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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-13
(45)【発行日】2022-12-21
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/66 20060101AFI20221214BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20221214BHJP
   H02J 9/06 20060101ALI20221214BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20221214BHJP
【FI】
H01R13/66
H02J7/00 301B
H02J7/00 A
H02J9/06
B60R16/02 621J
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019091130
(22)【出願日】2019-05-14
(65)【公開番号】P2020187904
(43)【公開日】2020-11-19
【審査請求日】2021-08-30
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】服部 久雄
(72)【発明者】
【氏名】内田 幸貴
【審査官】宮田 繁仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-174708(JP,A)
【文献】特開2016-208697(JP,A)
【文献】特表2013-517863(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/66
H02J 7/00
H02J 9/06
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
前記ハウジングに一端側が保持される1以上の電線又は1以上の端子を有する配線部と、
前記ハウジングに保持される形態で前記ハウジングに取り付けられる蓄電素子と、
を備え、
前記ハウジングは、前記配線部の一端部が挿入される挿入穴が形成され、
前記蓄電素子は、前記ハウジングの外面部に固定され、
前記蓄電素子は、前記配線部を介して供給される電力により充電され、
前記配線部を介して放電するコネクタ。
【請求項2】
前記蓄電素子を放電する放電動作を行う放電回路と、
前記放電回路の前記放電動作を制御する制御回路と、
を備える請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記配線部の少なくとも一部の前記電線又は前記端子は、バックアップ対象の負荷への電力供給経路の一部として構成されるものであり、
前記蓄電素子は、前記電力供給経路を介して前記負荷への放電を行う請求項1又は請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記ハウジングは、複数の接続部を有し、
複数の前記接続部のそれぞれが、複数の前記負荷への電力路を構成する複数の被接続部のそれぞれに対して着脱自在に接続される構成をなし
前記蓄電素子は、各々の前記接続部に設けられた各々の前記配線部を介して各々の前記負荷へと放電を行う請求項3に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記配線部は、前記ハウジングに一端側が保持されるとともに前記ハウジングから引き出される前記電線を1以上有し
記蓄電素子と前記ハウジングと前記電線とが一体的に構成され、
前記ハウジングは、前記ハウジングよりも前記負荷側の電力路を構成する相手側コネクタに対して着脱自在とされている請求項3又は請求項4に記載のコネクタ。
【請求項6】
ハウジングと、
前記ハウジングに一端側が保持される1以上の電線又は1以上の端子を有する配線部と、
前記ハウジングに保持される形態で前記ハウジングに取り付けられる蓄電素子と、
を備え、
前記蓄電素子は、前記配線部を介して供給される電力により充電され、前記配線部を介して放電し、
前記配線部の少なくとも一部の前記電線又は前記端子は、バックアップ対象の負荷への電力供給経路の一部として構成されるものであり、
前記蓄電素子は、前記電力供給経路を介して前記負荷への放電を行い、
前記ハウジングは、複数の接続部を有し、
複数の前記接続部のそれぞれが、複数の前記負荷への電力路を構成する複数の被接続部のそれぞれに対して着脱自在に接続される構成をなし
前記蓄電素子は、各々の前記接続部に設けられた各々の前記配線部を介して各々の前記負荷へと放電を行うコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
シフトバイワイヤ(SBW)やステアリングバイワイヤ(StrBW)などの車両用の負荷は、電源失陥時にも動作が求められるため、電源失陥時にこれらの負荷に電力を供給するための構成が必要となる。この種の技術としては、特許文献1で開示されるような車両用のバックアップ装置があり、この装置は、シフトバイワイヤ制御システムにバックアップ電力を供給し得る構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-13136号公報
【文献】特開2018-62253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示のコネクタは、
ハウジングと、
前記ハウジングに一端側が保持される1以上の電線及び1以上の端子を有する配線部と、
前記ハウジングに保持される形態で前記ハウジングに取り付けられる蓄電素子と、
を備え、
前記蓄電素子は、前記配線部を介して供給される電力により充電され、
前記配線部を介して放電する。
【0005】
そこで、本開示では、ハウジングや配線部などのコネクタ関連部品と蓄電素子との間の電気的接続及び物理的接続を簡素化することができるコネクタを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のコネクタは、
ハウジングと、
前記ハウジングに一端側が保持される1以上の電線又は1以上の端子を有する配線部と、
前記ハウジングに保持される形態で前記ハウジングに取り付けられる蓄電素子と、
を備え、
前記蓄電素子は、前記配線部を介して供給される電力により充電され、
前記配線部を介して放電する。
【発明の効果】
【0007】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
(1)本開示のコネクタは、ハウジングと、ハウジングに一端部が保持されハウジングから引き出された1以上の電線及び1以上の端子を有する配線部と、ハウジングに保持される形態でハウジングに取り付けられる蓄電素子とを備える構成をとり得る。そして、蓄電素子は、配線部を介して供給される電力により充電され、配線部を介して放電するように構成し得る。
このコネクタは、ハウジングに蓄電素子が保持される形態でハウジングと蓄電素子とを一体的に構成することができるため、蓄電素子を保持するための専用構造を削減することができ、ハウジングや電線などのコネクタ関連部品と蓄電素子との間の物理的接続を簡素化することができる。しかも、ハウジングに保持される蓄電素子は、ハウジングに組み込まれた配線部を介して充電及び放電することができるため、蓄電素子からコネクタまでの配線を削減することができる。よって、コネクタ関連部品と蓄電素子との間の電気的接続をも簡素化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態1のコネクタが用いられる車両用電源システムの構成を概略的に示すブロック図である。
図2図2は、実施形態1のコネクタ及び被接続部が接続されていない状態を示す斜視図である。
図3図3は、実施形態1のコネクタ及び被接続部が接続された状態を示す斜視図である。
図4図4は、実施形態2のコネクタが用いられる車両用電源システムの構成を概略的に示すブロック図である。
図5図5は、実施形態2のコネクタを概略的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
(1)本開示のコネクタは、ハウジングと、ハウジングに一端部が保持されハウジングから引き出された1以上の電線又は1以上の端子を有する配線部と、ハウジングに保持される形態でハウジングに取り付けられる蓄電素子とを備える構成をとり得る。そして、蓄電素子は、配線部を介して供給される電力により充電され、配線部を介して放電するように構成し得る。
このコネクタは、ハウジングに蓄電素子が保持される形態でハウジングと蓄電素子とを一体的に構成することができるため、蓄電素子を保持するための専用構造を削減することができ、ハウジングや電線などのコネクタ関連部品と蓄電素子との間の物理的接続を簡素化することができる。しかも、ハウジングに保持される蓄電素子は、ハウジングに組み込まれた配線部を介して充電及び放電することができるため、蓄電素子からコネクタまでの配線を削減することができる。よって、コネクタ関連部品と蓄電素子との間の電気的接続をも簡素化することができる。
【0010】
(2)本開示のコネクタは、蓄電素子を放電する放電動作を行う放電回路と、放電回路の放電動作を制御する制御回路と、を備えていてもよい。
このように構成されていれば、コネクタ関連部品と蓄電素子との間の物理的接続及び電気的接続のみならず、放電回路や制御回路を保持するための物理的接続やこれら回路とコネクタ関連部品と蓄電素子との間の電気的接続をも簡素化することができる。
【0011】
(3)本開示のコネクタにおいて、配線部の少なくとも一部の電線又は端子は、バックアップ対象の負荷への電力供給経路として構成されていてもよい。蓄電素子は、その電力供給経路を介して負荷へ放電を行い得る構成であってもよい。
このように構成されていれば、蓄電素子をバックアップ電源として用いることができる構成を、電気的接続及び物理的接続を簡素化した形態で実現できる。特に、蓄電素子から負荷への電力供給経路となる電線又は端子までの配線等を省略又は簡略化することができる。
【0012】
また、コネクタにおいて蓄電素子が一体化されていれば、様々な負荷に対応しやすい汎用性のあるバックアップ電源となり得る。
【0013】
(4)本開示のコネクタにおいて、ハウジングは、複数の接続部を有していてもよく、複数の接続部のそれぞれが、複数の負荷への電力路を構成する複数の被接続部のそれぞれに対して着脱自在に接続される構成をなしていてもよい。蓄電素子は、各々の接続部に設けられた各々の配線部を介して各々の負荷へと放電を行う構成であってもよい。
このように構成されていれば、蓄電素子から各電力路(各負荷へ電力を供給するための電力路)までの構成(配線等)をいずれも簡素化することができるため、電気的接続及び物理的接続を簡素化する効果が一層高まる。
【0014】
(5)本開示のコネクタにおいて、配線部は、ハウジングに一端側が保持されるとともにハウジングから引き出される電線を1以上有していてもよい。蓄電素子は、ハウジングの外面部又は内面部に対して固定されていてもよく、蓄電素子とハウジングと電線とが一体的に構成されていてもよい。ハウジングは、このハウジングよりも負荷側の電力路を構成する相手側コネクタに対して着脱自在とされていてもよい。
このように構成されていれば、蓄電素子とハウジングと電線とが一体的に構成された上記コネクタを、相手側コネクタよりも負荷側の構成から分離させることが可能となり、メンテナンスなどにおいて有利になる。例えば、負荷側の一部が故障して交換等を行う場合に、蓄電素子を含む上記コネクタは交換が不要となる。
[本開示の実施形態の詳細]
【0015】
<実施形態1>
〔コネクタが用いられる電源システムの概要〕
実施形態1に係るコネクタ10は、例えば、図1に示す車両用電源システム1(以下、単に電源システム1ともいう)に用いられる。電源システム1は通常時において主電源50からの電力を電線11Aを介してバックアップ対象の負荷51(以下、単に負荷51ともいう)に供給し、主電源50の失陥時にはコネクタ10に設けられた蓄電素子12からの電力を充放電回路部30を介して負荷51に対して供給する構成をなす。なお、図1では、通常時に主電源50から充放電回路部30を介さずに負荷51に電力を供給する経路(主となる電力路)については省略している。
【0016】
主電源50は、例えば鉛バッテリなどの公知の車載バッテリとして構成されている。主電源50の高電位側の端子は入力路70に接続されており、入力路70には主電源50からの出力電圧が印加される。入力路70は、コネクタ10の配線部11の一部である電力路電線11Bに電気的に接続されており、主電源50からの電力を電力路電線11Bに供給し得る構成とされている。電力路電線11Bは配線部11を構成する複数の電線11Aの一部であり、負荷51への電力供給経路として構成されるものである。
【0017】
負荷51は、公知の車載用電気部品として構成されており、例えば、シフトバイワイヤシステムやステアリングバイワイヤシステムにおけるECU(Electronic Control Unit)やアクチュエータ等、一方の電源が失陥した場合でも電力供給が望まれる電気部品が好適例である。負荷51には主電源50や蓄電素子12から電力が供給される経路である電力路71が電気的に接続されている。電力路71にはコネクタ10の接続部10Aが着脱自在な被接続部51Aが設けられている。負荷51は、通常時には主電源50からの電力供給に基づいて動作し、異常時(主電源50の失陥時など)には、蓄電素子12からの電力供給に基づいて動作する。
【0018】
〔コネクタの全体構成〕
コネクタ10は、図1、2に示すように、ハウジング10B、配線部11、蓄電素子12、及び制御回路13を有している。ハウジング10Bは実装部10C及び接続部10Aを有している。
【0019】
ハウジング10Bは、合成樹脂で形成されており、一方向に長い略直方体形状をなしている。ハウジング10Bの長手方向の一方側の部位は蓄電素子12や制御回路13等が取り付けられる実装部10Cとして構成される。実装部10Cには複数の挿入穴10Dが形成されている。ハウジング10Bの長手方向の他方側の部位は被接続部51Aに接続される接続部10Aとして構成される。接続部10Aの上端面(上下は、図1における上側下側である)には被接続部51Aの被係止部(図示せず)に係止する係止部10Eが設けられている。
【0020】
配線部11は複数の電線11A及び複数の端子11Cを有している。図2には一部の端子11Cのみを例示している。各電線11Aの一端部には端子金具(図示せず)が接続されている。各電線11Aの一端部の端子金具はハウジング10Bの実装部10Cの各挿入穴10Dに挿入されており、ハウジング10Bに保持されている。つまり、各電線11Aはハウジング10Bに一端部が保持され他端部側がハウジング10Bから引き出された状態にされている。配線部11の一部の電線11Aは電力路電線11Bとして主電源50の高電位側の端子に接続される入力路70に電気的に接続されている(図1参照。)。
【0021】
蓄電素子12は、例えば、全固体電池、リチウムイオンキャパシタ、又はリチウムイオン電池等の公知の蓄電手段によって構成される。蓄電素子12は、充電回路30A及び放電回路30Bを有する充放電回路部30の充放電路30Cに電気的に接続され、充放電回路部30によって充放電がされ得る構成とされている。図2で示すコネクタ10ではハウジング10Bの外面部を電気基板としている。具体的には、ハウジング10Bの実装部10Cの外周面(外壁面)に配線が形成され、この配線に蓄電素子12の端子が電気的に接続されるように蓄電素子12がハウジング10Bに取り付けられている。つまり、蓄電素子12がハウジング10Bの外面部(外壁面)に直接的に載置される構成で取り付けられている。また、ハウジング10Bに対して蓄電素子12を保持する他の形態として、例えば、ハウジング10Bの外面部とは別体の電気基板に実装された状態にされていてもよく、ハウジング10Bの実装部10Cに電気基板が保持される形態でハウジング10Bに取り付けられていてもよい。つまり、蓄電素子12がハウジング10Bの外面部の外側の平面状に形成された部分に対して他部材(電気基板)を介して間接的に固定されていてもよい。具体的には、ハウジング10Bにおいて、板状に構成された1つの壁部(板状部)の外側の板面(外壁面)に直接的に載置される形で蓄電素子12が固定される。
【0022】
ハウジング10Bには、充放電回路部30が設けられている。充放電回路部30は充電回路30A及び放電回路30Bを有している。充電回路30Aは主電源50が接続された入力路70に電気的に接続された電力路電線11B(一部の電線11A)を介して主電源50からの電力が供給され、この電力に基づいて蓄電素子12を充電する充電動作を行う。つまり、蓄電素子12は配線部11の一部の電力路電線11Bを介して供給される電力により充電される。また、放電回路30Bは蓄電素子12から電力路端子11Dを介して放電する放電動作を行う。電力路端子11Dは複数の端子11Cの一部である。
【0023】
充電回路30Aは、DCDCコンバータなどの公知の充電回路として構成されており、主電源50からの電力に基づいて充電動作を行い、充放電路30Cを介して蓄電素子12に電力を供給する。充電回路30Aは、制御回路13から充電信号と充電停止信号とを受け得る構成をなし、制御回路13から充電信号が与えられている場合(充電指示がなされている場合)に充放電路30Cに対して所定電圧を印加する充電動作を行い、制御回路13から充電停止信号が与えられている場合(充電停止指示がなされている場合)に充放電路30Cに対する出力を停止する構成をなす。
【0024】
放電回路30Bは、充電回路30Aからの出力電路(充放電路30C)と電力路端子11Dとの間を通電状態又は非通電状態に切り替える構成をなす。電力路端子11Dは放電回路30Bに電気的に接続される。具体的には、被接続部51Aにおいて、負荷51に電気的に接続された相手側端子が設けられる。そして、接続部10Aが被接続部51Aに接続すると電力路端子11Dが相手側端子に接続し、この相手側端子を介して負荷51に電気的に接続される。電力路端子11Dの他端は接続部10Aが被接続部51Aに接続されることによって、負荷51の電力路71に対して電気的に接続される。放電回路30Bは、例えば、充放電路30Cと電力路端子11Dとの間に介在するスイッチ素子(MOSFET等)等によって構成されていてもよく、DCDCコンバータ等によって構成されていてもよい。
【0025】
放電回路30Bは、制御回路13から放電許可信号が与えられている場合(放電指示がなされている場合)に放電動作を行い、蓄電素子12からの電力に基づいて負荷51に対する放電を行う。また、放電回路30Bは、制御回路13から放電停止信号が与えられている場合(放電停止指示がなされている場合)には放電動作を停止し、充放電路30Cと電力路端子11Dとの間の導通を遮断する。このように、電力路端子11Dは蓄電素子12から負荷51へ放電する際の電力供給経路として構成され、蓄電素子12は、後述するバックアップ動作時等において電力路端子11Dを介して負荷51へ放電を行う。
【0026】
充放電回路部30(充電回路30A及び放電回路30B)は、例えば、ハウジング10Bの外周面に配線を形成し、この配線に充電回路30A及び放電回路30Bを構成する各素子の端子が電気的に接続するように充電回路30A及び放電回路30Bをハウジング10Bに取り付けられる。また、ハウジング10Bに対して充放電回路部30(充電回路30A及び放電回路30B)を保持する他の形態として、例えば、充放電回路部30を電気基板に実装された状態にし、ハウジング10Bに保持される形態でハウジング10Bに取り付けてもよい。
【0027】
制御回路13は、例えばマイクロコンピュータを主体として構成されており、CPU(Central Processing Unit)などの演算装置、ROM(Read Only Memory)又はRAM(Random Access Memory)などのメモリ、A/D変換器等を有している。制御回路13は、図示しない電圧検出回路等によって電力路電線11Bの電圧値、及び電力路端子11Dに接続された導電路の電圧値を把握し得る構成とされている。電圧検出回路は公知の電圧検出回路として構成される。電圧検出回路は、例えば、制御回路13と共にハウジング10Bに保持される形態でハウジング10Bに取り付けられる(図2では図示せず。)。制御回路13は充放電回路部30による充電動作及び放電動作を制御する機能を有する。具体的には、制御回路13は充電回路30Aに対して充電信号又は充電停止信号を与える機能と、放電回路30Bに対して放電信号又は放電停止信号を与える機能とを有する。制御回路13は充電回路30Aが蓄電素子12を充電する充電動作、及び放電回路30Bが蓄電素子12から放電する放電動作を制御する。
【0028】
例えば、制御回路13はバックアップ動作の条件が成立後に、蓄電素子12から電力路端子11Dを介して負荷51に対して電力を供給するように放電回路30Bの動作を制御する。バックアップ動作の条件とは、例えば、主電源50に電気的に接続された入力路70の電圧が所定の閾値以下に低下したこととしてもよく、他の条件としてもよい。
【0029】
こうして構成されたコネクタ10は、図3に示すように、接続部10Aが負荷51側に設けられた被接続部51Aに接続される。具体的には、コネクタ10は、接続部10Aに設けられた係止部10Eが被接続部51Aに形成された被係止部(図示せず)に係止することによって、電力路端子11Dと電力路71とが電気的に接続された状態が保持される。
【0030】
負荷51の故障等により負荷51の交換が必要な場合、先ず、コネクタ10の係止部10Eと被接続部51Aの被係止部とを係止しない状態にして、接続部10Aを被接続部51Aから取り外す。このとき、蓄電素子12は、配線部11及び接続部10Aと共に被接続部51Aから外れる。そして、故障した負荷51、電力路71、及び被接続部51Aを車両から取り外し、新たな負荷51、電力路71、及び被接続部51Aを車両に取り付ける。そして、接続部10Aの係止部10Eを被接続部51Aの被係止部に係止することによって、電力路端子11Dと電力路71とが電気的に接続された状態にされる。
【0031】
次に、本構成の効果を例示する。
本開示のコネクタ10は、
ハウジング10Bと、ハウジング10Bに一端部が保持されハウジング10Bから引き出された複数の電線11A及び端子11Cを有する配線部11と、ハウジング10Bに保持される形態でハウジング10Bに取り付けられる蓄電素子12とを備える。そして、蓄電素子12は、配線部11を介して供給される電力により充電され、配線部11を介して放電するように構成されている。
このコネクタ10は、ハウジング10Bに蓄電素子12が保持される形態でハウジング10Bと蓄電素子12とを一体的に構成することができるため、蓄電素子12を保持するための専用構造を削減することができ、ハウジング10Bや配線部11などのコネクタ関連部品と蓄電素子12との間の物理的接続を簡素化することができる。しかも、ハウジング10Bに保持される蓄電素子12は、ハウジング10Bに組み込まれた配線部11を介して充電及び放電することができるため、蓄電素子12からコネクタ10までの配線を削減することができる。よって、コネクタ関連部品と蓄電素子12との間の電気的接続をも簡素化することができる。
【0032】
本開示のコネクタ10は、蓄電素子12を放電する放電動作を行う放電回路30Bと、放電回路30Bの放電動作を制御する制御回路13とを備えている。
このように構成されていれば、コネクタ関連部品と蓄電素子12との間の物理的接続及び電気的接続のみならず、放電回路30Bや制御回路13を保持するための物理的接続やこれら回路とコネクタ関連部品と蓄電素子12との間の電気的接続をも簡素化することができる。
【0033】
本開示のコネクタ10において、配線部11の一部の端子11Cは、バックアップ対象の負荷への電力供給経路として構成されている。蓄電素子12はその電力供給経路を介して負荷51へ放電を行い得る構成である。
このように構成されていれば、蓄電素子12をバックアップ電源として用いることができる構成を電気的接続及び物理的接続を簡素化した形態で実現できる。特に、蓄電素子12から負荷51への電力供給経路までの配線等を省略又は簡略化することができる。
【0034】
また、コネクタ10において蓄電素子12が一体化されているため、様々な負荷に対応しやすい汎用性のあるバックアップ電源となり得る。
【0035】
本開示のコネクタ10において、配線部11は、ハウジング10Bに一端側が保持されるとともにハウジング10Bから引き出される電線11Aを1以上有している。蓄電素子12はハウジング10Bの外面部に対して固定され、蓄電素子12とハウジング10Bと電線11Aとが一体的に構成されている。ハウジング10Bは、このハウジング10Bよりも負荷51側の電力路を構成する被接続部51Aに対して着脱自在とされている。
このように構成されていれば、蓄電素子12とハウジング10Bと電線11Aとが一体的に構成されたコネクタ10を、被接続部51Aよりも負荷51側の構成から分離させることが可能となり、メンテナンスなどにおいて有利になる。例えば、負荷51側の一部が故障して交換等を行う場合に、蓄電素子12を含むコネクタ10は交換が不要となる。
【0036】
<実施形態2>
次に、実施形態2に係るコネクタ20について、図4、5を参照しつつ説明する。コネクタ20はハウジング20Bの接続部20Aが2つ設けられている点等が実施形態1と異なる。その他の構成については実施形態1と同じであるため、同じ構成については、同一符号を付し、構造、作用及び効果の説明は省略する。
【0037】
実施形態2に係るコネクタ20は、図4、5に示すように、例えば、図4に示す電源システム2に用いられ、ハウジング20Bに接続部20Aが2つ設けられている。なお、図4において、主電源50から充放電回路部30を介さずに負荷52,53に電力を供給する経路(主となる電力路)は省略している。各接続部20Aは互いに異なる方向に伸びて実装部20Cに連結している(図5参照。)。コネクタ20の配線部11は複数の電線11Aと複数の端子11Cとを有する。図4では複数の電線11Aの内の一部のみを示し、図5では電線11Aを省略している。また、図5には一部の端子11Cのみを例示している。なお、電線11Aは、ハウジング20Bからどのように引き出されていてもよい。
【0038】
端子11Cの内の一部(2つの電力路端子11D)の一端は放電回路30Bに電気的に接続される。2つの電力路端子11Dは各接続部20Aのそれぞれに1つずつが配置されている。コネクタ20の各接続部20Aのそれぞれには別々の負荷52,53の被接続部52A,53Aが接続される。負荷52には主電源50やコネクタ20の蓄電素子12から電力を供給する電力路72が電気的に接続されている。電力路72にはコネクタ20の一方の接続部20Aが着脱自在な被接続部52Aが設けられている。負荷53には主電源50や蓄電素子12から電力を供給する電力路73が電気的に接続されている。電力路73にはコネクタ20の他方の接続部20Aが着脱自在な被接続部53Aが設けられている。つまり、コネクタ20は複数の負荷52,53のそれぞれに対して電力を供給する電力路72,73に設けられた被接続部52A,53Aに着脱自在な複数の接続部20Aを備え、複数の接続部20Aは複数の被接続部52A,53Aのそれぞれに対応して分岐する。
【0039】
被接続部52Aには負荷52に電気的に接続された相手側端子が設けられる。一方の接続部20Aが被接続部52Aに接続すると、この接続部20Aに設けられた電力路端子11D(一部の端子11C)が被接続部52Aの相手側端子に接続し、この相手側端子を介して負荷52に電気的に接続される。同様に、被接続部53Aには負荷53に電気的に接続された相手側端子が設けられる。他方の接続部20Aが被接続部53Aに接続すると、この接続部20Aに設けられた電力路端子11D(一部の端子11C)が被接続部53Aの相手側端子に接続し、この相手側端子を介して負荷53に電気的に接続される。
【0040】
実装部20Cには、各接続部20Aが設けられた反対側の面のそれぞれに複数の挿入穴20Dが形成されている。各挿入穴20Dには電線11Aの一端部に接続された端子金具が挿入されており、端子金具がハウジング20Bに保持されている(図示せず。)。
【0041】
次に、本構成の効果を例示する。
本開示のコネクタ20において、ハウジング20Bは、複数の接続部20Aを有し、複数の接続部20Aのそれぞれが、複数の負荷52,53への電力路を構成する複数の被接続部52A,53Aのそれぞれに対して着脱自在に接続される構成をなしている。蓄電素子12は各々の接続部20Aに設けられた各々の配線部11を介して各々の負荷52,53へと放電を行う構成である。
このように構成されていれば、蓄電素子12から各電力路(各負荷へ電力を供給するための電力路)までの構成(配線等)をいずれも簡素化することができるため、電気的接続及び物理的接続を簡素化する効果が一層高まる。
【0042】
<他の実施形態>
本構成は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0043】
実施形態1では、蓄電素子12をハウジング10Bの外面部に直接的又は間接的に取り付ける構造を例示したが、蓄電素子をハウジングの内面部に取り付けてもよい。具体的には、ハウジングに蓄電素子を収容する収容部を形成し、この収容部に蓄電素子を収容し、平板状の蓋部をハウジングの構成要素として設け、蓋部によって蓄電素子を覆う構成としてもよい。
【0044】
実施形態1、2では、電力路電線11Bを介して蓄電素子12に充電し、電力路端子11Dを介して放電する構成を開示しているが、電力路端子を介して蓄電素子に充電し、電力路電線を介して放電する構成でもよく、電力路電線を介して蓄電素子に充電し、電力路電線を介して放電する構成でもよい。
【0045】
実施形態1では、制御回路13、充電回路30A、及び放電回路30Bがコネクタ10に取り付けられる形態を例示したが、制御回路、充電回路、及び放電回路をコネクタに取り付けない形態であってもよく、いずれかをコネクタに取り付ける形態であってもよい。具体的には、制御回路、充電回路、及び放電回路を電気基板に実装して、この電気基板をコネクタでない車両のいずれかに取り付け、この電気基板と配線部の1部の電線とを電気的に接続することによってコネクタの蓄電素子の充電動作、及び放電動作を制御してもよい。
【0046】
実施形態1では、制御回路13がマイクロコンピュータを主体として構成されていたが、マイクロコンピュータ以外の複数のハードウェア回路によって実現されてもよい。
【0047】
実施形態2では、接続部20Aが2つ設けられているが、接続部の数を3つ以上としてもよい。
【0048】
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、今回開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0049】
10,20…コネクタ
10A,20A…接続部
10B,20B…ハウジング
10C,20C…実装部
10D,20D…挿入穴
10E…係止部
11…配線部
11A…電線
11B…電力路電線(電力供給経路)
11C…端子(配線部)
11D…電力路端子(電力供給経路)
12…蓄電素子
13…制御回路
30…充放電回路部
30A…充電回路
30B…放電回路
30C…充放電路
50…主電源
51,52,53…負荷(バックアップ対象の負荷)
51A,52A,53A…被接続部(相手側コネクタ)
70…入力路
71,72,73…電力路
図1
図2
図3
図4
図5