(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-13
(45)【発行日】2022-12-21
(54)【発明の名称】炊飯器
(51)【国際特許分類】
A47J 27/00 20060101AFI20221214BHJP
【FI】
A47J27/00 103E
A47J27/00 103G
(21)【出願番号】P 2019117991
(22)【出願日】2019-06-26
【審査請求日】2021-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000176866
【氏名又は名称】三菱電機ホーム機器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109612
【氏名又は名称】倉谷 泰孝
(74)【代理人】
【識別番号】100153176
【氏名又は名称】松井 重明
(74)【代理人】
【識別番号】100116643
【氏名又は名称】伊達 研郎
(72)【発明者】
【氏名】蜷川 智也
(72)【発明者】
【氏名】根岸 和善
(72)【発明者】
【氏名】栗原 優子
(72)【発明者】
【氏名】石田 則之
【審査官】竹下 和志
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-153360(JP,A)
【文献】特開平03-085115(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面を開口した内釜収納部を有する本体部と、
前記内釜収納部に着脱自在に装着された内釜と、
前記本体部の上面開口を開閉可能に覆う蓋体と、を備え、
前記蓋体には、前記内釜内の蒸気を外部へ排出させる蒸気口が外面に形成され、前記蒸気口と前記内釜の内部とを連通する中空構造の蒸気排出部が設けられており、
前記蒸気排出部には、保湿弁体が設けられ、前記保湿弁体と前記蒸気口との間に、内部に溜まった水滴が外部へ排出されることを抑制する第1空間部が形成され、
前記保湿弁体は、
弁体部と、前記弁体部を回動自在に支持する支持部とを有し、
前記弁体部は、前記支持部から離れた先端側に前記蒸気排出部の開口面に対して空隙
を形成したことを特徴とする、
炊飯器。
【請求項2】
前記弁体部は、前記弁体部の先端側の一部を切り欠いて前記空隙を形成した、請求項1に記載の炊飯器。
【請求項3】
前記弁体部は、前記弁体部の先端側の方が大きくなる前記空隙を形成した、請求項2に記載の炊飯器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米等の被加熱物を加熱調理する炊飯器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
炊飯器は、上面を開口した内釜収納部を有する本体部と、内釜収納部に着脱自在に装着された内釜と、本体部の上面開口を開閉可能に覆う蓋体と、を備えている。蓋体には、内釜内で発生する蒸気を外部へ排出させる蒸気口が上面に形成されており、蒸気口と内釜の内部とを連通する蒸気排出部が設けられている。
【0003】
例えば特許文献1には、蒸気排出部として蒸気孔セットを設けた炊飯器が開示されている。蒸気孔セットは、椀形のおねば補足ケースと、おねば補足ケースの上面に設けたボス部の内周部に設けられた弁室部材と、弁室部材の内部に収納され、蒸発口の直下に位置する球状の保湿弁体とで構成されている。
【0004】
また、特許文献2には、蒸気排出部に蒸気圧の高まりに応じて開閉する保湿弁体が設けられ、保湿弁体と蒸気口との間に、内部に溜まった水滴が外部へ排出されることを抑制する第1空間部が形成されている炊飯器が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第3617822号公報
【文献】特開2018-153360
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された炊飯器では、保湿弁体が蒸気口との間に十分な空間が設けられていない。そのため、この炊飯機では、炊飯時に内釜内で発生した蒸気が、おねば補足ケースを通過する際に、おねば補足ケースの内部で内圧が高まると、おねば補足ケースの内部に溜まった水滴が勢いよく蓋体の上面に向かって噴き出し、蓋体の上面が汚れる虞がある。
【0007】
また、特許文献2において、保湿弁体は蒸気排出部の開口を塞ぐような構成となっている。このような炊飯器においては、炊飯時に発生した蒸気が保湿弁体と蒸気口の開口との
接触面で結露し、水滴が溜まりやすい。また、沸騰時の蒸気圧の高まりによって弁体部の開閉動作が激しくなり、弁体部の開閉の動きによって引き起こされる不規則な蒸気の流れによって、結露した水滴が勢いよく蒸気口から飛び出すという現象が起こる。
【0008】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、炊飯時に内釜内で発生した蒸気が蒸気排出部を通過する際に、蒸気排出部内の水滴が蓋体の上面に向かって勢いよく飛び散る事態を防止できる、炊飯器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る炊飯器は、上面を開口した内釜収納部を有する本体部と、前記内釜収納部に着脱自在に装着された内釜と、前記本体部の上面開口を開閉可能に覆う蓋体と、を備え、前記蓋体には、前記内釜内の蒸気を外部へ排出させる蒸気口が外面に形成され、前記蒸気口と前記内釜の内部とを連通する中空構造の蒸気排出部が設けられており、前記蒸気排出部には、蒸気圧の高まりに応じて開閉する保湿弁体が設けられ、前記保湿弁体と前記蒸気口との間に、内部に溜まった水滴が外部へ排出されることを抑制する第1空間部が形成され、前記保湿弁体は、弁体部と、前記弁体部を回動自在に支持する支持部とを有し、
前記弁体部は、前記支持部から離れた先端側に前記蒸気排出部の開口面に対して空隙を形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る炊飯器によれば、蒸気圧の高まりに応じて開閉する保湿弁体が蒸気排出部に設けられ、保湿弁体と蒸気口との間に第1空間部が形成されているので、炊飯時に内釜内で発生した蒸気が蒸気排出部を通過して蒸気口から排出される際に、蒸気の勢いを第1空間部で弱めることができる。また、保湿弁体は蒸気排出部の開口面に対して空隙を持つように弁体部を形成し、弁体部と開口部を接触しないようにしているので、弁体部の先端側付近に水滴が付着しないため、弁体部の動きによる水滴の飛び散りを防止することができる。よって、本発明に係る炊飯器は、蒸気排出部内の水滴が蓋体の上面に向かって勢いよく飛び散る事態を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施の形態1に係る炊飯器を前面側から見た斜視図である。
【
図2】本発明の実施の形態1に係る炊飯器であって、蓋体を閉じた状態における内部構造を示した縦断面図である。
【
図3】本発明の実施の形態1に係る炊飯器の蓋体を分解して示した斜視図である。
【
図5】従来の炊飯器の保湿弁体に水滴が付着した図である。
【
図6】本発明の炊飯器の保湿弁体に水滴が付着した図である。
【
図7】本発明の実施の形態1に係る炊飯器の蒸気排出部を分解して示した斜視図である。
【
図8】本発明の実施の形態1に係る炊飯器の第2蒸気排出部材を示した斜視図である。
【
図9】本発明の実施の形態1に係る炊飯器の保湿弁体を示した平面図である。
【
図11】本発明のその他の実施例に係る炊飯器の蒸気排出部を示した斜視図である。
【
図12】本発明のその他の実施例に係る炊飯器の蒸気排出部を示した斜視図である。
【
図13】本発明の実施の形態1に係る炊飯器の第1内蓋を示した平面図である。
【
図14】本発明の実施の形態1に係る炊飯器の内蓋を第2内蓋側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態に係る炊飯器について図面を参照して説明する。なお、この図面の形態によって本発明が限定されるものではない。また、以下の図面では各構成部材の大きさの関係が実際のものとは異なる場合がある。
【0013】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る炊飯器を前面側から見た斜視図である。
図2は、本発明の実施の形態1に係る炊飯器であって、蓋体を閉じた状態における内部構造を示した縦断面図である。
図3は、本発明の実施の形態1に係る炊飯器の蓋体を分解して示した斜視図である。
図1~
図3に示す実施の形態1に係る炊飯器100は、被加熱物(例えば米及び水)を加熱して炊き上げる家庭用炊飯器である。炊飯器100は、
図1~
図2に示すように、上面を開口した内釜収納部10を内部に有する本体部1と、内釜収納部10に着脱自在に装着された内釜5と、ヒンジ機構部11によって本体部1に回動自在に連結されて本体部1の上面開口を開閉可能に覆う蓋体2と、を備えている。
【0014】
本体部1は、
図2に示すように、外観が有底筒状とされ、内釜5を内部に着脱自在に装着する内釜収納部10と、内釜5を誘導加熱する加熱コイル13と、内釜5の温度を検知する鍋底温度センサー14と、内釜5の胴部を加熱させる胴ヒーター15と、を有する。本体部1は、内蔵された制御部(図示は省略)によって、各部及び各装置を駆動制御して炊飯工程を実行する。
【0015】
本体部1の前面側には、蓋体2の開閉を行う蓋開閉ボタン12が設けられている。使用者は、蓋開閉ボタン12を押すことで、蓋体2の閉状態が解除され、本体部1を開口させることができる。
【0016】
内釜5は、
図2に示すように、有底円筒形状を有し、誘導加熱により発熱する炭素材で構成される。なお、内釜5は、例えばセラミック等の非金属材料で形成される容器(いわゆる土鍋)またはアルミ等の金属鋳造容器であっても良い。内釜5の内部には、被加熱物である米及び水が収容される。内釜5は、開口縁に沿って外側へ向かって突出するフランジ部5aが全周にわたって設けられている。
【0017】
蓋体2の上面部には、操作表示部16が配置されている。操作表示部16は、使用者からの操作入力を受け付けるとともに、操作入力に関する情報及び炊飯器100の動作状態を表示する。なお、
図1に示した操作表示部16の具体的構成や配置は一例であり、本発明を限定するものではない。例えば、操作表示部16は、本体部1の前面に設けてもよい。
【0018】
制御部は、鍋底温度センサー14及び操作表示部16からの出力に基づいて、加熱部に通電する高周波電流の制御など、炊飯器100の動作全般を制御する。制御部は、その機能を実現する回路デバイスのようなハードウェアで構成することができ、またはマイコンやCPUのような演算装置と、その上で実行されるソフトウェアとにより構成することもできる。制御部は、制御基板に実装され、内釜収納部10に固定される。
【0019】
蓋体2は、本体部1の上面開口を開閉可能に覆うものである。蓋体2は、
図2に示すように、蓋体2の上部を構成する外蓋3と、外蓋3に着脱自在に取り付けられ、蓋体2で本体部1の上面開口を閉じた際に、内釜5の上部開口を閉塞する内蓋4と、を有している。内蓋4は、内釜5に対向する部分である外蓋3の下部に、内蓋係止部31bを介して取り付けられている。
【0020】
蓋体2は、外蓋3の一端部がヒンジ機構部11によって本体部1の上部に連結されている。ヒンジ機構部11は、ヒンジ軸11aと、ヒンジバネ11bとを有する。蓋体2は、ヒンジバネ11bによって、本体部1から離れて本体部1の開口を開く方向に付勢されている。そして、蓋体2は、閉じた状態で蓋開閉ボタン12が押下されると、ヒンジバネ11bの付勢力により、ヒンジ軸11aを中心として回転し、本体部1から離れる。これにより、本体部1は、開口が開かれる。
【0021】
外蓋3と内蓋4との間には、
図2に示すように、加熱手段として、蓋ヒーター板17と、蓋ヒーター板17の上面に取り付けられた蓋ヒーター18と、が設けられている。蓋ヒーター18は、制御部によって通電制御され、特に、保温時に上方から内釜5の内部に収納した被加熱物を加熱する。蓋ヒーター板17は、蓋体2を閉じると内蓋4に接触し、蓋体2を開くと内蓋4との接触が解除される。
【0022】
外蓋3は、蓋体2の外面を形成する上蓋30と、上蓋30よりも本体部1の上面開口側に配置された下蓋31と、で構成されている。蓋体2の上面に設けられた操作表示部16は、上蓋30に設けられている。
【0023】
上蓋30は、本体部1の上面開口側を凹ませた凹形状から成り、凹内部に下蓋31が配置されている。上蓋30には、炊飯時に内釜5内で発生した蒸気を外部へ排出させるための蒸気口20が本体部1の背面側に形成されている。
【0024】
下蓋31には、
図3に示すように、上蓋30に形成された蒸気口20と同じ位置に、蒸気口20と内釜5の内部とを連通させる開口部31aが形成されている。開口部31aには、蒸気口20と内釜5の内部とを連通する中空構造の蒸気排出部6が嵌め込まれている。蒸気排出部6は、ネジ穴を有する突起部6aが外側面に設けられており、突起部6aのネジ穴にネジ込んだネジ部材6bを、下蓋31の上面に形成されたネジ穴6cにネジ込んで下蓋31に固定されている。また、下蓋31には、
図2及び
図3に示すように、内蓋4を着脱自在に取り付けるための内蓋係止部31bが設けられている。また、下蓋31は、ヒンジ機構部11によって本体部1に連結される。
【0025】
次に、
図4~
図10に基づいて本発明の実施の形態1に係る炊飯器の蒸気排出部の構成を詳細に説明する。
図4は、
図2に示したA部拡大図である。
図7は、本発明の実施の形態1に係る炊飯器の蒸気排出部を分解して示した斜視図である。
図6は、本発明の実施の形態1に係る炊飯器の第2蒸気排出部材を示した斜視図である。
図9は、本発明の実施の形態1に係る炊飯器の保湿弁体を示した平面図である。
図10は、
図9に示したC-C線矢視断面図である。
【0026】
蒸気排出部6は、
図4及び
図7に示すように、筒状の第1蒸気排出部材7と、筒状の第2蒸気排出部材8と有している。蒸気排出部6には、第1蒸気排出部材7と第2蒸気排出部材8との間に配置され、蒸気圧の高まりに応じて中空内部を開閉する保湿弁体9が設けられている。
【0027】
第1蒸気排出部材7は、
図4及び
図7に示すように、保湿弁体9と蒸気口20との間に第1空間部60を形成するものである。第1蒸気排出部材7は、蒸気口20に向かうにつれて径方向に窄まる形状で構成されている。第1蒸気排出部材7には、蒸気口20と対向する開口面を、第1空間部60の内径よりも小径にする天面部7aが設けられ、天面部7aから蒸気口20に向かって突き出す中空構造の挿入部7bが設けられている。挿入部7bは、蒸気口20の口径と略同一の外径を有し、蒸気口20に挿入されている。つまり、第1蒸気排出部材7に天面部7aを設けることによって、炊飯時に内釜5内で発生した蒸気が、蒸気排出部6を通過して蒸気口20から排出される際に、蒸気の勢いで飛び散る蒸気排出部6内の水滴を天面部7aに衝突させることができ、該水滴が蓋体2の上面に向かって勢いよく飛び散る事態を防止することができる。
【0028】
また、
図4に示すように、保湿弁体9と蒸気排出部6との間には空隙部81が形成されている。空隙部81があることによって、保湿弁体9と蒸気排出部との接触面付近に水滴が付着しにくくなる。
図5、
図6は、
図4の保湿弁体9と蒸気排出部6に水滴93の付着の状態を
図5従来及び
図6本発明の水滴の付着例を示す。
図5従来例では弁体部90と開口面80との接触面付近に水滴が付着しており、保湿弁体9と開口部80の間の蒸気の流れ及び水滴93が付着した保湿弁体9の動きによって水滴93が飛び散り蒸気口20から飛び出してしまう。一方
図6本発明では空隙部81のため弁体部90と開口面80付近に水滴が付着しないので、保湿弁体9の動きによって水滴93が飛び散り蒸気口20から飛び出すことがない。これによって、保湿弁体の動きによる水滴の飛び散りを防止することができる。
【0029】
天面部7aの上面には、
図4に示すように、挿入部7bの周囲を囲う突起部7eが設けられている。天面部7aは、上蓋30の下面に設けられた位置決め溝部30aに突起部7eが嵌め込まれて上蓋30に位置決めされている。
【0030】
天面部7aの下面には、
図4に示すように、第1空間部60に向かって突き出すリブ7cが形成されている。リブ7cは、蒸気排出部6内に溜まった水滴を蒸気口20の手前で堰き止めるものである。なお、リブ7cは、天面部7aの下面に設けた構成に限定されない。詳細に図示することは省略したが、第1蒸気排出部材7の内側面に設けた構成でもよい。要するに、リブ7cは、蒸気排出部6の内部に溜まった水滴を蒸気口20の手前で堰き止めることができれば、他の構成でもよい。
【0031】
また、第1蒸気排出部材7には、
図4及び
図7に示すように、第2蒸気排出部材8と対向する側の端面に、外方に向かって拡がり、保湿弁体9を挟持する挟持部7dが設けられている。
【0032】
第2蒸気排出部材8は、保湿弁体9と内蓋4との間に第2空間部61を形成するものである。第2蒸気排出部材8は、
図8及び
図10に示すように、保湿弁体9と対向する開口面80の開口縁に沿って、同開口面80を第2空間部61の内径よりも小径にする天面部8aが設けられている。
【0033】
第2蒸気排出部材8は、
図4に示すように、保湿弁体9側の端面である天面部8aが、本体部1の背面側から前面側に向かって、本体部1の内部側に傾斜している。また、第2蒸気排出部材8の天面部8aの上面には、保湿弁体9に向かって突き出す位置決め突起8bが設けられている。
【0034】
保湿弁体9は、
図9及び
図10に示すように、環状のシール部92と、シール部92の内面に形成された支持部91と、支持部91に回動自在に支持された弁体部90と、を有している。保湿弁体9は、シリコン樹脂等の弾性体で形成されている。保湿弁体9は、保温時に内釜5内で発生した蒸気が蒸気排出部6を通じて必要以上に本体部1の外部へ排出されることを防止して、被加熱物である米等の潤いを保つために設けられている。
【0035】
シール部92は、
図4に示すように、第1蒸気排出部材7の一端面と、該一端面に対向する第2蒸気排出部材8の一端面とをシールするものである。シール部92の上面には、
図4及び
図10に示すように、第1蒸気排出部材7に向かって突き出す突起部92aが、周方向に沿って設けられている。シール部92の上面は、突起部92aが第1蒸気排出部材7に形成された溝部に嵌め込まれて、同第1蒸気排出部材7の挟持部7dに密着している。また、シール部92の下面には、第2蒸気排出部材8に向かって突き出す突起部92bが、周方向に沿って設けられている。シール部92の下面は、突起部92bが第2蒸気排出部材8の天面部8aに形成された溝部へ嵌め込まれ、同第2蒸気排出部材8の天面部8aに密着している。
【0036】
支持部91は、
図4に示すように、本体部1の前面側に位置するように、第1蒸気排出部材7の挟持部7dと第2蒸気排出部材8の天面部8aとに挟持されている。保湿弁体9は、支持部91を本体部1の背面側に位置するように配置すると、蓋体2を開けた際に、弁体部90が重力作用によって左右に傾き、長期間の使用により弁体部90が縒れて機能しなくなる虞があるからである。但し、保湿弁体9は、長期間使用しても弁体部90が縒れない材質又は形状等であれば、本体部1の前面側以外に支持部91を配置した構成でもよい。
【0037】
支持部91には、
図10に示すように、下向きに開口を有する位置決め溝部91aが形成されている。支持部91は、
図4に示すように、第2蒸気排出部材8の端面に設けられた位置決め突起8bに位置決め溝部91aを嵌め込み、位置決めされた状態で第1蒸気排出部材7と第2蒸気排出部材8とに挟持されている。
【0038】
弁体部90は、通常状態では第2蒸気排出部材8の開口面80を塞ぐように蒸気排出部6の空間との間に配置され、
図4に示すように、内釜5内の蒸気圧が高まると支持部91を支点として第1空間部60に向かって浮き上がり、蒸気排出部6を開状態とするものである。そのため、弁体部90は、滑らか動作できる程度の薄厚で形成されている。
【0039】
また、
図9に示すように、弁体部90は指示部91から離れた部分ほど動作が大きくなるため、前記保湿弁体9と開口面80との空隙部81は、弁体部90側に設けることが望ましい。さらに、前記空隙部81は、弁体部90の先端側の方が大きくなるように形成することが望ましい。これによって、より弁体部の動きが大きい箇所の水滴の付着が抑制されるため、弁体部90の動きによる水滴の飛び散りを防止することができる。
【0040】
また、弁体部90は、
図9に示すように、第2蒸気排出部材8の開口面80と相似形状である。蒸気排出部6は、下蓋31の開口部31aに組み付けられ、通常は取り外しができない。蒸気排出部6の内部をお手入れする場合には、蓋体2を開けて内蓋4を取り外した状態で行うしかない。この炊飯器100では、弁体部90を第2蒸気排出部材8の開口面80と相似形状とした構成なので、弁体部90を第2空間部61側に捲る作業が容易となる。よって、炊飯器100は、第1空間部60の内部及び弁体部90の表面のお手入れを容易に行うことができる。
【0041】
なお、保湿弁体9は、シール部92、支持部91及び弁体部90を一体とした構成を示したが、シール部92を別体としてもよい。つまり、保湿弁体9は、支持部91と弁体部90とで構成する。
【0042】
また、他の実施例を
図11、
図12に示す。
図11は、弁体部90の先端側の一部に切り欠き状の空隙部81を備える。
図12は、貫通穴82を弁体部90に一つ以上備えている。
図11の切り欠き状空隙部81、
図12の貫通穴82により、保湿弁体9と開口部80の間以外からも蒸気が流れ、保湿弁体9の動きが抑制されるので、付着した水滴93が飛び散り蒸気口20から飛び出してしまうのを抑えられる。
次に、
図13及び
図14に基づいて本発明の実施の形態1に係る炊飯器の内蓋の構成を詳細に説明する。
図9は、本発明の実施の形態1に係る炊飯器の第1内蓋を示した平面図である。
図10は、本発明の実施の形態1に係る炊飯器の内蓋を第2内蓋側から見た斜視図である。内蓋4は、例えばステンレスなどの金属で構成されており、
図2及び
図3に示すように、下蓋31の本体部1側の面に設けられた内蓋係止部31bを介して下蓋31に着脱自在に取り付けられている。
【0043】
内蓋4は、下蓋31の下面に着脱自在に取り付けられる第1内蓋40と、本体部1の上面開口側において第1内蓋40に着脱自在に取り付けられる第2内蓋41と、を有している。第1内蓋40の下面と第2内蓋41の上面との間には、空間部が形成されている。第2内蓋41は、炊飯により生じた水滴を受けるように機能する。
【0044】
第1内蓋40は、下面がほぼ平坦である。
図9に示すように、第1内蓋40には、空間部においておねばと分離された蒸気を蒸気排出部6に排出する蒸気排出穴40aが形成されている。蒸気排出穴40aは、保湿弁体9の支持部91と対向するに位置に、2個並列させて形成されている。蒸気排出穴40aを保湿弁体9の支持部91に対向する位置に形成することにより、第2空間部61に進入した蒸気が支持部91へ衝突するように迂回してから、第2蒸気排出部材8の開口面80へと流れる。これにより、蒸気の勢いを支持部91で弱めることができ、水滴の吹き零れを抑制することができる。
【0045】
第2内蓋41は、
図14に示すように、中央部が本体部1の上面開口側に突き出すくぼみ部41aが形成されている。第2内蓋41は、くぼみ部41aによって空間部の容積が増し、空間部に導入されたおねばを十分に貯めることができる。くぼみ部41aの中心には、空間部で蒸気から分離されたおねばを内釜5に戻すおねば戻し穴41bが設けられている。おねば戻し穴41bには、内釜5の内部の圧力によって上下する開閉弁41cが設けられている。
【0046】
また、第2内蓋41には、内釜5内の蒸気を空間部へ導入する複数の蒸気導入穴41dが、くぼみ部41aに形成されている。蒸気導入穴41dは、加熱手段により内釜5内で発生したおねばを含む蒸気を空間部に導入するものである。蒸気導入穴41dは、おねば戻し穴41bを囲むように形成されている。第2内蓋41の蒸気導入穴41dは、蒸気導入穴41dを上方に投影した領域と、第1内蓋40に形成された蒸気排出穴40aとが重ならない位置に形成される。これにより、第2内蓋41の蒸気導入穴41dから導入されたおねばを含む蒸気と泡が、第1内蓋40の蒸気排出穴40aを直接経由して空間部の外部に排出されることを抑制できる。
【0047】
実施の形態1に係る炊飯器100によれば、内釜5内の蒸気を外部へ排出させる蒸気口20が外面に形成され、蒸気口20と内釜5の内部とを連通する中空構造の蒸気排出部6が蓋体2に設けられており、蒸気圧の高まりに応じて開閉する保湿弁体9が蒸気排出部6に設けられ、保湿弁体9と蒸気口20との間に内部に溜まった水滴が外部へ排出されることを抑制する第1空間部60が形成されている。よって、炊飯器100は、炊飯時に内釜5内で発生した蒸気が蒸気排出部6を通過して蒸気口20から排出される際に、蒸気の勢いを第1空間部60で弱めることができ、蒸気排出部6内の水滴が蓋体2の上面に向かって勢いよく飛び散る虞がなく、蓋体2の上面が汚れる事態を未然に防止できる。
【0048】
また、蓋体2は、蒸気排出部6が取り付けられる外蓋3と、外蓋3に着脱自在に取り付けられ、蓋体2で本体部1の上面開口を閉じた際に、内釜5の上部開口を閉塞する内蓋4と、を備えている。内蓋4は、外蓋3に取り付けられる第1内蓋40と、本体部1の上面開口に対向させて第1内蓋40に取り付けられ、第1内蓋40との間に空間部を形成する第2内蓋41と、を有している。そして、第2内蓋41には、内釜5内の蒸気を空間部へ導入する蒸気導入穴41dが形成され、第1内蓋40には、空間部に導入した蒸気を蒸気排出部6へ排出させる蒸気排出穴40aが形成されている。よって、炊飯器100は、炊飯時に内釜5内で発生したおねばを含む蒸気を、第1内蓋40と第2内蓋41の形成された空間部で分離することができ、蒸気だけを第1内蓋40に形成された蒸気排出穴40aを通じて蒸気排出部6へ排出させることができるので、必要な蒸気を内部に留めておくことができ、主に保温のときにご飯の潤いを保つことができる。
【0049】
また、蒸気排出部6には、蒸気口20と対向する開口面を、第1空間部60の内径よりも小径にする天面部7aが設けられている。よって、実施の形態1の炊飯器100は、炊飯時に内釜5内で発生した蒸気が蒸気排出部6を通過して蒸気口20から排出される際に、蒸気の勢いで飛び散る蒸気排出部6内の水滴を天面部7aに衝突させることができるので、該水滴が蓋体2の上面に向かって勢いよく飛び散る事態を防止することができる。
【0050】
また、蒸気排出部6には、保湿弁体9と内釜5との間に第2空間部61が形成されているので、炊飯時に内釜5内で発生した蒸気を効率良く蒸気排出部6へ誘導することができる。
【0051】
また、蒸気排出部6は、保湿弁体9と蒸気口20との間に第1空間部60を形成する筒状の第1蒸気排出部材7と、保湿弁体9と内釜5との間に第2空間部61を形成する筒状の第2蒸気排出部材8と、を有している。保湿弁体9は、第1蒸気排出部材7と第2蒸気排出部材8との間に配置されている。したがって、この炊飯器100は、蒸気排出部6が簡易でシンプルな構造なので、製造コストを削減することができる。
【0052】
また、保湿弁体9は、第1蒸気排出部材7と第2蒸気排出部材8とに挟持される支持部91と、支持部91に回動自在に支持され、蒸気圧の高まりに応じて開閉する弁体部90と、を有している。よって、炊飯器100は、蒸気排出部6が蓋体2に組み付けられた状態であっても、使用者が指で弁体部90を回動させることで、蒸気排出部6の内部のお手入れを容易に行うことができる。
【0053】
また、保湿弁体9は、第1蒸気排出部材7の一端面と、該第1蒸気排出部材7の一端面に対向する第2蒸気排出部材8の一端面とをシールする環状のシール部92を、更に有している。よって、炊飯器100は、第1蒸気排出部材7と第2蒸気排出部材8との隙間を塞ぐシール材を別途設ける必要がないため、部材点数が少なくて済み、製造コストを削減することができる。
【0054】
また、保湿弁体9は、支持部91が本体部1の前面側に位置するように、第1蒸気排出部材7と第2蒸気排出部材8との間に配置されている。よって、炊飯器100は、蓋体2の開閉を繰り返し行うことによる弁体部90の縒れを抑制することができ、保湿弁体9の機能を長期間保持することができる。
【0055】
弁体部90は、第2蒸気排出部材8の開口面と相似形状である。よって、炊飯器100は、弁体部90を第2空間部61側に捲る作業が容易となり、弁体部90を捲った状態で第1空間部60の内部のお手入れを行うことができる。
【0056】
また、保湿弁体9と蒸気排出部6との間には空隙部81が形成されている。空隙部81があることによって、保湿弁体9と蒸気排出部との接触面付近に水滴が付着しにくくなる。これによって、保湿弁体の動きによる水滴の飛び散りを防止することができる。
【0057】
また、前記保湿弁体9と開口面80との空隙部81は、弁体部90側に設けられている。これによって、弁体部の動きが大きい箇所に空隙部82があるため、保湿弁体9と開口面80との接触面付近に水滴が付着しにくくなる。これによって、保湿弁体の動きによる水滴の飛び散りを防止することができる。
【0058】
また、第1内蓋40の蒸気排出穴40aは、支持部91と対向する位置に形成されている。よって、炊飯器100は、第2空間部61に進入した蒸気が支持部91へ衝突するように迂回してから、第2蒸気排出部材8の開口面80へ流れるため、蒸気の勢いを支持部91で弱めることができ、水滴が蒸気口20から勢いよく飛び散る事態を未然に防止することができる。
【0059】
第1空間部60を形成する蒸気排出部6には、蒸気排出部6の内部に溜まった水滴を蒸気口20の手前で堰き止めるリブ7cが形成されている。よって、炊飯器100は、蒸気口20からの水滴の飛び散りを防止することができる。
【0060】
以上に本発明を実施の形態に基づいて説明したが、本発明は上述した実施の形態の構成に限定されるものではない。例えば、本実施の形態では、蒸気排出部6に第1空間部60と第2空間部61を設けた構成を示したが、第1空間部60のみ設けた構成でもよい。要するに、いわゆる当業者が必要に応じてなす種々なる変更、応用、利用の範囲をも本発明の要旨(技術的範囲)に含むことを念のため申し添える。
【符号の説明】
【0061】
1 本体部、2 蓋体、3 外蓋、4 内蓋、5 内釜、5a フランジ部、6 蒸気排出部、6a 突起部、6b ネジ部材、6c ネジ穴、7 第1蒸気排出部材、7a 天面部、7b 挿入部、7c リブ、7d 挟持部、7e 突起部、8 第2蒸気排出部材、8a 天面部、8b 位置決め突起、8c 逃がし溝部、9、9A 保湿弁体、9a 溝部、9b 取手部、10 内釜収納部、11 ヒンジ機構部、11a ヒンジ軸、11b ヒンジバネ、12 蓋開閉ボタン、13 加熱コイル、14 鍋底温度センサー、15 胴ヒーター、16 操作表示部、17 蓋ヒーター板、18 蓋ヒーター、20 蒸気口、30 上蓋、30a 位置決め溝部、31 下蓋、31a 開口部、31b 内蓋係止部、40 第1内蓋、40a 蒸気排出穴、41 第2内蓋、41a くぼみ部、41b おねば戻し穴、41c 開閉弁、41d 蒸気導入穴、60 第1空間部、61 第2空間部、80 開口面、81 空隙部、82 貫通穴、 90 弁体部、90a 突起部、91 支持部、91a 位置決め溝部、92 シール部、92a、92b 突起部、93 水滴、100 炊飯器。