(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-13
(45)【発行日】2022-12-21
(54)【発明の名称】吐出装置、および給液方法
(51)【国際特許分類】
B05C 5/00 20060101AFI20221214BHJP
B05C 11/10 20060101ALI20221214BHJP
【FI】
B05C5/00 101
B05C11/10
(21)【出願番号】P 2019568920
(86)(22)【出願日】2018-12-14
(86)【国際出願番号】 JP2018046178
(87)【国際公開番号】W WO2019150790
(87)【国際公開日】2019-08-08
【審査請求日】2021-08-26
(31)【優先権主張番号】P 2018017331
(32)【優先日】2018-02-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000132404
【氏名又は名称】株式会社スリーボンド
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 凌太
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 直哉
【審査官】磯部 洋一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-187003(JP,A)
【文献】特開2009-090264(JP,A)
【文献】特開平11-235546(JP,A)
【文献】特開2008-008232(JP,A)
【文献】特開2003-247492(JP,A)
【文献】特開2015-020161(JP,A)
【文献】特開2007-098326(JP,A)
【文献】実開平4-113161(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 5/00
B05C 11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダに供給された粘性材料を加圧することにより、前記シリンダに連通するノズルから前記粘性材料を吐出させる吐出装置であって、
前記シリンダへの前記粘性材料の供給を制御する供給バルブと、
前記シリンダに供給された前記粘性材料に圧力を付与するプランジャと、
前記プランジャの進退移動方向と同じ方向に移動可能なボールネジと、
前記ボールネジに動力伝達機構を介して連結されたモータと
、
前記ボールネジが前記プランジャ側へ所定の距離だけ前進した前進位置に到達したか否かを検知する前進位置検知センサと、
前記ボールネジが前記プランジャから所定の距離だけ後退した後退位置に到達したか否かを検知する後退位置検知センサと、を備え、
前記プランジャと前記ボールネジとは連結されていない、吐出装置。
【請求項2】
前記供給バルブは、前記ボールネジが所定の位置へ向けて移動を開始した状態で開くことにより、前記粘性材料を前記シリンダに供給する、請求項1に記載の吐出装置。
【請求項3】
前記ボールネジの移動と、前記粘性材料の供給とが並行して行われる、請求項2に記載の吐出装置
【請求項4】
前記シリンダ内に前記粘性材料が最大限に充填されたか否かを検知する光電センサを有する請求項1~3のいずれか1項に記載の吐出装置。
【請求項5】
前記ノズルを介した前記粘性材料の吐出を制御する吐出バルブを有する、請求項1~
4のいずれか1項に記載の吐出装置。
【請求項6】
前記シリンダに配置され、前記シリンダ内に供給された前記粘性材料の圧力を検出する圧力センサを有する、請求項1~
5のいずれか1項に記載の吐出装置。
【請求項7】
粘性材料を吐出させる吐出装置へ前記粘性材料を供給する給液方法であって、
前記吐出装置は、
シリンダへの前記粘性材料の供給を制御する供給バルブと、
前記シリンダに供給された前記粘性材料に圧力を付与するプランジャと、
前記プランジャの進退移動方向と同じ方向に移動可能なボールネジと、
前記ボールネジに動力伝達機構を介して連結されたモータと
、
前記ボールネジが前記プランジャ側へ所定の距離だけ前進した前進位置に到達したか否かを検知する前進位置検知センサと、
前記ボールネジが前記プランジャから所定の距離だけ後退した後退位置に到達したか否かを検知する後退位置検知センサと、を備え、
前記吐出装置における前記プランジャは、前記ボールネジと連結されておらず、
前記ボールネジが移動を開始した状態で前記供給バルブを開いて、前記粘性材料を供給
し、
前記後退位置検知センサは、前記ボールネジの上端部の位置を検出し、前記ボールネジが前記プランジャに対してどの程度の距離だけ後退したかを検知することにより、前記ボールネジの下端部が前記シリンダへの前記粘性材料の充填量が最大となる所定の位置に到達したか否かを検出し、
前記供給バルブは、前記ボールネジの下端部が前記所定の位置に到達した状態で開くことにより、前記粘性材料を前記シリンダに供給する、給液方法。
【請求項8】
前記吐出装置が備える光電センサにより、前記シリンダ内に前記粘性材料が最大限に充填されたか否かを検知する、請求項
7に記載の給液方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘性材料を吐出する吐出装置、および吐出装置へ粘性材料を供給する給液方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から所定の塗布対象(ワーク)に対して粘性材料を塗布する際に使用される吐出装置が知られている(例えば、下記特許文献1を参照)。一般的に、吐出装置は、粘性材料が充填されるシリンダと、シリンダ内を進退移動するプランジャと、プランジャに連結されたボールネジ(送りネジ)と、ギヤ等の動力伝達機構を介してボールネジと連結されたモータと、を備えている。特許文献1に記載された吐出装置は、粘性材料を塗布する際、モータにより動力伝達機構を駆動させることにより、ボールネジおよびプランジャを一体的に進退移動させる。
【0003】
上記の吐出装置は、シリンダ内でプランジャを前進させることにより、シリンダ内部を加圧してノズルへ粘性材料を送り込み、ノズルから粘性材料を吐出させる。また、上記の吐出装置は、シリンダ内に材料を供給する際、シリンダ内でプランジャを後退させつつ、粘性材料の供給源(例えば、給液ポンプ)からシリンダへ粘性材料を供給することにより、シリンダ内に粘性材料を給液する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の吐出装置は、シリンダ内への粘性材料の供給を行う際、プランジャの後退と、粘性材料の供給源の動作とを連動させる必要がある。そのため、シリンダ内に粘性材料が充填される量(単位時間当たりの充填量)と、シリンダ内でプランジャを後退させる速度とを厳密に同期させる必要があり、粘性材料を供給する際のプランジャの動作制御が非常に煩雑なものとなる。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、シリンダへ粘性材料を供給する際のプランジャの動作制御を容易に行うことができる吐出装置、および所望のオーバーラップ部を形成することができる給液方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る吐出装置は、シリンダに供給された粘性材料を加圧することにより、前記シリンダに連通するノズルから前記粘性材料を吐出させる吐出装置であって、前記シリンダへの前記粘性材料の供給を制御する供給バルブと、前記シリンダに供給された前記粘性材料に圧力を付与するプランジャと、前記プランジャの進退移動方向と同じ方向に移動可能なボールネジと、前記ボールネジに動力伝達機構を介して連結されたモータと、前記ボールネジが前記プランジャ側へ所定の距離だけ前進した前進位置に到達したか否かを検知する前進位置検知センサと、前記ボールネジが前記プランジャから所定の距離だけ後退した後退位置に到達したか否かを検知する後退位置検知センサと、を備え、前記プランジャと前記ボールネジとは連結されていない。
【0008】
また、本発明に係る給液方法は、粘性材料を吐出させる吐出装置へ前記粘性材料を供給する給液方法であって、前記吐出装置は、シリンダへの前記粘性材料の供給を制御する供給バルブと、前記シリンダに供給された前記粘性材料に圧力を付与するプランジャと、前記プランジャの進退移動方向と同じ方向に移動可能なボールネジと、前記ボールネジに動力伝達機構を介して連結されたモータと、前記ボールネジが前記プランジャ側へ所定の距離だけ前進した前進位置に到達したか否かを検知する前進位置検知センサと、前記ボールネジが前記プランジャから所定の距離だけ後退した後退位置に到達したか否かを検知する後退位置検知センサと、を備え、前記吐出装置における前記プランジャは、前記ボールネジと連結されておらず、前記シリンダに前記粘性材料が供給される前に前記ボールネジが前記プランジャから離間する方向に移動した状態で、前記供給バルブを開いて前記粘性材料を供給し、前記後退位置検知センサは、前記ボールネジの上端部の位置を検出し、前記ボールネジが前記プランジャに対してどの程度の距離だけ後退したかを検知することにより、前記ボールネジの下端部が前記シリンダへの前記粘性材料の充填量が最大となる所定の位置に到達したか否かを検出し、前記供給バルブは、前記ボールネジの下端部が前記所定の位置に到達した状態で開くことにより、前記粘性材料を前記シリンダに供給する。
【発明の効果】
【0009】
上記吐出装置によれば、動力伝達機構を介してモータに連結されたボールネジは、プランジャとは連結されていない。そして、シリンダ内へ粘性材料を供給する際、プランジャは、シリンダ内に供給された粘性材料による加圧に伴ってシリンダ内を後退する。したがって、吐出装置は、シリンダ内に粘性材料が充填される量(単位時間当たりの充填量)とシリンダ内でプランジャを後退させる速度とを厳密に同期させる必要がないため、プランジャの動作制御が容易なものとなる。
【0010】
また、上記給液方法によれば、プランジャは、シリンダへの粘性材料の供給に伴ってボールネジと接触する位置まで移動し、粘性材料の吐出を開始する際にはボールネジの前進に連動してシリンダ内を前進する。そのため、プランジャとボールネジとが連結されていない吐出装置において、粘性材料の吐出を開始する際にボールネジの前進とプランジャの前進とを適切に同期させることができるため、所望のオーバーラップ部(粘性材料の塗り始めと塗り終わりの重複部分)を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態に係る吐出装置の全体構成を概略的に示す図である。
【
図2】給液の準備を行っている状態の吐出装置を示す図である。
【
図3】給液の準備を行っている状態の吐出装置を示す図である。
【
図4】給液を行っている状態の吐出装置を示す図である。
【
図5】給液を完了した状態の吐出装置を示す図である。
【
図6】内圧補正を行っている状態の吐出装置を示す図である。
【
図7】内圧補正を行っている状態の吐出装置を示す図である。
【
図8】粘性材料を吐出している状態の吐出装置を示す図である。
【
図9】実施形態に係る吐出方法の各工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。なお、図面の説明において、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0013】
図1~
図8は、本実施形態に係る吐出装置10の説明および吐出装置10による粘性材料Mの吐出方法の説明に供する図である。なお、
図2~
図8には、初期の給液を行った後に、粘性材料Mの吐出に際して給液等を行う手順を示している。
図9は、実施形態に係る粘性材料Mの吐出方法の各工程を示すフローチャートである。
【0014】
本実施形態に係る吐出装置10は、シリンダ30に供給された粘性材料Mをノズル90から吐出し、吐出した粘性材料Mを所定の塗布対象(ワーク)に対して塗布する装置である(
図8を参照)。粘性材料Mとしては、特に限定されないが、例えば、反応性シリコーン、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の高粘度の粘性材料を挙げることができる。また、塗布対象としては、特に限定されないが、例えば、輸送機器、産業機器類の各種フランジやねじ等の接合面が挙げられる。
【0015】
図1を参照して概説すると、吐出装置10は、当該吐出装置10の動作制御を行う制御部20と、シリンダ30への粘性材料Mの供給を制御する供給バルブ40と、シリンダ30に供給された粘性材料Mに圧力を付与するプランジャ50と、プランジャ50の進退移動方向と同じ方向に移動可能なボールネジ60と、ボールネジ60に動力伝達機構110を介して連結されたモータ120と、を備えている。
【0016】
吐出装置10は、シリンダ30内に粘性材料Mが供給された状態で、プランジャ50をシリンダ30内で前進(
図1~
図8の下方への移動。以下、「下降」とも記載する)させることにより、シリンダ30に連通したノズル90を通じて粘性材料Mを吐出する。ノズル90から吐出された粘性材料Mは、図示省略する塗布対象に対して塗布される。
【0017】
シリンダ30は、当該シリンダ30の内部空間に粘性材料Mを貯留可能である。シリンダ30は、プランジャ50が進退移動する内部空間を備える第1チャンバ31と、第1チャンバ31よりもプランジャ50の前進方向側に配置された第2チャンバ32と、を有している。
【0018】
図1に示すように、第1チャンバ31には、シリンダ30内に充填された粘性材料Mの圧力を検出する圧力センサ130を配置している。圧力センサ130の種類、構造、配置等は、シリンダ30内の粘性材料Mの圧力を検出(測定)可能な限り、特に限定されない。
【0019】
第1チャンバ31の内部空間には、プランジャ50の軸受け47a、47bを配置している。軸受け47a、47bとしては、例えば、樹脂材料で構成される公知のOリング等を用いることができる。
【0020】
第2チャンバ32には、供給バルブ40が備える弁棒41を配置している。第2チャンバ32は、所定の材料供給路を介して給液ポンプ70と連通している。給液ポンプ70は、例えば、粘性材料Mを圧送可能な公知の流体ポンプで構成することができる。
【0021】
供給バルブ40の弁棒41は、シリンダ30への粘性材料Mの供給を停止(制限)する際、第2チャンバ32に配置された弁座42に着座する(例えば、
図1の状態)。供給バルブ40の弁棒41が弁座42に着座すると、給液ポンプ70と第2チャンバ32との連通が遮断される。一方、供給バルブ40は、シリンダ30へ粘性材料Mを供給する際、弁棒41を弁座42から離間させる(例えば、
図4の状態)。弁棒41が弁座42から離間すると、給液ポンプ70と第2チャンバ32とが連通するため、第2チャンバ32へ粘性材料Mを供給することが可能になる。
【0022】
図1に示すように、シリンダ30の第2チャンバ32は、所定の材料供給路を介して吐出チャンバ85と連通している。吐出チャンバ85には、ノズル90を取り付けている。吐出チャンバ85の内部空間とノズル90内に形成された流路(図示省略)とは連通している。
【0023】
吐出装置10は、ノズル90からの粘性材料Mの吐出を制御する吐出バルブ80を備えている。吐出チャンバ85には、吐出バルブ80が備える弁棒81を配置している。吐出バルブ80の弁棒81は、ノズル90を通じた粘性材料Mの吐出を停止(制限)する際、吐出チャンバ85に配置された弁座82に着座する(例えば、
図1の状態)。また、吐出バルブ80は、ノズル90を通じた粘性材料Mの吐出を行う際、弁棒81を弁座82から離間させる(例えば、
図8の状態)。弁棒81が弁座82から離間すると、吐出チャンバ85とノズル90の内部流路とが連通するため、ノズル90による粘性材料Mの吐出が可能になる。
【0024】
吐出装置10が備えるモータ120は、例えば、公知のステッピングモータにより構成することができる。モータ120は、動力伝達機構110を回転駆動することにより、動力伝達機構110と連結されたボールネジ60を進退移動させる。
【0025】
動力伝達機構110は、モータ120と接続される駆動ギヤ111と、駆動ギヤ111と係合する従動ギヤ112と、を有している。駆動ギヤ111は、例えば、クラッチ機構(図示省略)を介してモータ120と接続することができる。
【0026】
従動ギヤ112は、ボールネジ60と係合している。モータ120が駆動ギヤ111を回転駆動させると、駆動ギヤ111の回転に連動して従動ギヤ112が回転し、さらにボールネジ60が回転する。吐出装置10は、モータ120を動作させて、ボールネジ60を一方の回転方向に回転(例えば、正転)させることにより、ボールネジ60をシリンダ30へ向けて前進させることができる。また、吐出装置10は、モータ120を動作させて、ボールネジ60を他方の回転方向に回転(例えば、逆転)させることにより、ボールネジ60をシリンダ30から後退させる方向に移動(
図1~
図8の上方への移動。以下、「上昇」とも記載する)させることができる。
【0027】
本実施形態に係る吐出装置10は、ボールネジ60とプランジャ50とが連結されていない。換言すると、ボールネジ60とプランジャ50とは、両者を一体的に進退移動させる機械的な連結構造を介して連結されていない。そのため、ボールネジ60は、プランジャ50とは独立して進退移動することができる。例えば、
図2に示すように、吐出装置10は、ボールネジ60をプランジャ50に対して独立して後退させることにより、ボールネジ60の下端部61をプランジャ50の上端部52から離間した位置に配置することができる。
【0028】
プランジャ50は、シリンダ30内を前進移動することにより、シリンダ30内に供給された粘性材料Mを加圧し、ノズル90へ粘性材料Mを圧送する。
【0029】
図8に示すように、吐出装置10は、プランジャ50を前進させる際、ボールネジ60を正転させることにより、ボールネジ60の下端部61をプランジャ50の上端部52に接触させて押圧する。また、
図3に示すように、吐出装置10は、プランジャ50を後退させる際、ボールネジ60をプランジャ50から離間した所定の位置P1に配置し、ボールネジ60の下端部61とプランジャ50の上端部52との間に隙間(空間)gを形成する。
図4に示すように、吐出装置10は、隙間gを形成した状態でシリンダ30内に粘性材料Mを供給してシリンダ30の内圧を増加させる。プランジャ50は、シリンダ30の内圧の増加に伴ってボールネジ60に接近するようにシリンダ30内を上昇する。
【0030】
図1に示すように、シリンダ30は、光電センサ140が取り付けられた支持部材100を有している。支持部材100としては、例えば、アルミ等の金属材料で構成された棒状の部材を用いることができる。
【0031】
吐出装置10は、シリンダ30が備える支持部材100に配置された光電センサ140を有している。光電センサ140としては、例えば、透過型、回帰反射型、拡散反射型等の公知の光電センサを用いることができる。特に、透過型の光電センサを使用することが好ましい。また、光電センサ140は、例えば、支持部材100側からボールネジ60側へ検出光を出射するように、支持部材100に配置することができる。
【0032】
光電センサ140は、シリンダ30内に粘性材料Mが最大限に充填されたか否かを検知するために使用される。光電センサ140は、例えば、
図5に示すように、プランジャ50の上端部52の位置を検出する。
【0033】
本実施形態では、シリンダ30の粘性材料Mの最大充填量は、ボールネジ60を所定の位置P1まで後退させた状態で、ボールネジ60の下端部61に対してプランジャ50の上端部52が接触する位置までプランジャ50を移動させることができる移動量で規定できる。つまり、シリンダ30の粘性材料Mの最大充填量は、ボールネジ60の下端部61がプランジャ50の上端部52から離間した状態で、プランジャ50の上昇可能な移動量に対応したシリンダ30の空き容積となる。そのため、光電センサ140は、
図5に示すように、ボールネジ60の下端部61にプランジャ50の上端部52が接触する位置を検出することにより、シリンダ30内に粘性材料Mが最大限に充填されたか否かを検知することができる。
【0034】
図1に示すように、吐出装置10は、ボールネジ60がプランジャ50側へ所定の距離だけ前進した前進位置に到達したか否かを検知する前進位置検知センサ151と、ボールネジ60がプランジャ50から所定の距離だけ後退した後退位置に到達したか否かを検知する後退位置検知センサ152と、を有している。
【0035】
前進位置検知センサ151と後退位置検知センサ152は、ボールネジ60の進退移動方向(
図1の上下方向)に所定の間隔を空けて配置している。また、後退位置検知センサ152は、前進位置検知センサ151よりもボールネジ60の後退方向側(図中の上方側)に配置している。前進位置検知センサ151および後退位置検知センサ152は、例えば、光電センサ140を取り付けた支持部材100の上端側に配置することができる。
【0036】
図1に示すように、前進位置検知センサ151は、ボールネジ60の上端部62の位置を検出し、ボールネジ60がプランジャ50に対してどの程度の距離だけ前進したかを検知する。具体的には、前進位置検知センサ151は、前進位置検知センサ151と後退位置検知センサ152との間の距離だけプランジャ50が前進したことを検知する。前進位置検知センサ151は、例えば、ノズル90を介した粘性材料Mの吐出量が所望の量となるボールネジ60の前進位置を検出するように配置することができる。
【0037】
また、
図3に示すように、後退位置検知センサ152は、ボールネジ60の上端部62の位置を検出し、ボールネジ60がプランジャ50に対してどの程度の距離だけ後退したかを検知する。具体的には、後退位置検知センサ152は、前進位置検知センサ151と後退位置検知センサ152との間の距離だけプランジャ50が後退したことを検知する。後退位置検知センサ152は、例えば、シリンダ30への粘性材料Mの充填量が最大となるボールネジ60の所定の位置P1を検出するように配置することができる。
【0038】
前進位置検知センサ151と後退位置検知センサ152としては、例えば、透過型や反射型の公知のフォトセンサを用いることができる。ただし、各センサ151、152は、ボールネジ60の位置を検出可能な限り、センサの種類、構造、配置等は特に限定されない。
【0039】
制御部20は、例えば、CPU、メモリ、及び入出力インターフェースなどを備える公知のPC等で構成することができる。制御部20は、各種の制御信号S1を送受信し、各センサ130、140、151、152の動作制御、モータ120の動作制御、各バルブ40、80の動作制御、給液ポンプ70の動作制御等を実行する。
【0040】
次に、本実施形態に係る粘性材料Mの吐出方法を説明する。
【0041】
図9に示すように、粘性材料Mの吐出方法は、概説すると、給液の準備(S101)と、給液(S102)と、内圧補正(S103)と、吐出(S104)と、を有している。以下、吐出方法について詳述する。
【0042】
図1には、シリンダ30内に粘性材料Mを給液する前の状態の吐出装置10を示している。供給バルブ40および吐出バルブ80は、給液および吐出を行う前の状態においては、
図1に示すように閉じられる。
【0043】
吐出装置10は、粘性材料Mの給液に際し、給液の準備を行う。具体的には、吐出装置10は、
図2に示すように、ボールネジ60を上昇(プランジャ50から後退)させる。吐出装置10は、
図3に示すように、ボールネジ60の下端部61が所定の位置P1に到達するまでボールネジ60を上昇させる。ボールネジ60の下端部61が所定の位置P1に到達すると、ボールネジ60の下端部61とプランジャ50の上端部52との間には隙間gが形成される。ボールネジ60の下端部61が所定の位置P1に到達したか否かは、後退位置検知センサ152によりボールネジ60の上端部62を検知することにより確認することができる。
【0044】
なお、本実施形態では、給液する際にボールネジ60の下端部61が所定の位置P1に達した状態で粘性材料Mの給液を開始するが、例えば、粘性材料Mの給液とボールネジ60の移動は並行に実施してもよい。このような場合、例えば、粘性材料Mの給液を開始するタイミングは、ボールネジ60が上昇(逆転)するタイミングと実質的に同時(動作制御上において、時間差を設けずに並行に開始するタイミング)に設定することができる。このように、「ボールネジが所定の位置へ向けて移動を開始した状態」とは、ボールネジ60の移動を開始するタイミングと同時またはボールネジ60が移動を開始して所定時間が経過した状態のいずれでもよい。
【0045】
プランジャ50の上昇速度は、粘性材料Mの粘度に応じたものとなる。一方、ボールネジ60は、プランジャ50と連結していないため、ボールネジ60単独で上昇することができる。したがって、吐出装置10は、ボールネジ60の上昇速度とプランジャ50の上昇速度とを厳密に同期させる必要がない。
【0046】
次に、
図4に示すように、吐出装置10は給液を開始する。吐出装置10は、供給バルブ40を開く。吐出装置10は、給液ポンプ70を動作させて、シリンダ30へ粘性材料Mを供給する。プランジャ50は、シリンダ30内への粘性材料Mの供給に伴ってシリンダ30の内圧が増加すると、ボールネジ60に向けて上昇する。そのため、吐出装置10は、シリンダ30内への粘性材料Mの給液量の増加に追従するようにプランジャ50の移動速度を厳密に制御する必要がない。
【0047】
なお、仮に、シリンダ30の内圧を監視しつつ、シリンダ30の内圧の増加に応じてボールネジ60の上昇およびプランジャ50の上昇を制御する場合、次のような課題が生じ得る。例えば、軸受け47a、47b付近に渋り(軸受け47a、47bが経年劣化等で摩耗して粘性材料Mが漏洩して硬化したもの)が発生すると、プランジャ50の上昇を妨げる抵抗が発生し、シリンダ30内への給液を終了した段階で、ボールネジ60とプランジャ50とが意図せずに離れて配置されてしまうことがある。特に、吐出装置10は、初期の給液を行った後、所定の時間が経過した後に給液等を行う場合に、粘性材料Mの硬化の影響(例えば、粘性材料Mが湿気硬化型の材料である場合)により、プランジャ50の移動を妨げる抵抗が大きくなる。その結果、吐出装置10による粘性材料Mの吐出を開始する際に、ボールネジ60とプランジャ50との間の距離に応じて吐出開始位置(塗り始め位置)にずれが発生し、吐出開始の際に吐出が遅れて、所望のオーバーラップ部を形成し難くなる。
【0048】
図5に示すように、プランジャ50は、ボールネジ60の下端部61にプランジャ50の上端部52が接触するまで上昇する。プランジャ50の上端部52がボールネジ60の下端部61に接触すると、シリンダ30への粘性材料Mの供給が停止する。つまり、この段階において、シリンダ30内には最大量の粘性材料Mが充填された状態となる。光電センサ140は、プランジャ50の位置を検知することにより、シリンダ30内に粘性材料Mが最大限に充填されたか否かを検出する。
【0049】
次に、吐出装置10は、シリンダ30の内圧補正を行う。具体的には、吐出装置10は、
図6に示すように、供給バルブ40および吐出バルブ80を閉じた状態で、ボールネジ60を上昇させる。
図7に示すように、プランジャ50は、シリンダ30の内圧により、ボールネジ60の上昇に伴って上昇する。その結果、シリンダ30の内圧は、所望の大きさまで低下する。圧力センサ130は、シリンダ30の内圧を検出する。これにより、吐出装置10は、粘性材料Mの吐出の開始前にシリンダ30の内圧が所望の大きさに調整されたことを確認できる。
【0050】
次に、吐出装置10は、粘性材料Mの吐出を開始する。吐出装置10は、吐出バルブ80を開く。そして、吐出装置10は、ボールネジ60の下端部61がプランジャ50の上端部52に接触した状態(突き当てられた状態)でボールネジ60を下降させることにより、ボールネジ60の下降に同期させて、プランジャ50を下降させることができる。シリンダ30内に充填された粘性材料Mは、ノズル90を介して所定の塗布対象に対して塗布される。粘性材料Mの吐出は、例えば、ボールネジ60の上端部62が前進位置検知センサ151により検出されるまで継続される。
【0051】
本実施形態に係る吐出装置10および給液方法の作用効果を説明する。
【0052】
上述したように本実施形態に係る吐出装置10は、シリンダ30に供給された粘性材料Mを加圧することにより、シリンダ30に連通するノズル90から粘性材料Mを吐出させる装置である。吐出装置10は、シリンダ30への粘性材料Mの供給を制御する供給バルブ40と、シリンダ30に供給された粘性材料Mに圧力を付与するプランジャ50と、プランジャ50の進退移動方向と同じ方向に移動可能なボールネジ60と、ボールネジ60に動力伝達機構110を介して連結されたモータ120と、を備えており、プランジャ50とボールネジ60とは連結されていない。
【0053】
吐出装置10によれば、動力伝達機構110を介してモータ120に連結されたボールネジ60は、プランジャ50とは連結されていない。そして、シリンダ30内へ粘性材料Mを供給する際、プランジャ50は、シリンダ30内に供給された粘性材料Mによる加圧に伴ってシリンダ30内を後退する。したがって、吐出装置10は、シリンダ30内に粘性材料Mが充填される量(単位時間当たりの充填量)とシリンダ30内でプランジャ50を後退させる速度とを厳密に同期させる必要がないため、プランジャ50の動作制御が容易なものとなる。
【0054】
また、供給バルブ40は、ボールネジ60が所定の位置P1へ向けて移動を開始した状態で開くことにより、粘性材料Mをシリンダ30に供給する。そのため、ボールネジ60の移動速度とプランジャ50の移動速度とを厳密に同期させる制御を行うことなく、シリンダ30内へ粘性材料Mを好適に供給することができる。
【0055】
また、吐出装置10は、ボールネジ60の移動と、粘性材料Mの供給とを並行して行う。そのため、粘性材料Mを効率良く供給することができる。
【0056】
また、吐出装置10は、シリンダ30に配置され、シリンダ30内に粘性材料Mが最大限に充填されたか否かを検知する光電センサ140を有している。そのため、吐出装置10は、シリンダ30の内圧の増加に応じてプランジャ50を移動させる構成において、光電センサ140によりプランジャ50の位置を検出することにより、シリンダ30内への粘性材料Mの充填量をより正確に検知することができる。
【0057】
また、吐出装置10は、ボールネジ60がプランジャ50側へ所定の距離だけ前進した前進位置に到達したか否かを検知する前進位置検知センサ151と、ボールネジ60がプランジャ50から所定の距離だけ後退した後退位置に到達したか否かを検知する後退位置検知センサ152と、を有している。そのため、吐出装置10は、各センサ151、152によりボールネジ60の位置を検知することでシリンダ30内への粘性材料Mの充填量の調整と、ノズル90からの粘性材料Mの吐出量の調整をより正確に制御することができる。
【0058】
また、吐出装置10は、ノズル90を介した粘性材料Mの吐出を制御する吐出バルブ80を有する。そのため、吐出装置10は、吐出バルブ80の開閉を制御することにより、ノズル90からの粘性材料Mの吐出および吐出の制限を適切に切り替えることができる。
【0059】
また、吐出装置10は、シリンダ30内に供給された粘性材料Mの圧力を検出する圧力センサ130を有する。そのため、吐出装置10は、シリンダ30の内圧を圧力センサ130により監視することにより、粘性材料Mの吐出を開始する前にシリンダ30の内圧を所望の大きさに調整する内圧補正を実施することができる。
【0060】
また、本実施形態に係る給液方法は、吐出装置10へ粘性材料Mを供給する給液方法である。吐出装置10は、シリンダ30への粘性材料Mの供給を制御する供給バルブ40と、シリンダ30に供給された粘性材料Mに圧力を付与するプランジャ50と、プランジャ50の進退移動方向と同じ方向に移動可能なボールネジ60と、ボールネジ60に動力伝達機構110を介して連結されたモータ120と、を備えている。そして、吐出装置10におけるプランジャ50は、ボールネジ60と連結されておらず、ボールネジ60が移動を開始した状態で供給バルブ40を開いて、粘性材料Mを供給する。
【0061】
上記の給液方法によれば、プランジャ50は、シリンダ30への粘性材料の供給に伴ってボールネジ60と接触する位置まで移動し、粘性材料Mの吐出を開始する際にはボールネジ60の前進に連動してシリンダ30内を前進する。そのため、プランジャ50とボールネジ60とが連結されていない吐出装置10において、粘性材料Mの吐出を開始する際にボールネジ60の前進とプランジャ50の前進とを適切に同期させることができるため、所望のオーバーラップ部(粘性材料の塗り始めと塗り終わりの重複部分)を形成することができる。
【0062】
また、給液方法は、吐出装置10が備える光電センサ140により、シリンダ30内に粘性材料Mが最大限に充填されたか否かを検知する。そのため、給液方法は、シリンダ30の内圧の増加に応じてプランジャ50を移動させる吐出装置10において、光電センサ140によりプランジャ50の位置を検出することにより、シリンダ30内への粘性材料Mの充填量をより正確に検知することができる。
【0063】
以上、実施形態を通じて本発明に係る吐出装置および給液方法を説明したが、本発明は明細書内で説明した内容のみに限定されるものでなく、特許請求の範囲の記載に基づいて適宜変更することが可能である。
【0064】
吐出装置は、供給バルブと、プランジャと、ボールネジと、モータと、を少なくとも備えており、プランジャとボールネジとが連結されていない限りにおいて具体的な構成等は限定されず、例えば、装置全体のレイアウト、各部材の具体的な構造、形状、材質等、付加的な部材の追加または省略等の変更は適宜に行い得る。
【0065】
また、ボールネジおよびプランジャの進退移動方向は、実施形態において説明したように上下方向のみに限定されることはない。吐出装置の装置構成や粘性材料の吐出方向等に応じて適宜変更することが可能である。
【0066】
本出願は、2018年2月2日に出願された日本国特許出願第2018-017331号に基づいており、その開示内容は、参照により全体として引用されている。
【符号の説明】
【0067】
10 吐出装置、
20 制御部、
30 シリンダ、
40 供給バルブ、
41 供給バルブの弁棒、
47a、47b 軸受け、
50 プランジャ、
52 プランジャの上端部、
60 ボールネジ、
61 ボールネジの下端部、
62 ボールネジの上端部、
70 給液ポンプ、
80 吐出バルブ、
81 吐出バルブの弁棒、
90 ノズル、
100 支持部材、
110 動力伝達機構、
111 駆動ギヤ、
112 従動ギヤ、
120 モータ、
130 圧力センサ、
140 光電センサ、
151 前進位置検知センサ、
152 後退位置検知センサ、
M 粘性材料、
g 隙間。