(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-13
(45)【発行日】2022-12-21
(54)【発明の名称】車両の対象物情報提供装置
(51)【国際特許分類】
B60K 35/00 20060101AFI20221214BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20221214BHJP
G01C 21/36 20060101ALI20221214BHJP
B60R 1/00 20220101ALI20221214BHJP
【FI】
B60K35/00 A
G08G1/16 D
G08G1/16 C
G01C21/36
B60R1/00
B60K35/00 Z
(21)【出願番号】P 2017188789
(22)【出願日】2017-09-28
【審査請求日】2020-08-28
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】弁理士法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】真壁 俊介
【審査官】津田 真吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-127204(JP,A)
【文献】特開2015-217798(JP,A)
【文献】特開2010-173619(JP,A)
【文献】特開2017-109540(JP,A)
【文献】特開2007-257286(JP,A)
【文献】特開2014-229100(JP,A)
【文献】特開2016-105580(JP,A)
【文献】特開2017-122640(JP,A)
【文献】特開2015-134521(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 35/00-37/00
G08G 1/16
G01C 21/36
B60R 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が進行する道路または周囲に存在する対象物であって前記車両の進行にともなって視認可能になる視野外の対象物についての情報を取得する対象物情報取得部と、
遠くにあるため視認可能な状態にない視野外の前記対象物が視認可能となる前に、視野外の前記対象物の情報を出力する出力装置と、
前記車両の乗員の視野を認識または推定する可視認識装置と、
を有し、
前記出力装置は、
前記車両の乗員の視野に表示する表示装置であり、
自動運転中に、乗員の視野の中心付近となる位置に、視野外の前記対象物の情報を視認可能に表示
し、
前記対象物情報取得部は、前記車両が進行する道路または周囲に存在する対象物から、前記可視認識装置により認識または推定された視野内のものを除いて、視野外の前記対象物を特定する、
車両の対象物情報提供装置。
【請求項2】
車両が進行する道路または周囲に存在する対象物であって前記車両の進行にともなって視認可能になる視野外の対象物についての情報を取得する対象物情報取得部と、
遠くにあるため視認可能な状態にない視野外の前記対象物が視認可能となる前に、視野外の前記対象物の情報を出力する出力装置と、
前記車両の車外を可視光により撮像する撮像装置と、
を有し、
前記出力装置は、
前記車両の乗員の視野に表示する表示装置であり、
自動運転中に、乗員の視野の中心付近となる位置に、視野外の前記対象物の情報を視認可能に表示
し、
前記対象物情報取得部は、前記車両が進行する道路または周囲に存在する対象物から、前記撮像装置による可視光の撮像画像において視認可能に撮像されているものを除いて、
視野外の前記対象物を特定する、
車両の対象物情報提供装置。
【請求項3】
前記対象物情報取得部は、
視野外の前記対象物として、前記車両が進行する道路に設けられた標識若しくは信号、または前記車両が進行する道路の近くのランドマークを特定する、
請求項1
または2に記載の車両の対象物情報提供装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車といった車両の対象物情報提供装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車といった車両では、運転者を含む乗員が乗車し、運転者の操作により移動可能である。この場合、運転者は、車両に表示された案内経路にしたがって操作して移動することがある。
また、近年、自動車の運行安全性を高めるために、各種の情報を運転者へ提供するようになっている。たとえば、特許文献1では、ヘッドアップディスプレイに、視認が困難な衝突対象についての注意喚起を表示する。
また、近年、車両においては自動運転の開発が始まっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、これらの車両の移動では、車両に乗車した運転者を含む乗員が、車両が正しく移動しているかを確認しようとすることがある。
たとえば、自動運転中の場合、降雪や豪雨などの気象条件により十分な視野が確保できない場合、または積雪や土砂崩れなどにより道路環境が変化している場合には、乗員は、車両が正しく移動しているかを自ら確認したいと考える可能性が高い。
【0005】
しかしながら、乗員が車両の走行を自ら確認することは、必ずしも容易ではない。たとえば、初めて訪れる見知らぬ土地の道路の場合、しばらく訪れていない間に道路沿いの景色が変化している場合、または新たな道路ができて道路状況が変化している場合、自らの記憶などに基づいて確認することは困難である。この場合、乗員は、交差点の行き先標識や国道の番号標識などによりかろうじて確認できるだけである。
しかも、降雪や豪雨などにより周辺の景色を確認すること自体が難しい状況もあり得る。
これらの場合、車両が正しく移動しているかを確認するためには、乗員は長い時間をかけて車外を観察することになる。または、長い時間をかけて車外を観察しても、確認し切れない場合も考えられる。
【0006】
このように、車両では、車両が正しく移動しているかを容易に確認できるようにすることが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る車両の対象物情報提供装置は、車両が進行する道路または周囲に存在する対象物であって前記車両の進行にともなって視認可能になる視野外の対象物についての情報を取得する対象物情報取得部と、視野外の前記対象物が有視界で視認可能となる前に、視野外の前記対象物の情報を出力する出力装置と、を有する。
【0008】
好適には、前記出力装置は、前記車両の乗員の視野に表示する表示装置であり、乗員の視野の中心付近となる位置に、視野外の前記対象物の情報を視認可能に表示する、とよい。
【0009】
好適には、前記出力装置は、視野外の前記対象物が有視界で視認可能となる前に、視野外の前記対象物の情報の出力を開始する、とよい。
【0010】
好適には、前記出力装置は、出力していた視野外の前記対象物が有視界で視認可能となった場合、視野外の前記対象物の情報の出力を終了する、とよい。
【0011】
好適には、前記車両の位置および進行方向を取得する位置取得装置、を有し、前記対象物情報取得部は、前記車両の位置および進行方向に基づいて、前記車両が進行する道路または周囲に存在する対象物を特定する、とよい。
【0012】
好適には、前記車両の乗員の視野を認識または推定する可視認識装置、を有し、前記対象物情報取得部は、前記車両が進行する道路または周囲に存在する対象物から、前記可視認識装置により認識または推定された視野内のものを除いて、視野外の前記対象物を特定する、とよい。
【0013】
好適には、前記車両の車外を可視光により撮像する撮像装置、を有し、前記対象物情報取得部は、前記車両が進行する道路または周囲に存在する対象物から、前記撮像装置による可視光の撮像画像において視認可能に撮像されているものを除いて、視野外の前記対象物を特定する、とよい。
【0014】
好適には、前記対象物情報取得部は、視野外の前記対象物として複数がある場合、前記車両の近くのものを優先して特定する、とよい。
【0015】
好適には、前記対象物情報取得部は、視野外の前記対象物として、前記車両が進行する道路に設けられた標識若しくは信号、または前記車両が進行する道路の近くのランドマークを特定する、とよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、車両の進行にともなって視認可能になる視野外の対象物の情報を、それが有視界で視認可能となる前に出力する。
これにより、乗員は、視野外の対象物の情報を得た状態で、視野外の対象物を視認して確認できる。
たとえば、視野外の対象物が有視界で視認可能となる前に、視野外の対象物の情報の出力を開始することにより、情報を得た直後に、視野外の対象物を視認して確認できる。
視野外の対象物の情報が視認と同時的に提供されることにより、乗員は、車両が正しく移動していることを容易に確認できる。
特に、乗員に情報を出力して視認させる対象物を、車両に乗車した乗員の視野外のものとすることにより、車両が進行する道路または周囲において乗員が視認し易い対象物を確認対象にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る自動車および走行する道路の一例の模式的な説明図である。
【
図2】
図2は、
図1の自動車に搭載される対象物情報提供装置の構成の説明図である。
【
図3】
図3は、
図2の対象物情報取得部による処理の一例を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、
図2の出力制御部による処理の一例を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、視界良好時において視野外の対象物の情報を提供する状態の一例の説明図である。
【
図6】
図6は、第2実施形態における対象物情報取得部の処理の一例を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、視界不良時において視野外の対象物の情報を提供する状態の一例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。
【0019】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る自動車1および走行する道路の一例の模式的な説明図である。
図1の道路沿いには、制限速度や車道の番号などを表示する複数の道路標識が離散的に並べて設けられる。また、他の道路が分岐する交差点の手前には、進路ごとの行き先を表示する道路標識が設けられる。また、道路の路面には、横断歩道のゼブラマーク、制限速度のマーク、停止線のマークなどの道路標識が描画されてもよい。
そして、自動車1は、乗員室に乗員を乗せた状態で道路を走行する。自動車1は、自動運転による制御または乗員の操作により加速し、減速し、左右へ操舵される。これにより、自動車1は、制限速度で道路を走行し、停止線において停車し、交差点で所望の方向へ進行し、乗員の目的地などへ向けて移動できる。
【0020】
ところで、このような自動車1の移動において、自動車1に乗車した運転者を含む乗員が、自動車1が正しく移動しているかを確認したい場合がある。
たとえば、自動運転中の場合、降雪や豪雨などの気象条件により十分な視野が確保できない場合、または積雪や土砂崩れなどにより道路環境が変化している場合には、乗員は、自動車1が正しく移動しているかを自ら確認したいと考える可能性が高い。
【0021】
しかしながら、乗員が自動車1の走行を自ら確認することは、必ずしも容易ではない。たとえば、初めて訪れる見知らぬ土地の道路の場合、しばらく訪れていない間に道路沿いの景色が変化している場合、または新たな道路ができて道路状況が変化している場合、自らの記憶などに基づいて確認することは困難である。この場合、乗員は、道路において離散的に設けられる交差点の行き先標識42や国道の番号標識などによりかろうじて確認できるだけである。
しかも、降雪や豪雨などにより周辺の景色を確認すること自体が難しい状況もあり得る。
したがって、自動車1が正しく移動しているかを確認しようとする場合、乗員は長い時間をかけて車外を観察することが必要になる。しかも、長い時間をかけて車外を観察したとしても、十分に確認できないこともあり得る。
【0022】
このように、自動車1では、自動車1が正しく移動しているかを容易に確認できるようにすることが求められている。
【0023】
図2は、
図1の自動車1に搭載される対象物情報提供装置10の構成の説明図である。
図2の対象物情報提供装置10は、GPS(Global Positioning System)受信装置11、無線通信装置12、車外カメラ13、車内カメラ14、記憶部15、タイマ16、表示装置17、およびこれらが接続されるマイクロコンピュータ18、を有する。
マイクロコンピュータ18は、たとえばECU(Electric Control Unit)として自動車1に設けられるものでよい。マイクロコンピュータ18は、たとえば記憶部15に記憶されたプログラムを読み込んで実行する。これにより、マイクロコンピュータ18に、対象物情報取得部21、出力制御部22、が実現される。
【0024】
GPS受信装置11は、複数のGPS衛星からの電波を受信し、これにより自動車1の位置情報を得る。また、GPS受信装置11は、時間を変えて計測された複数の位置に基づいて、自動車1の移動方向および移動速度を得ることもできる。
【0025】
無線通信装置12は、たとえば商用携帯用電波や小規模無線通信電波を送受することにより、図示外のサーバなどとデータを送受する。
【0026】
車外カメラ13は、自動車1の前方などの周囲を撮像するカメラである。可視光の車外の撮像画像には、自動車1が走行する道路の路面、道路沿いの標識などの視認可能な状態にある対象物が撮像され得る。
なお、視認可能な状態にある対象物とは、車内の乗員から、他の物体により遮られることなく視認可能な状態にあるものをいう。そして、悪天候や積雪などの変化する走行環境によりたとえば一時的に視認がし難くなった状態にあるものは、視認可能な状態にある対象物に含まれる。
【0027】
車内カメラ14は、車室を撮像するカメラである。車内の撮像画像には、たとえば乗員の視野を認識または推定するために用いることができる顔などが撮像され得る。
【0028】
記憶部15は、マイクロコンピュータ18が実行するプログラムやそのプログラムの実行の際に使用するデータなどを記憶する。本実施形態では、たとえば視野外の対象物の位置、表示内容などのデータが記憶されてよい。視野外の対象物には、たとえば自動車1が進行する道路の路面に描画された標識、道路沿いに設けられた標識および信号、自動車1が進行する道路の近くに存在するランドマーク、などがある。記憶部15には、これらの標識、信号、ランドマークそのものの画像や、対応する画像が記憶される。
【0029】
タイマ16は、時間を計測する。タイマ16は、制御タイミングなどを計測できる。
【0030】
表示装置17は、乗員に対して画像を表示するものである。本実施形態では、乗員の視野に対して画像を表示する。このような表示装置17には、たとえば、乗員に装着するヘッドマウントディスプレイ装置、フロントガラスに映像を投影するプロジェクタ装置、がある。
【0031】
対象物情報取得部21は、たとえば自動運転中に自動車1が進行する道路または周囲に存在する対象物であって自動車1の進行にともなって乗員によりこれから視認可能になる予想の視野外の対象物を特定し、その特定した対象物に対応する画像情報を出力制御部22に表示させる。
【0032】
出力制御部22は、表示装置17による表示を制御する。
基本的には、視野外の対象物が有視界で視認可能となる前に、視野内として視認可能な状態になっていない視野外の対象物に対応する画像を、乗員の視野の中心付近となる位置に視認可能に表示させる。
また、表示されている視野外の対象物が有視界で視認可能となった場合、その後に直ちに視野外の対象物の画像の表示を終了する。
【0033】
次に、対象物情報提供装置10による、視野外の対象物の情報の提供処理について説明する。
図3は、
図2の対象物情報取得部21による処理の一例を示すフローチャートである。
対象物情報取得部21は、
図3の処理を繰り返し実行する。
【0034】
図3の対象物情報の取得処理において、対象物情報取得部21は、まず、自動車1の位置および進行方向を取得し(ステップST1)、自動車1が走行する道路において進行方向に存在する対象物や該道路の周囲に存在する対象物を特定する(ステップST2)。
たとえば、対象物情報取得部21は、GPS受信装置11から、自動車1の位置および進行方向を取得する。
そして、対象物情報取得部21は、取得した自動車1の位置および進行方向に基づいて、自動車1の進路前方の所定の抽出範囲(たとえば1分程度で移動する範囲)を特定し、その抽出範囲内に存在する対象物の情報を記憶部15から取得する。
これにより、対象物情報取得部21は、自動車1が走行する道路に存在する対象物や該道路の周囲に存在する1乃至複数の対象物を特定できる。
【0035】
次に、対象物情報取得部21は、自動車1に乗車している乗員の視野を認定し(ステップST3)、視野外の対象物を特定する(ステップST4)。
たとえば、対象物情報取得部21は、車内カメラ14による車内の撮像画像に基づいて乗員の視線および視野範囲を認定する。なお、対象物情報取得部21は、予め設定された乗員の視野の情報を取得してもよい。
そして、対象物情報取得部21は、認定した乗員の視線および視野範囲に基づいて、既に抽出した1乃至複数の対象物の中で、該視野の範囲外のものを特定する。自動車1が進行する道路または周囲に存在する1乃至複数の対象物から、認識または推定された視野内のものを除いて、視野外の対象物を特定する。
【0036】
次に、対象物情報取得部21は、視野外の対象物が複数であるか否かを判断する(ステップST5)。
複数の視野外の対象物が特定されている場合、対象物情報取得部21は、最も自動車1の近くのものを選択する(ステップST6)。現在の自動車1の位置に最も近いものを選択する。
【0037】
1つの視野外の対象物を特定または選択した後、対象物情報取得部21は、該1つの視野外の対象物の表示を出力制御部22に指示する(ステップST7)。対象物が1つの場合には、その表示を指示する。
【0038】
図4は、
図2の出力制御部22による処理の一例を示すフローチャートである。
出力制御部22は、
図4の出力処理を、繰り返し実行する。出力制御部22は、対象物情報取得部21から出力指示があった場合に
図4の出力処理を実行してもよい。
【0039】
図4の対象物情報の出力処理において、出力制御部22は、まず、対象物情報取得部21からの出力指示(表示指示)の有無を確認する(ステップST11)。出力指示がない場合、出力制御部22は、
図4の処理を終了する。
【0040】
出力指示がある場合、出力制御部22は、出力指示に係る視野外の対象物が通常のクリアな有視界で視認可能な距離になりそうか否かを繰り返し判断する(ステップST12)。
そして、通常のクリアな有視界で視認可能な距離になりそうである場合、有視界で視認される前に、出力制御部22は、出力指示に係る視野外の対象物の情報を、表示装置17に表示させる(ステップST13)。出力制御部22は、たとえば記憶部15から、出力指示に係る視野外の対象物に対応する表示マークを読み込み、それを乗員の視野の中心付近となる位置に表示させる。
これにより、表示装置17は、乗員の視野の中心付近となる位置に、出力指示に係る視野外の対象物に対応する表示マークの表示を開始する。
【0041】
表示を開始した後、出力制御部22は、出力指示に係る視野外の対象物が実際に有視界で視認可能になったか否かを繰り返し判断する(ステップST14)。
そして、実際に有視界で視認可能になった場合、出力指示に係る視野外の対象物の情報の表示を終了させる(ステップST15)。表示装置17は、表示していた視野外の対象物に対応する表示マークの表示を終了する。
【0042】
図5は、視界良好時において視野外の対象物の情報を提供する状態の一例の説明図である。
【0043】
図5(A)は、
図1の位置にある自動車1から前方を視認した場合の車窓風景である。視界良好であるため、道路の左側には、複数の速度標識41が道路沿いに離散的に並べて視認可能な状態にある。道路上の交差点手前に設けられた行き先標識42は、遠くにあるため視認可能な状態にない。
そして、自動車1が道路に沿って前へ進行すると、
図5(B)に示すように、図中に破線で示した視野の中心位置に、視野外の行き先標識の画像52が表示される。
その後、行き先標識42を有視界で視認可能な距離まで自動車1が進むと、
図5(C)に示すように、実際の行き先標識42は、車内から視認可能となる。そして、行き先標識の画像52は消去される。
この場合、乗員は、行き先標識42が視認可能となる前に、
図5(B)の視野内に表示された行き先標識の画像52を視認できる。その後、
図5(C)に示すように実際に行き先標識42が視認可能な状態なると、乗員はその実際の行き先標識42を視認できる。乗員は、画像として表示された行き先標識42と、その直後に実際に視認した行き先標識42とにより、自動車1が正しく進行していることを容易に確認できる。
【0044】
以上のように、本実施形態では、自動車1の進行にともなって乗車している乗員によりこれから視認可能になる予定の視野外の対象物の情報を、それが有視界で視認可能となる前に出力する。これにより、乗員は、視野内として視認可能な状態になっていない視野外の前記対象物の情報を得た状態で、視野外の前記対象物を視認して確認できる。たとえば、視野外の対象物が有視界で視認可能となる前に、視野外の対象物の情報の出力を開始することにより、情報を得た直後に、視野外の前記対象物を視認して確認できる。視野外の対象物の情報と視認とを同時的に確認することにより、自動車1が正しく移動していることを容易に確認できる。
特に、乗員に情報を出力して視認させる対象物を、自動車1に乗車した乗員の視野外のものとすることにより、自動車1が進行する道路または周囲において乗員に視認し易い対象物を確認対象とすることができる。
【0045】
本実施形態では、出力装置が自動車1の乗員の視野に表示する表示装置17であり、乗員の視野の中心付近となる位置に、視野外の対象物の情報を視認可能に表示する。これにより、乗員は確実に視野外の対象物の情報を視認可することができる。
これに対して、自動車1の乗員の視野の外や周辺視野に表示した場合、乗員の状態によっては表示された情報を見逃す可能性がある。
【0046】
本実施形態では、出力していた視野外の対象物が有界で視認可能となった場合、その直後の所定のタイミングで視野外の対象物の情報の出力を終了する。これにより、視野外の対象物がいつまでも出力され続けないようにできる。
また、視認可能となると直ちに表示を消すことにより、複数の視野外の対象物の画像を連続的に出力することが可能になる。その結果、乗員は、連続的に出力される複数の視野外の対象物に基づいてそれぞれを有視界で確認できる。乗員は、複数の連続的な確認をすることにより、自動車1が正しく移動していることについて確証を得ることが可能になる。
【0047】
本実施形態では、自動車1の位置および進行方向に基づいて、自動車1が進行する道路または周囲に存在する対象物を特定する。そして、自動車1が進行する道路または周囲に存在する対象物から、可視認識装置により認識または推定された視野内のものを除いて、視野外の対象物を特定する。よって、実際に自動車1の進行にともなって乗車している乗員によりこれから視認可能になる予定の視野外の対象物を特定し、その情報を出力できる。
【0048】
本実施形態では、視野外の対象物として利用可能なものが複数ある場合、自動車1の近くのものを優先して特定する。よって、特定して出力される視野外の対象物として、自動車1が進行する道路または周囲に存在する不動産または定置物といった固定的な視界遮蔽物により視認できなくなる可能性が少ないと推定される対象物を選択して出力することができる。また、悪天候下でも視認し易い視野外の対象物を選択して出力することができる。
【0049】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係る自動車1の対象物情報提供装置10について説明する。以下の説明では、第1実施形態と同一の符号を使用し、主に第1実施形態との相違点について説明する。
【0050】
図6は、第2実施形態における対象物情報取得部21の処理の一例を示すフローチャートである。
図6のステップST2において進行方向に存在する対象物などを特定した後、対象物情報取得部21は、実際の有視界に対応する車外の撮像画像を取得し(ステップST21)、視野外の対象物を特定する(ステップST22)。
たとえば、対象物情報取得部21は、車外カメラ13から、可視光による車外の撮像画像を取得する。可視光による車外の撮像画像は、実際に乗員が有視界で視認可能な車外を撮像した画像に好適に対応し得る。
そして、対象物情報取得部21は、取得した可視光による車外の撮像画像に基づいて、撮像画像に実際に視認可能に撮像されている対象物を特定する。
その後、予め特定していた視野外の対象物から、撮像された視野外の対象物を除いて、視認可能な状態にはない視野外の対象物を特定する。
【0051】
次に、対象物情報取得部21は、視野外の対象物が複数であるか否かを判断する(ステップST5)。
複数の視野外の対象物が特定されている場合、対象物情報取得部21は、最も自動車1の近くのものを選択する(ステップST6)。現在の自動車1の位置に最も近いものを選択する。
1つの視野外の対象物を特定または選択した後、対象物情報取得部21は、該1つの視野外の対象物の表示を出力制御部22に指示する(ステップST7)。対象物が1つの場合には、その表示を指示する。
【0052】
図7は、視界不良時において視野外の対象物の情報を提供する状態の一例の説明図である。
【0053】
図7(A)は、
図1の位置ある自動車1から前方を視認した場合の車窓風景である。たとえば降雪などにより視界不良であるため、道路の左側には、道路沿いに離散的に並べて設けられた複数の速度標識41の中の、手前の速度標識41のみが視認可能な状態にある。奥側の速度標識41および道路上の交差点手前に設けられた行き先標識42は、視認可能な状態にない。
このため、自動車1が道路に沿って前へ進行すると、
図7(B)に示すように、図中に破線で示した視野の中心位置に、視野外の奥側の速度標識の画像51が表示される。
さらに自動車1が道路に沿って前へ進行すると、
図7(C)に示すように、視野外の奥側の速度標識41が視認可能になる。そして、奥側の速度標識の画像51は消去され、新たに視野外の行き先標識の画像52が、視野の中心位置に表示される。
その後さらに自動車1が道路に沿って前へ進行すると、
図7(D)に示すように、行き先標識42が視認可能になる。そして、行き先標識の画像52は消去される。
この場合、乗員は、視界不良であるにもかかわらず、視野外の奥側の速度標識41と、視野外の行き先標識42とを、視野の中心位置に表示された画像として認識できる。そして、それぞれの画像の認識後に実際にそれぞれの視野外の標識を視認することができる。
乗員は、画像として表示された標識と、その直後に実際に視認した標識とにより、自動車1が正しく進行していることを容易に確認できる。特に、複数の標識について連続的に確認できるので、自動車1が正しく進行していることについて確証を得ることができる。
【0054】
以上のように、本実施形態では、自動車1の位置および進行方向に基づいて、自動車1が進行する道路または周囲に存在する対象物を特定する。そして、自動車1が進行する道路または周囲に存在する対象物から、実際に撮像装置による可視光の撮像画像において視認可能に撮像されているものを除いて、視野外の対象物を特定する。よって、実際に視認されていない視野外の対象物であって、自動車1の進行にともなって乗車している乗員によりこれから視認可能になる予定の視野外の対象物を特定し、その情報を出力できる。
しかも、撮像装置による可視光の撮像画像において視認可能に撮像されているものを除くようにしているので、降雪や豪雨などの気象条件により十分な視野が確保できない場合であっても、その実際の視野に基づいて、視野外の対象物を特定できる。これにより、十分な視野が得られないために近づいたとしても視認が困難となるように遠方のランドマークではなく、自動車1が進行する道路に設けられた標識若しくは信号などを視野外の対象物として特定することができる。その結果、十分な視野が確保できない場合であっても、道路の近くの視野外の対象物により、自動車1が正しく移動していることを確認できる。
【0055】
以上の実施形態は、本発明の好適な実施形態の例であるが、本発明は、これに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変形または変更が可能である。
【符号の説明】
【0056】
1…自動車(車両)、10…対象物情報提供装置、11…GPS受信装置、12…無線通信装置、13…車外カメラ、14…車内カメラ、15…記憶部、16…タイマ、17…表示装置(出力装置)、18…マイクロコンピュータ、21…対象物情報取得部、22…出力制御部、41…速度標識(視野外の対象物)、42…行き先標識(視野外の対象物)、51…速度標識の画像(視野外の対象物の情報)、52…行き先標識の画像(視野外の対象物の情報)