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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-13
(45)【発行日】2022-12-21
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 27/06 20060101AFI20221214BHJP
   H02K 7/09 20060101ALI20221214BHJP
   H02M 7/06 20060101ALI20221214BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20221214BHJP
【FI】
H02P27/06
H02K7/09
H02M7/06 A
H02M7/48 E
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021184073
(22)【出願日】2021-11-11
(65)【公開番号】P2022077528
(43)【公開日】2022-05-23
【審査請求日】2021-11-11
(31)【優先権主張番号】P 2020188082
(32)【優先日】2020-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 将央
(72)【発明者】
【氏名】仲石 雅樹
【審査官】谿花 正由輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-200524(JP,A)
【文献】特開2001-037239(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 27/06
H02K 7/09
H02M 7/06
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ(13)の駆動軸(131)を回転駆動するとともに、前記駆動軸(131)を電磁力によって非接触で支持する支持用コイル(136a136c,154,161a)に電力を供給する電力変換装置であって、
交流電源(2)からの第1の交流を直流に変換して配線対(L1,L2)に出力するコンバータ回路(21)と、
スイッチング素子(22a)を備え、前記コンバータ回路(21)から前記配線対(L1,L2)に出力される前記直流を、前記スイッチング素子(22a)のスイッチング動作により、前記駆動軸(131)を回転駆動するように第2の交流に変換して、前記モータ(13)の駆動用コイル(135a135c)に供給するインバータ回路(22)と、
前記配線対(L1,L2)の間に接続された第1のコンデンサ(24)と、
第2のコンデンサ(25c,35b)、及び当該第2のコンデンサ(25c,35b)と直列に接続された規制部(25b,35a)を有し、前記配線対(L1,L2)の間に接続されるバッファ回路(25,35)と、
前記第2のコンデンサ(25c)に蓄えられたエネルギーを用いて、前記支持用コイル(136a136c,154,161a)に、前記駆動軸(131)の荷重を非接触で支持するように電流を供給する電流供給回路(32,33,34)とを備え、
前記第1のコンデンサ(24)の容量は、スイッチング周期間における前記第1のコンデンサ(24)の電圧変動を、前記第1のコンデンサ(24)の電圧の平均値の1/10以下に抑えるように設定され
前記規制部(25b)は、前記第2のコンデンサ(25c)の電圧が前記第1のコンデンサ(24)の電圧よりも所定の電圧差だけ高い状態において、前記第1のコンデンサ(24)の電圧が前記第2のコンデンサ(25c)の電圧よりも前記電圧差だけ高い状態よりも、前記第1及び第2のコンデンサ(24,25c)のうち高電圧側のコンデンサから低電圧側のコンデンサに流れる電流が小さくなるように、前記第2のコンデンサ(25c)から前記第1のコンデンサ(24)に電流が流れるのを規制するように構成され
前記第1のコンデンサ(24)の容量をC1、前記第1のコンデンサ(24)の耐電圧をVc11、前記駆動用コイル(135a~135c)への供給中における前記第1のコンデンサ(24)のピーク電圧をVc12、前記駆動用コイル(135a~135c)に蓄えられる最大の磁気エネルギーをEとした場合に、以下の式(1)が成り立つ
ことを特徴とする電力変換装置。
C1(Vc11 -Vc12 )/2<E ・・・式(1)
【請求項2】
請求項1に記載の電力変換装置において、
前記インバータ回路(22)による前記駆動用コイル(135a~135c)への前記第2の交流の供給を停止させたときに、前記駆動用コイル(135a~135c)に生じる逆起電力によって前記第2のコンデンサ(25c)が前記駆動用コイル(135a~135c)から吸収可能な電気的エネルギーが、前記逆起電力によって前記第1のコンデンサ(24)が前記駆動用コイル(135a~135c)から吸収可能な電気的エネルギーよりも大きいことを特徴とする電力変換装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電力変換装置において、
前記コンバータ回路(21)と前記第1のコンデンサ(24)との間の前記配線対(L1,L2)の少なくとも一方の配線(L1)に設けられるリアクトル(23)を備え、
前記バッファ回路(25,35)は、前記リアクトル(23)と前記インバータ回路(22)との間に接続されることを特徴とする電力変換装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の電力変換装置において、
インダクタンス素子とスイッチで構成され、前記第2のコンデンサ(25c,35b)の電圧を能動的に昇圧または降圧する電圧可変手段を前記バッファ回路(25,35)は有しないことを特徴とする電力変換装置。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか1項に記載の電力変換装置において、
前記第2のコンデンサ(25c,35b)と前記電流供給回路(32,33,34)との間には、前記電流供給回路(32,33,34)の入力電圧を能動的に昇圧または降圧する電圧可変手段が設けられていないことを特徴とする電力変換装置。
【請求項6】
請求項1~3のいずれか1項に記載の電力変換装置において、
前記バッファ回路(25,35)と前記配線対(L1,L2)との間には、前記第2のコンデンサ(25c,35b)の電圧を能動的に昇圧または降圧する電圧可変手段が設けられていないことを特徴とする電力変換装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の電力変換装置において、
前記第1のコンデンサ(24)の容量をC1、前記第1のコンデンサ(24)の耐電圧をVc11、前記駆動用コイル(135a~135c)への供給中における前記第1のコンデンサ(24)のピーク電圧をVc12、前記第2のコンデンサ(25c)の容量をC2、前記第2のコンデンサ(25c)の耐電圧をVc21、前記駆動用コイル(135a~135c)への供給中における前記第2のコンデンサ(25c)のピーク電圧をVc22とした場合に、以下の式()が成り立つことを特徴とする電力変換装置。
C1(Vc11-Vc12)<C2(Vc21-Vc22) ・・・式(
【請求項8】
請求項1~のいずれか1項に記載の電力変換装置において、
前記第2のコンデンサ(25c)の静電容量は、前記第1のコンデンサ(24)の静電容量よりも大きいことを特徴とする電力変換装置。
【請求項9】
請求項1~のいずれか1項に記載の電力変換装置において、
前記バッファ回路(25)は、前記第2のコンデンサ(25c)と直列に接続された抵抗(25a)をさらに有することを特徴とする電力変換装置。
【請求項10】
請求項1~のいずれか1項に記載の電力変換装置において、
前記電流供給回路(34)によって前記電流が供給される前記支持用コイル(136a136c)は、前記モータ(13)に設けられ、かつ前記駆動軸(131)のラジアル荷重を非接触で支持するものであることを特徴とする電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、モータの駆動軸を回転駆動するとともに、前記駆動軸を電磁力によって非接触で支持する支持用コイルに電力を供給する電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、モータの駆動軸を回転駆動するとともに、前記駆動軸を電磁力によって非接触で支持する支持用コイルに電力を供給する電力変換装置が開示されている。この電力変換装置は、交流電源からの第1の交流を直流に変換するコンバータ回路と、前記コンバータ回路の出力を、前記駆動軸を回転駆動するように第2の交流に変換して、前記モータの駆動用コイルに供給するインバータ回路と、前記コンバータ回路の出力を、第3の交流に変換して、前記支持用コイルに供給する電流供給回路と、前記インバータ回路の直流側ノード間に接続されたコンデンサとを備えている。また、停電時に、インバータ回路が、モータの発電電力をコンデンサに回生するように回生制御されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-200524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1では、コンデンサの容量が小さいと、コンデンサの電圧変動が大きくなることによって、電流供給回路の入力電圧が変動し、支持用コイルの制御が不安定になる虞がある。
【0005】
本開示の目的は、電流供給回路の入力電圧の変動を抑制し、支持用コイルの制御を安定化させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様は、モータ(13)の駆動軸(131)を回転駆動するとともに、前記駆動軸(131)を電磁力によって非接触で支持する支持用コイル(136a~136c,154,161a)に電力を供給する電力変換装置であって、交流電源(2)からの第1の交流を直流に変換して配線対(L1,L2)に出力するコンバータ回路(21)と、スイッチング素子(22a)を備え、前記コンバータ回路(21)から前記配線対(L1,L2)に出力される前記直流を、前記スイッチング素子(22a)のスイッチング動作により、前記駆動軸(131)を回転駆動するように第2の交流に変換して、前記モータ(13)の駆動用コイル(135a~135c)に供給するインバータ回路(22)と、前記配線対(L1,L2)の間に接続された第1のコンデンサ(24)と、第2のコンデンサ(25c,35b)、及び当該第2のコンデンサ(25c,35b)と直列に接続された規制部(25b,35a)を有し、前記配線対(L1,L2)の間に接続されるバッファ回路(25,35)と、前記第2のコンデンサ(25c)に蓄えられたエネルギーを用いて、前記支持用コイル(136a~136c,154,161a)に、前記駆動軸(131)の荷重を非接触で支持するように電流を供給する電流供給回路(32,33,34)とを備え、前記第1のコンデンサ(24)は、前記コンバータ回路(21)の出力電圧の脈動を許容し、且つ前記スイッチング動作による配線対(L1,L2)の間の電圧変動を吸収し、前記規制部(25b)は、前記第2のコンデンサ(25c)の電圧が前記第1のコンデンサ(24)の電圧よりも所定の電圧差だけ高い状態において、前記第1のコンデンサ(24)の電圧が前記第2のコンデンサ(25c)の電圧よりも前記電圧差だけ高い状態よりも、前記第1及び第2のコンデンサ(24,25c)のうち高電圧側のコンデンサから低電圧側のコンデンサに流れる電流が小さくなるように、前記第2のコンデンサ(25c)から前記第1のコンデンサ(24)に電流が流れるのを規制するように構成されることを特徴とする。
【0007】
第1の態様では、第1のコンデンサ(24)の電圧変動が大きい場合でも、規制部(25b)によって第2のコンデンサ(25c)から第1のコンデンサ(24)への電流の流入を抑制し、電流供給回路(32,33,34)にエネルギーを供給する第2のコンデンサ(25c)の電圧変動を抑制できるので、支持用コイル(136a~136c,154,161a)の制御を安定化できる。
【0008】
本開示の第2の態様は、第1の態様において、前記インバータ回路(22)による前記駆動用コイル(135a~135c)への前記第2の交流の供給を停止させたときに、前記駆動用コイル(135a~135c)に生じる逆起電力によって前記第2のコンデンサ(25c)が前記駆動用コイル(135a~135c)から吸収可能な電気的エネルギーが、前記逆起電力によって前記第1のコンデンサ(24)が前記駆動用コイル(135a~135c)から吸収可能な電気的エネルギーよりも大きいことを特徴とする。
【0009】
第2の態様では、インバータ回路(22)による駆動用コイル(135a~135c)への前記第2の交流の供給を停止させたときに、駆動用コイル(135a~135c)の電気的エネルギーを、第2のコンデンサ(25c)に第1のコンデンサ(24)よりも多く吸収させることができる。
【0010】
本開示の第3の態様は、第1又は第2の態様において、前記コンバータ回路(21)と前記第1のコンデンサ(24)との間の前記配線対(L1,L2)の少なくとも一方の配線(L1)に設けられるリアクトル(23)を備え、前記バッファ回路(25,35)は、前記リアクトル(23)と前記インバータ回路(22)との間に接続されることを特徴とする。
【0011】
第3の態様では、バッファ回路(25,35)を、リアクトル(23)よりもコンバータ回路(21)側に設けた場合に比べ、第2のコンデンサ(25c)が駆動用コイル(135a~135c)に蓄えられていた磁気エネルギーを吸収しやすい。
【0012】
本開示の第4の態様は、第1~第3の態様のいずれか1つにおいて、インダクタンス素子とスイッチで構成され、前記第2のコンデンサ(25c,35b)の電圧を能動的に昇圧または降圧する電圧可変手段を前記バッファ回路(25,35)は有しないことを特徴とする。
【0013】
第4の態様では、電力変換装置(20)の構成を簡素にできる。
【0014】
本開示の第5の態様は、第1~第3の態様のいずれか1つにおいて、前記第2のコンデンサ(25c,35b)と前記電流供給回路(32,33,34)との間には、前記電流供給回路(32,33,34)の入力電圧を能動的に昇圧または降圧する電圧可変手段が設けられていないことを特徴とする。
【0015】
第5の態様では、電力変換装置(20)の構成を簡素にできる。
【0016】
本開示の第6の態様は、第1~第3の態様のいずれか1つにおいて、前記バッファ回路(25,35)と前記配線対(L1,L2)との間には、前記第2のコンデンサ(25c,35b)の電圧を能動的に昇圧または降圧する電圧可変手段が設けられていないことを特徴とする。
【0017】
第6の態様では、電力変換装置(20)の構成を簡素にできる。
【0018】
本開示の第7の態様は、第1~第6の態様のいずれか1つにおいて、前記第1のコンデンサ(24)の容量をC1、前記第1のコンデンサ(24)の耐電圧をVc11、前記駆動用コイル(135a~135c)への供給中における前記第1のコンデンサ(24)のピーク電圧をVc12、前記第2のコンデンサ(25c)の容量をC2、前記第2のコンデンサ(25c)の耐電圧をVc21、前記駆動用コイル(135a~135c)への供給中における前記第2のコンデンサ(25c)のピーク電圧をVc22とした場合に、以下の式(1)が成り立つことを特徴とする。
【0019】
C1(Vc11-Vc12)<C2(Vc21-Vc22) ・・・式(1)
第7の態様では、インバータ回路(22)による駆動用コイル(135a~135c)への前記第2の交流の供給を停止させたときに、駆動用コイル(135a~135c)の電気的エネルギーを、第2のコンデンサ(25c)に第1のコンデンサ(24)よりも多く吸収させることができる。
【0020】
本開示の第8の態様は、第1~第7の態様のいずれか1つにおいて、前記第1のコンデンサ(24)の容量をC1、前記第1のコンデンサ(24)の耐電圧をVc11、前記駆動用コイル(135a~135c)への供給中における前記第1のコンデンサ(24)のピーク電圧をVc12、前記駆動用コイル(135a~135c)に蓄えられる最大の磁気エネルギーをEとした場合に、以下の式(2)が成り立つことを特徴とする。
【0021】
C1(Vc11-Vc12)/2<E ・・・式(2)
第8の態様では、駆動用コイル(135a~135c)に蓄えられる最大の磁気エネルギーを第1のコンデンサ(24)が吸収できる程度に第1のコンデンサ(24)の静電容量を大きくしたり、耐電圧を高く設定しなくてもよいので、第1のコンデンサ(24)を小型化できる。
【0022】
本開示の第9の態様は、第1~第8の態様のいずれか1つにおいて、前記第2のコンデンサ(25c)の静電容量は、前記第1のコンデンサ(24)の静電容量よりも大きいことを特徴とする。
【0023】
第9の態様では、第2のコンデンサ(25c)の電圧を安定させやすいので、支持用コイル(136a~136c,154,161a)への電流供給を安定化させやすい。
【0024】
本開示の第10の態様は、第1~第9の態様のいずれか1つにおいて、前記バッファ回路(25)は、前記第2のコンデンサ(25c)と直列に接続された抵抗(25a)をさらに有することを特徴とする。
【0025】
第10の態様では、交流電源(2)からの電力供給の開始時に第2のコンデンサ(25c)に流れる突入電流を低減できる。したがって、突入電流を抑制する回路を別途設ける必要がなく、部品コストを削減できる。
【0026】
本開示の第11の態様は、第1~第10の態様のいずれか1つにおいて、前記電流供給回路(34)によって前記電流が供給される前記支持用コイル(136a~136c)は、前記モータ(13)に設けられ、かつ前記駆動軸(131)のラジアル荷重を非接触で支持するものであることを特徴とする。
【0027】
第11の態様では、支持用コイル(136a~136c)をモータ(13)に設けるので、モータ(13)及び軸受機構を含む装置を小型化できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、本開示の実施形態1に係る電力変換装置を備えたターボ圧縮機の構成を示す概略図である。
図2図2は、モータの概略断面図である。
図3図3は、モータの概略断面図であって、磁石磁束と駆動用磁束とを示す。
図4図4は、モータの概略断面図であって、磁石磁束と支持用磁束とを示す。
図5図5は、ラジアル磁気軸受の概略断面図である。
図6図6は、電力変換装置の構成を示す回路図である。
図7図7中、(a)は、電力変換装置にサージ電圧抑制回路を設けない場合における第1電流供給回路、第2電流供給回路、及び第3電流供給回路の入力電圧と、モータの回転数とを示す。図7中、(b)は、実施形態1における図7の(a)に相当するグラフである。図7中、(c)は、回生動作をモータに行わせる場合における図7の(a)に相当するグラフである。
図8図8は、実施形態2の図1相当図である。
図9図9は、実施形態2の図6相当図である。
図10図10は、実施形態3の図6相当図である。
図11図11は、実施形態4の図10相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本開示の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0030】
《実施形態1》
図1は、ターボ圧縮機(1)を示す。このターボ圧縮機(1)は、冷凍サイクルを行う冷媒回路(図示せず)に設けられて冷媒を圧縮するものである。ターボ圧縮機(1)は、ケーシング(11)と、インペラ(12)と、モータ(13)と、1対のタッチダウン軸受(14)と、1つのラジアル磁気軸受(15)と、スラスト磁気軸受(16)と、電力変換装置(20)と、制御部(40)とを備えている。
【0031】
ケーシング(11)は、略円筒状に形成され、円筒軸線が水平向きとなるように配置されている。ケーシング(11)内の空間は、インペラ(12)を収容するためのインペラ室(S1)と、モータ(13)を収容するための電動機室(S2)とに壁部(111)によって軸方向に区画されている。インペラ室(S1)には、吸入管(17)と、吐出管(18)とが接続される。
【0032】
インペラ(12)は、複数の羽根によって外形が略円錐形状となるように形成されている。インペラ(12)は、インペラ室(S1)に収容されている。
【0033】
モータ(13)は、ベアリングレスモータである。モータ(13)は、駆動軸(131)と、固定子(132)と、回転子(133)とを有している。駆動軸(131)の一端は、インペラ(12)の幅広側の面の中心に固定されている。駆動軸(131)の他端には、円盤部(131a)が張出形成されている。回転子(133)は、駆動軸(131)に固定され、固定子(132)は、ケーシング(11)に固定されている。回転子(133)及び固定子(132)は、電動機室(S2)に収容されている。
【0034】
モータ(13)の固定子(132)は、磁性材料(例えば、積層鋼板)で構成されている。図2は、モータ(13)の概略断面図である。固定子(132)は、バックヨーク部(134)と、図示を省略する複数のティース部と、ティース部に巻回された駆動用コイル(135a~135c)及びモータ側支持用コイル(136a~136c)とを有する。
【0035】
固定子(132)のバックヨーク部(134)は、円筒状に形成されている。駆動用コイル(135a~135c)及びモータ側支持用コイル(136a~136c)は、各ティース部に分布巻方式又は集中巻方式で巻回されている。モータ側支持用コイル(136a~136c)は、当該モータ側支持用コイル(136a~136c)に電流を流したときに生じる電磁力によって駆動軸(131)のラジアル荷重を非接触で支持するように構成されている。
【0036】
駆動用コイル(135a~135c)は、ティース部のうち内周側に巻回されたコイルである。駆動用コイル(135a~135c)は、図2において太実線で囲んで示すU相駆動用コイル(135a)と、太破線で囲んで示すV相駆動用コイル(135b)と、細実線で囲んで示すW相駆動用コイル(135c)とから構成されている。
【0037】
モータ側支持用コイル(136a~136c)は、ティース部のうち外周側に巻回されたコイルである。モータ側支持用コイル(136a~136c)は、図2において太実線で囲んで示すU相モータ側支持用コイル(136a)と、太破線で囲んで示すV相モータ側支持用コイル(136b)と、細実線で囲んで示すW相モータ側支持用コイル(136c)とから構成されている。
【0038】
モータ(13)の回転子(133)は、コア部(137)と、このコア部(137)に埋設された複数の永久磁石(この例では、4つ)(138)とを有する。
【0039】
回転子(133)のコア部(137)は、円筒状に形成されている。コア部(137)の中央部には駆動軸(131)を挿通するためのシャフト孔(図示せず)が形成されている。コア部(137)は、磁性材料(例えば、積層鋼板)で構成されている。
【0040】
複数の永久磁石(138)は、回転子(133)の周方向に互いに等しい間隔を空けて埋設されている。これら複数の永久磁石(138)は、互いに同形状である。各永久磁石(138)の外周面側はN極となっており、各永久磁石(138)の間のコア部(137)の外周面はS極となっている。
【0041】
図3は、モータ(13)において、各永久磁石(138)によって生じる磁石磁束φと、駆動軸(131)を回転駆動するために生じる駆動用磁束BMとを示す。モータ(13)は、これら磁石磁束φと駆動用磁束BMとの相互作用によって、同図に示す駆動用トルクTを発生させるように構成されている。なお、同図中には、駆動用コイル(135a~135c)に流れる電流と等価の電流IMが示されている。
【0042】
図4は、モータ(13)において、各永久磁石(138)によって生じる磁石磁束φと、駆動軸(131)のラジアル荷重を非接触で支持するために生じる支持用磁束BS1とを示す。モータ(13)は、これら磁石磁束φと支持用磁束BS1との相互作用によって、同図に示す支持力Fを発生させるように構成されている。なお、同図中には、モータ側支持用コイル(136a~136c)に流れる電流と等価の電流ISが示されている。
【0043】
1対のタッチダウン軸受(14)のうち、一方のタッチダウン軸受(14)は、駆動軸(131)のインペラ(12)近傍に設けられ、他方のタッチダウン軸受(14)は、駆動軸(131)の円盤部(131a)近傍に設けられている。これらのタッチダウン軸受(14)は、モータ(13)が非通電であるとき(すなわち、駆動軸(131)が浮上していないとき)に駆動軸(131)を支持するように構成されている。
【0044】
ラジアル磁気軸受(15)は、モータ(13)の回転子(133)及び固定子(132)と、インペラ(12)との間で、ケーシング(11)の内周壁に固定されている。
【0045】
図5は、ラジアル磁気軸受(15)の構成例を示す横断面図である。同図に示すように、ラジアル磁気軸受(15)は、ヘテロポーラ型のラジアル磁気軸受を構成している。ラジアル磁気軸受(15)は、バックヨーク部(152)及び複数のティース部(153)を有する固定子(151)と、ティース部(153)に巻回された4つの支持用コイルとしてのラジアル磁気軸受用コイル(154)とを有する。ラジアル磁気軸受用コイル(154)は、当該ラジアル磁気軸受用コイル(154)に電流を流したときに生じる電磁力によって駆動軸(131)のラジアル荷重を非接触で支持する。なお、各ラジアル磁気軸受用コイル(154)に流れる電流の方向は、支持用磁束BS2が図5に示す方向に生じるように設定される。
【0046】
スラスト磁気軸受(16)は、1対のスラスト磁気軸受用電磁石(161)を備えている。両スラスト磁気軸受用電磁石(161)は、円盤部(131a)の軸方向両側に配設されている。各スラスト磁気軸受用電磁石(161)は、支持用コイルとしてのスラスト磁気軸受用コイル(161a)を有している。スラスト磁気軸受用コイル(161a)は、当該スラスト磁気軸受用コイル(161a)に電流を流したときに生じる電磁力によって駆動軸(131)の円盤部(131a)を非接触で支持する。スラスト磁気軸受用コイル(161a)に流す電流を制御することにより、駆動軸(131)の円盤部(131a)の軸方向の位置を制御できる。
【0047】
電力変換装置(20)は、モータ(13)を回転駆動するとともに、駆動軸(131)を電磁力によって非接触で支持する支持用コイル(136a~136c,154,161a)に電力を供給する。図6に示すように、コンバータ回路(21)と、インバータ回路(22)と、リアクトル(23)と、第1のコンデンサ(24)と、バッファ回路としてのサージ電圧抑制回路(25)と、第1~第4の分圧用抵抗(26a~26d)と、ゼロクロス点検出回路(27)と、u相電流検出器(28)と、w相電流検出器(29)と、過電流保護部(30)と、ドライブ回路(31)と、4つの第1電流供給回路(32)と、2つの第2電流供給回路(33)、1つの第3電流供給回路(34)とを備えている。
【0048】
コンバータ回路(21)は、三相交流電源(2)からの三相の第1の交流を直流に変換して第1及び第2の出力ノード(21a,21b)から配線対(L1,L2)に出力する。詳しくは、コンバータ回路(21)は、全波整流回路である。コンバータ回路(21)は、ブリッジ状に結線された6つのダイオードを有している。ここで、コンバータ回路(21)により出力される直流は、時間によって大きさが変化しても正負は変化しない電力である。
【0049】
インバータ回路(22)は、コンバータ回路(21)の出力を、駆動軸(131)を回転駆動するように第2の交流に変換して、モータ(13)の駆動用コイル(135a~135c)に供給する。詳しくは、インバータ回路(22)は、6つのスイッチング素子(22a)と、6つの還流ダイオード(22b)とを有している。6つのスイッチング素子(22a)は、ブリッジ結線されている。詳しく説明すると、インバータ回路(22)は、その第1及び第2の直流側ノード(22c,22d)間に接続された3つのスイッチングレグを備えている。スイッチングレグは、2つのスイッチング素子(22a)が互いに直列に接続されたものである。
【0050】
3つのスイッチングレグの各々において、上アームのスイッチング素子(22a)と下アームのスイッチング素子(22a)との中点が、モータ(13)の各相の駆動用コイル(135a~135c)にそれぞれ接続されている。各スイッチング素子(22a)には、還流ダイオード(22b)が1つずつ逆並列に接続されている。6つのスイッチング素子(22a)は、コンバータ回路(21)から配線対(L1,L2)に出力される前記直流を、スイッチング動作により、前記第2の交流に変換する。
【0051】
リアクトル(23)の一端は、コンバータ回路(21)の第1の出力ノード(21a)に接続され、リアクトル(23)の他端は、インバータ回路(22)の第1の直流側ノード(22c)に接続されている。
【0052】
第1の出力ノード(21a)と第1の直流側ノード(22c)とを接続する第1配線(L1)と、第2の出力ノード(21b)と第2の直流側ノード(22d)とを接続する第2配線(L2)とが、配線対(L1,L2)を構成している。リアクトル(23)は、配線(L1)に設けられている。
【0053】
第1のコンデンサ(24)は、インバータ回路(22)の第1及び第2の直流側ノード(22c,22d)間に接続されている。つまり、第1のコンデンサ(24)は、配線対(L1,L2)の間に接続されている。
【0054】
第1のコンデンサ(24)の容量値は、コンバータ回路(21)の出力電圧をほとんど平滑化できないが、インバータ回路(22)のスイッチング動作に起因するリプル電圧を抑制できるように設定されている。つまり、第1のコンデンサ(24)は、コンバータ回路(21)の出力電圧の脈動を許容し、スイッチング素子(22a)のスイッチング動作による配線対(L1,L2)間の電圧変動を吸収する。リプル電圧とは、スイッチング素子(22a)におけるスイッチング周波数に応じた電圧変動である。したがって、第1のコンデンサ(24)の電圧であるDCリンク電圧には、三相交流電源(2)の交流電圧の周波数に応じた脈動成分が含まれる。三相交流電源(2)は三相電源であるため、三相交流電源(2)の周波数に応じた脈動成分は、三相交流電源(2)の周波数の6倍である。
【0055】
詳しくは、第1のコンデンサ(24)の容量は、スイッチング周期間における第1のコンデンサ(24)の電圧変動を、第1のコンデンサ(24)の電圧の平均値の1/10以下に抑えるように設定されている。
【0056】
サージ電圧抑制回路(25)は、インバータ回路(22)の第1及び第2の直流側ノード(22c,22d)間に接続されている。つまり、サージ電圧抑制回路(25)は、配線対(L1,L2)の間に第1のコンデンサ(24)と並列に接続されている。サージ電圧抑制回路(25)は、リアクトル(23)とインバータ回路(22)との間に接続されている。サージ電圧抑制回路(25)は、抵抗(25a)、規制部としての規制ダイオード(25b)、及び第2のコンデンサ(25c)を有している。抵抗(25a)、規制ダイオード(25b)、及び第2のコンデンサ(25c)は、第1の直流側ノード(22c)側から順に互いに直列に接続されている。つまり、抵抗(25a)及び規制ダイオード(25b)は、第2のコンデンサ(25c)と直列に接続されている。規制ダイオード(25b)のアノードは、抵抗(25a)に接続され、規制ダイオード(25b)のカソードは、第2のコンデンサ(25c)に接続されている。したがって、規制ダイオード(25b)は、第2のコンデンサ(25c)の電圧が第1のコンデンサ(24)の電圧よりも所定の電圧差だけ高い状態において、第1のコンデンサ(24)の電圧が第2のコンデンサ(25c)の電圧よりも前記電圧差だけ高い状態よりも、第1及び第2のコンデンサ(24,25c)のうち高電圧側のコンデンサから低電圧側のコンデンサに流れる電流が小さくなるように、第2のコンデンサ(25c)から第1のコンデンサ(24)に電流が流れるのを規制する。前記所定の電圧差は、規制ダイオード(25b)の順方向電圧以上の電圧である。また、第2のコンデンサ(25c)の静電容量は、前記第1のコンデンサ(24)の静電容量よりも大きい。
【0057】
第1及び第2の分圧用抵抗(26a,26b)は、コンバータ回路(21)の第1及び第2の出力ノード(21a,21b)間に第1の出力ノード(21a)側から順に直列に接続されている。
【0058】
第3及び第4の分圧用抵抗(26c,26d)は、インバータ回路(22)の第1及び第2の直流側ノード(22c,22d)間に第1の直流側ノード(22c)側から順に直列に接続されている。
【0059】
ゼロクロス点検出回路(27)は、三相交流電源(2)からの第1の交流の三相の電圧のうち、二相の電圧の相間電圧のゼロクロス点を示すゼロクロス信号を出力する。
【0060】
u相電流検出器(28)は、インバータ回路(22)によって出力されるu相電流を検出する。
【0061】
w相電流検出器(29)は、インバータ回路(22)によって出力されるw相電流を検出する。
【0062】
過電流保護部(30)は、u相電流検出器(28)によって検出されたu相電流、及びw相電流検出器(29)によって検出されたw相電流を出力するとともに、後述する制御部(40)によって出力されるPWM制御信号を出力する。また、過電流保護部(30)は、u相電流検出器(28)によって検出されたu相電流、及びw相電流検出器(29)によって検出されたw相電流に基づいて、過電流が流れていると判断した場合には、PWM制御信号を出力しない。これにより、過電流時にインバータ回路(22)を停止させることができる。
【0063】
ドライブ回路(31)は、過電流保護部(30)によって出力されたPWM制御信号を、適切な電圧レベルに変換して出力する。
【0064】
第1電流供給回路(32)は、第2のコンデンサ(25c)に蓄えられたエネルギーを用いて、前記ラジアル磁気軸受用コイル(154)に、前記駆動軸(131)の荷重を非接触で支持するように電流を供給する。第1電流供給回路(32)は、2つのスイッチングレグを構成する4つのスイッチング素子(32a)と、4つの還流ダイオード(32b)とをそれぞれ有している。各スイッチングレグは、互いに直列に接続された2つのスイッチング素子(32a)で構成され、当該各スイッチングレグは、第2のコンデンサ(25c)と並列に接続されている。一方のスイッチングレグにおける上アームのスイッチング素子(32a)と下アームのスイッチング素子(32a)との中点が、ラジアル磁気軸受(15)の1つのラジアル磁気軸受用コイル(154)の一端に接続され、他方のスイッチングレグにおける上アームのスイッチング素子(32a)と下アームのスイッチング素子(32a)との中点が、当該ラジアル磁気軸受用コイル(154)の他端に接続されている。第1電流供給回路(32)は、4つのラジアル磁気軸受用コイル(154)に対応して4つ設けられている。
【0065】
第2電流供給回路(33)は、第2のコンデンサ(25c)に蓄えられたエネルギーを用いて、前記スラスト磁気軸受用コイル(161a)に、前記駆動軸(131)の荷重を非接触で支持するように電流を供給する。第2電流供給回路(33)は、2つのスイッチングレグを構成する4つのスイッチング素子(33a)と、4つの還流ダイオード(33b)とをそれぞれ有している。各スイッチングレグは、互いに直列に接続された2つのスイッチング素子(33a)で構成され、当該各スイッチングレグは、第2のコンデンサ(25c)と並列に接続されている。一方のスイッチングレグにおける上アームのスイッチング素子(33a)と下アームのスイッチング素子(33a)との中点が、スラスト磁気軸受(16)の1つのスラスト磁気軸受用コイル(161a)の一端に接続され、他方のスイッチングレグにおける上アームのスイッチング素子(33a)と下アームのスイッチング素子(33a)との中点が、当該スラスト磁気軸受用コイル(161a)の他端に接続されている。第2電流供給回路(33)は、2つのスラスト磁気軸受用コイル(161a)に対応して2つ設けられている。
【0066】
第3電流供給回路(34)は、第2のコンデンサ(25c)に蓄えられたエネルギーを用いて、前記モータ側支持用コイル(136a~136c)に、前記駆動軸(131)の荷重を非接触で支持するように電流を供給する。第3電流供給回路(34)は、3つのスイッチングレグを構成する6つのスイッチング素子(34a)と、6つの還流ダイオード(34b)とを有している。6つのスイッチング素子(34a)は、ブリッジ結線されている。各スイッチングレグは、互いに直列に接続された2つのスイッチング素子(34a)で構成され、当該各スイッチングレグは、第2のコンデンサ(25c)と並列に接続されている。
【0067】
3つのスイッチングレグの各々において、上アームのスイッチング素子(34a)と下アームのスイッチング素子(34a)との中点が、モータ(13)の各相のモータ側支持用コイル(136a~136c)(U相支持用コイル、V相支持用コイル、W相支持用コイル)にそれぞれ接続されている。各スイッチング素子(34a)には、還流ダイオード(34b)が1つずつ逆並列に接続されている。
【0068】
第1電流供給回路(32)のスイッチング素子(32a)、第2電流供給回路(33)のスイッチング素子(33a)、及び第3電流供給回路(34)のスイッチング素子(34a)のオンオフは、制御部(40)により出力される制御信号によって制御される。
【0069】
制御部(40)は、インバータ回路(22)のスイッチング素子(22a)のオンオフをPWM制御するためのPWM制御信号を、ゼロクロス点検出回路(27)によって出力されたゼロクロス信号、第1及び第2の分圧用抵抗(26a,26b)の接続点の電圧、第3及び第4の分圧用抵抗(26c,26d)の接続点の電圧、u相電流検出器(28)によって検出されたu相電流、及びw相電流検出器(29)によって検出されたw相電流に基づいて生成して出力する。
【0070】
また、制御部(40)は、モータ(13)の駆動軸(131)の位置が所望の位置となるように、固定子(132)と回転子(133)との間のギャップを検出可能なギャップセンサ(図示せず)の検出値、及び円盤部(131a)とスラスト磁気軸受(16)との間のギャップを検出可能なギャップセンサ(図示せず)の検出値に基づいて、第1電流供給回路(32)のスイッチング素子(32a)のオンオフを制御する制御信号と、第2電流供給回路(33)のスイッチング素子(33a)のオンオフを制御する制御信号と、第3電流供給回路(34)のスイッチング素子(34a)のオンオフを制御する制御信号とを生成して出力する。
【0071】
電力変換装置(20)は、インバータ回路(22)による駆動用コイル(135a~135c)への前記第2の交流の供給を停止させたときに、駆動用コイル(135a~135c)に生じる逆起電力によって第2のコンデンサ(25c)が駆動用コイル(135a~135c)から吸収可能な電気的エネルギーが、前記逆起電力によって第1のコンデンサ(24)が駆動用コイル(135a~135c)から吸収可能な電気的エネルギーよりも大きくなるように構成されている。
【0072】
また、ターボ圧縮機(1)は、第1のコンデンサ(24)の容量をC1、第1のコンデンサ(24)の耐電圧をVc11、駆動用コイル(135a~135c)への供給中における第1のコンデンサ(24)のピーク電圧をVc12、第2のコンデンサ(25c)の容量をC2、第2のコンデンサ(25c)の耐電圧をVc21、駆動用コイル(135a~135c)への供給中における第2のコンデンサ(25c)のピーク電圧をVc22、駆動用コイル(135a~135c)に蓄えられる最大の磁気エネルギーをEとした場合に、以下の式(1)及び式(2)が成り立つように構成されている。
【0073】
C1(Vc11-Vc12)<C2(Vc21-Vc22) ・・・式(1)
C1(Vc11-Vc12)/2<E ・・・式(2)
上述のように構成されたターボ圧縮機(1)では、三相交流電源(2)からの電力供給により、インバータ回路(22)、第1電流供給回路(32)、第2電流供給回路(33)、及び第3電流供給回路(34)を駆動させた状態で、第1のコンデンサ(24)の電圧変動が大きい場合、規制部(25b)は、第2のコンデンサ(25c)の電圧が第1のコンデンサ(24)の電圧よりも所定の電圧差だけ高い状態において、第1のコンデンサ(24)の電圧が前記第2のコンデンサ(25c)の電圧よりも前記所定の電圧差だけ高い状態よりも、第1及び第2のコンデンサ(24,25c)のうち高電圧側のコンデンサから低電圧側のコンデンサに流れる電流が小さくなるように、第2のコンデンサ(25c)から第1のコンデンサ(24)に電流が流れるのを規制するように構成されているので、第1のコンデンサ(24)の電圧変動による第2のコンデンサ(25c)の電圧変動への影響を抑制できる。
【0074】
したがって、第1のコンデンサ(24)の静電容量を小さくしても、第1電流供給回路(32)、第2電流供給回路(33)、及び第3電流供給回路(34)への入力電圧である第2のコンデンサ(25c)の電圧変動を抑制できるので、入力電圧を安定化させるためにDC/DCコンバータを設けなくても、駆動軸(131)のラジアルおよびスラスト荷重を非接触で支持するための制御を安定化することができる。
【0075】
また、上述のように構成されたターボ圧縮機(1)では、三相交流電源(2)からの電力供給により、インバータ回路(22)、第1電流供給回路(32)、第2電流供給回路(33)、及び第3電流供給回路(34)を駆動させた状態で、停電が発生すると、インバータ回路(22)がスイッチング動作を停止し、駆動用コイル(135a~135c)への前記第2の交流の供給を停止する。すると、駆動用コイル(135a~135c)には逆起電力が生じ、駆動用コイル(135a~135c)から第1及び第2のコンデンサ(24,25c)に電流が流れる。これにより、駆動用コイル(135a~135c)に蓄えられていた磁気エネルギー(電気的エネルギー)が、第1及び第2のコンデンサ(24,25c)の両方に吸収され、静電エネルギーとして蓄えられる。したがって、第1のコンデンサ(24)の容量を小さくした場合でも、第2のコンデンサ(25c)を設けない場合に比べ、第1のコンデンサ(24)が駆動用コイル(135a~135c)の逆起電力によって破損しにくい。このとき、サージ電圧抑制回路(25)が、リアクトル(23)とインバータ回路(22)との間に接続されているので、第2のコンデンサ(25c)が駆動用コイル(135a~135c)に蓄えられていた磁気エネルギーを吸収しやすい。
【0076】
停電の発生後、第1電流供給回路(32)、第2電流供給回路(33)、及び第3電流供給回路(34)は、第2のコンデンサ(25c)に蓄えられたエネルギーを用いて、ラジアル磁気軸受用コイル(154)、スラスト磁気軸受用コイル(161a)、及びモータ側支持用コイル(136a~136c)にそれぞれ電流を供給する。したがって、ラジアル磁気軸受用コイル(154)、スラスト磁気軸受用コイル(161a)、及びモータ側支持用コイル(136a~136c)は、駆動軸(131)の支持をしばらく継続できる。また、第1のコンデンサ(24)の静電エネルギーが何等かの負荷、例えば制御電源、放電抵抗、インバータ回路(22)の回生制御等によって消費され、第1のコンデンサ(24)の電圧が低下しても、規制ダイオード(25b)が、第2のコンデンサ(25c)から第1のコンデンサ(24)への静電エネルギーの流入を抑制できるので、第2のコンデンサ(25c)に蓄えられたエネルギーのほぼすべてを駆動軸(131)の支持のために使用できる。
【0077】
図7中、(a)は、電力変換装置(20)にサージ電圧抑制回路(25)を設けず、第1電流供給回路(32)、第2電流供給回路(33)、及び第3電流供給回路(34)に、第1のコンデンサ(24)の電圧を入力するようにした場合における第1電流供給回路(32)、第2電流供給回路(33)、及び第3電流供給回路(34)の入力電圧と、モータ(13)の回転数とを示す。
【0078】
図7中、(b)は、本実施形態1における第1電流供給回路(32)、第2電流供給回路(33)、及び第3電流供給回路(34)の入力電圧と、モータ(13)の回転数とを示す。
【0079】
図7中、(a)及び(b)では、時刻t1において停電により、インバータ回路(22)が駆動用コイル(135a~135c)への第2の交流の供給を停止している。期間T1では、三相交流電源(2)からの電力供給により、インバータ回路(22)、第1電流供給回路(32)、第2電流供給回路(33)、及び第3電流供給回路(34)が駆動している。一方、期間T2では、インバータ回路(22)がスイッチング動作を停止している。
【0080】
図7中、(b)では、時刻t1において、逆起電力によって駆動用コイル(135a~135c)から第1及び第2のコンデンサ(25c)の両方に電流が流れるので、図7の(a)に比べ、停電の直後に第1電流供給回路(32)、第2電流供給回路(33)、及び第3電流供給回路(34)の入力に一時的に印可されるサージ電圧のピーク値が低くなる。したがって、第1電流供給回路(32)、第2電流供給回路(33)、及び第3電流供給回路(34)の入力電圧を安定化させるためのDC/DCコンバータを設けたり、特許文献1のような回生制御を行わなくても、ラジアル磁気軸受用コイル(154)、スラスト磁気軸受用コイル(161a)、及びモータ側支持用コイル(136a~136c)への電流供給をより安定化できる。また、規制ダイオード(25b)により、第2のコンデンサ(25c)から第1のコンデンサ(24)への静電エネルギーの流入を抑制できるので、第1のコンデンサ(24)の静電エネルギーが何等かの負荷により消費されて第1のコンデンサ(24)の電圧が低下しても、第2のコンデンサ(25c)に蓄えられたエネルギーのほぼすべてを駆動軸(131)の支持のために使用できるので、駆動軸(131)の支持をしばらく継続できる。
【0081】
したがって、本実施形態1によると、第1電流供給回路(32)、第2電流供給回路(33)、及び第3電流供給回路(34)が、ラジアル磁気軸受用コイル(154)、スラスト磁気軸受用コイル(161a)、及びモータ側支持用コイル(136a~136c)への電流供給に、第1のコンデンサ(24)に蓄えられたエネルギーではなく、第2のコンデンサ(25c)に蓄えられたエネルギーを用いるので、第1のコンデンサ(24)の電圧、すなわちインバータ回路(22)の第1及び第2の直流側ノード(22c,22d)間の電圧の変動が、各コイル(154,161a,136a~136c)に供給される電流に影響しにくい。したがって、第1電流供給回路(32)、第2電流供給回路(33)、及び第3電流供給回路(34)の入力電圧を安定化させるためにDC/DCコンバータを設けたり、特許文献1のような回生制御を行わなくても、各コイル(154,161a,136a~136c)への電流供給をより安定化できる。
【0082】
また、第1のコンデンサ(24)がコンバータ回路(21)の出力電圧の脈動を許容するので、当該脈動を吸収できるようにする場合に比べ、第1のコンデンサ(24)の容量を小さくできる。したがって、第1のコンデンサ(24)を小型化できる。
【0083】
また、前記式(1)が成立するので、インバータ回路(22)による駆動用コイル(135a~135c)への前記第2の交流の供給を停止させたときに、駆動用コイル(135a~135c)の電気的エネルギーを、第2のコンデンサ(25c)に第1のコンデンサ(24)よりも多く吸収させることができる。
【0084】
また、前記式(2)が成立し、駆動用コイル(135a~135c)に蓄えられる最大の磁気エネルギーを第1のコンデンサ(24)が吸収できる程度に第1のコンデンサ(24)の静電容量を大きくしたり、耐電圧を高く設定しなくてもよいので、第1のコンデンサ(24)を小型化できる。
【0085】
また、第2のコンデンサ(25c)の静電容量が、第1のコンデンサ(24)の静電容量よりも大きいので、第2のコンデンサ(25c)の電圧を安定させやすい。したがって、ラジアル磁気軸受用コイル(154)、スラスト磁気軸受用コイル(161a)、及びモータ側支持用コイル(136a~136c)への電流供給を安定化させやすい。
【0086】
また、第2のコンデンサ(25c)には、抵抗(25a)が直列に接続されているので、三相交流電源(2)からの電力供給の開始時に第2のコンデンサ(25c)に流れる突入電流を低減できる。したがって、突入電流を抑制する回路を別途設ける必要がなく、部品コストを削減できる。なお、突入電流を抑制する回路がサージ電圧抑制回路(25)以外に設けられている場合等、サージ電圧抑制回路(25)に突入電流防止の機能を設けなくてもよい場合には、抵抗(25a)を設けなくてもよい。
【0087】
また、モータ側支持用コイル(136a~136c)を備えたベアリングモータをモータ(13)として用いるので、ターボ圧縮機(1)を小型化できる。
【0088】
また、インダクタンス素子とスイッチで構成され、第2のコンデンサ(25c)の電圧を能動的に昇圧又は降圧するDC/DCコンバータ等の電圧可変手段をサージ電圧抑制回路(25)が有していないので、電力変換装置(20)の構成を簡素にできる。
【0089】
また、第2のコンデンサ(25c)と第1電流供給回路(32)、第2電流供給回路(33)及び第3電流供給回路(34)との間に、第1電流供給回路(32)、第2電流供給回路(33)及び第3電流供給回路(34)の入力電圧を能動的に昇圧または降圧するDC/DCコンバータ等の電圧可変手段が設けられていないので、電力変換装置(20)の構成を簡素にできる。
【0090】
また、サージ電圧抑制回路(25)と配線対(L1,L2)との間に、第2のコンデンサ(25c)の電圧を能動的に昇圧または降圧する電圧可変手段が設けられていないので、電力変換装置(20)の構成を簡素にできる。
【0091】
《実施形態2》
図8は、実施形態2に係るターボ圧縮機(1)を示す。本実施形態2では、モータ(13)が、ベアリングレスモータではなく、モータ側支持用コイル(136a~136c)を有さない永久磁石同期モータ等である。
【0092】
また、ラジアル磁気軸受(15)が、2つ設けられ、モータ(13)の固定子(132)及び回転子(133)の軸方向両側に配置されている。
【0093】
したがって、図9に示すように、電力変換装置(20)に、第1電流供給回路(32)が、8つのラジアル磁気軸受用コイル(154)に対応して8つ設けられている。また、電力変換装置(20)に、第3電流供給回路(34)が設けられていない。
【0094】
その他の構成は、実施形態1と同じであるので、同一の構成には同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0095】
《実施形態3》
図10は、実施形態3の図6相当図である。本実施形態3では、リアクトル(23)よりもコンバータ回路(21)側に、バッファ回路(35)が、サージ電圧抑制回路(25)とは別に配線対(L1,L2)の間にさらに設けられている。このバッファ回路(35)は、規制部としてのバッファ回路用ダイオード(35a)と、第2のコンデンサとしてのバッファ回路用コンデンサ(35b)とを有している。バッファ回路用ダイオード(35a)及びバッファ回路用コンデンサ(35b)は、第1の出力ノード(21a)(第1配線(L1))側から順に直列に接続されている。そして、第1電流供給回路(32)、第2電流供給回路(33)、及び第3電流供給回路(34)は、第2のコンデンサ(25c)に蓄えられたエネルギーに代えて、バッファ回路用コンデンサ(35b)に蓄えられたエネルギーを用いるようになっている。
【0096】
その他の構成は、実施形態1と同じであるので、同一の構成には同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0097】
《実施形態4》
図11は、実施形態4の図10相当図である。本実施形態4では、バッファ回路(35)が、リアクトル(23)と第1のコンデンサ(24)との間で配線対(L1,L2)の間に設けられている。
【0098】
その他の構成は、実施形態3と同じであるので、同一の構成には同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0099】
《その他変形例》
なお、前記実施形態1,2では、停電時にインバータ回路(22)にスイッチング動作を停止させたが、インバータ回路(22)にスイッチング動作を継続させるように制御部(40)が制御を行うようにしてもよい。例えば、停電直後に、インバータ回路(22)が、モータ(13)を通常運転時よりも減速させるとともに、通常運転時よりも第1のコンデンサ(24)の電圧が高くなるように、駆動軸(131)の運動エネルギーを電気エネルギーに変換する回生動作をモータに行わせるようにしてもよい。このようにした場合、第1電流供給回路(32)、第2電流供給回路(33)、及び第3電流供給回路(34)の入力電圧と、モータ(13)の回転数とは、図7の(c)に示すようになる。
【0100】
図7の(c)の例においても、時刻t1において停電により、インバータ回路(22)が駆動用コイル(135a~135c)への第2の交流の供給を停止した後、第1のコンデンサ(24)の静電エネルギーが回生制御により消費されて第1のコンデンサ(24)の電圧が低下しても、規制ダイオード(25b)により、第2のコンデンサ(25c)から第1のコンデンサ(24)への静電エネルギーの流入が抑制される。したがって、第2のコンデンサ(25c)に蓄えられたエネルギーのほぼすべてを駆動軸(131)の支持のために使用できるので、駆動軸(131)の支持をしばらく継続できる。
【0101】
また、前記実施形態1~4では、サージ電圧抑制回路(25)の抵抗(25a)を、規制ダイオード(25b)の第1の直流側ノード(22c)側に接続したが、第2の直流側ノード(22d)側(第2のコンデンサ(25c)側)に接続してもよい。つまり、規制ダイオード(25b)のアノードを、第1の直流側ノード(22c)に接続し、規制ダイオード(25b)のカソードを、抵抗(25a)に接続してもよい。
【0102】
また、サージ電圧抑制回路(25)に、規制ダイオード(25b)と並列に接続された抵抗値の大きい抵抗をさらに設け、規制ダイオード(25b)と当該抵抗とで規制部を構成してもよい。
【0103】
また、規制ダイオード(25b)の代わりに、双方向スイッチを設け、第2のコンデンサ(25c)の電圧が第1のコンデンサ(24)の電圧よりも所定の電圧差だけ高い状態において、第1のコンデンサ(24)の電圧が前記第2のコンデンサ(25c)の電圧よりも前記所定の電圧差だけ高い状態よりも、第1及び第2のコンデンサ(24,25c)のうち高電圧側のコンデンサから低電圧側のコンデンサに流れる電流が小さくなるように、当該双方向スイッチを制御するようにしてもよい。また、規制ダイオード(25b)の代わりに、第1のコンデンサ(24)から第2のコンデンサ(25c)の方向にしか電流を流せないIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等の単方向スイッチを設け、当該単方向スイッチのスイッチング制御により電流を制御してもよい。
【0104】
また、実施形態3,4において、バッファ回路用ダイオード(35a)の代わりにMOSFET(metal-oxide-semiconductor field-effect transistor)を設け、MOSFETの寄生ダイオードが、バッファ回路用コンデンサ(35b)の電圧が第1のコンデンサ(24)の電圧よりも所定の電圧差だけ高い状態において、第1のコンデンサ(24)の電圧がバッファ回路用コンデンサ(35b)の電圧よりも前記電圧差だけ高い状態よりも、第1のコンデンサ(24)及びバッファ回路用コンデンサ(35b)のうち高電圧側のコンデンサから低電圧側のコンデンサに流れる電流が小さくなるように、バッファ回路用コンデンサ(35b)から第1のコンデンサ(24)に電流が流れるのを規制するようにしてもよい。つまり、MOSFETの寄生ダイオードが規制部を構成するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0105】
以上説明したように、本開示は、モータの駆動軸を回転駆動するとともに、前記駆動軸を電磁力によって非接触で支持する支持用コイルに電力を供給する電力変換装置について有用である。
【符号の説明】
【0106】
13 モータ
20 電力変換装置
21 コンバータ回路
22 インバータ回路
22a スイッチング素子
22c 第1の直流側ノード
22d 第2の直流側ノード
23 リアクトル
24 第1のコンデンサ
25 サージ電圧抑制回路(バッファ回路)
25a 抵抗
25b 規制ダイオード(規制部)
25c 第2のコンデンサ
32 第1電流供給回路
33 第2電流供給回路
34 第3電流供給回路
35 バッファ回路
35a バッファ回路用ダイオード(規制部)
35b バッファ回路用コンデンサ(第2のコンデンサ)
131 駆動軸
135a U相駆動用コイル
135b V相駆動用コイル
135c W相駆動用コイル
136a U相モータ側支持用コイル
136b V相モータ側支持用コイル
136c W相モータ側支持用コイル
154 ラジアル磁気軸受用コイル
161a スラスト磁気軸受用コイル
L1 第1配線
L2 第2配線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11