IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱電機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-半導体装置 図1
  • 特許-半導体装置 図2
  • 特許-半導体装置 図3
  • 特許-半導体装置 図4
  • 特許-半導体装置 図5
  • 特許-半導体装置 図6
  • 特許-半導体装置 図7
  • 特許-半導体装置 図8
  • 特許-半導体装置 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-13
(45)【発行日】2022-12-21
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/40 20060101AFI20221214BHJP
   H01L 25/07 20060101ALI20221214BHJP
   H01L 25/18 20060101ALI20221214BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20221214BHJP
   H05K 1/02 20060101ALI20221214BHJP
   H01L 23/36 20060101ALI20221214BHJP
【FI】
H01L23/40 Z
H01L25/04 C
H05K7/20 D
H05K1/02 F
H01L23/36 C
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019058666
(22)【出願日】2019-03-26
(65)【公開番号】P2020161605
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-03-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109612
【弁理士】
【氏名又は名称】倉谷 泰孝
(74)【代理人】
【識別番号】100153176
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 重明
(74)【代理人】
【識別番号】100116643
【弁理士】
【氏名又は名称】伊達 研郎
(72)【発明者】
【氏名】野見山 浩
【審査官】豊島 洋介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/002249(WO,A1)
【文献】米国特許第05415418(US,A)
【文献】実開昭57-048350(JP,U)
【文献】特開2001-127237(JP,A)
【文献】特開2003-046035(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L23/29
H01L23/34 -23/36
H01L23/373-23/427
H01L23/44
H01L23/467-23/473
H01L25/00 -25/07
H01L25/10 -25/11
H01L25/16 -25/18
H05K 1/00 - 1/02
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子を有する通電部と、
前記通電部を囲うケースと、
前記通電部及び前記ケースの裏側に設けられた放熱板と、
前記ケースもしくは前記放熱板の少なくとも一方に設けられた外部の放熱システムに締め付けるための複数のねじ締め穴と、
複数の前記ねじ締め穴のそれぞれの近傍に設けられ、複数の前記ねじ締め穴に設けられるねじを締める順番を表示した複数の締付け順番表示構造と、
を備え、
複数の前記ねじ締め穴は、前記通電部を挟んだ一方側と他方側とにそれぞれ同じ数設けられ、
前記通電部を挟んだ一方側または他方側の複数の前記締付け順番表示構造が表示する順番は、中央側の順番が外側の順番より先であり、
前記ねじ締め穴は、前記通電部を挟んで複数設けられており、
複数の前記締付け順番表示構造が表示する順番のうち偶数番目の順番は、前記偶数番目の順番の1つ前の順番と対角となる位置に設けられている半導体装置。
【請求項2】
前記締付け順番表示構造のそれぞれは、前記ねじ締め穴から最も近い別の前記ねじ締め穴までの距離の2分の1の距離を半径とする範囲内に設けられている請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
複数の前記ねじ締め穴は、前記放熱板のみに設けられ、
前記ねじ締め穴が、前記ケースのおもて面側から視認可能である請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記ケースは前記放熱板に隣接したねじ締め用平坦部を有し、
前記ねじ締め用平坦部に複数の前記ねじ締め穴を有する請求項1からのいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記ねじ締め用平坦部に前記締付け順番表示構造を有する請求項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記締付け順番表示構造は前記ケースに設けられ、凹部構造、インク印字構造、レーザー印字構造のいずれかを用いて前記各ねじ締め穴のねじを締める順番を表示した請求項1からのいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記締付け順番表示構造は前記放熱板に設けられ、凹部構造、レジスト構造、めっき構造のいずれかを用いて前記各ねじ締め穴のねじを締める順番を表示した請求項1からのいずれか1項に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インバータ等に用いられるパワーモジュールなどの半導体装置では、通電時にパワーチップで発生した熱を効率よく放熱することが重要である。放熱技術としては、半導体装置から少なくとも一面が露出した熱伝導率の高い放熱板を備え、放熱板の露出した一面をフィンなどの外部の放熱システムに接触させてパワーチップで発生した熱を放熱板を介して外部の放熱システムに伝熱させて放熱する技術がある。
【0003】
例えば、従来の半導体装置では、放熱板に複数のねじ締め穴を設けて、ねじ締め穴にて放熱板と放熱システムとをねじで締めることで放熱板と放熱システムとを密着させ、パワーチップで発生した熱を放熱システムに伝熱させて放熱させている(例えば、特許文献1)。
【0004】
従来の半導体装置のねじ締め作業者は、ねじ締め穴をどのような順番でねじ締めするかを、半導体装置のカタログ等の仕様書にて確認して作業をしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-245479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したような従来の半導体装置においては、取り付け作業者が半導体装置のカタログ等の仕様書に記載の締め付け順番を誤って認識した場合に、間違った順番で、放熱板とフィンとをねじ締めする懸念があった。間違った順番でねじ締めをした場合には、ねじが十分に締まらずに半導体装置全体の放熱性が低下する等の懸念があった。
【0007】
本願は、上述のような課題を解決するためになされたもので、間違った順番でねじ締めがされることを防止可能な半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願に開示される半導体装置は、半導体素子を有する通電部と、通電部を囲うケースと、通電部及びケースの裏側に設けられた放熱板と、ケースもしくは放熱板の少なくとも一に設けられた外部の放熱システムに締め付けるための複数のねじ締め穴と、複数のねじ締め穴のそれぞれの近傍に設けられ、複数のねじ締め穴に設けられるねじを締める順番を表示した複数の締付け順番表示構造とを備え、複数のねじ締め穴は、通電部を挟んだ一方側と他方側とにそれぞれ同じ数設けられ、通電部を挟んだ一方側または他方側の複数の締付け順番表示構造が表示する順番は、中央側の順番が外側の順番より先であり、ねじ締め穴は、通電部を挟んで複数設けられており、複数の締付け順番表示構造が表示する順番のうち偶数番目の順番は、偶数番目の順番の1つ前の順番と対角となる位置に設けられている。
【発明の効果】
【0009】
本願に開示される半導体装置によれば、半導体装置に設けられた締め付け順番に従ってねじ締めを行うことができるため、間違った順番でねじ締めがされることが防止可能な半導体装置を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態1に係る半導体装置を上面から見た平面図である。
図2】実施の形態1に係る半導体装置を下面から見た平面図である。
図3】実施の形態1に係る半導体装置の断面図である。
図4】締付け順番表示構造の配置箇所の一例を示す図である。
図5】比較例に係る半導体装置を片締めとなる順番で締め付けた場合の側面図である。
図6】締付け順番表示構造の表示の順番の変更例である。
図7】実施の形態2に係る半導体装置を上面から見た平面図である
図8】実施の形態2に係る半導体装置の断面図である。
図9】実施の形態3に係る半導体装置を上面から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら実施の形態について説明する。図面は模式的に示されたものであるため、サイズ及び位置の相互関係は変更し得る。以下の説明では、同じまたは対応する構成要素には同じ符号を付与し、繰り返しの説明を省略する場合がある。
【0012】
また、以下の説明では、「上」、「下」、「側」、「底」、「表(おもて)」または「裏」などの特定の位置及び方向を意味する用語が用いられる場合があるが、これらの用語は、実施の形態の内容を理解することを容易にするために便宜上用いられているものであり、実際に実施される際の方向を限定するものではない。
【0013】
なお、各実施の形態を組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略したりすることが可能である。
【0014】
<実施の形態1>
図1図2図3を用いて実施の形態1に係る半導体装置100の構成を説明する。図1は実施の形態1に係る半導体装置を上面から見た平面図である。図2は実施の形態1に係る半導体装置を下面から見た平面図である。図3は実施の形態1に係る半導体装置の断面図である。図3図1に記載のA-A線での断面図である。
【0015】
図2に示すように、半導体装置100は、放熱板1を有する。放熱板1は銅やアルシンク(Al-SiC)等から構成される。放熱板1は矩形状であり、放熱板1の裏面は、全面が半導体装置100から露出している。放熱板1は、プレス加工や切削加工等の機械的加工によって形成された8つのねじ締め穴1aを有する。ねじ締め穴1aは、放熱板1に
2列で平行に配置される。具体的には、ねじ締め穴1aが4つずつ2列で設けられる。各列で4つのねじ締め穴1aの中心を結び描いた仮想線Lは夫々が直線であり、二つの仮想線Lは平行である。また、各列の4つのねじ締め穴1aは、夫々が距離Dを空けて等間隔に配置されている。
【0016】
図3に示すように、放熱板1のおもて面上には絶縁体で構成された絶縁層2が配置されている。放熱板1と絶縁層2とはろう付け等により接合されている。絶縁層2のおもて面上には銅やアルミ等の導体をパターン状に形成した電気回路パターン3が配置されている。絶縁層2と電気回路パターン3とはろう付け等により接合されている。電気回路パターン3のおもて面上には、半導体素子であるスイッチング素子4及び還流素子5が配置され、夫々がはんだ(図示せず)により電気回路パターン3に接合されている。スイッチング素子4には、絶縁ゲートバイポーラトランジスタやMOSFET(metal-oxide-semiconductor field-effect transistor)等が用いられ、還流素子5にはダイオード等が用いられる。
【0017】
通電部7は、電気回路パターン3、スイッチング素子4、還流素子5、ワイヤボンディング6にて構成される。スイッチング素子4及び還流素子5のおもて面はワイヤボンディング6により電気的に接続され、スイッチング素子4及び還流素子5の裏面は電気回路パターン3により電気的に接続されている。つまり、ワイヤボンディング6及び電気回路パターン3を電気配線として、スイッチング素子4及び還流素子5が電気的に接続されて通電部7が構成されている。
【0018】
通電部7を囲うようにケース8が配置される。ケース8はPPS(Poly Phenylene Sulfide Resin)等の絶縁体にて構成される。ケース8は、放熱板1のおもて面上に配置され、放熱板1と接着材(図示せず)で接着され固定されている。ケース8は、ねじ締め用平坦部8cと通電部囲繞部8dとで構成される。ねじ締め用平坦部8cは放熱板1に隣接している。また、ねじ締め用平坦部8cの放熱板1の裏面からの距離は、通電部囲繞部8dよりも近い。ケース8の内壁側には絶縁性の封止材9が配置される。封止材9は、例えば、シリコーンゲルやエポキシ系の樹脂などが用いられる。
【0019】
ケース8は、インサート成形(一体成形)により成形されている。インサート成形により、信号電極10及び主電極11の夫々の中間部がケース8に覆われて一体化され、信号電極10及び主電極11がケース8に固定されている。信号電極10と主電極11との間には、ケース8が配置されており、信号電極10と主電極11とが電気的に絶縁されている。ただし、ケースは必ずしも信号電極10及び主電極11をインサート成形とする必要はなく、必要に応じて信号電極10及び主電極11をケースに圧入もしくはねじ締めをして固定したアウトサートケースとしても良い。
【0020】
図3に示すように、信号電極10の中間部はケース8に覆われるが、信号電極10の一端側は、ケース8の外壁から露出している。信号電極10の他端側(図示せず)は別の断面においてケース8の内壁から露出している。主電極11の中間部(図示せず)はケース8に覆われており、主電極11の一端側は、図3に示すように、ケース8の外壁から露出している。主電極11の他端側(図示せず)は、別の断面にてケース8の内壁から露出している。
【0021】
信号電極10の一端側の下には、ナット12が配置され、ナット12はケース8に固定されている。平面視にて信号電極穴10aの中心とナット12の中心とは製造誤差の範囲内において同心である。信号電極穴10aに制御信号を入力する外部機器をねじ締めできる構成である。別の断面において主電極11の一端側の下には、ナット(図示せず)が配置され、ナットはケース8に固定されている。平面視にて主電極穴(図3には図示せず)の中心とナットの中心とは製造誤差の範囲内において同心である。主電極穴に外部システムをねじ締めできる構成である。
【0022】
信号電極10の他端側は、スイッチング素子4と電気的に接続している。信号電極10の他端側とスイッチング素子4との電気的な接続は、はんだもしくはワイヤボンディングを介して接続して良い。主電極11は、通電部7と電気的に接続している。以上の接続により、信号電極10を介してスイッチング素子4に制御信号が入力され、制御信号に応じてスイッチング素子4が通電部7の通電を制御して、主電極11を介して通電部7を流れる電流を外部システムに通電することができる。
【0023】
図1に示すように、半導体装置100は、信号電極10を6つ有しており、主電極11を3つ有する。主電極11には、外部システムを電気的に接続するための主電極穴11aが設けられている。
【0024】
ケース8のねじ締め用平坦部8cは、おもて面側に8つのねじ締め穴8aを有する。ねじ締め用平坦部8cはねじ締め穴8aのねじを容易に締め付けるために設けられる部位であり、ワッシャー等が付いたねじであっても容易にねじが締められるように、ねじ締め穴8aの中心付近には凸部がない。具体的には、ねじ締め穴8aの中心から半径10mm以内のねじ締め用平坦部8cには凸部を設けないことが望ましい。
【0025】
ねじ締め用平坦部8cに設けられたねじ締め穴8aと、放熱板1に設けられたねじ締め穴1aとは平面視にて製造誤差の範囲内において同心円である。ねじ締め穴8aは、ケース8の左右に設けられたねじ締め用平坦部8cのそれぞれに1列ずつ設けられ、ケース8の左側に設けられたねじ締め穴8aの列とケース8の右側に設けられたねじ締め穴8aの列とが平行に2列で配置されている。ねじ締め用平坦部8cに設けられた8つのねじ締め穴8aの近傍のおもて面には、1つのねじ締穴8aにつき1つの締付け順番表示構造8bが設けられている。締付け順番表示構造8bは、視認可能な構造であり、形状によりねじを締め付ける順番を表示する。例えば、図1に示すように、アラビア数字の形状により締め付ける順番を表示する。8つの締付け順番表示構造1bは夫々が異なる形状であり、異なるねじの締め付け順番を示す。
【0026】
ねじ締め用平坦部8cに設けられる締付け順番表示構造8bについて具体的に説明する。締付け順番表示構造8bは、夫々のねじ締め穴8aのねじをいかなる順番で締め付ければ良いかを形状の違いにより表示する。そのため、1つのねじ締め穴8aに対して、1つの締付け順番表示構造8bがセットとして設けられ、締付け順番表示構造8bは対応するねじ締め穴8aの近傍に配置される。
【0027】
図1に示すように、締付け順番表示構造8bは、ケース8のおもて面から視認可能な位置に設けられる。また、締付け順番表示構造8bは、ねじ締め穴8aの中心から半径Rで示される円領域Cに設けられることが望ましい。締付け順番表示構造8bが円領域Cに設けられるとは、締付け順番表示構造8bの一部が設けられるのではなく締付け順番表示構造8bの全体が設けられることを指す。半径Rの長さは、複数のねじ締め穴8aの内で、いずれか1つのねじ締め穴8aを選択した場合において、選択したねじ締め穴8aから最も近い別のねじ締め穴8aまでの距離の2分の1である。
【0028】
図1に示すような、半導体装置100においては、いずれか1つのねじ締め穴を選択した場合においても最も近い別のねじ締め穴8aまでの間隔は前述した距離Dとなることから、いずれのねじ締め穴8aを選択した場合においても半径Rは、距離Dの2分の1となる。ねじ締め穴8aが等間隔に配置されない場合は、各ねじ締め穴のいずれかを選択した場合においても最も近い別のねじ締め穴8aまでの距離の2分の1を半径とした円領域の中に入るように、各ねじ締め穴と各ねじ締め穴に対応する締付け順番表示構造との距離を調整することが望ましい。領域Rに締付け順番表示構造8bを設けることで、各締付け順番表示構造8bがいずれのねじ締め穴8aに対応するかを誤って認識することを防止できる。
【0029】
図4は、締付け順番表示構造8bの配置箇所の一例を示す図である。図4に示すように締付け順番表示構造8bは円領域Cの中であれば通電部囲繞部8dに設けても良い。しかしながら、締付け順番表示構造8bは、ねじ締穴8aが設けられている位置のケース8の高さと同等な高さに設けられることで視認性が高まるので、ねじ締め用平坦部8cにねじ締穴8aが設けられる場合は、ねじ締め用平坦部8cに締付け順番表示構造8bを設けることが望ましい。
【0030】
締付け順番表示構造8bで表示される数字は、同じ数字が重複することなく、かつ、数字が抜けることなく1から8までが表示されている。締付け順番表示構造1bで表示される数字の内で偶数番目の数字2n(n=1、2、3、・・・、∞)は、その一つ前の数字2n-1と対角となる箇所に表示される。
【0031】
締付け順番表示構造8bは、例えば、ケースの成形時の金型の形状、もしくは、ケース成形後に機械的加工により形成された凹部構造である。表示に、アラビア数字を用いる場合には、8つのねじ締め穴8aの夫々に対応した数字の形状に凹部構造が設けられる。締付け順番表示構造8bをケース成形時の金型の形状にて凹部構造を形成する場合は、ケース8の成形時の金型の形状を一度変更するだけで形成することが可能であり、その他の締付け順番表示構造8bを形成するために追加となる工程が不要である。
【0032】
次にこのように構成された半導体装置の取り付け作業時の効果について説明する。取り付け作業者は、締付け順番表示構造8bを目視で確認しながら締付け順番表示構造8bで表示された1から8までに対応するねじ締め穴8aを1から8まで順番にねじ締めすることができる。仮に作業者が、半導体装置のカタログ等の仕様書に記載の締め付け順番を誤って認識した場合においても、締付け順番表示構造8bを確認することで間違った順番でねじ締めすることが防止できる。
【0033】
また、同じ数字が重複することなく、かつ、数字が抜けることなく表示されていることから、数字に従ってねじ締め作業をすることで、複数設けられたねじ締め穴8aの全てを抜け・漏れなくねじ締めすることができる。
【0034】
また、ケース8の円領域Cに締付け順番表示構造8bを設けることで、各締付け順番表示構造8bがいずれのねじ締め穴8aに対応するかを間違うことなく取り付け作業ができる。
【0035】
また、偶数番目の数字2nがその一つ前の数字2n-1と対角となる箇所に配置することで、半導体装置の片締め(ケース8の2列に設けられたねじ締め穴8aの内、片方の列のねじ締め穴8aばかりを先にねじ締めをするねじ締め方法)となることも防止可能である。片締めにより、図5に示すような半導体装置が放熱システムの表面に対して片側が浮くように傾いて取り付けられることも防止することができる。
【0036】
図5は、比較例に係る半導体装置を片締めとなる順番で締め付けた場合の側面図である。図5は、比較例に係る半導体装置150をフィン70にねじ60にてねじ締めした状態を側面から見た図である。ケース58には、締付け順番表示構造が設けられていない。放熱板51の裏面はフィン70の側に凸となる形状である。図5において、放熱板51とフィン70とが密着している側は先にねじ60を締め付けた側を示し、放熱板51とフィン70との間に隙間Gがある側は後にねじ60を締め付けた側を示す。片締めにより半導体装置が放熱システムの表面に対して片側が浮くように傾いて取り付けられる理由は、片締めした(片列側のねじ60だけを締め付けた)時点で、後にねじ締めする側の放熱板51がフィン70から離れてしまって固定され、他方のねじ60含めて全てを締め付けても後にねじ60を締め付けた側に隙間Gが残るためである。
【0037】
一方で、図1の締付け順番表示構造8bの表示の順番でねじを締め付けた場合には、片締めした場合と比較して隙間が残らない。図1の締付け順番表示構造8bの表示のように偶数番目にその一つ前の順番と対角の位置のねじを締めることで小まめに隙間を小さくするように矯正した方が、全てのねじ締めを完了した際の隙間が残らないためである。
【0038】
片締めにより半導体装置が傾いて取り付けられる主な理由は様々であるが、例えば、放熱板の裏面が凸となる形状だけでなく、フィンが放熱板側に凸であっても発生する。また、放熱板の裏面の凸形状は、放熱板1の中央部の放熱性を向上させるなどの故意的な理由や、反りのバラツキや取り付け先への搬送時の打痕等の故意としない理由で構成される。
【0039】
しかしながら、いかなる理由においても、ケース8に締付け順番表示構造8bを設けることで、半導体装置の取り付け作業者は、任意の正しい順番でのねじ締めを締付け順番表示構造8bの表示に従って実施することができることから、上述のような意図しない順番でねじ締めされることを防止できる。ただし、放熱性以外の理由などから意図的に片締めをする製品の場合においては、締付け順番表示構造8bの表示の順番を片締めとなる順番としてよい。
【0040】
本願の実施の形態1に係る半導体装置100の締付け順番表示構造8bは、図1に示すように、アラビア数字で表示され、四隅から順番に小さい数字で表示されるが、締付け順番表示構造8bで表示される数字の順番は、この順番に限らない。図6は、締付け順番表示構造の表示の順番の変更例である。例えば、図6に示すように、ねじ締め穴8aが形成された2列の中央側の順番が先になるように締付け順番表示構造8b表示の順番を変更しても、誤った順番でねじ締めされることが防止でき、放熱性の向上が可能な半導体装置を得ることができる。
【0041】
図6に示すような締付け順番表示構造8bの表示の順番とした場合は、特に放熱板とフィンとの間に半個体状のグリースを配置する場合に半導体装置の放熱性の向上が可能である。グリースは高い熱伝導率を有するものが一般的に選択されるが、グリースにも熱抵抗があることから、グリースを薄く少量とすることで半導体装置の放熱性は向上できる。図6のような、締付け順番表示構造8bの表示の順番でねじ締めをすることで、放熱板の中央側に塗布されていたグリースをねじ締め時に徐々に放熱板の外側に逃がすことができる。放熱板の外側に逃がしたグリースの分だけ、放熱板とフィンとの間に残るグリースを少なくできることから、半導体装置の放熱性が向上できる。
【0042】
締付け順番表示構造8bの構造は、視認できれば良いことから凹部構造に限らない。例えば、ケース8と色や光沢の異なるようなレーザーやインクで印字したレーザー印字構造やインク印字構造であっても良い。レーザーやインクは、製品の形名を表示するラベルの印字にも一般的に使用される材料であることから、レーザーやインクを用いる場合は材料の管理が容易である。
【0043】
<実施の形態2>
図7図8を用いて本発明の実施の形態2に係る半導体装置200の構成を説明する。図7は、実施の形態2に係る半導体装置を上面から見た平面図である。図8は実施の形態2に係る半導体装置の断面図である。図8図7に記載のB-B線での断面図である。なお、本発明の実施の形態2では、本発明の実施の形態1と同一又は対応する部分についての説明は、省略する。
【0044】
図8に示すように、実施の形態2に係る半導体装置は、放熱板21に設けられたねじ締め穴21aの周辺のおもて面にはケース28が配置されていない。ねじ締め穴21aの周辺は、放熱板21のおもて面が露出しており、放熱板21の露出した面はケース28のおもて面側から視認可能である。
【0045】
図7に示すように、実施の形態2に係る半導体装置200では、締付け順番表示構造21bが放熱板21の露出したおもて面に設けられる。放熱板21には、8か所のねじ締め穴21aが設けられ、1つのねじ締め穴21aに対して、1つの締付け順番表示構造21bがセットとして設けられる。締付け順番表示構造21bは対応するねじ締め穴21aの近傍に配置される。
【0046】
放熱板21に設けられる締付け順番表示構造21bについて具体的に説明する。締付け順番表示構造21bは、夫々のねじ締め穴21aのねじをいかなる順番で締め付ければ良いかを形状の違いにより表示する。締付け順番表示構造21bは、例えば、放熱板21にプレス加工や削り加工等の機械的加工により形成された凹部構造であり、表示に、アラビア数字を用いる場合には、8つのねじ締め穴8aの夫々に対応した数字の形状に凹部が設けられる。締付け順番表示構造8bを凹部構造とする場合は、ねじ締め穴8aの機械的加工と同時に形成することが可能であり、放熱板1の製造プロセスの簡略化が可能である。
【0047】
図7に示すように、締付け順番表示構造21bは、ケース28のおもて面から視認可能な位置に設けられる。締付け順番表示構造21bは、ねじ締め穴21aの中心から半径R2で示される円領域C2に設けられることが望ましい。締付け順番表示構造21bが円領域C2に設けられるとは、締付け順番表示構造21bの一部が設けられるのではなく締付け順番表示構造21bの全体が設けられることを指す。半径R2の長さは、複数のねじ締め穴21aの内で、いずれか1つのねじ締め穴8aを選択した場合において、選択したねじ締め穴21aから最も近い別のねじ締め穴21aまでの距離の2分の1である。円領域C2に締付け順番表示構造8bを設けることで、各締付け順番表示構造21bがいずれのねじ締め穴21aに対応するかを誤って認識することを防止できる。
【0048】
次にこのように構成された半導体装置の取り付け作業時の効果について説明する。取り付け作業者は、締付け順番表示構造21bを目視で確認しながら締付け順番表示構造21bで表示された1から8までに対応するねじ締め穴21aを1から8まで順番にねじ締めすることができる。仮に作業者が、半導体装置のカタログ等の仕様書に記載の締め付け順番を誤って認識した場合においても、締付け順番表示構造21bを確認することで間違った順番でねじ締めすることが防止できる。
【0049】
締付け順番表示構造21bの構造は、視認できればよいことから凹部構造に限らない。例えば、放熱板21と色や光沢の異なるレジストを塗布したレジスト構造であってもよいし、放熱板21と色や光沢の異なるめっきを塗布しためっき構造であっても良い。レジストははんだ付着を防止するマスクの目的で放熱板に一般的に塗布される材料であり、めっきははんだ付着を防止する目的で放熱板に一般的に塗布される材料であるため、材料の管理が容易である。
【0050】
<実施の形態3>
図9を用いて実施の形態3に係る半導体装置300の構成を説明する。図9は、実施の形態3に係る半導体装置を上面から見た平面図である。なお、本発明の実施の形態3では、本発明の実施の形態1及び実施の形態2と同一又は対応する部分についての説明は、省略する。
【0051】
図9に示すように、実施の形態3に係る半導体装置300は、ねじ締め穴31aが放熱板31に設けられるが、締付け順番表示構造38bは、ケース38に設けられる。ねじ締め穴31の周辺では放熱板31のおもて面が露出しており、放熱板31のおもて面の露出した面はケース38のおもて面側から視認可能である。放熱板31はおもて面に8つの露出した面を有する。放熱板31のおもて面の8つの露出した面の間にはケース38が配置され、ケース38により放熱板31のおもて面の露出した面は8つに分離されている。放熱板31のおもて面の8つの露出した面には、各露出面につき1つずつねじ締め穴31aが設けられる。
【0052】
実施の形態3においては、ねじ締め穴31aは放熱板31に設けられるが、締付け順番表示構造38bは、ケース38に設けられる。放熱板に締付け順番表示構造を設けることが困難な場合には、ケースに締付け順番表示構造を設けることが可能である。このように、ねじ締め穴を放熱板に設け、締付け順番表示構造をケースに設けることは、半導体装置の製造の設計を容易とすることができる。
【0053】
次にこのように構成された半導体装置の取り付け作業時の効果について説明する。放熱板31のおもて面の各露出面につき1つずつねじ締め穴31aが設けられていることから、取り付け作業者は、ねじ締め穴31aを容易に見つけることができる。ねじ締め穴31aの近傍には順番表示構造38bが配置されており、順番表示構造38bを目視で確認しながら締付け順番表示構造38bで表示された1から8までに対応するねじ締め穴31aを1から8まで順番にねじ締めすることができる。仮に作業者が、半導体装置のカタログ等の仕様書に記載の締め付け順番を誤って認識した場合においても、締付け順番表示構造38bを確認することで間違った順番でねじ締めすることが防止できる。
【符号の説明】
【0054】
1 放熱板
1a ねじ締め穴
4 スイッチング素子
5 還流素子
7 通電部
8 ケース
8a ねじ締め穴
8b 締付け順番表示構造
8c ねじ締め用平坦部
21 放熱板
21a ねじ締め穴
21b 締付け順番表示構造
28 ケース
31 放熱板
31a ねじ締め穴
38 ケース
38b 締付け順番表示構造
C 円領域
C2 円領域
D 距離
D2 距離
L 仮想線
R 半径
R2 半径
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9