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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-13
(45)【発行日】2022-12-21
(54)【発明の名称】手摺駆動ローラ
(51)【国際特許分類】
   B66B 23/04 20060101AFI20221214BHJP
   B66B 29/00 20060101ALI20221214BHJP
【FI】
B66B23/04 B
B66B29/00 G
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021072302
(22)【出願日】2021-04-22
(65)【公開番号】P2022166898
(43)【公開日】2022-11-04
【審査請求日】2021-04-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109612
【弁理士】
【氏名又は名称】倉谷 泰孝
(74)【代理人】
【識別番号】100153176
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 重明
(74)【代理人】
【識別番号】100116643
【弁理士】
【氏名又は名称】伊達 研郎
(72)【発明者】
【氏名】野末 紗海人
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-168369(JP,A)
【文献】特開2014-139101(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 23/04
B66B 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗客コンベアの手摺を移動させる手摺駆動装置の手摺駆動ローラにおいて、
当該手摺駆動ローラの外縁に設けられ、利用者が把持する表面と裏面とからなる平面部と前記平面部の端部から前記裏面側に折り返された耳部とを有する前記手摺の前記裏面に接触し、回転により前記裏面との間に発生する第1の摩擦力によって前記手摺を移動させる外縁部と、
当該手摺駆動ローラの前記手摺が幅方向に変位した場合に前記耳部と接触する部分に設けられ、前記手摺が幅方向に変位して前記耳部に接触した場合に前記第1の摩擦力よりも小さい第2の摩擦力を前記耳部との間に発生させる案内部と、
を備えた乗客コンベアの手摺駆動ローラ。
【請求項2】
前記案内部は、当該手摺駆動ローラの回転軸に沿った断面視において前記外縁部の表面よりも前記耳部の方へ突出している請求項1に記載の乗客コンベアの手摺駆動ローラ。
【請求項3】
前記案内部は、前記外縁部の内周に設けられる請求項1又は2に記載の乗客コンベアの手摺駆動ローラ。
【請求項4】
前記案内部は、前記手摺が幅方向に変位した場合に前記耳部と接触する部分に回転方向に沿って環状に設けられており、その径方向外側の縁部は、回転軸に沿った断面視において当該手摺駆動ローラの外縁に向かうにつれて前記外縁部の表面に向かって傾斜している請求項2又は3に記載の乗客コンベアの手摺駆動ローラ。
【請求項5】
前記案内部は、前記手摺が幅方向に変位した場合に前記耳部と接触する部分に回転方向に沿って環状に断続的に複数配置されており、各案内部の回転方向端部は、各案内部の中心部から前記回転方向端部側に向かうにつれて前記外縁部の表面に向かって傾斜している請求項2から4のいずれか一項に記載の乗客コンベアの手摺駆動ローラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、乗客コンベアの手摺を移動させる手摺駆動装置に備えられた手摺駆動ローラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常、乗客コンベアには、踏段の移動に伴って移動する手摺が備えられている。この手摺は、利用者が把持する表面とその裏面とからなる平面部と平面部の両端から裏面側に折り返された耳部とを有している。この手摺は、手摺駆動装置に備えられ、裏面に接触する手摺駆動ローラの回転により発生する摩擦力によって移動するものである。
【0003】
手摺が手摺の移動方向に直行する手摺の幅方向へ変位し、手摺駆動ローラと耳部が接触すれば手摺駆動ローラ及び耳部が損傷することとなる。そこで従来から、手摺の幅方向への移動を規制する案内体が用いられている。
【0004】
特許文献1には、手摺の移動方向における手摺駆動ローラの前後に、保持器により手摺駆動ローラの軸に固定された案内体を備えた移動手摺案内装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-131371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の移動手摺案内装置を用いて手摺駆動ローラ及び耳部の損傷を軽減するためには、案内体を、耳部の間の通常は耳部と接触しない位置であって、手摺が幅方向に変位した場合は手摺駆動ローラと耳部が接触する前に耳部と接触することとなる位置に設置する必要がある。そのため、手摺駆動装置及び移動手摺案内装置の据え付けにおいて、案内体の設置位置を調整する手間があるという課題があった。
【0007】
本開示は上記の課題に鑑みてなされたものであって、より簡単に手摺駆動ローラ及び耳部の接触による損傷を軽減することができる手摺駆動ローラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この開示に係る乗客コンベアの手摺駆動ローラは、乗客コンベアの手摺を移動させる手摺駆動装置の手摺駆動ローラにおいて、当該手摺駆動ローラの外縁に設けられ、利用者が把持する表面と裏面とからなる平面部と平面部の端部から裏面側に折り返された耳部とを有する手摺の裏面に接触し、回転により裏面との間に発生する第1の摩擦力によって手摺を移動させる外縁部と、当該手摺駆動ローラの手摺が幅方向に変位した場合に耳部と接触する部分に設けられ、手摺が幅方向に変位して耳部に接触した場合に第1の摩擦力よりも小さい第2の摩擦力を耳部との間に発生させる案内部と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、より簡単に手摺駆動ローラ及び耳部の接触による損傷を軽減することができる手摺駆動ローラを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態1における乗客コンベア全体を示す全体図である。
図2】実施の形態1における手摺駆動装置を示す図である。
図3】実施の形態1における1対の手摺駆動ローラ及び押圧ローラを示す図である。
図4】実施の形態1における1対の手摺駆動ローラ及び押圧ローラの断面図である。
図5】実施の形態2における手摺駆動ローラを示す図である。
図6】実施の形態2における手摺駆動ローラの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
以下に実施の形態1にかかる手摺駆動ローラ10を図面に基づいて詳細に説明する。なお、各図面における同一の符号は同一又は相当の構成を表している。
【0012】
図1は実施の形態1における手摺駆動ローラ10を備えた乗客コンベア100全体を示す全体図である。初めに、乗客コンベア100全体について図1を用いて説明する。
【0013】
乗客コンベア100は、図示しない踏段、手摺30、並びに踏段及び手摺30を移動させる駆動力を発生させる駆動機50を備えている。また、乗客コンベア100は、駆動機50の駆動力を伝える駆動チェーン51、及び駆動チェーン51が巻きかけられ、手摺30を移動させる手摺駆動装置40を備えている。
【0014】
図2は、図1において点線で囲った手摺駆動装置40を示す図である。本実施の形態において手摺駆動装置40は、4対の手摺駆動ローラ10及び押圧ローラ20を備えている。4対の手摺駆動ローラ10及び押圧ローラ20は、それぞれ手摺30を挟んでいる。また、押圧ローラ20は、2つごとに連結部材20aにより後に説明する回転軸21が連結されている。この連結部材20aは、図示しないバネにより、紙面の上方向であって手摺駆動ローラ10のある方へ、押圧されている。したがって、連結部材20aによって連結された押圧ローラ20は、手摺30を対向する手摺駆動ローラ10の方へ押圧することとなる。
【0015】
図3は、4対の手摺駆動ローラ10及び押圧ローラ20の内の1対を拡大した図である。手摺駆動ローラ10及び押圧ローラ20の構成について説明する。
【0016】
手摺駆動ローラ10は、中心から順に回転軸11、基部12、案内部13、及び外縁部14を備えている。回転軸11は、紙面の奥行方向に伸びる鋼鉄の棒であって、手摺駆動ローラ10の中心で回転する軸である。回転軸11は、紙面の奥側に図示しない歯車が設けられており、この歯車に、駆動チェーン51が巻きかけられることで、駆動機50の駆動力を回転軸11に伝えている。また、回転軸11の紙面の手前側は、図示しない軸受けに回転可能に固定されている。
【0017】
基部12は、手摺駆動ローラ10を構成し、回転軸11の回転に伴って回転する鋼鉄の円盤である。後に詳細に説明する案内部13は、基部12の外周に設けられ、回転軸11の回転に伴って回転するものである。また、外縁部14は、案内部13の更に外周に設けられ、回転軸11の回転に伴って回転するものである。本実施の形態においてはゴムで構成されている。そして、外縁部14は手摺駆動ローラ10の最も外縁に備えられており、手摺駆動ローラ10の回転により手摺30との間に発生する第1の摩擦力により手摺30を移動させるものである。
【0018】
押圧ローラ20は、回転軸21及び押圧体22を備えている。回転軸21は、紙面の奥行方向に伸びる鋼鉄の棒であって、押圧ローラ20の中心で回転する軸である。回転軸21は、両端が連結部材20aによって回転可能に固定されている。押圧体22は、手摺駆動ローラ10における基部12及び外縁部14に相当する部分であり、鋼鉄の円盤の外縁にゴムが設けられたものである。
【0019】
次に図4を用いて、手摺30及び手摺駆動ローラ10の案内部13について詳細に説明する。図4は、図3に切断線A-Aで示した切断面である断面図である。言い換えれば、図4は、当該手摺駆動ローラ10の回転軸21に沿った断面視を示している。
【0020】
手摺30は、利用者が把持する表面とその裏面とからなる平面部31、及び平面部31の両端から裏面側に折り返された耳部32を備えている。また、耳部32の端部は案内部13と対向している。
【0021】
図1に示すように手摺30は、利用者が把持する表面が下になった状態で手摺駆動装置40の手摺駆動ローラ10及び押圧ローラ20に挟み込まれる。したがって、図4において、平面部31の表面とは下側の面であって裏面とは上側の面である。図4に示すように、裏面は手摺駆動ローラ10の外縁部14と接触しており、表面は押圧ローラ20の押圧体22と接触している。
【0022】
案内部13は、図4の紙面の横方向であって手摺30の移動方向に直行する幅方向に手摺30が変位した場合に、耳部32が接触する部分に設けられた部分である。言い換えれば、案内部13は、耳部32の先端部に対向する部分であって、手摺30が幅方向に変位した場合に耳部32が接触する部分に回転方向に沿って設けられている。案内部13は、本実施の形態においてゴムである外縁部14よりも摩擦力が小さい部材で構成されている。言い換えれば、案内部13は、手摺30が幅方向に変位して耳部32に接触した場合に、第1の摩擦力よりも小さな第2の摩擦力を耳部32との間に発生させる。本実施の形態において案内部13はポリアセタールで構成されている。
【0023】
また、案内部13は、図4に示すように外縁部14と比較して、手摺30の耳部32の方に突出している。言い換えれば、案内部13は、回転軸21に沿った断面視において外縁部14の表面よりも耳部32の方へ突出している。さらに案内部13は、手摺駆動ローラ10の外縁側の端に、手摺駆動ローラ10の回転軸11に近づくに従って耳部32に近づく第1傾斜部13aを有している。言い換えれば、第1傾斜部13aは、案内部13の径方向(紙面の上下方向)外側の縁部であって、回転軸11に沿った断面視において手摺駆動ローラ10の外縁に向かうにつれて外縁部14の表面に向かって傾斜している。
【0024】
次に、本実施の形態の動作及び効果について説明する。
【0025】
通常、手摺30は、外縁部14及び押圧体22により挟まれた状態で、手摺駆動ローラ10の回転により発生する第1の摩擦力により移動している。このとき、耳部32は、手摺駆動ローラ10と接触していない。
【0026】
そして、何らかの原因により手摺30が幅方向に変位した場合には、耳部32の一方は、案内部13に接触する。案内部13は回転しているため、案内部13に接触した耳部32は、反対の方へ押し返されることとなる。
【0027】
案内部13は外縁部14よりも摩擦力が小さい、すなわち第1の摩擦力よりも小さい第2の摩擦力を耳部32との間に発生させるため、手摺駆動ローラの耳部32が接触する位置が外縁部14と同じ素材で構成されている手摺駆動ローラ10と比較して、手摺駆動ローラ10及び耳部32の損傷が軽減される。
【0028】
また、耳部32の端部の回転軸11側が、手摺30が幅方向に変位することで、案内部13と接触する場合であっても、案内部13に第1傾斜部13aが設けられていることにより、当該耳部32の端部の回転軸11側の損傷が軽減される。案内部13に対して耳部32が斜めに当接することとなり接触による衝撃が分散されるからである。
【0029】
実施の形態2.
実施の形態1において、手摺駆動ローラ10は、中心から順に回転軸11、基部12、案内部13、及び外縁部14を備えていた。本実施の形態における手摺駆動ローラ10aは、中心から順に回転軸11、基部12及び外縁部14を備え、外縁部14に案内部15を接着固定したものである。図5及び図6を用いて、本実施の形態の構成について実施の形態1との相違点を中心に説明する。
【0030】
図5は、実施の形態2における手摺駆動ローラ10aを示す図である。図5に示すように、4枚の案内部15が、手摺駆動ローラ10aの外縁部14に接着固定されている。より具体的には、案内部15は、手摺30が幅方向に変位した場合に耳部32と接触する部分に回転方向に沿って環状に断続的に複数(4枚)配置されている。案内部15は実施の形態1の案内部13と同様にポリアセタールで構成されている。なお、図示しない反対の面にも4枚の案内部15が接着固定されている。すなわち、本実施の形態において案内部15は、手摺30が幅方向に変位した場合に耳部32が接触する部分に断続的に複数設けられている。
【0031】
案内部15の形状についてより詳細に説明する。図6は、図5切断線B-Bで示した手摺駆動ローラ10aの切断面を含む断面図である。図6の上下方向は、図5の奥行方向を表している。
【0032】
図6の紙面の上下であって手摺駆動ローラ10aの両面に設けられた複数の案内部15のそれぞれは、手摺駆動ローラ10aの回転方向の端に、案内部15の中心に近づくに従って耳部32に近づく第2傾斜部15aを有している。言い換えれば、第2傾斜部15aは、各案内部15の回転方向端部に設けられており、各案内部15の中心部から回転方向端部側に向かうにつれて外縁部14の表面に向かって傾斜している。手摺駆動ローラ10aを手摺駆動装置40に装着し、手摺駆動装置40を乗客コンベア100に設置した場合、手摺30の耳部32は、図6の紙面の上下方向にある。本実施の形態において案内部15は、手摺駆動ローラ10aの回転方向の両端に第2傾斜部15aを有している。
【0033】
次に本実施の形態の動作及び効果について実施の形態1との相違点を中心に説明する。
【0034】
手摺30が幅方向に変位したときに、手摺30の耳部32が案内部15の第2傾斜部15a以外の部分に接触した場合は、実施の形態1と同様に、耳部32が反対の方へ押し返されることとなる。一方、耳部32が第2傾斜部15aと接触した場合は、案内部15に対して耳部32が斜めに当接することとなり、接触による衝撃が分散されることとなる。
【0035】
したがって、そのような場合には、実施の形態1よりも更に手摺駆動ローラ10a及び耳部32の損傷が軽減される。
【0036】
以上、実施の形態について説明したが、本開示はこの実施の形態に限定されるものではない、以下に変形例を示す。
【0037】
実施の形態1及び2に記載の案内部13,15は、それぞれ第1傾斜部13a及び第2傾斜部15aを備えていたが、両方を備えていてもよい。
【0038】
実施の形態において、外縁部14はゴムであり、案内部13,15はポリアセタールであったが、課題の解決のためには、案内部13,15が外縁部14よりも摩擦力の小さい部分であればよい。例えば外縁部14がポリウレタンであって、案内部13,15がナイロンであってもよい。
【0039】
実施の形態2において、案内部15は外縁部14に接着固定されていたが、案内部15の位置は、手摺30が幅方向に移動した場合に耳部32が接触する部分であればよく、基部12に固定されていてもよい。また、固定方法は接着固定には限られない。
【符号の説明】
【0040】
10,10a 手摺駆動ローラ、11 回転軸、12 基部、13,15 案内部、14 外縁部、13a 第1傾斜部、15a 第2傾斜部、20 押圧ローラ、21 回転軸、22 押圧体、30 手摺、31 平面部、32 耳部、40 手摺駆動装置、50 駆動機、100 乗客コンベア
図1
図2
図3
図4
図5
図6