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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-13
(45)【発行日】2022-12-21
(54)【発明の名称】水洗大便器
(51)【国際特許分類】
   E03D 11/02 20060101AFI20221214BHJP
   E03D 11/13 20060101ALI20221214BHJP
   E03D 5/01 20060101ALI20221214BHJP
   E03D 1/01 20060101ALI20221214BHJP
【FI】
E03D11/02 Z
E03D11/13
E03D5/01
E03D1/01 Z
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020096002
(22)【出願日】2020-06-02
(65)【公開番号】P2021188411
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2022-05-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(72)【発明者】
【氏名】松中 仁志
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 謙治
【審査官】七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-173315(JP,A)
【文献】特開2017-066673(JP,A)
【文献】特開2017-218789(JP,A)
【文献】特開2010-031570(JP,A)
【文献】特開平10-331228(JP,A)
【文献】特開2015-001081(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 1/00- 7/00
E03D 11/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄水により洗浄されて汚物を排出する水洗大便器であって、
汚物を受けるボウル部と、このボウル部内の汚物を排出する排水トラップ部と、を備えた便器本体と、
この便器本体に洗浄水を供給するタンク装置と、を有し、
このタンク装置は、上記便器本体の後方且つ床面よりも上方に設けられると共に上記便器本体に供給するための洗浄水を貯留する貯水タンクを備えており、
上記貯水タンクは、この貯水タンクを前後方向から見て左右中央で二分割したときに容積が大きい側である大タンク部と、上記貯水タンクを前後方向から見て左右中央で二分割したときに容積が小さい側である小タンク部と、を備えており、前後又は左右の非対称な形状であり、
上記貯水タンク又は上記便器本体には、この便器本体に設置された状態の上記貯水タンクを支持することにより上記貯水タンクの変形を抑制する変形抑制支持部材が設けられており、
上記貯水タンクは、上記変形抑制支持部材により支持される被支持部を備えており、この被支持部は、上記貯水タンクの重心位置に対して一致しない位置に配置されていることを特徴とする水洗大便器。
【請求項2】
洗浄水により洗浄されて汚物を排出する水洗大便器であって、
汚物を受けるボウル部と、このボウル部内の汚物を排出する排水トラップ部と、を備えた便器本体と、
この便器本体に洗浄水を供給するタンク装置と、を有し、
このタンク装置は、上記便器本体の後方且つ床面よりも上方に設けられると共に上記便器本体に供給するための洗浄水を貯留する貯水タンクを備えており、
上記貯水タンクは、この貯水タンクを前後方向から見て左右中央で二分割したときに容積が大きい側である大タンク部と、上記貯水タンクを前後方向から見て左右中央で二分割したときに容積が小さい側である小タンク部と、を備えており、前後又は左右の非対称な形状であり、
上記貯水タンク又は上記便器本体には、この便器本体に設置された状態の上記貯水タンクを支持することにより上記貯水タンクの変形を抑制する変形抑制支持部材が設けられており、
上記タンク装置は、さらに、上記貯水タンク内の洗浄水を上記便器本体に圧送するポンプを備えており、このポンプは、上記変形抑制支持部材として設けられていることを特徴とする水洗大便器。
【請求項3】
洗浄水により洗浄されて汚物を排出する水洗大便器であって、
汚物を受けるボウル部と、このボウル部内の汚物を排出する排水トラップ部と、を備えた便器本体と、
この便器本体に洗浄水を供給するタンク装置と、を有し、
このタンク装置は、上記便器本体の後方且つ床面よりも上方に設けられると共に上記便器本体に供給するための洗浄水を貯留する貯水タンクを備えており、
上記貯水タンクは、この貯水タンクを前後方向から見て左右中央で二分割したときに容積が大きい側である大タンク部と、上記貯水タンクを前後方向から見て左右中央で二分割したときに容積が小さい側である小タンク部と、を備えており、前後又は左右の非対称な形状であり、
上記貯水タンク又は上記便器本体には、この便器本体に設置された状態の上記貯水タンクを支持することにより上記貯水タンクの変形を抑制する変形抑制支持部材が設けられており、
上記貯水タンクは、上下方向に互いに接合される上タンク部及び下タンク部をそれぞれ備えており、
上記上タンク部及び上記下タンク部のうちの少なくとも上記上タンク部には、上記変形抑制支持部材により支持される被支持部が設けられており、この被支持部は、上記下タンク部よりも上記上タンク部の方が多く設けられていることを特徴とする水洗大便器。
【請求項4】
上記貯水タンクは、上記変形抑制支持部材により支持される被支持部を備えており、この被支持部は、上記貯水タンクの重心位置に対して一致しない位置に配置されている請求項2又は3に記載の水洗大便器。
【請求項5】
上記貯水タンクの被支持部は、上記貯水タンクの重心位置よりも前後又は左右における一方側及び他方側のそれぞれに配置された第1被支持部及び第2被支持部をそれぞれ備えており、
上記変形抑制支持部材は、上記第1被支持部及び上記第2被支持部のそれぞれに固定される第1支持部及び第2支持部をそれぞれ備えており、上記第1支持部及び上記第2支持部のそれぞれは、上記貯水タンクの重心位置よりも前後又は左右における一方側及び他方側のそれぞれに配置されている請求項記載の水洗大便器。
【請求項6】
上記貯水タンクは、上記大タンク部及び上記小タンク部のそれぞれの内側壁面により凹状に取り囲まれるように形成された凹状領域を備えており、
上記変形抑制支持部材は、上記貯水タンクの凹状領域の変形を抑制するように上記被支持部を支持する請求項又はに記載の水洗大便器。
【請求項7】
上記被支持部は、その少なくとも一部が上記貯水タンクの凹状領域に配置されており、
上記変形抑制支持部材は、その少なくとも一部が上記貯水タンクの凹状領域に配置された状態で上記被支持部を支持する請求項記載の水洗大便器。
【請求項8】
上記タンク装置は、さらに、上記貯水タンク内の洗浄水を上記便器本体に圧送するポンプを備えており、このポンプは、上記変形抑制支持部材として設けられている請求項1、3、5乃至の何れか1項に記載の水洗大便器。
【請求項9】
さらに、上記貯水タンクと上記便器本体との間に設けられる防振部材を有し、
上記ポンプは、上記貯水タンクに対して直接的に固定される一方、上記貯水タンクは、上記防振部材を介して上記便器本体に固定される請求項記載の水洗大便器。
【請求項10】
上記ポンプは、羽根車が設けられたポンプ室と、このポンプ室から上流側に向かって上記貯水タンクの左右方向に延びて上記貯水タンクと接続される接続管と、を備えており、上記接続管は、上記変形抑制支持部材として、可撓性ホース部材よりも高い剛性を有する材料で形成されている請求項又はに記載の水洗大便器。
【請求項11】
上記便器本体の排水トラップ部は、平面視において、上記ボウル部に接続される入口部から上記ボウル部よりも後方の出口部に向かって前後方向に延びており、
上記貯水タンクは、上記排水トラップ部の上部に対して左右両側及び後方側から取り囲むように配置されている請求項乃至10の何れか1項に記載の水洗大便器。
【請求項12】
上記貯水タンクは、上下方向に互いに接合される上タンク部及び下タンク部をそれぞれ備えており、
上記上タンク部及び上記下タンク部のうちの少なくとも上記上タンク部には、上記変形抑制支持部材により支持される被支持部が設けられており、この被支持部は、上記下タンク部よりも上記上タンク部の方が多く設けられている請求項1又は2に記載の水洗大便器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水洗大便器に係り、特に、洗浄水により洗浄されて汚物を排出する水洗大便器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、洗浄水により洗浄されて汚物を排出する水洗大便器として、例えば、特許文献1、2に記載されているように、便器本体を洗浄可能にする便器洗浄機構と、便器使用者の局部を洗浄する局部洗浄機構と、を備えているものが知られている。
このような従来の水洗大便器においては、便器洗浄機構及び局部洗浄機構のそれぞれが便器本体の後方に組み込まれているため、近年の水洗大便器のデザイン性の向上と多様化に向けて、水洗大便器全体の上端高さを可能な限り低く設計する、いわゆる、「ローシルエット化」が課題となっている。
そこで、上述した従来の水洗大便器では、便器洗浄機構として、外部より洗浄水を供給する水道管に直結され、バルブの開閉により洗浄水を吐出可能にするものを採用することにより、便器洗浄に使用される洗浄水を貯水する貯水タンクを不要とすることにより、便器洗浄機構全体を小型化しているものもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-348937号公報
【文献】特開2006-057453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、上述した従来の水洗大便器においては、便器洗浄機構の一部として貯水タンクを採用した場合には、いかに便器のローシルエット化を実現しつつ、便器洗浄を可能にする適切な貯水タンクの容量を確保するかが課題となる。
また、近年の水洗大便器のデザイン性の向上と多様化により、便器本体の後方の限られた設置スペースをいかに有効活用して貯水タンク容量を確保しつつ、水洗大便器の前出寸法や高さ寸法をいかに抑えるかが要請された課題となっている。
例えば、貯水タンクについては、便器本体の後方に設置された状態で排水トラップ等と干渉しないように、タンク形状をいびつで複雑な形状にしたり、便器本体との相対的な配置を工夫したりする等、貯水タンクに対する設計上の制約も多いという問題もある。
また、貯水タンクの形状をいびつで複雑な形状に設計すると、貯水タンクの重心に対して非対称性が強いアンバランスな形状にもなりかねず、貯水タンクが便器本体に設置された状態で変形しやすい状態となり、永久ひずみ等により設計誤差にもつながるおそれがあるという問題がある。
さらに、例えば、便器本体に設置された状態の貯水タンク自体が水密に接合される接合部分を備えているものや、貯水タンクに対して水密に接続される接続要素が設けられているものにおいては、これらの貯水タンクにおける接合部分や接続要素との接続部等が変形すると、貯水タンク内の洗浄水が漏水してしまうという問題もあり、タンク装置や水洗大便器の信頼性の低下を招くという問題もある。
したがって、便器本体に設置された状態の貯水タンクの変形をいかに抑制し、タンク装置の信頼性を確保するかが、近年要請されている課題ともなっている。
【0005】
そこで、本発明は、上述した従来技術の問題や近年要請されている課題を解決するためになされたものであり、便器本体に設置された状態の貯水タンクの変形を抑制し、タンク装置の信頼性を確保することができる水洗大便器を提供すること目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明は、洗浄水により洗浄されて汚物を排出する水洗大便器であって、汚物を受けるボウル部と、このボウル部内の汚物を排出する排水トラップ部と、を備えた便器本体と、この便器本体に洗浄水を供給するタンク装置と、を有し、このタンク装置は、上記便器本体の後方且つ床面よりも上方に設けられると共に上記便器本体に供給するための洗浄水を貯留する貯水タンクを備えており、上記貯水タンクは、この貯水タンクを前後方向から見て左右中央で二分割したときに容積が大きい側である大タンク部と、上記貯水タンクを前後方向から見て左右中央で二分割したときに容積が小さい側である小タンク部と、を備えており、前後又は左右の非対称な形状であり、上記貯水タンク又は上記便器本体には、この便器本体に設置された状態の上記貯水タンクを支持することにより上記貯水タンクの変形を抑制する変形抑制支持部材が設けられていることを特徴としている。
このように構成された本発明においては、タンク装置の貯水タンクが便器本体の後方かつ床面よりも上方に設置された状態では、貯水タンクの形状が大タンク部と小タンク部による前後又は左右の非対称な形状であるため、貯水タンク内に貯留される洗浄水の重量により貯水タンクが変形しやすい状態となっている。
これに対し、本発明では、貯水タンク又は便器本体に設けられた変形抑制支持部材により、便器本体に設置された状態の貯水タンクを支持しながら貯水タンクの変形を抑制することができる。
したがって、例えば、便器本体に設置された状態の貯水タンク自体が水密に接合される接合部分を備えているものや、貯水タンクに対して水密に接続される接続要素が設けられているものであっても、これらの貯水タンクにおける接合部分や接続要素との接続部等が変形して貯水タンク内の洗浄水が漏水してしまうことを抑制することができる。
これらの結果、タンク装置の信頼性を確保することができる。
【0007】
本発明において、好ましくは、上記貯水タンクは、上記変形抑制支持部材により支持される被支持部を備えており、この被支持部は、上記貯水タンクの重心位置に対して一致しない位置に配置されている。
このように構成された本発明においては、便器本体に設置された状態の貯水タンクが前後又は左右の非対称な形状により重心とのバランスが不安定となって変形しやすい状態であっても、変形抑制支持部材により支持される貯水タンクの被支持部が貯水タンクの重心位置に対して一致しない位置に配置されているため、貯水タンクの変形を効果的に抑制することができる。
【0008】
本発明において、好ましくは、上記貯水タンクの被支持部は、上記貯水タンクの重心位置よりも前後又は左右における一方側及び他方側のそれぞれに配置された第1被支持部及び第2被支持部をそれぞれ備えており、上記変形抑制支持部材は、上記第1被支持部及び上記第2被支持部のそれぞれに固定される第1支持部及び第2支持部をそれぞれ備えており、上記第1支持部及び上記第2支持部のそれぞれは、上記貯水タンクの重心位置よりも前後又は左右における一方側及び他方側のそれぞれに配置されている。
このように構成された本発明においては、変形抑制支持部材の第1支持部及び第2支持部のそれぞれが、貯水タンクの重心位置よりも前後又は左右における一方側及び他方側のそれぞれに配置された第1被支持部及び第2被支持部のそれぞれを固定することができる。
これにより、貯水タンクが便器本体に設置された状態において、前後又は左右の非対称な形状の貯水タンクにより重心とのバランスが不安定となって変形しやすい状態であっても、貯水タンクの変形をより効果的に抑制することができる。
【0009】
本発明において、好ましくは、上記貯水タンクは、上記大タンク部及び上記小タンク部のそれぞれの内側壁面により凹状に取り囲まれるように形成された凹状領域を備えており、上記変形抑制支持部材は、上記貯水タンクの凹状領域の変形を抑制するように上記被支持部を支持する。
このように構成された本発明においては、便器本体の後方の限られたスペースに設置される貯水タンクは、貯留される洗浄水量を確保しつつ小型化が要求されているため、前後又は左右の非対称な形状となっている。
また、特に、貯水タンクの大タンク部及び小タンク部のそれぞれの内側壁面により凹状に取り囲まれるように形成された貯水タンクの凹状領域は、貯水タンクの形状を複雑化すると共に、貯水タンクが便器本体に設置された状態で変形しやすい状態となっている。
そこで、本発明では、変形抑制支持部材が貯水タンクの被支持部を支持することにより、複雑な形状で変形しやすい貯水タンクの凹状領域の変形を効果的に抑制することができる。
これらの結果、貯水タンクの容量を大きく確保しつつ小型化を実現することができる。また、貯水タンクからの漏水も抑制し、タンク装置の信頼性を確保することができる。
【0010】
本発明において、好ましくは、上記被支持部は、その少なくとも一部が上記貯水タンクの凹状領域に配置されており、上記変形抑制支持部材は、その少なくとも一部が上記貯水タンクの凹状領域に配置された状態で上記被支持部を支持する。
このように構成された本発明においては、貯水タンクの被支持部の少なくとも一部を貯水タンクの凹状領域に配置することができると共に、変形抑制支持部材の少なくとも一部が、貯水タンクの凹状領域に配置された状態で貯水タンクの被支持部を支持することができる。
これにより、便器本体に設置された状態の貯水タンクの変形を効率良く抑制することができると共に、貯水タンクの容量を大きく確保しつつ小型化を実現することができる。
これらの結果、タンク装置の信頼性を確保しつつ、タンク装置全体についても小型化することができ、水洗大便器全体についても小型化することができる。
【0011】
本発明において、好ましくは、上記被支持部は、その少なくとも一部が上記貯水タンクの凹状領域に配置されており、上記変形抑制支持部材は、その少なくとも一部が上記貯水タンクの凹状領域に配置された状態で上記被支持部を支持する。
このように構成された本発明においては、貯水タンク内の洗浄水を便器本体に圧送するタンク装置のポンプを変形抑制支持部材として兼用することができるため、ポンプ以外の変形抑制支持部材を別途に設ける必要がなく、タンク装置全体について小型化することができる。
これにより、水洗大便器全体についても小型化することができる。
【0012】
本発明において、好ましくは、さらに、上記貯水タンクと上記便器本体との間に設けられる防振部材を有し、上記ポンプは、上記貯水タンクに対して直接的に固定される一方、上記貯水タンクは、上記防振部材を介して上記便器本体に固定される。
このように構成された本発明においては、貯水タンク内の洗浄水を便器本体に圧送するポンプは、一般的には、作動に伴って振動を発生するものであるため、このようなポンプを貯水タンクに対して固定する際には、ポンプと貯水タンクとの固定部分に防振部材等を設けることが好ましい。
しかしながら、このようにポンプと貯水タンクとの固定部分に防振部材等を設けた場合には、便器本体に設置された状態の貯水タンクがその内部の洗浄水の重量等により変形しようとした際に、防振部材の干渉等により、却ってポンプ自体の変形抑制支持部材としての機能が果たせなくなるおそれがある。
そこで、本発明では、ポンプが貯水タンクに対して直接的に固定される一方、貯水タンクが防振部材を介して便器本体に固定されるため、便器本体に設置された状態の貯水タンクの変形を抑制しつつ、貯水タンクと便器本体との間の防振部材が、ポンプから発生した振動がタンク装置と便器本体との間で伝達されることを効果的に抑制することができる。
【0013】
本発明において、好ましくは、上記ポンプは、羽根車が設けられたポンプ室と、このポンプ室から上流側に向かって上記貯水タンクの左右方向に延びて上記貯水タンクと接続される接続管と、を備えており、上記接続管は、上記変形抑制支持部材として、可撓性ホース部材よりも高い剛性を有する材料で形成されている。
このように構成された本発明においては、例えば、ポンプのポンプ室と貯水タンクとを接続する接続管として可撓性ホース部材を採用した場合には、ポンプや貯水タンクの周辺において可撓性ホース部材の可撓性を考慮した取り回し空間が必要になる。
これに対し、本発明においては、接続管が可撓性ホース部材よりも高い剛性を有する材料で形成されているため、ポンプや貯水タンクの周辺において接続管の取り回しのための空間が不要となる。
よって、その分、貯水タンクのタンク容量を大きく確保しつつ、タンク装置全体を小型化することができる。また、水洗大便器全体についても小型化することができる。
さらに、ポンプの接続管が可撓性ホース部材よりも高い剛性を有することにより、ポンプ作動時における接続管自体の振動や変形(曲げ、ねじり、たわみ等の弾性変形)等についても抑制することができる。
よって、便器本体に設置された状態の貯水タンクの変形について、ポンプ以外の変形抑制支持部材を別途に設けることなく抑制することができる。
また、ポンプの接続管がポンプ室から上流側に向かって貯水タンクの左右方向に延びて貯水タンクと接続されるため、タンク装置の前出寸法を短くすることができると共に、水洗大便器全体の前出寸法も短くすることができる。
これらの結果、貯水タンクの容量を大きく確保しつつ、タンク装置全体及び水洗大便器全体の小型化を実現することができる。
【0014】
本発明において、好ましくは、上記便器本体の排水トラップ部は、平面視において、上記ボウル部に接続される入口部から上記ボウル部よりも後方の出口部に向かって前後方向に延びており、上記貯水タンクは、上記排水トラップ部の上部に対して左右両側及び後方側から取り囲むように配置されている。
このように構成された本発明においては、便器本体の排水トラップ部が、平面視において、ボウル部に接続される入口部からボウル部よりも後方の出口部に向かって前後方向に延びており、この排水トラップ部の上部に対して貯水タンクを左右両側及び後方側から取り囲むように配置することができる。
したがって、便器本体の後方における排水トラップ部の上部周辺の限られたスペースを有効活用して、貯水タンク及びポンプを互いに隣接させて効率よく配置することができる。
したがって、タンク装置の前出寸法を短くすることができると共に、水洗大便器全体の前出寸法も短くすることができるため、貯水タンクの容量をより大きく確保しつつ、水洗大便器全体を小型化することができる。
【0015】
本発明において、好ましくは、上記貯水タンクは、上下方向に互いに接合される上タンク部及び下タンク部をそれぞれ備えており、上記上タンク部及び上記下タンク部のうちの少なくとも上記上タンク部には、上記変形抑制支持部材により支持される被支持部が設けられており、この被支持部は、上記下タンク部よりも上記上タンク部の方が多く設けられている。
このように構成された本発明においては、変形抑制支持部材により支持される貯水タンクの被支持部について、上下方向に互いに接合される上タンク部及び下タンク部のうちの少なくとも上タンク部に多く設けることができる。
したがって、変形抑制支持部材により支持される貯水タンクの被支持部について、貯水タンクの上タンク部側に可能な限り集約化させることができる。
よって、貯水タンクを便器本体に対して組み付けた後に、貯水タンクの被支持部を変形抑制支持部材で支持した際に、特に、貯水タンクの上タンク部の変形を効果的に抑制することができる。
これにより、貯水タンクの上タンク部に接合される下タンク部の変形についても効果的に抑制することができ、貯水タンク全体の変形についても効果的に抑制することができる。
また、下タンク部については、貯水タンク内の洗浄水量の大小に関わらず、洗浄水の重量を下側から安定して支持することができるため、上タンク部に比べて変形が生じ難い。
一方、上タンク部は、貯水タンク内の洗浄水量に応じて貯水タンクの重心位置が変動するため、下タンク部に比べて、貯水タンクの重心位置の変動の影響を受けやすく、変形が生じやすい。
よって、貯水タンクの被支持部についても、下タンク部よりも上タンク部に対して多く設けた方が、変形抑制支持部材により貯水タンクを安定して支持することができるため、貯水タンクの変形をより効果的に抑制することができる。
さらに、貯水タンクの被支持部を下タンク部よりも上タンク部に対して多く設けた方が、下タンク部の下方スペース等を有効活用することができるため、水洗大便器全体について、小型化することができると共に、ローシルエット化を実現することもできる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の水洗大便器によれば、便器本体に設置された状態の貯水タンクの変形を抑制し、タンク装置の信頼性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1実施形態による水洗大便器を斜め後方且つ上方から見た概略斜視図である。
図2】本発明の第1実施形態による水洗大便器の全体構成図である。
図3】本発明の第1実施形態による水洗大便器のタンクユニットの部分を拡大した部分拡大平面図である。
図4図3のIV-IV線に沿った正面断面図である。
図5】本発明の第1実施形態による水洗大便器の貯水タンクを斜め後方且つ上方から見た斜視図である。
図6】本発明の第1実施形態による水洗大便器の貯水タンクの背面図である。
図7】本発明の第1実施形態による水洗大便器における便器本体、タンク取付部材、及び、貯水タンクを示す分解斜視図である。
図8】本発明の第1実施形態による水洗大便器における便器本体に対してタンク取付部材が取り付けられた状態を示す平面図である。
図9】本発明の第1実施形態による水洗大便器における便器本体に対して貯水タンクがタンク取付部材を介して取り付けられた状態を示す平面図である。
図10】本発明の第1実施形態による水洗大便器における貯水タンクについて、斜め後方かつ下方から見た斜視図である。
図11図9のXI-XI線に沿った断面図であり、便器本体の後方側における貯水タンク及びタンク取付部材の部分を拡大した部分拡大断面図である。
図12図10に示す本発明の第1実施形態による水洗大便器の貯水タンクの取付部の部分について拡大した部分拡大図である。
図13A図11に示す本発明の第1実施形態による水洗大便器において、貯水タンクの大タンク後方側取付部及びタンク取付部材の後方側被取付部の部分を拡大した部分拡大断面図であり、貯水タンクの大タンク後方側取付部がタンク取付部材の後方側被取付部に上方から係合した後、後方に移動される前の状態(係止前状態)を示す。
図13B】本発明の第1実施形態による水洗大便器における貯水タンクの大タンク後方側取付部及びタンク取付部材の後方側被取付部の部分を拡大した図13Aと同様な部分拡大断面図であり、貯水タンクの大タンク後方側取付部がタンク取付部材の後方側被取付部に上方から係合した後、後方に移動されて位置決めが完了した状態(位置決め完了状態)を示す。
図13C】本発明の第1実施形態による水洗大便器において、図13Aと同様に、貯水タンクの小タンク後方側取付部及びタンク取付部材の後方側被取付部の部分を拡大した部分拡大断面図であり、貯水タンクの小タンク後方側取付部がタンク取付部材の後方側被取付部に上方から係合した後、後方に移動される前の状態(係止前状態)を示す。
図13D】本発明の第1実施形態による水洗大便器における貯水タンクの小タンク後方側取付部及びタンク取付部材の後方側被取付部の部分を拡大した図13Cと同様な部分拡大断面図であり、貯水タンクの小タンク後方側取付部がタンク取付部材の後方側被取付部に上方から係合した後、後方に移動されて位置決めが完了した状態(位置決め完了状態)を示す。
図14A図11に示す本発明の第1実施形態による水洗大便器において、貯水タンクの前方側取付部及びタンク取付部材の前方側被取付部の部分を拡大した部分拡大断面図であり、貯水タンクの前方側取付部がタンク取付部材の前方側被取付部に上方から係合した後、後方に移動される前の状態(位置決め前状態)を示す。
図14B】本発明の第1実施形態による水洗大便器における貯水タンクの前方側取付部及びタンク取付部材の前方側被取付部の部分を拡大した図13Bと同様な部分拡大断面図であり、貯水タンクの前方側取付部がタンク取付部材の前方側被取付部に上方から係合した後、後方に移動されて位置決めが完了した状態(位置決め完了状態)を示す。
図15】本発明の第2実施形態による水洗大便器における図4と同様な正面断面図である。
図16】本発明の第3実施形態による水洗大便器における図4と同様な正面断面図である。
図17】本発明の第4実施形態による水洗大便器における図4と同様な正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して、本発明の第1実施形態による水洗大便器について説明する。
まず、図1は、本発明の第1実施形態による水洗大便器を斜め後方且つ上方から見た概略斜視図である。また、図2は、本発明の第1実施形態による水洗大便器の全体構成図である。
図1及び図2に示すように、本発明の第1実施形態による水洗大便器1は、陶器製の便器本体2と、その後方側に設けられたタンク装置4と、を備えている。
また、便器本体2は、汚物を受けるボウル部2aと、このボウル部2aの底部から延びてボウル部2a内の汚物を排出する排水トラップ部(排水トラップ管2b)と、ボウル部2aの上縁に形成されるリム部2cと、を備えている。
【0019】
つぎに、図1及び図2に示すように、タンク装置4は、その上流側及び下流側にそれぞれ接続された給水管6及び吐水管8をそれぞれ備えている。
給水管6の上流側は、水道等の外部の給水源(図示せず)に接続されている。一方、給水管6の下流側は、タンク装置4の貯水タンク10(詳細は後述する)に接続されている。これらにより、給水管6から貯水タンク10に洗浄水が供給されるようになっている。
また、給水管6には、上流側から下流側に向かって、止水栓12、バルブユニット14がそれぞれ設けられている。
さらに、バルブユニット14は、給水管6に設けられた定流量弁16、並びに、この定流量弁16の下流側に設けられた開閉弁(ダイヤフラム弁17)を開閉する電磁弁18をそれぞれ含む。
【0020】
つぎに、図1及び図2に示すように、タンク装置4は、さらに、給水管6のバルブユニット14の下流側に接続されている連結ユニット20と、この連結ユニット20の下流側に接続されて貯水タンク10を含むタンクユニット22とを備えている。
バルブユニット14において、給水管6内の洗浄水が定流量弁16により流量が一定に調整されるようになっている。
その後、電磁弁18が電磁的に開弁し、開閉弁(ダイヤフラム弁17)により給水管6の流路が開放されると、給水管6内の洗浄水が連結ユニット20を経てタンクユニット22に供給されるようになっている。
【0021】
図2に示すように、連結ユニット20は、水受けハウジング24と、オーバーフロー管26と、逆止弁28と、を備えている。
また、水受けハウジング24は、その下方開口部24aがタンクユニット22の貯水タンク10の上方開口部(通水口10a)に着脱可能に接続されており、貯水タンク10に対して水密に接続されている接続要素である。
【0022】
つぎに、オーバーフロー管26は、水受けハウジング24の側壁の一部に設けられたオーバーフロー口24bと吐水管8とを接続している。
吐水管8は、その上流側がタンク装置4のポンプPの下流側に接続された接続管であり、その下流側が便器本体2のリム部2cの内部のリム導水路2dに接続されている。
さらに、逆止弁28は、オーバーフロー口24bに設けられており、水受けハウジング24内の洗浄水がオーバーフロー口24bからオーバーフロー管26に流入することを可能にする一方、オーバーフロー管26内の洗浄水が水受けハウジング24内へ逆流することを妨げることができるようになっている。
【0023】
つぎに、図3は、本発明の第1実施形態による水洗大便器のタンクユニットの部分を拡大した部分拡大平面図である。また、図4は、図3のIV-IV線に沿った正面断面図である。
図2図4に示すように、タンクユニット22は、貯水タンク10、ポンプP(ポンプ本体30、ポンプ接続管36)、フロートスイッチ32、水抜き栓34、及び、コントローラC等をそれぞれ備えている。
まず、ポンプPは、渦巻き状の羽根車(図示せず)を高速度回転させて、その遠心力で水を送出する、いわゆる、遠心ポンプ(渦巻きポンプ)である。
具体的には、このポンプPは、図4に示すように、その内部にポンプ室30aを形成するポンプ本体30と、このポンプ本体30の上流側に設けられて貯水タンク10に接続されるポンプ接続管36と、を備えている。
また、図4に示すように、ポンプ本体30には、ポンプ室30a内に回転可能に設けられた羽根車(図示せず)を回転駆動するモータ等の駆動部30b等も設けられている内蔵されている。
さらに、ポンプ接続管36は、ポンプ本体30(ポンプ室30a)から上流側(側方)に向かって貯水タンク10の左右方向に延びており、このポンプ接続管36の上流端36aが貯水タンク10内に設けられた吸引管38の下流端38aに接続されている。
一方、ポンプPの下流側は、吐水管8の上流側に接続されている。
【0024】
貯水タンク10内に貯水されている洗浄水は、ポンプPが作動することにより、吸引管38からポンプPのポンプ接続管36内に吸引された後、ポンプPを経て吐水管8に圧送されるようになっている。
これにより、貯水タンク10からポンプPにより吐水管8に供給された洗浄水のうちのすべてがリム導水路2dの入口2eからリム導水路2d内に供給されるようになっている。
そして、リム導水路2d内の洗浄水はリム導水路2dの下流端のリム吐水口2fからボウル部2a内に吐水され、便器洗浄(いわゆる、リム吐水100%による便器洗浄)が行われるようになっている。
【0025】
フロートスイッチ32は、貯水タンク10内の水位を検知するものである。バルブユニット14の電磁弁18の開閉動作は、フロートスイッチ32が検知した貯水タンク10内の水位に基づいてコントローラCにより制御されるようになっている。
また、ポンプPの作動についても、フロートスイッチ32が検知した貯水タンク10内の水位に基づいてコントローラCにより制御されるようになっている。
例えば、フロートスイッチ32が検知した貯水タンク10内の水位が所定以下である場合には、電磁弁18が開弁して給水管6が開放され、ポンプPが作動されるようになっている。
そして、貯水タンク10内の水位が所定水位まで到達すると、電磁弁18が閉弁して給水管6が閉鎖され、ポンプPが停止されるようになっている。
【0026】
水抜き栓34は、貯水タンク10の底面に設けられている。この水抜き栓34は、通常使用時では、常時閉鎖されており、必要に応じて開放され、貯水タンク10内の洗浄水を外部に排出することができるようになっている。
【0027】
つぎに、図3図6を参照して、タンクユニット22の貯水タンク10の詳細について説明する。
まず、図3及び図4に示すように、タンクユニット22の貯水タンク10は、単一のタンク本体40と、このタンク本体40の外側を覆う防露材42とを備えている。
つぎに、図5は、本発明の第1実施形態による水洗大便器の貯水タンクを斜め後方且つ上方から見た斜視図である。また、図6は、本発明の第1実施形態による水洗大便器の貯水タンクの背面図である。
図3図6に示すように、タンクユニット22の貯水タンク10を左右中央で二分割する仮想の鉛直面を「鉛直面A1」とすると、貯水タンク10の単一のタンク本体40及びその外側の防露材42は、鉛直面A1に対して左右に大タンク部44及び小タンク部46をそれぞれ備えており、鉛直面A1によって、大タンク部44と小タンク部46とに左右に二分割されている。
すなわち、図6に示すように、大タンク部44は、タンク本体40及び防露材42を背面側から見て鉛直面A1の左側に配置され、小タンク部46は、タンク本体40及び防露材42を背面側から見て鉛直面A1の右側に配置されており、大タンク部44の容積V1は、小タンク部46の容積V2よりも大きく設定(V1>V2)されている。
これにより、貯水タンク10は、大タンク部44と小タンク部46とにより上下、前後及び左右のそれぞれの方向に対して非対称の形状(平面視において概ねC字形又はU字形の異形状)となっている。
また、このような貯水タンク10の複雑な形状により、満水状態における貯水タンク10の重心O(図4参照)の位置についても、貯水タンク10の上下、前後及び左右のそれぞれの方向に対して非対称の位置に片寄っている。
【0028】
つぎに、図4に示すように、便器本体2は、ボウル部2aよりも後方側の領域において、大タンク部44及び小タンク部46のそれぞれを床面Fよりも上方の位置で収容する大タンク収容部S1及び小タンク収容部S2をそれぞれ備えている。
すなわち、大タンク収容部S1は、便器本体2のボウル部2aよりも後方側の領域において、左右中央で二分割した鉛直面A1に対して左右一方側(便器本体2を正面側から見て鉛直面A1の右側)に形成されている。
一方、小タンク収容部S2は、便器本体2のボウル部2aよりも後方側の領域において、鉛直面A1に対して左右他方側(便器本体2を正面側から見て鉛直面A1の左側)に形成されている。
【0029】
また、図4図6に示すように、大タンク部44及び小タンク部46のそれぞれが大タンク収容部S1及び小タンク収容部S2のそれぞれに設置された状態では、大タンク部44の底面44aの最低位置P1が、小タンク部46の底面46aの最低位置P2よりも下方に位置している。
さらに、図4図6に示すように、大タンク部44及び小タンク部46のそれぞれが大タンク収容部S1及び小タンク収容部S2のそれぞれに設置された状態では、大タンク部44の上面44bの位置P3(最高位置P3)が、小タンク部46の上面46bの位置P4よりも上方に位置し、かつ、便器本体2のリム部2cの上面2gよりも下方に位置している。
なお、便器本体2の後方には、詳細は後述するタンク取付部材48が固定されており、貯水タンク10がタンク取付部材48に対して上方から取り付け可能となっている。これにより、貯水タンク10が便器本体2に対して組み付けられるようになっている。つまり、貯水タンク10は、タンク取付部材48を介して、間接的に便器本体2に取り付けられる。
なお、タンク取付部材48を設けずに、貯水タンク10が便器本体2に直接的に取り付けられてもよい。
【0030】
つぎに、図6に示すように、貯水タンク10の大タンク部44の最低位置P1と最高位置P3との間の上下方向の距離(鉛直方向距離H1)を二等分する中央高さ位置(上下中央高さ位置P0)よりも上方に形成される貯水タンク10の上側タンク領域Ta内の容積Vaが、中央高さ位置P0よりも下方に形成される貯水タンク10の下側タンク領域Vb内の容積Vbよりも大きく設定されている(Va>Vb)。
また、図4図6に示すように、貯水タンク10の大タンク部44の上面44b及び小タンク部46の上面46bのそれぞれは、高低差を有している。
特に、貯水タンク10の大タンク部44の上面44bの最高面A2には、通水口10aが鉛直方向に貫くように設けられている。この通水口10aにより、給水管6の下流端に接続される給水部である給水ノズル6a(図2図4参照)から水受けハウジング24内に給水された洗浄水W1は、貯水タンク10内へ通水されて貯水されるようになっている。
なお、本実施形態では、貯水タンク10について、互いに高低差を有する大タンク部44及び小タンク部46の上面同士が平面である形態を説明するが、このような形態に限られず、例えば、貯水タンク10の最高面が平面であって、この最高面から下方に向かって傾斜する面を備えるように、高低差を有する形態であってもよい。
【0031】
さらに、図5及び図6に示すように、貯水タンク10の大タンク部44の上面44bは、通水口10aが形成される面A2からその外側周囲の面A3に向かって、僅かな段差G1を介して連続的に、かつ、段階的に低くなるように形成されている。
なお、貯水タンク10の大タンク部44の上面44bについては、通水口10aが形成される面A2からその外側周囲の面A3に向かって、連続的に下り傾斜する、いわゆる、テーパ状に低くなるように形成されていてもよいし、上述した僅かな段差G1よりも大きい段差により、いわゆる、階段状に低くなるように形成されていてもよい。
また、貯水タンク10の小タンク部46の上面46bについては、大タンク部44の上面A3と同一高さの面A4で水平左右方向に延びた後、段差G2により下方に平面A5を形成している。
【0032】
ちなみに、図2及び図4に示すように、吸引管38は、タンク本体40の大タンク部44内に設けられており、ポンプPのポンプ本体30から上流側(側方)に延びるポンプ接続管36の上流端36aは、大タンク部44の一部である吸引管38の下流端38aに水密に接続されている。
また、図3に示すように、ポンプPから下流側(上方)には、吐水管8の上流端が接続されており、吐水管8の下流端(出口部8a)は、便器本体2の鉛直面A1に対して左右他方側(便器本体2を正面側から見て鉛直面A1よりも左側)のリム導水路2dの入口2eに接続されている。
【0033】
つぎに、図4に示すように、大タンク部44は、その鉛直面A1側(左右中央側)の内側壁面44cが大タンク収容部S1内における排水トラップ管2bの外側(排水トラップ管2bを正面側から見て右側)に配置されている。
同様に、小タンク部46は、その鉛直面A1側(左右中央側)の内側壁面46cが小タンク収容部S2内における排水トラップ管2bの外側(排水トラップ管2bを正面側から見て左側)に配置されている。
また、図4及び図5に示すように、排水トラップ管2bは、便器本体2の左右中央に設けられており、ポンプ接続管36の上流端36aは、大タンク部44の左右側面のうちの排水トラップ管2b側の内側壁面44cに接続されている。
【0034】
さらに、図3及び図4に示すように、ポンプPは、便器本体2のボウル部2aよりも後方で且つ排水トラップ管2bの上方に配置されている。
また、図3図4及び図6に示すように、貯水タンク10は、大タンク部44及び小タンク部46のそれぞれの内側壁面44c,46cにより凹状に取り囲まれるように形成された凹状領域Iを備えている。
さらに、図3図4及び図6に示すように、ポンプPは、大タンク部44と小タンク部46との間の左右方向の中間スペース(凹状領域I)に配置されており、ポンプ接続管36の上流端36a及び吐水管8の下流端(出口部8a)よりも便器本体2の左右中央側に設けられている。
これにより、ポンプPは、便器本体2に設置された状態の貯水タンク10の大タンク部44と小タンク部46との間を支持することができ、貯水タンク10の変形(特に、凹状領域Iの変形)を抑制する変形抑制支持部材として機能するようにもなっている。
ここで、本明細書中における、「貯水タンクの変形」とは、例えば、便器本体2に設置された状態の貯水タンク10において内力(或いは、曲げ応力、せん断応力等)が発生した際に、これらに伴う貯水タンク10自体の弾性変形や塑性変形を意味する。これらの変形は、より具体的には、曲げ変形やせん断変形等を含み、これらの他、クリープ変形(時間が経つ程変位量が大きくなり、材料の温度が高い程クリープ速度が速くなる変形)等も含む。
【0035】
つぎに、図4図7図14を参照して、便器本体2に固定される上述したタンク取付部材48について具体的に説明すると共に、貯水タンク10の固定部(取付部M1)とタンク取付部材48の被取付部M2との取付構造について具体的に説明する。
まず、図7は、本発明の第1実施形態による水洗大便器における便器本体、タンク取付部材、及び、貯水タンクを示す分解斜視図である。
つぎに、図8は、本発明の第1実施形態による水洗大便器における便器本体に対してタンク取付部材が取り付けられた状態を示す平面図である。
また、図9は、本発明の第1実施形態による水洗大便器における便器本体に対して貯水タンクがタンク取付部材を介して取り付けられた状態を示す平面図である。
【0036】
まず、図4図7図9に示すように、タンク取付部材48は、便器本体2のボウル部2aよりも後方に固定されるベース部(ベースプレート50)と、このベースプレート50の後端から上方に延びる背面側支持プレート52と、を備えている。
また、図8及び図9に示す平面視において、便器本体2の排水トラップ管2bは、便器本体2のボウル部2aの下方に接続される排水トラップ管2bの入口部2hからボウル部2aよりも後方の出口部2iに向かって前後方向に延びている。
これにより、貯水タンク10は、排水トラップ管2bの上部に対して左右両側及び後方側から取り囲むように配置されている(図4図9参照)。
そして、図4図7及び図8に示すように、便器本体2における排水トラップ管2bの出口部2iの上方の排水トラップ管2bの上部及びその側方には、ベースプレート50が固定される支持面2jが陶器で形成されている。
これにより、ベースプレート50は、便器本体2の後方の支持面2jで下方から支持された状態で、上方から複数(4つ)のねじ54で固定されている。
また、図8及び図9に示すように、タンク取付部材48が便器本体2に対して固定された状態では、背面側支持プレート52がその後方側の外部壁面Wに隣接して配置されている。
【0037】
つぎに、図10は、本発明の第1実施形態による水洗大便器における貯水タンクについて、斜め後方かつ下方から見た斜視図である。また、図11は、図9のXI-XI線に沿った断面図であり、便器本体の後方側における貯水タンク及びタンク取付部材の部分を拡大した部分拡大断面図である。
まず、図7図10及び図11に示すように、貯水タンク10は、上下方向に互いに接合される上タンク部(上タンク部材T1)及び下タンク部(下タンク部材T2)をそれぞれ備えている。
また、上タンク部材T1は、上側タンク本体40aと、その外側の上側防露材42aと、を含み、下タンク部材T2は、下側タンク本体40bと、その外側の下側防露材42bと、を含む。
すなわち、貯水タンク10の上タンク部材T1の下縁接合部10bと下タンク部材T2の上縁接合部10cとが接合された状態では、上タンク部材T1の上側タンク本体40aの下縁接合部40cと下タンク部材T2の下側タンク本体40bの上縁接合部40dとが水密に接合され、単一のタンク本体40が形成されている。
さらに、このタンク本体40の外側は、上側防露材42a及び下側防露材42bにより上下方向から覆われている。
【0038】
つぎに、図9及び図10に示すように、貯水タンク10の大タンク部44は、排水トラップ管2bの後方側に配置される後方側大タンク部56と、この後方側大タンク部56から前方に延びて排水トラップ管2bの左右一方側(便器本体2の正面側から見て右側)に配置された前方側大タンク部58と、後方側大タンク部56から下方に延びる下方側大タンク部60と、を備えている。
つぎに、図9及び図10に示すように、貯水タンク10の小タンク部46は、排水トラップ管2bの後方側に配置される後方側小タンク部62と、この後方側小タンク部62から前方に延びて排水トラップ管2bの左右他方側(便器本体2の正面側から見て左側)に配置された前方側小タンク部64と、を備えている。
また、図9及び図10に示すように、前方側大タンク部58の前端58aの位置P5は、前方側小タンク部64の前端64aの位置P6よりも前方に位置している。
さらに、図4及び図10に示すように、下方側大タンク部60の底面60aは、後方側小タンク部62の底面62a及び前方側小タンク部64の底面64bよりも下方に位置している。
【0039】
つぎに、図12は、図10に示す本発明の第1実施形態による水洗大便器の貯水タンクの取付部の部分について拡大した部分拡大図である。
まず、図7及び図9図11に示すように、貯水タンク10の固定部(取付部M1)は、貯水タンク10の後方側大タンク部56の底面56a及び後方側小タンク部62の底面62a(すなわち、図10に示す貯水タンク10の下タンク部材T2の後方側の底面10d)において、左右一対設けられた大タンク側取付部(後方側取付部66)及び小タンク側取付部(後方側取付部68)をそれぞれ備えている。
また、図7及び図9図11に示すように、貯水タンク10の固定部(取付部M1)は、さらに、貯水タンク10の前方側大タンク部58の内側面58bの一部及び前方側小タンク部64の内側面64cの一部(すなわち、図7図9に示す貯水タンク10の下タンク部材T2の内側面10e,10f)において、左右一対設けられた大タンク側取付部(前方側取付部70)及び小タンク側取付部(前方側取付部72)をそれぞれ備えている。
すなわち、貯水タンク10を便器本体2及びタンク取付部材48に対して固定するための貯水タンク10の固定部については、取付部M1(66,68,70,72)として下タンク部材T2側にのみ複数(4つ)設けられているが、上タンク部材T1側には設けられていない。
なお、本実施形態では、貯水タンク10の固定部については、下タンク部材T2のみに複数(4つ)設けられた形態について説明するが、4つ以外の複数設けられていてもよい。
或いは、貯水タンク10の固定部は、上タンク部材T1及び下タンク部材T2のそれぞれに設けられていてもよい。この場合、下タンク部材T2に設けられる貯水タンク10の固定部が上タンク部材T1よりも多く設けられることが好ましい。
【0040】
一方、図7図8及び図11に示すように、タンク取付部材48の被取付部M2は、タンク取付部材48のベースプレート50上の後方側に左右一対設けられた後方側被取付部74,76をそれぞれ備えている。各被取付部74,76においては、貯水タンク10の後方側取付部66,68のそれぞれが上方から取付可能となっている。
また、図7図8及び図11に示すように、タンク取付部材48の被取付部M2は、さらに、タンク取付部材48のベースプレート50上の前方側に左右一対設けられた前方側被取付部78,80をそれぞれ備えている。各被取付部78,80においては、貯水タンク10の前方側取付部70,72のそれぞれが上方から取付可能となっている。
なお、図11に示す貯水タンク10の取付部66,70及びタンク取付部材48の被取付部74,78については、貯水タンクの取付部66,70のそれぞれがタンク取付部材48の被取付部74,78のそれぞれに上方から取り付けられて係合した後、互いが固定される前の状態を示している。
【0041】
つぎに、図12は、図10に示す本発明の第1実施形態による水洗大便器の貯水タンクの取付部の部分について拡大した部分拡大図である。
また、図13Aは、図11に示す本発明の第1実施形態による水洗大便器において、貯水タンクの大タンク後方側取付部及びタンク取付部材の後方側被取付部の部分を拡大した部分拡大断面図であり、貯水タンクの大タンク後方側取付部がタンク取付部材の後方側被取付部に上方から係合した後、後方に移動される前の状態(位置決め前状態)を示す。
一方、図13Bは、図13Aと同様な部分拡大断面図であり、貯水タンクの大タンク後方側取付部がタンク取付部材の後方側被取付部に上方から係合した後、後方に移動されて位置決めが完了した状態(位置決め完了状態)を示す。
つぎに、図13Cは、本発明の第1実施形態による水洗大便器において、図13Aと同様に、貯水タンクの小タンク後方側取付部及びタンク取付部材の後方側被取付部の部分を拡大した部分拡大断面図であり、貯水タンクの小タンク後方側取付部がタンク取付部材の後方側被取付部に上方から係合した後、後方に移動される前の状態(係止前状態)を示す。
一方、図13Dは、本発明の第1実施形態による水洗大便器における貯水タンクの小タンク後方側取付部及びタンク取付部材の後方側被取付部の部分を拡大した図13Cと同様な部分拡大断面図であり、貯水タンクの小タンク後方側取付部がタンク取付部材の後方側被取付部に上方から係合した後、後方に移動されて位置決めが完了した状態(位置決め完了状態)を示す。
【0042】
まず、図12図13A図13C及び図14Aに示すように、貯水タンク10の各後方側取付部66,68は、タンク本体40の底面から下方に突出しており、その下端がタンク取付部材48の各後方側被取付部74,76内の底面に接触可能な足部となっている。
また、貯水タンク10における各後方側取付部66,68の周囲の防露材42は切り欠かれており、各後方側取付部66,68の下端(足部の底面)が、貯水タンク10の底面56a,62a(防露材42の底面42c)よりもわずかに下方に位置している。
さらに、各後方側取付部66,68の下端部(足部)には、タンク取付部材48の各後方側被取付部74,76に係止される係止部(取付側係止部66a,68a)が設けられている。
一方、図13A図13Dに示すように、タンク取付部材48の各後方側被取付部74,76は、貯水タンク10の各後方側取付部66,68全体を上方から受け入れ可能に凹状に形成されており、その後方側には、貯水タンク10の各後方側取付部66,68の各取付側係止部66a,68aと共に互いに係止可能な係止部(被取付側係止部74a,76a)が設けられている。
つぎに、図12及び図13A図13Dに示すように、貯水タンク10の各係止部66a,68aは、各取付部66,68の底部後端から後方に突出する係止突起66b,68bと、この係止突起66b,68bとその上方のタンク本体40の底面40eとの間に形成される係止凹部66c,68cと、をそれぞれ備えている。
また、図13A図13Dに示すように、タンク取付部材48の各係止部74a,76aは、ベースプレート50の後端近傍から上方に突出する係止突起74b,76bをそれぞれ備えている。
【0043】
ここで、図13Aに示すように、便器本体2の後方に固定されているタンク取付部材48に対して貯水タンク10が上方から取り付けられた際、貯水タンク10の大タンク後方側取付部66の底面は、上方からタンク取付部材48の後方側被取付部74の底面に接触して互いが係合している状態となっている。
しかしながら、図13Aに示すように、貯水タンク10の大タンク後方側取付部66の取付側係止部66aと、これと対応するタンク取付部材48の後方側被取付部74の被取付側係止部74aとが互いに係止されていないため、貯水タンク10の大タンク後方側取付部66の取付側係止部66aが、これと対応するタンク取付部材48の後方側被取付部74の被取付側係止部74aに対して位置決めされていない状態(位置決め前状態)となっている。
そして、貯水タンク10がタンク取付部材48に対して後方に移動された際には、図13Aに示す状態の貯水タンク10の大タンク後方側取付部66がタンク取付部材48の後方側被取付部74に対して後方(図13Aに示す矢印R方向)に移動されるようになっている。
これにより、図13Bに示すように、貯水タンク10の大タンク後方側取付部66の取付側係止部66aと、これと対応するタンク取付部材48の後方側被取付部74の被取付側係止部74aとが互いに係止されるようになっている。
すなわち、図13Bに示すように、貯水タンク10の大タンク後方側取付部66の取付側係止部66aの係止突起66bの後端部は、タンク取付部材48の後方側被取付部74の被取付側係止部74aの係止突起74bの前面に当接するようになっている。
このとき、タンク取付部材48の後方側被取付部74の被取付側係止部74aの前端部は、貯水タンク10の大タンク後方側取付部66の取付側係止部66aの係止凹部66c内に嵌合されるようになっている。
これらの結果、図13Bに示すように、貯水タンク10の大タンク後方側取付部66の各取付側係止部66aは、タンク取付部材48の各後方側被取付部74の各被取付側係止部74aに対して位置決めされた状態(位置決め完了状態)となっている。
【0044】
つぎに、図13Cに示すように、便器本体2の後方に固定されているタンク取付部材48に対して貯水タンク10が上方から取り付けられた際、貯水タンク10の小タンク後方側取付部68の底面は、その下方に位置するタンク取付部材48の後方側被取付部76の底面に対して接触することなく、隙間G0が形成されている状態となっている。
しかしながら、図13Cに示すように、貯水タンク10の小タンク後方側取付部68の取付側係止部68aと、これと対応するタンク取付部材48の後方側被取付部76の被取付側係止部76aとが互いに係止されていないため、貯水タンク10の小タンク後方側取付部68の取付側係止部68aが、これと対応するタンク取付部材48の後方側被取付部76の被取付側係止部76aに対して位置決めされていない状態(位置決め前状態)となっている。
そして、貯水タンク10がタンク取付部材48に対して後方に移動された際には、図13Cに示す状態の貯水タンク10の小タンク後方側取付部68がタンク取付部材48の後方側被取付部76に対して後方(図13Cに示す矢印R方向)に移動されるようになっている。
これにより、図13Dに示すように、貯水タンク10の小タンク後方側取付部68の取付側係止部68aと、これと対応するタンク取付部材48の後方側被取付部76の被取付側係止部76aとが互いに係止されるようになっている。
すなわち、図13Dに示すように、貯水タンク10の小タンク後方側取付部68の取付側係止部68aの係止突起68bの後端部は、タンク取付部材48の後方側被取付部76の被取付側係止部76aの係止突起76bの前面に当接するようになっている。
このとき、タンク取付部材48の後方側被取付部76の被取付側係止部76aの前端部は、貯水タンク10の小タンク後方側取付部68の取付側係止部68aの係止凹部68c内に嵌合されるようになっている。
これらの結果、図13Dに示すように、貯水タンク10の小タンク後方側取付部68の各取付側係止部68aは、タンク取付部材48の後方側被取付部76の被取付側係止部76aに対して位置決めされた状態(位置決め完了状態)となっている。
このとき、貯水タンク10の小タンク後方側取付部68の底面は、その下方に位置するタンク取付部材48の後方側被取付部76の底面に対して接触することなく、隙間G0が形成されている状態が維持されている。
【0045】
さらに、図13A図13Dに示すように、タンク取付部材48の各後方側被取付部74,76の各係止部74a,76aの各係止突起74b,76bは、その上端から前方に向かって斜め下方に傾斜する傾斜面74c,76cをそれぞれ備えている。
これにより、貯水タンク10の各後方側取付部66,68が上方からタンク取付部材48の各後方側被取付部74,76各取付部74,76に取り付けられる際、万一、貯水タンク10の各取付部66,68の各取付部66,68が上方からタンク取付部材48の各被取付部74,76の係止突起74b,76bの上端や傾斜面74c,76cに載った状態になっても、この傾斜面74c,76cが貯水タンク10の各取付部66,68の係止部66a,68aを後方から前方のタンク取付部材48の各被取付部74,76の範囲内に導くガイド面として機能するようになっている。
【0046】
つぎに、図14Aは、図11に示す本発明の第1実施形態による水洗大便器において、貯水タンクの前方側取付部及びタンク取付部材の前方側被取付部の部分を拡大した部分拡大断面図であり、貯水タンクの前方側取付部がタンク取付部材の前方側被取付部に上方から係合した後、後方に移動される前の状態(位置決め前状態)を示す。
一方、図14Bは、図14Aと同様な部分拡大断面図であり、貯水タンクの後方側取付部がタンク取付部材の後方側被取付部に上方から係合した後、後方に移動されて位置決めが完了した状態(位置決め完了状態)を示す。
図14A及び図14Bに示すように、貯水タンク10の各前方側取付部70,72、及び、これらと対応するタンク取付部材48の各前方側被取付部78,80は、互いにねじ固定が可能なねじ固定部(以下「タンク取付部材48のねじ固定部70,72」、「貯水タンク10のねじ固定部78,80」と呼ぶ)となっている。
具体的には、図14A及び図14Bに示すように、タンク取付部材48の各ねじ固定部78,80は、ベースプレート50の前方領域において左右両側から上方に突出する突出部78a,80aを備えており、その内部には上下方向に貫くねじ穴(下側ねじ穴78b,78b)が形成されている。
【0047】
一方、図14A及び図14Bに示すように、貯水タンク10の各ねじ固定部70,72の下方には、タンク取付部材48の各ねじ固定部78,80の突出部78a,80aが下側から挿入可能な嵌合凹部70a,72aが設けられている。
また、貯水タンク10の各嵌合凹部70a,72aは、タンク取付部材48の各ねじ固定部78,80の突出部78a,80aの前後方向の寸法よりも大きく形成されている。 これにより、貯水タンク10の各嵌合凹部70a,72aとタンク取付部材48の各ねじ固定部78,80の突出部78a,80aとが嵌合(係合)した状態では、貯水タンク10の各ねじ固定部70,72がタンク取付部材48の各ねじ固定部78,80に対して前後方向に摺動可能となっている。
【0048】
さらに、貯水タンク10の各ねじ固定部70,72の各嵌合凹部70a,72aの上方部分には、上下方向に貫くねじ穴(上側ねじ穴70b,72b)が形成されている。
ここで、図14Aに示すように、貯水タンク10の各前方側取付部70,72が上方からタンク取付部材48の各前方側被取付部78,80に取り付けられて係合した後、後方に移動される前の状態(位置決め前状態)においては、貯水タンク10の各ねじ固定部70,72の各嵌合凹部70a,72aの前端70c,72cが、タンク取付部材48の各ねじ固定部78,80の突出部78a,80aの前端78c,80cに対して離間している。
このとき、図14Aに示すように、貯水タンク10の各ねじ固定部70,72の各上側ねじ穴70b,72bの中心軸線C1は、タンク取付部材48の各ねじ固定部78,80の各下側ねじ穴78b,80bの中心軸線C2よりも前方に位置しており、各上側ねじ穴70b,72bと各下側ねじ穴78b,80bとが互いに一致していない状態となっている。
【0049】
そして、貯水タンク10がタンク取付部材48に対して後方に移動された際には、図14Aに示す状態の貯水タンク10の各ねじ固定部70,72がタンク取付部材48の各後方側被取付部74,76に対して後方(図14Aに示す矢印R方向)に移動されるようになっている。
これにより、図14Bに示すように、貯水タンク10の各ねじ固定部70,72の各嵌合凹部70a,72aの前端70c,72cがタンク取付部材48の各ねじ固定部78,80の突出部78a,80aの前端78c,80cに当接するようになっている。
このとき、図14Bに示すように、貯水タンク10の各ねじ固定部70,72の各上側ねじ穴70b,72bの中心軸線C1がタンク取付部材48の各ねじ固定部78,80の各下側ねじ穴78b,80bの中心軸線C2と一致し、貯水タンク10の各ねじ固定部70,72とタンク取付部材48の各ねじ固定部78,80との位置決めが完了されるようになっている。
そして、互いが一致している各上側ねじ穴70b,72b及び各下側ねじ穴78b,80bに対して共通のねじ部材82(図7図9参照)により締結されると、貯水タンク10の各ねじ固定部70,72がタンク取付部材48の各ねじ固定部78,80に対して固定されるようになっている。
【0050】
これらの結果、図13A図14Bに示すように、これらの貯水タンク10の各取付部66,68,70,72と、これらと対応するタンク取付部材48の被取付部74,76,78,80とが互いに取り付けられる際には、貯水タンク10の各後方側取付部66,68の各取付側係止部66a,68aとこれらと対応するタンク取付部材48の各後方側被取付部74,76の各被取付側係止部74a,76aとの2箇所が係止されることにより、タンク取付部材48に対する貯水タンク10の取付性を向上させることができると共に、ねじ部材82によって固定される貯水タンク10の各前方側取付部(ねじ固定部)70,72とこれらと対応するタンク取付部材48の各前方側取付部(ねじ固定部)78,80との位置決めを容易にしている。
また、貯水タンク10の各取付部66,68,70,72と、これらと対応するタンク取付部材48の被取付部74,76,78,80とが互いに取り付けられた状態では、貯水タンク10の大タンク後方側取付部66の底面がタンク取付部材48の後方側被取付部74の底面に接触している一方、貯水タンク10の小タンク後方側取付部68の底面については、その下方に位置するタンク取付部材48の後方側被取付部76の底面に対して接触することなく、隙間G0が形成されている状態が維持された状態となっている。
これらにより、貯水タンク10の小タンク後方側取付部68の底面と、その下方に位置するタンク取付部材48の後方側被取付部76の底面とを接触させて固定した構造に比べて、貯水タンク10が過剰にねじれた姿勢でタンク取付部材48に対して固定されることを抑制することができると共に、貯水タンク10が長期的な観点からも強度不足になることを抑制することができるようになっている。
また、タンク取付部材48に対して取り付けられた状態の貯水タンク10において、その満水状態における貯水タンク10の重心O(図4図8及び図9参照)の位置が、貯水タンク10の上下、前後及び左右のそれぞれの方向に対して非対称の位置に片寄っており、容量の大きい大タンク部44側に傾いたとしても、貯水タンク10の大タンク後方側取付部66の底面とタンク取付部材48の後方側被取付部74の底面との隙間がなく(或いは、小タンク後方側取付部68側よりも隙間が小さく)、貯水タンク10の大タンク後方側取付部66の底面に着地している(或いは、すぐに着地することができるようになっている)。これにより、貯水タンク10が傾いたときの変形量も小さく抑えることができようになっている。
【0051】
さらに、図3図5及び図7図9に示すように、貯水タンク10の上タンク部材T1には、変形抑制支持部材であるポンプPにより支持される被支持部である単一の被支持穴84及び一対の被支持突起86,86がそれぞれ設けられているが、下タンク部材T2には設けられていない。
具体的には、貯水タンク10の上タンク部材T1の単一の被支持穴84は、貯水タンク10の大タンク部44の内側壁面44cにおいて便器本体2の水平左右方向に貫くように形成されており、ポンプPのポンプ接続管36の上流端36aが接続されている。
これにより、ポンプPのポンプ接続管36の上流端36aは、貯水タンク10の被支持穴84を固定する第1支持部となっている。
ここで、図3図5及び図7図9に示すように、貯水タンク10の被支持部である被支持穴84及び被支持突起86,86のうちの被支持穴84については、貯水タンク10の凹状領域Iに配置されている。
一方、図3及び図4に示すように、ポンプPは、さらに、ポンプ本体30の左右一端側(便器本体2を正面側から見て左側)に設けられていると共に軸方向外側に突出する一対の支持部材88,88と、これら支持部材88,88のそれぞれに取り付けられる固定ねじ90,90と、をそれぞれ備えている。
これにより、貯水タンク10の上タンク部材T1の一対の被支持突起86,86は、ポンプPの一対の支持部材88,88に対して固定ねじ90,90によって固定されている。
すなわち、ポンプPの一対の支持部材88,88及び固定ねじ90,90のそれぞれは、貯水タンク10の一対の被支持突起86,86を固定する第2支持部となっている。
また、貯水タンク10の被支持穴84に接続されるポンプPのポンプ接続管36の上流端36a、並びに、貯水タンク10の一対の被支持突起86,86に固定されるポンプPのポンプ本体30の少なくとも一部は、貯水タンク10の凹状領域Iに配置された状態で、貯水タンク10の大タンク部44と小タンク部46との間を支持することができると共に、貯水タンク10の変形(特に、凹状領域Iの変形)を抑制することができるようになっている。
【0052】
また、図4及び図9に示すように、貯水タンク10の被支持穴84及び被支持突起86,86は、満水状態の貯水タンクの重心Oの位置に対して一致しない位置に配置されている。
より具体的には、図4及び図9に示すように、貯水タンク10の被支持穴84は、便器本体2の正面側から見た貯水タンクの重心Oの位置よりも右側、かつ、後方側、かつ、上側に配置されている。
一方、図4及び図9に示すように、貯水タンク10の被支持突起86,86のそれぞれは、便器本体2の正面側から見た貯水タンクの重心Oの位置よりも左側、かつ、前側及び後側のそれぞれに、かつ、上側に配置されている。
これらにより、上述したポンプPの第1支持部(ポンプ接続管36の上流端36a)並びに第2支持部(支持部材88,88及び固定ねじ90,90)のそれぞれは、貯水タンク10の重心Oの位置よりも前後及び左右における一方側及び他方側のそれぞれの領域において配置され、貯水タンク10の重心Oを取り囲むように配置されている。
【0053】
なお、変形抑制支持部材であるポンプPのポンプ接続管36は、可撓性ホース部材よりも高い剛性を有する材料で形成されている。
そして、ポンプ接続管36の上流端36aは、貯水タンク10の被支持穴84に対して直接的に固定されるようになっている。
【0054】
つぎに、図7図9に示すように、上方から複数(4つ)のねじ54で固定されるベースプレート50の底面のそれぞれの箇所には、防振部材であるほぼ円筒状のゴムブッシュBがそれぞれ設けられている。
これにより、貯水タンク10は、ベースプレート50及び各ゴムブッシュBを介して便器本体2に対して固定されるようになっている。
【0055】
つぎに、図1図14Bを参照して、上述した本発明の第1実施形態による水洗大便器1の作用について説明する。
まず、本発明の第1実施形態による水洗大便器1によれば、タンク装置4の貯水タンク10が便器本体2の後方かつ床面Fよりも上方に設置された状態では、貯水タンク10の形状が大タンク部44と小タンク部46により上下、前後及び左右の非対称な形状であるため、貯水タンク10内に貯留される洗浄水の重量により貯水タンク10が変形しやすい状態となっている。
これに対し、本実施形態では、貯水タンク10に設けられた変形抑制支持部材であるポンプPにより、便器本体2に設置された状態の貯水タンク10を支持しながら貯水タンク10の変形を抑制することができる。
したがって、例えば、便器本体2に設置された状態の貯水タンク10自体が水密に接合される接合部分(上タンク部材T1の下縁接合部10b、下タンク部材T2の上縁接合部10c)を備えているものや、貯水タンク10に対して水密に接続される接続要素(水受けハウジング24)が設けられているものであっても、これらの貯水タンク10における接合部分(上タンク部材T1の下縁接合部10b、下タンク部材T2の上縁接合部10c)や接続要素(水受けハウジング24等)との接続部等が変形して貯水タンク10内の洗浄水が漏水してしまうことを抑制することができる。
これらの結果、タンク装置4の信頼性を確保することができる。
【0056】
また、本実施形態による水洗大便器1によれば、便器本体2に設置された状態の貯水タンク10が上下、前後及び左右の非対称な形状により重心Oとのバランスが不安定となって変形しやすい状態となる。
しかしながら、貯水タンク10の被支持部(被支持穴84、被支持突起86)が、貯水タンク10の重心Oの位置に対して一致しない位置に配置され、変形抑制支持部材であるポンプP(ポンプ接続管36の上流端36a、支持部材88、固定ねじ90)により支持されるため、貯水タンク10の変形を効果的に抑制することができる。
【0057】
さらに、本実施形態による水洗大便器1によれば、変形抑制支持部材(ポンプP)の第1支持部(ポンプ接続管36の上流端36a)及び第2支持部(支持部材88、固定ねじ90)のそれぞれが、貯水タンク10の重心Oの位置よりも前後及び左右における一方側及び他方側のそれぞれに配置された貯水タンク10の第1被支持部(被支持穴84)及び第2被支持部(被支持突起86)のそれぞれを固定することができる。
これにより、貯水タンク10が便器本体2に設置された状態において、上下、前後及び左右の非対称な形状の貯水タンク10により重心Oとのバランスが不安定となって変形しやすい状態であっても、貯水タンク10の変形をより効果的に抑制することができる。
【0058】
また、本実施形態による水洗大便器1によれば、便器本体2の後方の限られたスペースに設置される貯水タンク10は、貯留される洗浄水量を確保しつつ小型化が要求されているため、上下、前後及び左右の非対称な形状となっている。
また、特に、貯水タンク10の大タンク部44及び小タンク部46のそれぞれの内側壁面44c,46cにより凹状に取り囲まれるように形成された貯水タンク10の凹状領域Iは、貯水タンク10の形状を複雑化すると共に、貯水タンク10が便器本体2に設置された状態で変形しやすい状態となっている。
そこで、本実施形態では、変形抑制支持部材(ポンプP)が貯水タンク10の被支持部(被支持穴84及び被支持突起86)を支持することにより、複雑な形状で変形しやすい貯水タンク10の凹状領域Iの変形を効果的に抑制することができる。
これらの結果、貯水タンク10の容量を大きく確保しつつ小型化を実現することができる。また、貯水タンク10からの漏水も抑制し、タンク装置4の信頼性を確保することができる。
【0059】
さらに、本実施形態による水洗大便器1によれば、貯水タンク10の被支持部である被支持穴84及び被支持突起86,86のうちの被支持穴84について、貯水タンク10の凹状領域Iに配置することができる。
また、貯水タンク10の被支持穴84に接続されるポンプPのポンプ接続管36の上流端36a、並びに、貯水タンク10の一対の被支持突起86,86に固定されるポンプPのポンプ本体30の少なくとも一部が、貯水タンク10の凹状領域Iに配置された状態で、貯水タンク10の大タンク部44と小タンク部46との間を支持することができる。
これにより、便器本体2に設置された状態の貯水タンク10の変形(特に、貯水タンク10の凹状領域Iの変形)を効率良く抑制することができると共に、貯水タンク10の容量を大きく確保しつつ小型化を実現することができる。
これらの結果、タンク装置4の信頼性を確保しつつ、タンク装置4の全体についても小型化することができ、水洗大便器1の全体についても小型化することができる。
【0060】
また、本実施形態による水洗大便器1によれば、貯水タンク10内の洗浄水を便器本体2に圧送するタンク装置4のポンプPを変形抑制支持部材として兼用することができるため、ポンプP以外の変形抑制支持部材を別途に設ける必要がなく、タンク装置4の全体について小型化することができる。
これにより、水洗大便器1の全体についても小型化することができる。
【0061】
さらに、本実施形態による水洗大便器1によれば、貯水タンク10内の洗浄水を便器本体2に圧送するポンプPは、一般的には、作動に伴って振動を発生するものであるため、このようなポンプPを貯水タンク10に対して固定する際には、ポンプPと貯水タンク10との固定部分に防振部材等を設けることが好ましい。
しかしながら、このようにポンプPと貯水タンク10との固定部分に防振部材等を設けた場合には、便器本体2に設置された状態の貯水タンク10がその内部の洗浄水の重量等により変形しようとした際に、防振部材の干渉等により、却ってポンプP自体の変形抑制支持部材としての機能が果たせなくなるおそれがある。
これに対し、本実施形態では、ポンプPのポンプ接続管36の上流端36aが貯水タンク10の被支持穴84に対して直接的に固定される。一方、貯水タンク10は、防振部材(ゴムブッシュB)及びタンク取付部材48のベースプレート50を介して便器本体2に対して固定される。
これらにより、便器本体2に設置された状態の貯水タンク10の変形を抑制しつつ、貯水タンク10と便器本体2との間の防振部材(ゴムブッシュB)及びタンク取付部材48のベースプレート50が、ポンプPから発生した振動がタンク装置4と便器本体2との間で伝達されることを効果的に抑制することができる。
【0062】
また、本実施形態による水洗大便器1によれば、例えば、ポンプPのポンプ室30aと貯水タンク10とを接続するポンプ接続管36として可撓性ホース部材を採用した場合には、ポンプPや貯水タンク10の周辺においてホース部材の可撓性を考慮した取り回しの空間が必要になる。
これに対し、本実施形態においては、ポンプ接続管36が可撓性ホース部材よりも高い剛性を有する材料で形成されているため、ポンプPや貯水タンク10の周辺においてポンプ接続管36の取り回しのための空間が不要となる。
よって、その分、貯水タンク10のタンク容量を大きく確保しつつ、タンク装置4の全体を小型化することができる。また、水洗大便器1の全体についても小型化することができる。
さらに、ポンプPのポンプ接続管36が可撓性ホース部材よりも高い剛性を有することにより、ポンプPの作動時におけるポンプ接続管36自体の振動や変形(曲げ、ねじり、たわみ等の弾性変形)等についても抑制することができる。
よって、便器本体2に設置された状態の貯水タンク10の変形について、ポンプP以外の変形抑制支持部材を別途に設けることなく抑制することができる。
また、ポンプPのポンプ接続管36がポンプ室30aから上流側に向かって貯水タンク10の左右方向に延びた後、その上流端36aが貯水タンク10の被支持穴84と接続される。これにより、タンク装置4の前出寸法を短くすることができると共に、水洗大便器1の全体の前出寸法も短くすることができる。
これらの結果、貯水タンク10の容量を大きく確保しつつ、タンク装置4の全体及び水洗大便器1の全体の小型化を実現することができる。
【0063】
さらに、本実施形態による水洗大便器1によれば、便器本体2の排水トラップ管2bが、平面視において、ボウル部2aに接続される入口部2hからボウル部2aよりも後方の出口部2iに向かって前後方向に延びている。そして、この便器本体2の排水トラップ管2bの上部に対して、貯水タンク10を左右両側及び後方側から取り囲むように配置することができる(図4図8及び図9参照)。
したがって、便器本体2の後方における排水トラップ管2bの上部周辺の限られたスペースを有効活用して、貯水タンク10及びポンプPを互いに隣接させて効率よく配置することができる。
したがって、タンク装置4の前出寸法を短くすることができると共に、水洗大便器1の全体の前出寸法も短くすることができるため、貯水タンク10の容量をより大きく確保しつつ、水洗大便器1の全体を小型化することができる。
【0064】
また、本実施形態による水洗大便器1によれば、変形抑制支持部材(ポンプP)により支持される貯水タンク10の被支持部(被支持穴84、被支持突起86)について、上下方向に互いに接合される貯水タンク10の上タンク部(上タンク部材T1)及び下タンク部(下タンク部材T2)のうちの上タンク部(上タンク部材T1)設けることにより、下タンク部(下タンク部材T2)よりも多く設けることができる。
したがって、変形抑制支持部材(ポンプP)により支持される貯水タンク10の被支持部(被支持穴84、被支持突起86)について、貯水タンク10の上タンク部(上タンク部材T1)側に可能な限り集約化させることができる。
よって、貯水タンク10を便器本体2に対して組み付けた後に、貯水タンク10の被支持部(被支持穴84、被支持突起86)を変形抑制支持部材(ポンプP)で支持した際に、特に、貯水タンク10の上タンク部(上タンク部材T1)の変形を効果的に抑制することができる。
これにより、貯水タンク10の上タンク部(上タンク部材T1)に接合される下タンク部(下タンク部材T2)の変形についても効果的に抑制することができ、貯水タンク10の全体の変形についても効果的に抑制することができる。
また、下タンク部(下タンク部材T2)については、貯水タンク10内の洗浄水量の大小に関わらず、洗浄水の重量を下側から安定して支持することができるため、上タンク部(上タンク部材T1)に比べて変形が生じ難い。
一方、上タンク部(上タンク部材T1)は、貯水タンク10内の洗浄水量に応じて貯水タンク10の重心Oの位置が変動するため、下タンク部(下タンク部材T2)に比べて、貯水タンク10の重心Oの位置の変動による影響を受けやすく、変形が生じやすい。
よって、貯水タンク10の被支持部(被支持穴84、被支持突起86)についても、下タンク部(下タンク部材T2)よりも上タンク部(上タンク部材T1)に対して多く設けた方が、変形抑制支持部材(ポンプP)により貯水タンク10を安定して支持することができるため、貯水タンク10の変形をより効果的に抑制することができる。
さらに、貯水タンク10の被支持部(被支持穴84、被支持突起86)を下タンク部(下タンク部材T2)よりも上タンク部(上タンク部材T1)に対して多く設けた方が、下タンク部(下タンク部材T2)の下方スペース等を有効活用することができるため、水洗大便器1の全体について、小型化することができると共に、ローシルエット化を実現することもできる。
【0065】
つぎに、図15を参照して、本発明の第2実施形態による水洗大便器について説明する。
図15は、本発明の第2実施形態による水洗大便器における図4と同様な正面断面図である。
ここで、図15に示す本発明の第2実施形態による水洗大便器100において、図4に示す本発明の第1実施形態による水洗大便器1の部分と同一部分については同一の符号を付し、これらの説明については省略する。
図15に示すように、本発明の第2実施形態による水洗大便器100においては、便器本体2に設置された状態の貯水タンク10を支持することにより貯水タンク10の変形を抑制する変形抑制支持部材として、上述した第1実施形態の水洗大便器1のポンプPに加えて、貯水タンク10の被支持部(下方側大タンク部60の底面60a)を下方から支持する支持部材130を備えている。
すなわち、この変形抑制支持部材である支持部材130は、便器本体2の下方かつ左右一方側(図15の便器本体2の正面側から見て右側)に設けられた台座面2kと貯水タンク10の下方側大タンク部60の底面60aとの間のスペース内に設けられている。
この支持部材130は、より具体的には、便器本体2の台座面2kに設置される下方の支持足部130aと、この支持足部130aから上方に延びる支脚部130bと、この支脚部130bの上端に設けられて貯水タンク10の下方側大タンク部60の底面60aを下側から支持する支持受け部130cと、を備えている。
これらの支持部材130の各部130a,130b,130cにより、便器本体2に設置された状態の貯水タンク10の下方側大タンク部60の底面60aが下方から支持され、貯水タンク10の変形が抑制されるようになっている。
【0066】
上述した本発明の第2実施形態による水洗大便器100によれば、便器本体2の台座面2kと貯水タンク10の下方側大タンク部60の底面60aとの間のスペース内に設けられた支持部材130が、変形抑制支持部材であるポンプPとは別途に、便器本体2に設置された状態の貯水タンク10を下方から支持しながら貯水タンク10の変形を抑制することができる。よって、貯水タンク10の全体の変形をさらにより効果的に抑制することができる。
【0067】
つぎに、図16を参照して、本発明の第3実施形態による水洗大便器について説明する。
図16は、本発明の第3実施形態による水洗大便器における図4と同様な正面断面図である。
ここで、図16に示す本発明の第3実施形態による水洗大便器200において、図4に示す本発明の第1実施形態による水洗大便器1の部分と同一部分については同一の符号を付し、これらの説明については省略する。
図16に示すように、本発明の第3実施形態による水洗大便器200においては、便器本体2に設置された状態の貯水タンク10を支持することにより貯水タンク10の変形を抑制する変形抑制支持部材として、上述した第1実施形態の水洗大便器1のポンプPに加えて、貯水タンク10の被支持部(下方側大タンク部60の内側壁面60b)を内側から支持する支持部材230を備えている。
すなわち、この変形抑制支持部材である支持部材230は、便器本体2の排水トラップ管2bの左右一方側(図16の便器本体2の正面側から見て右側)に設けられた後方外側壁面2lと貯水タンク10の下方側大タンク部60の内側壁面60bとの間のスペース内に設けられており、かつ、タンク取付部材48の一部に上下方向に延びるように配置されている。
【0068】
上述した本発明の第3実施形態による水洗大便器200によれば、便器本体2の後方外側壁面2lと貯水タンク10の下方側大タンク部60の内側壁面60bとの間のスペース内に設けられたタンク取付部材48の支持部材230が、変形抑制支持部材であるポンプPとは別途に、便器本体2に設置された状態の貯水タンク10を内側から支持しながら貯水タンク10の変形を抑制することができる。よって、貯水タンク10の全体の変形をさらにより効果的に抑制することができる。
【0069】
つぎに、図17を参照して、本発明の第4実施形態による水洗大便器について説明する。
図17は、本発明の第4実施形態による水洗大便器における図4と同様な正面断面図である。
ここで、図17に示す本発明の第4施形態による水洗大便器300において、図4図15及び図16にそれぞれ示す本発明の第1~第3実施形態による水洗大便器1,100,200の部分と同一部分については同一の符号を付し、これらの説明については省略する。
図17に示すように、本発明の第4実施形態による水洗大便器300においては、便器本体2に設置された状態の貯水タンク10を支持することにより貯水タンク10の変形を抑制する変形抑制支持部材として、上述した第1~第3実施形態の水洗大便器1,100,200におけるポンプP及び支持部材130,230をすべて備えている形態となっている。
これにより、便器本体2に設置された状態の貯水タンク10の被支持部(被支持穴84、被支持突起86)について、ポンプPによって支持することにより貯水タンク10の変形を抑制することができると共に、貯水タンク10の他の被支持部である下方側大タンク部60の底面60a及び内側壁面60bのそれぞれについて、支持部材130,230のそれぞれによって支持することにより、貯水タンク10の全体の変形をさらにより効果的に抑制することができる。
【0070】
なお、上述した本発明の第1~第4実施形態による水洗大便器1,100,200,300においては、貯水タンク10の形状について、大タンク部44と小タンク部46により上下、前後及び左右の非対称な形状である形態について説明したが、大タンク部44と小タンク部46により前後又は左右のいずれか一方が非対称な形状であればよい。
【0071】
また、上述した本発明の第1~第4実施形態による水洗大便器1,100,200,300においては、特に、便器本体2に設置された状態の貯水タンク10における上タンク部材T1の凹状領域Iにおける変形を抑制する変形抑制支持部材の1つとして、ポンプPを採用している形態について説明した。
しかしながら、他の形態として、変形抑制支持部材として、ポンプPとは別に、貯水タンク10の上タンク部材T1における大タンク部44と小タンク部46との間の凹状領域Iに対して左右方向に架橋するような支持部材を設けてもよい。
これにより、便器本体2に設置された状態の貯水タンク10の上タンク部材T1の凹状領域Iの変形をさらにより効果的に抑制することができる。
【符号の説明】
【0072】
1 本発明の第1実施形態による水洗大便器
2 便器本体
2a ボウル部
2b 排水トラップ管(排水トラップ部)
2c リム部
2d リム導水路
2e リム導水路の入口(リム導水路の入口部)
2f リム吐水口
2g リム部の上面
2h 排水トラップ管の入口部
2i 排水トラップ管の出口部
2j 支持面
2k 台座面
2l 後方外側壁面
4 タンク装置
6 給水管
6a 給水ノズル(給水部)
8 吐水管
8a 吐水管の出口部(洗浄水供給管の出口部)
10 貯水タンク
10a 通水口(上方開口部)
10b 上タンク部材の下縁接合部
10c 下タンク部材の上縁接合部
10d 下タンク部材の後方側の底面
10e 下タンク部材の内側面
10f 下タンク部材の内側面
12 止水栓
14 バルブユニット
16 定流量弁
17 ダイヤフラム弁
18 電磁弁
20 連結ユニット
22 タンクユニット
24 水受けハウジング
24a 下方開口部
24b オーバーフロー口
26 オーバーフロー管
28 逆止弁
30 ポンプ本体(変形抑制支持部材)
30a ポンプ室
30b 駆動部
32 フロートスイッチ
34 水抜き栓
36 ポンプ接続管(ポンプの接続管、変形抑制支持部材)
36a ポンプ接続管の上流端(第1支持部)
38 吸引管
38a 吸引管の下流端
40 タンク本体
40a 上側タンク本体
40b 下側タンク本体
40c 上側タンク本体の下縁接合部
40d 下側タンク本体の上縁接合部
40e タンク本体の底面
42 防露材
42a 上側防露材
42b 下側防露材
42c 防露材の底面
44 大タンク部
44a 大タンク部の底面
44b 大タンク部の上面
44c 大タンク部の内側壁面
46 小タンク部
46a 小タンク部の底面
46b 小タンク部の上面
46c 小タンク部の内側壁面
48 タンク取付部材
50 ベースプレート(ベース部)
52 背面側支持プレート
54 ねじ
56 後方側大タンク部
56a 後方側大タンク部の底面
58 前方側大タンク部
58a 前方側大タンク部の前端
58b 前方側大タンク部の内側面
60 下方側大タンク部
60a 下方側大タンク部の底面
60b 下方側大タンク部の内側壁面
62 後方側小タンク部
62a 後方側小タンク部の底面
64 前方側小タンク部
64a 前方側小タンク部の前端
64b 前方側小タンク部の底面
64c 前方側小タンク部の内側面
66 貯水タンクの大タンク後方側取付部
66a 取付側係止部
66b 係止突起
66c 係止凹部
68 貯水タンクの小タンク後方側取付部
68a 取付側係止部
68b 係止突起
68c 係止凹部
70 貯水タンクの前方側取付部
70a 嵌合凹部
70b 上側ねじ穴
70c 嵌合凹部の前端
72 貯水タンクの前方側取付部
72a 嵌合凹部
72b 上側ねじ穴
74 タンク取付部材の後方側被取付部
74a 被取付側係止部
74b 係止突起
74c 傾斜面
76 タンク取付部材の後方側被取付部
76a 被取付側係止部
76b 係止突起
76c 傾斜面
78 タンク取付部材の前方側被取付部
78a 突出部
78b 下側ねじ穴
78c 突出部の前端
80 タンク取付部材の前方側被取付部
80a 突出部
80b 下側ねじ穴
80c 突出部の前端
82 ねじ部材
84 貯水タンクの被支持穴(被支持部)
86 貯水タンクの被支持突起(被支持部)
88 支持部材(第2支持部)
90 固定ねじ(第2支持部)
100 本発明の第2実施形態による水洗大便器
130 支持部材(変形抑制支持部材)
130a 支持足部
130b 支脚部
130c 支持受け部
200 本発明の第3実施形態による水洗大便器
300 本発明の第4実施形態による水洗大便器
A1 貯水タンクを左右中央で二分割する鉛直面
A2 貯水タンクの大タンク部の上面の最高面
A3 貯水タンクの大タンク部の上面における通水口が形成される面の外側周囲の面
A4 貯水タンクの小タンク部の上面
A5 貯水タンクの小タンク部の上面
B ゴムブッシュ(防振部材)
C1 上側ねじ穴の中心軸線
C2 下側ねじ穴の中心軸線
F 床面
G0 隙間
G1 段差
H1 大タンク部の最低位置と最高位置との間の鉛直方向距離
I 凹状領域
M1 貯水タンクの取付部(貯水タンクの固定部)
M2 タンク取付部材の被取付部
O 満水状態の貯水タンクの重心(貯水タンクの重心)
P ポンプ(変形抑制支持部材)
P0 貯水タンクの最低位置と最高位置との間の上下中央高さ位置
P1 大タンク部の底面の最低位置
P2 小タンク部の底面の最低位置
P3 大タンク部の上面の位置
P4 小タンク部の上面の位置
P5 前方側大タンク部の前端位置
P6 前方側小タンク部の前端位置
R 貯水タンクの各後方側取付部の移動方向
S1 便器本体の大タンク収容部
S2 便器本体の小タンク収容部
T1 貯水タンクの上タンク部材(上タンク部)
T2 貯水タンクの下タンク部材(下タンク部)
Ta 貯水タンクの上側タンク領域
Tb 貯水タンクの下側タンク領域
V1 大タンク部の容積
V2 小タンク部の容積
Va 貯水タンクの上側タンク領域の容積
Vb 貯水タンクの下側タンク領域の容積
W 外部壁面
W1 洗浄水
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図13C
図13D
図14A
図14B
図15
図16
図17