(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-13
(45)【発行日】2022-12-21
(54)【発明の名称】新旧BP変換装置
(51)【国際特許分類】
H04L 25/49 20060101AFI20221214BHJP
B61L 27/00 20220101ALI20221214BHJP
【FI】
H04L25/49 F
B61L27/00
(21)【出願番号】P 2019067776
(22)【出願日】2019-03-29
【審査請求日】2022-03-22
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 大同信号株式会社発行「DAIDO」147号 平成30年7月30日 [刊行物等] 第55回鉄道サイバネ・シンポジウム論文集 平成30年11月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000207470
【氏名又は名称】大同信号株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106345
【氏名又は名称】佐藤 香
(72)【発明者】
【氏名】竹本 啓明
(72)【発明者】
【氏名】宮越 文彦
(72)【発明者】
【氏名】山下 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】金岡 宏太
【審査官】谷岡 佳彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-234428(JP,A)
【文献】特開2007-185977(JP,A)
【文献】特開昭62-058752(JP,A)
【文献】特開2017-170948(JP,A)
【文献】特開平06-296188(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 25/49
B61L 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝文の伝送信号から新しいバイフェーズ符号化の規格に則って前記伝文のビット列データを復元する新BP復調手段と、前記ビット列データについて一部でも復元されると残りの復元の完了を待つことなく旧いバイフェーズ符号化の規格に則って送信用伝送信号への変換を開始する旧BP変調手段と、前記送信用伝送信号の送信を行う送信回路とを備えている新旧BP変換装置。
【請求項2】
伝文の伝送信号から旧いバイフェーズ符号化の規格に則って前記伝文のビット列データを復元する旧BP復調手段と、前記ビット列データについて一部でも復元されると残りの復元の完了を待つことなく新しいバイフェーズ符号化の規格に則って送信用伝送信号への変換を開始する新BP変調手段と、前記送信用伝送信号の送信を行う送信回路とを備えている新旧BP変換装置。
【請求項3】
伝文の伝送信号から新しいバイフェーズ符号化の規格に則って前記伝文のビット列データを復元する新BP復調手段と、前記ビット列データについて一部でも復元されると残りの復元の完了を待つことなく旧いバイフェーズ符号化の規格に則って送信用伝送信号への変換を開始する旧BP変調手段と、前記伝送信号から旧いバイフェーズ符号化の規格に則って前記伝文のビット列データを復元する旧BP復調手段と、前記旧BP復調手段の前記ビット列データについて一部でも復元されると残りの復元の完了を待つことなく新しいバイフェーズ符号化の規格に則って送信用伝送信号への変換を開始する新BP変調手段と、前記旧BP変調手段の前記送信用伝送信号と前記新BP変調手段の前記送信用伝送信号とのうち何れか一方の信号を選択する択一手段と、前記択一手段にて選択された信号を送信する送信回路とを備えている新旧BP変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、鉄道のCTC(Centralized Traffic Control)の設備更新に役立つ新旧BP変換装置に関する。
詳しくは、CTC中央装置とCTC回線(伝送回線)とCTC駅装置との連携システムとして具体化したCTC装置(列車集中制御装置,CTCシステム)であって、CTC回線でのデータ伝送にCTC6形と呼ばれる伝送符号形式を採用しているCTC設備に対して、旧形CTC装置から新形CTC装置へ更新するとき一時的に組み込んで使用され、伝送符号形式の新旧相違による更新作業の負担を軽減するのに役立つ符号変換を行う伝送符号形式変換装置に関する。
CTC6形の伝送符号形式にはバイフェーズ符号(以下、BP符号ともいう)が採用されており、そのバイフェーズ符号には新旧2種類が存在している。
【背景技術】
【0002】
CTC装置は(例えば特許文献1,2参照)、対象の線区内を走行する列車を管理する列車指令システムの近代化に貢献しているものであり、CTCセンタに設置された基本的には一台のCTC中央装置と、線区内の各駅に配設された多数のCTC駅装置と、それらが接続されたCTC回線(伝送回線)とを具備していて、CTC中央装置がCTC回線を介して各CTC駅装置に対する指令送信とデータ収集を行うようになっている。そして、各CTC駅装置に設置先駅の連動装置が接続されていると、列車指令の出した制御情報(指令)がCTC中央装置からCTC回線とCTC駅装置とを介して該当する連動装置に届けられ、それに応じて連動装置が転てつ機や信号機を作動させるとともに、該当する駅の軌道回路による列車在線状態や信号機の現示情報その他の状態報告などの表示情報(データ)が連動装置とCTC駅装置とCTC回線とを介してCTC中央装置に収集される。
【0003】
そのために、CTC中央装置は、列車管理手段に加えて、CTC回線に接続される通信回路と、その通信回路を介して制御情報などの指令を各CTC駅装置へ送信するとともに各CTC駅装置から送られてきたデータを受信する送受信手段とを備えている。
CTC駅装置も、CTC中央装置に接続されたCTC回線に接続される通信回路と、設置先駅に係る信号機などの現場機器から表示情報などのデータを取得する手段と、そのデータを保持する駅データ記憶領域と、上記の通信回路を介して上記指令の受信と上記データの送信とを行う送受信手段とを備えている。
【0004】
このようなCTC装置の設備更新では、これまでは、4形伝送方式を採用した旧形装置から、6形伝送方式を採用した新形装置へ、CTC中央装置やCTC駅装置さらにはCTC回線まで一式を取り替えることが多かった(例えば特許文献1~3参照)。
そのため、旧形CTC装置に対して新形CTC装置を並設し終えてから、列車営業運行時の実運用を旧形CTC装置で行いながら新形CTC装置をモニタリング運用させるとともに、営業運行の無い夜間などに新形CTC装置を試験運用し、その後一斉に新旧システムの運用を交代させる、という遣り方が主流である(例えば特許文献1,2参照)。
【0005】
これに対し(例えば特許文献3参照)、既に設置されて実運用されているCTC装置について一部のCTC回線が災害等で破損して使用不能になった場合には、その破損したCTC回線が担当していた範囲に対して他回線を緊急敷設するとともに、破損箇所より先のCTC駅装置に係る情報の転送や処理の代行を担うことができる特殊なCTC駅装置をCTC回線と他回線とに介在させることにより、破損箇所より先のCTC駅装置を他回線経由でCTC装置に繋ぎ止めることができるようになったものがある。これは、緊急避難的な対処なので、応答速度の低下等は伴うが装置の機能を全域で維持することができる。
【0006】
また(例えば特許文献3参照)、そのような特殊なCTC駅装置を利用することでCTC装置の一式更新も或る程度は柔軟に行えるようになっている。具体的には、旧形CTC装置に対して新形CTC中央装置と新形CTC回線とを並設し終えたら、特殊なCTC駅装置を新形CTC中央装置と旧形CTC中央装置とに介在させて、適宜な旧形CTC駅装置を旧形CTC装置から取り外すとともに、対応する新形CTC駅装置を新形CTC装置に組み込んで、更に特殊なCTC駅装置について他のCTC駅装置の代行対象を組み込み直後の新形CTC駅装置組に拡張させることで、CTC駅装置に関しては一斉に更新しなくても良く任意の順序や時期に更新することができる。この場合も、代行等を伴うCTC駅装置の処理部分には応答速度の低下が伴うが装置の機能を全域で維持することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2005-29008号公報
【文献】特開2009-234428号公報
【文献】特開2017-170948号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように、従来の設備更新方法では、CTC回線を含む新形CTC装置一式を増設しておいて運用を一気に切り替えるようになっている(例えば特許文献1,2参照)。
あるいはCTC駅装置については特殊なCTC駅装置を介在させることで部分的に切り替えることができるようにもなっている(例えば特許文献3参照)。
【0009】
しかしながら、後者の場合でも(例えば特許文献3参照)、他のCTC駅装置に係る情報の転送や処理を代行しうる特殊なCTC駅装置が必要であり、その処理等に際して、伝文単位でデータを蓄積する処理や、それにともなう伝文単位かその倍数での伝送遅延が伴う。そのため、特殊なCTC駅装置を取り外して設備更新を終えるまでは応答速度の低下等を甘受しなければならない。しかも、新たなCTC回線か他回線といった別回線を追加して、それを既存のCTC回線に対して並設することも、必要とされる。
【0010】
かかる設備更新方法は主に4形CTC装置から6形CTC装置への更新に用いられ、それによって現在は多くのCTC装置が6形伝送方式のものになっている。
ところが、6形伝送方式のなかにも規格制定時期の前後による新旧2種類の方式が存在しており、旧い6形CTC装置から新しい6形CTC装置への設備更新が進みつつあり、既に6形CTC装置を設備更新し終えたところや設備更新を始めたところでは、上述した従来の設備更新方法が適用されている。
【0011】
もっとも、新旧2種類があっても同じく6形伝送方式と呼ばれるのは、新旧2種類の違いが伝文形式や伝送速度といった事項でなくて、CTC回線に同じ仕様のものが使用できるうえ、CTC伝送符号形式にバイフェーズ符号が採用されているところまで新旧2種類に共通しているからである。新旧2種類の違いは、BP符号変換に際して、旧BP符号(旧い形式のBP符号)では伝文(情報)の各ビット毎に当該1ビットの値だけで符号(波形)を決定しているのに対し、新BP符号(新しい形式のBP符号)では伝文(情報)の各ビット毎に当該1ビットの値に加えて直前の1ビットの値も加味して符号(波形)を決定している、というBP符号化方式の相違にとどまる。
【0012】
そのため、6形伝送方式における新旧2種類の相違が伝文全体に絡むものでなくBP符号変換時の少数ビットに係るものであることに着目すれば、新旧BP符号の変換方式を工夫して、伝送遅延を実用上無視できる程度に抑えることが期待される。
また、CTC回線の共通性を活用して、別回線を追加並設しなくても旧い6形CTC装置から新しい6形CTC装置へ設備を更新できるようにすることも望まれる。
そこで、伝文単位での伝送遅延と別回線の追加並設とを何れも回避・迂回して簡便かつ自在にCTC装置の設備更新を行えるようにすることが技術的な課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の新旧BP変換装置は(解決手段1)、上述の課題を解決するために創案されたものであり、
伝文の伝送信号から新しいバイフェーズ符号化の規格に則って前記伝文のビット列データを復元する新BP復調手段と、前記ビット列データについて一部でも復元されると残りの復元の完了を待つことなく旧いバイフェーズ符号化の規格に則って送信用伝送信号への変換を開始する旧BP変調手段と、前記送信用伝送信号の送信を行う送信回路とを備えている。
【0014】
また、本発明の新旧BP変換装置は(解決手段2)、上述の課題を解決するために創案されたものであり、
伝文の伝送信号から旧いバイフェーズ符号化の規格に則って前記伝文のビット列データを復元する旧BP復調手段と、前記ビット列データについて一部でも復元されると残りの復元の完了を待つことなく新しいバイフェーズ符号化の規格に則って送信用伝送信号への変換を開始する新BP変調手段と、前記送信用伝送信号の送信を行う送信回路とを備えている。
【0015】
さらに、本発明の新旧BP変換装置は(解決手段3)、上述の課題を解決するために創案されたものであり、
伝文の伝送信号から新しいバイフェーズ符号化の規格に則って前記伝文のビット列データを復元する新BP復調手段と、前記ビット列データについて一部でも復元されると残りの復元の完了を待つことなく旧いバイフェーズ符号化の規格に則って送信用伝送信号への変換を開始する旧BP変調手段と、前記伝送信号から旧いバイフェーズ符号化の規格に則って前記伝文のビット列データを復元する旧BP復調手段と、前記旧BP復調手段の前記ビット列データについて一部でも復元されると残りの復元の完了を待つことなく新しいバイフェーズ符号化の規格に則って送信用伝送信号への変換を開始する新BP変調手段と、前記旧BP変調手段の前記送信用伝送信号と前記新BP変調手段の前記送信用伝送信号とのうち何れか一方の信号を選択する択一手段と、前記択一手段にて選択された信号を送信する送信回路とを備えている。
【発明の効果】
【0016】
上述の解決手段1に係る本発明の新旧BP変換装置にあっては、設備更新時に新CTC駅装置等から旧CTC駅装置等へ伝文を伝送することになった箇所に導入される。
また、解決手段2に係る本発明の新旧BP変換装置にあっては、設備更新時に旧CTC駅装置等から新CTC駅装置等へ伝文を伝送することになった箇所に導入される。
しかも、その際、既設のCTC回線の何れか一端とCTC駅装置との間に介挿接続する態様で組み込むことができるので、別回線を追加並設しなくても設備更新が行える。
【0017】
そして、その導入先では、設備更新の前後の境目で必要な新旧BP符号の変換が本発明の新旧BP変換装置によって行われるのであるが、そのときの新旧BP符号の変換にあっては、受信した伝送信号からビット列データの一部でも復元されると残りの復元の完了を待つことなく新旧BP符号変換が開始される。
そのため、伝送される伝文に係る復調と変調ひいては受信と送信が、符号変換を伴っているにもかかわらず、伝文の全ビット数より少数のビット分の伝送時間差で行われる。
【0018】
このように伝送遅延を伝文単位より短い時間に抑えながら新旧BP符号を変換するようにもしたことにより、伝送遅延は実用上無視できる程度に抑えられることとなる。
そのため、更新前後のCTC駅装置等の間に本発明の新旧BP変換装置を適切に導入すれば、一部のCTC駅装置等を対象にして設備更新を進めることができる。
したがって、本発明の新旧BP変換装置を用いれば、伝文単位での伝送遅延と別回線の追加並設とを共に回避・迂回して簡便かつ自在にCTC装置を更新することができる。
【0019】
また、上述した解決手段3に係る本発明の新旧BP変換装置にあっては、設備更新時に新CTC駅装置等から旧CTC駅装置等へ伝文を伝送することになった第1型の箇所であれ、設備更新時に旧CTC駅装置等から新CTC駅装置等へ伝文を伝送することになった第2型の箇所であれ、BP符号の変換方式が新旧異なる箇所に導入される。
そして、第1型の箇所に導入されたときには択一手段にて送信の対象に旧BP変調手段の送信用伝送信号が選択されるように設定しておくことで解決手段1の作用効果を奏し、第2型の箇所に導入されたときには択一手段にて送信の対象に新BP変調手段の送信用伝送信号が選択されるように設定しておくことで解決手段2の作用効果を奏し、一台で二役をこなすため、使い勝手が良く、新旧BP変換装置の準備も楽になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施例1について、(a)がCTC伝送符号形式を新BP符号から旧BP符号に変換する新旧BP変換装置の構造を示すブロック図、(b)が1ビットデータに係る旧BP符号の波形図、(c)が1ビットデータに係る新BP符号の波形図、(d)が変換動作例である。
【
図2】本発明の実施例2について、(a)がCTC伝送符号形式を旧BP符号から新BP符号に変換する新旧BP変換装置の構造を示すブロック図、(b)が変換動作例である。
【
図3】本発明の実施例3について、新旧BP変換装置の構造を示すブロックである。
【
図4】本発明の実施例4について、(a)が更新前CTC装置のブロック図、(b)がCTC中央装置を更新したCTC装置のブロック図である。
【
図5】(a)が更に一台目のCTC駅装置を更新したCTC装置のブロック図、(b)が更に二台目のCTC駅装置を更新したCTC装置のブロック図である。
【
図6】(a)が更に三台目のCTC駅装置を更新したCTC装置のブロック図、(b)が総てのCTC駅装置を更新して更新作業を終えた更新後CTC装置のブロック図である。
【
図7】本発明の実施例5について、一台の新旧BP変換装置を用いて旧いCTC装置を新しいCTC装置に更新するのを上述したのと逆向きで行うときの途中状態を示すブロック図である。
【
図8】本発明の実施例6について、旧いCTC装置を新しいCTC装置に更新するに際して複数台の新旧BP変換装置を用いて適宜箇所のCTC駅装置を更新したときの途中状態を示すブロック図である。
【
図9】本発明の実施例7について、(a)がCTC伝送符号形式を新BP符号から旧BP符号に変換するときの対応関係を示す図、(b)が変換動作例である。
【
図10】(a)がCTC伝送符号形式を旧BP符号から新BP符号に変換するときの対応関係を示す図、(b)が変換動作例である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
このような本発明の新旧BP変換装置について、これを実施するための具体的な形態を、以下の実施例1~7により説明する。
図1に示した実施例1は、上述した解決手段1(出願当初の請求項1)を具現化したものであり、
図2に示した実施例2は、上述した解決手段2(出願当初の請求項2)を具現化したものであり、
図3に示した実施例3は、上述した解決手段3(出願当初の請求項3)を具現化したものである。
【0022】
また、
図4~
図6に示した実施例4は、上述した解決手段1又は3を設備更新に適用したものであり、
図7に示した実施例5は、上述した解決手段2又は3を設備更新に適用したものであり、
図8に示した実施例6は、上述した解決手段1又は3と解決手段2又は3とを設備更新に適用したものであり、
図9~
図10に要部を示した実施例7は、実施例1~3に開示したBP符号変換手法に係る変形例である。
なお、それらの図示に際しては、簡明化等のため、ブロック図や波形図を用いて、発明の説明に必要なものや関連するものを中心に図示した。
【実施例1】
【0023】
本発明の新旧BP変換装置の実施例1について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。
図1(a)は、CTC伝送符号形式を新BP符号から旧BP符号に変換する新旧BP変換装置10の構造を示すブロック図である。
【0024】
新旧BP変換装置10は(
図1(a)参照)、受信回路11と新BP復調手段12とデータ保持部13と旧BP変調手段14と送信回路15とを具備したものである。
受信回路11は、CTC回線(伝送回線)の受信側に接続可能であり、接続されたCTC回線を介して伝文の伝送信号Aが送信されて来ると、それを受信して信号レベル調整や波形整形さらにそれに加えて或いはそれに代えてサンプリングなどを施すことにより、波形情報を維持しつつも内部処理に好適なアナログ値または多値のデジタル値で、伝送信号Bを生成するようになっている。
【0025】
新BP復調手段12は、既述のCTC6形の伝送符号形式の新BP符号の規格に則って伝送信号Aが符号化されているものとして、伝送信号Bから伝文のビット列データCを復元するものであり、具体的には、伝送信号Bに含まれる1ビット分の信号波形から上記の新BP符号の規格に則って対応する1ビット分のデータ値Cを生成することを繰り返すようになっている。
そのデータ値Cとして、ここでは、説明の簡明化のため、「0」と「1」の二値に加えて、信号の無い状態を示す値「-」をも採りうることにするが、一伝文に係る伝送信号Bの始端といった伝文単位での区切りが判別できれば、値「-」は省いても良い。
【0026】
データ保持部13は、2ビットのデジタルシフトレジスタのようなものを図示したが(
図1(a)の中央部分を参照)、2ビット分以上のデータ値を保持できて各々のデータ値を個別に読み書きできるものであれば、レジスタでもメモリでも良い。
そのようなデータ保持部13のうち、最新復元データ保持用の部分には、ビット列データのうち直近に復元された1ビット分のデータ値Cが書き込まれるようになっている(図では左側の「1」を参照)。また、データ保持部13のうち残部である以前復元データ保持用部分には、それより1ビット分だけ前に復元されたデータ値Dが書き込まれる又は書き写されるようになっている(図では右側の「-」を参照)。
【0027】
旧BP変調手段14は、上述のデータ保持部13においてデータ値Dが更新されると、その度にデータ保持部13から1ビット分のデータ値Dを読み出し、既述のCTC6形の伝送符号形式の旧BP符号の規格に則って、外部へ送出するのに好適なアナログ値または多値のデジタル値で、送信用伝送信号Eの1ビット分を符号化するものである。しかも、その際、データ保持部13にデータ値Dが保持されると、速やかに、旧BP符号への変換を行う。そのため、この旧BP変調手段14は、受信したビット列データについて一部でも復元されると残りの復元の完了を待つことなく送信用伝送信号Eへの変換を開始するものとなっている。
【0028】
送信回路15は、上記の送信用伝送信号Eをアナログ信号にするとともに信号レベル調整などを施して伝文の伝送信号Fを生成するものであるが、CTC回線(伝送回線)の送信側に接続可能であり、接続されたCTC回線を介して伝送信号Fを他のCTC駅装置などへ送信できるようになっている。
なお、各部11~15のうち新BP復調手段12とデータ保持部13と旧BP変調手段14は、個別の専用回路にて具体化しても良いが、例えばマイクロプロセッサシステムやデジタルシグナルプロセッサ等を用いて更に必要であれば適宜なA/D変換器やD/A変換器なども付設することでソフトウェア主体にて具体化しても良い。
【0029】
このような構成の新旧BP変換装置の動作を説明する前に、CTC装置に用いられるCTC6形の伝送符号形式のBP符号の規格を、新旧BP変換装置の説明に役立つ程度、図面を引用して説明する。
図1(b)は、1ビットデータに係る旧BP符号の波形図であり、同図(c)は、1ビットデータに係る新BP符号の波形図である。
【0030】
旧BP符号の規定では(
図1(b)参照)、180゜位相の異なる二つの波形が使用される。
すなわち(
図1(b)の左側部分を参照)、1ビット分のデータ値「0」に対して、一対一のマーク・スペースが割り当てられる。詳述すると、1/2サイクルの正側弧状波形と1/2サイクルの負側弧状波形との連なりが「0」に割り当てられている。
一方(
図1(b)の右側部分を参照)、1ビット分のデータ値「1」に対しては、一対一のスペース・マークが割り当てられる。詳述すると、1/2サイクルの負側弧状波形と1/2サイクルの正側弧状波形との連なりが「1」に割り当てられている。
【0031】
これに対し、新BP符号の規定では(
図1(c)参照)、それら二つの波形に別の二つの波形を加えた四つの波形が使用される。
すなわち、1ビット分のデータ値「0」に対しては、上述した一対一のマーク・スペースに加えて(
図1(c)の左から一番目の波形を参照)、その前半のマークを二分割してスペース・マークに変更したものが(
図1(c)の左から二番目の波形を参照)、追加されている。詳述すると、1/4サイクルの負側弧状波形と1/4サイクルの正側弧状波形と1/2サイクルの負側弧状波形との連なりが「0」に割り当てられている。
なお、その後者を前者「0」と明確に区別するときは、後者を「0*」と呼ぶ。
【0032】
一方、1ビット分のデータ値「1」に対しては、上述した一対一のスペース・マークに加えて(
図1(c)の左から三番目の波形を参照)、その前半のスペースを二分割してマーク・スペースに変更したものが(
図1(c)の左から四番目の波形を参照)、追加されている。詳述すると、1/4サイクルの正側弧状波形と1/4サイクルの負側弧状波形と1/2サイクルの正側弧状波形との連なりが「1」に割り当てられている。こちらについても、その後者と前者とを明確に区別するときは、後者を「1*」と呼ぶ。
なお、「0」と「0*」の使い分けも、「1」と「1*」の使い分けも、直前の波形に対して位相反転の程度の小さい方を採用することで、確定的になされる。
【0033】
この実施例1の新旧BP変換装置10について、その動作を、図面を引用して説明する。
図1(d)は、変換動作例を示す波形図等である。
【0034】
新旧BP変換装置10では、伝送信号A,Bが無信号状態のときには(
図1(d)における最初の変換の流れを参照)、新BP復調手段12によってデータ値Cが「-」にされ、それがデータ保持部13の最新復元データ保持用部分に書き込まれる。
また、それと並行して又は少し遅れて但し最新復元データ保持用部分に対する次の書き込みよりは先に、データ保持部13の以前復元データ保持用部分のデータ値Dが旧BP変調手段14によって旧BP符号に変換される。図示の例では、データ値Dが「-」なので、送信用伝送信号E,Fは無信号状態になる。それから、データ保持部13において最新復元データ保持用部分の値が以前復元データ保持用部分に書き写される。
【0035】
そして、伝送信号A,Bが新BP符号のスペース・マーク波形になると(
図1(d)における二番目の変換の流れを参照)、新BP復調手段12によってデータ値Cが「1」にされ、それがデータ保持部13の最新復元データ保持用部分に書き込まれる。
また、上述のように遅れ気味で並行して、データ保持部13の以前復元データ保持用部分のデータ値Dが旧BP変調手段14によって旧BP符号に変換されるが、データ値Dが「-」なので送信用伝送信号E,Fは無信号状態になる。それから、データ保持部13において最新復元データ保持用部分の値が以前復元データ保持用部分に書き写される。
【0036】
そして、次の伝送信号A,Bも新BP符号のスペース・マーク波形であると(
図1(d)における三番目の変換の流れを参照)、新BP復調手段12によってデータ値Cが「1」にされ、それがデータ保持部13の最新復元データ保持用部分に書き込まれる。
また、やはり上述のように遅れ気味で並行して、データ保持部13の以前復元データ保持用部分のデータ値Dが旧BP変調手段14によって旧BP符号に変換されるが、こんどはデータ値Dが「1」なので、送信用伝送信号E,Fは旧BP符号のスペース・マーク波形になる。それから、データ保持部13において最新復元データ保持用部分の値が以前復元データ保持用部分に書き写される。
【0037】
そして、次の伝送信号A,Bが新BP符号のスペース・マーク・スペース波形であると(
図1(d)における四番目の変換の流れを参照)、それは新BP符号の「0*」に対応した信号波形なので、新BP復調手段12によってデータ値Cが「0」にされ、それがデータ保持部13の最新復元データ保持用部分に書き込まれる。
また、やはり遅れ気味で並行して、データ保持部13の以前復元データ保持用部分のデータ値Dが旧BP変調手段14によって旧BP符号に変換されるが、こんどもデータ値Dが「1」なので、送信用伝送信号E,Fは旧BP符号のスペース・マーク波形になる。それから、データ保持部13において最新復元データ保持用部分の値が以前復元データ保持用部分に書き写される。
【0038】
繰り返しとなる詳細な説明は割愛するが、その後も同様にして(
図1(d)の五番目以降の変換の流れを参照)、新BP符号の波形が(「0」,「1*」,「1」,…)、それぞれ、概ね2ビットの伝送に要する時間ほどの遅れを伴って、旧BP符号の対応波形に符号変換される。その遅延時間は、一伝文の伝送時間に要する時間よりかなり短いので、実用上無視することができる。
そのため、新BP符号の伝文を旧BP符号に変換したいときには、新旧BP変換装置10を導入して、その新旧BP変換装置10を既存のCTC回線のうち新旧BP符号の切り替わり目に介挿接続すれば良い。
【実施例2】
【0039】
本発明の新旧BP変換装置の実施例2について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。
図2(a)は、CTC伝送符号形式を旧BP符号から新BP符号に変換する新旧BP変換装置20の構造を示すブロック図である。
【0040】
新旧BP変換装置20は(
図2(a)参照)、受信回路21と旧BP復調手段22とデータ保持部23と新BP変調手段24と送信回路25とを具備したものである。
それらのうち、受信回路21は上述の受信回路11と同様のもので良く、送信回路25も上述の送信回路15と同様のもので良いので、繰り返しとなる説明は割愛する。
また、旧BP符号の規格(
図1(b)参照)や、新BP符号の規格(
図1(c)参照)も、上述したものと同じなので、以下、その説明も割愛する。
【0041】
旧BP復調手段22は、既述のCTC6形の伝送符号形式の旧BP符号の規格に則って伝送信号Aが符号化されているものとして、伝送信号Bから伝文のビット列データCを復元するものであり、符号化が新BP符号でなく旧BP符号であることを除いて、上述した新BP復調手段12と同様のものである。
データ保持部23は、データ値の保持量が3ビット分以上に増えているが、それらを順次シフトさせることや、データ値Cの書き込み箇所が1ビット目であること、データ値Dの読み出し箇所が2ビット目であることは、上述したデータ保持部13と同様である。なお、3ビット目の保持データもデータ値Gとして読み出されるようになっている。
【0042】
新BP変調手段24は、上述のデータ保持部23においてシフト動作によってデータ値D,Gが更新されると、その度にデータ値Dとデータ値Gとを読み出し、既述のCTC6形の伝送符号形式の新BP符号の規格に則って、外部へ送出するのに好適なアナログ値または多値のデジタル値で、送信用伝送信号Eの1ビット分を符号化するものである。しかも、その際、データ保持部23にデータ値D,Gが保持されると、速やかに、新BP符号への変換を行う。そのため、この新BP変調手段24は、受信したビット列データについて一部でも復元されると残りの復元の完了を待つことなく送信用伝送信号Eへの変換を開始するものとなっている。
【0043】
この実施例2の新旧BP変換装置20について、その動作を、図面を引用して説明する。
図2(b)は、変換動作例を示す波形図等である。
【0044】
新旧BP変換装置20でも、伝送信号A,Bが無信号状態のときには(
図2(b)における最初の変換の流れを参照)、旧BP復調手段22によってデータ値Cが「-」にされ、それがデータ保持部13の最新復元データ保持用部分に書き込まれる。
また、それと並行して又は少し遅れて但し最新復元データ保持用部分に対する次の書き込みよりは先に、データ保持部13の以前復元データ保持用部分のデータ値D,Gが新BP変調手段24によって新BP符号に変換される。図示の例では、データ値D,Gが「-」,「-」なので、送信用伝送信号E,Fは無信号状態になる。それから、データ保持部23のシフト動作によりデータ値C,Dがデータ値D,Gの保持部分に書き写される。
【0045】
そして、伝送信号A,Bが旧BP符号のスペース・マーク波形になると(
図2(b)における二番目の変換の流れを参照)、旧BP復調手段22によってデータ値Cが「1」にされ、それがデータ保持部23の最新復元データ保持用部分に書き込まれる。
また、上述のように遅れ気味で並行して、データ保持部23の以前復元データ保持用部分のデータ値D,Gが新BP変調手段24によって新BP符号に変換されるが、データ値D,Gが「-」,「-」なので送信用伝送信号E,Fは無信号状態になる。それから、データ保持部23のシフト動作によりデータ値C,Dがデータ値D,Gの保持部分に書き写される。
【0046】
このように、データ値Dに加えてその直前のデータ値Gも保持され、それらのデータ値D,Gに応じて送信用伝送信号E,Fの波形が決まること以外の動作状況は、実施例1の説明において上述したのと同様なので、以下、繰り返しとなる詳細な説明は割愛して、要点を述べると、データ値Cが「1」でも以前のデータ値D,Gが「-」,「-」のときには送信用伝送信号E,Fが無信号状態になり(
図2(b)における二番目の変換の流れを参照)、次のデータ値Cが「1」で以前のデータ値D,Gが「1」,「-」のときには送信用伝送信号E,Fが新BP符号で「1」対応のスペース・マーク波形になる(
図2(b)における三番目の変換の流れを参照)。
【0047】
さらに、次のデータ値Cが「0」で以前のデータ値D,Gが「1」,「1」のときには送信用伝送信号E,Fが新BP符号で「1」対応のスペース・マーク波形になり(
図2(b)における四番目の変換の流れを参照)、次のデータ値Cが「0」で以前のデータ値D,Gが「0」,「1」のときには送信用伝送信号E,Fが新BP符号で「0*」対応のスペース・マーク・スペース波形になり(
図2(b)における五番目の変換の流れを参照)、次のデータ値Cが「1」で以前のデータ値D,Gが「0」,「0」のときには送信用伝送信号E,Fが新BP符号で「0」対応のマーク・スペース波形になり(
図2(b)における六番目の変換の流れを参照)、次のデータ値Cが「1」で以前のデータ値D,Gが「1」,「0」のときには送信用伝送信号E,Fが新BP符号で「1*」対応のマーク・スペース・マーク波形になる(
図2(b)における七番目の変換の流れを参照)。
【0048】
このように、この場合も、それぞれ、概ね2ビットの伝送に要する時間ほどの遅れを伴って、新BP符号の対応波形に符号変換される。その遅延時間は、やはり、一伝文の伝送時間に要する時間よりかなり短いので、実用上無視することができる。
そのため、旧BP符号の伝文を新BP符号に変換したいときには、新旧BP変換装置20を導入して、その新旧BP変換装置20を既存のCTC回線のうち新旧BP符号の切り替わり目に介挿接続すれば良い。
【実施例3】
【0049】
本発明の新旧BP変換装置の実施例3について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。
図3は、新旧BP変換装置30の構造を示すブロックである。
【0050】
新旧BP変換装置30は、受信回路31と択一手段32と切替部33,34と送信回路35とに加えて、伝送信号Bを入力して送信用伝送信号Eを出力する上述の新BP復調手段12とデータ保持部13と旧BP変調手段14との組と、やはり伝送信号Bを入力して送信用伝送信号Eを出力する上述の旧BP復調手段22とデータ保持部23と新BP変調手段24との組も、具備している。
【0051】
それらのうち、受信回路31は、上述の受信回路11,21と同様のもので良いが、それと新BP復調手段12及び旧BP復調手段22との間に切替部33が介挿接続されていて、受信回路31の出力した伝送信号Bが切替部33の切替状態に応じて新BP復調手段12と旧BP復調手段22とのうち何れか一方に入力されるようになっている。
また、送信回路35も上述の送信回路15,25と同様のもので良いが、こちらについても、旧BP変調手段14及び新BP変調手段24と送信回路35との間に切替部34が介挿接続されていて、旧BP変調手段14の出力と新BP変調手段24の出力とのうち何れか一方が切替部34の切替状態に応じて送信用伝送信号Eとなって送信回路35に入力されるようになっている。
【0052】
さらに、択一手段32は、二者択一の選択が可能であって切替部33,34を制御できるものであれば、手動操作スイッチ等のハードウェアで具現化されていてもプログラム向けパラメータ等のソフトウェアで具現化されていても良く、一方の選択では、受信回路31の出力した伝送信号Bが新BP復調手段12へ伝達されるとともに、旧BP変調手段14の出力が送信用伝送信号Eとして送信回路35へ伝達されるように、切替部33の切替状態を制御する。また、他方の選択では、受信回路31の出力した伝送信号Bが旧BP復調手段22へ伝達されるとともに、新BP変調手段24の出力が送信用伝送信号Eとして送信回路35へ伝達されるように、切替部34の切替状態を制御する。
【0053】
このような新旧BP変換装置30にあっては、択一手段32によって一方の選択がなされると、受信回路31と新BP復調手段12とデータ保持部13と旧BP変調手段14と送信回路35とが連携動作して、上述した新旧BP変換装置10と同じ機能を発揮する。また、択一手段32によって他方の選択がなされると、受信回路31と旧BP復調手段22とデータ保持部23と新BP変調手段24と送信回路35とが連携動作して、上述した新旧BP変換装置20と同じ機能を発揮する。
そのため、新旧BP変換装置30は、それ一台で、新旧BP変換装置20の役割と新旧BP変換装置10の役割という二役をこなすことができる。
【実施例4】
【0054】
本発明の新旧BP変換装置の実施例4として、上述した新旧BP変換装置10又は30の使用態様を、図面を引用して説明する。
図4(a)~
図6(b)は、旧BP符号の6形伝送方式を用いる既設の旧いCTC装置である更新前CTC装置40を、新BP符号の6形伝送方式を用いる新しいCTC装置である更新後CTC装置50に、一台の新旧BP変換装置10又は30を用いて、設備更新するときの状態変化を示している。
それらのうち、
図4(a)は、更新前CTC装置40のブロック図である。
【0055】
また、
図4(b)は、CTC中央装置を旧いCTC中央装置41から新しいCTC中央装置51に更新した更新途上のCTC装置に係るブロック図であり、
図5(a)は、それに加えて一台のCTC駅装置を旧いCTC駅装置42から新しいCTC駅装置52に更新した更新途上のCTC装置に係るブロック図であり、
図5(b)は、更に二台目のCTC駅装置を旧いCTC駅装置43から新しいCTC駅装置53に更新した更新途上のCTC装置に係るブロック図であり、
図6(a)は、更に三台目のCTC駅装置を旧いCTC駅装置44から新しいCTC駅装置54に更新したCTC装置に係るブロック図であり、
図6(b)は、残りのCTC駅装置も総て旧装置45~48から新装置55~58へ更新して更新作業を終えた更新後CTC装置50に係るブロック図である。
【0056】
この更新前CTC装置40では(
図4(a)参照)、旧いCTC中央装置41と七台の旧いCTC駅装置42~48とが夫々の間に敷設されたCTC回線によって接続されていて、旧いCTC中央装置41から送出された旧BP符号の伝文が、上記の接続順に即ち旧いCTC駅装置42~48の順に伝送されるようになっている。
そして、その伝文が一巡してから旧いCTC中央装置41に戻るのであるが、最後の伝送部分である旧いCTC駅装置48と旧いCTC中央装置41との間は、位相変調伝送で伝送が行われるので、更新の対象から外される。
【0057】
これに対し、旧いCTC中央装置41から始めて、図では左回りで、旧いCTC駅装置42~47をその順に経由して、旧いCTC駅装置48に至るまでの伝送部分が、基礎帯域伝送を用いていて、旧BP符号から新BP符号へ更新する対象になっている。
もっとも、そこに張り巡らされた既設のケーブルは、新旧のBP符号いずれの伝送にも使用することができるものなので、取り替えられることなく、引き続き使用される。
実際に取り替えられるのは、対象経路における個々の装置41~48である。
【0058】
そして、それらを並び順に取り替えるのであるが、その更新中に、新旧BP変換装置10か、それと同等に機能するように択一手段32を設定した新旧BP変換装置30か、何れか一台が使用される。それに加えて一時利用ケーブル60も使用される。
ここでは、先ず更新前CTC装置40の稼働を一時停止させてから、旧いCTC中央装置41に替えて新しいCTC中央装置51を設置するとともに、その近くに新旧BP変換装置10又は30を仮置きする。
【0059】
さらに、旧いCTC中央装置41から取り外した既設のケーブルを新旧BP変換装置10又は30の伝送信号F出力側に接続するとともに、新旧BP変換装置10又は30の伝送信号A入力側と新しいCTC中央装置51の出力側とを一時利用ケーブル60で接続する。
そして、その状態で再起動させると(
図4(b)参照)、新しいCTC中央装置51と新旧BP変換装置10又は30との間は新BP符号で伝送が行われ、無視できる僅かな時間遅れはあるが、新旧BP変換装置10又は30から旧いCTC駅装置48までの間は旧BP符号で伝送が行われ、正常に稼働する。
【0060】
次は、稼働の一時停止中に、新旧BP変換装置10又は30と一時利用ケーブル60とを取り外して既設のケーブルを新しいCTC中央装置51に接続してから、上述したのと同様にして、更新作業を行う。
具体的には、旧いCTC駅装置42に替えて新しいCTC駅装置52を設置するとともに、その近くに新旧BP変換装置10又は30を移して、新しいCTC駅装置52に接続する。
【0061】
さらに、旧いCTC駅装置43側の既設ケーブルを旧いCTC駅装置42から新旧BP変換装置10又は30に接続し直すとともに、新しいCTC駅装置52と新旧BP変換装置10又は30との間に一時利用ケーブル60を介挿接続する。
そして、その状態で再起動させると(
図5(a)参照)、新しいCTC中央装置51と新しいCTC駅装置52と新旧BP変換装置10又は30との間は新BP符号で伝送が行われ、やはり無視できる僅かな時間遅れはあるが、新旧BP変換装置10又は30から旧いCTC駅装置48までの間は旧BP符号で伝送が行われ、正常に稼働する。
【0062】
それから、繰り返しとなるので簡潔に述べると、稼働停止中に、旧いCTC駅装置43に替えて新しいCTC駅装置53を設置するとともに、一時利用ケーブル60と新旧BP変換装置10又は30とを新しいCTC駅装置53と旧いCTC駅装置44側の既設ケーブルとの間に移設して、上述したのと同様に接続し直す。
そして、その状態で再起動させると(
図5(b)参照)、新しいCTC中央装置51から新旧BP変換装置10又は30までは新BP符号で伝送が行われ、やはり無視できる僅かな時間遅れはあるが、新旧BP変換装置10又は30から旧いCTC駅装置48までの間は旧BP符号で伝送が行われ、正常に稼働する。
【0063】
さらに、同様にして旧いCTC駅装置44に替えて新しいCTC駅装置54を設置し、一時利用ケーブル60と新旧BP変換装置10又は30とを新しいCTC駅装置54と旧いCTC駅装置45側の既設ケーブルとの間に移設して接続し直すと、更新作業が更に一駅分だけ進む(
図6(a)参照)。
そして、そのような更新作業を繰り返して最後に旧いCTC駅装置48を新しいCTC駅装置58で置き換えると、更新後CTC装置50が出来上がる(
図6(b)参照)。
【0064】
このような更新作業は、既設のケーブルがそのまま再利用できるうえ、CTC中央装置やCTC駅装置といった装置単位でも、複数の装置であってもそれらが連続して接続されていれば複数装置まとめて一緒でも、都合の良い時に、実行することができる。
また、新旧BP変換装置10又は30や一時利用ケーブル60は、一組あれば足り、更新完了後は別の更新作業に使用することができるので、無駄が無い。
【実施例5】
【0065】
本発明の新旧BP変換装置の実施例5として、上述した新旧BP変換装置20又は30を用いて旧いCTC装置40を新しいCTC装置50に更新するときの状況を、図面を引用して説明する。
図7は、上述した実施例4と同様に多数のCTC駅装置を並び順に更新するときの途中状態を示すブロック図であるが、CTC駅装置の更新順序が逆向きになる点で上述の実施例4と異なっている。
【0066】
簡潔に要点のみを説明すると、新旧BP変換装置20でなく新旧BP変換装置30を使用する場合は択一手段32の設定にて新旧BP変換装置30が新旧BP変換装置20と同じく動作するようにしておく。そして、先ず旧いCTC駅装置48に替えて新しいCTC駅装置58を設置するとともに新旧BP変換装置20又は30を新しいCTC駅装置58と旧いCTC駅装置47との間に介挿接続する(
図7参照)。
それから、図示は割愛したが、旧いCTC駅装置47に替えて新しいCTC駅装置57を設置するとともに新旧BP変換装置20又は30を新しいCTC駅装置57と旧いCTC駅装置46との間に移設する。
【0067】
このような部分更新作業を繰り返して行い、最後に旧いCTC中央装置41に替えて新しいCTC中央装置51を設置して更新作業を終える。
この遣り方でも、やはり、既設のケーブルがそのまま再利用できるうえ、CTC中央装置やCTC駅装置といった装置単位でも、複数の装置であってもそれらが連続して接続されていれば複数装置まとめて一緒でも、都合の良い時に、実行することができる。
また、新旧BP変換装置20又は30や一時利用ケーブルは、一組あれば足り、更新完了後は別の更新作業に使用することができるので、無駄が無い。
【実施例6】
【0068】
本発明の新旧BP変換装置の実施例6として、上述した新旧BP変換装置10又は30と新旧BP変換装置20又は30とを併用して旧いCTC装置40を新しいCTC装置50に更新するときの状況を、図面を引用して説明する。
図8は、変換の向きが逆になっている複数の新旧BP変換装置を併用して更新順序の任意性を高めた更新態様を例示しており、適宜箇所の適宜台数の一例である二台のCTC駅装置45,46を新しいCTC駅装置55,56に設備更新した更新途上のCTC装置に係るブロック図である。
【0069】
ここでも簡潔な説明のために要点だけを述べると、旧いCTC駅装置45,46をそれぞれ新しいCTC駅装置55,56で置き換えるとともに、旧いCTC駅装置44と新しいCTC駅装置55との間に新旧BP変換装置20又は30を介挿接続し、更に新しいCTC駅装置56と旧いCTC駅装置47との間に新旧BP変換装置10又は30を介挿接続する。そうすると、旧いCTC中央装置41から新旧BP変換装置20又は30までは旧BP符号で伝送が行われ、新旧BP変換装置20又は30から新旧BP変換装置10又は30までは新BP符号で伝送が行われ、新旧BP変換装置10又は30から旧いCTC駅装置48までは旧BP符号で伝送が行われる。
【0070】
そのため、無視できるほどの僅かな伝送遅延は伴うが、CTC装置の何処でも正常に伝文が伝送される。
そして、やはり既設のケーブルがそのまま再利用できる。そのうえ、CTC中央装置やCTC駅装置のうち、どの部位の装置であれ、単一の装置であれ複数の装置であれ、都合のついた装置部分から、稼働停止時なら好きなときに、更新作業を行うことができる。
また、新旧BP変換装置や一時利用ケーブルは、二組あれば足りるが、それより多ければ、複数の部位で更新作業を並行的に進めることもできる。
【実施例7】
【0071】
本発明の新旧BP変換装置の実施例7として、上述した実施例1~3で用いた変換手法とは少し異なる変換手法を説明する。
【0072】
図9(a)は、CTC伝送符号形式を新BP符号から旧BP符号に変換するときの対応関係を示す図であり、同図(b)はその変換動作例である。また、
図10(a)は、CTC伝送符号形式を旧BP符号から新BP符号に変換するときの対応関係を示す図であり、同図(b)はその変換動作例である。
上述の実施例1~3の変換手法では1ビット単位で確認や変換が行われていたが、この実施例7の変換手法では、上記単位の半分である1/2ビット単位を基本として確認や変換が行われるようになっている。
【0073】
具体的には、新BP符号から旧BP符号へ変換するとき(
図9参照)、新BP符号の1ビット値「1」に対して、1/2ビット単位では二種類の値列「0」「1」と「1*」「1」とが該当するが(
図9(a)の一行目と二行目を参照)、何れも旧BP符号の1/2ビット単位で一種類の値列「0」「1」に変換される。
また、新BP符号の1ビット値「0」に対しては、1/2ビット単位で二種類の値列「1」「0」と「0*」「0」とが該当するが(
図9(a)の三行目と四行目を参照)、何れも旧BP符号の1/2ビット単位で一種類の値列「1」「0」に変換される。
【0074】
このように1/2ビット単位で確認や変換を行うことにより、新BP符号から旧BP符号への変換を1ビット分の信号波形の監視に基づいて実行することができる(
図9(b)参照)。
なお、新BP符号から旧BP符号への変換では、前半の1/2ビット分を無視して後半の1/2ビット分だけに基づいて変換することも可能であるが、信号波形の乱れによる誤変換を防ぐといった観点からは前半の1/2ビット分も確認するのが望ましい。
【0075】
一方、旧BP符号から新BP符号へ変換するときは(
図10参照)、旧BP符号の1ビット値「1」に対して1/2ビット単位では一種類の値列「0」「1」しか該当しないが(
図10(a)の一行目と二行目の実線波形と実線枠を参照)、新BP符号では、直前の1/2ビット分(図では破線枠の後半部分を参照)が「0」なら1/2ビット単位の値列「1*」「1」に変換され(
図10(a)の一行目の実線枠と実線波形を参照)、直前の1/2ビット分が「1」なら1/2ビット単位の値列「0」「1」に変換される(
図10(a)の二行目の実線枠と実線波形を参照)。
【0076】
また、旧BP符号の1ビット値「0」に対して1/2ビット単位では一種類の値列「1」「0」しか該当しないが(
図10(a)の三行目と四行目の実線波形と実線枠を参照)、新BP符号では、直前の1/2ビット分(図では破線枠の後半部分を参照)が「0」なら1/2ビット単位の値列「1」「0」に変換され(
図10(a)の三行目の実線枠と実線波形を参照)、直前の1/2ビット分が「1」なら1/2ビット単位の値列「0*」「0」に変換される(
図10(a)の四行目の実線枠と実線波形を参照)。
【0077】
このように1/2ビット単位で確認や変換を行うことにより、旧BP符号から新BP符号への変換も1ビット分(具体的には前後二つの1/2ビット単位の値列)の信号波形の監視に基づいて実行することができる(
図10(b)参照)。
しかも、その際に、波形を変更するのは、対象の1ビット値のうち前半の1/2ビット分について、その値が直前の1ビット値における後半の1/2ビット分の値と同じ値になったときだけである(
図10(b)における輪郭線付き矢線を参照)。その値が異なっているときや(
図10における細い矢線を参照)、対象の1ビット値のうち後半の1/2ビット分については(
図10における細い破線を参照)、波形変更が無い。
【0078】
[その他]
上記実施例1~3では、データ保持部13,23の具体的な構成例としてシフトレジスタ等を挙げて、データがメモリ等を移動する動作例を述べたが、データ保持部13,23は、メモリ等におけるデータの保持位置が固定されるものであっても良く、その場合の構成例としては、データ値Cの書込先メモリへのポインタやデータ値D(又はD,G)の読出先メモリへのポインタを進めるといったものが挙げられる。
上記実施例3では、択一手段32の選択を動作に反映させる応動手段として切替部33と切替部34との二つを例示したが、切替部34が有れば切替部33は省くことができる。また、符号変換部12~14,22~24がソフトウェア等で具体化されていて択一的な動作モード切替が容易に行えるようなものであれば切替部34も省くことができる。
【符号の説明】
【0079】
10…新旧BP変換装置、
11…受信回路、12…新BP復調手段、
13…データ保持部、14…旧BP変調手段、15…送信回路、
20…新旧BP変換装置、
21…受信回路、22…旧BP復調手段、
23…データ保持部、24…新BP変調手段、25…送信回路、
30…新旧BP変換装置、
31…受信回路、32…択一手段、33,34…切替部、35…送信回路、
40…更新前CTC装置、
41…旧いCTC中央装置、
42,43,44,45,46,47,48…旧いCTC駅装置、
50…更新後CTC装置、
51…新しいCTC中央装置、
52,53,54,55,56,57,58…新しいCTC駅装置、
60…一時利用ケーブル