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特許7193886キメラ抗原受容体で修飾されたγδ T細胞を生産する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-13
(45)【発行日】2022-12-21
(54)【発明の名称】キメラ抗原受容体で修飾されたγδ T細胞を生産する方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/0783 20100101AFI20221214BHJP
   C12N 5/09 20100101ALI20221214BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20221214BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20221214BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20221214BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20221214BHJP
   C12N 15/63 20060101ALN20221214BHJP
   C12N 15/867 20060101ALN20221214BHJP
   C12N 15/113 20100101ALN20221214BHJP
【FI】
C12N5/0783 ZNA
C12N5/09
C12N5/10
A61K35/17 Z
A61P35/00
A61P35/02
C12N15/63 Z
C12N15/867 Z
C12N15/113 Z
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021512982
(86)(22)【出願日】2019-01-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-02
(86)【国際出願番号】 CN2019072285
(87)【国際公開番号】W WO2019214290
(87)【国際公開日】2019-11-14
【審査請求日】2020-11-17
(31)【優先権主張番号】201810436500.8
(32)【優先日】2018-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520434927
【氏名又は名称】河北森朗生物科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】李 建強
(72)【発明者】
【氏名】王 慶龍
(72)【発明者】
【氏名】王 琳
【審査官】西村 亜希子
(56)【参考文献】
【文献】J.Immunol.,2009,182(12),p.8118-8124
【文献】BMC Cancer,2017,17(1):551,p.1-17
【文献】医学のあゆみ,2013年,Vol.244, No.9,p.854-860
【文献】BMC Cancer,2017年,Vol.17, No.551,p.1-17
【文献】医学のあゆみ,2012年,Vol.243, No.6,p.543-544
【文献】BoneKEy-Osteovision,2006年,Vol.3, No.8,p.5-13
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 5/0783
C12N 5/09
C12N 5/10
A61K 35/17
A61P 35/00
A61P 35/02
C12N 15/63
C12N 15/867
C12N 15/113
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
FPPSコード遺伝子の発現を抑制するshRNAを腫瘍細胞に導入して、FPPS発現量および/または活性が低下した腫瘍細胞を得て、前記FPPS発現量および/または活性が低下した腫瘍細胞をγδ T細胞培養系に加え、培養して培養系を得るステップ1)と、
キメラ抗原受容体を発現するベクターを前記培養系に加え、培養してCAR-γδ T細胞を得るステップ2)と、
を含む、ことを特徴とするCAR-γδ T細胞を生産する方法。
【請求項2】
前記ステップ1)において、前記γδ T細胞と前記FPPS発現量および/または活性が低下した腫瘍細胞との個数比は(1~10):1である、ことを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記ステップ2)において、培養系内の細胞濃度が(1.5~2)×10個/mlに達すると、2~4日毎にIL-2を前記培養系に1回加える、ことを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記ステップ2)において、前記キメラ抗原受容体を発現するベクターは、キメラ抗原受容体を発現するレンチウイルスベクターである、ことを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項5】
請求項1~のいずれか1項に記載の方法に従って生産したCAR-γδ T細胞を含む、腫瘍を免疫して治療するための医薬。
【請求項6】
レンチウイルスのγδ T細胞に対するトランスフェクション率を向上させるために使用される、活性成分FPPS発現量および/または活性が低下した腫瘍細胞である製品であって
記FPPS発現量および/または活性が低下した腫瘍細胞は、FPPSコード遺伝子の発現を抑制するshRNAを腫瘍細胞に導入して得られたものである、製品。
【請求項7】
前記FPPSコード遺伝子の発現を抑制するshRNAは、ステムI、ループ、およびステムIIで形成されたステムループ構造の一本鎖RNAであり、
前記ステムIの配列は配列表の配列2の1番目~21番目に示すとおりであり、前記ループの配列は配列表の配列2の22番目~27番目に示すとおりであり、前記ステムIIの配列は配列表の配列2の28番目~48番目に示すとおりである、ことを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記腫瘍細胞は慢性骨髄性白血病細胞系である、ことを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記慢性骨髄性白血病細胞系はK562細胞である、ことを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記FPPSコード遺伝子の発現を抑制するshRNAは、ステムI、ループ、およびステムIIで形成されたステムループ構造の一本鎖RNAであり、
前記ステムIの配列は配列表の配列2の1番目~21番目に示すとおりであり、前記ループの配列は配列表の配列2の22番目~27番目に示すとおりであり、前記ステムIIの配列は配列表の配列2の28番目~48番目に示すとおりである、ことを特徴とする請求項に記載の製品。
【請求項11】
前記腫瘍細胞は慢性骨髄性白血病細胞系である、ことを特徴とする請求項に記載の製品。
【請求項12】
前記慢性骨髄性白血病細胞系はK562細胞である、ことを特徴とする請求項1に記載の製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物技術分野に関し、具体的には、キメラ抗原受容体で修飾されたγδ T細胞を生産する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
養子細胞免疫療法は、体外培養、活性化、遺伝子修飾された自家または他家免疫細胞を患者に返送して抗腫瘍活性を発揮させるために用いることである。キメラ抗原受容体(ChimericAntigenReceptor、CAR)で修飾されたT細胞治療技術(CAR-T技術)は、遺伝子工学技術により免疫エフェクター細胞を修飾することで、修飾された細胞が抗原を発現する標的細胞を特異的に認識して殺傷でき、腫瘍細胞を特異的に除去するという目的を達成する。Bリンパ球の表面マーカーCD19分子を特異的に標的とするCAR-T細胞は、Bリンパ球悪性腫瘍の治療における治療効果が最も顕著であり、再発すると治療しにくいB系急性リンパ球白血病患者の90%を完全に緩和することができる。現在、CD19抗原に対するCAR-T細胞によるBリンパ球性腫瘍の治療は、極めて高い短期的な治療効果を有するが、一部の患者は、治療が完全に緩和された後にも再発する。再発の1つの重要な原因は、注入されたCAR-T細胞が有効な抗原の刺激に欠け、患者体内の数が減少しつつあり、長期的な抗腫瘍活性を保持することができないためである。
【0003】
従来のCAR-T技術は、αβ T細胞の天然活性に基づいて設計されたものであり、一般的に修飾するエフェクター細胞はαβ T細胞である。αβ T細胞が他家に導入されると、重篤な移植片対宿主病を引き起こすため、現在のCAR-T治療技術は、自家細胞治療を主とすることが多く、臨床応用の柔軟性を大きく制限し、治療コストを大きく向上させる。一方、γδ T細胞は重篤な移植片対宿主病を引き起こさないため、汎用型CAR-T製品の開発のより良好な選択である。
【0004】
αβ T細胞により媒介されたのは適応免疫応答であり、効果的に活性化して対応する免疫学的機能を発揮するためにリンパ球の再循環を完了する必要がある。一方、γδ T細胞により媒介されたのは天然免疫応答であり、抗原抗体が反応する部位で免疫学的効果を即時に発揮することができるため、CAR-γδ T細胞の潜在的な抗腫瘍作用は、より直接かつより迅速であり、腫瘍部位の局所的な注射により腫瘍を除去し、オフターゲット効果による強い有害反応を回避することができる。また、αβ T細胞は、多様性のαβ TCRを用いて主要組織適合複合体(MHC)により提示された抗原の短いペプチドを認識する。天然の場合、1つの特定のMHC-抗原ペプチド複合体を認識するαβ T細胞の数は非常に少ないため、特定の抗原に対する免疫応答能力を発揮するために数量的な増幅が必要となる。一方、γδ T細胞は数が少ないTリンパ球のサブクラスであり、多くのγδ TCRは非ペプチド化合物を認識し、MHCの提示が不要である。αβ TCR可変領域の多様性の構成と異なり、γδ TCRの可変領域の多様性は非常に限られているため、αβ T細胞の総数がγδ T細胞よりも遥かに多いが、1つの特定の化合物または抗原に対して認識能力を持つ特定のT細胞の数を比較すると、γδ T細胞はαβ T細胞よりも高い。
【0005】
ヒトおよび他の霊長類動物のγδ T細胞は、主にVδ1およびVγ9δ2という2つのサブクラスを含み、それぞれ表面に発現するTCRの種類を表す。Vδ1は組織に分布され、末梢のγδ T細胞は主にVγ9δ2のサブクラスである。2種類の細胞の抗原認識モードは全く異なり、Vδ1 TCRが認識する抗原の種類は、現在、争議があり、Vγ9δ2 TCRが自体または外因性の小分子リン酸化抗原を認識し、例えば、HMBPP(細菌由来)、IPP(ヒト由来)、およびBrHPP(人工合成)(Chen,Z.W.and N.L.Letvin,2003.5(6):p.491~8;Eberl,M.,et al.,2003.544(1~3):p.4~10;Kabelitz,D.,D.Wesch,and W.He,2007.67(1):p.5~8;Sireci,G.,et al.,2001.31(5):p.1628~35)を認識する。Amino-Bisphosphonate化合物類の薬剤Zoledronate(Zol、ゾメタ)およびPamidornateは、FPPシンターゼ(FPPS)を抑制することができ、HMG-CoAの代謝経路を阻害し、下流生成物IPPが体内または細胞内に凝集するため、体内または体外でVγ9δ2 T細胞を効果的に刺激して活性化させることができる(Kunzmann,V.andM.Wilhelm,2005.46(5):p.671~80)。
【0006】
γδ T細胞は、有する天然活性によりCAR-T細胞治療の優れたベクターとなるが、細胞含有量が低く、体外での大規模増殖技術の困難度が大きく、トランスフェクション率が低い等の制限により、今まで、CARで修飾されたγδ T細胞が臨床的に成功して適用されたという報告は未だにない。固相anti-pan TCR γδ抗体の増殖、またはIPP/HMBPP/ZOLを用いてVγ9δ2 T細胞を選択的に増殖することを含む従来のγδ T細胞体外増殖技術は、いずれも末梢血単核球(PBMC)から増殖し、γδ T細胞の占有する割合が低いため、遺伝子トランスフェクションは他の無関係細胞により干渉されてトランスフェクション率は低くなる。また、PBMCから増殖される最終製品は純度が低く、αβ T細胞が混在しやすく、汎用型CAR-T製品の開発に不利である。γδ T細胞を選別精製することは以上の問題を解決できるが、他の細胞の補助が欠け、活性化および増殖効率は大きく低下する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
発明が解決しようとする技術的問題は、CAR-γδ T細胞を大規模に生産して臨床的な腫瘍の免疫治療に用いることを実現するために、γδ T細胞の増殖効率をどのように向上させるかである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記技術的問題を解決するために、本発明は、まず、γδ T細胞の増殖方法を提供する。
【0009】
本発明に係るγδ T細胞の増殖方法は、γδ T細胞培養系にFPPS発現量および/または活性が低下した腫瘍細胞を加えるステップを含む。
【0010】
上記方法において、前記γδ T細胞と前記FPPS発現量および/または活性が低下した腫瘍細胞との個数比は(1~10):1である。
【0011】
更に、前記γδ T細胞と前記FPPS発現量および/または活性が低下した腫瘍細胞との個数比は3:1である。
【0012】
上記方法は、培養系内の細胞濃度が(1.5~2)×10個/mlに達すると、2~4日毎にIL-2を前記培養系に1回加えるステップと、IL-2を加える時の標準は、前記IL-2の前記培養系における最終濃度を(100~1000)IU/mLとすることであるステップとを含む。
【0013】
更に、培養系内の細胞濃度が(1.5~2)×10個/mlに達すると、3日毎にIL-2を前記培養系に1回加えるステップと、IL-2を加える時の標準は、前記IL-2の前記培養系における最終濃度を(100~300)IU/mLとすることであるステップとを含む。
【0014】
更に、培養系内の細胞濃度が(1.5~2)×10個/mlに達すると、3日毎にIL-2を前記培養系に1回加えるステップと、IL-2を加える時の標準は、前記IL-2の前記培養系における最終濃度を200IU/mLとすることであるステップとを含む。
【0015】
上記技術的問題を解決するために、本発明は、CAR-γδ T細胞を生産する方法を更に提供する。
【0016】
本発明に係るCAR-γδ T細胞を生産する方法は、キメラ抗原受容体を発現するベクターとγδ T細胞とを共培養し、CAR-γδ T細胞を得るステップと、前記培養系にFPPS発現量および/または活性が低下した腫瘍細胞が含まれるステップとを含む。
【0017】
上記方法において、前記キメラ抗原受容体を発現するベクターとγδ T細胞とを共培養する方法は、
1)FPPS発現量および/または活性が低下した腫瘍細胞をγδ T細胞培養系に加え、培養して培養系を得るステップと、
2)キメラ抗原受容体を発現するベクターを前記培養系に加え、培養して前記CAR-γδ T細胞を得るステップと、
を含む。
【0018】
上記方法において、前記1)において、前記γδ T細胞と前記FPPS発現量および/または活性が低下した腫瘍細胞との個数比は(1~10):1である。
【0019】
更に、前記γδ T細胞と前記FPPS発現量および/または活性が低下した腫瘍細胞との個数比は3:1である。
【0020】
上記方法において、前記1)において、前記培養の条件は、37℃、5%のCOで2日間培養することである。
【0021】
上記方法において、前記1)において、前記γδ T細胞培養系は、TexMACS培地およびヒト組み換えIL-2で構成され、前記ヒト組み換えIL-2のγδ T細胞培養系における濃度は200U/mlである。
【0022】
上記方法において、前記2)において、培養系内の細胞濃度が(1.5~2)×10個/mlに達すると、2~4日毎にIL-2を前記培養系に1回加えるステップと、IL-2を加える時の標準は、前記IL-2の前記培養系における最終濃度を(100~1000)IU/mLとすることであるステップとを更に含む。
【0023】
更に、培養系内の細胞濃度が(1.5~2)×10個/mlに達すると、2日毎にIL-2を前記培養系に1回加えるステップと、IL-2を加える時の標準は、前記IL-2の前記培養系における最終濃度を(100~300)IU/mLとすることであるステップとを更に含む。
【0024】
更に、培養系内の細胞濃度が(1.5~2)×10個/mlに達すると、2日毎にIL-2を前記培養系に1回加えるステップと、IL-2を加える時の標準は、前記IL-2の前記培養系における最終濃度を200IU/mLとすることであるステップとを更に含む。
【0025】
上記方法において、前記2)において、前記培養の条件は、37℃、5%のCOで10~14日間培養することである。
【0026】
上記方法において、前記2)において、前記キメラ抗原受容体を発現するベクターは、キメラ抗原受容体を発現するレンチウイルスベクターである。
【0027】
前記キメラ抗原受容体を発現するレンチウイルスベクターを前記培養系に加える前に、包装のステップを更に含む。前記包装の方法は、具体的に、以下のステップに従って行うことができる。2-1)細胞シャーレ毎に4.5×10個の293FT細胞および9mLのDMEM完全培地を加え、均一に混合し、細胞インキュベータで培養する。2-2)培養してから2日目に、500μLのjetPRIME(登録商標) buffer、6μgのキメラ抗原受容体を発現するレンチウイルスベクター、3μgのpsPAX2、および1.5μgのpMD2.Gという試薬をシャーレ毎に加え、均一に混合した後、系にjetPRIME(登録商標)を加え、25μL/10cmのシャーレで再び均一に混合し、室温で10min静置し、混合液を得る。2-3)ウイルスを包装するための293FT細胞を細胞インキュベータから取り出し、混合液をシャーレ毎に平均に入れ、均一に混合し、細胞インキュベータに入れて培養し続ける。4h培養した後、古い培地を捨て、PBSを加えて細胞を洗浄し、更に10%(体積分率)のFBSを含むDMEM完全培地を加え、細胞インキュベータに入れて培養する。2-4)48~72h培養した後、培養上清を収集してウイルス原液とし、収集したウイルス原液を遠心管に濾過し、遠心して上清液を捨て、沈殿にDMEM完全培地(加える培地とウイルス原液との体積比は1:500である)を加えてウイルス粒子を再懸濁し、キメラ抗原受容体を発現するレンチウイルス粒子を得る。
【0028】
前記キメラ抗原受容体を発現するレンチウイルスベクターを前記培養系に加えた後、遠心のステップを更に含む。
【0029】
前記遠心の条件は、具体的に、35℃、2000rpmで2h遠心することである。
【0030】
更に、前記キメラ抗原受容体を発現するレンチウイルスベクターは、キメラ抗原受容体のコード遺伝子をレンチウイルス発現ベクターのマルチプルクローニング部位の間に挿入して得られたものである。前記レンチウイルス発現ベクターは本分野でよく使用されるものであれば良い。
【0031】
更に、前記レンチウイルス発現ベクターはSenl_pLenti-EF1である。前記キメラ抗原受容体を発現するレンチウイルスベクターは、キメラ抗原受容体のコード遺伝子をレンチウイルスベクターSenl_pLenti-EF1のPacIとSpeIとの酵素切断部位の間に挿入して得られたベクターである。
【0032】
前記Senl_pLenti-EF1ベクターは、元のプラスミドのクローニング部位の両側に酵素切断部位PacIおよびSpeIを追加した後に得られたベクターであり、元のプラスミドの名称はLV-pRRLEF1.WPRE(Cyagen Biosciences Inc.から購入される)である。
【0033】
上記方法において、前記キメラ抗原受容体の標的とする腫瘍抗原は、CD19、CD20、CD22、CD30、HER2、GD2、EGFR、EGFRvIII、EphA2、IL13Ra2、CD133、ROR1、IGF1Rおよび/またはL1CAMを含んでもよいが、これらに限定されない。
【0034】
本発明の具体的な実施例において、前記キメラ抗原受容体は腫瘍抗原CD22を標的とし、前記腫瘍抗原CD22を標的とするキメラ抗原受容体のアミノ酸配列は配列表における配列3であり、コード遺伝子配列は配列表における配列4である。
【0035】
上記技術的問題を解決するために、本発明は、腫瘍を免疫して治療する方法を更に提供する。
【0036】
本発明に係る腫瘍を免疫して治療する方法は、
(1)上記方法に従ってCAR-γδ T細胞を生産するステップと、
(2)前記CAR-γδ T細胞を腫瘍患者の体内に返送し、前記CAR-γδ T細胞により前記腫瘍患者の体内の腫瘍細胞を認識して殺傷し、更に腫瘍を免疫して治療するという目的を実現するステップと、
を含む。
【0037】
上記技術的問題を解決するために、本発明は、最後に製品を更に提供する。
【0038】
本発明に係る製品の活性成分は、FPPS発現量および/または活性が低下した腫瘍細胞であり、
前記製品の機能は、
B1)γδ T細胞の増殖を促進することと、
B2)γδ T細胞の分化を促進することと、
B3)CAR-γδ T細胞を生産することと、
B4)レンチウイルスのγδ T細胞に対するトランスフェクション率を向上させることと、
B5)腫瘍を免疫して治療することと、
のいずれかである。
【0039】
上記方法または製品において、前記FPPS発現量および/または活性が低下した腫瘍細胞は、FPPSコード遺伝子の発現を抑制する物質を腫瘍細胞に導入して得られたものである。
【0040】
更に、前記FPPSコード遺伝子の発現を抑制する物質は、レンチウイルスベクターにより腫瘍細胞に導入される。
【0041】
更に、前記FPPSコード遺伝子の発現を抑制する物質は、FPPSコード遺伝子の発現を抑制するshRNAである。
【0042】
本発明の具体的な実施例において、前記FPPSコード遺伝子の発現を抑制するshRNAは、ステムI、ループ、およびステムIIで形成されたステムループ構造の一本鎖RNAであり、
前記一本鎖RNAは配列表の配列2に示すとおりであり、前記ステムIの配列は配列表の配列2の1番目~21番目に示すとおりであり、前記ループの配列は配列表の配列2の22番目~27番目に示すとおりであり、前記ステムIIの配列は配列表の配列2の28番目~48番目に示すとおりである。前記一本鎖RNAのコード遺伝子配列は配列表の配列1に示すとおりである。
【0043】
上記方法または製品において、前記腫瘍細胞はよく見られる腫瘍細胞であり、例えば、慢性骨髄性白血病細胞系である。本発明において、前記腫瘍細胞は、具体的に、K562細胞である。
【0044】
上記方法または製品において、前記γδ T細胞はVγ9δ2 T細胞である。前記γδ T細胞はPBMCから選別されたγδ陽性T細胞である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】U6-based shRNAレンチウイルスのプラスミド構造図である。
図2】Western Blotで腫瘍細胞K562-shFPPS、K562-shSRB細胞、および野生型K562細胞内のFPPSとハウスキーピング遺伝子β-tubulinのタンパク質発現レベルを検出する図である。
図3】γδ T細胞の選別前後のγδ T細胞がCD3+細胞を占有する百分率である。
図4】K562-shFPPSがγδ T細胞の体外分化を刺激する図であり、CFSEでK562-shFPPS、K562-shSRBおよびK562細胞をそれぞれマーキングし、それぞれ選別後のγδ陽性T細胞およびγδ陰性T細胞と混合し、γδ T細胞とK562細胞との個数比はいずれも3:1であり、K562グループに10μMのZoledronateを陽性対照として加え、72時間培養した後、フローサイトメータで異なるグループの細胞CFSEの蛍光強度(横軸)を検出する。
図5】K562-shFPPSとの共培養により、選別されたγδ T細胞を大量に増殖させる図であり、K562-shFPPS、K562-shSRB、およびK562細胞は、それぞれ選別後のγδ陽性T細胞と混合して培養し、異なる時間の細胞数を計数する。γδ陽性T細胞とK562-shFPPSまたはK562-shSRBまたはK562細胞との個数比はいずれも5:1であり、K562グループに10μMのZoledronateを陽性対照として加える。
図6】CAR配列を持つレンチウイルスのプラスミド構造図である。
図7】K562-shFPPSと選別されたγδ T細胞とを共培養することにより、CARのトランスフェクション効率を著しく向上させることができる図である。
図8】K562-shFPPSとの共培養により生産されたCAR+γδ T細胞は、CD22を発現する細胞に対して特異的に応答し、より多くのIFN-γを分泌し、より多くのCD137を細胞表面に発現する図である。
図9】K562-shFPPSとの共培養により生産されたCAR+γδ T細胞は、CD22の腫瘍細胞を特異的に分解して発現することができる図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
下記実施例に使用される実験方法は、特に断りのない限り、いずれも通常の方法である。
【0047】
下記実施例に使用される材料、試薬等は、特に断りのない限り、いずれも商業的に入手可能である。
【0048】
実施例1、γδ T細胞の増殖方法
【0049】
一、FPPS発現量が低下したK562-shFPPS腫瘍細胞系の構築
【0050】
1、レンチウイルスの組み換えプラスミドの構築
(1)組み換えプラスミドの調製
Cyagen Biosciences Inc.のVectorbuilderシステムのU6-basedshRNA構築システムを用いてレンチウイルスの組み換えプラスミドを構築した。具体的なステップは以下のとおりであった。
【0051】
FPPSを標的とする特異的なshRNAコード配列(shFPPS)を設計して合成して実験グループとした。
CCTAAGGTTAAGTCGCCCTCGCTCGAGCGAGGGCGACTTAACCTTAGG(配列1)
(ただし、中間に太らせた6bp配列はステムループ配列であり、その左側の21bpはセンス配列であり、右側の21bp配列はアンチセンス配列である。)
それと同時に、以下のようなScramble-shRNAコード配列(shSRB)を合成して陰性対照グループとした。
CCAGCAGTGTTCTTGCAATATCTCGAGATATTGCAAGAACACTGCTGG(配列5)
(ただし、中間に太らせた6bp配列はステムループ配列であり、その左側の21bpはセンス配列であり、右側の21bp配列はアンチセンス配列である。)
【0052】
以上のshRNAコード配列をそれぞれ合成し、それぞれをU6-Based shRNA Knockdownレンチウイルスプラスミド(Cyagen Biosciences Inc.から購入され、カタログ番号LV-SGFP-0102)におけるU6プロモーターの下方にクローニングし、組み換えプラスミドshFPPSおよびshSRBをそれぞれ取得した。また、組み換えプラスミドshFPPSおよびshSRBにNeumycine抵抗遺伝子を導入し、陽性細胞の選別に用いた。組み換えプラスミドの構造は図1に示すとおりであった。
【0053】
(2)組み換えプラスミドの同定
U6プロモーターのユニバーサルプライマーを用いて組み換えプラスミドを同定し、PCR同定が正しい組み換えプラスミドに対して配列決定検証を行った。shFPPS二本鎖DNA配列を含む組み換えプラスミドをレンチウイルスの組み換えプラスミドshFPPSと命名し、shSRB二本鎖DNA配列を含む組み換えプラスミドをレンチウイルスの組み換えプラスミドshSRBと命名した。レンチウイルスの組み換えプラスミドshFPPSが発現するshFPPSのRNA配列は、
CCUAAGGUUAAGUCGCCCUCGCUCGAGCGAGGGCGACUUAACCUUAGG(配列2)
であり、ステムI、ループ、およびステムIIで形成されたステムループ構造の一本鎖RNAであり、ステムIの配列は配列表の配列2の1番目~21番目に示すとおりであり、ループの配列は配列表の配列2の22番目~27番目に示すとおりであり、ステムIIの配列は配列表の配列2の28番目~48番目に示すとおりであった。
【0054】
2、レンチウイルスの組み換えプラスミドの包装
レンチウイルスの組み換えプラスミドshFPPSおよびshSRBをそれぞれ包装し、レンチウイルス粒子shFPPSおよびshSRBをそれぞれ得た。具体的なステップは以下のとおりであった。
【0055】
(1)80%~90%まで成長した293FT細胞培養用フラスコ(T175)を37℃、5%のCOの細胞インキュベータから取り出し、消化後に細胞を収集して洗浄し、10cmの細胞シャーレ毎に4.5×10個の細胞および9mLのDMEM完全培地(Gibco社から購入され、製品のカタログ番号11965-084)を加え、均一に軽く振って、37℃、5%のCOのインキュベータに入れて培養した。
【0056】
(2)培養してから2日目に、500μLのjetPRIME(登録商標) buffer(Polyplus Transfection社から購入され、製品のカタログ番号B161116)、6μgのレンチウイルスの組み換えプラスミド、3μgのpsPAX2(武漢▲ミャオ▼霊バイオテクノロジー有限公司から購入され、製品のカタログ番号P026)、および1.5μgのpMD2.G(広州geneseedバイオテクノロジー股フン有限公司から購入され、製品のカタログ番号161220L08)という試薬をシャーレ毎に加え、均一に混合した後、系にjetPRIME(登録商標)(Polyplus Transfection社から購入され、製品のカタログ番号114-15)を更に加え、25μL/10cmのシャーレで再び均一に混合し、室温で10min静置し、混合液を得た。
【0057】
(3)ウイルスを包装するための293FT細胞を37℃、5%のCOの細胞インキュベータから取り出し、混合液をシャーレ毎に平均に入れ、均一に軽く振って、37℃、5%のCOのインキュベータに入れて培養し続けた。4h培養した後、古い培地を捨て、5mLの予熱したPBSを加えて細胞を洗浄し、新鮮な予熱した10%(体積分率)のFBSを含む9mLのDMEM完全培地を更に加え、37℃、5%のCOのインキュベータに入れて培養した。
【0058】
(4)48~72h培養し続けた後、培養上清を収集してウイルス原液とし、収集したウイルス原液を0.45μmのフィルタで50mLの遠心管に濾過し、4℃、18500gで2h高速遠心した。上清液を捨て、沈殿にDMEM完全培地(加える培地とウイルス原液との体積比は1:500である)を加えてウイルス粒子を再懸濁し、ウイルス濃縮液となった。
【0059】
(5)ウイルス濃縮液を200μL/チューブで分注し、また、10μLを残してウイルス力価試験を行った。分注した濃縮液を-80℃の冷蔵庫に置いて保存した。
【0060】
3、レンチウイルス粒子の標的細胞へのトランスフェクション
レンチウイルス粒子shFPPSおよびshSRBをそれぞれ標的細胞にトランスフェクションし、腫瘍細胞K562-shFPPSおよび対照細胞K562-shSRBをそれぞれ得た。具体的なステップは以下のとおりであった。
【0061】
(1)K562細胞を37℃、5%のCOの細胞インキュベータから取り出し、3×10/500μL培地/ウェルで24ウェルプレートに敷き、合計12ウェルに敷き、培地はRPMI1640(gibco社から購入され、製品のカタログ番号22400-089)+10%(体積分率)のFBS(ExcellBio社から購入され、製品のカタログ番号FND500)であった。
【0062】
(2)12個のウェルから6ウェルを実験グループとして選択してレンチウイルストランスフェクションを行い、残りの6ウェルを対照グループとした。実験グループは、ウェル毎に1‰のProtamine sulfate(Sigma社から購入され、製品のカタログ番号P3369-10G)および5μLのshFPPSウイルス濃縮液を加え、操作台で「文字8」を描き、均一に軽く混合した。対照グループに5μLのshSRBウイルス濃縮液を加えた。
【0063】
(3)遠心機を35℃に予熱し、ウイルス濃縮液が加えられたK562細胞を遠心機に移して遠心し、遠心パラメータを2000rpm、20min、上昇4降下4、2hとし、遠心が終了した後、37℃、5%のCOのインキュベータに入れて培養し続けた。
【0064】
(4)48h培養した後、実験グループおよび対照グループを、それぞれ低濃度400μg/mL、中濃度800μg/mL、高濃度1200μg/mLという3つの勾配でG418を加え、それぞれに2つのウェルを設けた。
【0065】
(5)培地の色および細胞の成長状況に応じ、3~5日間毎に対応する選別培地を1回交換した。対照ウェルの細胞が全て死滅したまでになっても対応する実験グループに生細胞が依然として存在する場合、生細胞を収集して拡大培養した。
【0066】
結果により、K562細胞のG418の最適な選別濃度は800μg/mLであることが示された。拡大培養された細胞は、レンチウイルス粒子shFPPSまたはshSRBに感染したK562細胞であった。
【0067】
4、shFPPSに感染した細胞FPPSのタンパク質発現レベルの変化の検出
1.5×10個のG418で選別されたK562-shFPPSおよびK562-shSRB腫瘍細胞、および野生型K562細胞を取り、遠心した後、50μLの細胞分解液を加えて細胞を分解し、Western BlotでFPPSのタンパク質発現レベルの変化を検出した。FPPSのタンパク質を検出する抗体はAbgent社のウサギ抗ヒトFPPSのポリクローナル抗体(動物番号RB4786)であり、ハウスキーピング遺伝子のタンパク質β-tubulinを検出する抗体は、BD社のマウス抗ヒトモノクローナル抗体(クローン番号5H1)であった。
【0068】
結果は図2に示すとおりであった。図から見られるように、K562-shSRB細胞のFPPSの発現レベルは野生型K562細胞と有意差がなく、shFPPSを発現するK562-shFPPS細胞のFPPSの発現レベルは野生型K562細胞と比べて著しく低下した。
【0069】
二、γδ T細胞の体外増殖方法
【0070】
1、γδ T細胞の選別
新鮮な分離された成人の末梢血または臍帯血由来の末梢血単核球(PBMC)を取り、γδ T細胞選別キット(Miltenyi Biotec Biotechnology Companyから購入され、製品のカタログ番号130-092-892)を用いてキットの明細書における操作に従ってPBMCからγδ T細胞を選別し、γδ陽性T細胞を取得し、残りの細胞はγδ陰性T細胞であった。選別されたγδ陽性T細胞におけるγδ T細胞の陽性百分率>90%(図3)であった。
【0071】
2、CFSEによるγδ T細胞のマーキング
CFSE(BioLegend社から購入され、製品のカタログ番号423801)が入れられた遠心管に36μLのDMSOを加え、その最終濃度を5mMとし、繰り返しピペッティングしてそれを十分に均一に混合させ、対応体積のPBSを加え、CFSE溶液の最終濃度を5μMとし、CFSE作動液を得た。1×10~1×10個のγδ T細胞(ステップ1におけるγδ陽性T細胞またはγδ陰性T細胞)を5μLのCFSE作動液に入れ、室温または37℃にて暗所で20minインキュベートし、10%(体積分率)のFBS、200U/mlのヒト組み換えIL-2を含む5倍体積のTexMACS培地(Miltenyi Biotec Biotechnology Companyから購入され、品番130-097-196)を加え、染色を終了した。2000rpmで5min遠心し、細胞を収集し、予熱したTexMACS培地を用いて細胞を再懸濁し、室温または37℃にて暗所で10minインキュベートし、インキュベートが終了した後、予熱した培地を用いて細胞を2回洗浄し、CFSEによる染色が成功したか否かをフローサイトメトリー法により検出し、CESEによるマーキングが成功したγδ T細胞を下記実験に用いた。
【0072】
3、CFSEでマーキングされたγδ陽性T細胞懸濁液と腫瘍細胞K562-shFPPS懸濁液とを体積比3:1の割合で均一に混合し(γδ陽性T細胞と腫瘍細胞K562-shFPPSとの個数比は3:1である)、37℃、5%のCOのインキュベータで72時間培養し、実験グループの細胞(γδ陽性T細胞)を得た。
【0073】
CFSEでマーキングされたγδ陰性T細胞懸濁液と腫瘍細胞K562-shFPPS懸濁液とを体積比3:1の割合で均一に混合し(γδ陰性T細胞と腫瘍細胞K562-shFPPSとの個数比は3:1である)、37℃、5%のCOのインキュベータで72時間培養し、実験グループの細胞(γδ陰性T細胞)を得た。
【0074】
CFSEでマーキングされたγδ陽性T細胞懸濁液と対照細胞K562-shSRB懸濁液とを体積比3:1の割合で均一に混合し(γδ陽性T細胞と対照細胞K562-shSRBとの個数比は3:1である)、37℃、5%のCOのインキュベータで72時間培養し、陰性対照グループの細胞(γδ陽性T細胞)を得た。
【0075】
CFSEでマーキングされたγδ陰性T細胞懸濁液と対照細胞K562-shSRB懸濁液とを体積比3:1の割合で均一に混合し(γδ陰性T細胞と対照細胞K562-shSRBとの個数比は3:1である)、37℃、5%のCOのインキュベータで72時間培養し、陰性対照グループの細胞(γδ陰性T細胞)を得た。
【0076】
CFSEでマーキングされたγδ陽性T細胞懸濁液と野生型細胞K562懸濁液とFPPSの阻害剤ゾメタ(Zoledronate、ZOL)(ロシュ社)とを均一に混合し、37℃、5%のCOのインキュベータで72時間培養し、陽性対照グループの細胞(γδ陽性T細胞)を得た。ここで、CFSEでマーキングされたγδ陽性T細胞とK562細胞との数の比は3:1であり、Zoledronateの培養系における最終濃度は5μMであった。
【0077】
CFSEでマーキングされたγδ陰性T細胞懸濁液と野生型細胞K562懸濁液とFPPSの阻害剤ゾメタ(Zoledronate、ZOL)(ロシュ社)とを均一に混合し、37℃、5%のCOのインキュベータで72時間培養し、陽性対照グループの細胞(γδ陰性T細胞)を得た。ここで、CFSEでマーキングされたγδ陰性T細胞とK562細胞との数の比は3:1であり、Zoledronateの培養系における最終濃度は5μMであった。
【0078】
4、実験グループの細胞、陰性対照グループの細胞、および陽性対照グループの細胞をそれぞれ取り、CFSEの蛍光レベルをフローサイトメトリー法により検出した。具体的なステップは以下のとおりであった。2×10個の実験グループの細胞、陰性対照グループの細胞、および陽性対照グループの細胞をそれぞれ取り、3グループの細胞にそれぞれ1mLのBuffer(2%のFBSのPBS)を加えて遠心し、遠心パラメータを2000rpm、3min、室温とし、遠心が終了した後、上清を捨て、200μLのBuffer(2%のFBSのPBS)で細胞を再懸濁し、3グループの細胞のCFSEの蛍光レベルを装置で測定した。
【0079】
結果は図4に示すとおりであった。図から見られるように、K562-shFPPS細胞は、選別されたγδ T細胞の分化を効果的に促進することができた。
【0080】
5、各グループの細胞を培養し続け、細胞濃度が(1.5~2)×10個/mlに達すると、拡大培養し、3日間毎にIL-2を培養系に1回補充し、その培養系における最終濃度を200IU/mLとした。
【0081】
6、細胞を10~14日目まで培養すると、200μLの細胞懸濁液を取ってTrypan Blue計数を行い、後続の細胞同定、選別および機能試験を行った。
【0082】
Trypan Blue計数の具体的なステップは以下のとおりであった。十分に分散させた細胞懸濁液を10μL取り、PBSを加えて適当な倍数に希釈し、希釈後の細胞懸濁液に10μLのTrypan Blue(Gibco、品番15250-061)を加えて染色し、ピペットで均一にピペッティングし、Trypan Blueで染色された細胞懸濁液を10μL吸ってスライドガラスが覆われた血球計数板にピペッティングし、100倍の倒立顕微鏡で観察し、生細胞は染色されず、死細胞は青色に染色され、4つの大きな格子内の細胞総数を計数し、更に4で割り、希釈倍数を乗じ、10を乗じ、最後に細胞懸濁液の総体積を乗じることで、細胞総数を得た。
【0083】
γδ T細胞をフローサイトメータで同定する具体的なステップは以下のとおりであった。(1~2)×10個の実験グループの細胞、陰性対照グループの細胞、および陽性対照グループの細胞をそれぞれ取り、それぞれ3グループの細胞懸濁液にビオチンでマーキングされた2μLのγδ T抗体(Biolegend、331204)を加え、4~8℃にて暗所で10minインキュベートし、1mLのBuffer(2%のFBSのPBS)を加えて再懸濁し、遠心して洗浄し、2μLのCD3-APC(BD、555335)、αβ-PE/CY7(Biolegend、306720)、SA-PE(Biolegend、405204)、および7AAD-PERCP(eBioscience、00-6993-50)を更に加え、4~8℃にて暗所で10minインキュベートし、遠心して洗浄し、200μLのBufferに再懸濁し、MACSQuant 10フローサイトメータ(Miltenyi Biotec Biotechnology Companyから購入される)で検出し、FlowJoで3グループの細胞のγδ Tの割合を分析した。
【0084】
結果は図5に示すとおりであった。図から見られるように、14日間拡大培養した後、K562-shFPPS細胞系の刺激で選別されたγδ T細胞は100倍以上増殖することができた。腫瘍細胞K562-shFPPSがγδ T細胞の増殖を促進し、γδ T細胞の増殖効率を向上させることができた。
【0085】
実施例2、CAR-γδ T細胞を生産する方法
【0086】
一、CAR22レンチウイルス粒子の調製
【0087】
本発明は、CAR構造を用いてγδ T細胞に対して遺伝子修飾を行い、CAR構造は、アミノ基端側からカルボキシ基端側まで、順に、ScFv(CD22)-Hinge(CD8)-TM(CD8)-CD137-CD3ζであり、即ち、アミノ基端側からカルボキシ基端側まで、順に、CD22モノクローナル抗体(クローン番号M971)由来の一本鎖可変領域、CD8aヒンジ領域および膜貫通領域、CD137信号ドメインおよびCD3ζ鎖細胞内領域であった。そのアミノ酸配列は配列表の配列3に示すとおりであり、ヌクレオチド配列は配列表の配列4に示すとおりであった。配列4に示すDNA分子をSenl_pLenti-EF1ベクター(Senl_pLenti-EF1ベクターは、元のプラスミドのクローニング部位の両側に酵素切断部位PacIおよびSpeIを追加した後に得られたベクターであり、元のプラスミドの名称はLV-pRRLEF1.WPREであり、Cyagen Biosciences Inc.から提供され、契約番号はS1002079である)の酵素切断部位PacIとSpeIとの間に挿入し、CAR22レンチウイルスベクターを得た。
【0088】
実施例1のステップ一の2における方法に従い、CAR22レンチウイルスベクターを包装し、CAR22レンチウイルス粒子を得た。
【0089】
二、CAR-γδ T細胞の調製
【0090】
1、γδ T細胞の分離および選別(Day0)
50~100mLの健康な成人の静脈血を無菌採取し、密度勾配遠心法により末梢血単核球(PBMC)を取得した。γδ T細胞選別キット(Miltenyi Biotec Biotechnology Companyから購入され、製品のカタログ番号130-092-892)を用いてPBMCからγδ T細胞を選別し、γδ T細胞を取得した。
【0091】
2、γδ T細胞の培養
ステップ1で選別されたγδ T細胞を、200U/mlのヒト組み換えIL-2を含むTexMACS培地で再懸濁し、γδ T細胞培養系を取得し、培養系構成によって、以下のような各グループに分けて培養した。
【0092】
K562-shFPPSグループ:γδ T細胞培養系にK562-shFPPS細胞を加え、γδ T細胞とK562-shFPPS細胞との個数比は3:1であった。
【0093】
K562+ZOLグループ:γδ T細胞培養系にK562細胞およびZOLを加え、γδ T細胞とK562細胞との個数比は3:1であり、ZOLの培養系における最終濃度は10μMであった。
【0094】
PBMC+ZOLグループ:PBMC細胞にZOLを加え、ZOLの培養系における最終濃度は10μMであった。
【0095】
5×10個のγδ T細胞/500μL培地/ウェルで24ウェルプレートに敷き、37℃、5%のCOの細胞インキュベータに置いて2日間培養した。
【0096】
3、レンチウイルスの細胞へのトランスフェクション(Day2)
2日間培養した後、CAR22レンチウイルス粒子を各グループの細胞にそれぞれトランスフェクションした。具体的なトランスフェクションステップは以下のとおりであった。24ウェルプレートを事前にインキュベータ内から取り出し、ウェル毎に1‰のProtamine sulfate(Sigama社から購入され、製品のカタログ番号P3369-10G)および5μLCAR22レンチウイルス粒子溶液を加え、操作台で「文字8」を描き、ピペットでピペッティングして均一に混合させた。35℃、2000rpmで2h遠心した。遠心が終了した後、24ウェルプレートを遠心機から取り出し、37℃、5%のCOの細胞インキュベータに移して培養し続けた。
【0097】
4、拡大培養(Day3~14)
3日間培養した時に半分の液を交換し、24ウェルプレートをインキュベータから取り出し、ウェル毎に半分の上清液を吸い出し、半分のDMEM完全培地を補充し、培養し続けた。細胞濃度が(1.5~2)×10/mlに達した状態で、他のフラスコまたは袋に移し、2日おきに200IU/mlのIL-2を1回追加した。細胞を10~14日目に培養した時、200μLの細胞懸濁液を取ってTrypan Blue計数を行い、後続の細胞同定、選別、および機能試験を行った。
【0098】
三、フローサイトメータによるCAR-γδ T細胞の検出
1、ビオチンでマーキングされたCD22-Fcの調製
【0099】
100μgの精製CD22-Fcタンパク質粉末(Sino Biological Inc.から購入され、品番11958-H02H)を取り、pH7.2のPBSで再懸濁し、その最終濃度を(0.5~1)μg/μLとし、純度>99.9%のジメチルスルホキシド(DMSO)で適量のビオチン(US Everbright Inc.から購入され、品番B5026-1)を溶解して2mMのビオチン懸濁液に調製し、CD22-Fcタンパク質:ビオチン=1:10のモル比で両者を均一に混合し、室温で1時間静置し、15分間おきに1回均一に混合し、脱塩カラムで脱塩し(操作ステップは脱塩カラムの明細書を参照)、体積によって、PD-10(米国GE社から購入され、品番17-0851-01)を選択してもよいし、G-25脱塩カラム(米国GE社から購入され、品番28-9180-04)を選択してもよく、ビオチンでマーキングされたCD22-Fcを得た。
【0100】
2、フローサイトメータによる細胞表面CAR(CD22)の発現レベルの検出
レンチウイルスをトランスフェクションした後の48~72時間に、各グループの細胞を取ってトランスフェクション効率(トランスフェクション効率はCD22-Fcの陽性とマーキングされたγδ T細胞の全てのγδ T細胞における百分率である)を検出した。具体的なステップは以下のとおりであった。管毎に(1~2)×10個の細胞を入れ、1μLのビオチンでマーキングされたCD22-Fcを加え、4~8℃にて暗所で10minインキュベートし、1mLの(PBS+2%のFBS)を加えて再懸濁し、遠心して洗浄した。更に、SA-PE、CD3-APC、CD4-PE-Cy7、CD8-VioBlue、および7AAD(Miltenyi Biotec Biotechnology Companyから購入される)を加え、4~8℃にて暗所で10minインキュベートし、遠心して洗浄し、200μLのBufferで再懸濁し、MACSQuant 10フローサイトメータで検出し、FlowJoでCAR(CD22)の発現レベルを分析した。
【0101】
検出結果は図7に示すとおりであった。図から見られるように、K562-shFPPSグループのトランスフェクション効率はK562+ZOLグループおよびPBMC+ZOLグループよりも著しく高かった。腫瘍細胞K562-shFPPSは、レンチウイルスのγδ T細胞に対するトランスフェクション効率を向上させることができることを意味した。
【0102】
四、CAR-γδ陽性T細胞の選別精製
上記方法で7~10日間培養したCAR22で修飾されたγδ T細胞を選別して精製し、精製後のCAR-γδ陽性T細胞を得た。具体的なステップは以下のとおりであった。7~10日間培養したCAR-γδ T細胞を収集し、上清を遠心して捨て、1×10個のCAR-γδ T細胞毎に80μLの緩衝液(PBS+2%のFBS)および5μLのビオチンでマーキングされたCD22-Fcを加える割合で緩衝液およびビオチンでマーキングされたCD22-Fcを加え、4~8℃にて暗所で15minインキュベートし、インキュベートが終了した後、1×10個のCAR-γδ T細胞毎に1~2mLの緩衝液を加える割合で緩衝液を加え、遠心して洗浄し、洗浄した後、1×10個のCAR-γδ T細胞毎に80μLの緩衝液(PBS+2%のFBS)および10μLのSA磁気ビーズを加える割合で緩衝液およびSA磁気ビーズを加え、均一に混合し、4~8℃にて暗所で30minインキュベートし、インキュベートが終了した後、1×10個のCAR-γδ T細胞毎に1~2mLの緩衝液を加える割合で緩衝液を加え、遠心して洗浄し、1×10個の細胞毎に500μLの緩衝液を加える割合で緩衝液を加え、ピペッティングして細胞沈殿層を均一に混合し、磁気分離カラムでCAR-γδ陽性T細胞を選別し、滴下した細胞懸濁液は選別されたCAR-γδ陰性T細胞であり、それをCAR-γδ Tcellsと記し、磁気カラム中の細胞はCAR-γδ陽性T細胞であり、それをCAR+γδ Tcellsと記した。得られた陽性細胞を収集して選別して計数し、CAR陽性T細胞の純度をフローサイトメトリー法により検出し、残りの細胞を培養し続けたまたは後続の機能試験に直接用いた。
【0103】
五、CAR-γδ T細胞の体外機能試験
1、標的細胞株の確立
【0104】
(1)K562-CD22細胞
特異的抗原CD22を発現する腫瘍細胞株を構築するために、健康者のPBMCからクローニングしてCD22全長cDNA配列(Genebank番号NM_001771.3)を取得し、CD22全長cDNA配列を、Puromycine耐性遺伝子を持つU6-Based shRNA Knockdownレンチウイルスプラスミド(Cyagen Biosciences Inc.から購入され)に挿入し、レンチウイルスプラスミドを得た。実施例1のステップ一の2および3における方法に従い、レンチウイルスプラスミドを包装してK562細胞にトランスフェクションし、選別により純度が高いK562-CD22細胞を得た。
【0105】
(2)K562-CD19細胞
特異的抗原CD19を発現する腫瘍細胞株を構築するために、健康者のPBMCからクローニングしてCD19全長cDNA配列(Genebank番号NM_001770.5)を取得し、CD19全長cDNA配列を、Puromycine耐性遺伝子を持つU6-Based shRNA Knockdownレンチウイルスプラスミド(Cyagen Biosciences Inc.から購入される)に挿入し、レンチウイルスプラスミドを得た。実施例1のステップ一の2および3における方法に従い、レンチウイルスプラスミドを包装してK562細胞にトランスフェクションし、選別により純度が高いK562-CD19細胞を陰性対照として得た。
【0106】
(3)LCL細胞
LCL細胞は、EBウイルスが健康な成人の末梢B細胞に感染して得られた不死化細胞系であり、細胞表面にCD22抗原を発現する。具体的な調製方法は以下のとおりであった。B95.8細胞(中国科学院セルバンクから購入される)をT75cmの細胞培養用フラスコに接種し、濃度が3×10個/mlであり、培地はRPMI1640(gibcoから購入され、製品のカタログ番号22400-088)+10%FBS(gibcoから購入され、製品のカタログ番号10099141)である。37℃、5%のCOのインキュベータで48h培養した後、1×10個/mlの濃度で細胞を再接種し、最終濃度が20ng/mLのTPA(caymanから購入され、製品のカタログ番号16561-29-8)を加えて細胞を処理した。1h後、RPMI1640完全培地で細胞を3回洗浄し、TPAを除去した。得られた細胞を1×10個/mlの濃度で再び接種し、37℃、5%のCOのインキュベータで96h培養し、培養液を50mLの遠心管に収集し、4℃、600gで10min遠心し、得られた上清を0.45μmのフィルタで濾過し、濾液はEBVウイルス懸濁液であった。密度勾配遠心法により取得された末梢血単核球(PBMC)に対してCD3(Miltenyi Biotec Biotechnology Companyから購入され、製品のカタログ番号130-050-101)選別を行った。得られたCD3-細胞はB細胞であり、3×10個/mlの濃度で培養用フラスコに接種し、1/10体積のEBVウイルス懸濁液を加えた。EBVウイルスで感染してから1週間後に、細胞クラスター、すなわち形質転換が成功したLCL細胞が倒立顕微鏡で見られた。時間の経過につれ、細胞クラスターはますます大きくなり、細胞数および培地の色に応じて増殖および凍結保存を行うことができた。
【0107】
2、フローサイトメータによるサイトカインIFN-γおよび表面のCD137の発現レベルの測定
ステップ1で得られた標的細胞株を、ウェル毎に1×10の数で96ウェルのU型底細胞培養プレートに入れ、その後、エフェクター細胞(CAR-γδ陽性T細胞):標的細胞がそれぞれ10:1、3:1、1:1である割合で対応数の選別精製されたCAR-γδ陽性T細胞を対応する各ウェルにそれぞれ入れ、エフェクター細胞および標的細胞のブランクウェルをそれぞれ設け、CAR-γδ陰性T細胞を対照のエフェクター細胞とし、同じ検出を設けた。その後、細胞培養プレートを37℃、5%のCOのインキュベータに置いて4時間培養し、細胞懸濁液を吸い出し、PBSで2回洗浄し、100μLのBufferで細胞を再懸濁し、2μLのCD3-APC-Cy7、CD4-PE.Cy7、CD8-VioBlue、およびCD137-PE(BD社、クローン番号4B4-1)をそれぞれ加え、4~8℃にて暗所で10minインキュベートし、洗浄した後、BD社の細胞内染色キット(品番554714)を用い、染色方法は明細書を参照した。対応する試薬が細胞膜を貫通した後、5μLのマウス抗ヒトIFN-γ-FITCモノクローナル抗体(BD社、クローン番号がB27である)を加え、4~8℃にて暗所で10minインキュベートした後に洗浄し、洗浄後、IFN-γおよびCD137の発現レベルをフローサイトメータにより検出した。
【0108】
検出結果は図8に示すとおりであった。図から見られるように、K562-shFPPS細胞とγδ T細胞とを共培養して生産したCAR+γδ T細胞はCD22を発現する腫瘍細胞に対して特異的に応答し、より多くのIFN-γを分泌し、より多くのCD137を細胞表面に発現した。
【0109】
3、フローサイトメータによるCAR-γδ Tの特異的殺傷活性の測定
実施例1のステップ二の2における方法に従い、ステップ1における各標的細胞株に対してCFSEによるマーキングを行い、室温または37℃にて暗所で20minインキュベートし、10%(体積分率)のFBSを含む5倍体積の培地を加え、染色を終了した。2000rpmで5min遠心し、遠心後に細胞を再懸濁し、室温または37℃にて暗所で10minインキュベートし、インキュベートが終了した後、細胞を2回洗浄し、再懸濁後に使用に備えた。96ウェル細胞培養プレートで、ウェル毎に1×10個のCFSEでマーキングされた標的細胞を入れ、その後、エフェクター細胞(CAR-γδ陽性T細胞):標的細胞がそれぞれ10:1、3:1、1:1である割合で対応数の選別精製されたCAR-γδ T陽性細胞を対応する各ウェルにそれぞれ入れ、エフェクター細胞および標的細胞のブランクウェルをそれぞれ設け、CAR-γδ陰性T細胞を対照のエフェクター細胞とし、同じ検出を設けた。その後、細胞培養プレートを37℃、5%のCOのインキュベータに置いて4時間共培養し、細胞懸濁液を吸い出し、PBSで2回洗浄し、100μLのBufferで細胞を再懸濁し、5μLの7-AADを加え、暗所で10minインキュベートして洗浄し、洗浄後に、殺傷率をフローサイトメータにより検出し、殺傷率は殺傷された標的細胞(CFSE+7AAD+)が全ての標的細胞(CSFE+)を占有する百分率であった。
【0110】
結果は図9に示すとおりであった。図から見られるように、K562-shFPPS細胞とγδ T細胞とを共培養して生産したCAR+γδ T細胞は、CD22の腫瘍細胞を特異的に分解して発現することができた。
【0111】
(付記1)
γδ T細胞培養系にFPPS発現量および/または活性が低下した腫瘍細胞を加えるステップを含む、γδ T細胞の増殖方法。
【0112】
(付記2)
前記γδ T細胞と前記FPPS発現量および/または活性が低下した腫瘍細胞との個数比は(1~10):1である、ことを特徴とする付記1に記載の方法。
【0113】
(付記3)
培養系内の細胞濃度が(1.5~2)×10個/mlに達すると、2~4日毎にIL-2を前記培養系に1回加えるステップを更に含む、ことを特徴とする付記1に記載の方法。
【0114】
(付記4)
IL-2を加える時の標準は、前記IL-2の前記培養系における最終濃度を(100~1000)IU/mLとすることである、ことを特徴とする付記3に記載の方法。
【0115】
(付記5)
キメラ抗原受容体を発現するベクターとγδ T細胞とを共培養し、CAR-γδ T細胞を得るステップと、前記培養系にFPPS発現量および/または活性が低下した腫瘍細胞が含まれるステップとを含む、CAR-γδ T細胞を生産する方法。
【0116】
(付記6)
前記キメラ抗原受容体を発現するベクターとγδ T細胞とを共培養する方法は、
FPPS発現量および/または活性が低下した腫瘍細胞をγδ T細胞培養系に加え、培養して培養系を得るステップ1)と、
キメラ抗原受容体を発現するベクターを前記培養系に加え、培養して前記CAR-γδ T細胞を得るステップ2)と、
を含む、ことを特徴とする付記5に記載の方法。
【0117】
(付記7)
前記ステップ1)において、前記γδ T細胞と前記FPPS発現量および/または活性が低下した腫瘍細胞との個数比は(1~10):1である、ことを特徴とする付記6に記載の方法。
【0118】
(付記8)
前記ステップ2)において、培養系内の細胞濃度が(1.5~2)×10個/mlに達すると、2~4日毎にIL-2を前記培養系に1回加える、ことを特徴とする付記6に記載の方法。
【0119】
(付記9)
前記ステップ2)において、前記キメラ抗原受容体を発現するベクターは、キメラ抗原受容体を発現するレンチウイルスベクターである、ことを特徴とする付記6に記載の方法。
【0120】
(付記10)
付記5~9のいずれか1つに記載の方法に従ってCAR-γδ T細胞を生産するステップ(1)と、
前記CAR-γδ T細胞を腫瘍患者の体内に返送し、前記CAR-γδ T細胞により前記腫瘍患者の体内の腫瘍細胞を認識して殺傷し、更に腫瘍を免疫して治療するという目的を実現するステップ(2)と、
を含む、腫瘍を免疫して治療する方法。
【0121】
(付記11)
活性成分は、FPPS発現量および/または活性が低下した腫瘍細胞である製品であって、
前記製品の機能は、
B1)γδ T細胞の増殖を促進することと、
B2)γδ T細胞の分化を促進することと、
B3)CAR-γδ T細胞を生産することと、
B4)レンチウイルスのγδ T細胞に対するトランスフェクション率を向上させることと、
B5)腫瘍を免疫して治療することと、
のいずれかである、製品。
【0122】
(付記12)
前記FPPS発現量および/または活性が低下した腫瘍細胞は、FPPSコード遺伝子の発現を抑制する物質を腫瘍細胞に導入して得られたものである、ことを特徴とする付記1~10のいずれか1つに記載の方法または付記11に記載の製品。
【0123】
(付記13)
前記FPPSコード遺伝子の発現を抑制する物質は、レンチウイルスベクターにより腫瘍細胞に導入される、ことを特徴とする付記12に記載の方法または製品。
【0124】
(付記14)
前記FPPSコード遺伝子の発現を抑制する物質は、FPPSコード遺伝子の発現を抑制するshRNAである、ことを特徴とする付記12に記載の方法または製品。
【0125】
(付記15)
前記FPPSコード遺伝子の発現を抑制するshRNAは、ステムI、ループ、およびステムIIで形成されたステムループ構造の一本鎖RNAであり、
前記ステムIの配列は配列表の配列2の1番目~21番目に示すとおりであり、前記ループの配列は配列表の配列2の22番目~27番目に示すとおりであり、前記ステムIIの配列は配列表の配列2の28番目~48番目に示すとおりである、ことを特徴とする付記14に記載の方法または製品。
【0126】
(付記16)
前記腫瘍細胞は慢性骨髄性白血病細胞系である、ことを特徴とする付記1~10のいずれか1つに記載の方法または付記11に記載の製品。
【0127】
(付記17)
前記慢性骨髄性白血病細胞系はK562細胞である、ことを特徴とする付記16に記載の方法または製品。
【産業上の利用可能性】
【0128】
従来技術の欠陥を克服するために、本発明は、全く新しいγδ T細胞の増殖形態を提供し、該形態は具体的に以下のとおりである。FPPシンターゼ(FPPSynthase、FPPS)を標的とするshFPPSを、レンチウイルスベクターによりK562細胞にトランスフェクションし、K562細胞におけるFPPSの発現量を低減し、FPPS発現量が低下したK562-shFPPS細胞系を構築する。本発明は、K562-shFPPS細胞系をγδ T細胞培養系に加えてγδ T細胞と共培養し、K562-shFPPS細胞系が精製されたVγ9δ2 T細胞の体外分化および増殖を直接刺激できることを見出した。本発明は、更に、キメラ抗原受容体を発現するレンチウイルスベクターを、K562-shFPPS細胞系を含むγδ T細胞培養系に加えて共培養し、K562-shFPPS細胞系がCAR遺伝子のトランスフェクション効率を効果的に向上させ、更にCAR-γδ T細胞の調製効率を向上させることができることを見出した。上記実験結果により、K562-shFPPS細胞系はγδ T細胞の体外増殖能力およびCAR遺伝子のトランスフェクション効率を効果的に向上させることができ、本発明に係る形態は、CAR-γδ T細胞の大規模生産という技術的ボトルネックを効果的に解決し、良好な応用の見通しを有していることが示されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【配列表】
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