(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-13
(45)【発行日】2022-12-21
(54)【発明の名称】圧電アクチュエータ、圧電式バルブ、及び圧電アクチュエータの製造方法
(51)【国際特許分類】
F16K 31/02 20060101AFI20221214BHJP
F16K 27/02 20060101ALI20221214BHJP
H01L 41/09 20060101ALN20221214BHJP
H02N 2/04 20060101ALN20221214BHJP
【FI】
F16K31/02 A
F16K27/02
H01L41/09
H02N2/04
(21)【出願番号】P 2019105449
(22)【出願日】2019-06-05
【審査請求日】2022-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000001812
【氏名又は名称】株式会社サタケ
(73)【特許権者】
【識別番号】502254796
【氏名又は名称】有限会社メカノトランスフォーマ
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100158702
【氏名又は名称】岡野 卓也
(73)【特許権者】
【識別番号】000204240
【氏名又は名称】株式会社TAIYO
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100158702
【氏名又は名称】岡野 卓也
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 隆文
(72)【発明者】
【氏名】松下 忠史
(72)【発明者】
【氏名】樋口 俊郎
(72)【発明者】
【氏名】徐 世傑
(72)【発明者】
【氏名】海老原 邦夫
(72)【発明者】
【氏名】平田 敏忠
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-329252(JP,A)
【文献】特開平03-172688(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/00-31/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層型圧電素子の変位を利用してバルブの開閉を行う圧電式バルブに用いる圧電アクチュエータであって、
弁体、前記弁体の動作に必要な駆動力を変位として発生する積層型圧電素子、前記積層型圧電素子の変位を拡大して前記弁体に作用させる変位拡大機構を有する圧電アクチュエータにおいて、
圧電式バルブの弁座に当接する前記弁体の表面は、前記積層型圧電素子に与圧荷重が加えられた状態で平滑化されていることを特徴する圧電アクチュエータ。
【請求項2】
前記積層型圧電素子には、前記弁体の方向に前記与圧荷重が加えられている請求項1記載の圧電アクチュエータ。
【請求項3】
前記変位拡大機構は、前記積層型圧電素子の長手方向軸線に対し対称に配置され、該変位拡大機構の先端部には、前記積層型圧電素子の長手方向軸線に対し対称に一対の板バネが設けられており、
前記弁体は、前記一対の板バネ間に設けられている請求項2記載の圧電アクチュエータ。
【請求項4】
前記変位拡大機構は、前記積層型圧電素子の変位を拡大する変位拡大部と、前記積層型圧電素子の変位を伝達する変位伝達部を有し、
前記変位伝達部は、前記積層型圧電素子の一端が接合されるU字状のベース基板と、前記積層型圧電素子の他端が接合されるキャップ部材を有し、前記ベース基板のU字状底部と前記キャップ部材との間に前記積層型圧電素子が組み込まれ、前記ベース基板のU字状底部を塑性変形させることで前記積層型圧電素子に前記与圧
荷重が加えられており、
前記変位拡大部は、前記弁体と前記積層型圧電素子の長手方向軸線を結ぶ直線に対し対称に配置される一対のアームを有し、前記各アームのそれぞれがヒンジにより前記ベース基板の先端及び前記キャップ部材に対し一体とされ、前記各アームの外側先端部に前記一対の板バネが設けられており、
前記弁体は、前記一対の板バネ間に設けられている請求項3記載の圧電アクチュエータ。
【請求項5】
圧電式バルブの弁座に当接する前記弁体の表面に滑性化処理が施されている請求項1乃至4のいずれかに記載の圧電アクチュエータ。
【請求項6】
外部から供給される圧縮気体を受け入れる気体圧力室を有するバルブ本体と、
前記気体圧力室から圧縮気体を排出する気体排出路を開閉する弁体、前記弁体の動作に必要な駆動力を変位として発生する積層型圧電素子、前記積層型圧電素子の変位を拡大して前記弁体に作用させる変位拡大機構を有し、前記バルブ本体の内部に配設される圧電アクチュエータと、を備える圧電式バルブにおいて、
前記圧電アクチュエータには、請求項1乃至5のいずれかに記載の圧電アクチュエータを用いることを特徴とする圧電式バルブ。
【請求項7】
前記請求項1乃至5のいずれかに記載の圧電アクチュエータが固定され、当該圧電アクチュエータとともに前記バルブ本体の内部に配設されるプレートをさらに有し、前記プレートには、前記気体排出路及び前記気体排出路を開閉する前記圧電アクチュエータの前記弁体が当接する弁座が設けられる請求項6記載の圧電式バルブ。
【請求項8】
積層型圧電素子の変位を利用してバルブの開閉を行う圧電式バルブに用いる圧電アクチュエータの製造方法であって、
弁体、前記弁体の動作に必要な駆動力を変位として発生する積層型圧電素子、前記積層型圧電素子の変位を拡大して前記弁体に作用させる変位拡大機構を有する圧電アクチュエータの製造方法において、
前記積層型圧電素子に与圧荷重が加えられた状態で、圧電式バルブの弁座に当接する前記弁体の表面を平滑化することを特徴する圧電アクチュエータの製造方法。
【請求項9】
前記変位拡大機構は、前記積層型圧電素子の長手方向軸線に対し対称に配置され、該変位拡大機構の先端部には、前記積層型圧電素子の長手方向軸線に対し対称に一対の板バネが設けられ、
前記弁体は、前記一対の板バネ間に設けられており、
前記積層型圧電素子に与圧荷重が加えられた状態で、研磨により前記弁体の前記表面を平滑化する請求項8記載の圧電アクチュエータの製造方法。
【請求項10】
前記変位拡大機構は、前記積層型圧電素子の長手方向軸線に対し対称に配置され、該変位拡大機構の先端部には、一部材により成形される一対の板バネであって中央部分に前記弁体の設置部が設けられる一対の板バネが、前記積層型圧電素子の長手方向軸線に対し対称に設けられており、
前記積層型圧電素子に与圧荷重が加えられた状態で、前記一対の板バネ間の前記設置部に一体成形により弁体を設けることで前記弁体の表面を平滑化する請求項8記載の圧電アクチュエータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型圧電素子の変位を利用して弁体を動作させる圧電アクチュエータ、該圧電アクチュエータを用いた圧電式バルブ、及び前記圧電アクチュエータの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、積層型圧電素子の変位を利用してバルブの開閉を行い、圧縮気体を噴出する圧電式バルブが知られている(特許文献1を参照。)。
【0003】
特許文献1に記載された圧電式バルブは、高速応答性能に優れる積層型圧電素子の特性を利用するものであり、前記積層型圧電素子の変位を利用して弁体を開閉動作させる圧電アクチュエータを備えるものである。
【0004】
前記圧電アクチュエータは、前記積層型圧電素子の小さな変位をテコの原理に基づいて拡大する変位拡大機構を有し、前記変位拡大機構の先端部には前記積層型圧電素子の長手方向軸線に対し対称に一対の板バネが設けられ、前記一対の板バネ間に弁体が設けられている。
【0005】
前記圧電式バルブは、前記積層型圧電素子に電圧を印加すると、該積層型圧電素子の伸長方向への変位が前記変位拡大機構を介して前記弁体に伝わり、前記弁体を速やかに移動させて開弁する。
また、前記圧電式バルブは、前記積層型圧電素子への電圧印加を解除すると、該積層型圧電素子の原状復帰に伴う復帰力が前記変位拡大機構を介して前記弁体に伝わり、該弁体を速やかに弁座に当接させて閉弁する。
【0006】
ところで、前記圧電アクチュエータは、前記積層型圧電素子の引張力に対する強度の向上を図るため、前記変位拡大機構に装着された積層型圧電素子に対し、予め積層型圧電素子の伸張方向(長手方向)に与圧荷重が加えられている。
【0007】
ところが、前記圧電アクチュエータは、前記与圧荷重によって前記変位拡大機構が歪むため、前記一対の板バネ間に設けられる前記弁体の前面が変形し、圧電式バルブを組み立てた際、前記弁体の弁座面に対する押圧力や気密性が弱まってエア漏れが生じるリスクがある。
【0008】
特許文献1に記載されているように、圧電式バルブの組み立てに際し、前記圧電アクチュエータの弁体を弁座面に対し潰し代をもって押し付けることで閉弁時のエア漏れを防ぐことは可能であるが、前記与圧荷重によって弁体の前面が変形している場合には、前記潰し代を大きくとる必要があり、弁体の開閉動作が遅くなったり、弁体の動作量が小さくなったりして、バルブの高速かつ高精度な開閉に対応することができず、圧電式バルブの性能を低下させる問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明は、弁体の弁座面に対する押圧力や気密性が弱まってエア漏れが生じるリスクを軽減することができる圧電アクチュエータ、該圧電アクチュエータを用いた圧電式バルブ、及び前記圧電アクチュエータの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明は、
積層型圧電素子の変位を利用してバルブの開閉を行う圧電式バルブに用いる圧電アクチュエータであって、
弁体、前記弁体の動作に必要な駆動力を変位として発生する積層型圧電素子、前記積層型圧電素子の変位を拡大して前記弁体に作用させる変位拡大機構を有する圧電アクチュエータにおいて、
圧電式バルブの弁座に当接する前記弁体の表面は、前記積層型圧電素子に与圧荷重が加えられた状態で平滑化されていることを特徴する。
【0012】
本発明の圧電アクチュエータは、
前記積層型圧電素子には、前記弁体の方向に前記与圧荷重が加えられていることが好ましい。
【0013】
本発明の圧電アクチュエータは、
前記変位拡大機構が、前記積層型圧電素子の長手方向軸線に対し対称に配置され、該変位拡大機構の先端部には、前記積層型圧電素子の長手方向軸線に対し対称に一対の板バネが設けられており、
前記弁体が、前記一対の板バネ間に設けられていることが好ましい。
【0014】
本発明の圧電アクチュエータは、
前記変位拡大機構が、前記積層型圧電素子の変位を拡大する変位拡大部と、前記積層型圧電素子の変位を伝達する変位伝達部を有し、
前記変位伝達部が、前記積層型圧電素子の一端が接合されるU字状のベース基板と、前記積層型圧電素子の他端が接合されるキャップ部材を有し、前記ベース基板のU字状底部と前記キャップ部材との間に前記積層型圧電素子が組み込まれ、前記ベース基板のU字状底部を塑性変形させることで前記積層型圧電素子に前記与圧荷重が加えられており、
前記変位拡大部が、前記弁体と前記積層型圧電素子の長手方向軸線を結ぶ直線に対し対称に配置される一対のアームを有し、前記各アームのそれぞれがヒンジにより前記ベース基板の先端及び前記キャップ部材に対し一体とされ、前記各アームの外側先端部に前記一対の板バネが設けられており、
前記弁体が、前記一対の板バネ間に設けられていることが好ましい。
【0015】
本発明の圧電アクチュエータは、
圧電式バルブの弁座に当接する前記弁体の表面に滑性化処理が施されていることが好ましい。
【0016】
また、上記目的を達成するため、本発明は、
外部から供給される圧縮気体を受け入れる気体圧力室を有するバルブ本体と、
前記気体圧力室から圧縮気体を排出する気体排出路を開閉する弁体、前記弁体の動作に必要な駆動力を変位として発生する積層型圧電素子、前記積層型圧電素子の変位を拡大して前記弁体に作用させる変位拡大機構を有し、前記バルブ本体の内部に配設される圧電アクチュエータと、を備える圧電式バルブにおいて、
前記圧電アクチュエータには、上記いずれかに記載の圧電アクチュエータを用いることを特徴とする。
【0017】
本発明の圧電式バルブは、
上記いずれかに記載の圧電アクチュエータが固定され、当該圧電アクチュエータとともに前記バルブ本体の内部に配設されるプレートをさらに有し、前記プレートには、前記気体排出路及び前記気体排出路を開閉する前記圧電アクチュエータの前記弁体が当接する弁座が設けられることが好ましい。
【0018】
さらに、上記目的を達成するため、本発明は、
積層型圧電素子の変位を利用してバルブの開閉を行う圧電式バルブに用いる圧電アクチュエータの製造方法であって、
弁体、前記弁体の動作に必要な駆動力を変位として発生する積層型圧電素子、前記積層型圧電素子の変位を拡大して前記弁体に作用させる変位拡大機構を有する圧電アクチュエータの製造方法において、
前記積層型圧電素子に与圧荷重が加えられた状態で、圧電式バルブの弁座に当接する前記弁体の表面を平滑化することを特徴する。
【0019】
本発明の圧電アクチュエータの製造方法は、
前記変位拡大機構が、前記積層型圧電素子の長手方向軸線に対し対称に配置され、該変位拡大機構の先端部には、前記積層型圧電素子の長手方向軸線に対し対称に一対の板バネが設けられ、
前記弁体が、前記一対の板バネ間に設けられており、
前記積層型圧電素子に与圧荷重が加えられた状態で、研磨により前記弁体の前記表面を平滑化することが好ましい。
【0020】
本発明の圧電アクチュエータの製造方法は、
前記変位拡大機構が、前記積層型圧電素子の長手方向軸線に対し対称に配置され、該変位拡大機構の先端部には、一部材により成形される板バネであって中央部分に前記弁体の設置部が設けられる一対の板バネが、前記積層型圧電素子の長手方向軸線に対し対称に設けられており、
前記積層型圧電素子に与圧荷重が加えられた状態で、前記一対の板バネ間の前記設置部に一体成形により弁体を設けることで前記弁体の表面を平滑化することが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明の圧電アクチュエータは、圧電式バルブの弁座に当接する弁体の表面が、積層型圧電素子に与圧荷重が加えられた状態で平滑化されているので、圧電式バルブを組み立てた際、前記弁体の弁座面に対する押圧力や気密性が弱まってエア漏れが生じるリスクを軽減することができる。
また、本発明の圧電アクチュエータは、圧電式バルブの組み立てに際し、弁体を弁座面に潰し代をもって押し付けることで閉弁時のエア漏れを防ぐ場合でも、前記潰し代を大きくとる必要がなく、バルブの高速かつ高精度な開閉に対応することができる。
【0022】
本発明の圧電アクチュエータは、
圧電式バルブの弁座に当接する弁体の表面に滑性化処理が施されていることとすれば、前記弁体の表面の非粘着性、滑性を高めることができるので、圧電式バルブを組み立てた後、該圧電式バルブを長時間動作させなかった場合でも、前記弁体が弁座面に付着し離れにくくなって動作不良を起こすことを防止することができる。
【0023】
本発明の圧電式バルブは、圧電式バルブの弁座に当接する弁体の表面が、積層型圧電素子に与圧荷重が加えられた状態で平滑化されている圧電アクチュエータを用いるので、前記弁体の弁座面に対する押圧力や気密性が弱まってエア漏れが生じるリスクを軽減することができる。
また、本発明の圧電式バルブは、圧電式バルブの組み立てに際し、弁体を弁座面に潰し代をもって押し付けることで閉弁時のエア漏れを防ぐ場合でも、前記潰し代を大きくとる必要がなく、バルブの高速かつ高精度な開閉に対応することができる。
【0024】
本発明の圧電アクチュエータの製造方法は、積層型圧電素子に与圧荷重が加えられた状態で、圧電式バルブの弁座に当接する前記弁体の表面を平滑化するので、前記弁体の弁座面に対する押圧力や気密性が弱まってエア漏れが生じるリスクを軽減することができる圧電アクチュエータを製造することができる。
また、本発明の圧電アクチュエータの製造方法は、積層型圧電素子に与圧荷重が加えられた状態で、圧電式バルブの弁座に当接する前記弁体の表面を平滑化するので、圧電式バルブの組み立てに際し、弁体を弁座面に潰し代をもって押し付けることで閉弁時のエア漏れを防ぐ場合でも、前記潰し代を大きくとる必要がなく、バルブの高速かつ高精度な開閉に対応することができる圧電アクチュエータを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図3】
図3は圧電式バルブに用いる圧電アクチュエータの説明図である。
【
図4】
図4は圧電式バルブに用いる弁座プレートに圧電アクチュエータを固定した状態の説明図である。
【
図5】
図5は圧電式バルブの断面図であって、弁座プレートをバルブ本体内部に配設した状態の説明図である。
【
図6】
図6は
図3のA部拡大図であって、積層型圧電素子に与圧荷重が加えられた状態の圧電アクチュエータの説明図である。
【
図7】
図7は
図6の圧電アクチュエータにおいて、弁体の表面が平滑化されている様子の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、圧電式バルブの一例であって斜視図を示す。
図2は、
図1の圧電式バルブの組立分解図を示す。
図3は、
図1の圧電式バルブに用いる圧電アクチュエータの説明図を示す。
図4は、
図1の圧電式バルブに用いる弁座プレートに圧電アクチュエータを固定した状態の説明図を示す。
図5は、
図1の圧電式バルブの断面図であって、弁座プレートをバルブ本体内部に配設した状態の説明図を示す。
図1乃至
図5に示す圧電式バルブ10は、バルブ本体20、前記バルブ本体20の内部に配設されるとともに該バルブ本体20に固定される弁座プレート25、前記弁座プレート25の両面にネジで固定される圧電アクチュエータ30を備える。
【0027】
前記バルブ本体20は、前面が開口するケースであって、内部には外部の圧縮気体供給源(図示せず)から圧縮気体の供給を受ける気体圧力室を備える。
また、前記バルブ本体20の前面には、コネクタ部50が設けられる。前記コネクタ部50の前面には、該バルブ本体20内に圧縮気体を吸入する気体吸入口51及び前記圧縮気体を排出する気体排出口52が開口する。
【0028】
前記バルブ本体20と前記コネクタ部50の間には、積層型圧電素子32(以下、「圧電素子」という)に給電するための配線基板55が配設され、前記コネクタ部50の一側端であって前記バルブ本体20の側方位置に、前記配線基板55を介して前記圧電素子32に給電するための配線コネクタ29が配設される。
【0029】
前記弁座プレート25は、前記圧電アクチュエータ30の取り付け部を両面に備えるとともに、前記圧電アクチュエータ30の後述する弁体31が当接する弁座26を有する。また、前記弁座プレート25の前方突出部251には、前記弁座26の弁座面から前記コネクタ部50の前記気体排出口52へ連通する気体排出路261が形成される。
【0030】
前記弁座プレート25の前面には、前記バルブ本体20の開口を閉鎖する蓋材28が取り付けられる。前記蓋材28には、前記弁座プレート25の前記前方突出部251が嵌合する開口部281が形成される。また、前記蓋材28には、前記コネクタ部50の前面に開口する気体吸入口51から前記バルブ本体20内に連通する気体吸入路282が形成される。
【0031】
前記弁座プレート25は、例えば合成樹脂材料により成形され、前記配線基板55から前記圧電素子32への配線がモールドされる。
また、前記弁座プレート25の後方位置には、図示しない前記圧電素子32のリード線と接続される前記配線の電極が露出する。
【0032】
前記圧電アクチュエータ30は、
図3に示すように、弁体31、該弁体31の動作に必要な駆動力を変位として発生する圧電素子32、前記圧電素子32の変位を拡大して前記弁体31に作用させる変位拡大機構33を備える。
【0033】
前記圧電素子32には、例えば内部電極層が露出する側面を含む全周面がエポキシ樹脂で薄く被覆された樹脂外装型圧電素子を用いることができる。
また、前記弁体31には、例えばニトリルゴム(NBR)やフッ素ゴム(FKM、FEPM、FFKM)を用いることができる。前記弁体31に用いる前記ニトリルゴムやフッ素ゴムは、例えば硬度80±10のものとすることが好ましい。
【0034】
前記弁体31には、少なくとも弁座26の弁座面に当接する表面にハロゲン化処理等による滑性化処理を施すことができる。
前記圧電式バルブ10を長時間動作させなかった場合、ゴム製の前記弁体31が樹脂製の弁座26の弁座面に付着して離れにくくなり、動作不良を起こすおそれがあるが、前記弁体31の少なくとも弁座に当接する表面に滑性化処理を施して非粘着性、滑性を高めることとすれば、前記動作不良を防止することができる。
【0035】
前記変位拡大機構33は、前記圧電素子32の変位を拡大する変位拡大部34と、前記圧電素子32の変位を前記変位拡大部34に伝達する変位伝達部35を有し、前記弁体31の動作方向の軸線、ここでは、前記弁体31と前記圧電素子32の長手方向軸線を結ぶ直線に対して対称に配置される。
【0036】
前記変位伝達部35は、前記圧電素子32の一端が接合されるU字状のベース基板36と、前記圧電素子32の他端が接合されるキャップ部材37を有する。前記圧電素子32が前記U字状のベース基板36の空間内に配設されることで、前記変位拡大機構33は前記圧電素子32の長手方向軸線を中心として対称な配置とされる。
【0037】
ここで、前記圧電素子32は、前記U字状のベース基板36の空間内であって該ベース基板36のU字状底部361と前記キャップ部材37との間に例えば接着剤を介して組み込まれ、前記ベース基板36のU字状底部361を塑性変形させることで、前記一端が前記ベース基板36のU字状底部361に接合され、前記他端が前記キャップ部材37に接合される。前記圧電素子32には、前記ベース基板36のU字状底部361を塑性変形させることで、前記弁体31の方向(弁体31に押し付ける方向)に与圧荷重が加えられる。
【0038】
前記変位拡大部34は、前記弁体31と前記圧電素子32の長手方向軸線を結ぶ直線に対して対称な配置とされる第1及び第2変位拡大部34a,34bから構成される。
前記第1変位拡大部34aは、第1及び第2ヒンジ39,40、第1アーム41及び第1板バネ42を有する。前記第1アーム41は前記第1ヒンジ39により前記U字状のベース基板36の一方側先端に対し一体とされ、前記第2ヒンジ40により前記キャップ部材37に対し一体とされる。前記第1アーム41の外側先端部には、前記第1板バネ42の一端が接合される。
【0039】
他方、前記第2変位拡大部34bは、第3及び第4ヒンジ43,44、第2アーム45及び第2板バネ46を有する。前記第2アーム45は前記第3ヒンジ43により前記U字状のベース基板36の他方側先端に対し一体とされ、前記第4ヒンジ44により前記キャップ部材37に対し一体とされる。前記第2アーム45の外側先端部には、前記第2板バネ46の一端が接合される。
ここで、前記変位拡大機構33は、例えば前記第1及び第2板バネ42,46を除き、インバー材を含むステンレス材等の金属材料を打ち抜いて一体に成形することができる。
【0040】
また、前記第1板バネ42と前記第2板バネ46は、例えば一枚の金属板材から成形することができる。ここでは、前記第1板バネ42と前記第2板バネ46は、前記圧電素子32の長手方向軸線に対し対称であって中央部分に前記弁体31の設置部48、例えば前記圧電素子32の長手方向軸線に直交する平坦な設置面を有する形状に成形された一枚の金属板材の両側部分に形成されている。そして、前記第1及び第2板バネ42,46の一端は、それぞれ前記第1及び第2アーム41,45の外側先端部に接合されており、前記弁体31は、前記第1及び第2板バネ42,46の他端間であって前記圧電素子32の長手方向軸線上に位置する前記設置部48に設けられている。
【0041】
前記圧電アクチュエータ30は、閉弁状態において前記圧電素子32に通電すると、当該圧電素子32が伸長する。当該圧電素子32の伸長に伴う変位は、前記変位拡大機構33において、前記第1及び第3ヒンジ39,43を支点、前記第2及び第4ヒンジ40,44を力点、前記第1及び第2アーム41,45の外側先端部を作用点としてテコの原理により拡大され、前記第1及び第2アーム41,45の外側先端部を大きく変位させる。
【0042】
そして、前記第1及び第2アーム41,45の外側先端部の変位は、前記第1及び第2板バネ42,46を介して前記弁体31を前記弁座26から離間させ、前記気体排出路261を開放する。
【0043】
他方、上記圧電アクチュエータ30は、前記圧電素子32への通電が解除されると該圧電素子32が収縮し、当該収縮が前記変位拡大機構33を介して前記弁体31を前記弁座26に着座させ、前記気体排出路261を閉鎖する。
【0044】
なお、前記第1板バネ42と前記第2板バネ46を別部材により成形し、前記第1板バネ42の他端に前記弁体31の一方側の側端部を接合し、前記第2板バネ46の他端に前記弁体31の他方側の側端部を接合することで、前記第1及び第2板バネ42,46の他端間に前記弁体31を設けることもできる。
【0045】
図6は、
図3のA部拡大図であって、積層型圧電素子に与圧荷重が加えられた状態の圧電アクチュエータの説明図を示す。
図7は、
図6の圧電アクチュエータにおいて、積層型圧電素子に与圧荷重が加えられた状態で弁体の表面が平滑化されている様子の説明図を示す。
前記圧電アクチュエータ30は、ベース基板36のU字状底部361を塑性変形させることで、圧電素子32には弁体31の方向に与圧荷重が加えられるため、前記変位拡大機構33が歪み、例えば、
図6に示すように、前記第1板バネ42及び第2板バネ46の他端間であって前記設置部48に設けられる前記弁体31の前面が凹状に変形し、圧電式バルブを組み立てた際、前記弁体31の弁座面に対する押圧力や気密性が弱まってエア漏れが生じるリスクがある。
【0046】
そこで、本発明の実施の形態では、前記圧電アクチュエータ30は、前記弁体31の前面が、圧電素子32に与圧荷重が加えられた状態で前記圧電素子32の長手方向軸線、即ち前記弁体31の動作方向の軸線に直交するよう平滑化されている。
【0047】
例えば、本発明の実施の形態において、前記圧電アクチュエータ30は、
図7に示すように、凹状に変形した前記弁体31の前面を、研磨により平滑化することができる。
【0048】
また、本発明の実施の形態において、前記圧電アクチュエータ30は、圧電素子32に与圧荷重が加えられた状態で、前記第1及び第2板バネ42,46の他端間の中央部分に設けられる前記設置部48に対し一体成形により弁体31を設けることで、弁体31の前面を平滑化することができる。
【0049】
本発明の実施の形態における圧電アクチュエータは、圧電式バルブ10の弁座26に当接する弁体31の表面が、前記圧電素子32に与圧荷重が加えられた状態で平滑化されているので、圧電式バルブ10に組み付けた際に、弁体31の弁座面に対する押圧力や気密性が弱まってエア漏れが生じるリスクを軽減することができる。
【0050】
本発明の実施の形態における圧電アクチュエータは、特許文献1に記載されているように、前記弁体を弁座面に潰し代をもって押し付けることで、圧電式バルブを組み立てることもできる。
本発明の実施の形態における圧電アクチュエータは、圧電式バルブの組み立てに際し、前記弁体を弁座面に潰し代をもって押し付けることで閉弁時のエア漏れを防ぐ場合でも、前記潰し代を大きくとる必要がなく、バルブの高速かつ高精度な開閉に対応することができる。
【0051】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものでなく、発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、その構成を適宜変更できることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の圧電アクチュエータは、積層型圧電素子の変位を利用してバルブの開閉を行う圧電式バルブに利用することができる。
【符号の説明】
【0053】
10 圧電式バルブ
20 バルブ本体
25 弁座プレート
251 前方突出部
26 弁座
261 気体排出路
28 蓋材
281 開口部
282 気体吸入路
29 配線コネクタ
30 圧電アクチュエータ
31 弁体
32 積層型圧電素子
33 変位拡大機構
34 変位拡大部
35 変位伝達部
36 ベース基板
361 U字状底部
37 キャップ部材
39 第1ヒンジ
40 第2ヒンジ
41 第1アーム
42 第1板バネ
43 第3ヒンジ
44 第4ヒンジ
45 第2アーム
46 第2板バネ
48 設置部
50 コネクタ部
51 気体吸入口
52 気体排出口
55 配線基板