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特許7193885熱湯前加水分解物中のリグニンを除去しキシロオリゴ糖を調製する方法、調製されたキシロオリゴ糖及びその用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-13
(45)【発行日】2022-12-21
(54)【発明の名称】熱湯前加水分解物中のリグニンを除去しキシロオリゴ糖を調製する方法、調製されたキシロオリゴ糖及びその用途
(51)【国際特許分類】
   C12P 19/04 20060101AFI20221214BHJP
   C12P 19/00 20060101ALI20221214BHJP
   A61P 1/12 20060101ALI20221214BHJP
   A61P 3/02 20060101ALI20221214BHJP
   A61K 31/702 20060101ALI20221214BHJP
   C07H 3/06 20060101ALI20221214BHJP
   C12N 9/02 20060101ALN20221214BHJP
【FI】
C12P19/04
C12P19/00
A61P1/12
A61P3/02
A61K31/702
C07H3/06
C12N9/02
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021503862
(86)(22)【出願日】2020-02-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-25
(86)【国際出願番号】 CN2020075843
(87)【国際公開番号】W WO2020177532
(87)【国際公開日】2020-09-10
【審査請求日】2021-01-22
(31)【優先権主張番号】201910161539.8
(32)【優先日】2019-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520063990
【氏名又は名称】斉魯工業大学
【氏名又は名称原語表記】QILU UNIVERSITY OF TECHNOLOGY
【住所又は居所原語表記】No.3501, Daxue Road, ChangQing District,Jinan City, Shandong Province 250353 China
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】楊 桂花
(72)【発明者】
【氏名】陳 嘉川
(72)【発明者】
【氏名】吉 興香
(72)【発明者】
【氏名】董 吉冉
(72)【発明者】
【氏名】徐 豊
【審査官】山内 達人
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第108411044(CN,A)
【文献】特開平01-224385(JP,A)
【文献】China Pulp & Paper,2015年,Vol. 34, No. 9,p. 65-69
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12P
A61P
A61K
C07H
C12N
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーカリ由来熱湯前加水分解を順次に遠心分離及び、超音波相乗な水酸化カルシウム処理を行い、処理液を得るステップと、
前記処理液を遠心分離処理して上澄み液を取得し、前記上澄み液をラッカーゼで酵素分解して加水分解を得るステップと、
前記加水分解物をカチオン交換カラム処理するステップを含み、
前記水酸化カルシウムの使用量が0.5~1.5wt%、
前記水酸化カルシウム処理の時間が45~60分、
前記超音波の印加時間が1~5分、
前記超音波の出力が80~100Wであり、
前記ラッカーゼの使用量が、加水分解液1gあたり1.0~2.0Uのラッカーゼであり、
前記酵素分解の時間が1~3時間、
前記酵素分解の温度が40~45℃である
ことを特徴とするユーカリ由来熱湯前加水分解中のリグニンを除去する方法。
【請求項2】
前記ユーカリ由来熱湯前加水分解液に対して行われる遠心分離処理の回転速度が3000~5000rpm、時間が5~10分である
請求項1に記載のユーカリ由来熱湯前加水分解中のリグニンを除去する方法。
【請求項3】
前記ユーカリ由来熱湯前加水分解液に対して行われる遠心分離処理の回転速度が3000~5000rpm、時間が5~10分であ
請求項1に記載のユーカリ由来熱湯前加水分解中のリグニンを除去する方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の方法を使用して、前記ユーカリ由来熱湯前加水分解液中のリグニン及び不純物を除去して、リグニンを含まない加水分解を得て、前記リグニンを含まない加水分解を酸と混合して混合液を得るステップ(a)と、
前記混合液にマイクロ波処理を行い、キシロオリゴ糖を得るステップ(b)と、を含む
ことを特徴とするユーカリ由来熱湯前加水分解液を使用してキシロオリゴ糖を調製する方法。
【請求項5】
ステップ(b)に記載のマイクロ波処理の時間が10~30分、温度が100~130℃である
請求項4に記載のユーカリ由来熱湯前加水分解液を使用してキシロオリゴ糖を調製する方法。
【請求項6】
ステップ(a)に記載の酸には、硫酸、酢酸、塩酸及びリン酸のいずれか一種が含まれ、
前記混合液のpHが1.4~2.6である
請求項4に記載のユーカリ由来熱湯前加水分解液を使用してキシロオリゴ糖を調製する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年3月4日に中国特許庁に提出した出願番号が201910161539.8であり、発明の名称が「熱湯前加水分解液におけるリグニンの除去及びキシロオリゴ糖の調製方法」である中国特許出願の優先権を主張し、その内容のすべてが参照により本出願に組み込まれる。
【0002】
本発明は生物学的精製技術の分野に関し、特に熱湯前加水分解物中のリグニンを除去し、キシロオリゴ糖を調製する方法、調製されたキシロオリゴ糖及びその用途に関する。
【背景技術】
【0003】
広葉樹には、より多くのアセチル化酸性ポリキシロースヘミセルロースが含まれ、前処理によりヘミセルロース鎖のアセチル基及びウロン酸基などが除去され、酢酸、ギ酸及びフルフラールなどの酸性分解生成物が生成し、酸性環境を形成することによって、ヘミセルロース鎖が切断され、分解されたヘミセルロースはオリゴ糖と少量の単糖の形で溶解されて熱湯前加水分解液が得られるが、熱湯前加水分解液には大量のヘミセルロース、リグニン及びそれらの分解生成物があり、研究によると、単糖とオリゴ糖は前加水分解液の約1.5~1.65%を占め、その中で、ほとんどがキシロースとポリキシロースであり、酢酸は前加水分解液の固形成分の約25%を占め、前加水分解液には、さらにグルコース、マンノース、ガラクトース及びフルフラールが含まれている。前加水分解液中のリグニンを除去することは、ヘミセルロース及びその他の分解生成物の利用価値を向上できる。
【0004】
従来の熱湯前加水分解液のリグニンを除去する方法は、リグニンを除去すると同時に、ヘミセルロースとその分解生成物の大部分を除去するため、ヘミセルロースと他の分解生成物の大きな損失につながる。
【発明の概要】
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術の上記の欠点を克服するために、本発明は熱湯前加水分解物中のリグニンを除去し、キシロオリゴ糖を調製する方法、調製されたキシロオリゴ糖及びその用途を提供した。本発明によって提供される熱湯前加水分解物中のリグニンを除去する方法は、リグニンを除去すると同時に、ヘミセルロース及び他の分解生成物の損失を減らし、前加水分解液中のヘミセルロース及び他の分解生成物の大量の損失の問題を解決できる。リグニンを除去した後の前加水分解液を使用してキシロオリゴ糖を調整することは、前加水分解液におけるキシロースのキシロオリゴ糖への変換率及びキシロオリゴ糖の収率を向上できる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は以下の技術的解決策を提供する。
本発明は熱湯前加水分解物中のリグニンを除去する方法を提供し、当該方法は、
熱湯前加水分解液体を順次に遠心分離及び、超音波相乗な水酸化カルシウム処理を行い、処理液を得て、
上記処理液を遠心分離処理して上澄み液を取得し、上澄み液をラッカーゼで酵素分解して加水分解液を得て、
上記加水分解物をイオン交換カラム処理するとのステップを含む。
【0008】
好ましくは、上記熱湯前加水分解液に対して行われる遠心分離処理は、回転速度が3000~5000rpm、時間が5~10分である。
【0009】
好ましくは、上記処理液に対して行われる遠心分離処理は、回転速度が3000~5000rpm、時間が5~10分である。
【0010】
好ましくは、上記水酸化カルシウムの使用量が0.5~1.5wt%、上記水酸化カルシウムの処理時間が45~60分、上記超音波の印加時間が1~5分、上記超音波の出力が80~100Wである。
【0011】
好ましくは、上記ラッカーゼの使用量が、加水分解液1gあたり1.0~2.0Uのラッカーゼであり、上記酵素分解の時間が1~3時間、上記酵素分解の温度が40~45℃である。
【0012】
好ましくは、上記イオン交換カラムは、カチオン交換カラムを含む。
【0013】
本発明は、前記技術案のいずれか一項に記載の方法で熱湯前加水分解液中のリグニン及び不純物を除去して、リグニンを含まない加水分解液を得て、前記リグニンを含まない加水分解液を酸と混合して混合液を得るステップ(a)と、
上記混合液にマイクロ波処理を行い、キシロオリゴ糖を得るステップ(b)と、を含む熱湯前加水分解液を使用してキシロオリゴ糖を調製する方法を提供した。
【0014】
好ましくは、ステップ(b)に記載のマイクロ波処理は、時間が10~30分、温度が100~130℃である。
【0015】
好ましくは、ステップ(a)に記載の酸には、硫酸、酢酸、塩酸及びリン酸のいずれか一種が含まれ、上記混合溶液のpHが1.4~2.6である。
【0016】
本発明は上記技術的解決策によって調製されたキシロオリゴ糖を提供する。
【0017】
本発明はまた、上記技術的解決策で調製したキシロオリゴ糖のヘルスケア機能性オリゴ糖製品の調製への用途を提供した。
【発明の効果】
【0018】
本発明は熱湯前加水分解物中のリグニンを除去し、キシロオリゴ糖を調製する方法を提供し、以下のステップを含む。熱湯前加水分解液体を順次に超音波相乗な水酸化カルシウム処理を行い、処理液を得て、上記処理液を遠心分離処理して上澄み液を取得し、上澄み液をラッカーゼで酵素分解して加水分解液を得て、上記加水分解物をイオン交換カラム処理する。本発明は、超音波相乗な水酸化カルシウム処理によって前加水分解液中の一部のリグニン、フルフラールなどの不純物を効果的に除去し、キシランの主鎖に接続されているアセチル基の側鎖を除去することに基づいて、ある程度、加水分解液中の酢酸の含有量を増やし、一方では酢酸含有量の増加は、もう一度加水分解液中のポリキシロースヘミセルロースの酸加水分解を助長して、キシロオリゴ糖得て、続いて、ラッカーゼを使用して、リグニンの小分子の重合及び除去を誘導しながら、糖の損失を減らし、イオン交換カラムは、吸着によって残留リグニンをさらに除去すると同時に、糖の損失を減らす。本発明の、熱湯前加水分解液中におけるリグニンを除去する方法は、前加水分解液中の大量のリグニンを除去でき、同時に、ヘミセルロース及び他の分解生成物の損失を低減できて、前加水分解液中のヘミセルロース及び他の分解生成物の大量損失の問題を解決できるので、キシロオリゴ糖酸の損失を10%以下にする。リグニンを除去した後、前加水分解液を使用してキシロオリゴ糖の調製は、キシロオリゴ糖の収量と変換率を向上させることができる。実施例によれば、本発明の、熱湯前加水分解液中におけるリグニンを除去する方法は、前加水分解液中の大量のリグニンを除去でき、同時にキシロオリゴ糖酸の損失を10%以下にする。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は熱湯前加水分解物中のリグニンを除去する方法を提供し、当該方法は、
熱湯前加水分解液を順次に遠心分離及び、超音波相乗な水酸化カルシウム処理を行い、処理液を得て、
上記処理液を遠心分離処理して上澄み液を取得し、上澄み液をラッカーゼで酵素分解して加水分解液を得て、
上記加水分解物をイオン交換カラム処理するとのステップを含む。
【0020】
本発明は、熱湯前加水分解液を、順次に遠心分離及び超音波相乗な水酸化カルシウム処理して、処理液を得る。本発明において、上記熱湯前加水分解液は、好ましくは、ウッドクラフト溶解パルプの製造プロセスで熱湯前処理により製造された前加水分解液であり、より好ましくは、広葉樹クラフト溶解パルプの製造プロセスで熱湯前処理により製造された前加水分解液である。上記熱湯前処理液は好ましくは広葉樹熱湯前処理液又はユーカリ熱湯前処理液である。熱湯前処理液を制限する。本発明において、上記熱湯前加水分解液に対して行われる遠心分離処理は、回転速度が、好ましくは3000~5000rpmであり、さらに好ましくは3200~4800rpmであり、時間が好ましくは5~10分である。本発明は、熱湯前加水分解液の遠心処理は、前加水分解液中の不溶性物質を効果的に除去できるだけでなく、遠心分離後の前加水分解液中のリグニンなどの不純物の除去をより助長する。本発明の上記超音波相乗な水酸化カルシウム処理とは、熱湯前加水分解液を遠心分離した後に、水酸化カルシウムを追加して処理し、次に超音波処理することを指す。
【0021】
本発明において、上記水酸化カルシウムの使用量は、好ましくは0.5~1.5wt%であり、当該使用量の意味は、水酸化カルシウムが遠心分離後の前加水分解液に占めている質量のパーセンテージであり、上記水酸化カルシウムの処理時間は、好ましくは45~60分、上記超音波の印加時間は、好ましくは1~5分、上記超音波の出力は、好ましくは80~100Wである。超音波処理条件下では、相乗的な水酸化カルシウム処理により、加水分解液におけるリグニンを効果的に除去でき、超音波出力が低く、処理時間が短いため、キシロオリゴ糖の損失を減らすこともでき、超音波相乗な水酸化カルシウム処理は、加水分解液における一部のリグニン、フルフラールなどの不純物を効果的に除去でき、且つキシランの主鎖に接続されているアセチル基の側鎖の除去でき、加水分解液中の酢酸の含有量をある程度増加させ、酢酸含有量の増加は、ヘミセルロースを加水分解してキシロオリゴ糖を得ることに有利である。
【0022】
処理液が得られた後、本発明は、処理液に対して遠心処理を行って、上澄み液を得て、上澄み液をラッカーゼで酵素分解して、加水分解液を得る。本発明の上記処理液に対する遠心分離処理は、回転速度が、好ましくは3000~5000rpmであり、時間が、好ましくは5~10分である。上記ラッカーゼの使用量は、好ましくは、加水分解液1gあたり1.0~2.0Uのラッカーゼを添加し、上記加水分解液体とは、遠心分離と、超音波相乗な水酸化カルシウム処理とを受けた加水分解液を、もう一度遠心分離した後、上澄み液を得て、上記酵素分解の時間は、好ましくは1~3時間、上記酵素分解の温度は、好ましくは40~45℃である。ラッカーゼとリグニンは反応すると高分子に重合でき、ラッカーゼの使用量を減らし、処理時間を短縮することで、糖の損失を減らすことができる。
【0023】
加水分解液が得られた後、本発明は、上記加水分解液をイオン交換カラム処理して、リグニンを含まない加水分解液を得る。上記イオン交換カラムは、好ましくはカチオン交換カラムを含む。一方では、カチオン交換カラムを使用すると、ラッカーゼ処理後に前加水分解液のpHを調整する必要がないため、操作が簡単であり、もう一方では、カチオン交換カラムを使用すると、リグニンやその他の不純物を効果的に除去すると同時に、さらに糖の損失を減らすことができる。
【0024】
本発明は、上記技術的解決策を使用して熱湯前加水分解液中のリグニン及び不純物を除去して、リグニンを含まない加水分解液を得て、リグニンを含まない加水分解液を酸と混合して混合液を得るステップ(a)と、
上記混合液にマイクロ波処理を行い、キシロオリゴ糖を得るステップ(b)と、を含む熱湯前加水分解液を使用してキシロオリゴ糖を調製する方法を提供した。
【0025】
本発明は上記技術的解決策を使用して熱湯前加水分解液中のリグニン及び不純物を除去して、リグニンを含まない加水分解液を得て、上記リグニンを含まない加水分解液と酸を混合して、混合液を得る。本発明において、上記酸は、好ましくは、硫酸、酢酸、塩酸、リン酸のうちの一つが含まれ、好ましくは酢酸であり、酸はヘミセルロースをキシロオリゴ糖に加水分解することができる。本発明において、上記酸の使用量は、混合液体のpH値が要件を満たすような量であり、上記混合液のpH値は、好ましくは、1.4~2.6である。該pH範囲では、ヘミセルロースの加水分解速度が速く、キシロオリゴ糖の収率が高くなる。pH値が低すぎる場合、即ち酸の濃度が高すぎる場合、キシランの単糖又は他の副産物への変換が速くなり、キシロオリゴ糖の収量が減少するので、適切なpH値は、キシロオリゴ糖の収量を増やすことができる。
【0026】
混合液が得られた後、本発明は、上記混合液に対してマイクロ波処理を行い、キシロオリゴ糖を得る。 本発明において、上記マイクロ波処理は、時間が、好ましくは10~30分であり、温度は好ましくは100~130℃である。マイクロ波照射が長すぎると、キシロオリゴ糖への分解速度がキシロオリゴ糖から単糖への分解速度よりも遅くなるため、キシロオリゴ糖の抽出率が低下する。 本開示で使用されるマイクロ波照射時間及びマイクロ波処理温度の範囲内で、得られたキシロオリゴ糖の収率が最適である。
【0027】
本発明は、上記の技術的解決策によって調製されたキシロオリゴ糖を提供する。
【0028】
本発明は上記の技術的解決策によって調製されたキシロオリゴ糖のヘルスケア機能性オリゴ糖製品の調製への用途を提供する。
【0029】
以下では、実施例と併せて本発明によって提供される熱湯前加水分解物中のリグニンを除去し、キシロオリゴ糖を調製する方法、調製されたキシロオリゴ糖及びその適用方法について詳細に説明するが、それらは本発明の保護の範囲を限定するものとして理解されるべきではない。
【0030】
以下の実施例における処理前のユーカリの熱前加水分解液中のリグニン、フルフラール、キシロース、及びキシロオリゴ糖の含有量は、それぞれ6.78、1.17、9.66、7.33g/Lである。
実施例1
【0031】
熱湯前加水分解液中のリグニンを除去する方法であって、以下のステップを含む。
(1)ユーカリ熱湯前加水分解物を5000rpmで10分間遠心分離した後、上澄み液を取り、
(2)遠心分離したユーカリ熱湯前加水分解液を、室温及びpH値3.9の条件下で超音波相乗な水酸化カルシウム処理する。ここで、超音波処理装置がJY-98IIIN、超音波出力が80W、超音波時間が5分、水酸化カルシウム使用量が1.0wt%、処理時間が45分である。
【0032】
(3)超音波相乗な水酸化カルシウム処理後の前加水分解液を5000rpmで10分間遠心分離した後、上澄み液を取る。
【0033】
(4)ステップ(3)の上澄み液にラッカーゼを加え、ラッカーゼの使用量は1U/g加水分解液であり、ラカーゼ処理時間は1.5時間であり、ラカーゼ処理温度は45℃であった。
【0034】
(5)ステップ(4)のラッカーゼで処理した前加水分解液をカチオン交換カラムに入れ、濾液を回収してリグニンを含まない加水分解液を得る。
【0035】
上記の濾液を測定する。
上記の濾液を適切な倍数で希釈し、紫外線分光光度計を使用して濾液中のリグニン含有量を測定し、高性能液体クロマトグラフを使用して濾液中のフルフラール含有量を測定し、ICS-5000イオンクロマトグラフを使用して、濾液中の総キシロース含有量を測定する。
【0036】
テストの結果は、テストによれば、上記のステップで処理した後、リグニン除去率が92.5%、フルフラール除去率が96.5%、総キシロース損失率が9.5%であることが判明した。
【0037】
熱湯前加水分解液を使用してキシロオリゴ糖を調製する方法では、加水分解液のpHが1.6になるように上記ステップ(5)で回収した濾液に硫酸を加え、マイクロ波照射を行い、マイクロ波照射時間は20分、マイクロ波処理温度は120℃である。
【0038】
結果は、検出によれば、得られたキシロオリゴ糖の濃度は9.25g/Lであり、収率は19.9%であった。
比較例1
【0039】
(1)ユーカリ熱湯前加水分解物を5000rpmで10分間遠心分離した後、上澄み液を取り、
(2)遠心分離したユーカリ熱湯前加水分解液を、室温及びpH値3.9の条件下で超音波相乗な水酸化カルシウム処理する。ここで、超音波処理装置がJY-98IIIN、超音波出力が80W、超音波時間が5分、水酸化カルシウム使用量が1.0wt%、処理時間が45分である。
【0040】
(3)超音波相乗な水酸化カルシウム処理後の前加水分解液を5000rpmで10分間遠心分離した後、上澄み液を取る。
【0041】
(4)ステップ(3)の上澄み液を取って、室温及びpH値8.97の条件下で、1段階の活性炭素処理及び遠心分離を実施する。ここで、活性化炭素の使用量が1%、処理時間が5分、遠心速度が5000rpm、遠心時間はが10分である。
【0042】
(5)ステップ(4)の遠心分離後の上澄み液にラッカーゼを加え、ラッカーゼの使用量が1U/g加水分解液であり、ラカーゼ処理時間が1.5時間であり、ラカーゼ処理温度が45℃であった。
【0043】
(6)ステップ(5)でラッカーゼ処理された前加水分解液を、2段階の活性化炭素処理し、遠心分離して、上澄み液を回収する。ここで、活性化炭素の使用量が1%、処理時間が5分、遠心速度が5000rpm、遠心時間が10分であった。
【0044】
上記のステップ(6)の上澄み液をテストした結果は、テストの結果、上記のステップで処理した後、リグニン除去率が88.5%、フルフラール除去率が97.5%、総キシロース損失率が11.5%であることが判明した。
比較例2
【0045】
実施例1との違いは、ステップ(4)でラッカーゼ処理された前加水分解液がpH7.5~8.5に調整され、弱アニオン交換カラムに入ることであり、他のステップは実施例1と同じである。
【0046】
上記の濾液をテストした結果:テストの結果、上記のステップの処理を経て、リグニン除去率が87.2%、フルフラール除去率が87.2%、総キシロース損失率が13.5%であることが判明した。
比較例3
【0047】
実施例1との違いは、ステップ(4)におけるラッカーゼの使用量が3.5U/g加水分解液であり、他のステップは実施例1と同じである。
【0048】
上記の濾液をテストした結果は、テストによれば、上記のステップの処理を経て、リグニン除去率が91.5%、フルフラール除去率が91.5%、総キシロース損失率が11.2%であることが判明した。
実施例2
【0049】
熱湯前加水分解液中のリグニンを除去する方法であって、以下のステップを含む。
(1)ユーカリ熱湯前加水分解物を5000rpmで10分間遠心分離した後、上澄み液を取り、
(2)遠心分離したユーカリ熱湯前加水分解液を、室温及びpH値3.9の条件下で超音波相乗な水酸化カルシウム処理する。ここで、超音波処理装置がJY-98IIIN、超音波出力が100W、超音波時間が5分、水酸化カルシウム使用量が1.0wt%、処理時間が45分である。
【0050】
(3)超音波相乗な水酸化カルシウム処理後の前加水分解液を5000rpmで10分間遠心分離した後、上澄み液を取る。
【0051】
(4)ステップ(3)の上澄み液にラッカーゼを加え、ラッカーゼの使用量は1U/g加水分解液であり、ラカーゼ処理時間は1.5時間であり、ラカーゼ処理温度は45℃であった。
【0052】
(5)ステップ(4)でラッカーゼで処理した前加水分解液をカチオン交換カラムに入れ、濾液を回収し、即ちリグニンを含まない加水分解液を得る。
【0053】
上記の濾液をテストした結果は、テストによれば、上記のステップで処理した後、リグニン除去率が93%、フルフラール除去率が97.2%、総キシロース損失率が9.8%であることが判明した。
【0054】
熱湯前加水分解液を使用してキシロオリゴ糖を調製する方法では、加水分解液のpHが1.6になるように、上記ステップ(5)で回収した濾液に酢酸を加え、マイクロ波照射を行い、マイクロ波照射時間は20分、マイクロ波処理温度は120℃である。
【0055】
結果は、検出によれば、得られたキシロオリゴ糖の濃度は9.67g/Lであり、収率は24.2%であった。
比較例4
【0056】
(1)ユーカリ熱湯前加水分解物を5000rpmで10分間遠心分離した後、上澄み液を取り、
(2)遠心分離したユーカリ熱湯前加水分解液を、室温及びpH値3.9の条件下で超音波相乗な水酸化カルシウム処理する。ここで、超音波処理装置がJY-98IIIN、超音波出力が100W、超音波時間が5分、水酸化カルシウム使用量が1.0wt%、処理時間が45分である。
【0057】
(3)超音波相乗な水酸化カルシウム処理後の加水分解液を5000rpmで10分間遠心分離した後、上澄み液を取る。
【0058】
(4)ステップ(3)の上澄み液を取って、室温及びpH値8.97の条件下で、1段階の活性炭素処理及び遠心分離を実施する。ここで、活性化炭素の使用量が1%、処理時間が5分、遠心速度が5000rpm、遠心時間は10分である。
【0059】
(5)ステップ(4)の遠心分離後の上澄み液にラッカーゼを加え、ラッカーゼの使用量が1U/g加水分解液であり、ラカーゼ処理時間が1.5時間であり、ラカーゼ処理温度が45℃であった。
【0060】
(6)ステップ(5)でラッカーゼ処理された前加水分解液を、2段階の活性化炭素処理し、遠心分離して、上澄み液を回収する。ここで、活性化炭素の使用量が1%、処理時間が5分、遠心速度が5000rpm、遠心時間が10分であった。
【0061】
上記のステップ(6)の上澄みをテストした結果は、テストによれば、上記のステップで処理した後、リグニン除去率が87.3%、フルフラール除去率が95.7%、総キシロース損失率が11%であることが判明した。
比較例5
【0062】
実施例1との違いは、(5)を、ステップ(4)ラッカーゼ処理後の前加水分解液は、pHを7.5~8.5に調整し、弱陰イオン交換カラムに入ることに変更する点にあり、他のステップは実施例1と同じである。
【0063】
上記の濾液をテストした結果は、テストによれば、上記のステップの処理を経て、リグニン除去率が86.0%、フルフラール除去率が95.2%、総キシロース損失率が12.9%であることが判明した。
比較例6
【0064】
実施例1との違いは、ステップ(4)におけるラッカーゼの使用量が3.5U/g加水分解液である点にあり、他のステップは実施例1と同じである。
【0065】
上記の濾液をテストした結果は、テストによれば、上記のステップの処理を経て、リグニン除去率が91.8%、フルフラール除去率が93.0%、総キシロース損失率が9.7%であることが判明した。
【0066】
本発明は、熱湯前加水分解物中のリグニンを除去し、キシロオリゴ糖を調製する方法、調製されたキシロオリゴ糖及びその適用を提供し、本発明によって提供される熱湯前加水分解液中のリグニンを除去する方法は、リグニンを除去すると同時に、ヘミセルロース及び他の分解生成物の損失を低減し、前加水分解液中のヘミセルロース及び他の分解生成物の損失が大きい問題を解決できる。リグニンを除去した後の前加水分解液を使用してキシロオリゴ糖を調製することによって、前加水分解液の中でのキシロースからキシロオリゴ糖への変換率及びキシロオリゴ糖の収率を高めることができる。
【0067】
上記の実施形態は、本発明の詳細な説明を与えるが、それらは、すべての実施形態ではなく、本発明の実施形態の一部にすぎない。創造性なしに、本実施形態に基づく他の実施形態を得られるが、そのすべては本発明の保護範囲に属する。