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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-13
(45)【発行日】2022-12-21
(54)【発明の名称】小便器
(51)【国際特許分類】
   E03D 13/00 20060101AFI20221214BHJP
【FI】
E03D13/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019162323
(22)【出願日】2019-09-05
(65)【公開番号】P2021038621
(43)【公開日】2021-03-11
【審査請求日】2021-06-02
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 販売日:平成31年 3月18日 販売した場所:株式会社門馬(東京都府中市幸町1丁目25番16号)公開者:伊藤鉄工株式会社 公開された発明の内容:伊藤鉄工株式会社が、株式会社門馬に、伊藤光男と藤繁俊五が協働で発明した小便器を販売した。
(73)【特許権者】
【識別番号】000118590
【氏名又は名称】伊藤鉄工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002011
【氏名又は名称】特許業務法人井澤国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100072039
【弁理士】
【氏名又は名称】井澤 洵
(74)【代理人】
【識別番号】100123722
【弁理士】
【氏名又は名称】井澤 幹
(74)【代理人】
【識別番号】100157738
【弁理士】
【氏名又は名称】茂木 康彦
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 光男
(72)【発明者】
【氏名】藤繁 俊五
【審査官】七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-031703(JP,A)
【文献】特公昭49-043424(JP,B1)
【文献】特開2000-328635(JP,A)
【文献】特開2014-105566(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 1/00- 7/00
E03D 11/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄水を下方に流す本体部と、その流された洗浄水を収集するボウル部と、
前記ボウル部が収集した洗浄水を、臭いを防止するための封水として一定量保持するトラ ップ部と、
前記トラップ部に一定量以上の洗浄水が流入したときにその一定量以上の洗浄水が排水される排水部と、を有し、
前記本体部は、その本体部の上端に配置された天板部と、を有し、前記洗浄水を供給する洗浄水吐部を、前記天板部の直下に配置し、
前記洗浄水吐部は、平面視ほぼ台形状であり、前記台形状における上底に相当する上底部が、前記本体部の内部に倣うように平面視凸曲線形状であり、
前記本体部と前記ボウル部と、は鋳造によって一体に成型されるとともに、前記トラップ部と、前記排水部とは、ともに鋳造によって成型される小便器。
【請求項2】
前記トラップ部は、前記排水部に接続される管状の排管部と、を有し、
前記排水部は、全体としてほぼ円筒形状を呈し、前記排管部と接続され、かつ蓋となる排水蓋部と、排水本体部と、を有し、
前記排水本体部は、排水受け部をさらに有し、前記排水受け部の内径は、前記排管部の内径より大となるように構成されている請求項1記載の小便器。
【請求項3】
前記排水本体部は、管状を呈する排水本体孔部をさらに有し、前記排水本体孔部は、前記排水受け部の中心からずれた位置に配置するとともに、前記排水本体部は、前記排水蓋部に対して平面視180度回転可能に取り付けることができる請求項2記載の小便器。
【請求項4】
前記洗浄水吐部は、前記天板部の直下であって、前記天板部と接するように配置された第1パッキンと、前記第1パッキンと接し、かつ第1板部下底を有し、洗浄水を導入する第1板部と、前記導入した洗浄水を受け止める第2板部下底を有する第2板部と、前記導入した洗浄水が漏水することを防止するための第2パッキンと、を有し、前記第1板部と、前記第2板部と、の外形は互いに相似形を呈するとともに、前記第2パッキンは、下辺部とを有し、
前記第1板部と、前記第2板部との間において、前記下辺部は、前記第1板部下底および前記第2板部下底に沿うように配置する請求項記載の小便器。
【請求項5】
前記本体部と、前記ボウル部は、変性エポキシ樹脂下塗り塗料を塗布した第1層と、エポキシ樹脂中塗り塗料を塗布した第2層と、ポリウレタン樹脂上塗り塗料を塗布した第3層と、を有し、前記第1層の上に前記第2層を有し、さらに前記第2層の上に前記第3層の塗装を有する請求項1からいずれかに記載の小便器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小便器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、小便器は、陶器製のものが使用されている。これは、大量生産に好ましいものであり、表面に比較的凹凸がなく、細菌の繁殖を抑えられ衛生的であることから長年使用されている。
【0003】
このような小便器は個人の住宅用のみならず、公園などの公共施設においても使用されている。また、このような小便器に関する出願は多数みられ、例えば、特開平07―011690号公報に記載されている小便器も陶器製のものが開示されている。
【0004】
しかしながら近年公園などの公共施設に設置された小便器を破壊するという不法行為を行う者がいる。すなわち小便器は、陶器製であるために、バールのようなもので叩き割られる破壊される発生している。このような場合、破壊された小便器の修復に多大な費用がかかるとともに、その修復までの時間的損失も大である。
【0005】
このような破壊した者にその賠償を求めることができるが、逃亡していることもあり容易ではない。また、その修復の間、他の者の利用ができないことから、破壊されにくい小便器が求められている。また、公共施設に設置するものであることから、排水に関するトラブルを削減することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平07―011690号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記の点に着目してなされたもので、その課題は、破壊されにくく、かつ排水に関するトラブルを削減することができる小便器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の課題を解決するために、第1観点の小便器は、洗浄水を下方に流す本体部と、その流された洗浄水を収集するボウル部と、ボウル部が収集した洗浄水を、臭いを防止するための封水として一定量保持するトラップ部と、トラップ部に一定量以上の洗浄水が流入したときにその一定量以上の洗浄水が排水される排水部と、を有し、本体部とボウル部とは、鋳造によって一体に成型されるとともに、トラップ部と、排水部とは、ともに鋳造によって成型されるというものである。
【0009】
また、第2観点の小便器は、第1観点において、トラップ部は、排水部に接続される管状の排管部と、を有し、排水部は、全体としてほぼ円筒形状を呈し、排管部と接続され、かつ蓋となる排水蓋部と、排水本体部と、を有し、排水本体部は、排水受け部をさらに有し、排水受け部の内径は、排水部の内径より大きく構成されているというものである。
【0010】
また、第3観点の小便器は、第1観点から第2観点において、排水本体部は、管状を呈する排水本体孔部をさらに有し、排水本体孔部は、排水受け部の中心からずれた位置に配置するとともに、排水本体部は、排水蓋部に対して平面視180度回転可能に取り付けることができるというものである。
【0011】
また、第4観点の小便器は、第1観点から第3観点において、本体部は、その本体部の上端に配置された天板部と、を有し、洗浄水を供給する洗浄水吐部を、天板部の直下に配置したというものである。
【0012】
また、第5観点の小便器は、第4観点において、洗浄水吐部は、平面視ほぼ台形状であり、台形状における上底に相当する上底部が、本体部の内部に倣うように平面視凸曲線形状であるというものである。
【0013】
また、第6観点の小便器は、第5観点において、洗浄水吐部は、天板部の直下であって、その天板部と接するように配置された第1パッキンと、第1パッキンと接し、かつ洗浄水を導入する第1板部と、導入した洗浄水を受け止める第2板部と、導入した洗浄水が漏水することを防止するための第2パッキンと、を有し、第1板部と、前記第2板部と、の外形は互いに相似形を呈するとともに、第2パッキンは、第1板部と、第2板部との間において、その第1板部および第2板部の後方に配置するというものである。
【0014】
また、第7観点の小便器は、第1観点からまた、第6観点において、本体部と、ボウル部は、変性エポキシ樹脂下塗り塗料を塗布した第1層と、エポキシ樹脂中塗り塗料を塗布した第2層と、ポリウレタン樹脂上塗り塗料を塗布した第3層と、を有し、第1層の上に第2層を有し、さらに第2層の上に第3層の塗装を有するというものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明は以上のように構成され、かつ、作用するものであるから、破壊されにくく、かつ排水に関するトラブルを削減することができる小便器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】Aは、本実施例における小便器の斜視図である。Bは、本実施例における小便器の正面斜視図である。
図2】Aは、本実施例における小便器の正面図である。Bは、本実施例における小便器の平面図である。
図3】Aは、本実施例における小便器の側面図である。Bは、本実施例における小便器の断面図である。
図4】洗浄水吐部を透視した状態を示す平面図である。
図5】Aは、図2Aの部分拡大図である。Bは、図3Bの部分拡大図である。
図6】Aは、洗浄水吐部を平面図である。Bは、洗浄水吐部の分解正面図である。
図7】Aは、第1パッキンの平面図である。Bは、第1パッキンの正面図である。
図8】Aは、第1板部の平面図である。Bは、第1板部の正面図である。
図9】Aは、第2パッキンの平面図である。Bは、第2パッキンの正面図である。
図10】Aは、第2板部の平面図である。Bは、第2板部の正面図である。
図11】Aは、トラップ部の平面図である。Bは、トラップ部の底面図である。Cは、トラップ部の側面図である。Bは、トラップ部の断面図である。
図12】トラップ部と排水部の拡大断面図である。
図13】Aは、排水蓋部の平面図である。Bは、排水蓋部の断面図である。
図14】Aは、排水本体部の平面図である。Bは、排水蓋部の側面図である。Cは、排水本体部の断面図である。Dは、排水蓋部を180度回転した状態の排水本体部の断面図である。
図15】Aは、壁WからX距離に配置した小便器の断面図である。Bは、壁WからY距離に配置した小便器の断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図示の実施形態を参照して本実施例について説明する。本実施例の小便器10は、いわゆるストール型小便器であり、汚水を下方に流す本体部20と、その流された汚水を収集し、排水部50に流すためのボウル部40と、を有し、それらは一体として鋳造されている。このように、小便器10は、鋳鉄製であり、特にダグタイル鋳鉄が好ましい。
【0018】
また、小便器10における本体部20と、ボウル部40は、表面を塗装することで保護することが好ましい。例えば、下塗りをする下塗工程と、中塗りをする中塗工程と、上塗りをする上塗工程と、の3工程の塗装工程が好ましく、下塗工程で塗料を塗布した第1層と、中塗工程で塗布した第2層と、上塗工程で塗布した第3層とを有するものである。
【0019】
具体的には、素地を調整するために、鋳造後、表面に付着した、油脂、各種塩類などの付着物を除去した後に、さび止めを目的とし、下塗工程として、変性エポキシ樹脂下塗り塗料を塗布する。この場合の膜厚は50マイクロメートルが好ましい。これを2回繰り返す。これが下塗工程において所定の塗料を塗布することで第1層が構成される。
【0020】
また、第1層が固化した後に、中塗工程として、エポキシ樹脂中塗り塗料を塗布する。これは、膜厚を厚くするとともに、下塗り塗料を保護し、かつ、上塗りの仕上がり感を向上させるために行うものである。なお、この場合の膜厚は30マイクロメートルが好ましい。これが中塗工程において所定の塗料を塗布することで第2層が構成される。
【0021】
次に、エポキシ樹脂中塗り塗料が固化したのちに、上塗工程としてポリウレタン樹脂上塗り塗料を塗布する。これは、耐薬品性、耐候性、耐水性、着色 を目的として行うものである。なお、この場合の膜厚は30マイクロメートルが好ましい。また、これを2回繰り返す。これが上塗工程において所定の塗料を塗布することで第3層が構成される。
【0022】
このように、小便器10における本体部20と、ボウル部40は、下塗工程と、中塗工程と、上塗工程との3工程を行うが、下塗工程で使用する塗料は変性エポキシ樹脂下塗り塗料が好ましく特に好ましくは、日本ペイント株式会社製のハイポン20である。
【0023】
また、中塗工程で使用する塗料はエポキシ樹脂中塗り塗料が好ましく、特に、同社製のハイポン30マスチック中塗りが好ましい。これが中塗工程において所定の塗料を塗布した第2層である。また、上塗工程で使用する塗料はポリウレタン樹脂上塗り塗料が好ましく、特に、同社製のハイポン50が好ましい。
【0024】
このように、小便器10における本体部20と、ボウル部40は、第1層と、その第1層の上に第2層と、その第2層の上に第3層の塗装を有するものである。また好ましくは、下塗工程において、変性エポキシ樹脂下塗り塗料を塗布した第1層と、中塗工程において、エポキシ樹脂中塗り塗料を塗布した第2層と、上塗工程において、ポリウレタン樹脂上塗り塗料を塗布した第3層と、を有し、第1層の上に第2層を有し、さらに第2層の上に第3層の塗装を有するというものである。従って、本体部20と、ボウル部40の素地と接するものは第1層であり、第3層が外気に触れるというものである。
このように、本体部20と、ボウル部40は、第1層、第2層、第3層の塗膜を有しているために、錆に耐性を有し、かつ、汚れが付着しにくいものとなるので清浄性を保つことができる。
【0025】
本体部20は、平面視曲面状であり角丸のほぼ三角形状を呈するとともに、図3Bにおいて、水平方向に張り出した天板部21から曲線状の曲線部22を経て垂直方向に下降する壁部23を有する構成であり、その下方において、縦断面視Jの字状のボウル部40を有している。また本体部20は本体取り付け部20a、20aを有し、建物の壁Wに固定することができる。
【0026】
本体部20の下部に、ボウル部40が配置され、開口部であるボウル開口部41と、その直下に段差状を呈する導水部42と、ボウル本体部43とを有する。ボウル本体部43の下部に、排水部50を配置している。
【0027】
ボウル開口部41の縁部分は、ボウル部40よりも肉厚の構成により汚水の跳ね返りを防いでいる。また、導水部42は、ボウル開口部41の直下であって、ボウル本体部43の上部において、後述する洗浄水吐部30から排出された洗浄水が周回するように段差を有するように構成されている。
【0028】
導水部42は、ボウル本体部43全域に渡って洗浄水を供給するためのもので、後述する洗浄水吐部30から排出された洗浄水を、その段差である導水部42を伝って流水させることで、徐々にその導水部42から、洗浄水があふれ出し、ボウル本体部43の全域にわたって洗浄することができる。
【0029】
また、本体部20の上端に配置された天板部21は、ほぼ角丸の三角形状呈し、いわば三日月状というべき形状である。
【0030】
天板部21は、洗浄水を小便器10に供給するための給水部25を有する。給水部25は図示しない水道管に接続することで、洗浄水の供給を受けることができる。また、天板部21の直下には、その洗浄水を本体部20における壁部23に沿うように排水するための洗浄水吐部30が配置されている。洗浄水吐部30の平面形状は、本体部20の内部形状に倣う形状を呈しており、上記のとおり、横断面視ほぼ台形状であり、その台形状における上底に相当する上底部26と、下底に相当する下底部27が、それぞれ平面視凸曲線と平面視凹曲線というべき形状を呈している。
【0031】
洗浄水吐部30は、天板部21の直下であって、その天板部21に接するように配置された第1パッキン310と、給水部25と接続する第1板部320と、第2板部330と、その第1板部320と、その第2板部330との間に配置された第2パッキン340とを有する。
【0032】
第1板部320は、給水部25から流入する洗浄水を導入するものであって、第2板部330は、その流入した洗浄水を、受け止めるものであり、第2パッキン340とあいまって、その流入した洗浄水を前方Fへ流出するように誘導するものである。第1パッキン310は、天板部21と第1板部320との間に配置され、給水部25から流入する洗浄水の漏水および第1板部320との接触による損傷を防止するためのものである。
【0033】
第1パッキン310と、第1板部320と、第2板部330と、は、それぞれ相似形を呈し、徐々にその外形が大きくなるように設定されている(図6参照)。また、それらは、平面視ほぼ台形状であり、その台形における上底と下底に相当する部分が、それぞれ凸曲線と凹曲線というべき形状を呈している。すなわち第1パッキン310は、平面視ほぼ台形状であり(図7A参照)、その台形における上底に相当する第1パッキン上底311と下底に相当する第1パッキン下底312が、それぞれ凸曲線および凹曲線というべき形状を呈している。また、第1パッキン310のほぼ中央に、後述する給水部25と接続する第1板部320における接続部323を挿入するための開口部313を有している。また、上底311の両側に配置した両側部314、314も、本体部20の内部の形状に沿うように曲線状を呈している。また、第1パッキン下底312に沿うように、ネジPをねじ込むための孔部315、315、315を有している。尚、中央の孔部315は、開口部313と一体化している。
【0034】
第1板部320は、第1パッキン310に密着しており、第1パッキン310より、ふたまわりその外形が大となる構成である。具体的にはその第1板部320の面積は、第1パッキン310の面積よりおよそ20パーセント大となることが好ましい。第1板部320は、平面視ほぼ台形状であり(図8A参照)、その台形における上底に相当する第1板部上底321と下底に相当する第1板部下底322が、それぞれ凸曲線状および凹曲線というべき形状を呈している。また、第1板部320のほぼ中央に、給水部25から、清浄水の供給を受けるための接続部323を有する。また、第1板部上底321の両側に配置した第1板部両側部324、324も、本体部20の内部の形状に沿うように曲線状を呈している。また、第1第1板部下底322に沿うように、ネジPをねじ込むための孔部325、325、325を有している。
【0035】
第2板部330は、第1板部320より、ひとまわりその外形が大となる構成である。具体的にはその第2板部330の面積は、第1板部320の面積よりおよそ13パーセント大となることが好ましい。また、第2板部330は、平面視ほぼ台形状であり(図10A参照)、その台形における上底に相当する第2板部上底331と下底に相当する第2板部下底332が、それぞれ凸曲線および凹曲線というべき形状を呈している。また、第2板部上底331の両側に配置した第2板部両側部334、334も、本体部20の内部の形状に沿うように曲線状を呈している。また、第2板部下底332に沿うように、ネジPをねじ込むための孔部335、335、335を有している。




【0036】
第2パッキン340は、第1板部320から導入された洗浄水を後方Rへ漏水することを防止するためのものであり、第1板部320と第2板部330との間に配置されている。第2パッキン340は所定幅を有する帯状であって、下辺部341は、凹曲線を呈し、その曲率は、第1板部下底322および第2板部下底332とほぼ一致し、それらに沿うように配置されている(図6、9参照)。このように、第2パッキン340は、第1板部320と第2板部330との間において、それらの後方Rに配置されているので、上記のとおり、洗浄水吐部30の後方Rへ洗浄水が流出することを防止している。また、洗浄水吐部30における第1パッキン310と、第1板部320と、第2板部330と、は、図5Bにおいて、徐々に前方Fに張り出すように、段差状に配置されている。また、下辺部341に沿うように、ネジPをねじ込むための孔部345、345、345を有している。
【0037】
上記構成の洗浄水吐部30は、給水部25から供給された洗浄水を吐出する。そのときに、洗浄水吐部30における第1パッキン310は天板部21に接するように配置され、本体部20の曲線部22に、徐々に前方Fに張り出すように段差状に配置されている第1パッキン310と、第1板部320と、第2板部330とが、その曲面に倣うように、かつ隙間Sを有するように配置されているので(図5B参照)、洗浄水が、その曲線部22から壁部23に沿うように流れ、本体部20の全域にわたって洗浄することができる。この隙間Sは、例えば、2ミリメートルから4ミリメートル程度が好ましく、とくに3ミリメートルが好ましい。
【0038】
また、給水部25から供給された洗浄水は、第1板部320と第2板部330との間に進入し、その前方Fに排水される。なお、第2パッキン340は、第1板部320と第2板部330との間においてその後方Rに配置されているので、その洗浄水は後方Rに排水されない。
【0039】
すなわち、洗浄水吐部30の第1板部320と、第2板部330との間から洗浄水が排水される。詳述すれば、第1板部320における第1板部上底321とその両側に配置した第1板部両側部324、324と、第2板部330における第2板部上底331とその両側に配置した第2板部両側部334、334と、の間から洗浄水が排水される(図6A参照)。その洗浄水は、本体部20における壁部23全域に沿うように落下し、その壁部23全域を洗浄する。さらに落下した洗浄水は、段差状の導水部42に、沿うように流れ、後方Rに回り込みボウル本体部43の上部において周回するよう流れつつ、さらにその段差状の導水部42から落下し、ボウル本体部43全域を洗浄する。
【0040】
ボウル本体部43の下部にトラップ部50を有する。トラップ部50は、平面視欠円状を呈する開口部43aの内部において、後述する排水部60に接続するための管状の排管部51と、その周囲に、臭気を防ぐために、洗浄水からなる封水を貯留するための貯留部52と、その排管部51の上部に蓋をするようにトラップ蓋部53と、を有する。
【0041】
トラップ蓋部53は、開口部43a内に配置するためのものであり蓋状を呈するトラップ本体部531とその上部につまみ部532と、本体部531の下部に筒状を呈する筒状部533とその内部において平面視放射状に配置されたリブ534、534、534を有する。
【0042】
トラップ本体部531は、平面視欠円状を呈し、その欠円状を呈する欠円部531aは、前方Fに配置される。設置する方向を規定するためである。
【0043】
また、トラップ部50の下部に排水部60を有する。排水部60は、全体としてほぼ円筒形状を呈し、排水蓋部61と、排水本体部62とを有する。排水蓋部61は、文字通り、排水本体部62の蓋となるものであって、平面視ほぼ円盤形状を呈し、その円盤形状の中心からずれた位置に、円形の孔である孔部61aを有する。
【0044】
孔部61aは、管状の排管部51を配置し、その管状の排管部51から流入する洗浄水を受け入れるためのものである。また、排水蓋部61は、排水本体部62と固定するために円周上に、平面視12時の方向にネジ孔61b4、3時の方向にネジ孔61b3、6時の方向ネジ孔61b2、9時の方向ネジ孔61b1の計4箇所のネジ孔を有している。
【0045】
排水本体部62は、排水部60の外郭を構成するものである。また、排水本体部62は形が円筒状を呈する筒部63と、筒部63の内部であって、筒部の上端部63aから、内部に盆地状を呈し、平面視円形状であって底部分が平坦な蓋受け部64と、蓋受け部64からさらに落ち込むように構成され、平面視円形状であって、いわば2番底となる排水受け部65とを有する。また、排水受け部65における中心からずれた位置に、平面視円形であって管状を呈する排水本体孔部66を有する。
【0046】
この場合排水蓋部61に対して排水本体部62は、平面視180度回転可能に取り付けることができる。すなわち、排水蓋部61の位置を変えずに、排水本体部62は、平面視180度回転させる。その後図示しないボルトで、排水蓋部61に排水本体部62を固定する。具体的には、排水蓋部61におけるボルト孔61b1,61b2,61b3,61b4と、排水本体部62におけるボルト受け孔64b1,64b2,64b3,64b4と、がそれぞれ対応している場合において、排水本体部62を平面視において180度回転することによって、ボルト受け孔64b1,64b2,64b3,64b4と、ボルト受け孔64b3,64b4、64b1,64b2が、それぞれ対応し、図示しないボルトによって固定する。これにより、管状を呈する排水本体孔部66の位置Xを位置Yに変更することができる。この排水本体孔部66は、排水管700に接続することができる(図13図14参照)。
【0047】
このように、排水管700に排水本体孔部66を接続することで、小便器10が機能するが、この排水管700は、壁Wからの距離が異なる場合がある。特に、その排水管700の中心と壁Wとの距離が、上述の位置Xと、位置Yの2種類あることから、排水本体部62を平面視180度回転させ、排水本体孔部66の位置を変えることで、その異なる位置に配置した排水管700に対応することができる(図14C、D図15A、B参照)。
【0048】
このように、排水部60とは、管状の排管部51における押さえ部55によって、パッキン56を介して、排水蓋部61に配置され、排水蓋部61は、ボルトBによって排水本体部62に取り付けられている。
【0049】
排水受け部65の内径は、排管部51の内径より充分大となるように構成され,例えば、排水受け部65の内径は、89ミリメートルの場合に、排管部51の内径は、44ミリメートルであることが好ましい。このように、排水受け部65の内径を、排管部51の内径より充分大となるように構成したのは、排管部51から流出する洗浄水を、円滑に排水するためである。また、排管部51から流出する洗浄水は、排水受け部65に滞留しつつ、徐々に排水管700に排水されることで円滑に洗浄水が排水される。
【0050】
また、上記のとおり、排水蓋部61の位置をかえず、排水本体部62を平面視180度回転させることで、排水本体孔部66の位置をX位置からY位置に変更することができる。従って、壁Wからその異なる位置に配置された排水管700に対応することができる(図14C、D、図15A、B参照)。すなわち小便器10は、壁際に配置するものであるが、小便器10の位置は定められているのに対し、排水管700の中心は壁WからX距離(図15A参照)またはY距離(図15B参照)のいずれかであることから、小便器10を設置する現場において、そのいずれの位置に配置された排水管700であても迅速に対応することができる。なお、本実施例においては、X距離は200ミリメートルであり、Y距離は220ミリメートルである。
【0051】
このように上記構成の小便器10は、鋳鉄製であるので、堅牢強固にして、破壊されにくいものである。また、上記構成の排水部60を有するために、洗浄水がスムーズに流れるために排水のトラブルが起こりにくく、メンテナンスのコストを削減することができる。また、本体部20とボウル部40は、下塗工程で塗布した第1層と、中塗工程で塗布した第2層と、上塗工程で塗布した第3層と、を有し、その第1層の上に第2層を有し、さらにその第2層の上に第3層の塗装を有するので、防錆効果とともに、耐久性に冨むものである。また、上記構成の洗浄水吐部30が上記の如く、小便器10の上部に配置されているので、本体部20およびボウル部40のほぼ全域に渡って洗浄水を流水させることで、清潔に保つことができる。
【符号の説明】
【0052】
10 小便器
20 本体部
21 天板部
30 洗浄水吐部
310 第1パッキン
320 第1板部
330 第2板部
340 第2パッキン
40 ボウル部
50 トラップ部
51 排管部
52 貯留部
53 トラップ蓋部
60 排水部
61 排水蓋部
62 排水本体部
63 筒部
64 蓋受け部
65 排水受け部
66 排水本体孔部
700 排水管
W 壁
図1
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