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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-13
(45)【発行日】2022-12-21
(54)【発明の名称】建物情報表示装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/13 20200101AFI20221214BHJP
   G06F 30/27 20200101ALI20221214BHJP
【FI】
G06F30/13
G06F30/27
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019022670
(22)【出願日】2019-02-12
(65)【公開番号】P2020129346
(43)【公開日】2020-08-27
【審査請求日】2021-12-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(73)【特許権者】
【識別番号】514080981
【氏名又は名称】HEROZ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】木下 拓也
(72)【発明者】
【氏名】松原 由典
(72)【発明者】
【氏名】小田島 暢之
(72)【発明者】
【氏名】鹿島 孝
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 亜希子
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 宏和
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 琢也
(72)【発明者】
【氏名】島野 幸弘
(72)【発明者】
【氏名】松岡 康友
(72)【発明者】
【氏名】芹澤 好徳
(72)【発明者】
【氏名】北川 昌尚
(72)【発明者】
【氏名】車 創太
(72)【発明者】
【氏名】石田 高義
(72)【発明者】
【氏名】亀森 淳也
(72)【発明者】
【氏名】井口 圭一
(72)【発明者】
【氏名】関 享太
(72)【発明者】
【氏名】川島 直樹
(72)【発明者】
【氏名】谷澤 理一
(72)【発明者】
【氏名】坂井 靖弘
【審査官】堀井 啓明
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-299162(JP,A)
【文献】特開平11-134509(JP,A)
【文献】特開平10-3486(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/00-30/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の建物の各々について、前記建物の属性を表す属性値を要素に持つベクトルの各々を取得する取得部と、
前記取得部によって取得された、複数の前記ベクトルの各々を所定の方式によって次元圧縮することにより、複数の前記ベクトルの各々を、2次元又は3次元の圧縮されたベクトルを表す圧縮ベクトルへ変換する圧縮部と、
前記圧縮部によって圧縮された前記圧縮ベクトルの各々を表示する表示制御部と、
を含む建物情報表示装置。
【請求項2】
前記属性値は、前記建物の構造種別を表す構造種別情報、前記建物の用途を表す用途情報、前記建物の規模を表す規模情報、及び前記建物が建設される建設地を表す建設地情報のうちの少なくとも1つを含む、
請求項1に記載の建物情報表示装置。
【請求項3】
前記圧縮部によって圧縮された前記圧縮ベクトルの各々を表す画像を、所定の変換方式によって変換する変換部を更に含む、
請求項1又は請求項2に記載の建物情報表示装置。
【請求項4】
予め指定された特定の建物を表す特定建物の前記圧縮ベクトルを基準ベクトルとして記憶部に記憶させ、
前記取得部は、新たな建物の前記ベクトルを更に取得し、
前記変換部は、新たな建物の前記ベクトルを含む複数の前記ベクトルに対する、新たな前記圧縮ベクトルの各々が得られた場合、新たな前記圧縮ベクトルのうちの前記特定建物の前記圧縮ベクトルと、前記記憶部に記憶された前記基準ベクトルとに基づいて、前記特定建物の前記圧縮ベクトルが前記基準ベクトルに対応するようにアフィン変換行列を計算し、新たな前記圧縮ベクトルの各々に対して前記アフィン変換行列により変換を行い、
前記表示制御部は、前記変換部による変換結果を表示する、
請求項3に記載の建物情報表示装置。
【請求項5】
前記取得部は、新たな建物の前記ベクトルを更に取得し、
前記圧縮部は、前記取得部によって取得された新たな前記ベクトルを、学習用の建物の前記ベクトルと該学習用の前記ベクトルが圧縮された学習用の前記圧縮ベクトルとが対応付けられた学習用データに基づき予め学習された学習済みモデルへ入力して、新たな前記ベクトルを前記圧縮ベクトルへ変換する、
請求項1~請求項4の何れか1項に記載の建物情報表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物情報表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、構築対象の構成要素選択表示装置及び表示方法が知られている(例えば、特許文献1)。この構成要素選択表示装置は、建物の内装、外観を構成する構築対象毎に主マップを設定し、主マップに対応した複数の補助マップを設定する。各マップには嗜好要素軸と用途要素軸からなる二次元座標が構成され、主マップには構築対象、例えば内装を施された居室の写真が、補助マップには構成要素、例えば照明器具、内装材が各要素軸に関連付けて配置される。
【0003】
また、建築用デザインの分類方法および分類装置が知られている(例えば、特許文献2)。この分類装置は、分類対象となるデザインについての個々の構成要素(天井面材、壁面材、…)に着目対象となる特定の材質、たとえば、木が用いられているか否かを示すデータに基づいて、木については面材としての利用が多いか線材としての利用が多いかを示す第1のパラメータ値と、木が全体的に利用されているか部分的に利用されているかを示す第2のパラメータ値とを決定する。また、この分類装置は、この2つのパラメータの一方を横軸に他方を縦軸にそれぞれとることにより二次元パラメータマップを用意し、このマップ上で分類対象となるデザインをそのパラメータ値に基づいて分類する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平10-269270号公報
【文献】特許第4514892号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
建物は複数の属性を有している。例えば、建物の構造種別、建物の用途、及び建物の規模等の複数の属性値によって1つの建物が表される。
【0006】
ここで、ユーザが複数の建物間の関係性を把握しようとする場合に、複数の属性値を要素として持つ高次元ベクトルによって1つの建物を表現し、それらのベクトルを所定の座標空間へマッピングすることを考える。
【0007】
この場合、4つ以上の属性値を持つ高次元ベクトルによって1つの建物が表されるときには、その関係性が可視化されないため、ユーザは複数の建物の各々の関係性を適切に把握することができない、という課題がある。
【0008】
上記特許文献1及び上記特許文献2に記載の技術では、建物の情報が二次元のパラメータマップに表されるが、複数の建物が4次元以上の高次元ベクトルによって表現される場合については考慮されていない。
【0009】
本発明は上記事実に鑑みて、複数の建物の各々を表す高次元ベクトルを適切に可視化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の建物情報表示装置は、複数の建物の各々について、前記建物の属性を表す属性値を要素に持つベクトルの各々を取得する取得部と、前記取得部によって取得された、複数の前記ベクトルの各々を所定の方式によって次元圧縮することにより、複数の前記ベクトルの各々を、2次元又は3次元の圧縮されたベクトルを表す圧縮ベクトルへ変換する圧縮部と、前記圧縮部によって圧縮された前記圧縮ベクトルの各々を表示する表示制御部と、を含む建物情報表示装置である。本発明の建物情報表示装置によれば、複数の建物の各々を表す高次元ベクトルの各々を適切に可視化することができる。
【0011】
本発明の前記属性値は、前記建物の構造種別を表す構造種別情報、前記建物の用途を表す用途情報、前記建物の規模を表す規模情報、及び前記建物が建設される建設地を表す建設地情報のうちの少なくとも1つを含むようにすることができる。これにより、建物の構造種別、建物の用途、建物の規模、及び建物の建設地の少なくとも1つの属性値を含む建物の高次元ベクトルを可視化させることができる。
【0012】
本発明は、前記圧縮部によって圧縮された前記圧縮ベクトルの各々を表す画像を、所定の変換方式によって変換する変換部を更に含む、ようにすることができる。これにより、建物を表す高次元ベクトルの各々を所定の配置関係によって可視化させることができる。
【0013】
本発明は、予め指定された特定の建物を表す特定建物の前記圧縮ベクトルを基準ベクトルとして記憶部に記憶させ、前記取得部は、新たな建物の前記ベクトルを更に取得し、前記変換部は、新たな建物の前記ベクトルを含む複数の前記ベクトルに対する、新たな前記圧縮ベクトルの各々が得られた場合、新たな前記圧縮ベクトルのうちの前記特定建物の前記圧縮ベクトルと、前記記憶部に記憶された前記基準ベクトルとに基づいて、前記特定建物の前記圧縮ベクトルが前記基準ベクトルに対応するようにアフィン変換行列を計算し、新たな前記圧縮ベクトルの各々に対して前記アフィン変換行列により変換を行い、前記表示制御部は、前記変換部による変換結果を表示するようにすることができる。これにより、新たな建物を表す高次元ベクトルが追加されたときに、既に存在する圧縮ベクトル間の配置関係の崩れを抑制して、高次元ベクトルを可視化させることができる。
【0014】
本発明の前記取得部は、新たな建物の前記ベクトルを更に取得し、前記圧縮部は、前記取得部によって取得された新たな前記ベクトルを、学習用の建物の前記ベクトルと該学習用の前記ベクトルが圧縮された学習用の前記圧縮ベクトルとが対応付けられた学習用データに基づき予め学習された学習済みモデルへ入力して、新たな前記ベクトルを前記圧縮ベクトルへ変換するようにすることができる。これにより、新たな建物を表す高次元ベクトルが追加されたときに、既に存在する圧縮ベクトル間の配置関係を崩さずに、高次元ベクトルを可視化させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、複数の建物の各々を表す高次元ベクトルを適切に可視化することができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態に係る建物情報表示装置の概略構成を示すブロック図である。
図2】本実施形態の建物の圧縮ベクトルの分布の一例を説明するための説明図である。
図3】アフィン変換を説明するための説明図である。
図4】アフィン変換による変換処理を説明するための説明図である。
図5】アフィン変換による変換処理を説明するための説明図である。
図6】本実施形態の建物情報表示処理ルーチンの一例を示す図である。
図7】第1実施形態の変換処理ルーチンの一例を示す図である。
図8】第2実施形態に係る建物情報表示装置の概略構成を示すブロック図である。
図9】第2実施形態を説明するための説明図である。
図10】第2実施形態の学習済みモデルの一例を示す図である。
図11】第2実施形態の学習処理ルーチンの一例を示す図である。
図12】第2実施形態の圧縮ベクトル変換処理ルーチンの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0018】
<第1実施形態>
【0019】
<建物情報表示装置のシステム構成>
【0020】
図1は、第1実施形態に係る建物情報表示装置100の構成の一例を示すブロック図である。建物情報表示装置100は、機能的には、図1に示すように、受付部10、コンピュータ20、及び表示部34を含んだ構成で表すことができる。
【0021】
受付部10は、複数の建物の各々について、当該建物の属性を表す属性値を要素に持つベクトルの各々を受け付ける。ベクトルの詳細については後述する。なお、受付部10は、例えば、キーボード、マウス、及び外部装置等によって実現される。
【0022】
コンピュータ20は、CPU(Central Processing Unit)、各処理ルーチンを実現するためのプログラム等を記憶したROM(Read Only Memory)、データを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)、記憶手段としてのメモリ、ネットワークインタフェース等を含んで構成されている。コンピュータ20は、機能的には、図1に示すように、取得部22と、建物ベクトル記憶部24と、圧縮部26と、圧縮情報記憶部28と、特定建物圧縮情報記憶部30と、表示制御部32と、変換部36とを備えている。特定建物圧縮情報記憶部30は、本発明の記憶部の一例である。
【0023】
取得部22は、受付部10により受け付けられた複数のベクトルの各々を取得する。そして、取得部22は、複数のベクトルの各々を建物ベクトル記憶部24へ格納する。
【0024】
本実施形態のベクトルは、建物の属性値を要素として持つ。なお、1つのベクトルが1つの建物を表す。また、本実施形態のベクトルは4つ以上の属性値を要素に持つベクトルであり、本実施形態のベクトルは4次元以上のベクトルである。
【0025】
建築設計者が設計対象の建物の構造設計を行う際には、設計対象の建物と類似する過去の建物を参考にすることが多い。建物が有する属性値が類似している建物同士は類似しているといえる。このため、複数の建物が有する属性値の関係を可視化させると、建築設計者は、建物間の類似性を簡易に把握することができる。なお、建物の属性値としては、例えば、建物の構造種別、建物の用途、建物の規模(例えば、延べ床面積及び階高等)、及び建物の架構等が用いられる。
【0026】
しかし、建物が有する属性値が4つ以上である場合には、建物を表すベクトルが4次元以上となり、その属性値を要素に持つベクトルをマップ上に投影することができず、可視化することができない。
【0027】
そこで、本実施形態の建物情報表示装置100は、建物の属性値を要素に持つ4次元以上のベクトルを次元圧縮して、当該ベクトルを2次元化又は3次元化して表示する。これにより、複数の建物間の関係性を可視化することができる。
【0028】
以下、具体的に説明する。
【0029】
建物ベクトル記憶部24には、受付部10により受け付けられた複数のベクトルの各々が格納される。例えば、属性値としては、建物の構造種別を表す構造種別情報、建物の用途を表す用途情報、建物の規模を表す規模情報、及び建物が建設される建設地を表す建設地情報等が含まれる。
【0030】
構造種別情報としては、例えば、対象の建物がRC造、S造、及びSRC造の何れであるのかを示す情報が用いられる。また、用途情報としては、例えば、対象の建物が共同住宅、病院、及び学校等の何れであるのかを示す情報が用いられる。また、規模情報としては、例えば、建物の延べ床面積及び建物の階高等の情報が用いられる。また、建設地情報としては、対象の建物が建てられる建設地を表す情報が用いられる。なお、例えば、RC造、S造、及びSRC造の何れであるのかを示す情報等の質的な情報については、RC造であれば「1」、S造であれば「2」といった形式で表される。
【0031】
圧縮部26は、建物ベクトル記憶部24に格納された複数のベクトルの各々を所定の方式によって次元圧縮することにより、複数のベクトルの各々を、2次元又は3次元の圧縮されたベクトルを表す圧縮ベクトルへ変換する。
【0032】
本実施形態においては、圧縮部26は、所定の方式の一例であるt-SNE(SNE:Stochastic Neighbor Embedding)によって、複数のベクトルの各々を圧縮ベクトルへ変換する。t-SNEによって、複数のベクトルの各々が圧縮ベクトルへ変換されることにより、高次元のベクトル間の関係性を保持したまま圧縮ベクトルが得られる。
【0033】
また、圧縮部26は、変換により得られた複数の圧縮ベクトルを、圧縮情報記憶部28へ格納する。また、圧縮部26は、予め指定された特定の建物を表す特定建物の圧縮ベクトルを基準ベクトルとして特定建物圧縮情報記憶部30に格納する。特定建物はユーザによって予め指定される。基準ベクトルの用いられ方については後述する。
【0034】
圧縮情報記憶部28には、圧縮部26によって得られた、複数の建物の圧縮ベクトルの各々が格納される。また、特定建物圧縮情報記憶部30には、圧縮部26によって得られた、特定建物の圧縮ベクトルを表す基準ベクトルが格納される。
【0035】
表示制御部32は、圧縮情報記憶部28に格納された圧縮ベクトルの各々を表示する。
【0036】
表示部34は、表示制御部32による制御に応じて画面を表示する。例えば、表示部34は、ディスプレイによって実現される。
【0037】
具体的には、表示部34は、表示制御部32による制御に応じて圧縮ベクトルの各々を一覧表示する。例えば、表示部34は、図2に示されるような建物の類似性マップMを表示する。類似性マップMには、圧縮部26によって得られた圧縮ベクトルの各々が表示されている。なお、圧縮ベクトルの各々は類似性マップM内のドットによって表されている。これにより、設計者は、設計対象の建物の属性値と類似する属性値を有する建物を、簡易に把握することができる。
【0038】
具体的には、図2に示される例では、設計対象の建物を表すドットTと、設計対象の建物と類似する建物を表すドットSと、その他の建物を表すドットとが表示されている。このため、建築設計者であるユーザは、設計対象の建物と他の建物とがどの程度類似しているのかを簡易に把握できる。また、ユーザは、例えば、設計対象の建物と類似する建物の設計内容を参考にして、設計対象の建物の設計を進めることができる。
【0039】
次に、上記図2に示される類似性マップMに、新たな建物のベクトルを投影する場合を考える。類似性マップMは、建物ベクトル記憶部24に格納されているベクトルの各々に基づき生成されたものである。この場合、新たなベクトルを類似性マップMに投影しようとする場合には、圧縮部26によって新たな建物のベクトルを含む複数のベクトルを再度圧縮する必要がある。
【0040】
しかし、新たな建物のベクトルを含めた状態で圧縮部26により複数のベクトルを再度圧縮すると、前回の圧縮で得られた類似性マップとは分布が異なる類似性マップが生成されてしまう。これにより、前回得られ、かつ見慣れた類似性マップとは異なるマップ上に新たな設計対象の建物の圧縮ベクトルが投影されるため、ユーザは、新たな設計対象の建物がどのような建物と類似しているのか分かりづらい状態となる。
【0041】
そこで、本実施形態の建物情報表示装置100は、新たな建物のベクトルを含むベクトルから生成された圧縮ベクトルの各々を表す画像を、所定の変換方式の一例であるアフィン変換によって変換する。アフィン変換によって類似性マップが変換されることにより、前回までに得られた類似性マップの分布と同じような類似性マップの分布が得られ、ユーザである設計者は、戸惑うことなく設計対象の建物の位置を把握することができる。
【0042】
図3に、アフィン変換を説明するための説明図を示す。図3に示されるように、所定の画像に対してアフィン変換が実行されることにより、画像の平行移動、拡大又は縮小、回転、及びせん断等の処理が施される。これにより、新たに得られる類似性マップの画像が、前回得られた類似性マップと同じような画像となり、ユーザである設計者は、戸惑うことなく、設計対象の建物と他の建物との関係性を把握することができる。
【0043】
以下、具体的に説明する。
【0044】
取得部22は、受付部10により受け付けられた新たな建物のベクトル(以下、単に「新たなベクトル」と称する。)を更に取得する。新たなベクトルは、ユーザである建築設計者によって受付部10を介してコンピュータ20へ入力される。取得部22は、新たなベクトルを建物ベクトル記憶部24へ格納する。
【0045】
建物ベクトル記憶部24には、新たなベクトルを含む、複数のベクトルの各々が格納されている。
【0046】
圧縮部26は、建物ベクトル記憶部24に格納された、新たなベクトルを含む複数のベクトルの各々をt-SNEによって次元圧縮することにより、新たなベクトルを含む複数のベクトルの各々を、圧縮ベクトルへ変換する。
【0047】
変換部36は、圧縮部26によって圧縮された圧縮ベクトルの各々を表す画像を、アフィン変換によって変換する。
【0048】
具体的には、まず、変換部36は、特定建物圧縮情報記憶部30に記憶された基準ベクトルを読み出す。なお、この基準ベクトルは、圧縮部26による前回の圧縮処理により得られた特定建物のベクトルである。基準ベクトルは、アフィン変換を実行するためのベクトルであり、予め設定される。
【0049】
そして、変換部36は、今回の圧縮部26によって圧縮された特定建物の圧縮ベクトルが、読み出された基準ベクトルに一致するようにアフィン変換行列を計算し、今回の圧縮部26により得られた圧縮ベクトルの各々に対してアフィン変換行列により変換を行う。
【0050】
図4及び図5に、建物の圧縮ベクトルを表す画像に対してアフィン変換が実行された場合の一例を示す。図4及び図5に示されるように、アフィン変換によって、画像の平行移動、拡大又は縮小、回転、及びせん断等の処理が施される。
【0051】
図4に示されるI,I,Iは、類似性マップの元画像の一例である。I,I,Iは、各々異なる類似性マップの元画像である。また、類似性マップ内のドットは、どのような変換がなされたかが分かり易いように、複数種類の異なる形状のドットが示されている。
【0052】
図4に示される元画像I及びIに対してアフィン変換を施し、元画像Iに近づける場合を考える。この場合、図4に示されるように、元画像I及びIに対して拡大処理がなされて画像IBZ及びICZとなる。
【0053】
また、図5に示されるように、元画像I及びIに対して反転処理又は回転処理がなされて画像IBR及びICRとなる。また、図5に示されるように、元画像I及びIに対して、せん断処理、回転処理、又は平行移動処理がなされて画像IBP及びICPとなる。
【0054】
このようにしてアフィン変換処理がなされ、新たな類似性マップに対して元の類似性マップの分布と近い分布となるような変換処理が行われる。
【0055】
そして、表示制御部32は、変換部36による変換結果を表示する。建物情報表示装置100のユーザである設計者は、表示部34に表示された変換結果を確認する。そしてユーザは、新たな建物とその他の建物との間の関係性を確認し、新たな建物の設計を進める。
【0056】
<建物情報表示装置の作用>
【0057】
次に、図6及び図7を参照して、建物情報表示装置100の作用を説明する。建物情報表示装置100は、図6の建物情報表示処理ルーチンと図7の変換処理ルーチンとを実行する。
【0058】
<建物情報表示処理ルーチン>
【0059】
建物情報表示装置100の受付部10に複数のベクトルが入力されると、コンピュータ20は、図6に示される建物情報表示処理ルーチンを実行する。
【0060】
ステップS100において、取得部22は、受付部10により受け付けた複数のベクトルを取得する。そして、取得部22は、複数のベクトルの各々を建物ベクトル記憶部24へ格納する。
【0061】
ステップS102において、圧縮部26は、建物ベクトル記憶部24に格納された複数のベクトルの各々を読み出す。そして、圧縮部26は、複数のベクトルの各々をt-SNEによって次元圧縮することにより、複数のベクトルの各々を、2次元又は3次元の圧縮されたベクトルを表す圧縮ベクトルへ変換する。また、圧縮部26は、変換により得られた複数の圧縮ベクトルを、圧縮情報記憶部28へ格納する。また、圧縮部26は、予め指定された特定の建物を表す特定建物の圧縮ベクトルを基準ベクトルとして特定建物圧縮情報記憶部30に格納する。
【0062】
ステップS104において、表示制御部32は、上記ステップS102で得られた圧縮ベクトルの各々を表示して、建物情報表示処理ルーチンを終了する。
【0063】
表示部34は、表示制御部32による制御に応じて画面を表示する。
【0064】
<変換処理ルーチン>
【0065】
次に、建物情報表示装置100の受付部10に、新たなベクトルが入力されると、建物情報表示装置100のコンピュータ20は、図7に示される変換処理ルーチンを実行する。
【0066】
ステップS200において、取得部22は、受付部10により受け付けられた新たなベクトルを取得する。そして、取得部22は、新たなベクトルを建物ベクトル記憶部24へ格納する。
【0067】
ステップS202において、圧縮部26は、建物ベクトル記憶部24に格納された、新たなベクトルを含む複数のベクトルの各々を読み出す。そして、圧縮部26は、新たなベクトルを含む複数のベクトルの各々をt-SNEによって次元圧縮することにより、新たなベクトルを含む複数のベクトルの各々を、圧縮ベクトルへ変換する。
【0068】
ステップS204において、変換部36は、特定建物圧縮情報記憶部30に記憶された基準ベクトルを読み出す。
【0069】
ステップS206において、変換部36は、上記ステップS202で圧縮された特定建物の圧縮ベクトルが、上記ステップS204で読み出された基準ベクトルに一致するようにアフィン変換行列を計算し、上記ステップS202で得られた圧縮ベクトルの各々に対してアフィン変換行列により変換を行う。
【0070】
ステップS208において、表示制御部32は、上記ステップS206による変換によって得られた画像を表示する。
【0071】
表示部34は、表示制御部32による制御に応じて画面を表示する。
【0072】
以上詳細に説明したように、本実施形態の建物情報表示装置は、建物の属性を表す属性値を要素に持つベクトルの各々を所定の方式によって次元圧縮することにより、複数のベクトルの各々を、2次元又は3次元の圧縮されたベクトルを表す圧縮ベクトルへ変換する。そして、本実施形態の建物情報表示装置は、圧縮された圧縮ベクトルの各々を表示する。これにより、複数の建物の各々を表す高次元ベクトルを適切に可視化することができる。
【0073】
具体的には、複数の建物の圧縮ベクトルが投影されるマップ上において、複数の建物の関係性を一覧性よく、かつ類似する建物のドット同士が近くに配置されるように可視化することができる。
【0074】
また、近年においては、複合用途を有する建物又は複数の構造種別を有する建物等、複雑な建物が増加しているため、このような複雑な建物を一覧性良く、かつ網羅的に表示することにより、ユーザの設計作業を適切に支援することができる。
【0075】
また、建物に対して特徴を表すラベルを付与することなく、複数の建物の関係性を簡易に把握することができる。具体的には、本実施形態においては、建物の属性値を用いるため、構造設計ソフトウェア等に含まれている既存のデータを活用することができる。このため、別途データベース等の構築をする必要がなく、複数の建物の関係性を簡易に把握することができる。
【0076】
また、本実施形態の建物情報表示装置は、新たなベクトルに対する新たな圧縮ベクトルが得られた場合、新たな圧縮ベクトルのうちの特定建物の圧縮ベクトルと基準ベクトルとに基づいて、特定建物の圧縮ベクトルが基準ベクトルに対応するようにアフィン変換行列を計算し、新たな圧縮ベクトルの各々に対してアフィン変換行列により変換を行い、当該変換結果を表示する。これにより、新たな建物を表す高次元ベクトルが追加されたときに、既に存在する圧縮ベクトル間の配置関係の崩れを抑制して、高次元ベクトルを可視化させることができる。
【0077】
<第2実施形態>
【0078】
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態では、学習用データから予め学習された学習済みモデルを用いて、新たなベクトルを圧縮ベクトルへ変換する点が、第1実施形態と異なる。なお、第1実施形態と同様の構成となる部分については、同一符号を付して説明を省略する。
【0079】
第1実施形態において説明したように、複数のベクトルに新たなベクトルが追加され、それらのベクトルに対して圧縮処理がなされる場合、新たなベクトルが追加されていることにより、圧縮処理によって得られる建物の類似性マップは前回得られたものとは異なるものとなってしまう。
【0080】
そこで、第2実施形態においては、学習用データから予め学習された学習済みモデルを用いて、新たなベクトルを圧縮ベクトルへ変換する。第2実施形態では、再度の圧縮処理を行う必要がないため、前回得られた類似性マップのうちのドット間の関係性を崩さずに、高次元のベクトルを可視化させることができる。
【0081】
<建物情報表示装置のシステム構成>
【0082】
図8は、第2実施形態に係る建物情報表示装置200の構成の一例を示すブロック図である。建物情報表示装置200は、機能的には、図8に示すように、受付部10、コンピュータ220、及び表示部34を含んだ構成で表すことができる。
【0083】
コンピュータ220は、機能的には、図8に示すように、取得部22と、建物ベクトル記憶部24と、圧縮部226と、圧縮情報記憶部28と、特定建物圧縮情報記憶部230と、学習部231と、学習済みモデル記憶部232と、表示制御部32とを備えている。
【0084】
図9に、第2実施形態を説明するための説明図を示す。図9(A)に示されるように、第2実施形態においては、学習用データから予め学習された学習済みモデルを用いて、4次元以上のベクトルを2次元又は3次元の圧縮ベクトルへ変換する。
【0085】
なお、上記のような処理を実現する場合には、学習用データを予め用意する必要がある。そこで、第2実施形態においては、圧縮部226によって既に得られた複数の圧縮ベクトルのうち、特定建物の圧縮ベクトルを学習用データとして用いる。具体的には、第2実施形態においては、図9(B)に示されるように、特定建物の4次元以上のベクトルと圧縮部226によって既に得られた特定建物の圧縮ベクトルとの組み合わせを学習用データとする。この学習用データに基づき、4次元以上のベクトルから圧縮ベクトルを出力するための学習済みモデルが生成される。
【0086】
以下、具体的に説明する。
【0087】
特定建物圧縮情報記憶部30には、特定建物のベクトルと特定建物の圧縮ベクトルとが対応付けられた学習用データが格納される。特定建物のベクトルは、学習用の建物のベクトルの一例である。また、特定建物の圧縮ベクトルは、学習用の圧縮ベクトルの一例である。学習用データは、学習済みモデルを学習させる際に用いられる。
【0088】
学習部231は、特定建物圧縮情報記憶部30に格納された学習用データに基づいて、ベクトルから圧縮ベクトルを出力するための学習済みモデルを生成する。そして、学習部231は、学習済みモデルを学習済みモデル記憶部232へ格納する。
【0089】
なお、学習済みモデルの元となるモデルにはどのようなものを用いてもよいが、第2実施形態においては、モデルとしてサポートベクターマシーンを用いる場合を例に説明する。
【0090】
図10に、第2実施形態の学習済みモデルを説明するための説明図を示す。図10に示されるように、4次元以上の高次元なベクトルが入力データとして学習済みモデルへ入力されると、例えば、学習済みモデルは2次元の圧縮ベクトル(x,y)を出力データとして出力する。
【0091】
学習済みモデル記憶部232には、学習部231によって得られた学習済みモデルが格納される。
【0092】
圧縮部26は、取得部22によって取得された新たなベクトルを、学習済みモデル記憶部232に格納された学習済みモデルへ入力して、新たなベクトルを圧縮ベクトルへ変換する。
【0093】
このように、第2実施形態では、複数の建物のベクトルを可視化するため圧縮が行われた後に新たなベクトルを追加しようとする場合、学習済みモデルを用いて新たなベクトルに対応する圧縮ベクトルを得る。このため、新たなベクトルを追加して再度の圧縮処理をする必要がなく、前回得られた類似性マップのドット間の関係性を崩さずに、新たなベクトルを圧縮ベクトルへ変換することができる。
【0094】
<建物情報表示装置の作用>
【0095】
次に、建物情報表示装置200の作用を説明する。建物情報表示装置200の受付部10に複数のベクトルが入力されると、コンピュータ220は、上記図6に示される建物情報表示処理ルーチンを実行する。
【0096】
なお、建物情報表示処理ルーチンが実行される際には、圧縮部26は、特定建物のベクトルと当該特定建物の圧縮ベクトルとの組み合わせを、学習用データとして特定建物圧縮情報記憶部30に格納する。
【0097】
そして、建物情報表示装置200は、学習処理開始の指示信号を受け付けると、図11の学習処理ルーチンを実行する。
【0098】
<学習処理ルーチン>
【0099】
ステップS300において、学習部231は、特定建物圧縮情報記憶部30に格納された学習用データを読み出す。
【0100】
ステップS302において、学習部231は、上記ステップS300で読み出された学習用データに基づいて、ベクトルから圧縮ベクトルを出力するための学習済みモデルを生成する。
【0101】
ステップS304において、学習部231は、上記ステップS302で生成された学習済みモデルを学習済みモデル記憶部232へ格納して、学習処理ルーチンを終了する。
【0102】
次に、新たなベクトルが建物情報表示装置200へ入力されると、建物情報表示装置200は、図12の圧縮ベクトル変換処理ルーチンを実行する。
【0103】
ステップS400において、取得部22は、受付部10により受け付けられた新たなベクトルを取得する。
【0104】
ステップS402において、圧縮部226は、学習済みモデル記憶部232に格納された学習済みモデルを読み出す。
【0105】
ステップS404において、圧縮部226は、上記ステップS400で取得された新たなベクトルを、上記ステップS402で読み出された学習済みモデルへ入力して、新たなベクトルを圧縮ベクトルへ変換する。
【0106】
ステップS406において、表示制御部32は、上記ステップS404で得られた圧縮ベクトルと、圧縮情報記憶部28に格納された圧縮ベクトルの各々とを表示する。
【0107】
表示部34には、新たなベクトルに対応する圧縮ベクトルと、前回までに得られた圧縮ベクトルの各々とが一覧表示される。
【0108】
以上詳細に説明したように、第2実施形態の建物情報表示装置は、新たなベクトルを、学習用の建物のベクトルと該学習用のベクトルが圧縮された学習用の圧縮ベクトルとが対応付けられた学習用データに基づき予め学習された学習済みモデルへ入力して、新たなベクトルを圧縮ベクトルへ変換する。これにより、新たな建物を表す高次元ベクトルが追加されたときに、既に存在する圧縮ベクトル間の配置関係を崩さずに、高次元ベクトルを可視化させることができる。
【0109】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。
【0110】
例えば、上記実施形態においては、高次元のベクトルを圧縮する所定の方式の一例としてt-SNEを用いる場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、他の方式を用いても良い。
【0111】
また、上記実施形態では、ベクトルから圧縮ベクトルを出力するモデルの一例としてサポートベクターマシーンを用いる場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、ニューラルネットワークをモデルとして用い、学習アルゴリズムは既知のものを用いるようにしてもよい。
【0112】
また、複数の建物の圧縮ベクトルの各々のうち、特徴的な建物を表すドットの色を、その他の建物を表すドットの色と異なる色で表示するようにしてもよい。これにより、建築設計者は、設計対象の建物と特徴的な建物とを簡易に把握することができる。
【0113】
また、上記では本発明に係るプログラムが記憶部(図示省略)に予め記憶(インストール)されている態様を説明したが、本発明に係るプログラムは、CD-ROM、DVD-ROM及びマイクロSDカード等の記録媒体に記録されている形態で提供することも可能である。
【符号の説明】
【0114】
20,220 コンピュータ
22 取得部
24 建物ベクトル記憶部
26,226 圧縮部
28 圧縮情報記憶部
30,230 特定建物圧縮情報記憶部
32 表示制御部
34 表示部
36 変換部
100,200 建物情報表示装置
231 学習部
232 学習済みモデル記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12