属製フック23と、この金属製フック23に接続されたアース線20と、このアース線20の一端が固定される接地端子8と、を介して架空送電線4に電気的に接続され、架空送電線4の誘導電流を鉄塔2を介して地中に逃がす(アースする)ようになっている。なお、接地棒22は、基端部24(金属製フック23が取り付けられた先端部と反対側の端部)が腕金3に紐、ロープ、又は粘着テープ等の固定手段25で固定される。
【0015】
以上のように、本実施例に係る接地板1は、架空送電線4の一端を支持する電線プレート5を腕金3の先端に固定する複数のボルト・ナット6のうちの一対のボルト・ナット6,6を使用して、電線プレート5と共に腕金3の先端に締め付け固定されるようになっているため、腕金3に固定するためのボルト穴を腕金3に新たに穴あけ作業する必要がなく、鉄塔2の腕金3への取付作業を容易に行うことができる。
【0016】
(第1変形例)
図2(c)は、第1変形例に係る接地板1の平面図である。この図2(c)に示すように、本変形例に係る接地板1は、一対のボルト・ナット6,6のボルト6a,6aの軸部を係合するボルト穴11,11が腕金固定部3に間隔を開けて一対形成されている。ボルト穴11は、一対のボルト・ナット6,6の配列方向に沿って延びる長穴である。この一対のボルト穴11,11の一方は、一対のボルト穴11,11の他方の長手方向一端に係合されたボルト6aの軸部を中心に腕金固定部3が回動させられた際に、ボルト6aの軸部をボルト穴11の長手方向一端側に案内するボルト案内溝26が接続されている。ボルト案内溝26は、平面視した形状が円弧形状であり、一端が一対のボルト穴11,11の一方の長手方向一端側に開口し、他端が腕金固定部7の側方(側辺16側)に開口している。ボルト穴11,11は、ボルト6aの軸部がボルト案内溝26に沿ってボルト穴11の一端側まで移動した後、接地板1が一対のボルト・ナット6,6の配列方向に沿って(前方へ向かって)移動させられると、ボルト6aの軸部がボルト案内溝26から外れる長さに形成された長穴である。
【0017】
このような本変形例に係る接地板1は、一対のボルト穴11,11の一方に係合されるボルト6aがナット6bを取り外すことなく(ナット6bと腕金3との間に接地板1を挿入する隙間ができる程度にナット6bが緩められるだけで)一対のボルト穴11,11の一方に係合させることができるため、鉄塔2の腕金3への取付作業を上記実施例に係る接地板1よりも容易に行うことができる。
【0018】
(第2変形例)
図2(d)は、第2変形例に係る接地板1の平面図であり、上記第1変形例に係る接地板1の変形例を示す図である。この図2(d)に示すように、本変形例に係る接地板1は、一対のボルト穴11,11の他方は、一対のボルト穴11,11の一方の長手方向一端に係合されたボルト6aの軸部を中心に腕金固定部7が回動させられた際に、ボルト6aの軸部をボルト穴11の長手方向一端側に案内するボルト案内溝26が接続されている。このような本変形例に係る接地板1は、上記第1変形例に係る接地板1と同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0019】
1……接地板(架空送電線作業用接地板)、2……鉄塔、3……腕金、4……架空送電線、5……電線プレート、6……ボルト・ナット、20……アース線
図1
図2
図3