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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-13
(45)【発行日】2022-12-21
(54)【発明の名称】振動センサー及び振動検知システム
(51)【国際特許分類】
   G01H 9/00 20060101AFI20221214BHJP
   G01H 1/00 20060101ALI20221214BHJP
【FI】
G01H9/00 Z
G01H1/00 E
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019154180
(22)【出願日】2019-08-26
(65)【公開番号】P2021032751
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-02-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000104814
【氏名又は名称】クニミネ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002631
【氏名又は名称】弁理士法人イイダアンドパートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100076439
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 敏三
(74)【代理人】
【識別番号】100161469
【弁理士】
【氏名又は名称】赤羽 修一
(72)【発明者】
【氏名】後藤 佑太
(72)【発明者】
【氏名】篠木 進
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 智博
(72)【発明者】
【氏名】立花 和宏
【審査官】岡村 典子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-35222(JP,A)
【文献】特開2013-165223(JP,A)
【文献】特表2011-525642(JP,A)
【文献】特開平1-253618(JP,A)
【文献】特開昭59-180335(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01H 9/00
G01H 1/00
C09K 11/00
G01L 1/24
G01N 21/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
層状ケイ酸塩鉱物の分散液を充填するセルが2つの偏光板の間に配置され、
セルに充填した、振動により弾性変形する前記層状ケイ酸塩鉱物の分散液の分子配向を、前記偏光板を透過する光量により検出することを特徴とする振動センサー。
【請求項2】
層状ケイ酸塩鉱物の分散液が充填されたセルが2つの偏光板の間に配置され、
前記層状ケイ酸塩鉱物は、前記層状ケイ酸塩鉱物の2質量%水分散液の導電率が1800μS/cm以下で、かつ前記層状ケイ酸塩鉱物の1質量%水分散液の透明度が90%以上となるものであることを特徴とする請求項1に記載の振動センサー。
【請求項3】
前記層状ケイ酸塩鉱物の水分散液のチクソトロピックインデックス値が2~10のものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の振動センサー。
【請求項4】
前記層状ケイ酸塩鉱物がスメクタイト系粘土鉱物であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の振動センサー。
【請求項5】
前記スメクタイト系粘土鉱物がヘクトライトの層間イオンがナトリウムイオンでインターカレートされたものであることを特徴とする請求項4に記載の振動センサー。
【請求項6】
一方の偏光板に薄膜太陽電池が取り付けられていることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の振動センサー。
【請求項7】
前記分散液の分散媒体が、
ホルムアミド、N-メチルホルムアミドから選ばれる1種の有機溶媒、又は
ホルムアミド、N-メチルホルムアミドから選ばれる1種と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキシレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、N,N-ジメチルホルムアミドからなる群から選ばれる1種以上の混合有機溶媒であることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の振動センサー。
【請求項8】
前記分散液の容積が前記セルの内容積の50~90%であるものであることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の振動センサー。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の振動センサーと、光源と、光センサーを備えるものであることを特徴とする振動検知システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動センサー、及び前記振動センサーを備える振動検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
振動センサーは機器と設備の状態監視、学術研究、地震関連の測定(静電容量式地震計、サーボ加速度式地震計、光学式地震計等)において幅広く使用されている。圧電体を利用した多くの振動センサーが現在使用されている。圧電体を利用した振動センサーは電源、電源とセンサーを接続するリード線を必要とするから、電源とリード線に起因する電磁ノイズの影響を受けることが問題となる。この問題を解決するため、外力の強度に比例して発光強度を変化させる応力発光材料を含む発光構造体を有する振動センサーが検討された(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-291875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、外力の強度に比例して発光強度を変化させる応力発光材料を含む発光構造体の製造は難易度が高く、前記発光構造体を有する振動センサーは実用的なものではなかった。
本発明は、電磁ノイズの影響を受けず、容易に製造できる安価な振動センサーとその振動センサーを備える振動検知システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは種々検討を重ねた結果、アスペクト比が20~2000程度の層状ケイ酸塩鉱物が水等の溶媒に分散された分散液は、粒子サイズがおよそ20~500nmで分散しているとみられ、振動により前記層状ケイ酸塩鉱物が分子配向を起こして液晶性を示すことを見出し、この知見に基づき、研究を重ね、本発明をなすにいたった。
本発明の上記の課題は以下の手段により解決された。
<1>
層状ケイ酸塩鉱物の分散液を充填するセルが2つの偏光板の間に配置され、
セルに充填した、振動により弾性変形する前記層状ケイ酸塩鉱物の分散液の分子配向を、前記偏光板を透過する光量により検出することを特徴とする振動センサー。
<2>
層状ケイ酸塩鉱物の分散液が充填されたセルが2つの偏光板の間に配置され、
前記層状ケイ酸塩鉱物は、前記層状ケイ酸塩鉱物の2質量%水分散液の導電率が1800μS/cm以下で、かつ前記層状ケイ酸塩鉱物の1質量%水分散液の透明度が90%以上となるものであることを特徴とする<1>記載の振動センサー。
<3>
前記層状ケイ酸塩鉱物の水分散液のチクソトロピックインデックス値が2~10のものであることを特徴とする<1>又は<2>記載の振動センサー。
<4>
前記層状ケイ酸塩鉱物がスメクタイト系粘土鉱物であることを特徴とする<1>~<3>のいずれか1つに記載の振動センサー。
<5>
前記スメクタイト系粘土鉱物がヘクトライトの層間イオンがナトリウムイオンでインターカレートされたものであることを特徴とする<4>記載の振動センサー。
<6>
一方の偏光板に薄膜太陽電池が取り付けられていることを特徴とする<1>~<5>のいずれか1つに記載の振動センサー。
<7>
前記分散液の分散媒体が
ホルムアミド、N-メチルホルムアミドから選ばれる1種の有機溶媒、又は
ホルムアミド、N-メチルホルムアミドから選ばれる1種と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキシレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、N,N-ジメチルホルムアミドからなる群から選ばれる1種以上の混合有機溶媒であることを特徴とする<1>~<6>のいずれか1つに記載の振動センサー。
<8>
前記分散液の容積が前記セルの内容積の50~90%であるものであることを特徴とする<1>~<7>のいずれか1つに記載の振動センサー。
<9>
<1>~<8>のいずれか1つに記載の振動センサーと、光源と、光センサーを備えるものであることを特徴とする振動検知システム。
【発明の効果】
【0006】
本発明の振動センサーは、電源、電源とセンサーを接続するリード線を必要としないものであるから、電源とリード線に起因する電磁ノイズの影響を受けず、構成要素が少なく廉価に製造できる。また、本発明の振動センサーは、大面積化が可能なものであり、高速道路等の表示板等に装着すれば、地震発生時に運転中のドライバーに地震の発生を目視により掲示できるものである。さらに、本発明の振動センサーは、セル中の層状ケイ酸塩鉱物の分散液のレオロジーの調整により多様な振動に対応できる振動検知システムを提供できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明に係る振動センサーの好ましい一実施形態の概略を示した断面図である。
図2】本発明に係る振動検知システム一例を模式的に示した構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に本発明の好ましい一実施形態を、図1及び2を参照して説明する。
図1に示されるように、振動センサー1は、層状ケイ酸塩鉱物の分散液が充填されたセル3が偏光板2と偏光板4の間に配置される構造を有している。前記セル3と偏光板2及び偏光板4は接していても、接していなくてもよい。
【0009】
前記層状ケイ酸塩鉱物の分散液は振動により弾性変形し、配向して液晶性を示す。ここで、「振動による弾性変形」とは振動によって分散液に加わる応力によりひずみが生じ、除荷することで元に戻るレオロジー特性をもった変形のことである。また、「配向」とは、前記分散液中の粒子の長手方向の向きが一定方向に揃っている状態のことである。
前記層状ケイ酸塩鉱物の粒子は静置した分散液中で単位層面が負電荷、端面では正電荷を帯びており静電的力によって層面-端面が結合したカードハウス構造と言われる構造をとっている。これに外力によるせん断が加わるとカードハウス構造が崩れ、一部で配向状態をとるため、この配向状態をとる部分において旋光性が得られると考えられる。この旋光性は、偏光観察法を用いることで確認することができる。
【0010】
本願発明で使用される前記層状ケイ酸塩鉱物は層状ケイ酸塩鉱物から洗浄等の処理で水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、塩酸、硫酸、硝酸、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、塩化カリウム、硝酸カリウム、硝酸アンモニウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム等の夾雑物が除去された高純度のものが好ましい。前記高純度の層状ケイ酸塩鉱物としては、2質量%水分散液の導電率が1800μS/cm以下で、かつ前記層状ケイ酸塩鉱物の1質量%水分散液の透過率が90%以上となるものが好ましい。
【0011】
前記導電率は1600μS/cm以下であることがより好ましい。また、前記透過率は93%以上であることがより好ましい。実用的な観点から、前記透過率は100%未満である。
【0012】
前記層状ケイ酸塩鉱物の2質量%水分散液の導電率の測定方法は以下のとおりである。
ガラス電極式水素イオン濃度指示計(D-74LAQUAace(株)堀場製作所製)を用いて測定した。2質量%水分散液はラボランスクリュー管瓶No.8 110mlに総量100gとなるように計量しマグネチックスターラーを用いて1時間攪拌した後、1晩静置したものを試料とし、測定温度は25℃とした。
【0013】
また、前記層状ケイ酸塩鉱物の1質量%水分散液の透過率の測定方法は以下のとおりである。
医薬部外品原料規格一般試験法「吸光度測定法」に準拠し、島津製作所製UV-1700を用いて吸光光度測定用セルに分散媒である純水を採り、500nmにおける純水の透過率を100%として構成を行った吸光光度計を用いて透過率を測定した。1質量%水分散液はラボランスクリュー管No.8 110mlに総量100gとなるようにしたものを3時間攪拌したものを試料と、測定温度は25℃とした。
【0014】
前記層状ケイ酸塩鉱物は、天然のものであっても、合成されたものであってもよく、また、未変性のものでも変性したものでもよい。好ましい前記層状ケイ酸塩鉱物は、ベントナイト、ヘクトライト、モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、スチーブンサイト等のスメクタイト系粘土鉱物である。このうち、ベントナイトは天然に産出する無機系粘土鉱物であるため安全性に優れている。また、ベントナイトは土中の微生物によって分解されることがなく長期的に安定であり、さらに低価格である。前記層状ケイ酸塩鉱物として、ベントナイト、ヘクトライト、モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、スチーブンサイトから選ばれた1種の鉱物を単独で用いることも、または2種以上の鉱物を用いることもできる。これらの鉱物の層間イオンは特に限定はない。
【0015】
より好ましい前記層状ケイ酸塩鉱物はヘクトライトの層間イオンがナトリウムイオンでインターカレートされたものである。かかる層状ケイ酸塩鉱物の代表的な合成スメクタイト系粘土鉱物の製品はスメクトンSWN(クニミネ工業株式会社製)であるが、これに限定されるものではない。
【0016】
前記層状ケイ酸塩鉱物が分散される溶媒は水であっても、有機溶媒であってもよい。有機溶媒の具体例は、(1)電子供与性と電子授与性を併せ持つ二官能性分子であるホルムアミド、N-メチルホルムアミドから選ばれる1種、又は(2)ホルムアミド、N-メチルホルムアミドから選ばれる1種と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキシレングリコール、ヘキシレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオールなどの2価アルコール類、グリセリンなどの3価アルコール類、ジグリセリン、ポリグリセリンなどの多価アルコール類、N,N-ジメチルホルムアミドなどのアミド類から選ばれる1種以上からなる混合有機溶媒である。
【0017】
前記層状ケイ酸塩鉱物の水分散液の好ましい濃度は1~7質量%である。前記濃度の調整により、前記層状ケイ酸塩鉱物の分散液を多彩な振動に対応できる。その他有機溶媒などを用いた分散液濃度はその限りではなく、前記層状ケイ酸塩鉱物の分散液の好ましいせん断速度依存性(分散液の粘度がせん断速度(流れの速さ)に依存する性質)、すなわちチクソトロピックインデックス(Ti)値は2~10である。前記チクソトロピックインデックス(Ti)値の測定方法は以下のとおりである。
日本薬局方一般試験法粘土測定法に準拠し、B型粘度計、例えば東機産業製TVB-10を用いて6rpmでせん断をかけ1分後の数値を測定し、η6粘度[mPa・s]とした。同様に、B型粘度計を用いて60rpmでせん断をかけ1分後の数値を測定しη60粘度[mPa・s]とした。η6粘度/η60粘度をチクソトロピックインデックス(Ti)値とした。η6粘度、η60粘度に相当するせん断がかけられれば、レオメーターなどの粘性測定器を使用しても良く、測定装置は前述した限りではない。2質量%水分散液は300ml容ディスポカップに総量100gとなるように計量し1800rpmで4時間攪拌したものを750rpmで5分間攪拌し、25℃恒温槽で2時間静置したもの用いて測定した。
【0018】
前記層状ケイ酸塩鉱物が充填されるセルは可視光を含む電磁波を透過させるものである。前記セルを構成する材料は特定のものに限定されない。前記材料の具体例は、透明性無機材料として鉛ガラス、ホウケイ酸ガラス、石英ガラス、透明性樹脂材料としてポリメチルメタクリレート(PPMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート(CR-39)、ポリ-4-メチルペテン(1 TPX)、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂などである。また、セル内の前記分散液の揺れの程度の観点から、前記分散液の容積は前記セルの内容積の50~90%であることが好ましい。
【0019】
前記層状ケイ酸塩鉱物の分散液は上述のとおり振動により配向を起こして液晶性を示す。したがって、振動時の前記分散液の光透過度(透過率)は静置された状態の前記分散液の光透過度よりも大きくなる。本発明の振動センサー及び振動検知システムは前記分散液のこの性質を利用している。
【0020】
図2に示されるように、本発明の振動センサーの一実施形態では、前記層状ケイ酸塩鉱物の分散液が充填されたセル3が偏光板2と偏光板4の間に配置される構造を有する振動センサー1の一方の偏光板2側に光源5が配置され、また、他方の偏光板4側に光センサー7が配置される。図2では、偏光板4と光センサー7は離れているが、これらは接していてもよい。例えば、光源5側の反対側に配置される偏光板4の光が入射する側と反対の面に接して薄膜太陽電池が取り付けられていてよい。セル3の光透過度はセル3の振動の程度により変化するから、光源5から発せられた光6がセル3を透過して光センサー7で感知される光量はセル3の振動の程度により変化する。さらに、偏光板2と偏光板4は直交ニコルに配置されていてよい。この場合、セル3中の分散液が透明でないと、偏光板2を通過した偏光がセル3を通過できたとしても当該偏光の振動方向が偏光板4を通過できるものでないから、当該偏光は偏光板4を通過できないが、セル3中の分散液が振動し、前記分散液中の層状ケイ酸塩鉱物の粒子が一定方向に配向して前記分散液が透明であるときは、光源5側に配置された偏光板2で偏光された光が散乱され、散乱光の一部は光源5側の反対側に配置された偏光板4を通過できる振動方向を有しているため、当該散乱光の一部が偏光板4を通過でき、偏光板4を通過した光を光センサー7で検出できる。
【0021】
光源5は特に限定されず、光源5として可視光を発する電球、LEDライト等が例示される。光源5から発生される光の好ましい強度は5~100,000ルクスである。
【実施例
【0022】
次に、本発明を下記の実施例に基づいて更に詳細に説明する。本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0023】
実施例1~2及び比較例1~2
図1に示したように、偏光板を直交ニコルで対面させ、その間に層状ケイ酸塩鉱物の分散液又は水80mlが充填された110ml容のスクリュー管瓶が置かれた。スクリュー管瓶の上部には3cm×1.5cm×π程度の空間が設けられた。一方の偏光板側に光源としてLEDライトが配置され、また、他方の偏光板側に光センサーとしてソーラーパネル(エレキット社製ソーラーバッタ付属品寸法23×50×14mm)が配置され、前記ソーラーパネルの起電力を測定するオシロスコープ(TEXIO社製CS-4125A)が前記ソーラーパネルに接続された。スクリュー管瓶、2つの偏光板、光源及びソーラーパネルは直線状に固定され、左右6cm程度のストロークで2往復/秒程度の振動を20秒間加えた。前記振動条件は、簡易的にチクソトロピック性を有する粘土分散液がレオロジー特性を発現させるために設定された。
【0024】
層状ケイ酸塩鉱物の分散液として、合成スメクタイト系粘土鉱物であるスメクトンSWN(商品名、クニミネ工業株式会社製)の2質量%水分散液(実施例1)、スメクトンSWNの2質量%有機溶剤(N-メチルホルムアミド78質量%とグリセリン20質量%の混合物)分散液(実施例2)、モンモリロナイトを主成分とし夾雑物を含んだ天然物であるベントナイトを精製した層状ケイ酸塩鉱物のクニピアF(商品名、クニミネ工業株式会社製)の2質量%水分散液(比較例2)を用いた。また、層状ケイ酸塩鉱物の代わりに水を使用した(比較例1)。スメクトンSWN及びクニピアFの2質量%水分散液の導電率、η60粘度及びη6粘度、1質量%水分散液の透過率を表1に示す。実施例1の水分散液及び実施例2の有機溶剤分散液は振動により分子配向を示すものであったが、比較例2の水分散液は振動により分子配向を示すものでなかった。
【0025】
【表1】
【0026】
<導電率の測定方法>
ガラス電極式水素イオン濃度指示計D-74LAQUAace(株)堀場製作所製を用いて測定した。スメクトン-SWNを2.0g採取し、98.0gの純水の入ったラボランスクリュー管瓶No.8 110mlに投入し、マグネチックスターラーを用いて1時間攪拌した後、1晩静置したものを2質量%水分散液試料とし、測定温度は25℃とした。
同様にクニピア‐Fを2.0g採取し、98.0gの純水を量り取ったラボランスクリュー管瓶No.8 110mlに投入し、マグネチックスターラーを用いて1時間攪拌した後、1晩静置したものを2質量%水分散液試料とし、測定温度は25℃とした。
【0027】
<透過率の測定方法>
医薬部外品原料規格一般試験法「吸光度測定法」に準拠し、島津製作所製UV-1700を用いて吸光光度測定用セルに分散媒である純水を採り、500nmにおける純水の透過率を100%として構成を行った吸光光度計を用いて透過率を測定した。スメクトン‐SWN1.0gを99.0gの純水を量り取ったラボランスクリュー管No.8 110mlに投入し、800rpmで3時間攪拌したものを試料とし、測定温度は25℃とした。同様にクニピア‐F1.0gを99.0gの純水を量り取ったラボランスクリュー管No.8 110mlに投入し、800rpmで3時間攪拌したものを試料とし、測定温度は25℃とした。
【0028】
<η6粘度及びη60粘度の測定方法>
日本薬局方一般試験法粘土測定法に準拠し、B型粘度計東機産業製TVB-10を用いて6rpmでせん断をかけ1分後の数値を測定し、η6粘度[mPa・s]とした。測定後速やかに60rpmでせん断をかけ1分後の数値を測定し、η60粘度[mPa・s]とした。スメクトン‐SWN2.0gを98.0gの純水を量り取った300ml容ディスポカップに投入し、1800rpmで4時間攪拌したものを更に750rpmで5分間攪拌し、25℃恒温槽で2時間静置して2質量%水分散液試料とした。
同様にクニピア‐F2.0gを98.0gの純水を量り取った300ml容ディスポカップに投入し、1800rpmで4時間攪拌したものを更に750rpmで5分間攪拌し、25℃恒温槽で2時間静置して2質量%水分散液試料とした。
【0029】
実施例1~2及び比較例1~2におけるスクリュー管瓶を静置した時と振動させた時のソーラーパネルの起電力の測定結果を表2に示す。
【0030】
【表2】
【0031】
表2に示すように、実施例1及び2の層状ケイ酸塩鉱物の分散液が用いられた振動検知システムは、振動センサーの振動による振動センサーを通過する光量の変化をソーラーパネルの起電力の変化として検知した。付言すれば、スクリュー管瓶静置時の起電力とスクリュー管瓶振動時の起電力の差が大きかった。
水が用いられた比較例1の振動検知システム、層状ケイ酸塩鉱物の1質量%水分散液の透明度が本発明の範囲外の層状ケイ酸塩鉱物の分散液が用いられた比較例2の振動検知システムは、振動センサーの振動による振動センサーを通過する光量の変化をソーラーパネルの起電力の変化として検知できなかった。付言すれば、クリュー管瓶静置時の起電力とスクリュー管瓶振動時の起電力の差が小さいか、起電力自体が非常に小さかった。
この結果から、振動により弾性変形する層状ケイ酸塩鉱物の分散液を用い、安価な振動センサーとその振動センサーを備える振動検知システムを提供できることが確認された。
【符号の説明】
【0032】
1…振動センサー、 2…偏光板、
3…層状ケイ酸塩鉱物の分散液が充填されたセル、 4…偏光板、 5…光源、
6…光、 7…光センサー
図1
図2