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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-13
(45)【発行日】2022-12-21
(54)【発明の名称】リバスチグミン含有経皮吸収型製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/27 20060101AFI20221214BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20221214BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20221214BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20221214BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20221214BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20221214BHJP
【FI】
A61K31/27
A61K9/70 401
A61K47/32
A61K47/38
A61P25/28
A61P43/00 111
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019530996
(86)(22)【出願日】2018-07-12
(86)【国際出願番号】 JP2018026279
(87)【国際公開番号】W WO2019017266
(87)【国際公開日】2019-01-24
【審査請求日】2021-04-30
(31)【優先権主張番号】P 2017139954
(32)【優先日】2017-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000215958
【氏名又は名称】帝國製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川上 智
(72)【発明者】
【氏名】曽我部 学
(72)【発明者】
【氏名】柴田 大樹
【審査官】薄井 慎矢
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/128562(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/174502(WO,A1)
【文献】特表2014-508728(JP,A)
【文献】国際公開第2017/034027(WO,A1)
【文献】特開2016-037464(JP,A)
【文献】国際公開第2017/073516(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/187451(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/074635(WO,A1)
【文献】特開2018-140943(JP,A)
【文献】特開2019-001740(JP,A)
【文献】国際公開第2018/147333(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0336253(US,A1)
【文献】国際公開第2016/103999(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/087926(WO,A1)
【文献】特開2016-069287(JP,A)
【文献】国際公開第2013/047410(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0022602(KR,A)
【文献】特表2014-503523(JP,A)
【文献】Inventi Impact: NDDS,2012年,No.2,pp.140-146
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体層、粘着層、及び剥離層を含み、
前記粘着層は、リバスチグミン、ゴム系高分子、粘着付与樹脂、及び窒素含有基を有する高分子化合物を含有し、
前記窒素含有基を有する高分子化合物は、アミノアルキルメタクリレートコポリマーEを含み、
前記ゴム系高分子は、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体と液状ポリイソプレンゴムとを含むことを特徴とする経皮吸収型製剤。
【請求項2】
前記粘着層は、更にセルロース誘導体を含有する請求項1に記載の経皮吸収型製剤。
【請求項3】
前記セルロース誘導体は、カルボキシメチルセルロース、カルメロースナトリウム、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、及びヒドロキシプロピルメチルセルロースよりなる群から選択される1種以上である請求項2に記載の経皮吸収型製剤。
【請求項4】
前記粘着層における前記リバスチグミンの含有量は、5質量%以上かつ30質量%以下である請求項1~3のいずれかに記載の経皮吸収型製剤。
【請求項5】
前記粘着層における前記窒素含有基を有する高分子化合物の含有量は、1質量%以上かつ20質量%以下である請求項1~4のいずれかに記載の経皮吸収型製剤。
【請求項6】
前記粘着層において、前記リバスチグミンの含有量に対する前記窒素含有基を有する高分子化合物の含有量の質量比は0.05以上かつ4以下である請求項1~5のいずれかに記載の経皮吸収型製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リバスチグミンを含有する貼付剤に関する。特に優れた皮膚接着性及び、安定的なリバスチグミンの皮膚透過性を示すことが可能な経皮吸収型製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
アルツハイマー型認知症の患者においては、脳内コリン作動性神経系の障害が起きていることが報告されている。他方アセチルコリンエステラーゼやブチリルコリンエステラーゼの阻害剤によって、脳内アセチルコリンを増加させることにより、脳内コリン作動性神経系を活性化できることが知られている。上記したアセチルコリンエステラーゼやブチリルコリンエステラーゼに対して、阻害作用を示す薬物としてリバスチグミンが知られており、リバスチグミンはアルツハイマー型認知症症状の進行を抑制することができるため、アルツハイマー病の治療剤として臨床の場で使用されている。しかしリバスチグミンは、一般的に副作用が強く、肝機能障害や消化管障害等の副作用の報告が数多くなされている。また症状が進んだ患者では、経口剤を服用すること自体が困難となる場合が多い。従って副作用の発現を防ぎたい患者や症状が進んだ患者に対しては、経皮吸収型製剤が適している。
【0003】
現在、医薬品市場においては、リバスチグミンを含有するイクセロン(登録商標)パッチが市販されている。リバスチグミン含有貼付剤は、有効成分を長時間にわたって持続的に作用させる必要性があるにもかかわらず、貼付中の体位変動や衣服との摺れ等によって簡単に剥がれるという問題があるため、皮膚に対する高い接着性が求められ、且つ有効成分の安定的な皮膚透過性が要求されている。
【0004】
このような事情に鑑み、例えば特許文献1には、熱可塑性エラストマー、及び不揮発性炭化水素油を含む貼付剤基剤にリバスチグミンを配合することにより、皮膚刺激を抑えつつ、皮膚粘着性を向上させた貼付剤が開示されている。
【0005】
また特許文献2には、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体、粘着付与樹脂、及び可塑剤を含む粘着剤基剤にリバスチグミンを配合することにより、皮膚刺激を抑えつつ、リバスチグミンの皮膚透過性を向上させた貼付剤が開示されている。
【0006】
特許文献3には、抗認知症薬物、アミノ基を有する高分子化合物、多価カルボン酸エステル、脂肪酸アルキルエステル、スチレン系高分子化合物、及び粘着付与樹脂を含んでなる経皮吸収製剤が開示されている。この経皮吸収製剤によれば、皮膚刺激性を抑制しつつ、効率的に抗認知症薬物を経皮的に投与できると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2013/187451号
【文献】特表2014-508728号公報
【文献】国際公開第2011/074635号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、これまでにもリバスチグミンを含有する経皮吸収型製剤において、皮膚接着性や皮膚透過性を高める技術は種々提案されているが、更なる改善が求められている。
【0009】
例えば、特許文献1は、貼付剤に粘着付与樹脂を全く配合しないか、または10重量%以下の極少量を配合し、且つ比較的膏体を厚くすることにより皮膚接着性を制御して、皮膚刺激を抑制しようと試みたものである。この貼付剤は、粘着付与樹脂の含有量が少ないため、初期粘着力が弱く、貼付中に剥離または一部剥離して、薬物の十分な皮膚透過性を示すことができないおそれがある。
【0010】
また特許文献2では、貼付剤の皮膚への接着性は検討されていない。
【0011】
また特許文献3は、基本的に常温で固体であって経皮吸収性に劣る抗認知症薬物のドネペジルについて製剤設計されたものであり、経皮吸収性の向上のためにクエン酸トリエチルやミリスチン酸イソプロピル等の種々の液状成分を配合している。そのため固体のドネペジルの代わりに、常温で液体のリバスチグミンを用いると薬物含有層が軟化し過ぎて接着性等の製剤物性を保持できないと考えられる。
【0012】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、皮膚への接着性が高く、長時間にわたってリバスチグミンを持続的に投与できるリバスチグミン含有経皮吸収型製剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の構成は以下のとおりである。
[1]リバスチグミン、ゴム系高分子、粘着付与樹脂、及び窒素含有基を有する高分子化合物を含有することを特徴とする経皮吸収型製剤。
[2]前記窒素含有基は、第1級、第2級、または第3級アミノ基、イミノ基、イミド基、アミド基、及び第4級アンモニウム基よりなる群から選択される1種以上である上記[1]に記載の経皮吸収型製剤。
[3]前記窒素含有基を有する高分子化合物は、
前記窒素含有基を有する(メタ)アクリル系モノマー若しくは前記窒素含有基を有するビニル系モノマーの重合体またはこれらの共重合体、または前記モノマーの少なくとも1種と前記窒素含有基を有しない(メタ)アクリル系モノマーとの共重合体、または
ポリビニルアルコールとモノまたはジアルキルアミノアセテートとの縮合体である上記[1]または[2]に記載の経皮吸収型製剤。
[4]前記窒素含有基を有する高分子化合物は、アミノアルキルメタクリレートコポリマーEである上記[1]に記載の経皮吸収型製剤。
[5]前記ゴム系高分子は、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体、スチレン・エチレン・ブチレン・スチレンブロック共重合体、スチレンイソプレンゴム、ポリイソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、液状ゴム、天然ゴムラテックス、合成ラテックス、ポリブテン、ポリイソプレン、ポリブチレン、及びポリイソブチレンよりなる群から選択される1種以上である上記[1]~[4]のいずれかに記載の経皮吸収型製剤。
[6]更にセルロース誘導体を含有する上記[1]~[5]のいずれかに記載の経皮吸収型製剤。
[7]前記セルロース誘導体は、カルボキシメチルセルロース、カルメロースナトリウム、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、及びヒドロキシプロピルメチルセルロースよりなる群から選択される1種以上である上記[6]に記載の経皮吸収型製剤。
[8]前記経皮吸収型製剤における前記リバスチグミンの含有量は、5質量%以上、30質量%以下である上記[1]~[7]のいずれかに記載の経皮吸収型製剤。
[9]前記経皮吸収型製剤における前記窒素含有基を有する高分子化合物の含有量は、1質量%以上、20質量%以下である上記[1]~[8]のいずれかに記載の経皮吸収型製剤。
[10]前記リバスチグミンの含有量に対する前記窒素含有基を有する高分子化合物の含有量の質量比は0.05以上、4以下である上記[1]~[9]のいずれかに記載の経皮吸収型製剤。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、上記構成により、皮膚への接着性が高く、長時間にわたってリバスチグミンを持続的に投与できるリバスチグミン含有経皮吸収型製剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明者らは、上記目的を達成することができるリバスチグミン含有経皮吸収型製剤を提供するに当たって、以下の(i)~(iii)に示すリバスチグミンの薬物特性を考慮する必要があると考えた。
(i)リバスチグミンは常温で液体であるため製剤中で可塑剤の働きをすること。
(ii)ヒトに対し1日1回の貼付で治療に必要な量のリバスチグミンを投与しようとすると、製剤1枚当たり、比較的高濃度のリバスチグミンを配合する必要性があること。
(iii)リバスチグミンは経皮吸収性が高い薬物であり、患者への貼付中に、比較的多量の薬物が経時的に体内に吸収されるために、貼付直後と剥離直前では製剤中の薬物含有量の差が非常に大きいこと。
【0016】
上記(i)、(ii)の理由より、貼付前の製剤のリバスチグミンの含有量を多くすると可塑剤が多い状態となるため、その時点では皮膚接着性が高いと言える。しかし、上記(iii)の理由より、皮膚に貼付後にはリバスチグミンの含有量が速やかに低下するため、製剤中の可塑化作用物質全体の含有量が低下して皮膚接着性が悪化する。その結果、製剤の剥がれ等が起こりやすくなって薬物の経皮吸収性が低下する。これらの問題を回避するために、リバスチグミン以外の可塑剤の初期含有量を高める方法も考えられるが、その場合には初期の製剤物性が悪化して逆に皮膚接着性は低下する。
【0017】
このようなリバスチグミンの特性を踏まえた上で、本発明者らが鋭意検討した結果、意外にも、リバスチグミン、ゴム系高分子、及び粘着付与樹脂を含有する粘着基剤に、窒素含有基を有する高分子化合物を配合することによって、皮膚への接着性が高く、且つ長時間にわたってリバスチグミンを持続的に投与できる経皮吸収型製剤が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0018】
以下、本発明の製剤を構成する各成分について詳細に説明する。
【0019】
本発明の経皮吸収型製剤の主薬成分であるリバスチグミンは、有効成分であると共に、常温で液体であるため可塑剤としても作用する。この可塑化作用により貼付時の接着性を向上することができ、安定した薬物供給能を発揮し易くすることができる。そのためにリバスチグミンの含有量は薬効と製剤物性の両面を考慮して制御する必要がある。リバスチグミンの含有量(リバスチグミン塩の場合は、リバスチグミンに換算したときの値)は、粘着層の全量を100質量%としたときの%として把握され、好ましくは5質量%以上、30質量%以下である。リバスチグミンの含有量が5質量%を下回ると、好ましい薬効を発揮することができず、またリバスチグミンの初期の可塑化作用が弱くなって皮膚接着性が低下し、貼付中に製剤が剥がれて脱落する等の影響が出るおそれがある。そのため、リバスチグミンの含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは12質量%以上である。一方、リバスチグミンの含有量が30質量%を超えると、初期の可塑化作用が高くなり過ぎて、接着性等の貼付剤物性の低下を招くおそれがある。そのため、リバスチグミンの含有量は、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは15質量%以下である。
【0020】
リバスチグミンはフリー体(遊離型)として配合することが好ましいが、必要に応じて塩として配合してもよい。上記塩としては、医薬として許容される塩であれば限定されないが、例えば、塩酸塩、酢酸塩、酒石酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩等の医学的に許容な無機もしくは有機酸との酸付加塩が挙げられる。
【0021】
ゴム系高分子は、保型性を有し、製剤と皮膚との密着性を高め、その結果、リバスチグミンの経皮吸収性を高めることができるものである。ゴム系高分子は、例えばスチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン・エチレン・ブチレン・スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレンイソプレンゴム、ポリイソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、液状ゴム、天然ゴムラテックス、合成ラテックス(SBR合成ラテックス等)、ポリブテン、ポリイソプレン、ポリブチレン、及びポリイソブチレンよりなる群から選択される1種以上が挙げられる。液状ゴムとしては、常温で液体の液状ポリイソプレンゴム、液状ポリブタジエンゴム、液状ポリスチレンブタジエンゴム等が挙げられる。これらは、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。このうちSIS、ポリブチレン、ポリイソブチレン、ポリイソプレンゴム、及び液状ポリイソプレンゴムよりなる群から選択される1種以上がより好ましく、SIS、ポリイソプレンゴム、及び液状ポリイソプレンゴムよりなる群から選択される1種以上が更に好ましい。
【0022】
ゴム系高分子の含有量(単独で含むときは単独の含有量であり、2種以上を含むときはこれらの合計量である)は、粘着層の全量を100質量%としたとき、好ましくは10質量%以上、60質量%以下である。ゴム系高分子の含有量が10質量%を下回ると、粘着層を形成し難くなったり、十分な皮膚透過性が得られなくなるおそれがある。そのため、ゴム系高分子の含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上である。一方、ゴム系高分子の含有量を60質量%以下にすることにより、粘着付与樹脂の含有量を多くすることができ、皮膚への接着性を向上させることができる。そのため、ゴム系高分子の含有量は、好ましくは60質量%以下、より好ましくは55質量%以下、更に好ましくは40質量%以下である。
【0023】
粘着付与樹脂は、製剤に粘着力を付与できるものであれば特に限定されないが、例えば脂環族飽和炭化水素樹脂、脂肪族系炭化水素樹脂、テルペン樹脂、ロジン、ロジン誘導体、キシレン系樹脂、フェノール樹脂、及びマレイン酸レジンよりなる群から選ばれる1種以上であることが好ましい。これらは、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。製剤の初期粘着力とリバスチグミンとの相溶性を考慮すると、ロジン誘導体及び脂環族飽和炭化水素樹脂よりなる群から選ばれる1種以上であることがより好ましい。脂環族飽和炭化水素樹脂として、例えば、荒川化学工業株式会社製のアルコンP70、アルコンP90、アルコンP100、アルコンP115、アルコンP125等が挙げられる。脂肪族系炭化水素樹脂として、例えば、日本ゼオン株式会社製のクイントンB170、トーネックス株式会社製のエスコレッツ1202が挙げられる。テルペン樹脂として、例えば、ヤスハラケミカル株式会社製のクリアロンP-125が挙げられる。ロジン誘導体として、例えば、ロジングリセリンエステル、水添ロジン、水添ロジングリセリンエステル、ロジンのペンタエリストールエステル等が挙げられる。キシレン系樹脂として、例えば、キシレンとホルムアルデヒドとの反応物であるキシレン-ホルムアルデヒド樹脂等が挙げられる。フェノール樹脂として、例えば、フェノール-キシレン-ホルムアルデヒド樹脂等が挙げられる。
【0024】
粘着付与樹脂の含有量(単独で含むときは単独の含有量であり、2種以上を含むときはこれらの合計量である)は、粘着層の全量を100質量%としたとき、好ましくは30質量%以上、70質量%以下である。30質量%を下回ると皮膚接着性が低くなって、貼付中に製剤が剥がれたり脱落したりする可能性がある。より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは45質量%以上である。一方、粘着付与樹脂の含有量が70質量%を超えると、製剤が固くなり過ぎて所望の皮膚接着性は得られなくなるおそれがある。より好ましくは60質量%以下、更に好ましくは55質量%以下である。
【0025】
窒素含有基を有する高分子化合物は、本発明の経皮吸収型製剤において粘着増強剤として機能するものである。窒素含有基を有する高分子化合物として、窒素含有基を有する(メタ)アクリル系モノマー若しくは窒素含有基を有するビニル系モノマーの重合体またはこれらの共重合体、または上記モノマーの少なくとも1種と窒素含有基を有しない(メタ)アクリル系モノマーとの共重合体、またはポリビニルアルコールとモノまたはジアルキルアミノアセテートとの縮合体が挙げられる。
【0026】
窒素含有基は、第1級、第2級、または第3級アミノ基、イミノ基、イミド基、アミド基、及び第4級アンモニウム基よりなる群から選択される1種以上が挙げられる。
【0027】
窒素含有基を有する(メタ)アクリル系モノマーとして、(メタ)アクリル酸アルキルアミノアルキルが挙げられ、(メタ)アクリル酸アルキルアミノアルキルとして、例えば(メタ)アクリル酸モノアルキルアミノアルキル、(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキル、及び(メタ)アクリル酸トリアルキルアミノアルキルよりなる群から選択される1種以上が挙げられる。これらは、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0028】
(メタ)アクリル酸モノアルキルアミノアルキルとして、例えば(メタ)アクリル酸モノメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノメチルアミノプロピル、及び(メタ)アクリル酸モノエチルアミノプロピルよりなる群から選択される1種以上が挙げられる。
【0029】
(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキルとして、例えば(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノメチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノメチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸ジプロピルアミノエチル、及び(メタ)アクリル酸ジプロピルアミノメチルよりなる群から選択される1種以上が挙げられる。
【0030】
(メタ)アクリル酸トリアルキルアミノアルキルとして、例えば(メタ)アクリル酸トリメチルアミノエチルが挙げられる。
【0031】
窒素含有基を有するビニル系モノマーとして、ビニルアミンモノマーが挙げられ、ビニルアミンモノマーとして、例えばN-ビニルピロリドン、N-ビニルピラジン、N-ビニルイミダゾール、N-ビニルオキサゾール、N-ビニルモルホリン、N-ビニルピラゾール、N-ビニルイソオキサゾール、N-ビニルチアゾール、N-ビニルイソチアゾール、N-ビニルピリダジン、N-ビニルピリジン、N-ビニルピリミジン、N-ビニルピペラジン、及びN-ビニルピロールよりなる群から選択される1種以上が挙げられる。
【0032】
窒素含有基を有しない(メタ)アクリル系モノマーとして、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸デシル、アクリル酸イソデシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸イソデシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、及びメタクリル酸ヒドロキシプロピルよりなる群から選択される1種以上が挙げられる。このうちメタクリル酸メチル及びメタクリル酸ブチルよりなる群から選択される1種以上が好ましい。
【0033】
ポリビニルアルコールとアルキルアミノアセテートとの縮合体として、ポリビニルアセタールジアルキルアミノアセテートが挙げられる。ポリビニルアセタールジアルキルアミノアセテートとして、例えばポリビニルアセタールジメチルアミノアセテート、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、及びポリビニルアセタールジブチルアミノアセテートよりなる群から選択される1種以上が挙げられる。
【0034】
本発明の窒素含有基を有する高分子化合物として、窒素含有基を有する(メタ)アクリル系モノマーと、窒素含有基を有しない(メタ)アクリル系モノマーとの共重合体が、リバスチグミンとの相溶性が高いため好ましい。そのうちメタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、及びメタクリル酸ジメチルアミノエチルの共重合体であるメタクリル酸メチル・メタクリル酸ブチル・メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体がより好ましい。メタクリル酸メチル・メタクリル酸ブチル・メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体の例として、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE〔オイドラギット(登録商標)EPO(エボニック社製)〕が挙げられる。アミノアルキルメタクリレートコポリマーEは常温で固体であり、従来コーティング剤または結合剤として使用されていた高分子であるが、後記する実施例に示す通り、リバスチグミンと混和すると優れた粘着増強剤として機能することは、本発明者らによって初めて見出された知見である。
【0035】
窒素含有基を有する高分子化合物の含有量(単独で含むときは単独の含有量であり、2種以上を含むときはこれらの合計量である)は、粘着層の全量を100質量%としたとき、好ましくは1質量%以上、20質量%以下である。1質量%を下回ると所望の皮膚接着性が得られなくなるおそれがある。より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは5質量%以上である。一方、窒素含有基を有する高分子化合物の含有量が20質量%を超えると、製剤物性が破壊され、逆に皮膚接着性が低下する。より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。
【0036】
リバスチグミンの含有量に対する窒素含有基を有する高分子化合物の含有量の質量比(窒素含有基を有する高分子化合物の含有量/リバスチグミンの含有量)は、0.05以上、4以下であることが好ましい。質量比が0.05を下回ると所望の皮膚接着性が得られ難くなる。そのため質量比は、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.1以上、更に好ましくは0.2以上である。一方、質量比が4を超えると、製剤の物性が低下して逆に皮膚接着性が低下するおそれがある。そのため質量比は、好ましくは4以下、より好ましくは2以下、更に好ましくは1.0以下である。
【0037】
本発明の経皮吸収型製剤は、更にセルロース誘導体を含有することが好ましい。セルロース誘導体は、吸湿性化合物であり発汗等による製剤の剥がれを防止する目的でプラスター剤に添加されることはあるが、リバスチグミン、ゴム系高分子、及び粘着付与樹脂を含有する粘着基剤に添加した場合、セルロース誘導体の分散性が悪くなった。しかし、意外なことに窒素含有基を有する高分子化合物と共に吸湿性化合物を製剤に含有させれば、セルロース誘導体の分散性が向上して、その結果、皮膚接着性を向上できることが分かった。このような知見は本発明者らによって初めて見出されたものである。
【0038】
セルロース誘導体は、例えばカルボキシメチルセルロース、カルメロースナトリウム、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、及びヒドロキシプロピルメチルセルロースよりなる群から選択される1種以上であることが好ましい。このうちヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びヒドロキシプロピルセルロースよりなる群から選択される1種以上であることがより好ましく、ヒドロキシプロピルメチルセルロースであることが更に好ましい。
【0039】
セルロース誘導体の含有量(単独で含むときは単独の含有量であり、2種以上を含むときはこれらの合計量である)は、粘着層の全量を100質量%としたとき、好ましくは0.1質量%以上、6質量%以下である。0.1質量%以上であると皮膚接着性を向上し易くすることができる。好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上である。一方、セルロース誘導体の含有量が6質量%を超えると、セルロース誘導体の分散性が悪くなって、皮膚接着性を向上し難くなる。好ましくは6質量%以下、より好ましくは4質量%以下、更に好ましくは3質量%以下である。
【0040】
なお、上記リバスチグミン、ゴム系高分子、粘着付与樹脂、窒素含有基を有する高分子化合物、セルロース誘導体の含有量は、以下に示す添加剤を加える場合、添加剤を加えた粘着層全体(支持体と剥離層は含まない)に対する%(質量%)と理解すべきである。
【0041】
本発明の製剤には、上記の他、経皮吸収型製剤に通常用いられる添加剤を必要に応じて、本発明の作用を阻害しない範囲で含むことができる。
【0042】
例えば、軟化剤として液状成分を製剤物性に影響を与えない範囲で配合することができる。液状成分は、例えば、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル等の石油系オイル;スクワラン;スクアレン;オリーブ油、ツバキ油、ひまし油、トール油、ラッカセイ油等の植物系オイル;シリコンオイル等の合成オイル;オレイン酸オレイル、ミリスチン酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジイソプロピル等の液状脂肪酸エステル;ジエチレングリコール;ポリエチレングリコール;サリチル酸グリコール;プロピレングリコール;ジプロピレングリコール;トリアセチン;クエン酸トリエチル;クロタミトン;ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等の二塩基酸エステル;グリセロール;及びイソステアリルアルコール、オクチルドデカノール、オレイルアルコール等の液状高級アルコールよりなる群から選ばれる1種以上が挙げられる。これらは、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0043】
液状成分(軟化剤)を配合する場合、例えば、粘着層の全量を100質量%としたとき、軟化剤の含有量は0質量%超、5質量%未満の含有量(単独で含むときは単独の含有量であり、2種以上を含むときはこれらの合計量である)であることが好ましい。これにより軟化剤による皮膚刺激性を抑制しつつ接着力を向上し易くすることができる。このような観点からは、軟化剤の含有量は、より好ましくは0.1質量%以上、4質量%以下、更に好ましくは0.2質量%以上、3質量%以下である。
【0044】
その他、必要に応じて、抗酸化剤、充填剤、水溶性高分子、架橋剤、防腐剤、紫外線吸収剤を配合することができる。
【0045】
抗酸化剤として、例えばトコフェロール及びそのエステル誘導体、アスコルビン酸、アスコルビン酸ステアリン酸エステル、ノルジヒドログアヤレチン酸、ジブチルヒドロキシトルエン(以下、BHTと略記する)、及びブチルヒドロキシアニソールよりなる群から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0046】
充填剤として、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムやケイ酸マグネシウム等のケイ酸塩、ケイ酸、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜鉛酸カルシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、及び二酸化ケイ素よりなる群から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0047】
水溶性高分子として、カゼイン、デキストラン、アルギン酸ナトリウム、デキストリン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、及びカルボキシビニルポリマーよりなる群から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0048】
架橋剤として、アミノ樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル等の熱硬化性樹脂、イソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物、有機系架橋剤、及び金属または金属化合物等の無機系架橋剤よりなる群から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0049】
防腐剤として、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、及びパラオキシ安息香酸ブチルよりなる群から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0050】
紫外線吸収剤として、p-アミノ安息香酸誘導体、アントラニル酸誘導体、サリチル酸誘導体、アミノ酸系化合物、ジオキサン誘導体、クマリン誘導体、イミダゾリン誘導体、及びピリミジン誘導体よりなる群から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0051】
その他、常温で固体のエステル類(乳酸セチル等)、精製ラノリン、コレステロール、アラビアゴム、レシチン等を配合することができる。
【0052】
粘着層(有効成分と、ゴム系高分子と、粘着付与樹脂と、窒素含有基を有する高分子化合物と、必要に応じてセルロース誘導体や他の添加剤等を含む層)の厚みは、30μm以上、200μm以下であることが好ましい。粘着層の厚みが30μm未満であると、薬物放出の持続性が低下するおそれがある。好ましくは30μm以上、より好ましくは50μm以上である。一方、粘着層の厚みが200μmを超えると、コストの増加を招くだけでなく、粘着層中の単位面積当たりの薬物量が増え、その結果、経時後の薬物濃度が貼付初期と比べて顕著に低下しないので剥離時の皮膚刺激が高まるおそれがある。好ましくは200μm以下、より好ましくは150μm以下である。
【0053】
本発明の経皮吸収型製剤は、好ましくは支持体層、粘着層、及び剥離層を含む経皮吸収型貼付製剤である。なお上記ではマトリックスタイプの貼付剤であることを前提として説明したが、本発明の経皮吸収型製剤は、これに限定されるものではない。
【0054】
支持体として、伸縮性または非伸縮性の支持体を用いることができる。例えば布、不織布、ポリウレタン、ポリエステル、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略記する)、アルミニウムシート等、またはそれらの複合素材が挙げられる。
【0055】
剥離層は、経皮吸収型製剤を皮膚に適用するまで、粘着層を保護し、粘着層中のリバスチグミンの変質を防止するもので、且つ容易に剥離できるようにシリコンコートされているものであれば特に限定されない。例えば、ポリエチレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、またはポリプロピレンフィルムをシリコンコートしたものが挙げられる。
【0056】
本発明の経皮吸収型製剤は、以下のいずれの方法によっても作製することができる。例えば、薬物を含む基剤組成を熱融解させて、剥離層または支持体に塗工した後、それを支持体または剥離層と貼り合わせて製剤を得る方法(ホットメルト法)、薬物を含む基剤成分をトルエン、ヘキサン、酢酸エチル等の溶媒に溶解させて、剥離層または支持体上に伸展して溶剤を乾燥除去した後、それを支持体または剥離層と貼り合わせて製剤を得る方法(溶媒法)等が挙げられる。
【0057】
本願は、2017年7月19日に出願された日本国特許出願第2017-139954号に基づく優先権の利益を主張するものである。2017年7月19日に出願された日本国特許出願第2017-139954号の明細書の全内容が、本願に参考のため援用される。
【実施例
【0058】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例によって制限されず、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0059】
実施例1
スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体19g、液状ポリイソプレンゴム14g、脂環族飽和炭化水素樹脂(アルコンP100)33g、水添ロジングリセリンエステル17gを適量のトルエンに混合溶解させ、粘着基剤溶液を得た。リバスチグミン12gにアミノアルキルメタクリレートコポリマーE5gを溶解させた後、粘着基剤溶液を添加し均一になるまで撹拌混合して、得られた粘着剤溶液を剥離層(PETフィルム)上に伸展して、溶媒を乾燥除去させ、厚さ150μmの粘着層を形成した。次いで、支持体(PETフィルム)を貼り合わせることにより貼付剤を得た。表1に各成分の含有量を示す。
【0060】
実施例2~7
粘着基剤溶液と共にヒドロキシプロピルメチルセルロースを添加したこと、及び各成分の含有量を表1に示す含有量とし、粘着層の厚さを表1に示す厚さとしたこと以外は、実施例1と同様の製法により実施例2~7の貼付剤を得た。
【0061】
比較例1
アミノアルキルメタクリレートコポリマーEを添加しなかったこと、及び各成分の含有量を表1に示す含有量としたこと以外は、実施例1と同様の製法により比較例1の貼付剤を得た。
【0062】
比較例2
アミノアルキルメタクリレートコポリマーEの代わりに、アクリル系粘着剤であるアクリル酸2-エチルヘキシル・酢酸ビニル・アクリル酸2-ヒドロキシエチルコポリマー(Duro-tak 87-4287)を用いたこと以外は、実施例5と同様の製法により比較例2の貼付剤を得た。
【0063】
比較例3
アミノアルキルメタクリレートコポリマーEの代わりに、賦形剤であるメタクリル酸ブチル・メタクリル酸メチルコポリマー(Plastoid B)を用いたこと以外は、実施例5と同様の製法により比較例3の貼付剤を得た。Plastoid Bは、アミノアルキルメタクリレートコポリマーEと同様に常温固体であり、コーティング剤または結合剤として使用されている高分子の一つである。
【0064】
比較例5
スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体15g、流動パラフィン28gを適量のトルエンに混合溶解させ、粘着基剤溶液を得た。粘着基剤溶液にリバスチグミン7gを添加し均一になるまで撹拌混合して、得られた粘着剤溶液を剥離層(PETフィルム)上に伸展して、溶媒を乾燥除去させ、乾燥後の粘着層中のリバスチグミン含量が1.8mg/cmとなるように厚さ128.6μmの粘着層を形成した。次いで、支持体(PETフィルム)を貼り合わせることにより比較例5の貼付剤を得た。なお、比較例5は、特許文献1(国際公開2013/187451号)の実施例3を参考にして作製した。
【0065】
比較例6
スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体19.5g、脂環族飽和炭化水素樹脂(アルコンP100)18g、ポリブテン5.5gを適量のトルエンに混合溶解させ、粘着基剤溶液を得た。リバスチグミン7gに粘着基剤溶液を添加し均一になるまで撹拌混合して、得られた粘着剤溶液を剥離層(PETフィルム)上に伸展して、溶媒を乾燥除去させ、乾燥後の粘着層中のリバスチグミン含量が1.2mg/cmとなるように厚さ85μmの粘着層を形成した。次いで、支持体(PETフィルム)を貼り合わせることにより比較例6の貼付剤を得た。なお、比較例6は、特許文献2(特表2014-508728号公報)の実施例1を参考にして作製した。
【0066】
粘着力試験:プローブタック試験
実施例1~7及び比較例1~3、5、6の粘着力を比較するために、プローブタック試験を実施した。まず、各実施例及び各比較例の製剤を直径14mmの円形に裁断したものを試験製剤とした。次いで、レオメーターの試料台上に両面テープを貼り、PETフィルムを上に向けて試験製剤を試料台上に貼り付けた。その後、ステンレス製円板状プローブ(直径5mm)を感圧軸取付け部に取り付けた後、試験製剤からPETフィルムを剥がし、試料台を10mm/分の速度で上昇させた。最終的に粘着面をプローブに50gの力で接触させて10秒間静止した後、引き離すのに要した力を測定し、タック力(g)とした。その結果を表1に示す。
【0067】
指タック試験(官能的評価)
実施例1~7及び比較例1~3、5、6の粘着性を官能的に評価するために、指タック試験を実施した。詳細には、粘着層面に指を押し当て、指を引き離した時の粘着性(貼り付きの強さ)を評価した。貼り付きの強さが強いものを優(○)、貼り付きの強さが中程度のものを良(△)、貼り付きの強さが弱いものを不良である(×)と評価した。その結果を表1に示す。
【0068】
【表1】
【0069】
表1より、以下のように考察することができる。
【0070】
実施例1は本発明の要件を満足する例であり、比較例1~3、5、6と比べてタック力が高くなった。更に、実施例2~7では、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを添加したことによって、ヒドロキシプロピルメチルセルロースとアミノアルキルメタクリレートコポリマーEとの相乗効果が発揮され、タック力が更に高くなり、また、指タック試験結果においても優れた結果を示した。このことより本発明の製剤は、優れた皮膚接着性を備えると考えられる。
【0071】
インビトロ皮膚透過性試験
実施例5及び比較例4(市販のリバスチグミン含有貼付剤(イクセロン(登録商標)パッチ))におけるリバスチグミンの経皮吸収性を検討するため、インビトロ皮膚透過性試験を行った。まず白人男性の背部摘出皮膚を厚みが750μmになるよう処理した後、フランツ型拡散セルにセットし、直径14mmの円形に裁断した各製剤を貼付した。レセプター側にはリン酸緩衝生理食塩水(pH7.5)を満たし、ウォータージャケットには、37℃の温水を還流した。経時的にレセプター液をサンプリングし、皮膚を透過したリバスチグミン量を液体クロマトグラフ法により測定した。その測定結果より、試験開始24時間後の累積薬物透過量(μg/cm2)、及び薬物吸収速度の最大値(flux:μg/cm2/時間)を算出した。その結果を表2に示す。
【0072】
【表2】
【0073】
表2より、以下のように考察することができる。
【0074】
実施例5は本発明の要件を満足する例であり、比較例4(市販のリバスチグミン含有貼付剤)と比べて、薬物吸収速度の最大値は同程度であったが、試験開始24時間後の累積薬物透過量は高くなった。このことより本発明の製剤は、市販品より優れた経皮吸収性を発揮することが確認できた。なお、試験開始24時間後の実施例5の製剤では、浮きや剥がれは確認されなかった。