(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-13
(45)【発行日】2022-12-21
(54)【発明の名称】車両のシート構造
(51)【国際特許分類】
B62J 1/12 20060101AFI20221214BHJP
B62J 1/20 20060101ALI20221214BHJP
A47C 27/00 20060101ALN20221214BHJP
A47C 31/11 20060101ALN20221214BHJP
【FI】
B62J1/12 A
B62J1/20 A
A47C27/00 K
A47C31/11 Z
(21)【出願番号】P 2018015254
(22)【出願日】2018-01-31
【審査請求日】2020-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川谷 慎治
(72)【発明者】
【氏名】小谷野 光江
(72)【発明者】
【氏名】大坪 守
(72)【発明者】
【氏名】遠城 貞通
(72)【発明者】
【氏名】小原 健史
(72)【発明者】
【氏名】竹野 翔太
【審査官】中島 昭浩
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-150864(JP,A)
【文献】実開昭62-111286(JP,U)
【文献】特開2008-029752(JP,A)
【文献】実開昭60-173480(JP,U)
【文献】特開2005-125859(JP,A)
【文献】特開2001-213372(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62J 1/00 - 1/28
A47C 27/00 - 27/22
A47C 31/00 - 31/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クッション(80、81、82、85)と、クッション(80、81、82、85)を覆うカバー(50)とを備える車両のシート構造において、
前記クッション(80、81、82、85)は、樹脂からなり、
前記カバー(50)は、前記クッション(80、81、82、85)に着脱自在に設けられるとともに、
前記クッション(80、81、82、85)は、車両側面視でライダー用のクッション(80、81、82)と、パッセンジャー用のクッション(85)とが、前後別体で、シート底板(60)の上部に設けられ、
前記クッション(80、81、82、85)と前記シート底板(60)の間にスペーサー(90、95)を設け、
前記シート底板(60)は、前記
ライダー用のクッション(80、81、82)が支持されるクッション支持部(61)と、前記クッション支持部(61)から車両側面視で、上方に立ち上がる壁状に形成される段差壁(64a)とを備え、
前記
ライダー用のクッション(80、81、82)は、車両側面視で、前後方向に延びて前記クッション支持部(61)に支持される本体部(80b、81b、82b)と、前記本体部(80b、81b、82b)の後方から上方に曲がって形成されて前記段差壁(64a)の前方に配置される後壁部(80c、81c、82c)と、を一体に備え、
前記スペーサー(90、95)は、前記
ライダー用のクッション(80、81)の後壁部(80c、81c)と、段差部(64)の前記段差壁(64a)との間の空間を埋めるように配置され、
前記スペーサー(90、95)は、前記段差壁(64a)に接触して配置される背面(90a、95a)を備え、
前記
ライダー用のクッション(80、81)の前記後壁部(80c、81c)の厚さ(t1、t2)に応じた、前記段差壁(64a)からの前方への突き出し量を有する前記スペーサー(90、95)が、前記シート底板(60)に着脱自在に締結されていることを特徴とする車両のシート構造。
【請求項2】
クッション(80、81、82、85)と、クッション(80、81、82、85)を覆うカバー(50)とを備える車両のシート構造において、
前記クッション(80、81、82、85)は、樹脂からなり、
前記カバー(50)は、前記クッション(80、81、82、85)に着脱自在に設けられるとともに、
前記クッション(80、81、82、85)は、車両側面視でシート底板(60)の上部に設けられ、
前記クッション(80、81、82、85)と前記シート底板(60)の間にスペーサー(90、95)を設け、
前記シート底板(60)のパッセンジャーの着座部(13b)に設けられたクッション(85)の位置決め機構(74)が前記スペーサー(90、95)の位置決め機構(74)であることを特徴とする車両のシート構造。
【請求項3】
前記スペーサー(90、95)は、前側の
前記ライダー用のクッション(80、81)との接触部(92、97)に滑り防止機構(92a、97a)を設けたことを特徴とする請求項1に記載の車両のシート構造。
【請求項4】
前記スペーサー(90、95)は、シート底板(60)に別体で設けられることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の車両のシート構造。
【請求項5】
前記スペーサー(90、95)は、車両上面視で、シート底板(60)の中心線(L0)上に設けられることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の車両のシート構造。
【請求項6】
前記クッション(80、81、82、85)は、ライダーの着座部(13a)と、パッセンジャーの着座部(13b)に設けられることを特徴とする請求項
2に記載の車両のシート構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のシート構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動二輪車のシートに着脱自在なシートカバーが知られている(例えば、特許文献1参照)。この種のシートカバーには、シート上を覆う三次元編物と、この三次元編物の縁部に取り付けられた取付面材と、取付面材に設けられシートに取付可能な取付部とを備えた構造が知られている。車両用シートはウレタン製のクッションを採用するのが一般的であり、クッション自体は通気性を有していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の構成では、シートの着脱自在なシートカバーではあるものの、ライダーの特性に応じて鞍乗型車両の乗員のクッション性(高さや硬さ等)を変更できるものではない。また、シートは底板を介して車両に固定されるものであり、簡単に交換することができず、乗員のクッションの調整も制約される。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、着脱可能なシートクッションであり、クッション性の調整及びクッションと底板の滑りの調整を可能とする車両のシート構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、クッション(80、81、82、85)と、クッション(80、81、82、85)を覆うカバー(50)とを備える車両のシート構造において、前記クッション(80、81、82、85)は、樹脂からなり、前記カバー(50)は、前記クッション(80、81、82、85)に着脱自在に設けられるとともに、前記クッション(80、81、82、85)は、車両側面視でライダー用のクッション(80、81、82)と、パッセンジャー用のクッション(85)とが、前後別体で、シート底板(60)の上部に設けられ、前記クッション(80、81、82、85)と前記シート底板(60)の間にスペーサー(90、95)を設け、前記シート底板(60)は、前記ライダー用のクッション(80、81、82)が支持されるクッション支持部(61)と、前記クッション支持部(61)から車両側面視で、上方に立ち上がる壁状に形成される段差壁(64a)とを備え、前記ライダー用のクッション(80、81、82)は、車両側面視で、前後方向に延びて前記クッション支持部(61)に支持される本体部(80b、81b、82b)と、前記本体部(80b、81b、82b)の後方から上方に曲がって形成されて前記段差壁(64a)の前方に配置される後壁部(80c、81c、82c)と、を一体に備え、前記スペーサー(90、95)は、前記ライダー用のクッション(80、81)の後壁部(80c、81c)と、段差部(64)の前記段差壁(64a)との間の空間を埋めるように配置され、前記スペーサー(90、95)は、前記段差壁(64a)に接触して配置される背面(90a、95a)を備え、前記ライダー用のクッション(80、81)の前記後壁部(80c、81c)の厚さ(t1、t2)に応じた、前記段差壁(64a)からの前方への突き出し量を有する前記スペーサー(90、95)が、前記シート底板(60)に着脱自在に締結されていることを特徴とする。
また、本発明は、クッション(80、81、82、85)と、クッション(80、81、82、85)を覆うカバー(50)とを備える車両のシート構造において、前記クッション(80、81、82、85)は、樹脂からなり、前記カバー(50)は、前記クッション(80、81、82、85)に着脱自在に設けられるとともに、前記クッション(80、81、82、85)は、車両側面視でシート底板(60)の上部に設けられ、前記クッション(80、81、82、85)と前記シート底板(60)の間にスペーサー(90、95)を設け、前記シート底板(60)のパッセンジャーの着座部(13b)に設けられたクッション(85)の位置決め機構(74)が前記スペーサー(90、95)の位置決め機構(74)であることを特徴とする。
【0006】
上記発明において、前記スペーサー(90、95)は、前側の前記ライダー用のクッション(80、81)との接触部(92、97)に滑り防止機構(92a、97a)を設けても良い。
【0007】
上記発明において、前記スペーサー(90、95)は、シート底板(60)に別体で設けられても良い。
【0009】
上記発明において、前記スペーサー(90、95)は、車両上面視で、シート底板(60)の中心線(L0)上に設けられても良い。
【0010】
上記発明において、前記クッション(80、81、82、85)は、ライダーの着座部(13a)と、パッセンジャーの着座部(13b)に設けられても良い。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る車両のシート構造は、クッションと、クッションを覆うカバーとを備え、前記クッションは、樹脂からなり、前記カバーは、前記クッションに着脱自在に設けられるとともに、前記クッションは、車両側面視でシート底板の上部に設けられ、前記クッションと前記シート底板の間にスペーサーを設けた。この構成によれば、スペーサーを設けることでクッション性を調整でき、ライダーの乗り心地をライダーの特性に合わせることができる。
【0013】
上記発明において、前記スペーサーはクッションの滑り防止機構を設けても良い。この構成によれば、スペーサーを設けることでクッションの滑りを防止することができ、ライダーの乗り心地を向上することができる。
【0014】
上記発明において、前記スペーサーは、シート底板に別体で設けられても良い。この構成によれば、シート底板と別体にすることで、スペーサーの調整が可能となり、ライダーの特性に応じてクッションを選択することができる。
【0015】
上記発明において、前記スペーサーは、前記クッションの厚さに応じて複数の形態であっても良い。この構成によれば、スペーサーの調整が可能となり、ライダーの特性に応じてクッションを選択することができる。
【0016】
上記発明において、前記スペーサーは、車両上面視で、シート底板の中心線上に設けられても良い。この構成によれば、ライダーの着座部の中心でクッションを係止することができ、よりクッションの滑り防止に貢献する。
【0017】
上記発明において、前記クッションは、ライダーの着座部と、パッセンジャーの着座部に設けられても良い。この構成によれば、ライダーとパッセンジャーのクッション性をそれぞれ調整することができる。
【0018】
上記発明において、前記スペーサーは、前記シート底板のパッセンジャーの着座部に設けられたクッションの位置決め機構が前記スペーサーの位置決め機構であっても良い。この構成によれば、スペーサーの位置決め機構を別途新たに設けることが不要となり、コスト削減に繋がる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施の形態に係る自動二輪車の左側面図である。
【
図3】
図2のシートからカバーのメッシュ部を省略した斜視図である。
【
図5】シートの表面近傍の断面を拡大した図である。
【
図8】ライダー用のクッションを下方から見た図である。
【
図9】ライダー用のクッションが底板に装着された状態を前方から見た斜視図である。
【
図10】ライダー用のクッションが底板に装着された状態を後方から見た斜視図である。
【
図11】ライダー用のクッションが底板に装着された状態を車幅方向に切断して示す断面図である。
【
図12】ライダー用のクッションが底板に装着された場合を示す断面図であり、車幅方向中央部で切断した断面図である。
【
図13】ライダー用の第2のクッションが底板に装着された場合を示す断面図であり、車幅方向中央部で切断した断面図である。
【
図14】ライダー用の第3のクッションが底板に装着された場合を示す断面図であり、車幅方向中央部で切断した断面図である。
【
図15】第1のスペーサーが底板に装着されている場合の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。なお、説明中、前後左右および上下といった方向の記載は、特に記載がなければ車体に対する方向と同一とする。また、各図に示す符号FRは車体前方を示し、符号UPは車体上方を示し、符号LHは車体左方を示している。
【0021】
図1は、本発明の実施の形態に係る自動二輪車1の左側面図である。なお、
図1では、左右一対で設けられるものは、符号を含め左側のものだけが図示されている。
自動二輪車(小型車両)1は、車体フレーム10と、前輪2を操舵可能に支持する操舵系11と、車体フレーム10の後部に支持されるパワーユニット12と、後輪3と、乗員が跨るようにして着座するシート13とを備えるスクーター型の鞍乗り型車両である。
【0022】
車体フレーム10は、その前端に設けられるヘッドパイプ14と、ヘッドパイプ14から後下方に延びるメインフレーム15と、メインフレーム15の下端から後方に延びるロアフレーム16と、ロアフレーム16から後上がりに後方へ延びるリアフレーム17と、メインフレーム15の上部から後方に延びてリアフレーム17の前部に連結される中間フレーム18とを備える。
【0023】
操舵系11は、ヘッドパイプ14に軸支されるステアリングシャフト20と、前輪2の左右の両側に配置されて前輪2を支持する左右一対のフロントフォーク21と、ステアリングシャフト20の下端に固定され左右のフロントフォーク21の上部を連結するブリッジ部材22と、ステアリングシャフト20の上端に固定されるハンドル23とを備える。
前輪2は、左右のフロントフォーク21の下端部間に渡される前輪車軸2aに軸支される。
【0024】
パワーユニット12は、後輪3の駆動源としてのエンジンと後輪3を支持するスイングアームとの機能を備えたユニットスイングエンジンである。パワーユニット12は、その前端部に設けられるピボット軸(不図示)を介して揺動自在に車体フレーム10に軸支される。後輪3は、パワーユニット12の後端部の後輪車軸3aに軸支される。
【0025】
自動二輪車1は、車体フレーム10等の車体を覆う車体カバー25を備える。
車体カバー25は、ヘッドパイプ14を前方及び左右側方から覆うフロントカバー26と、フロントカバー26の後方に配置されて乗員の脚部の前方に位置するレッグシールド27と、シート13の下方の車体を側方から覆うリアカバー28と、レッグシールド27の下方及びリアカバー28の前部の下方の部分を覆うロアカバー29とを備える。
また、自動二輪車1は、前輪2を上方から覆うフロントフェンダー40と、後輪3を上方から覆うリアフェンダー41とを備える。
シート13は、上面が開口した収納ボックス(不図示)を上方から覆う。シート13は、その前端のヒンジ(不図示)を介して開閉可能に設けられている。
【0026】
図2は、シート13の斜視図であり、
図3は、シート13の構造図であり、カバー50のメッシュ部52、53が省略された状態を示す図である。
シート13は、前後方向に長く形成されており、
図3に示すように、車体に開閉可能に支持された底板(シート底板)60を備える。シート13は複座式であり、底板60には前後にクッション(三次元網状構造物)80、85が設けられている。シート13は、
図2に示すように、クッション80、85を外側から覆うカバー(表面部材)50を備える。前側のクッション80は、ライダーの着座部13aを形成し、後側のクッション85は、パッセンジャーの着座部13bを形成する。
【0027】
カバー50は、シート13の外周形状に沿って設けられたレザー部(カバー枠部)51を備える。
レザー部51は、シート13の外周に沿って前後方向に延びる左右一対の帯状部51aを備える。左側の帯状部51aと右側の帯状部51aとの間には、前端間を接続する前部51bが形成されている。前部51bは、後方に膨出しており、逆U字状に形成されている。左側の帯状部51aと右側の帯状部51aとの間には、前後方向の中央部間を接続する仕切り部51cが形成されている。
仕切り部51cは、前側のライダーの着座部13aと、後側のパッセンジャーの着座部13bとの間の位置に形成されている。左側の帯状部51aと右側の帯状部51aとの間には、後端間を接続する後部51dが形成されている。
【0028】
図3に示すように、左右の帯状部51a、前部51b、仕切り部51cに囲まれた形状により、レザー部51には前側の開口形状部54が形成されている。左右の帯状部51a、後部51d、仕切り部51cにより囲まれた形状により、レザー部51には後側の開口形状部55が形成されている。
【0029】
開口形状部54は、
図2、
図5に示すメッシュ部(三次元立体編物)52で塞がれている。メッシュ部52により塞がれているため、カバー50の開口形状部54には、通気性、通水性がある。メッシュ部52の下方にはクッション80が配置される。メッシュ部52は、左右の帯状部51a、前部51b、仕切り部51cに結合されており、レザー部51と一体に構成されている。
開口形状部55は、
図2、
図5に示すメッシュ部(三次元立体編物)53で塞がれている。メッシュ部53により塞がれているため、カバー50の開口形状部55には、通気性、通水性がある。メッシュ部53の下方にはクッション85が配置される。メッシュ部53は、左右の帯状部51a、後部51d、仕切り部51cに結合されており、レザー部51と一体に構成されている。
カバー50は、
図2に示すように、レザー部(カバー枠部)51とメッシュ部(カバー本体部)52、53とにより構成される。
【0030】
図4は、底板に支持されるクッション80、85の斜視図である。
クッション80、85は、それぞれ、カバー50のメッシュ部52、53の位置に対応して底板60に支持されている。カバー50は、底板60に支持されるクッション80、85に対して着脱可能に支持される。
【0031】
図5は、シート13の表面近傍の断面を拡大した図である。
シート13のクッション80、85は、単層の網状素材からなる単層網状クッションで形成され、カバー50のメッシュ部(メッシュカバー、カバー本体部)52、53は、メッシュ素材100からなる。
【0032】
クッション80、85は、熱可塑性エラストマーからなる樹脂製の繊維(連続線状体とも称する)105を曲がりくねらせてループを形成し、各ループの接触部分を融着などで接合し、三次元網状構造に構成したものである。つまり、このクッション80、85は、熱可塑性エラストマー網状体である。これにより、クッション性及び耐久性に優れ、且つ、ウレタン製のクッションと比べ、格段に通気性に優れたクッション80、85が得られる。
【0033】
また、クッション80、85を構成する繊維105の材料、繊維径、中空率(単位面積当たりの中空面積)などを調整することによって、クッション性、通気性及び耐久性(クッション性の持続性)などを調整可能である。これにより、比較的厚さが薄いクッション80、85であっても、十分なクッション性、通気性及び耐久性を得ることができる。また、クッション80、85全体に隙間が形成されるので、放熱性及び水排出性(透水性)も得られ、シート13の軽量化に有利である。
クッション80、85は、熱可塑性エラストマー網状体に限定されず、熱可塑性エラストマー以外の材料を用いた三次元網状構造でもよい。
【0034】
カバー50のメッシュ部52、53を構成するメッシュ素材100は、合成樹脂などからなる繊維素材を編んで形成された編地からなる三層構造に形成される。つまり、メッシュ素材100は、外部に露出する表面を構成する表層101と、裏面を構成する裏層102と、表層101及び裏層102を連結する連結層103とを備える三次元立体編物で形成される。表層101及び裏層102は、メッシュ状の孔空き組織の編地で形成され、通気性を有する。表層101には、表面の肌触りを良好にし、かつ、保水性の少ない繊維素材(嵩高糸、原糸等)を用いることが好ましい。
【0035】
連結層103は、表層101及び裏層102をモノフィラメントの連結糸103Aで連結して構成される。より具体的には、連結層103は、表層101及び裏層102を連結する際に少なくとも2本の連結糸103Aが公差するクロス構造の編地で形成される。クロス構造にすることで、立体編物であるカバー50のメッシュ部52、53の通気性、形態安定性、弾力性(衝撃吸収性)及び耐久性(弾力性の持続性)などを両立し易くなる。しかも、カバー50のメッシュ部52、53全体に隙間が形成されるので、放熱性及び水排出性も得られ、シート13の軽量化に有利である。
【0036】
クッション80、85及びカバー50のメッシュ部52、53の両方により、シート13の通気性、放熱性及び水排出性が得られる。しかも、クッション80、85及びカバー50のメッシュ部52、53を樹脂で形成するので、天然繊維を使用する場合と比べて、水に強い構造にすることができる。
連結層103はクロス構造に限定されず、表層101及び裏層102を略垂直に連結する柱構造、又は、少なくとも2本の連結糸103Aと表裏の編地とが三角形を形成するトラス構造でもよい。さらに、メッシュ素材100は三層以外の多層構造にしてもよい。また、表層101又は裏層102を1枚のメッシュ生地に変更するなど、各層101~103の一部、或いは全てを編地以外で構成してもよい。また、多層構造に限らず、公知のメッシュ素材を広く適用可能である。
【0037】
図6に示すように、シート13の底板60は、上面視(車両上面視)において、前後方向に延びる楕円形状に形成されている。底板60は、
図7に示すように、車両側面視で、後端60bが前端60aに比べて上方に位置しており、外観において前下がり形状をしている。
底板60は、前後方向の中央より前寄りの車幅方向中央側の上面に、クッション支持部61を備える。クッション支持部61には、ライダー用のクッション80が支持される。クッション支持部61は、車幅方向中央部(中心線L0の位置)が上方に凸となる断面アーチ状の上げ底部62が形成されている。上げ底部62は、車両側面視では、略水平方向に延びている。上げ底部62は、クッション80の底部に接触してクッション80を支える。上げ底部62がクッション80を支えることにより、ライダーの座り心地が向上する。
上げ底部62の前部左右には、側面形状付与部66bが形成されている。
図3に示すように、側面形状付与部66bの上部には、クッション80の左右両端が支持される。本実施の形態では、上げ底部62と、左右の側面形状付与部66bとにより、クッション80が支持されるクッション支持部61が構成されている。
【0038】
クッション支持部61の上げ底部62の前方には、上方に突出する突当リブ63が形成されている。突当リブ63は、
図6に示すように、V字状の突当部63aを備える。突当部63aは後方になるほど窄まる形状に形成されている。突当部63aには、クッション80の先端部80a(
図4参照)が突き当てられ位置決めされる。
突当部63aの前方には、突当部63aの上端から前方に延びた複数の補強部63bが形成されている。補強部63bは、
図7に示すように、前側ほど高さが低くなり、底板60の前面部66に滑らかに接続されている。
補強部63bは、カバー50で覆われた場合に、前面部66と共に、カバー50の内面に接触して、カバー50にシート形状を持たせる。
【0039】
クッション支持部61の後部には、上方に隆起してクッション支持部61に対して段差をなす段差部64が形成されている。段差部64は前部に段差壁64aを備える。段差壁64aはクッション支持部61から上方に立ち上がる壁状に形成され、上端が上方に進むに連れて後方になるように傾斜している。段差壁64aと上記突当リブ63との間にクッション80が支持される。
段差部64の後方には、第2のクッション支持部65が形成されている。第2のクッション支持部65は、車両側面視において、略水平に形成されており、
図7に示すように、前側のクッション支持部61よりも高い位置に形成されている。第2のクッション支持部65には、パッセンジャー用のクッション85が支持される。パッセンジャー用のクッション85は、段差部64に設けられた位置決めリブ(位置決め機構)74に前端が位置決めされている。位置決めリブ74は、段差部64に沿って車幅方向に延びており、段差部64よりも上方に突出している。
【0040】
底板60の前部には、前面部(底板60の上面の一部)66が形成されている。前面部66は、後方に進むに連れて上方に傾斜する前面形状付与部66aと、前面形状付与部66aの上端から左右に延びる左右一対の側面形状付与部66bとを備える。側面形状付与部66bは、上げ底部62の前部下側に沿って後方に延びている。側面形状付与部66bは、車幅方向外側ほど下方になるように傾斜しており、車両側面視では、後方になるに連れて窄んでいる。
前面部66は、カバー50で覆われた場合に、カバー50の内面に接触して、カバー50にシート形状を持たせる。
【0041】
クッション支持部61および第2のクッション支持部65の外周側には、周縁部67が形成されている。周縁部67は、
図6に示す上面視において、底板60の外周部に位置する。
図3、
図7に示すように、周縁部67の断面形状は、シート13中心から外周方向にかけて傾斜しており、車幅方向外側に進むに連れて下方になるように傾斜している。周縁部67では水が、車幅方向外側に流れ易くなっている。周縁部67の前側部68の断面形状がシート13中心から外周方向にかけて傾斜していることから、底板60の剛性が向上している。
【0042】
周縁部67は、
図7に示す車両側面視において、前下がり形状をしている。周縁部67では、水が前側に流れ易くなっている。周縁部67は、前面部66の下端から後上がりに延びる前側部(周縁部67の前部)68を備える。前側部68は、車両側面視でクッション支持部61よりも下方に位置する。前側部68の後方には、車両側面視でクッション支持部61よりも後上方に延びている中央部69が形成されている。中央部69の後方には、中央部69に比べて緩やかに後上方に傾斜した後側部70が形成されている。前側部68、中央部69、後側部70はそれぞれ左右に一対形成されている。
【0043】
周縁部67の左右の前側部68が、クッション支持部61に対して下方に段差を成しており、クッション支持部61と周縁部67の左右の前側部68との間には、それぞれ、底板60の前部を車幅方向外側に断面L字状に切り欠かいた切りかき部60dが形成されている。すなわち、左右の前側部68は、前面部66の側面形状付与部66bの下方およびクッション支持部61の下方に形成された側壁部68aと、側壁部68aの下端から車幅方向に延びる底壁部68bとにより構成されている。底壁部68bは、車幅方向に進むに連れて下方に傾斜している。
【0044】
前側部68には、外周リブ71が立設されている。外周リブ71は、底板60の上面の一部を構成する。外周リブ71は薄板状である。外周リブ71は、適宜の間隔A1、A2を空けて複数形成されている。隣合う外周リブ71どうしの間には空間Aが生じている。周縁部67の前側部68に備わる外周リブ71によって、底板60上にクッション80が配設されない部分にも、シート13の形状出しが可能となっている。カバー50は、メッシュ部52が外周リブ71に接触してシート13の形状となる。メッシュ部52が三次元立体編物であるため、クッション80が無い部分でも底板60を保護することができる。
【0045】
左右の前側部68に、それぞれ外周リブ71が複数立設されているため、シート13の外周に沿った形状出しがし易くなっている。ここで、外周リブ71は、切りかき部60dの位置に形成されており、前側部68でシート13の形状出しをしている。底板60が肉抜きされた形状であり、底板60の軽量化をしてシートの形状出しが可能となる。
【0046】
また、底板60上に水が進入した場合に、底板60上面に設けられた外周リブ71間の空間Aを通じて水抜きが可能となっている。外周リブ71は、底板60の周縁部67に位置するため、水を排出するために有利である。ここで、外周リブ71は、前側部68に形成されており、底板60の低い位置に形成されている。底板60の前下がり形状や、周縁部67の前下がり形状により、底板60上の水を外周リブ71に誘導し易くなっている。
【0047】
外周リブ71は、
図6に示す上面視において、シート13の中央から放射方向に延びている。それぞれの外周リブ71は、車幅方向の内端71dよりも外端71eが前側に形成されている。上面視でシート中心から外周方向にかけて放射状に指向していることで、シート13の外周に沿った形状出しが可能となる。また、外周リブ71は、底板60の傾斜に合わせて水をシート13の前部へ誘導することができる。
【0048】
それぞれの外周リブ71は、略三角形状に形成されており、シート13の形状出しが可能になっている。外周リブ71は、底板60の外縁部(周縁部67の外端)60cから、クッション支持部61の下部にまたがって形成される略三角形状をなす。外周リブ71は、側壁部68aに沿って延びる側辺部71aと、底壁部68bに沿って延びる底辺部71bと、側辺部71aと底辺部71bとの先端を結ぶ斜辺部71cとを備える。
【0049】
図7に示すように、周縁部67において外周リブ71が立設している前側部68は、クッション80から離間しカバー50(
図2参照)の内面に当接可能な外周リブ71が立設された前側部前部(立設部前部)68cと、クッション80の底面に当接する外周リブ71が立設された前側部後部(立設部後部)68dと、を備える。
前側部前部68cが、前側部後部68dに対して下方に位置し、クッション支持部61との距離が離間している。外周リブ71のうち、前側部前部68cに位置する外周リブ71は前側部後部68dに位置する外周リブ71に対して高さ方向の寸法が大きい。外周リブ71は、前側の外周リブ71ほど斜辺部71cが直線に近く、後側の外周リブ71ほど斜辺部71cが凸に湾曲し全体が四角形状に近くなっている。
【0050】
側面形状付与部66bの下方にある前側部前部68c側の外周リブ71は、
図7に示すように、内端71dでもある上端71dが、前面部66の側面形状付与部66bの下縁66b1に接続されており、外端71eでもある下端71eが底板60の外縁部60cに接続されている。側面形状付与部66bの下縁66b1から延びる斜辺部71cは、側面形状付与部66bから滑らかに延びている。
前側部後部68dの外周リブ71は、
図7に示すように、内端71dでもある上端71dが、クッション支持部61の上げ底部62の側縁61aに接続されており、外端71eでもある下端71eが底板60の外縁部60cに接続されている。クッション支持部61の上げ底部62の側縁61aから延びる斜辺部71cは、クッション支持部61から滑らかに延びている。
【0051】
外周リブ71により、シート13の形状出しが可能である。外周リブ71によりシート13の形状出しが可能であるため、クッション80が小さくできてシート13の軽量化ができる。
外周リブ71は、斜辺部71cが、カバー50またはライダー用のクッション80に当接する。前後方向の位置で斜辺部71cの形状が異なることにより、外周リブ71がシート13の形状を滑らかに出し易くなっている。
外周リブ71は、車両側面視で底辺部71bが下側から後方斜め上方向に延出している。外周リブ71により、底板60の傾斜に合わせて水をシート13前部に誘導することができる。
【0052】
前側部後部68dの外周リブ71の車幅方向外側には、サイドリブ72が形成されている。サイドリブ72は、クッション80に車幅方向外側から接触してクッション80の側部の位置決めをする。
周縁部67には、底板60を上下方向に貫通する排水孔73が形成されている。排水孔73は、底板60の外周に沿って複数形成されており、底板60の外周方向に間隔を空けて形成されている。排水孔73は、底板60上に流れてきた水を底板60の下側に排水する。外周リブ71がある前側部68にも排水孔73が形成されている。排水孔73の一つは、前側部前部68cと、前側部後部68dとの間に形成されている。外周リブ71と外周リブ71との間に形成された排水孔73により、外周リブ71を通じて底板60の外周部近傍へ誘導された水がシート13下方へ排出される。
【0053】
図8は、ライダー用のクッション80を下方から見た図である。
ライダー用のクッション80は、幅狭の先端部80aを備える。先端部80aは二股状に分かれている。先端部80aの後方には、先端部80aよりも幅広の本体部80bが形成されている。本体部80bは、先端部80aから左右方向外側に延出する左右一対の延出部80b1を備える。本体部80bの後方には、上方に曲がった後壁部80cが形成されている。本体部80bの下部には、上方に凹んだ左右一対の凹部80dが形成されている。
【0054】
ライダー用のクッション80は、
図9および
図10に示すように、底板60のクッション支持部61に支持される。先端部80aが突当リブ63の突当部63aに突き当てられる。左右のサイドリブ72によりクッション80は側部が位置決めされる。左右一対の凹部80dには、クッション支持部61よりも上方に膨出する中央部69が嵌められる。クッション80は、後壁部80cが、段差部64の前方に配置される。
【0055】
クッション80は、突当リブ63、サイドリブ72、段差部64などを介して、底板60から挟まれるように圧力を受けて支持される。このとき、延出部80b1が複数の外周リブ71のうち、周縁部67の前側部後部68dにある外周リブ71の上方を覆う。複数の外周リブ71のうち、一部を覆うクッション80の延出部80b1によって、外周リブ71との摩擦に対してカバー50を保護することができる。
【0056】
図4、
図7に示すように、先端部80aが幅狭であり本体部80bが幅広となるライダーの着座部13aでは、ライダーの脚が二点鎖線R1で示すような延出部80b1の位置に置かれ易い。クッション80の延出部80b1が外周リブ71の上方に延出しており、ライダーは柔らかいクッション80上に脚を配置し易く、ライダーの乗り心地が向上している。また、ライダーが脚を動かす場合に、カバー50がクッション80を介して外周リブ71に押し付けられ易いため、カバー50が長寿命化され易い。ライダーが脚を置き易い前側部後部68dの外周リブ71の間隔A2は、前側部前部68cの外周リブ71の間隔A1に比べて狭く、荷重を受け易くなっている。
【0057】
図9、
図10、
図11において、カバー50(
図2参照)がクッション80、85を覆うように取り付けられると、カバー50は外周リブ71に当接してシート形状にされ、底板60を軽量化してシート形状を出すことが可能である。また、通気性、通水性がある。
カバー50のメッシュ部52、53(
図2参照)と、クッション80、85を通じて底板60上に進入した水は、外周リブ71などを介して誘導され、排水孔73などから底板60から排水される。
外周リブ71が、底板60上の水を底板60の外側に誘導する構成を説明したが、外周リブ71に厚み方向に貫通する開口71fを設け、開口71fを介して隣あう空間Aから空間Aを通じて、底板60上に進入した水を排水孔73に誘導する構成でも良い。
【0058】
図12は、ライダー用のクッション80が底板60に装着された場合を示す断面図であり、車幅方向中央部で切断した断面図である。
図13は、ライダー用の第2のクッション81が底板60に装着された場合を示す断面図であり、車幅方向中央部で切断した断面図である。
図14は、ライダー用の第3のクッション82が底板60に装着された場合を示す断面図であり、車幅方向中央部で切断した断面図である。
底板60には、底板60とは別体のスペーサー90、95が選択的に締結可能に構成されており、厚さt1、t2、t3の異なるライダー用のクッション80、81、82が選択的に支持可能に構成されている。各クッション80、81、82は厚さt1、t2、t3が異なる点以外は同様に構成されている。
図13、
図14のクッション81、82の各部の符号81a~81c、82a~82cは、
図12のクッション80の各部の符号80a~80cに対応する。
【0059】
所定の厚さt1に形成された第1のクッション80は、第1のスペーサー90に係止されて底板60のクッション支持部61に支持される。厚さt1よりも厚い所定の厚さt2に形成された第2のクッション81は、第2のスペーサー95に係止されてクッション支持部61に支持される。厚さt2よりも厚い所定の厚さt3に形成された第3のクッション82はスペーサー90、95を介さずに、クッション支持部61に支持される。
スペーサー90、95が別体であるため、クッション支持部61の形状が調整可能となり、ライダーの特性に応じてクッション80~82を選択することができる。
【0060】
図15は第1のスペーサー90が底板60に装着されている場合の斜視図である。
図16は第1のスペーサー90の斜視図であり、
図17は同左側面図、
図18は
図16のXVIII-XVIII線断面図である。
図19は第2のスペーサー95の斜視図であり、
図20は同左側面図、
図21は
図19のXXI-XXI線断面図である。
第1のスペーサー90と第2のスペーサー95とは、選択的に底板60に装着される部材であり、基本的な構成は同様である。
【0061】
スペーサー90、95は、外観は幅広であり、それぞれ、車幅方向に延びる上壁部91、96と、上壁部91、96の前端から前下方に傾斜する接触部92、97と、を備える。上壁部91、96には、車幅方向に延びる長孔93、98が形成されている。
【0062】
スペーサー90、95は、
図6に示す底板60の車幅方向中央の中心線L0上に配置される。ライダーの着座部13aの中心でスペーサー90、95がクッション80、81を係止することができ、よりクッション80、81の前後方向に対する滑り防止に貢献する。
スペーサー90、95は、前後方向では、段差部64に配置される。長孔93、98には位置決めリブ74が挿入され、スペーサー90、95が位置決めされる。スペーサー90、95は位置決めリブ74で位置決めされるため、後側のクッション85と、位置決めする位置決め機構が共通化されている。スペーサー90、95の位置決め機構を新たに設ける必要がないため、コストを抑制可能である。
スペーサー90、95は、段差部64に対応する外形の背面90a、95aを備える。
スペーサー90、95は、クッション支持部61に固定される固定部90b、95bを備える。
【0063】
第1のスペーサー90の背面90aの形状と、第2のスペーサー95の背面95aの形状は一致している。背面90a、95aは段差部64に接触して配置される。
第1のスペーサー90の固定部90bの形状と、第2のスペーサー95の固定部95bの形状は一致している。固定部90b、95bはクッション支持部61に接触して配置される。
【0064】
スペーサー90、95の接触部92、97は、段差部64の段差壁64aに対して前方に突き出しており、
図12、
図13に示すようにクッション80、81との間に生じる隙間を埋める。厚さt1、t2のクッション80、81に応じて、第1のスペーサー90と第2のスペーサー95とは、断面方向の厚みが異なる。
基準位置94aに対する第1のスペーサー90の突き出し量D1は、基準位置99aに対する第2のスペーサー95の突き出し量D2よりも大きい。
基準位置94aに対する第1のスペーサー90の高さH1は、基準位置99aに対する第2のスペーサー95の高さH2よりも高い。スペーサー90、95はクッション支持部61の高さ調整機能もある。
【0065】
図12、
図13、
図15に示すように、車両側面視で、スペーサー90、95とパッセンジャー用のクッション85が一部重なっている。パッセンジャー用のクッション85でも、クッション80、81を後方から支えることができ、スペーサー90、95の大きさを抑制できる。
【0066】
接触部92、97の表面には粗面(滑り防止機構)92a、97aが形成されている。粗面92a、97aがクッション80、81に接触して摩擦抵抗が増大し、クッション80、81が滑ることを防止する。クッション80、81の滑りが防止されるため、ライダーの乗り心地を向上することができる。接触部92、97の車幅方向中央部には、下方に凹んだ被締結部94、99が形成されている。被締結部94、99は、固定部90b、95bの内部に位置する。被締結部94、99には、軸状の締結部材110が挿通され、底板60の固定部61bにスペーサー90、95を締結する。締結部材110の頭部110aは被締結部94、99に埋まる。
【0067】
図12に示すように、厚さt1の第1のクッション80は、先端部80aが突当リブ63に突き当てられ、後壁部80cが第1のスペーサー90に接触した状態で、クッション支持部61に支持されている。クッション80の厚さt1に応じて、第1のスペーサー90が、上げ底部62から高さH1の分(
図18参照)、高くなり、段差壁64aに対して前方に突き出し量D1の分(
図18参照)、突き出して、クッション80とクッション支持部61との間に生じる隙間を埋めている。ライダー用の第1のクッション80は、第1のスペーサー90によりクッション支持部61に滑らないように支持可能である。
【0068】
図13に示すように、厚さt2の第2のクッション81は、先端部81aが突当リブ63に突き当てられ、後壁部81cが第2のスペーサー95に接触した状態で、クッション支持部61に支持されている。クッション81の厚さt2に応じて、第2のスペーサー95が、上げ底部62から高さH2の分(
図21参照)、高くなり、段差壁64aに対して前方に突き出し量D2の分(
図21参照)、突き出して、クッション81とクッション支持部61との間に生じる隙間を埋めている。ライダー用の第2のクッション81は、第2のスペーサー95によりクッション支持部61に滑らないように支持可能である。
【0069】
図14に示すように、厚さt3の第3のクッション82は、先端部82aが突当リブ63に突き当てられ、後壁部82cが段差部64に接触して、クッション支持部61に支持されている。厚さt3が厚いクッション82では、スペーサー90、95を用いずにクッション82がクッション支持部61に滑らないように支持可能である。
【0070】
このように、本実施の形態では、ライダー用のクッション80、81の厚さt1、t2に応じて複数の形態のスペーサー90、95がある。スペーサー90、95を調整してクッション支持部61を調整が可能となり、ライダーの特性に応じて、ライダーの着座部13aを形成するクッション80~82を選択することができる。
また、本実施の形態では、ライダー用のクッション80~82と、パッセンジャー用のクッション85が別体であるため、ライダー用のクッション80~82と、パッセンジャー用のクッション85のクッション性を別々に調整可能である。
【0071】
以上説明したように、本発明を適用した本実施の形態によれば、クッション80~82、85と、クッション80~82、85を覆うカバー50とを備える車両のシート構造において、クッション80~82、85は、樹脂からなり、カバー50は、クッション80~82、85に着脱自在に設けられるとともに、クッション80~82、85は、車両側面視でシート底板60の上部に設けられ、クッション80~82、85とシート底板60の間にスペーサー90、95を設けた。したがって、厚さt1~t3の異なるクッション80~82を配置したとしても、スペーサー90、95を設けることでクッション性を調整でき、ライダーの乗り心地をライダーの特性に合わせることができる。
【0072】
本実施の形態では、スペーサー90、95はクッション80、81の滑り防止機構92a、97aを設けた。したがって、厚さt1~t3の異なるクッション80~82を配置したとしても、スペーサー90、95を設けることでクッション80~82の滑りを防止することができ、ライダーの乗り心地を向上することができる。
【0073】
本実施の形態では、スペーサー90、95は、底板60に別体で設けられる。したがって、底板60と別体にすることで、スペーサー90、95の調整が可能となり、ライダーの特性に応じてクッション80~82を選択することができる。
【0074】
本実施の形態では、スペーサー90、95は、クッション80~82の厚さt1~t3に応じて複数の形態である。したがって、スペーサー90、95の調整が可能となり、ライダーの特性に応じてクッション80~82を選択することができる。
【0075】
本実施の形態では、スペーサー90、95は、上面視で、底板60の中心線L0上に設けられる。ライダーの着座部13aの中心でクッション80~82を係止することができ、よりクッション80~82の滑り防止に貢献する。
【0076】
本実施の形態では、クッション80~82、85は、ライダーの着座部13aと、パッセンジャーの着座部13bに設けられる。したがって、ライダーとパッセンジャーのクッション性をそれぞれ調整することができる。
【0077】
本実施の形態では、スペーサー90、95は、底板60のパッセンジャーの着座部13bに設けられたクッション85の位置決め機構74が、スペーサー90、95の位置決め機構74である。したがって、スペーサー90、95の位置決め機構74を別途新たに設けることが不要となり、コスト削減に繋がる。
【0078】
上述した実施形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の主旨を逸脱しない範囲で任意に変形及び応用が可能である。
シート13は、ライダー用のクッション80~82と、パッセンジャー用のクッション85が別体である構成を例示したが、ライダー用のクッション80~82と、パッセンジャー用のクッション85が一体的でも良い。また、複座式でなく単座式でも良い。
クッション80~82、85は、樹脂であれば良く、三次元網状構造ではなくても良い。クッション80~82、85は、ウレタン樹脂でも良い。
【0079】
スペーサー90、95はクッション80、81の後壁部80c、81cと、段差部64の段差壁64aとの間の空間を埋める構成を説明したが、中心線L0上に配置される構成が可能であり、例えば、上げ底部62に配置される構成でも良い。この場合には、例えば、スペーサー90、95は、上げ底部62に上面形状に対応して車幅方向中央部が凸のアーチ状の面を備え、スペーサー90、95毎に、底上げする高さを異ならせて、クッション80~82が支持される構成にしても良い。
カバー50はレザー部51とメッシュ部52、53とを備える構成を説明したが、カバー50はレザー部51などの表皮だけの部材や、三次元網状構造のメッシュ素材100だけのカバー50でもよい。カバー50がクッション80~82、85に対して着脱可能であれば良い。
【符号の説明】
【0080】
13a ライダーの着座部
13b パッセンジャーの着座部
80、81、82、85 クッション
50 カバー
60 シート底板
74 位置決め機構
90、95 スペーサー
92a、97a 滑り防止機構
L0 中心線