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特許7193787通信システム、ブリッジ装置、通信方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-13
(45)【発行日】2022-12-21
(54)【発明の名称】通信システム、ブリッジ装置、通信方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04L 47/28 20220101AFI20221214BHJP
   H04L 12/28 20060101ALI20221214BHJP
【FI】
H04L47/28
H04L12/28 200B
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021545569
(86)(22)【出願日】2020-09-09
(86)【国際出願番号】 JP2020034101
(87)【国際公開番号】W WO2021049526
(87)【国際公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-03-03
(31)【優先権主張番号】P 2019166067
(32)【優先日】2019-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】301022471
【氏名又は名称】国立研究開発法人情報通信研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】大西 健夫
(72)【発明者】
【氏名】中島 健智
(72)【発明者】
【氏名】大須賀 徹
(72)【発明者】
【氏名】板谷 聡子
(72)【発明者】
【氏名】丸橋 建一
(72)【発明者】
【氏名】児島 史秀
【審査官】宮島 郁美
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-301413(JP,A)
【文献】特表2014-502446(JP,A)
【文献】国際公開第2018/147285(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 47/28
H04L 12/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つ以上のデータ送信装置と、
少なくとも1つ以上のデータ受信装置と、
通信路を介して前記データ送信装置及び前記データ受信装置に接続され、前記データ送信装置から複数のフローを受信し、前記複数のフローを前記データ受信装置に転送する、1つ以上のブリッジ装置と、
前記複数のフローの必要帯域を算出する必要帯域算出部であって、前記複数のフローのうちバーストデータを含むフローについては、前記バーストデータのデータサイズと前記フローの許容遅延とに基づいて、前記フローの必要帯域を算出する必要帯域算出部と、
前記複数のフローの必要帯域に基づいて前記複数のフローの通信速度の相対比を算出する速度比算出部と、を備え、
前記ブリッジ装置は、前記複数のフローを前記通信速度の相対比に従って前記データ受信装置に転送する、
通信システム。
【請求項2】
前記必要帯域算出部は、
バーストデータを含むフローについては、前記バーストデータのデータサイズを前記フローの許容遅延で除算することにより、前記フローの必要帯域を算出する、
請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
前記必要帯域算出部は、
バーストデータを含むフローについては、前記フローの許容遅延から、前記ブリッジ装置におけるデータの送受信にかかるオーバヘッド遅延を減じることにより、前記フローの帯域依存型遅延を算出し、
バーストデータを含むフローについては、前記バーストデータのデータサイズを前記フローの帯域依存型遅延で除算することにより、前記フローの必要帯域を算出する、
請求項1又は2に記載の通信システム。
【請求項4】
前記必要帯域算出部は、
前記複数のフローの各々について、前記フローの前記必要帯域に補正量を付加し、さらに、前記フローの前記必要帯域に付加する前記補正量を、前記フローの前記許容遅延が大きいほど小さくなるように設定する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の通信システム。
【請求項5】
通信路を介して、少なくとも1つ以上のデータ送信装置及び少なくとも1つ以上のデータ受信装置に接続され、前記データ送信装置から複数のフローを受信し、前記複数のフローを前記データ受信装置に転送するブリッジ装置であって、
前記複数のフローの必要帯域が通知され、前記複数のフローの必要帯域に基づいて前記複数のフローの通信速度の相対比を算出する速度比算出部と、
前記データ送信装置から複数のフローを受信し、前記複数のフローを前記通信速度の相対比に従って前記データ受信装置に転送するデータ転送部と、を備え、
前記複数のフローのうちバーストデータを含むフローの必要帯域は、前記バーストデータのデータサイズと前記フローの許容遅延とに基づいて、算出されたものである、
ブリッジ装置。
【請求項6】
前記通信路の通信状況を観測し、前記複数のフローの必要帯域を算出する必要帯域算出部に対し、前記通信路の通信状況を通知する通信状況通知部をさらに備える、
請求項に記載のブリッジ装置。
【請求項7】
前記通信路の通信状況は、
前記データ受信装置に送信済みのデータのサイズ、前記データ受信装置に送信済みのデータの送信速度、他のブリッジ装置から受信したデータの各レイヤにおける到達状況、又は、他のブリッジ装置から受信したデータの受信速度、の少なくとも1つ以上を含む、
請求項に記載のブリッジ装置。
【請求項8】
少なくとも1つ以上のデータ送信装置と、少なくとも1つ以上のデータ受信装置と、通信路を介して前記データ送信装置及び前記データ受信装置に接続され、前記データ送信装置から複数のフローを受信し、前記複数のフローを前記データ受信装置に転送する、1つ以上のブリッジ装置と、を備える通信システムによる通信方法であって、
前記複数のフローの必要帯域を算出するステップであって、前記複数のフローのうちバーストデータを含むフローについては、前記バーストデータのデータサイズと前記フローの許容遅延とに基づいて、前記フローの必要帯域を算出するステップと、
前記複数のフローの必要帯域に基づいて前記複数のフローの通信速度の相対比を算出するステップと、
前記ブリッジ装置が、前記複数のフローを前記通信速度の相対比に従って前記データ受信装置に転送するステップと、を含む、
通信方法。
【請求項9】
通信路を介して、少なくとも1つ以上のデータ送信装置及び少なくとも1つ以上のデータ受信装置に接続され、前記データ送信装置から複数のフローを受信し、前記複数のフローを前記データ受信装置に転送するブリッジ装置による通信方法であって、
前記複数のフローの必要帯域が通知され、前記複数のフローの必要帯域に基づいて前記複数のフローの通信速度の相対比を算出するステップと、
前記データ送信装置から複数のフローを受信し、前記複数のフローを前記通信速度の相対比に従って前記データ受信装置に転送するステップと、を含み、
前記複数のフローのうちバーストデータを含むフローの必要帯域は、前記バーストデータのデータサイズと前記フローの許容遅延とに基づいて、算出されたものである、
通信方法。
【請求項10】
通信路を介して、少なくとも1つ以上のデータ送信装置及び少なくとも1つ以上のデータ受信装置に接続され、前記データ送信装置から複数のフローを受信し、前記複数のフローを前記データ受信装置に転送するブリッジ装置に実行させるためのプログラムであって、
前記プログラムは、
前記複数のフローの必要帯域が通知され、前記複数のフローの必要帯域に基づいて前記複数のフローの通信速度の相対比を算出する手順と、
前記データ送信装置から複数のフローを受信し、前記複数のフローを前記通信速度の相対比に従って前記データ受信装置に転送する手順と、を含み、
前記複数のフローのうちバーストデータを含むフローの必要帯域は、前記バーストデータのデータサイズと前記フローの許容遅延とに基づいて、算出されたものである、
プログラム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、通信システム、ブリッジ装置、通信方法、及び非一時的なコンピュータ可読媒体に関し、特に、工場や倉庫等の施設において、フローの通信要件(例えば、通信帯域、許容遅延等)を満たし、安定した通信を実現する通信システム、ブリッジ装置、通信方法、及び非一時的なコンピュータ可読媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
多数のセンサーやカメラ等が混在する工場や倉庫等の施設では、無線LAN(Local Area Network)をはじめとする多種多様のネットワークを構築した通信システムが導入されつつある。通信システムで構築されるネットワークは、単一ではなく、目的、時期が異なって導入されるため、独立して運用されることが多い。そのため、通信システムで構築されるネットワークは、互いに協調する仕組みがなく、無線周波数を効率的に利用することが難しい。工場内に敷設されるネットワークの通信ノードとしては、送受信機、スイッチ、ブリッジ、ルータ等がある。こうした通信ノードには、複数のアプリケーションから通信要件が異なるデータの流れ(フロー)が集まり、これらのフローはネットワークを経て別の通信ノードに転送されていく。このようなフローは、それぞれ優先度が異なる。
【0003】
通信要件の異なる複数のフローに対して通信帯域を割り当てる技術として、非特許文献1に記載された技術が存在する。非特許文献1には、複数のフローのうちの優先フローに対して、通信帯域の所定の割合を割り当てる手法(credit-based shaper algorithm)が記載されている。非特許文献1に記載された手法では、通信ポート毎にcreditという指標が定義され、優先フローを転送する通信ポートのcredit値を、所定範囲内のcredit値を維持するように制御することにより、優先フローの通信帯域を所定の割合に保つことができる。
【0004】
また、多様なフローが混在する環境では、全てのフローに異なる優先度を付加できなくなり、複数のフローに同一の優先度が付加される場合がある。こうした環境では、非特許文献1に記載された技術では、同一優先度のフローの中での詳細な通信要件の違いを考慮することができないという問題がある。この問題に対する解決策として、非特許文献2,3に記載された技術が存在する。非特許文献2,3に記載された技術は、同一の送信キューに複数のフローが保持されている場合、これら複数のフローに重みを付けて、通信帯域の割り当てを行うことで、より多くのフローの通信要件を満たすことができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】IEEE Std 802.1Q-2018 IEEE Standard for Local and Metropolitan Area Networks- Bridges and Bridged Networks, pages 1938-1942.
【文献】H. Shimonishi, M. Yoshida, R. Fan, and H. Suzuki, “An Improvement of Weighted Round Robin Cell Scheduling in ATM Networks,” in Proc of IEEE Globecom'97, vol.2, pp.1119-1123, Phoenix, AZ, USA, Nov. 1997.
【文献】C. Semeria, “Supporting Differentiated Service Classes: Queue Scheduling Disciplines,” White Paper, Juniper Networks, Inc., 2001.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、映像データや大容量コンテンツ等のデータは、長時間の通信が発生し、通信帯域の影響が支配的なデータである。非特許文献1~3に記載された技術では、このようなデータを、可用帯域の変動のほとんどない有線ネットワーク等の通信路上で通信する環境において、複数のフローに対して通信帯域を適切に割り当てることができる。
【0007】
一方で、工場や倉庫等の施設では、各種センサーが検出した情報やロボット等への制御メッセージ等のデータが多く通信されている。このようなデータは、定常的な通信帯域を必要としない反面、短い許容遅延を満たすために瞬間的に通信帯域を必要とするバーストデータである。例えば、センサーからはアップリンクで自由なタイミングでバーストデータを含む通信が発生するため、瞬時的にフローが集中する。さらに、これらの施設で構築される通信路は、様々な環境要件により、可用帯域が変動(増加又は減少)する無線ネットワークとなっている。
【0008】
しかし、非特許文献1~3に記載された技術では、無線ネットワークのような、可用帯域が頻繁に変動するネットワークを想定していない。また、バーストデータは、許容遅延が短いものが多く、映像データのようにバッファによる帯域変動の吸収ができないため、バーストデータの転送に必要な通信帯域(以降、必要帯域と呼称)を満たさないと、すぐに許容遅延を満たさなくなる。しかし、非特許文献1~3に記載された技術においては、こうした環境下で、バーストデータを含む複数のフローの許容遅延を満たすために、必要帯域を適切に算出し、各フローの通信速度を制御する手段が提供されていない。
【0009】
そこで本開示の目的は、上述した課題を解決し、可用帯域が頻繁に変動する通信路を介してバーストデータを通信する環境において、バーストデータを含むフローの通信要件を満たすことができる通信システム、ブリッジ装置、通信方法、及び非一時的なコンピュータ可読媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一態様による通信システムは、
少なくとも1つ以上のデータ送信装置と、
少なくとも1つ以上のデータ受信装置と、
通信路を介して前記データ送信装置及び前記データ受信装置に接続され、前記データ送信装置から複数のフローを受信し、前記複数のフローを前記データ受信装置に転送する、1つ以上のブリッジ装置と、
前記複数のフローの必要帯域を算出する必要帯域算出部であって、前記複数のフローのうちバーストデータを含むフローについては、前記バーストデータのデータサイズと前記フローの許容遅延とに基づいて、前記フローの必要帯域を算出する必要帯域算出部と、
前記複数のフローの必要帯域に基づいて前記複数のフローの通信速度の相対比を算出する速度比算出部と、を備え、
前記ブリッジ装置は、前記複数のフローを前記通信速度の相対比に従って前記データ受信装置に転送する。
【0011】
一態様によるブリッジ装置は、
通信路を介して、少なくとも1つ以上のデータ送信装置及び少なくとも1つ以上のデータ受信装置に接続され、前記データ送信装置から複数のフローを受信し、前記複数のフローを前記データ受信装置に転送するブリッジ装置であって、
前記複数のフローの必要帯域が通知され、前記複数のフローの必要帯域に基づいて前記複数のフローの通信速度の相対比を算出する速度比算出部と、
前記データ送信装置から複数のフローを受信し、前記複数のフローを前記通信速度の相対比に従って前記データ受信装置に転送するデータ転送部と、を備え、
前記複数のフローのうちバーストデータを含むフローの必要帯域は、前記バーストデータのデータサイズと前記フローの許容遅延とに基づいて、算出されたものである。
【0012】
一態様による通信方法は、
少なくとも1つ以上のデータ送信装置と、少なくとも1つ以上のデータ受信装置と、通信路を介して前記データ送信装置及び前記データ受信装置に接続され、前記データ送信装置から複数のフローを受信し、前記複数のフローを前記データ受信装置に転送する、1つ以上のブリッジ装置と、を備える通信システムによる通信方法であって、
前記複数のフローの必要帯域を算出するステップであって、前記複数のフローのうちバーストデータを含むフローについては、前記バーストデータのデータサイズと前記フローの許容遅延とに基づいて、前記フローの必要帯域を算出するステップと、
前記複数のフローの必要帯域に基づいて前記複数のフローの通信速度の相対比を算出するステップと、
前記ブリッジ装置が、前記複数のフローを前記通信速度の相対比に従って前記データ受信装置に転送するステップと、を含む。
【0013】
一態様による通信方法は、
通信路を介して、少なくとも1つ以上のデータ送信装置及び少なくとも1つ以上のデータ受信装置に接続され、前記データ送信装置から複数のフローを受信し、前記複数のフローを前記データ受信装置に転送するブリッジ装置による通信方法であって、
前記複数のフローの必要帯域が通知され、前記複数のフローの必要帯域に基づいて前記複数のフローの通信速度の相対比を算出するステップと、
前記データ送信装置から複数のフローを受信し、前記複数のフローを前記通信速度の相対比に従って前記データ受信装置に転送するステップと、を含み、
前記複数のフローのうちバーストデータを含むフローの必要帯域は、前記バーストデータのデータサイズと前記フローの許容遅延とに基づいて、算出されたものである。
【0014】
一態様による非一時的なコンピュータ可読媒体は、
通信路を介して、少なくとも1つ以上のデータ送信装置及び少なくとも1つ以上のデータ受信装置に接続され、前記データ送信装置から複数のフローを受信し、前記複数のフローを前記データ受信装置に転送するブリッジ装置に実行させるためのプログラムを格納した非一時的なコンピュータ可読媒体であって、
前記プログラムは、
前記複数のフローの必要帯域が通知され、前記複数のフローの必要帯域に基づいて前記複数のフローの通信速度の相対比を算出する手順と、
前記データ送信装置から複数のフローを受信し、前記複数のフローを前記通信速度の相対比に従って前記データ受信装置に転送する手順と、を含み、
前記複数のフローのうちバーストデータを含むフローの必要帯域は、前記バーストデータのデータサイズと前記フローの許容遅延とに基づいて、算出されたものである。
【発明の効果】
【0015】
上述の態様によれば、可用帯域が頻繁に変動する通信路を介してバーストデータを通信する環境において、バーストデータを含むフローの通信要件を満たすことができる通信システム、ブリッジ装置、通信方法、及び非一時的なコンピュータ可読媒体を提供できるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施の形態1に係る通信システムの構成例を示すブロック図である。
図2】実施の形態1に係る通信システムの動作例を示すフローチャートである。
図3】実施の形態1に係る通信システムによる、通信路の可用帯域が十分にある場合の帯域割り当ての例を説明する図である。
図4】関連技術に係る通信システムによる、通信路の可用帯域が減少した場合の帯域割り当ての例を説明する図である。
図5】実施の形態1に係る通信システムによる、通信路の可用帯域が減少した場合の帯域割り当ての例を説明する図である。
図6】実施の形態2に係る通信システムの構成例を示すブロック図である。
図7】実施の形態2に係る通信システムの動作例を示すフローチャートである。
図8】実施の形態3に係る通信システムの構成例を示すブロック図である。
図9】実施の形態3に係る通信システムの動作例を示すフローチャートである。
図10】実施の形態5に係る通信システムの効果を示すための、フローの特性及び通信要件の例を示す図である。
図11】実施の形態5に係る通信システムによる、必要帯域に対して、許容遅延に応じた補正量を付加した場合の制御例を示す図である。
図12】関連技術に係る通信システムによる、必要帯域に対して、一律で補正量を付加した場合の制御例を示す図である。
図13】実施の形態5に係る通信システムによる、トラフィックBのフローの遅延の例を示すグラフである。
図14】実施の形態6に係る通信システムの構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本開示の実施の形態について説明する。なお、以下の記載及び図面は、説明の明確化のため、適宜、省略及び簡略化がなされている。また、以下の各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0018】
<実施の形態1>
まず、図1を参照して、本実施の形態1に係る通信システムの構成例について説明する。なお、図1において、一方向性の矢印は、ある信号(データ)の流れの方向を端的に示したもので、双方向性を排除するものではない(後述する図6図8、及び図14において同じ)。
図1を参照すると、本実施の形態1に係る通信システムは、データ送信装置1、データ受信装置2、及びブリッジ装置3を備えており、これらは通信路5を介して互いに接続されている。なお、通信路5は、無線ネットワークを想定しており、そのため、通信路5の可用帯域は変動するものとする。また、通信路5が有線ネットワークであっても、通信路5を他の通信と共有した場合には、通信路5の可用帯域は変動する。また、ブリッジ装置3は、N(Nは1以上の整数)台設けられている。また、データ送信装置1及びデータ受信装置2も、図1では1台のみ設けられているが、1台以上設けられていれば良い。
【0019】
データ送信装置1は、データ送信部11、必要帯域算出部12、及び必要帯域通知部13を含む。データ送信部11は、フローを送信する。必要帯域算出部12は、データ送信部11が送信したフローの転送に必要な通信帯域である必要帯域を算出する。必要帯域通知部13は、必要帯域算出部12が算出した必要帯域をブリッジ装置3に通知する。
【0020】
ブリッジ装置3は、データ転送部31及び速度比算出部32を含む。データ転送部31は、データ送信装置1及び他のブリッジ装置3から複数のフローを受信する。速度比算出部32は、複数のフローの必要帯域に基づいて、複数のフローの通信速度の相対比を算出する。データ転送部31は、複数のフローの通信速度の相対比に従って複数のフローをデータ受信装置2に転送する。
【0021】
データ受信装置2は、データ受信部21を含む。データ受信部21は、ブリッジ装置3から複数のフローを受信する。
【0022】
続いて、図2を参照して、本実施の形態1に係る通信システムの動作例について説明する。
図2を参照すると、データ送信装置1では、データ送信部11は、ブリッジ装置3のデータ転送部31にフローを送信し、必要帯域算出部12は、データ送信部11が送信したフローの必要帯域を算出する(S11)。このとき、必要帯域算出部12は、バーストデータを含むフローについては、例えば、別の手段によって得られるバーストデータのデータサイズとフローの許容遅延とに基づいて必要帯域を算出する(S11)。この算出は、例えば、データサイズを許容遅延で除算することで行われる。一方、必要帯域算出部12は、バーストデータを含まないフロー、例えば、ビデオストリーミング等の連続データを含むフローについては、例えば、連続データの平均データレートを、必要帯域として用いることができる。必要帯域通知部13は、必要帯域算出部12が算出した必要帯域の算出結果を、ブリッジ装置3の速度比算出部32に通知する(S12)。
【0023】
ブリッジ装置3では、データ転送部31は、データ送信装置1及び他のブリッジ装置3から複数のフローを受信する。速度比算出部32は、データ転送部31が受信した複数のフローの必要帯域に基づいて、複数のフローの通信速度の相対比を算出する(S13)。データ転送部31は、複数のフローの通信速度の相対比が維持されるように、複数のフローの通信速度を決定する(S14)。そして、データ転送部31は、決定した通信速度で複数のフローをデータ受信装置2のデータ受信部21に転送する(S15)。
【0024】
本実施の形態1によれば、必要帯域算出部12は、複数のフローのうち、バーストデータを含むフローについては、バーストデータのデータサイズとフローの許容遅延とに基づいて必要帯域を算出する。速度比算出部32は、複数のフローの必要帯域に基づいて複数のフローの通信速度の相対比を算出する。データ転送部31は、複数のフローを通信速度の相対比に従って転送する。これにより、通信路5を介して多様なバーストデータが通信される施設において、通信路5の可用帯域が減少した場合にも、バーストデータを含むフローの通信要件(許容遅延)を満たすことができるという効果が得られる。
【0025】
以下、図3図5を参照して、本実施の形態1の効果について具体的に説明する。
図3図5は、ブリッジ装置3が受信した、バーストデータを含む2つのフローの帯域割り当ての例を示している。ここでは、2つのフローのトラフィック(通信の種別)を、トラフィックA(許容遅延a)及びトラフィックB(許容遅延b)としている。
【0026】
図3は、ブリッジ装置3からデータ受信装置2までの通信路5の可用帯域が十分にある場合の例である。図3の例では、ブリッジ装置3内でデータを蓄積しないため、蓄積に起因する遅延が生じない。その結果、トラフィックA,Bの2つのフローは、それぞれの許容遅延a,bを満たすことができる。
【0027】
図4は、ブリッジ装置3からデータ受信装置2までの通信路5の可用帯域が減少した場合に、関連技術に従って2つのフローを転送する例を示している。通信路5の可用帯域が減少した場合には、ブリッジ装置3内でのデータの蓄積量が増えるため、トラフィックA,Bの2つのフローの遅延が増加する。その結果、図4の例では、トラフィックAのフローの遅延が許容遅延aを超えてしまっている。
【0028】
図5は、ブリッジ装置3からデータ受信装置2までの通信路5の可用帯域が減少した場合に、本実施の形態1に従って2つのフローを転送する例を示している。本実施の形態1では、トラフィックA,Bの2つのフローの必要帯域を、それぞれ許容遅延a,bを用いて算出し、さらに、算出した必要帯域に基づいて2つのフローの通信速度の相対比を算出し、2つのフローを通信速度の相対比に従って転送する。そのため、許容遅延に余裕があるトラフィックBのフローの必要帯域を小さくし、トラフィックAのフローの通信速度を相対的に高くすることができる。その結果、トラフィックA,Bの2つのフローは、それぞれの許容遅延a,bを満たすことができる。
【0029】
なお、通信路5の可用帯域が動的に変動している場合に、トラフィックA,Bの2つのフローの通信速度の相対比を維持する方法としては、例えば、以下の2つの方法が考えられる。
(1)トラフィックA,Bの2つのフローの必要帯域を確保した上で、残りの帯域を他の優先度のトラフィックに割り当てるように制御する
(2)通信路5の可用帯域に合わせて、トラフィックA,Bの2つのフローに確保する必要帯域を同じ相対比とするように制御する
【0030】
上述した2つの方法は、いずれも、本実施の形態1の効果を得ることができる。
上述した(1)の方法は、非特許文献1に記載の帯域制御を利用して、比較的容易に実現することができる。この場合、通信路5の可用帯域に従って、残りの帯域を調整する。なお、ブリッジ装置3とデータ受信装置2の間に別の中継装置(図示せず)が設けられている場合、トラフィックA,Bの2つのフローの必要帯域を確保した上で、その中継装置は、可用帯域に従って残りの帯域を調整する。
【0031】
上述した(2)の方法は、通信路5の可用帯域に余裕がある場合に、必要帯域にマージン(補正量)を持たせることが可能になる。よって、遅延に余裕を持たせて通信を行うことが可能となる。
【0032】
<実施の形態2>
続いて、図6を参照して、本実施の形態2に係る通信システムの構成例について説明する。
図6を参照すると、本実施の形態2に係る通信システムは、上述した実施の形態1と比較して、データ送信装置1から必要帯域算出部12及び必要帯域通知部13を除去した点と、必要帯域算出部41及び必要帯域通知部42を含む通信管理装置4を追加した点と、が異なる。
【0033】
通信管理装置4は、少なくともブリッジ装置3に接続されている。必要帯域算出部41は、データ送信装置1が送信したフローの必要帯域を算出する。必要帯域通知部42は、必要帯域算出部41が算出した必要帯域をブリッジ装置3に通知する。
なお、本実施の形態2は、上述した構成以外は、上述した実施の形態1と同様の構成である。
【0034】
続いて、図7を参照して、本実施の形態2に係る通信システムの動作例について説明する。
図7を参照すると、データ送信装置1では、データ送信部11は、ブリッジ装置3のデータ転送部31にフローを送信する。
通信管理装置4では、必要帯域算出部41は、データ送信装置1のデータ送信部11が送信したフローの必要帯域を、上述した実施の形態1の必要帯域算出部12と同様の方法で、算出する(S21)。必要帯域通知部42は、必要帯域算出部41が算出した必要帯域の算出結果を、ブリッジ装置3の速度比算出部32に通知する(S22)。
【0035】
ブリッジ装置3では、データ転送部31は、データ送信装置1及び他のブリッジ装置3から複数のフローを受信する。速度比算出部32は、データ転送部31が受信した複数のフローの必要帯域に基づいて、複数のフローの通信速度の相対比を算出する(S23)。データ転送部31は、複数のフローの通信速度の相対比が維持されるように、複数のフローの通信速度を決定する(S24)。そして、データ転送部31は、決定した通信速度で複数のフローをデータ受信装置2のデータ受信部21に転送する(S25)。
【0036】
上述した実施の形態1は、フローの必要帯域の算出及び通知を行う必要帯域算出部12及び必要帯域通知部13が、データ送信装置1に配置されていた。
これに対して、本実施の形態2は、必要帯域算出部12及び必要帯域通知部13と同様の機能を備える必要帯域算出部41及び必要帯域通知部42が、通信管理装置4に配置されており、この点でのみ上述した実施の形態1とは相違する。
【0037】
従って、本実施の形態2は、上述した実施の形態1と同様の効果が得られる。
また、本実施の形態2は、必要帯域算出部41が通信管理装置4に配置されているため、フローの管理を通信管理装置4に集約することができる。これにより、通信システム全体のフローの管理が容易になると共に、データ送信装置1のハードウェアリソースや処理時間を削減することができる。
【0038】
<実施の形態3>
続いて、図8を参照して、本実施の形態3に係る通信システムの構成例について説明する。
図8を参照すると、本実施の形態3に係る通信システムは、上述した実施の形態2と比較して、ブリッジ装置3から速度比算出部32を削除した点と、通信管理装置4から必要帯域通知部42を削除した点と、通信管理装置4に速度比算出部43及び速度比通知部44を追加した点と、が異なる。
【0039】
速度比算出部43は、ブリッジ装置3がデータ送信装置1及び他のブリッジ装置3から受信した複数のフローの必要帯域に基づいて、複数のフローの通信速度の相対比を算出する。速度比通知部44は、速度比算出部43が算出した複数のフローの通信速度の相対比をブリッジ装置3に通知する。
なお、本実施の形態3は、上述した構成以外は、上述した実施の形態2と同様の構成である。
【0040】
続いて、図9を参照して、本実施の形態3に係る通信システムの動作例について説明する。
図9を参照すると、データ送信装置1では、データ送信部11は、ブリッジ装置3のデータ転送部31にフローを送信する。
ブリッジ装置3では、データ転送部31は、データ送信装置1及び他のブリッジ装置3から複数のフローを受信する。
【0041】
通信管理装置4では、必要帯域算出部41は、データ送信装置1のデータ送信部11が送信したフローの必要帯域を、上述した実施の形態1の必要帯域算出部12と同様の方法で、算出する(S31)。速度比算出部43は、ブリッジ装置3がデータ送信装置1及び他のブリッジ装置3から受信した複数のフローの必要帯域に基づいて、複数のフローの通信速度の相対比を算出する(S32)。速度比通知部44は、速度比算出部43が算出した複数のフローの通信速度の相対比をブリッジ装置3のデータ転送部31に通知する(S33)。
【0042】
ブリッジ装置3では、データ転送部31は、複数のフローの通信速度の相対比が維持されるように、複数のフローの通信速度を決定する(S34)。そして、データ転送部31は、決定した通信速度で複数のフローをデータ受信装置2のデータ受信部21に転送する(S35)。
【0043】
上述した実施の形態2は、複数のフローの通信速度の相対比の算出を行う速度比算出部32が、ブリッジ装置3に配置されていた。
これに対して、本実施の形態3は、速度比算出部32と同様の機能を備える速度比算出部43が、通信管理装置4に配置されており、この点でのみ上述した実施の形態2とは相違する。
【0044】
従って、本実施の形態3は、上述した実施の形態1,2と同様の効果が得られる。
また、本実施の形態3は、必要帯域算出部41及び速度比算出部43が通信管理装置4に配置されているため、フローの管理や複数のフローの通信速度の相対比を算出する機能を通信管理装置4に集約することができる。これにより、ブリッジ装置3のハードウェアリソースや処理時間を削減することができる。
【0045】
<実施の形態4>
本実施の形態4の構成自体は、上述した実施の形態1~3のいずれかと同様である。
本実施の形態4では、必要帯域算出部12,41は、バーストデータを含むフローの必要帯域を算出するに際して、ブリッジ装置3におけるデータ(データパケット)の送受信にかかるオーバヘッド遅延を考慮して、必要帯域を算出する。
【0046】
ここで、バーストデータを含むフローの帯域依存型遅延は、
帯域依存型遅延 = (許容遅延 - オーバヘッド遅延)
と定義される。
本実施の形態4では、バーストデータを含むフローの必要帯域は、
必要帯域 = データサイズ / 帯域依存型遅延
として算出される。
【0047】
ここで、オーバヘッド遅延は、通信路5を確立するためにかかる遅延、上位レイヤプロトコルによる再送遅延、上位レイヤプロトコルの制御によりデータが送られてくるまでの待ち時間、伝搬遅延、又は、パケタイズ等の処理遅延、の少なくとも1つ以上を含むが、これらには限定されない。
【0048】
オーバヘッド遅延は、データ送信装置1で観測することが可能である。又は、オーバヘッド遅延は、データ送信装置1で観測した情報から算出することが可能である。例えば、上述した実施の形態2,3のように、通信管理装置4に必要帯域算出部41が配置されている場合は、データ送信装置1は、観測したオーバヘッド遅延を通信管理装置4に通知する。
【0049】
本実施の形態4によれば、必要帯域算出部12,41は、バーストデータを含むフローの必要帯域を算出する際に、ブリッジ装置3におけるデータ(データパケット)の送受信にかかるオーバヘッド遅延を考慮して、必要帯域を算出する。従って、バーストデータを含むフローの許容遅延に対して、データ(データパケット)の送受信にかかるオーバヘッド遅延が無視できないほど大きい場合には、精度よく必要帯域を算出することができるという効果が得られる。
【0050】
<実施の形態5>
本実施の形態5の構成自体は、上述した実施の形態1~4のいずれかと同様である。
本実施の形態5では、必要帯域算出部12,41は、複数のフローの各々について算出された必要帯域に対し、補正量を付加し、さらに、複数のフローの各々の補正量を、フローの許容遅延が大きいほど小さくなるように設定する。
【0051】
必要帯域算出部12,41は、バーストデータを含むフローについては、バーストデータのデータサイズをフローの許容遅延又は帯域依存型遅延で除算することで必要帯域を算出する。そのため、バーストデータを含むフローの必要帯域は、許容遅延又は帯域依存型遅延の時間で規定される平均のデータレートに相当する。また、必要帯域算出部12,41は、連続データを含むフロー(すなわち、バーストデータを含まないフロー)については、例えば、必要帯域として、連続データの平均データレートを用いる。しかし、実際のフローのデータレートは変動する。一方、通信路5の可用帯域も変動する。そのため、ブリッジ装置3内でデータが蓄積され、オーバーフローが発生する危険がある。
【0052】
そこで、必要帯域算出部12,41は、上述のように、複数のフローの各々について算出された必要帯域に対して補正量を付加し、さらに、複数のフローの各々の補正量を、フローの許容遅延が大きいほど小さくなるように設定する。これにより、上述した実施の形態1~4の効果を発揮しつつ、オーバーフローの可能性を減じることができる。
【0053】
図10に、工場で実行される通信のうち2種類のトラフィックA,B(通信の種別)の各々について、データサイズ、通信頻度、許容遅延、同時に発生しうるフロー数(通信ノードが複数ある場合は、複数のフローが同時に発生しうる)の例を示す。
【0054】
また、図11に、本実施の形態5において、複数のフローの各々について算出された必要帯域に対し、フローの許容遅延に応じた補正量を付加した場合の複数のフローの通信速度の割合の制御例を示す。なお、図11は、優先であるトラフィックAのフローが2つ、優先であるトラフィックBのフローが4つ、さらに優先ではないベストエフォートトラフィックのフロー群がある場合の、複数のフローの通信速度の割合を示している。また、ここでは、必要帯域算出部12,41は、上述した実施の形態1~3のように、データサイズを許容遅延で除算することで必要帯域を算出するものとする。
【0055】
図11を参照すると、必要帯域算出部12,41は、トラフィックAのフローについては、データサイズを許容遅延で除算することで必要帯域を算出し、算出された必要帯域の量に対し、許容遅延に応じた補正量5%を付加して、必要帯域を導出する(8.4Mbps)。また、必要帯域算出部12,41は、トラフィックBのフローについても同様に、データサイズを許容遅延で除算することで必要帯域を算出し、算出された必要帯域の量に対し、許容遅延に応じた補正量30%を付加して、必要帯域を導出する(5.2Mbps)。ここで、トラフィックAは、トラフィックBに比べて許容遅延が大きいため、補正量が小さく設定されている。
【0056】
なお、比較のために、図12に、関連技術において、複数のフローの各々について算出された必要帯域に対し、一律の補正量30%を付加した場合の複数のフローの通信速度の割合の制御例を示す。
【0057】
図13は、トラフィックBのフローの遅延を累積分布関数(CDF:Cumulative Distribution Function)で表したグラフの例を示している。
図13を参照すると、図11のように、許容遅延に応じた補正量を付加した場合(ベストエフォートトラフィック:平均16.4Mbps)は、ブリッジ装置3は、トラフィックAの2つのフロー、トラフィックBの4つのフロー、ベストエフォートトラフィックのフロー群を、それぞれの通信速度の相対比(15.6%×2:9.6%×4:30.4%)に応じた通信速度で転送する。この場合、通信路5の可用帯域が30Mbpsを中心に±20%変動したときのトラフィックBのフローの遅延は、300msec以内に収まっている。
【0058】
一方、図12のように、一律の30%の補正量30を付加した場合(ベストエフォートトラフィック:平均12.4Mbps)は、ブリッジ装置3は、トラフィックAの2つのフロー、トラフィックBの4つのフロー、ベストエフォートトラフィックのフロー群を、それぞれの通信速度の相対比(19.3%×2:9.6%×4:23.0%)に応じた通信速度で転送する。この場合、通信路5の可用帯域が上記と同様に変動したときのトラフィックBのフローの遅延は、700msec以上に伸びている。
なお、トラフィックAのフローの遅延は、図11及び図12のどちらの場合も許容遅延(5sec)に収まっていた。
【0059】
また、図11のように、許容遅延に応じた補正量を付加した場合、優先であるトラフィックA,Bのフローの通信速度の割合の総計は69.6%である。これに対して、図12のように、一律の補正量を付加した場合、優先であるトラフィックA,Bのフローの通信速度の割合の総計は77.0%である。このように、許容遅延に応じた補正量を付加した場合、優先であるトラフィックA,Bのフローの通信速度の割合の総計は、一律の補正量を付加する場合と比べて小さいにも関わらず、トラフィックA,Bとも許容内の遅延でフローをデータ受信装置2に到着させることができた。
【0060】
<実施の形態6>
続いて、図14を参照して、本実施の形態6に係る通信システムの構成例について説明する。
図14を参照すると、本実施の形態6に係る通信システムは、上述した実施の形態1と比較して、ブリッジ装置3に通信状況通知部33を追加した点が異なる。ただし、これには限定されず、本実施の形態6に係る通信システムは、上述した実施の形態2~5のブリッジ装置3に通信状況通知部33を追加した構成としても良い。
【0061】
通信状況通知部33は、通信路5の通信状況を観測し、通信路5の通信状況を必要帯域算出部12,41に通知する。
ここで、通信路5の通信状況は、データ受信装置2に送信済みのデータ(データフレーム)のサイズ、データ受信装置2に送信済みのデータ(データフレーム)の送信速度、他のブリッジ装置3から受信したデータ(データフレーム)の各レイヤにおける到達状況、又は、他のブリッジ装置3から受信したデータ(データフレーム)の受信速度、の少なくとも1つ以上を含むが、これらには限定されない。
【0062】
また、上述した実施の形態5のように、必要帯域算出部12,41は、複数のフローの各々について算出された必要帯域に対し、補正量を付加する場合、通信状況通知部33から通知された通信路5の通信状況に基づいて、フローの通信路5上のボトルネックリンクにおける通信速度実績を算出する。そして、必要帯域算出部12,41は、補正量を、算出されたフローの通信速度実績が小さいほど大きくなるように設定し、設定された補正量を、フローの必要帯域に付加する。
【0063】
こうすることで、本実施の形態6では、例えば、通過する通信路5が無線ネットワークである等、通信性能が劣化しやすいフローに対しては多くの補正量を割り当て、その一方で、通信性能が安定しているフローには少ない補正量の割り当てで済ませることができる。これにより、より多くのフローの通信要件を満たすことができる。
【0064】
<実施の形態7>
本実施の形態7の構成自体は、上述した実施の形態1~6のいずれかと同様である。
本実施の形態7では、必要帯域算出部12,41は、新たなフローが発生した際、又は、ブリッジ装置3におけるデータ(データパケット)の送受信にかかるオーバヘッド遅延が所定の閾値よりも変動した際、又は、通信路5の通信状況が所定の閾値よりも変動した際に、新たなフローが発生した後又はオーバヘッド遅延若しくは通信状況が変動した後の情報に基づいて、フローの必要帯域を算出し直す。また、速度比算出部32,43は、算出し直された複数のフローの必要帯域に基づいて、複数のフローの通信速度の相対比を更新する。そして、データ転送部31は、更新された複数のフローの通信速度の相対比に従って複数のフローをデータ受信装置2に転送する。
【0065】
こうすることで、本実施の形態7では、新たなフローが発生した場合や、ブリッジ装置3のオーバヘッド遅延や通信路5の通信状況の変動が発生した場合にも、各フローを適切な通信速度で転送することができる。
【0066】
なお、上述した各実施の形態は、データ送信装置1からデータ受信装置2への片方向通信の例であるが、逆方向にも同等の手段を実装すれば、双方向通信を行うことも可能である。また、バーストデータを含むフローの必要帯域の算出には、バーストデータのデータサイズやフローの許容遅延が必要となるが、これらのデータサイズや許容遅延は、データの属性である。そのため、これらのデータサイズや許容遅延を取得する方法としては、データを受信することにより取得する方法や、予め通信管理装置4に登録することにより取得する方法等がある。
【0067】
以上、実施の形態を参照して本開示を説明したが、本開示は上述した実施の形態に限定されるものではない。本開示の構成や詳細には、本開示のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
例えば、上述した実施の形態は、一部又は全部を相互に組み合わせて用いても良い。
【0068】
また、上述した各実施の形態では、データ送信装置1、データ受信装置2、ブリッジ装置3、及び通信管理装置4を、ハードウェアの構成として説明したが、本開示は、これに限定されるものではない。本開示は、データ送信装置1、データ受信装置2、ブリッジ装置3、及び通信管理装置4の任意の処理を、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサが、メモリに格納されたコンピュータプログラムを読み出し実行することにより、実現することも可能である。
【0069】
上述の例において、プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD-ROM(Compact Disc-Read Only Memory)、CD-R(CD-Recordable)、CD-R/W(CD-ReWritable)、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(Random Access Memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されても良い。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0070】
また、上記の実施の形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
(付記1)
少なくとも1つ以上のデータ送信装置と、
少なくとも1つ以上のデータ受信装置と、
通信路を介して前記データ送信装置及び前記データ受信装置に接続され、前記データ送信装置から複数のフローを受信し、前記複数のフローを前記データ受信装置に転送する、1つ以上のブリッジ装置と、
前記複数のフローの必要帯域を算出する必要帯域算出部であって、前記複数のフローのうちバーストデータを含むフローについては、前記バーストデータのデータサイズと前記フローの許容遅延とに基づいて、前記フローの必要帯域を算出する必要帯域算出部と、
前記複数のフローの必要帯域に基づいて前記複数のフローの通信速度の相対比を算出する速度比算出部と、を備え、
前記ブリッジ装置は、前記複数のフローを前記通信速度の相対比に従って前記データ受信装置に転送する、
通信システム。
(付記2)
前記必要帯域算出部は、
バーストデータを含むフローについては、前記バーストデータのデータサイズを前記フローの許容遅延で除算することにより、前記フローの必要帯域を算出する、
付記1に記載の通信システム。
(付記3)
前記必要帯域算出部は、
バーストデータを含むフローについては、前記フローの許容遅延から、前記ブリッジ装置におけるデータの送受信にかかるオーバヘッド遅延を減じることにより、前記フローの帯域依存型遅延を算出し、
バーストデータを含むフローについては、前記バーストデータのデータサイズを前記フローの帯域依存型遅延で除算することにより、前記フローの必要帯域を算出する、
付記1又は2に記載の通信システム。
(付記4)
前記必要帯域算出部は、
前記複数のフローの各々について、前記フローの前記必要帯域に補正量を付加し、さらに、前記フローの前記必要帯域に付加する前記補正量を、前記フローの前記許容遅延が大きいほど小さくなるように設定する、
付記1から3のいずれか1項に記載の通信システム。
(付記5)
前記通信路の通信状況を観測し、前記通信路の通信状況を前記必要帯域算出部に通知する通信状況通知部をさらに備え、
前記必要帯域算出部は、
前記複数のフローの各々について、前記通信路の通信状況に基づいて、前記フローの前記通信路上のボトルネックリンクにおける通信速度実績を算出し、前記フローの前記必要帯域に付加する前記補正量を、前記フローの前記通信速度実績が小さいほど大きくなるように設定し、設定した前記補正量を前記フローの前記必要帯域に付加する、
付記4に記載の通信システム。
(付記6)
前記必要帯域算出部は、
新たなフローが発生した際、又は、前記ブリッジ装置におけるデータの送受信にかかるオーバヘッド遅延が所定の閾値よりも変動した際、又は、前記通信状況が所定の閾値よりも変動した際に、前記複数のフローの必要帯域を算出し直す、
付記5に記載の通信システム。
(付記7)
前記オーバヘッド遅延は、
前記通信路を確立するためにかかる遅延、上位レイヤプロトコルによる再送遅延、上位レイヤプロトコルの制御によりデータが送られてくるまでの待ち時間、伝搬遅延、又は、処理遅延、の少なくとも1つ以上を含む、
付記3又は6に記載の通信システム。
(付記8)
前記通信路の通信状況は、
前記データ受信装置に送信済みのデータのサイズ、前記データ受信装置に送信済みのデータの送信速度、他のブリッジ装置から受信したデータの各レイヤにおける到達状況、又は、他のブリッジ装置から受信したデータの受信速度、の少なくとも1つ以上を含む、
付記5又は6に記載の通信システム。
(付記9)
前記必要帯域算出部は、前記データ送信装置に設けられ、
前記速度比算出部は、前記ブリッジ装置に設けられる、
付記1から8のいずれか1項に記載の通信システム。
(付記10)
前記ブリッジ装置と接続された通信管理装置をさらに備え、
前記必要帯域算出部は、前記通信管理装置に設けられ、
前記速度比算出部は、前記ブリッジ装置に設けられる、
付記1から8のいずれか1項に記載の通信システム。
(付記11)
前記ブリッジ装置と接続された通信管理装置をさらに備え、
前記必要帯域算出部及び前記速度比算出部は、前記通信管理装置に設けられる、
付記1から8のいずれか1項に記載の通信システム。
(付記12)
通信路を介して、少なくとも1つ以上のデータ送信装置及び少なくとも1つ以上のデータ受信装置に接続され、前記データ送信装置から複数のフローを受信し、前記複数のフローを前記データ受信装置に転送するブリッジ装置であって、
前記複数のフローの必要帯域が通知され、前記複数のフローの必要帯域に基づいて前記複数のフローの通信速度の相対比を算出する速度比算出部と、
前記データ送信装置から複数のフローを受信し、前記複数のフローを前記通信速度の相対比に従って前記データ受信装置に転送するデータ転送部と、を備え、
前記複数のフローのうちバーストデータを含むフローの必要帯域は、前記バーストデータのデータサイズと前記フローの許容遅延とに基づいて、算出されたものである、
ブリッジ装置。
(付記13)
前記通信路の通信状況を観測し、前記複数のフローの必要帯域を算出する必要帯域算出部に対し、前記通信路の通信状況を通知する通信状況通知部をさらに備える、
付記12に記載のブリッジ装置。
(付記14)
前記通信路の通信状況は、
前記データ受信装置に送信済みのデータのサイズ、前記データ受信装置に送信済みのデータの送信速度、他のブリッジ装置から受信したデータの各レイヤにおける到達状況、又は、他のブリッジ装置から受信したデータの受信速度、の少なくとも1つ以上を含む、
付記13に記載のブリッジ装置。
(付記15)
少なくとも1つ以上のデータ送信装置と、少なくとも1つ以上のデータ受信装置と、通信路を介して前記データ送信装置及び前記データ受信装置に接続され、前記データ送信装置から複数のフローを受信し、前記複数のフローを前記データ受信装置に転送する、1つ以上のブリッジ装置と、を備える通信システムによる通信方法であって、
前記複数のフローの必要帯域を算出するステップであって、前記複数のフローのうちバーストデータを含むフローについては、前記バーストデータのデータサイズと前記フローの許容遅延とに基づいて、前記フローの必要帯域を算出するステップと、
前記複数のフローの必要帯域に基づいて前記複数のフローの通信速度の相対比を算出するステップと、
前記ブリッジ装置が、前記複数のフローを前記通信速度の相対比に従って前記データ受信装置に転送するステップと、を含む、
通信方法。
(付記16)
通信路を介して、少なくとも1つ以上のデータ送信装置及び少なくとも1つ以上のデータ受信装置に接続され、前記データ送信装置から複数のフローを受信し、前記複数のフローを前記データ受信装置に転送するブリッジ装置による通信方法であって、
前記複数のフローの必要帯域が通知され、前記複数のフローの必要帯域に基づいて前記複数のフローの通信速度の相対比を算出するステップと、
前記データ送信装置から複数のフローを受信し、前記複数のフローを前記通信速度の相対比に従って前記データ受信装置に転送するステップと、を含み、
前記複数のフローのうちバーストデータを含むフローの必要帯域は、前記バーストデータのデータサイズと前記フローの許容遅延とに基づいて、算出されたものである、
通信方法。
(付記17)
通信路を介して、少なくとも1つ以上のデータ送信装置及び少なくとも1つ以上のデータ受信装置に接続され、前記データ送信装置から複数のフローを受信し、前記複数のフローを前記データ受信装置に転送するブリッジ装置に実行させるためのプログラムを格納した非一時的なコンピュータ可読媒体であって、
前記プログラムは、
前記複数のフローの必要帯域が通知され、前記複数のフローの必要帯域に基づいて前記複数のフローの通信速度の相対比を算出する手順と、
前記データ送信装置から複数のフローを受信し、前記複数のフローを前記通信速度の相対比に従って前記データ受信装置に転送する手順と、を含み、
前記複数のフローのうちバーストデータを含むフローの必要帯域は、前記バーストデータのデータサイズと前記フローの許容遅延とに基づいて、算出されたものである、
非一時的なコンピュータ可読媒体。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本開示は、工場や倉庫等の施設において、各種センサーが検出した情報やロボット等への制御メッセージ等を、無線ネットワーク経由で通信する用途に適用可能である。また、本開示は、発電所等のインフラ設備や病院等において、各種センサーが検出した情報や緊急メッセージ等を、無線ネットワーク経由で通信する用途にも適用可能である。
【0072】
この出願は、2019年9月12日に出願された日本出願特願2019-166067を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0073】
1 データ送信装置
11 データ送信部
12 必要帯域算出部
13 必要帯域通知部
2 データ受信装置
21 データ受信部
3 ブリッジ装置
31 データ転送部
32 速度比算出部
33 通信状況通知部
4 通信管理装置
41 必要帯域算出部
42 必要帯域通知部
43 速度比算出部
44 速度比通知部
5 通信路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14